説明

光学シート、面光源装置及び液晶表示装置

【課題】優れた復元性を有し、かつ、傷付き難い凹凸形状を備えた光学シート、及びそれを備える面光源装置及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】透明基材と、当該透明基材の一面側に設けられ、当該透明基材とは反対側の面に複数の単位凹凸構造を備える凹凸形状を有する光学機能発現部とを備える光学シートであって、当該光学機能発現部が、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物からなり、該光学機能発現部の表面を原子間力顕微鏡で観察した場合に平均直径0.1〜2μm及び平均高さ1nm〜100nmの隆起状構造を呈していることを特徴とする、光学シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置用バックライトのプリズムシート等として用いられる光学シート、並びに当該光学シートを備える面光源装置及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置等のディスプレイにおいては、光を屈折、回折、干渉又は分散等させることにより、集光、収束、拡散、偏光又は反射等させる機能を有する光学シートが用いられている。
このような光学シートとしては、例えば、液晶表示装置等のバックライトに用いられるプリズムシート、立体写真や投影スクリーン等に用いられるレンチキュラーレンズシート、オーバーヘッドプロジェクターのコンデンサーレンズ等に用いられるフレネルレンズシート及びカラーフィルタ等に用いられる回折格子等を挙げることができる。
【0003】
上記光学シートは、通常、基材と、当該基材上に、所定の屈折率を備え表面に単位プリズム又は単位レンズ等の単位凹凸構造を複数配列した微細な凹凸形状を有する。このような光学シートは、その凹凸形状において光を屈折若しくは反射等の幾何光学的作用によって、又は回折等の波動光学的作用によって変調させることによって、所望の機能を発現するものであり、用途に応じてその凹凸形状を構成する樹脂材料及び単位凹凸構造の形状が決定される。
【0004】
上記光学部材のうち、例えば、液晶表示装置等のバックライトとして使用されるプリズムシート(光学シート)は、一般にそのプリズムシートのプリズム部(凹凸形状)の上に、さらに他の光学シート及び拡散板又は拡散フィルムが積層されて用いられる。このような積層体を製造又は運搬する際に、衝撃又は振動によって、プリズムシートのプリズム部が磨耗することがある。
【0005】
また、上記プリズムシートは、エッジライト型の面光源装置や直下型の面光源装置のいずれにおいても当該装置の液晶セル(液晶化合物をガラス等で封入したモジュール)側の出光面に配置されている。上記光学シートが備えるプリズム部と、面光源装置が有する導光板、(光)拡散フィルム又は液晶セル等の隣接する他部材とが接触した場合、工程内等で加わる熱と圧力とにより単位プリズムの頂部が潰れてしまうといういわゆる「山潰れ」の問題や、プリズム部と導光板とが接触して単位プリズムの頂部に欠けが生じてしまうという問題がある。
なお、エッジライト型の面光源装置は、通常、アクリル樹脂等の透明な板状導光体の一側端面から光源光を入射し、液晶セル側の出光面から光を出射するように構成された装置である。一方、直下型の面光源装置は、光源を挟んだ態様で液晶セルと反射板とを配置してなり、通常、光源からの光を反射板によって液晶セル側に反射させるように構成された装置である。
【0006】
こうした単位プリズムの頂部の変形及び欠けの問題は、表示装置の表示面に白点(白模様)等の表示ムラを生じさせて表示性能を低下させる一因となる。特に、凹凸形状がプリズムの様な尖った凸部を持つ場合に、上述した凹凸形状の磨耗、欠け又は山潰れの発生が顕著となる。その他の凹凸形状の光学シートの場合も、同様の傾向がある。
【0007】
上記問題点を改善するために、従来、プリズム部に用いられる材料としては、硬度が高く、形成された単位プリズムの形状が変形しにくいものが用いられてきた。例えば、特許文献1に記載の透明基材上にUV硬化(メタ)アクリレート系樹脂からなる単位プリズムが形成されたLCD背面光源用集光材料は、LCD中に組み込む作業時のプリズム部の摩擦による傷つきの防止を課題とし、樹脂配合を工夫して特定試験法による落砂摩耗前後の曇り度(Haze)が60%以下で、耐傷つき性を有する硬いプリズム部を実現している。
【0008】
しかしながら、このような硬いプリズム部は、上述した凹凸形状の磨耗、欠け又は山潰れに対してある程度強度が高められているが、限度を超える外圧を受けるとやはり摩耗、欠け、山潰れが生じてしまう。
【0009】
更に、近年、量産性向上のために、帯状基材シートを連続走行させながら円筒状の型を用いて輪転式2P法でロールにプリズムシートを巻き取って光学シートを製造するようになり、従来のような硬度を高めたプリズムを有する光学シートを巻き取る時及び巻いた状態で保管した時に、プリズムシート表裏の押圧によりプリズム頂部が潰れる問題がでてきた。
【0010】
特許文献2に記載のレンズ部(プリズム部)は、特定の物性を有することにより、外的要因によって上記プリズム部の表面に付された単位プリズムが変形した場合でも、これを元の形状に復元させることができる復元性が付与されており、所望の形状を維持することが可能となっている。
しかしながら、上記プリズム部の有する復元性は、当該プリズム部に加わる外力による変形の問題を解消するのには十分なものではなかった。また、復元性を付与した分、プリズム部の欠けが生じ易くなり、復元性と耐傷付き性とが両立し無いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表平11−500072号公報
【特許文献2】特開2009−37204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、優れた復元性を有し、かつ、傷付き難い凹凸形状を備えた光学シート、並びに当該光学シートを備える面光源装置及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述したように、光学シートの凹凸形状には、耐傷付き性と、応力が加わると一時的に変形し、応力から開放されると弾性復元力により元の形状に復元することができる復元性とが求められているが、硬度と復元率は一方を強化すると他方が弱まるトレードオフの関係にあるため、硬度と復元率という指標だけでバランスをとることには限界があった。
本発明者らが鋭意検討した結果、ある特定の硬化状態を有する(メタ)アクリル系樹脂の硬化物が耐傷付き性と復元性を高次元で達成できることを見出した。
【0014】
本発明に係る光学シートは、透明基材と、当該透明基材の一面側に設けられ、当該透明基材とは反対側の面に複数の単位凹凸構造を備える凹凸形状を有する光学機能発現部とを備える光学シートであって、
当該光学機能発現部が、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、
該光学機能発現部の表面を原子間力顕微鏡で観察した場合に平均直径0.1〜2μm及び平均高さ1nm〜100nmの隆起状構造を呈していることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る光学シートは、上記光学機能発現部の表面を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した場合に平均直径0.1〜2μm及び平均高さ1nm〜100nmの隆起状構造を呈している硬化状態を有するとしたことによって、当該凹凸形状が優れた復元性を有するため単位凹凸構造の山潰れが起こり難く、かつ、傷付き難い。
【0016】
前記アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂は、カプロラクトン変性ウレタン(メタ)アクリレートの繰り返し単位からなる重合構造のセグメントを含むことが好ましい。
【0017】
前記アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂は、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、ビフェニリロキシエチル(メタ)アクリレート、EO変性ビフェニリロキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートからなる群より選択される繰り返し単位からなる重合構造のセグメントを少なくとも一種、更に含んでいてもよい。
【0018】
本発明に係る光学シートにおける前記隆起状構造の個数は5〜100個/400μmであることが好ましい。このような個数範囲であると、単位凹凸構造の復元性と耐傷つき性とのバランスが好適になる。
【0019】
本発明に係る光学シートにおいて、前記光学機能発現部が単位凹凸構造としてプリズム及び/又はマイクロレンズを含むことが好ましい。
【0020】
本発明に係る面光源装置は、面光源の光放出面側に上記光学シートを備えることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る液晶表示装置は、液晶セルの一面側に上記光学シートを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る光学シートは、上記光学機能発現部の表面を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した場合に平均直径0.1〜2μm及び平均高さ1nm〜100nmの隆起状構造を呈している硬化状態である場合に、当該凹凸形状が優れた復元性を有し、かつ、傷付き難い。
当該光学シートを備える面光源装置は、光学シートの光学機能発現部が導光板等の部材と接触しても、単位凹凸構造の頂部に欠け、山潰れ及び変形が生じ難い。
当該光学シートを備える液晶表示装置は、光学シートの単位凹凸構造の頂部に欠け、山潰れ及び変形が生じ難いため、白点(白模様)等の表示ムラを生じ難く、外観に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明に係る光学シートの一例を示した模式的な斜視図である。
【図2】図2は、本発明に係る光学シートの層構成の一例を示した模式的な断面図である。
【図3】図3は、本発明に係る光学シートの層構成の他の一例を示した模式的な断面図である。
【図4】図4は、隆起状構造を有する光学機能発現部の表面の模式的な断面図である。
【図5】図5は、本発明に係る光学シートを備える面光源装置の一例を示した模式的な斜視図である。
【図6】図6は、本発明に係る面光源装置を備えた液晶表示装置の一例を示した模式的な斜視図である。
【図7】図7は、本発明の実施例における復元性及び耐傷付き性の評価方法を模式的に示した概略図である。
【図8】図8は、本発明の実施例における復元性及び耐傷付き性の評価基準の一例を模式的に示した概略図である。
【図9】図9は、本発明の実施例における積算照射量に対する隆起状構造の個数、反応率、復元率及び硬度をプロットしたグラフである。
【図10】図10は、本発明の比較例における積算照射量に対する隆起状構造の個数、反応率、復元率及び硬度をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0025】
本発明において、(メタ)アクリル樹脂は、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を表し、(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートを表す。
本発明において樹脂とは、モノマーやオリゴマーの他、ポリマーを含む概念である。
なお、フィルムとシートのJIS−K6900での定義では、シートとは薄く一般にその厚さが長さと幅の割りには小さい平らな製品をいい、フィルムとは長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通例、ロールの形で供給されるものをいう。したがって、シートの中でも厚さの特に薄いものがフィルムであるといえるが、シートとフィルムの境界は定かではなく、明確に区別しにくいので、本発明では、厚みの厚いもの及び薄いものの両方の意味を含めて、「シート」と定義する。
本発明において、分子量とは、分子量分布を有する場合には、THF溶剤におけるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である重量平均分子量を意味し、分子量分布を有しない場合には、化合物そのものの分子量を意味する。
本発明において、固形分とは、組成物から溶剤を除いた部分を意味する。
【0026】
(光学シート)
本発明に係る光学シートは、透明基材と、当該透明基材の一面側に設けられ、当該透明基材とは反対側の面に複数の単位凹凸構造を備える凹凸形状を有する光学機能発現部とを備える光学シートであって、
当該光学機能発現部が、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、
該光学機能発現部の表面を原子間力顕微鏡で観察した場合に平均直径0.1〜2μm及び平均高さ1nm〜100nmの隆起状構造を呈していることを特徴とする。
【0027】
本発明に係る光学シートは、上記光学機能発現部の表面を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した場合に平均直径0.1〜2μm及び平均高さ1nm〜100nmの隆起状構造を呈している硬化状態である場合に、当該凹凸形状は優れた復元性と耐傷付き性を両立できる硬化状態である。そのため、本発明によれば、光学シートを装置に組み込む作業時や、2P法で製造する時に光学シートを巻き取った後で巻き出した時に応力が加わっても、凹凸形状が損なわれ難く、所望の形状を維持することが可能で、且つ、耐傷付き性にも優れた光学シートを提供することができる。
上記光学機能発現部の表面を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した場合に平均直径0.1〜2μm及び平均高さ1nm〜100nmの隆起状構造を呈していない場合、凹凸形状の復元性及び/又は耐傷付き性が不足している、或いは、両者のバランスがとれておらず、光学シートを装置に組み込む作業時や、2P法で製造する時に光学シートを巻き取った後で巻き出した時に応力が加わると、変形、欠け又は山潰れの発生を十分に抑えることができない。そのような光学シートを製品として使用すると、歩留まりが悪くなる。
【0028】
光学シートは、その作用機構から、光を凹凸形状における屈折又は反射等の幾何光学的作用によって変調させて、集光、拡散、屈折又は反射等の所望の機能を発現するプリズムシート又はレンズシート等と、光を凹凸形状における回折等の波動光学的作用によって変調させて、回折又は分光等の所望の機能を発現する回折格子又はホログラム等に大別される。
本発明に係る光学シートの層構成について図面を用いて説明するが、以下においてはプリズムシートを例に説明する。尚、図1以下の図面では、説明の便宜上、縦横の寸法比及び各層間の寸法比は適宜、実寸とは変えて誇張して図示してある。
【0029】
図1は、本発明に係る光学シートの一例を示した模式的な斜視図であり、図2は、本発明に係る光学シートの層構成の一例を示した模式的な断面図である。光学シート1は、透明基材10上にアクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる光学機能発現部20が設けられており、光学機能発現部20は透明基材とは反対側の面に、図1及び2においては複数の単位凹凸構造30としてのプリズム構造を備えるプリズム形状を備える。
【0030】
図3は、本発明に係る光学シートの層構成の他の一例を示した模式的な断面図である。透明基材10の一面側には光学機能発現部20が設けられ、透明基材10の光学機能発現部20が設けられた面とは反対側の面には光拡散層40が設けられている。
【0031】
以下、本発明に係る光学シートの必須の構成要素である透明基材及び光学機能発現部並びに必要に応じて適宜設けることができる光拡散層について説明する。
【0032】
(透明基材)
透明基材10は、光学シート1の基材であり、特に限定されず、従来公知の光学シートに用いられている透明基材を用いることができる。透明基材は、所望の透明性、機械的強度等の要求適性を勘案の上、材料及び厚さを適宜選択すればよい。透明基材は、樹脂基材であっても良いし、硝子基材であっても良い。
透明フィルムの樹脂材料としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリエステル樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)樹脂及びシクロオレフィンコポリマー(COC)樹脂等を例示することができる。
【0033】
透明基材は、長尺形状であっても良いし、所定の大きさからなる枚葉形状であっても良いが、光学シートを2P法で製造する場合は、長尺形状の透明基材を用いる。透明基材の厚さは、通常は50〜500μmが好ましいが、これに限定されない。
透明基材の光透過率としては、ディスプレイの前面設置用としては、100%が理想であり、透過率85%以上であることが好ましい。
透明基材は、必要に応じて、その表面に従来公知のマット処理(光拡散性の微小凹凸の形成)、帯電防止処理又は反射防止処理等が施されたものであっても良い。また、透明樹脂と基材の間にマット処理、帯電防止処理又は反射防止処理等が施されたものであっても良いし、これらを自由に組合せて用いても良い。
【0034】
(光学機能発現部)
光学機能発現部20は、少なくともアクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、透明基材10とは反対側の面に複数の単位凹凸構造30を備える凹凸形状を有する。該光学機能発現部の表面を原子間力顕微鏡(AFM)で観察した場合に平均直径0.1〜2μm及び平均高さ1nm〜100nmの隆起状構造を呈している。このように、光学機能発現部が上記隆起状構造を呈している硬化状態であると、光学機能発現部の凹凸形状は優れた復元性と耐傷付き性を両立できる硬化状態であり、そのため、本発明の光学シートを装置に組み込む作業時や、2P法で製造する場合に本発明の光学シートを巻き取った後で巻き出した時に応力が加わっても、一時的に変形するだけで光学機能発現部の凹凸形状が損なわれ難く、応力から解放されると凹凸形状が回復し、所望の形状を維持することが可能で、且つ、耐傷付き性にも優れる。
【0035】
図4を用いて本発明における隆起状構造を説明する。図4は隆起状構造2を有する光学機能発現部20の表面の模式的な断面図を示している。本発明においてAFMで観察される隆起状構造とは、光学機能発現部20の表面から上に盛り上がっている非常に平たいドーム状乃至台形状の扁平な隆起を意味する。隆起状構造のサイズは、平均直径0.1〜2μm、好ましくは0.1〜1μm、更に好ましくは0.1〜0.8μmで、平均高さ1nm〜100nm、好ましくは1nm〜30nmである。上記上限値を越えると、所望の光の反射の発現を妨げてしまう可能性があり、上記下限値を下回ると、耐傷付き性を発現するに充分な復元性が得られない。
上記サイズから分かるように、本発明の隆起状構造は、非常に微細で直径に比べて高さの値が低く、巨視的にみるとほぼ平坦に見える。また、平面上から見た時には直感的に粒子状構造とも見える。
上記観察に用いられる原子間力顕微鏡(AFM)としては、Bruker AXS製のNanoscope(商品名)などが例示できる。平均直径は、ラインプロファイルより一つ一つの粒子直径を直接読み取り、平均をとることにより求めることができる。平均高さは、粒子直径のラインプロファイルから、高さの最大値を高さの最小値で引いた値を一つ一つの粒子について読み取り、平均をとることにより求めることができる。
【0036】
このような隆起状構造は、光学機能発現部を構成するアクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化反応が不均一であったために生じたドメイン構造(ポリマーアロイ構造)と推察される。本発明の光学機能発現部において、その表面だけでなく内部にもドメインがあることが容易に想像でき、光学機能発現部中の楕円体や球体の形状のドメインの一部が光学機能発現部の表面に出現したものが、本発明においてAFMで観察される隆起状構造であると推察される。また、本発明の光学機能発現部、すなわち活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物は、比較的柔らかいマトリックス中に比較的硬いドメインが点在している状態であり、本発明における耐傷付き性と復元性の好適なバランスを発現していると推察される。上記隆起状構造は非常に微細であり、拡散性など光学特性には寄与しない。
【0037】
隆起状構造の個数とは、凹凸を展開した単位面積(凹凸の表面積における20μm×20μm)あたりの隆起状構造の個数を意味し、隆起状構造の個数は5〜100個/400μmであることが好ましく、5〜50個/400μmであることがより好ましい。上記下限値を下回ると、硬度も復元性も十分に発現されず、上記上限値を越えると、硬度が高くなりすぎて復元性が乏しくなってしまう。粒子の数は、活性エネルギー線の積算照射量に比例する傾向があり、積算照射量が多くなるに従って粒子個数が増加する。
尚、積算照射量とは、照度に照射時間を乗じた値(mJ/cm)である。
【0038】
本発明に係る光学シートでは、当該単位凹凸構造30の頂部における1μm深さでの硬度(N/mm)は、1〜100、好ましくは1.5〜5である。硬度は、ISO14577−1に準拠して、(株)フィッシャー・インストルメンツ製の微小硬さ試験機(商品名PICODENTOR HM500、圧子はダイヤモンド製の四角錐型、対面角90°)を用いて、押し込み荷重を変化させて押し込み深さを測定し、最大押し込み時の荷重(N)を圧子と試料の接触面積(mm)で除した値をいう。
硬度が上記下限を下回る場合には、凹凸形状が外圧に対して弱く、上記上限を越える場合には、凹凸形状の外圧に対して強靭性を有するが復元性が乏しくなってしまう。
尚、上記硬度の測定は、積算照射量100mJ/cm未満の範囲においては、樹脂組成物が十分に硬化されていないため、凹凸形状が不安定で成立しない。
【0039】
本発明に係る光学シートでは、当該単位凹凸構造30の頂部における復元率(%)は、20〜100%である。復元率は、ISO14577−1に準拠して、(株)フィッシャー・インストルメンツ製の微小硬さ試験機(商品名PICODENTOR HM500、圧子はダイヤモンド製の四角錐型、対面角90°)を用いて、押し込み荷重を変化させて押し込み深さを測定し、最大押し込み深さに達したところで除荷した後の押し込み深さを測定し、最大押し込み深さと除荷した後の押し込み深さの差(弾性変形)を、最大押し込み深さ(全体変形)で除した値をいう。
本発明に係る光学シートは、上記範囲の復元率を有する場合に、他部材との接触やシートの巻きによる応力が加わると一時的に変形し、応力から開放されると、弾性復元力により元の形状に復元し、永久歪み(変形)が生じることは無い。復元率が上記下限を下回る場合には、凹凸形状の外圧に対する復元性が乏しく、凹凸形状が傷つき易い、又は変形したままになってしまう。
本発明の凹凸形状の復元率は、積算照射量100mJ/cm以上の範囲においては積算照射量が大きくなるに従い、復元率は徐々に低くなる傾向がある。上記下限を下回る場合には、樹脂組成物が十分に硬化されていないため、凹凸形状が不安定で上記復元率の測定が成立しない。
【0040】
次に、本発明に係る光学機能発現部の複数の単位凹凸構造を備える凹凸形状を説明する。本発明において単位凹凸構造を備える凹凸形状は、要求される性能に応じて適宜選択又は設定すれば良いが、具体的には光学シートを搭載する装置によって選択され、プリズム、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ等のレンズ、回折格子等を意味する。
例えば、プリズムシートとしての光学機能発現部の凹凸形状の具体的な形状(構造)としては、三角柱(図2参照)、四角柱、五角柱等の角柱状の単位プリズム(単位凹凸構造)をその稜線方向(延在方向)と直交する方向に多数配列したもの(プリズム線状配列)が挙げられる。上述したような角柱状の単位プリズムの場合、光学機能発現部の厚さTは、その稜線方向で均一であっても良いし、均一でなくとも良い。例えば、周縁部に近いほど高く、中央部に近いほど低いというように稜線方向で異なっていても良い。
【0041】
この他、プリズムシートとしての光学機能発現部の凹凸形状の具体的な形状の一例としては、円錐、円錐台又は三角、四角、五角若しくは六角等の角錐又は角錐台等の単位凹凸構造を透明基材表面に二次元的に複数配列したものが挙げられる。
透明基材の平面の法線方向(以下、単に「厚さ方向」という。)における単位プリズムの断面の形状は図2のように二等辺三角形としても良いし、図示しないが不等辺三角形としても良い。
厚さ方向の断面における三角形の単位プリズムの頂角の値は、図2のように90°でも良いし、それ以外の角度であっても良く、40〜120°の範囲で調節することができる。
【0042】
単位プリズムの頂部は図1及び図2のような尖った形状でも良いし、図示しないが厚さ方向の断面の頂部近傍が曲率半径1〜10μmの円(すなわち鈍い頂点)でも良い。厚さ方向断面の単位プリズムの頂部がこのような鈍い頂点であれば、力学的及び幾何学的に頂部に集中する応力を分散させ、頂部の変形、欠け又は山潰れを低減乃至抑制し得る。
【0043】
レンズシートとしての光学機能発現部の凹凸形状の具体的な形状の一例としては、半円柱又は半楕円柱等の曲面柱状の単位レンズ(単位凹凸構造)をその稜線方向(延在方向)と直交する方向に多数配列したもの(レンチキュラーレンズ)、半球又は回転楕円体の半裁形状等の曲面状の単位レンズ(単位凹凸構造)を透明基材表面に二次元的に複数配列したもの(モスアイレンズ)及び環状又は線状のフレネルレンズ等が挙げられる。
【0044】
光学機能発現部の厚さT(図2に示すように凹凸形状の凸状頂部から透明基材側の面までの長さ(稜線方向で厚さが異なる場合は最大となる箇所の厚さ))は、要求される性能に応じて適宜調節すれば良く、通常、20〜1000μmである。
【0045】
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物)
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(以下、単に「組成物」ということがある。)は、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含み、活性エネルギー線の照射により硬化して光学機能発現部を形成する。本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を組成物の全固形分質量に対して少なくとも50質量%含むものとする。
なお、本発明において「活性エネルギー線」とは、可視光線並びに紫外線及びX線等の非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線及びα線のような粒子線を総称する、活性エネルギー線硬化性基を有する分子に架橋反応乃至重合反応を生じせしめるに足るエネルギー量子を持った放射線が含まれる。活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。
【0046】
前記アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂は、従来公知の光学シート形成用の(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するものを用いることができ、低分子のモノマーだけでなく、種々の繰り返し単位からなる重合構造のセグメントを含んでいてもよい。該セグメントとしては、オリゴマー、プレポリマー、ポリマーが含まれる。また、セグメントは、硬化する前の樹脂組成物中において独立した化合物であってもよいし、重合物又は架橋物中の一部をなす構造であってもよい。以下に、セグメントについて、主に独立した化合物を代表例として説明するが、例示された化合物から誘導され、重合物又は架橋物中に導入される構造もまたセグメントに該当する。
上記セグメントとして、単官能、すなわち活性エネルギー線硬化性基を1個有する(メタ)アクリル系化合物の繰り返し単位からなる重合構造のセグメント、及び、多官能、すなわち活性エネルギー線硬化性基を2個有する(メタ)アクリル系化合物の繰り返し単位からなる重合構造のセグメントを含むことができる。
【0047】
本発明においては、カプロラクトン変性ウレタン(メタ)アクリレートの繰り返し単位からなる重合構造のセグメントを含むことが好ましい。このカプロラクトン変性ウレタン(メタ)アクリレートの繰り返し単位は、本発明において、不均一な重合反応による隆起状構造の発生に寄与しており、また、ソフトセグメントとして復元性の発現にも寄与しているものと推察される。
カプロラクトン変性ウレタン(メタ)アクリレートの繰り返し単位としては、一般式(I)を例示することができる。
【0048】
【化1】

【0049】
(式中、RはH又はCH、mは2〜6、nは2〜6である。)
【0050】
一般式(I)において、Rは、水素原子又はメチル基、mは2〜6、nは2〜6である。
【0051】
一般式(I)で表わされるセグメントの含有量は、上記特定の復元性及び耐傷付き性を十分に発現する観点から、前記組成物の全固形分質量に対して、5〜30質量%であることが好ましい。
【0052】
一般式(I)で表わされるセグメントは、単一の構造及び重量平均分子量のものを用いても良いし、構造及び重量平均分子量が異なるものを2種以上組み合わせて用いても良い。
【0053】
上記カプロラクトン変性ウレタン(メタ)アクリレートの繰り返し単位からなる重合構造のセグメントの他に、単官能のセグメントとしては、ハロゲン原子、硫黄原子、酸素原子若しくは窒素原子等のヘテロ原子を含む鎖状の脂肪族又は環状の脂環式若しくは芳香族の(メタ)アクリル系化合物のセグメントを含むことができ、例えば、ビニルモノマー、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、(メタ)アクリルアミド誘導体、ウレタン(メタ)アクリレート、フェニル基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でも、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、ビフェニリロキシエチル(メタ)アクリレート、EO変性ビフェニリロキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。
上記単官能のセグメントは1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0054】
上記カプロラクトン変性ウレタン(メタ)アクリレートの繰り返し単位からなる重合構造のセグメント以外の単官能のセグメントの含有量は、前記組成物の全固形分質量に対して、20〜65質量%であることが好ましい。
【0055】
また、多官能のセグメントとしては、ハロゲン原子、硫黄原子、酸素原子若しくは窒素原子等のヘテロ原子を含む鎖状の脂肪族又は環状の脂環式若しくは芳香族の(メタ)アクリルのセグメントであっても良く、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記多官能のセグメントは1種単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0056】
上記多官能のセグメントの含有量は、前記組成物の全固形分質量に対して、10〜30質量%であることが好ましい。
【0057】
その他に、シアネート樹脂等を用いることができ、例えば、トリレンジイソシアネート等を用いることができる。
【0058】
上記その他の樹脂の含有量は、前記組成物の全固形分質量に対して、1〜5質量%であることが好ましい。
【0059】
本発明における樹脂組成物で使用する光開始剤(光重合開始剤)としては、例えばビスアシルフォスフィノキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
光開始剤の含有量は、前記組成物の全固形分質量に対して、1〜5質量%であることが好ましい。
【0061】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、上記成分以外に必要に応じて、安定化剤、離型剤、シリコーン、酸化防止剤、重合禁止剤、増粘剤、帯電防止剤、紫外線安定剤、消泡剤、溶剤、非反応性ウレタンポリマー等の非反応性ウレタン樹脂、非反応性アクリル樹脂、非反応性ポリエステル樹脂、顔料、染料又は拡散剤等も併用することができる。
【0062】
(光拡散層)
本発明に係る光学シートにおいては、図3に示したように、必要に応じて光拡散機能を付与するために光拡散層40を設けても良い。
光拡散層は、好ましく設けられる任意の層であって、光を拡散させる作用があればよく、一般的な光拡散シートに形成されているものを用いることができる。
例えば、光拡散性微粒子が透光性樹脂中に分散した層を適用できる。光拡散層は、図3のように透明基材10の光学機能発現部20とは反対側の面に設けられていても良いし、図示しないが透明基材と光学機能発現部の間に設けられていても良い。
【0063】
光拡散層を構成する透光性樹脂としては、上記透明基材と同様の樹脂を挙げることができる。
また、光拡散性微粒子としては、一般的に光拡散シートに用いられる光拡散性の微粒子が用いられ、例えば、ポリメタクリル酸メチル(アクリル)系ビーズ、ポリメタクリル酸ブチル系ビーズ、ポリカーボネート系ビーズ、ポリウレタン系ビーズ、炭酸カルシウム系ビーズ及びシリカ系ビーズ等が挙げられる。
なお、光拡散層の厚さは、通常、1〜20μmである。
【0064】
(光学シートの製造方法)
本発明の光学シートの製造方法は、上述したアクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用い、該樹脂組成物の硬化時に後述する照射条件を採用する以外は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。
例えば、上述したアクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製し、所望の単位凹凸形状の型に該組成物を充填し、そこに透明基材を重ね、ラミネーター等を用いて透明基材をその組成物に圧着し、紫外線等で組成物を硬化させ、単位凹凸形状を形成する。次いで、単位凹凸形状の型を剥離乃至除去することで、透明基材上に所望の凹凸形状を有する光学機能発現部を備える光学シートが得られる。
量産性を向上させるためには、輪転式2P法でロールにプリズムシートを巻き取って光学シートを製造することが好ましい。
【0065】
いずれの方法においても、上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させる活性エネルギー線は上述したように紫外線が好ましく、照射条件としては、積算照射量は
100mJ/cm〜10000mJ/cmであることが好ましく、更に200mJ/cm〜2000mJ/cmであることが本発明の隆起状構造を有する光学シートを得られる観点から好ましい。積算照射量の下限を下回る場合には、樹脂組成物が十分に硬化せず、上限を越える場合には硬化が過剰になり、硬度は高くなるが、復元性が低減してしまう。
照射装置としては、超高圧水銀ランプ(HOYA−SCHOTT製;商品名:UV LIGHT SOURCE EX250;光源:250W)等を用いることができる。
【0066】
(光学シートの用途)
本発明に係る光学シートは、例えば、液晶表示装置等のバックライトに用いられるプリズムシート、プロジェクションテレビ等の投影スクリーンに用いられるフレネルレンズシートやレンチキュラーシート等に用いることができる。本発明に係る光学シートはこれらのいずれにおいても好適に用いることができるが、中でも液晶表示装置用バックライトのプリズムシートとして好適に用いることができる。
【0067】
(面光源装置)
本発明に係る面光源装置は、各種の仕様(形態)のものが使用でき、特に制限は無い。従来公知の、いわゆる、エッジライト型面光源装置、直下型面光源装置、EL(電場発光)型面光源装置等の形態の面光源の光放出面側に上記の本発明の光学シートを載置して本発明の面光源装置が構成される。ここでは、エッジライト型面光源装置の形態を例にとり、詳述する。本発明に係るエッジライト型面光源装置は、面光源の光放出面側に上記光学シートを備えることを特徴とする。
図5は、本発明に係る光学シートを備える面光源装置の一例を示した模式的な斜視図である。図5の面光源装置50は、導光板60の光放出面61側に、光放出面61側から光拡散層40、透明基材10及び光学機能発現部20が設けられている。尚、図5の面光源装置50はエッジライト型の面光源装置であり、その導光板60の少なくとも一つの側端面62に設けられた光源70から光が導光板60内に入射され、光放出面61から光が放出される。
【0068】
導光板は、透光性材料からなる板状体である。図5の導光板60は、左側の側端面62から導入された光を、上側の光放出面61から放出するように構成されている。導光板は、従来公知の導光板とすれば良く、光学シートや透明基材と同様の透光性材料で形成しても良い。導光板は通常、アクリル樹脂又はポリカーボネート樹脂で形成される。
導光板の厚さは通常1〜10mmであり、その厚さは全範囲で一定であっても良いし、図5に示すように、一端側に光源70を設ける場合は、光源70を設ける側端面62側が最も厚く、側端面62の反対側ほどに徐々に薄くなるテーパ形状であっても良い。導光板には、光放出面から光を放出させるために、その内部又は表面に光散乱機能が付加されていることが好ましい。
【0069】
光源は、エッジライト型面光源装置の場合、その少なくとも1つの側端面から内部に光を入射させるものであり、導光板の側端面に沿って配置される。光源としては、図5に示すような線状の光源70に限定されるものでなく、白熱電球、LED(発光ダイオード)等の点光源を側端面に沿ってライン状に配置しても良いし、小形の平面蛍光ランプを側端面に沿って複数個配置するようにしても良い。
単位凹凸構造の頂角が80度未満の場合は、図示しないが図5の場合とは逆に、光学シート1の光学機能発現部20側が導光板60側に対峙する向きで配置される。
【0070】
導光板の光放出面とは反対側の面又は光放出面以外の面には、図5に示すように導光板60の光放出面61とは反対側等から放出される光を導光板60内に戻し、光放出面61から放出させるための光反射板80が設けられていても良い。
光反射板は、薄い金属板にアルミニウム等を蒸着したもの、又は、白色の発泡PET(ポリエチレンテレフタレート)等が用いられる。
本発明に係る面光源装置によれば、上記本発明に係る光学シートを備えるため、光学シートの光学機能発現部が導光板等の部材と接触しても、単位凹凸構造の頂部に欠け、山潰れ及び変形が生じ難い。
【0071】
(液晶表示装置)
本発明に係る液晶表示装置は、液晶セルの一面側に上記光学シートを備えることを特徴とする。本発明において液晶セルとは、液晶化合物をガラス板等の2枚の透明板の間に封入したモジュールをいい、偏光板又はカラーフィルタ等のその他の部材が含まれたモジュールであっても良い。
【0072】
図6は、図5で示したエッジライト型の面光源装置を備えた液晶表示装置の一例を示した模式的な斜視図である。図5に示す液晶表示装置90は、液晶セル100とその一面側(背面(液晶表示装置における映像表示を観察する面とは反対側の面)側)に上記光学シート1を備えた面光源装置50を備えている。
【0073】
液晶表示装置は、液晶セルの背面側に面光源装置(バックライト)を有する透過型の液晶表示装置であっても良いし、外光による反射光の表示とともに背面側のバックライトによる表示の両方が可能な半透過型の液晶表示装置であっても良い。
【0074】
本発明に係る液晶表示装置によれば、上記本発明に係る光学シートを備えるため、表示面に白点(白模様)等の表示ムラを生じさせることがなく、安定で良好な表示性能を得ることができる。
【0075】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0076】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0077】
以下の組成物1及び2をそれぞれ調製した。各組成物の組成をまとめたものを表1に示す。
【0078】
(組成物1の調製)
・ビスフェノールAジグリシジルアクリレート(日油株式会社製;商品名:ブレンマーG):40質量部
・カプロラクトン変性ウレタンアクリレート(BASFジャパン製;商品名:ε−Caprolacton Urethane Acrylates):10質量部
・ビフェニリロキシエチルアクリレート(大阪有機化学株式会社製;商品名:V#193):8質量部
EO変性ビフェニリロキシエチルアクリレート(大阪有機化学株式会社製;商品名:V#193‘):7質量部
・ビスフェノールAエポキシアクリレート(新中村化学株式会社製;商品名:A−B1206PE ;分子量500):5質量部
・ポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学株式会社製;商品名:A−400):20質量部
・トリレンジイソシアネート(日化トレーディング株式会社製;商品名:TDI):5質量部
・光開始剤(ビスアシルフォスフィンオキサイド;チバスペシャリティーケミカルズ社製;商品名:イルガキュア819):3質量部
・N−ジオクチルメチルアミン(メルク株式会社 製;商品名:820790):1質量部
・リン酸エステル系離型剤(SC有機化学(株)製;商品名Chelex H−18D):0.1質量部
【0079】
(組成物2の調製)
・フェノキシエチルアクリレート(サートマー社製;商品名:SR339A):18.9質量部
・イソボルニルアクリレート(ダイセル社製;商品名:UBOA):8質量部
・ビスフェノールAジアクリレート(EO4モル変性;一般式(2)においてm=n=2、かつ、R及びRが全て水素原子;共栄社化学(株)製;商品名:ライトアクリレート BP−4EA):12質量部
【0080】
【化2】

【0081】
(一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、n及びmは、n+m=2〜20を満たす正の整数である。)
【0082】
・ビスフェノールAジメタクリレート(EO2モル変性;一般式(2)においてm=n=1、Rが全てメチル基、かつ、Rが全て水素原子;共栄社化学(株)製;商品名:ライトアクリレート BP−2EM):27質量部
・ビスフェノールAエポキシジアクリレート(共栄社化学(株)製;商品名:FLEA−POA;全質量に対するビスフェノールAエポキシジアクリレートの含有量49質量%;フェノキシエチルアクリレートの含有量51質量%;重量平均分子量2000):16.1質量部
・イソシアヌル酸トリアクリレート(EO3モル変性;東亞合成(株)製;商品名:アロニックス M−315):13質量部
・4−アクリロイルモルホリン(東京化成工業株式会社製;商品名:4−Acryloylmorpholine):5質量部
・1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン(株)製;商品名:イルガキュア184):3質量部
・リン酸エステル系離型剤(SC有機化学(株)製;商品名Chelex H−18D):0.05質量部
【0083】
【表1】

【0084】
(実施例1)
<隆起状構造の測定>
上記調製した組成物1を、厚さ125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(東洋紡績(株)製の商品名A4300)に塗布し、超高圧水銀ランプ(HOYA−SCHOTT製;商品名:UV LIGHT SOURCE EX250;光源:250W)を用い、170mJ/cmで組成物1に対して紫外線照射を行い、硬化させた後、長さ10mm、幅10mmに切断し、試験片を作製した。
上記試験片を原子間力顕微鏡(Bruker AXS製;商品名:Nanoscope V)で観察し、隆起状構造がある場合には、それらの直径及び高さを測定し平均値、単位面積あたりの個数を得た。その測定結果を表2に示す。
【0085】
<硬度の測定>
上記試験片において、ISO14577−1に準拠して、(株)フィッシャー・インストルメンツ製の微小硬さ試験機(商品名PICODENTOR HM500、圧子はダイヤモンド製の四角錐型、対面角90°)を用いて、押し込み荷重を変化させて押し込み深さを測定し、最大押し込み時の荷重(N)を圧子と試料の接触面積(mm)で除した値を硬度とした。その測定結果を表2に示す。なお、測定は押し込み深さを制御するモードでおこない、条件は深さ1μmに5秒で圧子先端が到達する設定とした。
【0086】
<復元率の測定>
上記試験片において、ISO14577−1に準拠して、(株)フィッシャー・インストルメンツ製の微小硬さ試験機(商品名PICODENTOR HM500、圧子はダイヤモンド製の四角錐型、対面角90°)を用いて、押し込み荷重を変化させて押し込み深さを測定し、最大押し込み深さに達したところで除荷した後の押し込み深さを測定し、最大押し込み深さと除荷した後の押し込み深さの差(弾性変形)を、最大押し込み深さ(全体変形)で除した値を復元率とした。その測定結果を表2に示す。なお、測定は押し込み深さを制御するモードでおこない、条件は深さ1μmに5秒で圧子先端が到達し、最大押し込み深さに達した後、5秒間かけて除荷する設定とした。
【0087】
<復元性及び耐傷付き性の評価>
図2に示すような単位プリズムの線状配列の凹凸形状が形成されたプリズム型に上記調製した組成物1を滴下した後、厚さ125μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(東洋紡績(株)製の商品名A4300)を重ね、ラミネーターで当該PET基材全面を組成物1に圧着した。
【0088】
次いで、超高圧水銀ランプ(HOYA−SCHOTT製;商品名:UV LIGHT SOURCE EX250;光源:250W)を用い、170mJ/cmで組成物1に対して紫外線照射を行い、多数の単位プリズムを有するプリズム部を硬化させ、PET基材と一体化させた。その後、上記プリズム型を剥離することによって、光学シートを得た。
ここで、単位プリズムの形状は、厚さ方向の断面における形状が高さ25μm、底辺50μm、頂角90℃となる二等辺三角形の三角柱形状とした。そして、光学機能発現部は、各単位プリズムの稜線が互いに平衡になるように複数の単位プリズムを配列周期50μmで当該稜線と直交する方向に多数隣接して配列しているものであった。
【0089】
上記光学シートの光学機能発現部の凹凸形状の復元性及び耐傷付き性を、下記の方法及び評価基準により評価した。その結果を表2に示す。
(評価方法)
図7は、本発明における復元性及び耐傷付き性の評価方法を模式的に示した概略図であり、図7に示すように、耐摩耗試験機の可動盤110上に試験片である光学シート1を透明基材側が可動盤側に位置するように設定し、当該試験片上に面積12cmの偏光フィルム120を介して荷重部130に2.45N(250gf)の荷重をかけた。そして、可動盤110を速度5mm/sで20秒間、図7の矢印140方向に移動させた時の光学機能発現部の頂部の状態を目視及び顕微鏡観察により評価した。
【0090】
上記評価方法において、試験片は、得られた光学シートを長さ150mm、幅40mmに切断したものを用いた。
測定装置は、テスター産業(株)製の商品名AB−301 学振型摩擦堅牢度試験機を用いた。
偏光フィルムは、面積12cmの大日本印刷(株)製の商品名H25を用い、マット層側を試験片に向けて配置した。
顕微鏡は、(株)キーエンス社製の商品名デジタルマイクロスコープ VHX−200Nを用いた。
尚、荷重部の底面は外径20mm、内径10mmのドーナツ状であり、底面積は2.36cmである。
【0091】
(復元性の評価)
・評価5:顕微鏡観察で形状の変形が確認されなかった。
・評価4:顕微鏡観察で形状の変形が確認されたが、バックライト上で目視では確認されなかった。
・評価3:バックライト上で目視で形状の変形が確認されたが、室温(25℃)で10分以内に元の形状に復元した。
・評価2:バックライト上で目視で形状の変形が確認され、室温(25℃)で10分以内に元の形状に復元しなかったが、35℃に加熱した場合、5分以内に元の形状に復元した。
・評価1:バックライト上で目視で形状の変形が確認され、35℃で加熱しても5分以内に元の形状に復元しなかったが、80℃で1分加熱した場合、元の形状に復元した。
【0092】
(耐傷付き性の評価)
・評価5:顕微鏡観察で傷が確認されなかった。
・評価4:顕微鏡観察で傷が1本確認されたが、バックライト上で目視では傷が確認されなかった。
・評価3:バックライト上で目視により傷が2〜3本確認された。
・評価2:バックライト上で目視により傷(スジ)が多数確認された。
・評価1:バックライト上で目視によりプリズム表面全面に削れた後が確認された。
なお、復元性評価及び耐傷付き性評価において、顕微鏡観察は、顕微鏡の倍率を100〜1000倍の範囲内で適宜調節して行った。
【0093】
図8は、本発明における復元性及び耐傷付き性の評価方法を模式的に示した別の概略図である。復元性評価3及び耐傷付き性評価5とは、例えば、図8の(a)に示すように光学機能発現部20の単位凹凸構造30の頂部に、偏光フィルム120の幅Lの凹み(変形)が形成された後、室温(25℃)で10分以内に、図8の(b)に示すように凹凸形状が元の形状に復元し、かつ、顕微鏡観察で傷が確認されなかった場合をいう。
復元性評価3及び耐傷付き性評価3とは、例えば、図8の(c)に示すように光学機能発現部20の単位凹凸構造30の頂部に、偏光フィルム120の幅Lの凹み(変形)と、偏光フィルム120の幅Lよりも小さい幅lが形成された後、室温(25℃)で10分以内に、図8の(d)に示すように凹凸形状が元の形状に復元するが、凹凸構造の頂部近傍の表面に復元せずに残った傷が2〜3本形成され、当該傷がバックライト上で目視により確認された場合をいう。
【0094】
(実施例2〜4及び比較例1〜4)
実施例2〜4は、実施例1において、積算照射量を表2のように代えた以外は実施例1と同様に行い、測定及び評価を行った。
また、比較例1〜4は、実施例1において、組成物1を組成物2に変更し、積算照射量を表2のように代えた以外は実施例1と同様に行い、測定及び評価を行った。
【0095】
【表2】

【0096】
(結果のまとめ)
図9に本発明の実施例における積算照射量に対する隆起状構造の個数、反応率、復元率及び硬度をプロットしたグラフを示す。また、図10に、本発明の比較例における積算照射量に対する隆起状構造の個数、反応率、復元率及び硬度をプロットしたグラフを示す。
表2、図9及び図10を参照して総合的に言えることは、実施例と比較例は、反応の進み方が全く異なるということである。したがって、図9と図10を比較すると、実施例と比較例とで反応率の推移が全く異なる。
【0097】
実施例においては隆起状構造が観察された。図9を参照すると、積算照射量が高くなるに従い、隆起状構造の個数は増加している。
また、図9を参照すると、実施例においては、ある程度の硬度を有するが高靭性ではなく、復元率は積算照射量が増加するに従い緩やか減少してはいるが、比較例と比べると高い。ここから、実施例は耐傷付き性と復元性のバランスがとれていると言うことができる。このことは、表2に示された復元性及び耐傷付き性の評価結果の高さからも理解することができる。
【0098】
これに対して、比較例においては隆起状構造が観察されなかった。
図10を参照すると、比較例においては、積算照射量が増加するに従い硬度は急激に高くなるが復元率は伸びず、実施例と比べると復元率は低い。ここから、比較例は復元性と耐傷付き性のバランスが悪いと言うことができる。このことは、表2に示された復元性及び耐傷付き性の評価結果の低さからも理解することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 光学シート
2 隆起状構造
10 透明基材
20 光学機能発現部
30 単位凹凸構造
40 光拡散層
50 面光源装置
60 導光板
61 光放出面
62 側端面
70 光源
80 光反射板
90 液晶表示装置
100 液晶セル
100 液晶セル
110 可動盤
120 偏光フィルム
130 荷重部
140 移動方法
150 傷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、当該透明基材の一面側に設けられ、当該透明基材とは反対側の面に複数の単位凹凸構造を備える凹凸形状を有する光学機能発現部とを備える光学シートであって、
当該光学機能発現部が、アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、
該光学機能発現部の表面を原子間力顕微鏡で観察した場合に平均直径0.1〜2μm及び平均高さ1nm〜100nmの隆起状構造を呈していることを特徴とする、光学シート。
【請求項2】
前記アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂が、カプロラクトン変性ウレタン(メタ)アクリレートの繰り返し単位からなる重合構造のセグメントを含むことを特徴とする、請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記アクリル樹脂及び/又はメタクリル樹脂が、ビスフェノールAジグリシジル(メタ)アクリレート、ビフェニリロキシエチル(メタ)アクリレート、EO変性ビフェニリロキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートからなる群より選択される繰り返し単位からなる重合構造のセグメントを少なくとも一種、更に含むことを特徴とする、請求項2に記載の光学シート。
【請求項4】
前記隆起状構造の個数が5〜100個/400μmであることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項5】
前記光学機能発現部が単位凹凸構造としてプリズム及び/又はマイクロレンズを含むことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学シート。
【請求項6】
面光源の光放出面側に請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光学シートを備えることを特徴とする、面光源装置。
【請求項7】
液晶セルの一面側に請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光学シートを備えることを特徴とする、液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−72940(P2013−72940A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210572(P2011−210572)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】