説明

光変調器の駆動制御装置

【課題】任意の駆動信号の振幅において適切なバイアス制御を行うことが可能な技術を提供することを目的とする。
【解決手段】光変調器2の駆動制御装置100は、光変調器2からの光信号に応じた電気信号の波形のピークを示すピーク検波出力信号を取得するピーク検波部5と、発振信号を生成する発振回路部6と、ピーク検波出力信号と発振信号とに基づいて同期検波を行う同期検波部7とを備える。駆動制御装置100は、同期検波の結果に基づいて、光変調器2の変調に係るバイアスを制御するための制御信号を生成するバイアス設定部8と、制御信号に発振信号を加算する加算器10bと、発振信号を含む所定信号に基づいてデータ信号を増幅することにより、駆動信号を生成する増幅器11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源から連続的に出射された光を変調することにより光信号を生成する光変調器に対して、駆動制御を行う駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信システムの変調方式の一つとして、レーザーダイオードなどの半導体レーザに駆動電流に応じた光信号を出力させることにより、電気信号に比例した強度の光信号を生成する直接変調方式が知られている。この直接変調方式は、装置構成が非常に簡単であるという長所を有しているが、この方式を用いて、伝送速度が数Gbit/sを超える超高速・広帯域光通信を行おうとすると、変調時に光の波長が不適切に変化する波長変動(チャーピンング)現象が生じてしまい、伝送容量が制限されるという問題があった。このため、以上のような直接変調方式は、伝送速度が比較的低速な光通信システムにおいて用いられている。
【0003】
それに対し、高速の光通信を行う方式として、半導体レーザにおいて連続的に光を出射させ、外部変調器においてこの光を駆動信号(電気信号)に応じてオン/オフすることにより、変調時のチャーピングを抑制する外部変調方式が用いられている。この外部変調方式を行う最も一般的な光変調器としては、マッハツェンダ(Mach−Zehnde:以下「MZ」)型光変調器が知られている。また、NRZ(Non Return to Zero)変調方式のMZ型光変調器では、駆動信号のハイレベル及びローレベルと、光出力特性の発光点及び消光点とがそれぞれ合わされる。なお、以下の説明では、周期的に変化する光出力特性の発光点/消光点に対応したバイアス(バイアス電圧)の差をVπと記すことにする。この場合、上述のNRZ変調方式における駆動信号の振幅はVπとなる。
【0004】
さて、以上のような光変調器によれば、上述したようにチャーピングを抑制することができるが、駆動信号に対する光出力特性が、温度や経時変化等に起因してドリフトしてしまう。その結果、光出力のオン/オフレベルに符号間干渉が生じることがあるという問題がある。そこで、例えば特許文献1に開示されているように、曲線の変動に応じて、駆動信号によるバイアスを適切に制御する技術、つまり光変調器の動作点を正常に補償する技術が提案されている。
【0005】
また、MZ型光変調器などの光変調器においては、DPSK(Differential Phase Shift Keying)や、CSRZ(Carrier-Suppressed Return to Zero)などに適用可能な変調方式も提案されている。このような変調方式の一例として、特許文献2には、駆動信号の振幅(駆動振幅)が2Vπである場合を100%として、そのパーセント値を80%(駆動振幅は1.6Vπ)などと変更可能としている。そして、バイアスに低周波信号を重畳してバイアスのずれを検出、つまり動作点の変動量及び変動方向を検出し、それをフィードバックしてバイアスを適切に制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−251815号公報
【特許文献2】特開2003−283432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示されているような方式では、バイアス制御によって光変調器の変調を安定化させることが可能であるが、変更される駆動振幅の中にバイアスのずれを検出できない駆動振幅が存在する。つまり、適切なバイアス制御を行うことができない駆動振幅が存在するという問題がある。
【0008】
特に、従来のデジタル伝送などにおいては、伝送速度が最も優れる2Vπ(100%)近傍の駆動振幅が使用されることが一般的であったため、上述の問題は顕在化していなかった。しかしながら、今日、予等化技術と呼ばれる、一種のアナログ光変調である電気的な分散補償技術が報告されており、その予等化においては、変調の線形性の要求から、駆動信号が、2Vπ(100%)からある程度小さい振幅で駆動されることも報告されている。したがって、今後、上述の問題が顕在化すると考えられる。
【0009】
そこで、本発明は、上記のような問題点を鑑みてなされたものであり、任意の駆動信号の振幅において適切なバイアス制御を行うことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光変調器の駆動制御装置は、光源から連続的に出射された光を駆動信号に基づいて変調することにより光信号を生成する光変調器であって、前記駆動信号の電圧に対する光出力特性が周期的に変化する光変調器に対して、駆動制御を行う光変調器の駆動制御装置である。前記駆動制御装置は、前記光変調器からの前記光信号に応じた電気信号の波形のピークを示すピーク検波出力信号を取得するピーク検波部と、発振信号を生成する発振回路部と、前記ピーク検波部で取得した前記ピーク検波出力信号と、前記発振回路部で生成された発振信号とに基づいて同期検波を行う同期検波部とを備える。前記駆動制御装置は、前記同期検波部での同期検波の結果に基づいて、前記光変調器の前記変調に係るバイアスを制御するための制御信号を生成するバイアス制御部と、前記バイアス制御部で生成された前記制御信号に、前記発振回路部で生成された発振信号を加算する加算器と、前記発振回路部で生成された発振信号を含む所定信号に基づいてデータ信号を増幅することにより、前記駆動信号を生成する増幅器とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、任意の駆動信号の振幅において適切なバイアス制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1に係る光変調器の駆動制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る光変調器の駆動制御装置の動作を示す図である。
【図3】実施の形態1に係る光変調器の駆動制御装置の動作を示す図である。
【図4】実施の形態1に係る光変調器の駆動制御装置の動作を示す図である。
【図5】実施の形態1に係る光変調器の駆動制御装置の動作を示す図である。
【図6】実施の形態1に係る光変調器の駆動制御装置の動作を示す図である。
【図7】実施の形態1に係る光変調器の駆動制御装置の動作を示す図である。
【図8】実施の形態2に係る光変調器の駆動制御装置の構成を示すブロック図である。
【図9】実施の形態3に係る光変調器の駆動制御装置の構成を示すブロック図である。
【図10】実施の形態3に係る光変調器の駆動制御装置の構成を示すブロック図である。
【図11】関連駆動制御装置の動作を示す図である。
【図12】関連駆動制御装置の動作を示す図である。
【図13】関連駆動制御装置の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態1>
まず、本発明の実施の形態1に係る光変調器の駆動制御装置について説明する前に、当該駆動制御装置に関連し、高速の伝送速度を実現可能な駆動制御装置(以下「関連駆動制御装置」と呼ぶ)について、以下説明する。なお、以下において光変調器はMZ型光変調器であるものとして説明するが、これに限ったものではない。
【0014】
関連駆動制御装置に係る光変調器では、半導体レーザなどの光源から連続的に出射された光を、駆動信号(電気信号)に基づいて変調することにより光信号を生成し、当該光信号を出力する。
【0015】
図11は、光変調器における、駆動信号の電圧に対する光信号の特性(光出力特性)を示す図である。この光変調器においては、図11に示される曲線aのように、駆動信号の電圧(駆動電圧)が増減する方向(図11の左右方向)に対して、光出力特性が周期的に変化している。ここでの駆動電圧に対する光出力特性は、正弦波(余弦波)の波形を有しており、このような光出力特性に基づけば、発光点Aにおいて光出力が最大、消光点Bにおいて光出力が最小(ここでは消灯)となる。
【0016】
次に、NRZ変調方式(NRZ変調符号)が適用されたMZ型光変調器について説明する。NRZ変調方式においては、周期Tでレベルが変化可能な駆動信号のハイレベル及びローレベルが、発光点A及び消光点Bにそれぞれ合わせられている。つまり光出力特性(消光カーブ)が図11に示す曲線aのように設定されることによって、駆動信号に応じた光出力のオン/オフ変調が行われる。なお、以下の説明では、周期的に変化する光出力特性の発光点/消光点に対応したバイアス(バイアス電圧)の差をVπと記すことにする。この場合、上述のNRZ変調方式における駆動信号の振幅はVπとなる。
【0017】
以上のような光変調器では、チャーピングを抑制することができるという利点がある。しかし、駆動信号に対する光出力特性が、温度変化や経時変化等に応じてドリフトしてしまう。例えば、図11に示す曲線aが、温度変化や経時変化等に応じて曲線b,cにドリフトしてしまう。その結果、光出力のオン/オフレベルに符号間干渉が生じてしまうという問題がある。
【0018】
そこで、駆動電圧に対する光出力特性を示す曲線の変動に応じてバイアスを適切に制御する(つまり光変調器の動作点を正常に補償する)技術が提案されている。具体的には、低周波数の発振信号(以下「ディザ信号」と呼ぶ)が重畳された駆動信号を光変調器に入力し、光変調器の出力からバイアスのずれ(動作点の変動量及び変動方向)を検出し、それをフィードバックしてバイアスを適切な値に制御する。この制御によれば、光出力特性のドリフトの影響を抑制することが可能となる。なお、このような制御における最適なバイアス点は、光出力がオンとなる電圧と、光出力がオフとなる電圧とのほぼ中間点となっている。
【0019】
さて、関連駆動制御装置においては、以上のことを背景にして、DPSKやCSRZなどに対応可能となっている。具体的には、関連駆動制御装置は、駆動振幅が2Vπである場合を100%としてそのパーセント値を、例えば80%(駆動振幅は1.6Vπ)などと変更可能としている。そして、バイアスに低周波信号を重畳した駆動信号を光変調器に入力し、光変調器の出力からバイアスのずれを検出し、それをフィードバックしてバイアスを制御する。
【0020】
そして、駆動信号の振幅が2Vπの100%にほぼ等しい場合には、光出力パワーの平均値が最大となるようにバイアスを制御する最大化制御を行い、当該振幅が2Vπの100%からある程度小さい値(例えば2Vπの40%)である場合には、光出力パワーの平均値が最小となるようにバイアスを制御する最小化制御を行う。このような関連駆動制御装置において、理想的には、最適なバイアス点は光出力がオフとなる電圧(以下「NULL点」と呼ぶ)が最適なバイアス点であり、上記のバイアス制御においてもNULL点になるように制御が実施される。
【0021】
以上のような関連駆動制御装置によれば、DPSKやCSRZ等のNULL点が最適バイアスとなる変調方式においても、バイアスのずれを検出し、それをフィードバックしてバイアスを適切に制御することが可能である。その結果、光出力特性のドリフトの影響を抑制することが可能となっている。
【0022】
しかしながら、関連駆動制御装置によれば適切なバイアス制御を行うことができない駆動振幅が存在するという問題がある。ここで、駆動振幅が2Vπの50%である場合の関連駆動制御装置の動作を図12に示す。図12に示すように、関連駆動制御装置の制御によれば、光信号にはディザ信号の成分が現れない。この現象が、バイアスが最適な値であっても、最適な値からずれていても同様に生じる。次に、このことを図13を用いて説明する。
【0023】
図13は、関連駆動制御装置において、光信号とディザ信号とを同期検波して得られる同期検波出力と、バイアスずれとの関係を示す図である。駆動振幅が2Vπの100%である場合は、バイアスずれがゼロである(つまり最適バイアスである)場合に同期検波出力がゼロとなり、駆動振幅が小さくなると同期検波出力も小さくなる。したがって、駆動振幅が2Vπの100%である場合には、同期検波出力に基づいてバイアスのずれを検出することができる。
【0024】
しかし、駆動振幅が2Vπの50%である場合には、任意のバイアスずれに対して同期検波出力が常にゼロとなる。したがって、フィードバックを行うためのバイアスのずれを検出できない。つまり、関連駆動制御装置では、駆動振幅のパーセント値のうち、適切なバイアス制御を行うことができない領域(2Vπの50%)が存在するという問題がある。
【0025】
それに対して、本実施の形態に係る光変調器の駆動制御装置によれば、駆動振幅が2Vπの50%である場合においても、適切なバイアス制御を行うことが可能となっている。つまり、本実施の形態に係る駆動制御装置によれば、任意の駆動振幅において適切なバイアス制御を行うことが可能となっている。以下、このような本実施の形態に係る駆動制御装置について説明する。
【0026】
図1は、本実施の形態に係る駆動制御装置100の構成を示すブロック図である。なお、本実施の形態で説明する構成要素に付される参照符号は、実施の形態2〜4において、当該構成要素と同一または類似する構成要素に対しても付されるものとする。
【0027】
この図1には、駆動制御装置100周辺の構成要素(光源1及び光変調器2)についても図示がされている。光源1は、例えば半導体レーザなどから構成され、光を連続的に出射している。光変調器2は、例えばMZ型光変調器などから構成され、バイアス(バイアス電圧)を加味しつつ、光源1からの連続光を、駆動信号に基づいて変調することにより光信号を生成する。なお、光変調器2に係る駆動電圧に対する光出力特性は、図11に示した関連駆動制御装置の光出力特性と同様に周期的に変化するものとなっている。
【0028】
本実施の形態に係る駆動制御装置100は、図1に示すように、分波器3と、フォトダイオード4と、ピーク検波部5と、発振回路部6と、同期検波部7と、バイアス設定部8と、振幅設定部9と、加算器10a,10bと、増幅器11とを備えている。そして、この駆動制御装置100は、外部からのデータ信号を駆動信号に変換して光変調器2に出力するとともに、光変調器2の変調に係る上述のバイアスを出力する。これにより、駆動制御装置100は、光変調器2に対して駆動制御を行うものとなっている。次に、駆動制御装置100の構成要素について詳細に説明する。
【0029】
分波器3は、光変調器2からの光信号(出力信号)を分波し、フォトダイオード4は、分波器3の分波によって得られた光信号を電気信号に変換する。
【0030】
ピーク検波部5は、フォトダイオード4で得られた電気信号(光変調器2からの光信号に応じた電気信号)の波形のピークを示すピーク検波出力信号を取得する。ここでは、ピーク検波部5は、フォトダイオード4で得られた電気信号の波形の局所的なピークを連ねてなる包絡線を示すピーク検波出力信号を取得する。なお、このようなピーク検波部5には、例えば、通常、ダイオードとコンデンサとを用いて容易に構成することができるピーク検波器や、市場で容易に入手可能なピーク検波器などが用いられる。
【0031】
発振回路部6は、低周波数の発振信号(ディザ信号)を生成する。なお、発振回路部6で生成されるディザ信号は、制御信号及び駆動信号よりも周波数が低いものとする。
【0032】
同期検波部7は、ピーク検波部5で取得したピーク検波出力信号と、発振回路部6で生成されたディザ信号とに基づいて同期検波を行う。つまり、同期検波部7は、基準信号であるディザ信号からのピーク検波出力信号の差を抽出する。なお、このような同期検波部7には、例えば、バンドパスフィルタ、ミキサ、低域透過フィルタで構成される検波器などが用いられる。また、同期検波部7における処理は、デジタル信号処理によって実現されてもよい。
【0033】
バイアス制御部であるバイアス設定部8は、同期検波部7での同期検波の結果に基づいて、光変調器2の変調に係るバイアスを制御するための制御信号を生成する。つまり、バイアス設定部8は、光変調器2の変調に係るバイアスを設定する。
【0034】
振幅設定部9は、光変調器2に入力される駆動信号が有するべき振幅を示す振幅設定信号を生成する。ここでは、振幅設定部9での振幅の設定の一例として、駆動信号が有するべき振幅を、2Vπの100%、80%、…というように、2Vπのパーセント値で設定する。しかしこれに限ったものではなく、2Vπ、1.6Vπ、…というように振幅そのものを設定するものであってもよい。
【0035】
加算器10aは、発振回路部6で生成されたディザ信号と、振幅設定部9で生成された振幅設定信号とを加算することによって、増幅器11の利得を設定するための利得信号(所定信号)を生成する。したがって、利得信号は、発振回路部6からのディザ信号と、振幅設定部9からの振幅設定信号とを含むものとなっている。
【0036】
加算器10bは、バイアス設定部8で生成された制御信号に、発振回路部6で生成されたディザ信号を加算することによって、光変調器2の変調で用いられるべきバイアス(加算後の制御信号)を光変調器2に出力する。
【0037】
増幅器11の利得調整端子には、発振回路部6で生成されたディザ信号と、振幅設定部9で生成された振幅設定信号とを含む上述の利得信号が入力される。そして、増幅器11は、当該利得信号に基づいてデータ信号を増幅することにより駆動信号を生成する。つまり、増幅器11により生成された駆動信号は、振幅設定信号の分だけ、ディザ信号の発振の中心を移動した利得信号によって増幅(強度変調)された信号となっている。このようにして生成された駆動信号は、コンデンサ12を介して光変調器2に入力される。
【0038】
次に本実施の形態に係る駆動制御装置100等の動作について説明する。光源1より出射された連続光は光変調器2に入力される。加算器10aは、振幅設定部9からの振幅設定信号に、発振回路部6からのディザ信号を加算し、それによって得られた利得信号を増幅器11に出力する。増幅器11は、加算器10aからの利得信号に基づいてデータ信号を増幅することによって駆動信号を生成する。光変調器2は、バイアスを加味して、光源1からの連続光を駆動信号に基づいて変調した光信号を出力する。光変調器2から出力された光信号は、分波器3によって分波され、フォトダイオード4で電気信号に変換されて、ピーク検波部5に入力される。ピーク検波部5は、この電気信号の包絡線を示すピーク検波出力信号を生成する。ここで、ピーク検波部5は、電気信号の包絡線を取得することから、ディザ信号に関する成分のみが抽出されることになる。
【0039】
同期検波部7は、ピーク検波部5からのピーク検波出力信号と、発振回路部6で生成したディザ信号とを掛け合わせて同期検波を行い、それによって、ディザ信号からのピーク検波出力信号の差を示す信号を取得し、当該信号をバイアス設定部8に出力する。バイアス設定部8は、同期検波部7からの当該信号に基づき、バイアスを制御する制御信号を出力する。加算器10bは、制御信号にディザ信号を加算し、それによって得られたバイアスを光変調器2に出力する。
【0040】
以上の制御を行う本実施の形態に係る駆動制御装置100によれば、駆動信号の任意の振幅、つまり増幅器11での任意の増幅に対してバイアスを適切に制御することが可能であり、その結果、光出力特性のドリフトの影響を抑制することが可能となっている。以下、このことについて図2〜図5を用いて説明する。
【0041】
図2は、本実施の形態に係る駆動制御装置100において生成される信号を示す図である。なお、図2は図2(a)〜(c)を含んでいる。
【0042】
図2(a)は、加算器10bから光変調器2に入力されるバイアス、つまり加算後の制御信号)を示す図である。図2(a)に示すように、バイアスの波形の振幅方向での両端部には、同位相の2つのディザ信号がそれぞれ現れている。
【0043】
図2(b)は、増幅器11から光変調器2に入力される駆動信号、つまりディザ信号を含む利得信号に基づいて振幅変調された信号を示す図である。図2(b)に示すように、駆動信号の波形の振幅方向での両端部には、位相が互いに180°ずれた2つのディザ信号がそれぞれ現れている。
【0044】
本実施の形態では、光変調器2に、図2(a)に示されるバイアスと、図2(b)に示される駆動信号とが入力される。そうすると、光変調器2は、図2(c)に示すように、一方の発光点側においてはディザ信号が足し合わされ、他方の発光点側においてはディザ信号が打ち消された信号(以下「合成信号」と呼ぶ)に基づいて、光信号(出力信号)を生成することになる。これにより、合成信号に重畳されているディザ信号は、一方の発光点側と、他方の発光点側において非対称となる。
【0045】
次に、図2(c)に示すような合成信号に基づいて、光変調器2が光信号(出力信号)を生成する場合の光変調器2及び駆動制御装置100の動作について、図3〜図5を用いて説明する。
【0046】
図3は、バイアスが適切に設定されたときの光変調器2及び駆動制御装置100の動作を示す図である。この場合には、図3に示す一点鎖線のように、発光点は、合成信号に重畳されているディザ信号の振幅の中心と対応する。その結果、ピーク検波部5からのピーク検波出力信号は、ディザ信号の周波数の2倍の周波数成分のみを含むことになる。このため、ピーク検波部5からのピーク検波出力信号と、発振回路部6からのディザ信号との同期検波の結果を示す、同期検波部7の出力は、ゼロとなる。バイアス設定部8は、同期検波部7からゼロを受け取った場合には、バイアスが適切に制御され設定されていると判断する。
【0047】
一方、図4は、バイアスが適切な値より高く設定されたときの光変調器2及び駆動制御装置100の動作を示す図である。この場合には、図4に示す一点鎖線のように、発光点は、合成信号に重畳されているディザ信号の振幅の中心よりも低い値と対応する。その結果、ピーク検波出力信号は、ディザ信号と同じ周波数成分を含み、かつ位相はディザ信号から180°ずれることになる。このため、同期検波部7の出力は、マイナスの値となる。バイアス設定部8は、同期検波部7からマイナスの値を受け取った場合には、その値に応じてバイアスを減少させるための制御信号を出力する。
【0048】
また、図5は、バイアスが適切な値よりも低く設定されたときの光変調器2及び駆動制御装置100の動作を示す図である。この場合には、図5に示す一点鎖線のように、発光点は、合成信号に重畳されているディザ信号の振幅の中心よりも高い値に対応する。その結果、ピーク検波出力信号は、ディザ信号と同じ周波数成分を含み、かつ位相もディザ信号と同じとなる。このため、同期検波部7の出力は、プラスの値となる。バイアス設定部8は、同期検波部7からプラスの値を受け取った場合には、その値に応じてバイアスを増加させるための制御信号を出力する。
【0049】
以上、図3〜図5を用いて説明したような制御を行えば、バイアスを適切な値に制御することが可能となり、光出力特性のドリフトの影響を抑制することができる。
【0050】
ただし、以上は、光変調器2に入力される駆動信号の動振幅が2Vπの100%である場合についての説明である。次に図6を用いて、当該駆動信号の振幅が2Vπの50%である場合の光変調器2及び駆動制御装置100の動作について説明する。ここで、図6は、駆動信号の振幅が2Vπの50%であり、かつ、バイアスが適切に設定されたときの光変調器2及び駆動制御装置100の動作を示している。この場合、図6に示す一点鎖線のように、発光点と消光点との中心点は、合成信号に重畳されているディザ信号の振幅の中心に対応する。その結果、ピーク検波部5の出力信号は、ディザ信号と同じ周波数成分を含み、かつ位相もディザ信号と同じとなる。このため、同期検波部7の出力は、プラスの値となる。
【0051】
次に、図7に、本実施の形態に係る駆動制御装置100における同期検波出力と、バイアスずれとの関係を示す。この図7に示されるように、本実施の形態に係る駆動制御装置100においては、駆動振幅に応じて、同期検波出力のピークに対応するバイアスずれが異なるが、それ以外、例えば同期検波出力のピーク値などについては、駆動振幅によらず同一である。
【0052】
さて、この図7に示すように、本実施の形態に係る駆動制御装置100によれば、駆動振幅が2Vπの0,25,50,75,100%のいずれであっても、バイアスのずれに応じて同期検波出力が変化する。例えば、駆動振幅が2Vπの50%である場合には、図7において三角が付された曲線に示されるように、バイアスずれがゼロに近づくほど同期検波出力がプラス方向に大きくなる。したがって、本実施の形態に係る駆動制御装置100によれば、関連駆動制御装置では行うことができなかった、駆動振幅が2Vπの50%である場合においても、同期検波出力に応じて適切なバイアス制御を行うことができる。つまり、任意の駆動信号の振幅において適切なバイアス制御を行うことができる。また、光変調器2のバイアス制御において、バイアスをNULL点に制御することが可能となり、安定的に光変調器2を動作させることができる。
【0053】
なお、図2(a)に示した、加算器10bからのバイアス(出力信号)に含まれるディザ信号の振幅と、図2(b)に示した利得信号に含まれるディザ信号の振幅とは、等しいことが望ましい。この場合には、図2(c)に示した合成信号の一方の発光点で完全に打ち消しあうことができ、ディザ信号を加算したことによる信号品質劣化を抑制することができる。それだけでなく、同期検波出力を比較的大きくすることができ、制御感度を高くすることができる。ただし、必ずしも、上述の2つの振幅を等しくする必要はなく、例えば、制御感度が十分に得られている場合には、その必要はない。
【0054】
また、関連駆動制御装置においては、最適バイアスに対応する同期検波出力は、駆動振幅によらずゼロであったが、本実施の形態に係る駆動制御装置100における最適バイアスに対応する同期検波出力は、図7に示したように、駆動振幅によって異なる。したがって、図7に示した同期検波出力とバイアスずれとの関係の中から、自動的に、駆動振幅に応じた関係を用いてバイアスを制御するようにすることが望ましい。このことについては、実施の形態2〜4にて説明する。
【0055】
<実施の形態2>
図8は、本発明の実施の形態2に係る駆動制御装置100の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る駆動制御装置100は、概ね、実施の形態1に係る駆動制御装置100において、振幅設定部9がバイアス設定部8に直接接続されたものとなっている。
【0056】
上記に説明した実施の形態1に係る駆動制御装置100では、バイアス設定部8は、図7に示した関係に基づいて、同期検波出力に対して予め設定されたバイアスずれがゼロとなるようにフィードバックをかけて制御する。しかし、上述したように、駆動振幅に応じて、同期検波出力とバイアスずれとの関係が変化することから、バイアス設定部8に、駆動振幅に係る情報が入力されるべきであると考えられる。
【0057】
そこで、本実施の形態では、駆動制御装置100では、振幅設定部9が生成した振幅設定信号、つまり、2Vπの100%、2Vπの0%などを示す信号が、バイアス設定部8に入力される。バイアス設定部8は、振幅設定部9が生成した振幅設定信号に基づき光変調器2に入力される駆動信号の振幅を算出する。
【0058】
バイアス設定部8は、図7に示した同期検波出力とバイアスずれとの関係を記憶した記憶部8aを有しており、記憶部8aに記憶された当該関係の中から、算出した振幅に対応する関係を取得する。そして、バイアス設定部8は、取得した関係に基づいて、同期検波出力に対して設定されたバイアスずれがゼロとなるように制御信号を生成する。つまり、本実施の形態では、バイアス設定部8は、振幅設定部9が生成した振幅設定信号を加味してバイアスを制御するための制御信号を生成する。
【0059】
以上のような本実施の形態に係る駆動制御装置100によれば、振幅設定部9で振幅が変更されるごとに、同期検波出力とバイアスずれとの関係を適切に選択し、当該関係を用いて適切なバイアス制御を行うことができる。したがって、使い勝手のよい駆動制御装置100を実現することができる。
【0060】
<実施の形態3>
図9は、本発明の実施の形態2に係る駆動制御装置100の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る駆動制御装置100は、概ね、実施の形態1に係る駆動制御装置100において、フォトダイオード4及びバイアス設定部8と接続された光強度検出部13が追加されたものとなっている。
【0061】
上記に説明した実施の形態2では、振幅設定部9が生成した振幅設定信号が示す振幅を加味して制御信号を生成した。ここで、振幅設定信号が示す振幅は、光変調器2からの光信号の光強度と対応関係にあると考えられる。
【0062】
そこで、本実施の形態では、光強度検出部13が、光変調器2からの光信号の光強度(ここではフォトダイオード4に入力される光信号の光強度)を検出する。そして、バイアス設定部8は、光強度検出部13が検出した光強度に基づき光変調器2に入力される駆動信号の振幅を算出する。
【0063】
バイアス設定部8は、図7に示した同期検波出力とバイアスずれとの関係を記憶した記憶部8aを有しており、記憶部8aに記憶された当該関係の中から、算出した振幅に対応する関係を取得する。そして、バイアス設定部8は、取得した関係に基づいて、同期検波出力に対して設定されたバイアスずれがゼロとなるように制御信号を生成する。つまり、本実施の形態では、バイアス設定部8は、光強度検出部13が検出した光強度を加味して制御信号を生成する。
【0064】
以上のような本実施の形態に係る駆動制御装置100によれば、振幅設定部9で振幅が変更されるごとに、同期検波出力とバイアスずれとの関係を適切に選択し、当該関係を用いて適切なバイアス制御を行うことができる。したがって、使い勝手のよい駆動制御装置100を実現することができる。
【0065】
<実施の形態4>
図10は、本発明の実施の形態2に係る駆動制御装置100の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る駆動制御装置100は、概ね、実施の形態1に係る駆動制御装置100において、コンデンサ12及び光変調器2と接続された高周波ピーク検波部14(振幅検出部)が追加されたものとなっている。
【0066】
上記に説明した実施の形態2では、振幅設定部9が生成した振幅設定信号が示す振幅を加味して制御信号を生成した。それに対して、本実施の形態では、高周波ピーク検波部14が、光変調器2に入力される駆動信号の振幅を直接検出する。
【0067】
バイアス設定部8は、図7に示した同期検波出力とバイアスずれとの関係を記憶した記憶部8aを有しており、記憶部8aに記憶された当該関係の中から、算出した振幅に対応する関係を取得する。そして、バイアス設定部8は、取得した関係に基づいて、同期検波出力に対して設定されたバイアスずれがゼロとなるように制御信号を生成する。つまり、本実施の形態では、バイアス設定部8は、高周波ピーク検波部14が検出した振幅を加味して制御信号を生成する。
【0068】
以上のような本実施の形態に係る駆動制御装置100によれば、振幅設定部9で振幅が変更されるごとに、同期検波出力とバイアスずれとの関係を適切に選択し、当該関係を用いて適切なバイアス制御を行うことができる。したがって、使い勝手のよい駆動制御装置100を実現することができる。
【0069】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合せたり、各実施の形態の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 光源、2 光変調器、5 ピーク検波部、6 発振回路部、7 同期検波部、8 バイアス設定部、9 振幅設定部、10b 加算器、11 増幅器、13 光強度検出部、14 高周波ピーク検波部、100 駆動制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から連続的に出射された光を駆動信号に基づいて変調することにより光信号を生成する光変調器であって、前記駆動信号の電圧に対する光出力特性が周期的に変化する光変調器に対して、駆動制御を行う光変調器の駆動制御装置であって、
前記光変調器からの前記光信号に応じた電気信号の波形のピークを示すピーク検波出力信号を取得するピーク検波部と、
発振信号を生成する発振回路部と、
前記ピーク検波部で取得した前記ピーク検波出力信号と、前記発振回路部で生成された発振信号とに基づいて同期検波を行う同期検波部と、
前記同期検波部での同期検波の結果に基づいて、前記光変調器の前記変調に係るバイアスを制御するための制御信号を生成するバイアス制御部と、
前記バイアス制御部で生成された前記制御信号に、前記発振回路部で生成された発振信号を加算する加算器と、
前記発振回路部で生成された発振信号を含む所定信号に基づいてデータ信号を増幅することにより、前記駆動信号を生成する増幅器と
を備える光変調器の駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光変調器の駆動制御装置であって、
前記加算器からの出力信号に含まれる前記発振信号の振幅と、前記所定信号に含まれる前記発振信号の振幅とは等しい、光変調器の駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光変調器の駆動制御装置であって、
前記駆動信号が有するべき振幅を示す、前記所定信号に含まれる振幅設定信号を生成する振幅設定部をさらに備え、
前記バイアス制御部は、前記振幅設定部が生成した前記振幅設定信号を加味して前記制御信号を生成する、光変調器の駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の光変調器の駆動制御装置であって、
前記光変調器からの前記光信号の光強度を検出する光強度検出部をさらに備え、
前記バイアス制御部は、前記光強度検出部が検出した前記光強度を加味して前記制御信号を生成する、光変調器の駆動制御装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の光変調器の駆動制御装置であって、
前記駆動信号の振幅を検出する振幅検出部をさらに備え、
前記バイアス制御部は、前記振幅検出部が検出した前記駆動信号の振幅を加味して前記制御信号を生成する、光変調器の駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−88702(P2013−88702A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230583(P2011−230583)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】