光子間に干渉を生成するための光学系
光子源と、光学系を通る第1の経路をたどるように光子を方向付けるように構成された第1の方向付け要素と、前記第1の経路の逆の経路であって前記光学系を通る第2の経路をたどるように光子を方向付けるように構成された第2の方向付け要素と、前記第1の経路をたどる光子と前記第2の経路をたどる光子との間の相対的位相偏移を変える手段と、を備える光学系であって、前記第1の経路を通って移動する光子が前記第2の経路を通って移動する光子とは異なる偏光有するように構成された、光子間に干渉を生成するための光学系。量子暗号化、物体の量子撮像または調査、量子干渉法、多光子検出器または光ファイバジャイロスコープに適している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光子間に干渉を生成するために使用される光学系の分野に関する。より特定的には本発明は、極めて多様な用途のために量子準位で光子の性質を利用するために光子を干渉させ得る光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
干渉法は、量子力学の最も反直感的特長の1つの、すなわち多粒子重ね合わせの利用を可能にする量子力学実験の主要部分である。重ね合わせの有名な例は、2つの粒子のうちの一方の粒子の測定が他方の粒子の状態を即座に決定する2つの粒子のエンタングルメント(絡み合い:entanglement)である。
【0003】
しかしながら状態の重ね合わせを利用する多くの実験は、精確にバランスの取れた多数の干渉計を必要とし、これらの使用は温度変動、歪みなどによって引き起こされる干渉計の位置のドリフトといった古典的な物理現象によって妨げられる可能性がある。これらの問題は、可変遅延線、能動的安定化などによって対処されてきたが、このことは、余分な構成要素と、また時には複雑な作業手順を必要とする。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、少なくともある程度は上記の問題に対処しており、第1の態様では光子源と、光学系を通る第1の経路をたどるように光子を方向付けるように構成された第1の方向付け要素と、上記第1の経路とは逆の経路であって上記光学系を通る第2の経路をたどるように光子を方向付けるように構成された第2の方向付け要素と、第1の経路をたどる光子と第2の経路をたどる光子との間の相対的位相偏移を変える手段と、を備える光学系であって、第1の経路を通って移動する光子が第2の経路を通って移動する光子とは異なる偏光を有するように構成された光学系を提供する。
【0005】
このようにして2つの別の干渉計とは対照的に、光子が同じ干渉計を通って反対方向に移動することを可能にすることによって、ドリフトによる問題は解消される。
【0006】
光子源は好適には、非古典的光源、例えば専用の単一光子源、または量子情報を搬送できる減衰パルスを出力し得る減衰レーザーまたはLEDである。後の場合ではパルスは、N=0、1および2光子などの状態の統計的混合を有する。代替として光子源は、Fock(フォック)状態(nが少なくとも1という整数であるとしてn個の光子のグループ)を放射できる。
【0007】
ある幾つかの実施形態では第1の経路は並列に接続された複数のサブ経路を備え、上記第2の経路はこれら複数のサブ経路の逆のサブ経路を備える。この複数のサブ経路はマッハ・ツェンダー干渉計を形成し得る。
【0008】
もし光子が予め決められた時間間隔dtで光子源によって放射されるならば、これらのサブ経路の一方を通って移動する光子を他方のサブ経路に関して時間dtだけ遅らせることによって時間間隔dtで放射された2つの光子を重ね合わせるために本システムを使用することが可能である。もし光子源によって放射されたこれらの光子が相等しければ、位置および時間における光子のエンタングルメントが発生する。
【0009】
これら複数の経路を形成する2つのサブ経路が存在し得る。これは、一方の状態が一方のサブ経路を取る光子に対応し、他方の状態が他方のサブ経路を取る光子に対応する2つの状態の重ね合わせを各光子が占有するときに、キュービット(qubit)が形成されることを可能にする。
【0010】
更なる一実施形態では、Nが少なくとも2という整数であるとして、N本のサブ経路が複数の経路を形成する。これは、N本の経路の各々に対応するN個の状態の重ね合わせである1つの状態を占める光子によってキューNイット(quNits)が形成されることを可能にする。
【0011】
好適にはN個のアームのうちの少なくともN−1個のアームは、偏光依存性位相偏移要素を有する。
【0012】
本システムは、2光子を備える二光子(bi-photon)を取り扱うように構成され得る。このようなシステムでは、光子源は二光子を出力するように構成され、上記第1の方向付け要素は二光子を方向付けるように構成され、上記第2の方向付け要素は二光子を方向付けるように構成される。
【0013】
また非縮退エンタングルメント光子(non-degenerate entangled photons)を放射するように構成された光子源も使用され得る。このシステムはそれから、光子を位相的に更にエンタングルメントさせるために、またはエンタングルメント光子源の完全性を検査するために使用され得る。
【0014】
本システムは、位相状態を重ね合わせして光子をエンタングルメントさせるために使用され得る。一方の経路をたどる1つの偏光を有する光子と他方の経路をたどる異なる偏光を有する光子とを持つことが必要であるときに、ある特定の時間にある特定の経路をたどるある特定の偏光を有する光子と持つことが必要であるので、ある幾つかの光子はこのシステムでは使用されない可能性がある。本システムの効率は、偏光的にエンタングルメント状態であって、垂直に偏光された光子とこの垂直に偏光された光子の第1の時間間隔後に放射された水平に偏光された光子とを有する第1の状態と、水平に偏光された光子と第1の時間間隔後に放射された垂直に偏光された光子とを有する第2の状態と、の重ね合わせである状態を生成するように構成された光子源を使用することによって改善され得る。
【0015】
本システムの効率を改善するためのもう1つの方法は、上記の光子のための第3の経路と上記第3の経路の逆の経路である光子のための第4の経路と上記第3の経路をたどる光子と上記第4の経路をたどる光子との間の相対的位相偏移を変える手段とを更に備えるシステムであって、上記第3の経路を通って移動する光子が上記第4の経路を通って移動する光子とは異なる偏光を有するように構成され、光子の偏光に依存して上記第1の経路または第3の経路のいずれかに沿って光子を方向付ける手段と光子の偏光に依存して上記第2の経路または第4の経路のいずれかに沿って光子を方向付ける手段とを更に備えるシステムを使用することである。
【0016】
上記の構成は、そうでなければ光子が誤った偏光を有する第1の経路に到着しているので失われたであろう光子が第3の経路に沿って方向付けられることを可能にする。
【0017】
上記のシステムは、少なくとも2者間の量子通信のために構成されることが可能であり、本システムは更に第1者に配置された第1の検出システムを備えており、この第1の検出システムは第1者によって受け取られた光子の量子状態を判定するように構成されており、本システムは更に第2者に配置された第2の検出システムを備えており、この第2の検出システムは第2者によって受け取られた光子の量子状態を判定するように構成されており、相対的位相偏移を加えるための上記手段は制御可能な複屈折位相変調器を備えている。
【0018】
一実施形態では本システムは更に、上記第1の経路をたどったキャリアを上記第1者に方向付けるように構成された第1の通信手段と上記第2の経路をたどったキャリアを上記第2者に方向付けるように構成された第2の通信手段とを備える。このようにして両者は第1、第2の経路の外に留まる。
【0019】
更なる実施形態では、第1、第2の経路は2者間で分割され、位相変化手段は第1者の制御下で動作する第1の位相変調器と第2者の制御下で動作する第2の位相変調器とを備える。
【0020】
本システムはまた、物体の調査または撮像のために構成されることが可能であり、上記システムは上記物体に作用するための第1の偏光を有する光子と上記物体を迂回するための第2の偏光を有する光子とを方向付けるように構成された、上記第1の経路に配置された第1の偏光ビームスプリッタを備えており、上記ビームは上記物体に作用するための第1の偏光を有する光子と上記物体を迂回するための第2の偏光を有する光子とを方向付ける第2の偏光ビームスプリッタで再結合される。
【0021】
本システムは、透過または反射における物体を撮像または調査するように構成され得る。
【0022】
本システムはまた、光子が同一ポイントで第1、第2の経路に出入りし、また位相変化が第1、第2の経路の物理的回転によって達成されるジャイロスコープとして構成され得る。第1、第2の経路の物理的回転によってこれらの経路の光学的長さが変化し、それによって回転が検出され得る。
【0023】
前述のように本発明は、エンタングルメント光子源を吟味するために使用されることが可能であり、上記システムは偏光エンタングルメント光子の光子源を備えており、上記偏光エンタングルメントを位相エンタングルメントに変換する手段のように構成され、1対のエンタングルメント光子のうちから一方の光子は第1の経路をたどるように方向付けられ、他方の光子は第2の経路をたどるように方向付けられ、上記位相変化手段は上記光子源が十分にエンタングルメントしている場合に第1、第2の経路から光子の退出経路を予測することが可能であるように、位相差を導入するように構成された位相変調器である。
【0024】
要約すれば相対的位相偏移を変える手段の可能な例は、複屈折要素、例えばサンプルを撮像または調査するときに使用されるような少なくとも1つの経路にサンプルを移動可能に取り付ける手段、または例えばジャイロスコープとして動作するときに使用されるような第1の経路と第2の経路のための移動性マウント(取り付け具)である。
【0025】
好適には本システムは、上記第1の経路をたどった光子を検出するための第1の検出器と、上記第2の経路をたどった光子を検出するための第2の検出器と、上記第1、第2の検出器の結果を相互に関連付ける手段と、を備える。この構成は、エンタングルメントが達成されたイベントが識別されることを可能にする。これらのイベントはそれから、分析時にポスト選択(post selected)され得る。
【0026】
本システムで二重電子が使用される場合、検出イベントを登録するために二重電子検出器が使用される。
【0027】
第2の態様では本発明は、第1の偏光を有する光子を第1の経路をたどるように方向付けることと、同時に第2の偏光を有する光子を上記第1の経路の逆の経路である第2の経路をたどるように方向付けることと、上記第1の経路をたどる光子と上記第2の経路をたどる光子との間の相対的位相偏移を変えることと、を備える、光子を干渉させる方法を提供する。
【0028】
この方法は好適には更に、上記第1、第2の経路を退出する光子の相関関係を測定することを備える。
【0029】
次に、本発明は、以下の図において非限定的な実施形態を参照しながら説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】位置および時間的エンタングルメントを説明するために使用された従来技術の干渉計の図である。
【図2】本発明の一実施形態による干渉計の図である。
【図3】図2のシステムにおける検出器間の相関関係を示す実験データのプロットである。
【図4】汎用入力状態から位相エンタングルメント状態を生成するために使用される本発明の一実施形態による干渉計の図である。
【図5】図4の干渉計についてエンタングルメント入力状態を生成するために使用されるシステムの図である。
【図6】入力状態が図5を参照しながら説明される異なる方法を使用して生成される干渉計の図である。
【図7】偏光されていない光子源と本発明の一実施形態による並列の2つの干渉計とを使用する干渉計の図である。
【図8】本発明の一実施形態による、偏光エンタングルメント状態を分析するために使用され得るシステムの図である。
【図9】本発明の一実施形態による多光子エンタングルメントシステムの図である。
【図10】多光子エンタングルメントシステムを有する本発明の更なる一実施形態の図である。
【図11】本発明の一実施形態によるキュートリット(qutrits)のために構成されている干渉計である。
【図12】本発明の一実施形態による量子Nイット(quantum quNits)のための干渉計である。(なお、「多数の量子ビット」は多くのキュービット(quBits)(すなわち1と0の重ね合わせ)を意味するが、これは単一のN量子ビット(quNit)が多数の状態で存在し得る「量子マルチビット」である)。
【図13】エンタングルメント光子源を使用する量子暗号化システムの概念を示す図である。
【図14】本発明の一実施形態による更なる量子暗号化システムを示す図である。
【図15】本発明の一実施形態による更に別の量子暗号化システムを示す図である。
【図16】本発明の一実施形態による更に別の量子暗号化システムを示す図である。
【図17】本発明の一実施形態による量子干渉計を示す図である。
【図18】(a)は、反射モードで物体を調べて表面高さをマップするために干渉計がどのように使用され得るかを示す図であり、(b)は、透過モードで物体を調べて厚さをマップするために干渉計がどのように使用され得るかを示す図である。
【図19】(a)は、多光子検出器の図であり、(b)は、不平衡干渉計と単一光子検出器の図であって、この組合せは2つの光子が受け取られたかどうかを判定するために使用され得るものであり、(c)は、2つの単一光子検出器と組み合わされた50/50ビームスプリッタの図である。
【図20】本発明の更なる一実施形態による量子干渉計の図である。
【図21】本発明の更なる一実施形態による2光子サニャック(sagnac)ジャイロスコープの図である。
【図22】本発明の更なる一実施形態によるサニャックジャイロスコープの更なる変形例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、従来技術によるいわゆるFranson(フランソン)タイプ干渉計の図である。フランソン干渉計は、Franson Phys Rev Lett 62 2205 to 2208 (1989)において詳細に説明されている。
【0032】
フランソンの実験では光子源1は、短時間に連続して光子を出力するように構成されている。光子源1からの光子が第1の経路5または第2の経路7のいずれかに沿って方向付けられることを可能にするビームスプリッタ3が設けられている。ビームスプリッタ3は、無偏光(non-polarising)ビームスプリッタである。すなわち、これは、光子の偏光とは無関係に第1の経路5または第2の経路7のいずれかに光子をランダムに方向付ける。
【0033】
第1の経路5を通る光子は、第1のマッハ・ツェンダー(Mach Zehnder)干渉計(MZI)9内に方向付けられる。第1のMZI9は、無偏光ビームスプリッタ11を備える。ビームスプリッタ11は、光子を短いアーム13または長いアーム15のいずれかに沿って方向付ける。長いアーム15は、このアームに沿って移動する光子にφaの位相変調を加える位相変調器16を有する。次に、短いアーム13と長いアーム15の出力は、ビームスプリッタ17において結合される。そして、光子は、第1の検出器A1または第2の検出器A2に方向付けられる。
【0034】
同様に、第2のアーム7に方向付けられた光子は、第2のMZI23に方向付けられる。第2のMZI23は、光子を短いアーム27または長いアーム29のいずれかに方向付ける第1のビームスプリッタ25を備える。長いアーム29は、このアームに沿って移動する光子にφbの位相偏移を加える第2の位相変調器30を有する。次に、短いアーム27と長いアーム29の出力は、第2のビームスプリッタ31において結合される。第2のビームスプリッタ31は、光子を第1の検出器B1または第2の検出器B2のいずれかに方向付ける。
【0035】
もし光子源1が2つの光子間で時間遅延dtをもって相等しい光子を出力し、dtが第1のMZI9の短いアーム13と長いアーム15との間を移動する光子における時間遅延と第2のMZI23の短いアーム27と長いアーム29の時間遅延とに対応するならば、これらの2つの光子間には相関関係が存在することになる。この相関関係は、一方の光子が第1の干渉計を通るように方向付けられ、放射される次の光子が第2の干渉計を通るように方向付けられる(あるいは逆の場合も同様である)場合に発生する。この相関関係は、位相変調器16および30によって加えられた位相間の差に依存する。
【0036】
もし2つの光子がシステムの反対側で、すなわちペア(A1,B1)、(A1,B2)、(A2,B1)または(A2,B2)において同時に検出されるならば、これら2つの光子はカプラー3から反対方向に出て行って、これらの光子はエンタングルメントを生成したMZI9および23を通る経路を取ったということでなくてはならない。したがって2つの光子がこれらのペアにおいて同時に検出されるイベントだけを調べることによって、われわれはエンタングルメントが生成された「ポスト選択された(post-selected)」イベントを有する。
【0037】
しかしながら上記システムの問題は、2つのMZI9および23がこれらが与える遅延の点で同一である必要であり、またこれらが長時間にわたって安定であることが必要であるということである。これは、各MZI9および23の短いアームと長いアームとの間の経路差、したがって位相差に影響を及ぼすファイバ歪み/位置における熱的ドリフトと変化とが発生するので、困難である。
【0038】
図2は、本発明の一実施形態による干渉計を示す。図2の干渉計は、図1の干渉計に基づいている。しかしながら、図2の干渉計では2つのMZI9および23の代わりに単一のMZIが設けられており、干渉すべきである光子は、この単一MZIを通って反対方向に送られる。Φ1はHおよびVに関して異なる位相偏移を加える。
【0039】
図1に関して光子源101は、時間間隔dtをもってH偏光された光子を出力する。これらの光子は、無偏光ビームスプリッタ103に通される。無偏光ビームスプリッタ103は、光子をアーム105またはアーム107のいずれかにランダムに送る。そしてアーム105内の光子は、偏光を垂直Vになるように90°だけ回転させる偏光回転子108に入る。
【0040】
次に、光子は、偏光ビームスプリッタ109に方向付けられる。偏光ビームスプリッタ109は、偏光Vを有するすべての光子をアーム111に沿って送る。これは、偏光Vを有する光子が次にMZI115に送り込まれることを意味する。MZI115は、光子を長いアーム119または短いアーム121のいずれかにランダムに方向付ける無偏光ビームスプリッタ117を備える。そして長いアーム119または短いアーム121から出力された光子は、無偏光ビームスプリッタ123を使用して結合される。
【0041】
長いアームには第1の変調器125が設けられている。これにより、短いアームを通って移動する光子に対する長いアームを通って移動する光子の位相の変化が導入される。光子が長いアームを通って移動するために要する時間対短いアーム121を通って移動する時間の変化は、dtによって表される。
【0042】
第2の接合部(ジャンクション)123に出力される光子はアーム127またはアーム129のいずれかを通るように方向付けられる。アーム127を通るように方向付けられた光子は垂直偏光を有し、偏光ビームスプリッタ131に作用する。これらの光子は送られるとき、検出器A1に方向付けられる。アーム129を通るように再方向付けされた光子は、検出器A2で測定される。したがって光子は、図1の経路5に基本的に相当する経路をたどる。
【0043】
経路107をたどる光子は、偏光ビームスプリッタ131に作用し、H偏光光子はアーム127に方向付けられる。そして、H偏光を有する光子は、光子を干渉計115の長いアーム119または短いアーム121のいずれかに方向付けるように機能する無偏光ビームスプリッタ123に作用する。
【0044】
次に、光子は、ビームスプリッタ117で結合され、検出器B2に向かってアーム141に再方向付けされるか、または光子が水平に偏光されると検出器B1に向かって方向付けされることになるアーム145へ方向付けされる。
【0045】
第1の変調器125は、左から右に移動する光子によって経験された位相を右から左に移動する光子とは異なる量だけ変化させ得る複屈折要素である。これは、この複屈折要素が垂直に偏光された光子の位相を水平に偏光された光子の位相とは異なる量だけ変化させることから達成される。
【0046】
干渉計の2つのアーム間の位相差における如何なるドリフトも、左方向および右方向に移動する光子の両方に自動的に等しく作用し、したがって無視され得る。検出器間の相関関係は、垂直に偏光された光子について位相変調器125によって加えられた位相変調と水平に偏光された光子について位相変調器125によって加えられた位相変調との間の差Δφとして変化する。下記の方程式は、位相差Δφの関数として検出器のある幾つかのペア間で一致が得られる確率を示す:
【数1】
【0047】
ここでγは2つの光子の波動関数間の弁別不能度を表す。
【0048】
図2の例では、HおよびV光子の偏光だけを保存する偏光保持ファイバが使用される。なお、複屈折を除去するために使用される偏光コントローラと通常の単一モードファイバとを使用するシステムを実現することができる。
【0049】
図3は、図2に示された干渉計を使用して得られた実験データを示す4つのプロットである。遠隔の検出器のペアが同時に光子を数える同時発生イベントが複屈折要素125によって導入された位相差の関数として示されている。
【0050】
光子源としてマイクロピラーに埋め込まれたInGaAs/GaAs量子ドットが使用された。H偏光光子を実験だけに渡すためにサンプル上の線形偏光子が使用された。これは、弁別不可能な単一光子を生成した。干渉計によって生成された位相差の関数として4つの検出器間の相関関係が記録された。不平衡ビームスプリッタ反射および透過係数と光子の弁別不能度が100%未満であることとによって振動の有限可視性が決定される。それにもかかわらず、観測された相関関係の度合いにおける明らかな振動は、高い度合いのエンタングルメントを示している。実験結果が検出器間の相関関係に関する上記の方程式と一致していることがわかる。
【0051】
図2において光子源は、MZIにおける時間遅延に等しい時間遅延dtだけ離された2つの弁別不能な光子、例えば同じ偏光と同じエネルギーとを送達する。一方の光子が一方の方向に移動し、他方の光子が時間dt(ここでdtはMZIにおける時間遅延に等しい)だけ遅れて反対方向に移動する状態を検出がポスト選択(post-select)するときに干渉が発生する。
【0052】
図2のシステムは、光子源がVまたはHの偏光を有する光子を出力し、この光子源上に線形偏光子が設けられ、これらの光子が無偏光ビームスプリッタ103といった受動的構成要素に出力される場合に、1/8の成功確率で動作できる。確率1/8は、第1の光子が偏光子を介して送られ得る偏光で放射される確率50%と、次の光子が同じ偏光で放射される可能性50%と、光子が同じアーム内の移動とは反対に反対のアーム内を移動するという可能性50%とが存在することから得られる。
【0053】
しかしながら、状態:
【数2】
【0054】
(I)
を生成する光子源を構成することも可能であり得る。このような状態は、偏光において既にエンタングルメントしており、垂直に偏光された光子とこの垂直に偏光された光子の時間dt後に放射された水平に偏光された光子とを有する状態と、水平に偏光された光子と時間dt後に放射された垂直に偏光された光子とを有する状態と、との重ね合わせである。この状態を使用して、垂直に偏光された光子は左手アーム(1)105に沿って方向付けられ、水平に偏光された光子は右手アーム107に沿って方向付けられ得る。
【0055】
そして、このような状態は、図4にも示された干渉計115に送られ得る。不必要な繰り返しを避けるために、同様の特徴を表すために同様の参照番号が使用される。
【0056】
図5は、図4の干渉計および検出器と上記の入力状態(I)201を生成するために使用され得る装置との図を示す。不必要な繰り返しを避けるために、同様の特徴を表すために同様の参照番号が使用される。
【0057】
装置201は、自然発生的パラメトリック下方変換によって光子対を生成するために使用され得る非線形結晶205を備える。エネルギーEのポンプ光子203は、時間dt=0だけ離されたE/2のエネルギーを有する2つの光子を生成する結晶205によって分割される。これらの光子は同じ偏光を有することになるので、第2のアーム206内を移動する光子から偏光を変えるために第1のアーム204には偏光回転子207が必要とされる。干渉計115では、時間dtは0にセットされ、言い換えれば長いアーム119と短いアーム121は同じ長さである。これは、これらの光子が正確に同じ時刻に、したがってdt=0で結晶205から放射されるからである。
【0058】
図6は、図4の干渉計と、上記の入力状態(I)を生成するように構成された装置221との図である。如何なる不必要な繰り返しも避けるために、同様の特徴を表すために同様の参照番号が使用される。
【0059】
装置221は、図5の装置201とは異なるように構成される。しかしながらこれは、同じエンタングルメント入力状態を生成する。
【0060】
図6の装置221は、単一光子を光子源干渉計233に出力する単一光子源231を備える。光子源231は、状態:
【数3】
【0061】
(II)
を有する光子を生成する。言い換えれば2つの水平光子が同時に生成されるか、2つの垂直に偏光された光子が同時に生成されるかのいずれかである。
【0062】
光子源干渉計233は、偏光ビームスプリッタ235を備え、図6に示された構成の偏光ビームスプリッタ235は、垂直偏光を有する光子をアーム237に沿って方向付けて位相変調器239を通し、水平偏光を有する光子を位相変調器が存在しないアーム241に沿って方向付ける。位相変調器239によって加えられた位相を変えることによって、光子のペアが位相変調器を離れて反対方向に移動することが可能である。Nが整数であるとして、もし加えられた位相が:
【数4】
【0063】
であれば、光子は反対方向にカプラーC0243を離れる。アーム245および247内を移動する光子は同じ偏光を有する。したがって245上を通過する光子のうちの1つの光子の偏光を変えるために偏光回転子249が使用される。
【0064】
これらの光子は同時に出力され、したがってこれらはdt=0の相対的遅延を有する。干渉計115が光子を位置的および時間的にエンタングルメントさせるために干渉計の時間遅延(すなわち2つのアーム間の経路差)は0にセットされる。
【0065】
図2の干渉計において光子の多くは、もしこれらが正しい入力状態で生成されなければ廃棄される。しかしながら、無偏光光子源を使用することによって、より高い効率を得ることも可能である。このような構成は図7に示されている。
【0066】
図7において光子源301は、水平または垂直偏光のいずれかを有する光子を生成する。次にこれらの光子は、無偏光ビームスプリッタ303を通されて、アーム305またはアーム307のいずれかに沿って方向付けられる。アーム305に沿って移動する光子は最初に、これら光子の偏光を偏光回転子309によって90°だけ回転させられる。光子は次に、偏光ビームスプリッタ311を通される。偏光ビームスプリッタ311は、垂直偏光を有する光子をアーム313に沿って送り、水平偏光を有する光子をアーム315に沿って反射させる。
【0067】
次に、アーム313に沿って送られた光子は、図2を参照しながら説明されたタイプの上部MZI317を通され、アーム315に沿って送られた光子は下部MZI319に送られる。したがって図2の例とは対照的に、ビームスプリッタ311において如何なる光子も失われない。
【0068】
同様に、アーム307に沿って移動する光子は、第2の偏光ビームスプリッタ321に遭遇する。水平偏光を有する光子は上部MZI317を通るように方向付けられ、垂直偏光を有する光子は下部MZI319を通して送られる。
【0069】
上部MZI317内を左から右に移動する垂直に偏光された光子は、検出器A1またはA2のいずれかに方向付けられる。検出器A1に方向付けられた光子は、第2の偏光ビームスプリッタ321と第3の偏光ビームスプリッタ323とを通過する。上部MZI317内を右から左に移動する水平に偏光された光子は、検出器B1またはB2のいずれかに方向付けられる。検出器B1に出力された光子は、第1の偏光ビームスプリッタ311と第4の偏光ビームスプリッタ325とを通過しなくてはならない。下部MZI319内を左から右に移動する水平に偏光された光子は検出器A3またはA4のいずれかに出力される。更に、右から左に移動し、垂直に偏光された光子は、下部MZI319を通過し、検出器B3またはB4のいずれかに出力される。
【0070】
もし光子が上部MZI317を通って異なる方向に移動しているならば、上記の検出器のうちのどのペアが光子を検出するかは、上部MZI317を通って移動している垂直および水平に偏光された光子によって経験された位相の差に依存する。更にもし光子が下部MZI319を通って移動するならば、上記の検出器のどのペアが光子を検出するかは、下部MZI319を通って移動する垂直および水平に偏光された光子によって経験された位相の差に依存する。複数の光子が所望の経路を取ると、そのペアのうちの一方の光子の測定により他方の光子の波動関数の崩壊を招き、これにより、これの正確な検出の位置と時間とが判定される。
【0071】
一般に干渉は、同じエネルギーを有する光子間でのみ見られる。大抵の量子ドットにおいて中性励起子状態から放射されたHおよびV光子は異なるエネルギーを有し、したがって干渉は光子源がH光子を放射し、それからH光子またはV光子を、そしてそれからV光子を放射するときにだけ観測されるはずである。干渉は光子源がH光子を放射し、その後にV光子を放射する時には観測される見込みはなく、その逆の場合も同様である。したがって大抵の場合、図7のシステムの効率は図2のシステムの効率のちょうど2倍である。しかしながら、約885ナノメートルを放射する或る幾つかの量子ドットにおいては、HおよびV状態からの放射はエネルギーが等しいので、すべての組合せが干渉し、図7のシステムの効率は図2のシステムの効率の4倍になる。
【0072】
図8は、偏光エンタングルメント状態を分析するために使用され得る干渉計を備えるシステムである。このシステムは、エンタングルメント光子源の完全性を検査するために使用され得る。これはまた、後に図16を参照しながら述べる量子暗号化における用途を有する。
【0073】
図8において、光子源401は、量子ドットタイプ単一光子源である。最近、量子ドット(R. Stevenson et al, Nature 439, (2006) 179およびR. Young et al, New Journal of Physics, 8 (2006) 29)は、カスケード「二重励起子(biexciton)→励起子→空」から偏光的にエンタングルメントしている光子を放射できることが示された。ファイバにおける複屈折からデコヒーレンスに対してこのエンタングルメントを保存するために、このエンタングルメント状態は位相エンタングルメント状態に変換され得る。光子源401によって出力された状態は:
【数5】
【0074】
(III)
であり、ここでXは励起子光子を表し、XXは二重励起子光子を表す。次に、この状態は光子源干渉計405の開始点である偏光ビームスプリッタ403に移る。光子源干渉計405は長いアーム407を備えており、この長いアーム407は位相変調器409と偏光回転子408とを有する。この干渉計はまた、短いアーム411も備える。偏光ビームスプリッタ403は、長いアーム407を通して垂直に偏光された光子を送出し、短いアーム411を通して水平に偏光された光子を送出するように構成される。
【0075】
光子源からの垂直に偏光された光子は、偏光ビームスプリッタ403によって長いアーム407に方向付けられ、そこでこれらの光子は408によってH偏光に回転されて時間dtだけ遅延させられる。水平に偏光された光子は、偏光ビームスプリッタ403によって短いアーム405に方向付けられる。次にこれら2つ経路は、カプラー411で再結合される。このようにして、偏光的にエンタングルメントした光子状態は、今度は2つの別のタイムビン(time bins)にエンタングルメントさせられて:
【数6】
【0076】
(IV)
を与える。この状態はファイバ複屈折に対してロバストである。
【0077】
次に、この状態は、励起子遷移から発生する光子Xをアーム415に送り、二重励起子遷移から発生する光子XXをアーム417に送る分光計413に渡される。X光子とXX光子は同じ偏光を有するので、X光子の偏光を変えるためにアーム415には偏光回転子414が設けられる。それから光子は、図2を参照しながら説明されたタイプのMZI115に通される。如何なる繰り返しも避けるために、同様の特徴を表すために同様の参照番号が使用される。
【0078】
MZI115における位相変調器の適切な値を選択することによって、状態が十分にエンタングルメントしている場合にどの検出器(A1、A2、B1、B2)が起動(fire)すべきであるかを決定することが可能である。
【0079】
図9は、多光子エンタングルメントを達成することができるシステムの図である。図9において光子源401は、図8を参照しながら説明されたタイプである。光子源401は、カスケード「二重励起子(biexciton)→励起子→空」から偏光的にエンタングルメントしている光子を放射する。次に、この光子源の出力は、垂直偏光を有する光子をアーム501に沿って、また水平偏光を有する光子をアーム503に沿って方向付ける偏光ビームスプリッタ403を通される。
【0080】
しかしながら図8のシステムとは対照的に、アーム501またはアーム503のいずれかに方向付けられた単一光子の代わりに1つのX光子と1つのXX光子とからなる二光子(biphoton)が各アームに方向付けられる。この光子源は、時間ゼロで1つの二光子を、時間dt後に第2の光子を放射するように構成される。
【0081】
今度はシステムを通って移動する二光子が存在するので、前に示された単一光子検出器は、今度は二光子検出器A1、A2、B1およびB2に置き換えられる。二光子の有効波長は、個別の光子の有効波長の半分である。したがって、cos(Δφ)として変化する二光子検出器間の相関関係よりもむしろ、これらの相関関係は、今度はcos(2Δφ)>として変化する。したがって:
【数7】
【0082】
(V)
である。関連している4つの光子(すなわち2つのX光子と2つのXX光子)はそれから、エンタングルメントした4光子状態になる。したがって多数の位置間に、例えば量子暗号化における4者間に光子を配布することが可能である。
【0083】
図10は、図9のシステムの更なる変形例を示す。図10で光子源551は、入力状態:
【数8】
【0084】
を生成する。この入力状態は、光子をアーム555またはアーム557にランダムに方向付けるビームスプリッタ553に供給される。
【0085】
1つの二光子がアーム555を通り、この二光子は水平または垂直いずれかに偏光され得る。もしこれが垂直に偏光されれば、これは偏光ビームスプリッタ561を介して上部MZI559に通される。もしこれが水平に偏光されれば、これは偏光ビームスプリッタ561を介して下部MZI563に通される。同様にアーム557を通る二光子は、もし水平に偏光されればビームスプリッタ565によって上部MZI559に方向付けられ、もし垂直に偏光されればビームスプリッタ565によって下部MZI563に方向付けられる。
【0086】
したがって、もしある二光子が1つの偏光をもって、例えば垂直に偏光されてアーム555に方向付けられ、第2の二光子が反対の偏光をもって(例えば水平に偏光されて)経路557に方向付けられるならば、これらの二光子は両方とも上部MZI559で干渉してエンタングルメントさせられる。同様にもしこれらの光子が逆の偏光を有するならば、これらは下部MZI563によってエンタングルメントさせられる。
【0087】
2つの光子は、時間dtだけ離されていれば4光子エンタングルメント状態を生成する。上記の2つのスキームに関して、dtだけ離された2つの「二光子」は二光子検出器にとって弁別不可能に見えなくてはならない、言い換えればXおよびXX光子の両者は時間・帯域幅制限されていなくてはならない。これは、XおよびXX状態の両方を包含するために十分広いモードを有する、高いパーセル(Purcell)係数を取得するために対応して低いモードボリュームを有する、低Q空洞を使用することによって達成され得る。
【0088】
図11は、3つの経路を有する干渉計の図である。図2の干渉計では光子は、2つの経路の1つ、すなわち長いアームまたは短いアームを取り得る。図11では光子は、干渉計を通る3つの経路の1つを取り得る。
【0089】
図11の例では光子源601は水平に偏光された光子の源であり、これらの光子はそれからアーム605またはアーム607をたどるように無偏光ビームスプリッタ603を介して分割される。アーム605に沿って移動する光子は、それらの偏光を偏光回転子609によって90°だけ回転させられる。これは、垂直に偏光された光子という結果をもたらす。垂直に偏光された光子はそれから、偏光ビームスプリッタ611に通され、それから無偏光33/33/33°ビームスプリッタ613に通される。このタイプの3方向ビームスプリッタは、トリッタ(tritter)として知られている。
【0090】
それから光子は、干渉計615を通る3つの経路のうちの1つをたどり得る。これら3つの経路は、短いアーム617、φ1の位相差が生成される長いアーム619、およびφ2の位相差が生成される中間アーム621を通る。光子が3つの経路を取り得ることは、各粒子が3つの可能な状態を占め得るキュートリット(qutrits)が生成されることを可能にする。このような状態は、量子通信アプリケーションにおいて改善されたセキュリティを与え、ベル(Bell)の不等式のテストにおいてより強い非ローカル相関関係を与えることが示されている。
【0091】
長いアーム607に沿って方向付けられた光子は、水平に偏光されて、ビームスプリッタ623を介して干渉計615に方向付けられる。それからこれらの光子は、光子を3つの経路617、619および621のうちの1つに沿って方向付け得るトリッタ625に遭遇する。アーム619および621における位相変調器においてセットされた位相に依存してA1、A2およびA3における光子検出イベントは、B1、B2およびB3における光子検出イベントと相互に関係付けられる。
【0092】
図11の考えの拡張が図12に示されており、ここでは3つの経路の代わりに干渉計はN本の経路に拡張されるので、これはキューNイット(quNits)のための干渉計である。
【0093】
不必要な繰り返しを避けるために、図11を参照しながら説明された特徴を説明するために同様の参照番号が使用される。図11のトリッタ613および625は、N方向ビームスプリッタ651および653に置き換えられている。N方向ビームスプリッタ651は、φNの位相差を有する経路6550、6551からφNの位相差を有する経路655nまでのいずれかの経路に光子をランダムに方向付けることができる。これは、本システムを通り抜ける各粒子が図11を参照しながら説明されたセキュリティに関して量子通信のためにより多くの利益を有するN経路重ね合わせに置かれることを可能にする。
【0094】
図13は、エンタングルメント光子源を使用する量子暗号化の原理の図を示す。エンタングルメント光子源681は、エンタングルメント光子対のうちの一方の光子をAlice(アリス)683に送り、同じエンタングルメント光子対のうちの他方の光子をBob(ボブ)685に送る。Aliceが彼女の光子に測定を行うと、Bobの光子の波動関数は崩壊し、それによってAliceがBob685に情報を送ることを可能にする。
【0095】
エカート(Ekert)プロトコルとBB84スキームの2粒子アナログとを含む、エンタングルメント光子対に基づく多くのプロトコルが存在する。後者の場合、各光子対(例えば水平/垂直および対角線/反対角線)からランダムに選択された2つの基底のうちの任意の1つに同じ偏光を持つようにエンタングルメントさせられた光子を放射するために光子源が使用され得る。AliceとBobは各々、これらの光子の1つを受け取ることができ、いずれかの基底においてこれをランダムに測定できる。これらの測定後に光子源は、各光子対のためにどの基底を使用したかを公表することができ、それからAliceとBobは両者が光子源と同じ基底で測定されたときの測定値からのデータだけを保存する。
【0096】
図14。エンタングルメント光子源701は、図2の干渉計に基づいている。光子源703は、後で無偏光ビームスプリッタ705に通される水平に偏光された光子を生成する。ビームスプリッタ705は、光子をアーム707またはアーム709のいずれかに沿って方向付けることができる。水平偏光のアーム707に沿って方向付けられた光子は、偏光回転子711によって垂直偏光に変えられる。垂直に偏光された光子はそれから、偏光ビームスプリッタ713に通されて、図2を参照しながら説明された干渉計と同じである干渉計に通される。
【0097】
アーム709を通る水平に偏光された光子はそれから、ビームスプリッタ717に、それから干渉計715に方向付けられる。左から右の方向に干渉計715を通って移動する垂直に偏光された光子は、右から左に干渉計715を通って移動する水平に偏光された光子と位置的および時間的にエンタングルメントさせられる。
【0098】
左から右へ干渉計を通って移動する垂直に偏光された光子は、この干渉計を出て、それらの偏光をHに変換する偏光回転子725へのアーム723に沿って、あるいはアーム727に沿って光子を方向付ける無偏光ビームスプリッタ721を通り抜ける。それからこれら2つの経路(723および727)は、偏光ビームスプリッタ728で再結合され、経路741に沿って方向付けられる。このようにして、干渉計715によって加えられた変調は偏光変調に変換される:経路723および727を取った両成分は、同時に、しかし直交する偏光をもって経路741に沿って移動する。
【0099】
右から左へ干渉計715を通って移動する光子は、光子をアーム733および光子の偏光をVに変換する偏光回転子735に、またはアーム737のいずれかに方向付けるビームスプリッタ731に作用する。これら2つの経路(733および737)はそれから、偏光ビームスプリッタ738で再結合されて経路751に沿って方向付けられる。この仕方で偏光エンタングルメント光子は、下記に説明される図13に示された(従来技術の)量子暗号化システムに使用され得る装置701によって生成される。
【0100】
量子暗号法を実行するためにCharlieは、放射される各光子のためにランダムに選択された2つの基底(例えば水平/垂直または対角線/反対角線)の1つにおいて光子を符号化するように2つの波長板739および729を使用しなくてはならない。このプロトコルがどのように進行するかの理解を容易にすることは、位相変調器715が0度にセットされて両波長板739および729が各光子に関してランダムに一致して動かされることを仮定する。この処置は、ファイバ内を移動する2つのエンタングルメント光子がCharlieにだけ知られた基底において等しい偏光であることを保証する。Aliceの装置は、Aliceの測定基底として機能する0°または45°いずれかの変調を彼女が加えることを可能にする波長板745を備える。Aliceは、各光子の間でランダムに測定を変える。それから光子は、後で光子を検出器A1または検出器A2に方向付ける偏光ビームスプリッタ747に通される。
【0101】
同様に、右から左へ干渉計715を通り抜けた光子はそれから、ケーブル751を通ってBob753に方向付けられる。Bobはまた、彼が各光子の間でランダムに0°基底と45°との間で偏光を変化させるために使用する波長板755を有する。それから光子は、後で光子を検出器B1または検出器B2に方向付けるビームスプリッタ757に通される。AliceとBobが彼らの測定を行った後にCharlieは、彼が各光子を符号化するためにどの基底を使用したかを公表する。
【0102】
彼らの波長板745および755によって定義されたような基底において彼らのシステムにおける測定を行うAliceまたはBobは、他の受け手における光子の波動関数を崩壊させ、これによって彼らが同じ基底を使用した場合にAliceとBobの結果の間には相関関係が存在する。それからAliceとBobは、彼らが整合性のある基底を使用したときからのデータだけを保持する。
【0103】
上記の説明では位相変調器715は0°にセットされ、両波長板739および729は一致して動かされる(すなわち相関付けられる)が、各光子に関してランダムにセットされる。このようにして、光子が偏光において相関付けられる(しかし各光子に関する波長板のセッティングではない)という事実は、エンタングルメント光子の配布に先立ってCharlieによって公表されることが可能であり、それからこのプロトコルは従来技術で指定されたように進行する(例えば、Quantum Cryptography, N. Gisin et al, Review in Modern Physics, VoI 74 (2002) page 153)。この処置は、ファイバ741および751内を移動する2つのエンタングルメント光子がCharlieにだけ知られた基底において等しい偏光であることを保証する。
【0104】
しかしながらAliceとBobの光子が相関付けられるか反相関付けられるかどうかは、位相変調器715によって加えられた位相変調と波長板739および729が何にセットされたかとの両方に依存する:例えばもし位相変調器715がπにセットされて波長板がなお一致して動いたならば、AliceとBobとによる光子検出イベントは反相関付けられる:もしAliceが彼女の装置でH光子を測定するならばBobは垂直に偏光された光子を受け取る、などといったことである。したがってもし位相変調器715と波長板739および729が相関付けられるか反相関付けられるどうかとが各量子キーの配布時に変えられたならば、各光子対が相関付けされるべきか反相関付けられるべきかに付いての情報も、AliceとBobがキーを首尾よく復号するためにCharlieによって公表される必要がある。
【0105】
図15は、本発明の一実施形態による量子暗号化システムの更なる変形例を示す。
【0106】
図15でBob803は、Alice801にキーを伝達する。AliceとBobが有する装置は基本的に、AliceとBobとの間に広げられた、図2を参照しながら説明された干渉計である。この特定の実施形態ではBobは、水平に偏光された光子を生成し得る光子源805を有する。ビームスプリッタ807は、光子をアーム809またはアーム811のいずれかに方向付ける。アーム809に方向付けられた水平に偏光された光子は、光子の偏光を垂直偏光に変換する偏光回転子813を通り抜ける。垂直に偏光された光子はそれから、垂直に偏光された光子を干渉計819の開始点である無偏光ビームスプリッタ817に後で方向付ける偏光ビームスプリッタ815を通過する。干渉計819は、AliceとBobとの間で分割される。干渉計819は、長いアーム821と短いアーム823とを備える。長いアーム821にはBob803によって制御される第1の位相変調器825が存在する。この特定の例では長いアームと短いアーム823の両者ともBobからAlice801へ延びている。長いアームには第2の位相変調器827も設けられているが、この第2の位相変調器はAliceの制御下にある。それから長いアーム821と短いアーム823は、Alice側の無偏光ビームスプリッタ829で結合される。それから光子は、彼女の位相変調器827を使用するAliceと彼の位相変調器825を使用するBobとの両者によって加えられた位相変調に依存してAliceの検出器A1またはAliceの検出器A2のいずれかに方向付けられる。アーム811を通る水平に偏光された光子は、直接Aliceに伝達されて、偏光ビームスプリッタ831を通り、それからAlice801とBob803両者の間に広げられた干渉計819を通る。AliceからBobに移動する光子はそれから、無偏光ビームスプリッタ817に作用し、AliceとBobの両者によって加えられた位相変調に依存してBobの検出器B1またはB2のいずれかに入る。
【0107】
AliceとBobが装置を通過する各光子対に関して彼らの位相変調器を0とπとの間でランダムに変えるが、彼らが彼らの位相変調器のセッティングを秘密にしておく例を考える。すべての光子が測定された後にAliceは、彼女が各光子に関してどのセッティングを使用したかを公表できる。それからBobは、位相変調器925および927によって導入された全位相(0、πまたは2π)を知り、その結果として各光子対が相関付けされるべきであるか(全位相=0または2π)、あるいは反相関付けられるべきであるか(全位相=π)どうかを知る。Bobはまた、各光子がどこで検出されたか(B1またはB2)を知っているので、すべてのエンタングルメント光子対に関して彼はAliceが彼女の光子をどこ(A1またはA2)で検出したかを判定できる。この情報は、秘密キーを形成する。Aliceは、彼女の光子がメッセージを符号化するためにどこで検出されたかについての彼女の秘密の知識を使用できる。
【0108】
この装置では光子源805は、干渉計における遅延だけ時間的に離された弁別不可能な光子対を放射する。Aliceはまた、取り外し可能な光子源841を有する。AliceとBobが同時に彼らの測定を行うことは重要である。したがってBobは、Aliceが彼女の光子を測定する前に彼の光子を測定すべきではない。この例ではAliceは、検出器A1およびA2の前の光ファイバループによって与えられた量子メモリ843に彼女の光子を保存できる。
【0109】
図16は、図8および15に基づく暗号化システムを示す。如何なる不必要な繰り返しも避けるために、同様の特徴を示すために同様の参照番号が使用される。図8を参照しながら説明されたように、光子源401は、「二重励起子→励起子→空」カスケードから1対の偏光エンタングルメント光子を放射する。光子源干渉計405と分光計413は、これらの光子を、両方がH偏光を有し、タイムビンズ(time-bins)においてエンタングルメント光子対に変換する。分光計413は、一方の光子(二重励起子)が、その偏光が偏光回転子453によって垂直偏光に回転させられるアーム451に沿って左方向に移動して、他方の光子(励起子)がアーム455に沿って右方向に移動することを保証する。これら2つの光子はそれから、図15と同様な仕方でAlice459とBob461とによって共有される干渉計457に供給される。
【0110】
アーム451に沿って移動する光子は、Alice459に方向付けられる。この光子は最初に、アーム465に沿って光子を方向付けるAliceの偏光ビームスプリッタ463を通して送られる。それから光子は、干渉計457に入る。この干渉計は、図15を参照しながら説明されたタイプであって、同様の特徴を説明するために同様の参照番号が使用される。
【0111】
アーム455に沿って移動する光子は、Bobに方向付けられて、偏光ビームスプリッタ467によってアーム465に沿って反射される。それから光子は干渉計457に入る。
【0112】
Alice459とBob461が装置を通過する各光子対に関して彼らの位相変調器を0とπとの間でランダムに変えるが、彼らが彼らの位相変調器825、827のセッティングを秘密にしておく例を考える。すべての光子が測定された後にAliceは、各光子に関して彼女がどのセッティングを使用したかを公表できる。それからBobは、位相変調器825および827によって導入された全位相(0、πまたは2π)を知り、その結果として各光子対が相関付けされるべきであるか(全位相=または2π)、あるいは反相関付けられるべきであるか(全位相=π)どうかを知る。Bobはまた、各光子がどこ(B1またはB2)で検出されたかを知っているので、すべてのエンタングルメント光子対に関して彼はAliceが彼女の光子をどこ(A1またはA2)で検出したかを判定できる。この情報は、秘密キーを形成する。Aliceは、彼女の光子がメッセージを符号化するためにどこで検出されたかについての彼女の秘密の知識を使用できる。
【0113】
図17は、量子干渉法または量子撮像のために使用され得る本発明の一実施形態の図である。この干渉計の構成は、図2を参照しながら説明されたものに類似している。光子対は、光子源901によって生成され、この特定の例では水平偏光を有する光子を通す偏光ビームスプリッタ903を通り抜ける。水平に偏光された光子対はそれから、光子をアーム907またはアーム909にランダムに方向付ける無偏光ビームスプリッタ905に通される。このシステムは、1対の光子がアーム907に通される、あるいは1対の光子がアーム907に通される、いずれかのときに干渉計として、あるいは撮像するために、使用され得る。
【0114】
干渉計913は、そのアームの1つにおいて与えられた(2n+1)π(ここでnは整数である)にセットされた固定位相偏移φ1を有する。これは、913に関してこのセッティングを選択することによって905から干渉計に入るときに反対の経路を取った2つの光子が両方とも905に戻るように方向付けられることはないことを保証するので、重要なビットである。もし1つの左方向に移動する光子が経路920で検出されれば、右方向に移動する光子はアーム923になければならず、またもし1つの左方向に移動する光子が経路921で検出されれば、右方向に移動する光子はアーム922になければならない。したがって2つの二光子検出器が二光子を検出できる唯一の方法は、最初に干渉計に供給された2つの光子が同じ方向に無偏光ビームスプリッタ903を離れる場合である。今後は、これらの二光子を参照しながらこの実施形態について述べることが容易になる。
【0115】
二光子は2つの経路のうちの1つをたどることができる。もしこれが経路907をたどるならば、これの偏光は、垂直に偏光されるように911によって回転させられる。垂直に偏光された二光子はそれから、干渉計に方向付けられる。この特定の例でわれわれは、φxが水平に偏光された二光子にだけ作用することを仮定する。したがって垂直に偏光された二光子は、位相変調器915を変更されないまま通り抜けてビームスプリッタ905に作用する。
【0116】
他の二光子状態は、ビームスプリッタ905に入って水平に偏光されて、経路909に方向付けられる。経路909に方向付けられた二光子は、可変位相変調器φx915を通り抜ける。可変位相変調器は水平偏光を有する二光子を変調するので、この二光子の位相は変調される。それからこれらの光子は、右から左へ移動して干渉計913を通り抜ける。それから二光子は、干渉計913を出て、水平に偏光された二光子をビームスプリッタ905に作用する垂直に偏光された二光子に変換する偏光回転子911に入る。
【0117】
変調器915によって加えられた位相変化に依存して二光子のこれら2つの成分は、これらがビームスプリッタ905に到達したときに干渉する。それからこれらは、複屈折要素915に依存して二光子検出器A1またはA2のいずれかに方向付けられる。
【0118】
二光子によって経験された如何なる位相変化も単一光子波長の半分だけ変化する高速検出(detection at rate)A1の変動という結果をもたらす。このようにしてこのシステムは、単一光子を使用して動作する干渉計の解像度を2倍にしている。
【0119】
二光子状態で動作する干渉法システムは、Edamatsu et al Phys. Rev. Lett 89 pages 213601-1 to 213601-4 (2002)によって提案されている。しかしながら図15のシステムは、二光子が同じ経路を通って(異なる方向にではあるが)移動することにおいて特に有利であり、このことは、二光子状態の2つの部分が必要性の変わり得る遅延線に関して、またはEdamatsuによって提案されたタイプのアクティブな安定化に関して同じ時刻に中心のビームスプリッタ905に自動的に入射することを意味する。
【0120】
上記のように図17のシステムは、量子撮像のために使用され得る。このシステムは、撮像されるべき物体を偏光依存位相偏移要素φxとすることによって量子撮像のために使用され得る。
【0121】
φxは、液晶の位相変調特性に関して電圧の関数を変える液晶であり得る。これは、複屈折結晶(例えば水晶)の或る構成であり得る。これは光ファイバ部品であり得る。
【0122】
サンプルの高さを表現することは、位相偏移要素に関して撮像するために有用であろう。これの可能な実現形態は、図17の複屈折位相変調器915を置き換え得る図18aに示されている。図18aにおいて偏光ビームスプリッタ931は、光子を経路933または経路935に方向付ける。図17の偏光要件にしたがってビームスプリッタ931は、水平偏光を有する光子を経路933に沿って、またxyステージに置かれたサンプル上に方向付ける。それからこれらの光子は、経路933と935とを結合する第2のビームスプリッタ939に反射される。このようにして経路933を取ったこれらの光子は、サンプル高さ917によって決定された可変位相偏移を経験する。
【0123】
サンプル厚さを表現することは、位相偏移要素に関して撮像するために有用であろう。図18bでは再び、偏光ビームスプリッタであって、水平偏光を有する光子をアーム943に方向付け、垂直偏光を有する光子をアーム945に方向付けるビームスプリッタ941が設けられている。アーム943に通された光子は、再びxyステージに配置されたサンプル947を通り抜ける。サンプル947を通る光子の透過は、光子の位相変化を引き起こす。経路943および945は、結合器として機能する偏光ビームスプリッタ949で再結合される。このようにして図18aまたは18bの構成を使用すれば、図17の構成を使用してサンプルを調べることが可能である。
【0124】
図9、10および17の装置は、単一光子イベントから2光子イベントを決定できる必要がある。したがって単一光子イベントと2光子イベントとの間を弁別できる検出器が必要とされる。図19は、ある幾つかの可能な検出器を示す。図19aでは、光子数決定検出器、例えば超伝導熱量計951が使用される。図19bには、不平衡である干渉計、すなわち一方のアームが他方のアームより長い干渉計が単一光子検出器A2 955の前に設けられた2光子検出器のもう1つの可能な例が示されている。もし干渉計953において時間遅延だけ時間的に離された2つの光子が検出されるならば、2光子状態が検出されていなければならない。
【0125】
最後に、その出力を検出器A1またはA2のいずれにも等しく方向付ける無偏光スプリッタ957によって2光子検出器の更なる例が与えられている。もしこれら2つの検出器が同時に起動(fire)するならば、2光子状態が選択されたことは明らかである。これらの考えの変形例および組合せも考えられ得る。上記はまさに、2光子検出器の可能な例を表している。
【0126】
図20は、図17の量子撮像/干渉計の更なる変形例である。図20では弁別不可能な光子を放射する水平偏光光子源1011が使用される。この水平偏光光子源1011は、時間dtだけ離された光子を不平衡MZI1013に出力する。
【0127】
マッハ・ツェンダー干渉計1013は、光子を短いアーム1017または長いアーム1019のいずれかに方向付ける50/50ビームスプリッタ1015を有する。短いアーム1017と長いアーム1019は、時間遅延dtに相当する経路差、すなわち光子源1011を離れる光子間の間隔を有する。したがってもし第1の光子が長いアーム1019を取り、第2の光子が短いアーム1017を取るならば、これらの光子はビームスプリッタ1021に同時に作用して、2光子干渉が発生する。これは、ビームスプリッタ1021が二光子(両方の光子)をアーム1023、または二光子をアーム1025のいずれかに方向付けることを意味する。これは、アーム1025をたどり、それから特定の偏光の光子、例えば水平に偏光された光子にだけ作用するように構成された可変位相変調器1029を通り抜けて水平に偏光された光子によって1つの状態が表される重ね合わせを形成する。それからこの二光子は二光子を垂直偏光に変換するための偏光回転子1027に通される。
【0128】
二光子状態の第2の成分は、その偏光を偏光回転子1027を使用して垂直にまで回転させるアーム1023を通る。垂直に偏光された光子はそれから、垂直に偏光された光子の位相を変調しない可変位相変調器1029に通される。そしてこれらの光子はそれから、ループを回り続ける。二光子の時計回りおよび反時計回り両方の成分はそれから、無偏光ビームスプリッタ1021に同時に入射して同じ垂直偏光を持つ。
【0129】
複屈折位相変調器1029によって加えられた位相に依存して二光子は、干渉計1013の短いアーム1017または干渉計1019の長いアーム1019のいずれかに沿って方向付けられる。短いアーム1017に沿って方向付けられた二光子は垂直偏光を持ち、偏光ビームスプリッタ1031によって二光子検出器A1に方向付けられる。長いアーム1019に沿って方向付けられた二光子もまた垂直偏光を持ち、ビームスプリッタ1033によって二光子検出器A2に方向付けられる。
【0130】
図20の装置は、図17の装置と同じ仕方で動作する。二光子によって経験された如何なる位相変化も高速検出(detection at rate)A1の変動という結果をもたらすが、単一光子波長の半分だけ変化する。このようにしてこのシステムは、単一光子を使用して動作する干渉計の解像度を2倍にしている。
【0131】
光ファイバジャイロスコープは、それらの可動成分の欠如と高い精度と小型サイズとによって航空・宇宙の用途において非常に重要である。次に来るジャイロスコープは、回転運動が測定され得る精度を2倍にするためにわれわれの前の図2に基づいている。
【0132】
図21は、本発明の一実施形態によるジャイロスコープである。これは、図17のシステムの密接な類似物であって、同じ説明が当てはまる。図17では複屈折位相変調器915が、左からビームスプリッタ905に入射する二光子と右から入射する二光子との間に位相偏移を導入する。これに代わって図21では、ファイバループの回転速度が二光子の時計回りに移動する成分と反時計回りに移動する成分との間に位相偏移を導入する。
【0133】
古典的サニャック干渉計では、光のビームは1つの領域を取り囲む同じリングまたは経路の周りで2つの異なる方向に分割されて方向付けられる。入射点に戻ると光は、干渉計を出ることを許されて、干渉計パターンが取得される。もし干渉計が回転プラットホーム上に置かれれば、干渉計パターンのラインはプラットホームが回転していない干渉計パターンの位置と比較して横にずらされる。これは、プラットホームが回転しているときに入射/射出のポイントが光の通過時間中に動くからである。これは、一方のビームが干渉計の他方の経路を移動するビームより短い距離をカバーしたことを意味する。これは、この動きによって引き起こされた経路の変化が干渉計パターンに偏移を再現するということである。したがってプラットホームの各角速度で取得された干渉パターンは、その角速度に特有の異なる位相偏移を特徴付ける。
【0134】
図21において、光子は光子源1051によって生成され、これらの光子はそれから、この特定の例では水平偏光を有する光子を通すように構成された偏光ビームスプリッタ1053を通り抜ける。それから光子は、サニャック干渉計1057のための入射点であるビームスプリッタ1055に入る。サニャック干渉計は、半径Rを有するN個のループを備える。このシステムのファイバのN個のループの付加は、大きな空間を占めることなくファイバループの長さを増加させることによってジャイロスコープの感度を増加させる。
【0135】
光子は、これらの光子が経路1059に沿って移動する第1の状態を占めることができる。この第1の状態では光子は、これらの光子の偏光をこのシステムへの入口で回転子1063によって90°だけ回転させられる。第2の状態で光子は、経路1061に沿って移動する。両方の状態で光子は干渉計1065に入る。干渉計1065は、干渉計1065の2つのアーム間にdtという遅延時間を有する不平衡干渉計である。遅延時間dtは、光子源1051から放射された光子間の時間間隔に対応する。干渉計1065は、そのアームの1つにおいて与えられる(2n+1)π(ここでnは整数である)にセットされた固定位相偏移Φ1を有する。これは、1065に関してこのセッティングを選択することによって1055から干渉計に入るときに反対の経路を取った2つの光子が両方とも1055に戻るように方向付けられることはないことが保証されるので、重要なビットである。したがって2つの二光子検出器が1つの二光子を検出できる唯一の方法は、最初に干渉計に供給された2つの光子が同じ方向に無偏光ビームスプリッタ1055を離れる場合である。
【0136】
二光子状態の2つの成分(時計回りおよび反時計回り)はそれから、ビーム結合器1055で再結合される。干渉計の回転によって引き起こされた位相差に依存して光子は、検出器A1または検出器A2のいずれかに方向付けられる。二光子によって経験された如何なる位相変化も、単一光子波長の半分だけ変化する光束検出A1の変動という結果をもたらす。したがって2光子サニャック干渉計の使用は、回転または動きが検出される精度を2倍にできる。
【0137】
図22は、図20に示されたシステムに基づいている。図20では複屈折位相変調器1029が、左からビームスプリッタ1021に入射する二光子と右から入射する二光子との間に位相偏移を導入する。これに代わって図21では、ファイバループ1123の回転速度が二光子の時計回りに移動する成分と反時計回りに移動する成分との間に位相偏移を導入する。
【0138】
詳細には、光子源1111によって弁別不可能な水平に偏光された光子が生成される。これらの光子はそれから、不平衡マッハ・ツェンダー干渉計1113に供給される。干渉計1113は、短いアーム1117と長いアーム1119とを有する不平衡干渉計である。したがってもし第1の光子が長いアーム1113を取り、第2の光子が短いアーム1117を取るならば、これらの光子は同時にビームスプリッタ11121に作用して、2光子干渉が発生する。これは、ビームスプリッタ1121が二光子(両方の光子)をアーム1125または二光子をアーム1027のいずれかに方向付けることを意味する。サニャック干渉計1123内の光子は、2つの状態の重ね合わせを有しており、第1の状態ではこれらの光子は経路1127をたどってループの周りを反時計回りに進行し、それから偏光回転子1129に入り、光子が出口点1121に達するときには垂直に偏光された回転を持っている。時計回り方向に干渉計の周りを移動する光子は、経路1121に入って先ず偏光回転子1129を通り抜ける。これらの光子はまた、ビーム結合器/スプリッタ1121を経由して干渉計1123を退出する。この点における光子は、垂直偏光を有し、サニャック干渉計1123において導入された位相差に依存して二光子検出器A1またはA2のいずれかに到達する。
【0139】
このようにして、上記の2光子サニャック干渉計は、回転運動が検出される精度を2倍にする。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光子間に干渉を生成するために使用される光学系の分野に関する。より特定的には本発明は、極めて多様な用途のために量子準位で光子の性質を利用するために光子を干渉させ得る光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
干渉法は、量子力学の最も反直感的特長の1つの、すなわち多粒子重ね合わせの利用を可能にする量子力学実験の主要部分である。重ね合わせの有名な例は、2つの粒子のうちの一方の粒子の測定が他方の粒子の状態を即座に決定する2つの粒子のエンタングルメント(絡み合い:entanglement)である。
【0003】
しかしながら状態の重ね合わせを利用する多くの実験は、精確にバランスの取れた多数の干渉計を必要とし、これらの使用は温度変動、歪みなどによって引き起こされる干渉計の位置のドリフトといった古典的な物理現象によって妨げられる可能性がある。これらの問題は、可変遅延線、能動的安定化などによって対処されてきたが、このことは、余分な構成要素と、また時には複雑な作業手順を必要とする。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、少なくともある程度は上記の問題に対処しており、第1の態様では光子源と、光学系を通る第1の経路をたどるように光子を方向付けるように構成された第1の方向付け要素と、上記第1の経路とは逆の経路であって上記光学系を通る第2の経路をたどるように光子を方向付けるように構成された第2の方向付け要素と、第1の経路をたどる光子と第2の経路をたどる光子との間の相対的位相偏移を変える手段と、を備える光学系であって、第1の経路を通って移動する光子が第2の経路を通って移動する光子とは異なる偏光を有するように構成された光学系を提供する。
【0005】
このようにして2つの別の干渉計とは対照的に、光子が同じ干渉計を通って反対方向に移動することを可能にすることによって、ドリフトによる問題は解消される。
【0006】
光子源は好適には、非古典的光源、例えば専用の単一光子源、または量子情報を搬送できる減衰パルスを出力し得る減衰レーザーまたはLEDである。後の場合ではパルスは、N=0、1および2光子などの状態の統計的混合を有する。代替として光子源は、Fock(フォック)状態(nが少なくとも1という整数であるとしてn個の光子のグループ)を放射できる。
【0007】
ある幾つかの実施形態では第1の経路は並列に接続された複数のサブ経路を備え、上記第2の経路はこれら複数のサブ経路の逆のサブ経路を備える。この複数のサブ経路はマッハ・ツェンダー干渉計を形成し得る。
【0008】
もし光子が予め決められた時間間隔dtで光子源によって放射されるならば、これらのサブ経路の一方を通って移動する光子を他方のサブ経路に関して時間dtだけ遅らせることによって時間間隔dtで放射された2つの光子を重ね合わせるために本システムを使用することが可能である。もし光子源によって放射されたこれらの光子が相等しければ、位置および時間における光子のエンタングルメントが発生する。
【0009】
これら複数の経路を形成する2つのサブ経路が存在し得る。これは、一方の状態が一方のサブ経路を取る光子に対応し、他方の状態が他方のサブ経路を取る光子に対応する2つの状態の重ね合わせを各光子が占有するときに、キュービット(qubit)が形成されることを可能にする。
【0010】
更なる一実施形態では、Nが少なくとも2という整数であるとして、N本のサブ経路が複数の経路を形成する。これは、N本の経路の各々に対応するN個の状態の重ね合わせである1つの状態を占める光子によってキューNイット(quNits)が形成されることを可能にする。
【0011】
好適にはN個のアームのうちの少なくともN−1個のアームは、偏光依存性位相偏移要素を有する。
【0012】
本システムは、2光子を備える二光子(bi-photon)を取り扱うように構成され得る。このようなシステムでは、光子源は二光子を出力するように構成され、上記第1の方向付け要素は二光子を方向付けるように構成され、上記第2の方向付け要素は二光子を方向付けるように構成される。
【0013】
また非縮退エンタングルメント光子(non-degenerate entangled photons)を放射するように構成された光子源も使用され得る。このシステムはそれから、光子を位相的に更にエンタングルメントさせるために、またはエンタングルメント光子源の完全性を検査するために使用され得る。
【0014】
本システムは、位相状態を重ね合わせして光子をエンタングルメントさせるために使用され得る。一方の経路をたどる1つの偏光を有する光子と他方の経路をたどる異なる偏光を有する光子とを持つことが必要であるときに、ある特定の時間にある特定の経路をたどるある特定の偏光を有する光子と持つことが必要であるので、ある幾つかの光子はこのシステムでは使用されない可能性がある。本システムの効率は、偏光的にエンタングルメント状態であって、垂直に偏光された光子とこの垂直に偏光された光子の第1の時間間隔後に放射された水平に偏光された光子とを有する第1の状態と、水平に偏光された光子と第1の時間間隔後に放射された垂直に偏光された光子とを有する第2の状態と、の重ね合わせである状態を生成するように構成された光子源を使用することによって改善され得る。
【0015】
本システムの効率を改善するためのもう1つの方法は、上記の光子のための第3の経路と上記第3の経路の逆の経路である光子のための第4の経路と上記第3の経路をたどる光子と上記第4の経路をたどる光子との間の相対的位相偏移を変える手段とを更に備えるシステムであって、上記第3の経路を通って移動する光子が上記第4の経路を通って移動する光子とは異なる偏光を有するように構成され、光子の偏光に依存して上記第1の経路または第3の経路のいずれかに沿って光子を方向付ける手段と光子の偏光に依存して上記第2の経路または第4の経路のいずれかに沿って光子を方向付ける手段とを更に備えるシステムを使用することである。
【0016】
上記の構成は、そうでなければ光子が誤った偏光を有する第1の経路に到着しているので失われたであろう光子が第3の経路に沿って方向付けられることを可能にする。
【0017】
上記のシステムは、少なくとも2者間の量子通信のために構成されることが可能であり、本システムは更に第1者に配置された第1の検出システムを備えており、この第1の検出システムは第1者によって受け取られた光子の量子状態を判定するように構成されており、本システムは更に第2者に配置された第2の検出システムを備えており、この第2の検出システムは第2者によって受け取られた光子の量子状態を判定するように構成されており、相対的位相偏移を加えるための上記手段は制御可能な複屈折位相変調器を備えている。
【0018】
一実施形態では本システムは更に、上記第1の経路をたどったキャリアを上記第1者に方向付けるように構成された第1の通信手段と上記第2の経路をたどったキャリアを上記第2者に方向付けるように構成された第2の通信手段とを備える。このようにして両者は第1、第2の経路の外に留まる。
【0019】
更なる実施形態では、第1、第2の経路は2者間で分割され、位相変化手段は第1者の制御下で動作する第1の位相変調器と第2者の制御下で動作する第2の位相変調器とを備える。
【0020】
本システムはまた、物体の調査または撮像のために構成されることが可能であり、上記システムは上記物体に作用するための第1の偏光を有する光子と上記物体を迂回するための第2の偏光を有する光子とを方向付けるように構成された、上記第1の経路に配置された第1の偏光ビームスプリッタを備えており、上記ビームは上記物体に作用するための第1の偏光を有する光子と上記物体を迂回するための第2の偏光を有する光子とを方向付ける第2の偏光ビームスプリッタで再結合される。
【0021】
本システムは、透過または反射における物体を撮像または調査するように構成され得る。
【0022】
本システムはまた、光子が同一ポイントで第1、第2の経路に出入りし、また位相変化が第1、第2の経路の物理的回転によって達成されるジャイロスコープとして構成され得る。第1、第2の経路の物理的回転によってこれらの経路の光学的長さが変化し、それによって回転が検出され得る。
【0023】
前述のように本発明は、エンタングルメント光子源を吟味するために使用されることが可能であり、上記システムは偏光エンタングルメント光子の光子源を備えており、上記偏光エンタングルメントを位相エンタングルメントに変換する手段のように構成され、1対のエンタングルメント光子のうちから一方の光子は第1の経路をたどるように方向付けられ、他方の光子は第2の経路をたどるように方向付けられ、上記位相変化手段は上記光子源が十分にエンタングルメントしている場合に第1、第2の経路から光子の退出経路を予測することが可能であるように、位相差を導入するように構成された位相変調器である。
【0024】
要約すれば相対的位相偏移を変える手段の可能な例は、複屈折要素、例えばサンプルを撮像または調査するときに使用されるような少なくとも1つの経路にサンプルを移動可能に取り付ける手段、または例えばジャイロスコープとして動作するときに使用されるような第1の経路と第2の経路のための移動性マウント(取り付け具)である。
【0025】
好適には本システムは、上記第1の経路をたどった光子を検出するための第1の検出器と、上記第2の経路をたどった光子を検出するための第2の検出器と、上記第1、第2の検出器の結果を相互に関連付ける手段と、を備える。この構成は、エンタングルメントが達成されたイベントが識別されることを可能にする。これらのイベントはそれから、分析時にポスト選択(post selected)され得る。
【0026】
本システムで二重電子が使用される場合、検出イベントを登録するために二重電子検出器が使用される。
【0027】
第2の態様では本発明は、第1の偏光を有する光子を第1の経路をたどるように方向付けることと、同時に第2の偏光を有する光子を上記第1の経路の逆の経路である第2の経路をたどるように方向付けることと、上記第1の経路をたどる光子と上記第2の経路をたどる光子との間の相対的位相偏移を変えることと、を備える、光子を干渉させる方法を提供する。
【0028】
この方法は好適には更に、上記第1、第2の経路を退出する光子の相関関係を測定することを備える。
【0029】
次に、本発明は、以下の図において非限定的な実施形態を参照しながら説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】位置および時間的エンタングルメントを説明するために使用された従来技術の干渉計の図である。
【図2】本発明の一実施形態による干渉計の図である。
【図3】図2のシステムにおける検出器間の相関関係を示す実験データのプロットである。
【図4】汎用入力状態から位相エンタングルメント状態を生成するために使用される本発明の一実施形態による干渉計の図である。
【図5】図4の干渉計についてエンタングルメント入力状態を生成するために使用されるシステムの図である。
【図6】入力状態が図5を参照しながら説明される異なる方法を使用して生成される干渉計の図である。
【図7】偏光されていない光子源と本発明の一実施形態による並列の2つの干渉計とを使用する干渉計の図である。
【図8】本発明の一実施形態による、偏光エンタングルメント状態を分析するために使用され得るシステムの図である。
【図9】本発明の一実施形態による多光子エンタングルメントシステムの図である。
【図10】多光子エンタングルメントシステムを有する本発明の更なる一実施形態の図である。
【図11】本発明の一実施形態によるキュートリット(qutrits)のために構成されている干渉計である。
【図12】本発明の一実施形態による量子Nイット(quantum quNits)のための干渉計である。(なお、「多数の量子ビット」は多くのキュービット(quBits)(すなわち1と0の重ね合わせ)を意味するが、これは単一のN量子ビット(quNit)が多数の状態で存在し得る「量子マルチビット」である)。
【図13】エンタングルメント光子源を使用する量子暗号化システムの概念を示す図である。
【図14】本発明の一実施形態による更なる量子暗号化システムを示す図である。
【図15】本発明の一実施形態による更に別の量子暗号化システムを示す図である。
【図16】本発明の一実施形態による更に別の量子暗号化システムを示す図である。
【図17】本発明の一実施形態による量子干渉計を示す図である。
【図18】(a)は、反射モードで物体を調べて表面高さをマップするために干渉計がどのように使用され得るかを示す図であり、(b)は、透過モードで物体を調べて厚さをマップするために干渉計がどのように使用され得るかを示す図である。
【図19】(a)は、多光子検出器の図であり、(b)は、不平衡干渉計と単一光子検出器の図であって、この組合せは2つの光子が受け取られたかどうかを判定するために使用され得るものであり、(c)は、2つの単一光子検出器と組み合わされた50/50ビームスプリッタの図である。
【図20】本発明の更なる一実施形態による量子干渉計の図である。
【図21】本発明の更なる一実施形態による2光子サニャック(sagnac)ジャイロスコープの図である。
【図22】本発明の更なる一実施形態によるサニャックジャイロスコープの更なる変形例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、従来技術によるいわゆるFranson(フランソン)タイプ干渉計の図である。フランソン干渉計は、Franson Phys Rev Lett 62 2205 to 2208 (1989)において詳細に説明されている。
【0032】
フランソンの実験では光子源1は、短時間に連続して光子を出力するように構成されている。光子源1からの光子が第1の経路5または第2の経路7のいずれかに沿って方向付けられることを可能にするビームスプリッタ3が設けられている。ビームスプリッタ3は、無偏光(non-polarising)ビームスプリッタである。すなわち、これは、光子の偏光とは無関係に第1の経路5または第2の経路7のいずれかに光子をランダムに方向付ける。
【0033】
第1の経路5を通る光子は、第1のマッハ・ツェンダー(Mach Zehnder)干渉計(MZI)9内に方向付けられる。第1のMZI9は、無偏光ビームスプリッタ11を備える。ビームスプリッタ11は、光子を短いアーム13または長いアーム15のいずれかに沿って方向付ける。長いアーム15は、このアームに沿って移動する光子にφaの位相変調を加える位相変調器16を有する。次に、短いアーム13と長いアーム15の出力は、ビームスプリッタ17において結合される。そして、光子は、第1の検出器A1または第2の検出器A2に方向付けられる。
【0034】
同様に、第2のアーム7に方向付けられた光子は、第2のMZI23に方向付けられる。第2のMZI23は、光子を短いアーム27または長いアーム29のいずれかに方向付ける第1のビームスプリッタ25を備える。長いアーム29は、このアームに沿って移動する光子にφbの位相偏移を加える第2の位相変調器30を有する。次に、短いアーム27と長いアーム29の出力は、第2のビームスプリッタ31において結合される。第2のビームスプリッタ31は、光子を第1の検出器B1または第2の検出器B2のいずれかに方向付ける。
【0035】
もし光子源1が2つの光子間で時間遅延dtをもって相等しい光子を出力し、dtが第1のMZI9の短いアーム13と長いアーム15との間を移動する光子における時間遅延と第2のMZI23の短いアーム27と長いアーム29の時間遅延とに対応するならば、これらの2つの光子間には相関関係が存在することになる。この相関関係は、一方の光子が第1の干渉計を通るように方向付けられ、放射される次の光子が第2の干渉計を通るように方向付けられる(あるいは逆の場合も同様である)場合に発生する。この相関関係は、位相変調器16および30によって加えられた位相間の差に依存する。
【0036】
もし2つの光子がシステムの反対側で、すなわちペア(A1,B1)、(A1,B2)、(A2,B1)または(A2,B2)において同時に検出されるならば、これら2つの光子はカプラー3から反対方向に出て行って、これらの光子はエンタングルメントを生成したMZI9および23を通る経路を取ったということでなくてはならない。したがって2つの光子がこれらのペアにおいて同時に検出されるイベントだけを調べることによって、われわれはエンタングルメントが生成された「ポスト選択された(post-selected)」イベントを有する。
【0037】
しかしながら上記システムの問題は、2つのMZI9および23がこれらが与える遅延の点で同一である必要であり、またこれらが長時間にわたって安定であることが必要であるということである。これは、各MZI9および23の短いアームと長いアームとの間の経路差、したがって位相差に影響を及ぼすファイバ歪み/位置における熱的ドリフトと変化とが発生するので、困難である。
【0038】
図2は、本発明の一実施形態による干渉計を示す。図2の干渉計は、図1の干渉計に基づいている。しかしながら、図2の干渉計では2つのMZI9および23の代わりに単一のMZIが設けられており、干渉すべきである光子は、この単一MZIを通って反対方向に送られる。Φ1はHおよびVに関して異なる位相偏移を加える。
【0039】
図1に関して光子源101は、時間間隔dtをもってH偏光された光子を出力する。これらの光子は、無偏光ビームスプリッタ103に通される。無偏光ビームスプリッタ103は、光子をアーム105またはアーム107のいずれかにランダムに送る。そしてアーム105内の光子は、偏光を垂直Vになるように90°だけ回転させる偏光回転子108に入る。
【0040】
次に、光子は、偏光ビームスプリッタ109に方向付けられる。偏光ビームスプリッタ109は、偏光Vを有するすべての光子をアーム111に沿って送る。これは、偏光Vを有する光子が次にMZI115に送り込まれることを意味する。MZI115は、光子を長いアーム119または短いアーム121のいずれかにランダムに方向付ける無偏光ビームスプリッタ117を備える。そして長いアーム119または短いアーム121から出力された光子は、無偏光ビームスプリッタ123を使用して結合される。
【0041】
長いアームには第1の変調器125が設けられている。これにより、短いアームを通って移動する光子に対する長いアームを通って移動する光子の位相の変化が導入される。光子が長いアームを通って移動するために要する時間対短いアーム121を通って移動する時間の変化は、dtによって表される。
【0042】
第2の接合部(ジャンクション)123に出力される光子はアーム127またはアーム129のいずれかを通るように方向付けられる。アーム127を通るように方向付けられた光子は垂直偏光を有し、偏光ビームスプリッタ131に作用する。これらの光子は送られるとき、検出器A1に方向付けられる。アーム129を通るように再方向付けされた光子は、検出器A2で測定される。したがって光子は、図1の経路5に基本的に相当する経路をたどる。
【0043】
経路107をたどる光子は、偏光ビームスプリッタ131に作用し、H偏光光子はアーム127に方向付けられる。そして、H偏光を有する光子は、光子を干渉計115の長いアーム119または短いアーム121のいずれかに方向付けるように機能する無偏光ビームスプリッタ123に作用する。
【0044】
次に、光子は、ビームスプリッタ117で結合され、検出器B2に向かってアーム141に再方向付けされるか、または光子が水平に偏光されると検出器B1に向かって方向付けされることになるアーム145へ方向付けされる。
【0045】
第1の変調器125は、左から右に移動する光子によって経験された位相を右から左に移動する光子とは異なる量だけ変化させ得る複屈折要素である。これは、この複屈折要素が垂直に偏光された光子の位相を水平に偏光された光子の位相とは異なる量だけ変化させることから達成される。
【0046】
干渉計の2つのアーム間の位相差における如何なるドリフトも、左方向および右方向に移動する光子の両方に自動的に等しく作用し、したがって無視され得る。検出器間の相関関係は、垂直に偏光された光子について位相変調器125によって加えられた位相変調と水平に偏光された光子について位相変調器125によって加えられた位相変調との間の差Δφとして変化する。下記の方程式は、位相差Δφの関数として検出器のある幾つかのペア間で一致が得られる確率を示す:
【数1】
【0047】
ここでγは2つの光子の波動関数間の弁別不能度を表す。
【0048】
図2の例では、HおよびV光子の偏光だけを保存する偏光保持ファイバが使用される。なお、複屈折を除去するために使用される偏光コントローラと通常の単一モードファイバとを使用するシステムを実現することができる。
【0049】
図3は、図2に示された干渉計を使用して得られた実験データを示す4つのプロットである。遠隔の検出器のペアが同時に光子を数える同時発生イベントが複屈折要素125によって導入された位相差の関数として示されている。
【0050】
光子源としてマイクロピラーに埋め込まれたInGaAs/GaAs量子ドットが使用された。H偏光光子を実験だけに渡すためにサンプル上の線形偏光子が使用された。これは、弁別不可能な単一光子を生成した。干渉計によって生成された位相差の関数として4つの検出器間の相関関係が記録された。不平衡ビームスプリッタ反射および透過係数と光子の弁別不能度が100%未満であることとによって振動の有限可視性が決定される。それにもかかわらず、観測された相関関係の度合いにおける明らかな振動は、高い度合いのエンタングルメントを示している。実験結果が検出器間の相関関係に関する上記の方程式と一致していることがわかる。
【0051】
図2において光子源は、MZIにおける時間遅延に等しい時間遅延dtだけ離された2つの弁別不能な光子、例えば同じ偏光と同じエネルギーとを送達する。一方の光子が一方の方向に移動し、他方の光子が時間dt(ここでdtはMZIにおける時間遅延に等しい)だけ遅れて反対方向に移動する状態を検出がポスト選択(post-select)するときに干渉が発生する。
【0052】
図2のシステムは、光子源がVまたはHの偏光を有する光子を出力し、この光子源上に線形偏光子が設けられ、これらの光子が無偏光ビームスプリッタ103といった受動的構成要素に出力される場合に、1/8の成功確率で動作できる。確率1/8は、第1の光子が偏光子を介して送られ得る偏光で放射される確率50%と、次の光子が同じ偏光で放射される可能性50%と、光子が同じアーム内の移動とは反対に反対のアーム内を移動するという可能性50%とが存在することから得られる。
【0053】
しかしながら、状態:
【数2】
【0054】
(I)
を生成する光子源を構成することも可能であり得る。このような状態は、偏光において既にエンタングルメントしており、垂直に偏光された光子とこの垂直に偏光された光子の時間dt後に放射された水平に偏光された光子とを有する状態と、水平に偏光された光子と時間dt後に放射された垂直に偏光された光子とを有する状態と、との重ね合わせである。この状態を使用して、垂直に偏光された光子は左手アーム(1)105に沿って方向付けられ、水平に偏光された光子は右手アーム107に沿って方向付けられ得る。
【0055】
そして、このような状態は、図4にも示された干渉計115に送られ得る。不必要な繰り返しを避けるために、同様の特徴を表すために同様の参照番号が使用される。
【0056】
図5は、図4の干渉計および検出器と上記の入力状態(I)201を生成するために使用され得る装置との図を示す。不必要な繰り返しを避けるために、同様の特徴を表すために同様の参照番号が使用される。
【0057】
装置201は、自然発生的パラメトリック下方変換によって光子対を生成するために使用され得る非線形結晶205を備える。エネルギーEのポンプ光子203は、時間dt=0だけ離されたE/2のエネルギーを有する2つの光子を生成する結晶205によって分割される。これらの光子は同じ偏光を有することになるので、第2のアーム206内を移動する光子から偏光を変えるために第1のアーム204には偏光回転子207が必要とされる。干渉計115では、時間dtは0にセットされ、言い換えれば長いアーム119と短いアーム121は同じ長さである。これは、これらの光子が正確に同じ時刻に、したがってdt=0で結晶205から放射されるからである。
【0058】
図6は、図4の干渉計と、上記の入力状態(I)を生成するように構成された装置221との図である。如何なる不必要な繰り返しも避けるために、同様の特徴を表すために同様の参照番号が使用される。
【0059】
装置221は、図5の装置201とは異なるように構成される。しかしながらこれは、同じエンタングルメント入力状態を生成する。
【0060】
図6の装置221は、単一光子を光子源干渉計233に出力する単一光子源231を備える。光子源231は、状態:
【数3】
【0061】
(II)
を有する光子を生成する。言い換えれば2つの水平光子が同時に生成されるか、2つの垂直に偏光された光子が同時に生成されるかのいずれかである。
【0062】
光子源干渉計233は、偏光ビームスプリッタ235を備え、図6に示された構成の偏光ビームスプリッタ235は、垂直偏光を有する光子をアーム237に沿って方向付けて位相変調器239を通し、水平偏光を有する光子を位相変調器が存在しないアーム241に沿って方向付ける。位相変調器239によって加えられた位相を変えることによって、光子のペアが位相変調器を離れて反対方向に移動することが可能である。Nが整数であるとして、もし加えられた位相が:
【数4】
【0063】
であれば、光子は反対方向にカプラーC0243を離れる。アーム245および247内を移動する光子は同じ偏光を有する。したがって245上を通過する光子のうちの1つの光子の偏光を変えるために偏光回転子249が使用される。
【0064】
これらの光子は同時に出力され、したがってこれらはdt=0の相対的遅延を有する。干渉計115が光子を位置的および時間的にエンタングルメントさせるために干渉計の時間遅延(すなわち2つのアーム間の経路差)は0にセットされる。
【0065】
図2の干渉計において光子の多くは、もしこれらが正しい入力状態で生成されなければ廃棄される。しかしながら、無偏光光子源を使用することによって、より高い効率を得ることも可能である。このような構成は図7に示されている。
【0066】
図7において光子源301は、水平または垂直偏光のいずれかを有する光子を生成する。次にこれらの光子は、無偏光ビームスプリッタ303を通されて、アーム305またはアーム307のいずれかに沿って方向付けられる。アーム305に沿って移動する光子は最初に、これら光子の偏光を偏光回転子309によって90°だけ回転させられる。光子は次に、偏光ビームスプリッタ311を通される。偏光ビームスプリッタ311は、垂直偏光を有する光子をアーム313に沿って送り、水平偏光を有する光子をアーム315に沿って反射させる。
【0067】
次に、アーム313に沿って送られた光子は、図2を参照しながら説明されたタイプの上部MZI317を通され、アーム315に沿って送られた光子は下部MZI319に送られる。したがって図2の例とは対照的に、ビームスプリッタ311において如何なる光子も失われない。
【0068】
同様に、アーム307に沿って移動する光子は、第2の偏光ビームスプリッタ321に遭遇する。水平偏光を有する光子は上部MZI317を通るように方向付けられ、垂直偏光を有する光子は下部MZI319を通して送られる。
【0069】
上部MZI317内を左から右に移動する垂直に偏光された光子は、検出器A1またはA2のいずれかに方向付けられる。検出器A1に方向付けられた光子は、第2の偏光ビームスプリッタ321と第3の偏光ビームスプリッタ323とを通過する。上部MZI317内を右から左に移動する水平に偏光された光子は、検出器B1またはB2のいずれかに方向付けられる。検出器B1に出力された光子は、第1の偏光ビームスプリッタ311と第4の偏光ビームスプリッタ325とを通過しなくてはならない。下部MZI319内を左から右に移動する水平に偏光された光子は検出器A3またはA4のいずれかに出力される。更に、右から左に移動し、垂直に偏光された光子は、下部MZI319を通過し、検出器B3またはB4のいずれかに出力される。
【0070】
もし光子が上部MZI317を通って異なる方向に移動しているならば、上記の検出器のうちのどのペアが光子を検出するかは、上部MZI317を通って移動している垂直および水平に偏光された光子によって経験された位相の差に依存する。更にもし光子が下部MZI319を通って移動するならば、上記の検出器のどのペアが光子を検出するかは、下部MZI319を通って移動する垂直および水平に偏光された光子によって経験された位相の差に依存する。複数の光子が所望の経路を取ると、そのペアのうちの一方の光子の測定により他方の光子の波動関数の崩壊を招き、これにより、これの正確な検出の位置と時間とが判定される。
【0071】
一般に干渉は、同じエネルギーを有する光子間でのみ見られる。大抵の量子ドットにおいて中性励起子状態から放射されたHおよびV光子は異なるエネルギーを有し、したがって干渉は光子源がH光子を放射し、それからH光子またはV光子を、そしてそれからV光子を放射するときにだけ観測されるはずである。干渉は光子源がH光子を放射し、その後にV光子を放射する時には観測される見込みはなく、その逆の場合も同様である。したがって大抵の場合、図7のシステムの効率は図2のシステムの効率のちょうど2倍である。しかしながら、約885ナノメートルを放射する或る幾つかの量子ドットにおいては、HおよびV状態からの放射はエネルギーが等しいので、すべての組合せが干渉し、図7のシステムの効率は図2のシステムの効率の4倍になる。
【0072】
図8は、偏光エンタングルメント状態を分析するために使用され得る干渉計を備えるシステムである。このシステムは、エンタングルメント光子源の完全性を検査するために使用され得る。これはまた、後に図16を参照しながら述べる量子暗号化における用途を有する。
【0073】
図8において、光子源401は、量子ドットタイプ単一光子源である。最近、量子ドット(R. Stevenson et al, Nature 439, (2006) 179およびR. Young et al, New Journal of Physics, 8 (2006) 29)は、カスケード「二重励起子(biexciton)→励起子→空」から偏光的にエンタングルメントしている光子を放射できることが示された。ファイバにおける複屈折からデコヒーレンスに対してこのエンタングルメントを保存するために、このエンタングルメント状態は位相エンタングルメント状態に変換され得る。光子源401によって出力された状態は:
【数5】
【0074】
(III)
であり、ここでXは励起子光子を表し、XXは二重励起子光子を表す。次に、この状態は光子源干渉計405の開始点である偏光ビームスプリッタ403に移る。光子源干渉計405は長いアーム407を備えており、この長いアーム407は位相変調器409と偏光回転子408とを有する。この干渉計はまた、短いアーム411も備える。偏光ビームスプリッタ403は、長いアーム407を通して垂直に偏光された光子を送出し、短いアーム411を通して水平に偏光された光子を送出するように構成される。
【0075】
光子源からの垂直に偏光された光子は、偏光ビームスプリッタ403によって長いアーム407に方向付けられ、そこでこれらの光子は408によってH偏光に回転されて時間dtだけ遅延させられる。水平に偏光された光子は、偏光ビームスプリッタ403によって短いアーム405に方向付けられる。次にこれら2つ経路は、カプラー411で再結合される。このようにして、偏光的にエンタングルメントした光子状態は、今度は2つの別のタイムビン(time bins)にエンタングルメントさせられて:
【数6】
【0076】
(IV)
を与える。この状態はファイバ複屈折に対してロバストである。
【0077】
次に、この状態は、励起子遷移から発生する光子Xをアーム415に送り、二重励起子遷移から発生する光子XXをアーム417に送る分光計413に渡される。X光子とXX光子は同じ偏光を有するので、X光子の偏光を変えるためにアーム415には偏光回転子414が設けられる。それから光子は、図2を参照しながら説明されたタイプのMZI115に通される。如何なる繰り返しも避けるために、同様の特徴を表すために同様の参照番号が使用される。
【0078】
MZI115における位相変調器の適切な値を選択することによって、状態が十分にエンタングルメントしている場合にどの検出器(A1、A2、B1、B2)が起動(fire)すべきであるかを決定することが可能である。
【0079】
図9は、多光子エンタングルメントを達成することができるシステムの図である。図9において光子源401は、図8を参照しながら説明されたタイプである。光子源401は、カスケード「二重励起子(biexciton)→励起子→空」から偏光的にエンタングルメントしている光子を放射する。次に、この光子源の出力は、垂直偏光を有する光子をアーム501に沿って、また水平偏光を有する光子をアーム503に沿って方向付ける偏光ビームスプリッタ403を通される。
【0080】
しかしながら図8のシステムとは対照的に、アーム501またはアーム503のいずれかに方向付けられた単一光子の代わりに1つのX光子と1つのXX光子とからなる二光子(biphoton)が各アームに方向付けられる。この光子源は、時間ゼロで1つの二光子を、時間dt後に第2の光子を放射するように構成される。
【0081】
今度はシステムを通って移動する二光子が存在するので、前に示された単一光子検出器は、今度は二光子検出器A1、A2、B1およびB2に置き換えられる。二光子の有効波長は、個別の光子の有効波長の半分である。したがって、cos(Δφ)として変化する二光子検出器間の相関関係よりもむしろ、これらの相関関係は、今度はcos(2Δφ)>として変化する。したがって:
【数7】
【0082】
(V)
である。関連している4つの光子(すなわち2つのX光子と2つのXX光子)はそれから、エンタングルメントした4光子状態になる。したがって多数の位置間に、例えば量子暗号化における4者間に光子を配布することが可能である。
【0083】
図10は、図9のシステムの更なる変形例を示す。図10で光子源551は、入力状態:
【数8】
【0084】
を生成する。この入力状態は、光子をアーム555またはアーム557にランダムに方向付けるビームスプリッタ553に供給される。
【0085】
1つの二光子がアーム555を通り、この二光子は水平または垂直いずれかに偏光され得る。もしこれが垂直に偏光されれば、これは偏光ビームスプリッタ561を介して上部MZI559に通される。もしこれが水平に偏光されれば、これは偏光ビームスプリッタ561を介して下部MZI563に通される。同様にアーム557を通る二光子は、もし水平に偏光されればビームスプリッタ565によって上部MZI559に方向付けられ、もし垂直に偏光されればビームスプリッタ565によって下部MZI563に方向付けられる。
【0086】
したがって、もしある二光子が1つの偏光をもって、例えば垂直に偏光されてアーム555に方向付けられ、第2の二光子が反対の偏光をもって(例えば水平に偏光されて)経路557に方向付けられるならば、これらの二光子は両方とも上部MZI559で干渉してエンタングルメントさせられる。同様にもしこれらの光子が逆の偏光を有するならば、これらは下部MZI563によってエンタングルメントさせられる。
【0087】
2つの光子は、時間dtだけ離されていれば4光子エンタングルメント状態を生成する。上記の2つのスキームに関して、dtだけ離された2つの「二光子」は二光子検出器にとって弁別不可能に見えなくてはならない、言い換えればXおよびXX光子の両者は時間・帯域幅制限されていなくてはならない。これは、XおよびXX状態の両方を包含するために十分広いモードを有する、高いパーセル(Purcell)係数を取得するために対応して低いモードボリュームを有する、低Q空洞を使用することによって達成され得る。
【0088】
図11は、3つの経路を有する干渉計の図である。図2の干渉計では光子は、2つの経路の1つ、すなわち長いアームまたは短いアームを取り得る。図11では光子は、干渉計を通る3つの経路の1つを取り得る。
【0089】
図11の例では光子源601は水平に偏光された光子の源であり、これらの光子はそれからアーム605またはアーム607をたどるように無偏光ビームスプリッタ603を介して分割される。アーム605に沿って移動する光子は、それらの偏光を偏光回転子609によって90°だけ回転させられる。これは、垂直に偏光された光子という結果をもたらす。垂直に偏光された光子はそれから、偏光ビームスプリッタ611に通され、それから無偏光33/33/33°ビームスプリッタ613に通される。このタイプの3方向ビームスプリッタは、トリッタ(tritter)として知られている。
【0090】
それから光子は、干渉計615を通る3つの経路のうちの1つをたどり得る。これら3つの経路は、短いアーム617、φ1の位相差が生成される長いアーム619、およびφ2の位相差が生成される中間アーム621を通る。光子が3つの経路を取り得ることは、各粒子が3つの可能な状態を占め得るキュートリット(qutrits)が生成されることを可能にする。このような状態は、量子通信アプリケーションにおいて改善されたセキュリティを与え、ベル(Bell)の不等式のテストにおいてより強い非ローカル相関関係を与えることが示されている。
【0091】
長いアーム607に沿って方向付けられた光子は、水平に偏光されて、ビームスプリッタ623を介して干渉計615に方向付けられる。それからこれらの光子は、光子を3つの経路617、619および621のうちの1つに沿って方向付け得るトリッタ625に遭遇する。アーム619および621における位相変調器においてセットされた位相に依存してA1、A2およびA3における光子検出イベントは、B1、B2およびB3における光子検出イベントと相互に関係付けられる。
【0092】
図11の考えの拡張が図12に示されており、ここでは3つの経路の代わりに干渉計はN本の経路に拡張されるので、これはキューNイット(quNits)のための干渉計である。
【0093】
不必要な繰り返しを避けるために、図11を参照しながら説明された特徴を説明するために同様の参照番号が使用される。図11のトリッタ613および625は、N方向ビームスプリッタ651および653に置き換えられている。N方向ビームスプリッタ651は、φNの位相差を有する経路6550、6551からφNの位相差を有する経路655nまでのいずれかの経路に光子をランダムに方向付けることができる。これは、本システムを通り抜ける各粒子が図11を参照しながら説明されたセキュリティに関して量子通信のためにより多くの利益を有するN経路重ね合わせに置かれることを可能にする。
【0094】
図13は、エンタングルメント光子源を使用する量子暗号化の原理の図を示す。エンタングルメント光子源681は、エンタングルメント光子対のうちの一方の光子をAlice(アリス)683に送り、同じエンタングルメント光子対のうちの他方の光子をBob(ボブ)685に送る。Aliceが彼女の光子に測定を行うと、Bobの光子の波動関数は崩壊し、それによってAliceがBob685に情報を送ることを可能にする。
【0095】
エカート(Ekert)プロトコルとBB84スキームの2粒子アナログとを含む、エンタングルメント光子対に基づく多くのプロトコルが存在する。後者の場合、各光子対(例えば水平/垂直および対角線/反対角線)からランダムに選択された2つの基底のうちの任意の1つに同じ偏光を持つようにエンタングルメントさせられた光子を放射するために光子源が使用され得る。AliceとBobは各々、これらの光子の1つを受け取ることができ、いずれかの基底においてこれをランダムに測定できる。これらの測定後に光子源は、各光子対のためにどの基底を使用したかを公表することができ、それからAliceとBobは両者が光子源と同じ基底で測定されたときの測定値からのデータだけを保存する。
【0096】
図14。エンタングルメント光子源701は、図2の干渉計に基づいている。光子源703は、後で無偏光ビームスプリッタ705に通される水平に偏光された光子を生成する。ビームスプリッタ705は、光子をアーム707またはアーム709のいずれかに沿って方向付けることができる。水平偏光のアーム707に沿って方向付けられた光子は、偏光回転子711によって垂直偏光に変えられる。垂直に偏光された光子はそれから、偏光ビームスプリッタ713に通されて、図2を参照しながら説明された干渉計と同じである干渉計に通される。
【0097】
アーム709を通る水平に偏光された光子はそれから、ビームスプリッタ717に、それから干渉計715に方向付けられる。左から右の方向に干渉計715を通って移動する垂直に偏光された光子は、右から左に干渉計715を通って移動する水平に偏光された光子と位置的および時間的にエンタングルメントさせられる。
【0098】
左から右へ干渉計を通って移動する垂直に偏光された光子は、この干渉計を出て、それらの偏光をHに変換する偏光回転子725へのアーム723に沿って、あるいはアーム727に沿って光子を方向付ける無偏光ビームスプリッタ721を通り抜ける。それからこれら2つの経路(723および727)は、偏光ビームスプリッタ728で再結合され、経路741に沿って方向付けられる。このようにして、干渉計715によって加えられた変調は偏光変調に変換される:経路723および727を取った両成分は、同時に、しかし直交する偏光をもって経路741に沿って移動する。
【0099】
右から左へ干渉計715を通って移動する光子は、光子をアーム733および光子の偏光をVに変換する偏光回転子735に、またはアーム737のいずれかに方向付けるビームスプリッタ731に作用する。これら2つの経路(733および737)はそれから、偏光ビームスプリッタ738で再結合されて経路751に沿って方向付けられる。この仕方で偏光エンタングルメント光子は、下記に説明される図13に示された(従来技術の)量子暗号化システムに使用され得る装置701によって生成される。
【0100】
量子暗号法を実行するためにCharlieは、放射される各光子のためにランダムに選択された2つの基底(例えば水平/垂直または対角線/反対角線)の1つにおいて光子を符号化するように2つの波長板739および729を使用しなくてはならない。このプロトコルがどのように進行するかの理解を容易にすることは、位相変調器715が0度にセットされて両波長板739および729が各光子に関してランダムに一致して動かされることを仮定する。この処置は、ファイバ内を移動する2つのエンタングルメント光子がCharlieにだけ知られた基底において等しい偏光であることを保証する。Aliceの装置は、Aliceの測定基底として機能する0°または45°いずれかの変調を彼女が加えることを可能にする波長板745を備える。Aliceは、各光子の間でランダムに測定を変える。それから光子は、後で光子を検出器A1または検出器A2に方向付ける偏光ビームスプリッタ747に通される。
【0101】
同様に、右から左へ干渉計715を通り抜けた光子はそれから、ケーブル751を通ってBob753に方向付けられる。Bobはまた、彼が各光子の間でランダムに0°基底と45°との間で偏光を変化させるために使用する波長板755を有する。それから光子は、後で光子を検出器B1または検出器B2に方向付けるビームスプリッタ757に通される。AliceとBobが彼らの測定を行った後にCharlieは、彼が各光子を符号化するためにどの基底を使用したかを公表する。
【0102】
彼らの波長板745および755によって定義されたような基底において彼らのシステムにおける測定を行うAliceまたはBobは、他の受け手における光子の波動関数を崩壊させ、これによって彼らが同じ基底を使用した場合にAliceとBobの結果の間には相関関係が存在する。それからAliceとBobは、彼らが整合性のある基底を使用したときからのデータだけを保持する。
【0103】
上記の説明では位相変調器715は0°にセットされ、両波長板739および729は一致して動かされる(すなわち相関付けられる)が、各光子に関してランダムにセットされる。このようにして、光子が偏光において相関付けられる(しかし各光子に関する波長板のセッティングではない)という事実は、エンタングルメント光子の配布に先立ってCharlieによって公表されることが可能であり、それからこのプロトコルは従来技術で指定されたように進行する(例えば、Quantum Cryptography, N. Gisin et al, Review in Modern Physics, VoI 74 (2002) page 153)。この処置は、ファイバ741および751内を移動する2つのエンタングルメント光子がCharlieにだけ知られた基底において等しい偏光であることを保証する。
【0104】
しかしながらAliceとBobの光子が相関付けられるか反相関付けられるかどうかは、位相変調器715によって加えられた位相変調と波長板739および729が何にセットされたかとの両方に依存する:例えばもし位相変調器715がπにセットされて波長板がなお一致して動いたならば、AliceとBobとによる光子検出イベントは反相関付けられる:もしAliceが彼女の装置でH光子を測定するならばBobは垂直に偏光された光子を受け取る、などといったことである。したがってもし位相変調器715と波長板739および729が相関付けられるか反相関付けられるどうかとが各量子キーの配布時に変えられたならば、各光子対が相関付けされるべきか反相関付けられるべきかに付いての情報も、AliceとBobがキーを首尾よく復号するためにCharlieによって公表される必要がある。
【0105】
図15は、本発明の一実施形態による量子暗号化システムの更なる変形例を示す。
【0106】
図15でBob803は、Alice801にキーを伝達する。AliceとBobが有する装置は基本的に、AliceとBobとの間に広げられた、図2を参照しながら説明された干渉計である。この特定の実施形態ではBobは、水平に偏光された光子を生成し得る光子源805を有する。ビームスプリッタ807は、光子をアーム809またはアーム811のいずれかに方向付ける。アーム809に方向付けられた水平に偏光された光子は、光子の偏光を垂直偏光に変換する偏光回転子813を通り抜ける。垂直に偏光された光子はそれから、垂直に偏光された光子を干渉計819の開始点である無偏光ビームスプリッタ817に後で方向付ける偏光ビームスプリッタ815を通過する。干渉計819は、AliceとBobとの間で分割される。干渉計819は、長いアーム821と短いアーム823とを備える。長いアーム821にはBob803によって制御される第1の位相変調器825が存在する。この特定の例では長いアームと短いアーム823の両者ともBobからAlice801へ延びている。長いアームには第2の位相変調器827も設けられているが、この第2の位相変調器はAliceの制御下にある。それから長いアーム821と短いアーム823は、Alice側の無偏光ビームスプリッタ829で結合される。それから光子は、彼女の位相変調器827を使用するAliceと彼の位相変調器825を使用するBobとの両者によって加えられた位相変調に依存してAliceの検出器A1またはAliceの検出器A2のいずれかに方向付けられる。アーム811を通る水平に偏光された光子は、直接Aliceに伝達されて、偏光ビームスプリッタ831を通り、それからAlice801とBob803両者の間に広げられた干渉計819を通る。AliceからBobに移動する光子はそれから、無偏光ビームスプリッタ817に作用し、AliceとBobの両者によって加えられた位相変調に依存してBobの検出器B1またはB2のいずれかに入る。
【0107】
AliceとBobが装置を通過する各光子対に関して彼らの位相変調器を0とπとの間でランダムに変えるが、彼らが彼らの位相変調器のセッティングを秘密にしておく例を考える。すべての光子が測定された後にAliceは、彼女が各光子に関してどのセッティングを使用したかを公表できる。それからBobは、位相変調器925および927によって導入された全位相(0、πまたは2π)を知り、その結果として各光子対が相関付けされるべきであるか(全位相=0または2π)、あるいは反相関付けられるべきであるか(全位相=π)どうかを知る。Bobはまた、各光子がどこで検出されたか(B1またはB2)を知っているので、すべてのエンタングルメント光子対に関して彼はAliceが彼女の光子をどこ(A1またはA2)で検出したかを判定できる。この情報は、秘密キーを形成する。Aliceは、彼女の光子がメッセージを符号化するためにどこで検出されたかについての彼女の秘密の知識を使用できる。
【0108】
この装置では光子源805は、干渉計における遅延だけ時間的に離された弁別不可能な光子対を放射する。Aliceはまた、取り外し可能な光子源841を有する。AliceとBobが同時に彼らの測定を行うことは重要である。したがってBobは、Aliceが彼女の光子を測定する前に彼の光子を測定すべきではない。この例ではAliceは、検出器A1およびA2の前の光ファイバループによって与えられた量子メモリ843に彼女の光子を保存できる。
【0109】
図16は、図8および15に基づく暗号化システムを示す。如何なる不必要な繰り返しも避けるために、同様の特徴を示すために同様の参照番号が使用される。図8を参照しながら説明されたように、光子源401は、「二重励起子→励起子→空」カスケードから1対の偏光エンタングルメント光子を放射する。光子源干渉計405と分光計413は、これらの光子を、両方がH偏光を有し、タイムビンズ(time-bins)においてエンタングルメント光子対に変換する。分光計413は、一方の光子(二重励起子)が、その偏光が偏光回転子453によって垂直偏光に回転させられるアーム451に沿って左方向に移動して、他方の光子(励起子)がアーム455に沿って右方向に移動することを保証する。これら2つの光子はそれから、図15と同様な仕方でAlice459とBob461とによって共有される干渉計457に供給される。
【0110】
アーム451に沿って移動する光子は、Alice459に方向付けられる。この光子は最初に、アーム465に沿って光子を方向付けるAliceの偏光ビームスプリッタ463を通して送られる。それから光子は、干渉計457に入る。この干渉計は、図15を参照しながら説明されたタイプであって、同様の特徴を説明するために同様の参照番号が使用される。
【0111】
アーム455に沿って移動する光子は、Bobに方向付けられて、偏光ビームスプリッタ467によってアーム465に沿って反射される。それから光子は干渉計457に入る。
【0112】
Alice459とBob461が装置を通過する各光子対に関して彼らの位相変調器を0とπとの間でランダムに変えるが、彼らが彼らの位相変調器825、827のセッティングを秘密にしておく例を考える。すべての光子が測定された後にAliceは、各光子に関して彼女がどのセッティングを使用したかを公表できる。それからBobは、位相変調器825および827によって導入された全位相(0、πまたは2π)を知り、その結果として各光子対が相関付けされるべきであるか(全位相=または2π)、あるいは反相関付けられるべきであるか(全位相=π)どうかを知る。Bobはまた、各光子がどこ(B1またはB2)で検出されたかを知っているので、すべてのエンタングルメント光子対に関して彼はAliceが彼女の光子をどこ(A1またはA2)で検出したかを判定できる。この情報は、秘密キーを形成する。Aliceは、彼女の光子がメッセージを符号化するためにどこで検出されたかについての彼女の秘密の知識を使用できる。
【0113】
図17は、量子干渉法または量子撮像のために使用され得る本発明の一実施形態の図である。この干渉計の構成は、図2を参照しながら説明されたものに類似している。光子対は、光子源901によって生成され、この特定の例では水平偏光を有する光子を通す偏光ビームスプリッタ903を通り抜ける。水平に偏光された光子対はそれから、光子をアーム907またはアーム909にランダムに方向付ける無偏光ビームスプリッタ905に通される。このシステムは、1対の光子がアーム907に通される、あるいは1対の光子がアーム907に通される、いずれかのときに干渉計として、あるいは撮像するために、使用され得る。
【0114】
干渉計913は、そのアームの1つにおいて与えられた(2n+1)π(ここでnは整数である)にセットされた固定位相偏移φ1を有する。これは、913に関してこのセッティングを選択することによって905から干渉計に入るときに反対の経路を取った2つの光子が両方とも905に戻るように方向付けられることはないことを保証するので、重要なビットである。もし1つの左方向に移動する光子が経路920で検出されれば、右方向に移動する光子はアーム923になければならず、またもし1つの左方向に移動する光子が経路921で検出されれば、右方向に移動する光子はアーム922になければならない。したがって2つの二光子検出器が二光子を検出できる唯一の方法は、最初に干渉計に供給された2つの光子が同じ方向に無偏光ビームスプリッタ903を離れる場合である。今後は、これらの二光子を参照しながらこの実施形態について述べることが容易になる。
【0115】
二光子は2つの経路のうちの1つをたどることができる。もしこれが経路907をたどるならば、これの偏光は、垂直に偏光されるように911によって回転させられる。垂直に偏光された二光子はそれから、干渉計に方向付けられる。この特定の例でわれわれは、φxが水平に偏光された二光子にだけ作用することを仮定する。したがって垂直に偏光された二光子は、位相変調器915を変更されないまま通り抜けてビームスプリッタ905に作用する。
【0116】
他の二光子状態は、ビームスプリッタ905に入って水平に偏光されて、経路909に方向付けられる。経路909に方向付けられた二光子は、可変位相変調器φx915を通り抜ける。可変位相変調器は水平偏光を有する二光子を変調するので、この二光子の位相は変調される。それからこれらの光子は、右から左へ移動して干渉計913を通り抜ける。それから二光子は、干渉計913を出て、水平に偏光された二光子をビームスプリッタ905に作用する垂直に偏光された二光子に変換する偏光回転子911に入る。
【0117】
変調器915によって加えられた位相変化に依存して二光子のこれら2つの成分は、これらがビームスプリッタ905に到達したときに干渉する。それからこれらは、複屈折要素915に依存して二光子検出器A1またはA2のいずれかに方向付けられる。
【0118】
二光子によって経験された如何なる位相変化も単一光子波長の半分だけ変化する高速検出(detection at rate)A1の変動という結果をもたらす。このようにしてこのシステムは、単一光子を使用して動作する干渉計の解像度を2倍にしている。
【0119】
二光子状態で動作する干渉法システムは、Edamatsu et al Phys. Rev. Lett 89 pages 213601-1 to 213601-4 (2002)によって提案されている。しかしながら図15のシステムは、二光子が同じ経路を通って(異なる方向にではあるが)移動することにおいて特に有利であり、このことは、二光子状態の2つの部分が必要性の変わり得る遅延線に関して、またはEdamatsuによって提案されたタイプのアクティブな安定化に関して同じ時刻に中心のビームスプリッタ905に自動的に入射することを意味する。
【0120】
上記のように図17のシステムは、量子撮像のために使用され得る。このシステムは、撮像されるべき物体を偏光依存位相偏移要素φxとすることによって量子撮像のために使用され得る。
【0121】
φxは、液晶の位相変調特性に関して電圧の関数を変える液晶であり得る。これは、複屈折結晶(例えば水晶)の或る構成であり得る。これは光ファイバ部品であり得る。
【0122】
サンプルの高さを表現することは、位相偏移要素に関して撮像するために有用であろう。これの可能な実現形態は、図17の複屈折位相変調器915を置き換え得る図18aに示されている。図18aにおいて偏光ビームスプリッタ931は、光子を経路933または経路935に方向付ける。図17の偏光要件にしたがってビームスプリッタ931は、水平偏光を有する光子を経路933に沿って、またxyステージに置かれたサンプル上に方向付ける。それからこれらの光子は、経路933と935とを結合する第2のビームスプリッタ939に反射される。このようにして経路933を取ったこれらの光子は、サンプル高さ917によって決定された可変位相偏移を経験する。
【0123】
サンプル厚さを表現することは、位相偏移要素に関して撮像するために有用であろう。図18bでは再び、偏光ビームスプリッタであって、水平偏光を有する光子をアーム943に方向付け、垂直偏光を有する光子をアーム945に方向付けるビームスプリッタ941が設けられている。アーム943に通された光子は、再びxyステージに配置されたサンプル947を通り抜ける。サンプル947を通る光子の透過は、光子の位相変化を引き起こす。経路943および945は、結合器として機能する偏光ビームスプリッタ949で再結合される。このようにして図18aまたは18bの構成を使用すれば、図17の構成を使用してサンプルを調べることが可能である。
【0124】
図9、10および17の装置は、単一光子イベントから2光子イベントを決定できる必要がある。したがって単一光子イベントと2光子イベントとの間を弁別できる検出器が必要とされる。図19は、ある幾つかの可能な検出器を示す。図19aでは、光子数決定検出器、例えば超伝導熱量計951が使用される。図19bには、不平衡である干渉計、すなわち一方のアームが他方のアームより長い干渉計が単一光子検出器A2 955の前に設けられた2光子検出器のもう1つの可能な例が示されている。もし干渉計953において時間遅延だけ時間的に離された2つの光子が検出されるならば、2光子状態が検出されていなければならない。
【0125】
最後に、その出力を検出器A1またはA2のいずれにも等しく方向付ける無偏光スプリッタ957によって2光子検出器の更なる例が与えられている。もしこれら2つの検出器が同時に起動(fire)するならば、2光子状態が選択されたことは明らかである。これらの考えの変形例および組合せも考えられ得る。上記はまさに、2光子検出器の可能な例を表している。
【0126】
図20は、図17の量子撮像/干渉計の更なる変形例である。図20では弁別不可能な光子を放射する水平偏光光子源1011が使用される。この水平偏光光子源1011は、時間dtだけ離された光子を不平衡MZI1013に出力する。
【0127】
マッハ・ツェンダー干渉計1013は、光子を短いアーム1017または長いアーム1019のいずれかに方向付ける50/50ビームスプリッタ1015を有する。短いアーム1017と長いアーム1019は、時間遅延dtに相当する経路差、すなわち光子源1011を離れる光子間の間隔を有する。したがってもし第1の光子が長いアーム1019を取り、第2の光子が短いアーム1017を取るならば、これらの光子はビームスプリッタ1021に同時に作用して、2光子干渉が発生する。これは、ビームスプリッタ1021が二光子(両方の光子)をアーム1023、または二光子をアーム1025のいずれかに方向付けることを意味する。これは、アーム1025をたどり、それから特定の偏光の光子、例えば水平に偏光された光子にだけ作用するように構成された可変位相変調器1029を通り抜けて水平に偏光された光子によって1つの状態が表される重ね合わせを形成する。それからこの二光子は二光子を垂直偏光に変換するための偏光回転子1027に通される。
【0128】
二光子状態の第2の成分は、その偏光を偏光回転子1027を使用して垂直にまで回転させるアーム1023を通る。垂直に偏光された光子はそれから、垂直に偏光された光子の位相を変調しない可変位相変調器1029に通される。そしてこれらの光子はそれから、ループを回り続ける。二光子の時計回りおよび反時計回り両方の成分はそれから、無偏光ビームスプリッタ1021に同時に入射して同じ垂直偏光を持つ。
【0129】
複屈折位相変調器1029によって加えられた位相に依存して二光子は、干渉計1013の短いアーム1017または干渉計1019の長いアーム1019のいずれかに沿って方向付けられる。短いアーム1017に沿って方向付けられた二光子は垂直偏光を持ち、偏光ビームスプリッタ1031によって二光子検出器A1に方向付けられる。長いアーム1019に沿って方向付けられた二光子もまた垂直偏光を持ち、ビームスプリッタ1033によって二光子検出器A2に方向付けられる。
【0130】
図20の装置は、図17の装置と同じ仕方で動作する。二光子によって経験された如何なる位相変化も高速検出(detection at rate)A1の変動という結果をもたらすが、単一光子波長の半分だけ変化する。このようにしてこのシステムは、単一光子を使用して動作する干渉計の解像度を2倍にしている。
【0131】
光ファイバジャイロスコープは、それらの可動成分の欠如と高い精度と小型サイズとによって航空・宇宙の用途において非常に重要である。次に来るジャイロスコープは、回転運動が測定され得る精度を2倍にするためにわれわれの前の図2に基づいている。
【0132】
図21は、本発明の一実施形態によるジャイロスコープである。これは、図17のシステムの密接な類似物であって、同じ説明が当てはまる。図17では複屈折位相変調器915が、左からビームスプリッタ905に入射する二光子と右から入射する二光子との間に位相偏移を導入する。これに代わって図21では、ファイバループの回転速度が二光子の時計回りに移動する成分と反時計回りに移動する成分との間に位相偏移を導入する。
【0133】
古典的サニャック干渉計では、光のビームは1つの領域を取り囲む同じリングまたは経路の周りで2つの異なる方向に分割されて方向付けられる。入射点に戻ると光は、干渉計を出ることを許されて、干渉計パターンが取得される。もし干渉計が回転プラットホーム上に置かれれば、干渉計パターンのラインはプラットホームが回転していない干渉計パターンの位置と比較して横にずらされる。これは、プラットホームが回転しているときに入射/射出のポイントが光の通過時間中に動くからである。これは、一方のビームが干渉計の他方の経路を移動するビームより短い距離をカバーしたことを意味する。これは、この動きによって引き起こされた経路の変化が干渉計パターンに偏移を再現するということである。したがってプラットホームの各角速度で取得された干渉パターンは、その角速度に特有の異なる位相偏移を特徴付ける。
【0134】
図21において、光子は光子源1051によって生成され、これらの光子はそれから、この特定の例では水平偏光を有する光子を通すように構成された偏光ビームスプリッタ1053を通り抜ける。それから光子は、サニャック干渉計1057のための入射点であるビームスプリッタ1055に入る。サニャック干渉計は、半径Rを有するN個のループを備える。このシステムのファイバのN個のループの付加は、大きな空間を占めることなくファイバループの長さを増加させることによってジャイロスコープの感度を増加させる。
【0135】
光子は、これらの光子が経路1059に沿って移動する第1の状態を占めることができる。この第1の状態では光子は、これらの光子の偏光をこのシステムへの入口で回転子1063によって90°だけ回転させられる。第2の状態で光子は、経路1061に沿って移動する。両方の状態で光子は干渉計1065に入る。干渉計1065は、干渉計1065の2つのアーム間にdtという遅延時間を有する不平衡干渉計である。遅延時間dtは、光子源1051から放射された光子間の時間間隔に対応する。干渉計1065は、そのアームの1つにおいて与えられる(2n+1)π(ここでnは整数である)にセットされた固定位相偏移Φ1を有する。これは、1065に関してこのセッティングを選択することによって1055から干渉計に入るときに反対の経路を取った2つの光子が両方とも1055に戻るように方向付けられることはないことが保証されるので、重要なビットである。したがって2つの二光子検出器が1つの二光子を検出できる唯一の方法は、最初に干渉計に供給された2つの光子が同じ方向に無偏光ビームスプリッタ1055を離れる場合である。
【0136】
二光子状態の2つの成分(時計回りおよび反時計回り)はそれから、ビーム結合器1055で再結合される。干渉計の回転によって引き起こされた位相差に依存して光子は、検出器A1または検出器A2のいずれかに方向付けられる。二光子によって経験された如何なる位相変化も、単一光子波長の半分だけ変化する光束検出A1の変動という結果をもたらす。したがって2光子サニャック干渉計の使用は、回転または動きが検出される精度を2倍にできる。
【0137】
図22は、図20に示されたシステムに基づいている。図20では複屈折位相変調器1029が、左からビームスプリッタ1021に入射する二光子と右から入射する二光子との間に位相偏移を導入する。これに代わって図21では、ファイバループ1123の回転速度が二光子の時計回りに移動する成分と反時計回りに移動する成分との間に位相偏移を導入する。
【0138】
詳細には、光子源1111によって弁別不可能な水平に偏光された光子が生成される。これらの光子はそれから、不平衡マッハ・ツェンダー干渉計1113に供給される。干渉計1113は、短いアーム1117と長いアーム1119とを有する不平衡干渉計である。したがってもし第1の光子が長いアーム1113を取り、第2の光子が短いアーム1117を取るならば、これらの光子は同時にビームスプリッタ11121に作用して、2光子干渉が発生する。これは、ビームスプリッタ1121が二光子(両方の光子)をアーム1125または二光子をアーム1027のいずれかに方向付けることを意味する。サニャック干渉計1123内の光子は、2つの状態の重ね合わせを有しており、第1の状態ではこれらの光子は経路1127をたどってループの周りを反時計回りに進行し、それから偏光回転子1129に入り、光子が出口点1121に達するときには垂直に偏光された回転を持っている。時計回り方向に干渉計の周りを移動する光子は、経路1121に入って先ず偏光回転子1129を通り抜ける。これらの光子はまた、ビーム結合器/スプリッタ1121を経由して干渉計1123を退出する。この点における光子は、垂直偏光を有し、サニャック干渉計1123において導入された位相差に依存して二光子検出器A1またはA2のいずれかに到達する。
【0139】
このようにして、上記の2光子サニャック干渉計は、回転運動が検出される精度を2倍にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光子源と、
前記光学系を通る第1の経路をたどるように光子を方向付ける第1の方向付け要素と、
前記第1の経路とは逆の経路であって前記光学系を通る第2の経路をたどるように光子を方向付ける第2の方向付け要素と、
前記第1の経路をたどる光子と前記第2の経路をたどる光子との間の相対的位相偏移を変える手段と、
を備え、
前記第1の経路を通って移動する光子が前記第2の経路を通って移動する光子とは異なる偏光を有する光学系。
【請求項2】
前記光子源は非古典的光源である請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記第1の経路をたどった光子を検出するための第1の検出器と、
前記第2の経路をたどった光子を検出するための第2の検出器と、
前記第1、第2の検出器の結果を相関付ける手段と、を更に備える請求項1または請求項2に記載の光学系。
【請求項4】
前記第1の経路は並列に接続された複数のサブ経路を備え、前記第2の経路は前記複数のサブ経路の逆のサブ経路を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項5】
前記システムに入る光子はある時間間隔だけ離されており、前記システムは前記複数の経路のうちの少なくとも1つに設けられた時間遅延手段を更に備え、光子が遅延時間を有する経路をたどるためにかかる時間が、光子が前記時間遅延手段なしで前記複数の経路の1つをたどるためにかかる時間より前記時間間隔だけ長くなる請求項4に記載の光学系。
【請求項6】
前記光子源は前記システムが前記光子源によって放射された光子間にエンタングルメントを引き起こすように前記時間間隔だけ離された相等しい光子を出力する請求項5に記載の光学系。
【請求項7】
前記光子源は二光子を出力するように構成され、前記第1の方向付け要素は二光子を方向付け、前記第2の方向付け要素は二光子を方向付ける請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項8】
請求項3に従属する場合、前記検出器は二光子を検出する請求項7に記載の光学系。
【請求項9】
前記光子源は、偏光においてエンタングルメント状態であって、垂直に偏光された光子と前記垂直に偏光された光子の第1の時間間隔後に放射された水平に偏光された光子とを有する第1の状態と、水平に偏光された光子と前記第1の時間間隔後に放射された垂直に偏光された光子とを有する第2の状態と、の重ね合わせである状態を生成する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項10】
前記光子源は非縮退エンタングルメント光子を放射する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項11】
前記光学系は、前記光子のための第3の経路と、前記第3の経路の逆の経路である光子のための第4の経路と、前記第3の経路をたどる光子と前記第4の経路をたどる光子との間の相対的位相偏移を変える手段と、
を更に備えており、前記光学系は前記第3の経路を通って移動する光子が前記第4の経路を通って移動する光子とは異なる偏光を有し、前記光学系は光子の偏光に依存して前記光子を前記第1の経路または前記第3の経路のいずれかに方向付ける手段と、光子の偏光に依存して前記光子を前記第2の経路または前記第4の経路のいずれかに方向付ける手段と、を更に備える請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項12】
前記相対的位相偏移を変える手段は、複屈折要素、少なくとも1つの経路にサンプルを移動可能に取り付ける手段、または前記第1の経路と第2の経路のための移動性マウントを備える請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項13】
前記光学系は少なくとも2者間の量子通信のために構成されており、前記光学系は前記第1者に配置されて、前記第1者によって受け取られた光子の量子状態を判定するように構成された第1の検出システムを更に備えており、前記光学系は前記第2者に配置されて、前記第2者によって受け取られた光子の量子状態を判定するように構成された第2の検出システムを更に備えており、前記相対的位相偏移を加える手段は制御可能な複屈折位相変調器を備える請求項1請求項12のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項14】
前記第1の経路をたどったキャリアを前記第1者に方向付けるように構成された第1の通信手段と、前記第2の経路をたどったキャリアを前記第2者に方向付けるように構成された第2の通信手段とを更に備える請求項13に記載の光学系。
【請求項15】
前記位相変化手段は前記第1者の制御下で動作する第1の位相変調器と前記第2者の制御下で動作する第2の位相変調器とを備える請求項13に記載の光学系。
【請求項16】
前記光学系は物体の調査または撮像を実行し、前記光学系は前記物体に作用するための第1の偏光を有する光子と前記物体を迂回するための第2の偏光を有する光子とを方向付ける前記第1の経路に配置された第1の偏光ビームスプリッタを備えており、前記ビームは前記物体に作用するための第1の偏光を有する光子と前記物体を迂回するための第2の偏光を有する光子とを方向付ける第2の偏光ビームスプリッタにおいて再結合される請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項17】
前記光学系はジャイロスコープとして構成されており、光子は両者とも同一ポイントにおいて前記第1、第2の経路に出入りし、位相変化は前記第1、第2の経路の物理的動きによって達成される請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項18】
前記光学系はエンタングルメント光子源を調べ、前記光学系は偏光エンタングルメント光子の光子源を備え、前記偏光エンタングルメントを位相エンタングルメントに変換する手段のように構成されており、1対のエンタングルメント光子のうちから、一方の光子は前記第1の経路をたどるように方向付けられ、他方の光子は前記第2の経路をたどるように方向付けられ、前記位相変化手段は前記光子源が十分にエンタングルメントしている場合に前記第1、第2の経路からの前記光子の退出経路を予測することが可能であるように、位相差を導入するように構成された位相変調器である請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項19】
第1の偏光を有する光子を第1の経路をたどるように方向付け、また同時に第2の偏光を有する光子を前記第1の経路の逆の経路である第2の経路をたどるように方向付けることと、
前記第1の経路をたどる光子と前記第2の経路をたどる光子との間の相対的位相偏移を変えることと、を備える光子を干渉させる方法。
【請求項20】
前記第1および第2の経路を退出する光子の相関関係を測定することを更に備える請求項19に記載の方法。
【請求項1】
光子源と、
前記光学系を通る第1の経路をたどるように光子を方向付ける第1の方向付け要素と、
前記第1の経路とは逆の経路であって前記光学系を通る第2の経路をたどるように光子を方向付ける第2の方向付け要素と、
前記第1の経路をたどる光子と前記第2の経路をたどる光子との間の相対的位相偏移を変える手段と、
を備え、
前記第1の経路を通って移動する光子が前記第2の経路を通って移動する光子とは異なる偏光を有する光学系。
【請求項2】
前記光子源は非古典的光源である請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記第1の経路をたどった光子を検出するための第1の検出器と、
前記第2の経路をたどった光子を検出するための第2の検出器と、
前記第1、第2の検出器の結果を相関付ける手段と、を更に備える請求項1または請求項2に記載の光学系。
【請求項4】
前記第1の経路は並列に接続された複数のサブ経路を備え、前記第2の経路は前記複数のサブ経路の逆のサブ経路を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項5】
前記システムに入る光子はある時間間隔だけ離されており、前記システムは前記複数の経路のうちの少なくとも1つに設けられた時間遅延手段を更に備え、光子が遅延時間を有する経路をたどるためにかかる時間が、光子が前記時間遅延手段なしで前記複数の経路の1つをたどるためにかかる時間より前記時間間隔だけ長くなる請求項4に記載の光学系。
【請求項6】
前記光子源は前記システムが前記光子源によって放射された光子間にエンタングルメントを引き起こすように前記時間間隔だけ離された相等しい光子を出力する請求項5に記載の光学系。
【請求項7】
前記光子源は二光子を出力するように構成され、前記第1の方向付け要素は二光子を方向付け、前記第2の方向付け要素は二光子を方向付ける請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項8】
請求項3に従属する場合、前記検出器は二光子を検出する請求項7に記載の光学系。
【請求項9】
前記光子源は、偏光においてエンタングルメント状態であって、垂直に偏光された光子と前記垂直に偏光された光子の第1の時間間隔後に放射された水平に偏光された光子とを有する第1の状態と、水平に偏光された光子と前記第1の時間間隔後に放射された垂直に偏光された光子とを有する第2の状態と、の重ね合わせである状態を生成する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項10】
前記光子源は非縮退エンタングルメント光子を放射する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項11】
前記光学系は、前記光子のための第3の経路と、前記第3の経路の逆の経路である光子のための第4の経路と、前記第3の経路をたどる光子と前記第4の経路をたどる光子との間の相対的位相偏移を変える手段と、
を更に備えており、前記光学系は前記第3の経路を通って移動する光子が前記第4の経路を通って移動する光子とは異なる偏光を有し、前記光学系は光子の偏光に依存して前記光子を前記第1の経路または前記第3の経路のいずれかに方向付ける手段と、光子の偏光に依存して前記光子を前記第2の経路または前記第4の経路のいずれかに方向付ける手段と、を更に備える請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項12】
前記相対的位相偏移を変える手段は、複屈折要素、少なくとも1つの経路にサンプルを移動可能に取り付ける手段、または前記第1の経路と第2の経路のための移動性マウントを備える請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項13】
前記光学系は少なくとも2者間の量子通信のために構成されており、前記光学系は前記第1者に配置されて、前記第1者によって受け取られた光子の量子状態を判定するように構成された第1の検出システムを更に備えており、前記光学系は前記第2者に配置されて、前記第2者によって受け取られた光子の量子状態を判定するように構成された第2の検出システムを更に備えており、前記相対的位相偏移を加える手段は制御可能な複屈折位相変調器を備える請求項1請求項12のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項14】
前記第1の経路をたどったキャリアを前記第1者に方向付けるように構成された第1の通信手段と、前記第2の経路をたどったキャリアを前記第2者に方向付けるように構成された第2の通信手段とを更に備える請求項13に記載の光学系。
【請求項15】
前記位相変化手段は前記第1者の制御下で動作する第1の位相変調器と前記第2者の制御下で動作する第2の位相変調器とを備える請求項13に記載の光学系。
【請求項16】
前記光学系は物体の調査または撮像を実行し、前記光学系は前記物体に作用するための第1の偏光を有する光子と前記物体を迂回するための第2の偏光を有する光子とを方向付ける前記第1の経路に配置された第1の偏光ビームスプリッタを備えており、前記ビームは前記物体に作用するための第1の偏光を有する光子と前記物体を迂回するための第2の偏光を有する光子とを方向付ける第2の偏光ビームスプリッタにおいて再結合される請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項17】
前記光学系はジャイロスコープとして構成されており、光子は両者とも同一ポイントにおいて前記第1、第2の経路に出入りし、位相変化は前記第1、第2の経路の物理的動きによって達成される請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項18】
前記光学系はエンタングルメント光子源を調べ、前記光学系は偏光エンタングルメント光子の光子源を備え、前記偏光エンタングルメントを位相エンタングルメントに変換する手段のように構成されており、1対のエンタングルメント光子のうちから、一方の光子は前記第1の経路をたどるように方向付けられ、他方の光子は前記第2の経路をたどるように方向付けられ、前記位相変化手段は前記光子源が十分にエンタングルメントしている場合に前記第1、第2の経路からの前記光子の退出経路を予測することが可能であるように、位相差を導入するように構成された位相変調器である請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項19】
第1の偏光を有する光子を第1の経路をたどるように方向付け、また同時に第2の偏光を有する光子を前記第1の経路の逆の経路である第2の経路をたどるように方向付けることと、
前記第1の経路をたどる光子と前記第2の経路をたどる光子との間の相対的位相偏移を変えることと、を備える光子を干渉させる方法。
【請求項20】
前記第1および第2の経路を退出する光子の相関関係を測定することを更に備える請求項19に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2010−532004(P2010−532004A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507983(P2010−507983)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001704
【国際公開番号】WO2008/142389
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001704
【国際公開番号】WO2008/142389
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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