光学シートの積層体
【課題】それぞれ熱膨張率が異なる光学シートを積層しても、バックライト点灯などによる温度変化で湾曲や撓みなどが生じない光学シートの積層体を提供する。
【解決手段】2枚以上の光学シート2からなり、その周縁部にこれら光学シート2を連結する連結部3を2以上有する積層体1であって、それぞれの連結部3は光学シート2を一方向に摺動可能な摺動機構を有し、連結部3の摺動方向は全て放射中心点6を通るようにされて全体として放射状にされているとともに、連結部3は該積層体1の2辺以上に設けられていることを特徴とする光学シートの積層体1である。
【解決手段】2枚以上の光学シート2からなり、その周縁部にこれら光学シート2を連結する連結部3を2以上有する積層体1であって、それぞれの連結部3は光学シート2を一方向に摺動可能な摺動機構を有し、連結部3の摺動方向は全て放射中心点6を通るようにされて全体として放射状にされているとともに、連結部3は該積層体1の2辺以上に設けられていることを特徴とする光学シートの積層体1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置用バックライト等といった発光部材の表面に装着する光学シートの積層体に関し、更に詳しくは、特に熱膨張率が異なる光学シートを積層しても温度変化で湾曲したりや撓んだりすることがなく、熱膨脹差に起因する歪や表面ムラのない光学シートの積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置が多方面に用いられるようになって、それぞれの用途に応じて多様な性能が求められている。OA機器、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー等では、軽量化、薄型化、高精彩化、省電力化の要求が強く、更に、液晶表示装置にあっては、広視野化、広画面化、高輝度化の要求が強くなっている。
【0003】
これらの要求に応ずるために、バックライトなどの発光部材から発せられる光を用途に応じて拡散したり、逆に光の指向性を変更、即ち不要な方向の光を方向変換して観察者の正面に集光するために、光学機能を有するフイルムやシート(以下、総称して光学シートという)を使用するのが一般化している。
【0004】
また、通常は1枚の光学シートで所望の光学機能を得ることができないため、複数枚の光学シートを重ねて使用している。但し、複数枚の光学シートを一枚づつ発光部材に取り付けると、工数が増えてコストアップにつながるため、それぞれの光学シートを予め接着剤等で接着したり、近年では特許文献1、特許文献2に示されるように、複数枚のシートを重ねた積層体の使用が提案されている。
なお、特許文献1の積層体は、2種類以上の光学シートを所定の順序に積層した製品サイズの積層体が包装部材中に包装され、前記包装部材が前記積層体と密着するように前記包装材料を減圧した状態で封止されることを特徴とするディスプレイ用光学シートの包装体であり、特許文献2の積層体は、二枚以上の光学シートが静電気力により接着され、積層されて成ることを特徴とするディスプレイ用光学シートである。
【0005】
しかしながら、熱膨張率の異なる光学シートを接着剤等で接着すると、バックライトなどの発光部材から発せられる熱により積層体に温度変化が生じ、それぞれの光学シートが異なる割合で熱膨張するため、積層体が湾曲したり撓んだりして歪や表示ムラの発生が避けられない。そこで、熱膨張率が略等しい光学シートを使用して積層体が製造されているが、この場合、積層体を自由に設計することができなくなり、所望の光学性能を得ることが難しくなる。
【0006】
また、特許文献1のように光学シートを別の素材で包装して積層体とする場合、発光部材から発せられる熱により包装袋内の気圧が変化する。そのため、温度が低いうちは包装袋外からの空気圧が大きすぎて積層体内の光学シートが強力に押圧され、光学シート同士が摺動しないため、結局積層体は湾曲してしまう場合がある。逆に、温度が高くなると包装袋内の空気が膨張して空気圧による押圧が不十分となり、光学シートが包装袋内で揺動してしまう場合がある。従って、使用する場所の温度変化から逆算して包装袋内部の最適な空気圧を決定する必要があるが、温度変化の激しい環境では最適な空気圧が存在しないため、実現できない。その上、発光部材から発せられた光が包装用素材層と光学シート層の間で一部反射してしまうため、光の透過率が低下するという問題がある。
【0007】
さらに、特許文献2のように静電気で光学シートを接着した場合、経時的に放電して静電気による接着力が低下し、最終的に光学シートが剥がれ落ち、耐用年数が短くなってしまう場合がある。逆に、耐用年数を長くするために強力な静電気を印加すると、空気中の埃まで吸い寄せて、光の透過率が低下する。
【特許文献1】特開2007−76666号公報
【特許文献2】特開2007−78880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる実情に鑑み、従来技術の問題点を解消し、熱膨張率が異なる光学シートであっても自由に使用して所望の光学性能が得られ、大幅に温度変化しても湾曲したり撓んだりせず温度変化による歪や表示ムラが防止されるとともに、光の透過率が悪化せず、耐用年数が長い光学シートの積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するためになされたもので、本発明の請求項1は、2枚以上の光学シートからなり、その周縁部にこれら光学シートを連結する連結部を2以上有する積層体であって、それぞれの連結部は光学シートを一方向に摺動可能な摺動機構を有し、連結部の摺動方向は全て放射中心点を通るようにされて全体として放射状にされているとともに、連結部は該積層体の2辺以上に設けられていることを特徴とする光学シートの積層体を内容とする。
【0010】
本発明の請求項2は、放射中心点が該積層体の角部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の光学シートの積層体を内容とする。
【0011】
本発明の請求項3は、放射中心点が該積層体の中心部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の光学シートの積層体を内容とする。
【0012】
本発明の請求項4は、連結部の摺動構造は、その両端に拡径部を有する摺動ピンと、各光学シートに連通して設けられ、拡径部より幅狭で摺動ピンが挿通される略長矩形の長孔とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学シートの積層体を内容とする。
【0013】
本発明の請求項5は、摺動ピンの拡径部の径よりも幅広で略長矩形であり、深さが該拡径部の高さ以上の深さの凹窩部が凹設されると共に、長孔がこの凹窩部内に設けられることを特徴とする請求項4に記載の光学シートの積層体を内容とする。
【0014】
本発明の請求項6は、連結部の摺動構造は、一の光学シートから立設され、先端に拡径部を有する立設ピンと、その他の光学シートに連通して設けられ、立設ピンの拡径部の径よりも幅狭でこの立設ピンが挿通される略長矩形の長孔とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学シートの積層体を内容とする。
【0015】
本発明の請求項7は、立設ピンの拡径部の径よりも幅広で略長矩形であり、深さが該拡径部の高さ以上の深さの凹窩部が凹設されると共に、長孔がこの凹窩部内に設けられることを特徴とする請求項6に記載の光学シートの積層体を内容とする。
【0016】
本発明の請求項8は、3枚以上の光学シートからなり、表面層用及び裏面層用として用いる光学シートは熱膨張率が略等しいとともに、連結部の摺動構造は、表面層用及び裏面層用のいずれか一方の光学シートから立設され、その先端が他方の光学シートに固着されている立設ピンと、その他の光学シートに連通して設けられ、立設ピンが挿入される略長矩形の長孔とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学シートの積層体を内容とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光学シートの積層体(以下、単に「積層体」と称することがある)は、それぞれの連結部が光学シートを一方向に摺動可能な摺動機構を有するとともに、連結部の摺動方向は全て放射中心点を通るようにされており、全体的にみれば連結部は放射中心点を中心として放射状に摺動するため、熱膨張率が異なる光学シートを積層しても、温度変化に伴い、光学シートは放射中心点を中心とした放射状に伸縮して摺動し、熱膨張率の差を吸収するため、積層体は全体として湾曲したり撓んだりせず、熱膨脹率の差に起因する歪や表示ムラが防止される。
また、連結部は該積層体の2辺以上に設けられているため、使用中に光学シートが積層体から捲れ上がることもなく、安定した光学性能を発揮する。
さらに、連結部の摺動長さを長くすることにより、大きな温度変化による熱膨脹率の差を吸収し湾曲や撓みが発生しない積層体が容易に得られる。
【0018】
放射中心点を該積層体の角部に設けると、その角を含む2辺に設けられる連結部については摺動方向が辺の方向と平行なので、連結部を設けるためのスペースが小さくて済み、全体的にコンパクトな光学シートの積層体を得られる。
また、放射中心点を該積層体の中心部に設けると、液晶ディスプレイにおいて最も注意を引き易い画面の中心において、光学シートが殆ど摺動しないばかりでなく、放射中心点と各連結点の距離の合計が最小となり、光学シートの伸縮にともなう各連結点の摺動距離も最小になるので、光学シートの伸縮時における画面の揺らぎが最小になり、画質が向上する。
【0019】
連結部の摺動構造を、摺動ピンと、各光学シートに連通して設けられる略長矩形の長孔により構成すると、摺動ピンは長孔に沿って略直線的に移動できるので、温度変化により光学シートが伸縮しても、各光学シートは長孔の長軸方向に摺動し、熱膨張率の差を吸収するため、積層体には湾曲や撓みが生じない。
なお、摺動ピンの両端に設けられた拡径部の径は長孔の幅よりも大きいので、これらにより各光学シートは外れないように連結される。また、摺動ピンの拡径部の径よりも幅広で略長矩形であり、深さが該拡径部の高さ以上の深さの凹窩部を該積層体に設け、この凹窩部の内部に長孔を設けると、拡径部はこの凹窩部の内部に没入するので、表面及び裏面が略平坦な積層体が得られる。
【0020】
連結部の摺動構造を、一の光学シートから立設された立設ピンと、その他の光学シートに連通して設けられる略長矩形の長孔により構成すると、立設ピンは長孔に沿って略直線的に移動できるので、温度変化により光学シートが伸縮しても、各光学シートは長孔の長軸方向に摺動できる。
なお、立設ピンの先端に設けられた拡径部の径は長孔の幅よりも大きいので、これらにより各光学シートは外れないように連結される。また、連結ピンの拡径部の径よりも幅広で略長矩形であり、深さが該拡径部の高さ以上の深さの凹窩部を該積層体に設け、この凹窩部の内部に長孔を設けると、拡径部はこの凹窩部の内部に没入するので、表面及び裏面が略平坦な積層体が得られる。
【0021】
連結部の摺動構造を、表面層用及び裏面層用のいずれか一方の光学シートから立設され、その先端が他方の光学シートに固着されている立設ピンと、その他の光学シートに連通して設けられ、立設ピンが挿入される略長矩形の長孔により構成すると、立設ピンは長孔に沿って略直線的に移動できるので、温度変化により光学シートが伸縮しても、各光学シートは長孔の長軸方向に摺動できる。なお、上記の表面層用の光学シートと裏面層用の光学シートの熱膨張率は略等しいので、立設ピンの先端を他方の光学シートに固着しても、温度変化による湾曲は生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明における光学シートの積層体を好ましい実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0023】
実施例1
本発明の積層体の概要を図1〜図4に記載した実施例1に基づいて説明すれば、本発明は2枚以上の光学シート2(本実施例では2a〜2eの5枚)からなり、その周縁部にこれら光学シート2を連結する連結部3を2以上有する積層体1であって、それぞれの連結部3は光学シートを一方向に摺動可能な摺動機構を有し、連結部3の摺動方向(図1に一点鎖線で示す)は全て放射中心点6を通るようにされて全体として放射状にされているとともに、連結部3は該積層体1の2辺以上に設けられている。
なお、図1において破線で記された四角形内の領域は、発光部材から発せられて液晶画面から出射される光が通過する範囲を示す。図5〜図8においても同様である。
【0024】
本発明において、光学シートとは、光学的機能を備える各種シートの総称であり、代表的なものとして、拡散シート、偏光板(偏光フィルム)、各種レンズシート(レンチキュラーレンズ、フライアイレンズ(蛇の目レンズ)、プリズムシート等)がある。これらの光学シートはそれぞれ所望の光学性能にあわせて適宜用いることができる。
【0025】
本発明では、図2に示すように、2枚以上(図2では5枚)の光学シート2を積層して所望の光学性能を有する積層体1を得る。それぞれの光学シート2の形状は特に限定されず、この積層体1を取り付ける発光部材の形状や大きさにあわせて適宜定めればよい。
これらの光学シート2を積層した積層体1の周縁部には、前記光学シート2を互いに連結するための連結部3が設けられている。連結部3の個数は特に限定されず、積層体1の大きさ等を考慮して適宜定めればよいが、1辺だけにまとめて配置すると、光学シート2がまくれ上がりやすくなり画質が悪化するため、2辺以上、好ましくは4辺全てに渡って設けるようにする。
【0026】
連結部3は、それぞれの光学シート2を固着するのではなく、積層された光学シート2がそれぞれ一方向に摺動できるように緩く連結している。
光学シート2の摺動方向は、図1に示すとおり、任意に設定された放射中心点6と連結部3を結ぶ直線(一点鎖線で示す)の方向と平行である。これにより、熱膨張率が異なる光学シート2を積層した場合でも、各光学シート2は放射中心点6を中心にそれぞれの熱膨張率に従って膨張又は収縮するが、各連結部3において摺動機構により熱膨張率の差が吸収されるため、積層体1には湾曲や撓みが生じない。
なお、光学シート2は使用する際の温度差が大きいほど伸び縮みの差が大きいため、温度差が特に大きい環境で使用する場合には、連結部の摺動長さを長くすればよい。
【0027】
放射中心点6の位置は光学シートを含む平面上であれば任意に定めることができ、原理的には積層体1の外部に設けることも可能であるが、放射中心点6と連結部3の間の距離が長いほど、熱膨張率の差による光学シート2の摺動距離が長くなり、熱膨張率の差を吸収しにくくなるばかりでなく、光学レンズ2の摺動による画面の揺らぎも大きくなるので、放射中心点6は積層体1の内部に設ける方が好ましい。
熱膨張率の差による光学シート2の摺動距離を短くする観点からは、放射中心点6は積層体1の中心部に設けるのが好ましく、発光部材から発せられる光の調整に寄与しない部分(連結部3が設けられる光学シート2の周縁部)の面積を最小にする観点からは、角部に放射中心点6を設けて、その角部を含む辺に連結部3を設けるのが好ましい。
また、放射中心点6においては熱膨張率の差に関わらず、光学シート2は互いに摺動しないので、放射中心点6を中心とした半径数mm程度の範囲(光学シート2の厚さ等により異なる)だけは接着剤等で固着しても積層体1には湾曲や撓みが生じない。従って、放射中心点6を光学シート2の周縁部のうち1辺に設けてここを接着剤などで接着し、その他の辺に連結部3を設けることもできる。
なお、上記した通り、連結部3における光学シート2の摺動距離は放射中心点6からの距離が遠いほど長いので、放射中心点6から離れたところにある連結部3は、長距離摺動できるように、放射中心点6からの距離に比例して長く設定するほうが好ましい。
【0028】
本発明において、連結部3の摺動機構は特に限定されず、連結部3において一方向に摺動する構造であれば、いかなる構造でも採用できる。
その構造を例示すれば、例えば図2〜図4に示すとおり、光学シート2にそれぞれ連通する略長矩形の長孔4を設け、この長孔4に摺動ピン5を挿通して、この摺動ピン5が長孔4内で一方向に摺動できるようにすると共に、摺動ピン4aの両端に拡径部5aを設けて長孔4から摺動ピン5が抜け落ちないようにした構造が挙げられる。
但し、本発明において、略長矩形とは挿通されたピンなどが一定の距離を略直線状に移動できる形状のことをいう。
【0029】
なお、実施例1では摺動ピン5として、一端に拡径部5aを有しており他端に嵌合用の凹部を備えた有頭ピン8aと、一端に拡径部5aを有しており他端に嵌合用の凸部を備えた有頭ピン8bを合体させたものを使用している。
このような構造を使用することにより、異なる熱膨張率を有する光学シート2a〜2eを使用し、これらの光学シート2a〜2eが温度変化によりそれぞれ伸縮したとしても、光学シート2は摺動方向から直角の方向には全く摺動せず(図3参照)、また、各光学シート2a〜2eの熱膨張率の差はそれぞれの光学シート2が摺動方向に摺動することにより吸収される(図4(a)(b)参照)。この時、摺動ピン5は長孔4は連通したままであり、摺動ピン5により各光学シート2a〜2eが連結されている状態は保たれる。
【0030】
なお、積層体1の表面は平坦のほうが好ましいので、上記摺動ピン5の拡径部5aを没入させるための凹窩部7を設けることもできる(図3参照)。なお、図3においては、表面側及び裏面側の光学シート2の厚さを拡径部5aの高さ以上とし、表面側及び裏面側の光学シート2にだけ凹窩部7を凹設しているが、その他の方法として、複数の光学シート2において長孔4の周辺だけ薄くし、これらを積層してから長孔4の周辺を押圧して積層体全体を凹ませることにより凹窩部7を設けることもできる。
【0031】
なお、実施例1において使用した光学シート2はそれぞれ下記のとおりであり、PETとポリカーボネートは熱膨張率が異なるが、23℃〜80℃の範囲で、湾曲や撓みが生じなかった。
2a;PETベース製拡散シート(商品名:ライトアップ100SXE、製造元:株式会社きもと)
2b;ポリカーボネート製レンズシート(商品名:GTL5000、製造元:五洋紙工株式会社)
2c;ポリカーボネート製レンズシート(商品名:GTL6000、製造元:五洋紙工株式会社)
2d;PETベース製拡散シート(商品名:BS702、製造元:恵和株式会社)
2e;ポリカーボネート製拡散シート(商品名:PC−9391、製造元:帝人化成株式会社)
【0032】
実施例2
実施例2に係る光学シートの積層体1は、図5に示すとおり、積層体1の右側及び下側に連結部3が設けられていない他は実施例1と同様である。
この実施例においては、放射中心点6が左上に設定され、連結部3が左辺及び上辺だけに設けられているが、左辺の連結部3と放射中心点6は左辺と平行に一直線に並んでいるため、左辺の連結部3の摺動方向は積層体1の左辺と平行であり、同様に上辺の連結部3の摺動方向は積層体1の上辺と平行である。従って、連結部3を設けるために必要なスペース(図5における内側の破線と外郭の実線との間のスペース)は比較的小さくて済み、積層体1をコンパクトに作製することができる。
【0033】
実施例3
実施例3に係る光学シートの積層体1は、図6に示すとおり、積層体1の左側及び上側に連結部3が設けられていない他は実施例1と同様である。
この実施例においては、放射中心点6が左上に設定され、この部分が接着剤により強固に固着されていると共に、連結部3により右辺及び下辺が連結されている。そのため、連結部3が設けられていない左辺側及び上辺側においても、光学シート2がまくれ上がって画質が低下するようなこともない。即ち、比較的少ない連結部3で、積層体1のほぼ全周が係着されていると同様の効果がある。
【0034】
実施例4
実施例4に係る光学シートの積層体1は、図7に示すとおり、放射中心点6が上辺の中央付近に設けられ、右辺、左辺、下辺に連結部3が設けられている他は実施例1と同様である。
この実施例においても、実施例3と同様、比較的少ない連結部3で、積層体1のほぼ全周が係着されていると同様の効果がある。
【0035】
実施例5
実施例5に係る光学シートの積層体1は、図8に示すとおり、放射中心点6が積層体の中央付近に設けられ、全ての辺に連結部3が設けられている他は実施例1と同様である。
この実施例においては、例えば、発光部材が点灯されて積層体1の温度が上昇する最中においても、最も注目を集める液晶ディスプレイの中心部分では光学シート2がそれぞれ熱膨張しても、各光学シート間に摺動が生じないため、画面の揺らぎも生じないという効果がある。
但し、本実施例において、放射中心点6を接着剤等で固着すると、液晶表示装置の中心部における光学性特性が他の部分とは変化して違和感が生じるため、接着剤を用いた固着はされていない。
【0036】
実施例6
実施例6に係る光学シートの積層体1は、図9及び図10に示すとおり、連結部3として、裏面層側の光学シート2eから拡径部5aを有する立設ピン5’が立設され、その他の光学シート2a〜2dに長孔4が設けられてた摺動構造が採用されている他は実施例1と同様である。なお、本実施例においては、光学シート2eから突設された棒状突起に拡径部5aを有するキャップ8cを圧入嵌合することにより、立設ピン5’を形成している。
この実施例においても、実施例1と同様、熱膨張率がそれぞれ異なる光学シート2a〜2eを積層しているが、発光部材の点灯などにより温められて膨張したとしても、図10(a)(b)のように、各光学シート2a〜2eが摺動して熱膨張率の差が吸収されるため、積層体1に湾曲や撓みが生じない。
【0037】
実施例7
実施例7に係る光学シートの積層体1は、表面層側の光学シートが裏面層側の光学シート2eとほぼ同じ熱膨張率を有する光学シート2a’に変更されるとともに、図11及び図12に示すとおり、光学シート2eから立設ピン5’が立設されて、その先端が光学シート2a’に固着され、その他の光学シート2b〜2dに長孔4が設けられた摺動構造が採用されている他は実施例1と同様である。なお、立設ピン5’の先端部は光学シート2a’に設けられたピン受け穴5bに圧入されることにより、光学シート2a’に固着されている。
なお、本実施例に使用した光学シート2a’は、PETベース製拡散フィルム(商品名:オパルスPBS−072、製造元:恵和株式会社)である。
この実施例においても、実施例1と同様、熱膨張率がそれぞれ異なる光学シート2a’及び2b〜2eを積層しているが、発光部材の点灯などにより温められて膨張したとしても、図12(a)(b)のように、各光学シート2a〜2eが摺動するため、熱膨張率の差は吸収され、積層体1に湾曲や撓みが生じない。
また、薄い光学シート2に凹窩部7を設けるといった微細な加工を必要とすることなく積層体1の表面を平坦にできるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0038】
叙上のとおり、本発明に係る光学シートの積層体は、その周縁部で摺動機構を有する連結部で連結され、その摺動方向は放射中心点を通るようにされ、全体として放射状とされているとともに、連結部は該積層体の2辺以上に設けられているため、熱膨張率が異なる光学シートを使用しても、これらの光学シートは温度変化に伴って放射中心点を中心に拡縮し、これらの熱膨張率の差は連結部の摺動機構における各光学シートの摺動により吸収され、積層体には湾曲や撓みが生じないため、歪や表示ムラが防止される。本発明に係る光学シートの積層体は、特に液晶表示装置のバックライトの表面に装着する光学シートの積層体として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る実施例1の光学シートの積層体の平面図である。
【図2】実施例1の光学シートの積層体の分解斜視図である。
【図3】実施例1における摺動機構を摺動方向に対し垂直に切断した概略断面図である。
【図4】(a)、(b)は、実施例1における摺動機構を摺動方向に対し平行に切断した概略断面図である。
【図5】本発明に係る実施例2の光学シートの積層体の平面図である。
【図6】本発明に係る実施例3の光学シートの積層体の平面図である。
【図7】本発明に係る実施例4の光学シートの積層体の平面図である。
【図8】本発明に係る実施例5の光学シートの積層体の平面図である。
【図9】実施例6における摺動機構を摺動方向に対し垂直に切断した概略断面図である。
【図10】(a)、(b)は、実施例6における摺動機構を摺動方向に対し平行に切断した概略断面図である。
【図11】実施例7における摺動機構を摺動方向に対し垂直に切断した概略断面図である。
【図12】(a)、(b)は、実施例7における摺動機構を摺動方向に対し平行に切断した概略断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 光学シートの積層体
2 光学シート
3 連結部
4 長孔
5 摺動ピン
5’ 立設ピン
5a 拡径部
5b ピン受け穴
6 放射中心点
7 凹窩部
8a 有頭ピン
8b 有頭ピン
8c キャップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置用バックライト等といった発光部材の表面に装着する光学シートの積層体に関し、更に詳しくは、特に熱膨張率が異なる光学シートを積層しても温度変化で湾曲したりや撓んだりすることがなく、熱膨脹差に起因する歪や表面ムラのない光学シートの積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置が多方面に用いられるようになって、それぞれの用途に応じて多様な性能が求められている。OA機器、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー等では、軽量化、薄型化、高精彩化、省電力化の要求が強く、更に、液晶表示装置にあっては、広視野化、広画面化、高輝度化の要求が強くなっている。
【0003】
これらの要求に応ずるために、バックライトなどの発光部材から発せられる光を用途に応じて拡散したり、逆に光の指向性を変更、即ち不要な方向の光を方向変換して観察者の正面に集光するために、光学機能を有するフイルムやシート(以下、総称して光学シートという)を使用するのが一般化している。
【0004】
また、通常は1枚の光学シートで所望の光学機能を得ることができないため、複数枚の光学シートを重ねて使用している。但し、複数枚の光学シートを一枚づつ発光部材に取り付けると、工数が増えてコストアップにつながるため、それぞれの光学シートを予め接着剤等で接着したり、近年では特許文献1、特許文献2に示されるように、複数枚のシートを重ねた積層体の使用が提案されている。
なお、特許文献1の積層体は、2種類以上の光学シートを所定の順序に積層した製品サイズの積層体が包装部材中に包装され、前記包装部材が前記積層体と密着するように前記包装材料を減圧した状態で封止されることを特徴とするディスプレイ用光学シートの包装体であり、特許文献2の積層体は、二枚以上の光学シートが静電気力により接着され、積層されて成ることを特徴とするディスプレイ用光学シートである。
【0005】
しかしながら、熱膨張率の異なる光学シートを接着剤等で接着すると、バックライトなどの発光部材から発せられる熱により積層体に温度変化が生じ、それぞれの光学シートが異なる割合で熱膨張するため、積層体が湾曲したり撓んだりして歪や表示ムラの発生が避けられない。そこで、熱膨張率が略等しい光学シートを使用して積層体が製造されているが、この場合、積層体を自由に設計することができなくなり、所望の光学性能を得ることが難しくなる。
【0006】
また、特許文献1のように光学シートを別の素材で包装して積層体とする場合、発光部材から発せられる熱により包装袋内の気圧が変化する。そのため、温度が低いうちは包装袋外からの空気圧が大きすぎて積層体内の光学シートが強力に押圧され、光学シート同士が摺動しないため、結局積層体は湾曲してしまう場合がある。逆に、温度が高くなると包装袋内の空気が膨張して空気圧による押圧が不十分となり、光学シートが包装袋内で揺動してしまう場合がある。従って、使用する場所の温度変化から逆算して包装袋内部の最適な空気圧を決定する必要があるが、温度変化の激しい環境では最適な空気圧が存在しないため、実現できない。その上、発光部材から発せられた光が包装用素材層と光学シート層の間で一部反射してしまうため、光の透過率が低下するという問題がある。
【0007】
さらに、特許文献2のように静電気で光学シートを接着した場合、経時的に放電して静電気による接着力が低下し、最終的に光学シートが剥がれ落ち、耐用年数が短くなってしまう場合がある。逆に、耐用年数を長くするために強力な静電気を印加すると、空気中の埃まで吸い寄せて、光の透過率が低下する。
【特許文献1】特開2007−76666号公報
【特許文献2】特開2007−78880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる実情に鑑み、従来技術の問題点を解消し、熱膨張率が異なる光学シートであっても自由に使用して所望の光学性能が得られ、大幅に温度変化しても湾曲したり撓んだりせず温度変化による歪や表示ムラが防止されるとともに、光の透過率が悪化せず、耐用年数が長い光学シートの積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するためになされたもので、本発明の請求項1は、2枚以上の光学シートからなり、その周縁部にこれら光学シートを連結する連結部を2以上有する積層体であって、それぞれの連結部は光学シートを一方向に摺動可能な摺動機構を有し、連結部の摺動方向は全て放射中心点を通るようにされて全体として放射状にされているとともに、連結部は該積層体の2辺以上に設けられていることを特徴とする光学シートの積層体を内容とする。
【0010】
本発明の請求項2は、放射中心点が該積層体の角部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の光学シートの積層体を内容とする。
【0011】
本発明の請求項3は、放射中心点が該積層体の中心部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の光学シートの積層体を内容とする。
【0012】
本発明の請求項4は、連結部の摺動構造は、その両端に拡径部を有する摺動ピンと、各光学シートに連通して設けられ、拡径部より幅狭で摺動ピンが挿通される略長矩形の長孔とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学シートの積層体を内容とする。
【0013】
本発明の請求項5は、摺動ピンの拡径部の径よりも幅広で略長矩形であり、深さが該拡径部の高さ以上の深さの凹窩部が凹設されると共に、長孔がこの凹窩部内に設けられることを特徴とする請求項4に記載の光学シートの積層体を内容とする。
【0014】
本発明の請求項6は、連結部の摺動構造は、一の光学シートから立設され、先端に拡径部を有する立設ピンと、その他の光学シートに連通して設けられ、立設ピンの拡径部の径よりも幅狭でこの立設ピンが挿通される略長矩形の長孔とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学シートの積層体を内容とする。
【0015】
本発明の請求項7は、立設ピンの拡径部の径よりも幅広で略長矩形であり、深さが該拡径部の高さ以上の深さの凹窩部が凹設されると共に、長孔がこの凹窩部内に設けられることを特徴とする請求項6に記載の光学シートの積層体を内容とする。
【0016】
本発明の請求項8は、3枚以上の光学シートからなり、表面層用及び裏面層用として用いる光学シートは熱膨張率が略等しいとともに、連結部の摺動構造は、表面層用及び裏面層用のいずれか一方の光学シートから立設され、その先端が他方の光学シートに固着されている立設ピンと、その他の光学シートに連通して設けられ、立設ピンが挿入される略長矩形の長孔とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学シートの積層体を内容とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光学シートの積層体(以下、単に「積層体」と称することがある)は、それぞれの連結部が光学シートを一方向に摺動可能な摺動機構を有するとともに、連結部の摺動方向は全て放射中心点を通るようにされており、全体的にみれば連結部は放射中心点を中心として放射状に摺動するため、熱膨張率が異なる光学シートを積層しても、温度変化に伴い、光学シートは放射中心点を中心とした放射状に伸縮して摺動し、熱膨張率の差を吸収するため、積層体は全体として湾曲したり撓んだりせず、熱膨脹率の差に起因する歪や表示ムラが防止される。
また、連結部は該積層体の2辺以上に設けられているため、使用中に光学シートが積層体から捲れ上がることもなく、安定した光学性能を発揮する。
さらに、連結部の摺動長さを長くすることにより、大きな温度変化による熱膨脹率の差を吸収し湾曲や撓みが発生しない積層体が容易に得られる。
【0018】
放射中心点を該積層体の角部に設けると、その角を含む2辺に設けられる連結部については摺動方向が辺の方向と平行なので、連結部を設けるためのスペースが小さくて済み、全体的にコンパクトな光学シートの積層体を得られる。
また、放射中心点を該積層体の中心部に設けると、液晶ディスプレイにおいて最も注意を引き易い画面の中心において、光学シートが殆ど摺動しないばかりでなく、放射中心点と各連結点の距離の合計が最小となり、光学シートの伸縮にともなう各連結点の摺動距離も最小になるので、光学シートの伸縮時における画面の揺らぎが最小になり、画質が向上する。
【0019】
連結部の摺動構造を、摺動ピンと、各光学シートに連通して設けられる略長矩形の長孔により構成すると、摺動ピンは長孔に沿って略直線的に移動できるので、温度変化により光学シートが伸縮しても、各光学シートは長孔の長軸方向に摺動し、熱膨張率の差を吸収するため、積層体には湾曲や撓みが生じない。
なお、摺動ピンの両端に設けられた拡径部の径は長孔の幅よりも大きいので、これらにより各光学シートは外れないように連結される。また、摺動ピンの拡径部の径よりも幅広で略長矩形であり、深さが該拡径部の高さ以上の深さの凹窩部を該積層体に設け、この凹窩部の内部に長孔を設けると、拡径部はこの凹窩部の内部に没入するので、表面及び裏面が略平坦な積層体が得られる。
【0020】
連結部の摺動構造を、一の光学シートから立設された立設ピンと、その他の光学シートに連通して設けられる略長矩形の長孔により構成すると、立設ピンは長孔に沿って略直線的に移動できるので、温度変化により光学シートが伸縮しても、各光学シートは長孔の長軸方向に摺動できる。
なお、立設ピンの先端に設けられた拡径部の径は長孔の幅よりも大きいので、これらにより各光学シートは外れないように連結される。また、連結ピンの拡径部の径よりも幅広で略長矩形であり、深さが該拡径部の高さ以上の深さの凹窩部を該積層体に設け、この凹窩部の内部に長孔を設けると、拡径部はこの凹窩部の内部に没入するので、表面及び裏面が略平坦な積層体が得られる。
【0021】
連結部の摺動構造を、表面層用及び裏面層用のいずれか一方の光学シートから立設され、その先端が他方の光学シートに固着されている立設ピンと、その他の光学シートに連通して設けられ、立設ピンが挿入される略長矩形の長孔により構成すると、立設ピンは長孔に沿って略直線的に移動できるので、温度変化により光学シートが伸縮しても、各光学シートは長孔の長軸方向に摺動できる。なお、上記の表面層用の光学シートと裏面層用の光学シートの熱膨張率は略等しいので、立設ピンの先端を他方の光学シートに固着しても、温度変化による湾曲は生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明における光学シートの積層体を好ましい実施例に基づいて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0023】
実施例1
本発明の積層体の概要を図1〜図4に記載した実施例1に基づいて説明すれば、本発明は2枚以上の光学シート2(本実施例では2a〜2eの5枚)からなり、その周縁部にこれら光学シート2を連結する連結部3を2以上有する積層体1であって、それぞれの連結部3は光学シートを一方向に摺動可能な摺動機構を有し、連結部3の摺動方向(図1に一点鎖線で示す)は全て放射中心点6を通るようにされて全体として放射状にされているとともに、連結部3は該積層体1の2辺以上に設けられている。
なお、図1において破線で記された四角形内の領域は、発光部材から発せられて液晶画面から出射される光が通過する範囲を示す。図5〜図8においても同様である。
【0024】
本発明において、光学シートとは、光学的機能を備える各種シートの総称であり、代表的なものとして、拡散シート、偏光板(偏光フィルム)、各種レンズシート(レンチキュラーレンズ、フライアイレンズ(蛇の目レンズ)、プリズムシート等)がある。これらの光学シートはそれぞれ所望の光学性能にあわせて適宜用いることができる。
【0025】
本発明では、図2に示すように、2枚以上(図2では5枚)の光学シート2を積層して所望の光学性能を有する積層体1を得る。それぞれの光学シート2の形状は特に限定されず、この積層体1を取り付ける発光部材の形状や大きさにあわせて適宜定めればよい。
これらの光学シート2を積層した積層体1の周縁部には、前記光学シート2を互いに連結するための連結部3が設けられている。連結部3の個数は特に限定されず、積層体1の大きさ等を考慮して適宜定めればよいが、1辺だけにまとめて配置すると、光学シート2がまくれ上がりやすくなり画質が悪化するため、2辺以上、好ましくは4辺全てに渡って設けるようにする。
【0026】
連結部3は、それぞれの光学シート2を固着するのではなく、積層された光学シート2がそれぞれ一方向に摺動できるように緩く連結している。
光学シート2の摺動方向は、図1に示すとおり、任意に設定された放射中心点6と連結部3を結ぶ直線(一点鎖線で示す)の方向と平行である。これにより、熱膨張率が異なる光学シート2を積層した場合でも、各光学シート2は放射中心点6を中心にそれぞれの熱膨張率に従って膨張又は収縮するが、各連結部3において摺動機構により熱膨張率の差が吸収されるため、積層体1には湾曲や撓みが生じない。
なお、光学シート2は使用する際の温度差が大きいほど伸び縮みの差が大きいため、温度差が特に大きい環境で使用する場合には、連結部の摺動長さを長くすればよい。
【0027】
放射中心点6の位置は光学シートを含む平面上であれば任意に定めることができ、原理的には積層体1の外部に設けることも可能であるが、放射中心点6と連結部3の間の距離が長いほど、熱膨張率の差による光学シート2の摺動距離が長くなり、熱膨張率の差を吸収しにくくなるばかりでなく、光学レンズ2の摺動による画面の揺らぎも大きくなるので、放射中心点6は積層体1の内部に設ける方が好ましい。
熱膨張率の差による光学シート2の摺動距離を短くする観点からは、放射中心点6は積層体1の中心部に設けるのが好ましく、発光部材から発せられる光の調整に寄与しない部分(連結部3が設けられる光学シート2の周縁部)の面積を最小にする観点からは、角部に放射中心点6を設けて、その角部を含む辺に連結部3を設けるのが好ましい。
また、放射中心点6においては熱膨張率の差に関わらず、光学シート2は互いに摺動しないので、放射中心点6を中心とした半径数mm程度の範囲(光学シート2の厚さ等により異なる)だけは接着剤等で固着しても積層体1には湾曲や撓みが生じない。従って、放射中心点6を光学シート2の周縁部のうち1辺に設けてここを接着剤などで接着し、その他の辺に連結部3を設けることもできる。
なお、上記した通り、連結部3における光学シート2の摺動距離は放射中心点6からの距離が遠いほど長いので、放射中心点6から離れたところにある連結部3は、長距離摺動できるように、放射中心点6からの距離に比例して長く設定するほうが好ましい。
【0028】
本発明において、連結部3の摺動機構は特に限定されず、連結部3において一方向に摺動する構造であれば、いかなる構造でも採用できる。
その構造を例示すれば、例えば図2〜図4に示すとおり、光学シート2にそれぞれ連通する略長矩形の長孔4を設け、この長孔4に摺動ピン5を挿通して、この摺動ピン5が長孔4内で一方向に摺動できるようにすると共に、摺動ピン4aの両端に拡径部5aを設けて長孔4から摺動ピン5が抜け落ちないようにした構造が挙げられる。
但し、本発明において、略長矩形とは挿通されたピンなどが一定の距離を略直線状に移動できる形状のことをいう。
【0029】
なお、実施例1では摺動ピン5として、一端に拡径部5aを有しており他端に嵌合用の凹部を備えた有頭ピン8aと、一端に拡径部5aを有しており他端に嵌合用の凸部を備えた有頭ピン8bを合体させたものを使用している。
このような構造を使用することにより、異なる熱膨張率を有する光学シート2a〜2eを使用し、これらの光学シート2a〜2eが温度変化によりそれぞれ伸縮したとしても、光学シート2は摺動方向から直角の方向には全く摺動せず(図3参照)、また、各光学シート2a〜2eの熱膨張率の差はそれぞれの光学シート2が摺動方向に摺動することにより吸収される(図4(a)(b)参照)。この時、摺動ピン5は長孔4は連通したままであり、摺動ピン5により各光学シート2a〜2eが連結されている状態は保たれる。
【0030】
なお、積層体1の表面は平坦のほうが好ましいので、上記摺動ピン5の拡径部5aを没入させるための凹窩部7を設けることもできる(図3参照)。なお、図3においては、表面側及び裏面側の光学シート2の厚さを拡径部5aの高さ以上とし、表面側及び裏面側の光学シート2にだけ凹窩部7を凹設しているが、その他の方法として、複数の光学シート2において長孔4の周辺だけ薄くし、これらを積層してから長孔4の周辺を押圧して積層体全体を凹ませることにより凹窩部7を設けることもできる。
【0031】
なお、実施例1において使用した光学シート2はそれぞれ下記のとおりであり、PETとポリカーボネートは熱膨張率が異なるが、23℃〜80℃の範囲で、湾曲や撓みが生じなかった。
2a;PETベース製拡散シート(商品名:ライトアップ100SXE、製造元:株式会社きもと)
2b;ポリカーボネート製レンズシート(商品名:GTL5000、製造元:五洋紙工株式会社)
2c;ポリカーボネート製レンズシート(商品名:GTL6000、製造元:五洋紙工株式会社)
2d;PETベース製拡散シート(商品名:BS702、製造元:恵和株式会社)
2e;ポリカーボネート製拡散シート(商品名:PC−9391、製造元:帝人化成株式会社)
【0032】
実施例2
実施例2に係る光学シートの積層体1は、図5に示すとおり、積層体1の右側及び下側に連結部3が設けられていない他は実施例1と同様である。
この実施例においては、放射中心点6が左上に設定され、連結部3が左辺及び上辺だけに設けられているが、左辺の連結部3と放射中心点6は左辺と平行に一直線に並んでいるため、左辺の連結部3の摺動方向は積層体1の左辺と平行であり、同様に上辺の連結部3の摺動方向は積層体1の上辺と平行である。従って、連結部3を設けるために必要なスペース(図5における内側の破線と外郭の実線との間のスペース)は比較的小さくて済み、積層体1をコンパクトに作製することができる。
【0033】
実施例3
実施例3に係る光学シートの積層体1は、図6に示すとおり、積層体1の左側及び上側に連結部3が設けられていない他は実施例1と同様である。
この実施例においては、放射中心点6が左上に設定され、この部分が接着剤により強固に固着されていると共に、連結部3により右辺及び下辺が連結されている。そのため、連結部3が設けられていない左辺側及び上辺側においても、光学シート2がまくれ上がって画質が低下するようなこともない。即ち、比較的少ない連結部3で、積層体1のほぼ全周が係着されていると同様の効果がある。
【0034】
実施例4
実施例4に係る光学シートの積層体1は、図7に示すとおり、放射中心点6が上辺の中央付近に設けられ、右辺、左辺、下辺に連結部3が設けられている他は実施例1と同様である。
この実施例においても、実施例3と同様、比較的少ない連結部3で、積層体1のほぼ全周が係着されていると同様の効果がある。
【0035】
実施例5
実施例5に係る光学シートの積層体1は、図8に示すとおり、放射中心点6が積層体の中央付近に設けられ、全ての辺に連結部3が設けられている他は実施例1と同様である。
この実施例においては、例えば、発光部材が点灯されて積層体1の温度が上昇する最中においても、最も注目を集める液晶ディスプレイの中心部分では光学シート2がそれぞれ熱膨張しても、各光学シート間に摺動が生じないため、画面の揺らぎも生じないという効果がある。
但し、本実施例において、放射中心点6を接着剤等で固着すると、液晶表示装置の中心部における光学性特性が他の部分とは変化して違和感が生じるため、接着剤を用いた固着はされていない。
【0036】
実施例6
実施例6に係る光学シートの積層体1は、図9及び図10に示すとおり、連結部3として、裏面層側の光学シート2eから拡径部5aを有する立設ピン5’が立設され、その他の光学シート2a〜2dに長孔4が設けられてた摺動構造が採用されている他は実施例1と同様である。なお、本実施例においては、光学シート2eから突設された棒状突起に拡径部5aを有するキャップ8cを圧入嵌合することにより、立設ピン5’を形成している。
この実施例においても、実施例1と同様、熱膨張率がそれぞれ異なる光学シート2a〜2eを積層しているが、発光部材の点灯などにより温められて膨張したとしても、図10(a)(b)のように、各光学シート2a〜2eが摺動して熱膨張率の差が吸収されるため、積層体1に湾曲や撓みが生じない。
【0037】
実施例7
実施例7に係る光学シートの積層体1は、表面層側の光学シートが裏面層側の光学シート2eとほぼ同じ熱膨張率を有する光学シート2a’に変更されるとともに、図11及び図12に示すとおり、光学シート2eから立設ピン5’が立設されて、その先端が光学シート2a’に固着され、その他の光学シート2b〜2dに長孔4が設けられた摺動構造が採用されている他は実施例1と同様である。なお、立設ピン5’の先端部は光学シート2a’に設けられたピン受け穴5bに圧入されることにより、光学シート2a’に固着されている。
なお、本実施例に使用した光学シート2a’は、PETベース製拡散フィルム(商品名:オパルスPBS−072、製造元:恵和株式会社)である。
この実施例においても、実施例1と同様、熱膨張率がそれぞれ異なる光学シート2a’及び2b〜2eを積層しているが、発光部材の点灯などにより温められて膨張したとしても、図12(a)(b)のように、各光学シート2a〜2eが摺動するため、熱膨張率の差は吸収され、積層体1に湾曲や撓みが生じない。
また、薄い光学シート2に凹窩部7を設けるといった微細な加工を必要とすることなく積層体1の表面を平坦にできるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0038】
叙上のとおり、本発明に係る光学シートの積層体は、その周縁部で摺動機構を有する連結部で連結され、その摺動方向は放射中心点を通るようにされ、全体として放射状とされているとともに、連結部は該積層体の2辺以上に設けられているため、熱膨張率が異なる光学シートを使用しても、これらの光学シートは温度変化に伴って放射中心点を中心に拡縮し、これらの熱膨張率の差は連結部の摺動機構における各光学シートの摺動により吸収され、積層体には湾曲や撓みが生じないため、歪や表示ムラが防止される。本発明に係る光学シートの積層体は、特に液晶表示装置のバックライトの表面に装着する光学シートの積層体として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る実施例1の光学シートの積層体の平面図である。
【図2】実施例1の光学シートの積層体の分解斜視図である。
【図3】実施例1における摺動機構を摺動方向に対し垂直に切断した概略断面図である。
【図4】(a)、(b)は、実施例1における摺動機構を摺動方向に対し平行に切断した概略断面図である。
【図5】本発明に係る実施例2の光学シートの積層体の平面図である。
【図6】本発明に係る実施例3の光学シートの積層体の平面図である。
【図7】本発明に係る実施例4の光学シートの積層体の平面図である。
【図8】本発明に係る実施例5の光学シートの積層体の平面図である。
【図9】実施例6における摺動機構を摺動方向に対し垂直に切断した概略断面図である。
【図10】(a)、(b)は、実施例6における摺動機構を摺動方向に対し平行に切断した概略断面図である。
【図11】実施例7における摺動機構を摺動方向に対し垂直に切断した概略断面図である。
【図12】(a)、(b)は、実施例7における摺動機構を摺動方向に対し平行に切断した概略断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 光学シートの積層体
2 光学シート
3 連結部
4 長孔
5 摺動ピン
5’ 立設ピン
5a 拡径部
5b ピン受け穴
6 放射中心点
7 凹窩部
8a 有頭ピン
8b 有頭ピン
8c キャップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚以上の光学シートからなり、その周縁部にこれら光学シートを連結する連結部を2以上有する積層体であって、
それぞれの連結部は光学シートを一方向に摺動可能な摺動機構を有し、連結部の摺動方向は全て放射中心点を通るようにされて全体として放射状にされているとともに、連結部は該積層体の2辺以上に設けられていることを特徴とする光学シートの積層体。
【請求項2】
放射中心点が該積層体の角部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の光学シートの積層体。
【請求項3】
放射中心点が該積層体の中心部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の光学シートの積層体。
【請求項4】
連結部の摺動構造は、その両端に拡径部を有する摺動ピンと、
各光学シートに連通して設けられ、拡径部より幅狭で摺動ピンが挿通される略長矩形の長孔とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学シートの積層体。
【請求項5】
摺動ピンの拡径部の径よりも幅広で略長矩形であり、深さが該拡径部の高さ以上の深さの凹窩部が凹設されると共に、長孔がこの凹窩部内に設けられることを特徴とする請求項4に記載の光学シートの積層体。
【請求項6】
連結部の摺動構造は、一の光学シートから立設され、先端に拡径部を有する立設ピンと、
その他の光学シートに連通して設けられ、立設ピンの拡径部の径よりも幅狭でこの立設ピンが挿通される略長矩形の長孔とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学シートの積層体。
【請求項7】
立設ピンの拡径部の径よりも幅広で略長矩形であり、深さが該拡径部の高さ以上の深さの凹窩部が凹設されると共に、長孔がこの凹窩部内に設けられることを特徴とする請求項6に記載の光学シートの積層体。
【請求項8】
3枚以上の光学シートからなり、
表面層用及び裏面層用として用いる光学シートは熱膨張率が略等しいとともに、
連結部の摺動構造は、表面層用及び裏面層用のいずれか一方の光学シートから立設され、その先端が他方の光学シートに固着されている立設ピンと、
その他の光学シートに連通して設けられ、立設ピンが挿入される略長矩形の長孔とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学シートの積層体。
【請求項1】
2枚以上の光学シートからなり、その周縁部にこれら光学シートを連結する連結部を2以上有する積層体であって、
それぞれの連結部は光学シートを一方向に摺動可能な摺動機構を有し、連結部の摺動方向は全て放射中心点を通るようにされて全体として放射状にされているとともに、連結部は該積層体の2辺以上に設けられていることを特徴とする光学シートの積層体。
【請求項2】
放射中心点が該積層体の角部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の光学シートの積層体。
【請求項3】
放射中心点が該積層体の中心部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の光学シートの積層体。
【請求項4】
連結部の摺動構造は、その両端に拡径部を有する摺動ピンと、
各光学シートに連通して設けられ、拡径部より幅狭で摺動ピンが挿通される略長矩形の長孔とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学シートの積層体。
【請求項5】
摺動ピンの拡径部の径よりも幅広で略長矩形であり、深さが該拡径部の高さ以上の深さの凹窩部が凹設されると共に、長孔がこの凹窩部内に設けられることを特徴とする請求項4に記載の光学シートの積層体。
【請求項6】
連結部の摺動構造は、一の光学シートから立設され、先端に拡径部を有する立設ピンと、
その他の光学シートに連通して設けられ、立設ピンの拡径部の径よりも幅狭でこの立設ピンが挿通される略長矩形の長孔とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学シートの積層体。
【請求項7】
立設ピンの拡径部の径よりも幅広で略長矩形であり、深さが該拡径部の高さ以上の深さの凹窩部が凹設されると共に、長孔がこの凹窩部内に設けられることを特徴とする請求項6に記載の光学シートの積層体。
【請求項8】
3枚以上の光学シートからなり、
表面層用及び裏面層用として用いる光学シートは熱膨張率が略等しいとともに、
連結部の摺動構造は、表面層用及び裏面層用のいずれか一方の光学シートから立設され、その先端が他方の光学シートに固着されている立設ピンと、
その他の光学シートに連通して設けられ、立設ピンが挿入される略長矩形の長孔とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学シートの積層体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−42633(P2009−42633A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209560(P2007−209560)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000166649)五洋紙工株式会社 (43)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000166649)五洋紙工株式会社 (43)
【Fターム(参考)】
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