説明

光学フィルタ及びその製造方法

【課題】良好な耐環境性を備える光学フィルタ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】光学フィルタ10は、平板11と回動ピン12と作動ピン13とから構成される。平板11は、透明基板31と、透明基板31上に形成された樹脂層32と、樹脂層32上に形成されたCNT層33と、を備える。CNT層33は最表層に設置する。CNT層33に分散されたCNTは、短波長の光をより吸収する特性を有するため、CNT層33を最表層に形成することによって、樹脂層32に届く紫外線の強度を弱めることができ、樹脂層32に分散する染料の劣化を防止することができる。従って、光学フィルタ10は良好な耐環境性を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブを利用した光学フィルタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ、ビデオカメラ等の撮像装置では、光の強い場所で撮影する際又は写真や映像の風合いを変化させるため撮像装置に入る光の強度だけを特定の比率で減らすNDフィルタ(Neutral Density filter)、赤外域の波長をカットするIR(InfraRed)カットフィルタ等の光学フィルタが用いられている。
【0003】
また、このような光学フィルタとしては、特許文献1に開示されているように透光性を備える基板上に、金属酸化膜等、特定の波長を吸収する光学特性を有する膜を形成することによって形成される。
【特許文献1】特開2006−178395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特定の波長を吸収する特性を備えるフィルタは染料等を樹脂中に分散させて形成される。このような染料は、紫外線や水分に弱く、劣化してしまう問題がある。このように劣化が生ずると光学特性に変化が生ずる。
【0005】
従って、光学特性に変化が生じないよう紫外線や水分による劣化を防ぐことができ、良好な耐環境性を備える光学フィルタ及びその製造方法が求められている。
【0006】
また、特願2006−7583号では、透明基板上にニッケル層を形成し、更にCNT層を形成した光学フィルタを示している。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、良好な耐環境性を備える光学フィルタ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる光学フィルタは、
所定波長の光を減衰する光学フィルタであって、
所定波長を吸収する材料が分散された少なくとも一つの樹脂層と、
炭素系材料からなる炭素層と、を備え、
前記炭素系材料からなる炭素層は、前記光学フィルタの光が入射する側に形成され、前期樹脂層は前記炭素層を通過した光が入射するように前記炭素系材料からなる炭素層よりも下層に形成されていることを特徴とする。
【0009】
前記樹脂層は、透光性を備える基板上に形成されてもよい。
【0010】
前記樹脂層に分散された材料は、ポリエチレンジオキシチオフェンであってもよい。
【0011】
前記炭素系材料は、カーボンナノチューブであってもよい。
【0012】
前記カーボンナノチューブは、径が300nm以下であってもよい。
【0013】
前記カーボンナノチューブは、0.01〜20重量%の割合で混合されてもよい。
【0014】
上述した目的を達成するため、本発明の第2の観点にかかる光学フィルタの製造方法は、
光学フィルタを製造する方法であって、
所定波長を吸収する材料が分散された少なくとも一つの樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、
前記樹脂層の上に、炭素系材料からなる炭素層を形成する炭素層形成工程とを備え、
前記炭素層形成工程では、前記樹脂層へ前記炭素層を通過した光が入射するように、前記炭素層を前記光学フィルタの光が入射する側に形成することを特徴とする。
【0015】
前記樹脂層は、透明基板上に形成されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カーボンナノチューブを分散させた層を最表層に形成することによって良好な耐環境性を備える光学フィルタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係る光学フィルタ及びその製造方法について図を用いて説明する。
【0018】
本実施の形態では、光の強度だけを特定の比率で減らすNDフィルタ(Neutral Density filter)を例に挙げて説明する。
【0019】
本発明の実施の形態に係る光学フィルタ10を図1に示す。図1(a)は、光学フィルタ10の構成例を示す平面図であり、図1(b)は、図1(a)のI−I線断面図である。また、図2は光学フィルタ10を用いた撮像装置20を模式的に示した図である。
【0020】
光学フィルタ10は、図1(a)に示すように、平板状且つ羽根状で所定の硬度を備える平板11と、平板11の一端部に形成された回動ピン12と、平板11の一端部に形成され且つ回動ピン12と反対の面に突き出して形成された作動ピン13と、を備える。入射した光は図1(a)に示す平板11の一点破線で囲まれた領域(減光領域10a)を通過して、その強度を所定程度減衰される。
【0021】
また、光学フィルタ10は、図2に示す撮像装置20内に設置される。回動ピン12は、図2に示すようにフィルタ支持基板23上の穴に嵌合されており、光学フィルタ10の回転中心として機能する。作動ピン13は、回動ピン12とは反対の面に突き出て形成されており 図示しないアクチュエータによって作動させられ、回動ピン12を中心として光学フィルタ10が回動する。なお、回動ピン12と作動ピン13とは、平板11と一体的に成形されたり、例えば平板11に接着剤等で貼り付けられている。
【0022】
撮像装置20は、図2に示すようにレンズ21a〜21cと、絞り22と、光学フィルタ10と、フィルタ支持基板23と、撮像素子24と、基板25とを備える。光学フィルタ10は、この撮像装置20内でフィルタ支持基板23上に設置される。光学フィルタ10の回動ピン12は、フィルタ支持基板23に設けられた穴に嵌合される。また、作動ピン13は図示しないアクチュエータに係合される。アクチュエータによって作動ピン13が駆動することで回動ピン12を中心として光学フィルタ10は回動し、光学フィルタの減光領域10aがフィルタ支持基板23の開口部23aを遮る、又は開放する。このようにして、減光領域10aはレンズ21aと絞り22から入る光を減衰させる。光が減衰される割合は可視光域でほぼ一定であるため、基板25上に設置されたCCD(Charge Coupled Devices)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子24に届く光の色そのものはほとんど影響を受けない。
【0023】
光学フィルタ10は、図1(b)に示すように、平板11を構成する透明基板31と、樹脂層32と、CNT(カーボンナノチューブ:carbon nanotube)層33と、から構成される。本実施形態では、CNT層33が最表層かつ光が入射する側となるように形成され、ついで樹脂層32、続いて透明基板31が形成されている、換言すれば減光領域10aを通過する光は、CNT層33から入射し、樹脂層32を通過し、透明基板31から出射するように構成される。このようにCNT層33を最表層に形成し、CNT層33を通過した光を樹脂層32へ導くことによって、樹脂層32に入射する光のうち紫外線の強度を減少させることができ、樹脂層32内に分散された染料の劣化を防ぐことができる。
【0024】
また、減光領域10aは、光学フィルタ10が図2に示すようにフィルタ支持基板23の開口部23aを遮るように配置された際、開口部23aを覆い、絞り22の開口部22aから入る光を減衰させる。従って減光領域10aはフィルタ支持基板23の開口部23a及び絞り22の開口部22aと同じか、これらより大きい面積を備える。
【0025】
ところで、本実施の形態において撮像装置20に入る光が減光領域10aを通過することによって減衰される割合は波長に対しほぼ一定である必要がある。本実施の形態では樹脂層32内に分布する染料及びCNT層33内に分布するCNTを、少なくとも減光領域10aでほぼ一定に分布させることにより光が減衰する割合を波長に対しほぼ一定にすることが可能である。
【0026】
また、平板11の上面は、CNT層33が形成されるため、CNT層33に分散されたカーボンナノチューブによって凹凸状に形成される。従って、平板11の上面で生ずる反射が良好に抑制される。
【0027】
平板11を構成する透明基板31は、光学的に透明であれば良く、例えばPET(PolyEthyleneTerephthalate)から構成される。透明基板31は、例えば100μm程度の厚みを備える。
【0028】
樹脂層32は、透明基板31とCNT層33との間に形成される。樹脂層32は、光学的に透明なPET等の樹脂に、有機導電材料等の所定の染料等が分散されている。分散される染料としては、例えば以下の化学式に示すポリエチレンジオキシチオフェン(PEDT)が挙げられる。なお、PEDTは、短波長域と比較し長波長域の光をより吸収するという光学特性を備える。具体的に、図3に示すように、450nmでは透過率が75%程度であるが、450nmをピークに、450nmから800nmにかけて、透過率が75%程度から55%程度まで徐々に低下するという特性を備える。
【化1】

【0029】
また、樹脂中にPEDTをより多く分散させることにより、透過率を低くすることができ、また樹脂層32を厚くすることによって透過率を低下させる。このように、分散させる染料の量を増減させる、及び/又は樹脂層32の厚みを増減させることにより、樹脂層32の光学特性、具体的に光の透過率(吸収率)を調節することが可能である。なお、樹脂層32は本実施の形態においては、例えば印刷法、塗布法等によって透明基板31上に形成される。
【0030】
CNT層33は、カーボンナノチューブ(CNT)を分散させた樹脂から構成され、樹脂層32の上面に例えば0.1〜100μm程度の厚みに形成される。CNT層33中に分散されたカーボンナノチューブは炭素から構成され、それぞれ中空の円筒形状である。CNTの径が太すぎると可視光に対して散乱が生じ曇りとなるため、例えば径が10〜300nm、長さが0.1〜30μmのカーボンナノチューブを用いるのがよい。また、光学フィルタ10は、可視光域で光を減衰する割合が一定であることが必要とされる。光学フィルタ10が光を減衰する割合はカーボンナノチューブの添加量が多いほど高く、少ないほど低い。これを利用し、カーボンナノチューブの添加率を変化させることで光学フィルタ10に要求される光の減衰率を調整することができる。ただし樹脂に対するカーボンナノチューブの添加率が増加するとフィルタ材の粘度が上昇し、やがて印刷、成形等に支障が出る。従ってカーボンナノチューブの添加量は光の減衰率と印刷、成形性を勘案する必要がある。本実施形態では、0.01〜20重量%程度でカーボンナノチューブを混入するとよい。また、CNT層33は、本実施の形態では、樹脂層32上に印刷法、塗布法等によって形成される。
【0031】
CNT層33を構成するカーボンナノチューブは、図4に示すような光学特性を備える。図4は、透明樹脂に混入させたCNT層の透過率を示すものである。図4から明らかなように、波長350nmの場合は約10%の透過率であるが、波長が長くなるにつれ透過率は上昇し、800nmでは約20%程度の透過率である。このように、CNTは波長が長くなるにつれ、透過率が高くなる傾向を示す。
【0032】
次に、樹脂層32及びCNT層33を形成した透明フィルムの、光の透過率特性を図5に示す。図5から明らかなように、樹脂層32とCNT層33とを重ねて形成することにより、それぞれが有する波長に対して傾斜する透過率特性が補われ、波長に対してほぼ均一な透過率特性を示すことが分かる。
【0033】
また、CNTは、図4に示すように短波長領域の光を吸収しやすい特性があるため、樹脂層32の上にCNT層33を形成することにより、樹脂層32に届く短波長の光(紫外線等)を減衰させることができる。また、樹脂層32がCNT層33に覆われることによって、樹脂層32は水分等と接触しない。従って、紫外線、水分等による樹脂層32の劣化を防ぐことができ、光学フィルタ10は良好な耐環境性を備える
【0034】
このように本実施の形態に係る光学フィルタ10は、透明基板31上に樹脂層32を形成した上で、CNT層33を形成する。このようにCNT層33を最表層に形成することにより、紫外線をCNT層33で吸収させることができ、劣化しやすい染料が分散された樹脂層32を保護することができ、樹脂層32の光学特性の劣化を防ぐことができる。従って、良好な耐環境性を備える光学フィルタを提供することができる。
【0035】
また、CNT層33は短波長域、具体的に紫外線域に吸収特性を備えるため、長波長域に吸収特性を有する層を更に形成することにより、波長に対し平坦な吸収特性を備える光学フィルタを提供することができる。
【0036】
また、本実施の形態の光学フィルタ10の上面はカーボンナノチューブを分散させたCNT層33が光学フィルタ10の表面に形成されており、CNT層33は凹凸な面に形成されることから、光学フィルタ10の表面で起きる反射を良好に抑えることができる。更にカーボンナノチューブは導電性を備えるため、図2に示す撮像装置20内で回動した場合であっても、良好に静電気の発生を抑制することができる。
【0037】
(実施例)
次に、蛍光オレンジのフィルタ上に、CNT層を被覆した場合と被覆しなかった場合との耐光試験の結果を図6に示す。耐光試験は、まずCNT層を被覆させない状態で蛍光オレンジのフィルタの光の透過率を測定する。次に、CNT層を被覆させたフィルタと、被覆させないフィルタとを、所定の耐光検査装置において所定時間光を照射した上で、フィルタの光の透過率がどのように変化するかを測定した。なお、耐光試験は、温度湿度条件を40℃90%恒温恒湿、UVランプとして水銀ランプ(ピーク波長365nm)を用い、照度を3.0mW/cm2とし、24時間照射で7日間、の試験条件で行った。
【0038】
図6に示すようにCNT層を被覆させないフィルタでは、350nm〜600nmの波長域の全体にわたって、光の透過率が上昇することが分かる。一方、CNT層を被覆させた場合、初期状態のフィルタと比較してわずかに透過率の上昇が見られるものの、初期状態のフィルタの透過率をほぼ維持していることがわかる。この結果から明らかなように、CNT層を形成することによって、CNT層下のフィルタ内に分散された染料の劣化を防ぐことができる。従って、CNT層によって光学特性の低下を防ぐことができる。
【0039】
上述したように、本実施形態の光学フィルタ10は、光の入射する最表層にCNT層33を形成し、CNT層33によって所定波長の光を減衰させた上で樹脂層32、透明基板31へと光を導くことにより、樹脂層32に分散された染料が紫外線等によって劣化することを防ぐことができる。更に、樹脂層32がCNT層33に覆われることによって水分等から保護される。このように、CNT層33を形成することによって、光学フィルタ10の光学特性が低下することを良好に防ぐことができる。このように本実施の形態によれば、良好な耐環境性を有する光学フィルタ10を提供することができる。
【0040】
次に、本実施の形態に係る光学フィルタ10の製造方法を用いて説明する。
【0041】
まず、透明基板を用意する。透明基板は、光学的に透明であればいずれを用いても良く、例えばPETを用いる。透明基板は、複数枚の光学フィルタ10を形成可能な面積を備え、例えば100μmの厚みを備える。
【0042】
次に、樹脂中に染料をほぼ均一に分散させ、透明基板上に塗布法、印刷法等によって樹脂層を形成する。樹脂層に分散させる染料の種類、量は光学フィルタに要求される特性に応じて適宜調節する。
【0043】
続いて、予め気相成長法等の合成方法で形成したCNTを、バインダ中に混合、攪拌することによって均一に分散させる。バインダは、フッ素樹脂としてフッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンの共重合体を、溶剤としてのメチルエチルケトンに混合させたものを用いる。なお、フッ素樹脂に限らず、光学的に透明であれば例えばポリエステル、塩化ビニル、シリコーン等を用いることができる。CNTは、バインダ中に容易に分散させることができるよう、予めイオン交換水に分散させておく。また、CNTは、径が太すぎると可視光に対して散乱が生じ曇りとなるため、例えば径が10〜300nm、長さが0.1〜30μmのものを用いる。また、CNTは0.01重量%〜20重量%程度分散させる。
【0044】
続いて、樹脂層の上面に光学フィルタの形状に対応する開口部を備えるスクリーン印刷版またはメタルマスクを作成し、バインダに分散させたCNTを印刷法、または塗布法等を用いて印刷する、または塗布する。印刷、または塗布が完了したらスクリーン印刷版またはメタルマスクは取り外しておく。続いて、例えば100℃程度で約1時間焼成することにより、CNT層を形成する。なお、CNT層の厚さは0.1〜100μm程度に形成される。
【0045】
これで光学フィルタ10の平板11が完成する。更に、光学フィルタ10の形に切り取り、回動ピン12、作動ピン13を接着剤等によって光学フィルタ10に貼り付ける。これによって、光学フィルタ10が完成する。
【0046】
このように本実施の形態の製造方法では、透明基板上に樹脂層を形成し、その上にCNT層を形成するため、良好な耐環境性を有する光学フィルタ10を製造することができる。
【0047】
本発明は上述した各実施の形態に限られず、様々な変形及び応用が可能である。例えば、上述した実施の形態では、透明基板31上に、染料を分散させた樹脂層32を形成する構成を例に挙げた。しかし、これに限られず、図7(a)及び(b)に示す光学フィルタ50のように、透明基板を省略することもできる。光学フィルタ50は、図7(a)及び(b)に示すように、減光領域50aを備え、更に平板51と回動ピン52と作動ピン53とを備える。平板51は、染料が分散された樹脂層61と、この樹脂層上に形成されたCNT層62とを備える。本実施形態でも、樹脂層61上にCNT層62が形成されるため、樹脂層61に届く紫外線を減衰させ、樹脂層61に水分が付着することがないため、光学フィルタ50は良好な耐環境性を備える。
【0048】
また、光学フィルタは、波長に対して平坦な吸収特性を有するものに限らず、短波長のみを吸収するフィルタであっても良い。特定波長を吸収するフィルタであっても良い。これらは樹脂層において、どのような染料を分散させるかによって適宜変更することが可能である。
【0049】
また、上述した実施の形態では樹脂層は1層から構成される場合を例に挙げて説明したが、これに限られず多層に形成しても良い。
【0050】
また、回動ピン12を回動中心として、作動ピン13をアクチュエータによって作動させることによって、光学フィルタ10を回動させる構成を採って説明したが、これに限られない。例えば、作動ピンのみを備え、作動ピンをアクチュエータ等で回転させることで、光学フィルタ10を回動させる等、光学フィルタ10を駆動する構成によって適宜変更することが可能である。また、回動ピン12と作動ピン13は同一面上にあってもよい。また、光学フィルタ10は更にガイドを備えることも可能である。
【0051】
また、樹脂層32とCNT層62は透明基板31の全面に形成されていなくともよく、少なくとも減光領域10aを覆うことができればよい。さらに樹脂層32とCNT層62のどちらかが全面に形成されて、どちらかが少なくとも減光領域10aを覆う面積だけ形成されていてもよい。
【0052】
また、上述した実施の形態では、CNT層33が光の入射する最表面に形成される構成を例に挙げて説明したが、これに限られない。例えば、光学フィルタ10は透明基板31上にCNT層33が形成され、さらにCNT層33上に樹脂層32が形成されてもよい。この場合はCNT層33が光の入射側になるように光学フィルタ10を配置すれば、減光領域10aを通過する光は、透明基板31から入射し、CNT層33を通過し、樹脂層32から出射する。こうした構成によっても、樹脂層32に入射する光のうち紫外線の強度を減少させることができ、樹脂層32内に分散された染料の劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1(a)は本発明の実施の形態に係る光学フィルタの構成例を示す図である。図1(b)は、図1(a)に示すI−I線断面図である。
【図2】本発明の実施の形態の光学フィルタが搭載された撮像装置を示す図である。
【図3】樹脂層に分散された染料(有機導電材料)の光の透過率を示す図である。
【図4】CNT層の光の透過率を示す図である。
【図5】透明フィルム上に樹脂層とCNT層を形成した場合の、光の透過率を示す図である。
【図6】蛍光フィルムの耐光試験結果を示す図である。
【図7】図7(a)は本発明の変形例を示す図であり、図7(b)は、図7(a)のII−II線断面図である。
【符号の説明】
【0054】
10,50 光学フィルタ
10a,50a 減光領域
11,51 平板
12,52 回動ピン
13,53 作動ピン
20 撮像装置
21a〜21c レンズ
22 絞り
22a 開口部
23 フィルタ支持基板
23a 開口部
24 撮像素子
25 基板
31 透明基板
32,61 樹脂層
33,62 CNT層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定波長の光を減衰する光学フィルタであって、
所定波長を吸収する材料が分散された少なくとも一つの樹脂層と、
炭素系材料からなる炭素層と、を備え、
前記炭素層は前記光学フィルタの光が入射する側に形成され、前記樹脂層は前記炭素層を通過した光が入射するように前記炭素層よりも下層に形成されていることを特徴とする光学フィルタ。
【請求項2】
前記樹脂層は、透光性を備える基板上に形成されることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項3】
前記樹脂層に分散された材料は、ポリエチレンジオキシチオフェンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
前記炭素系材料は、カーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブは、径が300nm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブは、0.01〜20重量%の割合で混合されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項7】
光学フィルタを製造する方法であって、
所定波長を吸収する材料が分散された少なくとも一つの樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、
前記樹脂層の上に、炭素系材料からなる炭素層を形成する炭素層形成工程と、を備え、
前記炭素層形成工程では、前記樹脂層へ前記炭素層を通過した光が入射するように、前記炭素層を前記光学フィルタの光が入射する側に形成することを特徴とする光学フィルタの製造方法。
【請求項8】
前記樹脂層は、透光性を備える基板上に形成されることを特徴とする請求項7に記載の光学フィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−83504(P2008−83504A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264554(P2006−264554)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】