説明

光学ガラス用洗浄液及び光学ガラスの洗浄方法

【課題】本発明は、光学ガラスの洗浄において、潜傷の顕在化を抑制し、かつ、硝材によらず洗浄剤を変更する必要がなく、作業スペース、コストも低減し、作業効率を改善できる光学ガラス用洗浄液及び光学ガラスの洗浄方法を提供する。
【解決手段】質量平均分子量が1500以上のポリカルボン酸を10〜60質量%、非イオン性界面活性剤を1〜20質量%、溶媒を20〜89質量%含有し、pHが9以上である光学ガラス用洗浄液及びそれを用いた光学ガラスの洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラス表面の汚れを除去する光学ガラス用洗浄液及びそれを用いた洗浄方法に係り、特に、光学ガラスを形成する様々な硝材の洗浄にそのまま適用できる光学ガラス用洗浄液及びそれを用いた洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学素子を製造する際に、プレス成形用のプリフォームの作成やプレス成形後において表面形状を整えるために光学ガラスを化学的機械研磨(CMP;Chemical Mechanical Polishing)による研磨工程に付す場合があるが、この研磨操作により得られた光学ガラスの表面には、研磨剤や研磨の際に生じたガラスの微粉等が付着又は埋め込まれて存在する。この付着した研磨材やガラスの微粉は、光学素子の性能を低下させるため、十分に洗浄し除去してから次の工程に送らなければならない。
【0003】
このとき光学素子の洗浄は、一般に、光学素子を洗浄液と接触させたり、それに加えて超音波を与えたりして表面を清浄にする。具体的には、各洗浄槽に収納されたアルカリ洗浄液や水道水、純水や溶剤等の洗浄液への浸漬や、さらに超音波を印加して、光学素子をその洗浄液への浸漬と超音波の物理力を併用して汚れを除去している。
【0004】
このとき用いる洗浄液としては、ガラスの表面を侵食し、ガラスの表面に食い付いて付着している酸化セリウム等の研磨材までも除去するアルカリ洗浄液が知られており、このアルカリ洗浄液は、汚れの除去性能が高いため光学素子のように精密な部材の製造工程によく用いられている。
【0005】
また、他にも塩素系洗浄液や炭化水素系溶剤に代表される非水系洗浄液、アルコール類に代表される準水系洗浄剤の洗浄液、脂肪酸及びポリカルボン酸の少なくとも一方を含有する洗浄液(例えば、特許文献1参照)等の種々の洗浄液が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−21377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来の洗浄方法のうちアルカリ洗浄液は、ガラス表面を侵食するものであるため、耐水性、耐洗剤性が乏しい硝材からなる光学ガラスの洗浄に用いると、光学ガラス表面が侵食されすぎて、研磨工程中に形成された微細な潜傷と呼ばれる傷が拡大して表面に顕在化する不具合が生じ、製品歩留まりを低下させる問題があった。この潜傷は、より高い洗浄度を得るために、超音波洗浄を併用した場合には、超音波の物理力により、さらに拡大する場合がある。
【0008】
一方、ガラス表面に食い付き状に付着している研磨材や手脂等に対しては、アルカリ洗浄液を使用しない非水系洗浄液や、アルコール類に代表される準水系洗浄液のみを用いる洗浄方法では、除去性能が不十分である。
【0009】
これに対して、脂肪酸又はポリカルボン酸を用いた洗浄液は、アルカリ洗浄液ほど光学素子へのダメージが大きくないため潜傷の顕在化を抑制でき、研磨剤等の洗浄力も高いためアルカリ洗浄液に変わる洗浄剤として用いられるようになってきた。ところが、ポリカルボン酸を用いた洗浄液も、耐水性、耐洗剤性の乏しい硝材に対しては潜傷が顕在化する場合があり、アルカリ洗浄液程ではないが製造歩留まりが低下する問題があった。
【0010】
そのため、洗浄対象の硝材によって好ましい洗浄条件となるように、硝材に応じて洗浄液の成分を変えたり、洗浄条件を変更したりしなければならず、洗浄液の準備に手間がかかり、さらに異なる硝材を同時期に製造する場合には、洗浄機を複数台用意して洗浄条件を異なるようにするなど、作業スペースやコスト等の問題も生じていた。
【0011】
そこで、本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、光学ガラスの洗浄において、幅広い硝材で潜傷の顕在化を抑制し、かつ、優れた洗浄効果を保持する光学ガラス用洗浄液及び光学ガラスの洗浄方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光学ガラス用洗浄液は、質量平均分子量が1500以上のポリカルボン酸を10〜60質量%、界面活性剤を1〜20質量%、溶媒を20〜89質量%含有し、pHが9以上であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の光学ガラスの洗浄方法は、上記光学ガラス用洗浄液を光学ガラス表面と接触させて洗浄することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学ガラス用洗浄液は、光学ガラスの洗浄において、幅広い硝材において潜傷の顕在化を抑制でき、かつ、優れた洗浄効果を保持しているため、この洗浄液を用いることで、洗浄液を硝材に応じてその都度調整する必要がなくなり、作業効率を大幅に改善できる。また、複数の洗浄液を用意する必要もないため、作業スペース及びコストを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明で用いるポリカルボン酸は、カルボキシル基を2以上有する化合物であって、後述する溶剤に溶解できれば特に限定されるものではなく、例えば、カルボキシル基を有するビニル単量体の一種または二種以上の重合体がある。上記重合体には、カルボキシル基を有するビニル単量体と共重合可能な他のビニル単量体の一種または二種以上の若干量が共重合されていてもよい。
【0017】
上記カルボキシル基を有するビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、アトロパ酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基を1個または2個以上有するα,β−不飽和脂肪酸、あるいは無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等のα,β−不飽和脂肪酸無水物が挙げられる。ここで用いる不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸無水物は、炭素数3〜6のものが好ましい。
【0018】
上記カルボキシル基を有するビニル単量体と共重合される他のビニル単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルメタクリレート等の脂肪族又は環式アクリレート及び/又はメタクリレート、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、iso−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系単量体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン含有単量体、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアリルエーテル等のエポキシ基含有単量体、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、ジアセトンアクリルアミド、β−ヒドロキシエチルアクリレート、β−ヒドロキシエチルメタクリレート、β−ヒドロキシプロピルアクリレート、β−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基含有単量体、その他ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の水溶性単量体等がある。
【0019】
上記ビニル単量体は、通常、水溶液中で重合されるが、エマルジョン重合又はメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン等の水溶性有機溶剤、又は上記水溶性有機溶剤と水との混合溶剤中で重合されてもよい。そして重合後はスプレー乾燥、真空乾燥、加熱乾燥等によって乾燥粉末化される。
【0020】
また、上記ポリカルボン酸は、ビニル単量体は溶解するが、その重合体は溶解しないような溶剤、例えば、トルエン、n−ヘキサン等の中で重合して重合体を粉状に析出させることによって製造してもよい。この場合は粉末化の工程は必要でなく、単に乾燥して溶剤を除去するだけでよい。
【0021】
上記カルボン酸塩類を調製するには、上記カルボキシル基を有するビニル単量体の重合前、重合中又は重合後にアルカリの添加によって塩型にする。上記ポリカルボン酸の塩としては、カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩が一般的である。
【0022】
上記ポリカルボン酸の質量平均分子量は1500以上であり、望ましくは2000〜300000である。質量平均分子量が1500未満では洗浄力が充分でなく、また500000を超えると粘度が高くなり、水に対する溶解性が低下する。
【0023】
本発明で用いる界面活性剤は、洗浄効果を高めるために用いられ、通常、光学ガラスの洗浄に用いられている界面活性剤を適用でき、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤のいずれも、本発明の洗浄剤の効果を阻害しない範囲で使用できる。
【0024】
本発明で用いる非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキロールアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアマイド、ソルビタンアルキルエステル、ポリオキシアルキレンソルビタンアルキルエステル等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0025】
本発明で用いる陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル、α−オレフィンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸エステル塩、アルカンスルホン酸塩、N−アシル−L−グルタミン酸ナトリウム(ココイルグルタミン酸ナトリウム)等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0026】
本発明で用いる陽イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0027】
界面活性剤としては、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)が12以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。低HLB非イオン性界面活性剤は起泡性が低く、取扱いが容易であり、洗浄対象の光学ガラスへの悪影響も少ない。
【0028】
本発明で用いる溶剤は、上記した洗浄液の有効成分を溶解できるものであればよく、水、メタノール、エタノール等のアルコール、酢酸、ギ酸、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の水溶性溶剤が挙げられ、これらは単独で又は併用して用いられるが、いずれの場合も必須の溶媒として水の使用が好ましい。また、上記した洗浄液成分を溶解させ、洗浄液のpHを9以上とできるものを用いる。
【0029】
上記した洗浄液中のポリカルボン酸の配合量は、洗浄液全体に対して10〜60質量%とし、洗浄力を十分に発揮させ、硝材へのダメージを抑制するために、15〜50質量%が好ましく、20〜50質量%がより好ましい。界面活性剤の配合量は、洗浄液全体に対して1〜20質量%であり、洗浄性を高めるためには2〜15質量%が好ましく、5〜10質量%がより好ましい。また、溶剤の配合量は、洗浄液全体に対して20〜89質量%であり、35〜83質量%が好ましく、40〜75質量%がより好ましい。
【0030】
本発明の光学ガラス用洗浄剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で上記した成分以外の他の成分、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、ニトリロトリ酢酸、クエン酸ナトリウムなどのキレート剤や炭酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどのアルカリ補助剤、縮合リン酸塩やカルボキシメチルセルロースなどの高分子ビルダーを添加してもよい。その際、ここでいう他の成分は、洗浄液全体に対して0〜15質量%配合することが好ましい。
【0031】
本発明の光学ガラス用洗浄液は、上記した溶剤中に上記した成分を溶解させることで得られる。このとき、洗浄液のpHは9以上とするものであり、pH10〜11が洗浄力と硝材の潜傷の顕在化を抑制する効果を両立できる点で好ましい。pHは、上記洗浄液成分を溶解させた後調整すればよく、その際に用いるpH調整剤としては、エタノールアミン、炭酸ナトリウム等の炭酸塩、ポリアリルアミン、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩、水酸化ナトリウム等の無機アルカリ塩等が挙げられる。
【0032】
次に、本発明の光学ガラスの洗浄方法について説明する。本発明の光学ガラスの洗浄方法は上記のように得られた光学ガラスの洗浄液を、光学ガラス表面と接触させて、光学ガラスを洗浄するものである。
【0033】
このとき、光学ガラスに洗浄液を塗布、噴霧したり、洗浄液中に光学ガラスを浸漬させたりして接触させればよく、光学ガラスの表面と満遍なく接触し、常に洗浄作用を働かせられるため洗浄液中へ光学ガラスを浸漬させることが好ましい。このとき、洗浄液の温度は20〜40℃が好ましく、接触時間は1〜5分が好ましい。温度が低いと洗浄効果が十分とならず、温度が高いと洗浄効果は得られるが潜傷が拡大する可能性があり、接触時間が短いと洗浄効果が十分とならず、接触時間が長いと潜傷が拡大する可能性がある。
【0034】
この接触による洗浄操作において、洗浄部分に超音波による微細な振動を与えると、洗浄効果を向上させることができ好ましい。ただし、超音波により潜傷の発生が拡大する可能性があるため、照射時間、振動の周波数、温度等を管理し、潜相が拡大しないようにする。このとき与える超音波の振動は、その周波数が28〜170kHzが好ましい。
【0035】
また、ここで洗浄対象は光学素子等の光学ガラスであり、光学ガラスの製造工程のいずれの工程の前後でも用いられるが、特に、CMP等の研磨後の光学ガラスの洗浄に有効である。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を、実施例によりさらに詳細に説明する。
【0037】
(実施例1)
ポリカルボン酸としてオキシレン2−メチルポリマー(質量平均分子量 2000、アイケミテクノ株式会社製) 50質量%、非イオン性界面活性剤としてポリオキシアルキレンデシルエーテル(HLB 10.5) 2質量%、pH調整剤としてジエタノールアミン 15質量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.2質量%、を純水に溶解して得られた水系の光学ガラス用洗浄液を得た。この洗浄液のpHは10.9であった。
【0038】
得られた光学ガラス用洗浄液を洗浄槽に貯留し、リン酸ビスマス系ガラス、ホウ酸バリウム系ガラス、リン酸バリウム系ガラス、ホウ酸ランタン系ガラスの硝材からなるCMP研磨後の光学ガラス(4種類)を、それぞれ洗浄液中に1分間浸漬して超音波洗浄した。その結果を表1に示した。なお、超音波洗浄には、超音波発生器(シャープマニュファクチャリングシステム株式会社製、商品名:UT−206H)を用い、200W、37kHzで70%出力の超音波を印加した。
【0039】
(実施例2)
ポリカルボン酸としてアクリル酸2−メチルポリマー(質量平均分子量 12000、アイケミテクノ株式会社製) 30質量%、非イオン性界面活性剤としてポリオキシアルキレンデシルエーテル(HLB 10.5) 2質量%、ココイルグルタミン酸ナトリウム(HLB 12) 2.5質量%、pH調整剤として炭酸ナトリウム 5.5質量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.2質量%、を純水に溶解して得られた水系の光学ガラス用洗浄液を得た。この洗浄液のpHは11.0であった。
得られた洗浄液を用いた以外は、実施例1と同様の操作により光学ガラスを洗浄した。その結果を表1に示した。
【0040】
(比較例1)
洗浄液として市販のポリカルボン酸含有洗浄液(アイケミテクノ株式会社製、商品名:アクトスW−AD5;pH8.1、質量平均分子量 1000)をそのまま用いた。それ以外は、実施例1と同様の操作により光学ガラスを洗浄し、その結果を表1に示した。
【0041】
(比較例2)
洗浄液として市販のポリカルボン酸含有洗浄液(アイケミテクノ株式会社製、商品名:アクトスW−AD5;pH8.1、質量平均分子量 1000)にジエタノールアミンを濃度1%となるように添加してpHを10.8とし、この調製した洗浄液を使用して実施例1と同様の操作により光学ガラスを洗浄し、その結果を表1に示した。
【0042】
(比較例3)
洗浄液として市販の強アルカリ洗浄液(日本シー・ビー・ケミカル株式会社製、商品名:JCB−2315;pH13.7)を用いた以外は、実施例1と同様の操作により光学ガラスを洗浄し、その結果を表1に示した。
【0043】
(比較例4)
洗浄液として市販の弱アルカリ洗浄液(日本シー・ビー・ケミカル株式会社製、商品名:CSクリーン)を用いた以外は、実施例1と同様の操作により光学ガラスを洗浄し、その結果を表1に示した。
【0044】
【表1】

【0045】
〔汚れ除去性〕
光学ガラス表面の研磨剤の有無を光学顕微鏡により調べ、以下の基準により評価した。
○:酸化セリウム由来の微粒子汚れがほとんど観察されず、良好、△:一部に微粒子汚れが残存している、×:全体的に微粒子汚れが残存している。
【0046】
〔耐ダメージ性〕
光学ガラス形状をレーザー顕微鏡により調べ、以下の基準により評価した。
◎:傷拡大倍率1.3倍以下、○:傷拡大倍率1.3倍〜1.6倍以下、△:1.6倍〜2.0倍、×:2.0倍以上
【0047】
以上の結果から、洗浄成分としてポリカルボン酸を含有する洗浄液において、pHを所定の範囲に調整することで、耐洗浄性の小さい硝材のダメージを抑制することができ、幅広い硝材にそのまま適用可能とでき、光学ガラス用洗浄液として好適であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の光学ガラス用洗浄液及び光学ガラスの洗浄方法は、研磨工程の有無にかかわらず光学ガラスの洗浄に広く用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量平均分子量が1500以上のポリカルボン酸を10〜60質量%、界面活性剤を1〜20質量%、溶媒を20〜89質量%含有し、pHが9以上であることを特徴とする光学ガラス用洗浄液。
【請求項2】
前記pHが10〜11.5である請求項1記載の光学ガラス用洗浄液。
【請求項3】
前記ポリカルボン酸が、炭素数3〜6からなる不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸無水物の重合体である請求項1又は2記載の光学ガラス用洗浄液。
【請求項4】
前記界面活性剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテルである請求項1乃至3のいずれか1項記載の光学ガラス用洗浄液。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の光学ガラス用洗浄液を光学ガラス表面と接触させることを特徴とする光学ガラスの洗浄方法。
【請求項6】
前記光学ガラスが、CMP研磨後の光学ガラスである請求項5記載の光学ガラスの洗浄方法。

【公開番号】特開2012−233063(P2012−233063A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102036(P2011−102036)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】