光変調器
基板13に対して弾性バイアスされ、基板13との間に印加される電圧に応答して、該基板に対して移動することができるミラー10を組み込んだ非対称ファブリー・ペロエタロンを備えた、電気的に同調させることができる光共振器を有する微小光電気機械システム(MOEMS)電気光学変調器2。光変調器2は、複数の波長を有する電磁放射を変調することができる。変調器は、短波赤外放射(SWIR)、中波赤外放射(MWIR)および長波赤外放射(LWIR)の透過率を変調し、かつ、可視放射の反射率を変調するようになされている。空間光変調器は、複数の前記MOEMS光変調器2を有している。前記空間光変調器をアドレス指定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光変調器およびその制御方法に関する。本発明は、詳細には、それには限定されないが、画像化システムに使用するための微小光電気機械システム(MOEMS)空間光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
空間光変調器は、科学機器および商用製品を始めとする様々な画像化アプリケーションにとって重要な変調器である。
【0003】
本発明の背景として、光のビームの強度および/または位相を制御するために光干渉効果を利用したMOEMS光変調器が知られている。たとえば、Lewisらは、SPIE−5614(1994年)、24−30頁に、共振光共振器(cavity)として作用する波長可変間隙を備えたMOEMSデバイスに基づく光変調器構造を記述している(シリコン−空気−シリコンファブリー・ペロ(Fabry−Perot)エタロン)。しかしながら、Lewisらが記述しているデバイスは、透過作用ならびに反射作用させることができる点で、ほとんどのMOEMS光変調器構造とは異なっている。
【0004】
Goossenらは、IEEE Phot.Tech.Lett.6(1994年)、1119−1121頁に、反射モードで動作する、可動膜の下方に波長可変共振器を組み込んだ共振ファブリー・ペロ共振器に基づく光変調器を記述している。Goossenらが言及しているデバイスでは、膜は、エアギャップの上方のアームによって支持されており、膜の円周の周りに配置された電極と、下方に位置している基板との間に印加されるバイアス電圧によって生じる静電力によって移動させることができる。下方に位置している基板の近傍に膜がもたらされると、反射防止状態になり、したがって反射信号が減少する。透過の場合、開いた状態と閉じた状態の間のコントラストが極めて小さく、その設計は、場合によっては、赤外スペクトル領域で使用するための空間光変調器として適していない。Goossenが記述している変調器は、光ファイバ通信アプリケーションに有効に使用することができるが、このような構造は、そのフィルファクタが許容不可能なほどに小さい場合があるため、微細ピッチ幾何構造(10μm−50μm)を有する二次元アレイへの拡張は困難である。また、変調器内に使用される材料の応力のため、可動膜を著しくひずませることなく、よりコンパクトな支持構造を実現することは不可能である。さらに、Goossenらが言及しているデバイスは、デバイスに使用される材料(窒化物構造を覆っている金属)の熱膨張係数の差のため、ひずみを生じやすい。このようなひずみは、共振共振器の輪郭が不明確になる原因になることがあり、したがってデバイスの光学性能が低下することになる。
【0005】
フィルファクタを最大化するために電極が膜の周囲に限定されていることは、デバイスを静電的に駆動するために使用される面積の割合が極めて小さいことを意味している。したがって、デバイスを変調するためには高い電圧が必要である。同様に、膜の上方に位置している金属は、より高い駆動電圧が印加されない場合、電極間間隙を大きくし、結果として生じる力を弱くする。デバイスに必要な上部電極の有限サイズおよび関連する駆動電圧は、多くのピクセルを備えた大型(二次元)アレイに必要な微小ピクセルサイズ(15−50μm)にスケーリングするためにはこのデバイスを不適切なものにしている。
【0006】
米国特許第5,636,052号明細書に、複数のMOEMS光変調器のアレイを有する二次元空間光変調器を備えた反射型ディスプレイが記述されている。アレイ内の個々の変調器は、基板の上に浮遊した可動膜を備えている。光変調器の各々には、可動膜と下方に位置している基板との間の光干渉効果が使用されており、変調器は、この光干渉効果によって光信号を実質的に反射するか、あるいは吸収することになる。ディスプレイは、排他的に反射動作している。アレイ内の光変調器は、行−列アドレス指定スキームを使用して、関連する駆動電子機器を介して個々にアドレス指定することができる。能動行−列アドレス指定行列が使用されており、個々の変調器には、少なくとも1つのアドレストランジスタが結合されている。駆動電子機器は、個々の個別変調器に隣接している空間光変調器と同じ基板の上に製造することができる。当業者には理解されるように、この構造は、空間光変調器を使用したデータ信号の結合を容易にしているが、アレイのフィルファクタを小さくすることがある。また、変調器膜の製造に使用される高温微小電気機械(MEMS)処理ステップは、駆動電子機器内のトランジスタの特性を劣化させる原因になることがある。さらに、駆動電子機器が基板の中に製造されているため、基板の光特性が妨害され、そのために空間光変調器が反射型動作のみに制限されている。
【0007】
MEMSアレイアドレス指定スキームのほとんどは、埋込(ピクセル内)アドレス指定電子機器に基づいている。静電デバイスのヒステリシス特性については広く知られているが、この現象に基づくMEMSデバイスのためのアドレス指定スキームについては知られていない。欧州特許第1 341 025号明細書に例外の1つを見出すことができるが、このようなアドレス指定スキームは、これまで、本発明によるMOEMS空間光変調器のためには使用されていない。欧州特許第1 341 025号明細書には、複数のMEMS反射体を動作させるための活性化電極を使用し、かつ、MEMS反射体を好ましい位置にラッチするための個別蓄積電極を使用した反射型MEMS光ディスプレイシステムが記述されている。本発明とは対照的に、欧州特許第1 341 025号明細書に記述されているデバイスが動作するのは、デバイス内の電極が光透過型ではないため、反射動作のみである。したがって、欧州特許第1 341 025号明細書の駆動電極は、デバイスの光学構造の一部を形成していない。最後に、欧州特許第1 341 025号明細書で考察されているアドレス指定スキームは、ディスプレイシステム内の個々の反射体をリセットすることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上で説明したデバイスの欠点の少なくともいくつかを抑制する代替MOEMS空間光変調器を提供することである。本発明の他の目的は、ピクセル内電子機器を必要としないMOEMS空間光変調器を制御する受動方法を提供することである。本発明の他の目的は、微小シャッターアレイとして作用するMOEMS変調器を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、基板に対して弾性的にバイアスされ、基板との間に印加される電圧に応答して、該基板に対して移動することができるミラーを組み込んだ非対称ファブリー・ペロエタロンを備えた光共振器を有する微小光電気機械システム(MOEMS)光変調器が提供される。
【0010】
光変調器は、複数の波長および/または入射角を有する電磁放射を変調することができることが好ましい。別法としては、光変調器は、単一の波長を有する電磁放射を変調することも可能である。
【0011】
説明用として、従来のファブリー・ペロエタロンの場合、個々のミラーは、通常、屈折率が互いにコントラストをなす材料の誘電体スタックを備えており、個々の層の厚さは、ほぼ1/4光波長である。ミラーとミラーの間のエアギャップによって形成される共振共振器の厚さは、従来、1/2光波長(設計波長における)の倍数である。したがって、厚さが1/2波長である場合から1/4波長である場合へ可動ミラーをシフトさせることにより、後者の場合、スタック全体が本質的に広帯域反射体であるため、互いにコントラストをなす2つの光状態を達成することができる。これらの2つの状態は、それぞれ開いた状態および閉じた状態で表される。このような設計が抱えている問題は、開いた状態のスペクトル感度が比較的狭いことであり、したがってこのようなデバイスは、場合によっては、広いスペクトル範囲(0.75<w0<1.2)全体にわたる広帯域光変調器としては不適切である。w0は設計波長である。本発明による手法の場合、ゼロに近いレベルまで共振器の厚さが減少し、したがって干渉スタックが本質的に広帯域透過フィルタになることが保証される。
【0012】
好ましい実施形態では、光変調器は、赤外放射、より好ましくは、短波赤外(SWIR)放射(0.8−2.5μm)の大気の窓、中波赤外(MWIR)放射(3−5μm)の大気の窓および長波赤外(LWIR)放射(8−14μm)の大気の窓のうちの少なくとも1つの赤外放射の透過率を変調するようになされている。
【0013】
好都合には、光変調器の基板は、SWIR放射、MWIR放射およびLWIR放射に対して実質的に透過性である。この特徴は、基板の上に光共振器を製造する前の光変調器内の基板層の透過特性を表している。
【0014】
有利には、変調器は、光学的に開いた状態ではMWIR放射に対して実質的に透過性であり、また、光学的に閉じた状態ではMWIR放射に対して実質的に非透過性である。
【0015】
光変調器は、光学的に開いた状態において、40%を超える最大透過率、好ましくは50%を超える最大透過率、より好ましくは60%を超える最大透過率、有利には70%を超える最大透過率、より有利には80%を超える最大透過率、最適には95%を超える最大透過率を有していることが好ましく、また、MWIR放射に対する光学的に閉じた状態において、5%未満の最小透過率、好ましくは4%未満の最小透過率、より好ましくは3%未満の最小透過率、有利には2%未満の最小透過率、より有利には1%未満の最小透過率を有していることが好ましい。
【0016】
好都合には、光変調器は、シリコン可動ミラー層、エアギャップ、シリコン層、第1の誘電体層およびシリコン層が連続する複数の層からなる多層スタックを有している。第1の誘電体層は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素またはガス、たとえば空気あるいは窒素のうちの1つからなっていてもよい。
【0017】
別法としては、光変調器は、シリコン可動ミラー層、エアギャップ、第2の誘電体層、シリコン層、第1の誘電体層およびシリコン層が連続する複数の層からなる多層スタックを有することも可能である。その場合、第2の誘電体層は、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素および窒化ケイ素のうちの1つからなっていてもよい。
【0018】
他の好ましい実施形態では、光変調器は、可視放射を反射変調するようになされている。
【0019】
ミラーは、非対称ファブリー・ペロエタロン内で、基板から遠く離れた、実質的に安定した第1の位置と、基板に近い、実質的に安定した第2の位置との間を移動することができることが好ましい。
【0020】
好都合には、ミラーは、印加される電圧に応答して、第1の位置と第2の位置の間を非直線的に移動するようになされている。限定的にではなく、本明細書において使用されている、非直線的(non−linear)に、という用語は、ミラーが移動または加速する速度ではなく、光変調器に印加される電圧を関数としたミラーの位置的応答を表している。
【0021】
有利には、ミラーは、第1の閾値を超える大きさの力が加えられると、第1の位置から移動するようになされており、また、印加される力の大きさが第2の閾値未満に減少すると、第2の位置から移動するようになされている。これらの2つの閾値は、実質的に異なるようになされている。
【0022】
力は、印加される電圧の二乗に実質的に比例する大きさを有する静電引力、およびミラーの変位に実質的に比例する大きさを有する機械的回復力によってもたらされることが好ましい。別法または追加として、ばねを非線形コンポーネントになるように設計することも可能である。
【0023】
ミラーは、ヒステリシスを示す位置応答を有していることがより好ましい。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様による複数の光変調器の二次元アレイを備えた空間光変調器が提供される。
【0025】
好ましい実施形態では、空間光変調器は、第1の電極層および第2の電極層を有している。光変調器はアレイの形で配置されており、変調器の各々は、第1の層の中に電極を有し、かつ、第2の層の中に電極を有している。
【0026】
好都合には、空間光変調器は、複数の行電極および複数の列電極を有しており、光変調器は、受動行列行−列アドレス指定スキームを使用して個々にアドレス指定することができる。このような受動アドレス指定スキームには、空間光変調器内の個々の光変調器をスイッチするための半導体デバイス(トランジスタなど)は不要である。分かりやすくするために、行電極は、前記行の光変調器の中にすべての可動ミラーを備えており、一方、列電極は、前記列の光変調器の中にすべての固定プレート電極を備えている。
【0027】
個々の光変調器内の光共振器は、第1の電極層および第2の電極層のうちの少なくともいずれか一方を備えていることが好ましい。
【0028】
第1の電極層および第2の電極層のうちの少なくともいずれか一方は、入射する放射に対して実質的に透過性であることがより好ましい。
【0029】
光変調器は、5−200μmの範囲のピッチ(隣接する変調器上の同じポイント間で測定したピッチ)、好ましくは20−50μmの範囲のピッチ、最適には30μmのピッチのアレイで規則的に配置されていることが好ましい。
【0030】
好都合には、空間光変調器内の複数の光変調器のうちの少なくとも1つがアポダイズ(apodize)されている。アポダイズされた少なくとも1つの光変調器は、プロファイル化されたミラーを備えることができる。
【0031】
有利には、空間光変調器は、空間光変調器内の複数の光変調器のアレイと光通信して配置された複数の微小レンズを有するアレイを備えている。微小レンズアレイ内の微小レンズの各々は、空間光変調器内の光変調器と協同して電磁放射をその上に集束させることが好ましい。
【0032】
本発明の第3の態様によれば、アレイの形で配置された複数の双安定MOEMS光変調器を有する複数の行電極および複数の列電極を備えた空間光変調器をアドレス指定する方法が提供される。双安定MOEMS光変調器アレイ内の個々の光変調器は、行電極と列電極の間の交点に配置されており、上記方法には、
(i)個々の列電極に列駆動電圧を印加するステップと、
(ii)個々の行電極に行駆動電圧を印加するステップ
が含まれている。個々の交点における光変調器は、前記交点における列駆動電圧と行駆動電圧の間の電位差に応答して動作することができる。
【0033】
このアドレス指定スキームのキーとなる特徴は、所与の列がイネーブルされると、行全体を並列にセットすることができることである。実際には、列は逐次イネーブルされ、すべての行が所与の列毎に並列にセットされる。
【0034】
上記方法には、光変調器をラッチ位置にセットするステップであって、
(i)すべての列電極に印加される列駆動電圧を保持電圧基準Vrefに等しくするステップと、
(ii)セット電圧Vsetによってセットすべき変調器に対応する列電極に印加される列駆動電圧を高くするステップであって、Vref+Vsetが光変調器をラッチするために必要なラッチ電圧Vpiより低いステップと、
(iii)セットすべき変調器に対応する行電極に印加される行駆動電圧を行セット電圧−Vrow−setに等しくするステップであって、電位差Vref+Vset+Vrow−setがラッチ電圧Vpiより高いステップと、
(iv)セットすべき変調器に対応する行電極から行駆動電圧を除去するステップと、
(v)セット電圧Vsetによってセットすべき変調器に対応する列電極に印加される列駆動電圧をVrefまで低くするステップと
が含まれていることが好ましい。
【0035】
上記方法には、光変調器をラッチ位置からリセットするステップであって、
(i)リセットすべき変調器に対応する列を除くすべての列電極に印加される列駆動電圧を保持電圧基準Vref+セット電圧Vsetに等しくするステップであって、Vref+Vsetが光変調器をラッチするために必要なラッチ電圧Vpiより低く、リセットすべき変調器に対応する列がVrefを維持するステップと、
(ii)リセットすべき変調器に対応する行電極に印加される行駆動電圧を行リセット電圧+Vresetに等しくするステップであって、電位差Vref−Vresetが光変調器を解放するために必要な解放電圧Vpoより低いステップと、
(iii)リセットすべき変調器に対応する行電極から行駆動電圧を除去するステップと、
(iv)リセット電圧Vresetによってセットすべき変調器に対応する列電極に印加される列駆動電圧をVrefまで低くするステップと
が含まれていることが好ましい。
【0036】
分かりやすくするために、光変調器をラッチ位置にセットする上記ステップおよび光変調器をラッチ位置からリセットする上記ステップは、特定の行の上の他のすべての光変調器の状態を変化させることなく、該特定の行の上の個々の光変調器をセットすることができる。
【0037】
上記方法には、アレイ内のすべての光変調器をラッチ位置にセットするステップであって、
(i)すべての列電極に印加される列駆動電圧を保持電圧基準Vref+セット電圧Vsetに等しくするステップであって、Vref+Vsetが光変調器をラッチするために必要なラッチ電圧Vpiより低く、かつ、解放電圧Vpoより高いステップと、
(ii)すべての行電極に印加される行駆動電圧を行セット電圧−Vrow−setに等しくするステップであって、電位差Vref+Vset+Vrow−setがラッチ電圧Vpiより高いステップと、
(iii)セットすべき変調器に対応する行電極から行駆動電圧を除去するステップと、
(iv)セット電圧Vsetによってセットすべき変調器に対応する列電極に印加される列駆動電圧をVrefまで低くするステップと
が含まれていることが好ましい。
【0038】
上記方法には、アレイ内のすべての光変調器をラッチ位置からリセットするステップであって、
(i)すべての列電極に印加される列駆動電圧を実質的にゼロにするステップ
が含まれていることが好ましい。
【0039】
ピーク電流を制御するために、列電極のサブグループをアドレス指定することによって同様の方法でアレイ内の光変調器のサブグループをリセットすることができることは当業者には認識されよう。
【0040】
本発明の第4の態様によれば、検出器アレイに入射する電磁放射を変調するようになされた、本発明の第2の目的による少なくとも1つの空間光変調器を有する開口マスクを備えた適応符号化開口画像化(ACAI)システムのための複数のMOEMS変調器のアレイが提供される。
【0041】
以下、本発明について、単なる実施例にすぎないが、添付の図面を参照して説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
図面を参照すると、対応する構成要素または同様の構成要素は、いくつかの図面を通して、同様の参照数表示を使用して識別されている。図1aおよび図1bは、参照によりその内容が本明細書に組み込まれている本出願人らの同時係属英国特許出願第0521251号明細書に記載されている大型MOEMS光変調器の略断面図を示したものである。
【0043】
簡単に説明すると、英国特許出願第0521251号明細書に記載されている変調器には、光のビーム(または複数のビーム)の強度および/または位相を制御するために光干渉効果が利用されており、該変調器は1つまたは複数の可動微小ミラーが基板の上方に浮遊した単一のMOEMS光変調器または複数のMOEMS光変調器のアレイに基づいている。この構造を使用して、基板(たとえばシリコン)が光学的に透過性である波長を透過させることができ、また、この構造を使用して、実質的により広い範囲の波長を反射させることができる。
【0044】
個々の光変調器2は可動浮遊層10を備えており、以下、微小ミラー10として参照されるこの可動浮遊層10は、数分の1ミクロンと数ミクロンの間の距離だけ基板13の上方に浮遊している。微小ミラーはばね14によって支持されており、したがって、基板13と微小ミラー10の間に電圧が印加されると、静電力によって微小ミラー10が平衡位置から基板13へ向かって引き寄せられる。
【0045】
微小ミラー10は、その平面図の形は任意の形状にすることができるが、平らで、かつ、基板13に対して平行でなければならない。
【0046】
このデバイスに光が導かれると、光の一部が反射し、また、光の一部が基板13を透過してもう一方の側から射出する(基板がその波長に対して透明であるような波長の場合)。浮遊ミラー10で反射した光および浮遊ミラー10を透過した光は、基板13で反射した光および基板13を透過した光と干渉し、デバイス2の実際の透過率および反射率が、デバイスに入射する光の角度に応じて、浮遊ミラー10と基板13の間の間隔に応じて、また、システムの他の所定の特性、たとえば浮遊微小ミラー10の厚さ、微小ミラー10を構築している材料の屈折率および入射する光の波長などに応じて、大きい値と小さい値の間で変化する。
【0047】
微小ミラー10と基板13の間の間隔を調整することにより、透過率が大きい値と小さい値の間で変化し、それにより、入射する光を変調する手段が提供される。変調は、透過モードまたは反射モードでの動作が可能である。微小ミラー10は、通常、その厚さが数分の1ミクロンであり、シリコンが高度に吸収性である可視領域においても半透明であるため、シリコンで構築された変調器を使用して可視帯域を反射させることができることに留意されたい。また、微小ミラーは、可視領域におけるより良好な反射体として作用させるためにコーティングを施すことも可能である。
【0048】
光変調器2の透過特性および反射特性は、ファブリー・ペロエタロンによる透過および反射に対する知られている公式を使用して説明することができる。反射した光および透過した光は、位相がシフトし、かつ、振幅が変化することに留意されたい。この位相シフトおよび振幅の変化は、光のビームの位相を変調することによって通信するデバイスに使用することも可能である。
【0049】
微小ミラー10の各々は、制御中、ミラー10が確実に配置されていることを確信することができる2つの安定した位置を有している。これらの2つの安定した位置のうちの第1の位置は、ミラー10と基板13の間に電圧が印加されず、また、支持ばね14が伸びていない、微小ミラー10が基板13の上方で静止した状態で浮遊している「平衡位置」である。第2の位置は、基板13に印加される電圧が特定の値を超え、微小ミラー10が基板13に向かって確実に引き下げられた「プルダウン位置」である。基板13と微小ミラー10の間に絶縁ストップ22を提供し、電圧が特定の値を超えた場合に、ミラー10をストップ22に強く引き寄せ、かつ、それ以上は基板13に向かって引き寄せることができないようにすることも可能である。電気的接触は、短絡および電気的損傷の原因になることがあるため、これらのプルダウンストップ22によって微小ミラー10と基板13の間の望ましくない電気接触を防止している。
【0050】
図2は、上で説明したMOEMS光変調器2の横断面図を示したものである。MOEMS光変調器2は、ポリシリコン−空気−シリコンの構成からなるエタロンを有する単純な構造を備えている。光変調器2は、4つの付着ステップ(窒化ケイ素層18、微小ミラー10および支持ばね14を製造するためのポリシリコン層、および2つのリンドープ酸化ケイ素層(これらのリンドープ酸化ケイ素層は、次にデバイスから除去され、これらのリンドープ酸化ケイ素層のうちの下側の層を除去することにより、ファブリー・ペロエタロン内にエアギャップが提供される))のみを使用してシリコン基板13の上に製造することができる。したがって構造が単純であるため、低コストのデバイスが得られる。改良型食刻停止層としての追加固定ポリシリコン層16、およびアレイサイズが成長する際のRC遅延を制御するためにトラック抵抗を小さくする金属層20などの他の任意選択の層を含むことも可能である。
【0051】
上で説明した微小ミラー10は、緊密にパックされたタイル張りの光変調器2で拡張領域が覆われたアレイとして製造することができ、その場合、微小ミラー10は、空間光変調器になる。応力が小さいため、図2に示す形態の浮遊を使用し、かつ、切りばめ式にすることによって大型アレイを構築することができる。この形態の設計は、中央の実質的に正方形または長方形のミラープレートの対向する2つの面または4つのすべての面にばね14を有している。この設計は、変位に対するプレートの平面度とフィルファクタの間の良好な妥協(良好な光学性能のための)、許容可能な速度および駆動電圧(電気機械的性能)、ならびに広範囲にわたるカバレージに対するスケーラビリティを表している。このデバイスは、基板13を広域電極として利用しているため、すべての光変調器2が並列に駆動される。上記説明は、正方形構成または長方形構成に関連してなされているが、ミラープレート10(および関連する二次元アレイ)は、他の形にすることが可能であり、たとえば円形、六角形などの形にすることができる。同様に、ばね14は、線形構成に限定されず、湾曲させることも可能である。これらのばね14は、関連する二次元アレイ内における結合性およびフィルファクタを改善するために、ミラーに対して配置することも可能である。
【0052】
この手法を使用したMOEMS光変調器は、24V、1.55μmにおいて、7:1(50:1二重パス)を超えるコントラスト比で200kbpsを超えるデータ転送速度を立証している。
【0053】
上で説明したMOEMS光変調器2は、これまで、単一波長(1.55μm)のSWIRで動作する透過モードで使用されている。広角度動作を提供するために、低フィネス光共振器が使用されている。
【0054】
次に図3aを参照すると、本発明によるMOEMS光変調器の横断面図は、波長可変共振器の上に可動ミラーを有する非対称ファブリー・ペロエタロンを備えている。本発明のこの実施形態では、非対称エタロンは、ポリシリコン−空気−ポリシリコン−酸化物−シリコンの構成からなっている。
【0055】
図3aに示すMOEMS光変調器は、シリコン基板13を備えており、シリコン基板13の上に酸化ケイ素の層30が製造され、その上に固定ポリシリコン層26が製造されている。固定ポリシリコン層26は、エアギャップ24によって可動微小ミラー10から分離された固定電極を提供している。本発明のこの実施形態では、エタロンは、ポリシリコン−空気−ポリシリコン−酸化物−シリコンの構成からなっている。
【0056】
図3bに略図で示されている代替実施形態では、固定ポリシリコン層26の上に誘電体層28が提供されている。本発明のこの実施形態では、エタロンは、非対称ポリシリコン−空気−誘電体−ポリシリコン−誘電体−シリコンの構成からなっている。上部ポリシリコン−空気層は、固定誘電体層28、ポリシリコン層26、誘電体層30およびシリコン基板13と相俟って波長可変エタロンを提供している。誘電体層28は、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素または最も好ましくは窒化ケイ素からなっていることが好ましい。誘電体層30は、酸化ケイ素からなっていることが好ましい。別法としては、誘電体層30は、窒化ケイ素または酸窒化ケイ素からなっていてもよい。さらに別法として、より複雑な構造をポリシリコン−空気−ポリシリコン可動上部ミラーと共に使用して、デバイスのフィネスを改善することも可能である。
【0057】
当業者には理解されるように、上で言及したアーキテクチャは、犠牲層、この場合はリンドープ付着酸化ケイ素を除去している間、異なる相対食刻速度を有する酸化物層を使用することによって製造することができる。たとえば、熱酸化ケイ素は、フッ化水素酸中では、付着ドープ酸化物層より5分の1と100分の1の間というはるかな低速で食刻する。しかしながら、改良型製造方法は、解放食刻の間、露出した酸化ケイ素層を有することを回避することである。
【0058】
図3aおよび図3bに示されている前述の実施形態は、二酸化ケイ素を層30内の誘電体として利用し、また、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素または窒化ケイ素を層28内の誘電体として利用しているが、他の誘電材料を選択して良好な性能を得ることも可能であることは当業者には認識されよう。
【0059】
図3bに示されている誘電体層28を使用することにより、ポリシリコン微小ミラー(デバイス内の上部電極として使用される)と下部ポリシリコン層26(デバイス内の下部電極)との間に電気絶縁が提供され、それにより追加利点が提供される。この構成は、変調器内にエアギャップを実現するためのプロセスの間、窒化ケイ素層によって下方の酸化ケイ素層が食刻除去から保護されるため、複数の光変調器2のアレイの製造を容易にしている(固定ポリシリコン層が複数の個別電極に分割されている)。
【0060】
同様に、他の構造層/基板を適切な光/機械材料特性、たとえばポリシリコン−ゲルマニウム、ゲルマニウム、単結晶シリコンなどと共に使用することも可能である。
【0061】
通常、スループットを最適化し、かつ、擬似エタロン効果の可能性を小さくするために、SiOまたはTa2O5/SiO2などの無反射コーティング(ARC)がシリコン基板13の背面に追加される。
【0062】
良好な閉じた状態での性能を達成するためには、狭い(たとえば30−100nm)エアギャップが必要であり、追加スタンドオフディンプル22を使用して面積の広い接触を防止しない限り困難である。ポリシリコン電極の上にブランケット絶縁誘電体層28を使用する(適切な光学設計で)ための代替の1つは、接触を許容し、スタンドオフを画定することである。設計は、可動微小ミラーが静止摩擦(stiction)力に打ち勝ってその平衡位置に確実に復帰するように最適化される。
【0063】
本発明によるMOEMS光変調器は、光共振器の間隙を調整することにより、SWIR、MWIR、LWIRおよび可視透過スペクトルの一部で動作させることができる。
【0064】
デバイスは、任意選択で、十分な移動が許容される場合(間隙によって画定される)、他の光帯域(たとえば可視)で反射で使用することができる。性能を改善するために、任意選択で、薄い上部反射コーティングが使用される。
【0065】
光変調器のディジタル動作は十分であり、その場合、微小ミラーは、その上部平衡位置か、あるいは下部固定電極に極めて近いその下部位置のいずれかに配置される。上部平衡位置および下部位置には、ミラーによって採用される、基準電圧Vrefが変調器に印加される位置が含まれていなければならない。システム設計を改善するためには、変調器は、反射ではなく、透過で使用されることが好ましい。透過型変調器として使用される場合、光変調器は、微小ミラーがその上部平衡位置に位置している場合、通過する電磁放射の透過を実質的に遮断し、また、微小ミラーが基板に極めて近いその下部位置に位置している場合、通過する電磁放射を実質的に透過させる。
【0066】
このMOEMS変調器は、とりわけ、性能上の理由(たとえばLCD)またはコスト上の理由(たとえば多重量子井戸デバイス)から他の従来の変調器解決法を適用することができないMWIRおよびSWIR画像化アプリケーションに適用することができる。また、この変調器は、シリコンから排他的に製造することができるため、熱複材料効果(thermal bi−material effect)が抑制されるかあるいは除去され、したがって変調器の挙動に対する動作温度の影響が著しく減少する(たとえば−40℃から+70℃を超える範囲を容易に許容することができる)。これは、この変調器が冷却に適しており、したがって微小ミラーが画像にノイズを加えることがないことを意味している。したがって、この変調器は、IR画像化アプリケーションおよび適応符号化開口画像化アプリケーション(ACIA)に有利に使用することができる。
【0067】
図4aから図4cは、図3bに示す波長可変共振器の典型的な性能特性を示したものである。詳細には、図4aは、微小ミラーがその上部平衡位置にあり、垂直入射ではその下部位置にある光変調器のMWIR波長帯域における透過率を示したものである。図4bは、微小ミラーがその上部平衡位置にあり、0度および50度の入射角に対してはその下部位置にある光変調器のMWIR波長帯域に対する透過率を示したものである。図4cは、入射角に対する偏光による透過率を示したものである。実際には、15度から20度の範囲の入射角を使用して角効果を最小化することができる。大気からの放射の変調を必要とする状況では、透過率のピークと大気透過率窓が一致するように配置することが有利である。
【0068】
エタロン内の光スタックの寸法は、コントラスト比が最大化されるよう、スペクトル全体および角度範囲全体にわたって最適化することができ、単一波長デバイスのための従来の2分の1波長/4分の1波長光スタックから若干移動している。
【0069】
図5aは、ポリシリコン微小ミラー−空気−窒化ケイ素−ポリシリコン−二酸化ケイ素−シリコン基板の層列を使用して、3.5μmから4.5μmの波長帯域における光学的に開いた状態の最大透過率に対して最適化された、図3bに示す波長可変共振器の典型的な性能特性を示したものである。
【0070】
この特定の実施形態では、微小ミラーを移動させることによって光変調器の2つの状態(光学的に開いている実質的に透過性の状態/光学的に閉じている光学的に非透過性の状態)が達成され、それにより変調器内のエアギャップが調整される。標準位置は、約1μmおよび約50nmにすることができる。
【0071】
特定の画像化アプリケーション、たとえば適応符号化開口画像化(ACAI)の場合、個々の光変調を個々にアドレス指定することができる複数のMOEMS光変調器の二次元アレイを製造することが望ましい。この二次元アレイを製造することにより、アレイ(以下、ピクチャーエレメントすなわちピクセルとしても参照される)内の個々の光変調器を光学的に閉じた位置または光学的に開いた位置(反射「0」または透過「1」)にセットすることができる。たとえば、本発明による複数のMOEMS光変調器の二次元アレイを備えた、参照によりその内容が本明細書に組み込まれている本出願人らの同時係属英国特許出願第0510470号明細書に記載されている適応符号化開口画像化(adaptive coded aperture imaging,ACAI)システムの略図を示す図5bを参照されたい。
【0072】
したがって、本発明の他の実施形態によれば、空間光変調器は、図1aから図3bに示されている、受動行列行/列アドレス指定スキームを使用して、透過型デバイスにおけるフィルファクタを許容不可能なほどに小さくすることになるサブピクセル制御電子機器を必要とすることなくアドレス指定することができる複数の光変調器の二次元アレイを備えている。透過型アーキテクチャの重要な一面は、下部電極が透明であり、かつ、光学設計の一部であることである。キーとなる利点は、本発明によるこの実施形態は、オフチップドライバを使用してMEMSのみのチップをアドレス指定することができ、集積MEMSプロセスが不要であることを意味していることである。この手法によれば、MEMSアーキテクチャの最適化とピクセル制御電子機器の最適化を分離することができ、コストが低減され、また、任意のサイズにスケール化することができる二次元アレイが提供される。
【0073】
二次元アレイの受動行列アドレス指定は、構成光変調器を適切な電圧を使用して双安定にすることにより、本発明によるこの実施形態の中で達成される。
【0074】
この双安定特性を達成するために、微小ミラーは、光変調器に印加される電圧が特定の値を超えると、その平衡位置から「プルイン」(または「ラッチダウン」)位置へスナップダウンするように配置されている。MOEMS光変調器の非線形効果は、これまで、デバイスの動作に有害であると見なされ、このような影響を除去する努力がなされている。たとえば、線形動作特性を使用したMOEMS光変調器が記述されている米国特許第5,838,484号明細書を参照されたい。
【0075】
したがって、本発明によれば、アレイ内の個々の光変調器2は、一対の電極の両端間に印加される電位差が閾値電圧(Vpi)を超え、その状態で静電引力が支持ばね14によって提供される機械的回復力より大きくなると、アレイ内の微小ミラー10のみがラッチダウン(プルイン)するように配置されている。光変調器にはヒステリシスがあり、したがってプルオフ電圧(Vpo)は、プルイン電圧よりはるかに低い。ヒステリシスの程度は、適切な設計によって適合させることができる。
【0076】
受動行列アドレス指定を可能にするために、プルオフ(すなわち解放)電圧は、プルイン電圧よりはるかに低くなる(たとえば1/2になる)ようになされている。たとえば、この実施形態のアレイ内の複数の光変調器のうちの1つのヒステリシス特性の概要を示す図6を参照されたい。
【0077】
この実施形態では、複数の光変調器の二次元アレイは、複数の列アドレス電極32と下方に位置している複数の行アドレス電極34の間の行列で配置されている(図7aおよび図7bを参照されたい)。上側の列アドレス電極32は、光変調器内に可動微小ミラー10を備えており、一方、行アドレス電極34は、個々の光変調器内に固定電極プレート36を備えており、縁を介してアクセスされる(図7bを参照されたい)。
【0078】
図7cは、複数の光変調器のカプセル化二次元アレイを備えた、本発明の他の実施形態の略断面を示したものである。ここでは、光変調器アレイは、ウェーハ/チップスケールカプセル化技法を使用して、結合層29によって基板13に取り付けられたキャップ31によって密閉されている。図7cでは、キャップは、その中に形成されたリベート(rebate)を有している。別法としては、結合層29の厚さがそれに応じて分厚くなる場合、平らなキャップを使用することも可能である。この方法でカプセル化することにより、密閉されたデバイス内の圧力を制御することができ、延いては微小ミラーの機械的なダンピングを制御することができる。この技法によれば、デバイスがウェーハスケールで解放され、結合され、かつ、鋸引きされるため、処理が簡略化され、したがってデブリスの問題が回避され、また、システムへの実装/統合中における処理が簡略化される。キャップ31は、適切な無反射(AR)コーティングおよび可動ミラーに対する適切な間隔(たとえば、望ましくないエタロン効果を回避するアプリケーションの場合、光の可干渉距離より大きい間隔)を備えている。この間隔は、キャップ内のリベート(図に示されているように)および/または変調器ウェーハとキャップウェーハの間の結合スペーサによって達成することができる。上部キャップ31と可動ミラー10の間の間隙を何らかの方法で積極的に使用して、光学性能をさらに調整し、かつ、微小間隙でエタロン効果を利用することも可能である。
【0079】
また、貫通ウェーハビアを基板またはキャップ(さらには電子チップ)に組み込み、フリッピングを必要とすることなく電子ドライバチップの直接実装を可能にすることもできる。
【0080】
キャップは、任意選択で、光学的機能または光パワーを有する1つまたは複数のエレメントを提供する形状にすることができ、たとえばキャップにレンズの機能を持たせることができる。
【0081】
この構造の場合、アレイ内の所与の光変調器に印加される電圧は、可動微小ミラーに印加される電圧(列電圧)と固定電極に印加される電圧(行電圧)の合計である。この構成によれば、アレイ内の個々の光変調器すなわちピクセルを行/列アドレススキームで個々にセットすることができる。
【0082】
次に、本発明の一実施形態による、個々のピクセルを行/列アドレス指定スキームで個々にセットおよびリセットすることができるアドレス指定スキームについて説明する(ピクセルのラッチを解除するためにアレイ全体をリセットする必要はない)。
【0083】
本明細書において詳細に説明されている、ヒステリシスゾーンにもたらすために個々のピクセルに印加される正味電位差(保持)をプルオフ電圧(リセット)未満またはプルイン電圧(セット)を超える電圧へ移動させる機能と同じ機能を達成するために列電圧/行電圧を変化させる他の方法が存在していることは当業者には理解されよう。たとえば、リセット機能の間、ミラーを含んだ列の電圧をリセットするためには、列電圧と行電圧の合計がプルオフ電圧未満になるよう、ミラーを含んだ列の電圧を他の列の電圧より低くしなければならない。これは、重要な列の電圧を基準電圧未満に低くする(他の列がVref−Vreset>Vpoになるよう)ことによって達成することができ、あるいは他の列の電圧を基準電圧よりVset2だけ高くし、それらの電位がプルオフ電圧より高い電圧を維持し、かつ、重要な列(Vrefの)の電圧が行電圧と共にプルオフ閾値未満になるようにすることによって達成することができる。同様に、行電圧および列電圧は、行が逐次アドレス指定され、一方、すべての列が並列にセットされるよう、交換することができる。
【0084】
本発明のこの実施形態によるアドレス指定スキームは、Vpiがラッチ(プルイン)電圧であり、Vpoが解放(プルオフ)電圧である静電ヒステリシスに基づいている(図6参照)。従来技術を参照すると、欧州特許第1 341 025号明細書のアドレス指定スキームは、ラッチ電圧を除去することによって変調器アレイ全体をリセットしている。また、欧州特許第1 341 025号明細書は、個別のラッチ電極を使用している。したがってアレイのごく一部分のみを変化させ、かつ、残りの部分を変化しない状態で維持することが困難であり、また、潜在的に有効ではない(所与の時間内にアレイパターンに適合させるためには、より速いアドレス指定速度が必要である)。
【0085】
図8に示されているシーケンスは、この実施形態で説明されているアドレス指定スキームを最も良好に示したものである。図8を参照すると、行位置は、R行番号によって示されており、列位置はC列番号によって、また、ピクセル位置は、P行番号、列番号によって示されている。この例では、Vpi=14V、Vpo=10Vとする。図8の上側のグラフは、行電圧状態(たとえばup=−2V(−Vrow−set)、down=+2V(Vrow−set)、centre=0V)および列電圧状態(たとえばup=13V(Vref+Vset)、centre=11V(Vref)およびdown=0V)を示している。所与のピクセルの駆動電圧は、(Vcolumn−Vrow)で与えられる。図8の下側のグラフは、所与のピクセルがラッチ(1)状態にあるか、あるいは解放状態(0)状態にあるかどうかを示している。ここで使用されている電圧は、100kbpsでSWIRを変調するように設計された1.2μm間隙の25μm微小ミラーに典型的な電圧である。
【0086】
動作は、以下に示すように、電圧の適切な組合せをセットすることによって実施される。
【0087】
ピクセルのセット
Vref+Vset<Vpiにセットすべきピクセルを有する列を除くすべての列の電圧は、保持電圧基準Vrefである。電位差がVref+Vset+Vrow−set>Vpiになるよう、ラッチすべきピクセルを有する行電圧が−Vrow−setにセットされる(他の列の電圧はVref+Vrow−set<Vpiであり、したがってラッチしない)。行からVrow−setが除去され、すべての列がVrefに復帰してピクセルをラッチ状態に保持する。
【0088】
ピクセルのリセット
Vrefにリセット(解放)すべきピクセルを有する列を除くすべての列の電圧は、Vref+Vset(<Vpi)である。解放すべきピクセルを有する行電圧が+Vresetにセットされ、したがってピクセルの両端間の電位差は、Vref−Vreset<Vpoである(他の列の電圧はVref+Vset−Vreset>Vpoであり、したがってラッチされると、その状態を維持する)。行からVresetが除去され、すべての列がVrefに復帰して所望のピクセルをラッチ状態に保持する。
【0089】
すべてのリセット/セット
すべてをリセットするためには、すべての列が0Vにセットされる。すべてをセットするためには、すべての列がVref+Vsetにセットされ、かつ、すべての行がVrow−setにセットされる。
【0090】
この方法によれば、完全な列を並列にアドレス指定することができる(つまり、列電圧がセットされると、列全体を変化させるためにすべての行電圧がセットされる)。列は、逐次アドレス指定される。
【0091】
上で使用されている行および列という用語は制限的なものではなく、アドレス指定スキームに影響を及ぼすことなく、互いに交換することができる。
【0092】
原理的には、この手法を使用して空間光変調器アレイを任意のサイズにスケール化することができる。画像化シナリオの場合、個々のピクセル微小ミラーのピッチは、15−100μmの範囲に入ることが考えられる。画像化アプリケーションに使用される場合、ピッチは、検出器の画像化アレイ内のピクセルのピッチと整合していることが好ましい。アレイは、独立した列を備えていなければならず、また、実際には、サイズは、抵抗/容量(RC)時定数によって制限されている。これは、任意の時間に1つの列のみをスイッチングすることによって軽減される。個々のピクセルの抵抗は、ばねの幅および長さによって決まり、たとえば2μmのばねを備えた厚さ0.5μmのポリシリコンの場合、ピクセルアレイの抵抗は500KΩ/cm程度であり、一方、アレイの容量は、50pF/cm程度(100μmピクセルプレートの場合)であり、したがってRC定数は2.5μs/cmである。リソグラフィで使用されているステッパフィールドサイズは、通常、2×2cm程度であり、したがって、これは、より大きいアレイを構築し、かつ、良好な制御および歩留りを維持するためのタイルに対する実用上のサイズ制限である。しかしながら、ばねの上方で相互接続された、抵抗がより小さいポリシリコンの埋込層または第2の層を使用することにより、抵抗を著しく小さくすることができる(10分の1未満)。別法または追加として、速度/抵抗性電圧降下が問題になる場合、薄い金属層を使用してトラック抵抗を2−3桁小さくすることも可能である。たとえば、この薄い金属層は、Auを必要としない領域(たとえばピクセルの透過領域)を保護するために、構造自体からのシャドーマスキングおよび/またはリフトオフの組合せを使用してデバイスが部分的に解放される場合に付着させることができる。変調器が追加ポリシリコン層および金属導体層を備えている場合、デバイスの一部に光遮断層が形成され、それにより最適コントラストが維持されるように前記層を配置することができる。これは、フィルファクタが小さいデバイスの場合にとりわけ有利である。
【0093】
電極層の場合、固定ポリシリコンは電気コンジットとして作用する。これは、可動アレイ層中のばねよりはるかに幅が広く、したがって性能に対する制限がより少ないと考えられる。その抵抗をさらに小さくするために、ビアを使用して周期的にトラックが打ち込まれた基板に電極アレイを接続することができる。基板中のトラックは、打込みによって得られる逆バイアスpnダイオードを使用して絶縁分離される。また、ほとんどの能動抵抗制御の場合、基板の上にケイ化物トラックまたは金属トラックを画定することも可能であるが、光路を妨害しないように注意しなければならない。
【0094】
金属窒化物プロセスは、電極および可動微小ミラー層の両方が抵抗の小さい金属トラッキングを含むことになるため、この状況においては興味深い代替である。駆動電圧は、透過を許容する(IR透過性メタライゼーションが使用されない限り)ためには微小ミラーの大部分をPECVD窒化物のみとして製造しなければならないため、より高くなることが考えられる。実際には、PECVD窒化物層の頂部および底部にメタライゼーションを適用し、それにより熱複材料効果を抑制し、かつ、駆動間隙を狭くすることができる(延いては駆動電圧を低くすることができる)。
【0095】
空間光変調器アレイ内の変調器のフィルファクタが小さくなる状況では、微小レンズアレイを任意選択で本発明による空間光変調器と共に使用し、それにより光変調器の効率を維持することも可能である。
【0096】
本発明の他の実施形態によれば、縁効果を抑制し、延いては回折を抑制するために、光アポダイゼイションのプロセスを本発明による空間光変調器に使用することができる。ピクセルは、複数の光変調器のアレイ内の複数の共振器ミラーエレメントのうちの1つを適切にプロファイリングすることによってアポダイズすることができる。たとえば、個々のファブリー・ペロエレメントの光透過率を小さくするように設計された単調増加プロファイル、ステッププロファイルなどをミラーに付与することができる。これは、最も実際的には、微小ミラーの周囲の近くに拘束されることになる。別法または追加として、アポダイゼイションを達成するために、共振器ミラーの1つまたは複数の縁にメタライゼーションが追加される。このメタライゼーションは、金属(たとえば金)の1つまたは複数の層からなっていてもよい。金属層の厚さは、徐々に変化させることができる。追加または別法として、グレイスケールパターン(ハーフトーンパターン)等を使用してメタライゼーションを適用し、それにより金属層の光濃度を変化させることも可能である。
【0097】
MEMS設計に関して、重要な主な特徴は、速度、電圧(電力)および微小ミラーサイズである。図を参照すると、図9aは、予測共振周波数対ピクセル厚さのプロットを示し、図9bは、予測共振周波数対プレートサイズのプロットを示し、図9cは、予測駆動電圧対プレートサイズのプロットを示し、また、図9dは、予測フィルファクタ対プレートサイズのプロットを示している。図9aから図9dには、ピクセルが大きいほど駆動電圧が低くなり、また、フィルファクタが大きくなり、その一方で速度が遅くなること、これらの4つのばね設計は、より高速ではあるが、より高い駆動電圧が必要であり、また、より小さいフィルファクタを有していること、およびピクセルが薄いほど駆動電圧が低くなり、また、速度が遅くなる、という傾向が強調して示されている。
【0098】
本発明によるより小さいMOEMS空間光変調器アレイを使用して広い面積をタイル張りにすることができることは当業者には理解されよう。本発明の他の実施形態では、それぞれ列および行をアドレス指定するために、直接チップ取付け技法を使用した混成集積を使用して、MOEMS空間光変調器アレイチップの両面に薄いドライバ電子機器チップ40がフリップされ、かつ、結合される(たとえば微細幾何構造はんだバンプ技術を使用して)。複数のタイル(変調器チップ)の二次元アレイにスケール化されると、4つのすべての面がドライバチップで取り囲まれたMEMSチップが得られる。タイルアレイの周囲の空白の縁にダミーのチップを使用することができる。別法としては、これらのドライバチップは、個々のタイルの4つの縁に1つのドライバチップを必要とする2つの隣接するチップのための電子機器を含むことも可能である。この技法を使用して、図10に示すように、2つのMOEMS変調器チップが個々の電子機器チップによって取り付けられる。
【0099】
微小タイルから大型アレイを構築する方法は、歩留りがチップ面積と共に小さくなるため、コストを低減するための最も有効な方法である。また、個々のドライバチップがアドレス指定しなければならない列および行の数が制御される(したがってRC/抵抗性損失および電力/電流の問題が制御される)。たとえば2×2cmチップの場合、ピクセルのピッチが20μmであると仮定すると、1000行および1000列が存在することになる。そのためには10ビットのアドレス指定が必要である。駆動電圧が3.3V未満である場合、0.35μm混合CMOS技術を使用してこのようなチップを実現することができ、あるいは駆動電圧が5V未満である場合、0.8μm混合CMOS技術を使用してこのようなチップを実現することができる。駆動電圧が高いほど、高い電圧(20−50V)プロセス変量および/またはより大きい幾何構造プロセスが必要になり、駆動電子機器の設計が高度に特殊化されることになる。また、高電圧プロセスにおけるトランジスタのサイズもより大きく、この手法は、単純なレイアウトおよびアーキテクチャを使用して実現することが場合によっては不可能であることを意味している。異なる駆動電圧で動作するドライバチップの組合せを使用した構成も実現可能である。たとえば、列および行アドレス指定スキームの場合、列アドレスドライバは標準のCMOSドライバチップを備えることができ、一方、行アドレスドライバは高電圧ドライバチップを備えることができる。この実施例では、高電圧ドライバチップは、微小ピクセルピッチの場合、最大40vで動作することができる。
【0100】
このようなタイル張り構造を使用することにより、フラードームなどの平らでない形状を実現し、剛直性を増すことも可能である。また、図10には、タイル張りアレイの剛直性を増すようになされたエレメント42を有する任意選択の支持フレームが示されている。有利には、この支持フレームは、熱伝導性(たとえば金属製)にすることができ、また、この支持フレームを使用してタイル張りアレイの温度を制御することができる。たとえば、支持フレームを介して縁から熱を除去することによってアレイ全体を冷却することができる。支持フレームは、任意選択で、冷却流体が通過する中空断面を備えることができる。別法としては、この支持フレームを介して、あるいはこの支持フレームの上に、タイル張りの複数のMOEMSアレイへのデータ接続および/または電力接続を経路化することも可能である。
【0101】
2cmチップの50×50アレイをさらに多重化して、特定のチップをイネーブル/ディセーブルしてセットし、1×1mのマスクを得ることができる。単一のエレメントを使用する場合、そのためには、2.5Gピクセルアレイに対する16ビットのアドレス指定が必要になる。
【0102】
タイル張りにされた大型アレイを更新する速度は、主要な設計考察事項である。容量性負荷を駆動する電圧、延いては電気速度は、RCの問題によって制限されている。典型的な設計の場合、RC時定数は、2.5μs/cm長程度であり、2×2cmチップの10μs/ピクセルスイッチング速度と両立している。上記の構成の場合、これは、列経路のポリシリコンの抵抗および多少なりとも行経路のポリシリコンの抵抗によって制限されている。これらの抵抗は、いずれも、上で説明した場合より若干プロセスが複雑になるが、より導電性の高い経路を並列に追加することによって小さくすることができる。機械的な応答は、デバイスの共振周波数およびダンピング(圧力)で決まる。共振周波数は、移動層の厚さ、ばね設計およびピッチで決まる。適切に設計することにより、1−10μs程度の時定数になることが予測されている。潜在的には、1000×1000アレイ(2センチチップ上で20μmピッチ)の場合、本明細書において提案されているアドレス指定スキームを使用することによって得られるアレイ更新時間は10ms未満であり、列全体のピクセルが並列にセットされる。このサイズのタイルを使用し、かつ、すべての変調器タイルを並列に駆動し/アドレス指定することにより、任意のサイズのアレイを個々のタイルの速度と同じ速度でセットすることができる。
【0103】
駆動電圧は、ピクセル面積、ばね幾何構造および間隙で決まる。35μmピクセルの光学設計の場合、駆動電圧は5V程度であり、最大200kHzで応答することができる。電力消費は、容量、状態を変化させるピクセルの数および頻度、ならびに使用されるあらゆる電荷回復スキームの効率と組み合わせた電圧の関数である。
【0104】
本発明の上記実施形態のいずれかによるMOEMS光変調器は、シリコン基板の上に材料層を連続的に付着させることによって製造される。別法としては、デバイスは、パターン化され、かつ、ポリシリコン構造層の代わりにMEMSウェーハに転送されるSOIウェーハのデバイス層を使用して製造される。これは、ポリシリコン層中の応力を制御するための高温処理ステップが不要であり、また、従来のCMOS電子機器が基板上で可能であるため、有利である。
【0105】
本発明によるMOEMS光変調器は、ポリシリコン−ゲルマニウム微小機械加工(たとえばIMECまたはUC Berkeley)または金属窒化物プロセス(たとえばQinetiQ)などの低温技術を使用して、CMOSを含んだ基板上で後処理することができる。後者は、PECVD窒化物膜を、上で説明した抵抗の小さい金属トラッキングを備えた主光学/構造エレメントとして使用することができる。また、標準のポリシリコンプロセスを、トランジスタ特性が若干低下した修正大型幾何構造(2−3μm)CMOSプロセスフローまたはBiCMOSプロセスフローに組み込むことができる。
【0106】
本発明によるMOEMS空間光変調器アレイの特定のアプリケーションの1つは、適応符号化開口画像化(ACAI)システム内の再構成可能マスクとしてのアプリケーションである。図5bを参照すると、本発明による複数のMOEMS空間光変調器アレイのうちの少なくとも1つを備えた再構成可能マスクは、二次元検出器アレイの前面に使用されており、シーンから入射する電磁放射の振幅および/または位相を変調するように配置されている。このマスクは、個々にアドレス指定することができる複数の開口またはピンホールを提供している。通常、マスク内の開口のピッチは、約15−50μmである。実際には、複数の光変調器は、より大きい実効開口を有するより大きい変調器として一体として作用する1つのグループにすることができる。たとえば、それぞれ50μm2の副開口を有する4つの個々の光変調器を1つのグループにし、200μm2の実効開口を有する単一の光変調器を形成することができる。
【0107】
本発明によるMOEMS空間光変調器の代替アプリケーションには、それらに限定されないが、赤外検出器アレイの使用中における較正、電気光学保護および走査検出器アプリケーションがある。
【0108】
赤外検出器アレイの較正は、製造プロセスの変動によって赤外検出器の出力信号が検出器によって大きく変化するため、本発明によるMOEMS空間光変調器の重要なアプリケーションである。これは、複数の検出器の二次元アレイを同時に製造する場合においても言える。複数の赤外検出器の二次元アレイ上の個々のエレメントには、通常、マルチプレクサとして作用することができるシリコン読出し回路の上にアレイをバンプ結合することによってアクセスされる。シリコントランジスタの特性の変化は出力の変化に加えられ、通常、出力を入力フラックスに応じて非直線的に変化させる。
【0109】
したがって、アレイ内の個々のピクセルの出力をフラックスの関数として較正することが重要である。変化の性質が非直線的であるため、一連のシーン温度範囲全体にわたって高い品質の画像化が要求される場合(たとえば空および地上の光景など)、この較正を極めて多数のフラックスで実施しなければならない。
【0110】
従来の解決法は、熱電気的に制御された較正黒体板を使用し、黒体板の温度の関数として出力を測定することである。この技法の欠点は、個々の温度における整定時間を許容しているため、この手順を完了するのに場合によっては最大7分の時間を要することである。理想的には、安定した範囲のフラックスを速やかに生成することができる較正源が必要である。このような較正源を使用することにより、動作までの時間を短くすることができるだけでなく、より頻繁に較正サイクルを実施することができる。したがって、アレイ温度の変化などの影響による較正設定値の変動を小さくすることができる。さらに、シリコンおよびポリシリコンは、同じ膨張温度係数を有しているため、加熱および冷却によって、さもなければ性能に悪影響を及ぼすことになる余計な応力が空間光変調器に加えられることはない。
【0111】
高速較正源は、従来の固定温度黒体板と、本発明によるMOEMS空間光変調器を備えた再構成可能適応符号化開口(ACA)マスクとを組み合わせることによって製造することができる。上で説明したように、ACAマスクは、検出器に降り注ぐフラックスを変化させるために開閉することができるマスクプレート中の複数の開口のアレイからなっている。ACAマスクは、冷却されることが理想的であるが、透過状態から反射状態へスイッチングする場合、場合によってはこの冷却は不要である。
【0112】
一連の較正フラックスは、完全に閉じた開口から完全に開いた開口までの数を変化させることによって生成することができる。マスクのスイッチングは、比較的速やかに実施することができるため、短時間で多点較正を実施することができる。図11は、このシステムを使用したカメラの可能な構成を示したものである。図11に示す赤外カメラシステム50には、パドルの上に配置されたACAマスク52、およびパドルの上に配置された、熱電気的(TE)に制御された黒体板54が使用されている。較正中、ACAマスク52およびTE制御板が回転手段56によってカメラレンズ58と二次元赤外検出器アレイの間の位置へ回転する。較正中、二次元赤外検出器アレイは、カメラの外部のシーンから赤外放射を受け取る代わりに、熱電気的(TE)に制御された黒体板54を画像化する。従来の画像化システムの場合、画像化位置にマスクが位置していないため、焦点面の照明が一様である(しかしながら、これは、開口をACAマスクの上に一様に広げることによって改善することができる)。
【0113】
上で説明した適応符号化開口画像化(ACAI)システムの場合、既にACAマスクが含まれており、したがって上で言及した較正スキームは、コストを追加することなく実施することができる。特定のアプリケーションは、レンズレス適応符号化開口画像化(ACAI)システムにおけるアプリケーションである。レンズレスACAI画像化システムの場合、個々の検出器に降り注ぐフラックスは、比較的一様であることが期待され(すべての開口からのフラックスが平均化されるため)、良好な画像化は、比較的狭い範囲のフラックスに対する正確な較正によって決まる。この場合も、この値の近辺の一連のフラックスは、異なるパターンをマスクに開けることによって生成することができる。マスク上の個々の開口の透過率の変化を較正することができるもっと複雑なスキームを実施することも可能である。
【0114】
上記の説明に鑑みて、本発明の範囲内で様々な修正を加えることができることは当業者には明らかであろう。
【0115】
本開示の範囲には、あらゆる新規な特徴、もしくは明示的であれ、暗黙的であれ、あるいは任意の一般化であれ、特許請求される発明に関係しているかいないかに無関係に、あるいは本発明によって対処される問題の一部またはすべてを軽減するかしないかに無関係に、本発明の範囲の中で開示されている特徴の組合せが含まれている。本出願人は、本出願において、本出願の手続遂行中、または本出願から引き出される他のあらゆる出願の手続遂行中、このような特徴に対する新しい特許請求を明確に系統立てて説くことができることを通知する。詳細には、特許請求の範囲を参照すると、従属請求項の特徴は、独立請求項の特徴と組み合わせることができ、また、個々の独立請求項の特徴は、特許請求の範囲の中で列挙されている単なる特定の組合せにおいてではなく、適切な任意の方法で組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1a】2つの支持ばねを有するMOEMS光変調器を示す略斜視図である。
【図1b】4つの支持ばねを有する代替MOEMS光変調器を示す略斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態によるMOEMS光変調器を示す横断面図である。
【図3a】波長可変共振器を有する非対称ファブリー・ペロエタロンを備えた本発明によるMOEMS光変調器を示す横断面図である。
【図3b】代替実施形態の非対称ファブリー・ペロエタロンを有するMOEMS光変調器を示す横断面図である。
【図4a】図3aに示す光変調器の典型的な性能特性を示すグラフであって、詳細には、微小ミラーがその上部平衡位置にあり、垂直入射ではその下部位置にある光変調器のMWIR波長帯域に対する透過率を示すグラフである。
【図4b】図3aに示す光変調器の典型的な性能特性を示すグラフであって、詳細には、微小ミラーがその上部平衡位置にあり、0度および50度の入射角に対してはその下部位置にある光変調器のMWIR波長帯域に対する透過率を示すグラフである。
【図4c】図3aに示す光変調器の典型的な性能特性を示すグラフであって、詳細には、入射角に対する偏光による透過率を示すグラフである。
【図5a】3.5μmから4.5μmの波長帯域における光学的に開いた状態の最大透過率に対して最適化された、図3bに示す光変調器の典型的な性能特性を示すグラフである。
【図5b】本発明による複数のMOEMS光変調器の二次元アレイを備えた、参照によりその内容が本明細書に組み込まれている本出願人らの同時係属英国特許出願第0510470号明細書に記載されている適応符号化開口画像化(ACAI)システムを示す略図である。
【図6】本発明によるMOEMS変調器の典型的なラッチ特性(ヒステリシス曲線)を示すグラフである。
【図7a】複数の行アドレス線および列アドレス線を使用して個々にアドレス指定することができる複数のピクセルのアレイを有する、本発明の一実施形態による空間光変調器を示す略図である。
【図7b】行アドレス指定のための埋込電極、および微小ミラーの上に配置された、列アドレス指定のための電極を組み込んだ、30μmピッチの複数のピクセルのアレイを有する空間光変調器を示す略斜視図である。
【図7c】複数の光変調器のカプセル化二次元アレイを備えた、本発明の他の実施形態を示す略断面図である。
【図8】本発明によるMOEMS空間光変調器を制御するために使用される、本発明の他の実施形態による行列(行−列)アドレス指定スキームの典型的な波形および対応するピクセル状態の例を示すグラフである。上のグラフは、行および列の電圧状態を示しており、一方、下のグラフは、ピクセルがラッチされた状態(1)にあるか、あるいは解放された状態(0)にあるかどうかを示している。
【図9a】本発明によるMOEMS光変調器の予測性能特性を示すグラフであって、図1aおよび図1bに示す形態の直線状ピクセルの一般的な傾向を示している。詳細には、予測共振周波数対ピクセル厚さをプロットしたものである。
【図9b】本発明によるMOEMS光変調器の予測性能特性を示すグラフであって、図1aおよび図1bに示す形態の直線状ピクセルの一般的な傾向を示している。詳細には、予測共振周波数対プレートサイズをプロットしたものである。
【図9c】本発明によるMOEMS光変調器の予測性能特性を示すグラフであって、図1aおよび図1bに示す形態の直線状ピクセルの一般的な傾向を示している。詳細には、予測駆動電圧対プレートサイズをプロットしたものである。
【図9d】本発明によるMOEMS光変調器の予測性能特性を示すグラフであって、図1aおよび図1bに示す形態の直線状ピクセルの一般的な傾向を示している。詳細には、予測フィルファクタ対プレートサイズをプロットしたものである。
【図10】直接チップ取付け技術(たとえばボールグリッドアレイ/フリップチップ)を使用して、電子機器チップ(駆動ASIC)によってリンクされた複数のMOEMS空間光変調器チップを備えた大型MOEMS空間光変調器アレイを示す略断面図である。
【図11】本発明によるMOEMS空間光変調器を備えた適応符号化開口(ACA)ベース較正源を使用した赤外線カメラを示す略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は光変調器およびその制御方法に関する。本発明は、詳細には、それには限定されないが、画像化システムに使用するための微小光電気機械システム(MOEMS)空間光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
空間光変調器は、科学機器および商用製品を始めとする様々な画像化アプリケーションにとって重要な変調器である。
【0003】
本発明の背景として、光のビームの強度および/または位相を制御するために光干渉効果を利用したMOEMS光変調器が知られている。たとえば、Lewisらは、SPIE−5614(1994年)、24−30頁に、共振光共振器(cavity)として作用する波長可変間隙を備えたMOEMSデバイスに基づく光変調器構造を記述している(シリコン−空気−シリコンファブリー・ペロ(Fabry−Perot)エタロン)。しかしながら、Lewisらが記述しているデバイスは、透過作用ならびに反射作用させることができる点で、ほとんどのMOEMS光変調器構造とは異なっている。
【0004】
Goossenらは、IEEE Phot.Tech.Lett.6(1994年)、1119−1121頁に、反射モードで動作する、可動膜の下方に波長可変共振器を組み込んだ共振ファブリー・ペロ共振器に基づく光変調器を記述している。Goossenらが言及しているデバイスでは、膜は、エアギャップの上方のアームによって支持されており、膜の円周の周りに配置された電極と、下方に位置している基板との間に印加されるバイアス電圧によって生じる静電力によって移動させることができる。下方に位置している基板の近傍に膜がもたらされると、反射防止状態になり、したがって反射信号が減少する。透過の場合、開いた状態と閉じた状態の間のコントラストが極めて小さく、その設計は、場合によっては、赤外スペクトル領域で使用するための空間光変調器として適していない。Goossenが記述している変調器は、光ファイバ通信アプリケーションに有効に使用することができるが、このような構造は、そのフィルファクタが許容不可能なほどに小さい場合があるため、微細ピッチ幾何構造(10μm−50μm)を有する二次元アレイへの拡張は困難である。また、変調器内に使用される材料の応力のため、可動膜を著しくひずませることなく、よりコンパクトな支持構造を実現することは不可能である。さらに、Goossenらが言及しているデバイスは、デバイスに使用される材料(窒化物構造を覆っている金属)の熱膨張係数の差のため、ひずみを生じやすい。このようなひずみは、共振共振器の輪郭が不明確になる原因になることがあり、したがってデバイスの光学性能が低下することになる。
【0005】
フィルファクタを最大化するために電極が膜の周囲に限定されていることは、デバイスを静電的に駆動するために使用される面積の割合が極めて小さいことを意味している。したがって、デバイスを変調するためには高い電圧が必要である。同様に、膜の上方に位置している金属は、より高い駆動電圧が印加されない場合、電極間間隙を大きくし、結果として生じる力を弱くする。デバイスに必要な上部電極の有限サイズおよび関連する駆動電圧は、多くのピクセルを備えた大型(二次元)アレイに必要な微小ピクセルサイズ(15−50μm)にスケーリングするためにはこのデバイスを不適切なものにしている。
【0006】
米国特許第5,636,052号明細書に、複数のMOEMS光変調器のアレイを有する二次元空間光変調器を備えた反射型ディスプレイが記述されている。アレイ内の個々の変調器は、基板の上に浮遊した可動膜を備えている。光変調器の各々には、可動膜と下方に位置している基板との間の光干渉効果が使用されており、変調器は、この光干渉効果によって光信号を実質的に反射するか、あるいは吸収することになる。ディスプレイは、排他的に反射動作している。アレイ内の光変調器は、行−列アドレス指定スキームを使用して、関連する駆動電子機器を介して個々にアドレス指定することができる。能動行−列アドレス指定行列が使用されており、個々の変調器には、少なくとも1つのアドレストランジスタが結合されている。駆動電子機器は、個々の個別変調器に隣接している空間光変調器と同じ基板の上に製造することができる。当業者には理解されるように、この構造は、空間光変調器を使用したデータ信号の結合を容易にしているが、アレイのフィルファクタを小さくすることがある。また、変調器膜の製造に使用される高温微小電気機械(MEMS)処理ステップは、駆動電子機器内のトランジスタの特性を劣化させる原因になることがある。さらに、駆動電子機器が基板の中に製造されているため、基板の光特性が妨害され、そのために空間光変調器が反射型動作のみに制限されている。
【0007】
MEMSアレイアドレス指定スキームのほとんどは、埋込(ピクセル内)アドレス指定電子機器に基づいている。静電デバイスのヒステリシス特性については広く知られているが、この現象に基づくMEMSデバイスのためのアドレス指定スキームについては知られていない。欧州特許第1 341 025号明細書に例外の1つを見出すことができるが、このようなアドレス指定スキームは、これまで、本発明によるMOEMS空間光変調器のためには使用されていない。欧州特許第1 341 025号明細書には、複数のMEMS反射体を動作させるための活性化電極を使用し、かつ、MEMS反射体を好ましい位置にラッチするための個別蓄積電極を使用した反射型MEMS光ディスプレイシステムが記述されている。本発明とは対照的に、欧州特許第1 341 025号明細書に記述されているデバイスが動作するのは、デバイス内の電極が光透過型ではないため、反射動作のみである。したがって、欧州特許第1 341 025号明細書の駆動電極は、デバイスの光学構造の一部を形成していない。最後に、欧州特許第1 341 025号明細書で考察されているアドレス指定スキームは、ディスプレイシステム内の個々の反射体をリセットすることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上で説明したデバイスの欠点の少なくともいくつかを抑制する代替MOEMS空間光変調器を提供することである。本発明の他の目的は、ピクセル内電子機器を必要としないMOEMS空間光変調器を制御する受動方法を提供することである。本発明の他の目的は、微小シャッターアレイとして作用するMOEMS変調器を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、基板に対して弾性的にバイアスされ、基板との間に印加される電圧に応答して、該基板に対して移動することができるミラーを組み込んだ非対称ファブリー・ペロエタロンを備えた光共振器を有する微小光電気機械システム(MOEMS)光変調器が提供される。
【0010】
光変調器は、複数の波長および/または入射角を有する電磁放射を変調することができることが好ましい。別法としては、光変調器は、単一の波長を有する電磁放射を変調することも可能である。
【0011】
説明用として、従来のファブリー・ペロエタロンの場合、個々のミラーは、通常、屈折率が互いにコントラストをなす材料の誘電体スタックを備えており、個々の層の厚さは、ほぼ1/4光波長である。ミラーとミラーの間のエアギャップによって形成される共振共振器の厚さは、従来、1/2光波長(設計波長における)の倍数である。したがって、厚さが1/2波長である場合から1/4波長である場合へ可動ミラーをシフトさせることにより、後者の場合、スタック全体が本質的に広帯域反射体であるため、互いにコントラストをなす2つの光状態を達成することができる。これらの2つの状態は、それぞれ開いた状態および閉じた状態で表される。このような設計が抱えている問題は、開いた状態のスペクトル感度が比較的狭いことであり、したがってこのようなデバイスは、場合によっては、広いスペクトル範囲(0.75<w0<1.2)全体にわたる広帯域光変調器としては不適切である。w0は設計波長である。本発明による手法の場合、ゼロに近いレベルまで共振器の厚さが減少し、したがって干渉スタックが本質的に広帯域透過フィルタになることが保証される。
【0012】
好ましい実施形態では、光変調器は、赤外放射、より好ましくは、短波赤外(SWIR)放射(0.8−2.5μm)の大気の窓、中波赤外(MWIR)放射(3−5μm)の大気の窓および長波赤外(LWIR)放射(8−14μm)の大気の窓のうちの少なくとも1つの赤外放射の透過率を変調するようになされている。
【0013】
好都合には、光変調器の基板は、SWIR放射、MWIR放射およびLWIR放射に対して実質的に透過性である。この特徴は、基板の上に光共振器を製造する前の光変調器内の基板層の透過特性を表している。
【0014】
有利には、変調器は、光学的に開いた状態ではMWIR放射に対して実質的に透過性であり、また、光学的に閉じた状態ではMWIR放射に対して実質的に非透過性である。
【0015】
光変調器は、光学的に開いた状態において、40%を超える最大透過率、好ましくは50%を超える最大透過率、より好ましくは60%を超える最大透過率、有利には70%を超える最大透過率、より有利には80%を超える最大透過率、最適には95%を超える最大透過率を有していることが好ましく、また、MWIR放射に対する光学的に閉じた状態において、5%未満の最小透過率、好ましくは4%未満の最小透過率、より好ましくは3%未満の最小透過率、有利には2%未満の最小透過率、より有利には1%未満の最小透過率を有していることが好ましい。
【0016】
好都合には、光変調器は、シリコン可動ミラー層、エアギャップ、シリコン層、第1の誘電体層およびシリコン層が連続する複数の層からなる多層スタックを有している。第1の誘電体層は、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素またはガス、たとえば空気あるいは窒素のうちの1つからなっていてもよい。
【0017】
別法としては、光変調器は、シリコン可動ミラー層、エアギャップ、第2の誘電体層、シリコン層、第1の誘電体層およびシリコン層が連続する複数の層からなる多層スタックを有することも可能である。その場合、第2の誘電体層は、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素および窒化ケイ素のうちの1つからなっていてもよい。
【0018】
他の好ましい実施形態では、光変調器は、可視放射を反射変調するようになされている。
【0019】
ミラーは、非対称ファブリー・ペロエタロン内で、基板から遠く離れた、実質的に安定した第1の位置と、基板に近い、実質的に安定した第2の位置との間を移動することができることが好ましい。
【0020】
好都合には、ミラーは、印加される電圧に応答して、第1の位置と第2の位置の間を非直線的に移動するようになされている。限定的にではなく、本明細書において使用されている、非直線的(non−linear)に、という用語は、ミラーが移動または加速する速度ではなく、光変調器に印加される電圧を関数としたミラーの位置的応答を表している。
【0021】
有利には、ミラーは、第1の閾値を超える大きさの力が加えられると、第1の位置から移動するようになされており、また、印加される力の大きさが第2の閾値未満に減少すると、第2の位置から移動するようになされている。これらの2つの閾値は、実質的に異なるようになされている。
【0022】
力は、印加される電圧の二乗に実質的に比例する大きさを有する静電引力、およびミラーの変位に実質的に比例する大きさを有する機械的回復力によってもたらされることが好ましい。別法または追加として、ばねを非線形コンポーネントになるように設計することも可能である。
【0023】
ミラーは、ヒステリシスを示す位置応答を有していることがより好ましい。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様による複数の光変調器の二次元アレイを備えた空間光変調器が提供される。
【0025】
好ましい実施形態では、空間光変調器は、第1の電極層および第2の電極層を有している。光変調器はアレイの形で配置されており、変調器の各々は、第1の層の中に電極を有し、かつ、第2の層の中に電極を有している。
【0026】
好都合には、空間光変調器は、複数の行電極および複数の列電極を有しており、光変調器は、受動行列行−列アドレス指定スキームを使用して個々にアドレス指定することができる。このような受動アドレス指定スキームには、空間光変調器内の個々の光変調器をスイッチするための半導体デバイス(トランジスタなど)は不要である。分かりやすくするために、行電極は、前記行の光変調器の中にすべての可動ミラーを備えており、一方、列電極は、前記列の光変調器の中にすべての固定プレート電極を備えている。
【0027】
個々の光変調器内の光共振器は、第1の電極層および第2の電極層のうちの少なくともいずれか一方を備えていることが好ましい。
【0028】
第1の電極層および第2の電極層のうちの少なくともいずれか一方は、入射する放射に対して実質的に透過性であることがより好ましい。
【0029】
光変調器は、5−200μmの範囲のピッチ(隣接する変調器上の同じポイント間で測定したピッチ)、好ましくは20−50μmの範囲のピッチ、最適には30μmのピッチのアレイで規則的に配置されていることが好ましい。
【0030】
好都合には、空間光変調器内の複数の光変調器のうちの少なくとも1つがアポダイズ(apodize)されている。アポダイズされた少なくとも1つの光変調器は、プロファイル化されたミラーを備えることができる。
【0031】
有利には、空間光変調器は、空間光変調器内の複数の光変調器のアレイと光通信して配置された複数の微小レンズを有するアレイを備えている。微小レンズアレイ内の微小レンズの各々は、空間光変調器内の光変調器と協同して電磁放射をその上に集束させることが好ましい。
【0032】
本発明の第3の態様によれば、アレイの形で配置された複数の双安定MOEMS光変調器を有する複数の行電極および複数の列電極を備えた空間光変調器をアドレス指定する方法が提供される。双安定MOEMS光変調器アレイ内の個々の光変調器は、行電極と列電極の間の交点に配置されており、上記方法には、
(i)個々の列電極に列駆動電圧を印加するステップと、
(ii)個々の行電極に行駆動電圧を印加するステップ
が含まれている。個々の交点における光変調器は、前記交点における列駆動電圧と行駆動電圧の間の電位差に応答して動作することができる。
【0033】
このアドレス指定スキームのキーとなる特徴は、所与の列がイネーブルされると、行全体を並列にセットすることができることである。実際には、列は逐次イネーブルされ、すべての行が所与の列毎に並列にセットされる。
【0034】
上記方法には、光変調器をラッチ位置にセットするステップであって、
(i)すべての列電極に印加される列駆動電圧を保持電圧基準Vrefに等しくするステップと、
(ii)セット電圧Vsetによってセットすべき変調器に対応する列電極に印加される列駆動電圧を高くするステップであって、Vref+Vsetが光変調器をラッチするために必要なラッチ電圧Vpiより低いステップと、
(iii)セットすべき変調器に対応する行電極に印加される行駆動電圧を行セット電圧−Vrow−setに等しくするステップであって、電位差Vref+Vset+Vrow−setがラッチ電圧Vpiより高いステップと、
(iv)セットすべき変調器に対応する行電極から行駆動電圧を除去するステップと、
(v)セット電圧Vsetによってセットすべき変調器に対応する列電極に印加される列駆動電圧をVrefまで低くするステップと
が含まれていることが好ましい。
【0035】
上記方法には、光変調器をラッチ位置からリセットするステップであって、
(i)リセットすべき変調器に対応する列を除くすべての列電極に印加される列駆動電圧を保持電圧基準Vref+セット電圧Vsetに等しくするステップであって、Vref+Vsetが光変調器をラッチするために必要なラッチ電圧Vpiより低く、リセットすべき変調器に対応する列がVrefを維持するステップと、
(ii)リセットすべき変調器に対応する行電極に印加される行駆動電圧を行リセット電圧+Vresetに等しくするステップであって、電位差Vref−Vresetが光変調器を解放するために必要な解放電圧Vpoより低いステップと、
(iii)リセットすべき変調器に対応する行電極から行駆動電圧を除去するステップと、
(iv)リセット電圧Vresetによってセットすべき変調器に対応する列電極に印加される列駆動電圧をVrefまで低くするステップと
が含まれていることが好ましい。
【0036】
分かりやすくするために、光変調器をラッチ位置にセットする上記ステップおよび光変調器をラッチ位置からリセットする上記ステップは、特定の行の上の他のすべての光変調器の状態を変化させることなく、該特定の行の上の個々の光変調器をセットすることができる。
【0037】
上記方法には、アレイ内のすべての光変調器をラッチ位置にセットするステップであって、
(i)すべての列電極に印加される列駆動電圧を保持電圧基準Vref+セット電圧Vsetに等しくするステップであって、Vref+Vsetが光変調器をラッチするために必要なラッチ電圧Vpiより低く、かつ、解放電圧Vpoより高いステップと、
(ii)すべての行電極に印加される行駆動電圧を行セット電圧−Vrow−setに等しくするステップであって、電位差Vref+Vset+Vrow−setがラッチ電圧Vpiより高いステップと、
(iii)セットすべき変調器に対応する行電極から行駆動電圧を除去するステップと、
(iv)セット電圧Vsetによってセットすべき変調器に対応する列電極に印加される列駆動電圧をVrefまで低くするステップと
が含まれていることが好ましい。
【0038】
上記方法には、アレイ内のすべての光変調器をラッチ位置からリセットするステップであって、
(i)すべての列電極に印加される列駆動電圧を実質的にゼロにするステップ
が含まれていることが好ましい。
【0039】
ピーク電流を制御するために、列電極のサブグループをアドレス指定することによって同様の方法でアレイ内の光変調器のサブグループをリセットすることができることは当業者には認識されよう。
【0040】
本発明の第4の態様によれば、検出器アレイに入射する電磁放射を変調するようになされた、本発明の第2の目的による少なくとも1つの空間光変調器を有する開口マスクを備えた適応符号化開口画像化(ACAI)システムのための複数のMOEMS変調器のアレイが提供される。
【0041】
以下、本発明について、単なる実施例にすぎないが、添付の図面を参照して説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
図面を参照すると、対応する構成要素または同様の構成要素は、いくつかの図面を通して、同様の参照数表示を使用して識別されている。図1aおよび図1bは、参照によりその内容が本明細書に組み込まれている本出願人らの同時係属英国特許出願第0521251号明細書に記載されている大型MOEMS光変調器の略断面図を示したものである。
【0043】
簡単に説明すると、英国特許出願第0521251号明細書に記載されている変調器には、光のビーム(または複数のビーム)の強度および/または位相を制御するために光干渉効果が利用されており、該変調器は1つまたは複数の可動微小ミラーが基板の上方に浮遊した単一のMOEMS光変調器または複数のMOEMS光変調器のアレイに基づいている。この構造を使用して、基板(たとえばシリコン)が光学的に透過性である波長を透過させることができ、また、この構造を使用して、実質的により広い範囲の波長を反射させることができる。
【0044】
個々の光変調器2は可動浮遊層10を備えており、以下、微小ミラー10として参照されるこの可動浮遊層10は、数分の1ミクロンと数ミクロンの間の距離だけ基板13の上方に浮遊している。微小ミラーはばね14によって支持されており、したがって、基板13と微小ミラー10の間に電圧が印加されると、静電力によって微小ミラー10が平衡位置から基板13へ向かって引き寄せられる。
【0045】
微小ミラー10は、その平面図の形は任意の形状にすることができるが、平らで、かつ、基板13に対して平行でなければならない。
【0046】
このデバイスに光が導かれると、光の一部が反射し、また、光の一部が基板13を透過してもう一方の側から射出する(基板がその波長に対して透明であるような波長の場合)。浮遊ミラー10で反射した光および浮遊ミラー10を透過した光は、基板13で反射した光および基板13を透過した光と干渉し、デバイス2の実際の透過率および反射率が、デバイスに入射する光の角度に応じて、浮遊ミラー10と基板13の間の間隔に応じて、また、システムの他の所定の特性、たとえば浮遊微小ミラー10の厚さ、微小ミラー10を構築している材料の屈折率および入射する光の波長などに応じて、大きい値と小さい値の間で変化する。
【0047】
微小ミラー10と基板13の間の間隔を調整することにより、透過率が大きい値と小さい値の間で変化し、それにより、入射する光を変調する手段が提供される。変調は、透過モードまたは反射モードでの動作が可能である。微小ミラー10は、通常、その厚さが数分の1ミクロンであり、シリコンが高度に吸収性である可視領域においても半透明であるため、シリコンで構築された変調器を使用して可視帯域を反射させることができることに留意されたい。また、微小ミラーは、可視領域におけるより良好な反射体として作用させるためにコーティングを施すことも可能である。
【0048】
光変調器2の透過特性および反射特性は、ファブリー・ペロエタロンによる透過および反射に対する知られている公式を使用して説明することができる。反射した光および透過した光は、位相がシフトし、かつ、振幅が変化することに留意されたい。この位相シフトおよび振幅の変化は、光のビームの位相を変調することによって通信するデバイスに使用することも可能である。
【0049】
微小ミラー10の各々は、制御中、ミラー10が確実に配置されていることを確信することができる2つの安定した位置を有している。これらの2つの安定した位置のうちの第1の位置は、ミラー10と基板13の間に電圧が印加されず、また、支持ばね14が伸びていない、微小ミラー10が基板13の上方で静止した状態で浮遊している「平衡位置」である。第2の位置は、基板13に印加される電圧が特定の値を超え、微小ミラー10が基板13に向かって確実に引き下げられた「プルダウン位置」である。基板13と微小ミラー10の間に絶縁ストップ22を提供し、電圧が特定の値を超えた場合に、ミラー10をストップ22に強く引き寄せ、かつ、それ以上は基板13に向かって引き寄せることができないようにすることも可能である。電気的接触は、短絡および電気的損傷の原因になることがあるため、これらのプルダウンストップ22によって微小ミラー10と基板13の間の望ましくない電気接触を防止している。
【0050】
図2は、上で説明したMOEMS光変調器2の横断面図を示したものである。MOEMS光変調器2は、ポリシリコン−空気−シリコンの構成からなるエタロンを有する単純な構造を備えている。光変調器2は、4つの付着ステップ(窒化ケイ素層18、微小ミラー10および支持ばね14を製造するためのポリシリコン層、および2つのリンドープ酸化ケイ素層(これらのリンドープ酸化ケイ素層は、次にデバイスから除去され、これらのリンドープ酸化ケイ素層のうちの下側の層を除去することにより、ファブリー・ペロエタロン内にエアギャップが提供される))のみを使用してシリコン基板13の上に製造することができる。したがって構造が単純であるため、低コストのデバイスが得られる。改良型食刻停止層としての追加固定ポリシリコン層16、およびアレイサイズが成長する際のRC遅延を制御するためにトラック抵抗を小さくする金属層20などの他の任意選択の層を含むことも可能である。
【0051】
上で説明した微小ミラー10は、緊密にパックされたタイル張りの光変調器2で拡張領域が覆われたアレイとして製造することができ、その場合、微小ミラー10は、空間光変調器になる。応力が小さいため、図2に示す形態の浮遊を使用し、かつ、切りばめ式にすることによって大型アレイを構築することができる。この形態の設計は、中央の実質的に正方形または長方形のミラープレートの対向する2つの面または4つのすべての面にばね14を有している。この設計は、変位に対するプレートの平面度とフィルファクタの間の良好な妥協(良好な光学性能のための)、許容可能な速度および駆動電圧(電気機械的性能)、ならびに広範囲にわたるカバレージに対するスケーラビリティを表している。このデバイスは、基板13を広域電極として利用しているため、すべての光変調器2が並列に駆動される。上記説明は、正方形構成または長方形構成に関連してなされているが、ミラープレート10(および関連する二次元アレイ)は、他の形にすることが可能であり、たとえば円形、六角形などの形にすることができる。同様に、ばね14は、線形構成に限定されず、湾曲させることも可能である。これらのばね14は、関連する二次元アレイ内における結合性およびフィルファクタを改善するために、ミラーに対して配置することも可能である。
【0052】
この手法を使用したMOEMS光変調器は、24V、1.55μmにおいて、7:1(50:1二重パス)を超えるコントラスト比で200kbpsを超えるデータ転送速度を立証している。
【0053】
上で説明したMOEMS光変調器2は、これまで、単一波長(1.55μm)のSWIRで動作する透過モードで使用されている。広角度動作を提供するために、低フィネス光共振器が使用されている。
【0054】
次に図3aを参照すると、本発明によるMOEMS光変調器の横断面図は、波長可変共振器の上に可動ミラーを有する非対称ファブリー・ペロエタロンを備えている。本発明のこの実施形態では、非対称エタロンは、ポリシリコン−空気−ポリシリコン−酸化物−シリコンの構成からなっている。
【0055】
図3aに示すMOEMS光変調器は、シリコン基板13を備えており、シリコン基板13の上に酸化ケイ素の層30が製造され、その上に固定ポリシリコン層26が製造されている。固定ポリシリコン層26は、エアギャップ24によって可動微小ミラー10から分離された固定電極を提供している。本発明のこの実施形態では、エタロンは、ポリシリコン−空気−ポリシリコン−酸化物−シリコンの構成からなっている。
【0056】
図3bに略図で示されている代替実施形態では、固定ポリシリコン層26の上に誘電体層28が提供されている。本発明のこの実施形態では、エタロンは、非対称ポリシリコン−空気−誘電体−ポリシリコン−誘電体−シリコンの構成からなっている。上部ポリシリコン−空気層は、固定誘電体層28、ポリシリコン層26、誘電体層30およびシリコン基板13と相俟って波長可変エタロンを提供している。誘電体層28は、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素または最も好ましくは窒化ケイ素からなっていることが好ましい。誘電体層30は、酸化ケイ素からなっていることが好ましい。別法としては、誘電体層30は、窒化ケイ素または酸窒化ケイ素からなっていてもよい。さらに別法として、より複雑な構造をポリシリコン−空気−ポリシリコン可動上部ミラーと共に使用して、デバイスのフィネスを改善することも可能である。
【0057】
当業者には理解されるように、上で言及したアーキテクチャは、犠牲層、この場合はリンドープ付着酸化ケイ素を除去している間、異なる相対食刻速度を有する酸化物層を使用することによって製造することができる。たとえば、熱酸化ケイ素は、フッ化水素酸中では、付着ドープ酸化物層より5分の1と100分の1の間というはるかな低速で食刻する。しかしながら、改良型製造方法は、解放食刻の間、露出した酸化ケイ素層を有することを回避することである。
【0058】
図3aおよび図3bに示されている前述の実施形態は、二酸化ケイ素を層30内の誘電体として利用し、また、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素または窒化ケイ素を層28内の誘電体として利用しているが、他の誘電材料を選択して良好な性能を得ることも可能であることは当業者には認識されよう。
【0059】
図3bに示されている誘電体層28を使用することにより、ポリシリコン微小ミラー(デバイス内の上部電極として使用される)と下部ポリシリコン層26(デバイス内の下部電極)との間に電気絶縁が提供され、それにより追加利点が提供される。この構成は、変調器内にエアギャップを実現するためのプロセスの間、窒化ケイ素層によって下方の酸化ケイ素層が食刻除去から保護されるため、複数の光変調器2のアレイの製造を容易にしている(固定ポリシリコン層が複数の個別電極に分割されている)。
【0060】
同様に、他の構造層/基板を適切な光/機械材料特性、たとえばポリシリコン−ゲルマニウム、ゲルマニウム、単結晶シリコンなどと共に使用することも可能である。
【0061】
通常、スループットを最適化し、かつ、擬似エタロン効果の可能性を小さくするために、SiOまたはTa2O5/SiO2などの無反射コーティング(ARC)がシリコン基板13の背面に追加される。
【0062】
良好な閉じた状態での性能を達成するためには、狭い(たとえば30−100nm)エアギャップが必要であり、追加スタンドオフディンプル22を使用して面積の広い接触を防止しない限り困難である。ポリシリコン電極の上にブランケット絶縁誘電体層28を使用する(適切な光学設計で)ための代替の1つは、接触を許容し、スタンドオフを画定することである。設計は、可動微小ミラーが静止摩擦(stiction)力に打ち勝ってその平衡位置に確実に復帰するように最適化される。
【0063】
本発明によるMOEMS光変調器は、光共振器の間隙を調整することにより、SWIR、MWIR、LWIRおよび可視透過スペクトルの一部で動作させることができる。
【0064】
デバイスは、任意選択で、十分な移動が許容される場合(間隙によって画定される)、他の光帯域(たとえば可視)で反射で使用することができる。性能を改善するために、任意選択で、薄い上部反射コーティングが使用される。
【0065】
光変調器のディジタル動作は十分であり、その場合、微小ミラーは、その上部平衡位置か、あるいは下部固定電極に極めて近いその下部位置のいずれかに配置される。上部平衡位置および下部位置には、ミラーによって採用される、基準電圧Vrefが変調器に印加される位置が含まれていなければならない。システム設計を改善するためには、変調器は、反射ではなく、透過で使用されることが好ましい。透過型変調器として使用される場合、光変調器は、微小ミラーがその上部平衡位置に位置している場合、通過する電磁放射の透過を実質的に遮断し、また、微小ミラーが基板に極めて近いその下部位置に位置している場合、通過する電磁放射を実質的に透過させる。
【0066】
このMOEMS変調器は、とりわけ、性能上の理由(たとえばLCD)またはコスト上の理由(たとえば多重量子井戸デバイス)から他の従来の変調器解決法を適用することができないMWIRおよびSWIR画像化アプリケーションに適用することができる。また、この変調器は、シリコンから排他的に製造することができるため、熱複材料効果(thermal bi−material effect)が抑制されるかあるいは除去され、したがって変調器の挙動に対する動作温度の影響が著しく減少する(たとえば−40℃から+70℃を超える範囲を容易に許容することができる)。これは、この変調器が冷却に適しており、したがって微小ミラーが画像にノイズを加えることがないことを意味している。したがって、この変調器は、IR画像化アプリケーションおよび適応符号化開口画像化アプリケーション(ACIA)に有利に使用することができる。
【0067】
図4aから図4cは、図3bに示す波長可変共振器の典型的な性能特性を示したものである。詳細には、図4aは、微小ミラーがその上部平衡位置にあり、垂直入射ではその下部位置にある光変調器のMWIR波長帯域における透過率を示したものである。図4bは、微小ミラーがその上部平衡位置にあり、0度および50度の入射角に対してはその下部位置にある光変調器のMWIR波長帯域に対する透過率を示したものである。図4cは、入射角に対する偏光による透過率を示したものである。実際には、15度から20度の範囲の入射角を使用して角効果を最小化することができる。大気からの放射の変調を必要とする状況では、透過率のピークと大気透過率窓が一致するように配置することが有利である。
【0068】
エタロン内の光スタックの寸法は、コントラスト比が最大化されるよう、スペクトル全体および角度範囲全体にわたって最適化することができ、単一波長デバイスのための従来の2分の1波長/4分の1波長光スタックから若干移動している。
【0069】
図5aは、ポリシリコン微小ミラー−空気−窒化ケイ素−ポリシリコン−二酸化ケイ素−シリコン基板の層列を使用して、3.5μmから4.5μmの波長帯域における光学的に開いた状態の最大透過率に対して最適化された、図3bに示す波長可変共振器の典型的な性能特性を示したものである。
【0070】
この特定の実施形態では、微小ミラーを移動させることによって光変調器の2つの状態(光学的に開いている実質的に透過性の状態/光学的に閉じている光学的に非透過性の状態)が達成され、それにより変調器内のエアギャップが調整される。標準位置は、約1μmおよび約50nmにすることができる。
【0071】
特定の画像化アプリケーション、たとえば適応符号化開口画像化(ACAI)の場合、個々の光変調を個々にアドレス指定することができる複数のMOEMS光変調器の二次元アレイを製造することが望ましい。この二次元アレイを製造することにより、アレイ(以下、ピクチャーエレメントすなわちピクセルとしても参照される)内の個々の光変調器を光学的に閉じた位置または光学的に開いた位置(反射「0」または透過「1」)にセットすることができる。たとえば、本発明による複数のMOEMS光変調器の二次元アレイを備えた、参照によりその内容が本明細書に組み込まれている本出願人らの同時係属英国特許出願第0510470号明細書に記載されている適応符号化開口画像化(adaptive coded aperture imaging,ACAI)システムの略図を示す図5bを参照されたい。
【0072】
したがって、本発明の他の実施形態によれば、空間光変調器は、図1aから図3bに示されている、受動行列行/列アドレス指定スキームを使用して、透過型デバイスにおけるフィルファクタを許容不可能なほどに小さくすることになるサブピクセル制御電子機器を必要とすることなくアドレス指定することができる複数の光変調器の二次元アレイを備えている。透過型アーキテクチャの重要な一面は、下部電極が透明であり、かつ、光学設計の一部であることである。キーとなる利点は、本発明によるこの実施形態は、オフチップドライバを使用してMEMSのみのチップをアドレス指定することができ、集積MEMSプロセスが不要であることを意味していることである。この手法によれば、MEMSアーキテクチャの最適化とピクセル制御電子機器の最適化を分離することができ、コストが低減され、また、任意のサイズにスケール化することができる二次元アレイが提供される。
【0073】
二次元アレイの受動行列アドレス指定は、構成光変調器を適切な電圧を使用して双安定にすることにより、本発明によるこの実施形態の中で達成される。
【0074】
この双安定特性を達成するために、微小ミラーは、光変調器に印加される電圧が特定の値を超えると、その平衡位置から「プルイン」(または「ラッチダウン」)位置へスナップダウンするように配置されている。MOEMS光変調器の非線形効果は、これまで、デバイスの動作に有害であると見なされ、このような影響を除去する努力がなされている。たとえば、線形動作特性を使用したMOEMS光変調器が記述されている米国特許第5,838,484号明細書を参照されたい。
【0075】
したがって、本発明によれば、アレイ内の個々の光変調器2は、一対の電極の両端間に印加される電位差が閾値電圧(Vpi)を超え、その状態で静電引力が支持ばね14によって提供される機械的回復力より大きくなると、アレイ内の微小ミラー10のみがラッチダウン(プルイン)するように配置されている。光変調器にはヒステリシスがあり、したがってプルオフ電圧(Vpo)は、プルイン電圧よりはるかに低い。ヒステリシスの程度は、適切な設計によって適合させることができる。
【0076】
受動行列アドレス指定を可能にするために、プルオフ(すなわち解放)電圧は、プルイン電圧よりはるかに低くなる(たとえば1/2になる)ようになされている。たとえば、この実施形態のアレイ内の複数の光変調器のうちの1つのヒステリシス特性の概要を示す図6を参照されたい。
【0077】
この実施形態では、複数の光変調器の二次元アレイは、複数の列アドレス電極32と下方に位置している複数の行アドレス電極34の間の行列で配置されている(図7aおよび図7bを参照されたい)。上側の列アドレス電極32は、光変調器内に可動微小ミラー10を備えており、一方、行アドレス電極34は、個々の光変調器内に固定電極プレート36を備えており、縁を介してアクセスされる(図7bを参照されたい)。
【0078】
図7cは、複数の光変調器のカプセル化二次元アレイを備えた、本発明の他の実施形態の略断面を示したものである。ここでは、光変調器アレイは、ウェーハ/チップスケールカプセル化技法を使用して、結合層29によって基板13に取り付けられたキャップ31によって密閉されている。図7cでは、キャップは、その中に形成されたリベート(rebate)を有している。別法としては、結合層29の厚さがそれに応じて分厚くなる場合、平らなキャップを使用することも可能である。この方法でカプセル化することにより、密閉されたデバイス内の圧力を制御することができ、延いては微小ミラーの機械的なダンピングを制御することができる。この技法によれば、デバイスがウェーハスケールで解放され、結合され、かつ、鋸引きされるため、処理が簡略化され、したがってデブリスの問題が回避され、また、システムへの実装/統合中における処理が簡略化される。キャップ31は、適切な無反射(AR)コーティングおよび可動ミラーに対する適切な間隔(たとえば、望ましくないエタロン効果を回避するアプリケーションの場合、光の可干渉距離より大きい間隔)を備えている。この間隔は、キャップ内のリベート(図に示されているように)および/または変調器ウェーハとキャップウェーハの間の結合スペーサによって達成することができる。上部キャップ31と可動ミラー10の間の間隙を何らかの方法で積極的に使用して、光学性能をさらに調整し、かつ、微小間隙でエタロン効果を利用することも可能である。
【0079】
また、貫通ウェーハビアを基板またはキャップ(さらには電子チップ)に組み込み、フリッピングを必要とすることなく電子ドライバチップの直接実装を可能にすることもできる。
【0080】
キャップは、任意選択で、光学的機能または光パワーを有する1つまたは複数のエレメントを提供する形状にすることができ、たとえばキャップにレンズの機能を持たせることができる。
【0081】
この構造の場合、アレイ内の所与の光変調器に印加される電圧は、可動微小ミラーに印加される電圧(列電圧)と固定電極に印加される電圧(行電圧)の合計である。この構成によれば、アレイ内の個々の光変調器すなわちピクセルを行/列アドレススキームで個々にセットすることができる。
【0082】
次に、本発明の一実施形態による、個々のピクセルを行/列アドレス指定スキームで個々にセットおよびリセットすることができるアドレス指定スキームについて説明する(ピクセルのラッチを解除するためにアレイ全体をリセットする必要はない)。
【0083】
本明細書において詳細に説明されている、ヒステリシスゾーンにもたらすために個々のピクセルに印加される正味電位差(保持)をプルオフ電圧(リセット)未満またはプルイン電圧(セット)を超える電圧へ移動させる機能と同じ機能を達成するために列電圧/行電圧を変化させる他の方法が存在していることは当業者には理解されよう。たとえば、リセット機能の間、ミラーを含んだ列の電圧をリセットするためには、列電圧と行電圧の合計がプルオフ電圧未満になるよう、ミラーを含んだ列の電圧を他の列の電圧より低くしなければならない。これは、重要な列の電圧を基準電圧未満に低くする(他の列がVref−Vreset>Vpoになるよう)ことによって達成することができ、あるいは他の列の電圧を基準電圧よりVset2だけ高くし、それらの電位がプルオフ電圧より高い電圧を維持し、かつ、重要な列(Vrefの)の電圧が行電圧と共にプルオフ閾値未満になるようにすることによって達成することができる。同様に、行電圧および列電圧は、行が逐次アドレス指定され、一方、すべての列が並列にセットされるよう、交換することができる。
【0084】
本発明のこの実施形態によるアドレス指定スキームは、Vpiがラッチ(プルイン)電圧であり、Vpoが解放(プルオフ)電圧である静電ヒステリシスに基づいている(図6参照)。従来技術を参照すると、欧州特許第1 341 025号明細書のアドレス指定スキームは、ラッチ電圧を除去することによって変調器アレイ全体をリセットしている。また、欧州特許第1 341 025号明細書は、個別のラッチ電極を使用している。したがってアレイのごく一部分のみを変化させ、かつ、残りの部分を変化しない状態で維持することが困難であり、また、潜在的に有効ではない(所与の時間内にアレイパターンに適合させるためには、より速いアドレス指定速度が必要である)。
【0085】
図8に示されているシーケンスは、この実施形態で説明されているアドレス指定スキームを最も良好に示したものである。図8を参照すると、行位置は、R行番号によって示されており、列位置はC列番号によって、また、ピクセル位置は、P行番号、列番号によって示されている。この例では、Vpi=14V、Vpo=10Vとする。図8の上側のグラフは、行電圧状態(たとえばup=−2V(−Vrow−set)、down=+2V(Vrow−set)、centre=0V)および列電圧状態(たとえばup=13V(Vref+Vset)、centre=11V(Vref)およびdown=0V)を示している。所与のピクセルの駆動電圧は、(Vcolumn−Vrow)で与えられる。図8の下側のグラフは、所与のピクセルがラッチ(1)状態にあるか、あるいは解放状態(0)状態にあるかどうかを示している。ここで使用されている電圧は、100kbpsでSWIRを変調するように設計された1.2μm間隙の25μm微小ミラーに典型的な電圧である。
【0086】
動作は、以下に示すように、電圧の適切な組合せをセットすることによって実施される。
【0087】
ピクセルのセット
Vref+Vset<Vpiにセットすべきピクセルを有する列を除くすべての列の電圧は、保持電圧基準Vrefである。電位差がVref+Vset+Vrow−set>Vpiになるよう、ラッチすべきピクセルを有する行電圧が−Vrow−setにセットされる(他の列の電圧はVref+Vrow−set<Vpiであり、したがってラッチしない)。行からVrow−setが除去され、すべての列がVrefに復帰してピクセルをラッチ状態に保持する。
【0088】
ピクセルのリセット
Vrefにリセット(解放)すべきピクセルを有する列を除くすべての列の電圧は、Vref+Vset(<Vpi)である。解放すべきピクセルを有する行電圧が+Vresetにセットされ、したがってピクセルの両端間の電位差は、Vref−Vreset<Vpoである(他の列の電圧はVref+Vset−Vreset>Vpoであり、したがってラッチされると、その状態を維持する)。行からVresetが除去され、すべての列がVrefに復帰して所望のピクセルをラッチ状態に保持する。
【0089】
すべてのリセット/セット
すべてをリセットするためには、すべての列が0Vにセットされる。すべてをセットするためには、すべての列がVref+Vsetにセットされ、かつ、すべての行がVrow−setにセットされる。
【0090】
この方法によれば、完全な列を並列にアドレス指定することができる(つまり、列電圧がセットされると、列全体を変化させるためにすべての行電圧がセットされる)。列は、逐次アドレス指定される。
【0091】
上で使用されている行および列という用語は制限的なものではなく、アドレス指定スキームに影響を及ぼすことなく、互いに交換することができる。
【0092】
原理的には、この手法を使用して空間光変調器アレイを任意のサイズにスケール化することができる。画像化シナリオの場合、個々のピクセル微小ミラーのピッチは、15−100μmの範囲に入ることが考えられる。画像化アプリケーションに使用される場合、ピッチは、検出器の画像化アレイ内のピクセルのピッチと整合していることが好ましい。アレイは、独立した列を備えていなければならず、また、実際には、サイズは、抵抗/容量(RC)時定数によって制限されている。これは、任意の時間に1つの列のみをスイッチングすることによって軽減される。個々のピクセルの抵抗は、ばねの幅および長さによって決まり、たとえば2μmのばねを備えた厚さ0.5μmのポリシリコンの場合、ピクセルアレイの抵抗は500KΩ/cm程度であり、一方、アレイの容量は、50pF/cm程度(100μmピクセルプレートの場合)であり、したがってRC定数は2.5μs/cmである。リソグラフィで使用されているステッパフィールドサイズは、通常、2×2cm程度であり、したがって、これは、より大きいアレイを構築し、かつ、良好な制御および歩留りを維持するためのタイルに対する実用上のサイズ制限である。しかしながら、ばねの上方で相互接続された、抵抗がより小さいポリシリコンの埋込層または第2の層を使用することにより、抵抗を著しく小さくすることができる(10分の1未満)。別法または追加として、速度/抵抗性電圧降下が問題になる場合、薄い金属層を使用してトラック抵抗を2−3桁小さくすることも可能である。たとえば、この薄い金属層は、Auを必要としない領域(たとえばピクセルの透過領域)を保護するために、構造自体からのシャドーマスキングおよび/またはリフトオフの組合せを使用してデバイスが部分的に解放される場合に付着させることができる。変調器が追加ポリシリコン層および金属導体層を備えている場合、デバイスの一部に光遮断層が形成され、それにより最適コントラストが維持されるように前記層を配置することができる。これは、フィルファクタが小さいデバイスの場合にとりわけ有利である。
【0093】
電極層の場合、固定ポリシリコンは電気コンジットとして作用する。これは、可動アレイ層中のばねよりはるかに幅が広く、したがって性能に対する制限がより少ないと考えられる。その抵抗をさらに小さくするために、ビアを使用して周期的にトラックが打ち込まれた基板に電極アレイを接続することができる。基板中のトラックは、打込みによって得られる逆バイアスpnダイオードを使用して絶縁分離される。また、ほとんどの能動抵抗制御の場合、基板の上にケイ化物トラックまたは金属トラックを画定することも可能であるが、光路を妨害しないように注意しなければならない。
【0094】
金属窒化物プロセスは、電極および可動微小ミラー層の両方が抵抗の小さい金属トラッキングを含むことになるため、この状況においては興味深い代替である。駆動電圧は、透過を許容する(IR透過性メタライゼーションが使用されない限り)ためには微小ミラーの大部分をPECVD窒化物のみとして製造しなければならないため、より高くなることが考えられる。実際には、PECVD窒化物層の頂部および底部にメタライゼーションを適用し、それにより熱複材料効果を抑制し、かつ、駆動間隙を狭くすることができる(延いては駆動電圧を低くすることができる)。
【0095】
空間光変調器アレイ内の変調器のフィルファクタが小さくなる状況では、微小レンズアレイを任意選択で本発明による空間光変調器と共に使用し、それにより光変調器の効率を維持することも可能である。
【0096】
本発明の他の実施形態によれば、縁効果を抑制し、延いては回折を抑制するために、光アポダイゼイションのプロセスを本発明による空間光変調器に使用することができる。ピクセルは、複数の光変調器のアレイ内の複数の共振器ミラーエレメントのうちの1つを適切にプロファイリングすることによってアポダイズすることができる。たとえば、個々のファブリー・ペロエレメントの光透過率を小さくするように設計された単調増加プロファイル、ステッププロファイルなどをミラーに付与することができる。これは、最も実際的には、微小ミラーの周囲の近くに拘束されることになる。別法または追加として、アポダイゼイションを達成するために、共振器ミラーの1つまたは複数の縁にメタライゼーションが追加される。このメタライゼーションは、金属(たとえば金)の1つまたは複数の層からなっていてもよい。金属層の厚さは、徐々に変化させることができる。追加または別法として、グレイスケールパターン(ハーフトーンパターン)等を使用してメタライゼーションを適用し、それにより金属層の光濃度を変化させることも可能である。
【0097】
MEMS設計に関して、重要な主な特徴は、速度、電圧(電力)および微小ミラーサイズである。図を参照すると、図9aは、予測共振周波数対ピクセル厚さのプロットを示し、図9bは、予測共振周波数対プレートサイズのプロットを示し、図9cは、予測駆動電圧対プレートサイズのプロットを示し、また、図9dは、予測フィルファクタ対プレートサイズのプロットを示している。図9aから図9dには、ピクセルが大きいほど駆動電圧が低くなり、また、フィルファクタが大きくなり、その一方で速度が遅くなること、これらの4つのばね設計は、より高速ではあるが、より高い駆動電圧が必要であり、また、より小さいフィルファクタを有していること、およびピクセルが薄いほど駆動電圧が低くなり、また、速度が遅くなる、という傾向が強調して示されている。
【0098】
本発明によるより小さいMOEMS空間光変調器アレイを使用して広い面積をタイル張りにすることができることは当業者には理解されよう。本発明の他の実施形態では、それぞれ列および行をアドレス指定するために、直接チップ取付け技法を使用した混成集積を使用して、MOEMS空間光変調器アレイチップの両面に薄いドライバ電子機器チップ40がフリップされ、かつ、結合される(たとえば微細幾何構造はんだバンプ技術を使用して)。複数のタイル(変調器チップ)の二次元アレイにスケール化されると、4つのすべての面がドライバチップで取り囲まれたMEMSチップが得られる。タイルアレイの周囲の空白の縁にダミーのチップを使用することができる。別法としては、これらのドライバチップは、個々のタイルの4つの縁に1つのドライバチップを必要とする2つの隣接するチップのための電子機器を含むことも可能である。この技法を使用して、図10に示すように、2つのMOEMS変調器チップが個々の電子機器チップによって取り付けられる。
【0099】
微小タイルから大型アレイを構築する方法は、歩留りがチップ面積と共に小さくなるため、コストを低減するための最も有効な方法である。また、個々のドライバチップがアドレス指定しなければならない列および行の数が制御される(したがってRC/抵抗性損失および電力/電流の問題が制御される)。たとえば2×2cmチップの場合、ピクセルのピッチが20μmであると仮定すると、1000行および1000列が存在することになる。そのためには10ビットのアドレス指定が必要である。駆動電圧が3.3V未満である場合、0.35μm混合CMOS技術を使用してこのようなチップを実現することができ、あるいは駆動電圧が5V未満である場合、0.8μm混合CMOS技術を使用してこのようなチップを実現することができる。駆動電圧が高いほど、高い電圧(20−50V)プロセス変量および/またはより大きい幾何構造プロセスが必要になり、駆動電子機器の設計が高度に特殊化されることになる。また、高電圧プロセスにおけるトランジスタのサイズもより大きく、この手法は、単純なレイアウトおよびアーキテクチャを使用して実現することが場合によっては不可能であることを意味している。異なる駆動電圧で動作するドライバチップの組合せを使用した構成も実現可能である。たとえば、列および行アドレス指定スキームの場合、列アドレスドライバは標準のCMOSドライバチップを備えることができ、一方、行アドレスドライバは高電圧ドライバチップを備えることができる。この実施例では、高電圧ドライバチップは、微小ピクセルピッチの場合、最大40vで動作することができる。
【0100】
このようなタイル張り構造を使用することにより、フラードームなどの平らでない形状を実現し、剛直性を増すことも可能である。また、図10には、タイル張りアレイの剛直性を増すようになされたエレメント42を有する任意選択の支持フレームが示されている。有利には、この支持フレームは、熱伝導性(たとえば金属製)にすることができ、また、この支持フレームを使用してタイル張りアレイの温度を制御することができる。たとえば、支持フレームを介して縁から熱を除去することによってアレイ全体を冷却することができる。支持フレームは、任意選択で、冷却流体が通過する中空断面を備えることができる。別法としては、この支持フレームを介して、あるいはこの支持フレームの上に、タイル張りの複数のMOEMSアレイへのデータ接続および/または電力接続を経路化することも可能である。
【0101】
2cmチップの50×50アレイをさらに多重化して、特定のチップをイネーブル/ディセーブルしてセットし、1×1mのマスクを得ることができる。単一のエレメントを使用する場合、そのためには、2.5Gピクセルアレイに対する16ビットのアドレス指定が必要になる。
【0102】
タイル張りにされた大型アレイを更新する速度は、主要な設計考察事項である。容量性負荷を駆動する電圧、延いては電気速度は、RCの問題によって制限されている。典型的な設計の場合、RC時定数は、2.5μs/cm長程度であり、2×2cmチップの10μs/ピクセルスイッチング速度と両立している。上記の構成の場合、これは、列経路のポリシリコンの抵抗および多少なりとも行経路のポリシリコンの抵抗によって制限されている。これらの抵抗は、いずれも、上で説明した場合より若干プロセスが複雑になるが、より導電性の高い経路を並列に追加することによって小さくすることができる。機械的な応答は、デバイスの共振周波数およびダンピング(圧力)で決まる。共振周波数は、移動層の厚さ、ばね設計およびピッチで決まる。適切に設計することにより、1−10μs程度の時定数になることが予測されている。潜在的には、1000×1000アレイ(2センチチップ上で20μmピッチ)の場合、本明細書において提案されているアドレス指定スキームを使用することによって得られるアレイ更新時間は10ms未満であり、列全体のピクセルが並列にセットされる。このサイズのタイルを使用し、かつ、すべての変調器タイルを並列に駆動し/アドレス指定することにより、任意のサイズのアレイを個々のタイルの速度と同じ速度でセットすることができる。
【0103】
駆動電圧は、ピクセル面積、ばね幾何構造および間隙で決まる。35μmピクセルの光学設計の場合、駆動電圧は5V程度であり、最大200kHzで応答することができる。電力消費は、容量、状態を変化させるピクセルの数および頻度、ならびに使用されるあらゆる電荷回復スキームの効率と組み合わせた電圧の関数である。
【0104】
本発明の上記実施形態のいずれかによるMOEMS光変調器は、シリコン基板の上に材料層を連続的に付着させることによって製造される。別法としては、デバイスは、パターン化され、かつ、ポリシリコン構造層の代わりにMEMSウェーハに転送されるSOIウェーハのデバイス層を使用して製造される。これは、ポリシリコン層中の応力を制御するための高温処理ステップが不要であり、また、従来のCMOS電子機器が基板上で可能であるため、有利である。
【0105】
本発明によるMOEMS光変調器は、ポリシリコン−ゲルマニウム微小機械加工(たとえばIMECまたはUC Berkeley)または金属窒化物プロセス(たとえばQinetiQ)などの低温技術を使用して、CMOSを含んだ基板上で後処理することができる。後者は、PECVD窒化物膜を、上で説明した抵抗の小さい金属トラッキングを備えた主光学/構造エレメントとして使用することができる。また、標準のポリシリコンプロセスを、トランジスタ特性が若干低下した修正大型幾何構造(2−3μm)CMOSプロセスフローまたはBiCMOSプロセスフローに組み込むことができる。
【0106】
本発明によるMOEMS空間光変調器アレイの特定のアプリケーションの1つは、適応符号化開口画像化(ACAI)システム内の再構成可能マスクとしてのアプリケーションである。図5bを参照すると、本発明による複数のMOEMS空間光変調器アレイのうちの少なくとも1つを備えた再構成可能マスクは、二次元検出器アレイの前面に使用されており、シーンから入射する電磁放射の振幅および/または位相を変調するように配置されている。このマスクは、個々にアドレス指定することができる複数の開口またはピンホールを提供している。通常、マスク内の開口のピッチは、約15−50μmである。実際には、複数の光変調器は、より大きい実効開口を有するより大きい変調器として一体として作用する1つのグループにすることができる。たとえば、それぞれ50μm2の副開口を有する4つの個々の光変調器を1つのグループにし、200μm2の実効開口を有する単一の光変調器を形成することができる。
【0107】
本発明によるMOEMS空間光変調器の代替アプリケーションには、それらに限定されないが、赤外検出器アレイの使用中における較正、電気光学保護および走査検出器アプリケーションがある。
【0108】
赤外検出器アレイの較正は、製造プロセスの変動によって赤外検出器の出力信号が検出器によって大きく変化するため、本発明によるMOEMS空間光変調器の重要なアプリケーションである。これは、複数の検出器の二次元アレイを同時に製造する場合においても言える。複数の赤外検出器の二次元アレイ上の個々のエレメントには、通常、マルチプレクサとして作用することができるシリコン読出し回路の上にアレイをバンプ結合することによってアクセスされる。シリコントランジスタの特性の変化は出力の変化に加えられ、通常、出力を入力フラックスに応じて非直線的に変化させる。
【0109】
したがって、アレイ内の個々のピクセルの出力をフラックスの関数として較正することが重要である。変化の性質が非直線的であるため、一連のシーン温度範囲全体にわたって高い品質の画像化が要求される場合(たとえば空および地上の光景など)、この較正を極めて多数のフラックスで実施しなければならない。
【0110】
従来の解決法は、熱電気的に制御された較正黒体板を使用し、黒体板の温度の関数として出力を測定することである。この技法の欠点は、個々の温度における整定時間を許容しているため、この手順を完了するのに場合によっては最大7分の時間を要することである。理想的には、安定した範囲のフラックスを速やかに生成することができる較正源が必要である。このような較正源を使用することにより、動作までの時間を短くすることができるだけでなく、より頻繁に較正サイクルを実施することができる。したがって、アレイ温度の変化などの影響による較正設定値の変動を小さくすることができる。さらに、シリコンおよびポリシリコンは、同じ膨張温度係数を有しているため、加熱および冷却によって、さもなければ性能に悪影響を及ぼすことになる余計な応力が空間光変調器に加えられることはない。
【0111】
高速較正源は、従来の固定温度黒体板と、本発明によるMOEMS空間光変調器を備えた再構成可能適応符号化開口(ACA)マスクとを組み合わせることによって製造することができる。上で説明したように、ACAマスクは、検出器に降り注ぐフラックスを変化させるために開閉することができるマスクプレート中の複数の開口のアレイからなっている。ACAマスクは、冷却されることが理想的であるが、透過状態から反射状態へスイッチングする場合、場合によってはこの冷却は不要である。
【0112】
一連の較正フラックスは、完全に閉じた開口から完全に開いた開口までの数を変化させることによって生成することができる。マスクのスイッチングは、比較的速やかに実施することができるため、短時間で多点較正を実施することができる。図11は、このシステムを使用したカメラの可能な構成を示したものである。図11に示す赤外カメラシステム50には、パドルの上に配置されたACAマスク52、およびパドルの上に配置された、熱電気的(TE)に制御された黒体板54が使用されている。較正中、ACAマスク52およびTE制御板が回転手段56によってカメラレンズ58と二次元赤外検出器アレイの間の位置へ回転する。較正中、二次元赤外検出器アレイは、カメラの外部のシーンから赤外放射を受け取る代わりに、熱電気的(TE)に制御された黒体板54を画像化する。従来の画像化システムの場合、画像化位置にマスクが位置していないため、焦点面の照明が一様である(しかしながら、これは、開口をACAマスクの上に一様に広げることによって改善することができる)。
【0113】
上で説明した適応符号化開口画像化(ACAI)システムの場合、既にACAマスクが含まれており、したがって上で言及した較正スキームは、コストを追加することなく実施することができる。特定のアプリケーションは、レンズレス適応符号化開口画像化(ACAI)システムにおけるアプリケーションである。レンズレスACAI画像化システムの場合、個々の検出器に降り注ぐフラックスは、比較的一様であることが期待され(すべての開口からのフラックスが平均化されるため)、良好な画像化は、比較的狭い範囲のフラックスに対する正確な較正によって決まる。この場合も、この値の近辺の一連のフラックスは、異なるパターンをマスクに開けることによって生成することができる。マスク上の個々の開口の透過率の変化を較正することができるもっと複雑なスキームを実施することも可能である。
【0114】
上記の説明に鑑みて、本発明の範囲内で様々な修正を加えることができることは当業者には明らかであろう。
【0115】
本開示の範囲には、あらゆる新規な特徴、もしくは明示的であれ、暗黙的であれ、あるいは任意の一般化であれ、特許請求される発明に関係しているかいないかに無関係に、あるいは本発明によって対処される問題の一部またはすべてを軽減するかしないかに無関係に、本発明の範囲の中で開示されている特徴の組合せが含まれている。本出願人は、本出願において、本出願の手続遂行中、または本出願から引き出される他のあらゆる出願の手続遂行中、このような特徴に対する新しい特許請求を明確に系統立てて説くことができることを通知する。詳細には、特許請求の範囲を参照すると、従属請求項の特徴は、独立請求項の特徴と組み合わせることができ、また、個々の独立請求項の特徴は、特許請求の範囲の中で列挙されている単なる特定の組合せにおいてではなく、適切な任意の方法で組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1a】2つの支持ばねを有するMOEMS光変調器を示す略斜視図である。
【図1b】4つの支持ばねを有する代替MOEMS光変調器を示す略斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態によるMOEMS光変調器を示す横断面図である。
【図3a】波長可変共振器を有する非対称ファブリー・ペロエタロンを備えた本発明によるMOEMS光変調器を示す横断面図である。
【図3b】代替実施形態の非対称ファブリー・ペロエタロンを有するMOEMS光変調器を示す横断面図である。
【図4a】図3aに示す光変調器の典型的な性能特性を示すグラフであって、詳細には、微小ミラーがその上部平衡位置にあり、垂直入射ではその下部位置にある光変調器のMWIR波長帯域に対する透過率を示すグラフである。
【図4b】図3aに示す光変調器の典型的な性能特性を示すグラフであって、詳細には、微小ミラーがその上部平衡位置にあり、0度および50度の入射角に対してはその下部位置にある光変調器のMWIR波長帯域に対する透過率を示すグラフである。
【図4c】図3aに示す光変調器の典型的な性能特性を示すグラフであって、詳細には、入射角に対する偏光による透過率を示すグラフである。
【図5a】3.5μmから4.5μmの波長帯域における光学的に開いた状態の最大透過率に対して最適化された、図3bに示す光変調器の典型的な性能特性を示すグラフである。
【図5b】本発明による複数のMOEMS光変調器の二次元アレイを備えた、参照によりその内容が本明細書に組み込まれている本出願人らの同時係属英国特許出願第0510470号明細書に記載されている適応符号化開口画像化(ACAI)システムを示す略図である。
【図6】本発明によるMOEMS変調器の典型的なラッチ特性(ヒステリシス曲線)を示すグラフである。
【図7a】複数の行アドレス線および列アドレス線を使用して個々にアドレス指定することができる複数のピクセルのアレイを有する、本発明の一実施形態による空間光変調器を示す略図である。
【図7b】行アドレス指定のための埋込電極、および微小ミラーの上に配置された、列アドレス指定のための電極を組み込んだ、30μmピッチの複数のピクセルのアレイを有する空間光変調器を示す略斜視図である。
【図7c】複数の光変調器のカプセル化二次元アレイを備えた、本発明の他の実施形態を示す略断面図である。
【図8】本発明によるMOEMS空間光変調器を制御するために使用される、本発明の他の実施形態による行列(行−列)アドレス指定スキームの典型的な波形および対応するピクセル状態の例を示すグラフである。上のグラフは、行および列の電圧状態を示しており、一方、下のグラフは、ピクセルがラッチされた状態(1)にあるか、あるいは解放された状態(0)にあるかどうかを示している。
【図9a】本発明によるMOEMS光変調器の予測性能特性を示すグラフであって、図1aおよび図1bに示す形態の直線状ピクセルの一般的な傾向を示している。詳細には、予測共振周波数対ピクセル厚さをプロットしたものである。
【図9b】本発明によるMOEMS光変調器の予測性能特性を示すグラフであって、図1aおよび図1bに示す形態の直線状ピクセルの一般的な傾向を示している。詳細には、予測共振周波数対プレートサイズをプロットしたものである。
【図9c】本発明によるMOEMS光変調器の予測性能特性を示すグラフであって、図1aおよび図1bに示す形態の直線状ピクセルの一般的な傾向を示している。詳細には、予測駆動電圧対プレートサイズをプロットしたものである。
【図9d】本発明によるMOEMS光変調器の予測性能特性を示すグラフであって、図1aおよび図1bに示す形態の直線状ピクセルの一般的な傾向を示している。詳細には、予測フィルファクタ対プレートサイズをプロットしたものである。
【図10】直接チップ取付け技術(たとえばボールグリッドアレイ/フリップチップ)を使用して、電子機器チップ(駆動ASIC)によってリンクされた複数のMOEMS空間光変調器チップを備えた大型MOEMS空間光変調器アレイを示す略断面図である。
【図11】本発明によるMOEMS空間光変調器を備えた適応符号化開口(ACA)ベース較正源を使用した赤外線カメラを示す略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して弾性的にバイアスされ、基板との間に印加される電圧に応答して、基板に対して移動することができるミラーを組み込んだ非対称ファブリー・ペロエタロンを備えた光共振器を有する、微小光電気機械システム(MOEMS)光変調器。
【請求項2】
短波赤外放射(SWIR)、中波赤外放射(MWIR)および長波赤外(LWIR)のうちの少なくとも1つの透過率を変調するようになされた、請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
基板が、SWIR放射、MWIR放射およびLWIR放射に対して実質的に透過性である、請求項1または2に記載の光変調器。
【請求項4】
変調器が、光学的に開いた状態ではMWIR放射に対して実質的に透過性であり、また、光学的に閉じた状態ではMWIR放射に対して実質的に非透過性である、請求項2または3に記載の光変調器。
【請求項5】
光学的に開いた状態において、50%を超える最大透過率を有し、かつ、MWIR放射に対する光学的に閉じた状態において、5%未満の最小透過率を有する、請求項4に記載の光変調器。
【請求項6】
シリコン可動ミラー層、エアギャップ、シリコン層、第1の誘電体層およびシリコン層が連続する複数の層からなる多層スタックを有する、請求項1から5のいずれかに記載の光変調器。
【請求項7】
第1の誘電体層が、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素および窒化ケイ素のうちの1つからなる、請求項6に記載の光変調器。
【請求項8】
シリコン可動ミラー層、エアギャップ、第2の誘電体層、シリコン層、第1の誘電体層およびシリコン層が連続する複数の層からなる多層スタックを有する、請求項6に記載の光変調器。
【請求項9】
第2の誘電体層が、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素および窒化ケイ素のうちの1つからなる、請求項8に記載の光変調器。
【請求項10】
可視放射の反射率を変調するようになされた、請求項1から9のいずれかに記載の光変調器。
【請求項11】
ミラーが、非対称ファブリー・ペロエタロン内で、基板から遠く離れた、実質的に安定した第1の位置と、基板に近い、実質的に安定した第2の位置との間を移動することができる、請求項1から10のいずれかに記載の光変調器。
【請求項12】
ミラーが、印加される電圧に応答して、第1の位置と第2の位置の間を非直線的に移動するようになされた、請求項11に記載の光変調器。
【請求項13】
ミラーが、第1の閾値を超える大きさの力が加えられると、第1の位置から移動するようになされ、また、印加される力の大きさが第2の閾値未満に減少すると、第2の位置から移動するようになされ、これらの2つの閾値が実質的に異なるようになされた、請求項11または12に記載の光変調器。
【請求項14】
力が、印加される電圧の二乗に実質的に比例する大きさを有する静電力である、請求項13に記載の光変調器。
【請求項15】
ミラーが、ヒステリシスを示す位置応答を有する、請求項13に記載の光変調器。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の光変調器の二次元アレイを備えた、空間光変調器。
【請求項17】
第1の電極層および第2の電極層を有し、光変調器がアレイの形で配置され、変調器の各々が第1の層の中に電極を有し、かつ、第2の層の中に電極を有する、請求項16に記載の空間光変調器。
【請求項18】
複数の行電極および複数の列電極を有し、光変調器が、受動行列行−列アドレス指定スキームを使用して個々にアドレス指定することができる、請求項17に記載の空間光変調器。
【請求項19】
個々の光変調器内の光共振器が、第1の電極層および第2の電極層のうちの少なくともいずれか一方を備えた、請求項17または18に記載の空間光変調器。
【請求項20】
第1の電極層および第2の電極層のうちの少なくともいずれか一方が、入射する放射に対して実質的に透過性である、請求項17から19のいずれかに記載の空間光変調器。
【請求項21】
アレイの形で配置された複数の双安定MOEMS光変調器を有する複数の行電極および複数の列電極を備えた空間光変調器をアドレス指定する方法であって、アレイ内の個々の光変調器が行電極と列電極の間の交点に配置され、
(i)個々の列電極に列駆動電圧を印加するステップと、
(ii)個々の行電極に行駆動電圧を印加するステップと
を含み、
個々の交点における光変調器が、前記交点における列駆動電圧と行駆動電圧の間の電位差に応答して動作することができる、方法。
【請求項22】
光変調器をラッチ位置にセットするために、
(i)すべての列電極に印加される列駆動電圧を保持電圧基準Vrefに等しくするステップと、
(ii)セット電圧Vsetによってセットすべき変調器に対応する列電極に印加される列駆動電圧を高くするステップであって、Vref+Vsetが光変調器をラッチするために必要なラッチ電圧Vpiより低いステップと、
(iii)セットすべき変調器に対応する行電極に印加される行駆動電圧を行セット電圧−Vrow−setに等しくするステップであって、電位差Vref+Vset+Vrow−setがラッチ電圧Vpiより高いステップと、
(iv)セットすべき変調器に対応する行電極から行駆動電圧を除去するステップと、
(v)セット電圧Vsetによってセットすべき変調器に対応する列電極に印加される列駆動電圧を低くするステップと
を含む、請求項21に記載の空間光変調器をアドレス指定する方法。
【請求項23】
光変調器をラッチ位置からリセットするために、
(i)すべての列電極に印加される列駆動電圧を保持電圧基準Vref+セット電圧Vsetに等しくするステップであって、Vref+Vsetが光変調器をラッチするために必要なラッチ電圧Vpiより低いステップと、
(ii)リセットすべき変調器に対応する行電極に印加される行駆動電圧を行リセット電圧+Vresetに等しくするステップであって、電位差Vref−Vresetが光変調器を解放するために必要な解放電圧Vpoより低いステップと、
(iii)リセットすべき変調器に対応する行電極から行駆動電圧を除去するステップと、
(iv)リセット電圧Vresetによってセットすべき変調器に対応する列電極に印加される列駆動電圧を低くするステップと
を含む、請求項21に記載の空間光変調器をアドレス指定する方法。
【請求項24】
アレイ内のすべての光変調器をラッチ位置にセットするために、
(i)すべての列電極に印加される列駆動電圧を保持電圧基準Vref+セット電圧Vsetに等しくするステップであって、Vref+Vsetが光変調器をラッチするために必要なラッチ電圧Vpiより低いステップと、
(ii)すべての行電極に印加される行駆動電圧を行セット電圧−Vrow−setに等しくするステップであって、電位差Vref+Vset+Vrow−setがラッチ電圧Vpiより高いステップと、
(iii)セットすべき変調器に対応する行電極から行駆動電圧を除去するステップと、
(iv)セット電圧Vsetによってセットすべき変調器に対応する列電極に印加される列駆動電圧を低くするステップと
を含む、請求項21に記載の空間光変調器をアドレス指定する方法。
【請求項25】
アレイ内のすべての光変調器をラッチ位置からリセットするために、
(i)すべての列電極に印加される列駆動電圧を実質的にゼロにするステップ
を含む、請求項21に記載の空間光変調器をアドレス指定する方法。
【請求項26】
検出器アレイに入射する電磁放射を変調するようになされた、請求項16から20のいずれかに記載の少なくとも1つの空間光変調器を有する開口マスクを備えた、適応符号化開口画像化(ACAI)システム。
【請求項27】
含まれている複数の光変調器のうちの少なくとも1つがアポダイズされた、請求項16から20のいずれかに記載の空間光変調器。
【請求項28】
少なくとも1つのアポダイズされた光変調器がプロファイル化されたミラーを備えた、請求項27に記載の空間光変調器。
【請求項1】
基板に対して弾性的にバイアスされ、基板との間に印加される電圧に応答して、基板に対して移動することができるミラーを組み込んだ非対称ファブリー・ペロエタロンを備えた光共振器を有する、微小光電気機械システム(MOEMS)光変調器。
【請求項2】
短波赤外放射(SWIR)、中波赤外放射(MWIR)および長波赤外(LWIR)のうちの少なくとも1つの透過率を変調するようになされた、請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
基板が、SWIR放射、MWIR放射およびLWIR放射に対して実質的に透過性である、請求項1または2に記載の光変調器。
【請求項4】
変調器が、光学的に開いた状態ではMWIR放射に対して実質的に透過性であり、また、光学的に閉じた状態ではMWIR放射に対して実質的に非透過性である、請求項2または3に記載の光変調器。
【請求項5】
光学的に開いた状態において、50%を超える最大透過率を有し、かつ、MWIR放射に対する光学的に閉じた状態において、5%未満の最小透過率を有する、請求項4に記載の光変調器。
【請求項6】
シリコン可動ミラー層、エアギャップ、シリコン層、第1の誘電体層およびシリコン層が連続する複数の層からなる多層スタックを有する、請求項1から5のいずれかに記載の光変調器。
【請求項7】
第1の誘電体層が、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素および窒化ケイ素のうちの1つからなる、請求項6に記載の光変調器。
【請求項8】
シリコン可動ミラー層、エアギャップ、第2の誘電体層、シリコン層、第1の誘電体層およびシリコン層が連続する複数の層からなる多層スタックを有する、請求項6に記載の光変調器。
【請求項9】
第2の誘電体層が、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素および窒化ケイ素のうちの1つからなる、請求項8に記載の光変調器。
【請求項10】
可視放射の反射率を変調するようになされた、請求項1から9のいずれかに記載の光変調器。
【請求項11】
ミラーが、非対称ファブリー・ペロエタロン内で、基板から遠く離れた、実質的に安定した第1の位置と、基板に近い、実質的に安定した第2の位置との間を移動することができる、請求項1から10のいずれかに記載の光変調器。
【請求項12】
ミラーが、印加される電圧に応答して、第1の位置と第2の位置の間を非直線的に移動するようになされた、請求項11に記載の光変調器。
【請求項13】
ミラーが、第1の閾値を超える大きさの力が加えられると、第1の位置から移動するようになされ、また、印加される力の大きさが第2の閾値未満に減少すると、第2の位置から移動するようになされ、これらの2つの閾値が実質的に異なるようになされた、請求項11または12に記載の光変調器。
【請求項14】
力が、印加される電圧の二乗に実質的に比例する大きさを有する静電力である、請求項13に記載の光変調器。
【請求項15】
ミラーが、ヒステリシスを示す位置応答を有する、請求項13に記載の光変調器。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の光変調器の二次元アレイを備えた、空間光変調器。
【請求項17】
第1の電極層および第2の電極層を有し、光変調器がアレイの形で配置され、変調器の各々が第1の層の中に電極を有し、かつ、第2の層の中に電極を有する、請求項16に記載の空間光変調器。
【請求項18】
複数の行電極および複数の列電極を有し、光変調器が、受動行列行−列アドレス指定スキームを使用して個々にアドレス指定することができる、請求項17に記載の空間光変調器。
【請求項19】
個々の光変調器内の光共振器が、第1の電極層および第2の電極層のうちの少なくともいずれか一方を備えた、請求項17または18に記載の空間光変調器。
【請求項20】
第1の電極層および第2の電極層のうちの少なくともいずれか一方が、入射する放射に対して実質的に透過性である、請求項17から19のいずれかに記載の空間光変調器。
【請求項21】
アレイの形で配置された複数の双安定MOEMS光変調器を有する複数の行電極および複数の列電極を備えた空間光変調器をアドレス指定する方法であって、アレイ内の個々の光変調器が行電極と列電極の間の交点に配置され、
(i)個々の列電極に列駆動電圧を印加するステップと、
(ii)個々の行電極に行駆動電圧を印加するステップと
を含み、
個々の交点における光変調器が、前記交点における列駆動電圧と行駆動電圧の間の電位差に応答して動作することができる、方法。
【請求項22】
光変調器をラッチ位置にセットするために、
(i)すべての列電極に印加される列駆動電圧を保持電圧基準Vrefに等しくするステップと、
(ii)セット電圧Vsetによってセットすべき変調器に対応する列電極に印加される列駆動電圧を高くするステップであって、Vref+Vsetが光変調器をラッチするために必要なラッチ電圧Vpiより低いステップと、
(iii)セットすべき変調器に対応する行電極に印加される行駆動電圧を行セット電圧−Vrow−setに等しくするステップであって、電位差Vref+Vset+Vrow−setがラッチ電圧Vpiより高いステップと、
(iv)セットすべき変調器に対応する行電極から行駆動電圧を除去するステップと、
(v)セット電圧Vsetによってセットすべき変調器に対応する列電極に印加される列駆動電圧を低くするステップと
を含む、請求項21に記載の空間光変調器をアドレス指定する方法。
【請求項23】
光変調器をラッチ位置からリセットするために、
(i)すべての列電極に印加される列駆動電圧を保持電圧基準Vref+セット電圧Vsetに等しくするステップであって、Vref+Vsetが光変調器をラッチするために必要なラッチ電圧Vpiより低いステップと、
(ii)リセットすべき変調器に対応する行電極に印加される行駆動電圧を行リセット電圧+Vresetに等しくするステップであって、電位差Vref−Vresetが光変調器を解放するために必要な解放電圧Vpoより低いステップと、
(iii)リセットすべき変調器に対応する行電極から行駆動電圧を除去するステップと、
(iv)リセット電圧Vresetによってセットすべき変調器に対応する列電極に印加される列駆動電圧を低くするステップと
を含む、請求項21に記載の空間光変調器をアドレス指定する方法。
【請求項24】
アレイ内のすべての光変調器をラッチ位置にセットするために、
(i)すべての列電極に印加される列駆動電圧を保持電圧基準Vref+セット電圧Vsetに等しくするステップであって、Vref+Vsetが光変調器をラッチするために必要なラッチ電圧Vpiより低いステップと、
(ii)すべての行電極に印加される行駆動電圧を行セット電圧−Vrow−setに等しくするステップであって、電位差Vref+Vset+Vrow−setがラッチ電圧Vpiより高いステップと、
(iii)セットすべき変調器に対応する行電極から行駆動電圧を除去するステップと、
(iv)セット電圧Vsetによってセットすべき変調器に対応する列電極に印加される列駆動電圧を低くするステップと
を含む、請求項21に記載の空間光変調器をアドレス指定する方法。
【請求項25】
アレイ内のすべての光変調器をラッチ位置からリセットするために、
(i)すべての列電極に印加される列駆動電圧を実質的にゼロにするステップ
を含む、請求項21に記載の空間光変調器をアドレス指定する方法。
【請求項26】
検出器アレイに入射する電磁放射を変調するようになされた、請求項16から20のいずれかに記載の少なくとも1つの空間光変調器を有する開口マスクを備えた、適応符号化開口画像化(ACAI)システム。
【請求項27】
含まれている複数の光変調器のうちの少なくとも1つがアポダイズされた、請求項16から20のいずれかに記載の空間光変調器。
【請求項28】
少なくとも1つのアポダイズされた光変調器がプロファイル化されたミラーを備えた、請求項27に記載の空間光変調器。
【図1a】
【図1b】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図10】
【図11】
【図1b】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5a】
【図5b】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図9c】
【図9d】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2009−526244(P2009−526244A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−552893(P2008−552893)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000414
【国際公開番号】WO2007/091053
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(501352882)キネテイツク・リミテツド (93)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000414
【国際公開番号】WO2007/091053
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(501352882)キネテイツク・リミテツド (93)
【Fターム(参考)】
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