説明

光変調型検出装置および電子機器

【課題】検出感度や検出装置としての応答を損なうことなく消費電力の低減を図り、それでいて回路規模を増大させずに装置の小型化を図る光変調型検出装置を提供する。
【解決手段】光変調型検出装置150は、パルス信号変換部112の受光信号経路を遮断してそのオフセットを抑圧し、当該期間の終了時点でその状態を保持するとともに上記受光信号経路を再接続するオフセットキャンセル(以下「OC」)期間と、当該OC期間後に、パルス光101が放射されていない期間に受光信号104が存在する非同期受信(以下「AG」)の有無を検出するAG期間とを含むノイズ検知モードM1と、上記AG有りと検出されなかったノイズ検知モードM1後に、パルス光101が放射されている期間と同時に受光信号104が存在する同期受信(以下「SG」)の有無を検出するSG期間を含む物体検知モードM2とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いた物体検出装置である光変調型検出装置に関し、特に携帯電話機等のポータブル機器に搭載するための小型、低消費電力、かつ高感度な光変調型検出装置、およびそれを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動ドア、衛生器具の自動洗浄装置、あるいはアミューズメント機器などに向け、パルス光を投射し物体からの反射光を検出して物体の有無を検知する検出装置が周知である。具体的な構成の例として、特許文献1,2に開示されている技術が挙げられる。
【0003】
一方で、多機能化と小型化あるいは薄型化とが進む携帯電話機やメディアプレイヤ等のポータブル機器に、近接する物体の有無を検出するセンサ(以下「近接センサ」と言う)を搭載したものが登場している。その用途として以下のような例がある。
(1)電話機能及び表示画面を有するポータブル機器における表示画面用バックライトのON/OFF制御。例えば、通話時に人肌の接近を検出すると液晶画面のバックライトをOFFし、非近接状態への変化を検出すると再びONする。これによりシステム全体の低消費電力化を図る。
(2)電話機能及びタッチパネル機能を有するポータブル機器におけるタッチパネル機能のON/OFF制御。例えば、通話する際あるいは機器をポケットに挿入した際にタッチパネル機能をOFFさせる。これによってシステムの誤動作を防止する。
(3)無線通信機能を有するポータブル機器におけるタッチレススイッチ。例えば、無線通信によるワイヤレスマウス、ワイヤレスキーボード、ゲーム機のコントローラ等にその操作者が指や手を近づけると起動し遠ざけるとスリープする。これにより機器の低消費電力化を図る。
【0004】
上記のようなポータブル機器のアプリケーションに向けた近接センサには、従来の光センサ技術に対して、より高い太陽光や蛍光灯などの外乱光への耐性とともに、所望の検知感度や応答時間等のセンシング特性を極めて小さい実装面積で実現し、近接センサ自身が極めて低消費電力であることが強く望まれる。
【特許文献1】実開平6−18983号公報(1994年3月14日公開)
【特許文献2】特開2006−108356号公報(2006年6月8日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような検出装置において、検知感度を損なわずに小型化を達成するためには、受光部や受光素子の小型化/高感度化と同時に、受光信号の増幅回路の高感度化、あるいは発光素子の光量増加が必要である。しかしながら、この場合、上記増幅回路あるいは発光素子駆動回路における消費電力の増加を招く。また、受光部−発光部間の光学的あるいは電気的なクロストークの増大や外乱光耐性の低下に起因する誤作動を起こしやすくなる。
【0006】
また、上記のような小型かつ低消費電力の検出装置に、上記各文献で開示された検出方式を適用しようとすると、小型の近接センサとしてのモノリシック化あるいはモジュール化が困難であったり、センサとしての応答に問題が生じたり、現実のセンサ回路として所望の検知感度等のアナログ特性を実現するために必要な雑音やオフセットを抑圧するための手法と両立し難いあるいは相反する場合が多々ある。
【0007】
例えば、特許文献1に開示されている技術においては、外乱光耐性を高めるため、発光していない期間に受光があればなくなるまで待つという処理を行う物体検出装置が開示されている。図10にその処理のフローチャートを示す。具体的には、0.7秒に1回検出装置の受光回路が起動され、動作開始後5msの間、外乱光がなくなるのを待って発光し、対応する反射光の有無を観測する。また、5ms以上外乱光が継続する場合は、観測不可能かつ反射物は無いと仮定して、0.7秒後の次回起動を待つ。
【0008】
このアルゴリズムでは、以下に示すような問題を生じる。
【0009】
それはすなわち、まず、外乱光に対しては、発光していないすべての期間が観測対象となるため、外乱光以外のノイズ要因(例えば回路の温度ドリフトや電源ノイズ等)の影響が甚大である。また、0.7秒といった極めて長い時間間隔で状態をサンプリングすることになるため、外乱光が十分に減衰する期間が短かったり、あるいは外乱光強度が何らかの周期構造を有して時間変動をするような場合には、うなりの周期に偶然合致したタイミングでしか反射光の観測機会が得られず、低い確率での動作しか期待できない。従って、本発明の対象である連続的な人体の動きをトラッキングするような近接センサとしての応答及び精度を満足することができない。また、反射光の観測においても、発光パルスパターンに対する受信パルス数のカウントもしくはレベルセンスのみであり、時間軸上でより細かく検出装置の動作を制御するための判断材料を得ることができない。このように、外乱光環境下で確実に反射光を観測するために、そのタイミングを的確にサーチするための要素がまったく含まれておらず、時間軸方向の観測精度が極めて粗い。
【0010】
次に、特許文献2に開示されている技術では、図11に示すように、外乱光耐性を高めるため、発光パルスのパターンに工夫を凝らしている。すなわち、発光パルス幅の2倍の周期で発光を複数回繰り返し、信号光の主要な周波数成分を外乱光の周波数成分よりも高く設定する。同図における上記繰り返し回数は2である。しなしながら、その主旨を鑑みれば送受信回路の帯域幅を必要以上に高周波側に広げる必要が生じることとなる。従って、検知回路内では高周波まで雑音成分を拾ってしまい高感度化を達成することが難しくなる。また、図11のようなアルゴリズムのみでは、検知出力の更新が速すぎてチャタリングするため、本発明の対象である連続的な人体の動きをトラッキングするような近接センサとしての応答特性を満足することができない。
【0011】
また、小型の検出装置を実現するために、微細CMOSプロセスを採用してアナログデジタル混載の高集積化を図る際、素子ばらつきによって集積回路内に生じるオフセット電圧が検出装置の感度を大きく劣化させる主要因になる。
【0012】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、その目的は、検出感度や検出装置としての応答を損なうことなく消費電力の低減を図り、それでいて回路規模を増大させずに装置の小型化を図る光変調型検出装置、およびそれを備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る光変調型検出装置は、上記課題を解決するために、発光素子からパルス光を放射し、検出すべき物体にて反射もしくは透過した上記パルス光を受光する受光素子から出力された受光信号に基づいて、上記物体の有無を検出する光変調型検出装置であって、上記受光信号をパルス信号に変換するとともに、受光信号経路を遮断して自身のオフセットを抑圧するパルス信号変換部と、上記パルス信号を用いて、上記パルス光が放射されていない期間に上記受光信号が存在する第1状態であるか否かを検出するとともに、上記パルス光が放射されている期間と同時に上記受光信号が存在する第2状態であるか否かを検出する検出部とを備え、上記パルス信号変換部の上記受光信号経路を遮断して上記パルス信号変換部のオフセットを抑圧し、当該第1期間の終了時点で上記オフセットが抑圧された状態を保持するとともに上記パルス信号変換部の上記受光信号経路を再接続する第1期間と、当該第1期間後において、上記第1状態であるか否かを検出する第2期間とを含む第1動作モードと、上記第1状態でないことを検出した上記第1動作モード後において、上記第2状態であるか否かを検出する第3期間を少なくとも含む第2動作モードとの動作モードを有することを特徴としている。
【0014】
上述のように、小型の検出装置を実現するために、微細CMOSプロセスを採用してアナログデジタル混載の高集積化を図る際、素子ばらつきによって集積回路内に生じるオフセット電圧が検出装置の感度を大きく劣化させる。しかしながら、上記オフセット電圧を抑圧する構成は、概して定常的(常時接続)で大きな位相補償容量が必要であり、回路規模が大きくなりがちである。
【0015】
これに対し、本発明に係る光変調型検出装置では、パルス信号変換部において受光信号の増幅経路を遮断して、いかなる外乱光環境下であっても常に回路自身のオフセットキャンセルを正常に行うことができる。また、信号経路の遮断点を低インピーダンスでバイアスしオフセットキャンセル期間が終了し回路接続を通常の信号増幅経路に再接続した際に、過剰な過渡電圧を発生せず安定して信号増幅を行うことが可能となる。
【0016】
このような構成とすることで、大きな位相補償容量が必要となる定常的なオフセット抑圧構成を採用することなくパルス信号変換部のオフセットを継続的に抑圧しつつ、外乱光の影響がない状態をサーチして発光素子を駆動して、高感度な状態で物体の有無の検出を行うことが可能になる。従って、回路規模やバイアス電流の増大を招くことなく、検出装置の高感度化と誤動作の防止を図ることができる。
【0017】
以上により、検出感度や検出装置としての応答を損なうことなく消費電力の低減を図り、それでいて回路規模を増大させずに装置の小型化を図る光変調型検出装置を提供することができるという効果を奏する。
【0018】
本発明に係る光変調型検出装置は、上記第2動作モードは、上記第1期間をさらに含むことが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、上記第2動作モードにも上記第1期間を含むため、上記第2動作モードに上記第1期間を含まない場合と比較して、より高感度な状態で物体の有無の検出を行うことが可能になる。具体的には、上記第2動作モードは、上記第3期間前に上記第1期間を含むように構成される。
【0020】
本発明に係る光変調型検出装置は、上記第2動作モードは、上記第2期間をさらに含むことが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、上記第2動作モードにも上記第2期間を含むため、特により複雑な外乱光レベルの時間変化に対して影響を受けにくく、上記第2動作モードに上記第2期間を含まない場合と比較して、より誤動作なく物体の有無の検出を行うことが可能になる。具体的には、上記第2動作モードは、上記第3期間後に上記第2期間を含むように構成される。
【0022】
本発明に係る光変調型検出装置は、上記第2動作モードは、上記第1期間および上記第2期間をさらに含むことが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、上記第2動作モードにも上記第1期間および上記第2期間を含むため、上記第2動作モードに上記第1期間および上記第2期間を含まない場合と比較して、より高感度な状態で、かつより複雑な外乱光レベルの時間変化に対して影響を受けにくいためより誤動作なく物体の有無の検出を行うことが可能になる。
【0024】
具体的には、上記第2動作モードは、上記第3期間前に上記第1期間を、かつ上記第3期間後に上記第2期間をさらに含み、あるいは、上記第3期間前後に上記第1期間を、かつ当該第3期間後の第1期間後に上記第2期間をさらに含むように構成される。
【0025】
また、以上のように、上記第2動作モード時は、上記第1期間と上記第3期間、上記第2期間と上記第3期間、あるいは上記第1期間と上記第2期間と上記第3期間などの上述した各パターンが可能であり、高い設計自由度が得られる。
【0026】
本発明に係る光変調型検出装置は、上記光変調型検出装置は、上記検出部の検出結果に基づき、上記物体の有無を判定する判定部をさらに備え、上記第1動作モードの開始に伴って開始される第1周期が設けられており、上記第1動作モードにおいては、上記第1周期内に、上記第2期間において上記第1状態であると検出されなかった場合は上記第2動作モードに遷移し、上記第1状態であると検出された場合は上記第1期間に遷移し、上記第2動作モードにおいては、上記第1動作モードから引き続く上記第1周期内に、上記第3期間において上記第2状態であるとn(nは自然数)回連続して検出された場合は上記物体有りと判定され、n回連続して検出されなかった場合は上記物体無しと判定され、上記第2期間後、もしくは上記第2期間前後、かつ上記第2動作モードの最後に、上記検出部において処理内容を検出無しにリセットし、上記第1周期の終了とともに上記第1動作モードに遷移することが好ましい。
【0027】
上記の構成によれば、上記第2動作モードにおいて、上記第2期間を設けず、外乱光ノイズレベルが変動する前に上記第3期間を繰り返し行うことによって、検出結果の信頼性を向上することができる。
【0028】
また、オフセット抑圧完了後の状態が許容精度を維持できる時間は有限であるが、上記の構成によれば、動作モードによらず上記第1期間から上記第2期間あるいは上記第3期間までの時間間隔に対して上限値を設定することができる。従って、上記第1動作モードと上記第2動作モードとを一定の周期で繰り返しながら複雑な外乱光ノイズレベルの変化に対応して正常な動作を継続することが可能になる。
【0029】
本発明に係る光変調型検出装置は、上記検出部の検出結果に基づき、上記物体の有無を判定する判定部をさらに備え、上記第1動作モードの開始に伴って開始される第1周期が設けられており、上記第1動作モードにおいては、上記第1周期内に、上記第2期間において上記第1状態でないと検出された場合は上記第2動作モードに遷移し、上記第1状態であると検出された場合は上記第1期間に遷移し、上記第2動作モードにおいては、上記第3期間後に上記第2期間が含まれ、上記物体無しと判定されている場合は、上記第1動作モードから引き続く上記第1周期内に、n(nは自然数)回連続して上記第3期間において上記第2状態であると検出され、かつ、上記第2期間においてn回連続して上記第1状態であると検出されなかった場合は上記物体有りと判定され、一方上記物体有りと判定されている場合は、上記第1動作モードから引き続く上記第1周期内に、上記第3期間において上記第2状態であるとn回連続して検出された場合は上記物体有りと判定され、上記第2期間後、もしくは上記第2期間前後、かつ上記第2動作モードの最後に、上記検出部において処理内容を検出無しにリセットし、上記第1周期の終了とともに上記第1動作モードに遷移することが好ましい。
【0030】
上記の構成によれば、上記第2動作モードにおいては上記第3期間後に上記第2期間が含まれ、当該両期間を対の状態で監視することにより、外乱光ノイズレベルが低周波ドリフトのみならず突発的に増大するような場合でも、直前の判定結果を保持して上記第1動作モードに戻り、上記第3期間に適したタイミングを再サーチすることが可能となり、誤動作をより効果的に防止できる。
【0031】
また、上記の構成のように、物体無しから有り、物体有りから無しへの各判定条件を非対称な構成にすることで、外乱光は受光信号として負の値にはなり得ないことを利用してアルゴリズム上のヒステリシスを設け、より効果的に誤動作を防止することが可能になる。
【0032】
また、オフセット抑圧完了後の状態が許容精度を維持できる時間は有限であるが、上記の構成によれば、動作モードによらず上記第1期間から上記第2期間あるいは上記第3期間までの時間間隔に対して上限値を設定することができる。従って、上記第1動作モードと上記第2動作モードとを一定の周期で繰り返しながら複雑な外乱光ノイズレベルの変化に対応して正常な動作を継続することが可能になる。
【0033】
本発明に係る光変調型検出装置は、上記物体の有無の判定結果を外部に出力する外部出力部をさらに備え、上記動作モードは、上記光変調型検出装置の起動に伴い、上記検出部において処理内容を検出無しにリセットするとともに、当該リセットを受けて上記判定部が上記物体無しの判定を行い、当該判定結果を上記外部出力部が外部に出力する起動モードをさらに含むことが好ましい。
【0034】
上記の構成によれば、上記光変調型検出装置の起動に伴い、上記検出部において処理内容を検出無しにリセットすることで、各部が所望の動作をしないことを防ぎ、また、上記外部出力部が上記物体無しの判定結果を外部に出力することで、その後状態の変化に合わせて判定結果を変更して外部に出力することになるため、外部から見た検出装置としての応答がより自然かつ妥当なものになる。
【0035】
本発明に係る光変調型検出装置は、上記動作モードは、上記物体有りと判定された後、上記第1周期が終了するまでの間に、上記発光素子の駆動に用いられる第1パルス信号と、上記パルス信号変換部におけるオフセット抑圧のゲート信号としての第2パルス信号と、上記検出部における上記第2期間のゲート信号としての第3パルス信号と、上記検出部における処理内容をリセットするためのリセット信号としての第4パルス信号との供給を中断する中断モードを含むことが好ましい。
【0036】
上記の構成によれば、不要な動作を省いて上記光変調型検出装置の時間平均消費電流をさらに低減できる。
【0037】
本発明に係る光変調型検出装置は、上記中断モードは、上記各パルス信号の供給の中断とともに、上記発光素子を駆動する発光素子駆動部及び上記パルス信号変換部の少なくとも一部分への電力供給を停止して間欠的にシャットダウンすることにより行うことが好ましい。
【0038】
上記の構成によれば、不要な動作を省いて上記光変調型検出装置の時間平均消費電流をさらに低減できる。
【0039】
本発明に係る光変調型検出装置は、上記第1周期は、商用電源の半周期以上であることが好ましい。
【0040】
上記の構成によれば、上記第1周期を商用電源の半周期以上としてインバータ蛍光灯の光強度包絡線が有するうねりの周期と同程度もしくはより長く設定し、その間少なくとも上記第1動作モードによって上記第1期間と上記第2期間とを行う(継続的に繰り返す)ことにより、インバータ蛍光灯の影響を受けず高感度で上記第3期間を行える期間を確実にサーチすることができる。
【0041】
本発明に係る光変調型検出装置は、上記第1周期は変更可能であることが好ましい。
【0042】
上記の構成によれば、上記第1周期を長く設定すれば、物体有無の判定を更新する頻度が落ちるのと引き換えに、不要な発光を防止し、不要な消費電流をシャットダウンしている期間の割合を増大させ、上記光変調型検出装置の時間平均消費電流を更に劇的に低減することができる。また、上記第1周期を長くも短くも設定可能とすることによって、検出装置としての応答時間をユーザの所望の値に調整することができ有用である。またこれらの効果は、回路規模や検出装置の感度や外乱光耐性に影響を与えることなく得られる。
【0043】
本発明に係る光変調型検出装置は、上記物体有りと判定された後で上記第1動作モードに遷移した場合は、上記第1期間を経て上記第2期間に検出された検出結果には依存せずに上記第2動作モードへ遷移することが好ましい。
【0044】
上記の構成によれば、一旦物体有りと判定した状態において、外乱光等による受光信号が異常に増大するという特異な状況下であっても、上記第2動作モードに遷移できなくなる事態を確実に回避できる。
【0045】
本発明に係る光変調型検出装置は、上記パルス信号変換部は、ヒステリシスを備えており、上記物体有りと判定された場合は、上記物体無しと判定された場合と比較して上記ヒステリシスの値をより小さい値に設定することが好ましい。
【0046】
上記の構成によれば、上記パルス信号変換部が本来備えているパルス幅程度の時間で動作する通常のヒステリシスに、更に比較的長い時間スケールで検知状態に依存したアルゴリズム上のヒステリシスを加えることができる。従って、回路規模や消費電流の大幅な増大を招くことなく、更なる誤動作の防止を図ることができる。
【0047】
本発明に係る光変調型検出装置は、上記第1動作モードでの、上記検出部における上記第2期間のゲート信号としての第3パルス信号のパルス幅である第1パルス幅と、上記第2動作モードでの、上記第3パルス信号のパルス幅である第2パルス幅とは、それぞれ等しいことが好ましい。
【0048】
上記の構成によれば、特定の周波数成分を含む外乱光に対して同等なゲート信号として働く。すなわち、上記パルス信号変換部の周波数応答特性に何らかの不都合が生じた場合であっても、動作モードによらず常に同じ様に第2期間結果が得られる。従って、動作モードや動作モード遷移の判定条件によって、上記第2期間の感度や応答が異なって所望の検出動作を実現できない、という事態を回避することが出来る。
【0049】
本発明に係る光変調型検出装置は、上記第1、第2パルス幅は、それぞれ上記光変調型検出装置の使用が想定される環境下において主要な外乱光成分が有する周波数成分の最大ピークを与える周波数に対して、その逆数よりも長く設定されることが好ましい。
【0050】
上記の構成によれば、検出装置の動作とは全く無関係である外乱光ノイズの周波数成分に対して、より効率よく非同期受信を行うことができる。
【0051】
本発明に係る光変調型検出装置は、上記動作モードは、上記光変調型検出装置を構成するすべての構成への電力供給を停止する定常的シャットダウンモードをさらに有し、上記定常的シャットダウンモード以外の上記各モード及び上記各期間から上記定常的シャットダウンモードへの遷移は、上記発光素子の駆動に用いられる第1パルス信号と、上記パルス信号変換部におけるオフセット抑圧のゲート信号としての第2パルス信号と、上記検出部における上記第2期間のゲート信号としての第3パルス信号と、上記検出部における処理内容をリセットするためのリセット信号としての第4パルス信号との供給が行われていない状態で、かつ、上記パルス信号変換部の上記受光信号経路を遮断している状態で行われることが好ましい。
【0052】
上記の構成によれば、上記第1期間中、上記第1期間への遷移中、上記定常的シャットダウンモード以外の上記各動作モードや上記各期間の遷移中に、上記光変調型検出装置の動作とは全く無関係に外部からシャットダウンされて電源からグランドへの貫通電流パスが発生する事態を確実に防止することができる。
【0053】
本発明に係る光変調型検出装置は、上記外部出力部は、上記物体の有無の判定結果を保存するレジスタと、上記レジスタの値をバッファする第1出力部と、上記判定結果が変更された場合にのみ外部にリーディングエッジを発生するとともに、当該リーディングエッジ発生後外部からその処理内容がリセットされ、当該リセットを受けてトレーリングエッジを発生する第2の出力部とを有し、上記光変調型検出装置は、上記レジスタの値を保持させたまま上記第1動作モードに遷移することが好ましい。
【0054】
上記の構成によれば、上記光変調型検出装置をいわゆるレベルセンス型のインタラプトモードの出力とすることができる。特に、上記第1周期での判定結果更新がシステム側にとっては速すぎてチャタリングのように見える場合に、上記インタラプトモードを用いてシステム側からの読出し周期を長くして応答動作の最適化を図ることができる。これはまたシステム全体の低消費電力化にも有効である。
【0055】
本発明に係る光変調型検出装置は、上記発光素子以外の構成がモノリシックに集積された集積回路を具備することが好ましい。
【0056】
上記の構成によれば、検出感度や検出装置としての応答を損なうことなく消費電力の低減を図り、それでいて回路規模を増大させずに装置の小型化を図り、占有面積を節約してコストを抑制することができる。
【0057】
本発明に係る電子機器は、上記課題を解決するために、上記光変調型検出装置を搭載していることを特徴としている。
【0058】
上記の構成によれば、本発明に係る電子機器は、検出感度や検出装置としての応答を損なうことなく消費電力の低減を図り、それでいて回路規模を増大させずに装置の小型化を図る上記光変調型検出装置を搭載しているために、上記光変調型検出装置を複数個搭載する場合であっても低コストで構築できる。また、仕様の異なる複数の物体検知センサの機能を集積化したり、他のセンサ機能(例えば照度センサやRGBセンサなど)と集積化し、1つの検出装置としてモジュール化しポータブル機器に搭載することが実現可能になる。
【発明の効果】
【0059】
本発明に係る光変調型検出装置は、発光素子からパルス光を放射し、検出すべき物体にて反射もしくは透過した上記パルス光を受光する受光素子から出力された受光信号に基づいて、上記物体の有無を検出する光変調型検出装置であって、上記受光信号をパルス信号に変換するとともに、受光信号経路を遮断して自身のオフセットを抑圧するパルス信号変換部と、上記パルス信号を用いて、上記パルス光が放射されていない期間に上記受光信号が存在する第1状態であるか否かを検出するとともに、上記パルス光が放射されている期間と同時に上記受光信号が存在する第2状態であるか否かを検出する検出部とを備え、上記パルス信号変換部の上記受光信号経路を遮断して上記パルス信号変換部のオフセットを抑圧し、当該第1期間の終了時点で上記オフセットが抑圧された状態を保持するとともに上記パルス信号変換部の上記受光信号経路を再接続する第1期間と、当該第1期間後において、上記第1状態であるか否かを検出する第2期間とを含む第1動作モードと、上記第1状態でないことを検出した上記第1動作モード後において、上記第2状態であるか否かを検出する第3期間を少なくとも含む第2動作モードとの動作モードを有することを特徴としている。
【0060】
上述のように、小型の検出装置を実現するために、微細CMOSプロセスを採用してアナログデジタル混載の高集積化を図る際、素子ばらつきによって集積回路内に生じるオフセット電圧が検出装置の感度を大きく劣化させる。しかしながら、上記オフセット電圧をキャンセルする構成は、概して定常的(常時接続)で大きな位相補償容量が必要であり、回路規模が大きくなりがちである。
【0061】
これに対し、本発明に係る光変調型検出装置では、パルス信号変換部において受光信号の増幅経路を遮断して、いかなる外乱光環境下であっても常に回路自身のオフセットキャンセルを正常に行うことができる。また、信号経路の遮断点を低インピーダンスでバイアスしオフセットキャンセル期間が終了し回路接続を通常の信号増幅経路に再接続した際に、過剰な過渡電圧を発生せず安定して信号増幅を行うことが可能となる.
このような構成とすることで、大きな位相補償容量が必要となる定常的なオフセットキャンセル構成を採用することなくパルス信号変換部のオフセットを継続的に抑圧しつつ、外乱光の影響がない状態をサーチして発光素子を駆動して、高感度な状態で物体の有無の検出を行うことが可能になる。従って、回路規模やバイアス電流の増大を招くことなく、検出装置の高感度化と誤動作の防止を図ることができる。
【0062】
以上により、検出感度や検出装置としての応答を損なうことなく消費電力の低減を図り、それでいて回路規模を増大させずに装置の小型化を図る光変調型検出装置を提供することができるという効果を奏する。
【0063】
また、本発明に係る電子機器は、上記光変調型検出装置を搭載していることを特徴としている。
【0064】
上記の構成によれば、本発明に係る電子機器は、検出感度や検出装置としての応答を損なうことなく消費電力の低減を図り、それでいて回路規模を増大させずに装置の小型化を図る上記光変調型検出装置を搭載しているために、上記光変調型検出装置を複数個搭載する場合であっても低コストで構築できる。また、仕様の異なる複数の物体検知センサの機能を集積化したり、他のセンサ機能(例えば照度センサやRGBセンサなど)と集積化し、1つの検出装置としてモジュール化しポータブル機器に搭載することが実現可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
本発明の実施形態について図1〜図9を用いて説明すると以下の通りである。
【0066】
図1は、本実施形態に係る光変調型検出装置150の主要な動作モードの内容を示す図であるとともに(図中の上段)、その動作モードの動作を示す各信号のタイミングチャート(図中の下段)であり、図1(a)はノイズ検知モード(第1動作モード)M1を示しており、図1(b)は物体検知モード(第2動作モード)M2を示している。また、図2は、光変調型検出装置150の要部構成を示すブロック図である。まずは、図2を参照して、光変調型検出装置150の要部構成について説明する。
【0067】
(光変調型検出装置の要部構成)
光変調型検出装置150は、光を用いて物体の有無を検出する物体検出装置であって、図2に示すように、発光素子100、受光素子103、クロック信号生成部106、パルス信号生成部108、発光素子駆動部109、パルス信号再成部(パルス信号変換部)112、ラッチ部(検出部)114,116、判定部118、および外部出力部119を備えている。
【0068】
発光素子100は、後述するパルス信号(第1パルス信号)107に基づき発光素子100を駆動する発光素子駆動部109の駆動によって検出すべき物体(図示せず、反射物とも記載)が通過する領域にパルス光101を出射する。なお、後述するクロック信号105の周波数を例えば125kHzとすれば、1クロックサイクルで生成したパルス光101のパルス幅は8usとなる。
【0069】
受光素子103は、発光素子100から出射され、検出すべき物体にて反射した反射光(用途によっては検出すべき物体を透過した透過光)102を受光して、電気信号(受光電流,受光信号104)に変換する。受光素子103は、本実施形態ではフォトダイオードによって構成している。なお、受光信号104は、反射光102以外の外乱ノイズ光などによっても発生する。
【0070】
クロック信号生成部106は、クロック信号105を生成して、生成したクロック信号105をパルス信号生成部108および判定部118に供給する。クロック信号105の周波数は、パルス信号再生部112のS/Nと、検出装置としての応答時間を鑑みて適宜選定すればよい。また、クロック信号生成部106に代えて、外部から入力したクロック信号をバッファして各部へ分配する構成としても良い。
【0071】
パルス信号生成部108は、クロック信号生成部106から供給されたクロック信号105に基づき、パルス信号107,110(第3パルス信号),117(第4パルス信号),121(第2パルス信号)を生成する。そして、パルス信号107を後述するNAND回路114a、判定部118、および発光素子駆動部109に、パルス信号110を後述するNAND回路116aに、パルス信号117を後述するRSフリップフロップ114b,116bに、パルス信号121をパルス信号再成部112に、それぞれに供給する。なお、パルス信号107〜パルス信号121は、同時に活性化されることはない。
【0072】
また、パルス信号生成部108は、ノイズ検知モードM1および物体検知モードM2の期間を定める第1周期T1を計数する。それゆえ、パルス信号生成部108は、クロック信号105に基づきカウンタ動作を行う最多ビット数のカウンタを用いて構成すると良い。パルス信号107,110,117,121を上記カウンタの下位ビットで生成し、上位ビットまで含めた最長周期をカウントする構成とすれば簡単に構成できる。
【0073】
パルス信号再成部112は、受光素子103から出力された受光信号104を論理レベルの電圧パルス信号である再生パルス信号(パルス信号)111に再生(変換)する。また、パルス信号再成部112は、自身の回路内に生じるオフセット電圧を抑圧するオフセットキャンセルを行う。詳細については後述する。
【0074】
ラッチ部114は、NAND回路114aおよび負論理入力のRSフリップフロップ(RS−FF)114bからなり、同様にラッチ部116は、NAND回路116aおよび負論理入力のRSフリップフロップ116bからなる。
【0075】
NAND回路114a,116aは、パルス信号再成部112から出力された再生パルス信号111がそれぞれ入力されるとともに、NAND回路114aには同期ゲート信号としてのパルス信号107が、NAND回路116aには非同期ゲート信号としてのパルス信号110がそれぞれ入力される。そして、これら入力された信号の論理積を取る。これによって、パルス光101が放射されている期間と同時に受光信号104が存在する期間があるか否か(同期受信の有無、NAND回路114a、第2状態であるか否か)、及び、パルス光101が放射されていない期間に受光信号104が存在するか否か(非同期受信の有無、NAND回路116a、第1状態であるか否か)が抽出される。具体的には、再生パルス信号111とパルス信号107とが同じタイミングで存在した場合、「同期受信有り」と判断し、再生パルス信号111とパルス信号110とが同じタイミングで存在した場合、「非同期受信有り」と判断する。
【0076】
RSフリップフロップ114b,116bは、リセット信号としてのパルス信号117がそれぞれ入力されるとともに、RSフリップフロップ114bにはNAND回路114aの出力信号が、RSフリップフロップ116bにはNAND回路116aの出力信号がそれぞれ入力される。RSフリップフロップ114bは、パルス信号117によってリセットされるまでNAND回路114aの出力信号(抽出結果)を保持して、同期受信が有ったことを示す同期受信出力信号113を判定部118に入力する。RSフリップフロップ116bは、パルス信号117によってリセットされるまでNAND回路116aの出力信号(抽出結果)を保持して、非同期受信が有ったことを示す非同期受信出力信号115を判定部118に入力する。
【0077】
判定部118は、ラッチ部114,116からそれぞれ出力された同期受信出力信号113,非同期受信出力信号115によって、ノイズ検知モードM1および物体検知モードM2間の遷移を選択する。また、物体検知モードM2の最後において、同期受信出力信号113がある一定期間内に存在したか否かにより、検出すべき物体の有無を判定する。そして、この判定結果を外部出力部119に出力する。
【0078】
外部出力部119は、判定部118により出力された判定結果を出力信号120として外部に出力する。外部出力部119は、上記判定結果(デジタル値)を単純にバッファ出力しても良いが、上記判定結果をレジスタに保持/更新するとともに外部からの読み出しに対してレジスタの値をバッファ出力するよう構成しても良い。
【0079】
(パルス信号再生部の構成・動作)
次に、図3を参照して、パルス信号再生部112の要部構成およびその動作について説明する。図3(a)はパルス信号再生部112の要部構成を示す図であり、図3(b)はパルス信号121の構成を示す図である。
【0080】
まず、パルス信号再生部112の構成について説明する。パルス信号再生部112には、図3(a)に示すように、電流電圧変換部300、差動入出力の主増幅器302、およびヒステリシス制御回路306を備えた差動入力の比較部303の3つの主要な回路ブロックが信号経路に存在し、それぞれ第1容量対304及び第2容量対305によりAC結合されている。
【0081】
電流電圧変換部300は、受光素子103に接続され、受光素子103から出力された受光信号104を電流電圧変換する電流電圧変換回路300aと、入力インピーダンスを揃えて安定に主増幅器302にて差動増幅を行うためのダミー電流電圧変換回路300bとを備えている。参照符号Rfを付した抵抗は、帰還抵抗である。
【0082】
第1容量対304はコンデンサC2,C3を備えており、第2容量対305はコンデンサC4,C5を備えている。主増幅器302は、電流電圧変換回路300aにて変換された電圧信号を第1容量対304を介して差動増幅する。
【0083】
第1オフセットキャンセルループ307および第2オフセットキャンセルループ308は、パルス信号再生部112のオフセット電圧を抑圧するものであって、第1オフセットキャンセルループ307は、トランスミッションゲートT5〜T7、差動入力のエラーアンプ311、コンデンサC6、およびオペアンプ312を備えている。第2オフセットキャンセルループ308は、トランスミッションゲートT8〜T10、オペアンプ313、およびコンデンサC7を有している。
【0084】
比較部303は、主増幅器302にて差動増幅された電圧信号を再生パルス信号111に変換するものであって、ヒステリシス制御回路306、トランスミッションゲートT10〜T12、オペアンプ313、コンデンサC7,C8、およびインバータ314,315(トランスミッションゲートT10、オペアンプ313、およびコンデンサC7については第2オフセットキャンセルループ308と共用)を有している。
【0085】
トランスミッションゲートT1〜T12の制御端子には、パルス信号121が入力される。トランスミッションゲートT1〜T12は、H(ハイ、ON)レベルの信号が入力されることで導通するように構成されている。2つの電源V1及びV2は、本実施形態ではそれぞれ異なる電位であるが、同電位で良い場合もある。
【0086】
上記の各回路ブロックに対しては種々の変形が可能である.電流電圧変換部300及びダミー電流電圧変換部301の出力は,例えばソースフォロアなどのバッファ出力段を備えても良い.また,オフセットキャンセル期間中,電源V1からT1及びT2を介して容量対304をバイアスする際,T1及びT2から直接電位を与えるのではなく,インピーダンス変換を兼ねて任意のレベルシフト回路を電源V1とT1及びT2の間に設けてスルーレートを改善しても良い.また,図3のオフセットキャンセルループ307はシングルエンド出力でVcを制御しているが,当該ループを差動入出力構成とし,V1及びVcの両方を可変して別の参照電圧に向けて制御しても良い.その他,図3における比較器303のヒステリシス制御回路306は,ヒステリシス電流をオペアンプ313の出力ノードに直接流し込んだり引き抜いたりしているが,オペアンプ313の入力トランジスタペアにソース抵抗を付加し,当該抵抗の電圧降下を制御してヒステリシスをつけるなど種々の変形が可能であり,また比較器以外の前段回路においてもヒステリシスを得ることが可能である.
いずれにせよ,図3に示した本発明のパルス信号再生部112においては,T3及びT4によって容量対304以降の受光信号104の増幅経路を遮断することが可能である.これによって,いかなる外乱光環境下であっても常に回路自身のオフセットキャンセルを正常に行うことができる.また,オフセットキャンセル中に容量対304の後段側ノード(信号経路の遮断点)を低インピーダンスでバイアスすることにより,電流電圧変換回路300あるいはダミー電流電圧変換回路301が発生する外乱光や外乱電磁ノイズ等に起因する出力を容量対304の前段側で受けることにより,オフセットキャンセル期間が終了し回路接続を通常の信号増幅経路に再接続した際,過剰な過渡電圧を発生せず安定して信号増幅を行うことが可能である.
次に、パルス信号再生部112の動作について説明する。光変調型検出装置150は、詳細は後述するが、その主要な動作モードであるノイズ検知モードM1および反射物検知モードM2の少なくとも一つに、パルス信号再生部112のオフセットを抑圧するオフセットキャンセル期間OCを有している。
【0087】
パルス信号再生部112は、オフセットキャンセル期間OCにおいては、図3(b)に示すような、パルス信号121a(別途「φA」と記載)と、当該パルス信号121aの逆極性信号でありその両エッジの内側に自身の両エッジが存在するパルス信号121b(別途「φB」と記載)との2系統からなるパルス信号121が入力され、オフセットキャンセル期間OC以外の期間においては、Hレベルの1系統のパルス信号121が入力される。
【0088】
オフセットキャンセル期間OC以外の期間においては、パルス信号再生部112は、受光素子103から出力された受光信号104を電流電圧変換回路300aにて電圧に変換するとともに、この電圧信号を主増幅器302にて差動増幅した後、差動入力の比較部303にて論理レベルの再生パルス信号111に変換する。
【0089】
一方、オフセットキャンセル期間OCにおいて、パルス信号121のパルス信号121a,121bは、具体的には、図3(a)において「φA」および「φB」にて示すように入力する。このようにパルス信号121を入力することで、ディスオーバラップさせてチャージインジェクションの影響を低減することができる。なお、図3(a)において「−(バー)φA」および「−(バー)φB」と記載されているものは、それぞれ「φA」および「φB」の逆極性信号、つまりはパルス信号121a,121bの逆極性信号である。
【0090】
以上のようにパルス信号121を入力することで、各トランスミッションゲートによりパルス信号再生部112内の信号経路が各々切離され、第1容量対304から主増幅器302の出力までの第1オフセットキャンセルループ307と、第2容量対305から比較器303のアナログ出力ノード310までの第2オフセットキャンセルループ308とが形成される。第1オフセットキャンセルループ307ではエラーアンプ311がループを駆動しコンデンサC6にキャンセル結果が保存されるのに対し、第2オフセットキャンセルループ308ではオペアンプ313自身がバッファの形態でコンデンサC7(位相補償容量)とともに接続されキャンセル結果は第2容量対305に保存される。尚、ヒステリシス制御回路306は、オフセットキャンセル期間中はそのヒステリシス電流出力を停止し、完全なオペアンプバッファとして動作させる。また、再生パルス信号111を出力するデジタル出力部も、オフセットキャンセル期間中は受光信号無入力の状態にリセットされる。
【0091】
以上のようにして、パルス信号121がアクティブな間に、受光信号経路が遮断され、オフセットキャンセルループが閉じられる(φA:ON→OFF、φB:OFF→ON)。そして回路の固有オフセットが各ループゲインによって抑圧され、キャンセル結果が容量に保存される(φB:ON→OFF)。その後受光信号経路が再接続されて受光信号を増幅する形態(オフセットキャンセル期間OC以外の期間)に戻る(φA:OFF→:ON)。
【0092】
(光変調型検出装置の動作)
次に、図1および図4を参照して光変調型検出装置150の動作について説明する。図4は、光変調型検出装置150の主要な動作を示しており、その上段は縦軸に強度を、横軸に時間をとって時間変化に対する外乱光ノイズレベル(包絡線のみを図示)を示す図であり、その下段は上記動作を示す各信号のタイミングチャートである。なお、同図の上段における参照符号701を付した破線は、光変調型検出装置150の感度限界レベルを示している。
【0093】
光変調型検出装置150は、動作モードとして、起動モードM0、ノイズ検知モードM1、反射物検知モードM2、中断モードM3、および定常的シャットダウンモードM4を有している。
【0094】
まず、起動モードM0においては(図4の参照番号702の期間)、光変調型検出装置150の電源投入あるいはシャットダウン状態から起動されると、クロック信号生成部106が動作を開始してクロック信号105を生成し、このクロック信号105に基づきパルス信号生成部108が動作を開始して、パルス信号117をRSフリップフロップ114b,116bに供給する。これにより、ラッチ部114,116がリセットされ、ラッチ出力不定となって制御系が所望の動作をしないことを防ぐ。また、このラッチ部114,116のリセットを受けて判定部118により出力された、物体無しの判定結果を外部出力部119が外部に出力する。以上の動作により起動モードM0が終了してノイズ検知モードM1に遷移する。
【0095】
以上のような外部出力部119の外部出力の初期値設定は、光変調型検出装置150が近接センサとして用いられる場合に特に重要な項目である。すなわち、光変調型検出装置150を搭載するシステムが、光変調型検出装置150の電源投入あるいはシャットダウン状態から起動された際に期待する外部出力は、常に「非近接」である。たとえ実際には反射物に近接した状態で起動したとしても、まず「非近接」を出力した状態からセンサ動作に従って「近接」へと外部出力を更新することで、外部から見たセンサの応答がより自然かつ妥当なものとなる。
【0096】
ここで、ノイズ検知モードM1について説明する。ノイズ検知モードM1は、図1(a)に示すように、上述したパルス信号再生部112のオフセットを抑圧するオフセットキャンセル期間OCと、当該オフセットキャンセル期間OC後において上記非同期受信の有無を検出する非同期受信期間AGとを32クロックサイクル周期内に各1回行ってそれを繰り返し、オフセットキャンセルが有効になった直後の高感度の状態で外乱光ノイズレベルを監視する。
【0097】
非同期受信期間AGは、上述したように、パルス信号110をラッチ部116に入力して行う。
【0098】
オフセットキャンセル期間OCは、上述したようなパルス信号121によるパルス信号再生部112でのオフセットキャンセルが終了した後、通常動作状態に戻る際に発生する過渡電圧が収束するまでの期間(以下「期間Toc」と称する)を含めた一連の動作に相当する。オフセットキャンセル期間OCの長さは、上記過渡電圧の収束時間が律則しパルス信号再生部112全体の過渡応答特性で決まるものである。従って、パルス信号121から次の制御パルス信号までの時間間隔(以下「期間Toc」と称する)は、この過渡応答特性を考慮した待ち時間とする。図1(a)の例では、パルス信号121の長さToは9クロックサイクルであり、第1オフセットキャンセルループ307及び第2オフセットキャンセルループ308が閉状態での時定数に対し、少なくとも3倍以上長い期間を設定するのが望ましい。一方、パルス信号121のトレーリングエッジからパルス信号110のリーディングエッジまでの間隔、つまりは期間Tocである、期間Toc−agは14クロックサイクルで、安全を期してToよりも長く設定されている。
【0099】
話は戻って、ノイズ検知モードM1においては(図4の参照番号703の期間)、このノイズ検知モードM1への遷移とともにパルス信号生成部108が第1周期T1の計数を開始する。それとともに、パルス信号生成部108は、パルス信号121をパルス信号再生部112に出力してオフセットキャンセルを行わせ、その後上記期間Tocagを挟んでパルス信号110をラッチ部116に出力して非同期受信確認を行わせる。次いで、パルス信号生成部108は、再びパルス信号117をRSフリップフロップ114b,116bに供給して、ラッチ部114,116をリセットする。
【0100】
第1周期T1内の以上の動作において、参照番号703の期間の最後(より正確には、同期間内のパルス信号117直前のクロック立ち上がりエッジ)において判定部118にて非同期受信無しの状態が確認できれば物体検知モードM2に遷移し、確認できなければ外部出力部119の出力を保持して再びノイズ検知モードM1を繰り返す。
【0101】
図4の例で説明すると、外乱光ノイズレベル700が光変調型検出装置150の感度限界レベル(最小感度)701を上回っている間、パルス信号再生部112の再生パルス信号111は、オフセットキャンセル期間OC中はLレベルに強制リセットされ、それ以外の期間は外乱光を拾ってHレベル・Lレベル遷移を繰り返している。それゆえ、オフセットキャンセルOCと非同期受信期間AGとが交互に繰り返される。その後、外乱光ノイズレベル700が感度限界レベル701以下まで低下すると、再生パルス信号111がLレベルとなって、非同期受信無しの状態が確認できるため、物体検知モードM2に遷移する。
【0102】
ここで、第1周期T1について説明する。例えばクロック信号105のクロック周波数が125kHzである場合、第1周期T1を1024クロックサイクルの約8.2msに設定するのは妥当な選択である。その理由を以下に説明する。近接センサとしての応答は、人体の動きに追随できればよいので、100ms前後の時間スケールで出力を更新すれば十分である。従って、光変調型検出装置150の内部動作を10ms程度の周期で行うのは、消費電力低減の観点からも必要十分な動作周波数と言える。さらに重要な理由は、外乱光ノイズの主要因であるインバータ蛍光灯の発光強度の時間変動への対応である。インバータ蛍光灯は通常、商用電源を直接整流した上で40kHz乃至60kHz程度の周波数でインバータ駆動される。その結果、インバータ蛍光灯から放射される光強度の包絡線には、商用電源周波数50Hzまたは60Hzの2倍、すなわち100Hzまたは120Hzの周期で振幅が0近傍にまで落ちるような深いうねりが重畳している。
【0103】
そこで、本実施形態では、第1周期T1を商用電源の半周期以上の値に設定し、ノイズ検知モードM1においてオフセットキャンセル期間OCと非同期受信期間AGとを繰り返し行うことによって、インバータ蛍光灯の影響を受けず高感度で同期検知が可能となる期間を確実にサーチすることを可能にする。そのために、ノイズ検知モードM1において非同期受信無しの状態が確認できれば反射物検知モードM2に遷移し、確認できなければ外部出力部119の出力を保持して再びノイズ検知モードM1を繰り返す。
【0104】
また、第1周期T1は、可変可能である。第1周期T1を長く設定すれば、物体有無の判定を更新する頻度が落ちるのと引き換えに、不要な発光を防止し、不要な消費電流をシャットダウンしている期間の割合を増大させ、光変調型検出装置150の時間平均消費電流を更に劇的に低減することができる。また、第1周期T1を長くも短くも設定可能とすることによって、検出装置としての応答時間をユーザの所望の値に調整することができ有用である。またこれらの効果は、回路規模や検出装置の感度や外乱光耐性に影響を与えることなく得られる。
【0105】
次に、引き続き第1周期T1において反射物検知モードM2に遷移する。まず、反射物検知モードM2について説明する。
【0106】
反射物検知モードM2は、図1(b)に示すように、上記同期受信の有無を検出する同期受信期間SGを14クロックサイクル周期で繰り返し、ノイズ検知モードM1でオフセットキャンセルが有効となった直後の高感度の状態で外乱光ノイズのレベルが感度限界以下に低下したことを受けて、反射物の有無を監視する。
【0107】
反射物検知モードM2においては(図4の参照番号704の期間)、パルス信号生成部108は、パルス信号107を発光素子駆動部109に出力して発光素子100を駆動させてパルス光101を出射させるとともに、パルス信号107をラッチ部114に出力して同期受信確認を行わせる。次いで、パルス信号生成部108は、再びパルス信号117をRSフリップフロップ114b,116bに供給して、ラッチ部114,116をリセットする。
【0108】
以上の動作において、引き続く第1周期T1内に、判定部118にて同期受信有りの状態が少なくとも同期受信出力信号113としてn回連続して(nは自然数)確認できれば反射物有り、確認できなければ反射物無しと判定する。図4の例では、上記n=1での場合を示しており、1回目の参照番号704の期間の最後(より正確には、同期間内のパルス信号117直前のクロック立ち上がりエッジ)で同期受信有りと判定され、外部出力部119の出力信号120が更新(反射物無し(H)から有り(L)へ変化)されている。
【0109】
また、図7には示していないが、起動モードM0からノイズ検知ードM1へ遷移して第1周期T1(1024クロックサイクル)の最後に、再びパルス信号117がパルス信号生成部108からRSフリップフロップ114b,116bに出力されてラッチ部114,116がリセットされ、第1周期T1の終了とともにノイズ検知ードM1に遷移して、上述した一連の動作を繰り返す。
【0110】
また、物体検知ードM2において反射物有りと判定された後、第1周期T1が終了するまでの間に中断モードM3が適用される。図4の例のように、反射物有りと早々に判定されれば、第1周期T1が終了するまで余裕がある。中断モードM3は、この第1周期T1が終了するまでの間に発光素子100の駆動などを中断して不要な動作を省いて光変調型検出装置150の時間平均消費電流をさらに低減する。詳細は後述する。
【0111】
また、物体検知ードM2において反射物有りと判定された後、ノイズ検知モードM1に遷移した場合は、オフセットキャンセル期間OCを経て非同期受信期間AGに検出された検出結果には依存せずに物体検知モードM2へ遷移する。この場合、一旦物体有りと判定した状態において、外乱光等による受光信号が異常に増大するという特異な状況下であっても、物体検知モードM2に遷移できなくなり、発光素子100を駆動する機会もなくなる、というフリーズ状態に陥ることを回避できる。
【0112】
また、パルス信号再生部112は、物体検知ードM2において反射物有りと判定された場合、反射物無しと判定された場合と比較してヒステリシス制御回路306で設定するヒステリシスの値をより小さい値に設定する。これにより、比較部303が本来備えているパルス幅程度の時間で動作する通常のヒステリシスに、更に比較的長い時間スケールで検知状態に依存したアルゴリズム上のヒステリシスを加えることができる。従って、回路規模や消費電流の大幅な増大を招くことなく、更なる誤動作の防止を図ることができる。
【0113】
また、光変調型検出装置150は、定常的シャットダウンモードM4を行う。定常的シャットダウンモードM4は、光変調型検出装置150を構成するすべての構成への電力供給を停止するものである。詳細は後述する。
【0114】
上述のように、小型の検出装置を実現するために、微細CMOSプロセスを採用してアナログデジタル混載の高集積化を図る際(パルス信号再生部112)、素子ばらつきによって集積回路内に生じるオフセット電圧が検出装置の感度を大きく劣化させる。しかしながら、上記オフセット電圧を抑圧する構成は、概して定常的(常時接続)で大きな位相補償容量が必要であり、回路規模が大きくなりがちである。
【0115】
そこで、光変調型検出装置150では、まず、オフセットキャンセル時のみ電力が供給される第1,第2オフセットキャンセル307,308にてオフセットキャンセルが行われ、その後このオフセットキャンセルが有効である状態で、非同期受信の有無、つまり外乱光ノイズの影響の有無が検出され、この外乱光ノイズの影響が無しと検出された後、同期受信の有無、つまり物体の有無が検出される。
【0116】
このような構成とすることで、大きな位相補償容量が必要となる定常的なオフセットキャンセル構成を採用することなくパルス信号再生部112のオフセットを継続的に抑圧しつつ、外乱光の影響がない状態をサーチして発光素子を駆動して、高感度な状態で物体の有無の検出を行うことが可能になる。従って、回路規模やバイアス電流の増大を招くことなく、検出装置の高感度化と誤動作の防止を図ることができる。以上により、光変調型検出装置150は、検出感度や検出装置としての応答を損なうことなく消費電力の低減を図り、それでいて回路規模を増大させずに装置の小型化を図ることができる。
【0117】
ここで、フルCMOSで構成した図3のような回路において、オフセットキャンセル完了時の状態を許容精度内で維持できる時間は、トランスミッションゲート及びアンプ入力部のゲートのリーク電流に依存し、リーク電流は環境温度の上昇につれて指数関数的に増大する。従って、図3のようなアナログ回路の設計に対して、図1のような機能設計を行う際は、機能面からの要求値とともに高温動作時等の物理的な限界値に対する余裕を鑑みる必要がある。ノイズ検知ードM1でオフセットキャンセルが完了し保持された状態が許容できる精度を維持する時間は有限であるが、上記のように各動作モードを構成することにより、オフセットキャンセル期間OC終了時点から非同期受信期間AGあるいは同期受信期間SG開始までの時間間隔に上限値を設定することができる。従って、ノイズ検知ードM1と物体検知モードM2とを一定の周期で繰り返しながら複雑な外乱光ノイズレベルの変化に対して正常な動作を継続することが可能になる。
【0118】
また、物体検知ードM2が同期受信期間SGしか含まない最も単純な構成の場合(オフセットキャンセル期間OCや非同期受信期間AGを含む構成が可能であり、それについては後述する)、外乱光ノイズレベルが変動する前に同期受信期間SGを多数繰り返すことによって、判定結果の信頼度を向上することができる。また、物体検知ードM2に遷移してから同期受信期間SGを経て外部出力部119の出力信号120の更新/保持の判定を行うまでの時間、あるいは同期受信期間SGを繰り返し行う際のトータル測定時間を短く出来る。これにより、後述する上記構成(図5〜図7)との比較で容易に分かるように、1回のオフセットキャンセル動作に対して最も多数回の同期測定を行うことが可能である。
【0119】
(動作モードの変更例)
次に、ノイズ検知モードM1および物体検知モードM2の変更例について、図5〜図7を用いて説明する。なお、基本的にノイズ検知モードM1および反射物検知モードM2と異なる点についてのみ説明する。また、図5〜図7においては、変更例のノイズ検知モードおよび反射物検知モードを組み合わせて記載しているが、図示した組み合わせに限定して動作が行われるわけではなく、適宜組み合わせは変更可能である。また、その変更内容もここで説明したものに限られるわけではなく、適宜ノイズ検知モード、反射物検知モード、オフセットキャンセル期間OCなどの各期間に適用可能である。
【0120】
(変更例1)
図5は、光変調型検出装置150の主要な動作モードの変更例の内容を示す図であるとともに(図中の上段)、その動作モードの動作を示す各信号のタイミングチャート(図中の下段)であり、図5(a)はノイズ検知モードM1を示しており、図1(b)は物体検知モードM2aを示している。
【0121】
図5(a)に示したノイズ検知モードM1は、上述したノイズ検知モードM1と同じである。つまり、オフセットキャンセル期間OCと非同期受信期間AGとを32クロックサイクル周期内に各1回行ってそれを繰り返し、オフセットキャンセルが有効になった直後の高感度の状態で外乱光ノイズレベルを監視する。
【0122】
一方、図5(b)に示した物体検知モードM2aは、物体検知モードM2にオフセットキャンセル期間OCを加えたものであり、オフセットキャンセル期間OCと同期受信期間SGとを32クロックサイクル周期内に各1回行ってそれを繰り返す。物体検知モードM2aでは、ノイズ検知モードM1における期間Toc−agと、反射物検知モードM2aにおける期間Toc−sgとを同条件に揃えることができる。なお、期間Toc−agおよび期間Toc−sgはともに、オフセットキャンセル終了後、通常動作状態に戻る際に発生する過渡電圧が収束するまでの期間である。
【0123】
この例のようにクロックサイクル数を完全に一致させる必要はないまでも、このように構成することによって、物体検知モードM2のようにオフセットキャンセル期間OCを含まない場合と比較して、より高感度な状態で物体の有無の検出を行うことが可能になる。
【0124】
なお、反射物検知モードM2aにおいては、32サイクル中の1サイクルのみ発光素子100を駆動する(当該期間内のデューティ約3%)。光変調型検出装置150において最大のピーク動作電流を消費するのは発光素子100の駆動電流であり、平均的な消費電力は上記デューティに直接依存する。しかしながら、後述するように、光変調型検出装置150における実効的な発光デューティは上記値よりも更に1桁以上小さい。すなわち、発光素子100の平均消費電流は、クロック信号供給部106やパルス信号再生部112全体の消費電力と同等以下のレベルまで抑えられる。
【0125】
(変更例2)
次に、図6は、光変調型検出装置150の主要な動作モードの変更例の内容を示す図であるとともに(図中の上段)、その動作モードの動作を示す各信号のタイミングチャート(図中の下段)であり、図6(a)はノイズ検知モードM1aを示しており、図6(b)は物体検知モードM2bを示している。
【0126】
図6(a)に示したノイズ検知モードM1aは、上述したノイズ検知モードM1と基本的には同じである。つまり、オフセットキャンセル期間OCと非同期受信期間AGとを32クロックサイクル周期内に各1回行ってそれを繰り返し、オフセットキャンセルが有効になった直後の高感度の状態で外乱光ノイズレベルを監視する。
【0127】
ただし、ノイズ検知モードM1aでは、パルス信号117に関してノイズ検知モードM1とは異なる点がある。それはすなわち、パルス信号117が、パルス信号110がアクティブとなる直前にも出力されて、ラッチ部116をリセットしている点である。正常動作時のラッチ出力としては何ら変化はないものの、この構成としたほうがより確実に誤動作を防止できる。例えばオフセットキャンセル動作によって急激な過渡応答がある場合に、RSフリップフロップ116bに不要なトリガパルスが入力されて非同期受信有りの検知状態にセットされてしまうことも有り得る。このように、パルス信号117は、パルス信号107及びパルス信号110と時間軸上で重ならない限り、任意の箇所に挿入して誤動作防止に役立てることができる。このことは、当然ながら、他の変更例にも適用可能である。
【0128】
一方、図6(b)に示した反射物検知モードM2bは、同期受信期間SGと非同期受信期間AGとを14クロックサイクルの周期内に各1回行ってそれを繰り返すものである。このように構成することで、以下のような状況に対処できるようになる。それはすなわち、ノイズ検知モードにおいて外乱光レベルが感度限界以下に低下したことが検知されて、反射物検知モードM2bに移行した直後に何らかの理由で外乱光が著しく強くなるような状況である。このような状況の場合、例えば、上記各1回の同期受信期間SGと非同期受信期間AGとをペアとして、それぞれ同期受信有りかつ非同期受信無しの対の状態が得られることを反射物有りの判定の根拠とすると良い。常に非同期受信を対となる同期受信の直後に監視することにより、当該同期受信が外乱光によるものではないことを確認できる。また、上記対の状態が複数回繰り返し連続して得られることを反射物有りの判定の根拠とすることによって、より強固な外乱光耐性が得られる。繰り返し回数については詳しく後述する。
【0129】
一方で、反射物検知モードM2bにおいて同期受信と非同期受信とを引き続き行う場合、その時間間隔Tsg−agに注意が必要である。図3に示したようにAC結合によってパルス信号再生部112を構成している場合、一旦受光信号104を受け取ると、当該受光信号104にはパルス幅よりも長いAC結合時定数を持つ負方向のサグが生じ得る。サグが回復しない内に次の受光信号104を受け取っても振幅が減じられ感度が低下することになる。従って、同期受信の直後に非同期受信を行うと、同期受信有りの後に非同期受信が有るにも拘わらず、誤って非同期受信無しと出力する可能性が高くなり検出装置としての誤動作につながる。
【0130】
そこで、第1,第2オフセットキャンセルループ307,308開状態におけるローパス周波数特性が、パルス信号再生部112における比較部303のコンデンサC8(帯域制限容量)を用いて1クロックサイクルのパルス光幅に対して最適化され、かつミッドバンド帯域幅が1桁となる周波数応答特性を有するパルス信号再生部112に対して、同期受信終了から非同期受信開始までの時間間隔Tsg−agが5クロックサイクル、また同じく非同期ゲート終了までの時間間隔は10クロックサイクルと十分長く設定すればよい。このような構成により、同期受信期間と同様の感度で非同期受信を行うことができる。
【0131】
以上のように構成することによって、特に物体検知モードM2のように非同期受信期間AGを含まない場合と比較して、より複雑な外乱光レベルの時間変化に対して影響を受けにくく、より誤動作なく、かつ劣悪な環境下でも高感度な状態で物体の有無の検出を行うことが可能になる。
【0132】
また、ノイズ検知モードM1,M1aにおける非同期受信期間AGのパルス信号110のパルス幅(第1パルス幅)tw21と、物体検知モードM2bにおける、アルゴリズム上のヒステリシスを加えるための非同期受信期間AGの信号110のパルス幅(第2パルス幅)tw22とは、必ずしも一致する必要はないが、一致するように構成してもよい。
【0133】
このように構成することによって、特定の周波数成分を含む外乱光に対して同等なゲート信号として働く。すなわち、パルス信号再生部112の周波数応答特性に何らかの不都合が生じた場合であっても、動作モードによらず常に同じ様に非同期受信結果が得られる。従って、動作モードや動作モード遷移の判定条件によって、非同期受信期間の感度や応答が異なって所望の検出動作を実現できない、という事態を回避することが出来る。
【0134】
また、パルス幅tw21,tw22は、それぞれ光変調型検出装置150の使用が想定される環境下において主要な外乱光成分が有する周波数成分の最大ピークを与える周波数に対して、その逆数よりも長く設定されることが好ましい。この構成によれば、光変調型検出装置150の動作とは全く無関係である外乱光ノイズの周波数成分に対して、より効率よく非同期受信を行うことができる。なお、以上のようなパルス幅tw21,tw22の構成については、以下に示す変更例3においても適用可能である。
【0135】
(変更例3)
次に、図7は、光変調型検出装置150の主要な動作モードの変更例の内容を示す図であるとともに(図中の上段)、その動作モードの動作を示す各信号のタイミングチャート(図中の下段)であり、図7(a)はノイズ検知モードM1を示しており、図7(b)は物体検知モードM2cを示している。
【0136】
図7(a)に示したノイズ検知モードM1は、上述したノイズ検知モードM1と同じである。つまり、オフセットキャンセル期間OCと非同期受信期間AGとを32クロックサイクル周期内に各1回行ってそれを繰り返し、オフセットキャンセルが有効になった直後の高感度の状態で外乱光ノイズレベルを監視する。
【0137】
一方、図7(b)に示した物体検知モードM2cは、オフセットキャンセル期間OC、非同期受信期間AG、および同期受信期間SGを32クロックサイクル周期内に各1回行ってそれを繰り返すものである。
【0138】
この構成とすることで、物体検知モードM2cに移行した後、何らかの理由により再び外乱光が強くなる場合にも、同期受信有りかつ非同期受信無しの対の状態が得られることを反射物有りの判定の根拠とすることで、より強固な外乱光耐性が得られると同時に、パルス信号再生部112のオフセットを継続的かつ安定して抑圧しつつ、外乱光の影響がない状態をサーチして発光素子を駆動し、より高感度な反射光測定を安定して継続できるので、最も高感度な反射物検知モードを実現し得る。
【0139】
先に述べたように、オフセットキャンセル結果を許容精度内に維持できる時間は有限である。図6で示した変更例2の場合、1度のオフセットキャンセル動作で、ノイズ検知モードM1aの最終サイクルにおける非同期受信期間AGと、物体検知モードM2bにおけるn対の同期受信期間SG/非同期受信期間AGをカバーする必要があり、nの値を際限なく大きくすることはできない。これに対し、図7で示した変更例3の場合、物体検知モードM2c中にも任意の箇所にオフセットキャンセル期間OCを設けられるので、図7に示した「オフセットキャンセル期間OC/同期受信期間SG/非同期受信期間AG」だけでなく「オフセットキャンセル期間OC/同期受信期間SG/オフセットキャンセル期間OC/非同期受信期間AG」のように構成することもできる。
【0140】
従って、対として観測する回数nの値には制限がなくなり、更なる高感度化及び安定性を求めることができる。ただし、同期受信期間SGと非同期受信期間AGとの間隔Tsg−agが大きくなりすぎると、対としての相関が薄まり誤動作防止の効果が低下する可能性がある。また、変更例1のところで説明したように、同期受信期間SGと非同期受信期間AGとの時間間隔は、ある程度以上は狭めることが出来ない。従って、図7(b)に例を示したように、オフセットキャンセル期間OCのセトリング余裕時間を犠牲にして同期受信期間SGを早めに行うか物体検知モードM2cに要するクロックサイクルをこれまでに説明した他の例よりも多く取ることが必要になる。
【0141】
(動作モードの変更例に基づく光変調型検出装置の動作)
次に、上述のような動作モードの変更例における光変調型検出装置150の動作について、図6で示した変更例2の場合における光変調型検出装置150の動作を例に、図8を用いて説明する。
【0142】
図8は、変更例2の場合における光変調型検出装置150の主要な動作を示しており、図8(a)は縦軸に強度を、横軸に時間をとって時間変化に対する外乱光ノイズレベル(包絡線のみを図示)を示す図であり、図8(b)は縦軸に距離を、横軸に時間をとって時間変化に対する光変調型検出装置150と反射物との距離を示す図であり、図8(c)は上記動作を示す各信号のタイミングチャートであり、図8(d)は外部出力部119の出力信号120が反射物無しの状態から反射物有りの状態(出力信号120がHレベルからLレベル)へ変更される場合の各信号のタイミングチャートであり、図8(e)は出力信号120が反射物有りの状態の場合の各信号のタイミングチャートであり、図8(f)は出力信号120が反射物有りの状態から反射物無しの状態(出力信号120がLレベルからHレベル)へ変更される場合の各信号のタイミングチャートである。
【0143】
なお、図8(a)における、参照符号801を付した破線は、光変調型検出装置150の感度限界レベルを示しており、参照符号802を付した矢印の期間は、変動周期を示している。また、図8(b)における参照符号804を付した破線は、光変調型検出装置150が有する近接検出距離を示している。上記近接検出距離は、光変調型検出装置150の光学設計、発光素子100の発光量、及びパルス信号再生部112のヒステリシス設定などにより決定/変更し得る。また、図8(c)における、参照符号805〜807を付した矢印の期間は、第1周期T1を示しており、この第1周期T1は図8(a)に示した変動周期802よりも長く設定される。
【0144】
まず、起動モードM0においては、上述した、ノイズ検知モードおよび反射物検知モードがそれぞれノイズ検知モードM1および反射物検知モードM2である場合のそれと同じであるので、ここでは説明を省略する。また、ノイズ検知モードM1aについても、パルス信号117がパルス信号110がアクティブになる直前に出力されること以外はノイズ検知モードM1と同じであるので、説明を省略する。
【0145】
反射物検知モードM2bは、上述のとおり、同期受信期間SGと非同期受信期間AGとを14クロックサイクルの周期内に各1回行ってそれを繰り返すものである。反射物検知モードM2bは、動作モード遷移及び次回外部出力の判定条件を現在の外部出力結果に依存して変更することにより、アルゴリズム上のヒステリシスを加える。
【0146】
具体的には、外部出力部119の出力信号120が反射物無しの状態を出力している場合には、ノイズ検知モードM1aから引き続く第1周期T1内に、同期受信期間SGにおいて同期受信有り、かつ非同期受信期間AGにおいて非同期受信無しの対の状態がn回連続して(nは自然数)得られれば反射物有りと判定し、得られなければ反射物無しと判定する。一方、外部出力部119の出力信号120が反射物有りの状態を出力している場合には、同期受信期間SGにおいて同期受信無しの状態がn回連続して(nは自然数)得られれば、非同期受信期間AGにおける非同期受信の有無には依らず反射物有りと判定し、得られなければ反射物無しと判定する。
【0147】
図8では上記n=3の場合を示しており、この図8の例に基づき、起動モードM0およびノイズ検知モードM1aについては説明を省略して、物体検知モードM2bでの動作について説明する。なお、当該説明は、外部出力部119の出力信号120が反射物無しの状態から反射物有りの状態(出力信号120がHレベルからLレベル)へ変更される場合(図8(c)における参照符号805の期間および図8(d)参照)と、出力信号120が反射物有りの状態を維持する場合(図8(c)における参照符号806の期間および図8(e)参照)と、出力信号120が反射物有りの状態から反射物無しの状態(出力信号120がLレベルからHレベル)へ変更される場合(図8(c)における参照符号807の期間および図8(f)参照)とに分けて行う。
【0148】
まず、外部出力部119の出力信号120が反射物無しの状態から反射物有りの状態(出力信号120がHレベルからLレベル)へ変更される場合については、図8(d)の左端の「OC+AG」と付記したオフセットキャンセル期間OCと非同期受信期間AGとを含むノイズ検知モードM1aの最終サイクルを経て物体検知モードM2bに遷移する。物体検知モードM2bにおいては、「SG+AG」と付記した同期受信期間SGと非同期受信期間AGとからなるサイクルが3回繰り返されている。この3サイクルの間では、パルス信号再生部112の再生パルス信号111が、パルス信号107で生成されたパルス光101にわずかに遅延して再生されるのみであって(図8(c)において参照符号810dにより示している)、外乱光やノイズを再生した余剰のパルス列は見られない。従って、同期受信出力113が上記3サイクルにわたって生成され、非同期受信出力115は1回も生成されない。このように同期受信有りかつ非同期受信無しの対が連続して3回(3サイクル)得られたために、このサイクルの最後(実際には図4で示したのと同様、その1クロック手前)で反射物有りと判定され、外部出力部119の出力信号120がHレベルからLレベルへ更新される。
【0149】
ここで、図8(c)に示すように、出力信号120の更新後、参照符号805の期間、つまりは第1周期T1が約半周期分ほど残されている。光変調型検出装置150では、このような空走期間が生じる場合、不要な発光素子100の駆動、不要なパルス信号再生部112におけるオフセットキャンセルを中断する中断モードM3(図8(d)の右端の「WAIT」と付記した期間 パルス信号107,110,117,121いずれのパルス信号もLレベルのまま)を行う。
【0150】
中断モードM3は、具体的には、物体検知モードの形態に応じて、発光素子100の駆動に用いられるパルス信号107の供給を停止することにより、もしくは、パルス信号107に加えて、パルス信号再生部112におけるオフセットキャンセルのゲート信号としてのパルス信号121の供給を停止することにより、もしくは、発光素子駆動部109及びパルス信号再生部112の少なくとも一部分への電力供給を停止して間欠的にシャットダウンすることにより、もしくは、それら全てにより行う。
【0151】
このように中断モードM3を行えば、例えば参照符号805の期間の場合、実際に発光素子を駆動したのは3クロックサイクルのみであり、参照符号805の期間を1024クロックサイクルとすれば、当該期間の実効的なデューティは約0.3%の低い値となって、光変調型検出装置150の時間平均消費電流を低減できる。
【0152】
話は戻って、参照符号805の期間の終了とともに光変調型検出装置150は再びノイズ検知モードM1aに戻って参照符号806の期間を迎え、外乱光ノイズレベルを継続的に監視する。
【0153】
次に、出力信号120が反射物有りの状態を維持する場合については、図8(d)に示した場合と同様に、図8(e)の左端の「OC+AG」と付記したオフセットキャンセル期間OCと非同期受信期間AGとを含むノイズ検知モードM1aの最終サイクルを経て物体検知モードM2bに遷移する。物体検知モードM2bにおいては、「SG+AG」と付記した同期受信期間SGと非同期受信期間AGとからなるサイクルが1回繰り返されている。この1サイクルの間、パルス信号再生部112の再生パルス信号出力111が、パルス信号107で生成されたパルス光101にわずかに遅延して再生されるのみであって(図8(c)において参照符号810eにより示している)、外乱光やノイズを再生した余剰のパルス列は見られない。
【0154】
出力信号120が反射物有りの状態で物体検知モードM2bに遷移した場合は、上述のように、対となる非同期受信の有無には関係なく、第1周期T1内に1回でも同期受信有りの状態が得られれば、当該第1周期T1が終了するまで現在の外部出力を保持することが確定する。従って、上記1サイクルの間の同期受信により、このサイクルの最後(実際には図4で示したのと同様、その1クロック手前)で反射物有りと判定されて、外部出力部119の出力信号120がLレベルを維持する。なお、上述の判定条件は、裏をかえせば、対となる非同期受信の有無には関係なく、第1周期T1内に同期受信無しの状態が連続して3回(3サイクル)得られれば、現在の外部出力を更新する、ということでもある。
【0155】
なお、ここでも図8(d)に示した場合と同様に早々に判定が確定したため、これ以降参照符号806の期間の終了まで、中断モードM3が行われる。この場合、実際に発光素子100を駆動したのは1クロックサイクルのみであるので、参照符号806の期間を1024クロックサイクルとすれば、当該期間の実効的なデューティは約0.1%である。
【0156】
同様に、参照符号805の期間の終了とともに光変調型検出装置150は再びノイズ検知モードM1aに戻って参照符号807の期間を迎え、外乱光ノイズレベルを継続的に監視する。
【0157】
次に、外部出力部119の出力信号120が反射物有りの状態から反射物無しの状態(出力信号120がLレベルからHレベル)へ変更される場合については、図8(d)に示した場合と同様に、図8(f)の左端の「OC+AG」と付記したオフセットキャンセル期間OCと非同期受信期間AGとを含むノイズ検知モードM1aの最終サイクルを経て物体検知モードM2bに遷移する。物体検知モードM2bにおける、動作モードの遷移及び外部出力更新/保持の判定条件は参照符号806の期間の場合と同じである。つまり、対となる非同期受信の有無には関係なく、第1周期T1内に同期受信無しの状態が連続して3回(3サイクル)得られれば、現在の外部出力を更新する。参照符号807の期間においては、3サイクルの間、パルス信号107で生成されたパルス光101が放射されているにも関わらず、パルス信号再生部112の再生パルス信号出力111が再生されておらず(図8(c)において参照符号810fにより示している)、同期受信無しの状態が連続して3回得られたため、外部出力部119の出力信号120がLレベルからHレベルへ更新される。その後、参照符号807の期間が終了するまで、中断モードM3が行われる。
【0158】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る光変調型検出装置150は、ノイズ検知モードと物体検知モードとを一定のサイクルで繰り返しながらより複雑な外乱光ノイズレベルの変化に対しても正常動作を継続することが可能になる。
【0159】
また、変更例2,3のようにノイズ検知モードと物体検知モードとのいずれにも非同期受信期間AGを有していれば、同期/非同期の順の対状態を判定材料とすることで、反射物無しから有りへ判定する場合の外乱光耐性が著しく向上する。すなわち、ノイズ検知モードを終了し物体検知モードに遷移した直後から、外乱光の包絡線あるいは極低周波の成分が単調に強くなっていくような状況で、直前の反射物有無の判定結果を保持してノイズ検知モードに戻ることを可能として、同期受信期間に発生する誤検知を効果的に回避することができる。
【0160】
また、反射物無しから有り、反射物有りから無しへの判定条件を非対称にすることで、外乱光は受光信号として負値となり得ないことを利用して、アルゴリズム上のヒステリシスを設けることができる。従って、回路規模やバイアス電流の増大を招くことなく、検出装置の高感度化と更なる誤動作の防止を図ることができる。
【0161】
ここまで説明した、各種動作モードの具体的な構成から明らかなように、パルス信号107,110,117,121期間の組み合わせ、動作初期条件、動作モード遷移及び外部出力の判定条件、新たな動作モードの追加などにより、種々の変形が可能である。
【0162】
また、上述したように、光変調型検出装置150は、定常的シャットダウンモードM4を行う。定常的シャットダウンモードM4は、光変調型検出装置150を構成するすべての構成への電力供給を停止するものである。定常的シャットダウンモードM4への遷移は、パルス信号107,110,117,121の生成が行われていない状態で、かつ、パルス信号再生部112の受光信号経路を遮断している状態で行われる。それはすなわち、オフセットキャンセル期間OC中、オフセットキャンセル期間OCへの遷移中、定常的シャットダウンモードM4以外の上記各動作モードや上記各期間の遷移中に行われる。また好ましくは、パルス信号107,110,117,121の生成が行われていない状態を生成する際には、中断モードM3(物体検知モードM2で外部出力を更新/保持後、第1周期T1終了までの間、パルス信号107,110,117,121の生成を中断するための中間状態)を経由させるようにすると良い。またそのためのタイミングを生成するカウンタを別途備えても良い。定常的シャットダウンモードM4を行うことにより、光変調型検出装置150の動作とは全く無関係に外部からシャットダウンされて電源からグランドへの貫通電流パスが発生する事態を確実に防止することができる。
【0163】
また、外部出力部119は、以下のように構成されてもよい。図9は、光変調型検出装置150の要部構成を示すブロック図であり、特に外部出力部119の変更例である外部出力部119Aの構成を示している。
【0164】
外部出力部119Aは、判定部118より出力された、反射物の有無の判定結果を保存するレジスタ119cを含み、このレジスタ119cのレジスタ値をバッファする第1出力部119bと、上記判定結果が変更された場合にのみ外部にリーディングエッジ120aを発生するとともに、当該リーディングエッジ120a発生後、外部からその処理内容がクリア(リセット)され、当該クリアを受けてトレーリングエッジ120bを発生する第2出力部119aとを有し、光変調型検出装置150は、レジスタ119cのレジスタ値を保持させたままノイズ検知モードに遷移する。外部から第2出力部119aをクリアするための手段は、例えば第2出力部119aを入出力可能な双方向I/Oとして構成すると良い。
【0165】
外部出力部119を外部出力部119Aのように構成にすれば、光変調型検出装置150をいわゆるレベルセンス型のインタラプトモードの出力とすることができる。特に、上記第1周期での判定結果更新がシステム側にとっては速すぎてチャタリングのように見える場合に、上記インタラプトモードを用いてシステム側からの読出し周期を長くして応答動作の最適化を図ることができる。これはまたシステム全体の低消費電力化にも有効である。
【0166】
また、以上説明を行った光変調型検出装置150は、発光素子100以外の構成がモノリシックに集積された集積回路を具備することが好ましい。この構成によれば、検出感度や検出装置としての応答を損なうことなく消費電力の低減を図り、それでいて回路規模を増大させずに装置の小型化を図り、占有面積を節約してコストを抑制することができる。
【0167】
また、光変調型検出装置150は、検出感度や検出装置としての応答を損なうことなく消費電力の低減を図り、それでいて回路規模を増大させずに装置の小型化を図ることが可能であるため、自動ドア、衛生器具の自動洗浄装置、あるいはアミューズメント機器などに向け、パルス光を投射し物体からの反射光を検出して物体の有無を検知する検出装置として、また、携帯電話機やメディアプレイヤ等のポータブル機器に、近接する物体の有無を検出する近接センサとして好適に適用でき、それらの機器を低コストで実現できる。また、仕様の異なる複数の物体検知センサの機能を集積化したり、他のセンサ機能(例えば照度センサやRGBセンサなど)と集積化し、1つの検出装置としてモジュール化しポータブル機器に搭載することが実現可能になる。
【0168】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0169】
本発明に係る光変調型検出装置は、検出感度や検出装置としての応答を損なうことなく消費電力の低減を図り、それでいて回路規模を増大させずに装置の小型化を図ることが可能であるため、自動ドア、衛生器具の自動洗浄装置、あるいはアミューズメント機器などに向け、パルス光を投射し物体からの反射光を検出して物体の有無を検知する検出装置として、また、携帯電話機やメディアプレイヤ等のポータブル機器に、近接する物体の有無を検出する近接センサとして好適に適用でき、それらの機器を低コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】本発明の実施形態に係る光変調型検出装置の主要な動作モードの内容を示す図であるとともに(図中の上段)、その動作モードの動作を示す各信号のタイミングチャート(図中の下段)であり、(a)はノイズ検知モードを示しており、(b)は物体検知モードM2を示している。
【図2】光変調型検出装置の要部構成を示すブロック図である。
【図3】(a)はパルス信号再生部の具体的な構成を示す図であり、(b)は当該パルス信号再生部でのオフセットキャンセル動作のゲート信号としてのパルス信号の構成を示す図である。
【図4】光変調型検出装置の主要な動作を示しており、その上段は縦軸に強度を、横軸に時間をとって時間変化に対する外乱光ノイズレベル(包絡線のみを図示)を示す図であり、その下段は上記動作を示す各信号のタイミングチャートである。
【図5】光変調型検出装置の主要な動作モードの変更例の内容を示す図であるとともに(図中の上段)、その動作モードの動作を示す各信号のタイミングチャート(図中の下段)であり、(a)はノイズ検知モードを示しており、(b)は物体検知モードを示している。
【図6】光変調型検出装置の主要な動作モードの他の変更例の内容を示す図であるとともに(図中の上段)、その動作モードの動作を示す各信号のタイミングチャート(図中の下段)であり、(a)はノイズ検知モードを示しており、(b)は物体検知モードを示している。
【図7】光変調型検出装置の主要な動作モードのさらに他の変更例の内容を示す図であるとともに(図中の上段)、その動作モードの動作を示す各信号のタイミングチャート(図中の下段)であり、(a)はノイズ検知モードを示しており、(b)は物体検知モードを示している。
【図8】図6に示した変更例の場合における光変調型検出装置の主要な動作を示しており、(a)は縦軸に強度を、横軸に時間をとって時間変化に対する外乱光ノイズレベル(包絡線のみを図示)を示す図であり、(b)は縦軸に距離を、横軸に時間をとって時間変化に対する光変調型検出装置と反射物との距離を示す図であり、(c)は上記動作を示す各信号のタイミングチャートであり、(d)は外部出力部の出力信号が反射物無しの状態から反射物有りの状態(上記出力信号がHレベルからLレベル)へ変更される場合の各信号のタイミングチャートであり、(e)は上記出力信号が反射物有りの状態の場合の各信号のタイミングチャートであり、(f)は上記出力信号が反射物有りの状態から反射物無しの状態(上記出力信号がLレベルからHレベル)へ変更される場合の各信号のタイミングチャートである。
【図9】特に外部出力部の他の構成例を示す、光変調型検出装置の要部構成を示すブロック図である。
【図10】従来技術に係るものであり、物体検知装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】従来技術に係るものであり、パルス変調型光検出装置の動作を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0171】
100 発光素子
101 パルス光
103 受光素子
104 受光信号
107 パルス信号(第1パルス信号)
110 パルス信号(第4パルス信号)
117 パルス信号(第3パルス信号)
121 パルス信号(第2パルス信号)
109 発光素子駆動部
112 パルス信号再生部(パルス信号変換部)
114,116 ラッチ部(検出部)
118 判定部
119、119A 外部出力部
150 光変調型検出装置
OC オフセットキャンセル期間(第1期間)
AG 非同期受信期間(第2期間)
SG 同期受信期間(第3期間)
M0 起動モード
M1、M1a ノイズ検知モード(第1動作モード)
M2、M2a〜M2c 物体検知モード(第2動作モード)
M3 中断モード
M4 定常的シャットダウンモード
T1 第1周期
tw21 パルス幅(第1パルス幅)
tw22 パルス幅(第2パルス幅)
119a 第2出力部
119b 第1出力部
119c レジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子からパルス光を放射し、検出すべき物体にて反射もしくは透過した上記パルス光を受光する受光素子から出力された受光信号に基づいて、上記物体の有無を検出する光変調型検出装置であって、
上記受光信号をパルス信号に変換するとともに、受光信号経路を遮断して自身のオフセットを抑圧するパルス信号変換部と、
上記パルス信号を用いて、上記パルス光が放射されていない期間に上記受光信号が存在する第1状態であるか否かを検出するとともに、上記パルス光が放射されている期間と同時に上記受光信号が存在する第2状態であるか否かを検出する検出部とを備え、
上記パルス信号変換部の上記受光信号経路を遮断して上記パルス信号変換部のオフセットを抑圧し、当該第1期間の終了時点で上記オフセットが抑圧された状態を保持するとともに上記パルス信号変換部の上記受光信号経路を再接続する第1期間と、当該第1期間後において、上記第1状態であるか否かを検出する第2期間とを含む第1動作モードと、
上記第1状態でないことを検出した上記第1動作モード後において、上記第2状態であるか否かを検出する第3期間を少なくとも含む第2動作モードとの動作モードを有することを特徴とする光変調型検出装置。
【請求項2】
上記第2動作モードは、上記第1期間をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の光変調型検出装置。
【請求項3】
上記第2動作モードは、上記第2期間をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の光変調型検出装置。
【請求項4】
上記第2動作モードは、上記第1期間および上記第2期間をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の光変調型検出装置。
【請求項5】
上記光変調型検出装置は、上記検出部の検出結果に基づき、上記物体の有無を判定する判定部をさらに備え、
上記第1動作モードの開始に伴って開始される第1周期が設けられており、
上記第1動作モードにおいては、上記第1周期内に、上記第2期間において上記第1状態であると検出されなかった場合は上記第2動作モードに遷移し、上記第1状態であると検出された場合は上記第1期間に遷移し、
上記第2動作モードにおいては、上記第1動作モードから引き続く上記第1周期内に、上記第3期間において上記第2状態であるとn(nは自然数)回連続して検出された場合は上記物体有りと判定され、n回連続して検出されなかった場合は上記物体無しと判定され、
上記第2期間後、もしくは上記第2期間前後、かつ上記第2動作モードの最後に、上記検出部において処理内容を検出無しにリセットし、
上記第1周期の終了とともに上記第1動作モードに遷移することを特徴とする請求項1または2に記載の光変調型検出装置。
【請求項6】
上記光変調型検出装置は、上記検出部の検出結果に基づき、上記物体の有無を判定する判定部をさらに備え、
上記第1動作モードの開始に伴って開始される第1周期が設けられており、
上記第1動作モードにおいては、上記第1周期内に、上記第2期間において上記第1状態でないと検出された場合は上記第2動作モードに遷移し、上記第1状態であると検出された場合は上記第1期間に遷移し、
上記第2動作モードにおいては、上記第3期間後に上記第2期間が含まれ、上記物体無しと判定されている場合は、上記第1動作モードから引き続く上記第1周期内に、n(nは自然数)回連続して上記第3期間において上記第2状態であると検出され、かつ、上記第2期間においてn回連続して上記第1状態であると検出されなかった場合は上記物体有りと判定され、
一方上記物体有りと判定されている場合は、上記第1動作モードから引き続く上記第1周期内に、上記第3期間において上記第2状態であるとn回連続して検出された場合は上記物体有りと判定され、
上記第2期間後、もしくは上記第2期間前後、かつ上記第2動作モードの最後に、上記検出部において処理内容を検出無しにリセットし、
上記第1周期の終了とともに上記第1動作モードに遷移することを特徴とする請求項3または4に記載の光変調型検出装置。
【請求項7】
上記光変調型検出装置は、上記物体の有無の判定結果を外部に出力する外部出力部をさらに備え、
上記動作モードは、上記光変調型検出装置の起動に伴い、上記検出部において処理内容を検出無しにリセットするとともに、当該リセットを受けて上記判定部において上記物体無しの判定を行い、当該判定結果を上記外部出力部が外部に出力する起動モードをさらに含むことを特徴とする請求項5または6に記載の光変調型検出装置。
【請求項8】
上記動作モードは、上記物体有りと判定された後、上記第1周期が終了するまでの間に、上記発光素子の駆動に用いられる第1パルス信号と、上記パルス信号変換部におけるオフセット抑圧のゲート信号としての第2パルス信号と、上記検出部における上記第2期間のゲート信号としての第3パルス信号と、上記検出部における処理内容をリセットするためのリセット信号としての第4パルス信号との供給を中断する中断モードを含むことを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の光変調型検出装置。
【請求項9】
上記中断モードは、上記各パルス信号の供給の中断とともに、上記発光素子を駆動する発光素子駆動部及び上記パルス信号変換部の少なくとも一部分への電力供給を停止して間欠的にシャットダウンすることにより行うことを特徴とする請求項8に記載の光変調型検出装置。
【請求項10】
上記第1周期は、商用電源の半周期以上であることを特徴とする請求項5〜9のいずれか一項に記載の光変調型検出装置。
【請求項11】
上記第1周期は、変更可能であることを特徴とする請求項5〜9のいずれか一項に記載の光変調型検出装置。
【請求項12】
上記物体有りと判定された後で上記第1動作モードに遷移した場合は、上記第1期間を経て上記第2期間に検出された検出結果には依存せずに上記第2動作モードへ遷移することを特徴とする請求項5〜11のいずれか一項に記載の光変調型検出装置。
【請求項13】
上記パルス信号変換部はヒステリシスを備えており、
上記物体有りと判定された場合は、上記物体無しと判定された場合と比較して上記ヒステリシスの値をより小さい値に設定することを特徴とする請求項5〜12のいずれか一項に記載の光変調型検出装置。
【請求項14】
上記第1動作モードでの、上記検出部における上記第2期間のゲート信号としての第3パルス信号のパルス幅である第1パルス幅と、上記第2動作モードでの、上記第3パルス信号のパルス幅である第2パルス幅とは、それぞれ等しいことを特徴とする請求項6に記載の光変調型検出装置。
【請求項15】
上記第1、第2パルス幅は、上記光変調型検出装置の使用が想定される環境下において主要な外乱光成分が有する周波数成分の最大ピークを与える周波数に対して、その逆数よりも長く設定されることを特徴とする請求項14に記載の光変調型検出装置。
【請求項16】
上記動作モードは、上記光変調型検出装置を構成するすべての構成への電力供給を停止する定常的シャットダウンモードをさらに有し、
上記定常的シャットダウンモード以外の上記各モード及び上記各期間から上記定常的シャットダウンモードへの遷移は、上記発光素子の駆動に用いられる第1パルス信号と、上記パルス信号変換部におけるオフセット抑圧のゲート信号としての第2パルス信号と、上記検出部における上記第2期間のゲート信号としての第3パルス信号と、上記検出部における処理内容をリセットするためのリセット信号としての第4パルス信号との供給が行われていない状態で、かつ、上記パルス信号変換部の上記受光信号経路を遮断している状態で行われることを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の光変調型検出装置。
【請求項17】
上記外部出力部は、
上記物体の有無の判定結果を保存するレジスタと、
上記レジスタの値をバッファする第1出力部と、
上記判定結果が変更された場合にのみ外部にリーディングエッジを発生するとともに、当該リーディングエッジ発生後外部からその処理内容がリセットされ、当該リセットを受けてトレーリングエッジを発生する第2出力部とを有し、
上記光変調型検出装置は、上記レジスタの値を保持させたまま上記第1動作モードに遷移することを特徴とする請求項7〜16のいずれか一項に記載の光変調型検出装置。
【請求項18】
上記光変調型検出装置は、上記発光素子以外の構成がモノリシックに集積された集積回路を具備することを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載の光変調型検出装置。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の光変調型検出装置を搭載していることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−71811(P2010−71811A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−239833(P2008−239833)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】