説明

光学シート、透明導電性積層体及びタッチパネル

【課題】優れた硬度を有すると共に、カールの発生を効果的に防止して位相差の変化を防ぐことができる光学シート及びこの光学シートを備える透明導電性積層体、並びにこの透明導電性積層体を備えるタッチパネルの提供を目的とする。
【解決手段】本発明の光学シートは、透明性高分子を主成分として含む位相差フィルムと、この位相差フィルムの一方の面側に形成される第一ハードコート層と、この第一ハードコート層の一方の面側に形成される第二ハードコート層とを備え、上記第二ハードコート層の鉛筆硬度が3H以上であり、上記第一ハードコート層の鉛筆硬度が第二ハードコート層の鉛筆硬度よりも低く、上記第二ハードコート層の厚みが1μm以上10μm以下であり、上記第一ハードコート層の厚みが第二ハードコート層の厚みの4倍以上20倍以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学シート、この光学シートを備える透明導電性積層体及びこの透明導電性積層体を備えるタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示モジュール(LCD)は、薄型、軽量、低消費電力等の特徴を活かしてフラットパネルディスプレイとして多用されており、その用途は携帯電話、携帯情報端末(PDA)、パーソナルコンピュータ、テレビなどの情報用表示デバイスとして年々拡大している。近年、液晶表示モジュールに要求される特性としては、用途により様々であるが、明るい(高輝度化)、見やすい(広視野角化)、省エネルギー化、薄型軽量化、大画面化等が挙げられる。
【0003】
このような液晶表示モジュールとしては、視認者の操作容易性、迅速性等を向上させるべくタッチパネルが搭載されているものもある。そして、このようなタッチパネルが搭載された液晶表示モジュールは、一般的には、タッチパネル、液晶表示素子、各種光学シート及びバックライトが表面側から裏面側にこの順で重畳された構造を有している。
【0004】
このようなタッチパネルとしては、静電容量方式、抵抗膜方式、電磁誘導方式等が存在している。静電容量方式としては、互いに交差する方向に電極を延在させ、指などが接触した際に電極間の静電容量が変化することを検知して入力位置を検出するものや、透明導電膜の両端に同相、同電位の交流を印加し、指が接触又は近接してキャパシタが形成される際に流れる微弱電流を検知して入力位置を検出するもの等が存在している。
【0005】
また、このようなタッチパネルにおいては、液晶パネルから出射される光を良好に透過させる一方、外部光の反射については効果的に防止すべく、タッチパネルの最表面に偏光板を配置し、かつタッチパネルの表面側及び裏面側に一対の位相差フィルム(1/4λ板)を配置したものも存在している。また、このような位相差フィルムのキズ付き防止性等を向上させるため、位相差フィルムにハードコート層が積層された光学シートも発案されている。
【0006】
しかしながら、このような光学シートは、位相差フィルムとハードコート層との硬度差に起因してカールが発生するおそれがある。また、かかるカールが発生した場合、位相差フィルムの位相差が変化して所望の複屈折を保つことができないおそれがある。
【0007】
これに対し、今日では、ハードコート層を第一ハードコート層(内層)及び第二ハードコート層(外層)の二層構造とすることでカールの発生を抑えることができる技術が発案されている(特開2000−71392号公報参照)。この公報所載のハードコートフィルムは、第一ハードコート層としてラジカル重合型樹脂とカチオン重合型樹脂とのブレンドからなる硬化樹脂層を基材層の表面に設け、この第一ハードコート層の表面に第一ハードコート層と略同一厚みの第二ハードコート層を設け、耐擦傷性を維持しつつカールの発生防止及びクラックの発生防止を達成しようとしたものである。
【0008】
また、二層構造のハードコート層を有するハードコートフィルムとしては、(2)第一ハードコート層の鉛筆硬度が第二ハードコート層の鉛筆硬度よりも小さく、第一ハードコート層の厚みが第二ハードコート層の厚みよりも厚いものが提案されている(特開2007−219013号公報参照)。この公報所載のハードコートフィルムは、低収縮のウレタンアクリレート等からなる第一ハードコート層と高硬度のウレタンアクリレート等からなる第二ハードコート層とが同じ塗工方法によって積層されているため、第二ハードコート層の厚みは第一ハードコート層の厚みの略半分以上に形成されている。
【0009】
しかしながら、上記(1)のハードコートフィルムは、第一ハードコート層と第二ハードコート層とが略同一厚みであるため、第一ハードコート層が薄く、ハードコートフィルムの表面が十二分の硬度を奏しない。また、このハードコートフィルムは、十二分の硬度を得るためにハードコート層の厚みを厚くすると、第二ハードコート層が厚くなり過ぎ、カールが発生してしまうおそれがある。
【0010】
また、上記(2)のハードコートフィルムは、第二ハードコート層の厚みが第一ハードコート層の厚みよりも薄いものの第一ハードコート層の厚みの略半分以上の厚みを有するため、結果として、ハードコートフィルムの表面が十二分の硬度を奏せず、またカールの発生を的確に防止できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−71392号公報
【特許文献2】特開2007−219013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、優れた硬度を有すると共に、カールの発生を効果的に防止して位相差の変化を防ぐことができる光学シート及びこの光学シートを備える透明導電性積層体、並びにこの透明導電性積層体を備えるタッチパネルの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するためになされた発明は、
透明性高分子を主成分として含む位相差フィルムと、
この位相差フィルムの一方の面側に形成される第一ハードコート層と、
この第一ハードコート層の一方の面側に形成される第二ハードコート層と
を備え、
上記第二ハードコート層の鉛筆硬度が3H以上であり、
上記第一ハードコート層の鉛筆硬度が第二ハードコート層の鉛筆硬度よりも低く、
上記第二ハードコート層の厚みが1μm以上10μm以下であり、
上記第一ハードコート層の厚みが第二ハードコート層の厚みの4倍以上20倍以下である光学シートである。
【0014】
当該光学シートは、位相差フィルムと第二ハードコート層との間に、第二ハードコート層よりも鉛筆硬度の低い第一ハードコート層が配設されている。それゆえ、当該光学シートは、位相差フィルムと第二ハードコート層との硬度差に起因してカールが発生するのを防止しつつ、第一ハードコート層と第二ハードコート層とによって、位相差フィルムの一方の面側の硬度を効果的に高めることができる。特に、当該光学シートは、第二ハードコート層の厚みを上記範囲とし、かつ第二ハードコート層の厚みに対する第一ハードコート層の厚みを4倍以上20倍以下に保つことによって、第二ハードコート層の鉛筆硬度が比較的高いことに起因してカールが発生するのを好適に防止することができる。その結果、当該光学シートは、カールの発生に起因する位相差フィルムの位相差の変化を効果的に防止することができる。
【0015】
当該光学シートは、上記第一ハードコート層の鉛筆硬度がF以上2H以下であるとよい。これにより、位相差フィルムの一方の面側の硬度をさらに効果的に高めることができる。
【0016】
当該光学シートは、上記第一ハードコート層の厚みが20μm以上100μm以下であるとよい。これにより、カールが発生するのをさらに好適に防止することができる。
【0017】
当該光学シートは、上記透明性高分子がポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂又はアクリル系樹脂であるとよい。当該光学シートは、ポリカーボネート系樹脂やシクロオレフィン系樹脂のように比較的硬度が低く、カールを発生しやすい樹脂を位相差フィルムの主成分として用いた場合であっても、カールの発生を防止し、この位相差フィルムの一方の面側の硬度を効果的に高めることができる。当該光学シートは、上記位相差フィルムがポリカーボネート系樹脂を主成分とすることで耐衝撃性を向上させることができる。当該光学シートは、上記位相差フィルムがシクロオレフィン系樹脂を主成分とすることで、直射日光やディスプレイの発熱等の外力によって生じる位相差の変化を効果的に抑えることができる。また、当該光学シートは、上記位相差フィルムがアクリル系樹脂を主成分とすることで、優れた光学的透明性を有し、光線を極めて良好に透過させることができる。
【0018】
当該光学シートは、上記第一ハードコート層の主成分が紫外線硬化性樹脂であるとよい。これにより、製造容易性を向上させることができる。また、当該光学シートは、位相差フィルムに熱が加えられることによって生じる熱膨張や熱収縮を防止することができ、寸歩安定性を向上させることができる。
【0019】
当該光学シートは、上記第一ハードコート層の主成分として紫外線硬化性樹脂が含まれる場合、この紫外線硬化性樹脂がカチオン重合性樹脂であるとよい。これにより、位相差フィルムに対する接着性を向上させることができると共に、接着力の経時変化を抑制することができる。また、当該光学シートは、第一ハードコート層の主成分としてカチオン重合性樹脂を用いることによって、カールを防止し、寸法安定性をさらに向上させることができる。
【0020】
当該光学シートは、上記第一ハードコート層が主成分として紫外線硬化性樹脂を含むと共に、紫外線防止剤を含有するとよい。一般に、第一ハードコート層の主成分が紫外線硬化性樹脂であり、さらにこの第一ハードコート層が紫外線防止剤を含有している場合、第一ハードコート層の硬化速度が遅くなり、生産性が低下する。しかしながら、当該光学シートは、第一ハードコート層の厚みが比較的厚く設定されているため、紫外線防止剤の濃度を小さく抑えても十分な量の紫外線防止剤を第一ハードコート層に含有させることができる。従って、当該光学シートは、第一ハードコート層に十分な量の紫外線防止剤を含有させた場合でも、第一ハードコート層の硬化速度の低下を抑制し、生産性が低下するのを防止することができる。
【0021】
当該光学シートは、上記位相差フィルムが1/4波長フィルム又は1/2波長フィルムであるとよい。これにより、タッチパネル等に好適に用いることができる。
【0022】
当該光学シートは、上記位相差フィルムの他方の面側に形成される高屈折率層を備えるとよい。これにより、位相差フィルムの他方の面側の屈折率を向上させることができる。
【0023】
当該光学シートは、上記高屈折率層の屈折率が1.6以上2.3以下であるとよい。これにより、当該光学シートの高屈折率層側をタッチパネル等の透明導電層に積層した場合に、高屈折率層の屈折率と透明導電層の屈折率とを近づけることができる。その結果、当該光学シートは、透明導電層に形成される電極パターンの視認性を低下させることができる。
【0024】
また、上記課題を解決するためになされた透明導電性積層体は、
高屈折率層の屈折率が1.6以上2.3以下である上記光学シートと、
この光学シートの高屈折率層の他方の面に積層される透明導電層と
を備える透明導電性積層体である。
【0025】
当該透明導電性積層体は、上記光学シートを備えているので、この光学シートにカールが発生するのを好適に防止し、カールの発生に起因する位相差フィルムの位相差の変化を効果的に防ぐことができる。また、当該透明導電性積層体は、上記光学シートを備えているので位相差フィルムの一方の面側の硬度を効果的に高めることができる。さらに、当該透明導電性積層体は、高屈折率層の屈折率を透明導電層の屈折率、例えばITOの屈折率2.1〜2.2(λ=520nm)に近づけることによって、例えばタッチパネルに用いられる場合、透明導電層に形成される電極パターンの視認性を低下させることができる。
【0026】
当該透明導電性積層体は、上記高屈折率層の屈折率と、上記透明導電層の屈折率との差が0.6以下であるとよい。これにより、透明導電層に形成される電極パターンの視認性をさらに低下させることができる。
【0027】
さらに、上記課題を解決するためになされたタッチパネルは、
当該透明導電性積層体を備えるタッチパネルである。
【0028】
当該タッチパネルは、当該光学シートを備えているので、この光学シートにカールが発生するのを好適に防止し、カールの発生に起因する位相差フィルムの位相差の変化を効果的に防ぐことができる。また、当該タッチパネルは、当該光学シートを備えているので、位相差フィルムの一方の面側の硬度を効果的に高めることができる。さらに、当該タッチパネルは、高屈折率層の屈折率と透明導電層の屈折率とを近づけることによって、透明導電層に形成される電極パターンの視認性を低下させることができる。
【0029】
なお、本発明において、「鉛筆硬度」とは、JIS K5600−5−4に規定する試験方法に記載の鉛筆引っかき値に基づく値をいう。また、「厚み」とは、JIS K7130に準じて測定した平均厚さをいう。
【0030】
「紫外線防止剤」とは、紫外線による光劣化防止機能を有する添加剤で、紫外線吸収剤、紫外線安定剤等を含む概念である。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明の光学シート及びこの光学シートを備える透明導電性積層体、並びにこの透明導電性積層体を備えるタッチパネルは、当該光学シートの硬度を向上させることができ、かつカールの発生を効果的に防止して位相差の変化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る光学シートを示す模式的断面図である。
【図2】図1の光学シートとは異なる形態に係る光学シートを示す模式的断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る透明導電性積層体を示す模式的断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るタッチパネルを示す模式的断面図である。
【図5】図4のタッチパネルとは異なる形態に係るタッチパネルを示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[第一実施形態]
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0034】
図1の光学シート1は、位相差フィルム2と、ハードコート層3とを有している。
【0035】
(位相差フィルム2)
位相差フィルム2は、光線を透過させる必要があるため透明、特に無色透明に形成されている。位相差フィルム2は、透明性高分子を主成分として含有している。位相差フィルム2は、1/4波長フィルムとして形成されている。
【0036】
位相差フィルム2の主成分として含有される透明性高分子としては、特に限定されるものではなく、ポリカーボネート系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、マレイミド系樹脂等が挙げられる。なかでも位相差フィルム2の主成分として含有される透明性高分子としては、光学特性、硬度等の点からポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂又はアクリル系樹脂が好ましく、ポリカーボネート系樹脂が特に好ましい。
【0037】
位相差フィルム2は、透明性及び所望の強度を損なわない限りは他の任意成分を含んでよいが、透明性高分子からなる主成分を好ましくは90質量%以上含み、さらに好ましくは98質量%以上含む。ここでの任意成分の例としては、紫外線吸収剤、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、位相差低減剤、艶消し剤、抗菌剤、防かび等が挙げられる。
【0038】
位相差フィルム2を形成するポリカーボネート系樹脂としては、特に限定されず、直鎖ポリカーボネート系樹脂又は分岐ポリカーボネート系樹脂のいずれかを使用することができる。また、位相差フィルム2を形成するポリカーボネート系樹脂としては、直鎖ポリカーボネート系樹脂及び分岐ポリカーボネート系樹脂からなるポリカーボネート系樹脂を使用することもできる。
【0039】
直鎖ポリカーボネート系樹脂としては、公知のホスゲン法または溶融法によって製造された直鎖の芳香族ポリカーボネート系樹脂であり、カーボネート成分とジフェノール成分とからなる。カーボネート成分を導入するための前駆物質としては、例えば、ホスゲン、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。また、ジフェノールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−チオジフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3−ジクロロジフェニルエーテル等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。このような直鎖ポリカーボネート系樹脂は、例えば、米国特許第3989672号に記載されている方法等で製造することができる。
【0040】
分岐ポリカーボネート系樹脂としては、分岐剤を用いて製造したポリカーボネート系樹脂であり、分岐剤としては、例えば、フロログルシン、トリメリット酸、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2−トリス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−ジヒドロキシ−2,5−ジヒドロキシジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0041】
このような分岐ポリカーボネート系樹脂は、例えば、特開平03−182524号公報に挙げられているように、芳香族ジフェノール類、上記分岐剤およびホスゲンから誘導されるポリカーボネートオリゴマー、芳香族ジフェノール類および末端停止剤を、これらを含む反応混合液が乱流となるように撹拌しながら反応させ、反応混合液の粘度が上昇した時点で、アルカリ水溶液を加えると共に反応混合液を層流として反応させる方法により製造することができる。本発明の樹脂組成物の分岐ポリカーボネート系樹脂は、ポリカーボネート系樹脂中に5重量%以上80重量%以下の範囲で含有され、好ましくは10重量%以上60重量%以下の範囲で含有される。これは、分岐ポリカーボネート系樹脂が10重量%未満では、伸長粘度が低下し押出成形での成形が困難となるためであり、80重量%を超えると樹脂の剪断粘度が高くなり成形加工性が低下するためである。
【0042】
位相差フィルム2を形成するシクロオレフィン系樹脂としては、環状オレフィン(シクロオレフィン)からなるモノマーのユニットを有する樹脂であれば特に限定されるものではない。位相差フィルム2に用いられるシクロオレフィン系樹脂としては、シクロオレフィンポリマー(COP)又はシクロオレフィンコポリマー(COC)のいずれであってもよいが、シクロオレフィンコポリマーがより好ましい。
【0043】
上記シクロオレフィンコポリマーとは、環状オレフィンとエチレン等のオレフィンとの共重合体である非結晶性の環状オレフィン系樹脂のことをいう。環状オレフィンとしては、多環式の環状オレフィンと単環式の環状オレフィンとが存在している。かかる多環式の環状オレフィンとしては、ノルボルネン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボルネン、エチルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブチルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、メチルテトラシクロドデセン、ジメチルシクロテトラドデセン、トリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン等を挙げることができる。また、単環式の環状オレフィンとしては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロドデカトリエン等を挙げることができる。
【0044】
位相差フィルム2を形成するアクリル系樹脂は、アクリル酸又はメタクリル酸に由来する骨格を有する樹脂である。アクリル系樹脂の例としては、特に限定されないが、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体)などが挙げられる。これらのアクリル系樹脂のなかでも、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルが好ましく、メタクリル酸メチル系樹脂がより好ましい。
【0045】
位相差フィルム2の鉛筆硬度としては、特に限定されるものではなく、例えばハードコートを付与した後の硬度をより高くするためにより高い方が好ましいが、8B以上2B以下であってもかまわない。当該光学シート1は、位相差フィルム2の鉛筆硬度が上記範囲程度であっても、第一ハードコート層4及び第二ハードコート層5によって、一方の面側の鉛筆硬度を2H以上6H以下程度に保つことができる。
【0046】
位相差フィルムの厚みとしては、特に限定されないが、例えば20μm以上200μm以下が好ましい。位相差フィルム2の厚みの上限値は、150μmがより好ましく、100μmが特に好ましい。一方、位相差フィルム2の厚みの下限値は、30μmがより好ましく、50μmが特に好ましい。位相差フィルム2の厚みが上記上限値を超える場合、製造時のライン速度や生産性が低減し、また当該光学シート1が液晶表示装置に用いられる場合には、液晶表示装置の薄型化の要求に反するおそれがある。逆に、位相差フィルム2の厚みが上記下限値未満の場合、強度、剛性が小さくなり、撓み防止性等が低下するおそれがある。
【0047】
位相差フィルム2のガラス転移温度としては、特に限定されないが、例えば120℃以上180℃以下が好ましい。位相差フィルム2のガラス転移温度の上限値は、160℃がより好ましく、140℃がさらに好ましい。一方、位相差フィルム2のガラス転移温度の下限値は、140℃がより好ましく、160℃がさらに好ましい。位相差フィルム2のガラス転移温度が上記上限値を超える場合、フィルムに延伸するときに延伸むらが起きやすくなり熱成形が困難になるおそれがある。逆に、位相差フィルム2のガラス転移温度が上記下限値未満である場合、耐熱性が劣るおそれがある。
【0048】
位相差フィルム2の製造方法としては、特に限定されないが、透明性高分子を主成分とする組成物を製膜、延伸することにより製造することができる。
【0049】
かかる製膜方法としては、特に限定されないが、例えば溶剤キャスト法、溶融押出法、カレンダー法等の公知の成膜方法が挙げられる。
【0050】
また、ダイから溶液を押出すキャスティング法やドクターナイフ法等の溶剤キャスト法で用いられる溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルム、ジオキソラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の有機溶媒が挙げられる。溶液濃度としては、例えば10質量%以上が好ましく、15質量%以上がさらに好ましい。
【0051】
一方、溶融押出法は溶剤を使用しないため生産性に優れている。従って、位相差フィルム2は、かかる溶融押出法により製造するのが好ましい。
【0052】
溶融押出法による製造方法としては、組成物を溶液ブレンド法又は溶融ブレンド法等により作成しこれを溶融押出しによってフィルムとする方法や、組成物のドライブレンドを直接溶融押出によって成膜する方法等を挙げることができる。
【0053】
溶液ブレンド法としては、例えば透明性高分子と必要に応じて加えられる任意の添加剤とを溶解する溶媒にそれぞれ溶解させ、均質に混合した後、必要に応じてろ過(フィルターろ過等)により異物を除去し、さらに、この透明性高分子に対する不溶性溶媒(又は貧溶媒)中に注入することにより、組成物を回収し、さらに、乾燥させて目的とする組成物を得る方法(溶液ブレンド)等が挙げられる。
【0054】
溶融ブレンド法としては、例えば透明性高分子と必要に応じて加えられる任意の添加剤とを、必要に応じて混合したのち、溶融ブレンド(溶融混練)することにより組成物を得る方法が挙げられる。溶液ブレンド法は熱履歴の少ない組成物を得ることが可能であるが、組成物に対して大量の溶媒を用い、組成物の残存溶媒が問題となる場合がある。溶融ブレンド法は溶媒の問題がなく、経済的にも有利であるため好ましい。
【0055】
透明性高分子を主成分とする組成物のドライブレンドを直接溶融押出しによってフィルムとする方法としては、透明性高分子を主成分とする組成物を、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置等の予備混合手段を用いて充分に混合した後、必要に応じて押出造粒器やブリケッティングマシーン等により造粒を行い、ベント式二軸押出機等の溶融押出機で溶融混練しフラットダイ(Tダイ)から押し出すことにより、溶融成膜を行う方法が挙げられる。また、ドライブレンドを直接溶融押出しによって成膜する方法では、各成分の一部を予備混合した後、残りの成分と独立に溶融押出機に供給してもよい。
【0056】
溶融押出機としては、均一な位相差フィルム2を得るためにノンベント方式の溶融押出機を使用することができる。また、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有する溶融押出機を使用しても良い。ベントには、発生する水分や揮発ガスを効率よく溶融押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また、押出原料中に混入した異物等を除去するためのスクリーンを溶融押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を取り除くことも可能である。このようなスクリーンとしては、金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルター等)等が挙げられる。
【0057】
溶融押出時の樹脂温度は、組成物のガラス転移温度をTgとするとき、Tg以上が好ましく、Tg+50℃〜Tg+250℃がより好ましく、Tg+80℃〜Tg+200℃がさらに好ましい。位相差フィルム2はこれらの成膜と同時に、もしくは連続して延伸を行い、所望の1/4波長フィルムとしてもよい。また、これらの成膜方法で得られたフィルムを別途延伸して1/4波長フィルムとしてもよい。
【0058】
位相差フィルム2は、組成物を製膜した後、一軸延伸されることにより得ることができる。一軸延伸方法としてはテンター法による横一軸延伸、ロール間による縦一軸延伸、ロール間圧延法等の任意の方法を用いることができる。延伸倍率は通常、1.01〜5倍の範囲でフィルムの延伸性や光学特性(例えば、屈折率分布、面内位相差値、厚み方向位相差値、Nz係数)等に応じて実施することができる。この延伸は一段で行っても良く、多段で行っても良い。また、延伸時の温度は、Tg−30℃〜Tg+50℃、より好ましくはTg−30℃〜Tg+30℃である。この温度範囲であれば、ポリマーの分子運動が適度であり、延伸による配向の緩和が起こり難く、配向抑制が容易になり所望する光学特性が得られやすいため好ましい。
【0059】
(ハードコート層3)
ハードコート層3は、第一ハードコート層4と第二ハードコート層5とを有している。ハードコート層3の厚みとしては、特に限定されないが、21μm以上105μm以下が好ましい。ハードコート層3の厚みの上限値は、82μmがより好ましく、63μmがさらに好ましい。一方、ハードコート層3の厚みの下限値は、32μmがより好ましく、43μmがさらに好ましい。ハードコート層3の厚みが上記上限値を超える場合、カール発生防止作用があまり促進されず、また光学シート1の薄型化の要求に反するおそれがある。逆に、ハードコート層3の厚みが上記下限値未満である場合、カールの発生を効果的に防止することができないおそれがある。
【0060】
(第一ハードコート層4)
第一ハードコート層4は、位相差フィルム2の一方の面に形成される。第一ハードコート層4は、樹脂のみから形成されてもよいし、紫外線防止剤等の添加剤が含有されていてもよい。第一ハードコート層4を構成する主成分としては、特に限定されないが、例えば、活性エネルギー線硬化樹脂や反応性珪素化合物から形成された樹脂等が挙げられる。活性エネルギー線硬化樹脂としては、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂等が挙げられる。また、反応性珪素化合物としては、テトラエトキシシラン等が挙げられる。なかでも、第一ハードコート層4の主成分としては、紫外線硬化性樹脂が好ましい。当該光学シート1は、第一ハードコート層4の主成分として紫外線硬化性樹脂を用いることによって、製造容易性を向上させることができる。また、当該光学シート1は、第一ハードコート層4の主成分として紫外線硬化性樹脂を用いることによって、製造時等に位相差フィルム2に熱が加えられることによって生じる熱膨張や熱収縮を防止することができ、寸法安定性を向上させることができる。上記紫外線硬化性樹脂としては、ラジカル重合性樹脂、カチオン重合性樹脂等が挙げられる。
【0061】
上記紫外線硬化性樹脂を形成する紫外線重合性化合物としては、紫外線で重合、架橋等の反応により硬化するモノマー又はオリゴマーが用いられる。
【0062】
上記モノマーとしては、ラジカル重合性モノマーやカチオン重合性モノマーが挙げられる。また、上記オリゴマーとしては、ラジカル重合性オリゴマーやカチオン重合性オリゴマーが挙げられる。
【0063】
上記ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート類、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート類等の各種(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0064】
上記カチオン重合性モノマーとしては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートなどの脂環式エポキシド類、ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどグリシジルエーテル類、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルなどビニルエーテル類、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどオキセタン類等が挙げられる。
【0065】
上記ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレートオリゴマー、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオール系オリゴマー、不飽和ポリエステルオリゴマー等が挙げられる。
【0066】
上記カチオン重合性オリゴマーとしては、例えば、ノボラック系型エポキシ樹脂オリゴマー、芳香族ビニルエーテル系樹脂オリゴマー等が挙げられる。
【0067】
なかでも、第一ハードコート層4に用いられる紫外線硬化性樹脂を形成する紫外線重合性化合物としては、カチオン重合性モノマー又はカチオン重合性オリゴマーが好ましい。当該光学シート1は、第一ハードコート層4の主成分として紫外線硬化性樹脂が用いられ、この紫外線硬化性樹脂を形成する紫外線重合性化合物としてカチオン重合性モノマー又はカチオン重合性オリゴマーが用いられることによって、位相差フィルム2と第一ハードコート層4との接着性を向上させることができると共に、接着力の経時変化を抑制することができる。また、当該光学シート1は、かかる構成によれば、第一ハードコート層4の硬化収縮を防止し、寸法安定性をさらに向上させることができる。
【0068】
なお、上記モノマー及びオリゴマーは、要求される性能等に応じて、2種以上混合して用いることができる。
【0069】
また、第一ハードコート層4に用いられる紫外線硬化性樹脂を形成する紫外線重合性化合物としては、硬化収縮の低いラジカル重合性化合物も好適に用いられる。かかるラジカル重合性化合物としては、例えば、分子量1000〜3000のポリメタクリロキシプロピルシルセスキオキサンが挙げられる。また、かかるラジカル重合性化合物を有する紫外線硬化性樹脂としては、例えば、特開2008−120845号公報に挙げられるラジカル重合性樹脂も用いられる。
【0070】
第一ハードコート層4に含有される重合開始剤としては、紫外線重合性化合物がラジカル重合性のモノマー又はオリゴマーの場合には、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系等の化合物が挙げられる。また、第一ハードコート層4に含有される重合開始剤としては、紫外線重合性化合物がカチオン重合性のモノマー又はオリゴマーの場合には、メタロセン系、芳香族スルホニウム系、芳香族ヨードニウム系等の化合物が挙げられる。
【0071】
上記重合開始剤の含有量としては、特に限定されないが、紫外線硬化性樹脂に対して1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上6質量%以下がより好ましい。重合開始剤の含有量が上記上限値を超える場合、紫外線硬化性樹脂の重合度が低下し、所望の硬度を得られないおそれがある。逆に、重合開始剤の含有量が上記下限値未満である場合、十分に硬化反応が進行しないおそれがある。
【0072】
また、第一ハードコート層4は、塗工性を向上させるために溶剤を含んでいてもよい。かかる溶剤としては、たとえば、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノールなどのアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル化グリコールエーテル類などの有機溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で用いてもよく、また必要に応じて数種類を混合して用いてもよい。なお、かかる溶剤は、第一ハードコート層4の製造工程において、蒸発、乾燥することが好ましい。それゆえ、かかる溶剤の沸点は60℃以上160℃以下であることが好ましい。また、上記溶剤の20℃における飽和蒸気圧は0.1kPa以上20kPa以下であることが好ましい。溶剤の種類及び含有量については、位相差フィルム2の主成分や第一ハードコート層4の主成分、厚み等に応じて適宜調整される。
【0073】
第一ハードコート層4は、紫外線防止剤を含有するとよい。第一ハードコート層4に含有される紫外線防止剤としては、例えば、紫外線吸収剤、紫外線安定剤等が挙げられる。
【0074】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤等を挙げることができ、これらの群より選択される1種又は2種以上のものを用いることができる。なかでも、分散性の点から、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤が好ましい。また、上記紫外線吸収剤としては、分子鎖に紫外線吸収基を有するポリマーも好適に使用される。かかる分子鎖に紫外線吸収基を有するポリマーを用いることで、紫外線吸収剤のブリードアウト等による紫外線吸収機能の劣化を防止することができる。この紫外線吸収基としては、ベンゾトリアゾール基、ベンゾフェノン基、シアノアクリレート基、トリアジン基、サリシレート基、ベンジリデンマロネート基等が挙げられる。なかでも、ベンゾトリアゾール基、ベンゾフェノン基、トリアジン基が特に好ましい。
【0075】
上記紫外線安定剤としては、例えば、紫外線に対する安定性が高いヒンダードアミン系紫外線安定剤が好適に用いられる。第一ハードコート層4が紫外線安定剤を含有することにより、紫外線によって発生するラジカル、活性酸素等が不活性化され、紫外線安定性、耐候性等を向上させることができる。なお、第一ハードコート層4は、紫外線吸収剤及び紫外線安定剤を併用することによれば、紫外線に対する光劣化防止性及び耐候性を格段に向上することができる。
【0076】
第一ハードコート層4の主成分に対する紫外線防止剤の含有量(質量比)としては、特に限定されないが、0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。第一ハードコート層4の主成分に対する紫外線防止剤の含有量の上限は、8質量%がより好ましく、5質量%がさらに好ましい。一方、第一ハードコート層4の主成分に対する紫外線防止剤の含有量の下限は、1質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましい。当該光学シート1は、第一ハードコート層4の主成分に対する紫外線防止剤の含有量が上記上限を超える場合、第一ハードコート層4の耐久性等が低下するおそれがある。逆に、当該光学シート1は、第一ハードコート層4の主成分に対する紫外線防止剤の含有量が上記下限未満である場合、第一ハードコート層4が紫外線防止機能を効果的に奏することができないおそれがある。
【0077】
当該光学シート1は、第一ハードコート層4が主成分として紫外線硬化性樹脂を含み、かつ紫外線防止剤を含有することが好ましい。一般に、第一ハードコート層4の主成分が紫外線硬化性樹脂であり、さらに第一ハードコート層4が紫外線防止剤を含有している場合、第一ハードコート層4の硬化速度が遅くなり、生産性が低下する。しかしながら、当該光学シート1は、第一ハードコート層4の厚みが比較的厚く設定されているため、紫外線防止剤の濃度を小さく抑えても十分な量の紫外線防止剤を第一ハードコート層4に含有させることができる。従って、当該光学シート1は、第一ハードコート層4に十分な量の紫外線防止剤を含有させた場合でも、第一ハードコート層4の硬化速度の低下を抑制し、生産性が低下するのを防止することができる。また、当該光学シート1は、位相差フィルム2の主成分としてポリカーボネート系樹脂が用いられている場合、第一ハードコート層4が紫外線防止剤を含有することによって位相差フィルム2の黄変等を効果的に防止することができる。
【0078】
第一ハードコート層4の鉛筆硬度は、第二ハードコート層5の鉛筆硬度よりも低くなるように形成される。第一ハードコート層4の鉛筆硬度としては、第二ハードコート層5の鉛筆硬度よりも低い限り特に限定されないが、F以上2H以下であることが好ましい。当該光学シート1は、第一ハードコート層4の鉛筆硬度が上記上限値を超える場合、位相差フィルム2及び第一ハードコート層4の硬度差に起因してカールが発生するおそれが高くなる。逆に、当該光学シート1は、第一ハードコート層4の鉛筆硬度が上記下限値未満である場合、所望の硬度を奏することができないおそれがある。
【0079】
第一ハードコート層4の厚みは、第二ハードコート層5の厚みの4倍以上20倍以下とされている。第一ハードコート層4の厚みの上限は、第二ハードコート層5の厚みの18倍がより好ましく、16倍がさらに好ましい。また、第一ハードコート層4の厚みの下限は、第二ハードコート層5の厚みの6倍がより好ましく、8倍がさらに好ましい。第一ハードコート層4の厚みが上記上限を超える場合、カール発生防止作用があまり促進されないおそれがある。逆に、第一ハードコート層4の厚みが上記下限未満である場合、カールの発生を効果的に防止することができないおそれがある。
【0080】
また、第一ハードコート層4の厚みとしては、特に限定されないが、20μm以上100μm以下が好ましい。第一ハードコート層4の厚みの上限値は、80μmがより好ましく、60μmがさらに好ましい。一方、第一ハードコート層4の厚みの下限値は、30μmがより好ましく、40μmがさらに好ましい。第一ハードコート層4の厚みが上記上限値を超える場合、カール発生防止作用があまり促進されず、また当該光学シート1の薄型化の要求に反するおそれがある。逆に、第一ハードコート層4の厚みが上記下限値未満である場合、カールの発生を効果的に防止することができないおそれがある。
【0081】
第一ハードコート層4の引張り弾性率としては、特に限定されないが、1GPa以上4GPa以下であることが好ましい。また、第一ハードコート層4の引張り弾性率の上限値としては、3.5GPaがより好ましく、3GPaがさらに好ましい。一方、第一ハードコート層4の引張り弾性率の下限値としては、1.5GPaがより好ましく、2GPaがさらに好ましい。第一ハードコート層4の引張り弾性率が上記上限値を超える場合、カールの発生を効果的に防止することができないおそれがある。逆に、第一ハードコート層4の引張り弾性率が上記下限値未満である場合、当該光学シート1を所望の硬度に形成することが困難になるおそれがある。なお、本発明における「引張り弾性率」とは、JIS K7113に準拠して測定した値である。
【0082】
また、第一ハードコート層4は、引張り弾性率に厚みの三乗を乗じた値が20kPa・mm以上500kPa・mm以下であることが好ましく、40kPa・mm以上400kPa・mm以下であることがより好ましく、60kPa・mm以上300kPa・mm以下であることがさらに好ましい。第一ハードコート層4の引張り弾性率に厚みの三乗を乗じた値が上記上限値を超える場合、第一ハードコート層4の剛直性が大きくなり過ぎ、当該光学シート1をロール状に保持するのが困難になるおそれがある。逆に、第一ハードコート層4の引張り弾性率に厚みの三乗を乗じた値が上記下限値未満である場合、第一ハードコート層4が変形しやすくなり、位相差フィルム2に加えられる応力が大きくなるおそれがある。
【0083】
第一ハードコート層4の一方の面側の表面の算術平均粗さ(Ra)としては、特に限定されないが、0.5μm以上8μm以下が好ましい。第一ハードコート層4の一方の面側の表面の算術平均粗さ(Ra)の上限値は、7μmがより好ましく、6μmがさらに好ましい。一方、第一ハードコート層4の一方の面側の表面の算術平均粗さ(Ra)の下限値は、1μmがより好ましく、2μmが特に好ましい。第一ハードコート層4の一方の面側の表面の算術平均粗さ(Ra)が上記上限値を超える場合、第一ハードコート層4の一方の面側に形成される第二ハードコート層5の厚みが厚くなるおそれがある。逆に、第一ハードコート層4の一方の面側の表面の算術平均粗さ(Ra)が上記下限値未満である場合、第一ハードコート層4の一方の面側の表面積が十分に増大しないため第二ハードコート層5との接着性が低下するおそれがある。これに対し、第一ハードコート層4の一方の面側の表面の算術平均粗さ(Ra)が上記範囲内である場合、第二ハードコート層5の厚みを好適に保ちつつ、かつ第一ハードコート層4と第二ハードコート層5との接着性を効果的に向上させることができる。
【0084】
また、第一ハードコート層4の一方の面側の表面の十点平均粗さ(Rz)としては、特に限定されないが、0.5μm以上10μm以下が好ましい。第一ハードコート層4の一方の面側の表面の十点平均粗さ(Rz)の上限値は、9μmがより好ましく、8μmがさらに好ましい。一方、第一ハードコート層4の一方の面側の表面の十点平均粗さ(Rz)の下限値は、1μmがより好ましく、2μmがさらに好ましい。第一ハードコート層4の一方の面側の表面の十点平均粗さ(Rz)が上記上限を超える場合、第二ハードコート層5の厚みが厚くなるおそれが高くなる。逆に、第一ハードコート層4の一方の面側の表面の十点平均粗さ(Rz)が上記下限未満の場合、第一ハードコート層4の一方の面側の表面積が十分に増大しないため第二ハードコート層5との接着性が低下するおそれがある。なお、「算術平均粗さ(Ra)」及び「十点平均粗さ(Rz)」は、JIS B0601−2001に準じた値である。
【0085】
第一ハードコート層4の製造方法は、特に限定されないが、位相差フィルム2の一方の面に活性エネルギー線硬化樹脂を塗布し、乾燥させ、活性エネルギー線照射させることにより製造することができる。活性エネルギー線硬化樹脂の塗布方法としては、位相差フィルム2の一方の面に活性エネルギー線硬化樹脂を均一に塗布することができる方法であれば特に限定されず、例えば、スピンコート法、スプレー法、スライドコート法、ディップ法、バーコート法、ロールコーター法、スクリーン印刷法等、種々の方法を挙げることができる。また、第一ハードコート層4の製造に当たっては、必要に応じて、前処理として、アルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下におけるプラズマ処理等の表面改質処理を行ってもよい。また、位相差フィルム2の一方の面にアンダーコート層を積層して、このアンダーコート層を介して第一ハードコート層4を積層してもよい。
【0086】
(第二ハードコート層5)
第二ハードコート層5は、第一ハードコート層4の一方の面に形成される。第二ハードコート層5を形成する材料としては、特に限定されない。第二ハードコート層5は、樹脂のみから形成されてもよいし、その中にシリカ微粒子等の添加剤が含有されてもよい。
【0087】
第二ハードコート層5を形成する樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂や、活性エネルギー線硬化樹脂等が挙げられる。
【0088】
第二ハードコート層5は、例えば、活性エネルギー線硬化樹脂の重合性モノマーや重合性オリゴマーを含む塗布組成物を第一ハードコート層4の一方の面上に塗布し、重合性モノマーや重合性オリゴマーを架橋反応及び/又は重合反応させることにより形成することができる。
【0089】
かかる活性エネルギー線硬化性の重合性モノマーや重合性オリゴマーの官能基としては、紫外線、電子線又は放射線重合性のものが好ましく、紫外線重合性官能基が特に好ましい。紫外線重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等のエチレン性不飽和重合性官能基等を挙げることができる。
【0090】
上記塗布組成物としては、特に限定されないが、アクリルモノマー又はウレタンアクリレートオリゴマーを主成分とするものが好ましい。第二ハードコート層5は、これらのモノマー又はオリゴマーを主成分とする組成物から形成されることで、硬度を高めることができる。なかでも、第二ハードコート層5は、ウレタンアクリレートと(メタ)アクリレートとを共に含有する組成物から形成されることが特に好ましい。
【0091】
第二ハードコート層5を形成するウレタンアクリレート及び(メタ)アクリレートの合計含有量としては、45質量%以上99質量%以下が好ましく、50質量%以上95質量%以下がさらに好ましく、60質量%以上90質量%以下が特に好ましい。第二ハードコート層5を形成するウレタンアクリレート及び(メタ)アクリレートの合計含有量が上記上限を超えると光重合の開始が遅くなり生産性が低下するおそれがある。また、第二ハードコート層5を形成するウレタンアクリレート及び(メタ)アクリレートの合計含有量が上記下限未満であると、柔軟性、耐摩耗性、耐擦傷性等が低下するおそれがある。一方、第二ハードコート層5を形成するウレタンアクリレート及び(メタ)アクリレートの合計含有量が上記範囲内であると、生産性を高めつつ、柔軟性、耐摩耗性、耐擦傷性等を好適に保つことができる。
【0092】
上記ウレタンアクリレートとしては、特に限定されるものではなく、モノマー又はオリゴマーのいずれであってもよい。また、ウレタンアクリレートの官能基数としては、特に限定されるものではなく、単官能であっても多官能であってもよいが、2官能以上6官能以下であることが好ましく、2官能以上3官能以下であることがさらに好ましい。第二ハードコート層5は、ウレタンアクリレートの官能基数を上記範囲内とすることで、硬度と伸び率とのバランスを好適に保つことができる。ウレタンアクリレートは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
ウレタンアクリレートから形成される樹脂のガラス転移温度としては、特に限定されないが、40℃以上100℃以下が好ましく、40℃以上80℃以下がさらに好ましい。ウレタンアクリレートから形成される樹脂のガラス転移温度が上記範囲内であることにより、常温下での第二ハードコート層5の硬度及び耐久性を向上させることができる。
【0094】
第二ハードコート層5を形成するウレタンアクリレートの含有量としては、特に限定されないが、10質量%以上90質量%以下が好ましく、15質量%以上85質量%以下がさらに好ましく、20質量%以上80質量%以下が特に好ましい。第二ハードコート層5を形成するウレタンアクリレートの含有量が上記上限を超えると、耐摩耗性及び塗膜硬度が低下するおそれがある。また、第二ハードコート層5を形成するウレタンアクリレートの含有量が上記下限未満であると、柔軟性が低下し、割れを発生するおそれが高くなる。一方、第二ハードコート層5を形成するウレタンアクリレートの含有量が上記範囲内であると、耐摩耗性及び塗膜硬度を好適に保ちつつ、適度な柔軟性を保持し、割れの発生を抑制することができる。
【0095】
上記(メタ)アクリレートとしては、特に限定されるものではなく、モノマー又はオリゴマーのいずれであってもよい。かかる(メタ)アクリレートの官能基数としては、特に限定されるものではなく、単官能であっても多官能であってもよい。なお、第二ハードコート層5は、3官能以上の(メタ)アクリレートを使用することにより耐久性を向上することができる。また、かかる(メタ)アクリレートは、極性基を有する分子構造でもよいし低極性の分子構造でもよい。(メタ)アクリレートは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
(メタ)アクリレートの極性基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基等を挙げることができる。
【0097】
水酸基を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシル基含有エステル等が挙げられる。
【0098】
カルボキシル基を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸の他、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
【0099】
アミノ基を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えば(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステル等が挙げられる。
【0100】
アミド基を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのアクリルアミド類等が挙げられる。
【0101】
また、低極性の分子構造の(メタ)アクリレートとしては、例えば(メタ)アクリル酸脂環式エステル又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0102】
かかる(メタ)アクリル酸脂環式エステルとしては、例えばシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0103】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールアクリレートが挙げられる。
【0104】
第二ハードコート層5を形成する(メタ)アクリレートの含有量としては、特に限定されないが、5質量%以上85質量%以下が好ましく、10質量%以上80質量%以下がさらに好ましく、15質量%以上75質量%以下が特に好ましい。第二ハードコート層5を形成する(メタ)アクリレートの含有量が上記上限を超えると、成型時に割れが発生するおそれが高くなる。また、第二ハードコート層5を形成する(メタ)アクリレートの含有量が上記下限未満であると、耐摩耗性及び塗膜硬度が低下するおそれがある。一方、第二ハードコート層5を形成する(メタ)アクリレートの含有量が上記範囲内であると、耐摩耗性及び塗膜硬度を好適に保ちつつ、適度な柔軟性を保持し、割れの発生を抑制することができる。
【0105】
上記重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)チタニウム、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。なお、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0106】
第二ハードコート層5の鉛筆硬度としては、3H以上とされている。第二ハードコート層5の鉛筆硬度は、4H以上がより好ましく、5H以上がさらに好ましい。第二ハードコート層5の鉛筆硬度が上記下限値未満である場合、当該光学シート1を所望の硬度に形成するのが困難になるおそれがある。
【0107】
第二ハードコート層5の厚みとしては、1μm以上10μm以下とされている。第二ハードコート層5の厚みの上限値は、8μmがより好ましく、6μmがさらに好ましい。一方、第二ハードコート層5の厚みの下限値は、2μmがより好ましく、3μmがさらに好ましい。第二ハードコート層5の厚みが上記上限値を超える場合、カールの発生を効果的に防止することができず、また当該光学シート1の薄型化の要求に反するおそれがある。逆に、第二ハードコート層5の厚みが上記下限値未満である場合、当該光学シート1を所望の硬度に形成するのが困難になるおそれがある。
【0108】
第二ハードコート層5の引張り弾性率としては、特に限定されないが、1.5GPa以上6GPa以下であることが好ましい。また、第二ハードコート層5の引張り弾性率の上限値は、5.5GPaがより好ましく、5GPaがさらに好ましい。一方、第二ハードコート層5の引張り弾性率の下限値は、2GPaがより好ましく、2.5GPaがさらに好ましい。第二ハードコート層5の引張り弾性率が上記上限を超える場合、カールの発生を効果的に防止するのが困難になるおそれがある。逆に、第二ハードコート層5の引張り弾性率が上記下限値未満である場合、当該光学シート1を所望の硬度に形成するのが困難になるおそれがある。
【0109】
また、第二ハードコート層5の引張り弾性率と第一ハードコート層4の引張り弾性率との比としては、特に限定されないが、1.5以上4以下であることが好ましい。第二ハードコート層5の引張り弾性率と第一ハードコート層4の引張り弾性率との比の上限は、3.5がより好ましく、3がさらに好ましい。一方、第二ハードコート層5の引張り弾性率と第一ハードコート層4の引張り弾性率との比の下限は、1.7がより好ましく2がさらに好ましい。第二ハードコート層5の引張り弾性率と第一ハードコート層4の引張り弾性率との比が上記上限を超える場合、カールの発生を効果的に防止するのが困難になるおそれがある。逆に、第二ハードコート層5の引張り弾性率と第一ハードコート層4の引張り弾性率との比が上記下限未満である場合、当該光学シート1の硬度を効果的に高めることができないおそれがある。
【0110】
第二ハードコート層5の製造方法は、特に限定されないが、第一ハードコート層4と同様の方法によることができる。
【0111】
〈光学シート1〉
当該光学シート1のヘイズ値としては、特に限定されないが、2%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.5%以下がさらに好ましい。当該光学シート1は、ヘイズ値が上記上限値を超える場合、映像の視認性が低下し、表示される映像の鮮明度が低下するおそれがある。
【0112】
当該光学シート1は、空気中でのフィルムのヘイズ値(Ha)と水中でのフィルムのヘイズ値(Hw)の差(Ha−Hw)として得られる外部ヘイズ値が1.0%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。当該光学シート1は、外部ヘイズ値が上記上限を超える場合、表面の凹凸が比較的大きくなり、位相差精度が低下するおそれがある。
【0113】
当該光学シート1の可視光線透過率としては、特に限定されないが、87%以上が好ましく、90%以上がさらに好ましい。当該光学シート1は、可視光線透過率が上記範囲未満である場合、可視光線を十分に透過させることができず、視認性を低下させるおそれがある。
【0114】
当該光学シート1は、位相差フィルム2と第二ハードコート層5との間に、第二ハードコート層5よりも鉛筆硬度の低い第一ハードコート層4が配設されている。それゆえ、当該光学シート1は、位相差フィルム2と第二ハードコート層5との硬度差に起因してカールが発生するのを防止しつつ、第一ハードコート層4と第二ハードコート層5とによって、位相差フィルム2の一方の面側の硬度を効果的に高めることができる。特に、当該光学シート1は、第二ハードコート層5の厚みを上記範囲とし、かつ第二ハードコート層5の厚みに対する第一ハードコート層4の厚みを上記範囲に保つことによって、第二ハードコート層5の鉛筆硬度が比較的高いことに起因してカールが発生するのを第一ハードコート層4により好適に抑制することができる。さらに、当該光学シート1は、第一ハードコート層4が比較的厚く形成されている。それゆえ、当該光学シート1は、第一ハードコート層4によって、カールの発生を防止するための緩衝機能を効果的に果たすことができ、かつ当該光学シート1の一方の面側の硬度を好適に高めることができる。従って、当該光学シート1は、第二ハードコート層5を比較的薄く形成しても、第一ハードコート層4が比較的厚く形成されていることと相俟って、所望の硬度を奏することができる。当該光学シート1は、カールの発生が防止される結果、カールの発生に起因して位相差フィルム2の位相差が変化するのを効果的に防止することができる。
【0115】
当該光学シート1は、ポリカーボネート系樹脂やシクロオレフィン系樹脂のように比較的硬度が低く、カールを発生しやすい樹脂を位相差フィルム2の主成分として用いた場合であっても、カールの発生を防止し、この位相差フィルム2の一方の面側の硬度を効果的に高めることができる。当該光学シート1は、位相差フィルム2がポリカーボネート系樹脂を主成分とすることで耐衝撃性を向上させることができる。当該光学シート1は、位相差フィルム2がシクロオレフィン系樹脂を主成分とすることで、直射日光やディスプレイの発熱等の外力によって生じる位相差の変化を効果的に抑えることができる。また、当該光学シート1は、位相差フィルム2がアクリル系樹脂を主成分とすることで、優れた光学的透明性を有し、光線を極めて良好に透過させることができる。
【0116】
当該光学シート1は、位相差フィルム2が1/4波長フィルムとして形成されているので、タッチパネル等に好適に用いることができる。
【0117】
[第二実施形態]
〈光学シート11〉
図2の光学シート11は、位相差フィルム2と、ハードコート層3と、高屈折率層12とを有している。本実施形態における位相差フィルム2及びハードコート層3は、図1の光学シート1と同様のため、同一番号を付して説明を省略する。
【0118】
(高屈折率層12)
高屈折率層12は、位相差フィルム2の他方の面に形成されている。高屈折率層12の主成分としては、特に限定されるものではないが、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、活性エネルギー線硬化樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。なお、これらの樹脂に、必要に応じて架橋剤、重合開始剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等を加えることができる。
【0119】
また、高屈折率層12は、高い屈折率を有する超微粒子をバインダー樹脂に添加した塗料組成物を塗工することによって形成することもできる。上記超微粒子としては、例えばZnO、TiO、CeO2、SnO2、ITO、Cs0.33WO3、Al23、La23、ZrO2、Y23等の無機材料が挙げられる。一方、上記バインダー樹脂としては、例えば、第二ハードコート層5の形成樹脂と同様のものが挙げられる。高屈折率層12は、これらの無機材料を超微粒子化してバインダー樹脂中に分散して溶剤に稀釈したうえ、ロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ダイコート法、インクジェット法、グラビアコート法等公知の塗布方法によって形成することができる。
【0120】
上記超微粒子の平均粒径としては、特に限定されないが、1nm以上100nm以下が好ましい。上記超微粒子の平均粒径の上限値は、80nmがより好ましく、60nmがさらに好ましい。一方、上記超微粒子の平均粒径の下限値は、5nmがより好ましく、10nmがさらに好ましい。上記超微粒子の平均粒径が上記上限値を超える場合、高屈折率層12の透明性が低下するおそれがある。逆に、上記超微粒子の平均粒径が上記下限値未満の場合、超微粒子の分散性が低下するおそれがある。
【0121】
上記超微粒子のバインダーに対する含有量としては、特に限定されないが、例えば10質量%以上60質量%以下とすることができる。
【0122】
高屈折率層12の屈折率としては、特に限定されないが、1.6以上2.3以下が好ましい。高屈折率層12の屈折率の上限値は、2.25がより好ましく、2.2がさらに好ましい。一方、高屈折率層12の屈折率の下限値は、1.7がより好ましく、1.75がさらに好ましい。高屈折率層12の屈折率が上記範囲内でない場合、当該光学シート11の高屈折率層12をタッチパネル等の透明導電層に積層した場合に、高屈折率層12の屈折率と透明導電層の屈折率との差が大きくなり、透明導電層に形成される電極パターンの視認性が向上されるおそれが高くなる。
【0123】
高屈折率層12の鉛筆硬度としては、特に限定されないが、F以上2H以下が好ましい。高屈折率層12の鉛筆硬度の上限値は、Hがより好ましい。一方、高屈折率層12の鉛筆硬度の下限値は、HBがより好ましい。また、高屈折率層12の厚みとしては、特に限定されないが、50nm以上10μm以下が好ましい。高屈折率層12の厚みの上限値は、7μmがよりこのましく、5μmがさらに好ましい。一方、高屈折率層12の厚みの下限値は、100nmがより好ましく、200nmがさらに好ましい。高屈折率層12の鉛筆硬度及び厚みが上記上限値を超える場合、カールが発生するおそれが高くなると共に、当該光学シート11の薄型化の要求に反するおそれがある。逆に、高屈折率層12の鉛筆硬度及び厚みが上記下限値未満である場合、位相差フィルム2の他方の面側の硬度を好適に高めることができないおそれがある。これに対し、高屈折率層12の鉛筆硬度及び厚みが上記範囲内である場合、位相差フィルム2の他方の面側の硬度を好適に高め、かつカールの発生を防止しすることができると共に、当該光学シート11の薄型化を促進することができる。
【0124】
当該光学シート11は、位相差フィルム2の他方の面側に形成される高屈折率層12を備えているので、位相差フィルム2の他方の面側の屈折率を向上させることができる。なお、当該光学シート11のヘイズ値、外部ヘイズ値及び可視光線透過率については、光学シート1と同様である。
【0125】
[第三実施形態]
〈透明導電性積層体21〉
図3の透明導電性積層体21は、光学シート11と、透明導電層22とを有している。本実施形態における光学シート11は、図2の光学シート11と同様のため、同一番号を付して説明を省略する。
【0126】
(透明導電層22)
透明導電層22は、高屈折率層12の他方の面に積層される。透明導電層22の形成材料としては、透明性と導電性とを有する導電性材料であれば特に限定されないが、無機系金属や有機導電高分子が挙げられる。無機系金属としては、例えば金、銀、銅、白金、ニッケル、酸化錫、酸化インジウム錫(ITO)が挙げられる。有機導電高分子としては、例えばポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリキノキサリン等を用いた有機導電性組成物が挙げられる。なかでも、光学特性、外観及び導電性が良好なITO又はポリチオフェン系材料が好ましい。
【0127】
透明導電層22の形成材料を高屈折率層12上に塗布する方法としては、特に限定されないが、例えばロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ダイコート法、インクジェット法、グラビアコート法等公知の塗布方法によることができる。また、透明導電層22の形成材料を塗布するに当たっては、高屈折率層12との密着性を向上させるため、予め高屈折率層12上にコロナ放電処理等の前処理を施してもよい。
【0128】
透明導電層22の形成材料の硬化方法としては、例えば高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、窒素レーザ、電子線加速装置、放射性元素等の活性エネルギー線源等によることができる。また、活性エネルギー線の照射量としては、紫外線の波長365nmでの積算光量として50mJ/cm以上5000mJ/cm以下であることが好ましい。照射量が上記上限値を超える場合、活性エネルギー線硬化型樹脂が着色するおそれがある。逆に照射量が上記下限値未満である場合、硬化が不十分となるおそれがある。
【0129】
また、透明導電層22は、スパッタリング法等のドライプロセスによって形成することもできる。透明導電層22の形成方法としては、高屈折率層12との密着性や薄型化の観点からスパッタリング法によるのが好ましい。
【0130】
上記スパッタリング法で形成される場合の透明導電層22の厚みとしては、特に限定されないが、50Å以上2000Å以下が好ましい。上記スパッタリング法で形成される場合の透明導電層22の厚みの上限値は、1000Åが好ましく、500Åがさらに好ましい。一方、上記スパッタリング法で形成される場合の透明導電層22の厚みの下限値は、70Åがより好ましく、90Åがさらに好ましい。透明導電層22の厚みが上記範囲内である場合、導電性及び透明性の双方を好適に保つことができる。また、当該透明導電性積層体21は、光学シート11の厚みが比較的厚くなった場合でも、透明導電層22をスパッタリング法で形成し、透明導電層22の厚みを上記範囲内とすることによって、薄型化を促進することができる。
【0131】
当該透明導電性積層体21は、光学シート11を備えているので、光学シート11にカールが発生するのを好適に防止し、カールの発生に起因する位相差フィルム2の位相差の変化を効果的に防ぐことができる。また、当該透明導電性積層体21は、光学シート11を備えているので位相差フィルム2の一方の面側の硬度を効果的に高めることができる。さらに、当該透明導電性積層体21は、高屈折率層12の屈折率と透明導電層22の屈折率とを近づけることによって、例えばタッチパネルに用いられる場合、透明導電層22に形成される電極パターンの視認性を低下させることができる。
【0132】
高屈折率層12の屈折率と、透明導電層22の屈折率との差としては、特に限定されないが、0.6以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.3以下がさらに好ましい。当該透明導電性積層体21は、高屈折率層12の屈折率と、透明導電層22の屈折率との差が上記範囲内であることによって、透明導電層22に形成される電極パターンの視認性をさらに低下させることができる。
【0133】
[第四実施形態]
〈タッチパネル31〉
図4のタッチパネル31は、静電容量方式のタッチパネルとして形成されている。タッチパネル31は、液晶パネル(図示せず)の表面側(視認者側)に配設されている。タッチパネル31は、透明導電性積層体21と、ガラス基板32と、粘着層33とを有している。本実施形態における透明導電性積層体21は、図3の透明導電性積層体21と同様のため、同一番号を付して説明を省略する。また、上記液晶パネルは、液晶層と、この液晶層の表面側及び裏面側に配設される一対の偏光板とを有している。
【0134】
透明導電性積層体21は、光学シート11がタッチパネル31の表面側に位置し、透明導電層22がタッチパネル31の液晶パネル側に位置するように配設されている。透明導電性積層体21は、位相差フィルム2の進相軸方向が液晶層の表面側に配設される偏光板の偏光軸に対して45°の角度で配設されている。透明導電性積層体21は、粘着層33を介してガラス基板32に積層されている。粘着層33としては、特に限定されないが、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等の公知の粘着性樹脂を用いた粘着層が挙げられる。
【0135】
タッチパネル31の画像光透過機能について説明する。液晶層の表面側に配設される偏光板から出射される偏光は、位相差フィルム2を透過すると円偏光に変換される(なお、位相差フィルム2が1/2波長フィルムの場合は偏光が90°旋光される)。これにより、サングラス(偏光サングラス)を通して液晶画面を見た場合、クロスニコルを回避し、画像を視認することができる。
【0136】
当該タッチパネル31は、当該光学シート11を備えているので、当該光学シート11にカールが発生するのを好適に防止し、カールの発生に起因する位相差フィルム2の位相差の変化を効果的に防ぐことができる。また、当該タッチパネル31は、当該光学シート11を備えているので、位相差フィルム2の一方の面側の硬度を効果的に高めることができる。さらに、当該タッチパネル31は、高屈折率層12の屈折率と透明導電層22の屈折率とを近づけることによって、透明導電層22に形成される電極パターンの視認性を低下させることができる。
【0137】
[第五実施形態]
〈タッチパネル41〉
図5のタッチパネル41は、抵抗膜方式のタッチパネルとして形成されている。タッチパネル41は、液晶パネル(図示せず)の表面側に配設されている。タッチパネル41は、透明導電性積層体21と、複数のドットスペーサ42と、柱状スペーサ43と、透明導電膜44と、高屈折率層45と、ガラス基板46とを有している。本実施形態の透明導電性積層体21は、図3の透明導電性積層体21と同様のため、同一番号を付して説明を省略する。また、上記液晶パネルは、液晶層と、この液晶層の表面側及び裏面側に配設される一対の偏光板とを有している。
【0138】
複数のドットスペーサ42は、透明導電膜44の表面に形成されている。ドットスペーサ42の形成材料としては、例えば、エポキシ樹脂やシリコーンなどの絶縁樹脂が挙げられる。柱状スペーサ43は、透明導電層22と透明導電膜44との間に配設されている。柱状スペーサ43の形成材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂等の絶縁樹脂が挙げられる。柱状スペーサ43は、透明導電層22の裏面側辺縁部に固定され、かつ透明導電膜44の表面側辺縁部に固定されている。柱状スペーサ43は、透明導電層22と透明導電膜44とを離間させるように配設されている。透明導電膜44は、高屈折率層45の表面側に形成されている。透明導電膜44の形成材料としては、特に限定されるものではなく、透明導電層22と同様の形成材料が挙げられる。透明導電膜44は、透明導電層22と同様の方法で高屈折率層45の表面に塗布することによって形成することができる。高屈折率層45は、ガラス基板46の表面に積層される。高屈折率層45の形成材料としては、特に限定されるものではなく、高屈折率層12と同様の形成材料が挙げられる。高屈折率層45の積層方法としては、特に限定されないが、例えば、粘着層(図示せず)を介してガラス基板の表面に積層される。かかる粘着層としては、特に限定されないが、上記粘着層と同様の粘着層が挙げられる。
【0139】
タッチパネル41の画像光透過機能について説明する。液晶層の表面側に配設される偏光板から出射される偏光は、位相差フィルム2を透過すると円偏光に変換される。これにより、サングラス(偏光サングラス)を通して液晶画面を見た場合、クロスニコルを回避し、画像を視認することができる。
【0140】
当該タッチパネル41は、当該光学シート11を備えているので、当該光学シート11にカールが発生するのを好適に防止し、カールの発生に起因する位相差フィルム2の位相差の変化を効果的に防ぐことができる。また、当該タッチパネル41は、当該光学シート11を備えているので、位相差フィルム2の一方の面側の硬度を効果的に高めることができる。さらに、当該タッチパネル41は、高屈折率層12の屈折率と透明導電層22の屈折率とを近づけることによって、透明導電層22に形成される電極パターンの視認性を低下させることができる。
【0141】
[他の実施形態]
なお、本発明の光学シート、この光学シートを備える透明導電性積層体、及びこの透明導電性積層体を備えるタッチパネルは、上記態様の他、種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。例えば、当該光学シートは、他方の面側に粘着層が形成されていてもよい。かかる粘着層としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等の公知の粘着性樹脂を用いた粘着層が挙げられる。粘着層は、粘着剤溶液を位相差フィルム又は高屈折率層の他方の面側に塗布して乾燥させることによって形成することができる。また、粘着層は、粘着剤溶液を予めセパレータの片面に塗布して乾燥させておいたうえ、位相差フィルム又は高屈折率層と貼り合わせることによって形成することもできる。
【0142】
また、当該光学シートは、第二ハードコート層中に、ZnO、TiO、CeO2、SnO2、ITO、Cs0.33WO3、Al23、La23、ZrO2、Y23等の超微粒子を分散含有させて屈折率を向上させてもよい。当該光学シートは、かかる構成によれば、第二ハードコート層の屈折率と透明導電層の屈折率とを近づけることができる。従って、当該光学シートは、透明導電層を第二ハードコート層上に配設することで、透明導電層に形成される電極パターンの視認性を低下させることができる。
【0143】
当該光学シートは、位相差フィルムが必ずしも1/4波長フィルムとして形成されている必要はなく、1/2波長フィルム、3/4波長フィルム等として形成されてもよい。1/4波長フィルム、3/4波長フィルムは円偏光性を利用するが、1/2波長フィルムは、偏光の90°旋光性を利用する。偏光サングラスをかけてクロスニコルになる場合、1/2波長フィルムで90°旋光させて平行ニコルとする。当該光学シートは、第二ハードコート層上に他の層(例えば、UV吸収層、帯電防止層及び反射防止層等)が積層されてもよい。当該光学シートは、位相差フィルムと第一ハードコート層との間、第一ハードコート層と第二ハードコート層との間、又は位相差フィルムと高屈折率層との間に中間層を備えていてもよい。当該光学シートは、位相差フィルムの他方の面に側にも第一ハードコート層及び第二ハードコート層がこの順で形成されていてもよい。当該光学シートは、静電容量方式、抵抗膜方式、電磁誘導方式等、種々のタッチパネルに使用することができる。当該光学シートは、立体映像表示装置、その他種々の液晶表示モジュールに使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0144】
以上のように、本発明の光学シート及びこの光学シートを備える透明導電性積層体、並びにこの透明導電性積層体を備えるタッチパネルは、当該光学シートの硬度を向上させることができ、かつカールの発生を効果的に防止して位相差の変化を防ぐことができ、タッチパネルその他種々の液晶表示モジュールに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0145】
1 光学シート
2 位相差フィルム
3 ハードコート層
4 第一ハードコート層
5 第二ハードコート層
11 光学シート
12 高屈折率層
21 透明導電性積層体
22 透明導電層
31 タッチパネル
32 ガラス基板
33 粘着層
41 タッチパネル
42 ドットスペーサ
43 柱状スペーサ
44 透明導電膜
45 高屈折率層
46 ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明性高分子を主成分として含む位相差フィルムと、
この位相差フィルムの一方の面側に形成される第一ハードコート層と、
この第一ハードコート層の一方の面側に形成される第二ハードコート層と
を備え、
上記第二ハードコート層の鉛筆硬度が3H以上であり、
上記第一ハードコート層の鉛筆硬度が第二ハードコート層の鉛筆硬度よりも低く、
上記第二ハードコート層の厚みが1μm以上10μm以下であり、
上記第一ハードコート層の厚みが第二ハードコート層の厚みの4倍以上20倍以下である光学シート。
【請求項2】
上記第一ハードコート層の鉛筆硬度がF以上2H以下である請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
上記第一ハードコート層の厚みが20μm以上100μm以下である請求項1又は請求項2に記載の光学シート。
【請求項4】
上記透明性高分子がポリカーボネート系樹脂、シクロオレフィン系樹脂又はアクリル系樹脂である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の光学シート。
【請求項5】
上記第一ハードコート層の主成分が紫外線硬化性樹脂である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項6】
上記紫外線硬化性樹脂がカチオン重合性樹脂である請求項5に記載の光学シート。
【請求項7】
上記第一ハードコート層が紫外線防止剤を含有する請求項5又は請求項6に記載の光学シート。
【請求項8】
上記位相差フィルムが1/4波長フィルム又は1/2波長フィルムである請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項9】
上記位相差フィルムの他方の面側に形成される高屈折率層を備える請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項10】
上記高屈折率層の屈折率が1.6以上2.3以下である請求項9に記載の光学シート。
【請求項11】
請求項10に記載の光学シートと、
この光学シートの高屈折率層の他方の面に積層される透明導電層と
を備える透明導電性積層体。
【請求項12】
上記高屈折率層の屈折率と、上記透明導電層の屈折率との差が0.6以下である請求項11に記載の透明導電性積層体。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載の透明導電性積層体を備えるタッチパネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−109219(P2013−109219A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255124(P2011−255124)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【Fターム(参考)】