説明

光学コンポーネント

【課題】認証および偽造防止の目的のために、二以上の隠された画像を含んでいて、これらの画像は、前記光学コンポーネントが二つの偏光器の間に保持されるときに、次々に現れては隠れる光学コンポーネントを提供すること。
【解決手段】この光学コンポーネントは、分離された隣接するストライプまたは領域の中に前記画像が埋め込まれた、一以上の光学遅延体を備えており、各画像は偏光との異なったモードでの相互作用に関連付けられている。二つの偏光器の代りに、該コンポーネントを反射器上に装着してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常は隠されている画像を含んだ光学コンポーネントに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明によるコンポーネントの特別の用途は、偽造および複製からの保護、並びに単純で明白な文書の認証の領域である。
益々高品質化したコピー技術が利用可能になっており、これによって小切手、クレジットカード、安全、身分証明書などを偽造から保護することは益々困難になっている。更に、模倣ブランド製品(模倣医薬品を含む)、並びに著作権で保護された製品、例えばコンパクトディスク、コンピュータソフトウエアおよび電子チップの複製品が製造され、世界的に頒布されている。益々増大する偽造は、偽造から保護し且つ肉眼または機械で認識できる新しい認証素子を必要としている。
【0003】
小切手、クレジットカード等の複製保護の分野では、既にかなりの数の認証素子が存在する。保護すべき文書の価値に応じて、非常に単純な、または比較的複雑な素子が用いられる。幾つかの国では、フォトコピー上で黒くなる金属ストライプを小切手に設けることで満足している。これによってフォトコピーは防止されるが、このタイプの素子は模倣するのが極めて容易である。これとは対照的に、ホログラムおよびシネグラムのような、より複雑な認証素子も存在する。このタイプの認証素子は、格子による光の回折に基づいており、それらの認証を確認するためには、異なった観察角度の下で観察する必要がある。これらの回折素子は、三次元画像、色変化または映像的効果を生じるが、これらは観察の角度に依存するから、予め定められた基準またはルールに基づいてチェックしなければならない。この技術を用いてコード化された情報、例えば画像または数字を機械を使用して読むことは、実際的には可能ではない。更に、これら素子の情報内容は非常に制限され、また、光学専門家しか偽造品とオリジナル製品とを識別できないであろう。
【0004】
回折光学素子についての更なる問題は、これらが包装紙、玩具などのような消費者製品についても使用されていることである。従って、関連の製造方法が広く知られ、直ちに偽造されることになる。
上記の回折素子に加えて、最適な複製保護に適した他のコンポーネントも知られている。これらには、例えば特許文献1または特許文献2に開示された光学コンポーネント、即ち、局部的な分子配向構造を有する異方性液晶層を備えたコンポーネントが含まれる。
【0005】
これらのコンポーネントはハイブリッド層構造に基づいており、該ハイブリッド層構造は、配向層と、これに接触し且つ液晶モノマーもしくは相互に架橋されたプレポリマーからなる層とからなっている。この場合の配向層は、光配向したポリマーネットワーク(PPN)(これは他の文献で用いられているLPPと同義語である)からなっており、これは配向した状態において、予め定められた配列により交番する配向領域を定義する。液晶層構造を製造する際に、液晶モノマーまたはプレポリマーは、PPN層との相互作用によって帯状に配向される。特に、空間的に依存した光軸方向の変化を特徴とするこの配向は、続いて架橋工程により固定され、その後、予め定められた配向パターンを有する光学的に組織化された架橋液晶モノマーまたは架橋プレポリマー(LCP)が形成される。追加の手段を伴わない観察下において、配向パターン自体および架橋LCP層に書き込まれた情報は、最初は両者とも見えない。これらの層は透明な外観を有している。これらの層が配置されている基体が光を透過させるときに、光学素子が二つの極性の間に配置されれば、LCP配向パターンまたは書き込まれている情報が見えるようになる。複屈折性のLCP層が反射層上に配置されていれば、その素子の上に保持された偏光子を使用するだけで、前記パターンまたは対応した情報を見えるようにすることができる。LPP/LCP認証素子は、テキスト、画像、写真およびこれらを組合せた形態で、実際には制限なく情報を保存することを可能にする。従来技術の認証素子と比較して、このLPP/LCP素子は、複雑な色変化または映像効果を認識する方法を学習する必要がないので、セキュリティー特徴の認証が素人にも確認できる特徴を有している。LPP/LCP認証素子は読取りが非常に単純で、信頼性があり、且つ迅速であるから、同じ認証素子において、機械読取り情報ならびに肉眼情報を組み合わせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP−A−689084号公報
【特許文献2】EP−A−6890655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、時間を経るに伴って、偽造者がこの技術をマスターする危険が残っている。
上記のコンポーネントには、(肉眼で見えても見えなくても)一つの絵画的素子が存在する。
このようなコンポーネントのセキュリティー価値または娯楽価値を改善するのが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、光学コンポーネントは、複数の画像が埋め込まれた一以上の遅延体を含み、前記画像は、前記コンポーネントの平面の如何なる点においても、一以下の画像のエレメントが存在するように配置され、各画像は偏光との異なる相互作用に関連付けられている。この関連付けは、例えば、各画像が(一以上の)パターン化された遅延体の中に埋め込まれ、その夫々が光軸の異なるパターンを有する等のような、種々の方法で達成することができる。
【0009】
本発明はまた、偏光源と、その中を偏光が通過できる上記コンポーネントと、該コンポーネントを通過した光のためのアナライザー(実際には偏光シート)とを具備し、該アナライザーは光の移動方向の軸回りに回転可能である観察システムを提供する。前記偏光源は、前記コンポーネントの表面に適用される偏光シートであってもよい。
【0010】
異なる画像を連続する平行ストライプの中に含めることができ、好ましくは、夫々のストライプは肉眼で解像可能なよりも狭く、その中に前記コンポーネントの表面領域が分割される。これらがn個の画像であれば、通常は、如何なる一つの画像も各n番目のストライプの上に表されるであろう。
【発明の効果】
【0011】
このような光学コンポーネントは、娯楽、文書認証および偽造対抗手段の分野で価値のある驚くべき性質を有しており、偏光器(=アナライザー)を回転させるだけで、複数の異なる画像(全て通常の光で見える)を次々に見ることができる。以前は、この方法で一つの隠れた画像のみを見せることが可能であった。しかし、例えばEP-A-689065、PCT/IB98/00687、またはCH841/98に記載されているような、「一つの隠れた画像」技術の全ての利点は維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、二つの遅延体を用いて製造された本発明による第一の光学コンポーネントを、同図に示した配向のアナライザーを通して見たときの外観で示す拡大図である。
【図2】図2は、図1と同じコンポーネントを、図2に示した配向のアナライザーを通して見たときの外観で示している。
【図3】図3は、図1と同じコンポーネントを、図3に示した配向のアナライザーを通して見たときの外観で示しており、図1に示した画像の「ネガ」対応部を導く。
【図4】図4は、図1と同じ光学コンポーネントを、図4に示す配向のアナライザーを通してみたときの外観で示しており、図2に示した画像の「ネガ」対応部を導く。
【図5】図5は、絵Iの情報を含むストライプ化されたフォトマスクを示している。このストライプ化されたフォトマスクは、(この実施例の)光学部品の製造プロセスのために必要である。
【図6】図6は、第二の画像(即ち、絵II)の情報を含むストライプ化されたフォトマスクを示している。このフォトマスクは、光学部品の製造プロセスにおいてはオプションである。
【図7】図7は、ストライプ化されているが、完全にはパターン化されていない(即ち、絵情報を含んでいない)フォトマスクを示している。このストライプ化されたフォトマスクは、光学コンポーネントの製造プロセスに使用される。
【図8】図8は、絵IIを反射するフォトマスクを示している。このマスクは、図5、6および7に示した如何なるストライプも含んでいない。
【図9】図9は、光学部品に対するアナライザー角度に関連した、夫々の画像(ここでは2画像)のコントラスト依存性を示している。アナライザー角度はx軸に関連している(アナライザーがx軸に対して平行であれば、角度は0°である)。特定のアナライザー角度において、最大コントラストのピークに到達する。
【図10】図10は、以下の図で説明する本発明による第二の光学コンポーネントの場合の、アナライザー角度に関連した各画像(ここでは2画像)のコントラスト依存性を示している。この第二の光学コンポーネントは一つの遅延体を用いて製造される。アナライザー角度はx軸に関連付けられる(アナライザーがx軸に対して平行であるときは、角度は0°である)。特定のアナライザー角度で、最大コントラストのピークに達する。
【図11】図11は、拡大された第二の光学コンポーネントを、指定された配向のアナライザーを通して見たときの外観で示している。
【図12】図12は、第二の光学コンポーネントを、図11とは異なる指定された配向のアナライザーを通して見たときの外観で示している。
【図13】図13は、第二の光学コンポーネントにおける絵Iの「ポジ」情報(「ポジ」は、明るい背景上の暗い情報パターンを意味する)を含む、ストライプ化されたフォトマスクを示している。
【図14】図14は、絵Iの「ネガ」情報(「ネガ」は、暗い背景上の明るい情報パターンを意味する)を含む、ストライプ化されたフォトマスクを示している。
【図15】図15は、第二の画像、即ち絵IIの「正の」情報を含むストライプ化されたフォトマスクを示している。
【図16】図16は、第二の画像、即ち絵IIの「ネガ」情報を含むストライプ化されたフォトマスクを示している。図13〜図16のフォトマスクは全て、光学コンポーネントの製造プロセスのこの例において必要とされる。
【図17】図17は、反射モードで機能する本発明による光学コンポーネントを模式的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施例1)
図1、図2、図3および図4に従う光学コンポーネントは、例えば公開された特許出願EP-A-611786、WO-96/10049およびEP-A-763552に示された、桂皮酸誘導体またはフェルラ酸誘導体のような、適切な配向可能で且つ線形光重合可能な(LPP)材料の層を、透明な基板に適用することによって製造される。厚さ約50 nmのこの層は、図5に模式的に示したフォトマスクを通して、偏光方向が異なる偏光に対して露光される。フォトマスクは、交互に隣接する不透明なストライプ(II)および概ね透明なストライプ(I)であり、これはLPP材料の層に投射されたときに夫々1/8 mmの幅を有し、肉眼で解像できるよりも小さい。ストライプ(I)は、直立した十字画像を残すために、それ自身が部分的に黒く塗り潰されている。この第一のLPP層のための証明シーケンスが表3に示されており、その最終結果は表1に示されている。ストライプI(図5)の明るい絵の領域を進むx軸に対する、適切な波長をもった線形偏光の角度αは、+13.5°である(照射工程1):図5に描かれた絵は直立した十字であるが、如何なる画像を使用してもよい。次に、このマスクは図7に示したフォトマスクで置き換えられる。両方のマスクの不透明なストライプ(II)は一致するが、図5のストライプIの以前の非露光領域は、今度は-13.5℃の角度αで露光されるであろう(照射工程2);最後に、このマスクを除去し、x軸に対して平行な(α=0°)第三の照射工程を適用して、図5のストライプIIが露光される(照射工程3)。これら三つの照射工程の後、第一のLPP層の全ての領域が、適切な波長の偏光に対して露光される。これらの露光は、夫々異なった好ましいアラインメントで重合を生じる。
その後、この第一のLPP層は架橋可能な液晶モノマーまたはプレポリマー混合物(LCP)でコーティングされ、これは、後で詳述するLCP混合物MLCPのような複屈折を示す(MLCPは光学的異方性を有している)。LCP材料は、直ぐ下にあるLPP層領域のアラインメント(もしあれば)を取る。次いで、全体を適切な波長の偏光していない(等方性の)光に露出させて、LCP材料を架橋させる(表3の照射工程4)。
【0014】
次いで、第二のLPP層(約50nmの膜厚)が、先のLCP層の上にコートされる。第一のLPP層と同様に、この第二のLPP層には、適切な波長の偏光に対する更に4回の露光(表3の照射工程5〜8)が適用される。フォトマスク(図5)の明るい絵の領域を進むx軸に対する線形偏光の角度αは、+31.5°である(照射工程5)。次いで、このマスクを図7に示すフォトマスクで置き換え、今度は図5のストライプIの先の未露光領域が、-31.5°の角度αで露光される(照射工程6)。次いで、現在のマスク(図7)を、図8の如何なるストライプもないフォトマスクで置き換える;図8に示された絵IIは対角線的な十字であるが、如何なる画像を用いることもできる。未だ露光されていないストライプIIの明るい領域に、角度+45°の偏光を照射する(照射工程7)。最後にこのマスクも除去し、先に露光されていない全ての領域に対して、x軸対して平行な偏光(α=0)を照射する(照射工程8)。これらの露光は、それぞれ異なる好ましいアラインメントで重合を生じさせる。
【0015】
その後、この第二のLPP層を、LCP混合物MLCP(MLCPは0.13の光学異方性Δnを有し、1.5μmの膜厚に導く)のような、複屈折性を示す架橋結合可能な液晶モノマーまたはプレポリマー混合物(LCP)でコートする。ここでも、LCP材料は直ぐ下にあるLPP層のアラインメント(もしあれば)を採用する。次いで、全体を適切な波長の偏光していない光に露光し(マスクは必要ない)、LCP材料を架橋する(照射工程9)。
種々の遅延層は同じ(この場合のように)であるか、または異なった光遅延Δndを有する可能性がある。
【0016】
これにより、通常は光透過性である光学コンポーネントの製造を完了する。
使用に際しては、この光学コンポーネントの真偽を次の方法で試験する。
それを線形偏光を発する光ボックス上に置くと、透過部分は透明に見える。
それをチェックするために、これを、偏光格子を有する回転可能なシートを通して観察する。このようなシートはアナライザーとして公知である。
要約すると、二つの画像と偏光との間でのモードの異なる相互作用のために、アナライザーを回転させるに伴って、直立した十字(ストライプI、図1)が見え、消滅して対角線十字(ストライプII、図2)で置き換わり、これもまたアナライザーを回転し続けると消滅する。この方法で検査するときに、真偽の分からない文書が二つの異なる画像を表示するかどうかを確認することは容易である。アナライザーの角度に対するコントラストの依存性も、図9に表されている。
【0017】
更に詳細に言うと、後掲の表に示したように、画像の外観は種々の角度および遅延に依存する(その記号は下記の意味を有する)。
δ1 第一のLCP層の光軸
δ2 第二のLCP層の光軸
x軸: 検査配置の偏光格子の軸;α=0°はx軸に対して平行を意味する
x,y: 色座標は、色度図表における位置を示す;例えば、図2のストライ
プIは灰色から茶色に見える;これらストライプの色座標は、
x=0.3684およびy=0.3609であり、このような僅かに着色した
外観は、薄茶色と記述される。
標準明度: 1.00=平行に配置された偏光器およびアナライザーを通して見た
ときの検査光の明度、遅延なし
Δnd1,Δnd2: LCP層の光遅延(Δnd1=Δnd2=0.2μm)
d1,d2: LCP遅延層の厚さ(d1=d2=1.5μm)
表2は、実施例1に記載した光学コンポーネントで達成できる可能ななコントラスト非および色の計算値を示している。
【0018】
(実施例2)
本発明に従うもう一つの実施例では、一つの遅延層のみを持った同様の認証コンポーネントを作製することが可能である。このコンポーネントは、既述の方法によって真偽を試験される。アナライザーを回転させると、特定の回転角度で最大コントラストのピークが得られ、その夫々において、(そうでなければ隠れている)画像の一方が見えるようになる(図10)。
【0019】
図11および図12に従う光コンポーネント(それらの「ネガ」対応部分はここには示されていないが、実施例1と同様に、x軸に対するアナライザーの角度が夫々0°および45°のときに現れる)は、EP-A-611786、WO-96/10049およびEP-A-763552に示された桂皮酸誘導体またはフェルラ酸誘導体のような、適切な配向の線形光重合性(LPP)材料の層を適用することによって作成される。厚さ約50 nmのこの層は、図13に示すフォトマスクを通して偏光方向の異なる偏光に露光される。このフォトマスクは、交互に隣接する不透明な(II)ストライプおよび原則的に透明な(I)ストライプを有しており、これらの夫々は、LPP材料の層に投影されたときに1/8 mmの幅を有し、肉眼が解像できるよりも小さい(図14、図15および図16に示したマスクは同じ解像度を示す)。ストライプ(I)は、部分的に黒く塗り潰されて、キャラクタ「3」の画像を残す。このLPP層のための照射シーケンスは:明るいストライプ領域を通過するx軸に対する、適切な波長の線形偏光の角度α(図13)は+45°(照射行程1)である;図13に示した絵はキャラクタ「3」であるが、如何なる画像を使用してもよい。次いで、マスクを図14に示したフォトマスクで置きかえる。このマスクは、不透明なストライプIIを除き、図13に示したマスクの正確な「ネガ」型の対応物である。両マスクの不透明ストライプ(II)は一致するが、図13のストライプIに置ける先の非露光部領域が、今度は0°の角度αで露光され;次いで、絵IIの画像情報を含む第三のマスク(図15)が適用され(照射工程2);図15に示された絵はキャラクタ「4」であるが、如何なる画像を使用してもよい。フォトマスク(図15)のストライプIIにおける明るい絵領域を進むx軸に対する線形偏光の角度αは、+22.5°である(照明工程3)。次いで、このマスクを図16に示したフォトマスクで置き換え、今度は、先に露光されなかった図15のストライプIIの領域を+67.5°の角度αで露光する(照射工程4)。これらの露光によって、それそれぞれ異なった好ましいアラインメントでの光重合を生じる。
【0020】
その後、このLPP層を、MLCP(MLCPは0.13の光学的異方性Δnを有し、1.5μmの膜厚に導く)のような、複屈折を示す架橋可能な液晶モノマーまたはプレポリマー混合物(LCP)でコートする。このLCP材料は、直ぐ下にあるLPP層の領域のアラインメント(もしあれば)を取る。次いで、全体を適切な波長の非偏光(マスクを必要としない)に露光させて、LCP材料を架橋する(照射工程5)。
【0021】
これによって、光学コンポーネントの製造が完了し、該コンポーネントは、通常は光を透過させる。
それは線形の偏光を放出する光ボックス上に配置され、光の透過に対して透明である。
それをチェックするために、偏光格子(アナライザーとして知られるシート)を有する回転可能なシートを通して観察する。
要約すると、種々の画像パターンの異なったモードの相互作用のために、アナライザーを回転させると、キャラクタ「3」(ストライプI、図13)が出現し、また消滅してキャラクタ「4」と置き換わり、これもアナライザーを回転し続けると消滅する。この方法で検査すれば、真正であるかどうかが分からない文書が、二つの異なる画像を提示するかどうかを容易に確認できる。
【0022】
入射光の偏光方向を維持する反射体の頂面に、実施例1および実施例2に記載した光学コンポーネントを配置もしくは取付け、また偏光器および光学部品を通り抜けた光の進行方向軸の回りで回転可能な偏光器を使用すると、このような光は上記の反射器で反射されて、前記の光学部品および偏光器を二回通り抜ける(図17に模式的に示す)。こうして、前記偏光器を回転させることによって、実施例1および実施例2に示した透過モードで見えるのと同様の画像が観察される。即ち、偏光器の特定の回転角度において、各画像の最大コントラストのピークが得られ、このような夫々の角度において、そうでなければ見えない各画像を見えるようにすることができる。その画像は、光遅延およびその光軸が反射動作モードについて最適化されていないため、比較的コントラストの低い青色/白色、または紫/白色で現れる。
【0023】
以下に、本発明に従って使用できるPPN(=LPP)およびLCP層の製造の例について、更に詳細に説明する。
1.PPN層の製造
適切なPPN材料は、例えば、桂皮酸誘導体またはフェルラ酸誘導体のように、公開特許出願EP-A-611786、WO-96/10049およびEP-A-763552に記載されている。上記の例については、下記のPPN材料が選択された。
【0024】
以下に、本発明に従って使用できるPPN(=LPP)およびLCP層の製造の例について、更に詳細に説明する。
【0025】
1.PPN層の製造
適切なPPN材料は、例えば、桂皮酸誘導体またはフェルラ酸誘導体のように、公開特許出願EP-A-611786、WO-96/10049およびEP-A-763552に記載されている。上記の例については、下記のPPN材料が選択された。
【0026】
【化1】

【0027】
PPN材料のシクロペンタノン中の2パーセント溶液を用いて、2000 rpmで1分間,ガラスプレートをスピンコートした。次いで、この層を120℃で5〜10分間、ホットプレート上で乾燥した。次いで、線形の偏光(Hg高圧ランプ)を用いて、この層を、(ランプの強度および光学コンポーネントのLPP/LCP層の数に応じて)室温で20〜405秒間露光した。次いで、この層を液晶のための配向層として使用した。
【0028】
2.LCP層のための架橋可能なLCモノマーの混合物MLCP
上記の実施例においては、架橋可能なLCモノマーとして下記のジアクリレート化合物を使用した。
【0029】
【化2】

【0030】
これらの化合物を使用して、融点が特に低い(Tm〜35℃)過冷却可能なネマティック混合物MLCPを開発し、室温でLCP層を調製することを可能にした。
【0031】
混合物中において、これらのジアクリレートモノマーは下記の組成で存在していた。
Mon1 80%
Mon2 15%
Mon3 5%
加えて、更にチバガイギー社製の2%光開始剤IRGACURE(商標名)を、上記混合物に添加した。
【0032】
次いで、この混合物MLCPをアニソール中に溶解した。アニソール中のMLCP濃度によって、LCP層の厚さを広範囲に調節することが可能であった。特に、この特許に記載された光学コンポーネントの例では、0.2μmの望ましい遅延Δnを達成することができた。
【0033】
LCモノマーの光開始架橋のために、当該層は、不活性雰囲気において、キセノンランプからの等方性の光に(ランプの強度に応じて)約5〜30分間露光させた。
【0034】
上記の光学的効果、並びに対応する層構造および材料組成は、本発明による多くの可能性からの一つの選択に過ぎず、特に認証素子を開発するために、広範な種々の方法で組み合わせることができる。
【0035】
従って、例えば認証素子のための光学コンポーネントに用いることができる光学素子を製造するために、説明したLCP層以外の如何なる種類の複屈折層を使用することも勿論可能である。
【0036】
更に、上記で説明した実施例について、PPN配向層ではなく、望ましい光学特性および解像度に従って、PPN層と同一または類似の性質を有する異なった配向層を使用することも可能である。また、対応する構造の基板を使用して、遅延層のために必要な配向性を生じさせることも考えられる。このタイプの構造を付した基板は、例えば、エンボス加工、エッチング加工およびスクラッチ加工によって製造することができる。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像が埋め込まれた一以上の遅延体を具備する光コンポーネントであって、前記画像は、前記コンポーネントの平面内の如何なる点においても一以下の画像のエレメントが存在するように配置され、夫々の画像は偏光との異なる相互作用に関連付けられている光コンポーネント。
【請求項2】
請求項1に記載の光学コンポーネントであって、前記画像が埋め込まれた複数の遅延体が存在し、これら遅延体は同一または異なる遅延値Δndを有する光学コンポーネント。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学コンポーネントであって、前記画像は、夫々が他の特定の画像パターンとは異なる光軸をもった特定の画像パターンを有する一以上の遅延体の中に埋め込まれている光学コンポーネント。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の光学コンポーネントであって、前記夫々の画像は、交互の領域内に含まれている光学コンポーネント。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の光学コンポーネントであって、前記夫々の画像は、連続的で任意に平行なストライプの中に含まれている光学コンポーネント。
【請求項6】
請求項4または5に記載の光学コンポーネントであって、前記領域またはストライプは肉眼で解像できるよりも小さいかまたは狭く、光学コンポーネントを可能にし、また一以上の画像は写真画像である光学コンポーネント。
【請求項7】
請求項4、5または6に記載の光学コンポーネントであって、n個の画像が存在し、夫々はn番目毎のストライプまたはn番目毎の領域に描かれる光学コンポーネント。
【請求項8】
偽造および/または複製から保護するための素子であって、請求項1〜7の何れか1項に記載の光学コンポーネントを特徴とする素子。
【請求項9】
偏光の供給源と、該偏光が通過する請求項1〜7の何れか1項いに記載の光学コンポーネントと、該光学コンポーネントを通過した光のためのアナライザーとを具備する観察システムであって、前記アナライザーは前記光の進行方向の軸回りに回転可能であり、前記アナライザーを回転させることによって、前記アナライザーの特定の回転角度において夫々の画像についての最大コントラストのピークが得られ、このような夫々の角度において、そうでなければ見えない夫々の画像の視覚化を可能にする観察システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、前記偏光の供給源は、前記コンポーネントの表面に適用された偏光シートであるシステム。
【請求項11】
請求項9または10に記載のシステムであって、前記アナライザーは偏光シートであるシステム。
【請求項12】
入射光の偏光方向を維持する反射体と、請求項1〜7の何れか1項に記載の光学素子と、前記光の進行方向の軸周りに回転可能な偏光器とを具備し、偏光器および前記光学コンポーネントを通過した光は前記偏光器で反射されて、前記光学コンポーネントおよび前記偏光器を二回通過するようになっており、前記偏光器を回転させることにより、前記アナライザーの特定の回転角度において夫々の画像についての最大コントラストのピークが得られ、このような夫々の角度において、そうでなければ見えない夫々の画像の視覚化を可能にする観察システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−81419(P2011−81419A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3326(P2011−3326)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【分割の表示】特願2000−582827(P2000−582827)の分割
【原出願日】平成11年11月10日(1999.11.10)
【出願人】(596098438)ロリク アーゲー (22)
【氏名又は名称原語表記】ROLIC AG
【Fターム(参考)】