説明

光学フィルタ装置、光量調節装置および光学機器

【課題】光学フィルタの駆動機構を光軸に直交する方向において小型化する
【解決手段】光学フィルタ装置は、光学フィルタ708と、該光学フィルタを光学系の光路に対して挿入および退避させるように該光学系の光軸に直交する方向に移動させるフィルタアクチュエータ709,710,712とを有する。光学フィルタは、フィルタ機能を有するフィルタ部708Aと、可撓性を有する被駆動部708Cとを有する。光学フィルタ装置には、フィルタ部を光軸に直交する方向にガイドするガイド部材707,713が設けられている。フィルタアクチュエータが被駆動部を光軸に沿った方向に駆動することにより、ガイド部材によりガイドされたフィルタ部が光軸に直交する方向に移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラおよび交換レンズ等の光学機器に搭載される光学フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような光学機器には、複数の絞り羽根を用いて絞り開口の面積を変化させることで撮像素子に到達する光量を調節する絞り装置が搭載されている。絞り装置には、いわゆる小絞り回折による光学性能の劣化を防止するために絞り開口を覆うことができるNDフィルタを、光路に対して挿入および退避させるフィルタ駆動機構(光学フィルタ装置)も併せて設けられている場合が多い。
【0003】
フィルタ駆動機構の例が、特許文献1にて開示されている。このフィルタ駆動機構では、アクチュエータによって光軸に直交する面内で回転駆動されるレバー部材を、NDフィルタを保持するフィルタ保持部材に連結している。レバー部材が回転することで、フィルタ保持部材が光軸に直交する面内で、NDフィルタが絞り開口を覆う位置と絞り開口に対して退避する位置との間で駆動される。このように、従来のフィルタ駆動機構では、アクチュエータおよびレバー部材の回転をNDフィルタの直進運動に変換する方式が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−315871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のフィルタ駆動機構では、レバー部材の回転領域やNDフィルタの移動領域として必要なスペースが大きく、光軸に直交する方向における小型化が困難であり、光学機器の大型化を招いていた。
本発明は、光学フィルタの駆動機構を光軸に直交する方向において小型化することができるようにした光学フィルタ装置およびこれを備えた光量調節装置、光学機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての光学フィルタ装置は、光学フィルタと、該光学フィルタを光学系の光路に対して挿入および退避させるように該光学系の光軸に直交する方向に移動させるフィルタ移動用アクチュエータとを有する。光学フィルタは、フィルタ機能を有するフィルタ部と、可撓性を有する被駆動部とを有する。また、光学フィルタ装置には、フィルタ部を光軸に直交する方向にガイドするガイド部材が設けられている。そして、フィルタ移動用アクチュエータが被駆動部を光軸に沿った方向に駆動することにより、ガイド部材によりガイドされたフィルタ部が光軸に直交する方向に移動することを特徴とする。
本発明の他の一側面としての光学フィルタ装置は、光学フィルタと、該光学フィルタを保持するフィルタ保持部材と、該フィルタ保持部材を駆動して、光学フィルタを光学系の光路に対して挿入および退避させるように該光学系の光軸に直交する方向に移動させるフィルタ移動用アクチュエータとを有する。フィルタ保持部材は、光学フィルタを保持する保持部と該保持部から延出して可撓性を持つ被駆動部とを有する。また、光学フィルタ装置には、光学フィルタおよび保持部を光軸に直交する方向にガイドするガイド部材が設けられている。そして、光学フィルタ装置は、フィルタ移動用アクチュエータが被駆動部を光軸に沿った方向に駆動することにより、ガイド部材によりガイドされた光学フィルタおよび保持部が光軸に直交する方向に移動することを特徴とする。
【0007】
なお、上記光学フィルタ装置と絞り装置を備えた光量調節装置、および上記光学フィルタ装置又は光量調節装置を備えた光学機器も本発明の他の側面を構成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光軸に直交する面内で回転するレバー部材や該レバー部材の回転を直進運動に変換する機構を用いずに、光学フィルタ又はフィルタ保持部材の被駆動部を光軸に沿った方向に駆動する。そして、ガイド部材によってフィルタ部又は光学フィルタを光軸に直交する方向にガイドすることで、フィルタ部又は光学フィルタを同方向において光路に対して挿入および退避させることができる。これにより、光軸に直交する方向において光学フィルタ装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1であるカメラの斜視図。
【図2】実施例1のカメラに搭載されたレンズ鏡筒の分解斜視図。
【図3】実施例1のレンズ鏡筒の断面図。
【図4】実施例1のレンズ鏡筒に搭載された光量調節ユニットの斜視図。
【図5】実施例1のレンズ鏡筒に搭載された光量調節ユニットの正面図および断面図。
【図6】実施例1のカメラの電気回路構成を示すブロック図。
【図7】本発明の実施例2のカメラのレンズ鏡筒に搭載された光量調節ユニットの斜視図。
【図8】実施例2のレンズ鏡筒に搭載された光量調節ユニットの正面図および断面図。
【図9】本発明の実施例3のカメラのレンズ鏡筒に搭載された光量調節ユニットの斜視図。
【図10】実施例3のレンズ鏡筒に搭載された光量調節ユニットの正面図および断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0011】
図1には、本発明の実施例であるビデオカメラやデジタルカメラ等の撮像装置(光学機器:以下、カメラという)の構成を示している。図1において、Lはレンズ鏡筒、Bはカメラ本体を示す。カメラ本体B内には、レンズ鏡筒L内に収容された撮影光学系により形成された被写体像を光電変換する撮像素子が収納されている。
【0012】
図2および図3には、図1に示したレンズ鏡筒Lの内部構造を示している。撮影光学系は、物体側(図の左側)から順に、凸,凹,凸,凸の4つのレンズユニットにより構成された変倍光学系(ズームレンズ系)である。
【0013】
これらの図において、L1は第1レンズユニット、L2は光軸方向に移動することにより変倍作用を行う第2レンズユニットである。
L3は光軸AXL(図3参照)に直交する平面(以下、光軸直交面という)内で、すなわち光軸に直交する方向(以下、光軸直交方向という)に移動して像振れ補正を行う第3レンズユニットである。第3レンズユニットL3は、第3aレンズサブユニットL3aと、該第3aレンズサブユニットL3aよりも像面側に配置された第3bレンズサブユニットL3bとにより構成されている。
また、L4は光軸方向に移動することによりフォーカシングを行う第4レンズユニットである。
【0014】
1は第1レンズユニットL1を保持する前玉鏡筒、5は第1レンズユニットL1を所定位置に固定するため、その後端がシフトユニット3を構成する部品の1つであるシフトベース306に結合されて、前端が前玉鏡筒1に結合された固定鏡筒である。
【0015】
2は第2レンズユニットL2を保持するバリエータ移動枠である。
3はシフトユニットであり、シフトマグネットユニット301、シフトベースユニット302、第3aレンズサブユニットL3aを保持する保持枠303および第3bレンズサブユニットL3bを保持する保持枠304により構成されている。保持枠303と保持枠304は互いの位置が調整された後に接着され、さらに保持枠303とシフトマグネットユニット301がビス305により固定される。これにより、第3aレンズサブユニットL3aと第3bレンズサブユニットL3bは一体化され、これらが光軸直交方向に移動される。
4は第4レンズユニットL4を保持するフォーカス移動枠、6は不図示のCCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子(光電変換素子)を保持する後部鏡筒である。後部鏡筒6は、その前端がシフトベース306に結合されている。
【0016】
8は固定鏡筒5と後部鏡筒6とにより両端が保持された第1ガイドバーである。また、不図示の第2ガイドバーは、固定鏡筒5とシフトベース306により保持されている。また、第3および第4ガイドバー10,11は、シフトベース306と後部鏡筒6とにより保持されている。
【0017】
バリエータ移動枠2は、第1ガイドバー8および不図示の第2ガイドバーにより光軸方向に移動可能に支持され、フォーカス移動枠4は第3および第4ガイドバー10,11により光軸方向に移動可能に支持される。
【0018】
シフトユニット3(シフトベース306)は、固定鏡筒5に対して位置決めされた後、後部鏡筒6と固定鏡筒5との間に挟み込まれてこれらに結合される。
【0019】
7は撮影光学系に入射した光量を変化させる光量調節ユニット(光量調節装置)であり、絞り装置部とNDフィルタ装置部(光学フィルタ装置)とを有する。絞り装置部は、複数(ここでは2枚)の絞り羽根を光軸直交方向に移動させて光通過口である絞り開口の大きさ(絞り開口径)を変化させることで、光量を調節する。NDフィルタ装置部は、光学フィルタとしてのラデーションNDフィルタが、絞り羽根とは独立して光路に対して挿入および退避することができるように構成されている。光量調節ユニット7は、シフトベース306にビスによって固定される。
【0020】
後部鏡筒6は、固定鏡筒5に対して位置決めされ、かつ前述したように固定鏡筒5との間にシフトベース306を挟み込んだ上で、ビスにより固定鏡筒5に固定される。
【0021】
201は第2レンズユニットL2を光軸方向に駆動するステッピングモータである。ステッピングモータ201の出力軸には、リードスクリュー202が形成されている。ステッピングモータ201は、支持部材210を介して固定鏡筒5にビスにより固定される。リードスクリュー202には、バリエータ移動枠2に取り付けられたラック203が噛み合っている。このため、ステッピングモータ201に通電されてリードスクリュー202が回転すると、第2レンズユニットL2が光軸方向に移動される。
【0022】
なお、ラック203、バリエータ移動枠2、第1および第2ガイドバーおよびリードスクリュー202は、不図示のねじりコイルバネの付勢力によって互いのガタが除去されている。
【0023】
205はバリエータ移動枠2の基準位置を検出するためのズームリセットスイッチであり、バリエータ移動枠2に形成された遮光部206の光軸方向への移動による遮光状態と透光状態との切り換わりを検出するフォトインタラプタにより構成されている。このズームリセット205は、基板を介してビス207により固定鏡筒5に固定されている。
【0024】
401,402,403はそれぞれ、第4レンズユニットL4を光軸方向に駆動するフォーカスモータ(ボイスコイルモータ)を構成するコイル、ドライブマグネットおよび磁束を閉じるためのヨーク部材である。コイル401に電流を流すと、マグネット402とコイル401との間に発生する磁力線相互の反発によるローレンツ力が発生し、フォーカス移動枠4とともに第4レンズユニットL4が光軸方向に移動される。
また、フォーカス移動枠4は、光軸方向に多極着磁されたセンサマグネット404を保持しており、後部鏡筒6におけるセンサマグネットに対向した位置には、センサマグネットの移動に伴う磁力線の変化を読み取るMRセンサ405がビスにより固定されている。MRセンサ405からの信号を用いることで、フォーカス移動枠4、つまりは第4レンズユニットL4の所定の基準位置からの移動量を検出することができる。
【0025】
次に光量調節ユニット7の構成について、図4および図5を用いて詳しく説明する。図4は光量調節ユニットの分解斜視図、図5はNDフィルタ装置部を被写体側から見たときの正面図と側面断面図である。
【0026】
701は絞り移動用アクチュエータである。絞りアクチュエータ701は、ステッピングモータやガルバノメータ等の回転タイプのアクチュエータである。703は絞り駆動レバー(レバー部材)であり、絞りアクチュエータ701の回転に伴って回転するように絞りアクチュエータ701と連結されている。
702は絞りベースであり、絞りアクチュエータ701を保持するとともに、開放絞り開口を形成するための開口部を有する。
705,706は絞り羽根であり、それぞれの下部に形成された長穴部に絞り駆動レバー703に形成された駆動ピンが挿入されることにより、絞り駆動レバー703と連結されている。絞り駆動レバー703が回転すると、駆動ピンと長穴部との係合によって絞り羽根705,706が光軸直交面内で上下方向に移動する。これにより、絞り羽根705,706によって形成される絞り開口径が変化する。
【0027】
708は前述したNDフィルタであり、ほとんど光量を低下させない透明部と、透明部の透過率よりも低い範囲で透過率が徐々に変化するグラデーション部とを有する。
707は絞り羽根705,706とNDフィルタ708との間に配置された仕切り板である。仕切り板707の絞り羽根側の面およびNDフィルタ側の面にはそれぞれ、絞り羽根705,706およびNDフィルタ708と仕切り板707との摺動面積を小さくして摺動抵抗を減らすためのガイドレール(図示せず)が形成されている。
704は絞りベース702に固定された絞り押え板である。絞り押え板704にも、仕切り板707と同様に、絞り羽根705,706と絞り押え板704との摺動面積を小さくして摺動抵抗を減らすためのガイドレール(図示せず)が形成されている。絞り羽根705,706は、絞り押え板704のガイドレールと仕切り板707のガイドレールとによってガイドされながら、該ガイドレール間のクリアランス内で光軸直交面内にて上下方向に移動可能となっている。
【0028】
NDフィルタ708には、上述した透明部およびグラデーション部を含み、フィルタ機能を有するフィルタ部708Aと、該フィルタ部708Aから延出し、可撓性(曲がり易さ)を有する被駆動部708Cとを有する。仕切り板707によって光軸直交方向にガイドされるフィルタ部708Aに対して、被駆動部708Cは、後述するフィルタアクチュエータによって光軸に沿った方向(光軸に平行な方向又は光軸方向)に駆動される。このため、被駆動部708Cは仕切り板707の近くにおいて1/4円弧を描くように曲がり、これによりNDフィルタ708は全体として側面視にてL字形状を有する。
被駆動部708Cの基端部(フィルタ部708Aから離れる側の端部)708Dは、駆動部材711に接着等の方法によって固定されている。
712,710,709はそれぞれ、NDフィルタ708を駆動するためのフィルタ移動用アクチュエータとしてのNDアクチュエータ(ボイスコイルモータ)を構成するND駆動コイル、ND駆動マグネットおよび磁束を閉じるためのヨーク部材である。ND駆動コイル712は、駆動部材711に接着等の方法により固定されている。駆動部材711は、NDベース(ベース部材)713の内側に配置されたNDガイドバー714によって光軸に沿った方向にガイドされる。また、ヨーク部材709は、NDベース713の内面に固定され、さらに該ヨーク部材709にはND駆動マグネット710が磁力吸着によって固定される。
ND駆動コイル712に電流を流すと、ND駆動マグネット710とND駆動コイル712との間に発生する磁力線相互の反発によるローレンツ力が発生し、ND駆動コイル712と駆動部材711が光軸に沿った方向に移動する。これにより、駆動部材711に基端部708Dが固定されたNDフィルタ708の被駆動部708Cも、光軸に沿った方向708aに駆動される。
そして、被駆動部708Cは、仕切り板707の近くにおいて上方に曲がっているため、フィルタ部708Aは光軸直交方向(上下方向)708bに移動する。
なお、NDベース713におけるNDフィルタ708のフィルタ部708Aが摺動する面には、摺動抵抗を減らすためのガイドレール(図示せず)が形成されている。このため、フィルタ部708Aは、NDベース713のガイドレールと仕切り板707のガイドレールとによってガイドされながら、これらガイドレール間のクリアランス内で上下方向に移動する。NDベース713と仕切り板707はガイド部材に相当する。NDベース713は、絞りベース702に対してビスによって固定される。
NDフィルタ708のベース部材の材料および厚さとしては、被駆動部708Cの曲がり易さが高い材料および厚さを選択するとよい。例えば、トリアセチルセルロースにより形成した厚さ0.08mm程度のベース部材が好適である。
また、NDフィルタ708の挿入/退避方向よび光軸のそれぞれに直交する方向を幅方向とするとき、NDフィルタ708の幅方向の大きさは708eである。これに比べて、NDアクチュエータ(駆動コイル712、ND駆動マグネット710およびヨーク部材709)の幅方向の大きさ712aは小さい。また、本実施例では、NDガイドバー714も、NDフィルタ708の幅方向の大きさ708e内に収まっている。このように、NDガイドバー714も含めて幅方向におけるNDアクチュエータの大きさを、NDフィルタ708の幅方向の大きさ以下とすることで、NDベース713の幅方向の最大の大きさ713aを小さくすることができる。
本実施例によれば、被駆動部708Cを光軸に沿った方向に駆動することでフィルタ部708Aを光軸直交方向に移動させることができる。このため、光軸直交面内で回転するレバー部材を介してNDフィルタを同方向に移動させる従来の構成に比べて、光軸直交方向におけるNDフィルタ装置部、つまりは光量調節ユニットの小型化を図ることができる。しかも、レバー部材や該レバー部材の回転を直進運動に変換する機構を設ける必要がないので、NDフィルタ装置部および光量調節ユニットをさらに小型化することができる。
さらに、本実施例では、光軸に沿った方向において、絞りアクチュエータ701および絞り駆動レバー703が、NDフィルタ708および絞り羽根705,706に対してND駆動アクチュエータとは反対側に配置されている。光軸直交面内で回転するレバー部材(ND駆動レバー)を介してNDフィルタを駆動する従来の構成では、仕切り板を挟んだ両側に絞り駆動レバーとND駆動レバーを配置していた。この場合、両駆動レバーに形成された駆動ピン(絞り羽根およびNDフィルタの長穴部に挿入される部分)が互いに干渉することを避ける必要があり、このためにND駆動アクチュエータの配置自由度が低かった。しかし、本実施例では、ND駆動レバーを用いないため、ND駆動アクチュエータの配置自由度を向上させることができる。
【0029】
図6には、本実施例のカメラの電気的構成を示している。この図において、図1〜図5にて説明したレンズ鏡筒の構成要素については、図1〜図5と同符号を付す。
【0030】
33は第2レンズユニットL2の駆動源であるステッピングモータ(以下、ズームモータという)201である。34は第4レンズユニットL4の駆動源であるボイスコイルモータのコイル401である。
【0031】
35は光量調節ユニット7の駆動源である絞りモータであり、ステッピングモータやガルバノメータ等が用いられる。
【0032】
フォトインタラプタ205は、第2レンズユニットL2が光軸方向における基準位置に位置しているか否かを検出するズームリセットスイッチである。第2レンズユニットL2が基準位置に位置したことが検出された後、ステッピングモータ201に入力するパルス信号数を連続してカウントすることにより、第2レンズユニットL2の光軸方向の移動量(基準位置に対する位置)の検出を行うことができる。
【0033】
709は絞りエンコーダであり、絞りモータ35内にホール素子を配置し、ロータとステータの回転位置関係を検出する方式のものなどが用いられる。
【0034】
37はカメラの制御を司る、CPU等からなるコントロール回路である。38はカメラ信号処理回路であり、撮像素子60からの出力に対して所定の増幅やガンマ補正などの信号処理を施す。これらの処理を受けた映像信号のコントラスト信号は、AEゲート39およびAFゲート40に供給される。AEゲート39およびAFゲート40はそれぞれ、露出制御およびピント合わせのために最適な信号の取り出し範囲を全画面の映像信号の中から設定する。
【0035】
41はAF(オートフォーカス)のためのAF信号を処理するAF信号処理回路であり、映像信号の高周波成分に関する出力を生成する。
【0036】
42はズームスイッチ、43はズームトラッキングメモリである。ズームトラッキングメモリ43は、変倍に際して被写体距離とバリエータ(第2レンズユニットL2)の位置に応じたフォーカシングレンズ(第4レンズユニットL4)の位置情報を記憶している。なお、ズームトラッキングメモリとして、コントロール回路37内のメモリを使用してもよい。
【0037】
例えば、撮影者によりズームスイッチ42が操作されると、コントロール回路37は、ズームトラッキングメモリ43の情報をもとに第2レンズユニットL2と第4レンズユニットL4の所定の位置関係を算出する。そして、コントロール回路37は、該位置関係が保たれるように、ズームモータ33とボイスコイルモータ34の駆動を制御する。
【0038】
また、オートフォーカス動作では、コントロール回路37は、AF信号処理回路41の出力がピークを示すようにボイスコイルモータ34の駆動を制御する。
【0039】
さらに、適正露出を得るために、コントロール回路37は、AEゲート39を通過したY信号の出力の平均値を基準値として、絞りエンコーダ36の出力がこの基準値となるように絞りモータ35の駆動を制御し、光量をコントロールする。
【0040】
51,52はピッチ方向およびヨー方向の振れセンサである。コントロール回路37は、これら振れセンサ51,52からの出力と、MRセンサ405からの信号とに基づいて各コイル308への通電を制御して第3レンズユニットL3を駆動し、像振れを補正する。
【実施例2】
【0041】
図7および図8には、本発明の実施例2であるカメラに搭載された光量調節ユニットの構成を示している。光量調節ユニットのうち絞り装置部の構成は、実施例1と同じである。また、NDフィルタ装置部の構成は、NDフィルタがND保持部材によって保持され、該ND保持部材がND駆動アクチュエータによって駆動される点を除いて実施例1と同じである。実施例1と共通する構成要素には、実施例1と同符号を付して説明に代える。
図7は光量調節ユニットの分解斜視図であり、図8はNDフィルタ装置部を被写体側から見たときの正面図と側面断面図である。
708′はNDフィルタであり、ほとんど光量を低下させない透明部と、透明部の透過率よりも低い範囲で透過率が徐々に変化するグラデーション部とを有する。NDフィルタ708′は、平板形状を有する。
715はNDフィルタ708′を保持するND保持部材(フィルタ保持部材)である。ND保持部材715は、NDフィルタ708′に接着されてこれを保持する保持部715Aと、該保持部715Aから延出し、可撓性(曲がり易さ)を有する被駆動部715Cとを有する。
仕切り板707は、NDフィルタ708′と保持部715Aとを光軸直交方向にガイドする。この保持部715Aに対して、被駆動部715Cは、フィルタアクチュエータによって光軸に沿った方向(光軸に平行な方向又は光軸方向)に駆動される。このため、被駆動部715Cは仕切り板707の近くにおいて1/4円弧を描くように曲がり、これによりND保持部材715は全体として側面視にてL字形状を有する。
ND保持部材715の材料および厚さとしては、被駆動部715Cの曲がり易さが高い材料および厚さを選択するとよい。例えば、厚さ0.08mm程度のカーボンフェザーや厚み0.05mm程度のステンレス板金又はアルミニウム薄板が好適である。
被駆動部715Cの基端部708Dは、駆動部材711に接着等の方法によって固定されている。
ND駆動コイル712に電流を流すと、ND駆動マグネット710とND駆動コイル712との間に発生する磁力線相互の反発によるローレンツ力が発生し、ND駆動コイル712と駆動部材711が光軸に沿った方向に移動する。これにより、駆動部材711に基端部715Dが固定されたND保持部材715の被駆動部715Cも、光軸に沿った方向708aに駆動される。
そして、被駆動部715Cは、仕切り板707の近くにおいて上方に曲がっているため、保持部715AとNDフィルタ708′は光軸直交方向(上下方向)708bに移動する。
なお、NDベース713におけるNDフィルタ708が摺動する面には、摺動抵抗を減らすためのガイドレール(図示せず)が形成されている。このため、NDフィルタ708′およびND保持部材715の保持部715は、NDベース713のガイドレールと仕切り板707のガイドレールとによってガイドされながら、これらガイドレール間のクリアランス内で上下方向に移動する。
NDフィルタの材料には、一般的に、ベースとしてのトリアセチルセルロース中に光量を吸収する物質を練り込んだ材料と、PET材の表面に金属膜を蒸着した材料があるが、後者はNDフィルタの曲げによってクラック(線傷)が付きやすい。このため、NDフィルタを曲げる必要がない本実施例は、後者の材料を用いたNDフィルタを使用する場合に特に好ましい。
本実施例によれば、ND保持部材715の被駆動部715Cを光軸に沿った方向に駆動することでNDフィルタ708′を光軸直交方向に移動させることができる。このため、光軸直交面内で回転するレバー部材を介してNDフィルタを同方向に移動させる従来の構成に比べて、光軸直交方向におけるNDフィルタ装置部、つまりは光量調節ユニットの小型化を図ることができる。しかも、レバー部材や該レバー部材の回転を直進運動に変換する機構を設ける必要がないので、NDフィルタ装置部および光量調節ユニットをさらに小型化することができる。
なお、NDガイドバー714も含めて幅方向におけるNDアクチュエータの大きさを、NDフィルタ708′の幅方向の大きさ以下としている点は、実施例1と同様である。
【実施例3】
【0042】
図9および図10には、本発明の実施例3であるカメラに搭載された光量調節ユニットの構成を示している。光量調節ユニットのうち絞り装置部の構成は、実施例1,2と同じである。また、NDフィルタ装置部の構成は、フィルタアクチュエータとしてステッピングモータが用いられている点を除いて実施例2と同じである。実施例1,2と共通する構成要素には、実施例1,2と同符号を付して説明に代える。
図9は光量調節ユニットの分解斜視図であり、図10はNDフィルタ装置部を被写体側から見たときの正面図と側面断面図である。
717はND保持部材715の基端部715Dが固定された駆動部材711を光軸に沿った方向に駆動するND駆動ステッピングモータである。ND駆動ステッピングモータ717の出力軸には、リードスクリュー717aが形成されている。ND駆動ステッピングモータ717は、支持部材717bを介してNDベース713にビス718により固定される。リードスクリュー717aには、駆動部材711に取り付けられたラック716が噛み合っている。
ステッピングモータ717に通電されてリードスクリュー717aが回転すると、ラック716を介して駆動部材711およびND保持部材715の被駆動部715Cが光軸に沿った方向708aに駆動され、NDフィルタ708′が光軸直交方向に移動する。
本実施例では、NDフィルタ708′の基準位置を検出するための不図示のNDリセットスイッチが設けられている。リセットスイッチは、ND保持部材715の基端部715Dの光軸方向への移動による遮光状態/透光状態の切り換わりを検出するフォトインタラプタにより構成されている。
なお、NDガイドバー714も含めて幅方向におけるND駆動ステッピングモータ717の大きさを、NDフィルタ708′の幅方向の大きさ以下としている点は、実施例1,2と同様である。
なお実施例3は、実施例2で説明したND保持部材715をND駆動ステッピングモータ717により駆動する場合について説明したが、ND駆動ステッピングモータ717によって実施例1にて説明したNDフィルタ708(被駆動部708D)を駆動してもよい。
また、実施例1〜3では、光学フィルタとしてNDフィルタを用いた場合について説明したが、実施例1〜3と同様な構成によって赤外カットフィルタ等、他の光学フィルタを光路に対して挿入および退避させることもできる。
また、実施例1〜3では、NDフィルタやND保持部材の被駆動部を光軸に沿った方向に駆動する場合について説明したが、「光軸に沿った方向」は必ずしも光軸に対して厳密に平行な方向ではなく、光軸に平行な方向からある程度ずれた方向までも含む意味である。
さらに、上記各実施例では、レンズ鏡筒がカメラ本体に一体的に設けられた撮像装置について説明したが、本発明は、カメラに対して着脱可能な交換レンズに搭載される光学フィルタ装置にも適用することができる。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
光学フィルタを光路に対して進退させる小型の光学フィルタ装置およびこれを搭載した小型の光学機器を提供できる。
【符号の説明】
【0044】
L レンズ鏡筒
B カメラ本体
7 光量調節ユニット
708,708′ NDフィルタ
715 ND保持部材
710 ND駆動マグネット
711 駆動部材
712 ND駆動コイル
717 ND駆動ステッピングモータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学フィルタと、
該光学フィルタを光学系の光路に対して挿入および退避させるように該光学系の光軸に直交する方向に移動させるフィルタ移動用アクチュエータとを有し、
前記光学フィルタは、フィルタ機能を有するフィルタ部と、可撓性を有する被駆動部とを有し、
前記フィルタ部を前記光軸に直交する方向にガイドするガイド部材が設けられており、
前記フィルタ移動用アクチュエータが前記被駆動部を前記光軸に沿った方向に駆動することにより、前記ガイド部材によりガイドされた前記フィルタ部が前記光軸に直交する方向に移動することを特徴とする光学フィルタ装置。
【請求項2】
光学フィルタと、
該光学フィルタを保持するフィルタ保持部材と、
該フィルタ保持部材を駆動して、前記光学フィルタを光学系の光路に対して挿入および退避させるように該光学系の光軸に直交する方向に移動させるフィルタ移動用アクチュエータとを有し、
前記フィルタ保持部材は、前記光学フィルタを保持する保持部と該保持部から延出して可撓性を持つ被駆動部とを有し、
前記光学フィルタおよび前記保持部を前記光軸に直交する方向にガイドするガイド部材が設けられており、
前記フィルタ移動用アクチュエータが前記被駆動部を前記光軸に沿った方向に駆動することにより、前記ガイド部材によりガイドされた前記光学フィルタおよび前記保持部が前記光軸に直交する方向に移動することを特徴とする光学フィルタ装置。
【請求項3】
前記光学フィルタの前記光路に対する挿入/退避方向および前記光軸のそれぞれに直交する方向を幅方向とするとき、
該幅方向における前記フィルタ移動用アクチュエータの大きさが、前記光学フィルタの前記幅方向における大きさ以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルタ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の光学フィルタ装置と、
絞り移動用アクチュエータによって駆動されるレバー部材を介して複数の絞り羽根を前記光軸に直交する方向に移動させることにより光通過口の大きさを変化させる絞り装置とを有し、
前記光軸に沿った方向において、前記絞り移動用アクチュエータおよび前記レバー部材が、前記光学フィルタおよび前記絞り羽根に対して前記フィルタ移動用アクチュエータとは反対側に配置されていることを特徴とする光量調節装置。
【請求項5】
光学系と、
請求項1から3のいずれか一項に記載の光学フィルタ装置又は請求項4に記載の光量調節装置とを有することを特徴とする光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−151590(P2011−151590A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10908(P2010−10908)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】