説明

光学デバイスの収納容器

【課題】 ケースから光学デバイスを取り出す際の作業性を高めながら、ケース内部の光学デバイスの保持力を高めて搬送中に生じる振動にも対応でき、ゴミの発生やケースからの脱落もなくすことができる光学デバイスの品質を低下させない収納容器を提供する。
【解決手段】 光学デバイス3を収納する収納凹部を有するケース1と、当該ケースの収納凹部を被覆する被覆部を有するフタ2とからなる光学デバイスの収納容器であって、ケースの収納凹部11、あるいはフタの被覆部21のうち少なくとも一方には、光学デバイス3を保持する緩衝材212を有しており、当該緩衝材212は光学デバイスの接触面に粘着剤が形成されず、かつ光学デバイスの端面形状への追従性の高い発泡材料であり、光学デバイス3が緩衝材212を介して第1ケースと第2ケースの間に挟持されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルタや複屈折板、位相差板等の光学デバイスを搬送する際に用いる収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学フィルタ等の光学デバイスは、その光学的品質を維持するため、ゴミやホコリ等の異物が付着しないようにする必要があり、特に光学的情報を含む光線の入射面(主面)には異物が付着しないように配慮する必要がある。
【0003】
このような要請は光学デバイスを搬送する際に用いる収納容器にも求められ、いくつかの構成が提案されている。例えば、特開2001−2167号(特許文献1)もその一つであり、収納容器はケースとケースを被覆する凹形のフタとを有し、ケースの下部に設けられた粘着シートにて光学デバイスを粘着保持することにより、ケース内壁等との接触を抑制した構成が開示されている。先行技術文献1の構成では、粘着シートのみで光学デバイスを粘着保持しているため、この粘着シートの粘着力が弱すぎると搬送中に外れやすくなり、反対に粘着シートの粘着力が強すぎるとケースからの光学デバイスの取り外しが困難になるという問題がある。
【0004】
そこで、特開2006−199342号(特許文献2)では凸状溝の上部に粘着部材を形成しケース側の粘着力を高めながら光学デバイス側の粘着力を弱めて保持するものが開示されている。しかしながら、先行技術文献2の構成では、粘着力のあるフタ側にも光学デバイスが貼り付くことがあり、作業性が低下するという問題や、ケースとフタの両サイドの粘着シートで光学デバイスを粘着保持しているため、この粘着材の一部が光学デバイスの入射面(主面)に付着する危険性が高まり、この部分にゴミやホコリが付着して光学デバイスを汚染するという問題もあった。
【0005】
また、特開2006−182363号(特許文献3)では粘着シートを用いずにケース側の凹部に光学デバイス側を収納しながら、フタ側に形成された凸状溝で単に光学デバイスを押えつけるものが開示されている。先行技術文献3の構成では、上記先行技術文献1,2に比較して、ケースから光学デバイスを取り出す際の作業性は高まるものの、搬送中に生じる振動に対して十分に対応できないため、光学デバイスがケース内部で揺動し、光学デバイスの外れやケースとのこすれによるゴミの発生を十分に抑えることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−2167号公報
【特許文献2】特開2006−199342号公報
【特許文献3】特開2006−182363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、ケースから光学デバイスを取り出す際の作業性を高めながら、ケース内部の光学デバイスの保持力を高めて搬送中に生じる振動にも対応でき、ゴミの発生やケースからの脱落もなくすことができる光学デバイスの品質を低下させない収納容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、請求項1に示すように、光学デバイスを収納する収納凹部を有する第1ケースと、当該ケースの収納凹部を被覆する被覆部を有する第2ケースとからなる光学デバイスの収納容器であって、前記第1ケースの収納凹部、あるいは第2ケースの被覆部のうち少なくとも一方には、光学デバイスを保持する緩衝材を有しており、当該緩衝材は光学デバイスの接触面に粘着剤が形成されず、かつ光学デバイスの端面形状への追従性の高い発泡材料であり、光学デバイスが前記緩衝材を介して第1ケースと第2ケースの間に挟持されてなることを特徴とする。
【0009】
特に、前記緩衝材は、圧縮荷重が5N/cm2において、圧縮前後の緩衝材の厚み差に対して、圧縮前の緩衝材の厚さで除算した値が0.6以上の柔軟性を具備するものが、光学デバイスの端面形状への追従性を高める上で好ましい材料となる。
【0010】
請求項1によれば、光学デバイスを保持する緩衝材として粘着剤が形成されず、かつ光学デバイスの端面形状への追従性の高い低反発の発泡材料で構成されているため、光学デバイスの端面形状に沿って深く挟み込んだ状態に緩衝材が弾性変化することができ、この状態を維持しながら、光学デバイスの端面形状に沿って隙間なく深く挟み込んだ状態で光学デバイスを保持することができる。その結果、上記緩衝材を介して第1ケースと第2ケースの間で光学デバイスを強固に挟持することができるので、搬送中に生じる振動に対しても光学デバイスがケース内部で揺動することがなくなり、ゴミの発生がなく、ケースから脱落することもない。また上記緩衝材には粘着材が形成されていないため、ケースから光学デバイスを取り出す際の作業性を低下させることもなく、粘着材の一部が光学デバイスの入射面(主面)に付着して汚染する危険性もなくなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ケースから光学デバイスを取り出す際の作業性を高めながら、ケース内部の光学デバイスの保持力を高めて搬送中に生じる振動にも対応でき、ゴミの発生やケースからの脱落もなくすことができる光学デバイスの品質を低下させない収納容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1による光学デバイスを搭載した状態を示すケースの平面図。
【図2】実施例1によるフタの底面図。
【図3】図1の光学デバイスを搭載したケースに対して図2のフタで被覆した状態のA−A線に沿った断面図。
【図4】実施例2によるケースとフタの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による実施形態では、光学フィルタを例にとり、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明の実施例1による光学デバイスを搭載した状態を示すケースの平面図、図2は本発明の実施例1によるフタの底面図、図3は図1の光学デバイスを搭載したケースに対して図2のフタで被覆した状態のA−A線に沿った断面図である。
【0015】
光学デバイスの収納容器は、ケース1(第1ケース)とフタ2(第2ケース)とからなる。ケース1とフタ2ともに、その材料がポリエチレンテレフタレートやポリスチレン系の合成樹脂材からなり、樹脂成形加工により立体構成としている。ケース1は細長い溝状の収納凹部11と収納凹部の周囲に設けられたケース外周部12と、収納凹部11の内底部111に設けられた粘着部112とを有している。
【0016】
収納凹部11は収納される光学デバイスの外形より大きな収納室113を複数有しており、これら収納室113は連結部114を介して相互に連通した構成を有している。連通部114は光学デバイス3の主面より小さな寸法を有しており、光学デバイスが倒れることを抑制する構成となっている。以上により、収納凹部が全体として細長い溝状に形成され、本実施形態ではこれが3つ平行に形成されている。
【0017】
粘着部112は粘着面が表裏両主面に形成された細長い帯状の粘着テープである。なお、この粘着テープは内底部と接着される裏面側の粘着が光学デバイス3を保持する主面の粘着力より強い構成となっている。
【0018】
ケース外周部12は収納凹部の周囲に形成されており、全体として収納凹部を形成した部分以外のケース上面が実質的なケース外周部を構成している。なお、上述の収納凹部、ケース外周部の加工は樹脂材のエンボス加工により形成することができる。
【0019】
フタ2は全体として下方に開口した逆凹形状であり、収納凹部21(被覆部)と収納凹部の外周に設けられたフタ外周部22と、収納凹部21の内底部211に設けられた緩衝部212(緩衝材)とを有している。
【0020】
収納凹部21は前記ケースの収納凹部11の位置に対応して細長い溝状に形成され、本実施形態ではこれが3つ平行に形成されている。
【0021】
緩衝部212は両面テープからなる粘着層212aと追従性の高い発泡材料からなる緩衝層212bからなり、ケースの収納凹部に形成された粘着部112の対応位置に沿って細長い帯状に構成されている。この緩衝部212のうちフタ2と接触する主面側には粘着層212aが配置されてフタの内底部211と接着され、光学デバイス3との接触する主面側には粘着材が形成されていない緩衝層212bが配置されている。
【0022】
なお、この緩衝部212の緩衝層212bは、圧縮荷重が5N/cm2において、圧縮前後の緩衝層(緩衝材)の厚み差に対して、圧縮前の緩衝材の厚さで除算した圧縮荷重値が0.6以上の柔軟性を具備するものが、光学デバイスの端面形状への追従性を高める上で好ましい材料となる。このような柔軟性を有する緩衝層212bを用いることで、図3(b)に示すように緩衝部212の緩衝層212bに対して光学デバイス3の上端面が食い込み、光学デバイス3の上端面形状に沿って深く挟み込んだ状態で緩衝層212bが変形し、この変形状態を維持することができる。そして緩衝層212bと光学デバイス3の上端部の間に隙間が生じることがない状態で光学デバイス3を強固に保持することができる。このような追従性の高い緩衝材の具体的な材料として、本形態の実施例では、日東電工株式会社製の「薄層クリーンフォーム SCFシリーズ」(上記圧縮荷重値が0.8以上)を使用した。
【0023】
このような収納容器に収納される光学デバイス3は全体として直方体形状を有し、表裏主面に光線透過面を有する水晶板等を用いた光学ローパスフィルタである。本実施の形態では、水晶板1枚等の単板構成のものを開示しているが、水晶板と赤外線カットガラスからなる複数枚構成であってもよい。当該光学デバイス3は表裏主面に赤外線遮断や反射防止等の光学的性質を有するコーティング膜が形成されている。また直方体形状の稜部分は面取り加工がなされている場合もあるが、稜を丸める加工を施さない場合もある。このような稜に対する加工を行わない場合、ケースとの接触により切削等による異物が発生することが多いが、本発明ではこのような異物発生を極力抑制することができる。
【0024】
上記実施例1により、図3に示すように、光学デバイス3の下端部をケース1の粘着部112に固着保持するとともに、フタ2の緩衝部211にて粘着剤を用いない状態で、光学デバイス3の上端面に食い込み上端面形状に沿って深く挟み込んだ状態を維持しながら、ケース1とフタ2の間に隙間が生じることがない状態で光学デバイス3を強固に挟持することができる。このため、搬送中に生じる振動に対しても光学デバイス3がケース1内部で揺動することが一切なくなり、ゴミの発生がなく、ケース1から光学デバイス3が脱落することもない。また緩衝部211には粘着材が形成されていないため、ケース1から光学デバイス3を取り出す際にフタ側に光学デバイス3が貼り付くことがなくなり、作業性が低下することもない。
【実施例2】
【0025】
次に、本発明による実施例2について、図4とともに説明する。図4は本発明による光学デバイスを搭載したケースに対してフタで被覆した状態の断面図である。実施例2では、ケース1(第1ケース)とフタ2(第2ケース)の各収納凹部に緩衝部を形成したことが実施例1との相違点である。以下実施例1と同様の部分については同番号を付すとともに説明の一部を省略し相違点を中心に説明する。
【0026】
光学デバイスの収納容器は、ケース1(第1ケース)とフタ2(第2ケース)とからなる。ケース1は細長い溝状の収納凹部11と収納凹部の周囲に設けられたケース外周部12とを有し、当該ケースの収納凹部11の内底部111に沿って細長い帯状の緩衝部115(緩衝材)が構成されている。フタ2は全体として下方に開口した逆凹形状であり、細長い溝状の収納凹部21(被覆部)と収納凹部の外周に設けられたフタ外周部22とを有し、当該フタの収納凹部21の内底部211に沿って細長い帯状の緩衝部212(緩衝材)がケースと同様に構成されている。
【0027】
緩衝部115と緩衝部212は、上記実施例1と同様に、両面テープからなる粘着層と追従性の高い発泡材料からなる緩衝層からなる。つまり緩衝部のうちケース1あるいはフタ2と接触する主面側には粘着層が配置されてケース1あるいはフタ2の内底部と接着され、光学デバイス3との接触する主面側には粘着材が形成されていない緩衝層が配置されている。
【0028】
なお、この緩衝部115と緩衝部212の緩衝層は、圧縮荷重が5N/cm2において、圧縮前後の緩衝層(緩衝材)の厚み差に対して、圧縮前の緩衝材の厚さで除算した圧縮荷重値が0.6以上の柔軟性を具備するものが、光学デバイスの端面形状への追従性を高める上で好ましい材料となる。このような柔軟性を有する緩衝層を用いることで、図4に示すように緩衝部115と緩衝部212の各緩衝層に対して光学デバイス3の上端面あるいは下端面が食い込み、光学デバイス3の上端面形状あるいは下端面形状に沿って深く挟み込んだ状態で緩衝層が変形し、この変形状態を維持することができる。そして上下の各緩衝層と光学デバイス3の間に隙間が生じることがない状態で光学デバイス3を強固に保持することができる。このような追従性の高い緩衝材の具体的な材料として、本形態の実施例では、日東電工株式会社製の「薄層クリーンフォーム SCFシリーズ」(上記圧縮荷重値が0.8以上)を使用した。
【0029】
上記実施例2により、図4に示すように、光学デバイス3の下端部と上端部を緩衝部のみにより粘着剤を一切用いることなく、光学デバイス3の上端面と下端面に食い込み各端面形状に沿って深く挟み込んだ状態を維持しながら、ケース1とフタ2の間に隙間が生じることがない状態で光学デバイス3を強固に挟持することができる。このため、搬送中に生じる振動に対しても光学デバイス3がケース1内部で揺動することが一切なくなり、ゴミの発生がなく、ケース1から光学デバイス3が脱落することもない。また光学デバイス3の保持に粘着材を一切使用しないため、ケース1から光学デバイス3を取り出す際の作業性を低下させることもなく、粘着材の一部が光学デバイス3の入射面(主面)に付着して汚染する危険性も一切なくなる。
【0030】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、光学フィルタや複屈折板、位相差板等の光学デバイスを搬送する際に用いる収納容器の生産に有効である。
【符号の説明】
【0032】
1 ケース
2 フタ
3 光学デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学デバイスを収納する収納凹部を有する第1ケースと、当該ケースの収納凹部を被覆する被覆部を有する第2ケースとからなる光学デバイスの収納容器であって、
前記第1ケースの収納凹部、あるいは第2ケースの被覆部のうち少なくとも一方には、光学デバイスを保持する緩衝材を有しており、当該緩衝材は光学デバイスの接触面に粘着剤が形成されず、かつ光学デバイスの端面形状への追従性の高い発泡材料であり、光学デバイスが前記緩衝材を介して第1ケースと第2ケースの間に挟持されてなることを特徴とする光学デバイスの収納容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−42387(P2011−42387A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191613(P2009−191613)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】