説明

光受信装置および光ネットワークシステム

【課題】高精度の波長制御を要することなくデータ信号を得る。
【解決手段】分散媒質1には、データ信号によって変調されたサブキャリア変調信号に基づいて位相変調された搬送光ECが入力される。抽出部2は、分散媒質1から出力される光からデータ信号を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、情報が多重された搬送光を受信する光受信装置および光ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報を光多重伝送する技術として、WDM(Wavelength Division Multiplexing)がある。WDMは、異なる波長の光信号を多重化し、1本の光ファイバで複数の情報を伝送することができる。
【0003】
将来の光ネットワークは、例えば、従来の光通信システムをベースとしつつ、中継光ノード等、端局装置から離れた地点に置かれた装置において、信号光の分岐挿入やスイッチング等の処理を行う必要がある。その際、できるだけ光信号と電気信号とを、それらの間で変換しないで情報を伝搬・処理していくことが、エネルギー効率の観点から有効である。
【0004】
しかし、現状の中継光ノード等においては、端局装置のように光−電気変換を用いて信号処理を行っており、例えば、伝送されてきた信号光をいったん電気信号に変換し、これを電気的に処理した後、再び光信号に変換している。このため、装置構成は複雑となり、また、光−電気変換のために大きな電力を必要とする。
【0005】
ところで、光ネットワークでは、各所においてリアルタイムに各種情報をモニタし、その情報を基に、有効なネットワーク制御を行っている。将来の光ネットワークにおいては、この情報の情報量は増大し、省エネルギーの光ネットワークを実現することが有効となる。また、より柔軟な光ネットワークを実現するためには、光ノードに限らず、任意の地点において情報をネットワークに挿入できる機能が有効となる。
【0006】
しかし、現状では、情報の挿入は、光ノード装置や端局装置において行われており、特にモニタ情報は、信号光を光−電気変換して信号光のヘッダ部に書き込むか、または、専用の光波を用いるなどして伝搬されている。
【0007】
なお、従来、送信局と、受信局との間に、光伝送路を介して敷設される中継局に、送信局からの入力信号光および励起光を非線形光学媒質に供給する信号光/励起光供給手段と、非線形光学媒質に供給された入力信号光および励起光により発生した出力信号光および位相共役光を抽出する信号光/位相共役光抽出手段とを有する位相共役光発生装置と、励起光を中継局固有の監視データにより変調する変調手段を備え、変調された監視データを含む位相共役光を受信局へ送信することを特徴とする位相共役光を用いた中継局が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3436310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、WDMより高密度のデータ伝送を行う方式として、光周波数分割多重伝送が考えられる。光周波数分割多重伝送は、伝送路で伝送するデータ信号でサブキャリア信号を変調し、単一の搬送波に周波数分割多重して、データ信号を伝送する。
【0010】
しかし、光周波数分割多重伝送では、搬送光に位相変調により周波数分割多重されたデータ信号を得るのに、高精度な波長制御を要するという問題点があった。
本件はこのような点に鑑みてなされたものであり、高精度の波長制御を要することなくデータ信号を得ることができる光受信装置および光ネットワークシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、光受信装置が提供される。この光受信装置は、データ信号によって変調されたサブキャリア変調信号に基づいて位相変調された搬送光が入力される分散媒質と、前記分散媒質から出力される光から前記データ信号を抽出する抽出部と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
開示の装置およびシステムによれば、高精度の波長制御を要することなくデータ信号を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態に係る光受信装置のブロック図である。
【図2】第2の実施の形態に係る光ネットワークシステムを示した図である。
【図3】光ネットワークの動作を説明する図である。
【図4】光多重装置のブロック例を示した図である。
【図5】光ヘテロダイン検波によってデータ復調する光受信装置のブロック図である。
【図6】光フィルタを備えた光受信装置のブロック図である。
【図7】光波長分波器を備えた光受信装置のブロック図である。
【図8】図2の光受信装置のブロック図である。
【図9】図8の光受信装置の動作を説明する図である。
【図10】第3の実施の形態に係る光受信装置のブロック図である。
【図11】光受信装置と同様に分散媒質を用いた光アップコンバージョン装置のブロック図である。
【図12】図11の光アップコンバージョン装置を用いたチャープレス信号発生装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る光受信装置のブロック図である。図1に示すように、光受信装置は、分散媒質1および抽出部2を有している。図1には、分散媒質1に入力される搬送光ECのスペクトル3も示している。横軸は周波数を示し、縦軸はパワーを示す。スペクトル3に示すωCは、搬送光ECの光周波数を示している。
【0015】
搬送光ECは、例えば、図示しない伝送路に設けられた複数の光多重装置によって、データ信号が周波数分割多重されている。搬送光ECは、データ信号によって変調されたサブキャリア変調信号に基づいて位相変調され、データ信号が多重されている。
【0016】
例えば、図示しない伝送路に光多重装置A1〜ANが設けられているとする。光多重装置A1は、サブキャリア周波数ω1のサブキャリア信号を、伝送路で伝送するデータ信号で変調する。光多重装置A1は、データ信号で変調したサブキャリア信号(サブキャリア変調信号)に応じた光強度を有する光サブキャリア変調信号を生成する。光多重装置A1は、生成した光サブキャリア変調信号を、伝送路を伝搬している搬送光ECに合波し、伝送路中に設けられた非線形光学媒質において、搬送光ECを位相変調する。これにより、搬送光ECには、スペクトル3に示すように、サブキャリア周波数ω1のデータ信号が多重される。
【0017】
また、光多重装置A2は、サブキャリア周波数ω2のサブキャリア信号を、伝送路で伝送するデータ信号で変調する。光多重装置A2は、データ信号で変調したサブキャリア変調信号に応じた光強度を有する光サブキャリア変調信号を生成する。光多重装置A2は、生成した光サブキャリア変調信号を、伝送路を伝搬している搬送光ECに合波し、伝送路中に設けられた非線形光学媒質において、搬送光ECを位相変調する。これにより、搬送光ECには、スペクトル3に示すように、サブキャリア周波数ω2のデータ信号が多重される。
【0018】
同様に、光多重装置ANは、サブキャリア周波数ωNのサブキャリア信号を、伝送路で伝送するデータ信号で変調する。光多重装置ANは、データ信号で変調したサブキャリア変調信号に応じた光強度を有する光サブキャリア変調信号を生成する。光多重装置ANは、生成した光サブキャリア変調信号を、伝送路を伝搬している搬送光ECに合波し、伝送路中に設けられた非線形光学媒質において、搬送光ECを位相変調する。これにより、搬送光ECには、スペクトル3に示すように、サブキャリア周波数ωNのデータ信号が多重される。
【0019】
分散媒質1には、サブキャリア変調信号に基づいて位相変調された搬送光ECが入力される。例えば、分散媒質1には、上記したN個の光サブキャリア変調信号によって位相変調された搬送光ECが入力される。
【0020】
抽出部2には、分散媒質1を透過した搬送光ECが入力される。抽出部2は、分散媒質1を透過した搬送光ECから、搬送光ECに多重されたデータ信号を抽出する。例えば、抽出部2は、分散媒質1から出力される光を光−電気変換し、復調処理を施して、データ信号を得る。
【0021】
ここで、分散媒質1に搬送光ECを透過させないでデータ信号を得る方法として、例えば、光ヘテロダイン検波が考えられる。光ヘテロダイン検波は、搬送光ECの光周波数と異なる光周波数のローカル光を搬送光ECに合波してデータ信号を得ることができる。しかし、光ヘテロダイン検波では、搬送光ECからデータ信号を分離するのに、ローカル光の波長を高精度に制御することを要する。
【0022】
また、光フィルタによって、例えば、スペクトル3に示す−ω1,−ω2,…,−ωNの周波数成分を搬送光ECから除去し、その光を光−電気変換することによってデータ信号を得る方法が考えられる。この方法では、ω1,ω2,…,ωNの電力を減衰しないように−ω1,−ω2,…,−ωNの電力を十分に減衰する、高性能な箱形の波長特性を有する光フィルタを要する。
【0023】
これに対し、図1の光受信装置では、分散媒質1を透過させた搬送光ECからデータ信号を抽出する。この場合、後述するが、抽出部2は、搬送光ECにローカル光を合波したり、搬送光ECを光フィルタに通したりしなくても、搬送光ECに多重されたデータ信号を得ることができる。すなわち、図1の光受信装置は、高精度の波長制御を要することなくデータ信号を得ることができる。
【0024】
このように、光受信装置は、データ信号によって変調されたサブキャリア変調信号に基づいて位相変調された搬送光ECを分散媒質1に入力する。そして、光受信装置は、分散媒質1から出力される光から、搬送光ECに多重されたデータを抽出するようにした。これにより、光受信装置は、高精度の波長制御を要することなくデータ信号を得ることができる。
【0025】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図2は、第2の実施の形態に係る光ネットワークシステムを示した図である。図2に示すように、光ネットワークシステムは、光多重装置11〜13、光受信装置21、および伝送路31を有している。伝送路31は、例えば、光ファイバである。伝送路31には、搬送光ECが伝搬している。
【0026】
搬送光ECは、CW(Continuous Wave)光である。または、搬送光ECは、ベースバンド変調された信号光である。ベースバンド変調された信号光のビットレートは、以下で説明する光サブキャリア変調信号の周波数(光強度の周波数)に比べ十分低いものとする。図2では、光多重装置11〜13は、3台しか示していないが、N台存在しているとする。
【0027】
図3は、光ネットワークの動作を説明する図である。図3において図2と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
光多重装置11〜13は、伝送路31で伝送するデータ信号を、搬送光ECに周波数分割多重する。図3に示すD1〜DNは、光多重装置11〜13によって搬送光ECに多重されるデータ信号を示している。例えば、データ信号D1は、光多重装置11によって、搬送光ECに多重される。データ信号D2は、光多重装置12によって、搬送光ECに多重される。同様に、データ信号DNは、光多重装置13によって、搬送光ECに多重される。
【0028】
光多重装置11〜13は、異なるサブキャリア周波数ω1〜ωNのサブキャリア信号を、データ信号D1〜DNで変調する。例えば、光多重装置11は、サブキャリア周波数ω1のサブキャリア信号を、データ信号D1で変調する。光多重装置12は、サブキャリア周波数ω2のサブキャリア信号を、データ信号D2で変調する。同様にして、光多重装置13は、サブキャリア周波数ωNのサブキャリア信号を、データ信号DNで変調する。
【0029】
図3に示すma1、ma2、およびmaNは、データ信号D1〜DNで変調されたサブキャリア信号の振幅変調成分を示している。mP1、mP2、およびmPNは、データ信号D1〜DNで変調されたサブキャリア信号の位相変調成分を示している。
【0030】
図3には、データ信号D1〜DNで変調されたサブキャリア信号(サブキャリア変調信号)のスペクトル41〜43が示してある。スペクトル41は、データ信号D1で変調された、サブキャリア周波数ω1のサブキャリア変調信号のスペクトルを示している。スペクトル42は、データ信号D2で変調された、サブキャリア周波数ω2のサブキャリア変調信号のスペクトルを示している。スペクトル43は、データ信号DNで変調された、サブキャリア周波数ωNのサブキャリア変調信号のスペクトルを示している。横軸は周波数を示し、縦軸はパワーを示す。
【0031】
図3には、伝送路31を伝搬している搬送光ECのスペクトル51〜54が示してある。スペクトル51は、光多重装置11に入力される搬送光ECのスペクトルを示している。スペクトル52は、光多重装置11から出力される搬送光ECのスペクトルを示している。スペクトル53は、光多重装置12から出力される搬送光ECのスペクトルを示している。スペクトル54は、光多重装置13から出力される搬送光ECのスペクトルを示している。横軸は周波数を示し、縦軸はパワーを示す。ωCは、搬送光ECの光周波数を示す。
【0032】
光多重装置11〜13は、伝送路31を伝搬する搬送光ECにデータ信号D1〜DNを多重する。以下で詳細に説明するが、光多重装置11〜13のそれぞれは、データ信号D1〜DNで変調したサブキャリア変調信号に応じた光強度を有する光サブキャリア変調信号を生成し、伝送路31を伝搬している搬送光ECに合波する。光サブキャリア変調信号が合波された搬送光ECは、伝送路31中に設けられている非線形光学媒質によって位相変調され、データ信号D1〜DNが多重される。
【0033】
例えば、光多重装置11には、スペクトル51に示すように、光周波数ωCの搬送光ECが入力される。光多重装置11は、スペクトル52に示すように、データ信号D1で変調したサブキャリア周波数ω1のサブキャリア変調信号を搬送光ECに多重する。光多重装置12は、スペクトル53に示すように、データ信号D2で変調したサブキャリア周波数ω2のサブキャリア変調信号を搬送光ECに多重する。光多重装置13は、スペクトル54に示すように、データ信号DNで変調したサブキャリア周波数ωNのサブキャリア変調信号を搬送光ECに多重する。
【0034】
光受信装置21は、伝送路31を伝搬した搬送光ECを受信する。光受信装置21は、受信した搬送光ECを分散媒質に透過させ、分散媒質を透過した搬送光ECからデータ信号D1〜DNを抽出する。
【0035】
光受信装置21を説明する前に、光多重装置11〜13を説明する。次いで、光ヘテロダイン検波によってデータ信号を得る方式、光フィルタによってデータ信号を得る方式、および波長分波器によってデータ信号を得る方式について説明する。その後、光受信装置21について説明する。
【0036】
図4は、光多重装置のブロック例を示した図である。図4に示すように、光多重装置11は、発振器61、乗算器62、光変調器63、合波器64、および非線形光学媒質65を有している。
【0037】
発振器61は、サブキャリア周波数ω1のサブキャリア信号を出力する。発振器61は、例えば、正弦波のサブキャリア信号を出力する。
乗算器62には、搬送光ECで伝送する(搬送光ECに多重する)データ信号D1と、発振器61から出力されるサブキャリア信号とが入力される。乗算器62は、サブキャリア信号をデータ信号D1によって変調し、サブキャリア変調信号を出力する。
【0038】
光変調器63は、乗算器62から出力されるサブキャリア変調信号の変化に応じた光強度の光サブキャリア変調信号を出力する。光変調器63は、例えば、LD(Laser Diode)である。
【0039】
合波器64は、伝送路31を伝搬している搬送光ECに、光変調器63から出力される光サブキャリア変調信号を合波する。合波器64は、例えば、光カプラである。光サブキャリア変調信号が合波された搬送光ECは、非線形光学媒質65に入力される。
【0040】
非線形光学媒質65に入力された搬送光ECは、非線形光学媒質65によって、光サブキャリア変調信号により光相互変調され、光サブキャリア変調信号が多重される。これにより、例えば、図3のスペクトル52に示すように、サブキャリア周波数ω1のサブキャリア変調信号が搬送光ECに多重される。
【0041】
非線形光学媒質による光相互変調としては、相互位相変調による光位相変調や光パラメトリック効果による光強度変調などを用いることができる。非線形光学媒質としては、例えば、光ファイバ、周期分極反転ニオブ酸リチウム、半導体光増幅器、シリコン細線導波路等の高屈折率差光導波路を用いることができる。なお、伝送路31の光ファイバを非線形光学媒質65として利用し、搬送光ECを光サブキャリア変調信号により光相互変調してもよい。
【0042】
なお、図4に示す光多重装置11のブロックは一例であり、搬送光ECを位相変調する方式は、図4のブロックに限るものではない。例えば、光多重装置11は、伝送路31を伝搬している搬送光ECを、乗算器62から出力される電気信号のサブキャリア変調信号で電気−光位相変調してもよい。
【0043】
例えば、電気−光位相変調器は、マッハ・ツェンダ変調器(LN(Lithium Niobate)変調器)などの外部変調器である。外部変調器には、伝送路31を伝搬している搬送光ECと、乗算器62から出力されるサブキャリア変調信号とを入力する。外部変調器は、電気信号のサブキャリア変調信号によって、伝送路31を伝搬している搬送光ECを位相変調する。
【0044】
また、図4の光多重装置11は、1つのサブキャリア変調信号を生成するようになっているが、複数のサブキャリア変調信号を生成するようにしてもよい。例えば、光多重装置11は、異なるサブキャリア周波数のサブキャリア信号を出力する発振器を複数備える。光多重装置11は、複数の乗算器で、複数の発振器から出力されるサブキャリア信号と、異なる複数のデータ信号とを乗算する。光多重装置11は、複数の乗算器から出力されるサブキャリア変調信号を加算し、光変調器63で変調する。
【0045】
また、光変調器63から出力される光サブキャリア変調信号は、搬送光ECと同一の偏波となるように制御して合波器64に出力するようにしてもよい。
光多重装置12,13も図4と同様のブロックを有し、その説明を省略する。
【0046】
光ヘテロダイン検波について説明する。光サブキャリア変調信号によって位相変調された搬送光ECは、次の式(1)のように表すことができる。
【0047】
【数1】

【0048】
ここで、E0は電界振幅、ω0は搬送光ECの光周波数、ωjはサブキャリア変調周波数である。また、maj(t)およびmpj(t)は、データ信号によって変調されたサブキャリア信号の振幅変調成分および位相変調成分(データ変調成分)である。φ0jは初期位相である。
【0049】
jは、正の整数であり、図2に示す光多重装置11〜13に対応する。例えば、図2の左側の光多重装置11から、j=1、j=2、…、j=nとなる。以下では、光サブキャリア変調信号によって位相変調された搬送光ECを、光サブキャリア位相変調信号と呼ぶことがある。
【0050】
式(1)で示される光サブキャリア位相変調信号は、ベッセル関数を用いて周波数成分ω0,ω0+ωj,ω0−ωjの和として次の式(2)のように表すことができる。
【0051】
【数2】

【0052】
ここで、J1は、1次の第一種ベッセル関数であり、majは十分小さいとして0次の第一種ベッセル関数J0=1での2次以降の第一種ベッセル関数を無視する。式(2)で示される光サブキャリア位相変調信号の光電力は、P(t)=|E(t)|2で求められ、次の式(3)で示される。
【0053】
【数3】

【0054】
光サブキャリア位相変調信号をPD(Photo Detector)により強度検波すると、式(3)に示すように、データ変調成分のmajおよびmpjの項が消える。このため、光サブキャリア位相変調信号の全ての周波数成分をPDにより電気信号に変換すると、サブキャリア変調信号を受信することができない。
【0055】
そこで、光サブキャリア位相変調信号にローカル光源ELを合波して、光ヘテロダイン検波することを考える。ローカル光源ELが合波された光サブキャリア位相変調信号は、次の式(4)で示される。
【0056】
【数4】

【0057】
ここで、ELはローカル光源の電界振幅、ωLはローカル光源の光周波数である。
ローカル光源ELが合波された光サブキャリア位相変調信号の光電力は、P(t)=|Ehd(t)|2で求められ、次の式(5)で示される。
【0058】
【数5】

【0059】
式(5)では、データ変調成分のmajおよびmpjの項が残っている。すなわち、光ヘテロダイン検波では、PDによるデータ信号の受信が可能となる。
図5は、光ヘテロダイン検波によってデータ復調する光受信装置のブロック図である。図5に示すように、光受信装置は、光源71、光合波器72、PD73、分配器74、および復調部75〜77を有している。図5では、復調部75〜77は、3個しか示していないが、N個存在しているとする。
【0060】
図5には、光合波器72に入力される搬送光ECのスペクトル81が示してある。また、光合波器72から出力される光のスペクトル82が示してある。また、図5には、PD73から出力される電気信号のスペクトル83が示してある。横軸は周波数を示し、縦軸はパワーを示す。
【0061】
光源71は、光周波数ωLのローカル光を出力する。ローカル光は、CW光である。
光合波器72には、搬送光EC(光サブキャリア位相変調信号)と、光源71から出力されるローカル光とが入力される。光合波器72は、搬送光ECにローカル光を合波する。これにより、光合波器72から出力される光は、スペクトル82に示すように、光周波数ωLにローカル光のスペクトルが立つ。
【0062】
PD73は、光合波器72から出力される光を電気信号に変換する。PD73から出力される電気信号のスペクトルは、スペクトル83に示すようになる。なお、ωjとω’jとの間には、次の式(6)に示す関係がある。
【0063】
ω’j=|ωL−(ωC+ωj)| …(6)
分配器74は、PD73から出力される電気信号を周波数に基づいて分配し、復調部75〜77に出力する。例えば、分配器74は、周波数ω’1の電気信号を復調部75に出力する。また、分配器74は、周波数ω’2の電気信号を復調部76に出力する。同様にして、分配器74は、周波数ω’Nの電気信号を復調部77に出力する。
【0064】
復調部75〜77は、分配器74によって分配された電気信号を復調し、データ信号を得る。
光フィルタによってデータ信号を得る方式について説明する。周波数成分ω0+ωjの光を通過させ、周波数成分ω0−ωjの光を阻止する光フィルタに、光サブキャリア位相変調信号を通過させた場合を考える。この場合、光フィルタから出力される光サブキャリア位相変調信号は、式(2)の第3項を削除した式で表すことができる。この光フィルタを通過させた光サブキャリア位相変調信号の光電力は、次の式(7)で示される。
【0065】
【数6】

【0066】
式(7)には、データ変調成分majおよびmpjの項が残っている。すなわち、光受信装置は、周波数成分ω0+ωjの光を通過させ、周波数成分ω0−ωjの光を阻止する光フィルタに光サブキャリア位相変調信号を通し、PDにより電気信号に変換することによって、データ信号を得ることができる。
【0067】
図6は、光フィルタを備えた光受信装置のブロック図である。図6に示すように、光受信装置は、光フィルタ91、PD92、分配器93、および復調部94〜96を有している。図6では、復調部94〜96は、3個しか示していないが、N個存在しているとする。
【0068】
図6には、光フィルタ91に入力される搬送光ECのスペクトル101が示してある。また、光フィルタ91から出力される光のスペクトル102が示してある。また、PD92から出力される電気信号のスペクトル103が示してある。横軸は周波数を示し、縦軸はパワーを示す。
【0069】
光フィルタ91は、箱形特性のフィルタであり、周波数成分ω0+ωjの光を通過させ、周波数成分ω0−ωjの光を阻止する。従って、光フィルタ91を透過した光サブキャリア位相変調信号のスペクトルは、スペクトル102に示すようになる。
【0070】
PD92は、光フィルタ91を通過した光サブキャリア位相変調信号を電気信号に変換する。PD73から出力される電気信号のスペクトルは、スペクトル103に示すようになる。
【0071】
分配器93は、PD92から出力される電気信号を周波数に基づいて分配し、復調部94〜96に出力する。例えば、分配器93は、サブキャリア周波数ω1の電気信号を復調部94に出力する。また、分配器93は、サブキャリア周波数ω2の電気信号を復調部95に出力する。同様にして、分配器93は、サブキャリア周波数ωNの電気信号を復調部96に出力する。
【0072】
復調部94〜96は、分配器93によって分配された電気信号を復調し、データ信号を得る。
光波長分波器によってデータ信号を得る方式について説明する。光受信装置は、式(2)より、周波数成分ω0+ωjの各jにおける光サブキャリア位相変調信号を抽出して電気信号に変換できれば、データ信号を得ることができる。または、光受信装置は、周波数成分ω0−ωjの各jにおける光サブキャリア位相変調信号を抽出して電気信号に変換できれば、データ信号を得ることができる。
【0073】
図7は、光波長分波器を備えた光受信装置のブロック図である。図7に示すように、光受信装置は、波長分波器111、PD112〜114、および復調部115〜117を有している。図7では、PD111〜114および復調部115〜117は、それぞれ3個しか示していないが、N個存在しているとする。
【0074】
図7には、波長分波器111に入力される搬送光ECのスペクトル121が示してある。横軸は周波数を示し、縦軸はパワーを示す。
波長分波器111は、受信した光サブキャリア位相変調信号を周波数に基づいて分波し、PD112〜114に出力する。例えば、波長分波器111は、分波した光周波数ωC+ω1の光をPD112に出力する。また、波長分波器111は、分波した光周波数ωC+ω2の光をPD113に出力する。同様にして、波長分波器111は、分波した光周波数ωC+ωNの光をPD114に出力する。すなわち、波長分波器111は、光サブキャリア位相変調信号を、スペクトル121に示すスペクトルごとに分波して、PD112〜114に出力する。
【0075】
PD112〜114は、波長分波器111から出力される光を電気信号に変換する。PD112〜114のそれぞれからは、サブキャリア周波数ω1〜ωNのサブキャリア変調信号が出力される。
【0076】
復調部115〜117は、PD112〜114から出力されるサブキャリア変調信号を復調し、データ信号を得る。
図2の光受信装置21について説明する。光受信装置21は、受信した光サブキャリア位相変調信号を分散媒質に透過して光−電気変換し、データ信号D1〜DNを得る。以下、分散媒質が、1.波長分散媒質である場合、2.複屈折媒質である場合、3.遅延干渉計または多モード導波路である場合について説明する。
【0077】
1.波長分散媒質
光受信装置21は、波長分散媒質を用いることで、光サブキャリア位相変調信号のデータ変調成分を光電力成分として抽出することができる。伝搬定数β、長さLの波長分散媒質透過後の光サブキャリア位相変調信号の電界は、次の式(8)で示される。
【0078】
【数7】

【0079】
βは、上記したように波長分散媒質の伝搬定数であり、光周波数ω0付近のテイラー級数展開は次の式(9)で示される。
【0080】
【数8】

【0081】
ここで、式(9)のβm(m:正の整数)は、次の式(10)で示される。
【0082】
【数9】

【0083】
よって、式(2)の各項は、それぞれ異なる群遅延が与えられ、式(11)で示すようになる。
【0084】
【数10】

【0085】
式(11)において2次分散まで(式(9)の第3項まで)を考慮すると、波長分散媒質透過後の光電力は、次の式(12)で示される。
【0086】
【数11】

【0087】
式(12)より、波長分散媒質を透過した光サブキャリア位相変調信号の光電力は、データ変調成分のmajおよびmpjが残ることが分かる。すなわち、波長分散媒質を透過した光サブキャリア位相変調信号の光電力からは、データ信号D1〜DNを得ることができる。
【0088】
データ変調成分のmajおよびmpjは、式(12)より、次の式(13)で示される条件を満たすとき最大となる。
【0089】
【数12】

【0090】
従って、最適な波長分散媒質長は、次の式(14)に示すようになる。
【0091】
【数13】

【0092】
なお、λ0は中心波長(λ0=2πc/ω0)、Dは波長分散(D=2πcβ2/λ02)、cは光速、nは自然数である。
2.複屈折媒質
光受信装置21は、複屈折媒質を用いることで、光サブキャリア位相変調信号のデータ変調成分を光電力成分として抽出することができる。複屈折媒質を透過した光サブキャリア位相変調信号の電界は、次の式(15)で示される。
【0093】
【数14】

【0094】
Pは偏波モード分散パラメータであり、光周波数ω0付近のテイラー級数展開は、次の式(16)で示される。
【0095】
【数15】

【0096】
ここで、式(16)のDPm(m:正の整数)は、次の式(17)で示される。
【0097】
【数16】

【0098】
よって、式(2)の各項は、それぞれ異なる偏波モード分散が与えられ、式(18)に示すようになる。
【0099】
【数17】

【0100】
式(18)において2次の偏波モード分散まで(式(16)の第3項まで)を考慮すると、複屈折分散媒質を透過した光サブキャリア位相変調信号の光電力は、次の式(19)で示される。
【0101】
【数18】

【0102】
式(19)より、複屈折媒質を透過した光サブキャリア位相変調信号の光電力は、データ変調成分のmajおよびmpjが残ることが分かる。すなわち、複屈折媒質を透過した光サブキャリア位相変調信号の光電力からは、データ信号D1〜DNを得ることができる。
【0103】
データ変調成分のmajおよびmpjは、式(19)より、次の式(20)で示される条件を満たすとき最大となる。
【0104】
【数19】

【0105】
従って、最適な複屈折媒質長は、次の式(21)に示すようになる。
【0106】
【数20】

【0107】
なお、nは自然数である。
3.遅延干渉計または多モード導波路
光受信装置21は、遅延干渉計の分岐経路の遅延時間差または多モード導波路のモード分散を利用して、光サブキャリア位相変調信号のデータ変調成分を光電力成分として抽出することができる。遅延干渉計または多モード導波路を透過した光サブキャリア位相変調信号の電界は、次の式(22)で示される。
【0108】
【数21】

【0109】
ここで、Ca,Cbは各経路への分岐係数またはモード結合係数、La,Lbは遅延干渉計の場合の各経路長、βa,βbは多モード導波路の場合の各モードの伝搬定数である。遅延干渉計または多モード導波路を透過した光サブキャリア位相変調信号の光電力は、次の式(23)で示される。
【0110】
【数22】

【0111】
式(23)より、遅延干渉計または多モード導波路を透過した光サブキャリア位相変調信号の光電力は、データ変調成分のmajおよびmpjが残ることが分かる。すなわち、遅延干渉計または多モード導波路を透過した光サブキャリア位相変調信号の光電力からは、データ信号D1〜DNを得ることができる。
【0112】
データ変調成分のmajおよびmpjは、式(23)より、次の式(24a)、式(24b)で示される条件を満たすとき最大となる。
【0113】
【数23】

【0114】
なお、m,nは自然数である。
図5で説明した光ヘテロダイン検波では、光源71の波長(光周波数)を高精度に制御することを要する。また、図6で説明した光フィルタ91は、周波数成分ω0+ωjを減衰することなく通過させ、周波数成分ω0−ωjを十分に阻止する高性能の箱形特性を要する。特に、サブキャリア変調信号のサブキャリア周波数が低い場合、光フィルタ91は、急峻な箱型特性を要する。また、図7で説明した波長分波器111は、他の波長成分を含まないように、所望の波長に分波する高性能の波長分波器であることを要する。
【0115】
これに対し、図2の光受信装置21は、分散媒質を備え、光サブキャリア位相変調信号を透過させる。これにより、光受信装置21は、光サブキャリア位相変調信号の光電力から、データ変調成分majおよびmpjが得られる。すなわち、光受信装置21は、光源や光フィルタ、波長分波器を備えないでデータ信号D1〜DNを得ることができる。つまり、光受信装置21は、高精度の波長制御を行わないで、光サブキャリア位相変調信号を分散媒質に透過させることによって、データ信号D1〜DNを得ることができる。
【0116】
図8は、図2の光受信装置のブロック図である。図8に示すように、光受信装置21は、分散媒質131、PD132、分配器133、および復調部134〜136を有している。図8では、復調部134〜136は、3個しか示していないが、N個存在しているとする。
【0117】
分散媒質131には、伝送路31を伝搬してきた搬送光ECが入力される。搬送光ECは、例えば、光多重装置11〜13から出力される光サブキャリア変調信号によって位相変調され、データ信号D1〜DNが多重されている。
【0118】
分散媒質131は、例えば、光サブキャリア位相変調信号の両側波帯成分に群遅延(位相差)を与える波長分散媒質である。波長分散媒質としては、例えば、光ファイバ、ファイバブラッググレーティング、VIPA(Virtually Imaged Phased Array)などがある。
【0119】
または、分散媒質131は、例えば、入力される光の2つの異なる偏波成分に対して、それぞれ異なる群遅延を与える複屈折媒質である。複屈折媒質としては、例えば、偏波保持ファイバや、光電界分布の円周方向に対して均一でない構造を有する光導波路または複屈折光学結晶がある。
【0120】
または、分散媒質131は、例えば、入力される信号光を2つの経路に分け、それぞれの経路で異なる光遅延時間を与える遅延干渉計である。遅延干渉計としては、例えば、光スプリッタと、2つの異なる経路長を有する光遅延線と、光コンバイナとを有するマッハ・ツェンダ干渉計がある。または、光スプリッタと、非線形光学媒質と、制御光源とを有する非線形ループミラーがある。または、複屈折媒質の偏波主軸から45度ずれた偏波面で複屈折媒質に光を入力することで、2つの偏波モードの遅延時間差を生じさせる遅延干渉計がある。
【0121】
または、分散媒質131は、例えば、入力される光を複数の異なる伝搬モードに変換し、それぞれの伝搬モードに対して異なる群遅延を与える多モード導波路である。多モード導波路としては、例えば、マルチモードファイバや多モード光導波路(PLC(Planar Lightwave Circuit)、高屈折率差導波路)がある。
【0122】
PD132は、分散媒質131から出力される光を電気信号に変換する。なお、分散媒質131に多モード導波路を用いた場合、PD132の前段にモード変換器を設けるようにする。すなわち、光受信装置21は、多モード導波路から出力される光を、モード変換器によって、PD132が受信できる導波モードに変換するようにする。ただし、PD132の径が十分に大きい場合は、モード変換器は不要である。
【0123】
分配器133は、PD132から出力される電気信号をサブキャリア周波数に基づいて分配し、復調部134〜136に出力する。
復調部134〜136は、分配器133によって分配された電気信号(サブキャリア変調信号)を復調し、データ信号D1〜DNを得る。
【0124】
復調部134〜136は、例えば、包絡線検波器、位相検波器、または周波数検波器である。例えば、サブキャリア変調信号が、データ信号D1〜DNによって振幅変調されている場合、復調部134〜136は、包絡線検波器である。また、サブキャリア変調信号が、データ信号D1〜DNによって位相変調されている場合、復調部134〜136は、位相検波器である。また、サブキャリア変調信号が、データ信号D1〜DNによって周波数変調されている場合、復調部134〜136は、周波数検波器である。なお、図4の例の場合、サブキャリア変調信号は、振幅変調される。従って、この場合、復調部134〜136は、包絡線検波器となる。
【0125】
図9は、図8の光受信装置の動作を説明する図である。図9において図8と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
図9には、分散媒質131に入力される搬送光ECのスペクトル141が示してある。また、PD132から出力される電気信号のスペクトル142が示してある。
【0126】
搬送光ECには、スペクトル141に示すように、サブキャリア周波数ω1,ω2,…,ωNのサブキャリア変調信号が多重されている。スペクトル141に示す搬送光ECは、分散媒質131を透過し、PD132によって電気信号に変換される。
【0127】
PD132から出力される電気信号は、スペクトル142に示すように、サブキャリア周波数ω1,ω2,…,ωNを有するサブキャリア変調信号である。分配器133は、サブキャリア周波数ω1,ω2,…,ωNを有するサブキャリア変調信号を、サブキャリア周波数ω1,ω2,…,ωNの成分に分配し、復調部134〜136に出力する。例えば、分配器133は、サブキャリア周波数ω1のサブキャリア変調信号を復調部134に出力する。また、分配器133は、サブキャリア周波数ω2のサブキャリア変調信号を復調部135に出力する。同様にして、分配器133は、サブキャリア周波数ωNのサブキャリア変調信号を復調部136に出力する。
【0128】
復調部134〜136は、分配器133で分配されたサブキャリア変調信号を復調する。例えば、復調部134は、分配器133で分配されたサブキャリア周波数ω1のサブキャリア変調信号から、データ信号D1を復調する。復調部135は、分配器133で分配されたサブキャリア周波数ω2のサブキャリア変調信号から、データ信号D2を復調する。同様にして復調部136は、分配器133で分配されたサブキャリア周波数ωNのサブキャリア変調信号から、データ信号DNを復調する。
【0129】
このように、光受信装置21は、データ信号D1〜DNによって変調されたサブキャリア変調信号に基づいて位相変調された搬送光ECを分散媒質131に入力する。そして、光受信装置21は、分散媒質131から出力される光から、搬送光ECに多重されたデータを抽出するようにした。これにより、光受信装置21は、高精度の波長制御を要することなくデータ信号を得ることができる。
【0130】
なお、上記では、光受信装置21が分散媒質131を有するようにしたが、伝送路31中に設けてもよい。光受信装置21は、分散媒質131で適切に分散された搬送光ECを受信できれば、データ信号D1〜DNを抽出できるからである。すなわち、分散媒質131は、伝送路31中および光受信装置21の一方または両方に設けてもよい。
【0131】
また、搬送光ECがベースバンド変調されている場合、光サブキャリア変調信号の周波数は、ベースバンド変調された搬送光ECのビットレートより十分大きくなるように設定する。これにより、ベースバンド変調された搬送光ECの分散媒質131による分散の影響は、小さくすることができる。
【0132】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。第3の実施の形態では、PDによって光−電気変換された電気信号のパワー(電力)をモニタし、モニタしたパワーに基づいて分散媒質を制御する。
【0133】
図10は、第3の実施の形態に係る光受信装置のブロック図である。図10において図8と同じものには同じ符号を付し、その説明を省略する。図10の光受信装置21は、図8の光受信装置21に対し、フィルタ151、モニタ部152、および制御部153を有している。
【0134】
フィルタ151には、分配器133から出力されるサブキャリア周波数ω1〜ωNのサブキャリア変調信号が入力される。フィルタ151は、1または複数の特定のサブキャリア周波数成分のサブキャリア変調信号を通過させ、モニタ部152に出力する。なお、フィルタ151は、全サブキャリア周波数成分のサブキャリア変調信号を通過させてもよい。
【0135】
モニタ部152は、フィルタ151から出力されるサブキャリア変調信号のパワーをモニタする。
制御部153は、モニタ部152のモニタ結果に基づいて、分散媒質131の分散特性を制御する。例えば、制御部153は、モニタ部152でモニタされるパワーが最大となるように分散媒質131の分散特性を制御する。具体的には、制御部153は、波長分散媒質の伝搬定数βや複屈折媒質の偏波モード分散パラメータDp、遅延干渉計の遅延時間を制御することによって、モニタ部152でモニタされるパワーが最大となるように制御する。
【0136】
このように、光受信装置21は、PD132から出力される電気信号のパワーに基づいて、分散媒質131の分散特性を制御するようにした。これにより、光受信装置21は、データ信号D1〜DNの受信感度を高めることができる。
【0137】
なお、フィルタ151には、PD132から出力される電気信号を入力するようにしてもよい。
図11は、光受信装置と同様に分散媒質を用いた光アップコンバージョン装置のブロック図である。図11の光アップコンバート装置は、ビート光源161、合波器162、非線形光学媒質163、および分散媒質164を有している。分散媒質164は、光フィルタであってもよい。
【0138】
ビート光源161は、周波数間隔ωの二つ以上の光を出力する。
合波器162は、図示しない光送信装置より入力される信号光ESとビート光源161から出力される光ビート信号を合波する。光ビート信号が合波された信号光ESは、非線形光学媒質163に入力される。
【0139】
非線形光学媒質163に入力された信号光ESは、非線形光学媒質163によって、光ビート信号により光相互変調され、周波数ωで位相変調される。周波数ωで位相変調された信号光は、光フィルタまたは分散媒質164に入力される。
【0140】
また、非線形光学媒質163による光相互変調は、電気−光位相変調器による周波数ωの発振器で電気−光位相変調してもよい。
光フィルタまたは分散媒質164に入力された、信号光ESは周波数ωで強度変調された光アップコンバート信号ESUに変換される。
【0141】
図12は、図11の光アップコンバージョン装置を用いたチャープレス信号発生装置のブロック図である。図12のチャープレス信号発生装置は、周波数チャープを有する信号光から周波数チャープのない信号光を発生し、光アップコンバータ171、CW光源172、合波器173、および非線形光学媒質174を有している。
【0142】
信号光ESは周波数ωの光アップコンバータ171により光アップコンバート信号ESUに変換される。
CW光源172は、光アップコンバート信号ESUと異なる波長のCW光を出力する。
【0143】
合波器173は、CW光源172から出力されるCW光と光アップコンバータ171から出力される光アップコンバート信号ESUとを合波する。光アップコンバート信号ESUが合波されたCW光ESは、非線形光学媒質174に入力される。
【0144】
非線形光学媒質174に入力されたCW光は、非線形光学媒質174によって、光アップコンバート信号ESUにより光相互変調され、周波数ωの光サブキャリア変調信号ES’となる。ここで、信号光のもつ周波数チャープは非線形光学媒質174による光相互変調に関与しないため、光サブキャリア変調信号ES’は周波数チャープを有しない。
【符号の説明】
【0145】
1 分散媒質
2 抽出部
3 スペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ信号によって変調されたサブキャリア変調信号に基づいて位相変調された搬送光が入力される分散媒質と、
前記分散媒質から出力される光から前記データ信号を抽出する抽出部と、
を有することを特徴とする光受信装置。
【請求項2】
前記抽出部は、
前記分散媒質から出力される光を電気信号に変換する変換部と、
前記変換部から出力される前記電気信号をサブキャリア周波数に分配する分配器と、
前記分配器によってサブキャリア周波数に分配された前記電気信号を復調する復調部と、
を有することを特徴とする請求項1記載の光受信装置。
【請求項3】
前記変換部から出力される前記電気信号の電力に基づいて、前記分散媒質の分散特性を制御する制御部をさらに有することを特徴とする請求項2記載の光受信装置。
【請求項4】
前記分散媒質は、波長分散媒質、複屈折媒質、多モード導波路、および遅延干渉計のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光受信装置。
【請求項5】
前記搬送光は、前記サブキャリア変調信号によって光変調された光サブキャリア変調信号が合波され、伝送路中の非線形光学媒質によって位相変調されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光受信装置。
【請求項6】
前記搬送光は、外部変調器に入力され、電気信号の前記サブキャリア変調信号によって位相変調されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光受信装置。
【請求項7】
搬送光が伝搬する伝送路と、
データ信号によって変調されたサブキャリア変調信号に基づいて前記搬送光を位相変調する光多重装置と、
位相変調された前記搬送光を受信し、前記データ信号を抽出する光受信装置と、
を備え、
位相変調された前記搬送光を入力して出力する分散媒質が、前記伝送路中および前記光受信装置の一方または両方に設けられることを特徴とする光ネットワークシステム。
【請求項8】
ベースバンド変調された信号光を、非線形光学媒質によって、光ビートにより光相互変調し、分散媒質に入力することで、光アップコンバート信号に変換することを特徴とする光アップコンバージョン装置。
【請求項9】
周波数チャープを有する信号光を、光アップコンバージョン装置によって光アップコンバート信号に変換し、CW光を光アップコンバート信号により光相互変調することにより周波数チャープのない信号光を発生することを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−78093(P2013−78093A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218397(P2011−218397)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】