光増幅装置およびレーザ加工装置
【課題】初回からレーザパルスを安定して出力することが可能な光増幅装置およびレーザ加工装置を提供する。
【解決手段】レーザ加工装置100は、光増幅ファイバ1と、発光期間にはシード光をパルス状に複数回を発生させるシードLD2と、発光期間の直前の非発光期間には、第1のレベルのパワーを有する励起光を発生させ、発光期間には、第1のレベルより高い第2のレベルのパワーを有する励起光を発生させる励起LD3と、光増幅ファイバ1から出力された出力光パルスのパワーを検出するための受光素子15および波高値検出器16と、制御装置20とを備える。制御装置20は、波高値検出器16の検出値に基づいて、発光期間の間に発生した最初の出力光パルスと最終の出力パルスとの間でパワーが同じになるように、非発光期間における励起光のパワー(ドライバ22のバイアス電流)を制御する。
【解決手段】レーザ加工装置100は、光増幅ファイバ1と、発光期間にはシード光をパルス状に複数回を発生させるシードLD2と、発光期間の直前の非発光期間には、第1のレベルのパワーを有する励起光を発生させ、発光期間には、第1のレベルより高い第2のレベルのパワーを有する励起光を発生させる励起LD3と、光増幅ファイバ1から出力された出力光パルスのパワーを検出するための受光素子15および波高値検出器16と、制御装置20とを備える。制御装置20は、波高値検出器16の検出値に基づいて、発光期間の間に発生した最初の出力光パルスと最終の出力パルスとの間でパワーが同じになるように、非発光期間における励起光のパワー(ドライバ22のバイアス電流)を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光増幅装置およびレーザ加工装置に関し、特に、MOPA(Master Oscillator and Power Amplifier)方式のファイバ増幅器から光パルスを安定的に発生させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工装置においては、レーザ光のパワーが加工品質に影響を与える。このため、レーザ加工装置から発せられるレーザ光のパワーを制御するための技術がこれまでに提案されている。
【0003】
たとえば特開2000−340872号公報(特許文献1)は、希土類元素を含むファイバと、その希土類元素を励起するためのレーザ光源とを備えたレーザ加工装置を開示する。レーザ光源は、連続的に駆動されて低パワーの光を出力する第1の半導体レーザと、パルス駆動されて高パワーの光を出力する第2の半導体レーザとを含む。非発光期間には、第1の半導体レーザからの励起光によって、希土類ドープファイバが予備的励起状態とされる。一方、加工時には、第2の半導体レーザからの励起光によって、希土類ドープファイバが高励起状態とされる。高励起状態の希土類ドープファイバに信号光が入射されることにより、高パワーのレーザ光が希土類ドープファイバから出射される。低パワーのレーザ光によって希土類ドープファイバが予備的に励起され、それによって加工時のパルス出力を安定化することができる。
【0004】
また、たとえば特開2010−10274号公報(特許文献2)は、ファイバレーザ発振器から出力されるレーザパルスの平均パワーおよびピークパワーを測定して、その測定結果をLD(レーザダイオード)駆動回路にフィードバックする構成を開示する。
【0005】
また、たとえば特開2010−171131号公報(特許文献3)には、ファイバレーザに入射される種光を発するレーザ光源が、主照射期間にはパルス光を発し、予備照射期間には実質的な連続光を発することが開示されている。連続光のパワーは、パルス光のピークパワーよりも小さい。さらに、特開2010−171131号公報(特許文献3)には、予備照射期間における励起光のパワーを主照射期間における励起光のパワーよりも低下させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−340872号公報
【特許文献2】特開2010−10274号公報
【特許文献3】特開2010−171131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2000−340872号公報(特許文献1)に開示されたレーザ加工装置はファイバレーザを利用する。ファイバレーザは、(1)パルスの繰り返し周波数、(2)パルス幅、(3)パルスのパワーなどといった、レーザ光に関する各種の条件を、互いに独立に設定することができる。一方、低パワーレーザ光の最適な出力値は、これらの条件に応じて異なりうる。低パワーレーザ光の出力値が適切でない場合には、初回パルスの強度と安定化後のパルスの強度との間に差が生じる。この場合には、加工品質の低下が生じうる。
【0008】
また、特開2010−10274号公報(特許文献2)に開示された方法では、レーザパルスの平均パワーがフィードバック制御に用いられる。このためパルス毎の制御が難しい。
【0009】
また、特開2010−171131号公報(特許文献3)に開示された構成では、主照射期間だけでなく予備照射期間にも光増幅ファイバから増幅光が出射される。予備照射期間に増幅光を光増幅ファイバから出射することで、予備照射期間に光ファイバに蓄積されるエネルギーが大きくなりすぎるのを防止できる。これにより、主照射期間において初回パルスのパワーが過大となることが抑制される。しかしながら、特開2010−171131号公報(特許文献3)は、そのようなパルスのパワーの制御を確実に実行するための構成については具体的に開示していない。
【0010】
本発明の目的は、初回からレーザパルスを安定して出力することが可能な光増幅装置およびレーザ加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある局面に係る光増幅装置は、シード光を励起光によって増幅する光増幅ファイバと、発光期間にはシード光をパルス状に複数回発生させるシード光源と、発光期間の直前の非発光期間には、第1のレベルのパワーを有する励起光を発生させ、発光期間には、第1のレベルより高い第2のレベルのパワーを有する励起光を発生させる励起光源と、光増幅ファイバから出力された出力光パルスのパワーを検出するための検出器と、検出器の検出値に基づいて、発光期間の間に発生した最初の出力光パルスと最終の出力光パルスとの間でパワーが同じになるように、非発光期間における励起光のパワーを制御する制御部とを備える。
【0012】
好ましくは、制御部は、光増幅装置の起動時に、出力光パルスの予め定められた条件ごとに、非発光期間における励起光のパワーを制御して、最初の出力光パルスと最終の出力光パルスとの間でパワーを同じにするための励起光のパワーに関するデータを取得する。光増幅装置は、データを出力光パルスの予め定められた条件と関連付けて記憶する記憶部をさらに備える。
【0013】
好ましくは、光増幅装置の運転時に、制御部は、記憶部に記憶されたデータに基づいて、非発光期間における励起光のパワーを設定する。
【0014】
好ましくは、励起光源は、半導体レーザである。上記データは、半導体レーザのバイアス電流のデータである。出力光パルスの条件が変更された場合、制御部は、変更前の条件に対応するバイアス電流のデータの変動を、変更後の条件に対応するバイアス電流のデータに反映させる。
【0015】
好ましくは、光増幅装置は、出力光パルスを光増幅装置の外部に出力することを防ぐためのシャッタをさらに備える。制御部は、シャッタを閉じた状態で、光増幅装置の起動時におけるデータを取得する。
【0016】
本発明の他の局面に係るレーザ加工装置は、上記のいずれかに記載の光増幅装置を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、初回からレーザパルスを安定して出力することが可能な光増幅装置およびレーザ加工装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係るレーザ加工装置の構成例を示した図である。
【図2】実施の形態1に係るレーザ加工装置によるレーザ発光のタイミング図である。
【図3】図2に示したレーザ発光のタイミングをより詳細に説明した図である。
【図4】予備励起期間における励起光パワーに依存して初回パルスのパワーが変化することを説明した波形図である。
【図5】実施の形態1に従うパルスのパワーの安定化の原理を説明した波形図である。
【図6】パルスのピークパワーを検出するための具体的な構成例を示したブロック図である。
【図7】実施の形態1によるレーザ加工装置の起動時の処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】バイアス電流値の最適値の保存形式を模式的に示した図である。
【図9】実施の形態1によるレーザ加工装置の起動後の処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】繰り返し周波数を高くするとともにパルス群中のパルス数を増やした場合のレーザ出力を示す波形図である。
【図11】繰り返し周波数を低下させるとともにパルス群中のパルス数を減少させた場合のレーザ出力を示す波形図である。
【図12】実施の形態2に係るレーザ加工装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
本明細書では「パルス群」との用語は、ある時間間隔で時間軸上に並べられた複数の光パルスを意味する。ただし、パルス群に含まれる光パルスを明示的に指す場合を除き、本明細書では、パルス群を「パルス」と称する。また、本明細書では、「LD」との用語は、半導体レーザを表す。
【0021】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係るレーザ加工装置の構成例を示した図である。図1を参照して、レーザ加工装置100は、光増幅装置と、その光増幅装置からのレーザ光を走査するためのレーザビーム走査機構14とを含む。光増幅装置は、光増幅ファイバ1と、シードLD2と、励起LD3と、アイソレータ4,6と、コンバイナ5と、エンドキャップ12と、ドライバ21,22と、受光素子15と、波高値検出器16と、シャッタ19と、制御装置20と、入力部25とを備える。
【0022】
光増幅ファイバ1は、光増幅成分である希土類元素が添加されたコア、およびそのコアの周囲に設けられるクラッドを有する。コアに添加される希土類元素の種類は特に限定されず、たとえばEr(エルビウム)、Yb(イッテルビウム)、Nd(ネオジム)などがある。以下では希土類元素はYbであるとして説明する。光増幅ファイバ1は、たとえばコアの周囲に1層のクラッドが設けられたシングルクラッドファイバでもよいし、コアの周囲に2層のクラッドが設けられたダブルクラッドファイバでもよい。
【0023】
シードLD2はシード光を発するレーザ光源である。シード光の波長は、たとえば1000〜1100nmの範囲から選択された波長である。ドライバ21はシードLD2にパルス状の電流を繰り返して印加することにより、シードLD2をパルス駆動する。すなわちシードLD2からはパルス状のシード光が発せられる。
【0024】
シードLD2から出射されるシード光はアイソレータ4を通過する。アイソレータ4は一方向の光のみを透過し、その光と逆方向に入射する光を遮断する機能を実現する。本発明の実施の形態では、アイソレータ4はシードLD2からのシード光を透過させるとともに光増幅ファイバ1からの戻り光を遮断する。これによって光増幅ファイバ1からの戻り光がシードLD2に入射するのを防ぐことができる。シードLD2に光増幅ファイバ1からの戻り光が入射した場合にはシードLD2が損傷するおそれがあるが、アイソレータ4を設けることでこのような問題を防ぐことができる。
【0025】
励起LD3は、光増幅ファイバ1のコアに添加された希土類元素の原子を励起するための励起光を発する励起光源である。希土類元素がYbの場合、励起光の波長はたとえば915±10nmとなる。ドライバ22は、励起LD3を駆動する。
【0026】
コンバイナ5はシードLD2からのシード光と励起LD3からの励起光とを結合して光増幅ファイバ1に入射させる。
【0027】
光増幅ファイバ1、シードLD2、および励起LD3はMOPA(Master Oscillator and Power Amplifier)方式のファイバ増幅器を構成する。光増幅ファイバ1に入射した励起光はコアに含まれる希土類元素の原子に吸収され、原子が励起される。シードLD2からのシード光が光増幅ファイバ1のコアを伝搬すると、励起された原子がシード光により誘導放出を起こすためシード光が増幅される。すなわち光増幅ファイバ1は、シード光を励起光によって増幅する。
【0028】
光増幅ファイバ1がシングルクラッドファイバである場合、シード光および励起光はともにコアに入射する。これに対し、光増幅ファイバ1がダブルクラッドファイバである場合、シード光はコアに入射し、励起光は第1クラッドに入射する。ダブルクラッドファイバの第1クラッドは励起光の導波路として機能する。第1クラッドに入射した励起光が第1クラッドを伝搬する過程で、コアを通過するモードによりコア中の希土類元素が励起される。
【0029】
アイソレータ6は、光増幅ファイバ1によって増幅され、かつ光増幅ファイバ1から出射されたシード光(光パルス)を通過させるとともに光増幅ファイバ1に戻る光を遮断する。アイソレータ6を通過した光パルスは、光ファイバの端面から大気中に出射される。エンドキャップ12は、ピークパワーの高い光パルスが光ファイバから大気中に出射される際に光ファイバの端面と大気との境界面で生じるダメージを防止するために設けられる。
【0030】
ビームスプリッタ13は、エンドキャップ12から出力された光パルスを2つのパルスに分割する。一方のパルスは、加工用のレーザ光としてレーザビーム走査機構14に入力され、他方のパルスはレーザ光のパワーをモニタするために受光素子15に入力される。
【0031】
シャッタ19は、加工用のレーザ光が光増幅装置の外部に出力されることを防ぐために設けられる。シャッタ19は、制御装置20によって開閉される。図1に示されるように、たとえばシャッタ19はビームスプリッタ13とレーザビーム走査機構14との間に配置される。
【0032】
受光素子15は、たとえばフォトダイオードによって構成される。波高値検出器16は、受光素子15からの信号により、光パルスのピークパワー(波高値)を検出する。波高値検出器16によって検出された波高値は、制御装置20に送られる。
【0033】
レーザビーム走査機構14は、レーザ光を二次元方向に走査するためのものである。図示しないが、レーザビーム走査機構14は、たとえばエンドキャップ12からの出射光であるレーザビームの径を所定の大きさに調整するためのコリメータレンズ、および、コリメータレンズを通過後のレーザビームを加工対象物50の表面上で二次元方向に走査するためのガルバノスキャナ、レーザビームを集光するためのfθレンズ等を含んでもよい。加工対象物50の表面上でレーザ光L、すなわちレーザ加工装置100からの出力光が二次元方向に走査されることにより、金属等を素材とする加工対象物50の表面が加工される。たとえば加工対象物50の表面に文字や図形等からなる情報が印字(マーキング)される。
【0034】
制御装置20は、ドライバ21,22およびレーザビーム走査機構14を制御することによりレーザ加工装置100の動作を統括的に制御する。入力部25は、たとえばユーザからの情報を受付ける。制御装置20は、入力部25からの情報に基づいて、ドライバ21,22を制御するとともに、レーザビーム走査機構14の動作を制御する。
【0035】
制御装置20は、たとえば所定のプログラムを実行するパーソナルコンピュータにより実現される。入力部25はユーザが情報を入力することができる装置であれば特に限定されず、たとえばマウス、キーボード、タッチパネル等を用いることができる。
【0036】
シードLD、励起LD、アイソレータ等の特性は温度により変化し得る。したがって、これらの素子の温度を一定に保つための温度コントローラをレーザ加工装置に備えることがより好ましい。
【0037】
レーザ加工装置100からレーザ光を出力させる場合において、シードLD2はドライバ21によって駆動されることにより、パルス状のシード光を発生させる。シード光をシードLD2から繰り返し発生させる場合、シード光の繰返し周波数は、ドライバ21からシードLD2に供給されるパルス電流の繰り返し周波数に依存する。ドライバ21から出力されるパルス電流の繰り返し周波数は制御装置20によって制御される。
【0038】
制御装置20はドライバ22を制御することによって励起LD3が発する励起光のパワーを変化させる。励起LD3は、ドライバ22から供給されるバイアス電流に応じたパワーを有する励起光を出力する。ドライバ22から出力されるバイアス電流の大きさは制御装置20によって制御される。
【0039】
図2は、実施の形態1に係るレーザ加工装置によるレーザ発光のタイミング図である。図2を参照して、予備励起期間には、ドライバ22がバイアス電流(図2において励起LD電流と示す)を励起LD3に供給して励起光を発生させるが、シードLD2は、光パルス(図2ではシードLDパルスと示す)を発生させない。一方、本励起期間には、励起光およびシードLDパルスの両方が発生する。したがって本励起期間には、ファイバ増幅器からレーザ光が出力される。
【0040】
予備励起期間における励起LD電流は本励起期間における励起LD電流よりも小さい。すなわち励起LD3は、予備励起期間において第1のレベルのパワーの励起光を発生させ、本励起期間において、第2のレベルのパワーの励起光を発生させる。第2のレベルは第1のレベルよりも高い。
【0041】
図3は、図2に示したレーザ発光のタイミングをより詳細に説明した図である。図3を参照して、シードLD2は、本励起期間に、複数のシード光パルス1aからなるパルス群1Gを周期tprdで繰り返し発生させる。シードLD2のバイアス電流を変調させることによって、パルス群1Gが所定の周期で発生する。本励起期間は、ファイバ増幅器からレーザ光が出力される発光期間に対応する。一方、予備励起期間には、シードLD2にバイアス電流が供給されないため、非発光期間となる。
【0042】
本励起期間の間にファイバ増幅器から出力される複数のパルス群のうち、最初に出力されるパルス群および最後に出力されるパルス群を、以下では「初回パルス」および「最終パルス」とそれぞれ称する。
【0043】
図4は、予備励起期間における励起光パワーに依存して初回パルスのパワーが変化することを説明した波形図である。図4(a)は、予備励起期間における励起光パワーを小さくした場合にファイバ増幅器から出力されたパルスを示した波形図である。図4(b)は、予備励起期間における励起光パワーを大きくした場合にファイバ増幅器から出力されたパルスを示した波形図である。図4(a)および図4(b)を参照して、予備励起期間における励起LD電流が小さい場合には、励起光パワーが小さいため、予備励起期間の間に光増幅ファイバ1に蓄積されるエネルギーが少ない。このため、初回パルスのパワーが小さい。光増幅ファイバ1への励起光パワーの供給と光増幅ファイバ1からの光エネルギーの放出とが繰り返されるうちに、光増幅ファイバ1に蓄積されるエネルギーが増加してほぼ一定のレベルに達する。これにより、パルスのパワーが安定化する。
【0044】
逆に、予備励起期間における励起LD電流が大きい場合には、予備励起期間の間に光ファイバ内に蓄積されたエネルギーが大きくなる。このため、初回パルスのパワーが大きくなる。この場合、光増幅ファイバ1への励起光パワーの供給と光増幅ファイバ1からの光エネルギーの放出とが繰り返されるうちに、光増幅ファイバ1に蓄積されるエネルギーが減少してほぼ一定のレベルに達する。これにより、パルスのパワーが安定化する。
【0045】
図4に示されるように、予備励起期間における励起光のパワー(励起LD電流)が適切でない場合には、初回パルスのパワーと一定時間経過後のパルスのパワーとの間に差が生じる。このようなパワーの差によって加工品質の低下といった問題が発生する。
【0046】
図5は、実施の形態1に従うパルスのパワーの安定化の原理を説明した波形図である。図5を参照して、実施の形態1では、初回パルスのピークパワーと最終パルスのピークパワーとが比較される。それらの比較結果が、予備励起期間の間の励起LDのバイアス電流値にフィードバックされて、初回パルスのパワーと最終パルスのパワーとの差分を0に近づける。これによって、初回パルスから、安定したレーザ出力を得ることができる。図1に示されるように、パルスのピークパワーは受光素子15および波高値検出器16によって検出される。
【0047】
図6は、パルスのピークパワーを検出するための具体的な構成例を示したブロック図である。図6を参照して、波高値検出器16は、電流/電圧変換回路31と、積分回路32と、PGA(Programmable Gain Amplifier)33と、AD変換回路34とを含む。また、制御装置20は、信号処理回路40と、メモリ41とを含む。
【0048】
受光素子15は、光パルスを受光して、その光パルスを電流信号に変換する。電流/電圧変換回路31は、受光素子15から出力される電流を電圧に変換する。積分回路32は、電流/電圧変換回路31の出力電圧を積分する。
【0049】
図3に示すように、この実施の形態では、複数の短パルス(たとえば時間幅がnsのオーダー)からなるパルス群を発生させる。積分回路32は、所定の時定数で複数の短パルスの波形を積分する。これによってパルス群に含まれる短パルスの個数に依存した振幅の変化を低減することができ、1つのパルス群におけるピークパワー(振幅)を得ることができる。
【0050】
PGA33は、積分回路32から出力された信号を増幅する。PGA33のゲインは、信号処理回路40からのゲイン設定信号によって設定される。繰り返し周波数が高くなるほど1つのパルス群におけるピークパワー(振幅)が低下するので、繰り返し周波数に応じてゲインが高くなるようにPGA33のゲインが調整される。さらに、AD変換回路34に入力される信号の振幅がAD変換回路34のダイナミックレンジ内となるように、PGA33のゲインが設定される。
【0051】
AD変換回路34は、たとえば高速AD変換回路によって実現され、PGA33から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。AD変換回路34によるAD変換のタイミングは、信号処理回路40からの制御信号によって制御される。具体的には、レーザ発光の開始から所定の遅延時間が経過した後に、PGA33からの信号がAD変換される。パルス群のパワーのピーク付近においてAD変換回路34がAD変換を行なうように遅延時間が決定される。これにより、パルス群のピークパワー、すなわち波高値が取得される。この遅延時間は、たとえば繰り返し周波数および、積分回路32による信号の積分の時定数などを考慮して決定される。AD変換回路34により取得された波高値は、AD変換回路34から信号処理回路40に送られる。
【0052】
信号処理回路40は、初回パルスと最終パルスとで波高値を比較する。初回パルスの波高値が最終パルスの波高値よりも高い場合、信号処理回路40は、予備励起期間における励起LDのバイアス電流値を低下させるための信号を生成し、予備励起期間に、その信号をドライバ22に与える。逆に、初回パルスの波高値が最終パルスの波高値よりも低い場合、信号処理回路40は、予備励起期間における励起LDのバイアス電流値を上昇させるための信号を生成し、予備励起期間に、その信号をドライバ22に与える。ドライバ22は、信号処理回路40からの信号によって、予備励起期間における励起LD3のバイアス電流値を低下あるいは上昇させる。これにより励起LD3からの励起光のパワーが変化する。
【0053】
メモリ41は、たとえば不揮発性のメモリによって実現され、レーザ条件ごとに励起LD3のバイアス電流値の最適値を保存する。さらに、信号処理回路40による励起LD3のバイアス電流の調整結果に応じて、メモリ41に記憶された最適値が更新される。
【0054】
図7は、実施の形態1によるレーザ加工装置の起動時の処理を説明するためのフローチャートである。図7を参照して、ステップS1において、レーザ加工装置100の電源がオンされる。これにより、制御装置20、ドライバ21,22等の各種の電気回路が起動される。
【0055】
ステップS2において、制御装置20の内部でレーザ発光条件が設定される。たとえば信号処理回路40は、メモリ41に記憶されたテーブルを参照して、デフォルトの条件を設定する。これにより、パルスの繰り返し周波数、予備励起期間および本励起期間における励起LDのバイアス電流値などが決定される。
【0056】
ステップS3において、レーザ発光が行なわれる。具体的には、制御装置20は、ステップS2の処理で設定された条件に従ってドライバ21,22を制御する。ドライバ21,22は、シードLD2および励起LD3をそれぞれ駆動する。これによりシードLD2からのシード光と励起LD3からの励起光とが光増幅ファイバ1に入力されて、光増幅ファイバ1からレーザ光パルスが出力される。
【0057】
光増幅ファイバ1から出力されたレーザ光パルスは、ビームスプリッタ13で分割される。一方のレーザ光パルスは受光素子15に入力され、波高値検出器16によって、その波高値が検出される。なお、シャッタ19は、制御装置20によって閉じられている。したがって、他方のレーザ光パルスは、シャッタ19によってレーザビーム走査機構14へは出射されない。
【0058】
次にステップS4において、制御装置20は、受光素子15および波高値検出器16を介して、初回パルスと最終パルスとを検出する。続いてステップS5において、制御装置20は、初回パルスと最終パルスとでピーク値が同じかどうかを判定する。なお「ピーク値が同じである」との判定基準は、2つのピーク値が一致する場合を含むが、これに限定されない。たとえば、2つのピーク値の比率が予め定められた範囲内にある場合に、「ピーク値が同じである」と判定されてもよい。
【0059】
初回パルスと最終パルスとでピーク値が異なると判定された場合(ステップS5においてNO)、処理はステップS9に進む。ステップS9において、制御装置20(信号処理回路40)は、予備励起期間における励起LD3のバイアス電流を調整する。初回パルスのピーク値が最終パルスのピーク値よりも大きい場合には、制御装置20は、予備励起期間における励起LD3のバイアス電流を低下させる。一方、初回パルスのピーク値が最終パルスのピーク値よりも小さい場合には、制御装置20は、予備励起期間における励起LD3のバイアス電流を増加させる。
【0060】
ステップS9の処理が終了すると、全体の処理はステップS3に戻される。すなわち、初回パルスと最終パルスとでピーク値が同じであると判定されるまで、1つのレーザ条件に対応する励起LD3のバイアス電流が調整される。
【0061】
一方、初回パルスと最終パルスとでピーク値が同じであると判定された場合(ステップS5においてYES)、処理はステップS6に進む。ステップS6において、制御装置20は、設定レーザ条件に対応する励起LD3のバイアス電流値をメモリ41に保存する。これにより、あるレーザ条件に対して、初回パルスと最終パルスとでピーク値を同じにするための励起LD3のバイアス電流値(予備励起期間におけるバイアス電流値)が決定される。
【0062】
続いて制御装置20は、全てのレーザ条件に対して励起LD3のバイアス電流値が求められたかどうかを判定する。バイアス電流値が決定されていないレーザ条件がある場合(ステップS7においてNO)、処理はステップS8に進む。ステップS8において、信号処理回路40は、次のレーザ条件を選択する。ステップS8の処理が終了すると、全体の処理はステップS2に戻される。
【0063】
一方、全てのレーザ条件に対して励起LD3のバイアス電流値が求められたと判定された場合(ステップS7においてYES)、処理はS11(図9参照)に進む。
【0064】
図8は、バイアス電流値の最適値の保存形式を模式的に示した図である。図8を参照して、励起LD3のバイアス電流の最適値が、テーブル形式でメモリ41に保存される。具体的には、パルス群の繰り返し周波数の範囲(一例を示すと100kHz〜120kHz)と、1つのパルス群に含まれるパルスの数との組み合わせに対応した最適値がテーブルに格納される。
【0065】
たとえば、ある1つのレーザ条件に対応するバイアス電流値がデフォルトの条件として予め定められる。他のレーザ条件に対応するバイアス電流値は、そのデフォルトの電流値に対する差分として、ステップS3,S4,S6,S9の処理により決定される。なお、最適値の保存形式はテーブル形式に限定されず、たとえばデータベース形式であってもよい。さらに、本励起期間における励起LD3のバイアス電流値を、図8に示すようなテーブル形式によってメモリ41に保存してもよい。
【0066】
図9は、実施の形態1によるレーザ加工装置の起動後の処理を説明するためのフローチャートである。なお「起動後」とは、レーザ加工装置の運転時に対応する。図9を参照して、ステップS11において、制御装置20(信号処理回路40)は、レーザ発光条件に応じてバイアス電流値を設定する。レーザ発光条件は、たとえば入力部25(図1)を介してユーザから入力された情報に基づき、図8に示されたテーブルを参照して決定される。レーザ発光条件は、繰り返し周波数、パルス群に含まれるパルスの数などを含むがこれらに限定されるものではない。この処理によって、本励起期間および予備励起期間の各々における励起LD3のバイアス電流値が決定される。なお、レーザ加工装置の運転時には、制御装置20によってシャッタ19が開放される。
【0067】
ステップS12において、レーザ発光が開始される。制御装置20は、ステップS11の処理によって設定された、本励起期間のバイアス電流値および予備励起期間のバイアス電流値をドライバ22に与える。ドライバ22は、そのバイアス電流値に従う電流を励起LD3に供給する。
【0068】
ステップS13において、制御装置20は、バイアス電流のフィードバック制御を実行する。具体的には制御装置20は、ステップS3,S4,S5,S6,S9の処理と同様の処理を実行する。これにより、レーザ加工装置の動作中に、初回パルスと最終パルスとでピーク値が同じとなるように、励起LD3の予備励起期間のバイアス電流を調整することができる。ステップS14において、レーザ発光が終了する。
【0069】
ステップS15において、制御装置20は、レーザ発光条件の変更があるかどうかを判定する。たとえば加工条件が変更された場合にレーザ発光条件の変更があると判定される。この場合(ステップS15においてYES)、処理はステップS11に戻る。一方、レーザ発光条件の変更がない場合(ステップS15においてNO)、処理はステップS12に戻される。
【0070】
なお、図7に示された処理では、レーザ加工装置の起動時に全レーザ条件に対する励起LD3のバイアス電流の最適値が決定される。ただし、初回パルスと最終パルスとのピーク値のばらつきが許容範囲であることが確保される場合には、テーブルに格納されたバイアス電流の最適値の一部あるいは全てが固定値であってもよい。これらの場合には、起動時に最適バイアス電流値を求めるための処理を簡略化あるいは省略することができる。これによって、たとえば起動時間を短縮することが可能になる。
【0071】
さらに、実施の形態1では、起動後におけるバイアス電流のフィードバック制御により、あるレーザ条件に対応するバイアス電流の最適値を調整する。レーザ条件が変更された場合、変更後のレーザ条件に対応する最適バイアス電流は、変更前のレーザ条件に対応する最適バイアス電流の調整分が反映される(調整分が加算あるいは減算される)。励起LD3の温度特性により、レーザ加工装置の運転中に最適バイアス電流が調整される可能性がある。上記のようなバイアス電流の調整によって、励起LD3の温度特性を考慮した最適バイアス電流を得ることができる。
【0072】
たとえば第1のレーザ条件での起動時のバイアス電流が10であり、第2のレーザ条件でのバイアス電流が、第1のレーザ条件でのバイアス電流に対して+5異なるよう設定されていたとする。したがって、第2のレーザ条件での起動時のバイアス電流は15である。第1のレーザ条件でレーザ加工装置を運転している間に、励起LDのバイアス電流が110から11に変化したとする。第1のレーザ条件から第2のレーザ条件に変更された場合、バイアス電流は、11+5=16となる。すなわち変更後のレーザ条件に対応するバイアス電流は、変更前のレーザ条件の対応するバイアス電流と相対的に変化する。なお、これらの数値は、説明のために用いられたものであって、本発明を限定するものではない。
【0073】
図10は、繰り返し周波数を高くするとともにパルス群中のパルス数を増やした場合のレーザ出力を示す波形図である。図10(a)は、実施の形態1に従うフィードバック制御が実行されない場合のレーザ出力の波形図である。図10(b)は、実施の形態1に従うフィードバック制御が実行された場合におけるレーザ出力を示す波形図である。図10(a)および図10(b)を参照して、実施の形態1に従うフィードバック制御によって、レーザ条件変更前後でのバイアス電流値の差分が、フィードバック制御によって加算あるいは減算される。これにより、レーザ条件が変更された場合にも、初回パルスと最終パルスとでピーク値を等しくすることができる。
【0074】
図11は、繰り返し周波数を低下させるとともにパルス群中のパルス数を減少させた場合のレーザ出力を示す波形図である。図11(a)は、実施の形態1に従うフィードバック制御が実行されない場合におけるレーザ出力を示す波形図である。図11(b)は、実施の形態1に従うフィードバック制御が実行された場合におけるレーザ出力を示す波形図である。図11(a)および図11(b)を参照して、実施の形態1に従うフィードバック制御によって、レーザ条件変更前後でのバイアス電流値の差分が、フィードバック制御によって加算あるいは減算される。これにより、レーザ条件が変更された場合にも、初回パルスと最終パルスとでピーク値を等しくすることができる。
【0075】
このように実施の形態1では、初回パルスから安定したパワーが得られるように、レーザ発光前に光増幅ファイバ1の予備励起が行なわれる。さらに実施の形態1では、パルス(パルス群)ごとに波高値が測定され、その測定結果に基づいて、初回パルスと最終パルスとでピーク値が同じになるように励起LD3のバイアス電流値が調整される。これにより、初回パルスから安定したレーザ出力を得ることができる。したがって実施の形態1によれば高品質な加工を行なうことができる。
【0076】
さらに実施の形態1によれば、レーザ加工装置の起動時に、レーザ条件ごとにバイアス電流値の最適値が設定され、その最適値がテーブルによって保持される。これによりレーザ条件に応じて、予備励起期間における励起光のパワーを変化させることが可能になる。
【0077】
さらに実施の形態1によれば、レーザ加工装置の動作中にも、フィードバック制御によってバイアス電流値の最適値を設定する。これにより、レーザ条件が変更されても、安定したレーザ出力を得ることができる。
【0078】
実施の形態1によれば、レーザ加工装置の起動時および動作時にフィードバック制御によってバイアス電流の最適値が設定されるため、構成部品の性能ばらつきに起因するレーザ出力パワーのばらつきを抑制できるだけでなく、構成部品の性能の温度特性に起因するレーザ出力パワーのばらつきも抑制できる。したがって、テーブルを準備するために、バイアス電流値の最適値をレーザ加工装置ごとに測定しなくてもよい。また、温度特定を考慮したテーブルを準備しなくてもよい。これにより、レーザ加工装置のコストの上昇を抑えることができる。
【0079】
[実施の形態2]
図12は、実施の形態2に係るレーザ加工装置の構成図である。図12を参照して、レーザ加工装置101は、2段のファイバ増幅器により構成された光増幅器を備える。この点において実施の形態2に係るレーザ加工装置は実施の形態1に係るレーザ加工装置と異なる。図1および図12を参照して、レーザ加工装置101は、カプラ7と、光増幅ファイバ8と、励起LD9A,9Bと、コンバイナ10と、アイソレータ11と、受光素子17と、波高値検出器18と、ドライバ23とをさらに備える点においてレーザ加工装置100と異なる。
【0080】
カプラ7は、光増幅ファイバ1からアイソレータ6を介して出力された光パルスを、コンバイナ10に送られる光パルスと、受光素子17に送られる光パルスとに分配する。コンバイナ10は、カプラ7からのレーザ光と、励起LD9A,9Bからのレーザ光とを結合して光増幅ファイバ8に入射させる。
【0081】
励起LD9A,9Bはドライバ23により駆動される。ドライバ23は制御装置20によって制御される。光増幅ファイバ8は、カプラ7からのレーザ光を励起LD9A,9Bからのレーザ光によって増幅する。すなわちカプラ7からのレーザ光はシード光であり、励起LD9A,9Bからのレーザ光は励起光である。励起LD9A,9Bから発せられる励起光のパワーは予備励起期間において小さくなり、本励起期間において大きくなる。
【0082】
アイソレータ11は、光増幅ファイバ8から出力されるレーザ光を通過させるとともに、光増幅ファイバ8に戻るレーザ光を遮断する。
【0083】
受光素子17は、カプラ7からの光パルスを受けて、その光パルスの強度を示す信号を出力する。波高値検出器18は、受光素子17からの信号により、光パルスの波高値を検出する。波高値検出器18によって検出された波高値は、制御装置20に送られる。
【0084】
受光素子17および波高値検出器18の構成は、受光素子15および波高値検出器16の構成とそれぞれ同様である。実施の形態2では、光増幅ファイバ1から出力される光パルスの波高値が受光素子17および波高値検出器18によって検出され、光増幅ファイバ8から出力される光パルスの波高値が受光素子15および波高値検出器16によって検出される。レーザ加工装置101の他の部分の構成はレーザ加工装置100の対応する部分の構成と同様であるので以後の説明は繰り返さない。
【0085】
実施の形態2によれば、受光素子17および波高値検出器18によって検出されたパルスのピーク値に基づいて、制御装置20は、ドライバ22を制御する。これにより、光増幅ファイバ1から出射されるパルス群の初回パルスと最終パルスとでピーク値が等しくなるように、光増幅ファイバ1から出射されるパルスを制御できる。さらに、受光素子15および波高値検出器16によって検出されたパルスのピーク値に基づいて、制御装置20は、ドライバ23を制御する。
【0086】
これにより、最終の増幅段、すなわち光増幅ファイバ8から出射される複数のパルスのうちの初回パルスと最終パルスとでピーク値が等しくなるように、光増幅ファイバ8から出射されるパルスを制御できる。光増幅ファイバ8から出射されるパルスを制御する方法は実施の形態1に係る制御方法と同じ方法を適用できるので詳細な説明は以後繰り返さない。
【0087】
このように、実施の形態2によれば、増幅段の数が複数であっても、最終の増幅段から安定したレーザパルス出力を得ることができる。なお、増幅段の数は複数であれば2段に限定されず、3段あるいはそれより大きくてもよい。
【0088】
また、各増幅段に設けられる励起LDの個数は図1あるいは図12に示されたように限定されるものではなく、励起LDの個数は任意に設定可能である。
【0089】
さらに、上記の各実施の形態では、光増幅装置の利用形態の1つとしてレーザ加工装置を開示したが、本発明の実施の形態に係る光増幅装置の用途は、レーザ加工装置に限定されるものではない。
【0090】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
1,8 光増幅ファイバ、1G パルス群、1a シード光パルス、2 シードLD、3,9A,9B 励起LD、4,6,11 アイソレータ、5,10 コンバイナ、7 カプラ、12 エンドキャップ、13 ビームスプリッタ、14 レーザビーム走査機構、15,17 受光素子、16,18 波高値検出器、19 シャッタ、20 制御装置、21〜23 ドライバ、25 入力部、31 電圧変換回路、32 積分回路、33 PGA、34 AD変換回路、40 信号処理回路、41 メモリ、50 加工対象物、100,101 レーザ加工装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光増幅装置およびレーザ加工装置に関し、特に、MOPA(Master Oscillator and Power Amplifier)方式のファイバ増幅器から光パルスを安定的に発生させるための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工装置においては、レーザ光のパワーが加工品質に影響を与える。このため、レーザ加工装置から発せられるレーザ光のパワーを制御するための技術がこれまでに提案されている。
【0003】
たとえば特開2000−340872号公報(特許文献1)は、希土類元素を含むファイバと、その希土類元素を励起するためのレーザ光源とを備えたレーザ加工装置を開示する。レーザ光源は、連続的に駆動されて低パワーの光を出力する第1の半導体レーザと、パルス駆動されて高パワーの光を出力する第2の半導体レーザとを含む。非発光期間には、第1の半導体レーザからの励起光によって、希土類ドープファイバが予備的励起状態とされる。一方、加工時には、第2の半導体レーザからの励起光によって、希土類ドープファイバが高励起状態とされる。高励起状態の希土類ドープファイバに信号光が入射されることにより、高パワーのレーザ光が希土類ドープファイバから出射される。低パワーのレーザ光によって希土類ドープファイバが予備的に励起され、それによって加工時のパルス出力を安定化することができる。
【0004】
また、たとえば特開2010−10274号公報(特許文献2)は、ファイバレーザ発振器から出力されるレーザパルスの平均パワーおよびピークパワーを測定して、その測定結果をLD(レーザダイオード)駆動回路にフィードバックする構成を開示する。
【0005】
また、たとえば特開2010−171131号公報(特許文献3)には、ファイバレーザに入射される種光を発するレーザ光源が、主照射期間にはパルス光を発し、予備照射期間には実質的な連続光を発することが開示されている。連続光のパワーは、パルス光のピークパワーよりも小さい。さらに、特開2010−171131号公報(特許文献3)には、予備照射期間における励起光のパワーを主照射期間における励起光のパワーよりも低下させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−340872号公報
【特許文献2】特開2010−10274号公報
【特許文献3】特開2010−171131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開2000−340872号公報(特許文献1)に開示されたレーザ加工装置はファイバレーザを利用する。ファイバレーザは、(1)パルスの繰り返し周波数、(2)パルス幅、(3)パルスのパワーなどといった、レーザ光に関する各種の条件を、互いに独立に設定することができる。一方、低パワーレーザ光の最適な出力値は、これらの条件に応じて異なりうる。低パワーレーザ光の出力値が適切でない場合には、初回パルスの強度と安定化後のパルスの強度との間に差が生じる。この場合には、加工品質の低下が生じうる。
【0008】
また、特開2010−10274号公報(特許文献2)に開示された方法では、レーザパルスの平均パワーがフィードバック制御に用いられる。このためパルス毎の制御が難しい。
【0009】
また、特開2010−171131号公報(特許文献3)に開示された構成では、主照射期間だけでなく予備照射期間にも光増幅ファイバから増幅光が出射される。予備照射期間に増幅光を光増幅ファイバから出射することで、予備照射期間に光ファイバに蓄積されるエネルギーが大きくなりすぎるのを防止できる。これにより、主照射期間において初回パルスのパワーが過大となることが抑制される。しかしながら、特開2010−171131号公報(特許文献3)は、そのようなパルスのパワーの制御を確実に実行するための構成については具体的に開示していない。
【0010】
本発明の目的は、初回からレーザパルスを安定して出力することが可能な光増幅装置およびレーザ加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある局面に係る光増幅装置は、シード光を励起光によって増幅する光増幅ファイバと、発光期間にはシード光をパルス状に複数回発生させるシード光源と、発光期間の直前の非発光期間には、第1のレベルのパワーを有する励起光を発生させ、発光期間には、第1のレベルより高い第2のレベルのパワーを有する励起光を発生させる励起光源と、光増幅ファイバから出力された出力光パルスのパワーを検出するための検出器と、検出器の検出値に基づいて、発光期間の間に発生した最初の出力光パルスと最終の出力光パルスとの間でパワーが同じになるように、非発光期間における励起光のパワーを制御する制御部とを備える。
【0012】
好ましくは、制御部は、光増幅装置の起動時に、出力光パルスの予め定められた条件ごとに、非発光期間における励起光のパワーを制御して、最初の出力光パルスと最終の出力光パルスとの間でパワーを同じにするための励起光のパワーに関するデータを取得する。光増幅装置は、データを出力光パルスの予め定められた条件と関連付けて記憶する記憶部をさらに備える。
【0013】
好ましくは、光増幅装置の運転時に、制御部は、記憶部に記憶されたデータに基づいて、非発光期間における励起光のパワーを設定する。
【0014】
好ましくは、励起光源は、半導体レーザである。上記データは、半導体レーザのバイアス電流のデータである。出力光パルスの条件が変更された場合、制御部は、変更前の条件に対応するバイアス電流のデータの変動を、変更後の条件に対応するバイアス電流のデータに反映させる。
【0015】
好ましくは、光増幅装置は、出力光パルスを光増幅装置の外部に出力することを防ぐためのシャッタをさらに備える。制御部は、シャッタを閉じた状態で、光増幅装置の起動時におけるデータを取得する。
【0016】
本発明の他の局面に係るレーザ加工装置は、上記のいずれかに記載の光増幅装置を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、初回からレーザパルスを安定して出力することが可能な光増幅装置およびレーザ加工装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係るレーザ加工装置の構成例を示した図である。
【図2】実施の形態1に係るレーザ加工装置によるレーザ発光のタイミング図である。
【図3】図2に示したレーザ発光のタイミングをより詳細に説明した図である。
【図4】予備励起期間における励起光パワーに依存して初回パルスのパワーが変化することを説明した波形図である。
【図5】実施の形態1に従うパルスのパワーの安定化の原理を説明した波形図である。
【図6】パルスのピークパワーを検出するための具体的な構成例を示したブロック図である。
【図7】実施の形態1によるレーザ加工装置の起動時の処理を説明するためのフローチャートである。
【図8】バイアス電流値の最適値の保存形式を模式的に示した図である。
【図9】実施の形態1によるレーザ加工装置の起動後の処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】繰り返し周波数を高くするとともにパルス群中のパルス数を増やした場合のレーザ出力を示す波形図である。
【図11】繰り返し周波数を低下させるとともにパルス群中のパルス数を減少させた場合のレーザ出力を示す波形図である。
【図12】実施の形態2に係るレーザ加工装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
本明細書では「パルス群」との用語は、ある時間間隔で時間軸上に並べられた複数の光パルスを意味する。ただし、パルス群に含まれる光パルスを明示的に指す場合を除き、本明細書では、パルス群を「パルス」と称する。また、本明細書では、「LD」との用語は、半導体レーザを表す。
【0021】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係るレーザ加工装置の構成例を示した図である。図1を参照して、レーザ加工装置100は、光増幅装置と、その光増幅装置からのレーザ光を走査するためのレーザビーム走査機構14とを含む。光増幅装置は、光増幅ファイバ1と、シードLD2と、励起LD3と、アイソレータ4,6と、コンバイナ5と、エンドキャップ12と、ドライバ21,22と、受光素子15と、波高値検出器16と、シャッタ19と、制御装置20と、入力部25とを備える。
【0022】
光増幅ファイバ1は、光増幅成分である希土類元素が添加されたコア、およびそのコアの周囲に設けられるクラッドを有する。コアに添加される希土類元素の種類は特に限定されず、たとえばEr(エルビウム)、Yb(イッテルビウム)、Nd(ネオジム)などがある。以下では希土類元素はYbであるとして説明する。光増幅ファイバ1は、たとえばコアの周囲に1層のクラッドが設けられたシングルクラッドファイバでもよいし、コアの周囲に2層のクラッドが設けられたダブルクラッドファイバでもよい。
【0023】
シードLD2はシード光を発するレーザ光源である。シード光の波長は、たとえば1000〜1100nmの範囲から選択された波長である。ドライバ21はシードLD2にパルス状の電流を繰り返して印加することにより、シードLD2をパルス駆動する。すなわちシードLD2からはパルス状のシード光が発せられる。
【0024】
シードLD2から出射されるシード光はアイソレータ4を通過する。アイソレータ4は一方向の光のみを透過し、その光と逆方向に入射する光を遮断する機能を実現する。本発明の実施の形態では、アイソレータ4はシードLD2からのシード光を透過させるとともに光増幅ファイバ1からの戻り光を遮断する。これによって光増幅ファイバ1からの戻り光がシードLD2に入射するのを防ぐことができる。シードLD2に光増幅ファイバ1からの戻り光が入射した場合にはシードLD2が損傷するおそれがあるが、アイソレータ4を設けることでこのような問題を防ぐことができる。
【0025】
励起LD3は、光増幅ファイバ1のコアに添加された希土類元素の原子を励起するための励起光を発する励起光源である。希土類元素がYbの場合、励起光の波長はたとえば915±10nmとなる。ドライバ22は、励起LD3を駆動する。
【0026】
コンバイナ5はシードLD2からのシード光と励起LD3からの励起光とを結合して光増幅ファイバ1に入射させる。
【0027】
光増幅ファイバ1、シードLD2、および励起LD3はMOPA(Master Oscillator and Power Amplifier)方式のファイバ増幅器を構成する。光増幅ファイバ1に入射した励起光はコアに含まれる希土類元素の原子に吸収され、原子が励起される。シードLD2からのシード光が光増幅ファイバ1のコアを伝搬すると、励起された原子がシード光により誘導放出を起こすためシード光が増幅される。すなわち光増幅ファイバ1は、シード光を励起光によって増幅する。
【0028】
光増幅ファイバ1がシングルクラッドファイバである場合、シード光および励起光はともにコアに入射する。これに対し、光増幅ファイバ1がダブルクラッドファイバである場合、シード光はコアに入射し、励起光は第1クラッドに入射する。ダブルクラッドファイバの第1クラッドは励起光の導波路として機能する。第1クラッドに入射した励起光が第1クラッドを伝搬する過程で、コアを通過するモードによりコア中の希土類元素が励起される。
【0029】
アイソレータ6は、光増幅ファイバ1によって増幅され、かつ光増幅ファイバ1から出射されたシード光(光パルス)を通過させるとともに光増幅ファイバ1に戻る光を遮断する。アイソレータ6を通過した光パルスは、光ファイバの端面から大気中に出射される。エンドキャップ12は、ピークパワーの高い光パルスが光ファイバから大気中に出射される際に光ファイバの端面と大気との境界面で生じるダメージを防止するために設けられる。
【0030】
ビームスプリッタ13は、エンドキャップ12から出力された光パルスを2つのパルスに分割する。一方のパルスは、加工用のレーザ光としてレーザビーム走査機構14に入力され、他方のパルスはレーザ光のパワーをモニタするために受光素子15に入力される。
【0031】
シャッタ19は、加工用のレーザ光が光増幅装置の外部に出力されることを防ぐために設けられる。シャッタ19は、制御装置20によって開閉される。図1に示されるように、たとえばシャッタ19はビームスプリッタ13とレーザビーム走査機構14との間に配置される。
【0032】
受光素子15は、たとえばフォトダイオードによって構成される。波高値検出器16は、受光素子15からの信号により、光パルスのピークパワー(波高値)を検出する。波高値検出器16によって検出された波高値は、制御装置20に送られる。
【0033】
レーザビーム走査機構14は、レーザ光を二次元方向に走査するためのものである。図示しないが、レーザビーム走査機構14は、たとえばエンドキャップ12からの出射光であるレーザビームの径を所定の大きさに調整するためのコリメータレンズ、および、コリメータレンズを通過後のレーザビームを加工対象物50の表面上で二次元方向に走査するためのガルバノスキャナ、レーザビームを集光するためのfθレンズ等を含んでもよい。加工対象物50の表面上でレーザ光L、すなわちレーザ加工装置100からの出力光が二次元方向に走査されることにより、金属等を素材とする加工対象物50の表面が加工される。たとえば加工対象物50の表面に文字や図形等からなる情報が印字(マーキング)される。
【0034】
制御装置20は、ドライバ21,22およびレーザビーム走査機構14を制御することによりレーザ加工装置100の動作を統括的に制御する。入力部25は、たとえばユーザからの情報を受付ける。制御装置20は、入力部25からの情報に基づいて、ドライバ21,22を制御するとともに、レーザビーム走査機構14の動作を制御する。
【0035】
制御装置20は、たとえば所定のプログラムを実行するパーソナルコンピュータにより実現される。入力部25はユーザが情報を入力することができる装置であれば特に限定されず、たとえばマウス、キーボード、タッチパネル等を用いることができる。
【0036】
シードLD、励起LD、アイソレータ等の特性は温度により変化し得る。したがって、これらの素子の温度を一定に保つための温度コントローラをレーザ加工装置に備えることがより好ましい。
【0037】
レーザ加工装置100からレーザ光を出力させる場合において、シードLD2はドライバ21によって駆動されることにより、パルス状のシード光を発生させる。シード光をシードLD2から繰り返し発生させる場合、シード光の繰返し周波数は、ドライバ21からシードLD2に供給されるパルス電流の繰り返し周波数に依存する。ドライバ21から出力されるパルス電流の繰り返し周波数は制御装置20によって制御される。
【0038】
制御装置20はドライバ22を制御することによって励起LD3が発する励起光のパワーを変化させる。励起LD3は、ドライバ22から供給されるバイアス電流に応じたパワーを有する励起光を出力する。ドライバ22から出力されるバイアス電流の大きさは制御装置20によって制御される。
【0039】
図2は、実施の形態1に係るレーザ加工装置によるレーザ発光のタイミング図である。図2を参照して、予備励起期間には、ドライバ22がバイアス電流(図2において励起LD電流と示す)を励起LD3に供給して励起光を発生させるが、シードLD2は、光パルス(図2ではシードLDパルスと示す)を発生させない。一方、本励起期間には、励起光およびシードLDパルスの両方が発生する。したがって本励起期間には、ファイバ増幅器からレーザ光が出力される。
【0040】
予備励起期間における励起LD電流は本励起期間における励起LD電流よりも小さい。すなわち励起LD3は、予備励起期間において第1のレベルのパワーの励起光を発生させ、本励起期間において、第2のレベルのパワーの励起光を発生させる。第2のレベルは第1のレベルよりも高い。
【0041】
図3は、図2に示したレーザ発光のタイミングをより詳細に説明した図である。図3を参照して、シードLD2は、本励起期間に、複数のシード光パルス1aからなるパルス群1Gを周期tprdで繰り返し発生させる。シードLD2のバイアス電流を変調させることによって、パルス群1Gが所定の周期で発生する。本励起期間は、ファイバ増幅器からレーザ光が出力される発光期間に対応する。一方、予備励起期間には、シードLD2にバイアス電流が供給されないため、非発光期間となる。
【0042】
本励起期間の間にファイバ増幅器から出力される複数のパルス群のうち、最初に出力されるパルス群および最後に出力されるパルス群を、以下では「初回パルス」および「最終パルス」とそれぞれ称する。
【0043】
図4は、予備励起期間における励起光パワーに依存して初回パルスのパワーが変化することを説明した波形図である。図4(a)は、予備励起期間における励起光パワーを小さくした場合にファイバ増幅器から出力されたパルスを示した波形図である。図4(b)は、予備励起期間における励起光パワーを大きくした場合にファイバ増幅器から出力されたパルスを示した波形図である。図4(a)および図4(b)を参照して、予備励起期間における励起LD電流が小さい場合には、励起光パワーが小さいため、予備励起期間の間に光増幅ファイバ1に蓄積されるエネルギーが少ない。このため、初回パルスのパワーが小さい。光増幅ファイバ1への励起光パワーの供給と光増幅ファイバ1からの光エネルギーの放出とが繰り返されるうちに、光増幅ファイバ1に蓄積されるエネルギーが増加してほぼ一定のレベルに達する。これにより、パルスのパワーが安定化する。
【0044】
逆に、予備励起期間における励起LD電流が大きい場合には、予備励起期間の間に光ファイバ内に蓄積されたエネルギーが大きくなる。このため、初回パルスのパワーが大きくなる。この場合、光増幅ファイバ1への励起光パワーの供給と光増幅ファイバ1からの光エネルギーの放出とが繰り返されるうちに、光増幅ファイバ1に蓄積されるエネルギーが減少してほぼ一定のレベルに達する。これにより、パルスのパワーが安定化する。
【0045】
図4に示されるように、予備励起期間における励起光のパワー(励起LD電流)が適切でない場合には、初回パルスのパワーと一定時間経過後のパルスのパワーとの間に差が生じる。このようなパワーの差によって加工品質の低下といった問題が発生する。
【0046】
図5は、実施の形態1に従うパルスのパワーの安定化の原理を説明した波形図である。図5を参照して、実施の形態1では、初回パルスのピークパワーと最終パルスのピークパワーとが比較される。それらの比較結果が、予備励起期間の間の励起LDのバイアス電流値にフィードバックされて、初回パルスのパワーと最終パルスのパワーとの差分を0に近づける。これによって、初回パルスから、安定したレーザ出力を得ることができる。図1に示されるように、パルスのピークパワーは受光素子15および波高値検出器16によって検出される。
【0047】
図6は、パルスのピークパワーを検出するための具体的な構成例を示したブロック図である。図6を参照して、波高値検出器16は、電流/電圧変換回路31と、積分回路32と、PGA(Programmable Gain Amplifier)33と、AD変換回路34とを含む。また、制御装置20は、信号処理回路40と、メモリ41とを含む。
【0048】
受光素子15は、光パルスを受光して、その光パルスを電流信号に変換する。電流/電圧変換回路31は、受光素子15から出力される電流を電圧に変換する。積分回路32は、電流/電圧変換回路31の出力電圧を積分する。
【0049】
図3に示すように、この実施の形態では、複数の短パルス(たとえば時間幅がnsのオーダー)からなるパルス群を発生させる。積分回路32は、所定の時定数で複数の短パルスの波形を積分する。これによってパルス群に含まれる短パルスの個数に依存した振幅の変化を低減することができ、1つのパルス群におけるピークパワー(振幅)を得ることができる。
【0050】
PGA33は、積分回路32から出力された信号を増幅する。PGA33のゲインは、信号処理回路40からのゲイン設定信号によって設定される。繰り返し周波数が高くなるほど1つのパルス群におけるピークパワー(振幅)が低下するので、繰り返し周波数に応じてゲインが高くなるようにPGA33のゲインが調整される。さらに、AD変換回路34に入力される信号の振幅がAD変換回路34のダイナミックレンジ内となるように、PGA33のゲインが設定される。
【0051】
AD変換回路34は、たとえば高速AD変換回路によって実現され、PGA33から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。AD変換回路34によるAD変換のタイミングは、信号処理回路40からの制御信号によって制御される。具体的には、レーザ発光の開始から所定の遅延時間が経過した後に、PGA33からの信号がAD変換される。パルス群のパワーのピーク付近においてAD変換回路34がAD変換を行なうように遅延時間が決定される。これにより、パルス群のピークパワー、すなわち波高値が取得される。この遅延時間は、たとえば繰り返し周波数および、積分回路32による信号の積分の時定数などを考慮して決定される。AD変換回路34により取得された波高値は、AD変換回路34から信号処理回路40に送られる。
【0052】
信号処理回路40は、初回パルスと最終パルスとで波高値を比較する。初回パルスの波高値が最終パルスの波高値よりも高い場合、信号処理回路40は、予備励起期間における励起LDのバイアス電流値を低下させるための信号を生成し、予備励起期間に、その信号をドライバ22に与える。逆に、初回パルスの波高値が最終パルスの波高値よりも低い場合、信号処理回路40は、予備励起期間における励起LDのバイアス電流値を上昇させるための信号を生成し、予備励起期間に、その信号をドライバ22に与える。ドライバ22は、信号処理回路40からの信号によって、予備励起期間における励起LD3のバイアス電流値を低下あるいは上昇させる。これにより励起LD3からの励起光のパワーが変化する。
【0053】
メモリ41は、たとえば不揮発性のメモリによって実現され、レーザ条件ごとに励起LD3のバイアス電流値の最適値を保存する。さらに、信号処理回路40による励起LD3のバイアス電流の調整結果に応じて、メモリ41に記憶された最適値が更新される。
【0054】
図7は、実施の形態1によるレーザ加工装置の起動時の処理を説明するためのフローチャートである。図7を参照して、ステップS1において、レーザ加工装置100の電源がオンされる。これにより、制御装置20、ドライバ21,22等の各種の電気回路が起動される。
【0055】
ステップS2において、制御装置20の内部でレーザ発光条件が設定される。たとえば信号処理回路40は、メモリ41に記憶されたテーブルを参照して、デフォルトの条件を設定する。これにより、パルスの繰り返し周波数、予備励起期間および本励起期間における励起LDのバイアス電流値などが決定される。
【0056】
ステップS3において、レーザ発光が行なわれる。具体的には、制御装置20は、ステップS2の処理で設定された条件に従ってドライバ21,22を制御する。ドライバ21,22は、シードLD2および励起LD3をそれぞれ駆動する。これによりシードLD2からのシード光と励起LD3からの励起光とが光増幅ファイバ1に入力されて、光増幅ファイバ1からレーザ光パルスが出力される。
【0057】
光増幅ファイバ1から出力されたレーザ光パルスは、ビームスプリッタ13で分割される。一方のレーザ光パルスは受光素子15に入力され、波高値検出器16によって、その波高値が検出される。なお、シャッタ19は、制御装置20によって閉じられている。したがって、他方のレーザ光パルスは、シャッタ19によってレーザビーム走査機構14へは出射されない。
【0058】
次にステップS4において、制御装置20は、受光素子15および波高値検出器16を介して、初回パルスと最終パルスとを検出する。続いてステップS5において、制御装置20は、初回パルスと最終パルスとでピーク値が同じかどうかを判定する。なお「ピーク値が同じである」との判定基準は、2つのピーク値が一致する場合を含むが、これに限定されない。たとえば、2つのピーク値の比率が予め定められた範囲内にある場合に、「ピーク値が同じである」と判定されてもよい。
【0059】
初回パルスと最終パルスとでピーク値が異なると判定された場合(ステップS5においてNO)、処理はステップS9に進む。ステップS9において、制御装置20(信号処理回路40)は、予備励起期間における励起LD3のバイアス電流を調整する。初回パルスのピーク値が最終パルスのピーク値よりも大きい場合には、制御装置20は、予備励起期間における励起LD3のバイアス電流を低下させる。一方、初回パルスのピーク値が最終パルスのピーク値よりも小さい場合には、制御装置20は、予備励起期間における励起LD3のバイアス電流を増加させる。
【0060】
ステップS9の処理が終了すると、全体の処理はステップS3に戻される。すなわち、初回パルスと最終パルスとでピーク値が同じであると判定されるまで、1つのレーザ条件に対応する励起LD3のバイアス電流が調整される。
【0061】
一方、初回パルスと最終パルスとでピーク値が同じであると判定された場合(ステップS5においてYES)、処理はステップS6に進む。ステップS6において、制御装置20は、設定レーザ条件に対応する励起LD3のバイアス電流値をメモリ41に保存する。これにより、あるレーザ条件に対して、初回パルスと最終パルスとでピーク値を同じにするための励起LD3のバイアス電流値(予備励起期間におけるバイアス電流値)が決定される。
【0062】
続いて制御装置20は、全てのレーザ条件に対して励起LD3のバイアス電流値が求められたかどうかを判定する。バイアス電流値が決定されていないレーザ条件がある場合(ステップS7においてNO)、処理はステップS8に進む。ステップS8において、信号処理回路40は、次のレーザ条件を選択する。ステップS8の処理が終了すると、全体の処理はステップS2に戻される。
【0063】
一方、全てのレーザ条件に対して励起LD3のバイアス電流値が求められたと判定された場合(ステップS7においてYES)、処理はS11(図9参照)に進む。
【0064】
図8は、バイアス電流値の最適値の保存形式を模式的に示した図である。図8を参照して、励起LD3のバイアス電流の最適値が、テーブル形式でメモリ41に保存される。具体的には、パルス群の繰り返し周波数の範囲(一例を示すと100kHz〜120kHz)と、1つのパルス群に含まれるパルスの数との組み合わせに対応した最適値がテーブルに格納される。
【0065】
たとえば、ある1つのレーザ条件に対応するバイアス電流値がデフォルトの条件として予め定められる。他のレーザ条件に対応するバイアス電流値は、そのデフォルトの電流値に対する差分として、ステップS3,S4,S6,S9の処理により決定される。なお、最適値の保存形式はテーブル形式に限定されず、たとえばデータベース形式であってもよい。さらに、本励起期間における励起LD3のバイアス電流値を、図8に示すようなテーブル形式によってメモリ41に保存してもよい。
【0066】
図9は、実施の形態1によるレーザ加工装置の起動後の処理を説明するためのフローチャートである。なお「起動後」とは、レーザ加工装置の運転時に対応する。図9を参照して、ステップS11において、制御装置20(信号処理回路40)は、レーザ発光条件に応じてバイアス電流値を設定する。レーザ発光条件は、たとえば入力部25(図1)を介してユーザから入力された情報に基づき、図8に示されたテーブルを参照して決定される。レーザ発光条件は、繰り返し周波数、パルス群に含まれるパルスの数などを含むがこれらに限定されるものではない。この処理によって、本励起期間および予備励起期間の各々における励起LD3のバイアス電流値が決定される。なお、レーザ加工装置の運転時には、制御装置20によってシャッタ19が開放される。
【0067】
ステップS12において、レーザ発光が開始される。制御装置20は、ステップS11の処理によって設定された、本励起期間のバイアス電流値および予備励起期間のバイアス電流値をドライバ22に与える。ドライバ22は、そのバイアス電流値に従う電流を励起LD3に供給する。
【0068】
ステップS13において、制御装置20は、バイアス電流のフィードバック制御を実行する。具体的には制御装置20は、ステップS3,S4,S5,S6,S9の処理と同様の処理を実行する。これにより、レーザ加工装置の動作中に、初回パルスと最終パルスとでピーク値が同じとなるように、励起LD3の予備励起期間のバイアス電流を調整することができる。ステップS14において、レーザ発光が終了する。
【0069】
ステップS15において、制御装置20は、レーザ発光条件の変更があるかどうかを判定する。たとえば加工条件が変更された場合にレーザ発光条件の変更があると判定される。この場合(ステップS15においてYES)、処理はステップS11に戻る。一方、レーザ発光条件の変更がない場合(ステップS15においてNO)、処理はステップS12に戻される。
【0070】
なお、図7に示された処理では、レーザ加工装置の起動時に全レーザ条件に対する励起LD3のバイアス電流の最適値が決定される。ただし、初回パルスと最終パルスとのピーク値のばらつきが許容範囲であることが確保される場合には、テーブルに格納されたバイアス電流の最適値の一部あるいは全てが固定値であってもよい。これらの場合には、起動時に最適バイアス電流値を求めるための処理を簡略化あるいは省略することができる。これによって、たとえば起動時間を短縮することが可能になる。
【0071】
さらに、実施の形態1では、起動後におけるバイアス電流のフィードバック制御により、あるレーザ条件に対応するバイアス電流の最適値を調整する。レーザ条件が変更された場合、変更後のレーザ条件に対応する最適バイアス電流は、変更前のレーザ条件に対応する最適バイアス電流の調整分が反映される(調整分が加算あるいは減算される)。励起LD3の温度特性により、レーザ加工装置の運転中に最適バイアス電流が調整される可能性がある。上記のようなバイアス電流の調整によって、励起LD3の温度特性を考慮した最適バイアス電流を得ることができる。
【0072】
たとえば第1のレーザ条件での起動時のバイアス電流が10であり、第2のレーザ条件でのバイアス電流が、第1のレーザ条件でのバイアス電流に対して+5異なるよう設定されていたとする。したがって、第2のレーザ条件での起動時のバイアス電流は15である。第1のレーザ条件でレーザ加工装置を運転している間に、励起LDのバイアス電流が110から11に変化したとする。第1のレーザ条件から第2のレーザ条件に変更された場合、バイアス電流は、11+5=16となる。すなわち変更後のレーザ条件に対応するバイアス電流は、変更前のレーザ条件の対応するバイアス電流と相対的に変化する。なお、これらの数値は、説明のために用いられたものであって、本発明を限定するものではない。
【0073】
図10は、繰り返し周波数を高くするとともにパルス群中のパルス数を増やした場合のレーザ出力を示す波形図である。図10(a)は、実施の形態1に従うフィードバック制御が実行されない場合のレーザ出力の波形図である。図10(b)は、実施の形態1に従うフィードバック制御が実行された場合におけるレーザ出力を示す波形図である。図10(a)および図10(b)を参照して、実施の形態1に従うフィードバック制御によって、レーザ条件変更前後でのバイアス電流値の差分が、フィードバック制御によって加算あるいは減算される。これにより、レーザ条件が変更された場合にも、初回パルスと最終パルスとでピーク値を等しくすることができる。
【0074】
図11は、繰り返し周波数を低下させるとともにパルス群中のパルス数を減少させた場合のレーザ出力を示す波形図である。図11(a)は、実施の形態1に従うフィードバック制御が実行されない場合におけるレーザ出力を示す波形図である。図11(b)は、実施の形態1に従うフィードバック制御が実行された場合におけるレーザ出力を示す波形図である。図11(a)および図11(b)を参照して、実施の形態1に従うフィードバック制御によって、レーザ条件変更前後でのバイアス電流値の差分が、フィードバック制御によって加算あるいは減算される。これにより、レーザ条件が変更された場合にも、初回パルスと最終パルスとでピーク値を等しくすることができる。
【0075】
このように実施の形態1では、初回パルスから安定したパワーが得られるように、レーザ発光前に光増幅ファイバ1の予備励起が行なわれる。さらに実施の形態1では、パルス(パルス群)ごとに波高値が測定され、その測定結果に基づいて、初回パルスと最終パルスとでピーク値が同じになるように励起LD3のバイアス電流値が調整される。これにより、初回パルスから安定したレーザ出力を得ることができる。したがって実施の形態1によれば高品質な加工を行なうことができる。
【0076】
さらに実施の形態1によれば、レーザ加工装置の起動時に、レーザ条件ごとにバイアス電流値の最適値が設定され、その最適値がテーブルによって保持される。これによりレーザ条件に応じて、予備励起期間における励起光のパワーを変化させることが可能になる。
【0077】
さらに実施の形態1によれば、レーザ加工装置の動作中にも、フィードバック制御によってバイアス電流値の最適値を設定する。これにより、レーザ条件が変更されても、安定したレーザ出力を得ることができる。
【0078】
実施の形態1によれば、レーザ加工装置の起動時および動作時にフィードバック制御によってバイアス電流の最適値が設定されるため、構成部品の性能ばらつきに起因するレーザ出力パワーのばらつきを抑制できるだけでなく、構成部品の性能の温度特性に起因するレーザ出力パワーのばらつきも抑制できる。したがって、テーブルを準備するために、バイアス電流値の最適値をレーザ加工装置ごとに測定しなくてもよい。また、温度特定を考慮したテーブルを準備しなくてもよい。これにより、レーザ加工装置のコストの上昇を抑えることができる。
【0079】
[実施の形態2]
図12は、実施の形態2に係るレーザ加工装置の構成図である。図12を参照して、レーザ加工装置101は、2段のファイバ増幅器により構成された光増幅器を備える。この点において実施の形態2に係るレーザ加工装置は実施の形態1に係るレーザ加工装置と異なる。図1および図12を参照して、レーザ加工装置101は、カプラ7と、光増幅ファイバ8と、励起LD9A,9Bと、コンバイナ10と、アイソレータ11と、受光素子17と、波高値検出器18と、ドライバ23とをさらに備える点においてレーザ加工装置100と異なる。
【0080】
カプラ7は、光増幅ファイバ1からアイソレータ6を介して出力された光パルスを、コンバイナ10に送られる光パルスと、受光素子17に送られる光パルスとに分配する。コンバイナ10は、カプラ7からのレーザ光と、励起LD9A,9Bからのレーザ光とを結合して光増幅ファイバ8に入射させる。
【0081】
励起LD9A,9Bはドライバ23により駆動される。ドライバ23は制御装置20によって制御される。光増幅ファイバ8は、カプラ7からのレーザ光を励起LD9A,9Bからのレーザ光によって増幅する。すなわちカプラ7からのレーザ光はシード光であり、励起LD9A,9Bからのレーザ光は励起光である。励起LD9A,9Bから発せられる励起光のパワーは予備励起期間において小さくなり、本励起期間において大きくなる。
【0082】
アイソレータ11は、光増幅ファイバ8から出力されるレーザ光を通過させるとともに、光増幅ファイバ8に戻るレーザ光を遮断する。
【0083】
受光素子17は、カプラ7からの光パルスを受けて、その光パルスの強度を示す信号を出力する。波高値検出器18は、受光素子17からの信号により、光パルスの波高値を検出する。波高値検出器18によって検出された波高値は、制御装置20に送られる。
【0084】
受光素子17および波高値検出器18の構成は、受光素子15および波高値検出器16の構成とそれぞれ同様である。実施の形態2では、光増幅ファイバ1から出力される光パルスの波高値が受光素子17および波高値検出器18によって検出され、光増幅ファイバ8から出力される光パルスの波高値が受光素子15および波高値検出器16によって検出される。レーザ加工装置101の他の部分の構成はレーザ加工装置100の対応する部分の構成と同様であるので以後の説明は繰り返さない。
【0085】
実施の形態2によれば、受光素子17および波高値検出器18によって検出されたパルスのピーク値に基づいて、制御装置20は、ドライバ22を制御する。これにより、光増幅ファイバ1から出射されるパルス群の初回パルスと最終パルスとでピーク値が等しくなるように、光増幅ファイバ1から出射されるパルスを制御できる。さらに、受光素子15および波高値検出器16によって検出されたパルスのピーク値に基づいて、制御装置20は、ドライバ23を制御する。
【0086】
これにより、最終の増幅段、すなわち光増幅ファイバ8から出射される複数のパルスのうちの初回パルスと最終パルスとでピーク値が等しくなるように、光増幅ファイバ8から出射されるパルスを制御できる。光増幅ファイバ8から出射されるパルスを制御する方法は実施の形態1に係る制御方法と同じ方法を適用できるので詳細な説明は以後繰り返さない。
【0087】
このように、実施の形態2によれば、増幅段の数が複数であっても、最終の増幅段から安定したレーザパルス出力を得ることができる。なお、増幅段の数は複数であれば2段に限定されず、3段あるいはそれより大きくてもよい。
【0088】
また、各増幅段に設けられる励起LDの個数は図1あるいは図12に示されたように限定されるものではなく、励起LDの個数は任意に設定可能である。
【0089】
さらに、上記の各実施の形態では、光増幅装置の利用形態の1つとしてレーザ加工装置を開示したが、本発明の実施の形態に係る光増幅装置の用途は、レーザ加工装置に限定されるものではない。
【0090】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
1,8 光増幅ファイバ、1G パルス群、1a シード光パルス、2 シードLD、3,9A,9B 励起LD、4,6,11 アイソレータ、5,10 コンバイナ、7 カプラ、12 エンドキャップ、13 ビームスプリッタ、14 レーザビーム走査機構、15,17 受光素子、16,18 波高値検出器、19 シャッタ、20 制御装置、21〜23 ドライバ、25 入力部、31 電圧変換回路、32 積分回路、33 PGA、34 AD変換回路、40 信号処理回路、41 メモリ、50 加工対象物、100,101 レーザ加工装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シード光を励起光によって増幅する光増幅ファイバと、
発光期間に前記シード光をパルス状に複数回発生させるシード光源と、
前記発光期間の直前の非発光期間に第1のレベルのパワーを有する前記励起光を発生させ、前記発光期間に前記第1のレベルより高い第2のレベルのパワーを有する前記励起光を発生させる励起光源と、
前記光増幅ファイバから出力された出力光パルスのパワーを検出するための検出器と、
前記検出器の検出値に基づいて、前記発光期間の間に発生した最初の出力光パルスと最終の出力光パルスとの間でパワーが同じになるように、前記非発光期間における前記励起光のパワーを制御する制御部とを備える、光増幅装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記光増幅装置の起動時に、前記出力光パルスの予め定められた条件ごとに、前記非発光期間における前記励起光のパワーを制御して、前記最初の出力光パルスと前記最終の出力光パルスとの間でパワーを同じにするための前記励起光のパワーに関するデータを取得し、
前記光増幅装置は、
前記データを前記出力光パルスの前記予め定められた条件と関連付けて記憶する記憶部をさらに備える、請求項1に記載の光増幅装置。
【請求項3】
前記光増幅装置の運転時に、前記制御部は、前記記憶部に記憶されたデータに基づいて、前記非発光期間における前記励起光のパワーを設定する、請求項2に記載の光増幅装置。
【請求項4】
前記励起光源は、半導体レーザであり、
前記データは、前記半導体レーザのバイアス電流のデータであり、
前記出力光パルスの条件が変更された場合、前記制御部は、変更前の条件に対応する前記バイアス電流のデータの変動を、変更後の条件に対応する前記バイアス電流のデータに反映させる、請求項3に記載の光増幅装置。
【請求項5】
前記出力光パルスを前記光増幅装置の外部に出力することを防ぐためのシャッタをさらに備え、
前記制御部は、前記シャッタを閉じた状態で、前記光増幅装置の起動時における前記データを取得する、請求項2に記載の光増幅装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光増幅装置を備える、レーザ加工装置。
【請求項1】
シード光を励起光によって増幅する光増幅ファイバと、
発光期間に前記シード光をパルス状に複数回発生させるシード光源と、
前記発光期間の直前の非発光期間に第1のレベルのパワーを有する前記励起光を発生させ、前記発光期間に前記第1のレベルより高い第2のレベルのパワーを有する前記励起光を発生させる励起光源と、
前記光増幅ファイバから出力された出力光パルスのパワーを検出するための検出器と、
前記検出器の検出値に基づいて、前記発光期間の間に発生した最初の出力光パルスと最終の出力光パルスとの間でパワーが同じになるように、前記非発光期間における前記励起光のパワーを制御する制御部とを備える、光増幅装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記光増幅装置の起動時に、前記出力光パルスの予め定められた条件ごとに、前記非発光期間における前記励起光のパワーを制御して、前記最初の出力光パルスと前記最終の出力光パルスとの間でパワーを同じにするための前記励起光のパワーに関するデータを取得し、
前記光増幅装置は、
前記データを前記出力光パルスの前記予め定められた条件と関連付けて記憶する記憶部をさらに備える、請求項1に記載の光増幅装置。
【請求項3】
前記光増幅装置の運転時に、前記制御部は、前記記憶部に記憶されたデータに基づいて、前記非発光期間における前記励起光のパワーを設定する、請求項2に記載の光増幅装置。
【請求項4】
前記励起光源は、半導体レーザであり、
前記データは、前記半導体レーザのバイアス電流のデータであり、
前記出力光パルスの条件が変更された場合、前記制御部は、変更前の条件に対応する前記バイアス電流のデータの変動を、変更後の条件に対応する前記バイアス電流のデータに反映させる、請求項3に記載の光増幅装置。
【請求項5】
前記出力光パルスを前記光増幅装置の外部に出力することを防ぐためのシャッタをさらに備え、
前記制御部は、前記シャッタを閉じた状態で、前記光増幅装置の起動時における前記データを取得する、請求項2に記載の光増幅装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光増幅装置を備える、レーザ加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図4】
【図5】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図4】
【図5】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−248615(P2012−248615A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118041(P2011−118041)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】
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