説明

光学フィルタ

【課題】簡便に生産可能で、光学特性の優れたグラデーションタイプを含む多濃度NDフィルタから成る光学フィルタを得る。
【解決手段】透明樹脂基板31上に高さ又はピッチが変化する微細凹凸構造32を連続的に形成し、その上に多層膜から成るND膜33を形成することで、微細凹凸構造32の高さ又はピッチに応じて透過率が変化する。これにより、微細凹凸構造32の高さ又はピッチを連続的に変化させた透明樹脂基板31上に形成することで、濃度変化を有するNDフィルタを作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ等の撮影装置や光学機器等に使用される光学フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、デジタルカメラやビデオカメラ等の光学機器には、光量を調節するための絞り装置が組み込まれている。この絞り装置は、絞り羽根の開閉によりCCD等の固体撮像素子に入射する光量を調節するものであり、被写界が明るい場合には、より小さく絞り込まれるようになっている。
【0003】
従って、快晴時や高輝度の被写体を撮影する際には、光量を減衰させるための絞りは小絞りとなるが、絞りを小さくし過ぎると、光は絞りにより回折し、撮影した画像の劣化を引き起こしてしまうことがある。また、CCD等の固体撮像素子が高感度化するにつれ、更に光量を減衰させる必要があり、この画像劣化の傾向は顕著になる。
【0004】
そこで、この問題の対策として、絞り羽根に光量調整部材としてフィルム状のND(Neutral Density)フィルタを取り付けることにより、絞り開口が大きいまま光量を減衰させている。具体的には、絞り羽根の一部に、接着剤を介して絞り羽根とは異なる別部材から成るNDフィルタを貼り付け、被写体が高輝度の際には、NDフィルタを光軸上に位置させることにより通過光量を制限する。これにより、絞り開口が小さくなり過ぎるまで絞り込むことを回避でき、絞り開口を一定の大きさに維持することができる。
【0005】
更に、光量調節機能として濃度勾配を有するNDフィルタを使用し、このNDフィルタを移動させることにより、更なる光量調節を行うこともできる。この濃度勾配を有するNDフィルタは、グラデーションNDフィルタと呼ばれ、例えば特許文献1に示すように、濃度分布を形成した原版から銀塩フィルムに写し込んで作製する。また、特許文献2に示すように、スリットマスクを使用して成膜して濃度分布を形成したり、特許文献3に示すようなインクジェット法でインクを吐出することにより濃度分布を形成する方法等により作製することができる。
【0006】
図17は従来のグラデーションタイプのNDフィルタ1の模式断面図を示し、透明樹脂基板2上に膜厚を変化させた誘電体層3a及び光吸収層3bを交互に積層し、最表層に膜厚を均一とした誘電体層から成る最表層3cから成るND膜3を成膜している。更に、この透明樹脂基板2の裏面には均一な膜厚の反射防止膜4が成膜されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−95208号公報
【特許文献2】特開2004−61900号公報
【特許文献3】特開2004−246305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、デジタルカメラやビデオカメラ等の撮像機器に使用される固体撮像素子から成る画像センサは高感度化が進み、それに合わせてNDフィルタの高濃度化も進んでいる。
【0009】
しかし、NDフィルタの濃度が高濃度化すると、開口内におけるフィルタ先端部でのフィルタの有無による光量のむらが大きくなり、画質を劣化させてしまうことがある。そのため、フィルタの先端部に向けて濃度が連続的に減少するグラデーションNDフィルタを使用することが一般的になってきている。
【0010】
しかしながら、特許文献1に示す方法によると、銀塩フィルムに含まれる銀塩粒子が散乱を引き起こし画質劣化を起こす場合がある。また、特許文献2に示す方法では、NDフィルタの表面反射を低減するために、先ずスリットマスクを使用して成膜し、更にスリットマスクを使用せずに再表層に均一な厚みの反射防止膜を成膜するため生産工程に時間が掛かってしまう。また、特許文献3に示す方法においては、現状ではインクの分光特性が蒸着膜に劣るという問題を有している。
【0011】
図17に示すグラデーションNDフィルタ1は、グラデーション部においても反射を低減するためには、最表層3cはグラデーション部まで均一の膜厚とすることが好ましい。そのためには、蒸着時に図18(a)に示すように、治具11に取り付けた透明樹脂基板2と蒸着マスク12の間に、所定の間隔を設けて最表層3cの手前の層まで成膜する。続いて、(b)に示すように、蒸着マスク12を外し最表層3cを一定の厚さに成膜する。
【0012】
しかし、この方法では蒸着マスク12を外すために、一旦蒸着チャンバから取り出さなくてはならず作業時間が長く掛かってしまう。
【0013】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、簡便に生産可能で光学特性の優れたグラデーションタイプを含む多濃度の光学フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明に係る光学フィルタは、透明基板の表面に微小な凹凸形状を連続的に形成し、該凹凸形状の上に複数層の無機硬質膜から成るND膜を成膜し、前記凹凸形状はピッチと高さの少なくとも一方を変化させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る光学フィルタによれば、透明樹脂基板上に予めピッチ、高さの少なくとも一方が異なる凹凸形状を連続的に形成し、その上に光吸収層を含むND膜を形成することにより、凹凸形状に応じて透過率の異なる領域を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1の撮像装置の構成図である。
【図2】NDフィルタの模式断面図である。
【図3】微細凹凸構造の斜視図である。
【図4】微細凹凸構造を作製方法の説明図である。
【図5】微細凹凸構造の模式断面図である。
【図6】NDフィルタの蒸着治具の断面図である。
【図7】チャンバの模式図である。
【図8】NDフィルタの膜構成図である。
【図9】変形例のNDフィルタの膜模式図である。
【図10】微細凹凸構造上に蒸着膜が積層される様子の説明図である。
【図11】微細凹凸構造上に蒸着膜が形成され、膜厚の偏りにより透過率が変化することを説明するモデル図である。
【図12】実施例2のNDフィルタの模式断面図及び濃度分布図である。
【図13】光吸収層にTiを使用したNDフィルタの濃度分布図である。
【図14】NDフィルタをプレス抜きで切断した説明図である。
【図15】実施例3のNDフィルタの模式断面図及び濃度分布図である。
【図16】実施例4のNDフィルタの模式断面図及び濃度分布図である。
【図17】従来のグラデーションNDフィルタの模式断面図である。
【図18】従来のグラデーションNDフィルタの作製方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を図1〜図16に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は実施例1における撮像装置の構成図を示し、撮像光学系としてのレンズ21〜24中に、光量調節装置25が設けられ、その後方にローパスフィルタ26、CCD等から成る固体撮像素子27が順次に配列されている。光量調節装置25においては、絞り羽根支持板28に一対の絞り羽根29a、29bが可動に取り付けられている。絞り羽根29aには、絞り羽根29a、29bにより形成される略菱形状の開口部を通過する光量を減光することを目的としてNDフィルタ30が接着されている。
【0019】
撮像装置には、この他に光量調節装置25の駆動や、固体撮像素子27の撮像出力信号を処理する図示しない制御回路が設けられている。
【0020】
なお、NDフィルタ30は絞り羽根29a、29bとは別途に、単独で絞り開口部内に進退するようにしてもよい。
【0021】
図2はNDフィルタ30の模式断面図である。板厚100μmの2軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂フィルムから成る透明樹脂基板31上に、微細凹凸構造32が形成されている。更に、透明樹脂基板31上及び微細凹凸構造32の隙間と上部に、誘電体層33a、光吸収層33b、誘電体層33cから成るND膜33が成膜されている。また、透明樹脂基板31の裏面には反射防止膜34が成膜されている。
【0022】
なお、実施例1においては、透明樹脂基板31に2軸延伸PETを使用しているが、PET以外でも透明性及び機械的強度を有するフィルム状の樹脂基板を使用することも可能である。例えば、PEN(ポリエチレンナフタレート)、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド等を使用することもできる。
【0023】
また、透明樹脂基板31の板厚としては、NDフィルタ30としての剛性を保持しながら、可能な限り薄くすることが望ましい。具体的には、その板厚は300μm以下とすることが好ましく、より好ましくは50〜100μmとすることがよい。
【0024】
図3(a)は微細凹凸構造32の斜視図を示し、透明樹脂基板31上には円錐形状の突起部35が等間隔で連続的に無数に配置された蛾目(Moth eye)構造とも呼ばれている。突起部35の形状は(a)に示す円錐形状の他に、(b)に示す四角錐形状の突起部36、或いは他の多角錐形状、更には(c)に示す逆円錐形状の凹部37としてもよい。
【0025】
また、微細凹凸構造32の凹凸パターンのピッチPは、10〜2000nm程度が好ましく、実施例1においては300nmとしている。
【0026】
微細凹凸構造32を構成する突起部35、36、凹部37を形成する手段としては、例えば次のような方法がある。
【0027】
(1)微細凹凸構造32と逆の形状を有する微細凹凸構造型を用いて、熱や圧力を加えて透明樹脂基板31の表面に微細凹凸構造32を転写する方法。
【0028】
(2)半導体製造技術を用いて透明樹脂基板31の表面に、直接、微細凹凸構造32を形成する方法。
【0029】
(3)透明樹脂基板31の表面に固化可能材料で膜を形成し、微細凹凸構造32と逆の形状を有する微細凹凸構造型を密着させて、固化可能材料を固化させる方法。
【0030】
実施例1においては、形状転写性と生産性に優れ、透明樹脂基板31に与える熱が少ない(3)の方法を用いて、微細凹凸構造32を形成している。
【0031】
固化可能材料は特に限定されないが、UV硬化樹脂が好ましく、例えばウレタン系、アクリル系、エポキシ系、ウレタンアクリレート系等の樹脂が挙げられる。実施例1においては、UV硬化性のポリメチルメタクリレートを使用し、微細凹凸構造32を形成している。
【0032】
図4は微細凹凸構造32の作製方法の説明図であり、先ず転写型41に形成された微細凹凸構造型42上に、固化可能材料43を塗布する。続いて、固化可能材料43を塗布した面に透明樹脂基板31を密着させた後に、透明樹脂基板31側からUV光を照射させることにより、固化可能材料43を固化させ、最後に透明樹脂基板31を転写型41から離型する。
【0033】
転写型41の微細凹凸構造型42の形成方法は種々の方法が知られている。例えば、半導体製造に用いられる電子線描画やレーザー干渉法によるフォトリソグラフィ技術を使用したり、ガラス材に所定の微細凹凸構造を形成させた後に、Niメッキを施し、このメッキ層を剥離して型とする電鋳法等を使用することもできる。
【0034】
図5は微細凹凸構造32の模式断面図を示し、透明樹脂基板31上に形成された微細凹凸構造32の突起の高さは、A、B、Cと紙面右側にゆくほど高くなるように変化する構造となっている。このとき、微細凹凸構造型42としては微細凹凸構造32の高さが高い部分ほど深い穴が形成されている。
【0035】
実施例1において形成する微細凹凸構造型42は、形状や高さ、ピッチ、パターン等が限定されるものではない。また、透明樹脂基板31上に形成された微細凹凸構造32の表面形状を原子間力顕微鏡(AFM)で測定したところ、高さhは50〜500nmで連続的に変化し、300nmのピッチの凹凸パターンが形成されていた。また、突起部35の裾部はφ300nmであるため、ピッチが300nmであれば突起部35の裾部は離れずに隣接している。
【0036】
このようにして作製された透明樹脂基板31を用い、真空蒸着法を用いて図2に示すように、誘電体層33a、光吸収層33b、誘電体層33cから成る無機硬質膜のND膜33を成膜する。誘電体層33a、光吸収層33b、誘電体層33cの材質は特に限定されず、誘電体層33a、33cとしてはAl23、TiO2、SiO2、MgF2、Nb23、Ta25、HfO2、ZrO2等の単体、或いは混合物が使用可能である。しかし、最表層となる誘電体層33cは屈折率が小さいSiO2やMgF2が望ましい。また、光吸収層33bとしては、CeO2、HfO2、Pr23、Sc23、Tb23、TiO2、Nb25、Ta25、Y23、ZnO、ZrO2等を酸素ガスを導入せずに高真空状態で成膜した不飽和酸化物、Ti、Cr、Ni等の金属やこれらの酸化物及び合金、更にこれらの吸収材料と上述した誘電体材料との混合物が使用可能である。
【0037】
図6は透明樹脂基板31上にND膜33を成膜するための蒸着治具51の断面図である。この蒸着治具51は図示しないピン等を介して、透明樹脂基板31に微細凹凸構造32が形成された面を成膜面側に向けて、蒸着パターン形成マスク52と共に固定されている。
【0038】
図7は透明樹脂基板31上にND膜33を成膜するための真空蒸着機のチャンバの構成図である。チャンバ53内には蒸着源54が設けられていると共に、回転可能な回転ドーム55が設けられている。この回転ドーム55には、成膜部位に開口部を設けた蒸着パターン形成マスク52と透明樹脂基板31をセットした図6に示す蒸着治具51が配置されている。蒸着治具51に固定された透明樹脂基板31は、回転ドーム55と共にチャンバ53のZ軸を中心に回転し成膜が行われる。
【0039】
実施例1においては、誘電体層33aとしてAl23、光吸収層33bとしてTiOx、誘電体層33cとしてSiO2を使用し、図8に示す膜構成図から成るNDフィルタ30を作製した。
【0040】
透明樹脂基板31上に形成された微細凹凸構造32の高さは図5に示すように連続的に変化しているため、図8に示すように微細凹凸構造32上にND膜33を形成すると、微細凹凸構造32の高さに応じてその透過率も変化する。
【0041】
また、図8に示すように透明樹脂基板31の裏面側にはTiO2とSiO2から成る反射防止膜34を成膜したが、その代りにND膜33を形成してもよい。
【0042】
なお、図9に示すように、透明樹脂基板31の両面のそれぞれに微細凹凸構造32を設け、これらの上にND膜33を形成してもよい。
【0043】
図10は微細凹凸構造32上にND膜33を形成する際の説明図である。(a)に示すように、透明樹脂基板31上に複数の突起部35が形成されており、蒸着材料33’は或る運動エネルギを有して飛翔してくる。そのため、上方から進んできた蒸着材料33’は、突起部35の斜面に到着しても移動を続け、突起部35間の谷部に定着する確率が高い。つまり、(b)に示すように、蒸着膜であるND膜33の厚みとしては谷部が厚く(t2)、突起部35の頂上部ほど薄く(t1)なることになる。
【0044】
図11は微細領域で膜厚分布ができることで、透過率が変化することの説明図である。(a)は膜厚分布がない、即ち平面上に蒸着膜が形成された状態を示し、(b)は膜厚分布がある、即ち微細凹凸構造32上に蒸着膜が形成され、微細凹凸構造32の谷部の膜厚が厚く、頂上部の膜厚が薄い状態を示している。
【0045】
先ず、図11(a)に示す蒸着膜の微小単位をMとし、その幅をd、厚みをL、厚みLの蒸着膜の透過率をTとする。幅dの微小領域A及びBを考えると、入射光I0は微小領域A及びBでそれぞれI0/2であり、それぞれの透過光量はI1及びI2となり、微小領域A及びBの全透過光量はI12となる。それぞれの領域での蒸着膜の総厚はL・xとし、平面上に蒸着膜が形成された(a)では、微小領域A及びBは均等の膜厚であるので、全透過光量I12は次式となる。
12=(I0/2)・Tx・2
【0046】
それに対して、図11(b)では微小領域AとBの全域に付着する蒸着膜体積としては(a)と同じであるが、上述したように凹凸により膜厚に偏りが生じ、微小領域AとBで膜厚が異なる。従って、微小領域AとBのそれぞれの領域での透過光量I3及びI4は異なり、結果として全透過光量I34は透過光量I3及びI4の合計となる。図11に示すように微小領域AとBにおいて、微小領域Bの膜厚y分の蒸着膜が微小領域Aに偏って付着したとすると、その全透過光量I34は次式となる。
34=(I0/2)・{T(x+y)+T(x-y)}
【0047】
透過光量I12とI34を比較すると、全透過光量I34の方が大きな値となり、つまり微小領域A及びBで膜厚の偏りがあると、均一な膜厚よりも透過率が高くなることが分かる。
【実施例2】
【0048】
図12(a)に示すように作製した実施例2のNDフィルタ30は、高さを50〜500nmに幾つかのグループに段階的に変化させた微細凹凸構造32を透明樹脂基板31上に形成し、その上にND膜33を成膜している。(b)は位置と微細凹凸構造32の高さを示し、(c)はそれぞれの位置と光学濃度の関係を示している。光学濃度ODはOD=−logT(Tは透過率)で計算される。(c)によれば、位置により光学濃度が連続的に変化しており、グラデーションNDフィルタとなっていることが分かる。
【0049】
また、光吸収層33bに消衰係数が異なる材料を使用すると、濃度変化幅の異なるグラデーションNDフィルタを製作ことができる。例えば、Tiを使用すると図13に示すように、図12(c)と異なる濃度変化のグラデーションNDフィルタを作製することもできる。
【0050】
最後に、図14に示すようにND膜33が成膜された透明樹脂基板31に対してプレス抜きすることにより、NDフィルタ30を得ることができる。
【0051】
実施例1によれば、透明樹脂基板31上に形成する微細凹凸構造32のパターンを変化させることにより、その上に均一な厚みのND膜33を形成しても光学濃度を形成することができるため、従来2回に分けていた成膜工程を1回で済ませることができる。
【実施例3】
【0052】
図15(a)は実施例3のNDフィルタ30’の模式断面図である。微細凹凸構造32のピッチを300〜800nmの間で変化させた透明樹脂基板31を使用し、実施例1と同様の方法でNDフィルタ30’を作製している。(b)は位置と微細凹凸構造32のピッチを示し、(c)はそれぞれの位置と光学濃度ODの関係を示している。
【0053】
この結果から分かるように、微細凹凸構造32のピッチを変化させることでも濃度が変化するグラデーションNDフィルタ30’を作製することができる。
【実施例4】
【0054】
図16(a)は実施例4のNDフィルタ30”の模式断面図である。微細凹凸構造32の高さが一率に50nmの領域と、高さが一率に500nmの領域を形成した透明樹脂基板31を使用し、実施例1と同様の方法でNDフィルタ30”を作製している。(b)は位置と微細凹凸構造32の高さを示し、(c)はそれぞれの位置と光学濃度ODの関係を示している。
【0055】
この結果から分かるように、複数の均一濃度部から成る多濃度NDフィルタを作製することができる。
【0056】
なお、実施例1〜3においては微細凹凸構造32の高さを変化させ、実施例4においては微細凹凸構造32の高さを一定としてピッチを変化させた。この他に、微細凹凸構造32の高さとピッチの双方を変化させることもでき、つまりピッチと高さの少なくとも一方が変化するようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明はデジタルカメラやビデオカメラ等の撮像装置に使われるNDフィルタとして広く適用できる。
【符号の説明】
【0058】
21〜24 レンズ
25 光量調節装置
27 固体撮像素子
28 絞り羽根支持板
29a、29b 絞り羽根
30、30’、30” NDフィルタ
31 透明樹脂基板
32 微細凹凸構造
33 ND膜
33a、33c 誘電体層
33b 光吸収層
33’、33” 蒸着材料
34 反射防止膜
35、36 突起部
37 凹部
41 転写型
42 微細凹凸構造型
43 固化可能材料
51 蒸着治具
52 蒸着パターン形成用マスク
53 チャンバ
54 蒸着源
55 回転ドーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の表面に微小な凹凸形状を連続的に形成し、該凹凸形状の上に複数層の無機硬質膜から成るND膜を成膜し、前記凹凸形状はピッチと高さの少なくとも一方を変化させたことを特徴とする光学フィルタ。
【請求項2】
前記凹凸形状のピッチと高さの少なくとも一方は連続的に変化することを特徴とする請求項1に記載の光学フィルタ。
【請求項3】
前記凹凸形状のピッチと高さの少なくとも一方は可視光波長以下の微細凹凸構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルタ。
【請求項4】
前記無機硬質膜は光吸収層を含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つの請求項に記載の光学フィルタ。
【請求項5】
開口部を有する絞り羽根と、前記開口部内に進退して通過する光の光量を調節するフィルタを有する光量調節装置において、前記フィルタとして請求項1〜4の何れか1つの請求項に記載の光学フィルタを備えたことを特徴とする光量調節装置。
【請求項6】
撮像光学系と、固体撮像素子と、請求項5に記載の光量調節装置とを有することを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−41027(P2013−41027A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176816(P2011−176816)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000104652)キヤノン電子株式会社 (876)
【Fターム(参考)】