光学フィルム、その製造方法、並びにそれを用いた偏光板、画像表示装置及び立体画像表示システム
【課題】高精細な配向パターンの光学異方性層を有し、かつ製造が容易で実用性に優れた光学フィルムの提供。
【解決手段】透明支持体(16)上に、一方向に処理された配向膜(14)と、重合性基を有する液晶を主成分とする一種の組成物から形成された光学異方性層(12)とを少なくとも有する光学フィルムであって、前記光学異方性層が、互いに直交する面内遅相軸を有する第1相差領域及び第2位相差領域を含み、前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層であることを特徴とする光学フィルムである。
【解決手段】透明支持体(16)上に、一方向に処理された配向膜(14)と、重合性基を有する液晶を主成分とする一種の組成物から形成された光学異方性層(12)とを少なくとも有する光学フィルムであって、前記光学異方性層が、互いに直交する面内遅相軸を有する第1相差領域及び第2位相差領域を含み、前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層であることを特徴とする光学フィルムである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精細な配向パターンの光学異方性層を有し、かつ製造が容易で実用性に優れた光学フィルム、及びその製造方法、並びに前記光学フィルムを利用した偏光板、及び立体画像の表示が可能な画像表示装置及び立体画像表示システムにも関する。
【背景技術】
【0002】
立体画像を表示する3D用画像表示装置には、右眼用画像及び左眼用画像を、例えば、互いに反対方向の円偏光画像とするための光学部材が必要である。かかる光学部材の作製には、偏光膜の吸収軸、位相差膜の遅相軸等が互いに異なる領域を規則的に配置するパターン技術が必要である。
例えば、特許文献1には、フォトレジスト材料を用いて、旋光領域と非旋光領域とにパターニングされた旋光光学素子の作製方法が開示されている。しかし、工程数が多く、工業的に連続生産するのは困難な場合もある。
また、特許文献2には、光異性化物質を利用した進相軸または遅相軸がそれぞれ異なる第1及び第2の領域を有する位相差シートが開示されている。しかし、材料の制約があるので、種々の用途に応じて、最適な特性を達成するのは困難な場合もある。
【0003】
また、光配向膜を利用することにより作製可能な、パターニング楕円偏光板、及び光学異方性体が、特許文献3及び4にそれぞれ開示されている。光配向膜を利用する技術では、光配向膜に互いに異なる方向から光照射して、配向処理する必要があり、煩雑さがある。また、ラビング配向膜を利用してパターン化された光学異方性層を形成する技術も知られているが、いずれもマスクラビングにより、複数の方向にラビング処理する必要があり、処理が煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−90675号公報
【特許文献2】特開平10−153707号公報
【特許文献3】特開2009−193014号公報
【特許文献1】特開2007−71952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パターン化された光学異方性層の作製において、複数の方向から配向処理する工程が必要でなくなれば、製造工程を格段に簡略化でき、連続生産において有利である。しかし、上記した通り、従来、パターン化された光学異方性層の作製には、異なる方向から光照射された光配向膜、又はマスクラビングにより異なる方向にラビング処理されたラビング配向膜等、異なる方向に配向処理が施された配向膜が必要であるというのが、一般的な考えであり、一方向に配向処理された配向膜のみを利用して、パターン化された光学異方性層を作製することができるという考えは、従来なかったと言える。
本発明の第一の目的は、高精細な配向パターンの光学異方性層を有し、かつ製造が容易で実用性に優れた光学フィルムを提供することである。第二の目的は、かかる光学フィルムの簡易な製造方法を提供することである。第三の目的は、低コストで視認性の高い画像表示装置及び立体画像表示システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 透明支持体上に、一方向に処理された配向膜と、重合性基を有する液晶を主成分とする一種の組成物から形成された光学異方性層とを少なくとも有する光学フィルムであって、
前記光学異方性層が、互いに直交する面内遅相軸を有する第1相差領域及び第2位相差領域を含み、前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層であることを特徴とする光学フィルム。
[2] 前記配向膜が、一方向にラビング処理されたラビング配向膜であることを特徴とする[1]の光学フィルム。
[3] Re(550)が、110〜165nmであることを特徴とする[1]又は[2]の光学フィルム:
但し、Re(550)は波長550nmにおける面内レターデーション値(単位:nm)である。
[4] 前記透明支持体のRe(550)が、0〜10nmであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの光学フィルム。
[5] Rth(550)が、|Rth(550)|≦20を満足することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの光学フィルム:
但し、Rth(550)は、波長550nmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。
[6] 前記配向膜が、変性又は未変性ポリビニルアルコールを主成分として含有する膜であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかの光学フィルム。
[7] 前記重合性基を有する液晶が、円盤状液晶であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかの光学フィルム。
[8] 前記光学異方性層が、ピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物の少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする[1]〜[7]のいずれかの光学フィルム。
【0007】
[9] 前記光学異方性層が、下記一般式(2a)のピリジニウム化合物又は下記一般式(2b)のイミダゾリウム化合物をさらに含有することを特徴とする[1]〜[8]のいずれかの光学フィルム:
【化1】
【0008】
式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基(単結合を含む)を表し;R22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基を表し、R22が、ジアルキル置換アミノ基である場合、2つのアルキル基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよく;Xはアニオンを表し;Y22及びY23はそれぞれ、5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基を表し;mは1又は2であり、mが2のとき、複数のY23及びL24は、互いに同一であっても異なっていてもよく;Z21は、ハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基を表し;pは、1〜10の整数であり、R30は、水素原子又は炭素原子数が1〜12のアルキル基である。
【0009】
[10] 前記光学異方性層が、フルオロ脂肪族基含有共重合体の少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする[1]〜[9]のいずれかの光学フィルム。
[11] 前記重合性基を有する液晶が円盤状液晶であり、前記光学異方性層中、円盤状液晶が垂直配向状態に固定されていることを特徴とする[1]〜[10]のいずれかの光学フィルム。
[12] [1]〜[11]のいずれかの光学フィルムと、偏光膜とを含み、前記光学異方性層の第1及び第2の位相差領域のそれぞれの面内遅相軸方向と、偏光膜の吸収軸方向とが45°であることを特徴とする偏光板。
[13] 前記光学フィルムと、前記偏光膜とが粘着層を介して積層されていることを特徴とする[12]の偏光板。
[14] さらに最表面に一層以上の反射防止フィルムが積層されていることを特徴とする[12]又は[13]の偏光板。
【0010】
[15] 第1及び第2の偏光膜;
第1及び第2の偏光膜の間に配置される、少なくとも一方に電極を有し対向配置された一対の基板と、該一対の基板間の液晶層とを含む液晶セル;及び
第1偏光膜の外側に[1]〜[11]のいずれかの光学フィルム;
を少なくとも有する画像表示装置であって、
前記第1偏光膜の吸収軸方向と、前記光学フィルムの第1及び第2位相差領域の面内遅相軸がそれぞれ±45°の角度をなすことを特徴とする画像表示装置。
[16] [15]の画像表示装置と、前記光学フィルムの外側に配置される第3の偏光板とを少なくとも備え、第3の偏光板を通じて立体画像を視認させる立体画像表示システム。
[17] [1]〜[11]のいずれかの光学フィルムの製造方法であって、
1)透明支持体上にラビング配向膜を形成する工程
2)ラビング配向膜を一方向にラビング処理する工程
3)ラビング配向膜上に、重合性基を有する液晶を主成分とする一種の組成物を塗布する工程
4)温度T1℃で加熱してラビング方向に対して、液晶の遅相軸を直交配向させる工程
5)フォトマスク下、紫外線照射して照射領域を直交配向状態で固定化する工程
6)温度T2(但し、T1<T2)℃で加熱して、ラビング方向に対して未照射領域の液晶の遅相軸を平行配向させる工程
7)紫外線照射して平行配向状態で固定化する工程
をこの順で含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高精細な配向パターンの光学異方性層を有し、かつ製造が容易で実用性に優れた光学フィルムを提供することができる。
また、本発明によれば、前記光学フィルムの簡易な製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、低コストで視認性の高い画像表示装置及び立体画像表示システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の光学フィルムの一例の上面図である。
【図2】本発明に係わるパターン光学異方性層の一例の上面模式図である。
【図3】本発明に係わる配向膜の一例の上面模式図である。
【図4】本発明の偏光板の一例の断面模式図である。
【図5】実施例で作製した光学フィルムの光学特性の評価結果を示す図である。
【図6】実施例で作製した光学フィルムの光学特性の評価結果を示す図である。
【図7】実施例で作製した光学フィルムの光学特性の評価結果を示す図である。
【図8】実施例で作製した光学フィルムの光学特性の評価結果を示す図である。
【図9】実施例で作製した光学フィルムの光学特性の評価結果を示す図である。
【図10】実施例で作製した光学フィルムの光学特性の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
なお、本明細書では、「可視光」とは、380nm〜780nmのことをいう。また、本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、測定波長は550nmである。
また、本明細書において、角度(例えば「90°」等の角度)、及びその関係(例えば「直交」、「平行」、及び「45°で交差」等)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°未満の範囲内であることなどを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
【0014】
1.光学フィルム
本発明は、透明支持体上に、一方向に処理された配向膜と、重合性基を有する液晶を主成分とする一種の組成物から形成された光学異方性層とを少なくとも有する光学フィルムであって、前記光学異方性層が、互いに直交する面内遅相軸を有する第1相差領域及び第2位相差領域を含み、前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層であることを特徴とする光学フィルムに関する。本発明の光学フィルムは、立体画像表示用の画像表示装置の視認側偏光子のさらに外側に配置され、当該光学フィルムの第1及び第2の位相差領域のそれぞれを通過した偏光画像が、偏光メガネ等を介して右眼用又は左眼用の画像として、認識される。従って、左右画像が不均一とならないように、第1及び第2の位相差領域は、互いに等しい形状であるのが好ましく、またそれぞれの配置は、均等且つ対称的であるのが好ましい。
【0015】
本発明の光学フィルムの一例の断面模式図を図1に及び上面図を図2に示す。図1及び図2に示す光学フィルム10は、透明支持体16、配向膜14、及び光学異方性層12を有し、光学異方性層12は、画像表示装置内に、第1及び第2の位相差領域12a及び12bが、均等且つ対称に配置されたパターン光学異方性層であるある。第1及び第2の位相差領域12a及び12bは、互いに直交する面内遅相軸a及びbをそれぞれ有する。円偏光を利用する態様では、第1及び第2の光学フィルム10のReはλ/4であるのが好ましく、具体的には、110〜165nmであるのが好ましい。Reは、120〜145nmであることがより好ましく、130〜145nmであることが特に好ましい。透明支持体16が、位相差フィルムである場合は、透明支持体16のReも含めて、光学フィルム全体としてReが前記範囲であるのが好ましい。一方、Rthは小さいほど、クロストークを軽減する観点では好ましく、具体的には、光学フィルム全体として、Rthの絶対値は、20nm以下であるのが好ましい。
【0016】
光学フィルム10が有する配向膜14は、ラビング配向膜であって、第1の位相差領域12aの面内遅相軸a又は第2の位相差領域12bの面内遅相軸bと一致したC1又はC2方向にラビング処理された配向膜である。ラビング配向膜は一般的には、ある程度の厚みがあっても配向規制力を維持できるので、透明支持体16の表面に凹凸があっても、それを補償する厚みの配向膜を形成することで、平坦化することができる。一方、光配向膜は、配向規制力を十分に発揮するためには、厚みを薄くする必要があり、透明支持体の凹凸を平坦化するには、厚みが不足する場合がある。透明支持体の凹凸を平坦化し、パターン光学異方性層を安定的に作製するという観点では、ラビング配向膜を利用する本態様が好ましい。
【0017】
以下、本発明の光学フィルムの製造方法、及び各部材について、詳細に説明する。
(1)光学フィルムの製造方法
本発明の光学フィルムの製造方法の一例は、
1)透明支持体上にラビング配向膜を形成する工程
2)ラビング配向膜を一方向にラビング処理する工程
3)ラビング配向膜上に、重合性基を有する液晶を主成分とする一種の組成物を塗布する工程
4)温度T1℃で加熱してラビング方向に対して液晶の遅相軸を直交配向させる工程
5)フォトマスク下、紫外線照射して照射領域を直交配向状態で固定化する工程
6)温度T2(但し、T1<T2)℃で加熱して、ラビング方向に対して未照射領域の液晶の遅相軸を平行配向させる工程
7)紫外線照射して平行配向状態で固定化する工程
をこの順で含む製造方法である。
【0018】
前記方法では、パターン光学異方性層の形成に、一方向にラビング処理されたラビング配向膜を利用する。ラビング配向膜は、ラビング処理による配向制御能を示し、ラビング処理の方向と加熱条件に従って、配向軸が決定する性質を有する。通常、一方向にラビング処理された配向膜上で液晶を配向させると、液晶は、ラビング方向に対して、その遅相軸を平行にして、又は直交にして配向する。いずれの配向状態になるかは、配向膜材料、液晶、及び配向制御剤の1以上の種類等によって決定される。上記方法では、温度変化によって、例えば、配向膜材料、液晶、及び配向制御剤のいずれか2つ又は3つの材料間の親和性を変化させて、ラビング方向に対して液晶の遅相軸が直交配向した配向状態、及びラビング方向に対して液晶の遅相軸が平行配向した配向状態を、それぞれ実現している。温度T1℃で、直交配向状態とした後に、フォトマスク下の紫外線照射により、当該配向状態を所定のパターンで固定した後、温度T2(但し、T1<T2)℃で、非照射領域を平行配向状態とする。さらに紫外線照射によりその状態を固定することで、面内遅相軸が互いに直交する第1及び第2の位相差領域を有するパターン光学異方性層を形成することができる。第1及び第2の位相差領域の形状及び配置は、5)工程に用いられるフォトマスクを選択することで、所望の形状及び配置のパターンにすることができる。立体画像表示用の画像表示装置に用いられる態様では、前記第1及び第2の位相差領域が、互いの短辺の長さがほぼ等しい帯状であり、かつ交互に繰り返しパターニングされていることが好ましい。
【0019】
前記方法では、温度をT1℃からT2℃に上昇させることで、直交配向状態から平行配向状態への転移を可能としている。温度T1℃では、配向膜材料、液晶、及び配向制御剤のいずれか2つまたは3つの相互作用が配向状態を支配し、液晶を、その遅相軸がラビング方向と直交する方向に配向させる。温度T2℃まで上昇すると、その相互作用はもはや支配的ではなくなり、ラビング配向膜のラビング方向が配向状態を支配し、液晶は、その遅相軸をラビング方向と平行にして平行配向する。これらの状態を達成する温度T1℃及びT2℃の好ましい範囲は、使用する各材料によって変動し、一概に決めることはできない。一例では、T1℃は、60〜90℃であるのが好ましい。一方、T2℃は、配向膜の配向規制力が確保でき、支持体として用いるポリマーフィルムを劣化させない程度であれば、前記液晶化合物の等方相転移温度以上であってもよい。一般的には、T2℃は、90°を超え180℃以下である。
なお、3)工程と4)工程との間に、組成物中の溶剤を蒸発されるために、加熱してもよい。加熱温度は、T1℃より高くても低くてもよく、またT1℃と同一の温度であってもよい。
【0020】
5)及び7)工程では、液晶化合物の重合反応を進行させるために紫外線を照射する。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、25〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は10〜1000mW/cm2であることが好ましく、20〜500mW/cm2であることがより好ましく、40〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは加熱条件下で光照射を実施してもよい。光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)あるいはショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)が好ましく用いられる。
【0021】
5)工程では、液晶の分子を直交配向状態とした後、フォトマスク下、紫外線照射して、重合を進行させて、その配向状態を固定して、第1の位相差領域を形成する。フォトマスク下での紫外線照射では、露光量は、50〜1000mJ/cm2程度であることが好ましく、50〜200mJ/cm2程度であることがさらに好ましい。パターン解像度を向上させるためには、室温で露光することが好ましい。
【0022】
続いて、T2℃まで加熱して、液晶の分子を平行配向状態とした後、再び前面に紫外線を照射し、重合反応を進行させ、その配向状態を固定して、第2の位相差領域を形成する。7)工程での露光量は、200〜2000mJ/cm2程度であることが好ましく、500〜1000mJ/cm2程度であることがさらに好ましい。
【0023】
第1の位相差領域と第2の位相差領域の正面レターデーション値(Re)、膜厚方向のレターデーション値(Rth)を等しくするため、露光温度を制御することが好ましい。例えば、5)工程は、温度T1℃で実施してもよいし、室温程度まで温度を下げてから実施してもよい。また、7)工程は、温度T2℃で実施してもよいし、T2℃より低い温度にしてから実施してもよい。但し、ReとRthを等しくするために、5)工程と7)工程の露光温度は等しいことが好ましい。
【0024】
ラビング配向膜:
上記1)及び2)工程により、ラビング配向膜を形成する。本発明に利用可能な「ラビング配向膜」とは、ラビングによって、液晶分子の配向規制能を有するように処理された膜を意味する。ラビング配向膜には、液晶分子を配向規制する配向軸があり、当該配向軸に従って、液晶分子は配向する。本発明では、液晶分子は、温度T1℃でラビング方向に対して液晶の遅相軸が直交するように配向したのち、温度T2(但し、T1<T2)℃で液晶分子の遅相軸がラビング方向に対して平行になるように配向転移するように、配向膜の材料、液晶、及び配向制御剤を選択する。
【0025】
ラビン配向膜は、一般的にはポリマーを主成分とする。配向膜用ポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。本発明において利用されるポリマー材料は、ポリビニルアルコール又はポリイミド、及びその誘導体が好ましい。特に変性又は未変性のポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールは、種々の鹸化度のものが存在する。本発明では、鹸化度85〜99程度のものを用いるのが好ましい。市販品を用いてもよく、例えば、「PVA103」、「PVA203」(クラレ社製)等は、上記鹸化度のPVAである。ラビング配向膜については、WO01/88574A1号公報の43頁24行〜49頁8行、特許第3907735号公報の段落番号[0071]〜[0095]に記載の変性ポリビニルアルコールを参照することができる。ラビング配向膜の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.01〜1μmであることがさらに好ましい。
【0026】
ラビング処理は、一般にはポリマーを主成分とする膜の表面を、紙や布で一定方向に数回擦ることにより実施することができる。ラビング処理の一般的な方法については、例えば、「液晶便覧」(丸善社発行、平成12年10月30日)に記載されている。
ラビング密度を変える方法としては、「液晶便覧」(丸善社発行)に記載されている方法を用いることができる。ラビング密度(L)は、下記式(A)で定量化されている。
式(A) L=Nl(1+2πrn/60v)
式(A)中、Nはラビング回数、lはラビングローラーの接触長、rはローラーの半径、nはローラーの回転数(rpm)、vはステージ移動速度(秒速)である。
【0027】
ラビング密度を高くするためには、ラビング回数を増やす、ラビングローラーの接触長を長く、ローラーの半径を大きく、ローラーの回転数を大きく、ステージ移動速度を遅くすればよく、一方、ラビング密度を低くするためには、この逆にすればよい。
ラビング密度と配向膜のプレチルト角との間には、ラビング密度を高くするとプレチルト角は小さくなり、ラビング密度を低くするとプレチルト角は大きくなる関係がある。
長尺状の偏光膜であって、吸収軸が長手方向の偏光膜と貼り合わせるには、長尺のポリマーフィルムからなる支持体上に配向膜を形成し、長手方向に対して45°の方向に連続的にラビング処理して、ラビング配向膜を形成するのが好ましい。
【0028】
光学異方性層:
上記3)工程で、配向膜のラビング処理面に、塗布液として調製された重合性基を有する液晶を主成分とする一種の組成物を塗布する。塗布方法としては特に制限はく、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、印刷コーティング法、スプレーコーティング法、スロットコーティング法、ロールコーティング法、スライドコーテティング法、ブレードコーティング法、グラビアコーティング法、ワイヤーバー法等の公知の塗布方法が挙げられる。
【0029】
4)及び6)工程では、液晶の遅相軸をラビング方向に対して直交及び平行にしてそれぞれ配向させる。これにより、第1及び第2の面内遅相軸の方向が決定され、互いに直交した面内遅相軸を有する第1及び第2の位相差領域が形成される。さらに、これらの工程における液晶の配向状態によって、光学異方性層の光学特性(Re及びRth)が決定される。前記光学異方性層は、λ/4板、即ち直線偏光を円偏光に変換する機能を有する光学異方性層であるのが好ましい。λ/4板としての機能を有する光学異方性層の形成には種々の方法がある。一例は、重合性基を有する棒状液晶化合物の遅相軸を層面に水平配向させた状態に固定化する方法である、又は、ディスコティック液晶の円盤面を層面に対して垂直配向させた状態に固定化する方法である。より好ましくは、ディスコティック液晶を垂直配向させた状態に固定する方法である。
【0030】
前記光学異方性層の形成に用いられる組成物の一例は、重合性基を有する液晶化合物の少なくとも1種、及び配向制御剤の少なくとも1種を含有する液晶組成物である。その他、重合開始剤及び増感剤を含有していてもよい。
以下、各材料について詳細に説明する。
【0031】
[重合性基を有する液晶化合物]
本発明の光学異方性層の主原料として使用可能な液晶化合物としては、棒状液晶及びディスコティック液晶を挙げることができ、ディスコティック液晶が好ましく、前記のとおり重合性基を有するディスコティック液晶がより好ましい。
棒状液晶としては、例えば、Makromol. Chem., 190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号、同5622648号、同5770107号、世界特許(WO)95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1−272551号、同6−16616号、同7−110469号、同11−80081号、同11−513019号及び特願2001−64627号などの各公報及び明細書に記載の化合物の中から選んで用いることができる。
【0032】
前記低分子棒状液晶化合物としては、下記一般式(X)で表される化合物が好ましい。
一般式(X)
Q1−L1−Cy1−L2−(Cy2−L3)n−Cy3−L4−Q2
式中、Q1及びQ2はそれぞれ独立に重合性基を表し、L1及びL4はそれぞれ独立に二価の連結基を表し、L2及びL3はそれぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し、Cy1、Cy2及びCy3はそれぞれ独立に二価の環状基を表し、nは0、1又は2である。
【0033】
式中、Q1及びQ2はそれぞれ独立に重合性基である。重合性基の重合反応は、付加重合(開環重合を含む)又は縮合重合であることが好ましい。言い換えると、重合性基は、付加重合反応又は縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。
【0034】
本発明の光学異方性層の主原料として使用可能なディスコティック液晶としては、前記のとおり重合性基を有する化合物が好ましい。
前記ディスコティック液晶としては、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
一般式(I): D(−L−H−Q)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Hは二価の芳香族環又は複素環であり、Qは重合性基であり、nは3〜12の整数を表す。
【0035】
円盤状コア(D)は、ベンゼン環、ナフタレン環、トリフェニレン環、アントラキノン環、トルキセン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環が好ましく、ベンゼン環、トリフェニレン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環が特に好ましい。
【0036】
Lは、*−O−CO−、*−CO−O−、*−CH=CH−、*−C≡C−及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基が好ましく、*−CH=CH−又は*−C≡C−のいずれか一方を少なくとも一つ以上含む二価の連結基であることが特に好ましい。ここで、*は一般式(I)中のDに結合する位置を表す。
【0037】
Hは、芳香族環としては、ベンゼン環及びナフタレン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。複素環としては、ピリジン環及びピリミジン環が好ましく、ピリジン環が特に好ましい。Hは、芳香族環が特に好ましい。
【0038】
重合性基Qの重合反応は、付加重合(開環重合を含む)又は縮合重合であることが好ましい。言い換えると、重合性基は、付加重合反応又は縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。中でも、(メタ)アクリレート基、エポキシ基が好ましい。
【0039】
前記一般式(I)で表されるディスコティック液晶は、下記一般式(II)又は(III)で表されるディスコティック液晶であることが特に好ましい。
【0040】
【化2】
【0041】
式中、L、H、Qは、前記一般式(I)におけるL、H、Qとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0042】
【化3】
【0043】
式中、Y1、Y2、及びY3は、後述する一般式(IV)におけるY11、Y12、及びY13と同義であり、その好ましい範囲も同一である。また、L1、L2、L3、H1、H2、H3、R1、R2、及びR3も、後述する一般式(IV)におけるL1、L2、L3、H1、H2、H3、R1、R2、R3と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0044】
後述するように、一般式(I)、(II)、(III)及び(IV)で表されるように、分子内に複数個の芳香環を有しているディスコティック液晶は、配向制御剤として用いられるピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物等のオニウム塩との間に分子間π−π相互作用が起こるため、垂直配向を実現できる。特に、例えば、一般式(II)において、Lが、*−CH=CH−又は*−C≡C−のいずれか一方を少なくとも一つ以上含む二価の連結基である場合、及び、一般式(III)において、複数個の芳香環及び複素環が単結合で連結される場合は、該連結基により結合の自由回転が強く束縛されることにより分子の直線性が保持されるため、液晶性が向上すると共に、より強い分子間π−π相互作用が起こり安定な垂直配向が実現できる。
【0045】
前記ディスコティック液晶としては、下記一般式(IV)で表される化合物が好ましい。
【0046】
【化4】
【0047】
式中、Y11、Y12及びY13は、それぞれ独立に置換されていてもよいメチン又は窒素原子を表す。
【0048】
Y11、Y12およびY13がメチンの場合、メチンの水素原子は置換基で置き換わってもよい。メチンが有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子およびシアノ基を好ましい例として挙げることができる。これらの置換基の中では、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基がさらに好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12アルコキシカルボニル基、炭素数2〜12アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基がより好ましい。
Y11、Y12およびY13は、化合物の合成の容易さおよびコストの点において、いずれもメチンであることがより好ましく、メチンは無置換であることがさらに好ましい。
【0049】
L1、L2及びL3は、それぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表す。
L1、L2およびL3が二価の連結基の場合、それぞれ独立に、−O−,−S−、−C(=O)−、−NR7−、−CH=CH−、−C≡C−、二価の環状基およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R7は炭素原子数1〜7のアルキル基または水素原子であり、炭素原子数1〜4のアルキル基または水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0050】
L1、L2およびL3における二価の環状基とは、少なくとも1種類の環状構造を有する二価の連結基(以下、環状基と呼ぶことがある)である。環状基は5員環、6員環、または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが最も好ましい。環状基に含まれる環は、縮合環であってもよい。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環としては、ベンゼン環およびナフタレン環が好ましい例として挙げられる。脂肪族環としては、シクロヘキサン環が好ましい例として挙げられる。複素環としては、ピリジン環およびピリミジン環が好ましい例として挙げられる。環状基は、芳香族環および複素環がより好ましい。なお、本発明における2価の環状基は、環状構造のみ(但し、置換基を含む)からなる2価の連結基であることがより好ましい(以下、同じ)。
【0051】
L1、L2およびL3で表される二価の環状基のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,5−ジイル基およびナフタレン−2,6−ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。
【0052】
L1、L2およびL3で表される二価の環状基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子、塩素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数が2〜16アルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。
【0053】
L1、L2およびL3としては、単結合、*−O−CO−、*−CO−O−、*−CH=CH−、*−C≡C−、*−二価の環状基−、*−O−CO−二価の環状基−、*−CO−O−二価の環状基−、*−CH=CH−二価の環状基−、*−C≡C−二価の環状基−、*−二価の環状基−O−CO−、*−二価の環状基−CO−O−、*−二価の環状基−CH=CH−および*−二価の環状基−C≡C−が好ましい。特に、単結合、*−CH=CH−、*−C≡C−、*−CH=CH−二価の環状基−および*−C≡C−二価の環状基−が好ましく、単結合が最も好ましい。ここで、*は一般式(IV)中のY11、Y12およびY13を含む6員環側に結合する位置を表す。
【0054】
一般式(I)中、H1、H2及びH3は、それぞれ独立に一般式(IV−A)又は(IV−B)の基を表す。
【0055】
【化5】
一般式(IV−A)中、YA1及びYA2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;
XAは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;
*は上記一般式(IV)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し;
**は上記一般式(IV)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。
【0056】
【化6】
一般式(IV−B)中、YB1及びYB2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;
XBは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;
*は上記一般式(IV)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し;
**は上記一般式(IV)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。
【0057】
一般式(IV)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に下記一般式(IV−R)を表す。
【0058】
一般式(IV−R)
*−(−L21−Q2)n1−L22−L23−Q1
一般式(IV−R)中、*は、一般式(IV)におけるH1〜H3側と結合する位置を表す。
L21は単結合又は二価の連結基を表す。L21が二価の連結基の場合、−O−、−S−、−C(=O)−、−NR7−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R7は炭素原子数1〜7のアルキル基または水素原子であり、炭素原子数1〜4のアルキル基または水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0059】
L21は単結合、***−O−CO−、***−CO−O−、***−CH=CH−および***−C≡C−(ここで、***は一般式(DI−R)中の*側を表す)のいずれかが好ましく、単結合がより好ましい。
【0060】
Q2は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基(環状基)を表す。このような環状基としては、5員環、6員環、または7員環を有する環状基が好ましく、5員環または6員環を有する環状基がより好ましく、6員環を有する環状基がさらに好ましい。上記環状基に含まれる環状構造は、縮合環であっても良い。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環が好ましい例として挙げられる。脂肪族環としては、シクロヘキサン環が好ましい例として挙げられる。複素環としては、ピリジン環およびピリミジン環が好ましい例として挙げられる。
【0061】
上記Q2のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−1,6−ジイル基、ナフタレン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイルナフタレン−2,7−ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。これらの中でも、特に、1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基および1,4−シクロへキシレン基が好ましい。
【0062】
Q2は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
【0063】
n1は、0〜4の整数を表す。n1としては、1〜3の整数が好ましく、1もしくは2がさらに好ましい。
【0064】
L22は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、**−NH−、**−SO2−、**−CH2−、**−CH=CH−または**−C≡C−を表し、**はQ2側と結合する位置を表す。
L22は、好ましくは、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−CH2−、**−CH=CH−、**−C≡C−であり、より好ましくは、**−O−、**−O−CO−、**−O−CO−O−、**−CH2−である。L22が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0065】
L23は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。ここで、−NH−、−CH2−、−CH=CH−の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。これらの置換基に置換されることにより、本発明の液晶性化合物から液晶性組成物を調製する際に、使用する溶媒に対する溶解性を向上させることができる。
【0066】
L23は、−O−、−C(=O)−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれることが好ましい。L23は、炭素原子を1〜20個含有することが好ましく、炭素原子を2〜14個を含有することがより好ましい。さらに、L23は、−CH2−を1〜16個含有することが好ましく、−CH2−を2〜12個含有することがさらに好ましい。
【0067】
Q1は重合性基または水素原子を表す。本発明の液晶性化合物を光学補償フィルムのような位相差の大きさが熱により変化しないものが好ましい光学フィルム等に用いる場合には、Q1は重合性基であることが好ましい。重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。すなわち、重合性基は、付加重合反応または縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例を示す。
【0068】
【化7】
【0069】
さらに、重合性基は付加重合反応が可能な官能基であることが特に好ましい。そのような重合性基としては、重合性エチレン性不飽和基または開環重合性基が好ましい。
【0070】
重合性エチレン性不飽和基の例としては、下記の式(M−1)〜(M−6)が挙げられる。
【0071】
【化8】
【0072】
式(M−3)、(M−4)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、水素原子またはメチル基が好ましい。
上記式(M−1)〜(M−6)の中、(M−1)または(M−2)が好ましく、(M−1)がより好ましい。
【0073】
開環重合性基は、環状エーテル基が好ましく、エポキシ基またはオキセタニル基がより好ましい。
【0074】
前記式(IV)の化合物の中でも、下記一般式(IV’)で表される化合物がより好ましい。
【0075】
【化9】
【0076】
一般式(DIV)中、Y11、Y12およびY13は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、メチンが好ましく、メチンは無置換であるのが好ましい。
【0077】
R11、R12およびR13は、それぞれ独立に下記一般式(IV’−A)、下記一般式(IV’−B)または下記一般式(IV’−C)を表す。固有複屈折の波長分散性を小さくしようとする場合、一般式(IV’−A)または一般式(IV’−C)が好ましく、一般式(IV’−A)がより好ましい。R11、R12およびR13は、R11=R12=R13であることが好ましい。
【0078】
【化10】
【0079】
一般式(IV’−A)中、A11、A12、A13、A14、A15およびA16は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。
A11およびA12は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
A13、A14、A15およびA16は、それらのうち、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、すべてメチンであることがより好ましい。さらに、メチンは無置換であることが好ましい。
A11、A12、A13、A14、A15またはA16がメチンの場合の置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
X1は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0080】
【化11】
【0081】
一般式(IV’−B)中、A21、A22、A23、A24、A25およびA26は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。
A21およびA22は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
A23、A24、A25およびA26は、それらのうち、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、すべてメチンであることがより好ましい。
A21、A22、A23、A24、A25またはA26がメチンの場合の置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
X2は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0082】
【化12】
【0083】
一般式(IV’−C)中、A31、A32、A33、A34、A35およびA36は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。
A31およびA32は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
A33、A34、A35およびA36は、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、すべてメチンであることがより好ましい。
A31、A32、A33、A34、A35またはA36がメチンの場合、メチンは置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
X3は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0084】
一般式(IV’−A)中のL11、一般式(IV’−B)中のL21、一般式(IV’−C)中のL31はそれぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C≡C−を表す。好ましくは、−O−、−C(=O)−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−であり、より好ましくは、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−C≡C−である。特に、小さい固有複屈折の波長分散性が期待できる、一般式(DI−A)中のL11は、−O−、−CO−O−、−C≡C−が特に好ましく、この中でも−CO−O−が、より高温でディスコティックネマチック相を発現できるため、好ましい。上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0085】
一般式(IV’−A)中のL12、一般式(IV’−B)中のL22、一般式(IV’−C)中のL32はそれぞれ独立して、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。ここで、−NH−、−CH2−、−CH=CH−の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、カルボキシル基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましく、特にハロゲン原子、メチル基、エチル基が好ましい。
【0086】
L12、L22、L32はそれぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれることが好ましい。
【0087】
L12、L22、L32はそれぞれ独立して、炭素数1〜20であることが好ましく、炭素数2〜14であることがより好ましい。炭素数2〜14が好ましく、−CH2−を1〜16個有することがより好ましく、−CH2−を2〜12個有することがさらに好ましい。
【0088】
L12、L22、L32を構成する炭素数は、液晶の相転移温度と化合物の溶媒への溶解性に影響を及ぼす。一般的に炭素数は多くなるほど、ディスコティックネマチック相(ND相)から等方性液体への転移温度が低下する傾向にある。また、溶媒への溶解性は、一般的に炭素数は多くなるほど向上する傾向にある。
【0089】
一般式(IV’−A)中のQ11、一般式(IV’−B)中のQ21、一般式(IV’−C)中のQ31はそれぞれ独立して重合性基または水素原子を表す。また、Q11、Q21、Q31は重合性基であることが好ましい。重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。すなわち、重合性基は、付加重合反応または縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例については、上記と同様であり、好ましい例も上記と同様である。
【0090】
前記一般式(IV)で表される化合物の具体例には、特開2006-76992号公報の[0052]の[化13]〜[化43]に記載の例示化合物、並びに特開2007−2220号公報の[0040]の[化13]〜[0063]の[化36]に記載の例示化合物が含まれる。但し、これらの化合物に限定されるものではない。
【0091】
上記化合物は、種々の方法により合成することができ、例えば、特開2007−2220号公報の[0064]〜[0070]に記載の方法により合成することができる。
【0092】
前記ディスコティック液晶化合物は、液晶相として、カラムナー相およびディスコティックネマチック相(ND相)を示すことが好ましく、これらの液晶相の中では、良好なモノドメイン性を示すディスコティックネマチック相(ND相)が好ましい。
【0093】
前記ディスコティック液晶化合物の中でも、液晶相を20℃〜300℃の範囲で発現させるものが好ましい。より好ましくは40℃〜280℃であり、さらに好ましくは60℃〜250℃である。ここで20℃〜300℃で液晶相を発現するとは、液晶温度範囲が20℃をまたぐ場合(例えば、10℃〜22℃)や、300℃をまたぐ場合(例えば、298℃〜310℃)も含む。40℃〜280℃と60℃〜250℃に関しても同様である。
【0094】
前記一般式(IV)で表されるディスコティック液晶は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、後述する、ピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物との間に強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる。特に、一般式(IV’)で表されるディスコティック液晶は、複数個の芳香環が単結合で連結されているため、分子の回転自由度が束縛された直線性の高い分子構造を有しているため、ピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物との間により強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させ垂直配向状態が実現できる。
【0095】
棒状液晶化合物を利用する場合は、棒状液晶を水平配向させるのが好ましい。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の子長軸と層面が平行であることをいう。厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
なお、前記組成物中には、液晶の水平配向を促進する添加剤を添加してもよく、該添加剤の例には、特開2009−223001号公報の[0055]〜[0063]に記載の化合物が含まれる。
【0096】
ディスコティック液晶を利用する場合は、ディスコティック液晶を垂直配向させるのが好ましい。尚、本明細書において「垂直配向」とは、ディスコティック液晶の円盤面と層面が垂直であることをいう。厳密に垂直であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が70度以上の配向を意味するものとする。傾斜角は85〜90度が好ましく、87〜90度がより好ましく、88〜90度がさらに好ましく、89〜90度が最も好ましい。
なお、前記組成物中には、液晶の垂直配向を促進する添加剤を添加していることが好ましく、該添加剤の例は、前記の通りである。
【0097】
なお、液晶性化合物を配向させた光学異方性層において、光学異方性層の一方の面におけるチルト角(液晶性化合物における物理的な対象軸が光学異方性層の界面となす角度をチルト角とする)θ1及び他方の面のチルト角θ2を、直接的にかつ正確に測定することは困難である。そこで本明細書においては、θ1及びθ2は、以下の手法で算出する。本手法は本発明の実際の配向状態を正確に表現していないが、光学フィルムのもつ一部の光学特性の相対関係を表す手段として有効である。
本手法では算出を容易にすべく、下記の2点を仮定し、光学異方性層の2つの界面におけるチルト角とする。
1.光学異方性層は液晶性化合物を含む層で構成された多層体と仮定する。さらに、それを構成する最小単位の層(液晶性化合物のチルト角は該層内において一様と仮定)は光学的に一軸と仮定する。
2.各層のチルト角は光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化すると仮定する。
具体的な算出法は下記のとおりである。
(1)各層のチルト角が光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化する面内で、光学異方性層への測定光の入射角を変化させ、3つ以上の測定角でレターデーション値を測定する。測定及び計算を簡便にするためには、光学異方性層に対する法線方向を0°とし、−40°、0°、+40°の3つの測定角でレターデーション値を測定することが好ましい。このような測定は、KOBRA−21ADH及びKOBRA−WR(王子計測器(株)製)、透過型のエリプソメータAEP−100((株)島津製作所製)、M150及びM520(日本分光(株)製)、ABR10A(ユニオプト(株)製)で行うことができる。
(2)上記のモデルにおいて、各層の常光の屈折率をno、異常光の屈折率をne(neは各々すべての層において同じ値、noも同様とする)、及び多層体全体の厚みをdとする。さらに各層におけるチルト方向とその層の一軸の光軸方向とは一致するとの仮定の元に、光学異方性層のレターデーション値の角度依存性の計算が測定値に一致するように、光学異方性層の一方の面におけるチルト角θ1及び他方の面のチルト角θ2を変数としてフィッティングを行い、θ1及びθ2を算出する。
ここで、no及びneは文献値、カタログ値等の既知の値を用いることができる。値が未知の場合はアッベ屈折計を用いて測定することもできる。光学異方性層の厚みは、光学干渉膜厚計、走査型電子顕微鏡の断面写真等により測定数することができる。
【0098】
[オニウム塩化合物(配向膜側配向制御剤)]
本発明では、前述のように、重合性基を有する液晶化合物、特に、重合性基を有するディスコティック液晶の垂直配向を実現するために、オニウム塩を添加することが好ましい。オニウム塩は配向膜界面に偏在し、液晶分子の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる作用をする。
【0099】
オニウム塩としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
一般式(1)
Z−(Y−L−)nCy+・X‐
式中、Cyは5又は6員環のオニウム基であり、L、Y、Z、Xは、後述する一般式(II)におけるL23、L24、Y22、Y23、Z21、Xに同義であり、その好ましい範囲も同一であり、nは2以上の整数を表す。
【0100】
5又は6員環のオニウム基(Cy)は、ピラゾリウム環、イミダゾリウム環、トリアゾリウム環、テトラゾリウム環、ピリジニウム環、ピラジニウム環、ピリミジニウム環、トリアジニウム環が好ましく、イミダゾリウム環、ピリジニウム環が特に好ましい。
【0101】
5又は6員環のオニウム基(Cy)は、配向膜材料と親和性のある基を有するのが好ましい。さらに、オニウム塩化合物は、温度T1℃では配向膜材料との親和性が高く、一方、温度T2℃では、親和性が低下しているのが好ましい。水素結合は、液晶を配向させる実際の温度範囲内(室温〜150℃程度)において、結合状態にも、その結合が消失した状態にもなり得るので、水素結合による親和性を利用するのが好ましい。但し、この例に限定されるものではない。
例えば、配向膜材料としてポリビニルアルコールを利用する態様では、ポリビニルアルコールの水酸基と水素結合を形成するために、水素結合性基を有しているのが好ましい。水素結合の理論的な解釈としては、例えば、H.Uneyama and K.Morokuma、Journal of American Chemical Society、第99巻、第1316〜1332頁、1977年に報告がある。具体的な水素結合の様式としては、例えば、J.N.イスラエスアチヴィリ著、近藤保、大島広行訳、分子間力と表面力、マグロウヒル社、1991年の第98頁、図17に記載の様式が挙げられる。具体的な水素結合の例としては、例えば、G.R.Desiraju、Angewante Chemistry International Edition English、第34巻、第2311頁、1995年に記載のものが挙げられる。
【0102】
水素結合性基を有する5又は6員環のオニウム基は、オニウム基の親水性の効果に加え、ポリビニルアルコールと水素結合することによって、配向膜界面の表面偏在性を高めるとともに、ポリビニルアルコール主鎖に対する直交配向性を付与する機能を促進する。好ましい水素結合性基としては、アミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、酸アミド基、ウレイド基、カルバモイル基、カルボキシル基、スルホ基、含窒素複素環基(例えば、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、1,3,5−トリアジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、キノリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、コハクイミド基、フタルイミド基、マレイミド基、ウラシル基、チオウラシル基、バルビツール酸基、ヒダントイン基、マレイン酸ヒドラジド基、イサチン基、ウラミル基などが挙げられる)を挙げることができる。更に好ましい水素結合性基としては、アミノ基、ピリジル基を挙げることができる。
例えば、イミダゾリウム環の窒素原子ように、5又は6員環のオニウム環に、水素結合性基を有する原子を含有していることも好ましい。
【0103】
nは、2〜5の整数が好ましく、3又は4であるのがより好ましく、3であるのが特に好ましい。複数のL及びYは、互いに同一であっても異なっていてもよい。nが3以上である場合、一般式(1)で表されるオニウム塩は、3つ以上の5又は6員環を有しているため、前記ディスコティック液晶と強い分子間π−π相互作用が働くため、該ディスコティック液晶の垂直配向、特に、ポリビニルアルコール配向膜上では、ポリビニルアルコール主鎖に対する直交垂直配向を実現することができる。
【0104】
前記一般式(1)で表されるオニウム塩は、下記一般式(2a)で表されるピリジニウム化合物又は下記一般式(2b)で表されるイミダゾリウム化合物であることが特に好ましい。
一般式(2a)及び(2b)で表される化合物は、主に、前記一般式(I)〜(IV)で表されるディスコティック液晶の配向膜界面における配向を制御することを目的として添加され、ディスコティック液晶の分子の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる作用がある。
【0105】
【化13】
【0106】
式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基を表す。
L23は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−又は−O−CO−AL−CO−O−であるのが好ましく、ALは、炭素原子数が1〜10のアルキレン基である。L23は、単結合、−O−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−または−O−CO−AL−CO−O−が好ましく、単結合または−O−がさらに好ましく、−O−が最も好ましい。
【0107】
L24は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−または−N=N−であるのが好ましく、−O−CO−又は−CO−O−がより好ましい。mが2以上のとき、複数のL24が交互に、−O−CO−及び−CO−O−であるのがさらに好ましい。
【0108】
R22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基である。
R22が、ジアルキル置換アミノ基である場合、2つのアルキル基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。このとき形成される含窒素複素環は、5員環または6員環が好ましい。R23は水素原子、無置換アミノ基、または炭素原子数が2〜12のジアルキル置換アミノ基であるのがさらに好ましく、水素原子、無置換アミノ基、または炭素原子数が2〜8のジアルキル置換アミノ基であるのがよりさらに好ましい。R23が無置換アミノ基及び置換アミノ基である場合、ピリジニウム環の4位が置換されていることが好ましい。
【0109】
Xはアニオンである。
Xは、一価のアニオンであることが好ましい。アニオンの例には、ハライドイオン(フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)およびスルホン酸イオン(例、メタンスルホネートイオン、p−トルエンスルホネートイオン、ベンゼンスルホネートイオン)が含まれる。
【0110】
Y22及びY23はそれぞれ、5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。
前記5又は6員環が置換基を有していてもよい。好ましくは、Y22及びY23のうち少なくとも1つは、置換基を有する5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。Y22およびY23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい6員環を部分構造として有する2価の連結基であるのが好ましい。6員環は、脂肪族環、芳香族環(ベンゼン環)および複素環を含む。6員脂肪族環の例は、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環およびシクロヘキサジエン環を含む。6員複素環の例は、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環を含む。6員環に、他の6員環または5員環が縮合していてもよい。
置換基の例は、ハロゲン原子、シアノ、炭素原子数が1〜12のアルキル基および炭素原子数が1〜12のアルコキシ基を含む。アルキル基およびアルコキシ基は、炭素原子数が2〜12のアシル基または炭素原子数が2〜12のアシルオキシ基で置換されていてもよい。置換基は、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基であるのが好ましい。置換基は2以上であってもよく、例えば、Y22及びY23がフェニレン基である場合は、1〜4の炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基で置換されていてもよい。
【0111】
なお、mは1又は2であり、2であるのが好ましい。mが2のとき、複数のY23及びL24は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0112】
Z21は、ハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基である。
mが2の場合、Z21は、シアノ、炭素原子数が1〜10のアルキル基または炭素原子数が1〜10のアルコキシ基であることが好ましく、炭素原子数4〜10のアルコキシ基であるのがさらに好ましい。
mが1の場合、Z21は、炭素原子数が7〜12のアルキル基、炭素原子数が7〜12のアルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルキル基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルキル基または炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルコキシ基であることが好ましい。
【0113】
アシル基は−CO−R、アシルオキシ基は−O−CO−Rで表され、Rは脂肪族基(アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基)または芳香族基(アリール基、置換アリール基)である。Rは、脂肪族基であることが好ましく、アルキル基またはアルケニル基であることがさらに好ましい。
【0114】
pは、1〜10の整数である。pは、1または2であることが特に好ましい。CpH2pは、分岐構造を有していてもよい鎖状アルキレン基を意味する。CpH2pは、直鎖状アルキレン基(−(CH2)p−)であることが好ましい。
【0115】
式(2b)中、R30は、水素原子又は炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基である。
【0116】
前記式(2a)又は(2b)で表される化合物の中でも、下記式(2a')又は(2b’)で表される化合物が好ましい。
【0117】
【化14】
【0118】
式(2a’)及び(2b’)中、式(2)と同一の符号は同一の意義であり、好ましい範囲も同様である。L25はL24と同義であり、好ましい範囲も同様である。L24及びL25は、−O−CO−又は−CO−O−であるのが好ましく、L24が−O−CO−で、且つL25が−CO−O−であるのが好ましい。
【0119】
R23、R24及びR25はそれぞれ、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基である。n23は0〜4、n24は1〜4、及びn25は0〜4を表す。n23及びn25が0で、n24が1〜4(より好ましくは1〜3)であるのが好ましい。
R30は、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基であるのが好ましい。
【0120】
一般式(2)で表される化合物の具体例としては、特開2006−113500号公報明細書中[0058]〜[0061]に記載の化合物が挙げられる。
【0121】
以下に、一般式(2’)で表される化合物の具体例を示す。但し、下記式中、アニオン(X-)は省略した。
【0122】
【化15】
【0123】
式(2a)及び(2b)の化合物は、一般的な方法で製造することができる。例えば、式(2a)のピリジニウム誘導体は、一般にピリジン環をアルキル化(メンシュトキン反応)して得られる。
オニウム塩は、その添加量が、液晶化合物に対して5質量%を超えることはなく、0.1〜2質量%程度であるのが好ましい。
【0124】
前記一般式(2a)及び(2b)で表されるオニウム塩は、ピリジニウム基又はイミダリウム基が親水的であるため前記親水的なポリビニルアルコール配向膜表面に偏在する。特に、ピリジニウム基に、さらに、水素原子のアクセプターの置換基であるアミノ基(一般式(2a)及び(2a’)において、R22が無置換のアミノ基又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基)が置換されていると、ポリビニルアルコールとの間に分子間水素結合が発生し、より高密度に配向膜表面に偏在すると共に、水素結合の効果により、ピリジニウム誘導体がポリビニルアルコールの主鎖と直交する方向に配向するため、ラビング方向に対して液晶の直交配向を促進する。前記ピリジニウム誘導体は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、前述した、液晶、特にディスコティック液晶との間に強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍における直交配向を誘起する。特に、一般式(2a’)で表されるように、親水的なピリジニウム基に疎水的な芳香環が連結されていると、その疎水性の効果により垂直配向を誘起する効果も有する。
【0125】
さらに、前記一般式(2a)及び(2b)で表されるオニウム塩を併用すると、ある温度を超えて加熱することで、液晶が、その遅相軸を、ラビング方向に対して平行にして配向する、平行配向を促進することができる。これは、加熱による熱エネルギーでポリビニルアルコールとの水素結合が切断され、オニウム塩が配向膜に均一に分散され配向膜表面における密度が低下し、ラビング配向膜そのものの規制力により液晶が配向するためである。
【0126】
[フルオロ脂肪族基含有共重合体(空気界面配向制御剤)]
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、液晶、主に、前記一般式(I)で表されるディスコティック液晶、の空気界面における配向を制御することを目的として添加され、液晶の分子の空気界面近傍におけるチルト角を増加させる作用がある。さらに、ムラ、ハジキなどの塗布性も改善される。
本発明に使用可能なフルオロ脂肪族基含有共重合体としては、特開2004−333852号、同2004−333861号、同2005−134884号、同2005−179636号、及び同2005−181977号などの各公報及び明細書に記載の化合物の中から選んで用いることができる。特に好ましくは、特開2005−179636号、及び同2005−181977号の各公報及び明細書に記載の、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH)2}}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを側鎖に含むポリマーである。
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、その添加量が、液晶化合物に対して2質量%を超えることはなく、0.1〜1質量%程度であるのが好ましい。
【0127】
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、フルオロ脂肪族基の疎水性効果により空気界面への偏在性を高めると共に、空気界面側に低表面エネルギーの場を提供し、液晶、特にディスコティック液晶のチルト角を増加させることができる。さらに、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH)2}}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを側鎖に含む共重合成分を有すると、これらのアニオンと液晶のπ電子との電荷反発により液晶化合物の垂直配向を実現することができる。
【0128】
[溶媒]
光学異方性層の形成に利用する、前記組成物は塗布液として調製するのが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0129】
[重合開始剤]
前記の重合性基を有する液晶化合物を含有する組成物(例えば塗布液)を、所望の液晶相を示す配向状態とした後、該配向状態を紫外線照射により固定する(上記方法の5)及び7)工程)。固定化は、液晶化合物に導入した反応性基の重合反応により実施することが好ましい。紫外線照射による、光重合反応により固定化するのが好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0130】
[増感剤]
また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、及びチオキサントン等が含まれる。光重合開始剤は複数種を組み合わせてもよく、使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。液晶化合物の重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。
【0131】
[その他の添加剤]
前記組成物は、重合性液晶化合物とは別に、非液晶性の重合性モノマーを含有していてもよい。重合性モノマーとしては、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物が好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が2以上の多官能モノマー、例えば、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレートを用いると、耐久性が改善されるので好ましい。前記非液晶性の重合性モノマーは、非液晶性成分であるので、その添加量が、液晶化合物に対して40質量%を超えることはなく、0〜20質量%程度であるのが好ましい。
【0132】
この様にして形成する光学異方性層の厚みについては特に制限されないが、0.1〜10μmであるのが好ましく、0.5〜5μmであるのがより好ましい。
【0133】
透明支持体:
本発明の光学フィルムは、透明支持体を有する。透明支持体としては、面内及び厚み方向の位相差がほとんどない部材を用いることが好ましい。
【0134】
本発明に使用可能な透明支持体を形成する材料としては、光学性能透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるポリマーが好ましく、上述のRe、Rthが、上述した式(I)を満たす範囲であればどのような材料を用いても良い。例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマーも例としてあげられる。また本発明の高分子フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0135】
また、前記透明支持体を形成する材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることが出来る。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等があげられる。
【0136】
また、前記透明支持体を形成する材料としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきた、トリアセチルセルロースに代表される、セルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を好ましく用いることが出来る。
以下に、前記透明支持体の例として、主にセルロースアシレートについて詳細を説明するが、その技術的事項は、他の高分子フィルムについても同様に適用できることは明らかである。
【0137】
セルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細は、例えばプラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載されているが、本発明は、該記載に制限されるものではない。
【0138】
セルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。本発明のセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。
【0139】
セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が2.50〜3.00であることがのぞましい。更には置換度が2.75〜3.00であることがのぞましく、2.85〜3.00であることがよりのぞましい。
【0140】
セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸のうち、炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族基でも芳香族基でもよく特に限定されず、単一でも2種類以上の混合物でもよい。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれ更に置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが好ましく、アセチル、プロピオニル、ブタノイルがより好ましい。
【0141】
上述のセルロースの水酸基に置換するアシル置換基のうちで、実質的にアセチル基/プロピオニル基/ブタノイル基の少なくとも2種類からなる場合においては、その置換度が2.50〜3.00の場合にセルロースアシレートフィルムの光学異方性が低下できる。より好ましいアシル置換度は2.60〜3.00であり、更にのぞましくは2.65〜3.00である。また、セルロースの水酸基に置換するアシル置換基がアセチル基のみからなる場合には、フィルムの光学異方性が低下できることに加え、更に添加剤との相溶性、使用する有機溶剤への溶解性の観点で置換度が2.80〜2.99であることが好ましく、2.85〜2.95であることがより好ましい。
【0142】
セルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であるのが好ましく、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になる。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまう。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることが更に好ましく、1.0〜1.6であることが最も好ましい。
【0143】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。本発明のセルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下である。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており2.5〜5質量%の含水率が知られている。セルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。本発明のこれらのセルロースアシレートの合成方法は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0144】
セルロースアシレートは置換基、置換度、重合度、分子量分布など前述した範囲であれば、単一あるいは異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。
【0145】
支持体として用いるフィルムの作製には、セルロースアシレートとともに、種々の添加剤(例えば、光学的異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、微粒子、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、光学特性調整剤など)を使用することができ、これらについて以下に説明する。またその添加する時期はドープ作製工程(セルロースアシレート溶液の作製工程)における何れでもよいが、ドープ作製工程の最後に添加剤を添加し調製する工程を行ってもよい。
これらの添加剤の添加量を調整することにより、0≦Re(550)≦10を満たすセルロースアシレートフィルムを作製することができ、当該フィルムを支持体として用いることで、支持体の光学特性の影響をほとんど受けずに、本発明の光学フィルム中に含まれる全ての前記第1及び第2の位相差領域のReを、110nm≦Re(550)≦165nmの範囲にすることができる。Re値は、120≦Re(550)≦145であることが好ましく、130≦Re(550)≦145であることが特に好ましい。
【0146】
また、後述する光学異方性層との関係では、前記透明支持体のRthと光学異方性層(λ/4板)のRthの合計が|Rth|≦20nmを満たすために、透明支持体は、−150nm≦Rth(630)≦100nmを満たすことが好ましい。
【0147】
前記セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物を、少なくとも一種含有することものぞましい態様である。
セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物について説明する。フィルム中のセルロースアシレートが面内及び膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を利用することで、光学的異方性を低下させることができる。光学的異方性を低下させる化合物はセルロースアシレートに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
【0148】
低位相差のセルロースアシレートフィルムを作製するためには、上述のようにフィルム中のセルロースアシレートが面内及び膜厚方向に配向するのを抑制して光学的異方性を低下させる化合物のうち、オクタノール−水分配係数(logP値)が0〜7である化合物が好ましい。logP値が7を超える化合物は、セルロースアシレートとの相溶性に乏しく、フィルムの白濁や粉吹きを生じやすい。また、logP値が0よりも小さな化合物は親水性が高いために、セルロースアセテートフィルムの耐水性を悪化させる場合がある。logP値として更に好ましい範囲は、1〜6であり、特に好ましい範囲は1.5〜5である。
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)、Viswanadhan’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989).)、Broto’s fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.− Chim.Theor.,19,71(1984).)などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)がより好ましい。ある化合物のlogPの値が測定方法あるいは計算方法により異なる場合に、該化合物が範囲内であるかどうかは、Crippen’s fragmentation法により判断することが好ましい。なお本明細書に記載のlogPの値は、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)により求めたものである。
【0149】
光学的異方性を低下させる化合物は、芳香族基を含有してもよいし、含有しなくてもよい。また光学的異方性を低下させる化合物は、分子量が150以上3000以下であることが好ましく、170以上2000以下であることが好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
光学的異方性を低下させる化合物は、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、更に好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。また光学的異方性を低下させる化合物は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
光学的異方性を低下させる化合物の添加量は、セルロースアシレートに対し0.01〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
光学的異方性を低下させる化合物は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
光学的異方性を低下させる化合物を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ作製工程の最後に行ってもよい。
【0150】
光学的異方性を低下させる化合物は、少なくとも一方の側の表面から全膜厚の10%までの部分における該化合物の平均含有率が、該セルロースアシレートフィルムの中央部における該化合物の平均含有率の80〜99%である。当該化合物の存在量は、例えば、特開平8−57879号公報に記載の赤外吸収スペクトルを用いる方法などにより表面及び中心部の化合物量を測定して求めることができる。
【0151】
セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物の具体例としては、例えば、特開2006−199855号公報の[0035]〜[0058]記載の化合物が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0152】
本発明の光学フィルムは、視認側に配置されるので、外光の影響、特に紫外線の影響を受けやすい。そのために、透明支持体として利用されるポリマーフィルム等には、紫外線(UV)吸収剤を添加するのが望ましい。
【0153】
UV吸収剤は、中でも、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)−Re(700)|及び|Rth(400)−Rth(700)|の双方を低下させる化合物が好ましく、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%使用するのがよい。
【0154】
また、近年テレビやノートパソコン、モバイル型携帯端末などの液晶表示装置ではより少ない電力で輝度を高めるために、液晶表示装置に用いられる光学部材の透過率が優れたものが要求されている。その点においては、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)−Re(700)|及び|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物をセルロースアシレートフィルムに添加する場合、分光透過率が優れていることが要求される。本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であり、かつ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることがのぞましい。
【0155】
UV吸収剤は揮散性の観点から分子量が250〜1000であることが好ましい。より好ましくは260〜800であり、更に好ましくは270〜800であり、特に好ましくは300〜800である。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
【0156】
UV吸収剤は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
【0157】
セルロースアシレートフィルムのUV吸収剤の具体例としては、例えば、特開2006−199855号公報の[0059]〜[0135]に記載の化合物が挙げられる。
【0158】
前記セルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上が更に好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0159】
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下が更に好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とした。
【0160】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0161】
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0162】
本発明において2次平均粒子径の小さな粒子を有するセルロースアシレートフィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ調製し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、更にメインのセルロースアシレート溶液(ドープ液)と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行いこれを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。これらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤微粒子の添加量は1m3あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
【0163】
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0164】
前記セルロースアシレートフィルムには、光学的に異方性を低下する化合物、UV吸収剤の他に、用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開2001−151901号公報などに記載されている。更にまた、赤外吸収剤としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れの時期でも良いが、ドープ作製工程の最後に添加剤を添加するのがよい。更にまた、各添加剤の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
【0165】
また、可塑剤については、後述の実施例の中には、可塑剤を添加したものとしていないものがあるが、光学的に異方性を低下する化合物などが可塑剤としての効果を及ぼす化合物の場合には、可塑剤を添加する必要がないのは言うまでもない。
【0166】
前記セルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレート溶液を用いた溶液製膜法により製造するのが好ましい。セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよく、更には冷却溶解法あるいは高温溶解方法、更にはこれらの組み合わせで実施される。セルロースアシレート溶液の調製、更には溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
【0167】
前記セルロースアシレート溶液のドープ透明度としては85%以上であることがのぞましい。より好ましくは88%以上であり、更に好ましくは90%以上であることがのぞましい。本発明においてはセルロースアシレートドープ溶液に各種の添加剤が十分に溶解していることを確認した。具体的なドープ透明度の算出方法としては、ドープ溶液を1cm角のガラスセルに注入し、分光光度計(UV−3150、島津製作所)で550nmの吸光度を測定した。溶媒のみをあらかじめブランクとして測定しておき、ブランクの吸光度との比からセルロースアシレート溶液の透明度を算出した。
【0168】
前記セルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、従来のセルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。本発明のセルロースアシレートフィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む),金属支持体,乾燥,剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
また、セルロースアシレートフィルムの厚さは10〜120μmが好ましく、20〜100μmがより好ましく、30〜90μmが更に好ましい。
【0169】
透明支持体として用いられるポリマーフィルムの性質:
以下に、本発明において透明支持体として用いられるポリマーフィルムの好ましい性質について説明する。
【0170】
[Re及びRth]
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のリターデーション及び厚さ方向のリターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、又は測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(11)及び式(12)よりRthを算出することもできる。
式(11)
【0171】
【数1】
【0172】
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。
式(11)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
【0173】
式(12):Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(12)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
【0174】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0175】
透明支持体として用いるポリマーフィルムの一例は、Reが0〜10nmであり、且つRthの絶対値が20nm以下の低位相差フィルムである。
【0176】
[湿度膨張係数]
前記ポリマーフィルムの湿度膨張係数は、熱膨張係数との組合せにより、適宜、設定することができるが、3.0×10-6〜500×10-6/%RHが好ましく、4.0×10-6〜100×10-6/%RHがより好ましく、5.0×10-6〜50×10-6/%RHが更に好ましく、5.0×10-6〜40×10-6/%RHが最も好ましい。
なお、熱膨張係数は、ISO11359−2に準じて測定することができ、サンプルを室温から80℃まで昇温させた後、60℃から50℃に降温するときのフィルムの長さの傾きから算出することができる。
また、湿度膨張係数を測定する際には、弾性率が最大となる方向を長手方向として切り出した長さ25cm(測定方向)、幅5cmのフィルム試料を用意し、該試料に20cmの間隔でピン孔を空け、25℃、相対湿度10%にて24時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長する(測定値をL0とする)。次いで、試料を25℃、相対湿度80%にて24時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長する(測定値をL1とする)。これらの測定値を用いて下記式により湿度膨張係数を算出する。
湿度膨張係数[/%RH]={(L1−L0)/L0}/(R1−R0)
【0177】
[弾性率]
前記ポリマーフィルムの弾性率は特に限定されないが、1〜50GPaが好ましく、5〜50GPaがより好ましく、7〜20GPaが更に好ましい。弾性率はポリマーの種類、添加剤の種類及び量、延伸によって制御することができる。
なお、弾性率は、長さ150mm、巾10mmのフィルム試料を用意し、25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、ISO527−3:1995の規格に準じ、初期試料長100mm、引張速度10mm/minにて測定し、応力−歪み曲線の初期の傾きから求めた引張り弾性率である。フィルム試料の長さ方向と幅方向の取り方によって一般に弾性率は異なるが、本発明では弾性率が最大となる方向でフィルム試料を用意して測定した値を本発明の弾性率として表記する。なお、音速が最大となる方向における弾性率をE1、それと直交する方向における弾性率をE2としたとき、それらの比(E1/E2)は、フィルムのしなやかさを保ちつつも寸法変化を小さくする観点から、1.1〜5.0であることが好ましく、1.5〜3.0であることがより好ましい。
なお、本発明において音速(音波伝播速度)が最大となる方向は、フィルムを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、配向性測定機(SST−2500:野村商事(株)製)を用いて、超音波パルスの縦波振動の伝搬速度が最大となる方向として求めた。
【0178】
[全光透過率、ヘイズ]
本発明において、サンプルを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、ヘイズメーター(NDH 2000:日本電色工業(株)製)を用いて測定した値を全光透過率、及びヘイズとした。
前記ポリマーフィルムの全光透過率は、光源からの光を効率的に使用して、パネルの消費電力を低減する観点から、高いほうが好ましく、具体的には85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、92%以上であることが更に好ましい。また、本発明のフィルムのヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、2%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが更にまた好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。
【0179】
[引裂き強度]
本発明において、引裂き強度(エルメンドルフ引裂き法)は、フィルムの遅相軸と平行な方向、及び直交する方向を長手方向として、それぞれ64mm×50mmの試料を切り出し、25℃、相対湿度60%にて2時間調湿後、軽荷重引裂き強度試験機を用いて測定し、小さい方の値をフィルムの引裂き強度とした。
前記ポリマーフィルムの引裂き強度は、フィルムの脆さの観点から、3〜50gであることが好ましく、5〜40gであることがより好ましく、10〜30gであることが更に好ましい。
【0180】
[膜厚]
前記ポリマーフィルムの厚さは、製造コストを下げる観点から、10〜1000μmであることが好ましく、40〜500μmであることがより好ましく、40〜200μmであることが特に好ましい。
【0181】
2.偏光板
本発明は、本発明の光学フィルムを有する偏光板にも関する。本発明の偏光板の一態様は、本発明の光学フィルムと、偏光膜とを含み、前記光学異方性層の第1及び第2の位相差領域のそれぞれの面内遅相軸方向と、偏光膜の吸収軸方向とが45°であることを特徴とする偏光板である。本発明の偏光板は、立体画像表示用の画像表示装置の視認側偏光板として、光学フィルムを視認側に向けて配置される。
本発明の偏光板は、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、帯状、すなわち、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用とするためには、上記した通り、偏光板の幅は1470mm以上とすることが好ましい。
【0182】
本発明の偏光板の層構成については、特に制限はない。一般的な構成の偏光板の層構成と同様であってもよいが、但し、本発明の光学フィルムを含んでいることを特徴である。図4に一例の断面模式図を示す。図4に示す偏光板20は、偏光膜22の一方の表面に本発明の光学フィルム、及び他方の表面に保護フィルム24を有する。保護フィルム24として利用可能なポリマーフィルムの例は、光学フィルム10の透明支持体として利用可能なポリマーフィルムの例と同様である。
【0183】
偏光板の製造方法:
本発明の偏光板の製造方法の一例は、
透明支持体であるセルロースアシレートフィルム等の長尺のポリマーフィルムを搬送しつつ、その上に、ラビング配向膜を連続的に形成すること、
ラビング配向膜を、フィルム搬送方向に対して約斜め45度方向に連続的にラビング処理すること、
少なくとも重合性基を有する液晶化合物を含有する組成物を、ラビング処理面に塗布すること、
温度T1℃で加熱して、液晶の遅相軸がラビング方向と直交した直交配向状態にすること、
ストライプ状のフォトマスクを遮光部/透過部の境界線がフィルム搬送方向と平行になるように配置してマスク下で紫外線露光して、直交配向状態を固定して、第1の位相差領域を形成する工程と、
温度T2℃(但しT1<T2)で加熱して、液晶の遅相軸がラビング方向と平行になる平行配向状態にすること、
全面露光して、平行配向状態を固定し、第2の位相差領域を形成すること、
透過軸が幅方向にある長尺の偏光膜と、ロール・トゥ・ロールで積層すること、
を含む方法により製造することができる。
この本発明の偏光板の製造方法は、連続生産できる観点から、従来の製造方法よりも製造コストが低い。また、ラビング方向がフィルム搬送方向に対して約斜め45度方向であると、得られたロール状の偏光板をななめに打ち抜く必要がなく、偏光板製造時の製造コストも低下させることができる。
【0184】
偏光膜:
偏光膜は、一般的な偏光膜を用いることができる。例えば、ヨウ素や二色性色素によって染色されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子膜を用いることができる。
【0185】
粘着層:
本発明の偏光板は、光学フィルムと偏光膜との間には、粘着層が配置されていてもよい。光学フィルムと偏光膜との積層のために用いられる粘着層とは、例えば、動的粘弾性測定装置で測定したG’とG”との比(tanδ=G”/G’)が0.001〜1.5である物質のことを表し、いわゆる、粘着剤やクリープしやすい物質等が含まれる。粘着剤については特に制限はなく、例えば、ポリビニルアルコール系粘着剤を用いることができる。
【0186】
反射防止層:
偏光板の、液晶セルと反対側に配置される側の表面には、反射防止層などの機能性膜を設けることが好ましい。特に、本発明では透明保護膜上に少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層した反射防止層又は透明保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層が好適に用いられる。これは、特に3D画像を表示する場合に、外光反射によるフリッカが発生してしまうのを効果的に防ぐことができるからである。
以下にそれらの好ましい例を記載する。
【0187】
透明保護膜上に光散乱層と低屈折率層を設けた反射防止層の好ましい例について述べる。
光散乱層にはマット粒子が分散しており、光散乱層のマット粒子以外の部分の素材の屈折率は1.50〜2.00の範囲にあることが好ましく、低屈折率層の屈折率は1.35〜1.49の範囲にあることが好ましい。光散乱層は、防眩性とハードコート性を兼ね備えており、1層でもよいし、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。
【0188】
反射防止層は、その表面凹凸形状として、中心線平均粗さRaが0.08μm〜0.40μm、10点平均粗さRzがRaの10倍以下、平均山谷距離Smが1μm〜100μm、凹凸最深部からの凸部高さの標準偏差が0.5μm以下、中心線を基準とした平均山谷距離Smの標準偏差が20μm以下、傾斜角0度〜5度の面が10%以上となるように設計することで、十分な防眩性と目視での均一なマット感が達成され、好ましい。
また、C光源下での反射光の色味がa*値−2〜2、b*値−3〜3、380nm〜780nmの範囲内での反射率の最小値と最大値の比0.5〜0.99であることで、反射光の色味がニュートラルとなり、好ましい。またC光源下での透過光のb*値が0〜3とすることで、表示装置に適用した際の白表示の黄色味が低減され、好ましい。
また、面光源上と反射防止層との間に120μm×40μmの格子を挿入して、フィルム上で輝度分布を測定した際の輝度分布の標準偏差が20以下であると、高精細パネルに本発明のフィルムを適用したときのギラツキが低減され、好ましい。
【0189】
前記反射防止層は、その光学特性として、鏡面反射率2.5%以下、透過率90%以上、60度光沢度70%以下とすることで、外光の反射を抑制でき、視認性が向上するため好ましい。特に鏡面反射率は1%以下がより好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。ヘイズ20%〜50%、内部ヘイズ/全ヘイズ値(比)が0.3〜1、光散乱層までのヘイズ値から低屈折率層を形成後のヘイズ値の低下が15%以内、くし幅0.5mmにおける透過像鮮明度20%〜50%、垂直透過光/垂直から2度傾斜方向の透過率比が1.5〜5.0とすることで、高精細LCDパネル上でのギラツキ防止、文字等のボケの低減が達成され、好ましい。
【0190】
低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.49であり、好ましくは1.30〜1.44の範囲にある。更に、低屈折率層は下記数式(IX)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(IX):(mλ/4)×0.7<n1d1<(mλ/4)×1.3
式中、mは正の奇数であり、n1は低屈折率層の屈折率であり、そして、d1は低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。
【0191】
前記低屈折率層には、低屈折率バインダーとして、含フッ素ポリマーを含む。フッ素ポリマーとしては動摩擦係数0.03〜0.20、水に対する接触角90°〜120°、純水の滑落角が70°以下の熱又は電離放射線により架橋する含フッ素ポリマーが好ましい。本発明の反射防止フィルムを画像表示装置に装着した時、市販の接着テープとの剥離力が低いほどシールやメモを貼り付けた後に剥がれ易くなり好ましく、500gf以下が好ましく、300gf以下がより好ましく、100gf以下が最も好ましい。また、微小硬度計で測定した表面硬度が高いほど、傷がつき難く、0.3GPa以上が好ましく、0.5GPa以上がより好ましい。
【0192】
低屈折率層に用いられる含フッ素ポリマーとしてはパーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン)の加水分解、脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。
【0193】
含フッ素モノマーの具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
【0194】
架橋反応性付与のための構成単位としてはグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリルロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
【0195】
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶剤への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。
【0196】
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号及び特開平10−147739号各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用しても良い。
【0197】
光散乱層は、表面散乱及び/又は内部散乱による光拡散性と、フィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。従って、ハードコート性を付与するためのバインダー、光拡散性を付与するためのマット粒子、及び必要に応じて高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーを含んで形成される。
【0198】
光散乱層の膜厚は、ハードコート性を付与する観点並びにカールの発生及び脆性の悪化の抑制の観点から、1μm〜10μmが好ましく、1.2μm〜6μmがより好ましい。
【0199】
散乱層のバインダーとしては、飽和炭化水素鎖又はポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることが更に好ましい。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。バインダーポリマーを高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むものを選択することもできる。
【0200】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、上記のエチレンオキサイド変性体、ビニルベンゼン及びその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0201】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0202】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線又は熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。これらの光ラジカル開始剤等は公知のものを使用することができる。
【0203】
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線又は熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。
【0204】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりに又はそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基及び活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0205】
光散乱層には、防眩性付与の目的で、フィラー粒子より大きく、平均粒径が1μm〜10μm、好ましくは1.5μm〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子が含有される。
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、架橋アクリルスチレン粒子、シリカ粒子が好ましい。マット粒子の形状は、球状あるいは不定形のいずれも使用できる。
【0206】
また、粒子径の異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。
【0207】
更に、上記マット粒子の粒子径分布としては単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほど良い。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、更に好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
【0208】
上記マット粒子は、形成された光散乱層のマット粒子量が好ましくは10mg/m2〜1000mg/m2、より好ましくは100mg/m2〜700mg/m2となるように光散乱層に含有される。
マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0209】
光散乱層には、層の屈折率を高めるために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
また逆に、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた光散乱層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機フィラーと同じである。
光散乱層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al2O3、In2O3、ZnO、SnO2、Sb2O3、ITOとSiO2等が挙げられる。TiO2及びZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーの添加量は、光散乱層の全質量の10%〜90%であることが好ましく、より好ましくは20%〜80%であり、特に好ましくは30%〜75%である。
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
【0210】
光散乱層のバインダー及び無機フィラーの混合物のバルクの屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
【0211】
光散乱層は、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、あるいはその両者を防眩層形成用の塗布組成物中に含有する。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、本発明の反射防止フィルムの塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いられる。面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高めることが目的である。
【0212】
次に透明保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層について述べる。
透明保護膜上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、透明保護膜と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、中屈折率ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層からなってもよい(例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等参照)。また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0213】
(高屈折率層及び中屈折率層)
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子及びマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成る。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(:特開2001−1661042001−310432号公報等)、特定の分散剤併用(例、特開平11−153703号公報、米国特許第6210858号明細書、特開2002−2776069号公報等)等挙げられる。
【0214】
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
更に、ラジカル重合性及び/又はカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個有する多官能性化合物含有組成物と、加水分解性基を有する有機金属化合物及びその部分縮合体を含有する組成物とから選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の組成物が挙げられる。また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
【0215】
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることが更に好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。また、厚さは5nm〜10mμであることが好ましく、10nm〜1μmであることが更に好ましい。
【0216】
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して配置される。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35質量%〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報明細書段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報明細書段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報明細書段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
【0217】
架橋又は重合性基を有する含フッ素及び/又はシロキサンのポリマーの架橋又は重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時又は塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物又はその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
【0218】
低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1nm〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820号公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されても良い。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30nm〜200nmであることが好ましく、50nm〜150nmであることが更に好ましく、60nm〜120nmであることが最も好ましい。
【0219】
更に、ハードコート層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
【0220】
3.画像表示装置及び立体画像表示システム
本発明は、本発明の光学フィルムを有する画像表示装置及び立体画像表示システムにも関する。本発明の画像表示装置の一例は、
第1及び第2の偏光膜;
第1及び第2の偏光膜の間に配置される、少なくとも一方に電極を有し対向配置された一対の基板と、該一対の基板間の液晶層とを含む液晶セル;及び
第1偏光膜の外側に本発明の光学フィルム;を少なくとも有する画像表示装置であって、
前記第1偏光膜の吸収軸方向と、前記光学フィルムの第1及び第2位相差領域の面内遅相軸がそれぞれ±45°の角度をなすことを特徴とする画像表示装置である。
また、本発明の立体画像表示システムの一例は、前記画像表示装置と、前記光学フィルムの外側に配置される第3の偏光板とを少なくとも備え、第3の偏光板を通じて立体画像を視認させる立体画像表示システムである。
【0221】
本発明の画像表示装置は、TN(Twisted Nematic)、IPS (In-Plane Switching)、FLC (Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC (Anti-ferroelectric Liquid Crystal)、OCB (Optically Compensatory Bend)、STN (Supper Twisted Nematic)、VA (Vertically Aligned)、及びHAN (Hybrid Aligned Nematic)等、いずれの表示モードの態様であってもよい。
【0222】
第3の偏光板:
本発明の立体画像表示システムでは、特に3D映像とよばれる立体画像を視認者に認識させるため、眼鏡形状の偏光板(第3の偏光板)を通して画像を認識する。
[偏光眼鏡]
本発明の映像表示システムは、右眼鏡と左眼鏡の遅相軸が直交する偏光眼鏡を含み、前記光学フィルムの前記第1及び第2の位相差領域のいずれか一方から出射された右眼用画像光が右眼鏡を透過し、且つ左眼鏡で遮光され;前記第1及び第2の位相差領域の他方から出射された左眼用画像光が左眼鏡を透過し、且つ右眼鏡で遮光されるように構成されていることが好ましい。
前記偏光眼鏡は、位相差機能層と直線偏光子を含むことで偏光眼鏡を形成している。なお、直線偏光子と同等の機能を有するその他の部材を用いてもよい。
【0223】
偏光眼鏡を含め、本発明の映像表示システムの具体的な構成について説明する。まず、本発明の光学フィルムは、映像表示パネルの交互に繰り返されている複数の第一ライン上と複数の第二ライン上(例えば、ラインが水平方向であれば水平方向の奇数ライン上と偶数ライン上であり、ラインが垂直方向であれば垂直方向の奇数ライン上と偶数ライン上でもよい)に偏光変換機能が異なる前記第1の位相差領域と前記第2の位相差領域が設けられている。円偏光を表示に利用する場合には、上述の前記第1の位相差領域と前記第2の位相差領域の位相差は、ともにλ/4であることが好ましく、前記第1の位相差領域と前記第2の位相差領域は遅相軸が直交していることがより好ましい。
【0224】
円偏光を利用する場合、前記第1の位相差領域と前記第2の位相差領域の位相差値をともにλ/4とし、映像表示パネルの奇数ラインに右眼用画像を表示し、奇数ライン位相差領域の遅相軸が45度方向であるならば、偏光眼鏡の右眼鏡と左眼鏡にともにλ/4板を配置することが好ましく、偏光眼鏡の右眼鏡のλ/4板の遅相軸は具体的には略45度に固定すればよい。また、上記の状況であれば、同様に、映像表示パネルの偶数ラインに左眼用画像を表示し、偶数ライン位相差領域の遅相軸が135度方向であるならば、偏光眼鏡の左眼鏡の遅相軸は具体的には略135度に固定すればよい。
更に、一度前記パターニング位相差フィルムにおいて円偏光として画像光を出射し、偏光眼鏡により偏光状態を元に戻す観点からは、上記の例の場合の右眼鏡の固定する遅相軸の角度は正確に水平方向45度に近いほど好ましい。また、左眼鏡の固定する遅相軸の角度は正確に水平135度(又は−45度)に近いほど好ましい。
【0225】
また、例えば前記映像表示パネルが液晶表示パネルである場合、液晶表示パネルのフロント側偏光板の吸収軸方向が通常、水平方向であり、前記偏光眼鏡の直線偏光子の吸収軸が該フロント側偏光板の吸収軸方向に直交する方向であることが好ましく、前記偏光眼鏡の直線偏光子の吸収軸は鉛直方向であることがより好ましい。
また、前記液晶表示パネルのフロント側偏光板の吸収軸方向と、前記パターニング位相差フィルムの奇数ライン位相差領域と偶数ライン位相差領域の各遅相軸は、偏光変換の効率上、45度をなすことが好ましい。
なお、このような偏光眼鏡と、パターニング位相差フィルム及び液晶表示装置の好ましい配置については、例えば特開2004−170693号公報に開示がある。
【0226】
偏光眼鏡の例としては、特開2004−170693号公報に記載のものや、市販品として、Zalman製、ZM−M220Wの付属品を挙げることができる。
【実施例】
【0227】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0228】
(実施例1)
[ラビング配向膜付透明支持体の作製]
透明ガラス支持体の表面に、クラレ社製ポリビニルアルコール「PVA103」の4%水溶液を、12番バーで塗布を行い、80℃で5分間乾燥させた。その後に、400rpmで一方向に3往復、ラビング処理を行い、ラビング配向膜付ガラス支持体を作製した。なお、ガラス支持体のRe(550)は0nmであり、Rthは0nmであり、配向膜の膜厚は、0.9μmであった。
【0229】
[パターン化された光学異方性層の作製]
下記の光学異方性層用組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液として用いる。該塗布液を塗布、膜面温度80℃で1分間乾燥して液晶相状態とし均一配向させた後、室温まで冷却した。次に、100μm角の格子マスクを光学異方性層用塗布液を塗布した基板上に配置し、空気下にて20mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を5秒間照射して、その配向状態を固定化することにより第1の位相差領域を形成した。続いて、膜面温度140℃まで昇温し、一旦等方相にした後、100℃まで降温し、その温度で1分間加熱して均一配向させた。室温まで冷却した後、20mW/cm2で20秒間全面照射して、その配向状態を固定化することにより第2の位相差領域を形成した。第1の位相差領域と第2の位相差領域の遅相軸は直交しており、膜厚は、0.8μmであった。
【0230】
<光学異方性層用組成>
ディスコティック液晶E−1 100質量部
配向膜界面配向剤(II−1) 1.0質量部
空気界面配向剤(P−1) 0.4質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
メチルエチルケトン 300質量部
【0231】
【化16】
【0232】
パターン化された光学異方性層を、第1の位相差領域又は第2の位相差領域のいずれか一方の遅相軸が、直交位に組合された2枚の偏光板のいずれか一方の偏光軸と平行になるように、偏光板の間に入れ、さらに、位相差530nmの鋭敏色板を、その遅相軸が偏光板の偏光軸と45°の角度をなすように、光学異方性層の上においた(図5)。次に、光学異方性層を+45°回転させた状態(図6)、及び−45°回転させた状態(図7)を偏光顕微鏡(NIKON製 ECLIPE E600W POL)で観察した。図5〜図7に示す観察結果から明らかなように、+45°回転させた場合、第1の位相差領域の遅相軸と鋭敏色板の遅相軸が平行になっているため、位相差は530nmよりも大きくなり、その色は青色(白黒図面では濃淡の濃い部分)に変化している。一方、第2の位相差領域の遅相軸は鋭敏色板の遅相軸と直交しているため、位相差は530nmよりも小さくなり、その色は黄色(白黒図面では濃淡の淡い部分)に変化する。−45°回転させた場合、逆の現象となる。
【0233】
[光学フィルムの評価]
作製した光学フィルムについて、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて前記方法に従って、配向膜界面のディスコティック液晶のチルト角、空気界面のディスコティック液晶のチルト角、及びRe、Rthをそれぞれ測定した。結果を表1に示す。下記表中、垂直とは、チルト角70°〜90°を表す。また、光学フィルムについて、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、前記方法に従って、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向の方向との関係を示す。
【0234】
表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、一方向にラビング処理したPVA系ラビング配向膜上で配向させ、加熱温度を変化させて露光することによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1の位相差領域と第2の位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
【0235】
(実施例2)
光学異方性層塗布液を下記組成に変更した以外、実施例1と同様の操作にてパターン化された光学異方性層付光学フィルムの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、0.8μmであった。
<光学異方性層用組成>
ディスコティック液晶E−2 100質量部
配向膜界面配向剤(II−1) 1.0質量部
空気界面配向剤(P−2) 0.3質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
メチルエチルケトン 300質量部
【0236】
【化17】
【0237】
[光学フィルムの評価]
作製した光学フィルムについて、実施例1と同様にして、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向の方向との関係を示す。表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、一方向にラビング処理したPVA系ラビング配向膜上で配向させ、加熱温度を変化させて露光することによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1の位相差領域と第2の位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
【0238】
(実施例3)
[ラビング配向膜付透明支持体の作製]
(透明支持体の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Aを調製した。
<セルロースアシレート溶液A組成>
置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール 11質量部
【0239】
別のミキシングタンクに、下記の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液Bを調製した。
<添加剤溶液B組成>
下記化合物B1(Re低下剤) 40質量部
下記化合物B2(波長分散制御剤) 4質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 80質量部
メタノール(第2溶媒) 20質量部
【0240】
【化18】
【0241】
<セルロースアセテート透明支持体の作製>
セルロースアシレート溶液Aを477質量部に、添加剤溶液Bの40質量部を添加し、充分に攪拌して、ドープを調製した。ドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率70質量%の場外で剥ぎ取り、フィルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率が3乃至5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み60μmのセルロースアセテート保護フィルムを作製した。透明支持体のRe(550)は2.0nmであり、Rthは12.3nmであった。
【0242】
(アルカリ鹸化処理)
セルロースアセテート透明支持体を、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアセテート透明支持体を作製した。
【0243】
(アルカリ溶液組成)
────────────────────────────────────
アルカリ溶液組成(質量部)
────────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤
SF−1:C14H29O(CH2CH2O)20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
────────────────────────────────────
【0244】
(ラビング配向膜付透明支持体の作製)
上記作製した支持体の、鹸化処理を施した面に、下記の組成のラビング配向膜塗布液を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、配向膜を形成した。配向膜の膜厚は0.9μmであった。
<配向膜形成用塗布液の組成>
下記の変性ポリビニルアルコールPVA−1 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
【0245】
【化19】
【0246】
形成したラビング配向膜の表面に、フィルムの長手方向に沿ってラビング処理を行った。
【0247】
(パターン化された光学異方性層の作製)
下記組成の光学異方性層用塗布液を、バーコーターを用いて塗布量4ml/m2で塗布した。膜面温度80℃で1分間乾燥して液晶相状態とし均一配向させた後、室温まで冷却した。次に、ストライプマスクを光学異方性層用塗布液を塗布した基板上に配置し、空気下にて20mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を5秒間照射して、その配向状態を固定化することにより第1の位相差領域を形成した。続いて、膜面温度115℃まで昇温し、一旦等方相にした後、100℃まで降温し、その温度で1分間加熱して均一配向させた。室温まで冷却した後、20mW/cm2で20秒間全面照射して、その配向状態を固定化することにより第2の位相差領域を形成した。最後に、円筒状に巻き取ってロール状の光学フィルムを得た。第1の位相差領域と第2の位相差領域の遅相軸は直交しており、膜厚は、0.9μmであった。
【0248】
(光学異方性層用組成)
────────────────────────────────────
光学異方性層塗布液組成(質量部)
────────────────────────────────────
前記ディスコティック液晶E−1 100.0質量部
前記配向膜界面配向剤(II−1) 1.0質量部
下記空気界面配向剤(P−2) 0.4質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 10.0質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3.0質量部
増感剤(カヤキュアDETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
メチルエチルケトン 300.0質量部
────────────────────────────────────
【0249】
【化20】
【0250】
パターン化された光学異方性層を、第1の位相差領域又は第2の位相差領域のいずれか一方の遅相軸が、直交位に組合された2枚の偏光板のいずれか一方の偏光軸と平行になるように、偏光板の間に入れ、さらに、位相差530nmの鋭敏色板を、その遅相軸が偏光板の偏光軸と45°の角度をなすように、光学異方性層の上においた(図8)。次に、光学異方性層を+45°回転させた状態(図9)、及び−45°回転させた状態(図9)を偏光顕微鏡(NIKON製 ECLIPE E600W POL)で観察した。図8〜図10に示す観察結果から明らかなように、+45°回転させた場合、第1の位相差領域の遅相軸と鋭敏色板の遅相軸が平行になっているため、位相差は530nmよりも大きくなり、その色は青色(白黒図面では濃淡の濃い部分)に変化している。一方、第2の位相差領域の遅相軸は鋭敏色板の遅相軸と直交しているため、位相差は530nmよりも小さくなり、その色は黄色(白黒図面では濃淡の淡い部分)に変化する。−45°回転させた場合、逆の現象となる。
【0251】
[光学フィルムの評価]
作製した光学フィルムについて、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて前記方法に従って、配向膜界面のディスコティック液晶のチルト角、空気界面のディスコティック液晶のチルト角、及びRe、Rthをそれぞれ測定した。結果を表1に示す。下記表中、垂直とは、チルト角70°〜90°を表す。また、光学フィルムについて、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、前記方法に従って、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向の方向との関係を示す。
【0252】
表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、一方向にラビング処理したPVA系ラビング配向膜上で配向させ、加熱温度を変化させて露光することによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1の位相差領域と第2の位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
【0253】
(実施例4)
[光学フィルムの作製]
100μm周期のストライプマスクを用いる以外、実施例3と同様の操作にてパターン化された光学異方性層付光学フィルムを作製した。
【0254】
[反射防止膜の作製]
(ハードコート層用塗布液の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液とした。
メチルエチルケトン900質量部に対して、シクロヘキサノン100質量部、部分カプロラクトン変性の多官能アクリレート(DPCA−20、日本化薬(株)製)750質量部、シリカゾル(MIBK−ST、日産化学工業(株)製)200質量部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)50質量部、を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液を調製した。
【0255】
(中屈折率層用塗布液Aの調製)
ZrO2微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、溶剤組成:メチルイソブチルケトン/メチルエチルケトン=9/1、JSR(株)製])5.1質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)1.5質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.05質量部、メチルエチルケトン66.6質量部、メチルイソブチルケトン7.7質量部及びシクロヘキサノン19.1質量部を添加して攪拌した。充分に攪拌の後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用塗布液Aを調製した。
【0256】
(中屈折率層用塗布液Bの調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)4.5質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.14質量部、メチルエチルケトン66.5質量部、メチルイソブチルケトン9.5質量部及びシクロヘキサノン19.0質量部を添加して攪拌した。十分に攪拌ののち、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用塗布液Bを調製した。
【0257】
屈折率1.36、膜厚90μmとなるように、中屈折率用塗布液Aと中屈折率用塗布液Bとを適量混合し、中屈折率塗布液を調製した。
【0258】
(高屈折率層用塗布液の調製)
ZrO2微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、光重合開始剤含有、溶剤組成:メチルイソブチルケトン/メチルエチルケトン=9/1、JSR(株)製])14.4質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)0.75質量部、メチルエチルケトン62.0質量部、メチルイソブチルケトン3.4質量部、シクロヘキサノン1.1質量部を添加して攪拌した。充分に攪拌の後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率層用塗布液Cを調製した。
【0259】
(低屈折率層用塗布液の調製)
(パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
【0260】
【化21】
【0261】
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7g及び過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。更にヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は、0.53MPa(5.4kg/cm2)であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm2)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。更にこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.422、質量平均分子量は50000であった
【0262】
(中空シリカ粒子分散液Aの調製)
中空シリカ粒子微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シエル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31)500質量部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン30質量部、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.51質量部加え混合した後に、イオン交換水9質量部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加し、分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度18.2質量%の分散液Aを得た。得られた分散液AのIPA残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ0.5質量%以下であった。
【0263】
(低屈折率層用塗布液の調製)
各成分を下記のように混合し、メチルエチルケトンに溶解して固形分濃度5質量%の低屈折率層用塗布液Ln6を作製した。下記各成分の質量%は、塗布液の全固形分に対する、各成分の固形分の比率である。
【0264】
・P−1:パーフルオロオレフィン共重合体(1):15質量%
・DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製):7質量%
・MF1:国際公開第2003/022906号パンフレットの実施例記載の下記含フッ素不飽和化合物(重量平均分子量1600):5質量%
【0265】
【化22】
【0266】
・M−1:日本化薬(株)製KAYARAD DPHA:20質量%
・分散液A:前記中空シリカ粒子分散液A(アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで表面修飾した中空シリカ粒子ゾル、固形分濃度18.2%):50質量%
・Irg127:光重合開始剤イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製):3質量%
【0267】
前記光学フィルム上に、前記組成のハードコート層用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量150mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ12μmのハードコート層Aを形成した。
更に中屈折率層用塗布液、高屈折率層用塗布液、低屈折率層用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。 中屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら180W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm2、照射量240mJ/cm2の照射量とした。
高屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm2、照射量240mJ/cm2の照射量とした。
低屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量600mJ/cm2の照射量とした。
【0268】
[偏光板の作製]
上記にて作製したフィルムに、下記の粘着剤塗布液及び上層塗布液Bを、透明支持体側にそれぞれ20ml/m2塗布し、100℃で5分乾燥して粘着剤付きフィルム試料とした。
(粘着剤塗布液)
下記水溶性ポリマー(m) 0.5g
アセトン 40ml
酢酸エチル 55ml
イソプロパノール 5ml
【0269】
(上層塗布液B)
ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製ゴーセノールNH−26) 0.3g
サポニン(メルク社製界面活性剤) 0.03g
純水 57ml
メタノール 40ml
メチルプロピレングリコール 3ml
【0270】
【化23】
【0271】
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ30μmの偏光膜を得た。上記の粘着剤付きフィルムに対し粘着剤を塗設した側に偏光膜がくるように貼り付け、更に偏光膜のもう一方の側に市販のセルロールアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フィルム(株)製、Re(550)は3nm、|Rth(630)|は50nm)をアルカリケン化処理を行った後、粘着剤層を塗設してから貼り合わせ、偏光板を作製した。
【0272】
(液晶表示装置への実装評価)
円偏光眼鏡方式の3Dモニター(ZALMAN製)に使用されているパターン位相差板とフロント偏光板をはがし、上記で作製した偏光板を貼合した。
作製した3Dモニターに立体視用画像を映し、右眼用/左眼用の円偏光メガネを通して観察したところ、クロストークのない鮮明な立体画像を観察することができた。
【0273】
(実施例5)
[光学フィルムの作製]
セルロースアセテート透明支持体作製時の添加剤溶液Bから添加剤B1(Re低下剤)及び添加剤B2(波長分散制御剤)を除いた以外は、実施例4と同様に光学フィルムを作製した。このときのセルロースアセテート透明支持体の厚みは200μmであり、550nmにおけるReは15nmであり、Rthは102nmであった。
【0274】
(液晶表示装置への実装評価)
実施例4と同様の方法にて偏光板を作製し、円偏光眼鏡方式の3Dモニター(ZALMAN製)に使用されているパターン位相差板とフロント偏光板をはがし、前記偏光板を貼合した。
作製した3Dモニターに立体視用画像を映し、右眼用/左眼用の円偏光メガネを通して観察したところ、立体画像として観察することはできたが、若干のクロストークが認識された。
【0275】
(実施例6)
光学異方性層塗布液を下記組成に変更した以外、実施例1と同様の操作にてパターン化された光学異方性層付光学フィルムの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、0.8μmであった。
<光学異方性層用組成>
ディスコティック液晶E−3 100質量部
配向膜界面配向剤(II−1) 1.0質量部
空気界面配向剤(P−2) 0.3質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 9.9質量部
メチルエチルケトン 300質量部
【0276】
【化24】
【0277】
[光学フィルムの評価]
作製した光学フィルムについて、実施例1と同様にして、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向の方向との関係を示す。表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、一方向にラビング処理したPVA系ラビング配向膜上で配向させ、加熱温度を変化させて露光することによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1の位相差領域と第2の位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
【0278】
(実施例7)
光学異方性層塗布液を下記組成に変更した以外、実施例1と同様の操作にてパターン化された光学異方性層付光学フィルムの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、0.8μmであった。
<光学異方性層用組成>
ディスコティック液晶E−2 100質量部
配向膜界面配向剤(II−2) 1.0質量部
空気界面配向剤(P−2) 0.3質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
メチルエチルケトン 300質量部
【0279】
【化25】
【0280】
[光学フィルムの評価]
作製した光学フィルムについて、実施例1と同様にして、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向の方向との関係を示す。表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、イミダゾリウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、一方向にラビング処理したPVA系ラビング配向膜上で配向させ、加熱温度を変化させて露光することによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1の位相差領域と第2の位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
【0281】
(比較例1)
[光学フィルムの作製]
光学異方性層の作製方法を下記作製方法に変更した以外、実施例3と同様の操作にて光学フィルムを作製した。配向膜の膜厚は、0.9μmであり、光学異方性層の膜厚は、0.9μmであった。
【0282】
[光学異方性層の作製方法]
実施例3の光学異方性層用塗布液を、バーコーターを用いて塗布量4ml/m2で塗布した。膜面温度80℃で1分間乾燥して液晶相状態とし均一配向させた後、室温まで冷却した。空気下にて20mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を25秒間全面照射して、その配向状態を固定化することにより光学異方性層を形成した。
【0283】
[光学フィルムの評価]
作製した光学フィルムについて、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて前記方法に従って、配向膜界面のディスコティック液晶のチルト角、空気界面のディスコティック液晶のチルト角、及びRe、Rthをそれぞれ測定した。結果を表1に示す。下記表中、垂直とは、チルト角70°〜90°を表す。また、光学フィルムについて、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、前記方法に従って、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向の方向との関係を示す。
【0284】
表1に示す結果から、ディスコティック液晶は垂直配向しているものの、遅相軸がラビング方向に直交した単一の光学異方性層しか得られていないことが理解できる。
【0285】
(比較例2)
[光学フィルムの作製]
光学異方性層の作製方法を下記作製方法に変更した以外、実施例3と同様の操作にて光学フィルムを作製した。配向膜の膜厚は、0.9μmであり、光学異方性層の膜厚は、0.9μmであった。
【0286】
[光学異方性層の作製方法]
実施例3の光学異方性層用塗布液を、バーコーターを用いて塗布量4ml/m2で塗布した。膜面温度115℃まで昇温し、一旦等方相にした後、100℃まで降温し、その温度で1分間加熱して均一配向させた。室温まで冷却した後、20mW/cm2で25秒間全面照射して、その配向状態を固定化することにより光学異方性層を形成した。
【0287】
[光学フィルムの評価]
作製した光学フィルムについて、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて前記方法に従って、配向膜界面のディスコティック液晶のチルト角、空気界面のディスコティック液晶のチルト角、及びRe、Rthをそれぞれ測定した。結果を表1に示す。下記表中、垂直とは、チルト角70°〜90°を表す。また、光学フィルムについて、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、前記方法に従って、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向の方向との関係を示す。
【0288】
表1に示す結果から、ディスコティック液晶は垂直配向しているものの、遅相軸がラビング方向に平行になっている単一の光学異方性層しか得られていないことが理解できる。
【0289】
(比較例3)
(液晶表示装置への実装評価)
比較例1で作製した偏光板に変更した以外は、実施例4と同様の方法にて3Dモニターを作製した。
作製した3Dモニターに立体視用画像を映し、右眼用/左眼用の円偏光メガネを通して観察したところ、クロストークが大きく立体画像として認識できなかった。
【0290】
(比較例4)
(液晶表示装置への実装評価)
比較例2で作製した偏光板に変更した以外は、実施例4と同様の方法にて3Dモニターを作製した。
作製した3Dモニターに立体視用画像を映し、右眼用/左眼用の円偏光メガネを通して観察したところ、クロストークが大きく立体画像として認識できなかった。
【0291】
【表1】
【0292】
(参考例1)
光学異方性層塗布液を下記組成に変更した以外、実施例1と同様の操作にてパターン化された光学異方性層付光学フィルムの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、0.8μmであった。
<光学異方性層用組成>
ディスコティック液晶E−4 100質量部
配向膜界面配向剤(II−1) 1.0質量部
空気界面配向剤(P−2) 0.3質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 9.9質量部
メチルエチルケトン 300質量部
【0293】
【化26】
【0294】
[光学フィルムの評価]
作製した光学フィルムについて、実施例1と同様にして、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。側鎖円盤状コアとの間の連結基に−C=C−を含まないトリフェニレン系ディスコティック液晶E−4を用いると、直交配向状態になり難く、得られた光学フィルムは、実施例の光学フィルムと比較して、パターン形成性について劣っていた。
【0295】
(参考例2)
光学異方性層塗布液を下記組成に変更した以外、実施例1と同様の操作にてパターン化された光学異方性層付光学フィルムの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、0.8μmであった。
<光学異方性層用組成>
ディスコティック液晶E−1 100質量部
配向膜界面配向剤(II−3) 1.0質量部
空気界面配向剤(P−2) 0.3質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
メチルエチルケトン 300質量部
【0296】
【化27】
【0297】
[光学フィルムの評価]
作製した光学フィルムについて、実施例1と同様にして、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。式(2)の範囲外のピリジニウム塩を用いると、直交配向状態になり難く、得られた光学フィルムは、実施例の光学フィルムと比較して、パターン形成性について劣っていた。
【符号の説明】
【0298】
10 光学フィルム
12 パターン光学異方性層
14 配向膜
16 透明支持体
20 偏光板
22 偏光膜
24 保護フィルム
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精細な配向パターンの光学異方性層を有し、かつ製造が容易で実用性に優れた光学フィルム、及びその製造方法、並びに前記光学フィルムを利用した偏光板、及び立体画像の表示が可能な画像表示装置及び立体画像表示システムにも関する。
【背景技術】
【0002】
立体画像を表示する3D用画像表示装置には、右眼用画像及び左眼用画像を、例えば、互いに反対方向の円偏光画像とするための光学部材が必要である。かかる光学部材の作製には、偏光膜の吸収軸、位相差膜の遅相軸等が互いに異なる領域を規則的に配置するパターン技術が必要である。
例えば、特許文献1には、フォトレジスト材料を用いて、旋光領域と非旋光領域とにパターニングされた旋光光学素子の作製方法が開示されている。しかし、工程数が多く、工業的に連続生産するのは困難な場合もある。
また、特許文献2には、光異性化物質を利用した進相軸または遅相軸がそれぞれ異なる第1及び第2の領域を有する位相差シートが開示されている。しかし、材料の制約があるので、種々の用途に応じて、最適な特性を達成するのは困難な場合もある。
【0003】
また、光配向膜を利用することにより作製可能な、パターニング楕円偏光板、及び光学異方性体が、特許文献3及び4にそれぞれ開示されている。光配向膜を利用する技術では、光配向膜に互いに異なる方向から光照射して、配向処理する必要があり、煩雑さがある。また、ラビング配向膜を利用してパターン化された光学異方性層を形成する技術も知られているが、いずれもマスクラビングにより、複数の方向にラビング処理する必要があり、処理が煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−90675号公報
【特許文献2】特開平10−153707号公報
【特許文献3】特開2009−193014号公報
【特許文献1】特開2007−71952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パターン化された光学異方性層の作製において、複数の方向から配向処理する工程が必要でなくなれば、製造工程を格段に簡略化でき、連続生産において有利である。しかし、上記した通り、従来、パターン化された光学異方性層の作製には、異なる方向から光照射された光配向膜、又はマスクラビングにより異なる方向にラビング処理されたラビング配向膜等、異なる方向に配向処理が施された配向膜が必要であるというのが、一般的な考えであり、一方向に配向処理された配向膜のみを利用して、パターン化された光学異方性層を作製することができるという考えは、従来なかったと言える。
本発明の第一の目的は、高精細な配向パターンの光学異方性層を有し、かつ製造が容易で実用性に優れた光学フィルムを提供することである。第二の目的は、かかる光学フィルムの簡易な製造方法を提供することである。第三の目的は、低コストで視認性の高い画像表示装置及び立体画像表示システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 透明支持体上に、一方向に処理された配向膜と、重合性基を有する液晶を主成分とする一種の組成物から形成された光学異方性層とを少なくとも有する光学フィルムであって、
前記光学異方性層が、互いに直交する面内遅相軸を有する第1相差領域及び第2位相差領域を含み、前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層であることを特徴とする光学フィルム。
[2] 前記配向膜が、一方向にラビング処理されたラビング配向膜であることを特徴とする[1]の光学フィルム。
[3] Re(550)が、110〜165nmであることを特徴とする[1]又は[2]の光学フィルム:
但し、Re(550)は波長550nmにおける面内レターデーション値(単位:nm)である。
[4] 前記透明支持体のRe(550)が、0〜10nmであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの光学フィルム。
[5] Rth(550)が、|Rth(550)|≦20を満足することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかの光学フィルム:
但し、Rth(550)は、波長550nmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。
[6] 前記配向膜が、変性又は未変性ポリビニルアルコールを主成分として含有する膜であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかの光学フィルム。
[7] 前記重合性基を有する液晶が、円盤状液晶であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかの光学フィルム。
[8] 前記光学異方性層が、ピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物の少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする[1]〜[7]のいずれかの光学フィルム。
【0007】
[9] 前記光学異方性層が、下記一般式(2a)のピリジニウム化合物又は下記一般式(2b)のイミダゾリウム化合物をさらに含有することを特徴とする[1]〜[8]のいずれかの光学フィルム:
【化1】
【0008】
式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基(単結合を含む)を表し;R22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基を表し、R22が、ジアルキル置換アミノ基である場合、2つのアルキル基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよく;Xはアニオンを表し;Y22及びY23はそれぞれ、5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基を表し;mは1又は2であり、mが2のとき、複数のY23及びL24は、互いに同一であっても異なっていてもよく;Z21は、ハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基を表し;pは、1〜10の整数であり、R30は、水素原子又は炭素原子数が1〜12のアルキル基である。
【0009】
[10] 前記光学異方性層が、フルオロ脂肪族基含有共重合体の少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする[1]〜[9]のいずれかの光学フィルム。
[11] 前記重合性基を有する液晶が円盤状液晶であり、前記光学異方性層中、円盤状液晶が垂直配向状態に固定されていることを特徴とする[1]〜[10]のいずれかの光学フィルム。
[12] [1]〜[11]のいずれかの光学フィルムと、偏光膜とを含み、前記光学異方性層の第1及び第2の位相差領域のそれぞれの面内遅相軸方向と、偏光膜の吸収軸方向とが45°であることを特徴とする偏光板。
[13] 前記光学フィルムと、前記偏光膜とが粘着層を介して積層されていることを特徴とする[12]の偏光板。
[14] さらに最表面に一層以上の反射防止フィルムが積層されていることを特徴とする[12]又は[13]の偏光板。
【0010】
[15] 第1及び第2の偏光膜;
第1及び第2の偏光膜の間に配置される、少なくとも一方に電極を有し対向配置された一対の基板と、該一対の基板間の液晶層とを含む液晶セル;及び
第1偏光膜の外側に[1]〜[11]のいずれかの光学フィルム;
を少なくとも有する画像表示装置であって、
前記第1偏光膜の吸収軸方向と、前記光学フィルムの第1及び第2位相差領域の面内遅相軸がそれぞれ±45°の角度をなすことを特徴とする画像表示装置。
[16] [15]の画像表示装置と、前記光学フィルムの外側に配置される第3の偏光板とを少なくとも備え、第3の偏光板を通じて立体画像を視認させる立体画像表示システム。
[17] [1]〜[11]のいずれかの光学フィルムの製造方法であって、
1)透明支持体上にラビング配向膜を形成する工程
2)ラビング配向膜を一方向にラビング処理する工程
3)ラビング配向膜上に、重合性基を有する液晶を主成分とする一種の組成物を塗布する工程
4)温度T1℃で加熱してラビング方向に対して、液晶の遅相軸を直交配向させる工程
5)フォトマスク下、紫外線照射して照射領域を直交配向状態で固定化する工程
6)温度T2(但し、T1<T2)℃で加熱して、ラビング方向に対して未照射領域の液晶の遅相軸を平行配向させる工程
7)紫外線照射して平行配向状態で固定化する工程
をこの順で含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高精細な配向パターンの光学異方性層を有し、かつ製造が容易で実用性に優れた光学フィルムを提供することができる。
また、本発明によれば、前記光学フィルムの簡易な製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、低コストで視認性の高い画像表示装置及び立体画像表示システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の光学フィルムの一例の上面図である。
【図2】本発明に係わるパターン光学異方性層の一例の上面模式図である。
【図3】本発明に係わる配向膜の一例の上面模式図である。
【図4】本発明の偏光板の一例の断面模式図である。
【図5】実施例で作製した光学フィルムの光学特性の評価結果を示す図である。
【図6】実施例で作製した光学フィルムの光学特性の評価結果を示す図である。
【図7】実施例で作製した光学フィルムの光学特性の評価結果を示す図である。
【図8】実施例で作製した光学フィルムの光学特性の評価結果を示す図である。
【図9】実施例で作製した光学フィルムの光学特性の評価結果を示す図である。
【図10】実施例で作製した光学フィルムの光学特性の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
なお、本明細書では、「可視光」とは、380nm〜780nmのことをいう。また、本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、測定波長は550nmである。
また、本明細書において、角度(例えば「90°」等の角度)、及びその関係(例えば「直交」、「平行」、及び「45°で交差」等)については、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、厳密な角度±10°未満の範囲内であることなどを意味し、厳密な角度との誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
【0014】
1.光学フィルム
本発明は、透明支持体上に、一方向に処理された配向膜と、重合性基を有する液晶を主成分とする一種の組成物から形成された光学異方性層とを少なくとも有する光学フィルムであって、前記光学異方性層が、互いに直交する面内遅相軸を有する第1相差領域及び第2位相差領域を含み、前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層であることを特徴とする光学フィルムに関する。本発明の光学フィルムは、立体画像表示用の画像表示装置の視認側偏光子のさらに外側に配置され、当該光学フィルムの第1及び第2の位相差領域のそれぞれを通過した偏光画像が、偏光メガネ等を介して右眼用又は左眼用の画像として、認識される。従って、左右画像が不均一とならないように、第1及び第2の位相差領域は、互いに等しい形状であるのが好ましく、またそれぞれの配置は、均等且つ対称的であるのが好ましい。
【0015】
本発明の光学フィルムの一例の断面模式図を図1に及び上面図を図2に示す。図1及び図2に示す光学フィルム10は、透明支持体16、配向膜14、及び光学異方性層12を有し、光学異方性層12は、画像表示装置内に、第1及び第2の位相差領域12a及び12bが、均等且つ対称に配置されたパターン光学異方性層であるある。第1及び第2の位相差領域12a及び12bは、互いに直交する面内遅相軸a及びbをそれぞれ有する。円偏光を利用する態様では、第1及び第2の光学フィルム10のReはλ/4であるのが好ましく、具体的には、110〜165nmであるのが好ましい。Reは、120〜145nmであることがより好ましく、130〜145nmであることが特に好ましい。透明支持体16が、位相差フィルムである場合は、透明支持体16のReも含めて、光学フィルム全体としてReが前記範囲であるのが好ましい。一方、Rthは小さいほど、クロストークを軽減する観点では好ましく、具体的には、光学フィルム全体として、Rthの絶対値は、20nm以下であるのが好ましい。
【0016】
光学フィルム10が有する配向膜14は、ラビング配向膜であって、第1の位相差領域12aの面内遅相軸a又は第2の位相差領域12bの面内遅相軸bと一致したC1又はC2方向にラビング処理された配向膜である。ラビング配向膜は一般的には、ある程度の厚みがあっても配向規制力を維持できるので、透明支持体16の表面に凹凸があっても、それを補償する厚みの配向膜を形成することで、平坦化することができる。一方、光配向膜は、配向規制力を十分に発揮するためには、厚みを薄くする必要があり、透明支持体の凹凸を平坦化するには、厚みが不足する場合がある。透明支持体の凹凸を平坦化し、パターン光学異方性層を安定的に作製するという観点では、ラビング配向膜を利用する本態様が好ましい。
【0017】
以下、本発明の光学フィルムの製造方法、及び各部材について、詳細に説明する。
(1)光学フィルムの製造方法
本発明の光学フィルムの製造方法の一例は、
1)透明支持体上にラビング配向膜を形成する工程
2)ラビング配向膜を一方向にラビング処理する工程
3)ラビング配向膜上に、重合性基を有する液晶を主成分とする一種の組成物を塗布する工程
4)温度T1℃で加熱してラビング方向に対して液晶の遅相軸を直交配向させる工程
5)フォトマスク下、紫外線照射して照射領域を直交配向状態で固定化する工程
6)温度T2(但し、T1<T2)℃で加熱して、ラビング方向に対して未照射領域の液晶の遅相軸を平行配向させる工程
7)紫外線照射して平行配向状態で固定化する工程
をこの順で含む製造方法である。
【0018】
前記方法では、パターン光学異方性層の形成に、一方向にラビング処理されたラビング配向膜を利用する。ラビング配向膜は、ラビング処理による配向制御能を示し、ラビング処理の方向と加熱条件に従って、配向軸が決定する性質を有する。通常、一方向にラビング処理された配向膜上で液晶を配向させると、液晶は、ラビング方向に対して、その遅相軸を平行にして、又は直交にして配向する。いずれの配向状態になるかは、配向膜材料、液晶、及び配向制御剤の1以上の種類等によって決定される。上記方法では、温度変化によって、例えば、配向膜材料、液晶、及び配向制御剤のいずれか2つ又は3つの材料間の親和性を変化させて、ラビング方向に対して液晶の遅相軸が直交配向した配向状態、及びラビング方向に対して液晶の遅相軸が平行配向した配向状態を、それぞれ実現している。温度T1℃で、直交配向状態とした後に、フォトマスク下の紫外線照射により、当該配向状態を所定のパターンで固定した後、温度T2(但し、T1<T2)℃で、非照射領域を平行配向状態とする。さらに紫外線照射によりその状態を固定することで、面内遅相軸が互いに直交する第1及び第2の位相差領域を有するパターン光学異方性層を形成することができる。第1及び第2の位相差領域の形状及び配置は、5)工程に用いられるフォトマスクを選択することで、所望の形状及び配置のパターンにすることができる。立体画像表示用の画像表示装置に用いられる態様では、前記第1及び第2の位相差領域が、互いの短辺の長さがほぼ等しい帯状であり、かつ交互に繰り返しパターニングされていることが好ましい。
【0019】
前記方法では、温度をT1℃からT2℃に上昇させることで、直交配向状態から平行配向状態への転移を可能としている。温度T1℃では、配向膜材料、液晶、及び配向制御剤のいずれか2つまたは3つの相互作用が配向状態を支配し、液晶を、その遅相軸がラビング方向と直交する方向に配向させる。温度T2℃まで上昇すると、その相互作用はもはや支配的ではなくなり、ラビング配向膜のラビング方向が配向状態を支配し、液晶は、その遅相軸をラビング方向と平行にして平行配向する。これらの状態を達成する温度T1℃及びT2℃の好ましい範囲は、使用する各材料によって変動し、一概に決めることはできない。一例では、T1℃は、60〜90℃であるのが好ましい。一方、T2℃は、配向膜の配向規制力が確保でき、支持体として用いるポリマーフィルムを劣化させない程度であれば、前記液晶化合物の等方相転移温度以上であってもよい。一般的には、T2℃は、90°を超え180℃以下である。
なお、3)工程と4)工程との間に、組成物中の溶剤を蒸発されるために、加熱してもよい。加熱温度は、T1℃より高くても低くてもよく、またT1℃と同一の温度であってもよい。
【0020】
5)及び7)工程では、液晶化合物の重合反応を進行させるために紫外線を照射する。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜10J/cm2であることが好ましく、25〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。照度は10〜1000mW/cm2であることが好ましく、20〜500mW/cm2であることがより好ましく、40〜350mW/cm2であることがさらに好ましい。照射波長としては250〜450nmにピークを有することが好ましく、300〜410nmにピークを有することがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは加熱条件下で光照射を実施してもよい。光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)あるいはショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)が好ましく用いられる。
【0021】
5)工程では、液晶の分子を直交配向状態とした後、フォトマスク下、紫外線照射して、重合を進行させて、その配向状態を固定して、第1の位相差領域を形成する。フォトマスク下での紫外線照射では、露光量は、50〜1000mJ/cm2程度であることが好ましく、50〜200mJ/cm2程度であることがさらに好ましい。パターン解像度を向上させるためには、室温で露光することが好ましい。
【0022】
続いて、T2℃まで加熱して、液晶の分子を平行配向状態とした後、再び前面に紫外線を照射し、重合反応を進行させ、その配向状態を固定して、第2の位相差領域を形成する。7)工程での露光量は、200〜2000mJ/cm2程度であることが好ましく、500〜1000mJ/cm2程度であることがさらに好ましい。
【0023】
第1の位相差領域と第2の位相差領域の正面レターデーション値(Re)、膜厚方向のレターデーション値(Rth)を等しくするため、露光温度を制御することが好ましい。例えば、5)工程は、温度T1℃で実施してもよいし、室温程度まで温度を下げてから実施してもよい。また、7)工程は、温度T2℃で実施してもよいし、T2℃より低い温度にしてから実施してもよい。但し、ReとRthを等しくするために、5)工程と7)工程の露光温度は等しいことが好ましい。
【0024】
ラビング配向膜:
上記1)及び2)工程により、ラビング配向膜を形成する。本発明に利用可能な「ラビング配向膜」とは、ラビングによって、液晶分子の配向規制能を有するように処理された膜を意味する。ラビング配向膜には、液晶分子を配向規制する配向軸があり、当該配向軸に従って、液晶分子は配向する。本発明では、液晶分子は、温度T1℃でラビング方向に対して液晶の遅相軸が直交するように配向したのち、温度T2(但し、T1<T2)℃で液晶分子の遅相軸がラビング方向に対して平行になるように配向転移するように、配向膜の材料、液晶、及び配向制御剤を選択する。
【0025】
ラビン配向膜は、一般的にはポリマーを主成分とする。配向膜用ポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。本発明において利用されるポリマー材料は、ポリビニルアルコール又はポリイミド、及びその誘導体が好ましい。特に変性又は未変性のポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールは、種々の鹸化度のものが存在する。本発明では、鹸化度85〜99程度のものを用いるのが好ましい。市販品を用いてもよく、例えば、「PVA103」、「PVA203」(クラレ社製)等は、上記鹸化度のPVAである。ラビング配向膜については、WO01/88574A1号公報の43頁24行〜49頁8行、特許第3907735号公報の段落番号[0071]〜[0095]に記載の変性ポリビニルアルコールを参照することができる。ラビング配向膜の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.01〜1μmであることがさらに好ましい。
【0026】
ラビング処理は、一般にはポリマーを主成分とする膜の表面を、紙や布で一定方向に数回擦ることにより実施することができる。ラビング処理の一般的な方法については、例えば、「液晶便覧」(丸善社発行、平成12年10月30日)に記載されている。
ラビング密度を変える方法としては、「液晶便覧」(丸善社発行)に記載されている方法を用いることができる。ラビング密度(L)は、下記式(A)で定量化されている。
式(A) L=Nl(1+2πrn/60v)
式(A)中、Nはラビング回数、lはラビングローラーの接触長、rはローラーの半径、nはローラーの回転数(rpm)、vはステージ移動速度(秒速)である。
【0027】
ラビング密度を高くするためには、ラビング回数を増やす、ラビングローラーの接触長を長く、ローラーの半径を大きく、ローラーの回転数を大きく、ステージ移動速度を遅くすればよく、一方、ラビング密度を低くするためには、この逆にすればよい。
ラビング密度と配向膜のプレチルト角との間には、ラビング密度を高くするとプレチルト角は小さくなり、ラビング密度を低くするとプレチルト角は大きくなる関係がある。
長尺状の偏光膜であって、吸収軸が長手方向の偏光膜と貼り合わせるには、長尺のポリマーフィルムからなる支持体上に配向膜を形成し、長手方向に対して45°の方向に連続的にラビング処理して、ラビング配向膜を形成するのが好ましい。
【0028】
光学異方性層:
上記3)工程で、配向膜のラビング処理面に、塗布液として調製された重合性基を有する液晶を主成分とする一種の組成物を塗布する。塗布方法としては特に制限はく、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、印刷コーティング法、スプレーコーティング法、スロットコーティング法、ロールコーティング法、スライドコーテティング法、ブレードコーティング法、グラビアコーティング法、ワイヤーバー法等の公知の塗布方法が挙げられる。
【0029】
4)及び6)工程では、液晶の遅相軸をラビング方向に対して直交及び平行にしてそれぞれ配向させる。これにより、第1及び第2の面内遅相軸の方向が決定され、互いに直交した面内遅相軸を有する第1及び第2の位相差領域が形成される。さらに、これらの工程における液晶の配向状態によって、光学異方性層の光学特性(Re及びRth)が決定される。前記光学異方性層は、λ/4板、即ち直線偏光を円偏光に変換する機能を有する光学異方性層であるのが好ましい。λ/4板としての機能を有する光学異方性層の形成には種々の方法がある。一例は、重合性基を有する棒状液晶化合物の遅相軸を層面に水平配向させた状態に固定化する方法である、又は、ディスコティック液晶の円盤面を層面に対して垂直配向させた状態に固定化する方法である。より好ましくは、ディスコティック液晶を垂直配向させた状態に固定する方法である。
【0030】
前記光学異方性層の形成に用いられる組成物の一例は、重合性基を有する液晶化合物の少なくとも1種、及び配向制御剤の少なくとも1種を含有する液晶組成物である。その他、重合開始剤及び増感剤を含有していてもよい。
以下、各材料について詳細に説明する。
【0031】
[重合性基を有する液晶化合物]
本発明の光学異方性層の主原料として使用可能な液晶化合物としては、棒状液晶及びディスコティック液晶を挙げることができ、ディスコティック液晶が好ましく、前記のとおり重合性基を有するディスコティック液晶がより好ましい。
棒状液晶としては、例えば、Makromol. Chem., 190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号、同5622648号、同5770107号、世界特許(WO)95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1−272551号、同6−16616号、同7−110469号、同11−80081号、同11−513019号及び特願2001−64627号などの各公報及び明細書に記載の化合物の中から選んで用いることができる。
【0032】
前記低分子棒状液晶化合物としては、下記一般式(X)で表される化合物が好ましい。
一般式(X)
Q1−L1−Cy1−L2−(Cy2−L3)n−Cy3−L4−Q2
式中、Q1及びQ2はそれぞれ独立に重合性基を表し、L1及びL4はそれぞれ独立に二価の連結基を表し、L2及びL3はそれぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し、Cy1、Cy2及びCy3はそれぞれ独立に二価の環状基を表し、nは0、1又は2である。
【0033】
式中、Q1及びQ2はそれぞれ独立に重合性基である。重合性基の重合反応は、付加重合(開環重合を含む)又は縮合重合であることが好ましい。言い換えると、重合性基は、付加重合反応又は縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。
【0034】
本発明の光学異方性層の主原料として使用可能なディスコティック液晶としては、前記のとおり重合性基を有する化合物が好ましい。
前記ディスコティック液晶としては、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
一般式(I): D(−L−H−Q)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Hは二価の芳香族環又は複素環であり、Qは重合性基であり、nは3〜12の整数を表す。
【0035】
円盤状コア(D)は、ベンゼン環、ナフタレン環、トリフェニレン環、アントラキノン環、トルキセン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環が好ましく、ベンゼン環、トリフェニレン環、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環が特に好ましい。
【0036】
Lは、*−O−CO−、*−CO−O−、*−CH=CH−、*−C≡C−及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基が好ましく、*−CH=CH−又は*−C≡C−のいずれか一方を少なくとも一つ以上含む二価の連結基であることが特に好ましい。ここで、*は一般式(I)中のDに結合する位置を表す。
【0037】
Hは、芳香族環としては、ベンゼン環及びナフタレン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。複素環としては、ピリジン環及びピリミジン環が好ましく、ピリジン環が特に好ましい。Hは、芳香族環が特に好ましい。
【0038】
重合性基Qの重合反応は、付加重合(開環重合を含む)又は縮合重合であることが好ましい。言い換えると、重合性基は、付加重合反応又は縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。中でも、(メタ)アクリレート基、エポキシ基が好ましい。
【0039】
前記一般式(I)で表されるディスコティック液晶は、下記一般式(II)又は(III)で表されるディスコティック液晶であることが特に好ましい。
【0040】
【化2】
【0041】
式中、L、H、Qは、前記一般式(I)におけるL、H、Qとそれぞれ同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0042】
【化3】
【0043】
式中、Y1、Y2、及びY3は、後述する一般式(IV)におけるY11、Y12、及びY13と同義であり、その好ましい範囲も同一である。また、L1、L2、L3、H1、H2、H3、R1、R2、及びR3も、後述する一般式(IV)におけるL1、L2、L3、H1、H2、H3、R1、R2、R3と同義であり、その好ましい範囲も同一である。
【0044】
後述するように、一般式(I)、(II)、(III)及び(IV)で表されるように、分子内に複数個の芳香環を有しているディスコティック液晶は、配向制御剤として用いられるピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物等のオニウム塩との間に分子間π−π相互作用が起こるため、垂直配向を実現できる。特に、例えば、一般式(II)において、Lが、*−CH=CH−又は*−C≡C−のいずれか一方を少なくとも一つ以上含む二価の連結基である場合、及び、一般式(III)において、複数個の芳香環及び複素環が単結合で連結される場合は、該連結基により結合の自由回転が強く束縛されることにより分子の直線性が保持されるため、液晶性が向上すると共に、より強い分子間π−π相互作用が起こり安定な垂直配向が実現できる。
【0045】
前記ディスコティック液晶としては、下記一般式(IV)で表される化合物が好ましい。
【0046】
【化4】
【0047】
式中、Y11、Y12及びY13は、それぞれ独立に置換されていてもよいメチン又は窒素原子を表す。
【0048】
Y11、Y12およびY13がメチンの場合、メチンの水素原子は置換基で置き換わってもよい。メチンが有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子およびシアノ基を好ましい例として挙げることができる。これらの置換基の中では、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基がさらに好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12アルコキシカルボニル基、炭素数2〜12アシルオキシ基、ハロゲン原子およびシアノ基がより好ましい。
Y11、Y12およびY13は、化合物の合成の容易さおよびコストの点において、いずれもメチンであることがより好ましく、メチンは無置換であることがさらに好ましい。
【0049】
L1、L2及びL3は、それぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表す。
L1、L2およびL3が二価の連結基の場合、それぞれ独立に、−O−,−S−、−C(=O)−、−NR7−、−CH=CH−、−C≡C−、二価の環状基およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R7は炭素原子数1〜7のアルキル基または水素原子であり、炭素原子数1〜4のアルキル基または水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0050】
L1、L2およびL3における二価の環状基とは、少なくとも1種類の環状構造を有する二価の連結基(以下、環状基と呼ぶことがある)である。環状基は5員環、6員環、または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが最も好ましい。環状基に含まれる環は、縮合環であってもよい。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環としては、ベンゼン環およびナフタレン環が好ましい例として挙げられる。脂肪族環としては、シクロヘキサン環が好ましい例として挙げられる。複素環としては、ピリジン環およびピリミジン環が好ましい例として挙げられる。環状基は、芳香族環および複素環がより好ましい。なお、本発明における2価の環状基は、環状構造のみ(但し、置換基を含む)からなる2価の連結基であることがより好ましい(以下、同じ)。
【0051】
L1、L2およびL3で表される二価の環状基のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,5−ジイル基およびナフタレン−2,6−ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。
【0052】
L1、L2およびL3で表される二価の環状基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子、塩素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数が2〜16アルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。
【0053】
L1、L2およびL3としては、単結合、*−O−CO−、*−CO−O−、*−CH=CH−、*−C≡C−、*−二価の環状基−、*−O−CO−二価の環状基−、*−CO−O−二価の環状基−、*−CH=CH−二価の環状基−、*−C≡C−二価の環状基−、*−二価の環状基−O−CO−、*−二価の環状基−CO−O−、*−二価の環状基−CH=CH−および*−二価の環状基−C≡C−が好ましい。特に、単結合、*−CH=CH−、*−C≡C−、*−CH=CH−二価の環状基−および*−C≡C−二価の環状基−が好ましく、単結合が最も好ましい。ここで、*は一般式(IV)中のY11、Y12およびY13を含む6員環側に結合する位置を表す。
【0054】
一般式(I)中、H1、H2及びH3は、それぞれ独立に一般式(IV−A)又は(IV−B)の基を表す。
【0055】
【化5】
一般式(IV−A)中、YA1及びYA2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;
XAは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;
*は上記一般式(IV)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し;
**は上記一般式(IV)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。
【0056】
【化6】
一般式(IV−B)中、YB1及びYB2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;
XBは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;
*は上記一般式(IV)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し;
**は上記一般式(IV)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。
【0057】
一般式(IV)中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に下記一般式(IV−R)を表す。
【0058】
一般式(IV−R)
*−(−L21−Q2)n1−L22−L23−Q1
一般式(IV−R)中、*は、一般式(IV)におけるH1〜H3側と結合する位置を表す。
L21は単結合又は二価の連結基を表す。L21が二価の連結基の場合、−O−、−S−、−C(=O)−、−NR7−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R7は炭素原子数1〜7のアルキル基または水素原子であり、炭素原子数1〜4のアルキル基または水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが最も好ましい。
【0059】
L21は単結合、***−O−CO−、***−CO−O−、***−CH=CH−および***−C≡C−(ここで、***は一般式(DI−R)中の*側を表す)のいずれかが好ましく、単結合がより好ましい。
【0060】
Q2は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基(環状基)を表す。このような環状基としては、5員環、6員環、または7員環を有する環状基が好ましく、5員環または6員環を有する環状基がより好ましく、6員環を有する環状基がさらに好ましい。上記環状基に含まれる環状構造は、縮合環であっても良い。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、および複素環のいずれでもよい。芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環が好ましい例として挙げられる。脂肪族環としては、シクロヘキサン環が好ましい例として挙げられる。複素環としては、ピリジン環およびピリミジン環が好ましい例として挙げられる。
【0061】
上記Q2のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレン基が好ましい。ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、ナフタレン−1,6−ジイル基、ナフタレン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイルナフタレン−2,7−ジイル基が好ましい。シクロヘキサン環を有する環状基としては1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。ピリジン環を有する環状基としてはピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。これらの中でも、特に、1,4−フェニレン基、ナフタレン−2,6−ジイル基および1,4−シクロへキシレン基が好ましい。
【0062】
Q2は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
【0063】
n1は、0〜4の整数を表す。n1としては、1〜3の整数が好ましく、1もしくは2がさらに好ましい。
【0064】
L22は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、**−NH−、**−SO2−、**−CH2−、**−CH=CH−または**−C≡C−を表し、**はQ2側と結合する位置を表す。
L22は、好ましくは、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−CH2−、**−CH=CH−、**−C≡C−であり、より好ましくは、**−O−、**−O−CO−、**−O−CO−O−、**−CH2−である。L22が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0065】
L23は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。ここで、−NH−、−CH2−、−CH=CH−の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。これらの置換基に置換されることにより、本発明の液晶性化合物から液晶性組成物を調製する際に、使用する溶媒に対する溶解性を向上させることができる。
【0066】
L23は、−O−、−C(=O)−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれることが好ましい。L23は、炭素原子を1〜20個含有することが好ましく、炭素原子を2〜14個を含有することがより好ましい。さらに、L23は、−CH2−を1〜16個含有することが好ましく、−CH2−を2〜12個含有することがさらに好ましい。
【0067】
Q1は重合性基または水素原子を表す。本発明の液晶性化合物を光学補償フィルムのような位相差の大きさが熱により変化しないものが好ましい光学フィルム等に用いる場合には、Q1は重合性基であることが好ましい。重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。すなわち、重合性基は、付加重合反応または縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例を示す。
【0068】
【化7】
【0069】
さらに、重合性基は付加重合反応が可能な官能基であることが特に好ましい。そのような重合性基としては、重合性エチレン性不飽和基または開環重合性基が好ましい。
【0070】
重合性エチレン性不飽和基の例としては、下記の式(M−1)〜(M−6)が挙げられる。
【0071】
【化8】
【0072】
式(M−3)、(M−4)中、Rは水素原子またはアルキル基を表し、水素原子またはメチル基が好ましい。
上記式(M−1)〜(M−6)の中、(M−1)または(M−2)が好ましく、(M−1)がより好ましい。
【0073】
開環重合性基は、環状エーテル基が好ましく、エポキシ基またはオキセタニル基がより好ましい。
【0074】
前記式(IV)の化合物の中でも、下記一般式(IV’)で表される化合物がより好ましい。
【0075】
【化9】
【0076】
一般式(DIV)中、Y11、Y12およびY13は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表し、メチンが好ましく、メチンは無置換であるのが好ましい。
【0077】
R11、R12およびR13は、それぞれ独立に下記一般式(IV’−A)、下記一般式(IV’−B)または下記一般式(IV’−C)を表す。固有複屈折の波長分散性を小さくしようとする場合、一般式(IV’−A)または一般式(IV’−C)が好ましく、一般式(IV’−A)がより好ましい。R11、R12およびR13は、R11=R12=R13であることが好ましい。
【0078】
【化10】
【0079】
一般式(IV’−A)中、A11、A12、A13、A14、A15およびA16は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。
A11およびA12は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
A13、A14、A15およびA16は、それらのうち、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、すべてメチンであることがより好ましい。さらに、メチンは無置換であることが好ましい。
A11、A12、A13、A14、A15またはA16がメチンの場合の置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
X1は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0080】
【化11】
【0081】
一般式(IV’−B)中、A21、A22、A23、A24、A25およびA26は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。
A21およびA22は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
A23、A24、A25およびA26は、それらのうち、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、すべてメチンであることがより好ましい。
A21、A22、A23、A24、A25またはA26がメチンの場合の置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
X2は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0082】
【化12】
【0083】
一般式(IV’−C)中、A31、A32、A33、A34、A35およびA36は、それぞれ独立にメチンまたは窒素原子を表す。
A31およびA32は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることがより好ましい。
A33、A34、A35およびA36は、少なくとも3つがメチンであることが好ましく、すべてメチンであることがより好ましい。
A31、A32、A33、A34、A35またはA36がメチンの場合、メチンは置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基および炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基がさらに好ましい。
X3は、酸素原子、硫黄原子、メチレンまたはイミノを表し、酸素原子が好ましい。
【0084】
一般式(IV’−A)中のL11、一般式(IV’−B)中のL21、一般式(IV’−C)中のL31はそれぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−S−、−NH−、−SO2−、−CH2−、−CH=CH−または−C≡C−を表す。好ましくは、−O−、−C(=O)−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−CH2−、−CH=CH−、−C≡C−であり、より好ましくは、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−O−CO−O−、−C≡C−である。特に、小さい固有複屈折の波長分散性が期待できる、一般式(DI−A)中のL11は、−O−、−CO−O−、−C≡C−が特に好ましく、この中でも−CO−O−が、より高温でディスコティックネマチック相を発現できるため、好ましい。上述の基が水素原子を含む基であるときは、該水素原子は置換基で置き換わってもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0085】
一般式(IV’−A)中のL12、一般式(IV’−B)中のL22、一般式(IV’−C)中のL32はそれぞれ独立して、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。ここで、−NH−、−CH2−、−CH=CH−の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。このような置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、カルボキシル基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基および炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、水酸基、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましく、特にハロゲン原子、メチル基、エチル基が好ましい。
【0086】
L12、L22、L32はそれぞれ独立して、−O−、−C(=O)−、−CH2−、−CH=CH−および−C≡C−ならびにこれらの組み合わせからなる群より選ばれることが好ましい。
【0087】
L12、L22、L32はそれぞれ独立して、炭素数1〜20であることが好ましく、炭素数2〜14であることがより好ましい。炭素数2〜14が好ましく、−CH2−を1〜16個有することがより好ましく、−CH2−を2〜12個有することがさらに好ましい。
【0088】
L12、L22、L32を構成する炭素数は、液晶の相転移温度と化合物の溶媒への溶解性に影響を及ぼす。一般的に炭素数は多くなるほど、ディスコティックネマチック相(ND相)から等方性液体への転移温度が低下する傾向にある。また、溶媒への溶解性は、一般的に炭素数は多くなるほど向上する傾向にある。
【0089】
一般式(IV’−A)中のQ11、一般式(IV’−B)中のQ21、一般式(IV’−C)中のQ31はそれぞれ独立して重合性基または水素原子を表す。また、Q11、Q21、Q31は重合性基であることが好ましい。重合反応は、付加重合(開環重合を含む)または縮合重合であることが好ましい。すなわち、重合性基は、付加重合反応または縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。以下に重合性基の例については、上記と同様であり、好ましい例も上記と同様である。
【0090】
前記一般式(IV)で表される化合物の具体例には、特開2006-76992号公報の[0052]の[化13]〜[化43]に記載の例示化合物、並びに特開2007−2220号公報の[0040]の[化13]〜[0063]の[化36]に記載の例示化合物が含まれる。但し、これらの化合物に限定されるものではない。
【0091】
上記化合物は、種々の方法により合成することができ、例えば、特開2007−2220号公報の[0064]〜[0070]に記載の方法により合成することができる。
【0092】
前記ディスコティック液晶化合物は、液晶相として、カラムナー相およびディスコティックネマチック相(ND相)を示すことが好ましく、これらの液晶相の中では、良好なモノドメイン性を示すディスコティックネマチック相(ND相)が好ましい。
【0093】
前記ディスコティック液晶化合物の中でも、液晶相を20℃〜300℃の範囲で発現させるものが好ましい。より好ましくは40℃〜280℃であり、さらに好ましくは60℃〜250℃である。ここで20℃〜300℃で液晶相を発現するとは、液晶温度範囲が20℃をまたぐ場合(例えば、10℃〜22℃)や、300℃をまたぐ場合(例えば、298℃〜310℃)も含む。40℃〜280℃と60℃〜250℃に関しても同様である。
【0094】
前記一般式(IV)で表されるディスコティック液晶は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、後述する、ピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物との間に強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる。特に、一般式(IV’)で表されるディスコティック液晶は、複数個の芳香環が単結合で連結されているため、分子の回転自由度が束縛された直線性の高い分子構造を有しているため、ピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物との間により強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させ垂直配向状態が実現できる。
【0095】
棒状液晶化合物を利用する場合は、棒状液晶を水平配向させるのが好ましい。尚、本明細書において「水平配向」とは、棒状液晶の子長軸と層面が平行であることをいう。厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が10度未満の配向を意味するものとする。傾斜角は0〜5度が好ましく、0〜3度がより好ましく、0〜2度がさらに好ましく、0〜1度が最も好ましい。
なお、前記組成物中には、液晶の水平配向を促進する添加剤を添加してもよく、該添加剤の例には、特開2009−223001号公報の[0055]〜[0063]に記載の化合物が含まれる。
【0096】
ディスコティック液晶を利用する場合は、ディスコティック液晶を垂直配向させるのが好ましい。尚、本明細書において「垂直配向」とは、ディスコティック液晶の円盤面と層面が垂直であることをいう。厳密に垂直であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が70度以上の配向を意味するものとする。傾斜角は85〜90度が好ましく、87〜90度がより好ましく、88〜90度がさらに好ましく、89〜90度が最も好ましい。
なお、前記組成物中には、液晶の垂直配向を促進する添加剤を添加していることが好ましく、該添加剤の例は、前記の通りである。
【0097】
なお、液晶性化合物を配向させた光学異方性層において、光学異方性層の一方の面におけるチルト角(液晶性化合物における物理的な対象軸が光学異方性層の界面となす角度をチルト角とする)θ1及び他方の面のチルト角θ2を、直接的にかつ正確に測定することは困難である。そこで本明細書においては、θ1及びθ2は、以下の手法で算出する。本手法は本発明の実際の配向状態を正確に表現していないが、光学フィルムのもつ一部の光学特性の相対関係を表す手段として有効である。
本手法では算出を容易にすべく、下記の2点を仮定し、光学異方性層の2つの界面におけるチルト角とする。
1.光学異方性層は液晶性化合物を含む層で構成された多層体と仮定する。さらに、それを構成する最小単位の層(液晶性化合物のチルト角は該層内において一様と仮定)は光学的に一軸と仮定する。
2.各層のチルト角は光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化すると仮定する。
具体的な算出法は下記のとおりである。
(1)各層のチルト角が光学異方性層の厚み方向に沿って一次関数で単調に変化する面内で、光学異方性層への測定光の入射角を変化させ、3つ以上の測定角でレターデーション値を測定する。測定及び計算を簡便にするためには、光学異方性層に対する法線方向を0°とし、−40°、0°、+40°の3つの測定角でレターデーション値を測定することが好ましい。このような測定は、KOBRA−21ADH及びKOBRA−WR(王子計測器(株)製)、透過型のエリプソメータAEP−100((株)島津製作所製)、M150及びM520(日本分光(株)製)、ABR10A(ユニオプト(株)製)で行うことができる。
(2)上記のモデルにおいて、各層の常光の屈折率をno、異常光の屈折率をne(neは各々すべての層において同じ値、noも同様とする)、及び多層体全体の厚みをdとする。さらに各層におけるチルト方向とその層の一軸の光軸方向とは一致するとの仮定の元に、光学異方性層のレターデーション値の角度依存性の計算が測定値に一致するように、光学異方性層の一方の面におけるチルト角θ1及び他方の面のチルト角θ2を変数としてフィッティングを行い、θ1及びθ2を算出する。
ここで、no及びneは文献値、カタログ値等の既知の値を用いることができる。値が未知の場合はアッベ屈折計を用いて測定することもできる。光学異方性層の厚みは、光学干渉膜厚計、走査型電子顕微鏡の断面写真等により測定数することができる。
【0098】
[オニウム塩化合物(配向膜側配向制御剤)]
本発明では、前述のように、重合性基を有する液晶化合物、特に、重合性基を有するディスコティック液晶の垂直配向を実現するために、オニウム塩を添加することが好ましい。オニウム塩は配向膜界面に偏在し、液晶分子の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる作用をする。
【0099】
オニウム塩としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
一般式(1)
Z−(Y−L−)nCy+・X‐
式中、Cyは5又は6員環のオニウム基であり、L、Y、Z、Xは、後述する一般式(II)におけるL23、L24、Y22、Y23、Z21、Xに同義であり、その好ましい範囲も同一であり、nは2以上の整数を表す。
【0100】
5又は6員環のオニウム基(Cy)は、ピラゾリウム環、イミダゾリウム環、トリアゾリウム環、テトラゾリウム環、ピリジニウム環、ピラジニウム環、ピリミジニウム環、トリアジニウム環が好ましく、イミダゾリウム環、ピリジニウム環が特に好ましい。
【0101】
5又は6員環のオニウム基(Cy)は、配向膜材料と親和性のある基を有するのが好ましい。さらに、オニウム塩化合物は、温度T1℃では配向膜材料との親和性が高く、一方、温度T2℃では、親和性が低下しているのが好ましい。水素結合は、液晶を配向させる実際の温度範囲内(室温〜150℃程度)において、結合状態にも、その結合が消失した状態にもなり得るので、水素結合による親和性を利用するのが好ましい。但し、この例に限定されるものではない。
例えば、配向膜材料としてポリビニルアルコールを利用する態様では、ポリビニルアルコールの水酸基と水素結合を形成するために、水素結合性基を有しているのが好ましい。水素結合の理論的な解釈としては、例えば、H.Uneyama and K.Morokuma、Journal of American Chemical Society、第99巻、第1316〜1332頁、1977年に報告がある。具体的な水素結合の様式としては、例えば、J.N.イスラエスアチヴィリ著、近藤保、大島広行訳、分子間力と表面力、マグロウヒル社、1991年の第98頁、図17に記載の様式が挙げられる。具体的な水素結合の例としては、例えば、G.R.Desiraju、Angewante Chemistry International Edition English、第34巻、第2311頁、1995年に記載のものが挙げられる。
【0102】
水素結合性基を有する5又は6員環のオニウム基は、オニウム基の親水性の効果に加え、ポリビニルアルコールと水素結合することによって、配向膜界面の表面偏在性を高めるとともに、ポリビニルアルコール主鎖に対する直交配向性を付与する機能を促進する。好ましい水素結合性基としては、アミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、酸アミド基、ウレイド基、カルバモイル基、カルボキシル基、スルホ基、含窒素複素環基(例えば、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、1,3,5−トリアジル基、ピリミジル基、ピリダジル基、キノリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、コハクイミド基、フタルイミド基、マレイミド基、ウラシル基、チオウラシル基、バルビツール酸基、ヒダントイン基、マレイン酸ヒドラジド基、イサチン基、ウラミル基などが挙げられる)を挙げることができる。更に好ましい水素結合性基としては、アミノ基、ピリジル基を挙げることができる。
例えば、イミダゾリウム環の窒素原子ように、5又は6員環のオニウム環に、水素結合性基を有する原子を含有していることも好ましい。
【0103】
nは、2〜5の整数が好ましく、3又は4であるのがより好ましく、3であるのが特に好ましい。複数のL及びYは、互いに同一であっても異なっていてもよい。nが3以上である場合、一般式(1)で表されるオニウム塩は、3つ以上の5又は6員環を有しているため、前記ディスコティック液晶と強い分子間π−π相互作用が働くため、該ディスコティック液晶の垂直配向、特に、ポリビニルアルコール配向膜上では、ポリビニルアルコール主鎖に対する直交垂直配向を実現することができる。
【0104】
前記一般式(1)で表されるオニウム塩は、下記一般式(2a)で表されるピリジニウム化合物又は下記一般式(2b)で表されるイミダゾリウム化合物であることが特に好ましい。
一般式(2a)及び(2b)で表される化合物は、主に、前記一般式(I)〜(IV)で表されるディスコティック液晶の配向膜界面における配向を制御することを目的として添加され、ディスコティック液晶の分子の配向膜界面近傍におけるチルト角を増加させる作用がある。
【0105】
【化13】
【0106】
式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基を表す。
L23は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−又は−O−CO−AL−CO−O−であるのが好ましく、ALは、炭素原子数が1〜10のアルキレン基である。L23は、単結合、−O−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−または−O−CO−AL−CO−O−が好ましく、単結合または−O−がさらに好ましく、−O−が最も好ましい。
【0107】
L24は、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−または−N=N−であるのが好ましく、−O−CO−又は−CO−O−がより好ましい。mが2以上のとき、複数のL24が交互に、−O−CO−及び−CO−O−であるのがさらに好ましい。
【0108】
R22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基である。
R22が、ジアルキル置換アミノ基である場合、2つのアルキル基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよい。このとき形成される含窒素複素環は、5員環または6員環が好ましい。R23は水素原子、無置換アミノ基、または炭素原子数が2〜12のジアルキル置換アミノ基であるのがさらに好ましく、水素原子、無置換アミノ基、または炭素原子数が2〜8のジアルキル置換アミノ基であるのがよりさらに好ましい。R23が無置換アミノ基及び置換アミノ基である場合、ピリジニウム環の4位が置換されていることが好ましい。
【0109】
Xはアニオンである。
Xは、一価のアニオンであることが好ましい。アニオンの例には、ハライドイオン(フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)およびスルホン酸イオン(例、メタンスルホネートイオン、p−トルエンスルホネートイオン、ベンゼンスルホネートイオン)が含まれる。
【0110】
Y22及びY23はそれぞれ、5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。
前記5又は6員環が置換基を有していてもよい。好ましくは、Y22及びY23のうち少なくとも1つは、置換基を有する5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基である。Y22およびY23は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい6員環を部分構造として有する2価の連結基であるのが好ましい。6員環は、脂肪族環、芳香族環(ベンゼン環)および複素環を含む。6員脂肪族環の例は、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環およびシクロヘキサジエン環を含む。6員複素環の例は、ピラン環、ジオキサン環、ジチアン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環およびトリアジン環を含む。6員環に、他の6員環または5員環が縮合していてもよい。
置換基の例は、ハロゲン原子、シアノ、炭素原子数が1〜12のアルキル基および炭素原子数が1〜12のアルコキシ基を含む。アルキル基およびアルコキシ基は、炭素原子数が2〜12のアシル基または炭素原子数が2〜12のアシルオキシ基で置換されていてもよい。置換基は、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基であるのが好ましい。置換基は2以上であってもよく、例えば、Y22及びY23がフェニレン基である場合は、1〜4の炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基で置換されていてもよい。
【0111】
なお、mは1又は2であり、2であるのが好ましい。mが2のとき、複数のY23及びL24は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0112】
Z21は、ハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基である。
mが2の場合、Z21は、シアノ、炭素原子数が1〜10のアルキル基または炭素原子数が1〜10のアルコキシ基であることが好ましく、炭素原子数4〜10のアルコキシ基であるのがさらに好ましい。
mが1の場合、Z21は、炭素原子数が7〜12のアルキル基、炭素原子数が7〜12のアルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルキル基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルキル基または炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルコキシ基であることが好ましい。
【0113】
アシル基は−CO−R、アシルオキシ基は−O−CO−Rで表され、Rは脂肪族基(アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基)または芳香族基(アリール基、置換アリール基)である。Rは、脂肪族基であることが好ましく、アルキル基またはアルケニル基であることがさらに好ましい。
【0114】
pは、1〜10の整数である。pは、1または2であることが特に好ましい。CpH2pは、分岐構造を有していてもよい鎖状アルキレン基を意味する。CpH2pは、直鎖状アルキレン基(−(CH2)p−)であることが好ましい。
【0115】
式(2b)中、R30は、水素原子又は炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基である。
【0116】
前記式(2a)又は(2b)で表される化合物の中でも、下記式(2a')又は(2b’)で表される化合物が好ましい。
【0117】
【化14】
【0118】
式(2a’)及び(2b’)中、式(2)と同一の符号は同一の意義であり、好ましい範囲も同様である。L25はL24と同義であり、好ましい範囲も同様である。L24及びL25は、−O−CO−又は−CO−O−であるのが好ましく、L24が−O−CO−で、且つL25が−CO−O−であるのが好ましい。
【0119】
R23、R24及びR25はそれぞれ、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基である。n23は0〜4、n24は1〜4、及びn25は0〜4を表す。n23及びn25が0で、n24が1〜4(より好ましくは1〜3)であるのが好ましい。
R30は、炭素原子数が1〜12(より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3)のアルキル基であるのが好ましい。
【0120】
一般式(2)で表される化合物の具体例としては、特開2006−113500号公報明細書中[0058]〜[0061]に記載の化合物が挙げられる。
【0121】
以下に、一般式(2’)で表される化合物の具体例を示す。但し、下記式中、アニオン(X-)は省略した。
【0122】
【化15】
【0123】
式(2a)及び(2b)の化合物は、一般的な方法で製造することができる。例えば、式(2a)のピリジニウム誘導体は、一般にピリジン環をアルキル化(メンシュトキン反応)して得られる。
オニウム塩は、その添加量が、液晶化合物に対して5質量%を超えることはなく、0.1〜2質量%程度であるのが好ましい。
【0124】
前記一般式(2a)及び(2b)で表されるオニウム塩は、ピリジニウム基又はイミダリウム基が親水的であるため前記親水的なポリビニルアルコール配向膜表面に偏在する。特に、ピリジニウム基に、さらに、水素原子のアクセプターの置換基であるアミノ基(一般式(2a)及び(2a’)において、R22が無置換のアミノ基又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基)が置換されていると、ポリビニルアルコールとの間に分子間水素結合が発生し、より高密度に配向膜表面に偏在すると共に、水素結合の効果により、ピリジニウム誘導体がポリビニルアルコールの主鎖と直交する方向に配向するため、ラビング方向に対して液晶の直交配向を促進する。前記ピリジニウム誘導体は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、前述した、液晶、特にディスコティック液晶との間に強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍における直交配向を誘起する。特に、一般式(2a’)で表されるように、親水的なピリジニウム基に疎水的な芳香環が連結されていると、その疎水性の効果により垂直配向を誘起する効果も有する。
【0125】
さらに、前記一般式(2a)及び(2b)で表されるオニウム塩を併用すると、ある温度を超えて加熱することで、液晶が、その遅相軸を、ラビング方向に対して平行にして配向する、平行配向を促進することができる。これは、加熱による熱エネルギーでポリビニルアルコールとの水素結合が切断され、オニウム塩が配向膜に均一に分散され配向膜表面における密度が低下し、ラビング配向膜そのものの規制力により液晶が配向するためである。
【0126】
[フルオロ脂肪族基含有共重合体(空気界面配向制御剤)]
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、液晶、主に、前記一般式(I)で表されるディスコティック液晶、の空気界面における配向を制御することを目的として添加され、液晶の分子の空気界面近傍におけるチルト角を増加させる作用がある。さらに、ムラ、ハジキなどの塗布性も改善される。
本発明に使用可能なフルオロ脂肪族基含有共重合体としては、特開2004−333852号、同2004−333861号、同2005−134884号、同2005−179636号、及び同2005−181977号などの各公報及び明細書に記載の化合物の中から選んで用いることができる。特に好ましくは、特開2005−179636号、及び同2005−181977号の各公報及び明細書に記載の、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH)2}}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを側鎖に含むポリマーである。
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、その添加量が、液晶化合物に対して2質量%を超えることはなく、0.1〜1質量%程度であるのが好ましい。
【0127】
フルオロ脂肪族基含有共重合体は、フルオロ脂肪族基の疎水性効果により空気界面への偏在性を高めると共に、空気界面側に低表面エネルギーの場を提供し、液晶、特にディスコティック液晶のチルト角を増加させることができる。さらに、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SO3H)、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH)2}}及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを側鎖に含む共重合成分を有すると、これらのアニオンと液晶のπ電子との電荷反発により液晶化合物の垂直配向を実現することができる。
【0128】
[溶媒]
光学異方性層の形成に利用する、前記組成物は塗布液として調製するのが好ましい。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0129】
[重合開始剤]
前記の重合性基を有する液晶化合物を含有する組成物(例えば塗布液)を、所望の液晶相を示す配向状態とした後、該配向状態を紫外線照射により固定する(上記方法の5)及び7)工程)。固定化は、液晶化合物に導入した反応性基の重合反応により実施することが好ましい。紫外線照射による、光重合反応により固定化するのが好ましい。光重合反応としては、ラジカル重合、カチオン重合のいずれでも構わない。ラジカル光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。カチオン光重合開始剤の例には、有機スルフォニウム塩系、ヨードニウム塩系、フォスフォニウム塩系等を例示する事ができ、有機スルフォニウム塩系、が好ましく、トリフェニルスルフォニウム塩が特に好ましい。これら化合物の対イオンとしては、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロフォスフェートなどが好ましく用いられる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0130】
[増感剤]
また、感度を高める目的で重合開始剤に加えて、増感剤を用いてもよい。増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、及びチオキサントン等が含まれる。光重合開始剤は複数種を組み合わせてもよく、使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。液晶化合物の重合のための光照射は紫外線を用いることが好ましい。
【0131】
[その他の添加剤]
前記組成物は、重合性液晶化合物とは別に、非液晶性の重合性モノマーを含有していてもよい。重合性モノマーとしては、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物が好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が2以上の多官能モノマー、例えば、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンアクリレートを用いると、耐久性が改善されるので好ましい。前記非液晶性の重合性モノマーは、非液晶性成分であるので、その添加量が、液晶化合物に対して40質量%を超えることはなく、0〜20質量%程度であるのが好ましい。
【0132】
この様にして形成する光学異方性層の厚みについては特に制限されないが、0.1〜10μmであるのが好ましく、0.5〜5μmであるのがより好ましい。
【0133】
透明支持体:
本発明の光学フィルムは、透明支持体を有する。透明支持体としては、面内及び厚み方向の位相差がほとんどない部材を用いることが好ましい。
【0134】
本発明に使用可能な透明支持体を形成する材料としては、光学性能透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるポリマーが好ましく、上述のRe、Rthが、上述した式(I)を満たす範囲であればどのような材料を用いても良い。例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどがあげられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマーも例としてあげられる。また本発明の高分子フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0135】
また、前記透明支持体を形成する材料としては、熱可塑性ノルボルネン系樹脂を好ましく用いることが出来る。熱可塑性ノルボルネン系樹脂としては、日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等があげられる。
【0136】
また、前記透明支持体を形成する材料としては、従来偏光板の透明保護フィルムとして用いられてきた、トリアセチルセルロースに代表される、セルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)を好ましく用いることが出来る。
以下に、前記透明支持体の例として、主にセルロースアシレートについて詳細を説明するが、その技術的事項は、他の高分子フィルムについても同様に適用できることは明らかである。
【0137】
セルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細は、例えばプラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載されているが、本発明は、該記載に制限されるものではない。
【0138】
セルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。本発明のセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することができる。
【0139】
セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が2.50〜3.00であることがのぞましい。更には置換度が2.75〜3.00であることがのぞましく、2.85〜3.00であることがよりのぞましい。
【0140】
セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸のうち、炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族基でも芳香族基でもよく特に限定されず、単一でも2種類以上の混合物でもよい。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれ更に置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが好ましく、アセチル、プロピオニル、ブタノイルがより好ましい。
【0141】
上述のセルロースの水酸基に置換するアシル置換基のうちで、実質的にアセチル基/プロピオニル基/ブタノイル基の少なくとも2種類からなる場合においては、その置換度が2.50〜3.00の場合にセルロースアシレートフィルムの光学異方性が低下できる。より好ましいアシル置換度は2.60〜3.00であり、更にのぞましくは2.65〜3.00である。また、セルロースの水酸基に置換するアシル置換基がアセチル基のみからなる場合には、フィルムの光学異方性が低下できることに加え、更に添加剤との相溶性、使用する有機溶剤への溶解性の観点で置換度が2.80〜2.99であることが好ましく、2.85〜2.95であることがより好ましい。
【0142】
セルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であるのが好ましく、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になる。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまう。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることが更に好ましく、1.0〜1.6であることが最も好ましい。
【0143】
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。本発明のセルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下である。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており2.5〜5質量%の含水率が知られている。セルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。本発明のこれらのセルロースアシレートの合成方法は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0144】
セルロースアシレートは置換基、置換度、重合度、分子量分布など前述した範囲であれば、単一あるいは異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。
【0145】
支持体として用いるフィルムの作製には、セルロースアシレートとともに、種々の添加剤(例えば、光学的異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、微粒子、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、光学特性調整剤など)を使用することができ、これらについて以下に説明する。またその添加する時期はドープ作製工程(セルロースアシレート溶液の作製工程)における何れでもよいが、ドープ作製工程の最後に添加剤を添加し調製する工程を行ってもよい。
これらの添加剤の添加量を調整することにより、0≦Re(550)≦10を満たすセルロースアシレートフィルムを作製することができ、当該フィルムを支持体として用いることで、支持体の光学特性の影響をほとんど受けずに、本発明の光学フィルム中に含まれる全ての前記第1及び第2の位相差領域のReを、110nm≦Re(550)≦165nmの範囲にすることができる。Re値は、120≦Re(550)≦145であることが好ましく、130≦Re(550)≦145であることが特に好ましい。
【0146】
また、後述する光学異方性層との関係では、前記透明支持体のRthと光学異方性層(λ/4板)のRthの合計が|Rth|≦20nmを満たすために、透明支持体は、−150nm≦Rth(630)≦100nmを満たすことが好ましい。
【0147】
前記セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物を、少なくとも一種含有することものぞましい態様である。
セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物について説明する。フィルム中のセルロースアシレートが面内及び膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を利用することで、光学的異方性を低下させることができる。光学的異方性を低下させる化合物はセルロースアシレートに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
【0148】
低位相差のセルロースアシレートフィルムを作製するためには、上述のようにフィルム中のセルロースアシレートが面内及び膜厚方向に配向するのを抑制して光学的異方性を低下させる化合物のうち、オクタノール−水分配係数(logP値)が0〜7である化合物が好ましい。logP値が7を超える化合物は、セルロースアシレートとの相溶性に乏しく、フィルムの白濁や粉吹きを生じやすい。また、logP値が0よりも小さな化合物は親水性が高いために、セルロースアセテートフィルムの耐水性を悪化させる場合がある。logP値として更に好ましい範囲は、1〜6であり、特に好ましい範囲は1.5〜5である。
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)、Viswanadhan’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989).)、Broto’s fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.− Chim.Theor.,19,71(1984).)などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)がより好ましい。ある化合物のlogPの値が測定方法あるいは計算方法により異なる場合に、該化合物が範囲内であるかどうかは、Crippen’s fragmentation法により判断することが好ましい。なお本明細書に記載のlogPの値は、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)により求めたものである。
【0149】
光学的異方性を低下させる化合物は、芳香族基を含有してもよいし、含有しなくてもよい。また光学的異方性を低下させる化合物は、分子量が150以上3000以下であることが好ましく、170以上2000以下であることが好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
光学的異方性を低下させる化合物は、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、更に好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。また光学的異方性を低下させる化合物は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
光学的異方性を低下させる化合物の添加量は、セルロースアシレートに対し0.01〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
光学的異方性を低下させる化合物は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
光学的異方性を低下させる化合物を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ作製工程の最後に行ってもよい。
【0150】
光学的異方性を低下させる化合物は、少なくとも一方の側の表面から全膜厚の10%までの部分における該化合物の平均含有率が、該セルロースアシレートフィルムの中央部における該化合物の平均含有率の80〜99%である。当該化合物の存在量は、例えば、特開平8−57879号公報に記載の赤外吸収スペクトルを用いる方法などにより表面及び中心部の化合物量を測定して求めることができる。
【0151】
セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物の具体例としては、例えば、特開2006−199855号公報の[0035]〜[0058]記載の化合物が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0152】
本発明の光学フィルムは、視認側に配置されるので、外光の影響、特に紫外線の影響を受けやすい。そのために、透明支持体として利用されるポリマーフィルム等には、紫外線(UV)吸収剤を添加するのが望ましい。
【0153】
UV吸収剤は、中でも、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)−Re(700)|及び|Rth(400)−Rth(700)|の双方を低下させる化合物が好ましく、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%使用するのがよい。
【0154】
また、近年テレビやノートパソコン、モバイル型携帯端末などの液晶表示装置ではより少ない電力で輝度を高めるために、液晶表示装置に用いられる光学部材の透過率が優れたものが要求されている。その点においては、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)−Re(700)|及び|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物をセルロースアシレートフィルムに添加する場合、分光透過率が優れていることが要求される。本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であり、かつ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることがのぞましい。
【0155】
UV吸収剤は揮散性の観点から分子量が250〜1000であることが好ましい。より好ましくは260〜800であり、更に好ましくは270〜800であり、特に好ましくは300〜800である。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
【0156】
UV吸収剤は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
【0157】
セルロースアシレートフィルムのUV吸収剤の具体例としては、例えば、特開2006−199855号公報の[0059]〜[0135]に記載の化合物が挙げられる。
【0158】
前記セルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上が更に好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0159】
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下が更に好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とした。
【0160】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0161】
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0162】
本発明において2次平均粒子径の小さな粒子を有するセルロースアシレートフィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ調製し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、更にメインのセルロースアシレート溶液(ドープ液)と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行いこれを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。これらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤微粒子の添加量は1m3あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
【0163】
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0164】
前記セルロースアシレートフィルムには、光学的に異方性を低下する化合物、UV吸収剤の他に、用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開2001−151901号公報などに記載されている。更にまた、赤外吸収剤としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れの時期でも良いが、ドープ作製工程の最後に添加剤を添加するのがよい。更にまた、各添加剤の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
【0165】
また、可塑剤については、後述の実施例の中には、可塑剤を添加したものとしていないものがあるが、光学的に異方性を低下する化合物などが可塑剤としての効果を及ぼす化合物の場合には、可塑剤を添加する必要がないのは言うまでもない。
【0166】
前記セルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレート溶液を用いた溶液製膜法により製造するのが好ましい。セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよく、更には冷却溶解法あるいは高温溶解方法、更にはこれらの組み合わせで実施される。セルロースアシレート溶液の調製、更には溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
【0167】
前記セルロースアシレート溶液のドープ透明度としては85%以上であることがのぞましい。より好ましくは88%以上であり、更に好ましくは90%以上であることがのぞましい。本発明においてはセルロースアシレートドープ溶液に各種の添加剤が十分に溶解していることを確認した。具体的なドープ透明度の算出方法としては、ドープ溶液を1cm角のガラスセルに注入し、分光光度計(UV−3150、島津製作所)で550nmの吸光度を測定した。溶媒のみをあらかじめブランクとして測定しておき、ブランクの吸光度との比からセルロースアシレート溶液の透明度を算出した。
【0168】
前記セルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、従来のセルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを乾燥装置のロール群で機械的に搬送し乾燥を終了して巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。本発明のセルロースアシレートフィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む),金属支持体,乾燥,剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
また、セルロースアシレートフィルムの厚さは10〜120μmが好ましく、20〜100μmがより好ましく、30〜90μmが更に好ましい。
【0169】
透明支持体として用いられるポリマーフィルムの性質:
以下に、本発明において透明支持体として用いられるポリマーフィルムの好ましい性質について説明する。
【0170】
[Re及びRth]
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のリターデーション及び厚さ方向のリターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、又は測定値をプログラム等で変換して測定することができる。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(11)及び式(12)よりRthを算出することもできる。
式(11)
【0171】
【数1】
【0172】
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。
式(11)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
【0173】
式(12):Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
式(12)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚である。
【0174】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0175】
透明支持体として用いるポリマーフィルムの一例は、Reが0〜10nmであり、且つRthの絶対値が20nm以下の低位相差フィルムである。
【0176】
[湿度膨張係数]
前記ポリマーフィルムの湿度膨張係数は、熱膨張係数との組合せにより、適宜、設定することができるが、3.0×10-6〜500×10-6/%RHが好ましく、4.0×10-6〜100×10-6/%RHがより好ましく、5.0×10-6〜50×10-6/%RHが更に好ましく、5.0×10-6〜40×10-6/%RHが最も好ましい。
なお、熱膨張係数は、ISO11359−2に準じて測定することができ、サンプルを室温から80℃まで昇温させた後、60℃から50℃に降温するときのフィルムの長さの傾きから算出することができる。
また、湿度膨張係数を測定する際には、弾性率が最大となる方向を長手方向として切り出した長さ25cm(測定方向)、幅5cmのフィルム試料を用意し、該試料に20cmの間隔でピン孔を空け、25℃、相対湿度10%にて24時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長する(測定値をL0とする)。次いで、試料を25℃、相対湿度80%にて24時間調湿後、ピン孔の間隔をピンゲージで測長する(測定値をL1とする)。これらの測定値を用いて下記式により湿度膨張係数を算出する。
湿度膨張係数[/%RH]={(L1−L0)/L0}/(R1−R0)
【0177】
[弾性率]
前記ポリマーフィルムの弾性率は特に限定されないが、1〜50GPaが好ましく、5〜50GPaがより好ましく、7〜20GPaが更に好ましい。弾性率はポリマーの種類、添加剤の種類及び量、延伸によって制御することができる。
なお、弾性率は、長さ150mm、巾10mmのフィルム試料を用意し、25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、ISO527−3:1995の規格に準じ、初期試料長100mm、引張速度10mm/minにて測定し、応力−歪み曲線の初期の傾きから求めた引張り弾性率である。フィルム試料の長さ方向と幅方向の取り方によって一般に弾性率は異なるが、本発明では弾性率が最大となる方向でフィルム試料を用意して測定した値を本発明の弾性率として表記する。なお、音速が最大となる方向における弾性率をE1、それと直交する方向における弾性率をE2としたとき、それらの比(E1/E2)は、フィルムのしなやかさを保ちつつも寸法変化を小さくする観点から、1.1〜5.0であることが好ましく、1.5〜3.0であることがより好ましい。
なお、本発明において音速(音波伝播速度)が最大となる方向は、フィルムを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、配向性測定機(SST−2500:野村商事(株)製)を用いて、超音波パルスの縦波振動の伝搬速度が最大となる方向として求めた。
【0178】
[全光透過率、ヘイズ]
本発明において、サンプルを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、ヘイズメーター(NDH 2000:日本電色工業(株)製)を用いて測定した値を全光透過率、及びヘイズとした。
前記ポリマーフィルムの全光透過率は、光源からの光を効率的に使用して、パネルの消費電力を低減する観点から、高いほうが好ましく、具体的には85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、92%以上であることが更に好ましい。また、本発明のフィルムのヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、2%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが更にまた好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。
【0179】
[引裂き強度]
本発明において、引裂き強度(エルメンドルフ引裂き法)は、フィルムの遅相軸と平行な方向、及び直交する方向を長手方向として、それぞれ64mm×50mmの試料を切り出し、25℃、相対湿度60%にて2時間調湿後、軽荷重引裂き強度試験機を用いて測定し、小さい方の値をフィルムの引裂き強度とした。
前記ポリマーフィルムの引裂き強度は、フィルムの脆さの観点から、3〜50gであることが好ましく、5〜40gであることがより好ましく、10〜30gであることが更に好ましい。
【0180】
[膜厚]
前記ポリマーフィルムの厚さは、製造コストを下げる観点から、10〜1000μmであることが好ましく、40〜500μmであることがより好ましく、40〜200μmであることが特に好ましい。
【0181】
2.偏光板
本発明は、本発明の光学フィルムを有する偏光板にも関する。本発明の偏光板の一態様は、本発明の光学フィルムと、偏光膜とを含み、前記光学異方性層の第1及び第2の位相差領域のそれぞれの面内遅相軸方向と、偏光膜の吸収軸方向とが45°であることを特徴とする偏光板である。本発明の偏光板は、立体画像表示用の画像表示装置の視認側偏光板として、光学フィルムを視認側に向けて配置される。
本発明の偏光板は、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、帯状、すなわち、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用とするためには、上記した通り、偏光板の幅は1470mm以上とすることが好ましい。
【0182】
本発明の偏光板の層構成については、特に制限はない。一般的な構成の偏光板の層構成と同様であってもよいが、但し、本発明の光学フィルムを含んでいることを特徴である。図4に一例の断面模式図を示す。図4に示す偏光板20は、偏光膜22の一方の表面に本発明の光学フィルム、及び他方の表面に保護フィルム24を有する。保護フィルム24として利用可能なポリマーフィルムの例は、光学フィルム10の透明支持体として利用可能なポリマーフィルムの例と同様である。
【0183】
偏光板の製造方法:
本発明の偏光板の製造方法の一例は、
透明支持体であるセルロースアシレートフィルム等の長尺のポリマーフィルムを搬送しつつ、その上に、ラビング配向膜を連続的に形成すること、
ラビング配向膜を、フィルム搬送方向に対して約斜め45度方向に連続的にラビング処理すること、
少なくとも重合性基を有する液晶化合物を含有する組成物を、ラビング処理面に塗布すること、
温度T1℃で加熱して、液晶の遅相軸がラビング方向と直交した直交配向状態にすること、
ストライプ状のフォトマスクを遮光部/透過部の境界線がフィルム搬送方向と平行になるように配置してマスク下で紫外線露光して、直交配向状態を固定して、第1の位相差領域を形成する工程と、
温度T2℃(但しT1<T2)で加熱して、液晶の遅相軸がラビング方向と平行になる平行配向状態にすること、
全面露光して、平行配向状態を固定し、第2の位相差領域を形成すること、
透過軸が幅方向にある長尺の偏光膜と、ロール・トゥ・ロールで積層すること、
を含む方法により製造することができる。
この本発明の偏光板の製造方法は、連続生産できる観点から、従来の製造方法よりも製造コストが低い。また、ラビング方向がフィルム搬送方向に対して約斜め45度方向であると、得られたロール状の偏光板をななめに打ち抜く必要がなく、偏光板製造時の製造コストも低下させることができる。
【0184】
偏光膜:
偏光膜は、一般的な偏光膜を用いることができる。例えば、ヨウ素や二色性色素によって染色されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子膜を用いることができる。
【0185】
粘着層:
本発明の偏光板は、光学フィルムと偏光膜との間には、粘着層が配置されていてもよい。光学フィルムと偏光膜との積層のために用いられる粘着層とは、例えば、動的粘弾性測定装置で測定したG’とG”との比(tanδ=G”/G’)が0.001〜1.5である物質のことを表し、いわゆる、粘着剤やクリープしやすい物質等が含まれる。粘着剤については特に制限はなく、例えば、ポリビニルアルコール系粘着剤を用いることができる。
【0186】
反射防止層:
偏光板の、液晶セルと反対側に配置される側の表面には、反射防止層などの機能性膜を設けることが好ましい。特に、本発明では透明保護膜上に少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層した反射防止層又は透明保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層が好適に用いられる。これは、特に3D画像を表示する場合に、外光反射によるフリッカが発生してしまうのを効果的に防ぐことができるからである。
以下にそれらの好ましい例を記載する。
【0187】
透明保護膜上に光散乱層と低屈折率層を設けた反射防止層の好ましい例について述べる。
光散乱層にはマット粒子が分散しており、光散乱層のマット粒子以外の部分の素材の屈折率は1.50〜2.00の範囲にあることが好ましく、低屈折率層の屈折率は1.35〜1.49の範囲にあることが好ましい。光散乱層は、防眩性とハードコート性を兼ね備えており、1層でもよいし、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。
【0188】
反射防止層は、その表面凹凸形状として、中心線平均粗さRaが0.08μm〜0.40μm、10点平均粗さRzがRaの10倍以下、平均山谷距離Smが1μm〜100μm、凹凸最深部からの凸部高さの標準偏差が0.5μm以下、中心線を基準とした平均山谷距離Smの標準偏差が20μm以下、傾斜角0度〜5度の面が10%以上となるように設計することで、十分な防眩性と目視での均一なマット感が達成され、好ましい。
また、C光源下での反射光の色味がa*値−2〜2、b*値−3〜3、380nm〜780nmの範囲内での反射率の最小値と最大値の比0.5〜0.99であることで、反射光の色味がニュートラルとなり、好ましい。またC光源下での透過光のb*値が0〜3とすることで、表示装置に適用した際の白表示の黄色味が低減され、好ましい。
また、面光源上と反射防止層との間に120μm×40μmの格子を挿入して、フィルム上で輝度分布を測定した際の輝度分布の標準偏差が20以下であると、高精細パネルに本発明のフィルムを適用したときのギラツキが低減され、好ましい。
【0189】
前記反射防止層は、その光学特性として、鏡面反射率2.5%以下、透過率90%以上、60度光沢度70%以下とすることで、外光の反射を抑制でき、視認性が向上するため好ましい。特に鏡面反射率は1%以下がより好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。ヘイズ20%〜50%、内部ヘイズ/全ヘイズ値(比)が0.3〜1、光散乱層までのヘイズ値から低屈折率層を形成後のヘイズ値の低下が15%以内、くし幅0.5mmにおける透過像鮮明度20%〜50%、垂直透過光/垂直から2度傾斜方向の透過率比が1.5〜5.0とすることで、高精細LCDパネル上でのギラツキ防止、文字等のボケの低減が達成され、好ましい。
【0190】
低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.49であり、好ましくは1.30〜1.44の範囲にある。更に、低屈折率層は下記数式(IX)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(IX):(mλ/4)×0.7<n1d1<(mλ/4)×1.3
式中、mは正の奇数であり、n1は低屈折率層の屈折率であり、そして、d1は低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。
【0191】
前記低屈折率層には、低屈折率バインダーとして、含フッ素ポリマーを含む。フッ素ポリマーとしては動摩擦係数0.03〜0.20、水に対する接触角90°〜120°、純水の滑落角が70°以下の熱又は電離放射線により架橋する含フッ素ポリマーが好ましい。本発明の反射防止フィルムを画像表示装置に装着した時、市販の接着テープとの剥離力が低いほどシールやメモを貼り付けた後に剥がれ易くなり好ましく、500gf以下が好ましく、300gf以下がより好ましく、100gf以下が最も好ましい。また、微小硬度計で測定した表面硬度が高いほど、傷がつき難く、0.3GPa以上が好ましく、0.5GPa以上がより好ましい。
【0192】
低屈折率層に用いられる含フッ素ポリマーとしてはパーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン)の加水分解、脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。
【0193】
含フッ素モノマーの具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
【0194】
架橋反応性付与のための構成単位としてはグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリルロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
【0195】
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶剤への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。
【0196】
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号及び特開平10−147739号各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用しても良い。
【0197】
光散乱層は、表面散乱及び/又は内部散乱による光拡散性と、フィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。従って、ハードコート性を付与するためのバインダー、光拡散性を付与するためのマット粒子、及び必要に応じて高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーを含んで形成される。
【0198】
光散乱層の膜厚は、ハードコート性を付与する観点並びにカールの発生及び脆性の悪化の抑制の観点から、1μm〜10μmが好ましく、1.2μm〜6μmがより好ましい。
【0199】
散乱層のバインダーとしては、飽和炭化水素鎖又はポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることが更に好ましい。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。バインダーポリマーを高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むものを選択することもできる。
【0200】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、上記のエチレンオキサイド変性体、ビニルベンゼン及びその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0201】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0202】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線又は熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。これらの光ラジカル開始剤等は公知のものを使用することができる。
【0203】
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。
従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線又は熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。
【0204】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりに又はそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基及び活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0205】
光散乱層には、防眩性付与の目的で、フィラー粒子より大きく、平均粒径が1μm〜10μm、好ましくは1.5μm〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子が含有される。
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、架橋アクリルスチレン粒子、シリカ粒子が好ましい。マット粒子の形状は、球状あるいは不定形のいずれも使用できる。
【0206】
また、粒子径の異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。
【0207】
更に、上記マット粒子の粒子径分布としては単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほど良い。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、更に好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
【0208】
上記マット粒子は、形成された光散乱層のマット粒子量が好ましくは10mg/m2〜1000mg/m2、より好ましくは100mg/m2〜700mg/m2となるように光散乱層に含有される。
マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0209】
光散乱層には、層の屈折率を高めるために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
また逆に、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた光散乱層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機フィラーと同じである。
光散乱層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al2O3、In2O3、ZnO、SnO2、Sb2O3、ITOとSiO2等が挙げられる。TiO2及びZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーの添加量は、光散乱層の全質量の10%〜90%であることが好ましく、より好ましくは20%〜80%であり、特に好ましくは30%〜75%である。
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
【0210】
光散乱層のバインダー及び無機フィラーの混合物のバルクの屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
【0211】
光散乱層は、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、あるいはその両者を防眩層形成用の塗布組成物中に含有する。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、本発明の反射防止フィルムの塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いられる。面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高めることが目的である。
【0212】
次に透明保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層について述べる。
透明保護膜上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、透明保護膜と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、中屈折率ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層からなってもよい(例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等参照)。また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0213】
(高屈折率層及び中屈折率層)
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子及びマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成る。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(:特開2001−1661042001−310432号公報等)、特定の分散剤併用(例、特開平11−153703号公報、米国特許第6210858号明細書、特開2002−2776069号公報等)等挙げられる。
【0214】
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
更に、ラジカル重合性及び/又はカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個有する多官能性化合物含有組成物と、加水分解性基を有する有機金属化合物及びその部分縮合体を含有する組成物とから選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の組成物が挙げられる。また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
【0215】
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることが更に好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。また、厚さは5nm〜10mμであることが好ましく、10nm〜1μmであることが更に好ましい。
【0216】
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して配置される。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35質量%〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報明細書段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報明細書段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報明細書段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
【0217】
架橋又は重合性基を有する含フッ素及び/又はシロキサンのポリマーの架橋又は重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時又は塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物又はその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
【0218】
低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1nm〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820号公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されても良い。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30nm〜200nmであることが好ましく、50nm〜150nmであることが更に好ましく、60nm〜120nmであることが最も好ましい。
【0219】
更に、ハードコート層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
【0220】
3.画像表示装置及び立体画像表示システム
本発明は、本発明の光学フィルムを有する画像表示装置及び立体画像表示システムにも関する。本発明の画像表示装置の一例は、
第1及び第2の偏光膜;
第1及び第2の偏光膜の間に配置される、少なくとも一方に電極を有し対向配置された一対の基板と、該一対の基板間の液晶層とを含む液晶セル;及び
第1偏光膜の外側に本発明の光学フィルム;を少なくとも有する画像表示装置であって、
前記第1偏光膜の吸収軸方向と、前記光学フィルムの第1及び第2位相差領域の面内遅相軸がそれぞれ±45°の角度をなすことを特徴とする画像表示装置である。
また、本発明の立体画像表示システムの一例は、前記画像表示装置と、前記光学フィルムの外側に配置される第3の偏光板とを少なくとも備え、第3の偏光板を通じて立体画像を視認させる立体画像表示システムである。
【0221】
本発明の画像表示装置は、TN(Twisted Nematic)、IPS (In-Plane Switching)、FLC (Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC (Anti-ferroelectric Liquid Crystal)、OCB (Optically Compensatory Bend)、STN (Supper Twisted Nematic)、VA (Vertically Aligned)、及びHAN (Hybrid Aligned Nematic)等、いずれの表示モードの態様であってもよい。
【0222】
第3の偏光板:
本発明の立体画像表示システムでは、特に3D映像とよばれる立体画像を視認者に認識させるため、眼鏡形状の偏光板(第3の偏光板)を通して画像を認識する。
[偏光眼鏡]
本発明の映像表示システムは、右眼鏡と左眼鏡の遅相軸が直交する偏光眼鏡を含み、前記光学フィルムの前記第1及び第2の位相差領域のいずれか一方から出射された右眼用画像光が右眼鏡を透過し、且つ左眼鏡で遮光され;前記第1及び第2の位相差領域の他方から出射された左眼用画像光が左眼鏡を透過し、且つ右眼鏡で遮光されるように構成されていることが好ましい。
前記偏光眼鏡は、位相差機能層と直線偏光子を含むことで偏光眼鏡を形成している。なお、直線偏光子と同等の機能を有するその他の部材を用いてもよい。
【0223】
偏光眼鏡を含め、本発明の映像表示システムの具体的な構成について説明する。まず、本発明の光学フィルムは、映像表示パネルの交互に繰り返されている複数の第一ライン上と複数の第二ライン上(例えば、ラインが水平方向であれば水平方向の奇数ライン上と偶数ライン上であり、ラインが垂直方向であれば垂直方向の奇数ライン上と偶数ライン上でもよい)に偏光変換機能が異なる前記第1の位相差領域と前記第2の位相差領域が設けられている。円偏光を表示に利用する場合には、上述の前記第1の位相差領域と前記第2の位相差領域の位相差は、ともにλ/4であることが好ましく、前記第1の位相差領域と前記第2の位相差領域は遅相軸が直交していることがより好ましい。
【0224】
円偏光を利用する場合、前記第1の位相差領域と前記第2の位相差領域の位相差値をともにλ/4とし、映像表示パネルの奇数ラインに右眼用画像を表示し、奇数ライン位相差領域の遅相軸が45度方向であるならば、偏光眼鏡の右眼鏡と左眼鏡にともにλ/4板を配置することが好ましく、偏光眼鏡の右眼鏡のλ/4板の遅相軸は具体的には略45度に固定すればよい。また、上記の状況であれば、同様に、映像表示パネルの偶数ラインに左眼用画像を表示し、偶数ライン位相差領域の遅相軸が135度方向であるならば、偏光眼鏡の左眼鏡の遅相軸は具体的には略135度に固定すればよい。
更に、一度前記パターニング位相差フィルムにおいて円偏光として画像光を出射し、偏光眼鏡により偏光状態を元に戻す観点からは、上記の例の場合の右眼鏡の固定する遅相軸の角度は正確に水平方向45度に近いほど好ましい。また、左眼鏡の固定する遅相軸の角度は正確に水平135度(又は−45度)に近いほど好ましい。
【0225】
また、例えば前記映像表示パネルが液晶表示パネルである場合、液晶表示パネルのフロント側偏光板の吸収軸方向が通常、水平方向であり、前記偏光眼鏡の直線偏光子の吸収軸が該フロント側偏光板の吸収軸方向に直交する方向であることが好ましく、前記偏光眼鏡の直線偏光子の吸収軸は鉛直方向であることがより好ましい。
また、前記液晶表示パネルのフロント側偏光板の吸収軸方向と、前記パターニング位相差フィルムの奇数ライン位相差領域と偶数ライン位相差領域の各遅相軸は、偏光変換の効率上、45度をなすことが好ましい。
なお、このような偏光眼鏡と、パターニング位相差フィルム及び液晶表示装置の好ましい配置については、例えば特開2004−170693号公報に開示がある。
【0226】
偏光眼鏡の例としては、特開2004−170693号公報に記載のものや、市販品として、Zalman製、ZM−M220Wの付属品を挙げることができる。
【実施例】
【0227】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0228】
(実施例1)
[ラビング配向膜付透明支持体の作製]
透明ガラス支持体の表面に、クラレ社製ポリビニルアルコール「PVA103」の4%水溶液を、12番バーで塗布を行い、80℃で5分間乾燥させた。その後に、400rpmで一方向に3往復、ラビング処理を行い、ラビング配向膜付ガラス支持体を作製した。なお、ガラス支持体のRe(550)は0nmであり、Rthは0nmであり、配向膜の膜厚は、0.9μmであった。
【0229】
[パターン化された光学異方性層の作製]
下記の光学異方性層用組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、光学異方性層用塗布液として用いる。該塗布液を塗布、膜面温度80℃で1分間乾燥して液晶相状態とし均一配向させた後、室温まで冷却した。次に、100μm角の格子マスクを光学異方性層用塗布液を塗布した基板上に配置し、空気下にて20mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を5秒間照射して、その配向状態を固定化することにより第1の位相差領域を形成した。続いて、膜面温度140℃まで昇温し、一旦等方相にした後、100℃まで降温し、その温度で1分間加熱して均一配向させた。室温まで冷却した後、20mW/cm2で20秒間全面照射して、その配向状態を固定化することにより第2の位相差領域を形成した。第1の位相差領域と第2の位相差領域の遅相軸は直交しており、膜厚は、0.8μmであった。
【0230】
<光学異方性層用組成>
ディスコティック液晶E−1 100質量部
配向膜界面配向剤(II−1) 1.0質量部
空気界面配向剤(P−1) 0.4質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
メチルエチルケトン 300質量部
【0231】
【化16】
【0232】
パターン化された光学異方性層を、第1の位相差領域又は第2の位相差領域のいずれか一方の遅相軸が、直交位に組合された2枚の偏光板のいずれか一方の偏光軸と平行になるように、偏光板の間に入れ、さらに、位相差530nmの鋭敏色板を、その遅相軸が偏光板の偏光軸と45°の角度をなすように、光学異方性層の上においた(図5)。次に、光学異方性層を+45°回転させた状態(図6)、及び−45°回転させた状態(図7)を偏光顕微鏡(NIKON製 ECLIPE E600W POL)で観察した。図5〜図7に示す観察結果から明らかなように、+45°回転させた場合、第1の位相差領域の遅相軸と鋭敏色板の遅相軸が平行になっているため、位相差は530nmよりも大きくなり、その色は青色(白黒図面では濃淡の濃い部分)に変化している。一方、第2の位相差領域の遅相軸は鋭敏色板の遅相軸と直交しているため、位相差は530nmよりも小さくなり、その色は黄色(白黒図面では濃淡の淡い部分)に変化する。−45°回転させた場合、逆の現象となる。
【0233】
[光学フィルムの評価]
作製した光学フィルムについて、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて前記方法に従って、配向膜界面のディスコティック液晶のチルト角、空気界面のディスコティック液晶のチルト角、及びRe、Rthをそれぞれ測定した。結果を表1に示す。下記表中、垂直とは、チルト角70°〜90°を表す。また、光学フィルムについて、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、前記方法に従って、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向の方向との関係を示す。
【0234】
表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、一方向にラビング処理したPVA系ラビング配向膜上で配向させ、加熱温度を変化させて露光することによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1の位相差領域と第2の位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
【0235】
(実施例2)
光学異方性層塗布液を下記組成に変更した以外、実施例1と同様の操作にてパターン化された光学異方性層付光学フィルムの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、0.8μmであった。
<光学異方性層用組成>
ディスコティック液晶E−2 100質量部
配向膜界面配向剤(II−1) 1.0質量部
空気界面配向剤(P−2) 0.3質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
メチルエチルケトン 300質量部
【0236】
【化17】
【0237】
[光学フィルムの評価]
作製した光学フィルムについて、実施例1と同様にして、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向の方向との関係を示す。表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、一方向にラビング処理したPVA系ラビング配向膜上で配向させ、加熱温度を変化させて露光することによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1の位相差領域と第2の位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
【0238】
(実施例3)
[ラビング配向膜付透明支持体の作製]
(透明支持体の作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Aを調製した。
<セルロースアシレート溶液A組成>
置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール 11質量部
【0239】
別のミキシングタンクに、下記の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液Bを調製した。
<添加剤溶液B組成>
下記化合物B1(Re低下剤) 40質量部
下記化合物B2(波長分散制御剤) 4質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 80質量部
メタノール(第2溶媒) 20質量部
【0240】
【化18】
【0241】
<セルロースアセテート透明支持体の作製>
セルロースアシレート溶液Aを477質量部に、添加剤溶液Bの40質量部を添加し、充分に攪拌して、ドープを調製した。ドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率70質量%の場外で剥ぎ取り、フィルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率が3乃至5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み60μmのセルロースアセテート保護フィルムを作製した。透明支持体のRe(550)は2.0nmであり、Rthは12.3nmであった。
【0242】
(アルカリ鹸化処理)
セルロースアセテート透明支持体を、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアセテート透明支持体を作製した。
【0243】
(アルカリ溶液組成)
────────────────────────────────────
アルカリ溶液組成(質量部)
────────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤
SF−1:C14H29O(CH2CH2O)20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
────────────────────────────────────
【0244】
(ラビング配向膜付透明支持体の作製)
上記作製した支持体の、鹸化処理を施した面に、下記の組成のラビング配向膜塗布液を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、配向膜を形成した。配向膜の膜厚は0.9μmであった。
<配向膜形成用塗布液の組成>
下記の変性ポリビニルアルコールPVA−1 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
【0245】
【化19】
【0246】
形成したラビング配向膜の表面に、フィルムの長手方向に沿ってラビング処理を行った。
【0247】
(パターン化された光学異方性層の作製)
下記組成の光学異方性層用塗布液を、バーコーターを用いて塗布量4ml/m2で塗布した。膜面温度80℃で1分間乾燥して液晶相状態とし均一配向させた後、室温まで冷却した。次に、ストライプマスクを光学異方性層用塗布液を塗布した基板上に配置し、空気下にて20mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を5秒間照射して、その配向状態を固定化することにより第1の位相差領域を形成した。続いて、膜面温度115℃まで昇温し、一旦等方相にした後、100℃まで降温し、その温度で1分間加熱して均一配向させた。室温まで冷却した後、20mW/cm2で20秒間全面照射して、その配向状態を固定化することにより第2の位相差領域を形成した。最後に、円筒状に巻き取ってロール状の光学フィルムを得た。第1の位相差領域と第2の位相差領域の遅相軸は直交しており、膜厚は、0.9μmであった。
【0248】
(光学異方性層用組成)
────────────────────────────────────
光学異方性層塗布液組成(質量部)
────────────────────────────────────
前記ディスコティック液晶E−1 100.0質量部
前記配向膜界面配向剤(II−1) 1.0質量部
下記空気界面配向剤(P−2) 0.4質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 10.0質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3.0質量部
増感剤(カヤキュアDETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
メチルエチルケトン 300.0質量部
────────────────────────────────────
【0249】
【化20】
【0250】
パターン化された光学異方性層を、第1の位相差領域又は第2の位相差領域のいずれか一方の遅相軸が、直交位に組合された2枚の偏光板のいずれか一方の偏光軸と平行になるように、偏光板の間に入れ、さらに、位相差530nmの鋭敏色板を、その遅相軸が偏光板の偏光軸と45°の角度をなすように、光学異方性層の上においた(図8)。次に、光学異方性層を+45°回転させた状態(図9)、及び−45°回転させた状態(図9)を偏光顕微鏡(NIKON製 ECLIPE E600W POL)で観察した。図8〜図10に示す観察結果から明らかなように、+45°回転させた場合、第1の位相差領域の遅相軸と鋭敏色板の遅相軸が平行になっているため、位相差は530nmよりも大きくなり、その色は青色(白黒図面では濃淡の濃い部分)に変化している。一方、第2の位相差領域の遅相軸は鋭敏色板の遅相軸と直交しているため、位相差は530nmよりも小さくなり、その色は黄色(白黒図面では濃淡の淡い部分)に変化する。−45°回転させた場合、逆の現象となる。
【0251】
[光学フィルムの評価]
作製した光学フィルムについて、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて前記方法に従って、配向膜界面のディスコティック液晶のチルト角、空気界面のディスコティック液晶のチルト角、及びRe、Rthをそれぞれ測定した。結果を表1に示す。下記表中、垂直とは、チルト角70°〜90°を表す。また、光学フィルムについて、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、前記方法に従って、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向の方向との関係を示す。
【0252】
表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、一方向にラビング処理したPVA系ラビング配向膜上で配向させ、加熱温度を変化させて露光することによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1の位相差領域と第2の位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
【0253】
(実施例4)
[光学フィルムの作製]
100μm周期のストライプマスクを用いる以外、実施例3と同様の操作にてパターン化された光学異方性層付光学フィルムを作製した。
【0254】
[反射防止膜の作製]
(ハードコート層用塗布液の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液とした。
メチルエチルケトン900質量部に対して、シクロヘキサノン100質量部、部分カプロラクトン変性の多官能アクリレート(DPCA−20、日本化薬(株)製)750質量部、シリカゾル(MIBK−ST、日産化学工業(株)製)200質量部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)50質量部、を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液を調製した。
【0255】
(中屈折率層用塗布液Aの調製)
ZrO2微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、溶剤組成:メチルイソブチルケトン/メチルエチルケトン=9/1、JSR(株)製])5.1質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)1.5質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.05質量部、メチルエチルケトン66.6質量部、メチルイソブチルケトン7.7質量部及びシクロヘキサノン19.1質量部を添加して攪拌した。充分に攪拌の後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用塗布液Aを調製した。
【0256】
(中屈折率層用塗布液Bの調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)4.5質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.14質量部、メチルエチルケトン66.5質量部、メチルイソブチルケトン9.5質量部及びシクロヘキサノン19.0質量部を添加して攪拌した。十分に攪拌ののち、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用塗布液Bを調製した。
【0257】
屈折率1.36、膜厚90μmとなるように、中屈折率用塗布液Aと中屈折率用塗布液Bとを適量混合し、中屈折率塗布液を調製した。
【0258】
(高屈折率層用塗布液の調製)
ZrO2微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、光重合開始剤含有、溶剤組成:メチルイソブチルケトン/メチルエチルケトン=9/1、JSR(株)製])14.4質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)0.75質量部、メチルエチルケトン62.0質量部、メチルイソブチルケトン3.4質量部、シクロヘキサノン1.1質量部を添加して攪拌した。充分に攪拌の後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率層用塗布液Cを調製した。
【0259】
(低屈折率層用塗布液の調製)
(パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
【0260】
【化21】
【0261】
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7g及び過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。更にヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は、0.53MPa(5.4kg/cm2)であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm2)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。更にこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.422、質量平均分子量は50000であった
【0262】
(中空シリカ粒子分散液Aの調製)
中空シリカ粒子微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シエル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31)500質量部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン30質量部、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.51質量部加え混合した後に、イオン交換水9質量部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加し、分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度18.2質量%の分散液Aを得た。得られた分散液AのIPA残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ0.5質量%以下であった。
【0263】
(低屈折率層用塗布液の調製)
各成分を下記のように混合し、メチルエチルケトンに溶解して固形分濃度5質量%の低屈折率層用塗布液Ln6を作製した。下記各成分の質量%は、塗布液の全固形分に対する、各成分の固形分の比率である。
【0264】
・P−1:パーフルオロオレフィン共重合体(1):15質量%
・DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製):7質量%
・MF1:国際公開第2003/022906号パンフレットの実施例記載の下記含フッ素不飽和化合物(重量平均分子量1600):5質量%
【0265】
【化22】
【0266】
・M−1:日本化薬(株)製KAYARAD DPHA:20質量%
・分散液A:前記中空シリカ粒子分散液A(アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランで表面修飾した中空シリカ粒子ゾル、固形分濃度18.2%):50質量%
・Irg127:光重合開始剤イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製):3質量%
【0267】
前記光学フィルム上に、前記組成のハードコート層用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量150mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ12μmのハードコート層Aを形成した。
更に中屈折率層用塗布液、高屈折率層用塗布液、低屈折率層用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。 中屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら180W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm2、照射量240mJ/cm2の照射量とした。
高屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm2、照射量240mJ/cm2の照射量とした。
低屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量600mJ/cm2の照射量とした。
【0268】
[偏光板の作製]
上記にて作製したフィルムに、下記の粘着剤塗布液及び上層塗布液Bを、透明支持体側にそれぞれ20ml/m2塗布し、100℃で5分乾燥して粘着剤付きフィルム試料とした。
(粘着剤塗布液)
下記水溶性ポリマー(m) 0.5g
アセトン 40ml
酢酸エチル 55ml
イソプロパノール 5ml
【0269】
(上層塗布液B)
ポリビニルアルコール(日本合成化学工業株式会社製ゴーセノールNH−26) 0.3g
サポニン(メルク社製界面活性剤) 0.03g
純水 57ml
メタノール 40ml
メチルプロピレングリコール 3ml
【0270】
【化23】
【0271】
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ30μmの偏光膜を得た。上記の粘着剤付きフィルムに対し粘着剤を塗設した側に偏光膜がくるように貼り付け、更に偏光膜のもう一方の側に市販のセルロールアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フィルム(株)製、Re(550)は3nm、|Rth(630)|は50nm)をアルカリケン化処理を行った後、粘着剤層を塗設してから貼り合わせ、偏光板を作製した。
【0272】
(液晶表示装置への実装評価)
円偏光眼鏡方式の3Dモニター(ZALMAN製)に使用されているパターン位相差板とフロント偏光板をはがし、上記で作製した偏光板を貼合した。
作製した3Dモニターに立体視用画像を映し、右眼用/左眼用の円偏光メガネを通して観察したところ、クロストークのない鮮明な立体画像を観察することができた。
【0273】
(実施例5)
[光学フィルムの作製]
セルロースアセテート透明支持体作製時の添加剤溶液Bから添加剤B1(Re低下剤)及び添加剤B2(波長分散制御剤)を除いた以外は、実施例4と同様に光学フィルムを作製した。このときのセルロースアセテート透明支持体の厚みは200μmであり、550nmにおけるReは15nmであり、Rthは102nmであった。
【0274】
(液晶表示装置への実装評価)
実施例4と同様の方法にて偏光板を作製し、円偏光眼鏡方式の3Dモニター(ZALMAN製)に使用されているパターン位相差板とフロント偏光板をはがし、前記偏光板を貼合した。
作製した3Dモニターに立体視用画像を映し、右眼用/左眼用の円偏光メガネを通して観察したところ、立体画像として観察することはできたが、若干のクロストークが認識された。
【0275】
(実施例6)
光学異方性層塗布液を下記組成に変更した以外、実施例1と同様の操作にてパターン化された光学異方性層付光学フィルムの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、0.8μmであった。
<光学異方性層用組成>
ディスコティック液晶E−3 100質量部
配向膜界面配向剤(II−1) 1.0質量部
空気界面配向剤(P−2) 0.3質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 9.9質量部
メチルエチルケトン 300質量部
【0276】
【化24】
【0277】
[光学フィルムの評価]
作製した光学フィルムについて、実施例1と同様にして、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向の方向との関係を示す。表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、一方向にラビング処理したPVA系ラビング配向膜上で配向させ、加熱温度を変化させて露光することによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1の位相差領域と第2の位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
【0278】
(実施例7)
光学異方性層塗布液を下記組成に変更した以外、実施例1と同様の操作にてパターン化された光学異方性層付光学フィルムの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、0.8μmであった。
<光学異方性層用組成>
ディスコティック液晶E−2 100質量部
配向膜界面配向剤(II−2) 1.0質量部
空気界面配向剤(P−2) 0.3質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
メチルエチルケトン 300質量部
【0279】
【化25】
【0280】
[光学フィルムの評価]
作製した光学フィルムについて、実施例1と同様にして、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向の方向との関係を示す。表1に示す結果から、ディスコティック液晶を、イミダゾリウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、一方向にラビング処理したPVA系ラビング配向膜上で配向させ、加熱温度を変化させて露光することによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1の位相差領域と第2の位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
【0281】
(比較例1)
[光学フィルムの作製]
光学異方性層の作製方法を下記作製方法に変更した以外、実施例3と同様の操作にて光学フィルムを作製した。配向膜の膜厚は、0.9μmであり、光学異方性層の膜厚は、0.9μmであった。
【0282】
[光学異方性層の作製方法]
実施例3の光学異方性層用塗布液を、バーコーターを用いて塗布量4ml/m2で塗布した。膜面温度80℃で1分間乾燥して液晶相状態とし均一配向させた後、室温まで冷却した。空気下にて20mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を25秒間全面照射して、その配向状態を固定化することにより光学異方性層を形成した。
【0283】
[光学フィルムの評価]
作製した光学フィルムについて、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて前記方法に従って、配向膜界面のディスコティック液晶のチルト角、空気界面のディスコティック液晶のチルト角、及びRe、Rthをそれぞれ測定した。結果を表1に示す。下記表中、垂直とは、チルト角70°〜90°を表す。また、光学フィルムについて、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、前記方法に従って、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向の方向との関係を示す。
【0284】
表1に示す結果から、ディスコティック液晶は垂直配向しているものの、遅相軸がラビング方向に直交した単一の光学異方性層しか得られていないことが理解できる。
【0285】
(比較例2)
[光学フィルムの作製]
光学異方性層の作製方法を下記作製方法に変更した以外、実施例3と同様の操作にて光学フィルムを作製した。配向膜の膜厚は、0.9μmであり、光学異方性層の膜厚は、0.9μmであった。
【0286】
[光学異方性層の作製方法]
実施例3の光学異方性層用塗布液を、バーコーターを用いて塗布量4ml/m2で塗布した。膜面温度115℃まで昇温し、一旦等方相にした後、100℃まで降温し、その温度で1分間加熱して均一配向させた。室温まで冷却した後、20mW/cm2で25秒間全面照射して、その配向状態を固定化することにより光学異方性層を形成した。
【0287】
[光学フィルムの評価]
作製した光学フィルムについて、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて前記方法に従って、配向膜界面のディスコティック液晶のチルト角、空気界面のディスコティック液晶のチルト角、及びRe、Rthをそれぞれ測定した。結果を表1に示す。下記表中、垂直とは、チルト角70°〜90°を表す。また、光学フィルムについて、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、前記方法に従って、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。表1に、光学異方性層の遅相軸と配向膜のラビング方向の方向との関係を示す。
【0288】
表1に示す結果から、ディスコティック液晶は垂直配向しているものの、遅相軸がラビング方向に平行になっている単一の光学異方性層しか得られていないことが理解できる。
【0289】
(比較例3)
(液晶表示装置への実装評価)
比較例1で作製した偏光板に変更した以外は、実施例4と同様の方法にて3Dモニターを作製した。
作製した3Dモニターに立体視用画像を映し、右眼用/左眼用の円偏光メガネを通して観察したところ、クロストークが大きく立体画像として認識できなかった。
【0290】
(比較例4)
(液晶表示装置への実装評価)
比較例2で作製した偏光板に変更した以外は、実施例4と同様の方法にて3Dモニターを作製した。
作製した3Dモニターに立体視用画像を映し、右眼用/左眼用の円偏光メガネを通して観察したところ、クロストークが大きく立体画像として認識できなかった。
【0291】
【表1】
【0292】
(参考例1)
光学異方性層塗布液を下記組成に変更した以外、実施例1と同様の操作にてパターン化された光学異方性層付光学フィルムの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、0.8μmであった。
<光学異方性層用組成>
ディスコティック液晶E−4 100質量部
配向膜界面配向剤(II−1) 1.0質量部
空気界面配向剤(P−2) 0.3質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 9.9質量部
メチルエチルケトン 300質量部
【0293】
【化26】
【0294】
[光学フィルムの評価]
作製した光学フィルムについて、実施例1と同様にして、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。側鎖円盤状コアとの間の連結基に−C=C−を含まないトリフェニレン系ディスコティック液晶E−4を用いると、直交配向状態になり難く、得られた光学フィルムは、実施例の光学フィルムと比較して、パターン形成性について劣っていた。
【0295】
(参考例2)
光学異方性層塗布液を下記組成に変更した以外、実施例1と同様の操作にてパターン化された光学異方性層付光学フィルムの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、0.8μmであった。
<光学異方性層用組成>
ディスコティック液晶E−1 100質量部
配向膜界面配向剤(II−3) 1.0質量部
空気界面配向剤(P−2) 0.3質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
メチルエチルケトン 300質量部
【0296】
【化27】
【0297】
[光学フィルムの評価]
作製した光学フィルムについて、実施例1と同様にして、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。式(2)の範囲外のピリジニウム塩を用いると、直交配向状態になり難く、得られた光学フィルムは、実施例の光学フィルムと比較して、パターン形成性について劣っていた。
【符号の説明】
【0298】
10 光学フィルム
12 パターン光学異方性層
14 配向膜
16 透明支持体
20 偏光板
22 偏光膜
24 保護フィルム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に、一方向に処理された配向膜と、重合性基を有する液晶を主成分とする一種の組成物から形成された光学異方性層とを少なくとも有する光学フィルムであって、
前記光学異方性層が、互いに直交する面内遅相軸を有する第1相差領域及び第2位相差領域を含み、前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層であることを特徴とする光学フィルム。
【請求項2】
前記配向膜が、一方向にラビング処理されたラビング配向膜であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
Re(550)が、110〜165nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルム:
但し、Re(550)は波長550nmにおける面内レターデーション値(単位:nm)である。
【請求項4】
前記透明支持体のRe(550)が、0〜10nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項5】
Rth(550)が、|Rth(550)|≦20を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム:
但し、Rth(550)は、波長550nmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。
【請求項6】
前記配向膜が、変性又は未変性ポリビニルアルコールを主成分として含有する膜であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記重合性基を有する液晶が、円盤状液晶であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記光学異方性層が、ピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物の少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記光学異方性層が、下記一般式(2a)のピリジニウム化合物又は下記一般式(2b)のイミダゾリウム化合物をさらに含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学フィルム:
【化1】
式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基(単結合を含む)を表し;R22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基を表し、R22が、ジアルキル置換アミノ基である場合、2つのアルキル基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよく;Xはアニオンを表し;Y22及びY23はそれぞれ、5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基を表し;mは1又は2であり、mが2のとき、複数のY23及びL24は、互いに同一であっても異なっていてもよく;Z21は、ハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基を表し;pは、1〜10の整数であり、R30は、水素原子又は炭素原子数が1〜12のアルキル基である。
【請求項10】
前記光学異方性層が、フルオロ脂肪族基含有共重合体の少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項11】
前記重合性基を有する液晶が円盤状液晶であり、前記光学異方性層中、円盤状液晶が垂直配向状態に固定されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の光学フィルムと、偏光膜とを含み、前記光学異方性層の第1及び第2の位相差領域のそれぞれの面内遅相軸方向と、偏光膜の吸収軸方向とが45°であることを特徴とする偏光板。
【請求項13】
前記光学フィルムと、前記偏光膜とが粘着層を介して積層されていることを特徴とする請求項12に記載の偏光板。
【請求項14】
さらに最表面に一層以上の反射防止フィルムが積層されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の偏光板。
【請求項15】
第1及び第2の偏光膜;
第1及び第2の偏光膜の間に配置される、少なくとも一方に電極を有し対向配置された一対の基板と、該一対の基板間の液晶層とを含む液晶セル;及び
第1偏光膜の外側に請求項1〜11のいずれか1項に記載の光学フィルム;
を少なくとも有する画像表示装置であって、
前記第1偏光膜の吸収軸方向と、前記光学フィルムの第1及び第2位相差領域の面内遅相軸がそれぞれ±45°の角度をなすことを特徴とする画像表示装置。
【請求項16】
請求項15に記載の画像表示装置と、前記光学フィルムの外側に配置される第3の偏光板とを少なくとも備え、第3の偏光板を通じて立体画像を視認させる立体画像表示システム。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法であって、
1)透明支持体上にラビング配向膜を形成する工程
2)ラビング配向膜を一方向にラビング処理する工程
3)ラビング配向膜上に、重合性基を有する液晶を主成分とする一種の組成物を塗布する工程
4)温度T1℃で加熱してラビング方向に対して、液晶の遅相軸を直交配向させる工程
5)フォトマスク下、紫外線照射して照射領域を直交配向状態で固定化する工程
6)温度T2(但し、T1<T2)℃で加熱して、ラビング方向に対して未照射領域の液晶の遅相軸を平行配向させる工程
7)紫外線照射して平行配向状態で固定化する工程
をこの順で含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項1】
透明支持体上に、一方向に処理された配向膜と、重合性基を有する液晶を主成分とする一種の組成物から形成された光学異方性層とを少なくとも有する光学フィルムであって、
前記光学異方性層が、互いに直交する面内遅相軸を有する第1相差領域及び第2位相差領域を含み、前記第1及び第2位相差領域が、面内において交互に配置されているパターン光学異方性層であることを特徴とする光学フィルム。
【請求項2】
前記配向膜が、一方向にラビング処理されたラビング配向膜であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
Re(550)が、110〜165nmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルム:
但し、Re(550)は波長550nmにおける面内レターデーション値(単位:nm)である。
【請求項4】
前記透明支持体のRe(550)が、0〜10nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項5】
Rth(550)が、|Rth(550)|≦20を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム:
但し、Rth(550)は、波長550nmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。
【請求項6】
前記配向膜が、変性又は未変性ポリビニルアルコールを主成分として含有する膜であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記重合性基を有する液晶が、円盤状液晶であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記光学異方性層が、ピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物の少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記光学異方性層が、下記一般式(2a)のピリジニウム化合物又は下記一般式(2b)のイミダゾリウム化合物をさらに含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学フィルム:
【化1】
式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基(単結合を含む)を表し;R22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基を表し、R22が、ジアルキル置換アミノ基である場合、2つのアルキル基が互いに結合して含窒素複素環を形成してもよく;Xはアニオンを表し;Y22及びY23はそれぞれ、5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基を表し;mは1又は2であり、mが2のとき、複数のY23及びL24は、互いに同一であっても異なっていてもよく;Z21は、ハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基を表し;pは、1〜10の整数であり、R30は、水素原子又は炭素原子数が1〜12のアルキル基である。
【請求項10】
前記光学異方性層が、フルオロ脂肪族基含有共重合体の少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項11】
前記重合性基を有する液晶が円盤状液晶であり、前記光学異方性層中、円盤状液晶が垂直配向状態に固定されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の光学フィルムと、偏光膜とを含み、前記光学異方性層の第1及び第2の位相差領域のそれぞれの面内遅相軸方向と、偏光膜の吸収軸方向とが45°であることを特徴とする偏光板。
【請求項13】
前記光学フィルムと、前記偏光膜とが粘着層を介して積層されていることを特徴とする請求項12に記載の偏光板。
【請求項14】
さらに最表面に一層以上の反射防止フィルムが積層されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の偏光板。
【請求項15】
第1及び第2の偏光膜;
第1及び第2の偏光膜の間に配置される、少なくとも一方に電極を有し対向配置された一対の基板と、該一対の基板間の液晶層とを含む液晶セル;及び
第1偏光膜の外側に請求項1〜11のいずれか1項に記載の光学フィルム;
を少なくとも有する画像表示装置であって、
前記第1偏光膜の吸収軸方向と、前記光学フィルムの第1及び第2位相差領域の面内遅相軸がそれぞれ±45°の角度をなすことを特徴とする画像表示装置。
【請求項16】
請求項15に記載の画像表示装置と、前記光学フィルムの外側に配置される第3の偏光板とを少なくとも備え、第3の偏光板を通じて立体画像を視認させる立体画像表示システム。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法であって、
1)透明支持体上にラビング配向膜を形成する工程
2)ラビング配向膜を一方向にラビング処理する工程
3)ラビング配向膜上に、重合性基を有する液晶を主成分とする一種の組成物を塗布する工程
4)温度T1℃で加熱してラビング方向に対して、液晶の遅相軸を直交配向させる工程
5)フォトマスク下、紫外線照射して照射領域を直交配向状態で固定化する工程
6)温度T2(但し、T1<T2)℃で加熱して、ラビング方向に対して未照射領域の液晶の遅相軸を平行配向させる工程
7)紫外線照射して平行配向状態で固定化する工程
をこの順で含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−8170(P2012−8170A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141346(P2010−141346)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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