説明

光学フィルム、その製造方法、及び光学フィルムを用いた偏光板

【課題】 液晶表示装置(LCD)の偏光板用保護フィルムとして有用であり、特に高温高湿下の環境においても寸法特性に優れている光学フィルムを提供する。また、高残溶下(高残留溶媒量下)でも、金属支持体からのフィルム(ウェブ)剥離が良好で、押され故障が発生しにくいため、生産速度を速くすることができ、生産効率の良い光学フィルムの製造方法を提供する。上記の光学フィルムを用いかつ耐久条件下においても光漏れの発生がなく、ひいてはLCDの品質の改善が可能である偏光板を提供する。
【解決手段】 光学フィルムの製造方法の発明は、セルロース誘導体と、反応性金属化合物の重縮合物を溶媒に溶解したドープ(樹脂溶液)を、溶液流延製膜法により金属支持体上に流延するにあたり、ドープを動的光散乱法で測定したドープ内ポリマー粒子の多分散指数が、0.5〜1.0である状態で、ドープを流延する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置(LCD)の偏光板用保護フィルムとして有用な光学フィルム、その製造方法、及び光学フィルムを用いた偏光板に関するものである。
【0002】
本発明は、より詳しくは、高温高湿下の環境においても寸法特性に優れている光学フィルム、該光学フィルムを用いた偏光板であって、耐久条件下においても光漏れの発生のない偏光板に関するものである。
【0003】
本発明は、さらに、高残溶下(高残留溶媒量下)でも、金属支持体からのフィルム(ウェブ)剥離が良好で、押され故障が発生しにくいため、生産速度を速くすることができ、生産効率の良い光学フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0004】
近年、液晶を搭載したモニター、テレビの大型化が進んでいる。それに伴って、液晶表示装置(LCD)に用いられる偏光板保護用フィルムに対しても、ますます高耐久性(特に寸法安定性について)の要求が強くなってきている。
【0005】
偏光板保護用フィルムには、一般的にセルローストリアセテートフィルムが広く使用されているが、従来のセルローストリアセテートフィルムでは、寸法安定性(特に高温下での寸法安定性)が不足し、光漏れ、偏光板の剥がれ等が発生することが分った。
【0006】
上記の課題を解決するために、セルロースアシレート溶液中に、架橋化合物を添加し、最終的に流延以降の工程で光エネルギーにより架橋を促進させて重合させたフィルムが、例えばつぎの特許文献1及び2において提案されている。
【特許文献1】特開2004−99631号公報 この特許文献1には、セルロースアセテートフィルムよりなる光学フイルムが開示されており、この特許文献1では、溶液流延方法により、セルロースアシレート、光により酸を発生する化合物、ヒドロキシアリール基を含有するオリゴマー、及び酸により架橋する化合物を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と、光照射の工程とを含む工程により、セルロースアシレートフィルムを作製している。
【特許文献2】特開2004−148811号公報 この特許文献2には、セルロースアシレートフィルムよりなる光学フイルムが開示されており、この特許文献2では、セルロースアシレート、環状構造脂肪族炭化水素基を有するラジカル重合性モノマー、及び光重合開始剤を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と、光照射の工程とを含む一連の工程により、セルロースアシレートフィルムを作製している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2記載の方法では、いずれの場合も、流延工程以降の工程で光照射によりポリマーの架橋を行なうため、光照射のばらつきにより、ポリマーの重合度にばらつきが生じたり、光照射による異物が析出するなどの課題があり、充分な光エネルギーを与えることができず、フィルムの寸法安定性についても充分良好なものではないという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題を解決し、液晶表示素子すなわち偏光板の保護フィルムとして用いられる光学フィルムの製造方法について、高残溶下(高残留溶媒量下)でも、金属支持体からのフィルム(ウェブ)剥離が良好で、押され故障が発生しにくいため、生産速度を速くすることができ、生産効率の良い光学フィルムの製造方法を提供しようとすることにある。
【0009】
また、本発明は、上記の方法により製造された光学フィルムであって、高温高湿下の環境においても寸法特性に優れている光学フィルムを提供すること、さらには、該光学フィルムを用いた偏光板であって、耐久条件下においても光漏れの発生がなく、ひいては液晶表示装置(LCD)の品質の改善が可能である偏光板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、光学フィルムの基材であるセルロース誘導体に対して、及びセルロース誘導体に含まれる可塑剤等の添加剤に対しても、水素結合によって相互作用することが可能である反応性金属酸化物を、ナノスケールで、セルロース誘導体中に分散・混合する、いわゆる有機−無機ハイブリッドと呼ばれる手法により作製されたドープで、かつそのドープを動的光散乱法で測定したドープ内ポリマー粒子の多分散指数が、0.5〜1.0である状態で、ドープを金属支持体上に流延することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の光学フィルムの製造方法の発明は、セルロース誘導体と、反応性金属化合物の重縮合物を溶媒に溶解したドープ(樹脂溶液)を、溶液流延製膜法により金属支持体上に流延する光学フィルムの製造方法であって、ドープを動的光散乱法で測定したドープ内ポリマー粒子の多分散指数が、0.5〜1.0である状態で、ドープを流延することを特徴としている。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の光学フィルムの製造方法であって、ドープを静的光散乱法で測定したドープ内ポリマー粒子の分子量が50万〜500万であり、ドープ内ポリマー粒子の回転半径(ポリマー分子の重心からの距離の重みつき平均値)が50nm〜200nmであることを特徴としている。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の光学フィルムの製造方法であって、セルロース誘導体の含水量、及びその溶解に使用する溶媒の含水量が、それぞれ0.01〜0.5重量%の範囲内であることを特徴としている。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法であって、反応性金属化合物が、Si、Ti、ZrまたはAlよりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの金属のアルコキシドであることを特徴としている。
【0015】
請求項5記載の光学フィルムの発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項記載の製造方法で製造されたことを特徴としている。
【0016】
請求項6記載の偏光板の発明は、請求項5記載の光学フィルムが、偏光フィルムの両側に配置された2枚の偏光板保護フィルムのうちの少なくともいずれか一方を構成するものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の光学フィルムの製造方法の発明は、セルロース誘導体と、反応性金属化合物の重縮合物を溶媒に溶解したドープ(樹脂溶液)を、溶液流延製膜法により金属支持体上に流延する光学フィルムの製造方法であって、ドープを動的光散乱法で測定したドープ内ポリマー粒子の多分散指数が、0.5〜1.0である状態で、ドープを流延するもので、本発明の光学フィルムの製造方法によれば、金属支持体からのフィルム(ウェブ)剥離が良好で、押され故障が発生しにくいため、生産速度を速くすることができ、生産効率が優れているという効果を奏する。
【0018】
本発明の光学フィルムの製造方法においては、ドープを静的光散乱法で測定したドープ内ポリマー粒子の分子量が50万〜500万であり、ドープ内ポリマー粒子の回転半径(ポリマー分子の重心からの距離の重みつき平均値)が50nm〜200nmであることが好ましい。
【0019】
また、本発明の光学フィルムにおいては、セルロース誘導体の含水量、及びその溶解に使用する溶媒の含水量が、それぞれ0.01〜0.5重量%の範囲内であることが好ましい。
【0020】
本発明の光学フィルムにおいて、反応性金属化合物が、Si、Ti、ZrまたはAlよりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの金属のアルコキシドであることが好ましい。
【0021】
請求項5記載の光学フィルムの発明は、請求項1〜4のうちのいずれか一項記載の製造方法で製造されたものであるから、高温高湿下の環境においても、耐久性があり、寸法特性に優れているという効果を奏する。
【0022】
請求項6記載の偏光板の発明は、請求項5記載の光学フィルムが、偏光フィルムの両側に配置された2枚の偏光板保護フィルムのうちの少なくともいずれか一方を構成するものであるから、耐久条件下においても光漏れの発生のなく、ひいては液晶表示装置(LCD)の品質の改善が可能であるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
本発明は、セルロース誘導体と、反応性金属化合物の重縮合物を溶媒に溶解したドープ(樹脂溶液)を、溶液流延製膜法により金属支持体上に流延する光学フィルムの製造方法であって、ドープを動的光散乱法で測定したドープ内ポリマー粒子の多分散指数が、0.5〜1.0である状態で、ドープを流延するものである。
【0025】
ここに、ドープを静的光散乱法で測定したドープ内ポリマー粒子の分子量が50万〜500万であり、ドープ内ポリマー粒子の回転半径(ポリマー分子の重心からの距離の重みつき平均値)が50nm〜200nmであることが好ましい。
【0026】
また、本発明においては、セルロース誘導体の含水量、及びその溶解に使用する溶媒の含水量が、それぞれ0.01〜0.5重量%の範囲内であることが好ましい。
【0027】
上記の反応性金属化合物は、Si、Ti、ZrまたはAlよりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの金属のアルコキシドであることが好ましい。
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0029】
〈有機−無機ハイブリッド〉
有機−無機ハイブリッドは、また有機−無機ポリマーコンポジットまたはゾル・ゲル法などと呼ばれる手法として用いられるが、本明細書では、これらを有機−無機ハイブリッドと呼称するものとする。
【0030】
有機−無機ハイブリッドとは、有機ポリマーと無機化合物を組み合わせて、双方の特性を持った材料を合成する考え方であるが、有機ポリマーと無機化合物は相溶性に乏しいため、単純に両者を混合するだけでは有用な材料を得ることが難しい。
【0031】
近年になって、無機物を金属アルコキシドのような液体状態から合成する手法が開発されるに至り、溶液プロセスによって可視光の波長以下(〜約750nm以下)のナノスケールで有機物と無機物を混合することが可能となり、光学的にも透明で有用な材料が得られるようになってきている。
【0032】
本発明においても、鋭意検討した結果、有機ポリマーであるセルロース誘導体と、無機化合物である反応性金属酸化物をある一定の条件下で混合することにより、セルロース誘導体の透明性や光学特性を保ったまま、フィルムの平面性を向上させることが判明し、上記課題を達成する基材フィルムを得ることができたものである。
【0033】
〈有機ポリマー〉
本発明においては、液晶表示用フィルムとして好ましい有機材料として、低複屈折・波長分散特性が正であるセルロース誘導体が、有機−無機ハイブリッドフィルムの有機ポリマーとして用いられる。
【0034】
ここで、高分子化合物の波長分散特性が正であるとは、波長600nmにおける面内リタデーション値R(600)を、波長450nmにおける面内リタデーション値R(450)で除した値が、1より大きいことをいう。
【0035】
波長600nmにおける面内リタデーション値R(600)及び波長450nmにおける面内リタデーション値R(450)は、該高分子化合物を可溶な溶媒、例えば、アセトン、酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、塩化メチレン及びこれらの混合溶媒に溶解し、ガラス板上にフィルム厚みが100μmになるように流延し、乾燥させて、フィルムを作製し、波長600nmにおける面内リタデーション値R(600)と波長450nmにおける面内リタデーション値R(450)を測定することによって求めることができる。
【0036】
波長分散特性が正である基板フィルムにおいては、可視光の全波長領域で偏光の補償が可能であり、複屈折を利用した表示方法を採用している液晶パネルにおいては、色ずれを防ぐことができ、また、有機EL表示素子においては、良好なコントラストを得ることができる。
【0037】
本発明に用いられるセルロース誘導体としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルセルロースなどのセルロースエーテル類と、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース(DAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、硝酸セルロース等のセルロースエステル類が挙げられるが、好ましくはセルロースエステル類である。あるいは、特開2002−179701号公報の段落番号[0010]〜[0027]記載の芳香族カルボン酸エステルが用いられ、特に特開2002−17979号公報の段落番号[0028]〜[0036]のセルロースアシレートが好ましく用いられる。
【0038】
本発明に用いられるセルロース誘導体の原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ、ケナフなどを挙げることができる。また、これらから得られたセルロース誘導体は、それぞれを単独あるいは任意の割合で混合使用することができるが、綿花リンターを50重量%以上使用することが好ましい。
【0039】
セルロースエステルフィルムの分子量が大きいと、弾性率が大きくなるが、分子量を上げすぎると、セルロースエステルの溶解液の粘度が高くなりすぎるため、生産性が低下する。セルロースエステルの分子量は数平均分子量(Mn)で80000〜200000のものが好ましく、100000〜200000のものがさらに好ましい。本発明で用いられるセルロースエステルはMw/Mn比が1.4〜3.0が好ましく、さらに好ましくは1.4〜2.3である。
【0040】
セルロースエステルの平均分子量及び分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーを用い測定できるので、これを用いて数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を算出し、その比を計算することができる。
【0041】
測定条件は以下の通りである。
【0042】
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806,K805,K803G(昭和電工株式会社製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1重量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所株式会社製)
流量:1.0ml/分
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー株式会社製)Mw=1,000,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0043】
セルロースエステルの総アシル基置換度は2.3〜2.9が用いられ、2.6〜2.9が好ましく用いられる。総アシル基置換度はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
【0044】
〈加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物の重縮合物〉
つぎに、本発明の有機−無機ハイブリッドフィルムを構成する無機化合物である金属化合物について説明する。
【0045】
本発明において金属とは、「周期表の化学」岩波書店 斎藤一夫著 p.71記載の金属すなわち半金属性原子を含む金属である。
【0046】
本発明に用いられる加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物としては、例えば金属アルコキシド、金属ジケトネート、金属アルキルアセトアセテート、金属イソシアネート、反応性の金属ハロゲン化物が挙げられ、好ましくは金属種がケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)及びアルミニウム(Al)よりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの金属であって、特に好ましくはケイ素(Si)である。
【0047】
このような加水分解重縮合可能な反応性金属化合物は、中心金属をM、その原子数をq、加水分解されない置換基をA、その置換基数をp、加水分解可能な置換基をB、その置換基数をrとすると、理想的には下記の式(1)のように反応が完結し、金属酸化物が得られる。
【0048】
式(1) A → Ar/2
この金属酸化物の含有量は、有機−無機ハイブリッド材料を燃焼させた後、灰中の金属酸化物の含有量として求めることができる。
【0049】
本発明では、金属酸化物の含有量は、有機−無機ハイブリッドフィルムを500℃に加熱燃焼させた後の残渣に含まれる金属酸化物の重量をGm、燃焼前のフィルムの重量をGfとしたときに、
Gm/Gf×100 の式で表わされる。
【0050】
金属酸化物の重量は、セイコー電子工業株式会社製SPS−4000を用いて、ICP−AES分析法(誘導結合プラズマ発行分光分析)により測定することができる。この際、灰中に金属酸化物以外の成分(例えばリン等)が含まれている場合は、公知の方法で灰中の金属酸化物量を測定することができる。
【0051】
有機−無機ハイブリッド材料の無機物の含有量としては、有機−無機ハイブリッドフィルムの全重量に対して、0.1〜40重量%が好ましい。より好ましくは、0.5〜20重量%であり、さらに好ましくは0.5〜5重量%である。
【0052】
ここで、無機物の添加量が0.1重量%より少ないと、有機−無機ハイブリッドフィルムの物性改良効果が認められなくなり、40重量%を越えると、有機−無機ハイブリッドフィルムが脆くなってしまうためである。
【0053】
本発明の有機−無機ハイブリッドフィルム中の重縮合物の平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡観察、X線小角散乱測定により得ることができる。好ましいのは、X線小角散乱測定により求める方法である。
【0054】
X線小角散乱法の詳細については、例えばX線回折ハンドブック第3版(理学電機株式会社2000年発行)を参照することができる。よく知られているように、試料中に電子密度の異なる領域が存在すると入射X線方向に散漫な散乱が観測される。この散乱は散乱角0〜5°程度の範囲に観測されるため、これらの散乱は小角散乱と呼ばれる。
【0055】
この散乱曲線に対し、GuinierプロットあるいはFankuchen法を用いて、重縮合物の平均粒子径を測定する。
【0056】
本発明における有機−無機ハイブリッドフィルム中の重縮合物の好ましい平均粒子径は、1〜200nmである。より好ましくは1〜100nmさらに好ましくは1〜50nmで、1〜20nmが最も好ましい。
【0057】
本発明の重縮合物は、従来の金属酸化物微粒子をセルロースエステル溶液中に分散して添加する方法に比べて凝集体を形成しにくく、小粒径の状態を安定に得られる点で優れている。
【0058】
加水分解重縮合可能な反応性金属化合物としては、上記の式(1)で示されているAにおいて、p=0であるような、全てが加水分解可能な置換基で置換されていることが好ましいが、基材フィルムの透湿度を低減する観点から、加水分解されない置換基によって該金属1原子当たり1つまたは2つ、あるいは3つ置換されている化合物が含まれていても良い。
【0059】
このような加水分解されない置換基を有する金属化合物の添加量としては、添加される金属化合物の50モル%以下が好ましい。また、上記添加量の範囲で2種以上の異なる種類の金属アルコキシドを併用しても良い。
【0060】
このような加水分解されない置換基としては、置換または無置換のアルキル基、または置換または無置換のアリール基が好ましく該アルキル基またはアリール基の置換基としては、アルキル基(例えばメチル基、エチル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えばベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)、複素環基(たとえばフラン、チオフェン、ピリジン等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基等)、アシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、アルキルチオ基、グリシジル基、ビニル基、フッ素原子含有アルキル基またはフッ素原子含有アリール基等が挙げられる。
【0061】
本発明に用いられる重縮合が可能な反応性金属化合物としては、ケイ素化合物として、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、テトラキス(メトキシエトキシ)シラン、テトラキス(メトキシプロポキシ)シラン、テトラクロロシラン、テトライソシアナートシラン等が挙げられる。
【0062】
また加水分解されない置換基を有するケイ素化合物として、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ジクロロジメチルシラン、ジクロロジエチルシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、(3−アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、アセトキシトリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリメトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリクロロシラン、ペンタフルオロフェニルプロピルトリクロロシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリクロロシラン、メチルトリイソシアナートシラン、フェニルトリイソシアナートシラン、ビニルトリイソシアナートシラン、等が挙げられる。
【0063】
また、これらの化合物が部分的に縮合した、多摩化学製シリケート40、シリケート45、シリケート48、Mシリケート51のような、数量体のケイ素化合物でもよい。
【0064】
またチタン化合物としては、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタン−n−ブトキシド、テトラクロロチタン、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−エチルアセトアセテート)、チタンジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンアセチルアセトネート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ブチルチタネートダイマー等が挙げられる。
【0065】
またジルコニウム化合物としては、ジルコニウム−n−プロポキシド、ジルコニウム−n−ブトキシド、ジルコニウムトリ−n−ブトキシドアセチルアセトネート、ジルコニウムジ−n−ブトキシドビスアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート、等が挙げられる。
【0066】
またアルミニウム化合物としては、アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウム−n−ブトキシド、アルミニウム−s−ブトキシド、アルミニウム−ジ−s−ブトキシドエチルアセチルアセトナート、アルミニウム−t−ブトキシド、アルマトラン、アルミニウムフェノキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムエチルアセチルアセトナート等が挙げられる。
【0067】
また、その他の金属からなる化合物としては、例えば、バリウムイソプロポキシド、カルシウムエトキシド、銅エトキシド、マグネシウムエトキシド、マンガンメトキシド、ストロンチウムイソプロポキシド、錫エトキシド、亜鉛メトキシエトキシド、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、アンチモンエトキシド、ヒ素トリエトキシド、ビスマスt−ペントキシド、クロムイソプロポキシド、エルビウムメトキシエトキシド、ガリウムエトキシド、インジウムメトキシエトキシド、鉄エトキシド、ランタンイソプロポキシド、ネオジウムメトキシエトキシド、プラセオジムメトキシエトキシド、サマリウムイソプロポキシド、バナジウムトリイソブトキシドオキシド、イットリウムイソプロポキシド、テトラメトキシゲルマン、テトラエトキシゲルマン、テトライソプロポキシゲルマン、テトラ−n−ブトキシゲルマン、セリウム−t−ブトキシド、ハフニウムエトキシド、ハフニウム−n−ブトキシド、テルルエトキシド、モリブデンエトキシド、ニオブエトキシド、ニオブ−n−ブトキシド、タンタルメトキシド、タンタルエトキシド、タンタル−n−ブトキシド、タングステン(V)エトキシド、タングステン(VI)エトキシド、タングステン(VI)フェノキシド等が挙げられる。
【0068】
また、本発明に用いられる重縮合が可能な反応性金属化合物としては、分子種内に2つの金属原子を持つダブル金属アルコキシドと呼ばれる化合物でも良い。このようなダブル金属アルコキシドとしては、例えば、ゲレスト社製のアルミニウム銅アルコキシド、アルミニウムチタンアルコキシド、アルミニウムイットリウムアルコキシド、アルミニウムジルコニウムアルコキシド、バリウムチタンアルコキシド、バリウムイットリウムアルコキシド、バリウムジルコニウムアルコキシド、インジウム錫アルコキシド、リチウムニッケルアルコキシド、リチウムニオブアルコキシド、リチウムタンタルアルコキシド、マグネシウムアルミニウムアルコキシド、マグネシウムチタンアルコキシド、マグネシウムジルコニウムアルコキシド、ストロンチウムチタンアルコキシド、ストロンチウムジルコニウムアルコキシド等が挙げられるが、少なくとも、ケイ素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウムのいずれかの金属が含まれているものが好ましい。
【0069】
〈加水分解触媒〉
本発明の有機−無機ハイブリッドフィルムにおいて、無機化合物である加水分解重縮合可能な反応性金属化合物は、必要に応じて水と触媒を加えて加水分解を起こさせて縮合反応を促進してよい。
【0070】
しかし、フィルムのヘイズ、平面性、製膜速度、溶剤リサイクルなどの生産性の観点から、水分はドープ中に0.01重量%以上2.0重量%以下の範囲内とすることが好ましい。
【0071】
また、疎水的な加水分解重縮合可能な反応性金属化合物に水を添加する場合には、加水分解重縮合可能な反応性金属化合物と水が混和しやすいように、メタノール、エタノール、アセトニトリルのような親水性の有機溶媒も添加されていることが好ましい。また、セルロース誘導体とドープに加水分解重縮合可能な反応性金属化合物を混合する際に、ドープからセルロース誘導体が析出しないよう、該セルロース誘導体の良溶媒も添加されていることが好ましい。
【0072】
反応性金属化合物の加水分解を促進させる触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、酢酸、トリフロロ酢酸、レブリン酸、クエン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸等が用いられる。酸を添加し、ゾル・ゲル反応が進行した後に、塩基を加え中和しても良い。塩基を加え中和する場合、乾燥工程前でのアルカリ金属の含有量が5000ppm未満であることが好ましい(ここで、アルカリ金属とは、イオン状態のものを含む)。また、ルイス酸、例えばゲルマニウム、チタン、アルミニウム、アンチモン、錫などの金属の酢酸塩、その他の有機酸塩、ハロゲン化物、燐酸塩などを併用してもよい。
【0073】
また触媒として、このような酸類の代りに、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなど、DBU(ジアザビシクロウンデセン−1)、DBN(ジアザビシクロノネン)などのビシクロ環系アミン、アンモニア、ホスフィン、アルカリ金属アルコキシド、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム等の塩基を用いることができる。
【0074】
このような、酸またはアルカリ触媒の添加量としては特に制限はされないが、重縮合可能な反応性金属化合物の量に対して1.0〜20重量%が好ましい。また、酸及び塩基の処理を複数回行なっても良い。必要な加水分解を行なった後、触媒を中和してもよいし揮発性の触媒は減圧で除去してもよいし、分液水洗等により除去しても良い。
【0075】
なお、金属化合物の加水分解重縮合は、流延前の溶液状態で反応を完結させても良いし、フィルム状に流延してから反応を完結させても良いが、流延前に反応を完結させるのが良い。
【0076】
用途によって、反応は完全に終了しなくても良いが、できれば完結していた方が良い。加水分解重縮合の反応状態はNMRにて確認することができる。
【0077】
反応性金属化合物としてシリコンアルコキシドを用いる場合は、シリコンアルコキシドあるいはオルガノアルコキシシランを加水分解すると、OR基がOHに置換し、さらに他のSi−OHあるいはSi−ORと縮合する反応が起こるが、29−Si−NMRスペクトルには、それぞれに対応するピークが現れる。
【0078】
〈溶媒〉
本発明のセルロース誘導体及び加水分解重縮合可能な反応性金属化合物は溶媒に溶解させてドープを形成し、これを基材上に流延し、フィルムを形成させる。この際に押し出しあるいは流延後に溶媒を蒸発させる必要性があるため、揮発性の溶媒が好ましい。さらに、溶媒は、反応性金属化合物や触媒等と反応せず、かつ流延用基材を溶解しないものである。また、2種以上の溶媒を混合して用いても良い。また、セルロースエステルと加水分解重縮合可能な反応性金属化合物を各々別の溶媒に溶解した後に混合しても良い。
【0079】
ここで、上記セルロース誘導体に対して良好な溶解性を有する有機溶媒を良溶媒といい、また溶解に主たる効果を示し、その中で大量に使用する有機溶媒を主(有機)溶媒または主たる(有機)溶媒という。
【0080】
良溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、γ−ブチロラクトン等のエステル類の他、メチルセロソルブ、ジメチルイミダゾリノン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、ニトロエタン、塩化メチレン、アセト酢酸メチルなどが挙げられるが、1,3−ジオキソラン、THF、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸メチル及び塩化メチレンが好ましい。
【0081】
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40重量%の炭素原子数1〜4のアルコールを含有させることが好ましい。これらは、ドープを金属支持体に流延した後、溶媒が蒸発し始めてアルコールの比率が多くなることで、ウェブ(支持体上にセルロース誘導体のドープを流延した以降のドープ膜の呼び方をウェブとする)をゲル化させ、ウェブを丈夫にして、金属支持体から剥離することを容易にするゲル化溶媒として用いられたり、これらの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒のセルロース誘導体の溶解を促進したりする役割もあり、反応性金属化合物のゲル化、析出、粘度上昇を抑える役割もある。
【0082】
炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルを挙げることができる。これらのうち、ドープの安定性に優れ、沸点も比較的低く、乾燥性も良く、かつ毒性がないことなどからエタノールが好ましい。これらの有機溶媒は、単独ではセルロース誘導体に対して溶解性を有しておらず、貧溶媒という。
【0083】
このような条件を満たす好ましい高分子化合物であるセルロース誘導体を高濃度に溶解する溶剤として最も好ましい溶剤は塩化メチレン:エチルアルコールの比が95:5〜80:20の混合溶剤である。あるいは、酢酸メチル:エチルアルコール60:40〜95:5の混合溶媒も好ましく用いられる。
【0084】
本発明では、ドープ溶液の動的光散乱法で測定した場合のドープ内ポリマー粒子の多分散指数が0.5〜1.0であるドープを、金属支持体上に流延する。
【0085】
ここで、ドープ内ポリマー粒子の多分散指数が0.5未満では、架橋状態とは言えず、押され抑制効果が得られず、また偏光板での光漏れが発生しやすくなり、好ましくない。ドープ内ポリマー粒子の多分散指数が1.0を越えると、架橋が強すぎるため、ドープ粘度が高くなり、配管中の異物を押し出してしまい、押されが多発するため、好ましくない。また流延後のフィルムも硬くなり、流延後のエッジ部やインラインのスリットの断面よりフィルムの破片が飛散し、これがロールに付着した場合、押され故障の原因となり、好ましくない。
【0086】
なお、ドープ内ポリマー粒子の多分散指数の測定は、セルロース誘導体と、反応性金属化合物の重縮合物を、ドープに使用する溶媒と同組成のもので固形分濃度5%で溶解した溶液を、孔径0.2μmのメンブランフィルター(材質PTFE)で濾過し、動的光散乱測定器マルバーン社製HPPSにて、ドープ内ポリマー粒子の多分散指数を測定する。
【0087】
また本発明では、ドープ溶液の静的光散乱法で測定したドープ内ポリマー粒子の分子量が、50万〜500万であり、また回転半径(ポリマー分子の重心からの距離の重みつき平均値)が、50nm〜200nmである。
【0088】
ここで、ドープ内ポリマー粒子の分子量が50万未満で、かつ回転半径が50nm未満では、架橋状態とは言えず、押され抑制効果が得られず、また偏光板での光漏れが発生しやすくなり、好ましくない。ドープ内ポリマー粒子の分子量が500万を越え、かつ回転半径が200nmを越えると、ドープ粘度が高くなり、配管中の異物を押し出してしまい、押されが多発するため、好ましくない。また流延後のフィルムも硬くなり、流延後のエッジ部やインラインのスリットの断面よりフィルムの破片が飛散し、これがロールに付着した場合、押され故障の原因となり、好ましくない。
【0089】
なお、ドープ内ポリマー粒子の分子量と回転半径の測定は、セルロース誘導体と、反応性金属化合物の重縮合物を、ドープに使用する溶媒と同組成のもので固形分濃度1%、2%、3%、4%で溶解した各溶液を、測定角度20度、30度、40度、60度、90度、120度、150度で大塚電子製DLS−7000にて測定し、Zimmプロット法より解析する。解析に必要な溶媒の屈折率は、アッベ屈折率計より求め、屈折率の濃度勾配(dn/dc)は、大塚電子製DRM−1021で測定した。測定に用いたた溶媒、樹脂溶液は、孔径0.2μmのメンブランフィルター(材質PTFE)で濾過する。
【0090】
〈添加剤〉
本発明における有機−無機ハイブリッドフィルムには、フィルムに加工性・柔軟性・防湿性を付与する可塑剤、フィルムに滑り性を付与する微粒子(マット剤)、紫外線吸収機能を付与する紫外線吸収剤、フィルムの劣化を防止する酸化防止剤、フィルムのリタデーションを調整するリタデーション調整剤等を含有させても良い。
【0091】
〈可塑剤〉
本発明において使用する可塑剤しては、特に限定はないが、フィルムにヘイズを発生させたり、フィルムからブリードアウトあるいは揮発しないように、セルロース誘導体や加水分解重縮合が可能な反応性金属化合物の重縮合物と、水素結合などによって相互作用可能である官能基を有していることが好ましい。
【0092】
このような官能基としては、水酸基、エーテル基、カルボニル基、エステル基、カルボン酸残基、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、シアノ基、ニトロ基、スルホニル基、スルホン酸残基、ホスホニル基、ホスホン酸残基等が挙げられるが、好ましくはカルボニル基、エステル基、ホスホニル基である。
【0093】
このような可塑剤の例として、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤、カルボン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などを好ましく用いることができるが、特に好ましくは多価アルコールエステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤等の非リン酸エステル系可塑剤である。
【0094】
多価アルコールエステルは、2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。
【0095】
本発明に用いられる多価アルコールは、つぎの一般式(2)で表される。
【0096】
一般式(2) R−(OH)n
(ただし、Rはn価の有機基、nは2以上の正の整数を表す)
好ましい多価アルコールの例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0097】
好ましい多価アルコールの例としては、アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0098】
本発明の多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
【0099】
好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0100】
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることがさらに好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有させると、セルロース誘導体との相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
【0101】
好ましい脂肪族モノカルボン酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
【0102】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
【0103】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
【0104】
多価アルコールエステルの分子量は、特に制限はないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることが、さらに好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロース誘導体との相溶性の点では、小さい方が好ましい。
【0105】
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
【0106】
グリコレート系可塑剤は、特に限定されないが、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有するグリコレート系可塑剤を、好ましく用いることができる。好ましいグリコレート系可塑剤としては、例えばブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート等を用いることができる。
【0107】
リン酸エステル系可塑剤では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等を用いることができるが、本発明では、リン酸エステル系可塑剤を実質的に含有しないことが好ましい。
【0108】
ここで、「実質的に含有しない」とは、リン酸エステル系可塑剤の含有量が1重量%未満、好ましくは0.1重量%であり、特に好ましいのは添加していないことである。
【0109】
これらの可塑剤は、単独あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0110】
可塑剤の使用量は、1〜20重量%が好ましい。6〜16重量%がさらに好ましく、特に好ましくは8〜13重量%である。可塑剤の使用量が、セルロース誘導体に対して1重量%未満では、フィルムの透湿度を低減させる効果が少ないため、好ましくなく、20重量%を越えると、フィルムから可塑剤がブリードアウトし、フィルムの物性が劣化するため、好ましくない。
【0111】
〈マット剤〉
本発明におけるセルロース誘導体には、滑り性を付与するために、マット剤等の微粒子を添加するのが好ましい。微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられる。
【0112】
無機化合物の微粒子の例としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化錫等の微粒子が挙げられる。この中では、ケイ素原子を含有する化合物の微粒子であることが好ましく、特に二酸化ケイ素微粒子が好ましい。二酸化ケイ素微粒子としては、例えばアエロジル株式会社製のAEROSIL 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,R805、OX50、TT600などが挙げられる。
【0113】
有機化合物の微粒子の例としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素化合物樹脂、ウレタン樹脂等の微粒子が挙げられる。
【0114】
微粒子の1次粒径は、特に限定されないが、最終的にフィルム中での平均粒径は、0.05〜5.0μm程度が好ましい。さらに好ましくは、0.1〜1.0μmである。
【0115】
微粒子の平均粒径は、セルロースエステルフィルムを電子顕微鏡や光学顕微鏡で観察した際に、フィルムの観察場所における、粒子の長軸方向の長さの平均値を指す。フィルム中で観察される粒子であれば、1次粒子であっても、1次粒子が凝集した2次粒子であってもよいが、通常観察される多くは2次粒子である。
【0116】
測定方法の一例としては、1つのフィルムにつき、ランダムに10箇所の垂直断面写真を撮影し、各断面写真について、長軸長さが、0.05〜5μmの範囲にある100μm中の粒子個数をカウントする。このときカウントした粒子の長軸長さの平均値を求め、10箇所の平均値を平均した値を平均粒径とする。
【0117】
微粒子の場合は、1次粒径、溶媒に分散した後の粒径、フィルムに添加されたの粒径が変化する場合が多く、重要なのは、最終的にフィルム中で微粒子がセルロースエステルと複合し凝集して形成される粒径をコントロールすることである。
【0118】
上記微粒子の平均粒径が、5μmを超えた場合は、ヘイズの劣化等が見られたり、異物として巻状態での故障を発生する原因にもなる。また、微粒子の平均粒径が、0.05μm未満の場合は、フィルムに滑り性を付与するのが難しくなる。
【0119】
上記の微粒子は、セルロースエステルに対して、0.04〜0.5重量%添加して使用される。好ましくは、0.05〜0.3重量%、さらに好ましくは0.05〜0.25重量%添加して使用される。微粒子の添加量が0.04重量%以下では、フィルム表面粗さが平滑になりすぎて、摩擦係数の上昇によりブロッキングを発生する。微粒子の添加量が0.5重量%を超えると、フィルム表面の摩擦係数が下がりすぎて、巻き取り時に巻きズレが発生したり、フィルムの透明度が低く、ヘイズが高くなるため、液晶表示装置用フィルムとしての価値を持たなくなるので、上記の範囲が必須である。
【0120】
微粒子の分散は、微粒子と溶剤を混合した組成物を高圧分散装置で処理することが好ましい。本発明で用いる高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。
【0121】
高圧分散装置で処理することにより、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が980N/cm以上であることが好ましい。さらに好ましくは、装置内部の最大圧力条件が1960N/cm以上である。またその際、最高到達速度が100m/sec以上に達するもの、伝熱速度が100kcal/hr以上に達するものが、好ましい。
【0122】
上記のような高圧分散装置としては、例えばMicrofluidics Corporation社製の超高圧ホモジナイザー(商品名マイクロフルイダイザー)あるいはナノマイザー社製ナノマイザーが挙げられ、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えばイズミフードマシナリ製ホモゲナイザーなどが挙げられる。
【0123】
本発明において、微粒子は、低級アルコール類を25〜100重量%含有する溶剤中で分散した後、セルロースエステル(セルロース誘導体)を溶剤に溶解したドープと混合し、該混合液を支持体上に流延し、乾燥して製膜することを特徴とするセルロースエステルフィルムを得る。
【0124】
ここで、低級アルコールの含有比率としては、好ましくは50〜100重量%、さらに好ましくは75〜100重量%である。
【0125】
また、低級アルコール類の例としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。
【0126】
低級アルコール以外の溶媒としては、特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0127】
微粒子は、溶媒中で1〜30重量%の濃度で分散される。これ以上の濃度で分散すると、粘度が急激に上昇し、好ましくない。分散液中の微粒子の濃度としては、好ましく、5〜25重量%、さらに好ましくは、10〜20重量%である。
【0128】
〈紫外線吸収剤〉
フィルムの紫外線吸収機能は、液晶の劣化防止の観点から、偏光板保護フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルムなどの各種光学フィルムに付与されていることが好ましい。このような紫外線吸収機能は、紫外線を吸収する材料をセルロース誘導体中に含ませても良く、セルロース誘導体からなるフィルム上に紫外線吸収機能のある層を設けてもよい。
【0129】
本発明において、使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報に記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。
【0130】
紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
【0131】
本発明において、有用な紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0132】
また、紫外線吸収剤の市販品として、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)326(何れもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を、好ましく使用できる。
【0133】
また、本発明において使用し得る紫外線吸収剤であるベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0134】
本発明において、これらの紫外線吸収剤の配合量は、セルロースエステル(セルロース誘導体)に対して、0.01〜10重量%の範囲が好ましく、さらに0.1〜5重量%が好ましい。紫外線吸収剤の使用量が少なすぎると、紫外線吸収効果が不充分の場合があり、紫外線吸収剤の多すぎると、フィルムの透明性が劣化する場合があるので、好ましくない。紫外線吸収剤は熱安定性の高いものが好ましい。
【0135】
また、本発明の光学フィルムとしての有機−無機ハイブリッドフィルムに用いることのできる紫外線吸収剤は、特開平6−148430号公報及び特開2002−47357号公報に記載の高分子紫外線吸収剤(または紫外線吸収性ポリマー)を好ましく用いることができる。とりわけ特開平6−148430号公報に記載の一般式(1)、あるいは一般式(2)、あるいは特開2002−47357号公報に記載の一般式(3)(6)(7)で表される高分子紫外線吸収剤が、好ましく用いられる。
【0136】
〈酸化防止剤〉
酸化防止剤は、一般に、劣化防止剤ともいわれるが、光学フィルムとしての有機−無機ハイブリッドフィルム中に含有させるのが好ましい。すなわち、液晶画像表示装置などが高湿高温の状態に置かれた場合には、光学フィルムとしての有機−無機ハイブリッドフィルムの劣化が起こる場合がある。酸化防止剤は、例えば有機−無機ハイブリッドフィルム中の残留溶媒中のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸などにより有機−無機ハイブリッドフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、有機−無機ハイブリッドフィルム中に含有させるのが好ましい。
【0137】
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
【0138】
これらの化合物の添加量は、セルロース誘導体に対して重量割合で1ppm〜1.0重量%が好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
【0139】
〈製膜〉
以下、本発明に係わる光学フィルムとしての有機−無機ハイブリッドフィルムの好ましい製膜方法について述べる。有機−無機ハイブリッドフィルムは、溶液流延製膜方法により作製できる。
【0140】
図1は、本発明の光学フィルムの製造方法に係わる溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程、乾燥工程、及び巻取り工程を模式的に示すものである。なお、ここに示す例は、溶液流延製膜方法の一例であり、本発明の実施にあたっては、図1のプロセスに限定されることはない。
【0141】
1)溶解工程
はじめに、セルロース誘導体を含むドープの作製法を解説する。
【0142】
図1を参照すると、本発明においては、セルロース誘導体(フレーク状の)に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜4中で該セルロース誘導体、ポリマーや添加剤を攪拌しながら溶解し、ドープを形成する工程、あるいはセルロース誘導体溶液にポリマー溶液や添加剤溶液を混合してドープを形成する工程である。
【0143】
セルロース誘導体の溶解には、常圧で行なう方法、主溶媒の沸点以下で行なう方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行なう方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、または特開平9−95538号公報に記載のような冷却溶解法で行なう方法、特開平11−21379号公報に記載のような高圧で行なう方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行なう方法が好ましい。
【0144】
このときの温度は、溶媒の沸点〜80℃未満が好ましい。溶解時の温度と、その温度での保持時間を調整することで、動的光散乱法で測定するドープ内ポリマーの多分散指数、静的光散乱法で測定するドープ内ポリマーの分子量、回転半径の数値を調整することができる。ドープ中のセルロース誘導体の濃度は、10〜35重量%であるのが好ましい。
【0145】
つぎに、重縮合可能な反応性金属化合物を含むドープの作製法を解説する。
【0146】
図1を参照すると、本発明において、重縮合可能な反応性金属化合物の仕込釜1で、主ドープに添加する重縮合可能な反応性金属化合物の溶液を調製し、この重縮合可能な反応性金属化合物の溶液を送液ポンプ2aの作動により濾過器3に導き、濾過器3で重縮合可能な反応性金属化合物溶液を事前に濾過して、凝集物を除去した後、事前濾過後の重縮合可能な反応性金属化合物溶液を、上記の主ドープ溶解釜4へ導入して、セルロースエステル系樹脂溶液(ドープ)に添加する。
【0147】
重縮合可能な反応性金属化合物は、セルロース誘導体のドープに添加する際に、セルロース誘導体が析出しないように、セルロース誘導体のドープの主溶剤によって10〜50重量%に希釈されていることが好ましい。また同様の観点から、この主溶剤にセルロース誘導体が希薄に(10重量%以下)溶解されていても構わない。
【0148】
また、重縮合可能な反応性金属化合物に触媒・水などを添加する際には、重縮合可能な反応性金属化合物と混和しやすくなるように、メタノール、エタノール、メチルセロソルブのようなアルコール系の溶媒を、全溶媒量に対して50%以下の割合で添加しても良い。
【0149】
なお、可塑剤や紫外線吸収剤のような添加剤の全量または一部を、こちらのドープに添加する場合もある。
【0150】
つぎに、セルロース誘導体と重縮合可能な反応性金属化合物を含むドープの混合について解説する。
【0151】
別々の釜にて調製された、セルロース誘導体のドープと、重縮合可能な反応性金属化合物のドープは、それぞれ濾過後に混合してもよい。混合の順番には特に制限はないが、セルロース誘導体のドープをゆっくりと攪拌しながら、これに反応性金属化合物のドープを少量ずつ混合することが好ましい。
【0152】
本発明では、ドープの動的光散乱法でのドープ内ポリマー粒子の多分散指数を0.01〜0.5、静的光散乱法でのドープ内ポリマー粒子の分子量を50万〜500万、ドープ内ポリマー粒子の回転半径を50nm〜200nmにするために、ドープ温度を高くして架橋を促進させたり、温度を低くして、架橋反応を止めたり、調整することにより、目的の範囲に調整することができる。
【0153】
なお、高圧分散装置により微粒子と溶媒を混合した微粒子分散溶液(微粒子添加液)を別釜にて調製し、この微粒子分散溶液を主ドープ仕込み釜4へ導入して、セルロースエステル系樹脂溶液(ドープ)に、溶解時に添加するか、またはインライン混合する。
【0154】
その後、微粒子及び重縮合可能な反応性金属化合物を含むドープを、送液ポンプ2bの作動により主濾過器5に導いて濾過する。主濾過器5では、微粒子及び重縮合可能な反応性金属化合物を含むドープを、濾紙あるいは金属焼結フィルターなどの濾材で濾過する。濾過後の微粒子及び重縮合可能な反応性金属化合物を含むドープは、一旦、ドープストック釜である第1静置釜6に貯え、ついで送液ポンプ2cの作動により第2静置釜7に送ってそこで貯える。
【0155】
ここで、上記主ドープ溶解釜4での溶解時の温度と、その温度での保持時間、第1静置釜6及び第2静置釜7での温度と、その温度での保持時間をそれぞれ調整することで、動的光散乱法で測定するドープ内ポリマーの多分散指数、静的光散乱法で測定するドープ内ポリマーの分子量、回転半径の数値を調整することができる。
【0156】
その後、送液ポンプ2dの作動により第2静置釜7から微粒子及び重縮合可能な反応性金属化合物を含むドープを濾過器8に導いて濾過する。濾過器8では、微粒子及び重縮合可能な反応性金属化合物を含むドープを、濾紙あるいは金属焼結フィルターなどの濾材で濾過し、脱泡する。
【0157】
一方、添加液溶解釜9で作成した紫外線吸収剤添加液を送液ポンプ10の作動により濾過器11に導き、濾過器11で紫外線吸収剤添加液を濾過する。そして、上記2次濾過後の微粒子及び重縮合可能な反応性金属化合物を含むドープを、スタティックミキサー12に導入するとともに、スタティックミキサー12の手前において紫外線吸収剤添加液を導入して、微粒子及び重縮合可能な反応性金属化合物を含むドープに、紫外線吸収剤添加液をインライン添加する。紫外線吸収剤添加液を添加後の微粒子及び重縮合可能な反応性金属化合物を含むドープは、流延ダイ102に導入し、溶液流延製膜法によりセルロースエステルフィルムを作製する。
【0158】
なお、主ドープへの紫外線吸収剤添加液の添加は、主ドープ仕込み釜4に直接添加する場合もある。
【0159】
ここで、ドープ溶解から流延までの間で、その温度を保持する時間を調整するには、第1静置釜6及び第2静置釜7の液量を調整することで、釜からの払い出しポンプの流量との関係から、釜内部での滞留時間を調整することにより、達成可能となる。
【0160】
また、主ドープへの微粒子の添加は、主ドープ仕込み釜4に直接添加しても良いし、図1に示す添加液溶解釜9において微粒子添加液を調整した後、添加しても良い。
【0161】
添加液溶解釜9では、微粒子は、粉体のまま添加しても良いし、溶媒に分散して添加しても良いが、凝集物等の発生を抑えるためには、予め溶媒などに分散して添加するのが、好ましい。添加液溶解釜9において調整した微粒子添加液を送液ポンプ10の作動により濾過器11に導き、濾過器11で微粒子添加液を濾過する。そして、上記2次濾過後の微粒子及び重縮合可能な反応性金属化合物を含むドープに、スタティックミキサー12の手前において微粒子添加液を導入して、重縮合可能な反応性金属化合物を含むドープに、微粒子添加液をインライン添加する。
【0162】
以上のように、本発明において、動的光散乱法で測定するドープ内ポリマーの多分散指数、静的光散乱法で測定するドープ内ポリマーの分子量、ドープ内ポリマーの回転半径の数値は、重縮合可能な反応性金属化合物をドープに添加後のドープの温度とその温度を保持する時間により調整可能であり、その熱量が大きいほど、架橋状態が促進され、ドープ内ポリマーの多分散指数、分子量、回転半径などの数値は大きくなる傾向にある。ただし、そこで温度を高くしすぎると、架橋を促進しすぎて、ドープ粘度が高くなり、配管中の異物を押し出してしまい、押されが多発するため好ましくない。また、流延後のフィルムも硬くなり、流延後のエッジ部やインラインのスリットの断面よりフィルムの破片が飛散し、これがロールに付着した場合、押され故障の原因となるので、好ましくない。
【0163】
また本発明では、セルロース誘導体及び溶解に使用する溶媒の含水量を0.01〜0.5重量%にする必要がある。ここで、溶媒の含水量が0.01重量%未満であると、樹脂への乾燥設備や溶媒の純度向上のために莫大なコストがかかり、好ましくないばかりか、流延から巻き取りまでの工程やフィルムとなった状態での吸湿量が増加するため、寸法変化が大きくなり、好ましくない。溶媒の水分量が0.5重量%を越えると、架橋が阻害され、フィルム強度が弱くなるために、押されに対する耐性が弱くなり、好ましくない。
【0164】
本発明において、上記のようにして得られたドープを用い、以下に説明する流延工程を経てセルロースエステルフィルムを得ることができる。
【0165】
上記の図1を参照すると、101はエンドレスで走行する支持体を示す。支持体としては鏡面帯状金属が使用されている。102はセルロースエステル樹脂を溶媒に溶解したドープを、支持体1に流延するダイスを示す。103は支持体101に流延されたドープが固化したフィルムを剥離する剥離点を示し、104は剥離されたフィルムを示す。105はテンター搬送・乾燥工程を示す。106はロール搬送・乾燥工程を示す。107は巻き取られたロール状のフィルムを示す。
【0166】
2)流延工程
流延工程は、ドープを、例えば加圧型定量ギヤポンプなどの送液ポンプを通して加圧ダイ102に送液し、無限に移送する無端の金属ベルト、例えばステンレス鋼製ベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体101上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
【0167】
ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイ102には、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。
【0168】
金属支持体101の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために、加圧ダイ102を金属支持体101上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造の有機−無機ハイブリッドフィルムを得ることが好ましい。
【0169】
3)溶媒蒸発工程
ウェブ(ドープ膜)を金属支持体101上で加熱し、金属支持体101からウェブが剥離可能になるまで溶媒を蒸発させる工程である。
【0170】
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/または金属支持体101の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱の方法が、乾燥効率がよく、好ましい。また、上記の方法を組み合わせる方法も、好ましい。なお、裏面液体伝熱の方法による場合は、ドープ使用有機溶媒の主溶媒または最も低い沸点を有する有機溶媒の沸点以下で、加熱するのが好ましい。
【0171】
4)剥離工程
金属支持体101上で溶媒が蒸発したウェブ(フィルム)104を、剥離位置で剥離ロール103により剥離する工程である。剥離されたウェブ104は、次工程に送られる。なお、剥離する時点でのウェブ104の残留溶媒量(下記式)があまり大き過ぎると、剥離し難かったり、逆に、金属支持体101上で充分に乾燥させ過ぎてから剥離すると、途中でウェブの一部が剥がれたりする。
【0172】
ここで、製膜速度を上げる方法(残留溶媒量ができるだけ多いうちに剥離することで製膜速度を上げることができる)としては、ゲル流延法(ゲルキャスティング)がある。例えば、ドープ中にセルロース誘導体に対する貧溶媒を加えて、ドープ流延後、ゲル化する方法、金属支持体101の温度を低めてゲル化する方法等がある。金属支持体101上でゲル化させ、剥離時の膜の強度を上げておくことによって、剥離を早め、製膜速度を上げることができるのである。
【0173】
また、本発明では、ドープの状態で擬似的な架橋状態をつくることで、膜強度が強くなり、剥離が容易になるために、製膜速度を上げることができる。
【0174】
金属支持体101上でのウェブ乾燥条件の強弱、金属支持体101の長さ等により、ウェブの残留溶媒量が5〜150重量%の範囲で、ウェブを剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると、剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生しやすいため、経済速度とフィルム品質との兼ね合いで、ウェブ剥離時の残留溶媒量が決められる。
【0175】
本発明においては、金属支持体101上の剥離位置における温度を、−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
【0176】
また、金属支持体101上の剥離位置におけるウェブの残留溶媒量を10〜150重量%とすることが好ましく、さらに10〜120重量%とすることが好ましい。
【0177】
残留溶媒量は、下記の式で表わすことができる。
【0178】
残留溶媒量(重量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での重量、Nは重量Mのものを110℃で3時間乾燥させた時の重量である。
【0179】
5)乾燥及び延伸工程
剥離後、ウェブ104を、クリップ若しくはピンでウェブ104の両端を把持して搬送するテンター装置105、及び/または乾燥装置内に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置106を用いて、ウェブ104を乾燥する。
【0180】
本発明においては、幅手方向に対して1.0〜2.0倍延伸することが好ましく、テンター装置105を用いて延伸することが好ましい。さらに好ましくは、縦及び横方向に2軸延伸されたものである。延伸倍率は目的の光学特性(面内方向リタデーションRo、厚み方向リタデーションRt)に応じて設定される。また、位相差フィルムを製造する場合、長尺方向に一軸延伸することもできる。
【0181】
本発明の光学フィルムとしての有機−無機ハイブリッドフィルムは、面内方向リタデーション(Ro)が0〜1000nm、厚み方向リタデーション(Rt)が0〜500nmのフィルムを得ることができる。
【0182】
金属重縮合物をセルロース誘導体に添加することによって、延伸されたフィルムの膜厚あたりのリタデーション値Ro、Rtを大きくすることができ、これにより、位相差フィルムとして、高温若しくは高温高湿条件下でも、リタデーション値Ro、Rtの変動が少なく耐久性に優れ、より薄いフィルムを提供することができる。
【0183】
乾燥の手段は、ウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代りにマイクロウエーブを当てて加熱する手段もある。あまり急激な乾燥は、でき上がりのフィルムの平面性を損ねやすいので、好ましくない。全体を通して、通常、ウェブの乾燥温度は40〜250℃の範囲で行なわれる。使用する溶媒によって、乾燥温度、乾燥風量、及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組み合わせに応じて、乾燥条件を適宜選べばよい。
【0184】
6)巻き取り工程
ウェブ(フィルム)中の残留溶媒量が2重量%以下となってからセルロースエステルフィルムとして巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4重量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
【0185】
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0186】
膜厚の調節には、所望の厚さになるように、ドープ濃度、ポンプの送液量、ダイの口金のスリット間隙、ダイの押し出し圧力、流延用支持体の速度等をコントロールするのがよい。
【0187】
また、膜厚を均一にする手段として、膜厚検出手段を用いて、プログラムされたフィードバック情報を上記各装置にフィードバックさせて調節するのが、好ましい。
【0188】
フィルムの厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm〜1mm程度のものなど、任意の厚さのフィルムを作製することができる。好ましくは乾燥、延伸等の処理が終わった後の膜厚で10〜500μmが好ましく、特に30〜120μmが好ましい。
【0189】
本発明の光学フィルムは、幅1〜4mのものが好ましく用いられる。
【0190】
本発明の構成により、平面性にも優れた光学フィルムが得られるため、広幅のセルロースエステルフィルムで著しい効果が認められる。特にフィルム幅1.4〜4mのものが好ましく用いられ、特に好ましくはフィルム幅1.4〜2mである。フィルム幅が4mを超えると、搬送が困難となる。
【0191】
〈偏光板〉
つぎに、本発明による偏光板について述べる。
【0192】
本発明において、偏光板は、一般的な方法で作製することができる。すなわち、本発明の光学フィルムの裏面側をアルカリ鹸化処理し、処理した光学フィルムを、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光膜の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面にも該光学フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。
【0193】
ここで、もう一方の面側に用いられる偏光板保護フィルムとしては、KC8UX2MW、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC8UCR−3(コニカミノルタオプト株式会社製)等の市販のセルロースエステルフィルムが好ましく用いられる。
【0194】
本発明の光学フィルムに対して、もう一方の面に用いられる偏光板保護フィルムは、リタデーション測定時の光源波長が590nmで、面内リタデーションRoが20〜70nm、Rtが100〜400nmの位相差を有していることが好ましい。
【0195】
これらの偏光板保護フィルムは、例えば特開2002−71957号公報、及び特願2002−155395号公報記載の方法で作製することができる。あるいはさらに、ディスコチック液晶などの液晶化合物を配向させて形成した光学異方層を有している光学補償フィルムを兼ねる偏光板保護フィルムを用いることが好ましい。例えば特開2003−98348号公報記載の方法で光学異方性層を形成することができる。本発明の光学フィルムと組み合わせて使用することによって、平面性に優れ、安定した視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができる。
【0196】
偏光板の主たる構成要素である偏光膜とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これにはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
【0197】
偏光膜は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行なったものが用いられている。該偏光膜の面上に、本発明の光学フィルムの片面を貼り合わせて偏光板を形成する。好ましくは完全鹸化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせる。
【0198】
従来の光学フィルムを使用した偏光板は平面性に劣り、反射像を見ると、細かい波打ち状のむらが認められ、鉛筆硬度も2H程度しか得られず、温度60℃、湿度90%RHの条件での耐久性試験により、波打ち状のむらが増大した。
【0199】
これに対し、本発明の光学フィルムを用いた偏光板は、平面性に優れ、鉛筆硬度も優れているものであり、また、温度60℃、湿度90%RHの条件での耐久性試験によっても、波打ち状のむらが増加することはないものである。
【実施例】
【0200】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0201】
実施例1〜12
〈加水分解重縮合物溶液Aの調製〉
メチレンクロライド 9重量部
テトラメトキシシラン(反応性金属化合物1) 9重量部
アルミニウム−ジ−s−ブトキシドエチルアセチルアセトナート
(反応性金属化合物2) 2重量部
まず、上記の材料を、図1に示す重縮合可能な反応性金属化合物の仕込釜1で、室温で混合し、2時間攪拌して加水分解重縮合物溶液Aを調製した。この重縮合可能な反応性金属化合物の溶液を送液ポンプ2aの作動により濾過器3に導き、濾過器3で重縮合可能な反応性金属化合物溶液を事前に濾過して、凝集物を除去した。
【0202】
〈主ドープ液の調製〉
セルロースアセテートプロピオネート 100重量部
(セルロースエステル1)
(アセチル置換度:2.0,プロピオニル置換度:0.7)
溶剤A(メチレンクロライド) 433重量部
溶剤B(エタノール) 40重量部
トリメチロールプロパントリベンゾエート(第1可塑剤a) 9重量部
Td(1.0)=262℃
エチルフタリルエチルグリコレート(第2可塑剤b) 2重量部
Td(1.0)=172℃
(紫外線吸収剤)
(1):チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ社製)0.4重量部
(2):チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ社製)0.4重量部
(3):チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ社製)0.2重量部
加水分解重縮合物溶液(A) 8重量部
なお、可塑剤の熱分解温度:Td(1.0)値については、示差熱重量測定装置(セイコー電子工業社製TG/DTA200)で25℃〜300℃の範囲で10℃/分の昇温速度で測定し、加熱前の重量に対して1.0重量%減少した温度を、Td(1.0)とした。
【0203】
上記組成の主ドープ液を調製した。まず、加圧溶解タンク(主ドープ溶解釜)4に、溶剤Aと溶剤Bを添加した。溶剤Aの一部(約40重量部)は予め分けておき、加水分解重縮合物溶液を添加する際に加水分解重縮合物溶液と混合して添加した。
【0204】
つぎに、上記の溶剤の入った加圧溶解タンク(主ドープ溶解釜)4に、セルロースアセテートプロピオネートを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、さらに可塑剤及び紫外線吸収剤を添加、溶解させた。
【0205】
さらに、充分に攪拌しながら、(主ドープ溶解釜)4に、加水分解重縮合物溶液と溶剤の混合液をゆっくりと添加した。その後、紫外線吸収剤及び重縮合可能な反応性金属化合物を含むドープを、送液ポンプ2bの作動により主濾過器5に導いて濾過する。主濾過器5では、安積濾紙株式会社製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。濾過後の紫外線吸収剤及び重縮合可能な反応性金属化合物を含むドープは、一旦、ドープストック釜である第1静置釜6に貯え、ついで送液ポンプ2cの作動により第2静置釜7に送ってそこで貯える。静的光散乱及び動的光散乱測定用のドープは、ここでサンプリングした。
【0206】
(ドープ内ポリマー粒子の多分散指数)
サンプリングしたドープを、そのドープに使用する溶媒と同組成のもので固形分濃度5%に希釈した溶液を、孔径0.2μmのメンブランフィルター(材質PTFE)で濾過し、動的光散乱測定器マルバーン社製HPPSにて、ドープ内ポリマー粒子の多分散指数を測定した。得られた結果を、下記の表2に示した。
【0207】
(ドープ内ポリマー粒子の分子量と回転半径)
ドープ内ポリマー粒子の分子量と回転半径の測定は、サンプリングしたドープを、そのドープに使用する溶媒と同組成のもので固形分濃度1%、2%、3%、4%に希釈し、その各溶液を測定角度20度、30度、40度、60度、90度、120度、150度で大塚電子製DLS−7000にて測定し、Zimmプロット法より解析した。解析に必要な溶媒の屈折率はアッベ屈折率計より求め、屈折率の濃度勾配(dn/dc)は大塚電子製DRM−1021で測定した。測定に使用した溶媒、樹脂溶液は、孔径0.2μmのメンブランフィルター(材質PTFE)で濾過した。得られた結果を、下記の表2に示した。
【0208】
なお、本発明においては、ドープを動的光散乱法で測定したドープ内ポリマー粒子の多分散指数が0.5〜1.0であり、ドープを静的光散乱法で測定したドープ内ポリマー粒子の分子量が50万〜500万であり、ドープ内ポリマー粒子の回転半径(ポリマー分子の重心からの距離の重みつき平均値)が50nm〜200nmであるのが好ましく、また、セルロース誘導体の含水量、及びその溶解に使用する溶媒の含水量が、それぞれ0.01〜0.5重量%の範囲内であることが好ましい。
【0209】
そこで、これらの目標の数値範囲に入るように、セルロースアセテートプロピオネートの含水量、溶媒Aの含水量、溶媒Bの含水量、ドープ溶解釜4での溶解温度、溶解釜4での溶解温度保持時間、第1静置釜6の温度、第1静置釜6での滞留時間、第2静置釜7の温度、及び第2静置釜7での滞留時間を、表1に記載の条件で、それぞれ調整した。
【0210】
〈微粒子分散液の調製〉
アエロジルR972V(微粒子) 11重量部
(日本アエロジル社製 比表面積110m/g)
エタノール 89重量部
これらの材料をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行ない、微粒子分散液を作製した。
【0211】
〈微粒子添加液の調製〉
溶剤A(メチレンクロライド) 99重量部
セルロースアセテートプロピオネート 4重量部
微粒子分散液 11重量部
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに、セルロースアセテートプロピオネートを上記の配合量で添加し、加熱して完全に溶解させた後、これを安積濾紙株式会社製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。濾過後のセルロースアセテートプロピオネート溶液を、図1に示す溶解タンク(溶解釜)9に入れ、ここで充分に攪拌しながら、微粒子分散液を上記の配合量でゆっくりと添加した。さらに、2次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行なった。ついで、これを送液ポンプ10の作動により濾過器11に導き、濾過器11で日本精線株式会社製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液を調製した。
【0212】
その後、先に調製した主ドープ液100重量部に対して、この微粒子添加液5重量部を添加し、これらをインラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で充分に混合して、ドープを調製した。
【0213】
そして、この微粒子含有ドープを、図1に記載のベルト流延装置を用い、幅2mのステンレスバンド支持体101に均一に流延した。ステンレスバンド支持体101上で、残留溶媒量が110重量%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体101から剥離した。
【0214】
ステンレスバンド支持体101からのウェブの剥離の際、ウェブに張力をかけて、ウェブの縦延伸倍率が1.1倍となるように延伸し、ついで、ウェブをテンターに導き、該テンターでウェブ両端部を把持し、幅手方向の延伸倍率が1.1倍となるように、ウェブを延伸した。延伸後、その幅を維持したまま数秒間保持し、幅方向の張力を緩和させた後、テンターによる幅保持を解放し、さらに温度125℃に設定された第3乾燥ゾーンで30分間搬送させて乾燥を行ない、幅1.5m、かつ端部に幅1cm、高さ8μmのナーリングを有する膜厚70μmのセルロースアセテートプロピオネートフィルムを作製した。
【0215】
比較例1〜5
比較のために、上記実施例1〜12の場合と同様に実施するが、セルロースアセテートプロピオネートの含水量、溶媒Aの含水量、溶媒Bの含水量を、それぞれ本発明の範囲外である0.6重量%、あるいはまた1.5重量%として、セルロースアセテートプロピオネートフィルムを製膜した。なお、ドープ溶解釜4での溶解温度、溶解釜4での溶解温度保持時間、第1静置釜6の温度、第1静置釜6での滞留時間、第2静置釜7の温度、及び第2静置釜7での滞留時間は、表1に記載の条件で、それぞれ実施した。
【0216】
実施例13
上記実施例1の場合と同様に実施するが、第1可塑剤aとして、トリフェニルフォスフェート(可塑剤3):Td(1.0)=205℃を使用し、その他は、上記実施例1の場合と全く同様にして、セルロースアセテートプロピオネートフィルムを製膜した。
【0217】
比較例6
比較のために、上記実施例13の場合と同様に実施するが、セルロースアセテートプロピオネートの含水量、溶媒Aの含水量、溶媒Bの含水量を、それぞれ本発明の範囲外である0.6重量%として、セルロースアセテートプロピオネートフィルムを製膜した。
【0218】
実施例14
上記実施例1の場合と同様に実施するが、加水分解重縮合物溶液Aの代わりに、下記のようにして調製した加水分解重縮合物の溶液Bを使用した。
【0219】
〈加水分解重縮合物溶液Bの調製〉
水 1重量部
エタノール(溶媒B) 9重量部
テトラメトキシシラン(反応性金属化合物1) 9重量部
酢酸(触媒) 0.3重量部
上記の材料を、図1に示す重縮合可能な反応性金属化合物の仕込釜1で、室温で混合し、3時間攪拌して加水分解重縮合物溶液Bを調製した。この加水分解重縮合物溶液Bを使用し、その他は、上記実施例1の場合と全く同様にして、主ドープ液を調製し、セルロースアセテートプロピオネートフィルムを製膜した。
【0220】
比較例7
比較のために、上記実施例14の場合と同様に実施するが、セルロースアセテートプロピオネートの含水量、溶媒Aの含水量、溶媒Bの含水量を、それぞれ本発明の範囲外である0.6重量%として、セルロースアセテートプロピオネートフィルムを製膜した。
【0221】
実施例15
上記実施例1の場合と同様に実施するが、下記のセルロースエステル(2)を使用した。
【0222】
セルロースエステル(2)
セルローストリアセテート
(リンター綿から合成されたセルローストリアセテート
Mn=148000、Mw=310000、
Mw/Mn=2.1、アセチル基置換度2.92)
その他は、上記実施例1の場合と全く同様にして、セルローストリアセテートフィルムを製膜した。
【0223】
比較例8
比較のために、上記実施例15の場合と同様に実施するが、セルローストリアセテートの含水量、溶媒Aの含水量、溶媒Bの含水量を、それぞれ本発明の範囲外である0.6重量%として、セルローストリアセテートフィルムを製膜した。
【0224】
実施例16
上記実施例15の場合と同様に実施するが、第1可塑剤aとして、実施例13で用いたトリフェニルフォスフェート(可塑剤3):Td(1.0)=205℃を使用し、その他は、上記実施例15の場合と全く同様にして、セルローストリアセテートフィルムを製膜した。
【0225】
比較例9
比較のために、上記実施例16の場合と同様に実施するが、セルローストリアセテートの含水量、溶媒Aの含水量、溶媒Bの含水量を、それぞれ本発明の範囲外である0.6重量%として、セルローストリアセテートフィルムを製膜した。
【0226】
実施例17
上記実施例15の場合と同様に実施するが、加水分解重縮合物溶液Aの代わりに、実施例14で調製した加水分解重縮合物の溶液Bを使用し、その他は、上記実施例15の場合と全く同様にして、セルローストリアセテートフィルムを製膜した。
【0227】
比較例10
比較のために、上記実施例17の場合と同様に実施するが、セルローストリアセテートの含水量、溶媒Aの含水量、溶媒Bの含水量を、それぞれ本発明の範囲外である0.6重量%として、セルローストリアセテートフィルムを製膜した。
【0228】
比較例11
比較のために、上記実施例1の場合と同様に実施するが、加水分解重縮合物の溶液の添加なしに行ない、また、セルローストリアセテートの含水量、溶媒Aの含水量、溶媒Bの含水量を、それぞれ本発明の範囲外である0.6重量%として、セルロースアセテートプロピオネートフィルムを製膜した。
【表1】

【0229】
<セルロースエステルフィルムの評価>
上記実施例1〜17及び比較例1〜11で作製したセルロースエステルフィルム試料について、高温高圧下での寸法変化率及び押され故障を、下記に示す方法によって評価し、得られた結果を表2にまとめて示した。
【0230】
(寸法変化率)
セルロースエステルフィルム試料を、温度80℃、相対湿度90RH%の環境下に、50時間放置前後の寸法変化率を算出した。フィルムの長手方向と幅手方向で寸法変化率の大きな方を、ここでの寸法変化率とした。
【0231】
(押され故障)
剥離ロールに、押されの原因物質となるセルロースエステル粉体を付着させ、そこを通過したフィルムの巻き取り後の押され状変形度合いを目視で観察し、以下の5段階にランクづけして、評価した。
【0232】
ランク5:押されの形跡は、全く見えない
ランク4:ルーペで拡大して押されの形跡がなんとか確認できる
表面粗さ測定機(ZYGO社製New View5010
対物レ ンズ50倍 イメージズーム0.5倍)による観察では、 深さ0.1μm未満
ランク3:ルーペを使用しなくても押されの形跡が確認できる。表面粗さ測定 機による観察では、深さ0.1〜0.5μm
ランク2:押されの形跡が簡単に発見できる。表面粗さ測定機による観察では、 深さ0.5〜2.0μm
ランク1:押されの形跡がすぐに発見できる。表面粗さ測定機による観察では、 深さ2.0μm以上
つぎに、上記実施例1〜17及び比較例1〜11で作製したセルロースエステルフィルムを、偏光板保護フィルムとして用いて、偏光板を作製した。
【0233】
<偏光板の作製>
厚さ、120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、ついでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥し偏光膜を得た。
【0234】
ついで、下記工程1〜5に従って、偏光膜に、上記実施例1〜17及び比較例1〜11のセルロースエステルフィルムを貼り合わせ、裏面側には下記セルロースエステルフィルムを光学補償フィルムとして貼り合わせて、それぞれ偏光板を作製した。裏面側のセルロースエステルフィルムの位相差は、いずれも温度23℃、湿度55%RHの条件下、光源波長590nmで測定して、面内リタデーションRo=45nm、厚み方向のリタデーションRt=130nm、幅方向に遅相軸を有し、遅相軸のズレが±1度以内であった。
【0235】
工程1:上記実施例1〜17及び比較例1〜11のセルロースエステルフィルムを、温度60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、ついで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化したセルロースエステルフィルムを得た。
【0236】
工程2:偏光膜を、固形分2重量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
【0237】
工程3:工程2で偏光膜に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理したセルロースエステルフィルムの上にのせて配置した。
【0238】
工程4:工程3で積層したセルロースエステルフィルム101〜124と偏光膜と裏面側セルロースエステルフィルムを、圧力20〜30N/cm、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
【0239】
工程5:温度80℃の乾燥機中で、工程4で作製した偏光膜とセルロースエステルフィルム101〜124と裏面側セルロースエステルフィルムとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板を作製した。
【0240】
(裏面側セルロースエステルフィルムの作製)
上記の実施例1の場合とほゞ同様にして作製したセルロースアセテートプロピオネートフィルムを、偏光板の裏側保護フィルムとして使用した。
【0241】
ここで、上記の実施例1の場合と異なる点の1つは、主ドープ液の組成を下記のようにした点にある。
【0242】
〈主ドープ液〉
セルロースアセテートプロピオネート 100重量部
溶剤A(メチレンクロライド) 300重量部
溶剤B(エタノール) 57重量部
トリメチロールプロパントリベンゾエート(第1可塑剤a) 9.5重量部
エチルフタリルエチルグリコレート(第2可塑剤b) 2.2重量部
(紫外線吸収剤)
(1):チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ社製)1.1重量部
(3):チヌビン326(チバスペシャルティケミカルズ社製)0.6重量部
なお、加水分解重縮合物の溶液は、添加しなかった。
【0243】
また、上記実施例1の場合と異なるいま1つの点は、ステンレスバンド支持体101からのウェブの剥離の際、ウェブに張力をかけて、ウェブの縦(MD)延伸倍率が1.0倍となるように延伸した点、テンター104でウェブ両端部を把持し、幅手(TD)方向の延伸倍率が1.3倍となるようにウェブを延伸した点、、及びセルロースアセテートプロピオネートフィルムの膜厚を80μmとした点にある。
【0244】
上記のようにして得られた偏光板の各々について、それらの性能を効果するために、光漏れ量を測定し、得られた結果を下記の表2にあわせて示した。
【0245】
(光漏れ量:耐久性)
上記実施例1〜17及び比較例1〜11のセルロースエステルフィルムを、偏光板保護フィルムとして用いてそれぞれ作製した偏光板を、2枚1組として偏光板同士をクロスニコルに配置して、株式会社日立製作所製の分光光度計U3100を用いて、光源波長が590nmの透過率(T1)を測定した。さらに、偏光板を2枚とも、温度80℃の条件で500時間処理した後、上記と同様にして、クロスニコルに配置した時の透過率(T2)を測定して、サーモ処理前後の透過率の変化を調べ、次式に従って光漏れ量を測定した。
【0246】
光漏れ量(%)=T2(%)−T1(%)
なお、光漏れ量は、0〜5%であれば、実用上問題ないが、0〜4%であることが好ましく、さらに好ましくは0〜3%であり、0〜1%であることが特に好ましい。
【表2】

【0247】
上記表2の結果から明らかなように、本発明の実施例1〜17の光学フィルムとしてのセルロースエステルフィルムによれば、高温高湿下での寸法変化率が非常に小さく、高温高湿下の環境においても耐久性、特に寸法特性に優れている。また、フィルムの押され故障の発生が少なく、高残溶下(高残留溶媒量下)でも、金属支持体からのフィルム(ウェブ)剥離が良好である。このように、押され故障が発生しにくいため、光学フィルムとしてのセルロースエステルフィルムの生産速度を速くすることができ、生産効率が良いものであった。
【0248】
また、本発明の実施例1〜17の光学フィルムとしてのセルロースエステルフィルムを用いた偏光板では、耐久条件下においても光漏れの発生がなく、ひいては液晶表示装置(LCD)の品質の改善が可能であるものであった。
【0249】
これに対し、比較例1〜11のセルロースエステルフィルムでは、高温高湿下での寸法変化率が大きく、高温高湿下の環境における耐久性(寸法特性)に劣るものであり、かつフィルムの押され故障の発生が多いものであった。
【0250】
また、比較例1〜11のセルロースエステルフィルムを用いた偏光板では、耐久条件下において光漏れの発生し、液晶表示装置(LCD)の構成部材としての使用は難しいものであった。
【図面の簡単な説明】
【0251】
【図1】本発明の光学フィルムの製造方法に係わる溶液流延製膜法のドープ調製工程、流延工程、及び乾燥工程を模式的に示したフローシートである。
【符号の説明】
【0252】
1:重縮合可能な反応性金属化合物仕込み釜
2a〜2d:送液ポンプ
3:濾過器
4:主ドープ仕込み釜
5:主濾過器
6:第1静置釜
7:第2静置釜
8:濾過器
9:紫外線吸収剤溶解釜(または微粒子添加液調整釜)
10:送液ポンプ
11:濾過器
12:スタティックミキサー
101:金属支持体
102:流延ダイス
103:剥離ロール
104:ウェブ(フィルム)
105:テンター・乾燥装置
106:ロール搬送・乾燥装置
107:巻き取り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース誘導体と、反応性金属化合物の重縮合物とを溶媒に溶解したドープ(樹脂溶液)を、溶液流延製膜法により金属支持体上に流延する光学フィルムの製造方法であって、ドープを動的光散乱法で測定したドープ内の粒子の多分散指数が、0.5〜1.0である状態で、ドープを流延することを特徴とする、光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
ドープを静的光散乱法で測定したドープ内の粒子の分子量が50万〜500万であり、ドープ内の粒子の回転半径(ポリマー分子の重心からの距離の重みつき平均値)が50nm〜200nmであることを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
セルロース誘導体の含水量、及びその溶解に使用する溶媒の含水量が、それぞれ0.01〜0.5重量%の範囲内であることを特徴とする、請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
反応性金属化合物が、Si、Ti、ZrまたはAlよりなる群の中から選ばれた少なくとも1つの金属のアルコキシドであることを特徴とする、請求項1〜3のうちのいずれか一項記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一項記載の製造方法で製造されたことを特徴とする光学フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載の光学フィルムが、偏光フィルムの両側に配置された2枚の偏光板保護フィルムのうちの少なくともいずれか一方を構成するものであることを特徴とする偏光板。

【図1】
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【公開番号】特開2006−208516(P2006−208516A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17710(P2005−17710)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】