説明

光変調器

【課題】安価で時間の経過に対して比較的変化の小さなドリフト特性を有するLN光変調器を提供する。
【解決手段】バッファ層21が、周期律表の三から八族あるいは一b族と二b族に属する金属元素もしくはその酸化物、及びSi以外の半導体元素もしくはその酸化物の少なくとも1つのドーパントからなるドーパント層31と、前記金属元素もしくはその酸化物、及びSi以外の半導体元素もしくはその酸化物のいずれをも含まないか、前記金属元素もしくはその酸化物、及びSi以外の半導体元素もしくはその酸化物の少なくとも1つをドーパント層31よりも低い濃度で含むドーパント低濃度層30とを備え、ドーパント低濃度層30とドーパント層31とを交互に積層し、かつ電極4に電圧を印加してからの時間経過において実用上フラットなDCドリフト特性となる厚みを有するドーパント低濃度層30とドーパント層31とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光変調器に係り、特に、高速で駆動電圧が低く、かつDCドリフトが小さく、製作の歩留まりが良い光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、光変調器において、リチウムナイオベート(LiNbO)のように電界を印加することにより屈折率が変化する、いわゆる電気光学効果を有する基板(以下、リチウムナイオベート基板をLN基板と略す)に光導波路と進行波電極を形成した進行波電極型リチウムナイオベート光変調器(以下、LN光変調器と略す)は、その優れたチャーピング特性から2.5Gbit/s、10Gbit/sの大容量光伝送システムに適用されている。
【0003】
このようなLN光変調器は、最近ではさらに40Gbit/sの超大容量光伝送システムにも適用が検討されており、大容量光伝送システムにおけるキーデバイスとして期待されている。
【0004】
[第1の従来技術]
図12は、第1の従来技術によるz−カットLN基板を用いて構成したLN光変調器の構成を示す斜視図である。図13は、図12のA−A'における断面図である。
【0005】
図中、1はz−カットLN基板、2はSiOからなるバッファ層、3はTiを1050℃で約10時間熱拡散して形成した光導波路であり、マッハツェンダ干渉系(あるいは、マッハツェンダ光導波路)を構成している。5はLN光変調器の温度ドリフトを抑圧するためのSi導電層である。
【0006】
なお、図中、3a、3bは電気信号と光が相互作用する部位(相互作用部という)における光導波路(あるいは、相互作用光導波路)、つまりマッハツェンダ光導波路の2本のアームであり、不図示のY分岐光導波路などによって光導波路3を分岐したものである。
【0007】
また、図中、4は進行波電極であり、この進行波電極4としては、一例として1つの中心導体4aと2つの接地導体4b、4cを有するコプレーナウェーブガイド(CPW)を用いる場合について述べるが、その他の電極構造でも良い。
【0008】
光導波路3を導波する光が進行波電極である金属(一般に、Auを用いる)から受ける吸収損を抑え、また中心導体4aと接地導体4b、4cからなる進行波電極4を導波する電気信号のマイクロ波等価屈折率(あるいは、進行波電極のマイクロ波等価屈折率)nを低減し相互作用光導波路3a、3bを導波する光の等価屈折率(あるいは、光導波路の等価屈折率)nに近づけ、さらに特性インピーダンスを極力50Ωに近づけるために、進行波電極4とz−カットLN基板1との間には、通常、400nm〜1μm程度の厚い酸化シリコンからなるバッファ層2が形成される。
【0009】
ここでは、バッファ層2としては酸化シリコンの代表であるSiOを想定する。なお、SiOからなるバッファ層2の堆積に当たっては、一般にスパッタ装置が使用され、そのターゲット材料としては、Siや酸化シリコン、その中でも特にSiOが選択されることが多い。
【0010】
なお、このバッファ層2は電気信号即ちマイクロ波の等価屈折率nを相互作用光導波路3a、3bを伝搬する光の等価屈折率nに近づけることにより、光変調帯域を拡大するという重要な働きをしている。
【0011】
次に、このように構成されるLN光変調器の動作について説明すると、このLN光変調器を動作させるには、中心導体4aと接地導体4b、4c間に直流バイアス(以下、DCバイアスという)と高周波電気信号(以下、RF電気信号という)とを印加する必要がある。
【0012】
図14に示す電圧−光出力特性において、実線の曲線はある状態でのLN光変調器の電圧−光出力特性であり、Vはその際のDCバイアス電圧である。
【0013】
この図14に示すように、通常、DCバイアス電圧Vは光出力特性の山と底の中点に設定される。
【0014】
一般に、中心導体4aと接地導体4b、4cとの間には通常5Vから10VのDCバイアス電圧が印加されるが、中心導体4aと接地導体4b、4cの間のギャップが通常10μmから40μm程度であることから、中心導体4aと接地導体4b、4cとの間には数100kV/mから1000kV/mもの高い電界が印加されることになる。
【0015】
このように高い電界の下では、SiOなどのシリコン酸化物からなるバッファ層2内に誘起された電荷が移動する結果、図14において破線の曲線で示すように電圧−光出力特性が矢印で示す方向に変化してしまうため、DCバイアス電圧をVからV'のように設定変更する必要がある。
【0016】
そして、LN光変調器の環境温度が一定の場合におけるこのDCバイアス電圧Vの変化がDCドリフトと呼ばれている。
【0017】
次に、図12及び図13に示したz−カット基板LN光変調器の等価回路図を図15に示す。この図15を用いてDCドリフト現象について考察する。なお、図15では、図12及び図13に示したz−カット基板LN光変調器の対称性を考慮し、左半分のみについて表している。
【0018】
ここで、C、Rは各々バッファ層2の等価的なキャパシタンスと電気的抵抗を、またCLN、RLNはそれぞれ相互作用光導波路3aを含むz−カットLN基板1の等価的なキャパシタンスと電気的抵抗を表している。
【0019】
DCバイアス電圧Vが印加された瞬間における電圧の分配はバッファ層2のキャパシタンスCとz−カットLN基板1のキャパシタンスCLNにより決定される。つまり、中心導体4aと接地導体4b、4cの間に印加されたDCバイアス電圧をVとすると、相互作用光導波路3a、3bに印加される電圧VLN
LN=V・C/(C+2CLN) (1)
として与えられる。
【0020】
ところが、時間が充分に経過すると、電圧の分配はSiOバッファ層2の電気的抵抗Rとz−カットLN基板1の電気的抵抗RLNにより決定される。つまり、相互作用光導波路3a、3bに印加される電圧VLN
LN=V・RLN/(RLN+2R) (2)
となる。
【0021】
さて、第1の従来技術のように相互作用光導波路3a、3bの上に形成するバッファ層の材料としてSiOを使用する場合には、バッファ層2の電気的抵抗Rがz−カットLN基板1の電気的抵抗RLNよりも大きいので、印加したDCバイアス電圧Vのうちの多くがバッファ層2の電気的抵抗Rに加わってしまう。そのため、z−カットLN基板1の電気的抵抗RLNにおける電圧降下は時間の経過とともに急速に小さくなる。
【0022】
つまり、この場合には、DCバイアス電圧Vを加えても、z−カットLN基板1の電気的抵抗RLNにはあまり印加されないことになり、相互作用光導波路3a、3bには大きな印加電圧を作用させることはできない。その結果、DCバイアス電圧Vとしてはより大きな値が必要になってくることになる。
【0023】
この様子を図16に示す。ここで、DCドリフト量Sは
S=(V'−V)/V (3)
と定義した。ここで、VとV'は初期と時間経過後のDCバイアス電圧に対応する。また、SiOバッファ層2の厚みDは1.0μmとした。なお、この実験におけるLN光変調器の環境温度はDCドリフトを加速するために実際のシステムの環境温度よりも大幅に高い100℃とした。この第1の従来技術を説明する図16のように経過時間とともにDCドリフト量Sが大きくなり続ける現象を正のDCドリフト(あるいは、簡単に正のドリフト)と呼んでいる。
【0024】
この設定変更されたDCバイアス電圧V'が電気制御回路により制御できる範囲を超える場合には電気的に制御不可能となり、LN光変調器としての寿命が尽きたことに対応する。これは図16において、DCドリフト量Sが例えば100%になった時をLN光変調器の寿命と定義すると、図中の時間Tが寿命となる。
【0025】
光通信システムでは、このTは装置が使用される環境温度において20年あるいは25年といった長い寿命が要求される。そのため、このDCドリフトを低減することはLN光変調器を光通信システムにおいて使用する上で、極めて重要となる。
【0026】
[第2の従来技術]
このDCドリフトを解決するために、z−カットLN基板を使用するLN光変調器について特許文献1、あるいは特許文献2として提案された技術を第2の従来技術として説明する。
【0027】
この第2の従来技術では、第1の従来技術で使用した絶縁体であるSiOからなるバッファ層2にやや導電性のある酸化インジウム(In)や酸化チタン(TiO)、あるいは酸化錫(SnO)などの金属の酸化物をドーピングすることにより、SiO単体の場合よりもバッファ層の抵抗値が小さくなるように、さらには最適な値となるように調整しようとするものである。
【0028】
図17にはこの第2の従来技術に基づくLN光変調器を製作する際にバッファ層を堆積するスパッタ装置のチャンバー部について、その横断面図を示す。図中、6は真空チャンバー、7はz−カットLNウェーハ8を保持しつつ回転するドラム、9はSiOターゲット、10はInターゲット、11はTiOターゲット、12はSnOターゲットである。
【0029】
なお、Inターゲット10は金属であるインジウム(In)を、TiOターゲット11は金属であるチタン(Ti)を、SnOターゲット12は金属である錫(Sn)を酸化させた後に成形する工程を経て製造される。いずれのターゲットも酸化物とはいえある程度の導電性を有している。
【0030】
このスパッタ装置を使用して、実際にLN光変調器を製作するに当たっては、スパッタ装置の真空チャンバー6内においてガスプラズマを発生させることにより、回転するドラム7に固定したz−カットLNウェーハ8の上に、SiOターゲット9からはSiOを、Inターゲット10からはInを、TiOターゲット11からはTiOを、SnOターゲット12からはSnOを堆積させる。
【0031】
こうして製作したLN光変調器の一例を図18に示す。ここで、図13に示した第1の従来技術ではSiOで構成されるバッファ層2が使用されているが、図18に示すこの第2の従来技術では、導電性を有する酸化物であるIn層15がSiO層14の中にほぼ均質にドーピングされているとみなせるほど、SiO層14とIn層15とが極めて緻密に積層されている。
【0032】
つまり、この第2の従来技術では相互作用光導波路3a、3bと、中心導体4a、接地導体4b、4c、及びSi導電層5の間にあるバッファ層全体が導電性酸化物混合バッファ層13により構成されている。
【0033】
なお、ここでは導電性酸化物混合バッファ層13を成膜するに当たって、SiOターゲット9とInターゲット10の2つを使用する場合について説明したが、TiOターゲット11やSnOターゲット12、あるいはこれらを組み合わせて使用しても良い。
【0034】
ここで、第1の従来技術として示した図15に対応する等価回路を図19に記す。導電性酸化物混合バッファ層13の等価的なキャパシタンスと電気的抵抗を各々C'、R'とする。第2の従来技術における第1の従来技術からの大きな変更点は、第2の従来技術における導電性酸化物混合バッファ層13の等価的な電気的抵抗R'が第1の従来技術におけるSiOからなるバッファ層2の等価的な電気的抵抗Rに比べて小さいことである。つまり、
'<R (4)
とした点である。
【0035】
さらに、その抵抗値R'も次に述べるようにLN光変調器の信頼性の観点から有利なDCドリフト特性となるように最適化されている。即ち、初期の経過時間において大きな負のドリフト(後述)を起こさせて、LN光変調器の寿命を延ばすように最適化されている。なお、正確にはキャパシタンスC'も第1の従来技術のキャパシタンスCと異なってはいるが、ここでは主要な働きをする電気的抵抗R'とRに着目して議論している。
【0036】
この第2の従来技術のDCドリフト特性(DCドリフト量S)を図20に示す。ここで、LN光変調器の環境温度は図16の場合と同じく100℃とした。図16に示した第1の従来技術と比較して、DCドリフト特性は大幅に改善されていることがわかる。さらに、この第2の従来技術では、初期の経過時間(日数)の領域(図20においてIとして示した領域)ではDCドリフト量Sの時間に関する微係数が極めて大きな負となっている。なお、ここではInをバッファ層全体に対して6mol%含有させることにより、大きな負のドリフトを実現している。
【0037】
このようにDCドリフト量Sの時間に関する微係数が負になる現象を負のDCドリフト(あるいは、簡単に負のドリフト)と呼んでいる。負のドリフトが生じる場合には、印加したDCバイアス電圧は時間の経過とともに、まずその符号が反対の電圧に向かって大きく変化し、その後初期に印加したDCバイアス電圧の符号の方向に大きくなる。つまり、最初にプラスのDCバイアス電圧を印加した場合には、DCバイアス電圧はまずマイナスに向かって大きく減少し、その後、プラス方向への増加に転ずる。逆に、最初にマイナスのDCバイアス電圧を印加した場合には、DCバイアス電圧はまずプラスに向かって大きく増加し、その後、マイナス方向にその絶対値が大きくなる。
【0038】
なお、金属Inの酸化物であるInを用いると大きな負のドリフトが発生することが知られている。これまで大きな負のドリフトが好ましいと考えられ、その実現に注力されてきた。
【0039】
さて図20において領域Iとして示した時間経過の初期における大きな負のドリフトはその後に始まる長期的なDCドリフトに対して極めて有利になると特許文献1には述べられている。なお、バッファ層の厚み方向における電気的抵抗を小さくすることにより、DCドリフトを抑圧する、さらには負のドリフトを発生させる構造は特許文献1の前にすでに特許文献2として提案されている。
【0040】
つまり、特許文献2には電圧を印加した初期には等価的なキャパシタンスC'に電圧が印加され、時間とともに今度は等価的な電気的抵抗R'に電圧が印加されることと、その等価的なキャパシタンスC'と等価的な電気的抵抗R'の値を適切に設定することにより、負のドリフトを生じさせることができることが述べられている。特許文献2における段落〔0022〕の「また、動作点をロッキングする場合、初期の設定電圧Veに対して、バイアス電圧を次第に小さくすればよく、」という記述と図2はまさに負のドリフトが発生することを示唆している。
【0041】
従って、特許文献1が特許文献2と異なる点は、特許文献1では極めて大きな負のドリフトを発生させ、それをLN光変調器の寿命を延ばすことに利用することである。まず、特許文献1の図16、図13、あるいは図14などに示されているように、バッファ層全体に金属の酸化物などの不純物をドーピングして、なるべく大きな負のドリフトを生じさせることにより、一旦急激に減少したDCバイアス電圧が上昇に転ずる電圧をなるべく低くする。
【0042】
次に、特許文献1の図13や図14などに示され、またその図15、図17などから推測されるように、DCバイアス電圧が初期値に戻るまでの時間をできる限り長くすることにより、LN光変調器の寿命となるDCバイアス電圧までの時間を稼ごうとするものである。
【0043】
従って、特許文献1では、LN光変調器としての寿命を稼ぐという観点からこの負のドリフトの後にDCバイアス電圧が初期値に戻る時間はLN光変調器が寿命となる時間の中で大きな割合を占めるほど充分長くなるように構成されている。
【0044】
ところが、この第2の従来技術には重大な問題点がある。DCバイアス電圧が大きく変化するために、トランスポンダの中の制御回路としては広い範囲の電圧の制御を行う必要があることと、その変化が激しい場合にはDCバイアス電圧制御のロックが外れることもあり、実際には制御回路の観点からあまり望ましくない。また、特に短い時間において微細な測定を行う必要がある測定器用のLN光変調器としては特に好ましくない。
【0045】
また、スパッタ装置用のターゲットとしては図17に示したようなドラム式でない場合には、例えば上面図として図21に示す構造のターゲットを用いる場合もある。なお、図22には図21のC−C'における断面図を示す。このスパッタ装置用のターゲットではSiO16の中に、酸化物であるInペレット17が埋め込まれている。このターゲットを使用する場合にはドーパントは酸化物混合バッファ層の中により一層緻密にかつ極めて均質にドーピングされる。
【0046】
なお、SiOターゲット9を用いて堆積するSiOへのドーパントを生成するために、Inターゲット10、TiOターゲット11、SnOターゲット12のような金属の酸化物を使用している。
【0047】
例えば、DCドリフト抑圧に特に有効なInターゲット10を用いる場合、元々金属として高価なInをさらに酸化させたInを成形してInターゲット10を製作する。
【0048】
この酸化させる工程と酸化物を成形する工程のためにInターゲット10はスパッタ装置用のターゲットとしてより一層高価となり、LN光変調器のコスト上昇をもたらしている。
【0049】
さらに、TiOやSnOなどをターゲット材料として使用する場合についても、それぞれ金属であるTiやSnを酸化する工程と得られた酸化物を成形する工程が必要であるため、やはりスパッタ装置用ターゲットとしてのコストを上昇させてしまい、その結果、LN光変調器のコストを高くしている
図23には図18に示した第2の従来技術の導電性酸化物混合バッファ層13へドーピングしたドーパントInの濃度を変数とした場合における相互作用光導波路3a、3bを伝搬する光の伝搬損失の測定結果を示す。図からわかるように、ドーパントInは酸化物とはいえ、元々は金属である。そのため、光の伝搬損失はドーパントInのドーピング濃度に大きく依存しており、ドーピング量が増えると光の伝搬損失は著しく大きくなることがわかる。
【0050】
一般に、光導波路3の全長(つまりz−カットLN基板1の全長)は7cmから8cm程度と長いので、伝搬損失が例えば0.1dB/cm程度の増加であっても、LN光変調器としての全挿入損失は0.7dBから0.8dBと約1dB程度も増えてしまう。そのため、LN光変調器としての挿入損失を小さくしたい用途の場合には伝搬損失の増加を極力抑える必要がある。
【0051】
さて、SiOの比誘電率は実数であり、虚部は無視できるほどに充分小さい。一方、ドーパントInはある程度の導電性を持っているので、ドーパントInをドーピングした導電性酸化物混合バッファ層13の比誘電率εは以下のように複素数となる。
【0052】
ε = Re(ε)−j・Im(ε) (5)
ここで、Re(ε)は複素比誘電率εの実部であり、Im(ε)は複素比誘電率εの虚部である。なお、jは純虚数を表している。
【0053】
一般に、導電性媒質の複素比誘電率εの虚部は複素比誘電率εの実部よりも大きくなる。そして、ドーパントInを導電性酸化物混合バッファ層13にドーピングした場合も、その導電性が高くなるにつれて導電性酸化物混合バッファ層13の複素比誘電率εの虚部Im(ε)の値は複素比誘電率εの実部の値Re(ε)(約4)よりも大きくなる。そのため、ドーパントInのドーピング濃度が高くなるにつれて高周波電気信号のマイクロ波等価屈折率nが光の等価屈折率nよりも大きくなる。その結果、高周波電気信号と光との速度の差が拡大する。さらに高周波電気信号の伝搬損失も増加し、これらのことから光変調帯域が劣化してしまう。
【0054】
この現象を説明するために、図24には図18に示した第2の従来技術の導電性酸化物混合バッファ層13へドーピングしたドーパントInのドーピング濃度を変数とした場合における光変調帯域の測定結果を示す。図からわかるように、導電性酸化物混合バッファ層13へドーピングしたドーパントInの濃度が高くなると高周波電気信号と光の速度不整合、及び高周波電気信号の伝搬損失のために、光変調帯域が劣化していることがわかる。従って、LN光変調器としての光変調帯域を確保したい用途の場合には、高周波電気信号のマイクロ波等価屈折率と高周波電気信号の伝搬損失の増加を極力抑える必要がある。
【特許文献1】特開平5−257105号公報
【特許文献2】特開平4−346310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0055】
以上のように、第2の従来技術により第1の従来技術と比較してDCドリフトは改善できたが、強烈な負のドリフト現象が生じるためDCバイアス電圧が大きく変化し、トランスポンダの中の制御回路としては広い範囲の電圧の制御を行う必要があった。このことは制御回路の観点から望ましくない。特に負のドリフト現象が激しい場合には、制御回路が追従できずにDCバイアス点のロックが外れるという問題が生じた。また、特に短い時間において微細な測定を行う必要がある測定器用のLN光変調器としては特に好ましくなかった。つまり、時間の経過とともにDCバイアス電圧があまり変わらないz−カットLN光変調器はこれまで開発されていなかった。また、光と高周波電気信号の吸収損失があり、かつ高周波電気信号の等価屈折率を高くするという悪影響を有する複素誘電率の虚部が大きい金属酸化物をバッファ層全体に緻密かつ均質にドーピングしていたので、光の挿入損失が増える、さらには光変調帯域が劣化するなどの問題もあった。
【0056】
そこで、本発明は、以上のような従来技術の問題点を解消することにより、安価で時間の経過に対して比較的変化の小さなドリフト特性を有するLN光変調器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0057】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1の光変調器は、電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光を導波するための光導波路と、前記光を変調するための電圧を印加する、前記基板の一方の面側に形成された中心導体及び接地導体からなる電極と、前記中心導体もしくは前記接地導体の少なくとも一方と前記光導波路の間に形成されたバッファ層とを具備し、前記光導波路が前記中心導体と前記接地導体との間に前記電圧を印加することにより前記光の位相を変調するための相互作用光導波路を有する光変調器において、前記バッファ層は、周期律表の三から八族あるいは一b族と二b族に属する金属元素もしくはその酸化物、及びSi以外の半導体元素もしくはその酸化物の少なくとも1つのドーパントからなるドーパント層と、周期律表の三から八族あるいは一b族と二b族に属する金属元素もしくはその酸化物、及びSi以外の半導体元素もしくはその酸化物のいずれをも含まないか、周期律表の三から八族あるいは一b族と二b族に属する金属元素もしくはその酸化物、及びSi以外の半導体元素もしくはその酸化物の少なくとも1つを前記ドーパント層よりも低い濃度で含むドーパント低濃度層とを備え、前記ドーパント低濃度層と前記ドーパント層とを交互に積層し、かつ前記電極に電圧を印加してからの時間経過において、実用上フラットなDCドリフト特性となる厚みを有する前記ドーパント低濃度層と前記ドーパント層とを具備することを特徴とする。
【0058】
本発明の請求項2の光変調器は、電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光を導波するための光導波路と、前記光を変調するための電圧を印加する、前記基板の一方の面側に形成された中心導体及び接地導体からなる電極と、前記中心導体もしくは前記接地導体の少なくとも一方と前記光導波路の間に形成されたバッファ層とを具備し、前記光導波路が前記中心導体と前記接地導体との間に前記電圧を印加することにより前記光の位相を変調するための相互作用光導波路を有する光変調器において、前記バッファ層は、酸化物もしくは酸化物でないインジウム、酸化物もしくは酸化物でないチタン、及び酸化物もしくは酸化物でない錫、酸化物もしくは酸化物でないゲルマニウム、酸化物もしくは酸化物でないアルミニウムの少なくとも1つのドーパントからなるドーパント層と、周期律表の三から八族あるいは一b族と二b族に属する金属元素もしくはその酸化物、及びSi以外の半導体元素もしくはその酸化物のいずれをも含まないか、前記ドーパントの少なくとも1つを前記ドーパント層よりも低い濃度で含むドーパント低濃度層とを備え、前記ドーパント低濃度層と前記ドーパント層とを交互に積層し、かつ前記電極に電圧を印加してからの時間経過において、実用上フラットなDCドリフト特性となる厚みを有する前記ドーパント低濃度層と前記ドーパント層とを具備することを特徴とする。
【0059】
本発明の請求項3の光変調器は、電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光を導波するための光導波路と、前記光を変調するための電圧を印加する、前記基板の一方の面側に形成された中心導体及び接地導体からなる電極と、前記中心導体もしくは前記接地導体の少なくとも一方と前記光導波路の間に形成されたバッファ層とを具備し、前記光導波路が前記中心導体と前記接地導体との間に前記電圧を印加することにより前記光の位相を変調するための相互作用光導波路を有する光変調器において、前記バッファ層は、酸化物もしくは酸化物でないインジウム、酸化物もしくは酸化物でないチタン、及び酸化物もしくは酸化物でない錫、酸化物もしくは酸化物でないゲルマニウム、酸化物もしくは酸化物でないアルミニウムの少なくとも1つのドーパントからなるドーパント層と、前記ドーパントを含まないか、前記ドーパントの少なくとも1つを前記ドーパント層よりも低い濃度で含むドーパント低濃度層とを備え、前記ドーパント低濃度層と前記ドーパント層とを交互に積層し、かつ前記電極に電圧を印加してからの時間経過において、実用上フラットなDCドリフト特性となる厚みを有する前記ドーパント低濃度層と前記ドーパント層とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0060】
導電性のある酸化物を極めて緻密かつ均質にバッファ層全体に含ませ、強烈な負のドリフトが生じる特許文献1と異なり、本発明に係る光変調器では、ドーパントがないか、あるいは低い濃度でドーピングされているドーパント低濃度層と高い濃度となっているドーパント層に厚みを持たせることにより各々を明確に分けて、これらを交互に堆積するとともに、ドーパント低濃度層の材料と厚みを適切に選択することにより、時間の経過においてフラットで比較的変化の小さなドリフト特性を実現できる。このような時間の経過に対してフラットで比較的変化の小さなドリフト特性は本発明のように、ドーパント低濃度層の材料と厚みがDCドリフト特性に与える影響を明らかにした結果、得られた効果である。また、ドーパント低濃度層の厚みをバッファ層の厚み方向において異ならしめることにより、光変調器として光の挿入損失を小さくする、光変調帯域を確保する、あるいは光の挿入損失を小さくしつつ、かつ光変調帯域も確保するなど使用目的に応じた光変調器を実現できる。さらに、選択する構造によっては、ドーパントに起因する光の挿入損失の増加、光変調帯域の劣化を同時に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
以下、本発明の実施形態について説明するが、図12乃至図24に示した従来技術と同一の符号は同一機能部に対応しているため、ここでは同一の符号を持つ機能部の説明を省略する。
【0062】
[第1の実施形態]
図1に本発明のLN光変調器を製作する際にバッファ層を堆積するスパッタ装置のチャンバー部についての横断面図を示す。基本構造は第2の従来技術の説明で示した図17と同様であり、6は真空チャンバー、7はz−カットLNウェーハ8を保持しつつ回転するドラム、9はSiOターゲット、20はSiOターゲットである。
【0063】
バッファ層へのドーパントを生成するためのターゲットとして、図17に示したようなInターゲット10やTiOターゲット11など金属の酸化物をターゲットとして用いる第2の従来技術とは異なり、本発明においてはInターゲット18、Tiターゲット19のように、酸化物ではない金属あるいはSi以外の半導体の元素からなるターゲットを使用した。
【0064】
製作したLN光変調器の一例を本発明の第1の実施形態として図2に示す。本実施形態のLN光変調器の製造工程を以下に簡単に述べる。
【0065】
(1)光導波路の製作
LN光変調器の通常の製造工程を通して、図12で示したようにz−カットLN基板1に光導波路3を形成する。
【0066】
(2)バッファ層の堆積
次の製造工程として、図1で説明したスパッタ装置を使用して光導波路3の上にバッファ層を形成するが、図2に示すようにこのバッファ層(ここでは、ドーパント混合バッファ層21)はドーパントを含まないか、あるいは低い濃度でドーピングされているドーパント低濃度層30と高い濃度となっているドーパント層31に厚みを持たせることにより各々を明確に分け、これらを交互に堆積して構成するとともに、ドーパント低濃度層30の材料と厚みを適切に選択する。こうして、LN光変調器として時間の経過において比較的変化が小さく、DCドリフト特性として最も厳しいフラット性が要求される測定器用のLN光変調器にも適用できるレベルの実用上フラットなDCドリフト特性を実現できる。
【0067】
なお、前述のようにドーパント低濃度層30とドーパント層31に厚みを持たせることにより各々を明確に分けて堆積するために、SiOターゲット9やInターゲット18などのターゲットからスパッタリングする際に、各ターゲットからの材料の飛散量を多くし、かつドラム7をゆっくりと回転させることが重要である。
【0068】
なお、ドーパント層31はIn層を高い濃度で含んでいる(Inの代わりに金属であるInを含んでいる場合もあるが、説明を簡単にするためにここではドーパント層31をIn層31とも呼ぶ)。一方、ドーパント低濃度層30は基本的にSiO層から成る。このドーパント低濃度層30であるSiO層はドーパントを含んでいなくても良いが、実際にはこのSiO層の中には、ドーパント層31を構成するIn層がバックグラウンドのドーパントとして含有されていたり、SiO層そのものにSnやTi、あるいはそれらの酸化物をごくわずかだけドーピングすることも有り得るので、このSiO層をドーパント低濃度層30(ここでは、簡略にSiO層30とも呼ぶ)と呼ぶ。
【0069】
ドーパント混合バッファ層21の堆積では、スパッタ装置の真空チャンバー6内において、酸素(O)もしくはOを含むガスプラズマ(以下、Oガスプラズマと省略する)を発生させることにより、回転するドラム7に固定したz−カットLNウェーハ8の上にSiOターゲット9からはSiO層30を、Inターゲット18からはIn層31を堆積させる。なお、この時、Arなど、酸素を含まないガスプラズマ(以下、Arガスプラズマと省略する)により堆積させると、SiOターゲット9からはSiO層30が堆積されるが、Inターゲット18により堆積されるIn層31の中のInに金属Inが含有されている場合には、少ないInターゲット18の消費量にも関わらず、ドーパント層31としてより高い導電性を実現することができる。
【0070】
前述のように、本実施形態の構造では、In層からなるドーパント層31と、主成分がSiO層からなるドーパント低濃度層30とに厚みを持たせることにより各々を明確に分けるとともに、DCドリフト特性がフラットになるようにドーパント低濃度層30の材料と厚みを適切に設定する。
【0071】
換言すると、ドーパント低濃度層30の厚みとドーパント層31の厚みを各々適切に設定することにより、ドーパント混合バッファ層21の中において、ドーパント低濃度層30の厚み方向の抵抗と、ドーパント層31の横方向の抵抗を適切に設定し、その結果DCドリフト特性をフラットにしている。
【0072】
本発明の目的は、これによりDCドリフト特性をフラットにするものであり、バッファ層全体にドーパントを緻密かつ均質に混合させることにより大きな負のドリフトを実現し、負のドリフトから正のドリフトに変化するDCバイアス電圧を極度に低くし、その結果DCバイアス電圧が初期値に戻るまでの時間を寿命時間に大きく影響するほど稼ごうとする特許文献1とは大きく異なっている。
【0073】
(3)バッファ層のアニール
上記(2)で形成したドーパント低濃度層30とドーパント層31の密度を上げるためと、ドーパント層31の中のドーパントを酸化させるために、数百度の温度で数時間アニールを行う。但し、ドーパント層31の中に酸化物でない、即ち金属Inの成分を多く残すにはArやNなどOを含まないガスを流しながらアニールをすれば良い。
【0074】
(4)Si導電層の堆積と電極の形成
LN光変調器の通常の製造工程を通して、図12で示したように温度ドリフト対策用のSi導電層5を堆積した後に、進行波電極4を形成する。
【0075】
図18に示した第2の従来技術では、導電性酸化物混合バッファ層13の内部にはIn層15がほぼ均質に分布しているといえるほど、SiO層14と導電性を有する酸化物であるIn層15とが導電性酸化物混合バッファ層13の中で互いに極めて緻密に積層されている。そして、この緻密性・均質性が大きな負のドリフトを生み出していた。
【0076】
一方、図2に示す本発明の第1の実施形態では、ドーパント低濃度層30(SiO層30)と金属の酸化物であるドーパント層31(In層であるが、この中に金属Inが含まれていても良い)の2種類に明確に区別できる層から構成されている。
【0077】
なお、ドーパント低濃度層30の厚みは今回の試作では25nmから0.2μm程度であったが、これらの範囲以外の厚みでも良いことは言うまでもない。
【0078】
なお、ドーパント低濃度層30とドーパント層31を成膜するに当たって、SiOターゲット9とInターゲット18の2つを使用する場合について説明したが、この他にTiターゲット19を用いても良いし、あるいはこれらを組み合わせて使用しても良い。また、前述のように、ドーパント低濃度層30にTiやSn、あるいはこれらの酸化物を少量ドーピングしても良い。そしてこれらのことは以下の議論においても成り立つ。
【0079】
図2に示した本実施形態のドーパント混合バッファ層21を含む構成について、その等価回路を図3に示す。ここで、C''、R'' は各々等価的なキャパシタンスと電気的抵抗を、またCLN、RLNはそれぞれ相互作用光導波路3aを含むz−カットLN基板1の等価的なキャパシタンスと電気的抵抗を表している。本実施形態ではその電気的抵抗R''は第1の従来技術のRに比べて小さく設定している。
【0080】
ここで、図2に示した本実施形態のドーパント混合バッファ層21について、その詳細な内部の構成に関する等価回路の厚み方向の一周期分を図4に記す。ここで、CSiO2、RSiO2は各々ドーパント低濃度層30の厚み方向における等価的なキャパシタンスと電気的抵抗である。一方、CIn2O3、RIn2O3は各々ドーパント層31の等価的なキャパシタンスと電気的抵抗である。一般に、ドーパント低濃度層30の厚み方向における等価的な電気的抵抗RSiO2は、ドーパント層31の等価的な電気的抵抗RIn2O3よりも大きいが、前述のようにドーパント低濃度層30にもドーピングすることができるので、必ずしもこの限りではない。
【0081】
図5には、ドーパント混合バッファ層21としてのドーピング濃度を6mol%と一定にした状態で(つまり、ドーパント低濃度層30の厚みD30とドーパント層31の厚みD31の比を一定に保ったまま)、ドーパント低濃度層30の厚みD30を各種異ならしめた場合のDCドリフト特性の測定結果を示す。ドーパント混合バッファ層21全体の厚みは1.0μmとした。なお、温度は100℃とした。
【0082】
図5において、(a)は特許文献に示された構成からなる図20に示した第2の従来技術のDCドリフト特性とほぼ同じである。この場合においては、ドーパント低濃度層30の厚みD30が2nm以下と極めて小さく、バッファ層内にほぼ均質に分布しており、このことが極めて明瞭な負のドリフト(領域I)を生み出している。
【0083】
逆に、(g)はドーパント混合バッファ層21のほぼ全体がドーパント低濃度層30により構成されている場合であり、(a)の対極に当り、図16に示した第1の従来技術とよく似た振る舞いをしている。そして、ドーパント低濃度層30の厚みD30を厚くするに従い、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)と表記しているようにDCドリフト特性が変化する。そして、例えば、図に示すようにフラットなDCドリフト特性を実現できる。なお、この第1の実施形態においては、ドーパント混合バッファ層21の中においてドーピング濃度を一定に保つために、ドーパント低濃度層30の厚みD30とドーパント層31の厚みD31の比を一定とした。
【0084】
図5から明らかにわかるように、時間経過においてフラットなDCドリフト特性を実現するという本発明の目的に関しては、ドーパント低濃度層30の厚みD30として最適な厚みがあることがわかる(なお、ドーピング濃度は一定であるので、ドーパント低濃度層30の厚みD30を厚くするとドーパント層31の厚みD31も厚くなる)。
【0085】
このことは図4の等価回路において、特にドーパント混合バッファ層21の厚み方向の抵抗に影響を及ぼす電気的抵抗RSiO2を適切な値となるように大きくし、かつドーパント混合バッファ層21の横方向の抵抗に影響を及ぼすRIn2O3を適切な値になるように小さくすることにより、負のドリフトを小さくできる、あるいはなくすことが可能となることを意味している。
【0086】
図6では、図5を別の観点から議論する。図5と同じ条件下において、ドーパント混合バッファ層21へのドーピング濃度を一定とし、ドーパント低濃度層30の厚みD30を変数とした(ドーピング濃度が一定であるので、ドーパント低濃度層30の厚みD30に応じてドーパント層31の厚みD31も変化する)場合の1日経過後でのDCドリフト特性(DCドリフト量S)の測定結果を図6に示す。
【0087】
図6から、ドーパント低濃度層30の厚みD30に応じてDCドリフト特性が変化することがわかる。そして、ドーパント低濃度層30の厚みD30を適切に設定することにより、負のドリフトを抑圧でき、フラットなDCドリフト特性を実現することが可能となる。
【0088】
図7には、同じく図5と同じ条件下において、ドーパント混合バッファ層21へのドーピング濃度と、ドーパント低濃度層30の厚みD30を一定としたまま(ドーピング濃度が一定であるので、ドーパント層31の厚みD31も一定である)、ドーパント低濃度層30の厚み方向の電気的抵抗率を変数とした場合の1日経過後でのDCドリフト量(DCドリフト量S)の測定結果を示す。
【0089】
図7から、ドーパント低濃度層30の電気的抵抗率に対応してDCドリフト特性が変化することがわかる。なお、図6において、ドーパント低濃度層30の厚みD30が厚くなるとその厚み方向の電気的抵抗が増えることからも図7の傾向を推測できる。そして、図7からわかるように、ドーパント低濃度層30の抵抗率を適切に設定すると負のドリフトを抑圧でき、フラットなDCドリフト特性を実現することが可能となる。そして、一般にドーパント低濃度層30の厚みとしては、5nm以上が好ましく、また10nm以上、あるいは21nm以上、さらには50nm以上において明らかにフラットなDCドリフト特性を実現できた。
【0090】
このように、実際にフラットなDCドリフト特性を実現するには、図4に示したように、ドーパント低濃度層30の厚みD30と厚み方向の電気的抵抗RSiO2の他に、実際にはドーパント混合バッファ層21の中におけるドーパント層31の横方向の電気的抵抗RIn2O3も影響する(勿論、各層のキャパシタンスCSiO2、CIn2O3も影響するが、ここでは議論を簡単にするため、電気的抵抗のみに着目して議論している)。
【0091】
特許文献2では、〔0017〕以降に指摘されているように、DCドリフト特性は厚み方向におけるバッファ層全体としての電気的抵抗とキャパシタンス、基板の光導波路間(もしくは、中心導体−接地導体間)の抵抗とキャパシタンス、及び基板−バッファ層界面の抵抗とバッファ層の電極間の表面抵抗のように、マクロな物理定数で決まるとしているが、実際のDCドリフト現象はそう簡単ではない。つまり、ドーパント混合バッファ層21の中のドーパント低濃度層30の厚み方向の電気的抵抗RSiO2やドーパント層31の横方向の電気的抵抗RIn2O3というミクロな物理定数が重要な働きをする。
【0092】
従って、特許文献2において指摘されているようなドーパント混合バッファ層21の全体としての抵抗R''やキャパシタンスC''だけで決まるほど実際のDCドリフト現象は物理現象として簡単ではない。我々はそのことをバッファ層としてSiOx(0<x<2)を使用することにより確認している。つまり、導電性を調整できるSiOx(0<x<2)をバッファ層に使用することにより、バッファ層のキャパシタンスや電気的抵抗を調整できる。従って、特許文献2によればSiOx(0<x<2)を用いることにより、DCドリフトを抑圧できるはずである。しかしながら、多くの実験を行った結果、本発明のようなフラットなDCドリフト特性を実現することはできず、本発明を開発した。なお、このことが特許文献1についても言えることは先に述べた通りである。
【0093】
本発明に基づく第1の実施形態についてその一例を述べる。この実施形態の製作に当たって、ドーパント層31の堆積においてはInターゲット18を使用した。このInターゲット18のスパッタ時において、ドーパント層31とドーパント低濃度層30を堆積する際にはOガスプラズマを用いた(なお、ドーパント層31に金属Inもドーパントとして残す場合にはArガスプラズマを用いた)。
【0094】
Inをドーパント層31としてドーパント混合バッファ層21に6mol%ドーピングした(なお、酸化物Inと導電性の高い金属Inにより同じDCドリフト抑圧効果を得るには、ドーパント混合バッファ層21にわずか0.24〜1mol%程度をドーピングすれば良かった)。ここで、ドーパント混合バッファ層21の中において、ドーパント低濃度層30の厚みD30とドーパント層31の厚みD31は一定とした。また、ドーパント低濃度層30の厚みD30は50nmとした。
【0095】
また、ドーパント層31とドーパント低濃度層30のアニール条件は、Oガスを用いて、700℃、1時間とした(なお、ドーパント層31に金属Inをドーピングし、アニール後も金属Inを残すには金属としての酸化を防ぐために、Arあるいは窒素(N)ガスを用いれば良い)。
【0096】
なお、この実施形態の一例では、ドーパント層31のドーパントとしてはIn(あるいはIn)を用いたが、TiO(Ti)やSnO(あるいはSn)など他の金属をドーパントとして用いても良いし、In(あるいはIn)とそれらを組み合わせてドーピングしても良い。
【0097】
ここで中心導体4aの幅は12μmで接地導体4b、4cとのギャップは15μmとした。ドーパント混合バッファ層21の厚みD21は1.0μmとした。以上の条件と図5の(d)として示したバッファ層構成条件により製作した実施形態についてDCドリフト特性(DCドリフト量S)を測定した。
【0098】
図8に示す本実施形態では、ドーパント混合バッファ層21におけるドーピング濃度を6mol%と一定に保ちつつ、ドーパント層31とドーパント低濃度層30の厚みを適切に設定したことによりDCドリフト特性を調整できている。なお、LN光変調器の環境温度は図16や図20の場合と同じく100℃とした。図8からわかるように、本実施形態によるLN光変調器のDCドリフト特性は、特に初期の経過時間において第2の従来技術として図20に示した大きな負のドリフト(領域I)は存在せず、フラットである。そして、LN光変調器としての最終的な寿命Tは図16に示した第1の従来技術と比較して、極めて改善されており、また図20に示した第2の従来技術と遜色なく、あるいはより優れた実用上充分な信頼性を有している。
【0099】
このように、本発明の目的は、バッファ層全体に緻密かつ均質にドーパントを混合し、初期の経過時間において大きな負のドリフトを起こさせる第2の従来技術と全く異なり、ドーパント低濃度層30とドーパント層31に厚みを持たせることにより各々を明確に分けて堆積することにより、図8の中に領域IIとして示したような時間経過に対してフラットなDCドリフト特性を得ることである。こうした時間経過に対してフラットなDCドリフト特性は大きな負のドリフトが発生する第2の従来技術では決して得ることができない特性である。
【0100】
つまり、本発明では、第2の従来技術のように初期における大きな負のドリフトを発生させることにより、DCバイアス電圧についてのLN光変調器の寿命を稼ぐという概念は全くないので、初期の時間経過においてLN光変調器の寿命を延ばすために負のドリフトを発生させる必要性は完全にない。従って、負のドリフトは実用上あるいは全く発生せず、時間の経過に対してフラットなDCドリフト特性を実現できる。
【0101】
従って、DCバイアス電圧の制御という観点から、トランスポンダの中の制御回路にとって追従しやすく、また特に短い時間において微細な測定を行う必要がある測定器にも大変扱いやすいLN光変調器を提供できる。
【0102】
ここで、負のDCドリフトを実用上有さないとは、通常25年という長い期間で使用されるLN光変調器について、その寿命を延ばすという観点からの(換言すると、寿命に影響を及ぼすほどの強烈で時間的に長い)負のドリフトは存在しないということである。
【0103】
また、バッファ層にSiOx(0<x<2)を使用した例について述べたように、特許文献2において指摘されているようなドーパント混合バッファ層21の全体としての抵抗R''やキャパシタンスC''だけの考え方でも図8に示したフラットなDCドリフト特性を実現することはできず、本願の考え方により初めて実現した。
【0104】
[第2の実施形態]
図9に本発明の第2の実施形態を示す。本実施形態では、図2に示した第1の実施形態におけるドーパント混合バッファ層21を、相互作用光導波路3a、3bに近い方の下側のドーパント混合バッファ層22と、進行波電極4の中心導体4a、接地導体4b、4cに近い側にある上側のドーパント混合バッファ層23に2分割する。
【0105】
下側のドーパント混合バッファ層22はドーパント低濃度層300(SiO層300)とドーパント層301(In層301)から、上側のドーパント混合バッファ層23はドーパント低濃度層400(SiO層400)とドーパント層401(In層401)から構成されている。
【0106】
この第2の実施形態においては、下側のドーパント混合バッファ層22におけるドーパント層301の厚みD301と上側のドーパント混合バッファ層23におけるドーパント層401の厚みD401と等しくする(D301=D401)とともに、下側のドーパント混合バッファ層22におけるドーパント低濃度層300の厚みD300を上側のドーパント混合バッファ層23におけるドーパント低濃度層400の厚みD400よりも厚くしている(D300>D400)。換言すると、下側のドーパント混合バッファ層22のドーピング濃度を上側のドーパント混合バッファ層23のドーピング濃度よりも小さくし、平均的に図2に示した第1の実施形態と等しくしている。
【0107】
こうすることにより、DCドリフト特性を図2の第1の実施形態とほぼ同じに保ちつつ、相互作用光導波路3a、3bを伝搬する光の損失を低減することができる。つまり、図9に示した第2の実施形態は光の損失が小さなLN光変調器を実現するのに適している。なお、その効果はやや小さくなるが、D300>D400さえ成り立っていれば、下側のドーパント混合バッファ層22のドーピング濃度と上側のドーパント混合バッファ層23のドーピング濃度を等しくしても良い。
【0108】
[第3の実施形態]
図10に本発明の第3の実施形態を示す。本実施形態は言わば図9に示した第2の実施形態において下側のドーパント混合バッファ層22と上側のドーパント混合バッファ層23の上下を入れ替えた構成である。
【0109】
つまり、図10からわかるように、この第3の実施形態においては、下側のドーパント混合バッファ層24におけるドーパント層411(In層411)の厚みD411と上側のドーパント混合バッファ層25におけるドーパント層311(In層311)の厚みD311と等しくする(D311=D411)とともに、今度は上側のドーパント混合バッファ層25におけるドーパント低濃度層310(SiO層310)の厚みD310を下側のドーパント混合バッファ層24におけるドーパント低濃度層410(SiO層410)の厚みD410よりも厚くしている(D310>D410)。換言すると、上側のドーパント混合バッファ層25のドーピング濃度を下側のドーパント混合バッファ層24のドーピング濃度よりも小さくし、平均的に図2に示した第2の実施形態と等しくしている。
【0110】
こうすることにより、DCドリフト特性を図2の第1の実施形態とほぼ同じに保ちつつ、高周波電気信号の伝搬損失を小さくするとともに、高周波電気信号の等価屈折率を小さくすることができる。つまり、図10に示した第3の実施形態は光変調帯域に関して有利なLN光変調器を実現するのに適している。なお、その効果はやや小さくなるが、D310>D410さえ成り立っていれば、下側のドーパント混合バッファ層24のドーピング濃度と上側のドーパント混合バッファ層25のドーピング濃度を等しくしても良い。
【0111】
[第4の実施形態]
図11に本発明の第4の実施形態を示す。本実施形態では、図2に示した第1の実施形態と、図3に示した第2の実施形態の双方における良い点を取り入れている。
【0112】
つまり、相互作用光導波路3a、3bに近い方の下側のドーパント混合バッファ層26と同じ構成として上側のドーパント混合バッファ層28を設けている。そして、それらの間に中間のドーパント混合バッファ層27を構成した。下側のドーパント混合バッファ層26(及び、上側のドーパント混合バッファ層28)の中におけるドーパント低濃度層320の厚みD320を、中間のドーパント混合バッファ層27の中におけるドーパント低濃度層420の厚みD420よりも厚くしている(D320>D420)。換言すると、下側のドーパント混合バッファ層26と上側のドーパント混合バッファ層28のドーピング濃度を中間のドーパント混合バッファ層27のドーピング濃度よりも小さくし、平均的に図2に示した第2の実施形態と等しくしている。
【0113】
こうすることにより、DCドリフト特性を図2の第1の実施形態とほぼ同じに保ちつつ、相互作用光導波路3a、3bを伝搬する光と高周波電気信号の伝搬損失、高周波電気信号の等価屈折率を低減することができる。つまり、図11に示した第2の実施形態により光の挿入損失が小さく、かつ光の変調帯域が広いLN光変調器を実現できる。なお、その効果はやや小さくなるが、D320>D420さえ成り立っていれば、下側のドーパント混合バッファ層26、中間のドーパント混合バッファ層27、上側のドーパント混合バッファ層28についてドーピング濃度の全て、もしくは2つを等しくしても良い。さらには、4層以上に分割しても良いし、ドーパント低濃度層の厚みやドーピング濃度を徐々に変えても良い。なお、これらのことは本発明の全ての実施形態について当てはまる。
【0114】
[各実施形態について]
本発明による光変調器用の基板としてはLN基板を例に用いて説明したが、リチウムタンタレートなど、電気光学効果を有するその他の各種基板でも良いし、半導体基板でも良い。
【0115】
また、ドーパント混合バッファ層を構成する主たるバッファ層であるドーパント低濃度バッファ層として主にSiOについて説明したが、その他の酸化シリコンつまりSiO(0<x<2)でも良いし、さらにはSiOのxは0<x<2.5のように、2以上であっても良い。また、AlやSiNなどその他の非シリコン系あるいはシリコン系の材料を組み合わせて使用しても良い。
【0116】
さらに、ドーパント混合バッファ層へのドーパントとしては主にIn、TiO、あるいはSnOなどの金属酸化物について説明したが、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)、ゲルマニウム(Ge)、クロム(Cr)などの酸化物でも良いし、周期律表の三から八族あるいは一b族と二b族に属する各種金属元素の酸化物、もしくはSi以外の各種半導体元素の酸化物でも良いし、これらが酸化物でない、即ち金属の元素や半導体の元素でも良い。さらに、これらを組み合わせてドーピングしても良い。
【0117】
また、酸化物をドーピングする場合の濃度は特に3〜6mol%程度で、また金属をドーピングする場合にはその濃度として1mol%強程度で顕著な効果が見られる。但し、0.5〜10mol%などこれらの値以外のドーピング量でも本発明の効果を得ることができるのは言うまでもない。なお以上においてはドーパント混合バッファ層の中において、ドーパント低濃度層やドーパント層の厚み、及びドーピング濃度を一定としたが、これらをドーパント混合バッファ層内において徐々にあるいは階段状に変化させても良い。
【0118】
以上の説明では、バッファ層の成膜装置としてスパッタ装置を用いる場合について説明したが、電子ビーム蒸着装置などその他の装置を用いても良いことは言うまでもない。
【0119】
また、先に述べたように、各実施形態を説明する際のLN光変調器の構造として中心導体の中心に左右対称な構造として主に説明したが、勿論、左右対称でなくても良いことは言うまでもない。
【0120】
さらに、進行波電極としてはCPW電極を例にとり説明したが、非対称コプレーナストリップ(ACPS)や対称コプレーナストリップ(CPS)などの各種進行波電極、あるいは集中定数型の電極でも良いことは言うまでもない。さらに、DCバイアスを印加する部分とRF電気信号とを印加する部分と分離した、いわゆるDCバイアス分離型の構造にも適用可能である。また、電界センサーにも適用可能である。
【0121】
また、光導波路としてはマッハツェンダ光導波路の他に、方向性結合器や直線など、その他の光導波路でも良いことは言うまでもない。そして、勿論リッジ構造にも適用可能である。
【0122】
以上の各実施形態においては、z−カットの面方位を持つ基板としたが、以上に述べた各実施形態での面方位を主たる面方位とし、これらに他の面方位が副たる面方位として混在しても良いことは言うまでもないし、x−カットやy−カットの面方位を持つ基板でも良いことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0123】
以上のように、本発明に係る光変調器は、DCドリフトを抑圧しつつLN光変調器のコストを低減するとともに、挿入損失や光変調帯域を改善することを可能とし、コスト、性能及び信頼性の観点から優れた光変調器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の実施形態によるLN光変調器を製作するためのスパッタ装置の内部を示す模式図
【図2】本発明の第1の実施形態によるLN光変調器の断面図
【図3】本発明の第1の実施形態の等価回路を説明する図
【図4】本発明の第1の実施形態のDCドリフト抑圧の原理を説明する図
【図5】本発明の第1の実施形態の原理を説明する図
【図6】本発明の第1の実施形態の原理を説明する図
【図7】本発明の第1の実施形態の原理を説明する図
【図8】本発明の第1の実施形態によるLN光変調器のDCドリフト特性
【図9】本発明の第2の実施形態によるLN光変調器の断面図
【図10】本発明の第3の実施形態によるLN光変調器の断面図
【図11】本発明の第4の実施形態によるLN光変調器の断面図
【図12】第1の従来技術によるLN光変調器の斜視図
【図13】図12のA−A'における断面図
【図14】第1の従来技術による光変調器の動作原理を説明する図
【図15】第1の従来技術によるLN光変調器の等価回路図
【図16】第1の従来技術によるLN光変調器のDCドリフト特性
【図17】第2の従来技術によるLN光変調器を製作するためのスパッタ装置の内部を示す模式図
【図18】第2の従来技術によるLN光変調器の断面図
【図19】第2の従来技術によるLN光変調器の等価回路図
【図20】第2の従来技術によるLN光変調器のDCドリフト特性
【図21】第2の従来技術によるLN光変調器を製作するためのその他のターゲット構成を説明する図
【図22】図21のC−C'における断面図
【図23】第2の従来技術の問題点を説明する図
【図24】第2の従来技術の問題点を説明する図
【符号の説明】
【0125】
1:z−カットLN基板(LN基板、基板)
2:SiOバッファ層(バッファ層)
3:光導波路(マッハツェンダ光導波路)
3a、3b:相互作用光導波路(光導波路)
4:進行波電極(電極)
4a:中心導体
4b、4c:接地導体
5:Si導電層
6:真空チャンバー
7:ドラム
8:z−カットLNウェーハ
9:SiOターゲット
10:Inターゲット
11:TiOターゲット
12:SnOターゲット
13:導電性酸化物混合バッファ層
14:SiO
15:In
16:SiO
17:Inペレット
18:Inターゲット
19:Tiターゲット
21:ドーパント混合バッファ層(バッファ層)
22、24、26:下側のドーパント混合バッファ層
23、25、28:上側のドーパント混合バッファ層
27:中間のドーパント混合バッファ層
30、300、310、320、400、410、420:ドーパント低濃度層(SiO層)
31、301、311、321、401、411、421:ドーパント層(In層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光を導波するための光導波路と、前記光を変調するための電圧を印加する、前記基板の一方の面側に形成された中心導体及び接地導体からなる電極と、前記中心導体もしくは前記接地導体の少なくとも一方と前記光導波路の間に形成されたバッファ層とを具備し、前記光導波路が前記中心導体と前記接地導体との間に前記電圧を印加することにより前記光の位相を変調するための相互作用光導波路を有する光変調器において、
前記バッファ層は、周期律表の三から八族あるいは一b族と二b族に属する金属元素もしくはその酸化物、及びSi以外の半導体元素もしくはその酸化物の少なくとも1つのドーパントからなるドーパント層と、
周期律表の三から八族あるいは一b族と二b族に属する金属元素もしくはその酸化物、及びSi以外の半導体元素もしくはその酸化物のいずれをも含まないか、周期律表の三から八族あるいは一b族と二b族に属する金属元素もしくはその酸化物、及びSi以外の半導体元素もしくはその酸化物の少なくとも1つを前記ドーパント層よりも低い濃度で含むドーパント低濃度層とを備え、
前記ドーパント低濃度層と前記ドーパント層とを交互に積層し、かつ前記電極に電圧を印加してからの時間経過において、実用上フラットなDCドリフト特性となる厚みを有する前記ドーパント低濃度層と前記ドーパント層とを具備することを特徴とする光変調器。
【請求項2】
電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光を導波するための光導波路と、前記光を変調するための電圧を印加する、前記基板の一方の面側に形成された中心導体及び接地導体からなる電極と、前記中心導体もしくは前記接地導体の少なくとも一方と前記光導波路の間に形成されたバッファ層とを具備し、前記光導波路が前記中心導体と前記接地導体との間に前記電圧を印加することにより前記光の位相を変調するための相互作用光導波路を有する光変調器において、
前記バッファ層は、酸化物もしくは酸化物でないインジウム、酸化物もしくは酸化物でないチタン、及び酸化物もしくは酸化物でない錫、酸化物もしくは酸化物でないゲルマニウム、酸化物もしくは酸化物でないアルミニウムの少なくとも1つのドーパントからなるドーパント層と、
周期律表の三から八族あるいは一b族と二b族に属する金属元素もしくはその酸化物、及びSi以外の半導体元素もしくはその酸化物のいずれをも含まないか、前記ドーパントの少なくとも1つを前記ドーパント層よりも低い濃度で含むドーパント低濃度層とを備え、
前記ドーパント低濃度層と前記ドーパント層とを交互に積層し、かつ前記電極に電圧を印加してからの時間経過において、実用上フラットなDCドリフト特性となる厚みを有する前記ドーパント低濃度層と前記ドーパント層とを具備することを特徴とする光変調器。
【請求項3】
電気光学効果を有する基板と、該基板に形成された光を導波するための光導波路と、前記光を変調するための電圧を印加する、前記基板の一方の面側に形成された中心導体及び接地導体からなる電極と、前記中心導体もしくは前記接地導体の少なくとも一方と前記光導波路の間に形成されたバッファ層とを具備し、前記光導波路が前記中心導体と前記接地導体との間に前記電圧を印加することにより前記光の位相を変調するための相互作用光導波路を有する光変調器において、
前記バッファ層は、酸化物もしくは酸化物でないインジウム、酸化物もしくは酸化物でないチタン、及び酸化物もしくは酸化物でない錫、酸化物もしくは酸化物でないゲルマニウム、酸化物もしくは酸化物でないアルミニウムの少なくとも1つのドーパントからなるドーパント層と、
前記ドーパントを含まないか、前記ドーパントの少なくとも1つを前記ドーパント層よりも低い濃度で含むドーパント低濃度層とを備え、
前記ドーパント低濃度層と前記ドーパント層とを交互に積層し、かつ前記電極に電圧を印加してからの時間経過において、実用上フラットなDCドリフト特性となる厚みを有する前記ドーパント低濃度層と前記ドーパント層とを具備することを特徴とする光変調器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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