説明

光学シート、及びそのシートを用いたプラズマディスプレイ用前面フィルタ

【課題】黒化処理を施したパターン状の導電層を有する電磁波遮蔽層において、黒化層が脱落し難く、外光反射防止性が良好な電磁波遮蔽層を含み、粘着剤層導電性パターン層の密着性の不足が改善された光学シート及びそのシートを用いたプラズマディスプレイ用前面フィルタを提供すること。
【解決手段】透明基材上に所定のパターンで形成された導電性粒子と樹脂バインダーを含む導電性パターン層を有する電磁波遮蔽層と、その導電性パターン層側に粘着剤層を介して積層された各種機能層からなる光学シートであって、該電磁波遮蔽層の導電性パターン層は、その表面に、端角部が突出し、中央部が凹陥した金属層が形成され、かつ、該金属層の表面には針状金属の黒化層が形成されているものであることを特徴とする光学シート及びそのシートを用いたプラズマディスプレイ用前面フィルタである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示装置(ディスプレイ)の前面に配置するのに好適な光学シート、及びそのシートを用いたプラズマディスプレイ用前面フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置の大型化、薄型化に伴い、プラズマディスプレイ(PDP)が注目を集めている。
PDPは、発光にプラズマ放電を利用するため、30MHz〜1GHz帯域の不要な電磁波が外部に漏洩して他の機器(例えば、遠隔制御機器、情報処理装置等)に影響を与えるおそれがある。そのため、プラズマディスプレイ装置に用いられるプラズマディスプレイパネルの前面側(観察者側)に、画像光の透過性は維持した上で、漏洩する電磁波を遮蔽(シールド)するためのフィルム状の電磁波シールド部材を設けるのが一般的である。
なお、本発明において単に電磁波という場合は、周波数が上記範囲を中心とするKHz〜GHz帯近辺の電磁波のことをいう。赤外線、可視光線、紫外線、X線等は含まないものとする(例えば、赤外線帯域の周波数の電磁波は赤外線と呼称する)。
【0003】
プラズマディスプレイの前面などに用いることができる電磁波シールド部材用材料としては、銀スパッタ薄膜、銅等からなる金属メッシュなどがあるが、銀スパッタ薄膜はコストが高く、また全面を被覆しているため可視光(線)透明性と電磁波遮蔽性との両立性に劣る。銅メッシュは開口部分があるため透明性は高いが、銅箔をフォトリソグラフィー法でエッチングしてメッシュ形状を作成するため、捨てる材料が多く低コスト化が難しい。
近年、透明基材の上に導電性ペーストや無電解メッキの触媒を含むインキを凹版印刷などを用いてメッシュ状にパターン印刷し、その上に銅をメッキで析出させ細線パターンを形成した電磁波シールド部材などが提案されており(特許文献1、2)、銅箔エッチング法などよりも経済性、生産性にすぐれた方法といえる。
【0004】
本出願人は、凹版印刷により導電性材料組成物を透明基材上に転写し、導電性を有するパターンを形成してなる電磁波シールド材において、導電性材料組成物の転写不良に基づくパターンの断線、形状不良、転移率不足や低密着性等の不具合が生じない電磁波シールド材を提案している(特許文献3)。この発明では、凹版の凹部(セル)内に充填された導電性インキ組成物表面の凹みを、硬化するまで流動性を保持できるプライマー層が形成された透明基材と圧着することによって、該プライマー層と凹部内の導電性インキとを空隙なく密着する圧着工程を経て、プライマー層を硬化し、しかる後に透明基材を版面から剥がして、凹部内導電性インキ組成物を硬化したプライマー層上に転写するものである。
【0005】
かかる凹版印刷法によれば、導電性組成物の転写不良がないため、導電性凸状パターン層には、原版である凹版のパターン形状が忠実に転写される。
凹版として、線条パターンの走行方向(長手方向)と直交する断面形状(主切断面形状)が、底部がせばまった台形形状、あるいは底部が半円または楕円形状である正方格子のメッシュパターン状凹版を用いると、導電性凸状パターン層の頂部は、平坦面あるいは半円または楕円形状となる。
【0006】
そのような頂部形状の導電性組成物からなる導電性凸状パターン層に、常法により金属メッキ層及び黒化層を設けた場合、黒化層表面は、同じく平坦面あるいは半円または楕円形状となる。
しかしながら、このようにして製造した電磁波遮蔽用シートは、後工程である機能性フィルムラミネート工程でガイドロール等の稼動部位との接触面積が大きい為、黒化層が磨耗、剥脱する量が多い。特に、針状構造同士の間の多重反射による減衰及び光拡散作用によって黒化度良好な針状結晶の黒化層を形成した場合にその現象は著しく、黒化層形成の効果が大きく損なわれる。
また、常法により金属メッキ層の表面に針状結晶を用いず、物質自体が光吸收性である黒化層を設けた場合、外光照射など強い光の下での画像コントラスト向上効果はなお不十分である。即ち、黒化層は、光の反射率を低くする程、自由電子の易動度は低下し、導電性が低下する為、電磁波の反射性即ち電磁波遮蔽性も低下する傾向にあるからである。
そのため、従来、黒化層について、反射防止性能と電磁波遮蔽性能との両立は困難だからである。
【0007】
さらに、常法による金属メッキ層及び黒化層を設けたのでは、粘着剤層との密着が十分ではなく、黒化層を施した金属メッシュと粘着剤層の両者が剥がれやすいという問題がある。
従来、導電性パターン層である金属メッシュと粘着剤層との密着性を向上させる手段として、特に、汎用のアクリル(系)樹脂の粘着剤の場合には、分子中にカルボキシル基を有するアクリル樹脂を使うことが知られていた(特許文献4、5)。
ただし、この場合、該カルボキシル基が酸性を帯びるため、粘着剤層と接触する金属メッシュが錆びたり、錆が更に粘着剤層中に拡散して粘着剤層が青色に着色する問題を生じる。
この問題は、粘着剤層中にベンゾトリアゾール系酸化防止剤を添加することで改善可能であるが、原材料費の高騰を招くことが問題として残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−102792号公報
【特許文献2】特開平11−174174号公報
【特許文献3】国際公開第08/149969号パンフレット
【特許文献4】特開2007−95971号公報
【特許文献5】特許第4397032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、黒化処理を施したパターン状の導電層を有する電磁波遮蔽層において、黒化層が脱落し難く、外光反射防止性が良好な電磁波遮蔽層を含み、粘着剤層導電性パターン層の密着性の不足が改善された光学シート及びそのシートを用いたプラズマディスプレイ用前面フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、透明基材上に所定のパターンで形成された導電性粉末と樹脂バインダーを含む導電性パターン層を有する電磁波遮蔽層と、その導電性パターン層側に粘着剤層を介して積層された各種機能層からなる光学シートであって、該電磁波遮蔽層の導電性パターン層は、その表面に、端角部が突出し、中央部が凹陥した金属層が形成され、かつ、該金属層の表面には針状金属の黒化層が形成されているものであることを特徴とする光学シート及びそのシートを用いたプラズマディスプレイ用前面フィルタを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
導電性パターン層の頂部が平坦面で、その上に黒化層、特に黒化度良好な針状微結晶の黒化層を形成した場合は、後工程である機能性フィルムラミネート工程でガイドロール等の剛体部材との接触面積が大きいため、黒化層が磨耗、剥脱する量が多いが、導電性パターン層の頂部が凹んだ本発明においては、ガイドロール等との接触面積が少なく、凹部表面は非接触のため、凹部表面上の黒化層は磨耗、剥脱が防止される。
また、黒化層を形成する針状結晶は、入射した光が、針間の面で多重反射されるうちに、吸収、散乱が多数回起こり、多くの光を減衰させ、反射光量は大幅に減少する。しかも該針状結晶は導電性の金属からなる為、良好な導電性(即ち、電磁波遮蔽性)も具備する。
そして、本発明は、導電性パターン層である金属メッシュ表面の黒化層が有する表面の特定の微細構造による投錨効果によって、金属メッシュと粘着剤層との密着を向上せしめる構成を採るものであるから、粘着剤樹脂へのカルボキシル基の導入も不要となり、その結果、酸化防止剤添加及び分子中カルボキシル基導入なしでも、金属メッシュの錆を生じることなく、粘着剤層との密着を向上せしめ、金属メッシュと粘着剤層の反応による金属メッシュの錆及び粘着剤変色を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(A):本発明の光学シートにおける電磁波遮蔽層の線条パターンの走行方向(長手方向)と直交する主切断面の構造を示す模式図である。(B):(A)において、電磁波遮蔽層部分の拡大図である。
【図2】本発明(実施例1)の電磁波シールド材を黒化層側から見た走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】本発明で使用される機能層の一つであるコントラスト向上層の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の光学シートは、図1(A)に示す如く、電磁波遮蔽層100、粘着剤層200及び各種機能層300から構成される。以下、これらについて詳細に説明する。
【0014】
〔電磁波遮蔽層〕
本発明において使用する電磁波遮蔽層100は、透明基材20上に所定のパターンで形成された導電性粒子1と樹脂バインダー2を含む導電性パターン層10を有するものであり、該導電性パターン層10の表面には、両側端縁の端角部が突出し、中央部が凹陥した金属層3が形成され、かつ、該金属層3の表面には針状金属の黒化層4が形成されているものである。
以下、電磁波遮蔽層100の構成、製造方法について説明する。
【0015】
(透明基材)
透明基材20は、可視領域での透明性(光透過性)、耐熱性、機械的強度等の要求物性を考慮して、公知の材料及び厚みを適宜選択すればよく、ガラス、セラミックス等の透明無機物の板、或いは樹脂板など板状体の剛直物でもよい。ただし、生産性に優れるロール・トゥ・ロールでの連続加工適性を考慮すると、フレキシブルな樹脂フィルム(乃至シート)が好ましい。なお、ロール・トゥ・ロールとは、巻取(ロール)から巻き出して供給し、適宜加工を施し、その後、巻取に巻き取って保管する加工方式をいう。
【0016】
樹脂フィルム、樹脂板の樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、エチレングリコール−1,4シクロヘキサンジメタノール−テレフタール酸共重合体、エチレングリコール−テレフタール酸−イソフタール酸共重合体などのポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリプロピレン、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリイミド系樹脂等である。なかでも、ポリエチレンテレフタレートはその2軸延伸フィルムが耐熱性、機械的強度、光透過性、コスト等の点で好ましい透明基材である。
透明無機物としては、ソーダ硝子、カリ硝子、硼珪酸硝子、鉛硝子等の硝子、或いはPLZT等の透明セラミックス、石英等である。
【0017】
透明基材20の厚みは基本的には特に制限はなく用途等に応じ適宜選択し、フレキシブルな樹脂フィルムを利用する場合、例えば12〜500μm、好ましくは25〜200μm程度である。樹脂や透明無機物の板を利用する場合、例えば、500〜5000μm程度である。
【0018】
なお、透明基材の樹脂中には、必要に応じて適宜、紫外線吸収剤、着色剤、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を添加できる。
また、透明基材は、その表面に、コロナ放電処理、プライマー処理、下地処理などの公知の易接着処理を行ったものでもよい。
【0019】
(導電性パターン層)
本発明の光学シートの電磁波遮蔽層100における導電性パターン層10は、導電性粒子1及び樹脂バインダー2を含み、透明基材上20又は該透明基材上にプライマー層を形成する場合には該プライマー層上に所定のパターンで設けられた層である。
パターン形状としては線条パターンであり、メッシュ(網目乃至格子)形状が代表的なものであるが、その他、ストライプ(平行線群乃至縞模様)形状、螺旋形状等も用いられる。メッシュ形状の場合、単位格子形状は、正3角形、不等辺3角形等の3角形、正方形、長方形、台形、菱形等の4角形、6角形、8角形等の多角形、円、楕円等が用いられる。また、モアレを軽減する目的で、ランダム網目状、又は擬似ランダム網目状のパターンなども使用可能である。その線幅と線間ピッチも通常採用されている寸法であればよい。例えば、線幅は5〜50μmとすることができ、線間ピッチは100〜500μmとすることができる。開口率(所定パターン形成領域の全面積中における開口部の合計面積の占める比率)は、通常、50〜95%程度である。また所定パターンとは別に、その周辺部の全周又はその一部にそれと導通を保ちつつ隣接した全ベタ(開口部なし)等の接地パターンが設けられる場合もある。
なお、線幅は、より高透明のものを得るために、より一層微細化することが求められている。この観点から、30μm以下、特に20μm以下とすることが好ましい。
【0020】
また、導電性パターン層10の厚さは、その導電性パターン層の抵抗値によっても異なるが、導電性能と該導電性パターン層上への他部材の接着適性との兼ね合いから、その中央部(突起パターンの頂部)での測定において、通常、2μm以上50μm以下であり、好ましくは、5μm以上20μm以下である。
この導電性パターン層10は、導電性粒子1と樹脂バインダー2を含む導電性インキを、後述する印刷法により基材上又は透明プライマー層上に形成することで得ることができる。
【0021】
導電性粒子1としては、金、銀、白金、銅、ニッケル、錫、アルミニウムなどの低抵抗率金属の粒子、或いは高抵抗率金属粒子、樹脂粒子、非金属無機粒子等の表面が金や銀などの低抵抗率金属で被覆された粒子等を好ましく挙げることができ、形状も球状、回転楕円体状、正多面体状、截頭多面体状、鱗片状、円盤状、樹枝状、繊維状等から選ぶことができる。
これらの材料や形状は適宜混合して用いてもよい。導電性粒子の大きさは種類に応じて任意に選択されるので一概に特定できないが、例えば、鱗片状の銀粒子の場合には粒子の平均粒子径が0.1〜10μm程度のものを用いることができる。導電性組成物中の導電性粒子の含有量は、導電性粒子の導電性や粒子の形態に応じて任意に選択されるが、例えば導電性組成物の固形分100質量部のうち、導電性粒子を40〜99質量部の範囲で含有させることができる。なお、本明細書において、平均粒子径というときは、粒度分布計、またはTEM(透過型電子顕微鏡)観察で測定した値を指している。
【0022】
樹脂バインダー2としては、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも使用可能である。熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ポリエステル−メラミン樹脂、エポキシ−メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂等の樹脂を挙げることができ、電離放射線硬化性樹脂としては、プライマーの材料として後述する物を挙げることができ、熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂等の樹脂を挙げることができる。なお、熱硬化性樹脂を使用する場合、必要に応じて硬化触媒を添加してもよい。電離放射線硬化性樹脂を用いる場合は必要に応じて光重合開始剤を添加してもよい。
また、版の凹部への充填に適した流動性を得るために、これら樹脂は通常、溶剤に溶けたワニスとして使用する。溶剤の種類には特に制限はなく、一般的に印刷インキに用いられる溶剤を使用できる。溶剤の含有量は通常、10〜70質量%程度であるが、必要な流動性が得られる範囲でなるべく少ないほうが好ましい。また、電離放射線硬化性樹脂を用いる場合には、もともと流動性があるため、必ずしも溶剤を必要としない。
【0023】
導電性パターン層10は、その表面において、少なくとも片方の側端縁、好ましくは両側端縁の端角部が突出し、中央部が凹陥した金属層3が形成され、かつ、該金属層の表面には針状金属の黒化層4が形成されている。この表面構造のために、黒化層表面の針状結晶の磨耗、剥脱が改善され、外光反射防止性が良好であり、また、この構造による投錨効果によって、金属メッシュと粘着剤層との密着を向上せしめるという効果を奏する。
【0024】
(プライマー層などその他の層)
本発明の電磁波遮蔽層においては、透明基材20と導電性パターン層10との密着性を高めるために、該透明基材と該導電性パターン層との間にプライマー層を設けることが好ましい。
該プライマー層は、透明基材及び導電性パターン層の双方に密着性が良く、また開口部(導電性パターン層非形成部)の光透過性確保のために透明な層である。
更に、導電性パターン層の形成を後述の如き特定の凹版印刷法で行なう場合には、該プライマー層は、流動性を保持できる状態で透明基材上に設けられ、凹版印刷時の凹版に接触している間に液状から固化させる層として形成される層となり、最終的な導電部材が形成されたときに固化している層である。
【0025】
かかる透明プライマー層を構成する材料としては、本来特に限定はないが、本発明では、導電性パターン層の形成方法として後述の如き特定の凹版印刷法が推奨されるため、プライマー層も、未硬化状態において液状(流動性)の電離放射線重合性化合物を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を塗工、硬化(固体化)してなる層が好適に用いられる。以下、この材料を中心に詳述する。
該電離放射線重合性化合物としては、電離放射線で架橋等の反応により重合硬化するモノマー及び/又はプレポリマーが用いられる。
かかるモノマーとしては、ラジカル重合性モノマーとして、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート類、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート類等の各種(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、ここで(メタ)アクリレートとの表記は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。カチオン重合性モノマーとして、例えば、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどの脂環式エポキシド類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどグリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどオキセタン類等が挙げられる。
また、かかるプレポリマー(乃至オリゴマー)としては、ラジカル重合性プレポリマーとして、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートプレポリマー、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオール系プレポリマー、不飽和ポリエステルプレポリマー等が挙げられる。その他、カチオン重合性プレポリマーとして、例えば、ノボラック系型エポキシ樹脂プレポリマー、芳香族ビニルエーテル系樹脂プレポリマー等が挙げられる。
これらモノマー、或いはプレポリマーは、要求される性能、塗布適性等に応じて、1種類単独で用いる他、モノマーを2種類以上混合したり、プレポリマーを2種類以上混合したり、或いはモノマー1種類以上とプレポリマー1種類以上とを混合して用いたりすることができる。
【0026】
電離放射線として、紫外線、又は可視光線を採用する場合には、通常は、光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、ラジカル重合性のモノマー又はプレポリマーの場合には、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系等の化合物が、又カチオン重合系のモノマー又はプレポリマーの場合には、メタロセン系、芳香族スルホニウム系、芳香族ヨードニウム系等の化合物が用いられる。これら光重合開始剤は、上記モノマー及び/又はプレポリマーからなる組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加する。
なお、電離放射線としては、紫外線、又は電子線が代表的なものであるが、この他、可視光線、X線、γ線等の電磁波、或いはα線、各種イオン線等の荷電粒子線を用いることもできる。
【0027】
上記電離放射線硬化性組成物は、溶剤を含んでもよいが、その場合塗布後に乾燥工程が必要となるため、コストを考えれば溶剤を含まないタイプ(ノンソルベントタイプ乃至無溶剤型)であることが好ましい。
【0028】
プライマー層の厚さ(導電性パターン層10の非形成部の厚みで評価)は特に限定されないが、通常は硬化後の厚さで1μm〜100μm程度となるように形成される。また、プライマー層の厚さは、通常は、導電性パターン層とプライマー層との合計値(総厚。導電性パターン層の頂部と透明基材の表面との高度差)の1〜50%程度である。
【0029】
また、必要に応じ適宜その他の層の形成、乃至は処理を施してもよい。例えば、錆に対する耐久性が不十分な場合は、黒化層上に防錆層を設けるとよい。該防錆層は、従来公知の材料及び手法により設けることができる。
【0030】
次に、本発明の代表的な実施形態を例示して電磁波遮蔽層の製造方法を説明する。
(導電性パターン層の形成方法)
本工程では、透明基材の一方の面に導電性粒子及び樹脂バインダーを含む導電性組成物(導電性インキ、導電性ペーストとも呼称する)を用いて導電性パターン層を形成する。
該導電性パターン層の有する所定パターンは、例えば、シルクスクリ−ン印刷、フレキソ印刷、凹版印刷等の公知の各種印刷法によって形成することができる。
また、透明基材と導電性パターン層との密着性を高めるために、該透明基材と該導電性パターン層との間にプライマー層を設ける場合には、上記導電部材の製造方法としては、特許文献3に記載される特定のプライマーを用いた凹版印刷が推奨される。
以下、この凹版印刷法の概略を述べる。
【0031】
当該凹版印刷法は、表面に所定のパターンで凹部(セルとも云う)が形成された版面に、導電性組成物を塗布した後、その凹部内以外に付着した導電性組成物を掻き取って該凹部内に導電性組成物を充填し、これに液状プライマー層を片面に形成済みの透明基材を、該プライマー層が凹版に接する向きで圧着して、凹部内の導電性組成物とプライマー層とを空隙なく密着させ、その状態でプライマー層を液状から固体状に固化させた後、透明基材を凹版から離して離版させることで、透明基材上の固化したプライマー層上に導電性組成物を転移させて、印刷するものである。
【0032】
印刷後、つまり離版後、まだ液状である導電性パターン層に対しては、乾燥操作、加熱操作、冷却操作、化学反応操作などを適宜行い、導電性インキを固化せしめて導電性パターン層を完成させる。また、導電性組成物は、版上で半硬化させ離版後に完全硬化させてもよい。
【0033】
なお、一般に、凹版印刷では、導電性インキを版面に供給し、ドクターブレード等で余剰の該インキを掻き取って版凹部に該インキを充填する際、充填された該インキの表面に凹みが発生し、該凹部のため、透明基材との密着不良、透明基材上への該インキの転移率低下という不具合を生じていた。
一方、特許文献3の凹版印刷では、凹版凹部内に充填された導電性インキの上部に窪み(凹み)が生じても、液状で流動性のプライマー層を介して印刷するので、印刷中にプライマー層を該窪みに流し込み隙間なく密着させた状態にでき、その後、プライマー層を固化させてから透明基材を凹版から離すので、透明基材上に固化したプライマー層を介して所定パターンの導電性パターン層を、細線でも、転移不足による断線や形状不良、インキ密着性不足などの印刷不良の発生なく形成できる。かくの如く凹版凹部内に充填されたインキの表面に生じる窪みをプライマー層が流入、充填する結果、得られた導電部材は、プライマー層の厚みが、前記導電性パターン層が形成されている部分の厚みが前記導電性パターン層が形成されていない部分の厚みよりも厚くなる。
【0034】
(金属層)
本発明における電磁波遮蔽層は、導電性を更に向上せしめるために、導電性パターン層10の表面に金属層3を電解メッキ法により形成する。
導電性パターン層10への給電は導電性パターン層10が形成された面に接触させた通電ロール等の電極から行われるが、導電性パターン層10が電解メッキ可能な程度の導電性(例えば、100Ω/□以下)を有するので、電解メッキを問題なく行うことができる。金属層3を構成する材料としては、導電性が高く容易にメッキ可能な、銅、銀、金、クロム、ニッケル等を挙げることができる。
メッキ条件としては、浴温20〜60℃、電流密度0.001〜10A/dm2、メッキ時間1〜10分程度が好ましい。電流密度を高くすることによって、導電性パターン層の端角部に電力集中が起こってメッキがつきやすくなる。特に、導電性パターン層の端角部がメッキ前の時点で突出していると、更に金属メッキした導電性パターン層は端角部が突出し、中央部が凹陥した表面形状となる。
また、電流密度が高いほど、端角部と中央部のメッキ層成長速度に差がつき、相対的に端角部の電流密度が高くなって、頂部の中央部が凹陥した凹凸表面形状になり易い。その際、導電性パターン層10の断面形状を図1(B)に図示の如くの台形、長方形、或いは正方形とすることによって、中央部に比べて端角部の電流密度を相対的に高めることができる。特に、導電性パターン層の端角部がメッキ前の時点で突出していると、更にこの傾向は強まる。
電流密度を高めると、これに加えて、さらに、頂部金属層表面内に凹溝、特に図2に示される如く、分岐、蛇行、或いはこれらの両方の形態を有する溪谷状の凹溝が生じ易くなる。
斯かる凹溝、特に分岐、蛇行、或いはこれらの両方の形態を有する溪谷状の凹溝が導電性パターン層の頂部上に存在すると、該凹溝内に入射した光線は該凹溝内において複雑な経路で反射を多数回繰り返す結果減衰する。また、減衰し切れずに反射する場合も乱反射となり、画像観察者の視線方向に向かう反射光量は減少する。そのため、日光、電灯光等の外光の反射防止性の向上に寄与する。
本発明の電磁波遮蔽層における金属メッキした導電性パターン層の端角突出部と中央凹陥部の段差は1〜3μm程度である。
【0035】
(黒化処理)
本発明においては、金属層を形成した後、黒化処理を施して金属層表面に黒化層4を形成する。
黒化層4は金属の針状結晶から構成される。黒化層を構成する金属は金属層3を構成する金属と同じものでも良いし、別のものでも良いが、反射光量低減と高導電性との両立の点から、できるだけ導電率の高い物を選ぶことが好ましく、例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル等が用いられる。
黒化処理は、例えば、硫酸銅5水和物と硫酸を水に溶かした電解浴を用いて陰極電解して粗面化処理を施すことにより、上記金属メッキした導電性パターン層の表面に銅からなる金属の針状結晶からなる黒化層4を形成する。
粗面化処理は陰極電解により金属の粒状突起物を析出させ(1層目)、次いでその突起物の脱落防止のためその上に金属メッキを施し(2層目)、金属被覆を形成させることによって全体として針状結晶からなる金属の粗面を作る。
黒化処理(粗面化処理)条件としては、(特に1層目の)電流密度を高くすることにより、針状結晶が形成され易いので好ましい。
黒化層4の針状結晶の長さは0.1〜1μm程度、その直径は長さの1/20〜1/2程度である。
斯かる針状結晶は、入射した光線が、針間の面で多重反射されるうちに、吸収、散乱が多数回起こり、多くの光を減衰させ、反射光量を大幅に減少せしめる。
図1(B)に図示の如く、導電性パターン層10の頂部に前記の如く端角部が突出した凹陥部を形成した上で更にその表面に針状結晶からなる黒化層4を形成すると、凹陥部と針状結晶の両者の入射光線減衰作用の相乗効果によって、外光反射防止効果はより高まる。
【0036】
〔各種機能層〕
本発明において、電磁波遮蔽層100は、粘着剤層200を介して各種の機能層300の1層以上と積層、複合化して用いる。
該機能層としては、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、調色層、紫外線吸収層、反射防止層、防眩層、所謂薄膜ミクロルーバ層からなるコントラスト向上層等の光学機能層(光学フィルタ層)、或いはハードコート層、耐衝撃層(衝撃吸収層)、防汚層、帯電防止層、抗菌層、防黴層等のその他機能層が挙げられる。
機能層は単数又は接着剤で接着された複数の層よりなる。
なお、反射防止層は最も上側(観察者側)に位置させ、耐衝撃層は、下側(PDP側)に位置させる。他の機能層は、いずれの位置にも位置させることができる。
また、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、調色(着色)層、紫外線吸収層は、接着剤層のいずれか1層以上に、当該吸収剤を含有させることにより、形成することができる。
以下、各種機能層、各種吸収剤について、主なものの概要を説明する。
【0037】
(コントラスト向上層)
コントラスト向上層6は、延在方向を互いに平行に多数配列した直線状の暗色線条部6aと、該暗色線条部6a同士の少なくとも間に存在する透明樹脂層6bとで構成される、所謂ミクロルーバ構造からなる。
透明樹脂層6bは、暗色条部6aを少なくとも側面から(面方向から)支持して、暗色線条部6aを所定の空間配置に維持する機能と、コントラスト向上層6において光を透過する光透過部としての機能を有する。そして、暗色線条部6aが多数配列されてなる暗色線条群がストライプ状の縞模様となる。
そして、通常、暗色線条部6aは樹脂バインダー6ab中に暗色着色剤6acを添加した構成からなる。
コントラスト向上層6としては、例えば特開2007−272161号公報、特表2009−539139号公報等で開示されている公知のものを適宜採用することができる。
例えば、代表的実施形態として図3で例示のコントラスト向上層6においては、暗色線条部6aの主切断面(該延在方向と直交する切断面)の形状は台形形形状である。そして、コントラスト向上層6の一方の面Sf側に長い方の底辺Sblが露出し、コントラスト向上層6の他方の面Sr側にその短い方の底辺Sbsが位置し且つ該底辺は透明樹脂層6b中に埋没している。
その他、暗色線条部6aの主切断面形状としては、三角形、四角形、五角形、六角形、円の一部(例えば、半円)、楕円の一部(例えば、半楕円)等が選択できる。
なお、暗色線条部6aの大きさとその配列周期は、用途により適宜設定し、台形形形状とする場合、長い方の底辺の大きさは10〜50μm、短い方の底辺の大きさは0〜50μm(但し、通常は、長い方の底辺の長さは超えない)、配列周期20〜500μmの範囲である。そして、暗色線条部6aのフィルタ面(Sf又はSr)の法線Nと平行な方向から見た場合に、コントラスト向上層6の表面Sf或いはSrの全表面積に対する、暗色線条部6aの(長い方の底辺Sbl或いは短い方の底辺Sbsの)占有面積率は50〜85%の範囲である。
また、コントラスト向上層6の厚みは、20〜200μm、暗色線条部6aの高さは20〜150μm(但し、通常は、コントラスト向上層6の厚みは超えない)の範囲である。
また、暗色線条部6aの斜面Ssの傾斜角は、該フィルタ面の該法線Nに対して、0〜30度の範囲で設定される。
コントラスト向上層6の作用は以下の通りである。即ち、暗色線条部6aのフィルタ面の該法線Nに対して傾斜して入射する日光等の外光Loは、暗色線条部6aの長い方の底辺Sbl、短い方の底辺Sbs、斜面Ssの何れか1面以上の面に当たってそこで吸収される。
一方、フィルタ面の法線Nと平行な方向から入射する画像光Ldは、暗色線条部6aが暗色線条部6a同士の間の透明樹脂層6bの部分を透過するため、吸収されることなく透過する。これによって外光の影響を抑制して、画像黒色部の輝度に対する画像白色部の輝度の比、即ち明室コントラストを向上させることができる。
更に、透明樹脂層6bの屈折率を暗色線条部6a中の樹脂バインダー6abの屈折率よりも大となるように設定すると、暗色線条部6aの斜面Ssに臨界角以上の角度で入射する画像光Ldに対しても、全反射によって、画像観察者側に出光させることができる。この場合、暗色線条部6aの斜面Ssの傾斜角の設定如何によって、該画像光を正面方向に集光して正面輝度を増大させたることも、或いは該画像光を拡散させて視野角を拡大することもできる。
一方、この場合、暗色線条部6aの斜面Ss面に臨界角未満の角度で入射する外光Loに対しては全反射はなく、何割かは暗色線条部6a内部に侵入し、暗色着色剤6acで吸収される。従って、この場合も、明室コントラスト向上効果は維持される。
この場合、暗色線条部6aを構成する樹脂バインダー6abの屈折率naと、透明樹脂層6bの屈折率nbとの関係を、na<nbであると共に、nb−na≧0.14とする。
【0038】
暗色線条部6aは暗色材料で形成され、暗色材料としては、暗色着色剤(光吸収性色材)6acを樹脂バインダー6ab中に含有させた、塗料(乃至はインキ)等の樹脂組成物を用いることができる。該暗色着色剤は、光吸収性が高く暗色の、つまり低明度の有彩色或いは無彩色を呈する暗色色材を用いることができる。暗色の代表例は黒色であり、無彩色の黒色が画像表示の色に影響を与えず、また外光吸収が大きい点で好ましい。また、低明度の有彩色としては、茶褐色、紺色、臙脂色、深緑色等が挙げられる。なお、暗色着色剤としては、公知の色材、黒色で言えば、例えば、カーボンブラック、黒色酸化鉄等の黒色顔料、アニリンブラック等の黒色染料などを用いればよい。また、暗色着色剤としては、これら暗色着色剤でアクリル樹脂粒子等を暗色に着色した暗色の樹脂粒子などでもよい。また、青色、黄色、赤色などの有彩色の色材を複数種類用いて混色により、暗色材料を黒色など無彩色乃至は有彩色の暗色としてもよい。
上記粒子は、各個の粒子が非凝集で独立している分散形態、或いは複数粒子が凝集して複合粒子となった分散形態の何れでもよい。該粒子の粒径(複合粒子の場合は複合状態での粒径)は、通常、平均粒径0.1〜10μm程度である。又、複数の異なった粒径の粒子を混合してもよい。該暗色色材の添加量は、通常、樹脂バインダー100質量部に対して3〜1000質量部である。
上記樹脂バインダーとしては、特に制限はなく、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が使用できる。熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などが挙げられ、硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電子線や紫外線等の電離放射線で硬化する電離放射線硬化性樹脂がある。熱硬化性樹脂としては、2液硬化型ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、メタクリレート系、ポリエステル系、エポキシ系等の単量体或いはプレポリマーの1種単独、或いはこれら単量体或いはプレポリマーから選択した2種以上の成分からなる組成物が挙げられる。中でも、電離放射線硬化性樹脂は固化が迅速で無溶剤にできる点などで好適な樹脂である。電離放射線としては、通常、紫外線、又は電子線が用いられる。
暗色線条部6aの形成は、先に表面に暗色線条部6aとは逆凹凸形状の凹条部を有する透明樹脂層6bを形成した後、該凹条部の中に暗色材料を充填することで形成できる。充填は、例えば、凹条部が形成された透明樹脂層6bの面に、暗色材料を塗布した後、凹条部以外の不要な暗色材料をドクターブレード、ローラ等で掻き取る所謂ワイピング法によって除去して、凹条部内にのみに暗色材料を残す。その後、暗色材料は固化させる。
【0039】
透明樹脂層6bは、厚み方向では厚みが、少なくとも暗色線条部6aの厚み以上で、面方向では暗色線条部6a同士の間を埋めて暗色線条部6aを少なくとも側面即ち斜面Ss側から支持して機械的強度を補強すると共に画像光を透過させる光透過部を形成する、透明な樹脂層である。図1の形態では、透明樹脂層6bは暗色線条部6aを両側の斜面Ss側と、断面台形形状の短い方の底辺Sbs側の3方向から支持している例である。
なお、透明樹脂層6bの厚みは、暗色線条部6aの高さ(厚み)以上の厚みであるが、暗色線条部6aの短い方の底辺Sbsとコントラスト向上層6の面Srとの間に透明樹脂層1を設ける場合は、この部分の厚みは、例えば1〜50μm程度である。
透明樹脂層6bを構成する樹脂としては、透明であれば基本的には特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂が使用できる。硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂、電子線や紫外線等で硬化する電離放射線硬化性樹脂が挙げられる。これらの樹脂としては、前記暗色線条部の樹脂バインダーとして列記した物と同様の物の中から、適宜選択できる。
これらの中でも、電離放射線硬化性樹脂は固化が、迅速で無溶剤にできる点などで好適な樹脂である。
なお、暗色線条部6aとは逆凹凸形状の凹条部が形成された透明樹脂層6bを形成するには、公知の成形法、例えば、例えば、加熱された成形型を熱可塑性樹脂層に押圧する熱プレス法、熱可塑性樹脂組成物を成形型内に注入して固化させるキャスティング法、射出成形法、或いは電離放射線硬化型樹脂組成物を成形型上(内)に注入して電離放射線で硬化させるフォトポリマー法(別名2P法)等を利用できる。これらの成形法の中でも、フォトポリマー法は生産性に優れる点でより好ましい。フォトポリマー法では、シリンダ状の成形型を使用して、帯状シートを供給しながら連続的に成形できる。該帯状シートを支持体シートとして、該支持体シート上に、透明樹脂層6b及び暗色線条部6aを形成してコントラスト向上層6とする。
【0040】
(反射防止層)
反射防止層としては、例えば、低屈性率層と高屈折率層とを該低屈折率層が最表面に位置するようにして交互に積層した多層構成が一般的であり、蒸着やスパッタ等の乾式法で、或いは塗工等の湿式法も利用して形成することができる。なお、低屈折率層は隣接する直下の層に比べて相対的に屈折率が低い層であり、その材料としては、ケイ素酸化物、フッ化マグネシウム、フッ素含有樹脂等が用いられ、高屈折率層は隣接する層に比べて相対的に屈折率が高い層であり、その材料には、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ等が用いられる。
【0041】
(耐擦傷機能層)
耐擦傷機能(ハードコート)層は、JIS K5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示すものであることが好ましく、このような硬度と十分な透明性を実現できるものであれば、材料は特に限定されない。
耐擦傷機能(ハードコート)層は、通常樹脂硬化層として形成される。
用いる硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂、その他公知の硬化性樹脂などを要求性能などに応じて適宜採用すればよい。電離放射線硬化性樹脂としては、前述のプライマー層の説明箇所で例示したものと同様のものの中から選択して使用できる。
耐擦傷機能層の厚みは特に限定されるものではないが、1.0μm以上20μm以下が好ましく、より好ましくは3.0μm以上5μm以下である。
【0042】
(近赤外線吸収層)
近赤外線吸収層に添加する近赤外線吸収剤は、本発明の光学シートの代表的な用途であるPDP用前面フィルタに適用する場合、PDPがキセノンガス放電を利用して発光する際に生じる近赤外線領域、即ち、800nm〜1100nmの波長領域を吸収し、且つ可視光領域、即ち、380nm〜780nmの波長領域では吸収が少なくて十分な光線透過率を有する色素が好ましい。そして、接着剤層に添加する場合、上記近赤外線領域での近赤外線の吸収量が、透過率でいえば20%以下、更に好ましくは10%以下となるように、近赤外線吸収剤の種類、近赤外線吸収剤の接着剤層中での含有量、及び接着剤層の厚み等を設定するのが好ましい。
このような近赤外線吸収剤としては、具体的には、フタロシアニン系、イモニウム系、ジイモニウム系、シアニン系、アゾ系、ポリメチン系、キノン系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系等の化合物、或いはジチオール金属錯体等の有機系化合物からなる有機系近赤外線吸収剤、或いは金属酸化物、金属ホウ(硼)化物、金属窒化物などの無機系化合物から成る無機系近赤外線吸収剤が挙げられ、耐久性の面から、無機系近赤外線吸収剤が好ましい。
このうち、金属酸化物としては、例えば、酸化タングステン系化合物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化亜鉛、酸化ルテニウム、酸化錫、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化セシウムなどの微粒子が挙げられる。
これらの中で、光学特性、即ち、近赤外線の高吸収率と可視光線の高透過率との両立性の点からは、ジイモニウム系化合物が好ましい。また、光学特性に加えて、更に高湿高湿度条件下における分光透過率特性の変化に対する耐久性の点からは、フタロシアニン系化合物、或いは酸化タングステン系化合物が好ましく、特にセシウム含有酸化タングステンが、近赤外線吸収能が高いことから特に好適である。
上記近赤外線吸収剤の含有量は、該吸収層中に0.1〜15質量%程度であることが好ましい。
【0043】
(ネオン光吸収層)
ネオン光吸収層に添加するネオン光吸収剤は、本発明の光学シートの代表的な用途であるPDP用前面フィルタに適用する場合、PDPから放射されるネオン光を吸収させる色素である。該ネオン光は、ネオン原子の発光スペクトル帯域、即ち550〜640nmの波長領域(ネオン光領域)を吸収し、且つ該波長領域を除いた可視光領域380nm〜780nmの波長領域中ではなるべく吸収が少なくて十分な光線透過率を有する色素が好ましい。また、吸収波長領域中の吸収極大波長における透過率変化の半値幅は50nm以下であることが好ましい。
そして、接着剤層に添加する場合、上記Ne光領域の中心波長を590nmとすれば、該590nmにおける光線の透過率が50%以下になるように、ネオン光吸収剤、ネオン光吸収剤の接着剤層中での含有量、及び接着剤層の厚み等を設定するのが好ましい。
このようなネオン光吸収剤としては、具体的には、シアニン系、オキソノール系、メチン系、サブフタロシアニン系もしくはポルフィリン系の有機化合物等が挙げられる。これらの中でもポルフィリン系化合物が好ましく、中でも、テトラアザポルフィリン系色素が、分散性が良好で、且つ耐熱性、耐湿性、耐光性が良好な点から好ましい。
ネオン光吸収剤の含有量は、ネオン光吸収層中に、0.05〜5質量%であることが好ましい。含有量が0.05質量%以上であれば十分なネオン光吸収機能を発現でき、5質量%以下であれば、十分な量の可視光線を透過できる。
【0044】
(調色層)
調色層に添加する調色光吸収剤は、表示画像を好みの色調(天然色、或いは天然色から多少偏移した色)に補正するための色素である。このような調色光吸収剤としては、有機系色素、無機系色素などを1種単独使用、又は2種以上併用することができる。具体的には、アントラキノン系、ナフタレン系、アゾ系、フタロシアニン系、ピロメテン系、テトラアザポルフィリン系、スクアリリウム系、シアニン系等の化合物からなる色素が挙げられる。
調色光吸収剤の含有量は、補正すべき色に合わせて適宜調整され、特に限定されない。通常、調色層中に0.01〜10質量%程度含有する。
【0045】
(紫外線吸収層)
紫外線吸収層に添加する紫外線吸収剤としては、例えば、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、トリアジン系等の有機系化合物、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどを微粒子化した粉体、或いは二酸化チタン微粒子を酸化鉄で複合化処理してなるハイブリッド無機粉体、酸化セリウム微粒子の表面を非結晶性シリカでコーティングしてなるハイブリッド無機粉体等の無機系化合物からなる公知の化合物を用いることができる。
なお、紫外線吸収剤を添加する場合、他の吸収剤(色素)を外来光から保護するために、他の吸収剤(色素)を添加した層と同じ層か、或いはその層よりも観察者側に近い層に添加する。また、耐光性が堅牢な色素を使用する場合は、紫外線吸収剤の添加は不要である。
【0046】
〔接着剤層(粘着剤層)〕
接着剤層200は、各種機能層300と電磁波遮蔽層100を接着し、或いは本発明の光学シートを画像表示装置本体又は画像表示装置基板に接着する役割を有する層であり、また、各種吸収剤を含有させることで各種光学機能層となり得る層である。
接着剤層に用いる接着剤としては、基本的には特に制限はなく、公知の接着剤の中から、接着性(粘着力)、透明性、塗工適性などを有し、またそれ自体好ましくは無着色のものを適宜選択する。各種の天然又は合成樹脂が使用でき、硬化形態としては熱又は電離放射線硬化樹脂などが適用できる。
好適に用いられる接着剤は、粘着剤と呼称される形態のものである。粘着剤としては、アクリル系粘着剤が挙げられる。アクリル系粘着剤は、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを含んで重合させたものである。炭素原子数1〜18程度のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体であるのが一般的である。なお、本発明において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸をいう。
【0047】
本発明の光学シートは、各種用途に使用可能である。特に、テレビジョン受像装置、各種測定機器や計器類、各種事務用機器、各種医療機器、電算機器、電話機、電飾看板、各種遊戯機器等の表示部に用いられるプラズマディスプレイ(PDP)、ブラウン管ディスプレイ(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、電場発光ディスプレイ(EL)などの画像表示装置の前面フィルタ用として好適であり、特にプラズマディスプレイ用として好適である。また、その他、住宅、学校、病院、事務所、店舗等の建築物の窓、車両、航空機、船舶等の乗物の窓、電子レンジの窓等の等の各種家電製品の窓等の電磁波遮蔽用途にも使用可能である。
【実施例】
【0048】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例により何ら限定されるものではない。
【0049】
[実施例1]
(電磁波遮蔽シートの製造)
まず、凹版を用意した。該凹版は、中空の鉄の円筒表面に銅メッキ層を被覆してなる円筒版材表面を機械的に切削加工し、その後、前面にクロム膜を電解メッキして、該円筒版材表面に、深さ7μm、線幅14μm、縦横線の繰返し周期170μmの正方格子のメッシュパターン状凹部を形成し、印刷用の凹版を得た。該凹版凹部の線条パターンの走行方向(長手方向)と直交する主切断面形状は底部(円筒中心に近い側)の幅がせばまった台形形状であり、底部の角の両底角が各々75度、円筒表面部に露出する角の両底角が各々105度であり、該台形の高さが7μm、該台形の円筒表面部に露出する底辺の長さが14μmであった。
また、該台形状の主切断面の凹部の底部(導電性パターン層では頂部に対応)には中央部が端角部よりも2μm湾曲して突出(導電性パターン層では頂部の中央部が端角部よりも2μm湾曲して凹陥することに対応)する形状とした。
次いで、透明基材として厚みが100μmで、1080mm幅×2000m巻の無着色透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績(株)製A4300)を用意した。この透明基材上の一方の面上にプライマー層用の紫外線硬化性樹脂組成物を乾燥膜厚が厚さ25μmとなるように塗布形成した。塗布方式は、通常のグラビアリバースロールコート法を採用し、紫外線硬化性樹脂組成物としては、エポキシアクリレートプレポリマー35質量部、ウレタンアクリレートプレポリマー12質量部、フェノキシエチルアクリレートからなる単官能モノマー44質量部、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレートからなる3官能モノマー9質量部、さらに光開始剤としてイルガキュア184(物質名;1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、製造元;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)3質量部添加したものを使用した。このときの粘度は約1300cps(25℃、B型粘度計)であり、塗布後のプライマー層は触ると流動性を示すものの、PETフィルム上から流れ落ちることはなかった。
一方、準備された上記円筒状凹版の版面に、導電性組成物である銀ペーストをピックアップロールで塗布し、鋼鉄製ドクターブレードで凹部内以外の導電性組成物を掻き取って凹部内のみに導電性組成物を充填させた。
そして、該導電性組成物を凹部内に充填させた状態のロール状凹版と、ニップロールとの間に、流動状態のプライマー層が形成されたPETフィルムを供し、ロール状凹版に対するニップロールの押圧力(付勢力)によって、流動状態のプライマー層を凹部内に存在する導電性組成物の凹みに流入させ、導電性ペーストと流動性保持状態のプライマー層とを隙間なく密着させると共に、該プライマーの一部を凹部内の該導電性組成物内に浸透せしめた。
次いで、更に凹版ロールが回転して高圧水銀灯によって紫外線を照射し、紫外線硬化性樹脂組成物からなる流動状態のプライマー層を硬化させた。プライマー層の硬化により、凹版ロールの凹部内の導電性ペーストは、硬化したプライマー層と密着し、その後、出口側のニップロールによってフィルムが凹版ロールから剥離され、プライマー層上には導電性組成物層が転写形成された。このようにして得られたフィルムを、130℃の乾燥ゾーンを通過させて、60秒熱風乾燥させ、該導電性組成物中の溶剤を蒸発させ、プライマー層上に、該導電性導電性組成物から成る、厚さ6μm(パターン幅方向中央部の凹陥部の厚み)、線幅20μm、縦横線の繰返周期170μmの正方格子の導電性凸状パターン層を形成した。得られた導電性パターン層は、頂部の中央部が端角部よりも1.5μm湾曲して凹陥する形状であった。且つ頂部表面には分岐し且つ蛇行する溪谷状の凹溝が多数形成されていた。
なお、該導電性組成物は、導電性粉末として平均粒径約2μmの銀粉末93質量部、樹脂バインダーとして熱可塑性のポリエステルウレタン樹脂7質量部、溶剤としてブチルカルビトールアセテート25質量部を配合し、十分に撹拌混合した後、3本ロールで混練りして作製した。
【0050】
次いで、上記メッシュパターンが形成されている透明基材をメッキした。
メッキ液としては、溶媒として水(3000L)を用い、硫酸銅5水和物(75g/L)と、硫酸(180g/L)、塩酸(60mg/L)、配向性調節成分として炭化水素系高分子系メッキ添加剤(40mL/L)を混合してメッキ液を調製した。
メッキ条件は、浴量(500mL)、撹拌(エアー撹拌)、浴温(25℃)、電流密度(2A/dm2)、メッキ時間(5min)で行って、膜厚は2.0μmであった。メッキ処理により堆積した被膜を120℃、60分間アニール処理して、銅から成る金属層を得た。
メッキは被メッキ部とアノード極板との距離が近いところにメッキがつきやすく、角部にも電流密度集中が起こりメッキが厚くつきやすい。本実施例の導電性パターン層は主切断面が台形形状で頂部の端角部が尖っているとともに、その端角部が中央部よりも突出しているため、得られた銅メッキされたメッシュパターンの頂部は、端角部が突出し、中央部が凹陥した表面形状であった。
【0051】
上記メッキ処理後、黒化処理を実施した。
黒化処理は、以下の浴組成の電解浴を用いて陰極電解し粗面化処理を施すことにより行った。
(1層目)
硫酸銅五水和物 70g/L
硫酸 100g/L
液温 40℃
電流密度 40A/dm2
電解時間 5秒
陽極 白金
(2層目)
硫酸銅五水和物 250g/L
硫酸 100g/L
液温 45℃
電流密度 20A/dm2
電解時間 30秒
陽極 白金
上記条件により、メッシュパターンの両側端縁の端角部が突出し、中央部が凹陥し、且つ頂部表面には、図2の如く、分岐し且つ蛇行する溪谷状の凹溝が多数形成された表面形状の銅メッキ層の表面に銅からなる針状結晶からなる黒化層が形成された。
次いで、黒化層が形成された電磁波遮蔽シートを1000mm×600mmの寸法の長方形に裁断した。其の際、長辺とメッシュ(導電性パターン層)線条部走行方向とのなす角度(バイアス角)は50度に設定した。
【0052】
(反射防止層の準備)
表面に易接着処理が施された幅1000mmで厚さ100μmの帯状ロール巻の2軸延伸透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡績社製、A4300)からなる透明基材を給紙部にセットした巻取から繰り出し、該PETフィルムの易接着処理面上に、高屈折率層と低屈折率層を順次形成した反射防止フィルタを形成した。ここで、高屈折率層は、ジルコニア超微粒子を紫外線硬化性樹脂中に分散させた組成物(JSR(株)製、商品名「KZ7973」)を該PETフィルム上に塗工し、乾燥硬化せしめて、厚さ3μm、屈折率1.69の硬化物層とし、低屈折率層は、該高屈折率層上に、フッ素樹脂系の紫外線硬化性樹脂(JSR(株)製、商品名「TM086」)を塗工し、乾燥硬化せしめて、厚さ100nm、屈折率1.41の硬化物としてなる、反射防止層を準備した。
【0053】
(コントラスト向上層の製造)
先ず、片面に易接着処理がされた幅1000mm、厚さ188μmでロール巻した連続帯状の透明2軸延伸ポリエチレンテレフタレー卜(PET)フィルムから成る支持体としての透明基材の一方の表面に、
エポキシアクリレートプレポリマー:40質量部
ウレタンアクリレートプレポリマー:10質量部
フェノキシエチルアクリレートからなる単官能アクリレートモノマー:45質量部
エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレートからなる3官能アクリレートモノマー:10質量部
シリコン樹脂系離型剤:1質量部
光重合開始剤 1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名イルガキュア184):3質量部
の混合液とから成る液状紫外線硬化性樹脂組成物を、硬化後の膜厚が90μmとなるように塗布した。次に、ロール金型表面の面方向に沿って円周方向に直線状に連なり、その延長方向と直交する主切断面形状が、高さ85μm、版表面側底辺の長さが10μm、版から遠い側の底辺の長さが4μmの台形となる溝状凸部を、45μm周期で複数条互いに平行に配列した凸条群(暗色線条部と同形状且つ逆凹凸)を形成されたロール金型とPETフィルムとの間に、塗布した紫外線硬化性樹脂組成物を挟んだ状態で高圧水銀灯からの紫外線を照射することにより、該紫外線硬化性樹脂組成物を架橋硬化せしめて透明樹脂層6bとし、しかる後ロール金型を離型することにより、該透明樹脂層表面に、該透明樹脂層表面の面方向に沿って一方向に直線状に連なり、その主切断面が、高さ85μm、透明樹脂層表面側の長い方の底辺Sblに対応する部分の長さが10μm、PETフィルム側の短い方の底辺Sbsとに対応する部分の長さが4μmの台形となる凹条溝群を表面に有する透明樹脂層(透光性領域)を該透明基材の一方の面上に形成した。
次に、樹脂バインダー6abを構成するウレタンアクリレート系プレポリマー100質量部中に、暗色着色剤6acとして平均粒径(メジアン径)が3.8μmのカーボンブラックを含有する黒色球状ビーズ状粒子20質量部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロへキシル−フェニル−ケトン(商品名:イルガキュア184、チバスペシャリティケミカルズ社製)2質量部を混合してなる、黒色で液状の紫外線硬化性樹脂組成物を調製した。この黒色液状組成物を透明樹脂層6bの凹条溝に塗工し、次いで該塗膜を鉄製ドクターブレードでスキージし該凹条溝外の該黒色液状組成物のみを掻き取り除去し、該凹条溝内のみに該黒色液状組成物を充填して、しかる後これを水銀灯からの紫外線を照射して架橋硬化せしめて暗色線条部6aを形成することで、図3の断面図の如きコントラスト向上層6(ミクロルーバ層)を完成した。
なお、硬化收縮及びドクターブレード掻き取り時の圧によって、硬化後の暗色線条部6aの長い方の底辺Sbl表面は、図3にも拡大図示するように、その表面が、短い方の底辺Sbs側に向かって凹んだ凹陥部Cを有していた。該凹陥部Cの最低部はコントラスト向上層6の透明樹脂層表面Sfから3μm凹んでいた。
【0054】
(粘着剤層の準備)
アクリル系粘着剤(東洋インキ(株)、感圧性粘着剤「オリバイン」(商品名:BPS6271)、固形分27%)及び硬化剤BXX5627(東洋インキ製造(株))に、紫外線吸収剤CyasorbUV24(サイテック社)を4質量%配合した粘着剤層用組成物を作製した。
この粘着剤層用組成物を厚さ38μmの離型フィルム上に厚さ25μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥した後、更に別の38μm離型フィルムで塗工面をラミネートし、粘着剤層を2枚の離型フィルム間に設けた粘着剤層形成フィルム(1)を作製した。その後、枚葉化した電磁波遮蔽シートの寸法よりも縦横とも30mm小さい長方形に裁断した。
【0055】
アクリル系粘着剤(東洋インキ(株)、感圧性粘着剤「オリバイン」(商品名:BPS6271)、固形分27%)及び硬化剤BXX5627(東洋インキ製造(株))に、酸化防止剤として1−Hベンゾトリアゾールからなる金属不活性化剤IRGME T39(BASF社製)を0.5質量%配合した粘着剤層用組成物を作製した。
この粘着剤層用組成物を厚さ38μmの離型フィルム上に厚さ25μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥した後、更に別の38μm離型フィルムで塗工面をラミネートし、粘着剤層を2枚の離型フィルム間に設けた粘着剤層形成フィルム(2)を作製した。その後、枚葉化した電磁波遮蔽シートの寸法よりも縦横とも30mm小さい長方形に裁断した。
【0056】
アクリル系粘着剤(東洋インキ(株)、感圧性粘着剤「オリバイン」(商品名:BPS6271)、固形分27%)及び硬化剤BXX5627(東洋インキ製造(株))に、近赤外線吸収化合物として、フタロシアニン系化合物「IR12」(商品名、日本触媒(株))を0.05質量%、フタロシアニン系化合物「IR14」(商品名、日本触媒(株))を0.02質量%及びジインモニウム系化合物「IRG−068」(商品名、日本化薬(株))を0.03質量%それぞれ配合した。更に、テトラアザポルフィリン系化合物からなるネオン光吸収剤「TAP2」(商品名、山田化学(株))を0.01質量%配合した。更に、調色色素(KAYASET(日本化薬(株)製)を0.05質量%配合し、十分に混合して粘着剤層用組成物(3)を作製した。
この粘着剤層用組成物を厚さ38μmの離型フィルム上に厚さ25μmになるように塗布し、100℃で2分間乾燥した後、更に別の38μm離型フィルムで塗工面をラミネートし、粘着剤層を2枚の離型フィルム間に設けた粘着剤層形成フィルムを作製した。その後、枚葉化した電磁波遮蔽シートの寸法よりも同じ大きさの長方形に裁断した。
【0057】
(プラズマディスプレイ用前面フィルタの作製)
反射防止フィルタの透明基材側とコントラスト向上層の暗色部形成側の反対面とを離型フィルムを順次剥がした上記粘着剤層形成フィルム(1)を介して貼り合わせて機能層とした。
その機能層のコントラスト向上層の暗色部形成側の面と電磁波遮蔽シートの導電性パターン層形成側の面とを離型フィルムを順次剥がした上記粘着剤層形成フィルム(2)を介して貼り合わせ、光学シートを得た。なお、コントラスト向上層の暗色部線条と電磁波遮蔽層のメッシュパターンのバイアス角は47°となるように貼り合わせた。
また、その際、電磁波遮蔽層の周縁部が幅15mmだけ機能層で被覆されずに接地用領域として露出するような位置関係で貼着した。
そのようにして得た光学シートの電磁波遮蔽シートの透明基材側に、離型フィルムを順次剥がした上記粘着剤層形成フィルム(3)を貼着して、PDP本体に貼着するリワーク性のある粘着層を形成して、プラズマディスプレイ用前面フィルタを完成した。
【0058】
実施例1の電磁波遮蔽シートは、後工程である機能性フィルムラミネート工程において黒化層とガイドロール等の稼動部位との接触面積が少なく、黒化層の摩耗、剥脱がほとんどなかった。
実施例1のPDP用前面フィルタの電磁波遮蔽層と粘着剤層との密着は、下記比較例1のPDP用前面フィルタに比べて良好であった。
また、実施例1及び比較例1のPDP用前面フィルタを同等の外光存在条件下の室内で、同一のPDPに同一条件の白及び黒の両画像を並列表示して、目視で、白黒両画像の輝度比(コントラスト)を相対比較したところ、
実施例1のコントラスト>比較例1のコントラスト
であった。
【0059】
[比較例1]
凹版の製造時に、中空の鉄の円筒表面に銅メッキ層を被覆してなる円筒版材の表面にネガ型感光性レジスト膜を塗工し、実施例1と同じ線幅及び繰返周期の正方格子パターンをArイオンレーザで露光し、該円筒版材表面の未露光部を洗浄除去して銅層を露出させ、該正方格子のパターン部のみレジスト膜を残留せしめた状態で、塩化第2鉄水溶液にてレジスト非形成部の銅層を腐蝕して、該円筒版材表面に、深さ20μm、線幅20μm、縦横線の繰返し周期300μmの正方格子のメッシュパターン状凹部を形成し、印刷用の凹版を得た。
その他は実施例1と同様にして電磁波遮蔽シートを製造した。
該製版方式の場合、腐蝕(エッチング)により版凹部の線条パターンの主切断面形状は、底部(導電性パターン層頂部に対応)において凹部の底部が半円または楕円形状となり、その版で凹版印刷したメッシュ状導電性パターン層の横断面形状は表面凹凸の少ない綺麗な半楕円形状となり、頂部は端部よりも中央部の方が突出し、上に凸の滑らかな曲面形状となった。それにメッキ処理を施しても下地形状がそのまま影響し綺麗な丸みを持ったメッキ層形状となってしまった。また、得られた導電性パターン層の頂部表面には、端角部も凹溝も形成されていなかった。
上記メッキ処理後、黒化処理を施した。黒化処理は、浴温90℃の亜塩素酸ソーダ水溶液50g/Lとカセイソーダ水溶液20g/Lとの混合液に、該メッシュパターン及び銅メッキ層が施された透明基材を、2分間浸漬させて化成処理を行う。これにより、銅メッキ層表面が銅酸化物になり、黒化処理される。
その他は実施例1と同様にして比較例1のプラズマディスプレイ用前面フィルタを製造した。
【0060】
比較例1の電磁波遮蔽シートは、後工程である機能性フィルムラミネート工程において黒化層とガイドロール等の稼動部位との接触面積が多く、黒化層の摩耗、剥脱があった。
比較例1のPDP用前面フィルタの電磁波遮蔽層と粘着剤層との密着は、実施例1のPDP用前面フィルタに比べて不良であった。
また、実施例1及び比較例1のPDP用前面フィルタを同等の外光存在条件下の室内で、同一のPDPに同一条件の白及び黒の両画像を並列表示して、目視で、白黒両画像の輝度比(コントラスト)を相対比較したところ、
実施例1のコントラスト>比較例1のコントラスト
であった。
また、実施例2及び比較例1のPDP用前面フィルタを同等の外光存在条件下の室内で、同一のPDPに同一条件の白及び黒の両画像を並列表示して、目視で、白黒両画像の輝度比(コントラスト)を相対比較したところ、
実施例2のコントラスト>比較例1のコントラスト
であった。
【0061】
[実施例2]
印刷方法をプライマーを用いないシルクスクリーン印刷とした他は実施例1と同じ操作によって、線幅、線厚、開口率、ピッチ、格子パターンが実施例1に同じであり、実施例1と同様の導電性パターン層表面を有する電磁波遮蔽層を作製した。
その他は実施例1と同様にして実施例2のプラズマディスプレイ用前面フィルタを製造した。
実施例2の電磁波遮蔽シートは、後工程である機能性フィルムラミネート工程において黒化層とガイドロール等の稼動部位との接触面積が少なく、黒化層の摩耗、剥脱がほとんどなかった。
実施例2のPDP用前面フィルタの電磁波遮蔽層と粘着剤層との密着は、比較例1のPDP用前面フィルタに比べて良好であった。
【符号の説明】
【0062】
1 導電性粒子
2 樹脂バインダー
3 金属層
4 黒化層
6 コントラスト向上層
6a 暗色線条部
6ab 樹脂バインダー
6ac 暗色着色剤
6b 透明樹脂層
10 導電性パターン層
20 透明基材
100 電磁波遮蔽層
200 粘着剤層
300 各種機能層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に所定のパターンで形成された導電性粒子と樹脂バインダーを含む導電性パターン層を有する電磁波遮蔽層と、その導電性パターン層側に粘着剤層を介して積層された各種機能層からなる光学シートであって、該電磁波遮蔽層の導電性パターン層は、その表面に、端角部が突出し、中央部が凹陥した金属層が形成され、かつ、該金属層の表面には針状金属の黒化層が形成されているものであることを特徴とする光学シート。
【請求項2】
電磁波遮蔽層の導電性パターン層が、さらに、頂部金属層表面内に凹溝が走行しているものである請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
透明基材と導電性パターン層との間にプライマー層を有し、プライマー層の厚みが導電性パターン層が形成されている部分で導電性パターン層が形成されていない部分よりも厚くなっている、請求項1又は2に記載の光学シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の光学シートを用いたプラズマディスプレイ用前面フィルタ。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−169353(P2012−169353A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27469(P2011−27469)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】