説明

光学フィルター用機能性フィルム

【課題】PDP用光学フィルターに使用する電磁波遮蔽シートの金属を使用した遮蔽面に粘着層付機能性フィルムを貼合した場合、粘着層が変色するような経時変化が起こる場合がある。このような変化が生じない粘着層を有する光学フィルター用機能性フィルムを得ること及びその機能性フィルムと電磁波遮蔽シートを貼合したフィルムを使用してPDP用光学フィルターを得ることが課題である。
【解決手段】有機酸物質を含有しない粘着層を機能性フィルムに設けることにより課題を解決できる粘着層付機能性フィルムを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PDP(プラズマディスプレイパネル)の画面から放出され、周辺の電子機器へのノイズの原因となり、また、人体に悪影響を及ぼすと言われている電磁波をディスプレイの前面で遮蔽する機能を有する電磁波遮蔽シートにさらに別機能のフィルムを付加貼合させ、多機能の光学フィルターを作成するための粘着層付機能性フィルム及びそのフィルムを使用したPDP用光学フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
PDPはその構造や作動の原理上、ディスプレイの前面から強度の漏洩電磁界(電磁波)が放出される。この電磁波を遮蔽するため、金属製の網目パターンを有する電磁波遮蔽シートが使用されている。
【0003】
PDPはリモートコントロールで操作され他のVTR機器等に誤動作を起こす波長900〜1100nmの近赤外線、画面の赤色に影響を及ぼす波長550〜620nmの可視光線を発することから、これらをディスプレイ前面で遮蔽する機能を有するフィルターが必要とされる。また、ディスプレイ画面に作業者やその背景が映り込み、表示の視認性が悪くなることを避ける為の反射防止機能、太陽光やPDPから発せられ使用材料の経時劣化をひき起こす紫外線の遮蔽機能、それ以外にも画面表面が静電気を帯びて埃がつきやすくなることを防ぐ帯電防止性能や、指紋等が付きにくく、また、付いても拭くことにより簡単に落ちやすくする防汚性能、表面にキズがつきにくくなるように耐擦傷性能等いろいろな機能が必要とされる。
【0004】
これらの機能を保持させた多機能の光学フィルターは、通常電磁波遮蔽シートと他の機能を有する光学フィルター用機能性フィルムを貼り合せて製造される。
【0005】
電磁波遮蔽シートの作製方法にはいろいろあるが、例えば、透明性を有する範囲で薄く、銀などの金属膜を蒸着などで透明フィルム面やガラス面に付ける薄膜法と銅などの金属層を薄膜法の場合より厚くフィルム面やガラス面に設け、エッチングなどによって網目状等にパターン化して透明性を出したり、極細の銅等の網目繊維状金属を透明フィルム面に貼るなどして網目状シートを作成するメッシュ法とがあり、より効率的に電磁波を遮蔽するにはメッシュ法が採用される。メッシュ法の場合、透明フィルム面に銅等の金属層を比較的厚く設ける代表的な方法としては、例えば、透明フィルム上に透明樹脂層を積層し、該透明樹脂層上に無電解メッキ層を積層し、次いで電気銅メッキにより該無電解メッキ層上に電気銅メッキ層を形成する。次いで該電気銅メッキ層上全面に黒色電気メッキ層を形成した後、格子(メッシュ)パターンを有したレジスト部をフォトリソグラフィー法で形成する。次いで塩化第二鉄水溶液でエッチングした後、レジスト部を除去することでメッシュ型電磁波遮蔽シートを得ることが出来る。
【0006】
特許文献1には、網目状にパターン加工された金属面をトリアジンアミン系化合物、もしくはメルカプトベンゾイミダゾール系化合物、もしくはチオジプロピオン酸エステル系化合物、もしくはベンゾイミダゾール系化合物、もしくはベンゾトリアゾール系化合物、もしくはチオカルバミン酸塩を含む溶液で浸漬処理をした後、樹脂をコートする方法で製造される電磁波遮蔽シートが開示されているが、このような処理は浸漬処理及び樹脂コートという2工程を必要とし、コストアップの要因となる。
特許文献2には、酸物質を含まないアクリル粘着剤に重金属不活性化剤及び架橋剤を添加した粘着シートを用いることで鉄やステンレス等の被着体金属のイオン化を防止することで粘着剤の劣化、分解を防止し、シートのメクレや剥がれを防止出来ることが記載されているが、PDP用フィルターや粘着剤層に含有される色素の変色防止に関する記載はない。
【0007】
【特許文献1】特開2003−283182公報(第1−3頁)
【特許文献2】特許第2602888号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の薬剤処理のように、メッシュ表面が樹脂でコートされている場合はメッシュ型電磁波遮蔽シートに接着する為に設けられる粘着層の変質は起こりにくいが、薬剤処理の方法では、コストアップになるという問題があり、このような特殊な処理をしていない電磁波遮蔽シートでも問題なく貼り合わせて使用できる粘着層付機能性フィルムの開発が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、PDP用光学フィルターに使用されるメッシュ型電磁波遮蔽シートの金属処理面に粘着層付機能性フィルムを貼合する場合、有機酸物質を含まない粘着層にすることにより、粘着層が変色することを防ぐことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は
(1)有機酸物質を含まない粘着層を有する光学フィルター用機能性フィルム、
(2)粘着層に含有される粘着剤がアクリル系樹脂粘着剤である(1)に記載の光学フィルター用機能性フィルム、
(3)粘着層に色補正用色素を含有する(1)に記載の光学フィルター用機能性フィルム、
(4)900〜1100nmの波長の近赤外線及び/又は550〜620nmの波長の可視光線を吸収する層を有する(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の光学フィルター用機能性フィルム、
(5)反射防止層を有する(1)乃至(4)のいずれか一項に記載の光学フィルター用機能性フィルム、
(6)ベースフィルム上に、900〜1100nmの波長の近赤外線及び/又は550〜620nmの波長の可視光線を吸収する層、粘着層を、この順序で有する(4)に記載の光学フィルター用機能性フィルム、
(7)ベースフィルム上の一面に、900〜1100nmの波長の近赤外線及び/又は550〜620nmの波長の可視光線を吸収する層、粘着層を、この順序で有し、該ベースフィルムの他面に反射防止層を有する(6)に記載の光学フィルター用機能性フィルム、
(8)反射防止層、ベースフィルム及び粘着層を、この順序に有してなる(5)に記載の光学フィルター用機能性フィルム、
(9)金属製の網目パターンを有する電磁波遮蔽シートの網目パターン上に、(1)乃至(8)のいずれか一項に記載の光学フィルター用機能性フィルムを有するPDP用光学フィルター、
(10)金属製の網目パターンを有する電磁波遮蔽シートの網目パターン上に、(1)乃至(8)のいずれか一項に記載の光学フィルター用機能性フィルムを貼合することを特徴とするPDP用光学フィルターの製造法、
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粘着層付光学フィルター用機能性フィルムは電磁波遮蔽面に変色防止等の特殊な処理をしていないメッシュ型電磁波遮蔽シートの電磁波遮蔽面に粘着面を介して貼合しても粘着層に変色等の劣化が起こらないため、どのようなメッシュ型電磁波遮蔽シートにも使用できる機能性フィルムとして、良好な光学フィルターの機能を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の光学フィルター用機能性フィルムは,あらかじめ用意された光学フィルターとして必要な機能を有するフィルムに有機酸物質を含まない粘着層を設けたものである。
【0013】
有機酸物質は、有機化合物のうちで酸性を持つものをいう。このような酸性を持つ有機化合物の例としては、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、フェノール、エノール、チオフェノール、イミド、オキシム、芳香族スルホンアミド又は第1級および第2級ニトロ化合物等が挙げられる。
【0014】
本発明の粘着層付光学フィルター用機能性フィルムは有機酸物質を含まない粘着層を無色或いは有色透明な光学フィルター用機能性フィルム上に設けたものであるが、粘着層はできるだけ透明性の高いものが好ましく、粘着層に含有される使用可能な粘着材料を例示すると、アクリル系樹脂粘着材、ゴム系粘着材、シリコン系樹脂粘着材等であるが、透明性があり、接着力やその他の物性がこの用途に適用できるものであればこれらに限定されるものではない。
【0015】
粘着剤は、透明性、接着性及び耐熱性に優れている点でアクリル系樹脂粘着剤が好ましい。アクリル系樹脂粘着剤は、官能基を持たないアクリル酸系アルキルエステルを主成分として、これに官能基を含有するアクリル酸系アルキルエステルやアクリル酸系アルキルエステル以外の他の単量体成分を共重合させたものである。官能基を持たないアクリル酸系アルキルエステル以外の単量体成分の共重合割合は、官能基を持たないアクリル酸系アルキルエステル成分100重量部あたり、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.5〜15重量部、さらに好ましくは1〜10重量部程度が一般的である。
【0016】
官能基を持たないアクリル酸系アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル又は(メタ)アクリル酸ドデシルなどの、アルキル基の炭素数が1〜12程度であるアクリル酸アルキルエステル乃至メタアクリル酸アルキルエステルが挙げられる。これらは必要に応じ、2種以上併用してもよい。
【0017】
官能基を含有するアクリル酸系アルキルエステルとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、又はグリシジルメタアクリレート等の水酸基やエポキシ基含有アクリル酸系アルキルエステルが挙げられる。アクリル酸系アルキルエステル以外の他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、又は(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。しかし、官能基を持たないアクリル酸系アルキルエステルと共重合する単量体として、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマー等の酸物質は含有してはならない。本発明の光学フィルター用機能性フィルムは、有機酸物質を含まない粘着層を設けたフィルムである。
【0018】
粘着剤は架橋剤を配合してアクリル樹脂を架橋しうる組成で用いるのが好ましい。架橋剤としては前記モノマーの種類に応じて適宜用いられる。一般的には例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物等の脂肪族ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパン付加物等の芳香族ジイソシアネートの如きポリイソシアネート化合物、ブチルエーテル化スチロールメラミン、トリメチロールメラミンの如きメラミン化合物、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン等のジアミン化合物、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン等のエポキシ樹脂やポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ樹脂系化合物、尿素樹脂系化合物、塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸アルミニウム、酢酸銅等の金属塩等が用いられる。架橋剤の配合量は、通例アクリル樹脂100重量部あたり0.001〜10重量部、好ましくは0.005〜5重量部、さらに好ましくは0.01〜3重量部程度である。
【0019】
このようなアクリル樹脂系粘着剤が好ましい理由は、粘着力、凝集力に優れるとともに、ポリマー中に不飽和結合がないため光や酸素に対する安定性が高く、また、モノマーの種類や分子量の選択の自由度が高いからである。
【0020】
次に、ゴム系粘着剤の具体例としては、例えば、天然ゴム系、イソプレンゴム系、スチレンーブタジエン系、再生ゴム系又はポリイソブチレン系のものや、スチレン−イソブチレン−スチレン、スチレン−ブタジェン−スチレン等のゴムを含むブロック共重合体を主とするものが挙げられる。更に、シリコン系樹脂粘着剤の具体例としては、例えば、ジメチルシロキサン系化合物、ジフェニルシロキサン系化合物が挙げられる。
【0021】
粘着層を構成する粘着剤は基材フィルムへの密着性を保持する為に分子量(重合度)の高いもの、即ち、主ポリマーの重量平均分子量Mwは60万〜200万程度が好ましく、より好ましくは80万〜180万程度である。尚、ここでいう基材フィルムは未粘着の機能性フィルムであり、また、未粘着の機能性フィルムを構成するベースフィルムとしては、例えばポリエステルフィルム(以下、PETフィルムと記す)、ポリカーボネートフィルム、トリアセテートフィルム又はノルボルネン系フィルム等の膜厚30〜500μmの高分子フィルムが使用される。
本発明の光学フィルター用機能性フィルムに使用する粘着剤は機能性付与のコート面又は非コート面のいずれかに塗工される。
【0022】
本発明の光学フィルター用機能性フィルムに使用する粘着剤は必要とされる主要成分である有機酸物質を含まない粘着剤、重合開始剤、架橋剤、必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、着色料、溶剤及びその他必要とされる添加剤を十分溶解あるいは分散せしめて未粘着塗工の機能性フィルム上に乾燥後に5〜100μm、好ましくは10〜50μm程度の厚さになるように塗工する。粘着層の形成方法は特に制限されず、たとえば、粘着未塗工の機能性フィルムに粘着層形成材の溶液又は分散液を、バーコータ−、リバースコータ−、コンマコータ−又はグラビアコータ−等によって塗布し乾燥及び/又は硬化する方法、離型フィルムに粘着剤を必要に応じて溶液又は分散液にしてバーコータ−、リバースコータ−、コンマコータ−又はグラビアコータ−等によって塗布し乾燥及び/又は硬化した後、機能性フィルムに転写する方法等が挙げられる。
【0023】
粘着強度等の粘着層の諸物性は用途に合わせて任意の範囲で選択すればよいが、透明性や、一旦貼ったフィルムを剥がす際、被接着面に粘着剤が残らないような作業性や抗品質劣化性が重要であり、また、ユーザーの要望にあわせた色調整等、品質設計段階で適宜検討、選択される。
【0024】
本発明の光学フィルター用機能性フィルムはPDP用光学フィルターの一部材として使用する電磁波遮蔽シートに貼合して必要な機能を付加する目的の粘着付フィルムであればその機能の種類、製造方法、構成等には限定されず、どのようなフィルムであってもよい。PDP用光学フィルターには900〜1100nmの波長の近赤外線(以下、NIRと記す)をカットするフィルムやNeイオン由来の550〜620nmの波長の光線(以下、Ne光と記す)をカットするフィルムが必須である。NIRカットフィルムは、近赤外線吸収剤をバインダー樹脂に溶剤とともに溶解及び/または分散した組成物からなるコート層をベースフィルム上に積層して形成される。近赤外線吸収剤としては例えば、フタロシアニン系、チオール金属錯体系、アゾ系、ポリメチン系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、キノン系又はジイモニウム塩系等の色素化合物が挙げられ、PDPから放出されるNIRの数種類の波長に合わせて通常2種類以上が使用される。又、Ne光カットフィルムは、例えばシアニン系、スクアリリウム系、アゾメチン系、キサンテン系、オキソノール系又はアゾ系等の色素化合物を前記バインダー樹脂に溶剤とともに溶解及び/または分散した組成物からなるコート層を基材上に積層して形成させるが、前記近赤外線吸収剤と混合し、二つの機能を同時に保有させることも出来る。バインダー樹脂としては例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂又はポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。
【0025】
これらのNIRカットフィルム、Ne光カットフィルムおよびNIRとNe光を同時にカットできるフィルムに設ける粘着層はコート面でも反対側のベースフィルム面でもよく、光学フィルターの全体的な構成や、それぞれの成分の相性などを考えて選択すればよく、例えば、NIR吸収剤とNe光吸収剤を同時にカットできるフィルムでそれぞれが影響しあって混用すると安定性が悪くなる場合は一方を粘着剤と混合して粘着層に含有せしめることができる。
【0026】
また、放映していない時のディスプレイの色、或いは放映時のPDP本体(以下、モジュールと記す)からの放映色を補正する必要がある場合はこれらフィルムのコート剤あるいは粘着剤に染料や顔料等の色材を溶解あるいは分散させておくことにより所望の色相のフィルムを得ることができる。
具体的にはカヤセットYellow GN, Red G, Blue N, Orange G, Green A-G, Blue A-2R,
Violet A-R(いづれも日本化薬製)等の配合割合を調整して使用することが出来る。
【0027】
また、画面に作業者やその背景が映り込み、表示の視認性が悪くなることを避ける為の反射防止層をフィルム上に設けることも重要である。湿式コーティング法で反射防止層を形成する場合、ベースフィルム上あるいは必要に応じてベースフィルムにフィルムを傷つきにくくするために設けられたハードコート層上に低屈折率剤をコートするが、屈折率は低いほど好ましく、また、より効率的に反射防止層を形成せしめるためにベースフィルム上あるいは必要に応じて設けられたハードコート層の上に高屈折率剤をコートした後、低屈折率剤をコートする方法がとられる。そのような反射防止層のハードコート層は分子内に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する紫外線硬化性(メタ)アクリレート樹脂が挙げられ、1〜20μm程度の層厚が好適である。また、低屈折率化合物としては例えば、TEFLON AF(デュポン製)、CYTOP(旭ガラス製)、17FM(三菱レイヨン製)等が挙げられ、これらの化合物を溶解できる溶剤に溶解して溶液状として低屈折率層として1μm以下、更に好ましくは0.1μm程度の層厚になるように用いる。また、高屈折率化合物としてはインジウムドープ酸化スズ(ITO),アンチモンドープ酸化スズ(ATO),アンチモン酸亜鉛等の微粒子の透明樹脂分散液等が高屈折率層として0.5〜6μmさらに好ましくは1〜4μmの層厚になるように用いられる。反射防止層をフィルム上に形成するには、これらの化合物をベースフィルム上に成膜時に所定の膜厚になるように塗布した後、乾燥及び/または紫外線照射等で硬化することにより得ることが出来る。反射防止フィルムとしてはアークトップシリーズ(旭硝子製)カヤコートARS−D250−125(日本化薬製)、リアルックシリーズ(日本油脂製)、クリアラスARシリーズ(住友大阪セメント製)等が挙げられる。上記湿式コーティング法以外にも高屈折率剤、低屈折率剤を蒸着法やスパッタ法でベースフィルムに被覆して反射防止フィルムを得ることができ、反射防止の機能を有するフィルムであればよく、その製法に限定されるものではない。これらの反射防止フィルムは光学フィルターのモジュールに最も近い側および/またその反対の最も外側に設けられるため、粘着層は反射防止コート面の反対側のベースフィルム上に設けられる。
【0028】
それ以外にも画面表面が静電気を帯びて埃がつきやすくなることを防ぐ、帯電防止性能や、指紋等が付きにくく、また、付いても拭くことにより簡単に落ちやすくする防汚性能、表面にキズがつきにくくなるように耐擦傷性能等いろいろな機能も必要とされる。
【0029】
本発明の光学フィルター用機能性フィルムで使用されるベースフィルムとしては透明又は半透明なプラスチック、フィルム、シート等が使用出来、具体的にはポリエステルフィルム(以下、PETフィルムと記す)、ポリカーボネートフィルム、トリアセテートフィルム、ノルボルネン系フィルム、塩化ビニールフィルム、ポリプロピレンフィルム又はアクリルフィルム等を使用することが出来る。ベースフィルム上にこれらの機能を持った層を設ける順序は特に限定されないが、好ましくはベースフィルム上にNIR光カット及び/又はNe光カット層、粘着層をこの順序で設ける構成や、ベースフィルム上の一面にNIRカット及び/又はNeカット層、粘着層をこの順序で設け、該ベースフィルムの他面に反射防止層を設ける構成が挙げられる。構成する層は、単独にあるいは幾つかの機能を持つ層を厚さ30μm〜500μmのPETフィルム、ポリカーボネートフィルム、トリアセテートフィルム又はノルボルネン系フィルム等のベースフィルム上に例えば湿式コーティング法、蒸着法、スパッタ法などのいろいろな方法で形成することができ、本発明の光学フィルター用機能性フィルムを得ることが出来る。
【0030】
本発明の光学フィルター用機能性フィルムを用いた光学フィルターはPDPのモジュールの前面に設置されるが、その構成の順序等は特に限定されず、例えばモジュール側から電磁波遮蔽/NIR・Ne光遮蔽/ガラス基板/紫外線遮蔽付反射防止、NIR遮蔽/電磁波遮蔽/Ne光遮蔽/ガラス基板/紫外線遮蔽付反射防止、電磁波遮蔽/NIR遮蔽/Ne光遮蔽/ガラス基板/紫外線遮蔽付反射防止、反射防止フィルム/電磁波遮蔽/NIR遮蔽/ガラス基板/紫外線遮蔽付反射防止、等が挙げられる。ここに使用されるガラス基板は透明なプラスチック基板でもよく、また、PDPの前面の温度によっては基板を省くこともできる。電磁波遮蔽シートの網目パターン上への本発明の機能性フィルムの貼合やその他のフィルム同士や基板への貼合は異物や気泡が無く貼合できればその方法に特に限定されず、クリーンルーム内で一般的な貼合機で行えば、ロールフィルム同士を貼り合わせた後、基板に貼る方法、基板に各フィルムを貼り重ねていく方法、また、フィルムをあらかじめ基板に合わせてカットして貼る方法(枚葉貼合)やロール状フィルムを引き出して直接基板に貼り合わせる方法(ロール貼合)など、いずれの方法でも良い。また、貼合した後に密着性を上げたり、粘着層の均一性を上げるためにオートクレーブ内で加温加圧する方法がよく利用されるが、それぞれの粘着層と被貼合面の性質、製造コスト等を考慮して利用するか決めればよい。
【実施例】
【0031】
以下実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。尚、実施例において部は重量部を、%は重量%をそれぞれ意味する。
【0032】
電磁波遮蔽シートの作製
厚さ188μmのPETフィルム上に、セルロースアセテート及び銀触媒を含むジクロロメタン−ジメチルホルムアミド混合溶液を塗布し、100℃、3分間乾燥した。次いで、55℃で無電解ニッケルメッキ処理し、厚さ0.3μmの無電解メッキ層を得た。次に、電気銅メッキにより、無電解メッキ層上全面に厚さ2μmの電気銅メッキ層を形成した。次いでこれに以下の処方
【0033】
【表1】

【0034】
及び電流密度 0.5A/平方デシメートル、90秒温度は37℃の条件で電気メッキを行い、電気銅メッキ層上全面に黒色電気メッキ層を形成した。次いでこれに線幅20μm、ピッチ280μmの格子パターンを有したレジスト部を、フォトリソグラフィー法により形成した。次いで、これを塩化第二鉄水溶液でエッチングし、水洗、乾燥後、レジストを除去し、メッキ法によるメッシュ型電磁波遮蔽シートを作成した。
【0035】
実施例1
NIR,Ne光吸収フィルムの作製
下記原材料をよく撹拌して混合溶液を作製し、厚さ100μmの易接着処理PETフィルム(商品名A4300;東洋紡績製)上にリップコーターで乾燥後に約8μmの層になるようにコーティングし、乾燥機内の各パートを110℃〜130℃の温度に調整して乾燥し、NIRとNe光を吸収カットする機能性フィルムを作製した。
【0036】
【表2】

【0037】
次に下記処方の粘着剤原材料をよく混合し、100μmの離型フィルム付PETフィルム(商品名コスモシャインA4300;東洋紡績製)上に粘着層の厚さが約18μmになるように塗工し、乾燥機内の各パートを60℃〜100℃の温度に調整して乾燥し、上記により作製した機能性フィルムのコート面に貼り合わせ、NIRとNe光をカットする粘着層付機能性フィルムを作製した。
【0038】
【表3】

【0039】
この粘着層付機能性フィルムの離型フィルムを取り、下記耐湿熱試験方法により試験したところ外観上の変化は無く、635nmの光透過率はほとんど低下せず、比較例のような顕著な低下はなかった。試験後と未試験の本シートによりPDP用一体型光学フィルターを作製したところフィルターの色およびフィルターの機能性も特に問題なかった。
【0040】
実施例2
実施例1の粘着層付機能性フィルムの粘着剤PTR−5000の代わりに有機酸物質フリーのアクリル系樹脂粘着剤PTR−5500(日本化薬製)を使用する以外は全く同じ方法で作製した粘着層付機能性フィルムを下記試験方法により試験を行なったところ外観上の変化は全く無く、635nmの光透過率はほとんど低下せず、比較例のような顕著な低下はなかった。試験後と未試験の本シートによりPDP用一体型光学フィルターを作製したところフィルターの色およびフィルターの機能性も特に問題なかった。
【0041】
耐湿熱試験方法
メッキ法による電磁波遮蔽シートを下記方法にて作製し、この電磁波遮蔽面に各実施例によって作製した粘着層付機能性フィルムを貼り合せ、気温60℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽の中に500時間放置し、色の変化を観察した。
【0042】
比較例1
実施例1のPTR−5000の代わりにアクリル酸含有アクリル樹脂系粘着剤PTR−2500T(日本化薬製)を同量使用する以外は実施例1と全く同じ方法で粘着層付機能性フィルムを作製し、上記試験方法により試験したところ、粘着層の元の青色が緑色になり、635nmの波長の光透過率が4%低下した。試験後フィルムと未試験のフィルムによりPDP用一体型光学フィルターを作製したところ、明らかにフィルターの色が異なり経時的劣化を認めた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
近年、漏洩電磁界は健康障害との関係が強く指摘され、また、周辺の電子機器へのノイズの原因となるため、電磁波遮蔽はいろいろな場面で必要とされている。本発明の機能性フィルムと電磁波遮蔽シートを貼り合わせたフィルムはPDP用光学フィルムとしての利用の他に、CRTテレビの前面フィルター、電子レンジの覗き窓等に利用の可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸物質を含まない粘着層を有する光学フィルター用機能性フィルム。
【請求項2】
粘着層に含有される粘着剤がアクリル系樹脂粘着剤である請求項1に記載の光学フィルター用機能性フィルム。
【請求項3】
粘着層に色補正用色素を含有する請求項1に記載の光学フィルター用機能性フィルム。
【請求項4】
900〜1100nmの波長の近赤外線及び/又は550〜620nmの波長の可視光線を吸収する層を有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学フィルター用機能性フィルム。
【請求項5】
反射防止層を有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学フィルター用機能性フィルム。
【請求項6】
ベースフィルム上に、900〜1100nmの波長の近赤外線及び/又は550〜620nmの波長の可視光線を吸収する層、粘着層を、この順序で有する請求項4に記載の光学フィルター用機能性フィルム。
【請求項7】
ベースフィルム上の一面に、900〜1100nmの波長の近赤外線及び/又は550〜620nmの波長の可視光線を吸収する層、粘着層を、この順序で有し、該ベースフィルムの他面に反射防止層を有する請求項6に記載の光学フィルター用機能性フィルム。
【請求項8】
反射防止層、ベースフィルム及び粘着層を、この順序に有してなる請求項5に記載の光学フィルター用機能性フィルム。
【請求項9】
金属製の網目パターンを有する電磁波遮蔽シートの網目パターン上に、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光学フィルター用機能性フィルムを有するPDP用光学フィルター。
【請求項10】
金属製の網目パターンを有する電磁波遮蔽シートの網目パターン上に、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の光学フィルター用機能性フィルムを貼合することを特徴とするPDP用光学フィルターの製造法。

【公開番号】特開2006−84896(P2006−84896A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270741(P2004−270741)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】