説明

光回折層を有するスレッド、及びそれを用いた偽造防止用紙

【課題】
直接スレッドへの情報が印字ができ、意匠性がよく、より偽造防止性に優れる光回折層を有するスレッド、及びそれを用いた偽造防止用紙を提供する。
【解決手段】
基材11、光回折層13及び反射層15からなり、前記反射層15が放電破壊印字層を兼ねることを特徴とし、該光回折層を有するスレッドを基紙21の少なくとも一方の面の表面に抄き込み、また抄き込みが用紙の流れ方向に間欠的に厚みを薄くして形成した窓開き部にスレッドが露出している窓開きスレッドであり、また、上記スレッドの放電破壊印字層に可変情報が印字されていることも特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止用紙に関し、さらに詳しくは、可変情報を印字でき、意匠性がよく、偽造防止性により優れる光回折層を有するスレッド、及びそれを用いた偽造防止用紙に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。
【背景技術】
【0003】
(主なる用途)本発明の光回折層を有するスレッドを用いた偽造防止用紙の主なる用途としては、例えば、紙幣、株券、証券、証書、商品券、小切手、手形、入場券、通帳類、ギフト券、乗車券、車馬券、印紙、切手、鑑賞券、入場証、通行証、チケット等の金券類、キャッシュカード、クレジットカード、IDカード、プリペイドカード、メンバーズカード、ICカード、光カードなどのカード類、グリーティングカード、ハガキ、名刺、運転免許証、パスポート等の各種証明書やその証明写真類、カートン、ケース、軟包装材などの包装材類、バッグ類、帳票類、封筒、タグ、パスポート、化粧品、腕時計、ライター等のブランド装身具などで、可変情報を印字でき、より偽造防止性に優れるものである。
しかしながら、可変情報を印字でき、より偽造防止性に優れる用途であれば、特に限定されるものではない。
【0004】
(背景技術)近年、紙幣、商品券、株券、小切手、手形等の有価証券、ギフト券、入場証、通行証、サービスポイントなどの、一定の金額を払い込んだ(プリペイドという)権利などを証明する媒体、パスポート、身分証明書などの資格を証明する媒体が増加している。該媒体は一定の経済的価値や効果を持つため、不正に偽造、変造、不正使用することが絶えない。特に、カラーコピー機の精度向上が著しく、各種の媒体類の偽造を容易にしている。そのほかにも、偽造による被害を防止する必要がある製品分野において使用される用紙がある。これらの偽造を防止するため各種の偽造防止手段が施されている。用紙の偽造防止対策に関わる公知技術として、スレッドを抄き込んだいわゆる糸(スレッド)入り紙と称する偽造防止用紙がある。また、このようなスレッドの形態としては、金糸、銀糸、プラスチックフィルム、金属蒸着フィルムが使用され、特に複製による偽造が困難な材料として、回折格子またはホログラムのような光回折層を有する光学的部材が使用されてきた。しかしながら、近年、ホログラムでも巧妙な偽造品が出現してきている。
光回折層を有するスレッド、及びそれを用いた偽造防止用紙は、更なる偽造防止機能を付与することが求められている。
【0005】
(先行技術)従来、スレッドが抄き込まれた偽造防止用紙として、ポリエステルフィルム等に金属蒸着薄膜や、ホログラム層を積層して構成されたスレッドが、窓開き部に露出しているスレッド入り紙からなる偽造防止用紙が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、例えば、領収書、請求書、又は証明書等のように、個人毎に異なる個人情報や個別の番号等の可変情報を設けることがある。該可変情報の印刷(印字)は可能であるが、基紙面への印字であり、直接スレッドへの印字ができないという問題点がある。
【0006】
【特許文献1】特開平10−226996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、直接スレッドへの印字ができ、意匠性がよく、より偽造防止性に優れる光回折層を有するスレッド、及びそれを用いた偽造防止用紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係わる光回折層を有するスレッドは、基材と、該基材の一方の面に、少なくとも光回折層及び反射層からなる光回折層を有するスレッドにおいて、前記反射層が放電破壊印字層を兼ねるように、したものである。
請求項2の発明に係わる光回折層を有するスレッドを用いた偽造防止用紙は、請求項1に記載の光回折層を有するスレッドを用いて、該光回折層を有するスレッドを基紙の少なくとも一方の面の表面に抄き込んだように、したものである。
請求項3の発明に係わる光回折層を有するスレッドを用いた偽造防止用紙は、上記抄き込みが用紙の流れ方向に間欠的に厚みを薄くして形成した窓開き部にスレッドが露出している窓開きスレッドであるように、したものである。
請求項4の発明に係わる光回折層を有するスレッドを用いた偽造防止用紙は、上記スレッドの放電破壊印字層に可変情報が印字されているように、したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の本発明によれば、可変情報を印字でき、より偽造防止性に優れる光回折層を有するスレッドが提供される。
請求項2の本発明によれば、可変情報を印字でき、より偽造防止性に優れる光回折層を有するスレッドを基紙に抄き込んだ偽造防止用紙が提供される。
請求項3の本発明によれば、可変情報が印字でき、より偽造防止性に優れる偽造防止用紙が提供される。
請求項4の本発明によれば、可変情報が印字された、より偽造防止性に優れる偽造防止用紙が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示す偽造防止用紙の平面図及び断面図である。
図2は、本発明の1実施例を示すスレッドの断面図である。
図3は、スレッドへの印字を説明する要部の拡大平面図である。
図4は、放電破壊印字を説明する要部の断面図である。
【0011】
本発明の偽造防止用紙20は、図1(A)の平面図に示すように、基紙21にスレッド10が抄き込まれ、該スレッド10は、図1(B)のAA断面図、図1(C)のBB断面図に示すように、複数の紙層からなる基紙21へ抄き込まれ、少なくとも1部が露出している。また、スレッド10は、図2に示すように、基材11、光回折層13及び反射層15からなり、反射層15は放電破壊印字層を兼ね、必要に応じて保護層17を設けてもよい。ている。
【0012】
(偽造防止用紙)本発明の偽造防止用紙20は、図1(A)の平面図に示すように、表面及び/又は裏面に必要に応じて印刷部31を設けてもよい。抄き込まれたスレッド10は、図1(B)のAA断面図、図1(C)のBB断面図に示すように、複数の紙層からなる基紙21へ抄き込まれ、該抄き込みが用紙の流れ方向に間欠的に厚みを薄くして形成した窓開き部にスレッドが露出している窓開きスレッドを図示しているが、スレッドの全部が表面にあってもよく、また、表面の紙層が薄ければ埋まっていてもよい。また、抄き込むスレッド10は、1本でも複数本でもよい。
【0013】
(基紙)本発明の偽造防止用紙の基紙21としては、表面平滑性および耐熱性に優れ、適当な強度、厚さを有するものであれば、特に制限はないが、上質紙等の洋紙、薄手の板紙、カード紙等の紙が適用できる。100〜200g/m2の坪量で、印字、転写適性に優れる上質紙、コート紙が好ましい。
【0014】
(抄紙)基紙21へ、スレッドを抄き込んで製造する。即ち、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファィトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の木材パルプや麻、綿、藁を原料とした非木材パルプ等を適宜混合して叩解し、これに填料、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、消泡剤、染料、着色顔料、蛍光剤などを適宜添加し、通常フリーネス400〜250mlC.S.F.に調整した紙料を調製する。該紙料へ、狭い幅のスレッドを繰り出しながら、長網抄紙機や円網抄紙機などの公知の抄紙機を使用して抄き込んで製造し、必要に応じてマシンカレンダー、スーパーカレンダー処理をする。前述のように、スレッドは、必要に応じて、基紙中へ埋没、半分埋め込み、表面上でもよく、また、基紙の表面に部分的に露出させた窓開きでもよいが、後述する保護層19面を露出面側とする。
【0015】
(スレッド)本発明のスレッド10は、図2に示すように、基材11、光回折層13、反射層15からなる。該反射層15は放電破壊印字層を兼ねる。また、必要に応じて反射層15面へ保護層17を設けてもよく、必要に応じて他の層を層間及び/又は表裏面に設けてもよい。スレッド10は、幅が0.3〜30mm程度、好ましくは1〜10mmの幅のごく狭い糸状とも見えるテープ状の装飾片を意味し、基本的には紙層どうしが積層された間に適当な間隔で挿入される。そこで、本発明では、反射層15を放電破壊印字層と兼ねることで、光回折層13の回折効果による偽造防止性があり、さらに、回折効果面へ放電破壊印字手法で、可変情報をリアルタイムに印字できる。このために、1枚毎にユニークな偽造防止用紙とすることで、更なる偽造防止効果を付与することができる。
【0016】
(基材)基材11としては、導電性が低く、製造及び抄紙に耐える機械的強度、耐熱性などがあれば、用途に応じて種々の材料が適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリメチルメタアクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリカーボネート、スチレン系樹脂、セルローストリアセテートなどのセルロース系フィルム、などがある。該基材11は、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイでを含む)、若しくは複数層からなる積層体であってもよく、延伸フィルムでも、未延伸フィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。
【0017】
該基材11の厚さは、通常、2.5〜100μm程度が適用できるが、4〜50μmが好適で、6〜25μmが最適である。この範囲を超える厚さでは、抄き込み性が悪く、コストも高く、また、この範囲未満では、機械的強度が不足し切断などが発生して、作業性が低下する。該基材11は、塗布に先立って塗布面へ、コロナ放電処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理などの易接着処理を行ってもよい。また、該フィルムは、必要に応じて、充填剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。該基材11は、これら樹脂の少なくとも1層からなるフィルム、シート、ボード状として使用する。通常は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系のフィルムが、強度、耐熱性、価格面でバランスがよく、好適に使用され、特にポリエチレンテレフタレートが最適である。
【0018】
(光回折層)基材11の一方の面へ光回折層13を設ける。該光回折層13としては、無色または着色された透明または半透明なもので、単層であっても多層状であってもよく、凹凸を注型や型押しで再現できる熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、あるいは、光回折パターン情報に応じて硬化部と未硬化部とを成形することができる感光性樹脂組成物が利用できる。具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル、アクリル(ポリメチルメタクリレート)、ポリスチレン、またはポリカーボネート等の熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、またはトリアジン系アクリレート等の熱硬化性樹脂であり、それぞれの単独、熱可塑性樹脂どうし、または熱硬化性樹脂同志の混合、もしくは熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の混合等であってもよい。ラジカル重合性不飽和基を有し、熱成形性を有するものや、ラジカル重合性不飽和モノマーを添加した電離放射線硬化性樹脂組成物も利用できる。電離放射線硬化樹脂としては、例えば、エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル等が適用でき、好ましくはウレタン変性アクリレート樹脂である。
【0019】
(光回折層の形成)光回折層13の形成は、上述したそれぞれの材料を溶剤に溶解または分散させて、適宜添加剤を添加するなどした組成物を、グラビア印刷やスクリーン印刷などの印刷法、ロールート、グラビアコート、又はバーコートなどのコーティング法で、少なくとも1部に塗布し乾燥して、塗膜を形成すれば良い。また、電離放射線で架橋する硬化性樹脂は、そのままの無溶剤、または溶剤へ分散若しくは溶解した組成物を、上記の印刷またはコーティング法で、少なくとも1部に塗布し、必要に応じて乾燥し、後述するように表面凹凸パターン(光回折パターン)を複製(エンボスともいう)した後に、電離放射線を照射して硬化して形成する。乾燥後の厚さとしては、0.1μm〜10μm程度である。
【0020】
(光回折=凹凸パターン)光回折層13は、2次元または3次元画像を再生可能な表面凹凸パターン(光回折パターン)が形成されたものである。この表面凹凸パターンとしては、物体光と参照光との光の干渉による干渉縞の光の強度分布が凹凸模様で記録されたホログラムや回折格子が適用できる。ホログラムとしては、フレネルホログラム、フラウンホーファーホログラム、レンズレスフーリエ変換ホログラム、イメージホログラム等のレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータホログラム、ホログラムディスプレイ、マルチプレックスホログラム、ホログラフィックステレオグラム、ホログラフィック回折格子、電子線直接描画等の描画的に形成された回折格子などがある。
【0021】
(回折格子)回折格子としては、ホログラム記録手段を利用したホログラフィック回折格子があげられ、その他、電子線描画装置等を用いて描画的に回折格子を作成することにより、計算に基づいて任意の回折光が得られる回折格子をあげることもできる。これらのホログラム、回折格子は、単一若しくは多重に記録しても、組み合わせて記録しても良い。
【0022】
(凹凸パターンの複製)ホログラムおよび/または回折格子を記録する表面凹凸パターン(光回折パターン)は、光回折層13の反射層の側に設ける。光回折パターンを複製する際には、マスターそのものも使用できるが、摩耗や損傷の恐れがあるため、アナログレコード等におけるのと同様、マスターに金属メッキまたは紫外線硬化樹脂を塗布し、紫外線を照射して硬化させて剥がす等の方法により、金属または樹脂による複製を行ない、複製された型を使用して商業的複製を行なう。なお、図2では、光回折層13の光回折構造(凹凸パターン)を作図の都合上、波形を示しているが、光の干渉による干渉縞では正弦波状、電子線直接描画では矩形状波、などの形状を呈するが、光回折機能があればいずれの形状でもよい。
【0023】
(大量複製)商業的複製の方法は、金型または樹脂型を利用し、熱可塑性の合成樹脂、又は常温で固体状の電離放射線硬化性樹脂を素材として使用し、プレスによりホログラムを複製するか、または、金型または樹脂型面に電離放射線硬化性樹脂などの液状の樹脂を塗布し、紫外線や電子線を照射して硬化させる。この商業的な複製は、長尺状で行うことで連続な複製作業ができて、ホログラムを一方の表面に有する光回折層13が得られる。
【0024】
(反射層)反射層15としては、放電破壊印字層を兼ねるものであり、そのための構成材料としては、単体金属、合金あるいは化合物の薄膜が使用できる。放電破壊印字層として記録を行う場合、放電現象を利用して記録部位を破壊して下地が見えることで観察できる。具体的には、Al、Cr、Cu、Ni、Sn、Zn、Te、In、Bi、Pb、Co、Ag、Mg、Sb、Cd、Se、Ga、Rbなどの金属およびその酸化物、窒化物などの化合物、あるいはこれらの金属の合金からなる。上記金属成分の内、特にAl、Cr、Cu、Ni、Ag、Auなどが好ましく用いられ得る。
【0025】
この放電破壊印字層を兼ねた反射層15は、真空蒸着法、スパッタ法、メッキ法などの方法によって光回折層13面に凹凸に追従するようにして形成することができる。反射層15の膜厚は、10オングストローム〜1μm、さらに好ましくは200〜2000オングストローム程度である。この放電破壊印字層(反射層15)に情報記録を行う場合には、図4に示すように媒体表面にアースローラを接触させて記録ピンによって記録情報に応じた放電を生じさせて放電破壊印字層に放電破壊部位を形成することによって情報記録を行うことができる。上記の放電破壊印字層には、たとえば氏名、有効期限などの個別情報や記録媒体の使用状況に応じた追加情報などの可視情報を簡易かつ迅速に記録することができる。
【0026】
(保護層)必要に応じて設ける保護層19は、スレッド10の物理特性、耐久性を確保するための保護を目的として形成する。好ましくは、反射層15へアンカー層17を設けてから保護層19を設け、アンカー層17は放電破壊印字層(反射層15)と保護層19との接着性を向上させることを目的として設けられるものである。保護層19は薄くかつ表面強度の大きな材料、たとえば紫外線硬化型の合成樹脂被膜によって構成することができる。アンカー層は接着性にすぐれた樹脂、たとえばポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、ポリオレフィン系共重合体などによって構成することができる。
【0027】
上記保護層19およびアンカー層17の厚さは、これら2層の膜厚の合計が2μm以下になるように調整することが望ましい。放電破壊印字層(反射層15)上に形成されるこれらの膜厚の合計が2μmを超えると放電破壊印字層への印字特性はいきおい低下する。以上のようにして、基材11/光回折層13/反射層15(放電破壊印字層)/必要に応じてアンカー層17/必要に応じて保護層19からなる、本発明のスレッド10が得られる。
【0028】
(印字)該スレッド10は、例えば、基材の一方の面に、少なくともホログラムなどの光回折機能を有する光回折層13、反射層15(放電破壊印字層)が順に積層されたものであって、放電破壊型プリンタを用いて、たとえば氏名、有効期限などの個別情報や記録媒体の使用状況に応じた追加情報などの可視情報を簡易かつ迅速に記録することができる。放電破壊印字層(反射層15)に情報記録を行う場合には、図4の放電破壊プリンタの要部の断面図のように、媒体表面にアースローラ33を接触させて記録ピン31によって記録情報に応じた放電を生じさせて、放電破壊印字層に放電破壊部位35を形成することによって情報記録を行うことができる。情報記録は、図3のように、印字前はホログラムのみが観察できるが、印字語は放電破壊印字した「DNP」の繰返し文字が観察でき、文字部分以外にはホログラムが観察できる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)まず、基材11として、厚さ12μmのルミラーFタイプ(東レ社製、ポリエステルフィルム商品名)を用いた。この一方の面へ、ホロニスD(ザ・インクテック社製、紫外線硬化樹脂商品名)を固形分25質量%となるように溶剤で稀釈して、リバースロールコーティング法で、乾燥後の厚さが1μmになるように塗布し乾燥して、光回折層13を形成した。
該光回折層13面へ、スタンパを加圧(エンボス)してレリーフを賦形する。別途レーザー光を用いて作ったマスターホログラムから、2P法で複製したスタンパを複製装置のエンポスローラーに貼着して、150℃で相対するローラーと間で加熱プレス(エンボス)して、微細な凹凸パターンからなるレリーフを賦形させた。賦形後直ちに、高圧水銀灯で波長が200〜400nmの紫外線を照射して硬化させた。
該光回折層13面へ、厚さが400オングストロームになるように真空蒸着法でAlを成膜して反射層15(兼放電破壊印字層)とした。
該反射層15(兼放電破壊印字層)面へ、下記組成の塗料をグラビアコート法によって形成し、厚さ0.5μmのアンカー層を形成した。
<塗料>
・ポリエステル樹脂 10質量部
・塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体 10質量部
・トルエン:メチルエチルケトン=1:1 100質量部
・イソシアネート硬化剤 5質量部
該アンカー層面へ、下記組成の塗料をグラビアコート法によって形成し、厚さ1μmの保護層を形成した。
<塗料>
・ポリビニルブチラール樹脂 10質量部
・ウレタン樹脂 10質量部
・テトラフルオロエチレンパウダー 10質量部
・酢酸エチル:トルエン:メチルエチルケトン=1:1:1 90質量部
このようにして、基材11/光回折層13/反射層15(兼放電破壊印字層)/アンカー層/保護からなる積層体を得た。
該積層体を精密マイクロスリッタ機で幅1.5mmにスリットして、スレッドとした。
該スレッドを紙料へ抄き込む。NBKP20質量部、LBKP80質量部を叩解し、白土10質量部、紙力増強剤0.3質量部、サイズ剤1.0質量部、硫酸バンドを適量加えて、紙料を調製した。該紙料を用いて、2槽式円網抄紙機で抄紙速度50m/分で2層抄合わせ、一方の紙料層を用紙の流れ方向に間欠的に厚みを薄くして形成した窓開き部として、上記で製造したスレッドを所定の位置に流した。次いで、公知の一般的な方法に従い湿紙を脱水し、ドライヤーで乾燥することで、スレッドは基紙21へ抄き込まれ、偽造防止用紙を製造した。得られた偽造防止用紙は、スレッドの表面が部分的に露出した状態で、窓開きスレッドであった。なお、スレッドは保護層面が表面側になるようにした。
【0031】
(評価)該偽造防止用紙のスレッドには目視でホログラムが観察でき、金属光沢様のキラキラ感があり、カラーコピー機でコピーしたところ、スレッド黒くなり、もちろん光回折槽の画像も再現されず、一見して偽造品と判断できた。さらに、スレッド部分に、放電破壊印字プリンタを用いて、8桁番号を1から1づつ加算した連続番号(可変情報)をした印字したところ、鮮明な連続番号が印字され、番号以外の部分にはホログラムが観察された。該番号を20倍顕微鏡で観察すると、反射層15(兼放電破壊印字層)の番号部分が破壊されて透けており、ホログラムは観察できなかった。番号部分のみが破壊されており、番号を変造することは極めて困難であった。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の1実施例を示す偽造防止用紙の平面図及び断面図である。
【図2】本発明の1実施例を示すスレッドの断面図である。
【図3】スレッドへの印字を説明する要部の拡大平面図である。
【図4】放電破壊印字を説明する要部の断面図である。
【符号の説明】
【0033】
10:スレッド
11:基材
13:光回折層
15:反射層
17:アンカー印刷層
19:保護層
20:偽造防止用紙
21:基紙
31:記録ピン
33:アースローラー
35:放電破壊部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の一方の面に、少なくとも光回折層及び反射層からなる光回折層を有するスレッドにおいて、前記反射層が放電破壊印字層を兼ねることを特徴とする光回折層を有するスレッド。
【請求項2】
請求項1に記載の光回折層を有するスレッドを用いて、該光回折層を有するスレッドを基紙の少なくとも一方の面の表面に抄き込んだことを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項3】
上記抄き込みが用紙の流れ方向に間欠的に厚みを薄くして形成した窓開き部にスレッドが露出している窓開きスレッドであることを特徴とする請求項2に記載の偽造防止用紙。
【請求項4】
上記スレッドの放電破壊印字層に可変情報が印字されていることを特徴とする請求項2〜3のいずれかに記載の偽造防止用紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−284817(P2007−284817A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112879(P2006−112879)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】