説明

光学シート、バックライトユニット及び液晶表示装置

【課題】光学シート端部光源より入射した光が光学シート内部を通過し、光源端面と反対側に通り抜ける光を低減することにより正面方向へ取り出す光の利用効率を上げることが可能となる。
【解決手段】表層と中央層と裏層の3層がいずれも透明な熱可塑性樹脂シートで構成される光学シートであって、前記中央層が光散乱剤を含有すること、また、前記光散乱剤が粒径6μm以上12μm以下の粒子形状であって、その体積率が前記中央層の全体積に対して0.003以上0.01%以下であること、またさらには前記表層または裏層の少なくとも片面が凹凸形状を有することを特徴とする光学シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に液晶テレビや照明等に用いられる光学シートをUV成形法、射出成形法、共押出法にて多層構成に製造された光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置に代表されるディスプレイ装置では、光源より出射された光を液晶パネルに入射するバックライト方式が主にとられている。画像表示に必要となる明るさは当該バックライトより得られている。
【0003】
バックライト方式を採用する液晶表示装置では、消費電力においてバックライト光源が多くの割合を占める。よって光源の光の利用効率向上による消費電力低減が強く求められている。
【0004】
バックライトにおける光源の光の利用率を高める手段に輝度向上シートを使用する方法がとられており、表面に微細な凹凸パターンを有する輝度向上シートが使用されている。例えば、液晶表示装置の輝度向上を目的として表面にプリズム形状を付与したシートがあり、3M社のBEF(登録商標:Brightness Enhancement Film)に代表される上向きに設置する頂角90°のプリズムシートが使用されている。
【0005】
バックライト方式には大別して直下型方式とエッジライト方式があり、直下型式では、光源としてLED(Light Emitting Diode)などがあり、出射光を拡散させる拡散板を通す方式である。出射光を拡散させる拡散板を通して、その発光した光源の形状が認識できてしまうため、拡散板には非常に光散乱性の強い樹脂板が用いられている。
【0006】
エッジライト方式では、光源を端部に設置し光透過性に優れたアクリル樹脂等からなる平版状の導光板により、光源からの光を導光板内で多重反射させ光源の光を面発行させる方式である。エッジライト方式では光源を端部に設置することにより薄型化を可能にする。また、エッジから入射した光を均一に発光させることができるため、直下方式のような光源の形状が発生することがない。
【0007】
しかしエッジライト方式では端部光源より入射した光が導光板内部を通過し、光源端面と反対側に通り抜けることにより正面方向へ取り出す光の利用効率が低減する問題がある。
【0008】
上記の問題に対しては、例えば、拡散パターンとして固体相中に気体相を分散させる方法や、固体相であるレジン中に気体を封じ込めたプラスチックビーズを含ませて光損失を低減する方法が提案されている(特許文献1)。また、光拡散と画面内の明度維持の両方の機能を満たすものとして、少なくとも2層以上の拡散層からなる提案がされている(特許文献2)。また、二酸化チタン被覆透明球状粉末を有する光拡散層が網点からなるパターンで、かつ該パターンの面積が導光板を通過する光の量が少なくなるに従って小さくなるようにグラデーションが形成された拡散層が提案されている(特許文献3)。
【0009】
しかしながら、上記の提案は光の利用効率に対し効果があるものの、もっと高い光の利用効率や生産性向上にはまだまだ問題が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−240719号公報
【特許文献2】特開平7−181308号公報
【特許文献3】特開2000−180634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記問題を鑑みてなされたものであり、光源端面より光学シートへ入射した光が入射反対側端面へ通り抜けることを低減し、正面方向へ取り出す光の利用効率を向上することができる光学シート、それを具備したバックライトユニット及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係る発明は、表層と中央層と裏層の3層がいずれも透明な熱可塑性樹脂シートで構成される光学シートであって、前記中央層が光散乱剤を含有することを特徴とする光学シートである。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記光散乱剤が、粒径6μm以上12μm以下の粒子形状であって、その体積率が前記中央層の全体積に対して0.003以上0.01%以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学シートである。
【0014】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記表層または裏層の少なくとも片面が凹凸形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学シートである。
【0015】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記3層の全層厚に対する前記表層と裏層とのそれぞれの層厚の比率が、5%以上20%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学シートである。
【0016】
また、本発明の請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の光学シートを具備してなることを特徴とするバックライトユニットである。
【0017】
また、本発明の請求項6に係る発明は、請求項5に記載のバックライトユニットを具備してなることを特徴とする液晶表示装置である。
【0018】
すなわち、本発明は表層と中央層と裏層の3層構成の光学シートであって、前記3層がいずれも透明な熱可塑性樹脂シートからなり、かつ、前記中央層が粒径6μm以上12μm以下の粒子形状の光散乱剤を含有することで、光学シート端部光源より入射した光が光学シート内部を通過し、光源端面と反対側に通り抜ける光を低減することにより、正面方向へ取り出す光の利用効率を向上する効果のある光学シート、及びそれを具備したバックライトユニット、液晶表示装置を提供することできる。
【発明の効果】
【0019】
光学シート端部光源より入射した光が光学シート内部を通過し、光源端面と反対側に通り抜ける光を低減することにより正面方向へ取り出す光の利用効率を上げることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の光学シートの一実施形態の断面概略図を示す。
【図2】本発明の光学シートを作製するための製造装置の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面により本発明を具体的に説明する。
【0022】
図1は本発明の光学シート10の一実施形態の断面概略図であり、表層11と裏層13を介して積層された中央層12から形成される。前記表層11、裏層13及び中央層12はいずれも透明な熱可塑性樹脂シートからなり、中央層12は透明な熱可塑性樹脂シート中に光拡散剤を含有している。
【0023】
本発明に係る前記熱可塑性樹脂は、上記各層のシート形成の加工性や、光学シートが具備される液晶表示装置に要求される耐熱性、耐湿性、耐衝撃性などの基本的な物性を満たすものであれば特に限定するものではないが、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂が好ましい。
【0024】
また、本発明に用いられる前記光拡散剤としては、例えば、アクリル系粒子、スチレン粒子、スチレンアクリル粒子およびその架橋体、ポリウレタン系粒子、ポリエステル系粒子、シリコン系粒子、フッ素系粒子、これらの共重合体、スメクタイト、タルクなどの粘土化合物粒子、シリカ、酸化チタン、アルミナ、シリカアルミナ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、水酸化アルミニウム、炭酸ストロンチウム、塩化ストロンチウム、硫酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、ガラス粒子等を挙げることができる。
【0025】
また、本発明に係る前記光拡散剤は中央層に含有され、しかも単一層の中で効率よく光を拡散させるために、粒径6μm以上12μm以下の粒子形状が好ましい。前記光拡散剤の粒径が6μm未満であると光の拡散効果が足りずに、光源端面より光学シートへ入射した光が入射反対側端面へ通り抜けが大きくなり、正面方向へ取り出す光の利用効率が悪くなる。また、粒径が12μmを超えると、中央層中での前記光拡散層の分散が悪く拡散効果が低下する。
【0026】
また、前記中央層中に含有される光拡散剤の体積率は、前記中央層の全体積に対して0.003以上0.01%以下であると、前記光拡散層の分散が適性となり、効率のよい拡散効果が得られる。光拡散剤の体積率が、中央層の全体積に対して0.003未満であると、中間層中での前記光拡散剤の量が不足し効率のよい拡散効果が得られない。
また、0.01%を超えると透明性が低下し光学シートとしての機能が低下する。
【0027】
本発明の光学シート製造方法として、例えばUV成形や押出法、射出成形法により作成したシートを貼り合わせて光学シートを作製する貼合法、Tダイによる共押出法(多層押出)がある。このとき前記中央層の形成において、主層である透明な熱可塑性樹脂に前記光拡散剤を予め混合したマスターバッチを用いることが好ましい。
【0028】
前記共押出法は、中央層に透明な熱可塑性樹脂と光拡散剤を混合したマスターバッチを使用し、Tダイ内で多層化する製造方法である。そのため、多層化される樹脂の温度を各層毎に調整しフローマークを発生しない条件にて行う必要がある。なお、フローマークとは、押出シート外観に波模様が発生する外観不良である。
【0029】
以下、本発明の光学シート作製方法の一実施形態として、図2に示すような押出機について説明する。すなわち、図2に示すような、熱可塑性樹脂を供給するホッパー21、過熱溶融する押出機22、シート状に溶融樹脂を吐出するTダイ23、Tダイ23から吐出した樹脂シート24をパターン形成する一対の加圧ロール版25、及び前記樹脂シートを所望するサイズに断裁する断裁機を具備する押出成形装置により光学シートを作製する。
なお、本発明に係る光学シートは、表層、中央層、裏層の3層構成であり、従って、前記押出成形装置20は3つの前記押出機22を具備している(図面上では記載を省く)。
【0030】
より具体的には、上記の3つの前記押出機22を具備した前記押出成形装置20により、それぞれの押出機により加熱溶融された表層、中央層、裏層の3層が、Tダイ23を経て前記樹脂シート24となり、一対の加圧ロール版25にて所望の凹凸形状に形成される。
【0031】
なお、本発明の光学シートに係る前記凹凸形状は、表層または裏層の少なくとも片面に形成されることが好ましい。表層または裏層の少なくとも片面に形成された凹凸形状により、光の集光、または光の散乱の効果が得られる。
【0032】
また、上記パターン形成において、前記表層と裏層のそれぞれの膜厚は、光学シート全体の膜厚に対して、その比率が5%以上20%以下であると、所望の凹凸パターンを精度よく形成することができ、好ましい。前記比率が5%に満たないと、凹凸形状を形成することが難しく効果的な光拡散が得られない。また、20%を越えると透明性が低下し正面方向への光の拡散に支障をきたす。
【0033】
前記加圧ロール版25は25℃以上、200℃以下で調整可能であり、Tg(ガラス転移温度)が、−20℃以上、+30℃以下の熱可塑性樹脂を用いることが、本発明に係る光学シートのパターン形成に適している。Tg−20℃未満の熱可塑性樹脂で成膜すると凹凸形状を精度よく形成することができず、Tg+30度を超える熱可塑性樹脂を用いると、加圧ロール版25に溶融樹脂が貼り付いてしまうという問題が生じる。
【0034】
加圧ロール版25は、Tダイ23から吐出された熱可塑性樹脂に凹凸パターンを形成するためのパターン形状を有している。この形状は例えば、図1に示す表層11のプリズム形状や、裏層13の半球形状などの凹凸形状を形成することができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。
【0036】
(実施例1)
アクリル樹脂を主剤とし、粒直径6μm、屈折率1.59のPS(ポリスチレン)フィラーを体積比率0.003〜0.01%にてマスターバッチを作製した。中央層に前記マスターバッチ、表裏層にアクリル樹脂を用い、共押出法により各層比率が表層20%、中央層80%、裏層20%、3層全体の溶融樹脂シートの厚みが2000μmとなるようにシートを作製した。なお、一対の加圧ロール版形状が、断面形状が90°、ピッチ50μm、高さ25μmからなる三角形形状の加圧ロール版を用いて、Tダイより吐出した溶融樹脂シートの表裏層に三角形形状を形成して光学シートを作製した。
【0037】
(実施例2)
粒子直径12μmのPSフィラーを使用した以外は、実施例1と同様にして、光学シートを作製した。
【0038】
(実施例3)
表層、中央層、裏層の各層比率を5%、90%、5%とした以外は、実施例1と同様にして、光学シートを作製した。
【0039】
(実施例4)
粒子直径12μmのPSフィラーを使用し、表層、中央層、裏層の各層比率を5%、9
0%、5%とした以外は、実施例1と同様にして光学シートを作製した。
【0040】
(比較例1)
表層、中央層、裏層の各層比率を21%、78%、21%とした以外は、実施例1と同様にして光学シートを作製した。
【0041】
(比較例2)
粒子直径12μmのPSフィラーを使用し、表層、中央層、裏層の各層比率を21%、78%、21%とした以外は、実施例1と同様にして光学シートを作製した。
【0042】
(比較例3)
表層、中央層、裏層の各層比率を4%、82%、4%とした以外は、実施例1と同様にして光学シートを作製した。
【0043】
(比較例4)
粒子直径12μmのPSフィラーを使用し、表層、中央層、裏層の各層比率を4%、82%、4%とした以外は、実施例1と同様にして光学シートを作製した。
【0044】
(比較例5)
中央層にPSフィラーを混合しないアクリル樹脂単体を使用し、それ以外は実施例1と同様にして光学シートを作製した。
【0045】
<評価及びその方法>
実施例1〜4及び比較例1〜5で得られた光学シートに対して、導光体光量を測定して光学シートの評価をし、以下の表1に記載した。
導光体光量の測定〜対象となる光学シートの正面、出光端面および側面での導光体光量(%)を吸光光度計(島津製作所社製、UV−2200)にて測定した。
【0046】
【表1】

【0047】
<比較結果>
実施例1〜4で得られた本発明品は、いずれも出光端面での導光体光量が2.2〜2.5%と、比較例1〜5で得られた比較例品に比べて略半減した。また、正面での導光体光量も比較例を上回り、71%以上の優れた結果が得られた。これにより本発明品は入射した光を光学シート正面へ利用する光利用効率を上げることができた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の光学シートは、光源より入射した光を光学シート正面へ利用する光利用効率を上げることができる。また、本発明の光学シートを具備することで、液晶表示装置や、照明器具を提供することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 光学シート、11 表層、12、 中央層、13 裏層、14 光拡散剤、20
押出成形装置、21 ホッパー、22 押出機、23 Tダイ、24 吐出樹脂シート、25 加圧ロール版、26 断裁機、 光学シート、31 光学シート、32 入射端面 、33 LED光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層と中央層と裏層の3層がいずれも透明な熱可塑性樹脂シートで構成される光学シートであって、前記中央層が光散乱剤を含有することを特徴とする光学シート。
【請求項2】
前記光散乱剤が、粒径6μm以上12μm以下の粒子形状であって、その体積率が前記中央層の全体積に対して0.003以上0.01%以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記表層または裏層の少なくとも片面が凹凸形状を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学シート。
【請求項4】
前記3層の全層厚に対する前記表層と裏層とのそれぞれの層厚の比率が、5%以上20%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の光学シートを具備してなることを特徴とするバックライトユニット。
【請求項6】
請求項5に記載のバックライトユニットを具備してなることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−93110(P2013−93110A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232706(P2011−232706)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】