説明

光反射多孔質フィルム用填剤及び該填剤を配合してなる光反射多孔質フィルム

【課題】樹脂との混合が容易で、樹脂中での分散性が良好で、液晶表示装置や照明装置の光反射体として有用なフィルムを与える光反射多孔質フィルム用填剤を提供する。
【解決手段】飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族スルフォン酸、樹脂酸、それらの塩、それらのエステル、アルコール系界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル類、アミド系界面活性剤、アミン系界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アルファオレフィンスルフォン酸ナトリウム、長鎖アルキルアミノ酸、アミンオキサイド、アルキルアミン、第四級アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤(A) と、縮合リン酸、その塩、多価カルボン酸、その塩から選ばれる少なくとも1種の、アルカリ土類金属に対してキレート能を有する化合物(B) とで表面処理された無機粒子からなる光反射多孔質フィルム用填剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂との混合が容易で樹脂中での分散性も良好、かつ不純物や粗大粒子が少ない表面処理無機粒子からなる光反射多孔質フィルム用填剤、及び該填剤を配合してなる多孔質フィルムに関する。
更に詳しくは、例えば樹脂や他の添加剤との予備混合時の作業性が良好で、溶融混練時の樹脂の分子鎖の切断(分子劣化) が殆どない上に良好な吐出性を有し、かつ粒子同士や他の添加剤、樹脂との再凝集を起こしにくく、更に不純物や粗大粒子を殆ど有さないことから、例えば強度劣化を起こしにくい多孔質フィルムが得られ、また粒径操作が可能であることとフィルム中に極めて均一に分散させることが可能であることから、空孔径の分布幅を均一に制御した多孔質フィルムが得られるなど、多孔質フィルムに優れた光反射性能を付与する填剤及び該填剤を配合してなる光反射多孔質フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂からなる多孔質フィルムは、合成紙、衛生材料、医療用材料、建築用材料、農業用透気性シート、各種電池のセパレータ、液晶ディスプレイの光反射体等の多種多様な用途で使用されており、いずれの用途においても更なる改良と発展が求められている。
例えば、パーソナルコンピュータのモニターや薄型TVの表示装置として透過型の液晶ディスプレイが使用されており、この様な液晶ディスプレイには、通常、液晶素子の背面にバックライトと呼ばれる面状の照明装置が設置されている。
【0003】
バックライトは、冷陰極放電管等の線状光源を面状の光源に変換する機能を有しており、代表的な構造として、液晶素子の背面直下に光源を設置するものと、側面から線状光源をアクリル板等の透光性の導光体に通して面状に光を変換して面光源を得る方式( サイドライト式) がある。
近年のディスプレイに対する消費者の軽量化、薄型化への要望に対して、構造的にバックライトユニットを薄くできるサイドライト式が表示装置として好まれており、携帯用パーソナルコンピュータ等の液晶ディスプレイ装置には多用されている。
【0004】
サイドライト式のバックライトユニットの典型的な構成は、アクリル板等からなる導光板、発泡ポリエステルやポリオレフィンフィルム、金属蒸着フィルム等からなる光反射体、光反射体の反対面に設置される光拡散板、及び導光板の側面に設置された冷陰極放電管等からなる。
光反射体側に面した導光板の表面には、反射塗料が網点印刷されており、導光板の側面から導入された線状光は網点印刷部分で発光し、光反射体で反射された光と共に拡散板で均一面状になる。
【0005】
このバックライトユニットにおいて光反射体に要求される機能は、内臓光源から光を効率よく利用することと消費者のニーズにあった表示である。
つまり、導光板から反射板側に裏抜けする光を、無駄なく面方向に輝度のムラなく均一に反射することが要求されており、液晶のカラー表示が当前になった現在、各種液晶ディスプレイの主たるデバイスであるカラー液晶セルは、その光線透過率が低いために光源には充分な輝度が要求されている。
また、一般にギラギラとした鏡面反射は消費者に嫌われるため、散乱反射によって出射面方向に比較的均一な輝度を実現し、ディスプレイからの光が自然に感じさせる必要がある。
【0006】
以上の光反射板に要求される物性に対して、例えば特許文献1に記載される白色ポリエステルフィルムが従来から使用されており(例えば、特許文献1参照)、また、白色ポリエステルフィルムの色調変化の改善目的で多孔質ポリオレフィンフィルムが提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
【特許文献1】特開平04-239540 号公報
【特許文献2】特開2002-31704号公報
【特許文献3】特開2004-157409 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、近年のIT技術の著しい進展により、ディスプレイ装置自体の面方向への大型化や軽量化、厚み方向への薄型化のみならず、ディスプレイの画素の精密化が要求されており、バックライトの光源から発せられる光の輝度はより高く、かつ経時的にも安定したものが求められている。
【0008】
しかるに、特許文献1の白色ポリエステルフィルムは、光源から発せられる熱や紫外光付近の波長の光線により、光源近傍の樹脂が劣化変色することによって液晶ディスプレイからの色調に変化や経時的な低下を来たすことがあった。特に、より高輝度化への要求によって、光源自体も強力かつ光源との距離も短くなっていることから、樹脂の劣化が顕著になり、経時的な安定性が求められていた。
【0009】
また特許文献2,3では、ポリエステル樹脂よりも経時の劣化が少ないとされるポレオレフィン系樹脂を使用し、更に樹脂中に微細な孔を生じさせる粒子として、重質炭酸カルシウムや硫酸バリウムをはじめとする無機粒子を使用することによって、輝度の低下が少なく経時的にもより安定で、樹脂自体に柔軟性があり、更に導光板に傷をつけにくいフィルムを得ている。
しかし、現在の液晶ディスプレイ装置に対するより高輝度への要求は、上述の方法では満たされず、更なる改良が望まれていた。
【0010】
本発明は上述の状況に鑑みてなされたもので、光反射多孔質フィルム基材となる樹脂との混合が容易で、該樹脂中での分散性が良好で不純物や粗大粒子が少ない表面処理無機粒子からなる光反射多孔質フィルム用填剤と該填剤を配合してなる光反射多孔質フィルムを提供するもので、例えば樹脂や他の添加剤との予備混合時の作業性が良好で、溶融混練時の樹脂の分子鎖の切断(分子劣化)が殆どない上に良好な吐出性を有し、かつ粒子同士や他の添加剤等との再凝集を起こしにくく、また粒径操作が可能であることとフィルム中に極めて均一に分散させることが可能であることから、空隙径の分布幅を均一に制御した多孔質フィルムが得られるなど、多孔質フィルムに優れた光反射性能を付与する填剤及び該填剤を配合してなる光反射多孔質フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題の解決のため鋭意検討した結果、無機粒子に、界面活性剤(A)と、アルカリ土類金属に対してキレート能を有する化合物(B)とを表面処理剤として併用することにより、樹脂に対して極めて分散性の優れた表面処理無機粒子が得られること、及び得られた表面処理無機粒子の樹脂への配合が容易で、かつ再凝集などを起こさず良好に分散できること、更に該表面処理無機粒子を配合した多孔質フィルム用樹脂組成物が、例えば一軸ないし二軸に延伸したフィルムに使用された場合に良好なボイドを生成し、例えば液晶ディスプレイ等のバックライト装置の光反射板用フィルムとして有用である等、上記課題が解決されることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明の請求項1は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族スルフォン酸、樹脂酸、それらの塩、それらのエステル、アルコール系界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル類、アミド系界面活性剤、アミン系界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アルファオレフィンスルフォン酸ナトリウム、長鎖アルキルアミノ酸、アミンオキサイド、アルキルアミン、第四級アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤(A) と、縮合リン酸、その塩、多価カルボン酸、その塩から選ばれる少なくとも1種の、アルカリ土類金属に対してキレート能を有する化合物(B) とで表面処理された無機粒子からなることを特徴とする光反射多孔質フィルム用填剤である。
【0013】
本発明の請求項2は、無機粒子が炭酸カルシウム又は硫酸バリウムであることを特徴とする請求項1記載の光反射多孔質フィルム用填剤である。
【0014】
本発明の請求項3は、界面活性剤(A)が脂肪酸塩であることを特徴とする請求項1又は2記載の光反射多孔質フィルム用填剤である。
【0015】
本発明の請求項4は、界面活性剤(A) が、C数16以上の直鎖脂肪酸塩を50〜98重量%、C数10〜14の直鎖脂肪酸塩を2〜50重量%含む組成を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光反射多孔質フィルム用填剤である。
【0016】
本発明の請求項5は、アルカリ土類金属に対してキレート能を有する化合物(B) の縮合リン酸が、環状縮合リン酸又はメタリン酸であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光反射多孔質フィルム用填剤である。
【0017】
本発明の請求項6は、無機粒子に対し、界面活性剤(A)が0.1 〜15重量%、アルカリ土類金属に対してキレート能を有する化合物(B)が0.05〜5 重量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光反射多孔質フィルム用填剤である。
【0018】
本発明の請求項7は、下記の(1) から(4) の粒度特性を満足することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の光反射多孔質フィルム用填剤である。
(1) 0.3 ≦D50≦1.5 [μm]
(2) 0.02≦Dx≦0.6 [μm]
(3) Da≦20 [μm]
(4) 3≦Sw≦40 [m2 /g]
ただし
50 : Leeds & Northrup社製Microtrac FRA(マイクロトラック) で測定した篩上積算平均粒子径 [ μm]
Dx : 走査型電子顕微鏡を用い倍率20,000倍の観測を行い、任意に100 個の粒子を選択し、最大と最小のものから各々20個除いた残りの平均粒子径 [μm]
Da : Leeds & Northrup社製Microtrac FRA(マイクロトラック) で測定した時に示す最大粒子径 [ μm]
Sw : 窒素吸着法によるBET式比表面積 [m2 /g]
【0019】
本発明の請求項8は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光反射多孔質フィルム用填剤を樹脂に配合してなることを特徴とする光反射多孔質フィルムである。
【0020】
本発明の請求項9は、光反射多孔質フィルム用填剤の配合量が樹脂100 重量部に対して60〜150 重量部である請求項8記載の光反射多孔質フィルムである。
【0021】
本発明の請求項10は、樹脂がオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項8又は9記載の光反射多孔質フィルムである。
【0022】
本発明の請求項11は、液晶表示装置又は照明装置の光反射体に用いることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の光反射多孔質フィルムである。
【0023】
本発明の請求項12は、光反射体の光反射層に用いることを特徴とする請求項11記載の光反射多孔質フィルムである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の表面処理無機粒子からなる光反射多孔質フィルム用填剤は、樹脂との混合が容易で、且つ樹脂中での分散性が良好であり、例えば液晶ディスプレイのバックライト装置の光反射体の光反射層として有用な多孔質フィルムを提供することができる。
また、本発明の光反射多孔質フィルム用填剤は、樹脂との混合が速やかに行える他に、例えばミキサーの内壁面や攪拌・混合用の羽根への付着が少ないため、配合の振れが小さく安定する。また、ミキサー内部での付着が誘引する変質樹脂や凝集物の発生も少なくなり、混合の作業性及び後工程での混練押出機でのストレーナーの目詰まり等の発生も少ない等の特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に用いられる界面活性剤(A) としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族スルフォン酸、樹脂酸、それらの塩、それらのエステルや、アルコール系界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル類、アミド系界面活性剤、アミン系界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アルファオレフィンスルフォン酸ナトリウム、長鎖アルキルアミノ酸、アミンオキサイド、アルキルアミン、第四級アンモニウム塩等が例示され、これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0026】
飽和脂肪酸としては、カプリン酸・ラウリン酸・ミリスチン酸・パルミチン酸・ステアリン酸等が挙げられ、不飽和脂肪酸としては、オレイン酸・リノール酸・リノレン酸等が挙げられ、脂環族カルボン酸としては、シクロペンタン環やシクロヘキサン環の末端にカルボキシル基を持つナフテン酸等が挙げられ、芳香族スルフォン酸としては、直鎖アルキルベンゼンスルフォン酸・分岐アルキルベンゼンスルフォン酸・ドデシルベンゼンスルフォン酸等が挙げられ、樹脂酸としてアビエチン酸・ピマル酸・ネオアビエチン酸等が挙げられる。
【0027】
アルコール系界面活性剤としては、アルキル硫酸エステルナトリウム・アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム等が挙げられ、ソルビタン脂肪酸エステル類としては、ソルビタンモノラウレートやポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等が挙げられ、アミド系やアミン系界面活性剤としては、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシド等が挙げられ、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられ、長鎖アルキルアミノ酸としては、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン等が挙げられる。
アミンオキサイドとしてポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキルアミンオキサイド等が挙げられ、アルキルアミンとしてはステアリルアミンアセテート等が挙げられ、第四級アンモニウム塩としてステアリルトリメチルアンモニウムクロライドや第四級アンモニウムサルフェート等が挙げられる。
【0028】
アミンオキサイドとしては、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキルアミンオキサイド等が挙げられ、アルキルアミンとしては、ステアリルアミンアセテート等が挙げられ、第四級アンモニウム塩としては、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドや第四級アンモニウムサルフェート等が挙げられる。
【0029】
上記の各種酸の塩としては、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられ、具体的にはラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等の飽和脂肪酸塩、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム等の不飽和脂肪酸塩、ナフテン酸鉛、シクロヘキシル酪酸鉛等の脂環族カルボン酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム等の芳香族スルフォン酸塩、アビエチン酸カリウムやナトリウムが挙げられる。
また、上記の各種酸のエステルとして、例えば、カプロン酸エチル、カプロン酸ビニル、アジピン酸ジイソプロピル、カプリル酸エチル、カプリン酸アリル、カプリン酸エチル、カプリン酸ビニル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、イソオクタン酸セチル、ジメチルオクタン酸オクチルドデシル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸ラウリル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸セチル、パルミチン酸イソステアリル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸コレステリル、イソステアリン酸イソセチル、ベヘニン酸メチル、ベヘニン酸ベヘニル等の飽和脂肪酸エステル、オレイン酸メチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、オリーブオレイン酸エチル、エルカ酸メチル等の不飽和脂肪酸エステル、その他、長鎖脂肪酸高級アルコールエステル、ネオペンチルポリオール( 長鎖・中鎖を含む) 脂肪酸系エステルおよび部分エステル化合物、ジペンタエリスリトール長鎖脂肪酸エステル、コンプレックス中鎖脂肪酸エステル、12- ステアロイルステアリン酸イソセチル・12- ステアロイルステアリン酸イソステアリル・12- ステアロイルステアリン酸ステアリル、牛脂脂肪酸オクチルエステル、多価アルコール脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテルの脂肪酸エステル等の耐熱性特殊脂肪酸エステル、安息香酸エステル系に代表される芳香族エステルが挙げられる。
上記界面活性剤は単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0030】
上述の界面活性剤の中でも飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族スルフォン酸、樹脂酸の各塩で表面処理された無機粒子は、樹脂に配合された際に樹脂の絶縁性や耐熱性等を阻害することなく分散性も良好で好ましく、とりわけ脂肪酸の塩、特にアルカリ金属塩の混合物が更に好ましい。
【0031】
飽和脂肪酸のアルカリ金属塩については、その組成がパルミチン酸・ステアリン酸・アラキジン酸・ベヘン酸等のC数16以上の直鎖脂肪酸のアルカリ金属塩が50〜98重量%、カプリン酸・ラウリン酸・ミリスチン酸等のC数10〜14の直鎖脂肪酸のアルカリ金属塩を2〜50重量%の割合で存在することが好ましい。
C数16以上の直鎖脂肪酸のアルカリ金属塩については、ステアリン酸・オレイン酸等のC数18以上の直鎖脂肪酸のアルカリ金属塩、特にカリウム塩が好ましい。
C数10〜14の直鎖脂肪酸のアルカリ金属塩については、分散性の点でC数12のラウリン酸が好ましい。
【0032】
直鎖脂肪酸のアルカリ金属塩の組成中のC数16以上の直鎖脂肪酸の含有量が50重量%未満では、50重量%以上のものに比べて、理由は定かでないが無機粒子の樹脂中での分散性が若干悪くなり、98重量%を越えると、98重量%以下のものに比べて、樹脂と粒子の間で生成する空隙(ボイド) が小さすぎる傾向があり好ましくない。
また、脂肪酸組成中のC数10〜14の直鎖脂肪酸の含有量が2重量%未満では、2重量%以上のものに比べて添加効果が不十分で好ましくなく、反対に50重量%を越えると50重量%以下のものよりも樹脂との親和性が損なわれ、白化現象や成形後の樹脂表面へのブリード等の問題を起こしやすくなる傾向があるので好ましくない。
【0033】
上述の直鎖脂肪酸のアルカリ金属塩を界面活性剤(A) として用いる場合、各々の組成の脂肪酸を選択・混合して調整することが好ましいが、本発明の効能を阻害しない範囲で、同等の組成の市販の石鹸等を使用してもよい。
【0034】
界面活性剤(A) の使用量は無機粒子の比表面積に応じて変わり、一般的に比表面積が大なものほど使用量は大きくなる。
しかし、多孔質フィルムの基材となる樹脂のMI値等の諸物性や、コンパウンド時に添加する活剤をはじめとする諸条件によって一概に規定しにくいが、通常、無機粒子に対して0.1 重量%以上15重量%以下である。
使用量が0.1 重量%未満では無機粒子の表面を充分に被覆できず、その結果、充分な分散効果が得られない場合があり、一方、15重量%を超えると、多孔質フィルム表面へのブリード、多孔質フィルムの強度の低下等が問題となる場合がある。
なお、本発明における界面活性剤(A) の使用量は、表面処理される無機粒子の比表面積Swxに比例し、下記式(1) で表される量を中心に±20%以内の範囲で使用すれば、本発明の効果を発現する上でより良好であることが判明している。
[ 界面活性剤(A) の無機粒子に対する使用量(%)]
=1/3×[ 表面処理前の無機粒子のBET比表面積Swx] (1)
【0035】
本発明に用いられる、アルカリ土類金属に対してキレート能を有する化合物(B) としては、例えばエチレンジアミン四酢酸やニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸等に代表されるアミノカルボン酸系キレート剤、ヒドロキシエチリデン二亜リン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸等のホスホン酸系キレート剤や、ポリ塩化アルミ等のアルミニウム化合物からなる水処理剤、ポリアクリル酸、クエン酸等の多価カルボン酸やその塩、ポリアクリル酸のマレイン酸やイタコン酸の共重合物の塩、あるいは、ポリリン酸、縮合リン酸に代表されるリン酸類やその塩類が例示される。
多価カルボン酸の塩としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸アンモニウム等、共重合物の塩としてはアクリル酸・マレイン酸の共重合物(重合比100 :80等)のアンモニウム塩、アクリル酸・メタクリル酸の共重合物(重合比100 :80等)のアンモニウム塩等、リン酸類の塩としてはヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等が挙げられ、これらは単独、又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
本発明においては、これらアルカリ土類金属に対してキレート能を有する化合物(B) において、光反射層の如き均一で同一形状の空孔が要求される場合、ポリリン酸、縮合リン酸、及び多価カルボン酸、またはこれらの塩が好ましく、中でも縮合リン酸の環状縮合リン酸又はメタリン酸が好ましい。
【0036】
アルカリ土類金属に対してキレート能を有する化合物(B) の使用量は、界面活性剤(A) で述べた如く無機粒子の比表面積や用いる樹脂、コンパウンド条件等に応じて変わるので一概に規定しにくいが、通常、無機粒子に対して0.05重量%以上5重量%以下が好ましい。
使用量が0.05重量%未満では無機粒子の表面を充分に被覆できず、その結果、充分な分散効果が得られない場合があり、一方、5重量%を越えて添加しても効果の更なる向上が認められない場合があるので好ましくない。
なお、特に問題はないが、アルカリ土類金属に対してキレート能を有する化合物(B) の使用量は、表面処理される無機粒子の比表面積Swxに比例し、下記式(2) で表される量を中心に±20%以内の範囲で使用すれば、本発明の効果を発現する上でより良好であることが判明している。
[ 化合物(B) の無機粒子に対する使用量(%)]
=1/9×[ 表面処理前の無機粒子のBET比表面積Swx] (2)
【0037】
本発明に用いられる無機粒子は、一般に水不溶性のものなら特に制限はないが、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ヒドロキシタルサイト、ヒドロキシアパタイト、タルク、クレー等のように主成分、副成分あるいは不純物としてアルカリ土類金属を含有するものが好適で、特に、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、ヒドロキシタルサイト、ヒドロキシアパタイトが好適である。
中でも硫酸バリウムと炭酸カルシウムが安全かつ安価に入手しやすく、さらに粒径操作が比較的に容易であり、粒子中に含まれる不純物も少ない上に除去も容易であるため好ましく、特に炭酸カルシウムは製造においても工程全体が安全で、原料自体も国内で良質な石灰石を豊富に産出するのでより好ましい。
【0038】
炭酸カルシウムは、一般に石灰石を機械的に粉砕し、該粉砕物を分級して各種グレードに調整する重質炭酸カルシウムと、石灰石を高温で焼成して得られる生石灰と水を反応させて石灰乳を調整し、その石灰乳に石灰石焼成時に発生する炭酸ガスを導通させて炭酸カルシウムを合成する炭酸ガス化合法、石灰乳に炭酸ソーダを反応させる石灰−炭酸ソーダ法、塩化カルシウムに炭酸ソーダを反応させる塩化カルシウム−炭酸ソーダ法等の化学的方法によって調整する沈降製炭酸カルシウム( 合成炭酸カルシウム) の2種に大別される。
本発明の条件を満たす表面処理炭酸カルシウムであれば、その製造方法による物性の差はないが、重質炭酸カルシウムは、その製法上の理由から、原料である石灰石が炭酸カルシウム以外の様々な元素からなる不純物を含有している為、例えば、その様な不純物を嫌う純度の高い炭酸カルシウムが必要とされる光反射板用途には好ましくない。
更に粒度分布が総体的にブロードであり、一定以上の微細度を有する炭酸カルシウムは現在の粉砕・分級技術では製造できない点からも好ましくない。
【0039】
石灰乳に炭酸ソーダを反応させる石灰−炭酸ソーダ法、塩化カルシウムに炭酸ソーダを反応させるソーダ法等は、得られる沈降性炭酸カルシウムの粒度がシャープで粒径操作が容易であること、含有する不純物が極めて少ないことから、本発明の光反射層用途に極めて有利である。
しかし、重質炭酸カルシウムや炭酸ガス化合法で作成する沈降製炭酸カルシウムの原料が石灰石および焼成に用いるコークス・軽油等だけであるのに対して、炭酸ソーダを用いる方法は、通常、原料である炭酸ソーダや塩化カルシウムを得るために石灰石と塩等を出発材料原料として工業的に生産しており、それを再び炭酸カルシウムに戻すことは、原料の入手においてコスト的に有利な条件が整った場合においても、昨今、注目されている環境への負荷の点で好ましくない。
また、対イオンの除去が必要となるため、反応後の粒子の洗浄に大量の水を要する点でもコストと環境への負荷の点で好ましくない。
【0040】
石灰石を焼成し、得られた生石灰を水に溶かして得られる石灰乳と、焼成時に得られた炭酸ガスを反応させて得られる沈降製炭酸カルシウムは、得られる粒子が微細で一次粒子の粒径・形状も均一で含有する不純物も少なく、反応時の条件や反応後の工程によって粒度調整が可能であり、得られる粒子の物性に対する経済性や環境への負荷の点でも優れており、例えば、光反射層用途の多孔質フィルムに用いる場合に好適である。
【0041】
また、乾燥・解砕後に得られた炭酸カルシウムまたは表面処理炭酸カルシウム粉体に対して、空気分級等の分級操作を行い、乾燥によって生じた凝集体を除去することが好ましい。
【0042】
得られた炭酸カルシウム粒子に対する既述の界面活性剤(A)およびアルカリ土類金属に対してキレート能を有する化合物(B)を用いた表面処理方法は、例えばスーパーミキサーやヘンシェルミキサーと言ったミキサーを用い、粉体に直接表面処理剤を混合し、必要に応じて加熱して表面処理する一般に乾式処理と呼ばれる方法でも、また例えば界面活性剤(A) およびアルカリ土類金属に対してキレート能を有する化合物(B)を水または湯に溶解し、攪拌している炭酸カルシウムの水スラリーに添加して表面処理後、脱水、乾燥する一般に湿式処理と呼ばれる方法でも、その両者の複合でもよいが、炭酸カルシウム粒子表面への処理の度合いと経済的な観点から、主として湿式法単独が好ましく用いられる。
【0043】
本発明における表面処理された無機粒子は、下記の(1) から(4) の粒度特性を有することが好ましい。
(1) 0.3 ≦D50≦1.5 [μm]
(2) 0.02≦Dx≦0.6 [μm]
(3) Da≦20 [μm]
(4) 3≦Sw≦40 [m2 /g]
ただし
50 : Leeds & Northrup社製Microtrac(マイクロトラック) FRA で測定した篩上積算平均粒子径 [ μm]
Dx : 走査型電子顕微鏡を用い倍率20,000倍の観測を行い、任意に100 個の粒子を選択し、最大と最小のものから各々20個除いた残りの平均粒子径 [ μm]
Da : Leeds & Northrup社製Microtrac(マイクロトラック) FRA で測定した時に示す最大粒子径 [ μm]
Sw : 窒素吸着法によるBET式比表面積 [m2 /g]
【0044】
本発明における表面処理された無機粒子は、Leeds & Northrup社製マイクロトラックFRAで測定した平均粒径D50が0.3 ≦D50≦1.5 [ μm] の範囲内にあることが好ましく、0.3 ≦D50≦1.0 [ μm] であることがより好ましい。
平均粒径D50を0.3 μm未満にすることは技術上可能であるが、コストの点で好ましくなく、D50が1.5 μmを超えると、一次粒子の凝集体で構成する二次粒子の凝集力が強く、樹脂中でも二次粒子のままで存在するため、例えば光反射層用多孔質フィルムには適さないので好ましくない。
【0045】
本発明における表面処理された無機粒子の電子顕微鏡視野から測定される粒子径Dxは0.02≦Dx≦0.6 [μm] であることが好ましく、0.02≦Dx≦0.4 [ μm] がより好ましい。
粒子径Dxが0.6 μmを超えると、光反射層用多孔質フィルムに配合された場合に、目的以上の大きな空孔を作成するので好ましくなく、0.02μm未満だと粒子間の凝集力が強く、樹脂との配合時に分散しないため、粗大粒子と同じ挙動を示すことになり、光反射層用多孔質フィルムに配合された場合に、目的以上の大きな空孔を作成するので好ましくない。
【0046】
本発明における表面処理された無機粒子は、上記マイクロトラックFRAで測定した時の最大粒径DaがDa≦20 [μm] の範囲内にあることが好ましく、Da≦5 [μm] であることがより好ましい。
最大粒径Daが20μmを超えると、例えば、光反射層用多孔質フィルムに配合された場合に、目的以上の大きな空孔を作成するので好ましくない。
【0047】
なお、マイクロトラックFRAでの測定に用いる媒体は、粒子の表面処理に使用した表面処理剤によって適宜選択されるが、通常、親水性を示す表面処理剤で表面処理したものには水が、疎水性を示す表面処理剤で表面処理されたものにはメタノールないしエタノールが好ましく用いられる。
また、本発明の測定に際しては、測定に用いる水またはメタノール・エタノールスラリーに前分散として(株)日本精機製作所製超音波分散機 Ultra Sonic Generator US-300Tを使用し、300 μAで60秒間照射した後に測定した。
【0048】
本発明における表面処理された無機粒子は、BET比表面積Swが3≦Sw≦40 [m2 /g] であることが好ましく、5≦Sw≦20 [m2 /g] 以下がより好ましい。
BET式比表面積Swが40m2 /gを超えると分散性の点で好ましくなく、3m2 /g未満では、一次粒子が大き過ぎ光反射層用多孔質フィルムに配合された場合に目的以上の大きな空孔を作成してしまい、本発明の用途であるバックライト装置に使用される粒子としては適当ではない。
【0049】
以上の如くして得られた表面処理無機粒子からなる多孔質フィルム用填剤は、各種樹脂、特にオレフィン系樹脂に配合されて各種用途の多孔質フィルム、特に光反射層のごとき多孔質フィルムの製造に使用される。
【0050】
本発明に用いられる樹脂として特に制限されるものではないが、例えばポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン又はプロピレンと他のモノマーの共重合体等が挙げられる。
なかでも、光反射層用多孔質フィルムとして用いる場合は、先述の輝度の低下が少なく経時的にもより安定で、樹脂自体に柔軟性があり、更に導光板に傷をつけにくいこと、価格の点でポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましく、なかでもポリプロピレンがより好ましい。
光反射多孔質フィルム用填剤とこれらの樹脂との配合割合は特に限定されず、樹脂の種類や用途、所望する物性やコストによって大きく異なり、それらに応じて適宜決定すればよいが、樹脂100 重量部に対して60〜150 重量部であり、好ましくは80〜120 重量部程度である。
【0051】
また、本発明の表面処理無機粒子の効能を阻害しない範囲で、フィルム特性の向上を目的に脂肪酸、脂肪酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、ソルビタン脂肪酸エステル等の滑剤、可塑剤及び安定剤、酸化防止剤等を添加してもよく、更に一般にフィルム用樹脂組成物に用いられる添加物、例えば滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、スリップ剤、着色剤等を配合してもよい。
【0052】
本発明の光反射多孔質フィルム用填剤と上述の各種添加剤を樹脂に配合する場合、通常、一軸あるいは二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で加熱混練し、Tダイ等でシートを作成後に一軸または二軸で延伸して微細な孔を有する多孔質フィルム製品とされる。
また、混練後にTダイ押出、あるいはインフレーション成形等の公知の成形機を用いて製膜し、それらを酸処理して本発明の光反射多孔質フィルム用填剤を溶解して微細な孔を有する光反射多孔質フィルム製品としてもよい。
【0053】
樹脂の形状にはペレット状、及び任意の粒径に調整されたパウダー(グラニュー)状があり、粒子の分散においてはパウダー状の樹脂を用い、ヘンシェルミキサー、タンブラー型ミキサー、リボンブレンダー等の公知のミキサーと称される混合機を用いて混合することが好ましい。
本発明の光反射多孔質フィルム用填剤は、ペレット状樹脂と用いられた場合でも、本発明以外の粒子に比べて、樹脂中での分散性等で良好な物性を示すが、パウダー状の樹脂と混合して使用すると特に良好であり、加えて例えばヘンシェルミキサーで混合した場合、混合が速やかに行えるメリットの他に、ミキサーの内壁面や攪拌・混合用の羽根への付着が少なく、ミキサー内部での付着が誘引する変質樹脂や凝集物の発生も少なくなり、混合の作業性及び後工程での混練押出機でのストレーナーの目詰まり等の発生も少ない等の特徴を有している。
【0054】
上記の加熱混練機も様々な機種や設定条件があり、原料の投入方法も、樹脂中での粒子の分散の他にも樹脂自体のMI値等への影響やコストを鑑みて適宜決定される。
本発明の光反射多孔質フィルム用填剤を樹脂に配合する場合も、それらを考慮して選択されるが、ヘンシェルミキサー等で適度な粒度範囲の樹脂パウダーと混合した混合物を、二軸混練機等の混練機のホッパーに定量的に投入する方法が好ましい。
【0055】
混合機と製膜の間において、一旦、マスターバッチと称される本発明の光反射多孔質フィルム用樹脂を始めとする各種添加物を含有するペレットを作成し、その後に無添加の樹脂と併せて溶融・製膜しても良い。
更に必要に応じ、上記工程中のTダイ押出機を複数個重ねたり、あるいは延伸時に張り合わせるような工程を導入して光反射多層フィルムにしてもよい。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を更に実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例により何ら制限されるものではない。
尚、以下の記載において、特に断らないかぎり、%は重量%、部は重量部を意味する。
【0057】
実施例1
灯油を熱源に灰色緻密質石灰石を流動槽式キルンで焼成して得られた生石灰を、篩による異物除去後に水に溶解して消石灰スラリーとし、サイクロン等で更に異物や粗大粒子除去後に炭酸ガスと反応させ、しかる後にオストワルド熟成と称される炭酸カルシウムの粒子からの水中への溶出と吸着を繰り返して粒子成長を行わせ、BET比表面積が15m2/gの沈降製炭酸カルシウムを10%含有する水スラリーを得た。
次に界面活性剤(A) として、下記に示す組成で別途作成した混合処理剤A1を炭酸カルシウム固形分に対して3.3 %を80℃の湯に溶解して界面活性剤(A) の水溶液を得、更にアルカリ土類金属に対してキレート能を有する化合物(以下、キレート化合物と記す)(B) としてヘキサメタリン酸ソーダ(試薬1級) を炭酸カルシウム固形分に対して0.9 %を40℃の水に溶解してキレート化合物(B) の水溶液を得た。
先に得られた沈降性炭酸カルシウムスラリーを攪拌しつつ60℃に調整し、これに上述の界面活性剤(A) とキレート化合物(B) を添加し、4時間攪拌して表面処理炭酸カルシウムスラリーを得た。
得られた表面処理炭酸カルシウムスラリーをタナベウィルテック(株)製高速デカンターと350 メッシュの篩で異物、並びに粗大粒子の除去を行い、脱水・乾燥・解砕し、更に得られた乾粉を空気分級機で分級を行い、表面処理炭酸カルシウム粉体を得た。
得られた表面処理炭酸カルシウム粉体は、D50が0.476 μm、Dxが0.15μm、Daが1.635 μm、Swが9.3 m2 /gであった。
【0058】
混合処理剤A1
ステアリン酸カリウム 65%
パルミチン酸ナトリウム 20%
ラウリン酸ナトリウム 15%
【0059】
実施例2〜6
実施例1と同じ方法で、BET比表面積がSwxm2 /gの沈降製炭酸カルシウムを10%含有する水スラリーを得、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウム粉体を得た。
得られた表面処理炭酸カルシウム粉体の各種物性を表1に示す。
【0060】
実施例7
界面活性剤(A) を市販の石鹸(日本油脂(株)製ノンサールSK-1) に変更する以外は、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウム粉体を得た。
得られた表面処理炭酸カルシウム粉体の各種物性を表1に示す。なお、使用した石鹸の代表的な組成を以下に示す。
ノンサールSK-1
パルミチン酸カリウム 27.4%
ステアリン酸カリウム 65.6%
アルキジン酸カリウム 1.4%
ベヘニン酸カリウム 1.0%
ミリスチン酸カリウム 2.0%
その他 2.6%
【0061】
実施例8
界面活性剤(A) をステアリン酸カリウムに変更する以外は、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウム粉体を得た。
得られた表面処理炭酸カルシウム粉体の各種物性を表1に示す。
【0062】
実施例9
界面活性剤(A) をラウリン酸ナトリウムに変更する以外は、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウム粉体を得た。
得られた表面処理炭酸カルシウム粉体の各種物性を表2に示す。
【0063】
実施例10
界面活性剤(A) をオレイン酸ナトリウムに変更する以外は、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウム粉体を得た。
得られた表面処理炭酸カルシウム粉体の各種物性を表2に示す。
【0064】
実施例11
界面活性剤(A) をアビエチン酸ナトリウムに変更する以外は、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウム粉体を得た。
得られた表面処理炭酸カルシウム粉体の各種物性を表2に示す。
【0065】
実施例12
キレート剤(B) をポリアクリル酸ナトリウムに変更する以外は、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウム粉体を得た。
得られた表面処理炭酸カルシウム粉体の各種物性を表2に示す。
【0066】
実施例13
キレート剤(B) をポリ塩化アルミニウムに変更する以外は、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウム粉体を得た。
得られた表面処理炭酸カルシウム粉体の各種物性を表2に示す。
【0067】
実施例14
炭酸カルシウムに対する界面活性剤(A) の添加量を10%に変更する以外は、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウム粉体を得た。
得られた表面処理炭酸カルシウム粉体の各種物性を表2に示す。
【0068】
実施例15
炭酸カルシウムに対する界面活性剤A1及びキレート剤(B) の添加量をそれぞれ3.6 %、2.5 %に変更する以外は、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウム粉体を得た。
得られた表面処理炭酸カルシウム粉体の各種物性を表2に示す。
【0069】
実施例16
反応後の熟成を行わず、界面活性剤(A)、キレート剤(B)の添加量をそれぞれ5 %、1.8 %に変更する以外は、実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウム粉体を得た。
得られた表面処理炭酸カルシウム粉体の各種物性を表2に示す。
【0070】
実施例17
特開平7−196316号公報に記載の方法に従い、1.5mol/ Lの炭酸ナトリウム溶液100 L、1.35mol/Lの塩化カルシウム溶液100 L、0.04mol/Lの水酸化ナトリウム溶液を調整し、炭酸ナトリウム溶液と水酸化ナトリウム溶液を混合しその混合液と、塩化カルシウム溶液を各々16.0℃に調整した。
攪拌下の炭酸ナトリウム溶液と水酸化ナトリウム溶液の混合液200 Lに、塩化カルシウム溶液100 Lを200 秒かけて滴下し、滴下終了180 秒後、反応によって理論的に生成する炭酸カルシウムの0.36%相当量のヘキサメタ燐酸ナトリウムを添加し更に5分間攪拌した。
得られた炭酸カルシウムスラリーを、高速デカンター等で脱水・希釈を行い、対イオンと異物を除去した後に60℃に調整し、同時に混合処理剤A1を炭酸カルシウム固形分に対して1.11%を80℃の湯に溶解して界面活性剤(A) の水溶液を作成して炭酸カルシウムスラリーに添加し、4時間攪拌して表面処理炭酸カルシウムスラリーを得た。
得られた表面処理炭酸カルシウムスラリーを乾燥・解砕し、更に得られた乾粉を空気分級機で分級を行い、表面処理炭酸カルシウム粉体を得た。
得られた表面処理炭酸カルシウム粉体の各種物性を表3に示す。
【0071】
実施例18
コークスを熱源に使用し、灰色緻密質石灰石をシャフト式キルンで焼成することと、異物除去の工程を行わない以外は実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウム粉体を得た。
得られた表面処理炭酸カルシウム粉体の各種物性を表3に示す。
【0072】
実施例19
白色糖晶質石灰石を水と混合して10%のスラリーを作成後、該スラリーを湿式粉砕機ダイノーミルKB−20Bで湿式粉砕し、BET比表面積1.2 m2 /gの炭酸カルシウムの水スラリーを得た。
次に、得られた炭酸カルシウムの水スラリーに、界面活性剤(A) として下記に示す組成で別途作成した混合処理剤A1を炭酸カルシウム固形分に対して0.8 %を80℃の湯に溶解して界面活性剤(A) の水溶液を得、更にアルカリ土類金属に対してキレート能を有する化合物(以下、キレート化合物と記す)(B) としてヘキサメタリン酸ソーダ(試薬1級) を炭酸カルシウム固形分に対して0.3 %を40℃の水に溶解してキレート化合物(B) の水溶液を得た。
先に得られた沈降性炭酸カルシウムスラリーを攪拌しつつ60℃に調整し、これに上述の界面活性剤(A) とキレート化合物(B) を添加し、4時間攪拌して表面処理炭酸カルシウムスラリーを得た。
得られた表面処理炭酸カルシウムスラリーをタナベウィルテック(株)製高速デカンターと350 メッシュの篩で異物、並びに粗大粒子の除去を行い、脱水・乾燥・解砕し、更に得られた乾粉を空気分級機で分級を行い、表面処理炭酸カルシウム粉体を得た
得られた表面処理炭酸カルシウム粉体の各種物性を表3に示す。
【0073】
比較例1
キレート剤(B) を処理剤として添加しない以外は実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウム粉体を得た。
得られた表面処理炭酸カルシウム粉体の各種物性を表3に示す。
【0074】
比較例2
界面活性剤(A) を処理剤として添加しない以外は実施例1と同様に操作を行い、表面処理炭酸カルシウム粉体を得た。
得られた表面処理炭酸カルシウム粉体の各種物性を表3に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
実施例20〜38、比較例3,4
ポリプロピレン樹脂(住友化学(株)社製FS2011DG2、MI=2.0g/10min)100部、実施例1〜19、及び比較例1,2で得られた表面処理炭酸カルシウム粉体からなる光反射多孔質フィルム用填剤110部、ステアリン酸カルシウム1部をヘンシェルミキサーに仕込み5分間混合して填剤−樹脂混合物を得た。
得られた混合物をベント型二軸押出機によりペレット状に加工した。このペレットをTダイを装着した押出機を用いて未延伸シートを得た。得られた未延伸シートをテンターオーブン中で140℃の温度下で約7倍に延伸し180μm の多孔質延伸フィルムを得た。
【0079】
得られた多孔質延伸シートにポリエステル系ホットメルト型接着剤をグラビアコーターで7μm の厚みで塗工した。この接着剤を塗工した多孔質延伸シートに板状支持体である厚さ200μm のアルミニウムシートを温度75℃でラミネートさせ光反射体を得た。このとき接着強度は、100g/cm2 であった。
【0080】
このように得られた光反射体について、密度、空孔率、全光線反射率、輝度ムラ、連続点灯時の変色(黄変)の測定・評価を行った。空孔率は下記式により求めた。
空孔率(%)=〔(ρ0 −ρ)/ρ0 〕×100
但し、ρ0 は支持体の真密度、ρは支持体の密度(JIS−S P−8118)を表す。延伸前の材料が多量の空気を含有する物でない限り、真密度は延伸前の密度にほぼ等しい。
全光線反射率は、JIS−Z−8701に従って波長40nm〜700nmの範囲で測定した各波長の反射率の平均値を算出することによって求めた。更に、この光反射体を用いて高温環境試験(耐久試験)を行い、全光線反射率の変化を測定した。
【0081】
輝度ムラの評価は、図1の如く24インチタイプの直下方式の面光源表示装置を用いた。同装置に実施例20〜38、比較例3〜4で得られた光反射体1を面光源表示装置の反射体として成形加工したものを用い、内部に冷陰極ランプ2、正面にLCDセル3を設置する。これを点灯、照射して正面方向の輝度ムラが発生しているか否かを目視評価し、以下の基準で評価した。
○ 均一な輝度で、ムラがない。
× ムラがある。
【0082】
連続点灯時の変色(黄変)評価は、アイ・スーパーUVテスターSUV−W13(岩崎電気(株)製)を用いて、光反射体のフィルム表面から10cm離れた位置に設置したメタルハライドランプを照射強度90mW/cm2 で24時間点灯照射したあとのフィルムの色調変化を測色計(S&Mカラーコンピュータ、スガ試験機(株)社製)を用いて、試験前後に測定した各指数値から色差ΔEH値を読みとり(JIS−Z−8730)、以下の基準で評価した。
◎ 色調に全く変化がなく極めて良好である(ΔEH<0.3)。
○ 色調に変化がなく良好である(0.3≦ΔEH<1)。
× 色調に変化あり不良である(ΔEH≧1)。
総合評価
5 極めて良好である。
4 良好である。
3 使用上問題なし。
2 使用上若干問題有り。
1 使用上問題有り。
【0083】
【表4】

【0084】
【表5】

【0085】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0086】
叙上のとおり、本発明の光反射多孔質フィルム用填剤は、樹脂との混合が容易で、且つ樹脂中での分散性が良好であり、例えば、液晶表示装置や照明装置の光反射体として有用な光反射多孔質フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】輝度ムラの評価に用いた直下方式バックライトユニットの概略図である。
【符号の説明】
【0088】
1 光反射体
2 冷陰極ランプ
3 LCDセル
4 ハウジング(光反射板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族スルフォン酸、樹脂酸、それらの塩、それらのエステル、アルコール系界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル類、アミド系界面活性剤、アミン系界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アルファオレフィンスルフォン酸ナトリウム、長鎖アルキルアミノ酸、アミンオキサイド、アルキルアミン、第四級アンモニウム塩から選ばれる少なくとも1種の界面活性剤(A) と、縮合リン酸、その塩、多価カルボン酸、その塩から選ばれる少なくとも1種の、アルカリ土類金属に対してキレート能を有する化合物(B) とで表面処理された無機粒子からなることを特徴とする光反射多孔質フィルム用填剤。
【請求項2】
無機粒子が炭酸カルシウム又は硫酸バリウムであることを特徴とする請求項1記載の光反射多孔質フィルム用填剤。
【請求項3】
界面活性剤(A)が脂肪酸塩であることを特徴とする請求項1又は2記載の光反射多孔質フィルム用填剤。
【請求項4】
界面活性剤(A) が、C数16以上の直鎖脂肪酸塩を50〜98重量%、C数10〜14の直鎖脂肪酸塩を2〜50重量%含む組成を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光反射多孔質フィルム用填剤。
【請求項5】
アルカリ土類金属に対してキレート能を有する化合物(B) の縮合リン酸が、環状縮合リン酸又はメタリン酸であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光反射多孔質フィルム用填剤。
【請求項6】
無機粒子に対し、界面活性剤(A)が0.1 〜15重量%、アルカリ土類金属に対してキレート能を有する化合物(B)が0.05〜5 重量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光反射多孔質フィルム用填剤。
【請求項7】
下記の(1) から(4) の粒度特性を満足することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の光反射多孔質フィルム用填剤。
(1) 0.3 ≦D50≦1.5 [μm]
(2) 0.02≦Dx≦0.6 [μm]
(3) Da≦20 [μm]
(4) 3≦Sw≦40 [m2 /g]
ただし
50 : Leeds & Northrup社製Microtrac FRA(マイクロトラック) で測定した篩上積算平均粒子径 [ μm]
Dx : 走査型電子顕微鏡を用い倍率20,000倍の観測を行い、任意に100 個の粒子を選択し、最大と最小のものから各々20個除いた残りの平均粒子径 [μm]
Da : Leeds & Northrup社製Microtrac FRA(マイクロトラック) で測定した時に示す最大粒子径 [ μm]
Sw : 窒素吸着法によるBET式比表面積 [m2 /g]
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光反射多孔質フィルム用填剤を樹脂に配合してなることを特徴とする光反射多孔質フィルム。
【請求項9】
光反射多孔質フィルム用填剤の配合量が樹脂100 重量部に対して60〜150 重量部である請求項8記載の光反射多孔質フィルム。
【請求項10】
樹脂がオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項8又は9記載の光反射多孔質フィルム。
【請求項11】
液晶表示装置又は照明装置の光反射体に用いることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の光反射多孔質フィルム。
【請求項12】
光反射体の光反射層に用いることを特徴とする請求項11記載の光反射多孔質フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−265472(P2006−265472A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89057(P2005−89057)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(390008442)丸尾カルシウム株式会社 (31)
【Fターム(参考)】