説明

光学フィルム、偏光板、及び液晶表示装置

【課題】光学的異方性(Re、Rth)が小さく実質的に光学的等方性であり、さらには光学的異方性(Re、Rth)の波長分散が小さくかつ延伸又は収縮した場合にも光学的異方性(Re、Rth)が小さい光学フィルムを提供すること。
【解決手段】Re(λ)およびRth(λ)が、下記式をみたし、アシル置換基がアセチル基のみからなり、その全置換度が2.50〜3.00であるセルロースアセテートからなることを特徴とする光学フィルム。
0≦Re(590)≦5かつ|Rth(590)|≦10
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置に有用な光学フィルムに関し、さらにそれを用いた光学補償フィルム、偏光板などの光学材料および表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セルロースアシレートフィルムはその強靭性と難燃性から写真用支持体や各種光学材料に用いられてきた。特に、近年は液晶表示装置用の光学透明フィルムとして多く用いられている。セルロースアシレートフィルムは、光学的に透明性が高いことと、光学的に等方性が高いことから、液晶表示装置のように偏光を取り扱う装置用の光学材料として優れており、これまで偏光子の保護フィルムや、斜め方向からの見た表示を良化(視野角補償)できる光学補償フィルムの支持体として用いられてきた。
【0003】
液晶表示装置用の部材のひとつである偏光板には偏光子の少なくとも片側に偏光子の保護フィルムが貼合によって形成されている。一般的な偏光子は延伸されたポリビニルアルコール(PVA)系フィルムをヨウ素または二色性色素で染色することにより得られる。多くの場合、偏光子の保護フィルムとしてはPVAに対して直接貼り合わせることができる、セルロースアシレートフィルム、なかでもトリアセチルセルロースフィルムが用いられている。この偏光子の保護フィルムは、光学的等方性に優れることが重要であり、偏光子の保護フィルムの光学特性が偏光板の特性を大きく左右する。
【0004】
最近の液晶表示装置においては、視野角特性の改善がより強く要求されるようになっており、偏光子の保護フィルムや光学補償フィルムの支持体などの光学透明フィルムは、より光学的に等方性であることが求められている。光学的に等方性であるとは、光学フィルムの複屈折と厚みの積で表されるレターデーション値が小さいことが重要である。とりわけ、斜め方向からの表示良化のためには、正面方向のレターデーション(Re)だけでなく、膜厚方向のレターデーション(Rth)を小さくする必要がある。具体的には光学透明フィルムの光学特性を評価した際に、フィルム正面から測定したReが小さく、角度を変えて測定してもそのReが変化しないことが要求される。
【0005】
この解決法として、PVAへの貼合適性に優れるセルロースアシレートフィルムを、より光学的異方性を低下させて改良することが強く望まれている。具体的には、セルロースアシレートフィルムの正面のReをほぼゼロとし、またレターデーションの角度変化も小さい、すなわちRthもほぼゼロとした、光学的に等方性である光学透明フィルムである。
【0006】
セルロースアシレートフィルムの製造において、一般的に製膜性能を良化するため可塑剤と呼ばれる化合物が添加される。可塑剤の種類としては、リン酸トリフェニル、リン酸ビフェニルジフェニルのようなリン酸トリエステル、フタル酸エステル類などが開示されている(例えば、非特許文献1参照)。これら可塑剤の中には、セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる効果を有するものが知られており、例えば、特定の脂肪酸エステル類が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、従来知られているこれらの化合物を用いたセルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる効果は十分とはいえない。
【0007】
また、最近の液晶表示装置において使用される二軸性の光学補償フィルムの作成法として、溶媒(溶剤)に溶解させて液状化した固体ポリマーを支持基材上に展開して乾燥させ、その固体化物からなるnx=nyないしnx≒nyの透明フィルムに延伸処理又は収縮処理の一方又は両方を施して面内で分子を配向させ、nx>ny>nzの特性を付与する方式が提案されており、この方式の場合には上記の光学的異方性を低下させるのみでは不十分であり、さらに、延伸処理または収縮処理をした場合にも光学的異方性を発現しないフィルムが求められている(特許文献2〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−247717号公報
【特許文献2】特開2003−315541号公報
【特許文献3】特開2003−344856号公報
【特許文献4】特開2004−46097号公報
【特許文献5】特開2004−78203号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】プラスチック材料講座、第17巻、日刊工業新聞社、「繊維素系樹脂」、121頁(昭和45年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の第1の課題は、光学的異方性(Re、Rth)が小さく実質的に光学的等方性である光学フィルムを提供することである。さらには光学的異方性(Re、Rth)の波長分散が小さくかつ延伸または収縮した場合にも光学的異方性(Re、Rth)が小さい光学フィルムを提供することである。
本発明の第2の課題は、光学的異方性が小さく、波長分散が小さい光学フィルムにより作製した光学補償フィルムや偏光板などの光学材料、およびこれらを用いた液晶表示装置および自発光型表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1. Re(λ)およびRth(λ)が、下記式をみたすことを特徴とする光学フィルム。
0≦Re(590)≦10かつ|Rth(590)|≦25
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
2. 前記光学フィルムが、式(IX)をみたすことを特徴とする上記(1)に記載の光学フィルム。
(IX)|ReMAX−ReMIN|≦3かつ|RthMAX−RthMIN|≦5
[式中、ReMAX、RthMAXは任意に切り出した1m四方のフィルムの最大レターデーション値(単位:nm)、ReMIN、RthMINは最小レターデーション値(単位:nm)である。]
3. 15%以上延伸または収縮した際のRe、およびRthの少なくとも一方の変化が0〜20nmであることを特徴とする上記1または2に記載の光学フィルム。
4. 0%以上15%未満の延伸または収縮時のRe、およびRthの少なくとも一方の変化が0〜10nmであることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の光学フィルム。
5. 下記式(IV)を満たすことを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載の光学フィルム。
(IV)|Re(400)−Re(700)|≦10かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35
6. 前記光学フィルムがセルロースアシレートからなり、且つ該セルロースアシレートのアシル置換基がアセチル基のみからなり、その全置換度が2.50〜3.00であり、その平均重合度が180〜700であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の光学フィルム。
7. 前記光学フィルムが、下記一般式(SE−1)〜(SE−3)で規定された要件をすべて満たすセルロースアシレートであることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の光学フィルム。
一般式(SE−1) 2.50≦SA+SB≦3.00
一般式(SE−2) 0≦SA≦2.5
一般式(SE−3) 0.5≦SB≦3.00
(一般式(SE−1)〜(SE−3)中、SAはアセチル基の置換度を、SBは炭素数3〜22の置換アシル基の置換度を表す。)
8. 前記光学フィルムがノルボルネン系高分子であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の光学フィルム。
9. 光弾性係数が、25×10-13cm2/dyne以下であることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載の光学フィルム。
10. アルカリ鹸化処理後の光学フィルム表面の接触角が55°以下であることを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載の光学フィルム。
11. 上記1〜10のいずれかに記載の光学フィルムに、Re(590)が0〜200nmであり、かつ|Rth(590)|が0〜400nmである光学異方性層を積層したことを特徴とする光学補償フィルム。
12. 前記光学異方性層がポリマーフィルムを含んでなることを特徴とする上記11に記載の光学補償フィルム。
13. 液状化した固体ポリマーを上記1〜10のいずれかに記載の光学フィルム上に展開および固定化し、その固体化物からなるnx≒nyの透明フィルムと光学フィルムとを有してなる積層体に延伸処理および/または収縮処理を施すことによりなる上記12に記載の光学補償フィルム。
14. 前記液状化した固体ポリマーの展開および固定化において、該液状化した固体ポリマーの溶剤として、上記1〜10のいずれかに記載の光学フィルムに対して溶解性を示す溶剤を使用したことを特徴とする上記13に記載の光学補償フィルム。
15. 上記14において、固定化後の固体ポリマーの厚みdrに対して、該光学フィルム表面から内部に浸透し、固体ポリマーと光学フィルムが融合した部位の厚みdyが、以下の条件を満たすことを特徴とする光学補償フィルム。
dr/2 > dy> dr/100
16. 前記延伸処理および/または収縮処理が、固体ポリマーおよび光学フィルムのTg以上の温度で行なわれたことを特徴とする上記13〜15のいずれかに記載の光学補償フィルム。
17. 上記13〜16のいずれかにおいて、光学フィルム上に液状化した固体ポリマーを展開および固定化させる前に前記光学フィルムを延伸処理および/または収縮処理し、更に、前記光学フィルム上に液状化した固体ポリマーを展開および固定化した後に、その固体化物からなるnx≒nyの透明フィルムと光学フィルムとを有してなる積層体に延伸処理および/または収縮処理を施すことによりなる光学補償フィルム。
18. 前記透明フィルムと光学フィルムを有してなる積層体の延伸処理および/または収縮処理が、前記光学フィルムの残留溶剤量が1.5質量%以下の状態で行われたことを特徴とする上記13〜17のいずれかに記載の光学補償フィルム。
19. 光学フィルム上に液状化した固体ポリマーを展開および固定化する前の光学フィルムの延伸処理および/または収縮処理が、前記光学フィルムの残留溶剤量が1.5質量%以上70質量%以下の状態で行われたことを特徴とする上記13〜18のいずれかに記載の光学補償フィルム。
20. 前記透明フィルムと光学フィルムを有してなる積層体の延伸処理および/または収縮処理後の前記透明フィルムおよび光学フィルムの残留溶剤量が、それぞれ1.5質量%以下であることを特徴とする上記13〜19のいずれかに記載の光学補償フィルム。
21. 上記12〜20において、ポリマーフィルムまたは固体ポリマーがポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド又はポリエステルイミドの少なくとも1種であることを特徴とする光学補償フィルム。
22. 光学異方性層が負の複屈折を示すポリマーを用いて形成されたことを特徴とする上記11〜21のいずれかに記載の光学補償フィルム。
23. 上記1〜10のいずれかに記載の光学フィルムまたは上記11〜22のいずれかに記載の光学補償フィルムの少なくとも1枚を、偏光子の少なくとも一方の保護フィルムとしたことを特徴とする偏光板。
24. 上記1〜10のいずれかに記載の光学フィルム、上記11〜22のいずれかに記載の光学補償フィルム、または上記23に記載の偏光板を用いたことを特徴とする液晶表示装置。
25. VAモードを用いたことを特徴とする上記24に記載の液晶表示装置。
26. 上記1〜10のいずれかに記載の光学フィルム、上記11〜22のいずれかに記載の光学補償フィルム、または上記23に記載の偏光板を用いたことを特徴とする自発光型表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、延伸または収縮しても光学異方性が小さく、ReおよびRthの波長分散が小さい光学フィルムを提供することができた。また、本発明の光学フィルムを光学補償フィルムの支持体として用いることにより、光学補償フィルムそのものの光学性能を引き出すことができた。さらに、本発明の光学フィルムを偏光板の保護フィルムとして用いることにより、偏光板の光学特性を良化できた。これらの偏光板や光学補償フィルムを液晶表示装置等の表示装置に用いることによって視野角特性および面状ムラを改良することができた。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の光学フィルムについて詳細に説明する。
本発明の光学フィルムは、Re(λ)およびRth(λ)が、下記式をみたすことを特徴とする。
0≦Re(590)≦10かつ|Rth(590)|≦25
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
本発明の光学フィルムのレターデーション値は、好ましくは0≦Re(590)≦5、且つ|Rth(590)|≦10であり、より好ましくは0≦Re(590)≦2、且つ|Rth(590)|≦3である。
光学フィルムのレターデーション値を上記の範囲とすることで、表示装置の視野角変化に対する色味変化が少なくなるという効果を奏する。
【0014】
本発明の光学フィルム形成にはポリマー材料を用いる。ポリマー材料としては、アセテート系ポリマー、ポリエーテルスルホンやポリスルホン、ポリカーボネートやポリノルボルネン、ポリオレフィンやアクリル系ポリマー、セルロース系樹脂やポリアリレート、ポリスチレンやポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン、液晶ポリマー、あるいはアクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系やエポキシ系やシリコーン系等の熱硬化型ないし紫外線硬化型の樹脂などが挙げられる。特にセルロースアシレートが好ましい。
【0015】
[セルロースアシレート原料綿]
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えばプラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、本発明の光学フィルムに対しては特に限定されるものではない。
【0016】
[セルロースアシレート置換度]
次に上述のセルロースを原料に製造される本発明の光学フィルムに好適なセルロースアシレートについて記載する。本発明において好ましいセルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたもので、その置換基はアシル基の炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。本発明で用いられるセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度を得ることができる。測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することが出来る。
上述のように本発明で用いられるセルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、セルロースの水酸基へのアシル置換度が2.50〜3.00であることがのぞましい。さらには置換度が2.75〜3.00であることがのぞましく、2.85〜3.00であることがよりのぞましい。
セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸のうち、炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されず、単一でも2種類以上の混合物でもよい。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブチリル、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブチリル、t−ブチリル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブチリル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが好ましく、アセチル、プロピオニル、ブチリルがより好ましい。
【0017】
アシル置換基がアセチル基のみでない場合の本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートは、下記の一般式(SE−1)〜(SE−3)で規定された要件をすべて満たすセルロースアシレートを挙げることができる。
一般式(SE−1) 2.50≦SA+SB≦3.00
一般式(SE−2) 0≦SA≦2.5
一般式(SE−3) 0.5≦SB≦3.00
(一般式(SE−1)〜(SE−3)中、SAはアセチル基の置換度を、SBは炭素数3〜22の置換アシル基の置換度を表す。)
【0018】
ここで、アシル基の置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)の合計を意味する。本発明では、好ましくは2.75≦SA+SB≦3.00であり、より好ましくは2.85≦SA+SB≦3.00である。また、SAは、好ましくは、0≦SA≦2.20であり、より好ましくは0≦SA≦2.0であり、SBは、好ましくは、0.80≦SB≦2.97であり、より好ましくは1.25≦SB≦2.97である。本発明においては、セルロースの2位、3位および6位のそれぞれの水酸基の置換度は特に限定されないが、セルロースアシレートの6位の置換度は好ましくは0.7以上であり、より好ましくは0.8以上であり、さらに好ましくは0.85以上である。これらによりセルロースアシレートの電子線照射による劣化だけでなく、溶解性および耐湿熱性を向上させることができる。
【0019】
次に本発明のセルロースアシレートの置換基SBで表される炭素数3〜22のアシル基は、脂肪族アシル基でも芳香族アシル基のいずれであってもよい。本発明のセルロースアシレートのアシル基が脂肪族アシル基である場合、炭素数3〜18であることが好ましく、炭素数3〜12であることがより好ましく、炭素数3〜8であることがさらに好ましい。これらの脂肪族アシル基の例としては、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、またはアルキニルカルボニル基などを挙げることができる。本発明のセルロースアシレートのアシル基が芳香族アシル基である場合、炭素数6〜22であることが好ましく、炭素数6〜18であることがより好ましく、炭素数6〜12であることがさらに好ましい。
【0020】
これらのアシル基は、それぞれさらに置換基を有していてもよい。好ましいアシル基の例としては、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブチリル基、t‐ブチリル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフタレンカルボニル基、フタロイル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、より好ましいものは、プロピオニル基、ブチリル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、t‐ブチリル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などであり、さらに好ましいものはプロピオニル基、ブチリル基である。
【0021】
本発明の一般式(SE−1)〜(SE−3)を全て満たすセルロースアシレートの好ましい例として、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロパノエートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート、セルロースアセテートヘキサノエート、セルロースアセテートオクタノエート、セルロースアセテートシクロヘキサノエート、セルロースアセテートデカノエート、セルロースアセテートアダマンタンカルボキシレート、セルロースアセテートサルフェート、セルロースアセテートカルバメート、セルロースプロピオネートサルフェート、セルロースアセテートプロピオネートサルフェート、セルロースアセテートフタレートなどを挙げることができる。より好ましくは、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロパノエートブチレート、セルロースアセテートヘキサノエート、セルロースアセテートオクタノエートなどを挙げることができる。さらに好ましくは、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートを挙げることができる。この場合、アセチルと炭素数3以上のアシル基の置換度は、前述した範囲で作成されたものであり、その置換度によって所望の特性(特に光学特性)を得ることができる。
【0022】
本発明の発明者が鋭意検討した結果、上述のセルロースの水酸基に置換するアシル置換基のうちで、実質的にアセチル基/プロピオニル基/ブチリル基の少なくとも2種類からなる場合においては、その全置換度が2.50〜3.00の場合にセルロースアシレートフィルムの光学異方性が低下できることがわかった。この場合のより好ましいアシル置換度は2.75〜3.00であり、さらにのぞましくは2.85〜3.00である。
【0023】
[セルロースアシレートの重合度]
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であり、セルロースアシレートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400が更に好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になる。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまう。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。特開平9−95538に詳細に記載されている。
【0024】
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがさらに好ましく、1.0〜1.6であることが最も好ましい。
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロース100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量部分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。本発明においてセルロースアシレートの製造の際には、含水率が好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.7質量%以下のセルロースアシレートを用いる。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており2.5〜5質量%が知られている。本発明でこのセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。本発明におけるこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。本発明で用いられるセルロースアシレートは置換基、置換度、重合度、分子量分布など前述した範囲であれば、単一あるいは異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いることができる。
本発明では、アシル置換基がアセチル基のみからなり、その全置換度が2.50〜3.00であり、その平均重合度が180〜700であるセルロースアシレートも好ましく用いられる。
【0025】
[セルロースアシレートへの添加剤]
本発明におけるセルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、光学的異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤など)を加えることができ、これらについて以下に説明する。またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
【0026】
[光学フィルムの光学的異方性を低下させる化合物の構造的特徴]
光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させるために好適な化合物について説明する。本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、フィルム中のセルロースアシレートが面内および膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を用いて光学的異方性を十分に低下させ、ReがゼロかつRthがゼロに近くなるようにした。このためには光学的異方性を低下させる化合物はセルロースアシレートに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物には次の一般式(1)〜(19)で表される化合物が挙げられる。
【0027】
【化1】

【0028】
式中、R11−13はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20の脂肪族基を表す。R11−13は互いに連結して環を形成してもよい。
【0029】
【化2】

【0030】
一般式(2)および(3)において、Zは炭素原子、酸素原子、硫黄原子または−NR25−を表し、R25は水素原子またはアルキル基を表す。Zを含んで構成される5または6員環は置換基を有していても良い。Y21−22はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20の、エステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基またはカルバモイル基を表し、Y21−22は互いに連結して環を形成してもよい。mは1〜5の整数を表し、nは1〜6の整数を表す。
【0031】
【化3】

【0032】
一般式(4)〜(12)において、Y31−70はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20のエステル基、炭素数が1ないし20のアルコキシカルボニル基、炭素数が1ないし20のアミド基、炭素数が1ないし20のカルバモイル基またはヒドロキシ基を表し、V31−43はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1ないし20の脂肪族基を表す。L31−80はそれぞれ独立に、原子数0ないし40かつ、炭素数0ないし20の2価の飽和の連結基を表す。ここで、L31−80の原子数が0であるということは、連結基の両端にある基が直接に単結合を形成していることを意味する。V31−43およびL31−80は、さらに置換基を有していてもよい。
【0033】
【化4】

【0034】
[式中、R1はアルキル基またはアリール基を表し、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。R1、R2およびR3の炭素原子数の総和は10以上であり、各々、アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい。]
【0035】
【化5】

【0036】
[式中、R4およびR5は、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を表す。R4およびR5の炭素原子数の総和は10以上であり、各々、アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい。]
【0037】
【化6】

【0038】
[式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。Xは下記の連結基群1から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。Yは水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。(連結基群1)単結合、−O−、−CO−、−NR4−、アルキレン基またはアリーレン基を表す。R4は水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。]
【0039】
【化7】

【0040】
(式中、Q1、Q2およびQ3はそれぞれ独立に5ないし6員環を表す。XはB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、N、P、P=Oを表す。)
【0041】
【化8】

【0042】
(式中、X2はB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、Nを表す。R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34ないしR35は水素原子または置換基を表す。)
【0043】
【化9】

【0044】
[式中、R1はアルキル基またはアリール基を表し、R2およびR3はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。また、アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい。]
【0045】
一般式(18)として好ましくは下記一般式(19)で表される化合物である。
【0046】
【化10】

【0047】
上記一般式(19)において、R4、R5およびR6はそれぞれ独立にアルキル基またはアリール基を表す。ここで、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数が1乃至20のものが好ましく、1乃至15のものがさらに好ましく、1乃至12のものが最も好ましい。環状のアルキル基としては、シクロヘキシル基が特に好ましい。アリール基は炭素原子数が6乃至36のものが好ましく、6乃至24のものがより好ましい。
【0048】
上記のアルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよく、置換基としてはハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基およびアシルアミノ基が好ましく、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホニルアミノ基およびアシルアミノ基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基、スルホニルアミノ基およびアシルアミノ基である。
【0049】
[光学フィルムへの添加剤]
本発明の光学フィルムは前記で挙げたポリマー材料における熱可塑性のポリマー樹脂を熱溶融して製膜しても良いし、ポリマーを均一に溶解した溶液から溶液製膜(ソルベントキャスト法)によって製膜しても良い。熱溶融製膜の場合は種々の添加剤(例えば、光学的異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤など)を熱溶融時に加えることができる。一方、光学フィルムを溶液から調整する場合は、ポリマー溶液(以下、ドープという)には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、光学的異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤など)を加えることができ、これらについて以下に説明する。またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
【0050】
[光学フィルムの光学的異方性を低下させる化合物]
本発明では光学フィルムの光学的異方性、とくに下記式(i)で表されるフィルム膜厚方向のレターデーションRthを低下させる化合物を、下記式(ii)、(iii)をみたす範囲で少なくとも一種含有することを特徴とする。
(i)Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
(ii)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−1.0
(iii)0.1≦A≦30
上記式(ii)、(iii)は
(ii)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−2.0
(iii)0.1≦A≦25
であることがよりのぞましく、
(ii)(Rth(A)−Rth(0))/A≦−3.0
(iii)0.1≦A≦20
であることがさらにのぞましい。
[式中、Rth(A)はRthを低下させる化合物をA%含有したフィルムのRth(nm)、Rth(0)はRthを低下させる化合物を含有しないフィルムのRth(nm)、A:フィルム原料ポリマーの質量を100としたときの化合物の質量(%)である。]
【0051】
(Log P値)
本発明の光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムを作製するにあたっては、上述のようにフィルム中のセルロースアシレートが面内および膜厚方向に配向するのを抑制して光学異方性を低下させる化合物のうち、オクタノール−水分配係数(logP値)が0ないし7である化合物が好ましい。logP値が7を超える化合物は、セルロースアシレートとの相溶性に乏しく、フィルムの白濁や粉吹きを生じやすい。また、logP値が0よりも小さな化合物は親水性が高いために、セルロースアシレートフィルムの耐水性を悪化させる場合がある。logP値としてさらに好ましい範囲は1ないし6であり、特に好ましい範囲は1.5ないし5である。
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen's fragmentation法( J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)、Viswanadhan's fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989).)、Broto's fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.- Chim.Theor.,19,71(1984).)などが好ましく用いられるが、Crippen's fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)がより好ましい。ある化合物のlogPの値が測定方法あるいは計算方法により異なる場合に、該化合物が所望の範囲内であるかどうかは、Crippen's fragmentation法により判断することが好ましい。
【0052】
[光学的異方性を低下する化合物の物性]
光学異方性を低下させる化合物は、芳香族基を含有しても良いし、含有しなくても良い。また光学異方性を低下させる化合物は、分子量が150以上3000以下であることが好ましく、170以上2000以下であることが好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
光学異方性を低下させる化合物は、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、さらに好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。また光学異方性を低下させる化合物は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
【0053】
光学異方性を低下させる化合物の添加量は、セルロースアシレートの0.01ないし30質量%であることが好ましく、1ないし25質量%であることがより好ましく、5ないし20質量%であることが特に好ましい。
光学異方性を低下させる化合物は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
光学異方性を低下させる化合物を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
【0054】
光学異方性を低下させる化合物は、少なくとも一方の側の表面から全膜厚の10%までの部分における該化合物の平均含有率が、該セルロースアシレートフィルムの中央部における該化合物の平均含有率の80−99%である。光学異方性を低下させる化合物の存在量は、例えば、特開平8−57879号公報に記載の赤外吸収スペクトルを用いる方法などにより表面および中心部の化合物量を測定して求めることができる。
【0055】
以下に本発明で好ましく用いられる、光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムの光学異方性を低下させる化合物の具体例を示すが、本発明はこれら化合物に限定されない。
一般式(1)の化合物について説明する。
一般式(1)において、R11−13はそれぞれ独立に、炭素数が1ないし20の脂肪族基を表す。R11−13は互いに連結して環を形成してもよい。
R11−13について詳しく説明する。R11−13は炭素数が1ないし20、好ましくは炭素数が1ないし16、さらに好ましくは炭素数が1ないし12である脂肪族基である。ここで、脂肪族基とは、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは、アルキル基(鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含む。)、アルケニル基またはアルキニル基である。例として、アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、シクロペンチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イルなどが挙げられ、アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルなどが挙げられ、アルキニル基としては、例えば、エチニル、プロパルギルなどが挙げられる。
【0056】
R11−13で表される脂肪族基は置換されていてもよく、置換基の例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子)、アルキル基(直鎖、分岐、環状のアルキル基で、ビシクロアルキル基、活性メチン基を含む)、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基(置換する位置は問わない)、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロ環オキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アシルカルバモイル基、N−スルホニルカルバモイル基、N−カルバモイルカルバモイル基、N−スルファモイルカルバモイル基、カルバゾイル基、カルボキシ基またはその塩、オキサリル基、オキサモイル基、シアノ基、カルボンイミドイル基(Carbonimidoyl基)、ホルミル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基(エチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、スルホニルオキシ基、アミノ基、(アルキル、アリールまたはヘテロ環)アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、イミド基、(アルコキシもしくはアリールオキシ)カルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、アンモニオ基、オキサモイルアミノ基、N−(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、N−アシルウレイド基、N−アシルスルファモイルアミノ基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニオ基、イミダゾリオ基、キノリニオ基、イソキノリニオ基)、イソシアノ基、イミノ基、(アルキルまたはアリール)スルホニル基、(アルキルまたはアリール)スルフィニル基、スルホ基またはその塩、スルファモイル基、N−アシルスルファモイル基、N−スルホニルスルファモイル基またはその塩、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基等が挙げられる。
これらの基はさらに組み合わされて複合置換基を形成してもよく、このような置換基の例としては、エトキシエトキシエチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、エトキシカルボニルエチル基などを挙げることができる。また、R11−13は置換基としてリン酸エステル基を含有することもでき、一般式(1)の化合物は同一分子中に複数のリン酸エステル基を有することも可能である。
【0057】
一般式(2)および(3)の化合物について説明する。
一般式(2)および(3)において、Zは炭素原子、酸素原子、硫黄原子、−NR25−を表し、R25は水素原子またはアルキル基を表す。Zを含んで構成される5または6員環は置換基を有していても良く、複数の置換基が互いに結合して環を形成していてもよい。Zを含んで構成される5または6員環の例としては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオフェン、チアン、ピロリジン、ピペリジン、インドリン、イソインドリン、クロマン、イソクロマン、テトラヒドロ−2−フラノン、テトラヒドロ−2−ピロン、4−ブタンラクタム、6−ヘキサノラクタムなどを挙げることができる。
また、Zを含んで構成される5または6員環は、ラクトン構造またはラクタム構造、すなわち、Zの隣接炭素にオキソ基を有する環状エステルまたは環状アミド構造を含む。このような環状エステルまたは環状アミド構造の例としては、2−ピロリドン、2−ピペリドン、5−ペンタノリド、6−ヘキサノリドを挙げることができる。
【0058】
R25は水素原子または、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であるアルキル基(鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含む。)を表す。R25で表されるアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、シクロペンチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イルなどを挙げることができる。R25で表されるアルキル基はさらに置換基を有していてもよく、置換基の例としては前記のR11−13に置換していても良い基を挙げることができる。
【0059】
Y21−22はそれぞれ独立に、エステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基またはカルバモイル基を表す。エステル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、n−ブチルカルボニルオキシ、iso−ブチルカルボニルオキシ、t−ブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、n−ペンチルカルボニルオキシ、t−アミルカルボニルオキシ、n−ヘキシルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ、1−エチルペンチルカルボニルオキシ、n−ヘプチルカルボニルオキシ、n−ノニルカルボニルオキシ、n−ウンデシルカルボニルオキシ、ベンジルカルボニルオキシ、1−ナフタレンカルボニルオキシ、2−ナフタレンカルボニルオキシ、1−アダマンタンカルボニルオキシなどが例示できる。アルコキシカルボニル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、iso−ブチルオキシカルボニル、sec−ブチルオキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、t−アミルオキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、1−エチルプロピルオキシカルボニル、n−オクチルオキシカルボニル、3,7−ジメチル−3−オクチルオキシカルボニル、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシカルボニル、4−t−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル、2,4−ジメチルペンチル−3−オキシカルボニル、1−アダマンタンオキシカルボニル、2−アダマンタンオキシカルボニル、ジシクロペンタジエニルオキシカルボニル、n−デシルオキシカルボニル、n−ドデシルオキシカルボニル、n−テトラデシルオキシカルボニル、n−ヘキサデシルオキシカルボニルなどが例示できる。アミド基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセタミド、エチルカルボキサミド、n−プロピルカルボキサミド、イソプロピルカルボキサミド、n−ブチルカルボキサミド、t−ブチルカルボキサミド、iso−ブチルカルボキサミド、sec−ブチルカルボキサミド、n−ペンチルカルボキサミド、t−アミルカルボキサミド、n−ヘキシルカルボキサミド、シクロヘキシルカルボキサミド、1−エチルペンチルカルボキサミド、1−エチルプロピルカルボキサミド、n−ヘプチルカルボキサミド、n−オクチルカルボキサミド、1−アダマンタンカルボキサミド、2−アダマンタンカルボキサミド、n−ノニルカルボキサミド、n−ドデシルカルボキサミド、n−ペンタカルボキサミド、n−ヘキサデシルカルボキサミドなどが例示できる。カルバモイル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、n−プロピルカルバモイル、イソプロピルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、t−ブチルカルバモイル、iso−ブチルカルバモイル、sec−ブチルカルバモイル、n−ペンチルカルバモイル、t−アミルカルバモイル、n−ヘキシルカルバモイル、シクロヘキシルカルバモイル、2−エチルヘキシルカルバモイル、2−エチルブチルカルバモイル、t−オクチルカルバモイル、n−ヘプチルカルバモイル、n−オクチルカルバモイル、1−アダマンタンカルバモイル、2−アダマンタンカルバモイル、n−デシルカルバモイル、n−ドデシルカルバモイル、n−テトラデシルカルバモイル、n−ヘキサデシルカルバモイルなどが例示できる。Y21−22は互いに連結して環を形成してもよい。Y21−22はさらに置換基を有していてもよく、例としては前記のR11−13に置換していても良い基を挙げることができる。
mは1〜5であり、nは1〜6である。
【0060】
一般式(4)〜(12)の化合物について説明する。
一般式(4)〜(12)において、Y31−70はそれぞれ独立に、エステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、カルバモイル基またはヒドロキシ基を表す。エステル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、n−ブチルカルボニルオキシ、iso−ブチルカルボニルオキシ、t−ブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、n−ペンチルカルボニルオキシ、t−アミルカルボニルオキシ、n−ヘキシルカルボニルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ、1−エチルペンチルカルボニルオキシ、n−ヘプチルカルボニルオキシ、n−ノニルカルボニルオキシ、n−ウンデシルカルボニルオキシ、ベンジルカルボニルオキシ、1−ナフタレンカルボニルオキシ、2−ナフタレンカルボニルオキシ、1−アダマンタンカルボニルオキシなどが挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n−プロピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、n−ブトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、iso−ブチルオキシカルボニル、sec−ブチルオキシカルボニル、n−ペンチルオキシカルボニル、t−アミルオキシカルボニル、n−ヘキシルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニルなど、1−エチルプロピルオキシカルボニル、n−オクチルオキシカルボニル、3,7−ジメチル−3−オクチルオキシカルボニル、3,5,5−トリメチルヘキシルオキシカルボニル、4−t−ブチルシクロヘキシルオキシカルボニル、2,4−ジメチルペンチル−3−オキシカルボニル、1−アダマンタンオキシカルボニル、2−アダマンタンオキシカルボニル、ジシクロペンタジエニルオキシカルボニル、n−デシルオキシカルボニル、n−ドデシルオキシカルボニル、n−テトラデシルオキシカルボニル、n−ヘキサデシルオキシカルボニルなどが挙げられる。アミド基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、アセタミド、エチルカルボキサミド、n−プロピルカルボキサミド、イソプロピルカルボキサミド、n−ブチルカルボキサミド、t−ブチルカルボキサミド、iso−ブチルカルボキサミド、sec−ブチルカルボキサミド、n−ペンチルカルボキサミド、t−アミルカルボキサミド、n−ヘキシルカルボキサミド、シクロヘキシルカルボキサミド、1−エチルペンチルカルボキサミド、1−エチルプロピルカルボキサミド、n−ヘプチルカルボキサミド、n−オクチルカルボキサミド、1−アダマンタンカルボキサミド、2−アダマンタンカルボキサミド、n−ノニルカルボキサミド、n−ドデシルカルボキサミド、n−ペンタカルボキサミド、n−ヘキサデシルカルボキサミドなどが挙げられる。カルバモイル基としては、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12であり、例えば、メチルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、エチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、n−プロピルカルバモイル、イソプロピルカルバモイル、n−ブチルカルバモイル、t−ブチルカルバモイル、iso−ブチルカルバモイル、sec−ブチルカルバモイル、n−ペンチルカルバモイル、t−アミルカルバモイル、n−ヘキシルカルバモイル、シクロヘキシルカルバモイル、2−エチルヘキシルカルバモイル、2−エチルブチルカルバモイル、t−オクチルカルバモイル、n−ヘプチルカルバモイル、n−オクチルカルバモイル、1−アダマンタンカルバモイル、2−アダマンタンカルバモイル、n−デシルカルバモイル、n−ドデシルカルバモイル、n−テトラデシルカルバモイル、n−ヘキサデシルカルバモイルなどが挙げられる。Y31−70はさらに置換基を有していてもよく、例としては前記のR11−13に置換していても良い基を挙げることができる。
【0061】
V31−43はそれぞれ独立に水素原子または、好ましくは炭素数が1ないし20、さらに好ましくは炭素数が1ないし16、特に好ましくは、炭素数が1ないし12である脂肪族基を表す。ここで、脂肪族基とは、好ましくは脂肪族炭化水素基であり、さらに好ましくは、アルキル基(鎖状、分岐状および環状のアルキル基を含む。)、アルケニル基またはアルキニル基である。アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、t−アミル、n−ヘキシル、n−オクチル、デシル、ドデシル、エイコシル、2−エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、2,6−ジメチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、シクロペンチル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イルなどが挙げられ、アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルなどが挙げられ、アルキニル基としては、例えば、エチニル、プロパルギルなどを挙げることができる。V31−43はさらに置換基を有していてもよく、例としては前記のR11−13に置換していても良い基を挙げることができる。
【0062】
L31−80はそれぞれ独立に、原子数0ないし40かつ、炭素数0ないし20の2価の飽和の連結基を表す。ここで、L31−80の原子数が0であるということは、連結基の両端にある基が直接に単結合を形成していることを意味する。L31−80の好ましい例としては、アルキレン基(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、メチルエチレン、エチルエチレンなど)、環式の2価の基(例えば、cis−1,4−シクロヘキシレン、trans−1,4−シクロヘキシレン、1,3−シクロペンチリデンなど)、エーテル、チオエーテル、エステル、アミド、スルホン、スルホキシド、スルフィド、スルホンアミド、ウレイレン、チオウレイレンなどを挙げることができる。これらの2価の基は互いに結合して二価の複合基を形成してもよく、複合置換基の例としては、−(CH22O(CH22−、−(CH22O(CH22O(CH2)−、−(CH22S(CH22−、−(CH222C(CH22−などを挙げることができる。L31−80は、さらに置換基を有していてもよく、置換基の例としては、前記のR11−13に置換していても良い基を挙げることができる。
【0063】
一般式(4)〜(12)においてY31−70、V31−43およびL31−80の組み合わせにより形成される化合物の好ましい例としては、クエン酸エステル(例えば、O−アセチルクエン酸トリエチル、O−アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、O−アセチルクエン酸トリ(エチルオキシカルボニルメチレン)エステルなど)、オレイン酸エステル(例えば、オレイン酸エチル、オレイン酸ブチル、オレイン酸2−エチルヘキシル、オレイン酸フェニル、オレイン酸シクロヘキシル、オレイン酸オクチルなど)、リシノール酸エステル(例えばリシノール酸メチルアセチルなど)、セバシン酸エステル(例えばセバシン酸ジブチルなど)、グリセリンのカルボン酸エステル(例えば、トリアセチン、トリブチリンなど)、グリコール酸エステル(例えば、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、メチルフタリルメチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートなど)、ペンタエリスリトールのカルボン酸エステル(例えば、ペンタエリスリトールテトラアセテート、ペンタエリスリトールテトラブチレートなど)、ジペンタエリスリトールのカルボン酸エステル(例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアセテート、ジペンタエリスリトールヘキサブチレート、ジペンタエリスリトールテトラアセテートなど)、トリメチロールプロパンのカルボン酸エステル類(トリメチロールプロパントリアセテート、トリメチロールプロパンジアセテートモノプロピオネート、トリメチロールプロパントリプロピオネート、トリメチロールプロパントリブチレート、トリメチロールプロパントリピバロエート、トリメチロールプロパントリ(t−ブチルアセテート)、トリメチロールプロパンジ2−エチルヘキサネート、トリメチロールプロパンテトラ2−エチルヘキサネート、トリメチロールプロパンジアセテートモノオクタネート、トリメチロールプロパントリオクタネート、トリメチロールプロパントリ(シクロヘキサンカルボキシレート)など)、特開平11−246704公報に記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号公報に記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号公報に記載のクエン酸エステル類、ピロリドンカルボン酸エステル類(2−ピロリドン−5−カルボン酸メチル、2−ピロリドン−5−カルボン酸エチル、2−ピロリドン−5−カルボン酸ブチル、2−ピロリドン−5−カルボン酸2−エチルヘキシル)、シクロヘキサンジカルボン酸エステル(cis−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、trans−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、cis−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチル、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジブチルなど)、キシリトールカルボン酸エステル(キシリトールペンタアセテート、キシリトールテトラアセテート、キシリトールペンタプロピオネートなど)などが挙げられる。
【0064】
以下に本発明で用いることができる一般式(1)ないし(12)で表される化合物の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、一般式(1)については化合物(C-1〜C-76)を例示し、一般式(2)〜(12)については化合物(C-201〜C-231、C-401〜C-448)を例示した。表記載あるいは括弧内に記載のlogPの値は、Crippen's fragmentation法( J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)により求めたものである。
【0065】
【化11】

【0066】
(式中、R1−3は前記一般式(1)のR11−13と同義であり、下記のC-1〜C-76で具体例を例示する。)
【0067】
【化12】

【0068】
【化13】

【0069】
【化14】

【0070】
【化15】

【0071】
【化16】

【0072】
【化17】

【0073】
【化18】

【0074】
【化19】

【0075】
【化20】

【0076】
一般式(13)および(14)の化合物について説明する。
上記一般式(13)において、R1はアルキル基またはアリール基を表し、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。また、R1、R2およびR3の炭素原子数の総和が10以上であることが特に好ましい。また、一般式(14)中、R4およびR5は、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を表す。また、R4およびR5の炭素原子数の総和は10以上であり、各々、アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい。置換基としてはフッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基およびスルホンアミド基が特に好ましい。また、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1乃至25のものが好ましく、6乃至25のものがより好ましく、6乃至20のもの(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、アミル、イソアミル、t-アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ビシクロオクチル、ノニル、アダマンチル、デシル、t-オクチル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、ジデシル)が特に好ましい。アリール基としては炭素原子数が6乃至30のものが好ましく、6乃至24のもの(例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、ビナフチル、トリフェニルフェニル)が特に好ましい。一般式(13)または一般式(14)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0077】
【化21】

【0078】
【化22】

【0079】
【化23】

【0080】
【化24】

【0081】
【化25】

【0082】
一般式(15)の化合物について説明する。
【0083】
【化26】

【0084】
上記一般式(15)において、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表わす。アルキル基としては、炭素原子数が1乃至5のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、アミル、イソアミル)であることが好ましく、R1、R2およびR3の少なくとも1つ以上が炭素原子数1乃至3のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル)であることが特に好ましい。Xは、単結合、−O−、−CO−、−NR4−(R4は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表わす。)、アルキレン基(好ましくは炭素原子数1〜6、より好ましくは1〜3のもの、例えばメチレン、エチレン、プロピレン)またはアリーレン基(好ましくは炭素原子数6〜24、より好ましくは6〜12のもの。例えば、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン)から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基であることが好ましく、−O−、アルキレン基またはアリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基であることが特に好ましい。Yは、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素原子数2〜25、より好ましくは2〜20のもの。例えば、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、t−オクチル、ドデシル、シクロヘキシル、ジシクロヘキシル、アダマンチル)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜24、より好ましくは6〜18のもの。例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル)またはアラルキル基(好ましくは炭素原子数7〜30、より好ましくは7〜20のもの。例えば、ベンジル、クレジル、t-ブチルフェニル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル)であることが好ましく、アルキル基、アリール基またはアラルキル基であることが特に好ましい。−X−Yの組み合わせとしては、−X−Yの総炭素数が0乃至40であることが好ましく、1乃至30であることがさらに好ましく、1乃至25であることが最も好ましい。これら一般式(14)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0085】
【化27】

【0086】
【化28】

【0087】
一般式(16)の化合物について説明する。
【0088】
【化29】

【0089】
Q1、Q2およびQ3はそれぞれ独立に5ないし6員環を表し、炭化水素環でもへテロ環でもよく、また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。炭化水素環として好ましくは、置換または無置換のシクロヘキサン環、置換または無置換のシクロペンタン環、芳香族炭化水素環であり、より好ましくは芳香族炭化水素環である。へテロ環として好ましくは5ないし6員環の酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含む環である。へテロ環としてより好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含む芳香族ヘテロ環である。
Q1、Q2およびQ3として好ましくは芳香族炭化水素環または芳香族へテロ環である。芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
【0090】
芳香族ヘテロ環として好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。Q1、Q2およびQ3としてより好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはベンゼン環である。またQ1、Q2およびQ3は置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが挙げられる。
XはB、C-R(Rは水素原子または置換基を表す。)、N、P、P=Oを表し、Xとして好ましくはB、C-R(Rとして好ましくはアリール基、置換又は未置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシル基であり、より好ましくはアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくはアルコキシ基、ヒドロキシ基であり、特に好ましくはヒドロキシ基である。)、Nであり、Xとしてより好ましくはC-R、Nであり、特に好ましくはC-Rである。
一般式(16)として好ましくは下記一般式(17)で表される化合物である。
【0091】
【化30】

【0092】
(式中、X2はB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、Nを表す。R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34ないしR35は水素原子または置換基を表す。)
【0093】
XはB、C-R(Rは水素原子または置換基を表す。)、N、P、P=Oを表しXとして好ましくはB、C-R(Rとして好ましくはアリール基、置換又は未置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシル基であり、より好ましくはアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくはアルコキシ基、ヒドロキシ基であり、特に好ましくはヒドロキシ基である。)、N、P=Oであり、更に好ましくはC-R、Nであり、特に好ましくはC-Rである。
【0094】
R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34ないしR35は水素原子または置換基を表し、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34ないしR35として好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換又は未置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基である。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0095】
以下に前述の置換基Tについて説明する。置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0096】
以下に一般式(16)で表される化合物に関して具体例をあげて詳細に説明するが、本発明は以下の具体例によって何ら限定されることはない。
【0097】
【化31】

【0098】
【化32】

【0099】
【化33】

【0100】
【化34】

【0101】
【化35】

【0102】
【化36】

【0103】
以下に、一般式(18)または一般式(19)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0104】
【化37】

【0105】
【化38】

【0106】
【化39】

【0107】
【化40】

【0108】
【化41】

【0109】
【化42】

【0110】
【化43】

【0111】
【化44】

【0112】
本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、オクタノール−水分配係数(LogP値)が0〜7である、多価アルコールエステル化合物、カルボン酸エステル化合物、多環カルボン酸化合物、ビスフェノール誘導体をセルロースアシレートに添加することによっても、光学的異方性を低下させることを見出した。
【0113】
オクタノール−水分配係数(LogP値)が0〜7である、多価アルコールエステル化合物、カルボン酸エステル化合物、多環カルボン酸化合物、ビスフェノール誘導体の具体例を以下に示す。
【0114】
(多価アルコールエステル化合物)
多価アルコールエステルは、2価以上の多価アルコールと1種以上のモノカルボン酸とのエステルである。多価アルコールエステル化合物としては以下のものが例としてあげられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0115】
(多価アルコール)
好ましい多価アルコールの例としては、例えばアドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
【0116】
(モノカルボン酸)
多価アルコールエステルにおけるモノカルボン酸としては、特に制限なく公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等をいることができる。脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いるとセルロースアシレートフィルムの透湿度、含水率、保留性を向上させる点で好ましい。
【0117】
好ましいモノカルボン酸の例としては、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0118】
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10であることが特に好ましい。酢酸を含有するとセルロースエステルとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
【0119】
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。これらは更に置換基を有しても良い。
【0120】
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
【0121】
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に安息香酸が好ましい。
【0122】
本発明においては、多価アルコールエステルにおけるカルボン酸は一種類でも、二種以上の混合でもよい。また、多価アルコール中のOH基は全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。好ましくは、分子内に芳香環もしくはシクロアルキル環を3つ以上有することが好ましい。
【0123】
多価アルコールエステル化合物としては、以下の化合物を例としてあげることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0124】
【化45】

【0125】
【化46】

【0126】
(カルボン酸エステル化合物)
カルボン酸エステル化合物としては、以下の化合物を例としてあげることができるが、本発明はこれらに限定されない。具体的には、フタル酸エステル及びクエン酸エステル等、フタル酸エステルとしては、例えばジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート及びジエチルヘキシルフタレート等、またクエン酸エステルとしてはクエン酸アセチルトリエチル及びクエン酸アセチルトリブチルを挙げることが出来る。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバチン酸ジブチル、トリアセチン、トリメチロールプロパントリベンゾエート等も挙げられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートもこの目的で好ましく用いられる。アルキルフタリルアルキルグリコレートのアルキルは炭素原子数1〜8のアルキル基である。アルキルフタリルアルキルグリコレートとしてはメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、プロピルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等を挙げることが出来、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートが好ましく、特にエチルフタリルエチルグリコレートが好ましく用いられる。またこれらアルキルフタリルアルキルグリコレート等を2種以上混合して使用してもよい。
【0127】
カルボン酸エステル化合物としては、以下の化合物を例としてあげることができるが、本発明はこれらに限定されない。
【0128】
【化47】

【0129】
【化48】

【0130】
(多環カルボン酸化合物)
本発明において用いる多環カルボン酸化合物は分子量が3000以下の化合物であることが好ましく、特に250〜2000以下の化合物であることが好ましい。環状構造に関して、環の大きさについて特に制限はないが、3〜8個の原子から構成されていることが好ましく、特に6員環及び/又は5員環であることが好ましい。これらが炭素、酸素、窒素、珪素あるいは他の原子を含んでいてもよく、環の結合の一部が不飽和結合であってもよく、例えば6員環がベンゼン環、シクロヘキサン環でもよい。本発明における化合物は、このような環状構造が複数含まれているものであり、例えば、ベンゼン環とシクロヘキサン環をどちらも分子内に有していたり、2個のシクロヘキサン環を有していたり、ナフタレンの誘導体あるいはアントラセン等の誘導体であってもよい。より好ましくはこのような環状構造を分子内に3個以上含んでいる化合物であることが好ましい。また、少なくとも環状構造の1つの結合が不飽和結合を含まないものであることが好ましい。具体的には、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、パラストリン酸などのアビエチン酸誘導体が代表的であり、以下にこれら化合物の化学式を示すが、特にこれらに限定されるものではない。
【0131】
【化49】

【0132】
(ビスフェノール誘導体)
本発明において用いるビスフェノール誘導体は分子量が10000以下であることが好ましく、この範囲であれば単量体でも良いし、オリゴマー、ポリマーでも良い。また他のポリマーとの共重合体でも良いし、末端に反応性置換基が修飾されていても良い。以下にこれら化合物の化学式を示すが、特にこれらに限定されるものではない。
【0133】
【化50】

【0134】
なお、ビスフェノール誘導体の上記具体例中で、R1〜R4は水素原子、または炭素数1〜10のアルキル基を表す。l、m、nは繰り返し単位を表し、特に限定はしないが、1〜100の整数が好ましく、1〜20の整数がさらに好ましい。
【0135】
[波長分散調整剤]
光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムの波長分散を低下させる化合物について説明する。本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)−Re(700)|および|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物を少なくとも1種、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%含むことによってセルロースアシレートフィルムのRe、Rthの波長分散を調整した。添加量としては0.1〜30質量%含むことによってセルロースアシレートフィルムのRe、Rthの波長分散を調整した。
本発明の光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムは、下記(IV)式を満たすことが好ましい。
(IV)|Re(400)−Re(700)|≦10かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35
上記式において、より好ましくは|Re(400)−Re(700)|≦5かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦25であり、更に好ましくは|Re(400)−Re(700)|≦3かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦20である。
【0136】
セルロースアシレートフィルムのRe、Rthの値は一般に短波長側よりも長波長側が大きい波長分散特性となる。したがって相対的に小さい短波長側のRe、Rthを大きくすることによって波長分散を平滑にすることが要求される。一方200〜400nmの紫外領域に吸収を持つ化合物は短波長側よりも長波長側の吸光度が大きい波長分散特性をもつ。この化合物自身がセルロースアシレートフィルム内部で等方的に存在していれば、化合物自身の複屈折性、ひいてはRe、Rthの波長分散は吸光度の波長分散と同様に短波長側が大きいと想定される。
【0137】
したがって上述したような、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、化合物自身のRe、Rthの波長分散が短波長側が大きいと想定されるものを用いることによって、セルロースアシレートフィルムのRe、Rthの波長分散を調製することができる。このためには波長分散を調整する化合物はセルロースアシレートに十分均一に相溶することが要求される。このような化合物の紫外領域の吸収帯範囲は200〜400nmが好ましいが、220〜395nmがより好ましく、240〜390nmがさらに好ましい。
【0138】
また、近年テレビやノートパソコン、モバイル型携帯端末などの液晶表示装置ではより少ない電力で輝度を高めるために、液晶表示装置に用いられる光学部材の透過率が優れたものが要求されている。その点においては、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)−Re(700)|および|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物をセルロースアシレートフィルムに添加する場合、分光透過率が優れている要求される。本発明で用いられるセルロースアシレートフィルムは、波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であり、かつ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることがのぞましい。
【0139】
上述のような、本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤は揮散性の観点から分子量が250〜1000であることが好ましい。より好ましくは260〜800であり、更に好ましくは270〜800であり、特に好ましくは300〜800である。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
【0140】
波長分散調整剤は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
【0141】
(化合物添加量)
上述した本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤の添加量は、セルロースアシレートの0.01ないし30質量%であることが好ましく、0.1ないし20質量%であることがより好ましく、0.2ないし10質量%であることが特に好ましい。
【0142】
(化合物添加の方法)
またこれら波長分散調整剤は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
またこれら波長分散調整剤を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
【0143】
本発明に好ましく用いられる波長分散調整剤の具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノ基を含む化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、本発明はこれら化合物だけに限定されるものではない。
【0144】
ベンゾトリアゾール系化合物としては一般式(101)で示されるものが本発明における波長分散調整剤として好ましく用いられる。
【0145】
一般式(101) Q1−Q2−OH
【0146】
(式中、Q1は含窒素芳香族ヘテロ環Q2は芳香族環を表す。)
【0147】
1は含窒素方向芳香族へテロ環をあらわし、好ましくは5乃至7員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは5ないし6員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、例えば、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、セレナゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾセレナゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、ナフトチアゾール、ナフトオキサゾール、アザベンズイミダゾール、プリン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、トリアザインデン、テトラザインデン等があげられ、更に好ましくは、5員の含窒素芳香族ヘテロ環であり、具体的にはイミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾールが好ましく、特に好ましくは、ベンゾトリアゾールである。
1で表される含窒素芳香族ヘテロ環は更に置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。また、置換基が複数ある場合にはそれぞれが縮環して更に環を形成してもよい。
【0148】
2で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
芳香族炭化水素環として好ましくは(好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。)更に好ましくはベンゼン環である。
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
2であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはナフタレン環、ベンゼン環であり、特に好ましくはベンゼン環である。Q2は更に置換基を有してもよく、後述の置換基Tが好ましい。
置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0149】
一般式(101)として好ましくは下記一般式(101−A)で表される化合物である。
一般式(101−A)
【0150】
【化51】

【0151】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
【0152】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
1およびR3として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルキル基(好ましくは炭素数4〜12)である。
【0153】
2、およびR4として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0154】
5およびR8として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0155】
6およびR7として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、ハロゲン原子であり、特に好ましくは水素原子、塩素原子である。
【0156】
一般式(101)としてより好ましくは下記一般式(101−B)で表される化合物である。
一般式(101−B)
【0157】
【化52】

【0158】
(式中、R1、R3、R6およびR7は一般式(101−A)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。)
【0159】
以下に一般式(101)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
【0160】
【化53】

【0161】
【化54】

【0162】
以上例にあげたベンゾトリアゾール系化合物の中でも、分子量が320以下のものを含まずにセルロースアシレートフィルムを作製した場合、保留性の点で有利であることが確認された。
【0163】
また本発明に用いられる波長分散調整剤のひとつであるベンゾフェノン系化合物としては一般式(102)で示されるものが好ましく用いられる。
一般式(102)
【0164】
【化55】

【0165】
(式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に芳香族環を表す。XはNR(Rは水素原子または置換基を表す。)、酸素原子または硫黄原子を表す。)
【0166】
1およびQ2で表される芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
1およびQ2で表される芳香族炭化水素環として好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。最も好ましくはベンゼン環である。
1およびQ2で表される芳香族ヘテロ環として好ましくは酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のどれかひとつを少なくとも1つ含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
1およびQ2であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくは炭素数6〜10の芳香族炭化水素環であり、更に好ましくは置換または無置換のベンゼン環である。
1およびQ2は更に置換基を有してもよく、後述の置換基Tが好ましいが、置換基にカルボン酸やスルホン酸、4級アンモニウム塩を含むことはない。また、可能な場合には置換基同士が連結して環構造を形成してもよい。
【0167】
XはNR(Rは水素原子または置換基を表す。置換基としては後述の置換基Tが適用できる。)、酸素原子または硫黄原子を表し、Xとして好ましくは、NR(Rとして好ましくはアシル基、スルホニル基であり、これらの置換基は更に置換してもよい。)、またはOであり、特に好ましくはOである。
【0168】
置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0169】
一般式(102)として好ましくは下記一般式(102−A)で表される化合物である。
一般式(102−A)
【0170】
【化56】

【0171】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。)
【0172】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
【0173】
1、R3、R4、R5、R6、R8およびR9として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0174】
2として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基である。
【0175】
7として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、更に好ましくはメチル基)であり、特に好ましくはメチル基、水素原子である。
【0176】
一般式(102)としてより好ましくは下記一般式(102−B)で表される化合物である。
一般式(102−B)
【0177】
【化57】

【0178】
(式中、R10は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアリール基を表す。)
【0179】
R10は水素原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアルケニル基、置換または無置換のアルキニル基、置換または無置換のアリール基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。
R10として好ましくは置換または無置換のアルキル基であり、より好ましくは炭素数5〜20の置換または無置換のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数5〜12の置換または無置換のアルキル基(n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n-ドデシル基、ベンジル基、などが挙げられる。)であり、特に好ましくは、炭素数6〜12の置換または無置換のアルキル基(2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、ベンジル基)である。
【0180】
一般式(102)であらわされる化合物は特開平11−12219号公報記載の公知の方法により合成できる。
以下に一般式(102)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
【0181】
【化58】

【0182】
【化59】

【0183】
【化60】

【0184】
また本発明では、波長分散調整剤としてシアノ基を含む化合物を用いてもよい。シアノ基を含む化合物としては、一般式(103)で示されるものが好ましく用いられる。
一般式(103)
【0185】
【化61】

【0186】
(式中、Q1およびQ2はそれぞれ独立に芳香族環を表す。X1およびX2は水素原子または置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。)
1およびQ2であらわされる芳香族環は芳香族炭化水素環でも芳香族ヘテロ環でもよい。また、これらは単環であってもよいし、更に他の環と縮合環を形成してもよい。
【0187】
芳香族炭化水素環として好ましくは炭素数6〜30の単環または二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。最も好ましくはベンゼン環である。
【0188】
芳香族ヘテロ環として好ましくは窒素原子あるいは硫黄原子を含む芳香族ヘテロ環である。ヘテロ環の具体例としては、例えば、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ピリジン、トリアジン、キノリンである。
【0189】
1およびQ2であらわされる芳香族環として好ましくは芳香族炭化水素環であり、より好ましくはベンゼン環である。
1およびQ2は更に置換基を有してもよく、後述の置換基Tが好ましい。置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0190】
X1およびX2は水素原子または置換基を表し、少なくともどちらか1つはシアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環を表す。X1およびX2で表される置換基は前述の置換基Tを適用することができる。また、X1およびX2はで表される置換基は更に他の置換基によって置換されてもよく、X1およびX2はそれぞれが縮環して環構造を形成してもよい。
【0191】
X1およびX2として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(-C(=O)OR(Rは:炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの)である。
【0192】
一般式(103)として好ましくは下記一般式(103-A)で表される化合物である。
一般式(103-A)
【0193】
【化62】

【0194】
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表す。X1およびX2は一般式(20)におけるそれらと同義であり、また好ましい範囲も同様である。)
【0195】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10はそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用できる。またこれらの置換基は更に別の置換基によって置換されてもよく、置換基同士が縮環して環構造を形成してもよい。
【0196】
1、R2、R4、R5、R6、R7、R9、およびR10として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子であり、より好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子であり、更に好ましくは水素原子、炭素1〜12アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基であり、最も好ましくは水素原子である。
【0197】
3、およびR8として好ましくは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、より好ましくは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数0〜20のアミノ基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12アリールオキシ基、ヒドロキシ基であり、更に好ましくは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12アルコキシ基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0198】
一般式(103)としてより好ましくは下記一般式(103-B)で表される化合物である。
一般式(103-B)
【0199】
【化63】

【0200】
(式中、R3およびR8は一般式(103-A)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。X3は水素原子、または置換基を表す。)
【0201】
X3は水素原子、または置換基を表し、置換基としては前述の置換基Tが適用でき、また、可能な場合は更に他の置換基で置換されてもよい。X3として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、ニトロ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、より好ましくは、シアノ基、カルボニル基、スルホニル基、芳香族ヘテロ環であり、更に好ましくはシアノ基、カルボニル基であり、特に好ましくはシアノ基、アルコキシカルボニル基(-C(=O)OR(Rは:炭素数1〜20アルキル基、炭素数6〜12のアリール基およびこれらを組み合せたもの)である。
【0202】
一般式(103)として更に好ましくは一般式(103-C)で表される化合物である。
一般式(103-C)
【0203】
【化64】

【0204】
(式中、R3およびR8は一般式(103-A)におけるそれらと同義であり、また、好ましい範囲も同様である。R21は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0205】
R21として好ましくはR3およびR8が両方水素の場合には、炭素数2〜12のアルキル基であり、より好ましくは炭素数4〜12のアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数6〜12のアルキル基であり、特に好ましくは、n−オクチル基、tert-オクチル基、2−エチルへキシル基、n-デシル基、n-ドデシル基であり、最も好ましくは2−エチルへキシル基である。
【0206】
R21として好ましくはR3およびR8が水素以外の場合には、一般式(103-C)で表される化合物の分子量が300以上になり、かつ炭素数20以下の炭素数のアルキル基が好ましい。
【0207】
本発明一般式(103)で表される化合物はJounal of American Chemical Society 63巻 3452頁(1941)記載の方法によって合成できる。
【0208】
以下に一般式(103)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は下記具体例に何ら限定されるものではない。
【0209】
【化65】

【0210】
【化66】

【0211】
【化67】

【0212】
[マット剤微粒子]
本発明の光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。セルロースアシレートフィルムに使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0213】
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下がさらに好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とした。
【0214】
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0215】
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0216】
本発明において2次平均粒子径の小さな粒子を有するセルロースアシレートフィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ作成し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行いこれを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
【0217】
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0218】
[可塑剤、劣化防止剤、剥離剤]
上記の光学的に異方性を低下する化合物、波長分散調整剤の他に、本発明の光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムには、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開2001−151901号などに記載されている。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号に記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
【0219】
[化合物添加の比率]
本発明の光学フィルムに用いられるセルロースアシレートフィルムにおいては、分子量が3000以下の化合物の総量は、セルロースアシレート質量に対して5〜45質量%であることがのぞましい。より好ましくは10〜40質量%であり、さらにのぞましくは15〜30質量%である。これらの化合物としては上述したように、光学異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤などであり、分子量としては3000以下がのぞましく、2000以下がよりのぞましく、1000以下がさらにのぞましい。これら化合物の総量が5質量%以下であると、セルロースアシレート単体の性質が出やすくなり、例えば、温度や湿度の変化に対して光学性能や物理的強度が変動しやすくなるなどの問題がある。またこれら化合物の総量が45質量%以上であると、セルロースアシレートフィルム中に化合物が相溶する限界を超え、フィルム表面に析出してフィルムが白濁する(フィルムからの泣き出し)などの問題が生じやすくなる。
【0220】
[セルロースアシレート溶液の有機溶媒]
本発明では、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することが好ましく、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造される。本発明において主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、および炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
【0221】
以上、本発明ではセルロースアシレートフィルムに対して塩素系のハロゲン化炭化水素を主溶媒としても良いし、発明協会公開技報2001−1745(12頁〜16頁)に記載されているように、非塩素系溶媒を主溶媒としても良く、本発明においては特に限定されるものではない。
【0222】
その他、本発明で使用可能なセルロースアシレート溶液及びフィルムについての溶媒は、その溶解方法も含め以下の特許に開示されており、好ましい態様である。それらは、例えば、特開2000−95876、特開平12−95877、特開平10−324774、特開平8−152514、特開平10−330538、特開平9−95538、特開平9−95557、特開平10−235664、特開平12−63534、特開平11−21379、特開平10−182853、特開平10−278056、特開平10−279702、特開平10−323853、特開平10−237186、特開平11−60807、特開平11−152342、特開平11−292988、特開平11−60752、特開平11−60752などに記載されている。これらの特許によるとセルロースアシレートに好ましい溶媒だけでなく、その溶液物性や共存させる共存物質についても記載があり、本発明においても好ましい態様である。
【0223】
[セルロースアシレートフィルムの製造工程]
[溶解工程]
本発明において、セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。本発明におけるセルロースアシレート溶液の調製、さらには溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
【0224】
(ドープ溶液の透明度)
本発明におけるセルロースアシレート溶液のドープ透明度としては85%以上であることがのぞましい。より好ましくは88%以上であり、さらに好ましくは90%以上であることがのぞましい。本発明においてはセルロースアシレートドープ溶液に各種の添加剤が十分に溶解していることを確認した。具体的なドープ透明度の算出方法としては、ドープ溶液を1cm角のガラスセルに注入し、分光光度計(UV−3150、島津製作所)で550nmの吸光度を測定した。溶媒のみをあらかじめブランクとして測定しておき、ブランクの吸光度との比からセルロースアシレート溶液の透明度を算出した。
【0225】
[流延、乾燥、巻き取り工程]
次に、セルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明において、セルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備には、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。セルロースアシレートフィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜やハロゲン化銀写真感光材料に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離などに分類され、本発明において好ましく用いることができる。
【0226】
[ノルボルネン系高分子を用いた光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、特開2001−208901に有るような、光の波長より小さいサイズの無機化合物の粒体が混入された透明性を有する高分子樹脂材料が配向処理し、無機化合物の粒体は、分極に関して等方性を有する物質よりなる粒体または形状に関して等方性を有する粒体よりなることでも達成できる。高分子樹脂材料としては、ノルボルネン誘導体の開環重合体を用いることができる。また無機化合物の粒体としては、シリカ微粒子等が挙げられる。
【0227】
本発明の光学フィルムは、式(IX)をみたすことが好ましい。
(IX)|ReMAX−ReMIN|≦3かつ|RthMAX−RthMIN|≦5
[式中、ReMAX、RthMAXは任意に切り出した1m四方のフィルムの最大レターデーション値(単位:nm)、ReMIN、RthMINは最小レターデーション値(単位:nm)であり、波長590nmでの測定値である。]
光学フィルム面内の光学異方性のバラツキを抑えることによって、表示ムラを抑えるという効果を奏する。上記範囲は、より好ましくは|ReMAX−ReMIN|≦1かつ|RthMAX−RthMIN|≦3である。
【0228】
[延伸または収縮時のRe、Rth発現性]
本発明の光学フィルムは、その用途上、延伸処理または収縮処理されることもあり、延伸または収縮した場合にも光学異方性が小さいことが好ましい。したがって本発明の光学フィルムは、15%以上延伸または収縮した際に発現するReまたはRthの少なくとも一方において(測定波長590nm)、延伸または収縮前に対する変化量が20nm以下となることが好ましい。より好ましくは10nm以下、さらに好ましくは5nm以下である。また、5%以上15%未満延伸または収縮した際に発現するReまたはRthの少なくとも一方において、延伸または収縮前に対する変化量が10nm以下であることが好ましい。より好ましくは5nm以下、さらに好ましくは2nm以下である。また、延伸または収縮時に発現する遅相軸は延伸方向と平行方向を0度とすると0〜90度となることが好ましい。
【0229】
[光学フィルムの物性評価]
[フィルムのガラス転移温度Tg]
本発明の光学フィルムのガラス転移温度Tgは、80〜165℃であることが好ましい。耐熱性の観点から、Tgが100〜160℃であることがより好ましく、110〜150℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度Tgの測定は、本発明のフィルム試料10mgを、常温から200度まで昇降温速度5℃/分で示差走査熱量計(DSC2910、T.A.インスツルメント)で熱量測定を行い、ガラス転移温度Tgを算出した。
【0230】
[フィルムのヘイズ]
本発明の光学フィルムのヘイズは0.01〜2.0%であることがのぞましい。よりのぞましくは0.05〜1.5%であり、0.1〜1.0%であることがさらにのぞましい。光学フィルムとしてフィルムの透明性は重要である。ヘイズの測定は、本発明のフィルム試料40mm×80mmを、25℃,60%RHでヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−6714に従って測定した。
【0231】
[フィルムのRe、Rthの湿度依存性]
本発明の光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムの正面レターデーションReおよび膜厚方向のレターデーションRthはともに湿度による変化が小さいことが好ましい。具体的には、25℃10%RHにおけるRth(590)値と25℃80%RHにおけるRth(590)値の差ΔRth(590)(=Rth10%RH−Rth80%RH)が0〜50nmであることが好ましい。より好ましくは0〜40nmであり、さらに好ましくは0〜35nmである。
【0232】
[フィルムの平衡含水率]
本発明の光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムの平衡含水率は、偏光板の保護膜として用いる際、ポリビニルアルコールなどの水溶性ポリマーとの接着性を損なわないために、膜厚のいかんに関わらず、25℃80%RHにおける平衡含水率が、0〜4%であることが好ましい。0.1〜3.5%であることがより好ましく、1〜3%であることが特に好ましい。4%以上の平衡含水率であると、光学補償フィルムの支持体として用いる際にレターデーションの湿度変化による依存性が大きくなりすぎてしまい好ましくない。
含水率の測定法は、セルロースアシレートフィルム試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))にてカールフィッシャー法で測定した。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出した。
【0233】
[フィルムの透湿度]
本発明の光学フィルムの透湿度は、JIS規格JISZ0208をもとに、温度60℃、湿度95%RHの条件において測定し、膜厚80μmに換算して400〜2000g/m2・24hであることがのぞましい。500〜1800g/m2・24hであることがより好ましく、600〜1600g/m2・24hであることが特に好ましい。2000g/m2・24hを越えると、フィルムのRe値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまう。また、本発明のフィルムに光学異方性層を積層して光学補償フィルムとした場合も、Re値、Rth値の湿度依存性の絶対値が0.5nm/%RHを超える傾向が強くなってしまい好ましくない。この光学補償シートや偏光板が液晶表示装置に組み込まれた場合、色味の変化や視野角の低下を引き起こす。また、フィルムの透湿度が400g/m2・24h未満では、偏光子の両面などに貼り付けて偏光板を作製する場合に、フィルムにより接着剤の乾燥が妨げられ、接着不良を生じる。
フィルムの膜厚が厚ければ透湿度は小さくなり、膜厚が薄ければ透湿度は大きくなる。そこでどのような膜厚のサンプルでも基準を80μmに設け換算する必要がある。膜厚の換算は、(80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm)として求めた。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができ、本発明の光学フィルム試料70mmφを25℃、90%RH及び60℃、95%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、透湿度=調湿後質量−調湿前質量で求めた。
【0234】
[フィルムの寸度変化]
本発明の光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムの寸度安定性は、60℃、90%RHの条件下に24時間静置した場合(高湿)の寸度変化率および90℃、5%RHの条件下に24時間静置した場合(高温)の寸度変化率がいずれも0.5%以下であることがのぞましい。よりのぞましくは0.3%以下であり、さらにのぞましくは0.15%以下である。
具体的な測定方法としては、セルロースアシレートフィルム試料30mm×120mmを2枚用意し、25℃、60%RHで24時間調湿し、自動ピンゲージ(新東科学(株))にて、両端に6mmφの穴を100mmの間隔で開け、パンチ間隔の原寸(L0)とした。1枚の試料を60℃、90%RHにて24時間処理した後のパンチ間隔の寸法(L1)を測定、もう1枚の試料を90℃、5%RHにて24時間処理した後のパンチ間隔の寸法(L2)を測定した。すべての間隔の測定において最小目盛り1/1000mmまで測定した。60℃、90%RH(高湿)の寸度変化率={|L0−L1|/L0}×100、90℃、5%RH(高温)の寸度変化率={|L0−L2|/L0}×100、として寸度変化率を求めた。
【0235】
[フィルムの弾性率]
(弾性率)
本発明の光学フィルムの弾性率は、200〜500kgf/mm2であることが好ましい、より好ましくは240〜470kgf/mm2であり、さらに好ましくは270〜440kgf/mm2である。具体的な測定方法としては、東洋ボールドウィン製万能引っ張り試験機STM T50BPを用い、23℃・70%雰囲気中、引っ張り速度10%/分で0.5%伸びにおける応力を測定し、弾性率を求めた。
【0236】
[フィルムの光弾性係数]
(光弾性係数)
本発明の光学フィルムの光弾性係数は、25×10-13cm2/dyne(25×10-12Pa)以下であることが好ましい。10×10-13cm2/dyne(10×10-12Pa)以下であることがより好ましく、5×10-13cm2/dyne(5×10-12Pa)以下であることがさらに好ましい。具体的な測定方法としては、フィルム試料12mm×120mmの長軸方向に対して引っ張り応力をかけ、その際のレターデーションをエリプソメーター(M150、日本分光(株))で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から光弾性係数を算出した。フィルムの光弾性係数を上記範囲とすることで、表示装置の温湿度変化によって生じる表示ムラを低減することができる。
【0237】
[本発明のフィルムの評価方法]
本発明の光学フィルムの評価に当たって、以下の方法で測定して実施した。
【0238】
(正面レターデーションRe、膜厚方向のレターデーションRth)
試料30mm×40mmを、25℃、60%RHで2時間調湿し、Re(λ)は自動複屈折計KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定した。また、Rth(λ)は前記Re(λ)と、面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向を0°としてサンプルを0°および40°傾斜させて波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値を基に、平均屈折率の仮定値1.48および膜厚を入力し算出した。なお、本明細書では特に断りの無い限り、ReおよびRthは、波長590nmで測定した値を示す。
【0239】
(透過率)
試料20mm×70mmを、25℃,60%RHで透明度測定器(AKA光電管比色計、KOTAKI製作所)で可視光(615nm)の透過率を測定した。(分光特性)
試料13mm×40mmを、25℃,60%RHで分光光度計(U−3210、(株)日立製作所)にて、波長300〜450nmにおける透過率を測定した。傾斜幅は72%の波長−5%の波長で求めた。限界波長は、(傾斜幅/2)+5%の波長で表した。吸収端は、透過率0.4%の波長で表す。これより380nmおよび350nmの透過率を評価した。
【0240】
[フィルム表面の性状]
本発明の光学フィルムの表面は、JISB0601−1994に基づく該膜の表面凹凸の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下、及び最大高さ(Ry)が0.5μm以下であることが好ましい。好ましくは、算術平均粗さ(Ra)が0.05μm以下、及び最大高さ(Ry)が0.2μm以下である。膜表面の凹と凸の形状は、原子間力顕微鏡(AFM)により評価することが出来る。
【0241】
[フィルムの力学特性]
(カール)
本発明の光学フィルムの幅方向のカール値は、−10/m〜+10/mであることが好ましい。本発明の光学フィルムには後述する表面処理、光学異方性層を塗設する際のラビング処理の実施や配向膜、光学異方性層の塗設や貼合などを長尺で行う際に、本発明の光学フィルムの幅方向のカール値が前述の範囲外では、フィルムのハンドリングに支障をきたし、フィルムの切断が起きることがある。また、フィルムのエッジや中央部などで、フィルムが搬送ロールと強く接触するために発塵しやすくなり、フィルム上への異物付着が多くなり、光学異方性層を積層し光学補償フィルムとしたときの点欠陥や塗布スジの頻度が許容値を超えることがある。又、カールを上述の範囲とすることで光学異方性層を設置するときに発生しやすい色斑故障を低減できるほか、偏光子貼り合せ時に気泡が入ることを防ぐことができ、好ましい。
カール値は、アメリカ国家規格協会の規定する測定方法(ANSI/ASCPH1.29−1985)に従い測定することができる。
【0242】
(引裂き強度)
JISK7128−2:1998の引裂き試験方法に基ずく引裂き強度(エルメンドルフ引裂き法)が、本発明の光学フィルムの膜厚が20〜80μmの範囲において、2g以上であることが好ましい。より好ましくは、5〜25gであり、更には6〜25gである。又、60μm換算で8g以上が好ましく、より好ましくは8〜15gである。具体的には、試料片50mm×64mmを、25℃、65%RHの条件下に2時間調湿した後に軽荷重引裂き強度試験機を用いて測定できる。
【0243】
[フィルムの残留溶剤量]
本発明の光学フィルムの作製に際し、光学フィルムの残留溶剤量が、0.01〜1.5質量%の範囲となる条件で乾燥することが好ましい。より好ましくは0.01〜1.0質量%である。本発明の光学フィルムの残留溶剤量を1.5質量%未満とすることでカールを抑制できる。1.0質量%以下であることがより好ましい。これは、前述のソルベントキャスト方法による成膜時の残留溶剤量を少なくすることで自由堆積が小さくなることが主要な効果要因になるためと思われる。ただし、フィルムを延伸または収縮させる場合にはこの限りではない。延伸または収縮時の残留溶剤量に関しては別項で述べる。なお、本明細書中におけるフィルムの残留溶媒量(質量%)とは、乾膜(溶媒が完全に抜けたフィルム)質量に対するものである。残留溶剤量(質量%)の測定は、試料7mm×35mmをガスクロマトグラフィー(GC−18A、島津製作所(株))にて、ベース残留溶剤量を測定することにより行なった。
【0244】
[フィルムの吸湿膨張係数]
本発明の光学フィルムの吸湿膨張係数は30×10-5/%RH以下とすることが好ましい。吸湿膨張係数は、15×10-5/%RH以下とすることが好ましく、10×10-5/%RH以下であることがさらに好ましい。また、吸湿膨張係数は小さい方が好ましいが、通常は、1.0×10-5/%RH以上の値である。吸湿膨張係数は、一定温度下において相対湿度を変化させた時の試料の長さの変化量を示す。この吸湿膨張係数を調節することで、本発明の光学フィルムを光学補償フィルムの支持体として用いた際、光学補償フィルムの光学補償機能を維持したまま、額縁状の透過率上昇すなわち歪みによる光漏れを防止することができる。
【0245】
[表面処理]
本発明の光学フィルムは、場合により表面処理を行うことによって、フィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0246】
[アルカリ鹸化処理による光学フィルム表面の接触角]
本発明の光学フィルム、特にセルロースアシレートフィルムを偏光板の透明保護フィルムとして用いる場合の表面処理の有効な手段の1つとしてアルカリ鹸化処理が上げられる。この場合、密着性の観点から、アルカリ鹸化処理後の光学フィルム表面の接触角が55°以下であることがのぞましい。よりのぞましくは50°以下であり、45°以下であることがさらにのぞましい。接触角の評価法はアルカリ鹸化処理後の光学フィルム表面に直径3mmの水滴を落とし、フィルム表面と水滴のなす角をもとめる通常の手法によって親疎水性の評価として用いることができる。
【0247】
[機能層]
本発明の光学フィルムは、その用途として光学用途と写真感光材料に適用される。特に光学用途が液晶表示装置であることが好ましく、液晶表示装置が、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光子、および該液晶セルと該偏光子との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成であることがさらに好ましい。これらの液晶表示装置としては、TN、IPS、FLC、AFLC、OCB、STN、ECB、VAおよびHANが好ましい。
【0248】
その際に前述の光学用途に本発明の光学フィルムを用いるに際し、各種の機能層を付与することが実施される。それらは、例えば、帯電防止層、硬化樹脂層(透明ハードコート層)、反射防止層、易接着層、防眩層、光学補償層、配向層、液晶層などである。本発明の光学フィルムを用いることができるこれらの機能層及びその材料としては、界面活性剤、滑り剤、マット剤、帯電防止層、ハードコート層などが挙げられ、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁〜45頁に詳細に記載されており、本発明において好ましく用いることができる。
【0249】
[用途(光学補償フィルム)]
本発明の光学フィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いると特に効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。本発明の光学フィルムはRe(590)およびRth(590)が0≦Re(590)≦10nmかつ|Rth(590)|≦25nmと光学的異方性が小さく、|Re(400)−Re(700)|≦10かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35と波長分散が小さいため、余計な異方性を生じず、複屈折を持つ光学異方性層を併用すると光学異方性層の光学性能のみを発現することができる。
したがって本発明の光学フィルムを液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いる場合、併用する光学異方性層のRe(590)およびRth(590)は、Re(590)=0〜200nm、且つ|Rth|=0〜400nmであることが好ましく、この範囲であればどのような光学異方性層でも良い。
本発明の光学フィルムが使用される液晶表示装置の液晶セルの光学性能や駆動方式に制限されず、光学補償フィルムとして要求されるどのような光学異方性層も併用することができる。併用される光学異方性層としては、液晶性化合物を含有する組成物から形成しても良いし、複屈折を持つポリマーフィルムから形成しても良い。本発明では、負の複屈折を持つポリマーフィルムから形成することが好ましい。
前記液晶性化合物としては、ディスコティック液晶性化合物または棒状液晶性化合物が好ましい。
【0250】
(ディスコティック液晶性化合物)
本発明に使用可能なディスコティック液晶性化合物の例には、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載の化合物が含まれる。
【0251】
光学異方性層において、ディスコティック液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。ディスコティック液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。ディスコティック液晶性分子を重合により固定するためには、ディスコティック液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。重合性基を有するディスコティック液晶性分子について、特開2001−4387号公報に開示されている。
【0252】
(棒状液晶性化合物)
本発明において、使用可能な棒状液晶性化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が含まれる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。
【0253】
光学異方性層において、棒状液晶性分子は配向状態で固定されているのが好ましく、重合反応により固定されているのが最も好ましい。本発明に使用可能な重合性棒状液晶性化合物の例には、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許4683327号、同5622648号、同5770107号、世界特許(WO)95/22586号、同95/24455号、同97/00600号、同98/23580号、同98/52905号、特開平1−272551号、同6−16616号、同7−110469号、同11−80081号、および特開2001−328973号などに記載の化合物が含まれる。
【0254】
(ポリマーフィルムからなる光学異方性層)
上記した様に、光学異方性層はポリマーフィルムから形成してもよい。ポリマーフィルムは、光学異方性を発現し得るポリマーから形成する。そのようなポリマーの例には、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルおよびセルロースエステル(例、セルローストリアセーテート、セルロースジアセテート)、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド又はポリエステルイミドが含まれる。また、これらのポリマーの共重合体あるいはポリマー混合物を用いてもよい。具体的には、特開2004−4474号公報、特開昭61-162512号公報、特開昭64-38472号公報等のポリアミド、ポリエステルイミドが挙げられる。
【0255】
ポリマーフィルムの光学異方性は、該ポリマーフィルムに延伸処理および/または収縮処理を施すことにより得ることが好ましい。延伸は一軸延伸または二軸延伸であることが好ましい。具体的には、2つ以上のロールの周速差を利用した縦一軸延伸、またはポリマーフィルムの両サイドを掴んで幅方向に延伸するテンター延伸、これらを組み合わせての二軸延伸が好ましい。なお、二枚以上のポリマーフィルムを積層させて、該二枚以上のフィルムの全体の光学的性質が前記の条件を満足してもよい。ポリマーフィルムは、複屈折のムラを少なくするためにソルベントキャスト法により製造することが好ましい。ポリマーフィルムの厚さは、20〜500μmであることが好ましく、40〜100μmであることが最も好ましい。
【0256】
[固体ポリマーの塗布による光学異方性層の形成]
本発明による固体ポリマーの塗布による光学異方性層の形成は、面内の屈折率をnx、ny(nx:遅相軸方向)、厚さ方向の屈折率をnzとしたとき、液状化した固体ポリマーを本発明の光学フィルム上に展開(塗布)した後、これを固定化することによって得られる透明フィルムに、その面内で分子を配向させる処理を施してnx>ny>nzの特性を付与した光学補償フィルム(複屈折性フィルム)を得るものである。この際、本発明の光学フィルムは分子配向処理を行った際にも光学異方性が発現しないため、均一な二軸フィルムが形成でき光学設計等も容易となる。
【0257】
複屈折性フィルムを形成する固体ポリマーについては特に限定はなく、光透過性の適宜なものを1種又は2種以上用いうる。好ましくは光透過率が75%以上、特に85%以上の透光性に優れるフィルムを形成しうるポリマーが好ましい。
固体ポリマーの例としては、ポリアミドやポリイミド、ポリエステルやポリエーテルケトン、就中ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミドやポリエステルイミドなどがあげられる。複屈折性フィルムの形成には、その固体ポリマーの1種、又は2種以上を混合したものなどを用いうる。固体ポリマーの分子量について特に限定はないが、一般にはフィルムへの加工性などの点より重量平均分子量に基づいて1000〜100万、就中1500〜75万、特に2000〜50万が好ましい。
【0258】
光学補償フィルム(複屈折フィルム)の光学異方性層となる透明フィルムの形成は、固体ポリマーを液状化してそれを展開し、その展開層を固定化させることにより行うことができる。透明フィルムの形成に際しては安定剤や可塑剤や金属類等からなる種々の添加剤を必要に応じて、固体ポリマー液状物中に配合することができる。また固体ポリマーの液状化には、熱可塑性の固体ポリマーを加熱して溶融させる方式や、固体ポリマーを溶媒に溶解させて溶液とする方法などの適宜な方式を採ることができる。
従って当該展開層の固定化は、前者の溶融液ではその展開層を冷却させることにより、また後者の溶液ではその展開層より溶媒を除去して乾燥させることにより行うことができる。その乾燥には自然乾燥(風乾)方式や加熱乾燥方式、特に40〜200℃の加熱乾燥方式、減圧乾燥方式などの適宜な方式の1種又は2種以上を採ることができる。製造効率や光学的異方性の発生を抑制する点からはポリマー溶液を塗工する方式が好ましい。なお、固定化とは上記の様に冷却や乾燥による固定化の他にも、光学異方性層を形成するポリマーの種類によっては、重合による固定化等がある。
【0259】
ポリマー溶液に用いられる溶剤としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、バラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;あるいは二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等があげられる。これらの溶媒は、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0260】
また、次の塗工膜形成工程において、基材となる光学フィルム内部に前記溶剤が浸透する事が好ましく、溶剤の種類は、前記基材の形成材料であるポリマーの種類に応じて適宜決定する。具体的な光学フィルムと溶剤との組み合わせとしては、例えば、以下のような組み合わせがあげられる。前記光学フィルムがセルロースアシレートの場合、溶剤としては、例えば、酢酸エチル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アセトン等が使用できる。
【0261】
固体ポリマーを液状化したものの展開には、例えばスピンコート法やロールコート法、フローコート法やプリント法、ディップコート法や流延成膜法、バーコート法やグラビア印刷法等のキャスティング法、押出法などの適宜なフィルム形成方式を採ることができる。就中、厚さムラや配向歪ムラ等の少ないフィルムの量産性などの点より、キャスティング法等の溶液製膜法が好ましく適用することができる。なおその場合、ポリイミドとしては芳香族二無水物とポリ芳香族ジアミンから調製された溶媒可溶性のもの(特表平8−511812号公報)が好ましく用いうる。
【0262】
調製した前記塗工液を光学フィルム表面に塗工(展開・固定化)して、前記形成材料の塗工膜を形成した際、前記塗工液中の前記溶剤が、前記光学フィルム表面から内部に浸透し、固体ポリマーと光学フィルム表面が融合した部位を、以下、前記基材における「融合層」という。
前記溶剤浸透層の厚みは、前記光学フィルムと溶剤との組み合わせ等によって異なるが、例えば、前記固体ポリマー層の厚み(dr)に対して、融合層の厚み(dy)が、dy>dr/100 であることが好ましい。dy>dr/100 であれば、前記光学フィルムと前記固体ポリマー層との間に十分な密着性が得られるからである。ただし、融合層が厚くなりすぎるとヘイズ等の問題が生じるため、より好ましくは dr/2>dy>dr/100 である。更に好ましくは dr/3>dy>dr/100 であり、特に好ましくはdr/10>dy>dr/100である。具体的には、例えば、固体ポリマー層が6μmの場合に、前記融合層は0.06〜3μmであることが好ましく、より好ましくは0.06〜1.8μm、更に好ましくは0.06〜0.6μmである。
【0263】
<融合層厚み計測>
前記各フィルムは、SEM(走査型顕微鏡)によってその断面を観察し、融合層の厚みdyを測定した。
このように、前記光学フィルムに対して溶解性を示す溶剤を用いて、前記固体ポリマー層形成材料の塗工液を調製すれば、前記光学フィルムの表面に前記溶液を塗工することによって、前記光学フィルムの表面から前記溶液中の溶剤が浸透する。このように光学フィルムの一部に前記溶剤が浸透することによって、前記光学フィルムと前記光学フィルム上に形成される固体ポリマー層との密着性が向上される。
前記溶剤の浸透によって前記光学フィルムと前記固体ポリマー層との密着性が向上するのは、光学フィルム表面が溶剤によって溶解され、光学フィルムと固体ポリマー層との間に融合層(光学フィルム成分、溶剤および固体ポリマー層の形成材料とが混ざり合った層)が形成され、光学フィルム表面が、溶剤によって部分的に溶解されて粗くなるため、固体ポリマー層との接触面積が大きくなる、光学フィルム表面の分子構造変化等により密着性が向上すると考えられる。
【0264】
本発明の光学補償フィルム(複屈折性フィルム)としてのnx>ny>nzの特性は、透明フィルムに、その面内で分子を配向させる処理を施すことにより付与される。すなわち上記した液状化物の展開による透明フィルムの形成過程で得られる透明フィルムは、nx≒ny、従ってRe≒0nmの特性を示す。
従って本発明では、透明フィルムの形成過程でnzを制御し、その透明フィルムの面内において分子を配向させる処理でnxとnyを制御する。係る役割分担方式には、例えば二軸延伸方式等の従来のRzとReを同時的に制御する方法に比べて少ない延伸率で目的を達成でき、nx>ny>nzに基づくRzとReの特性や光学軸の各精度に優れた二軸性複屈折性フィルムが得られやすい利点がある。
【0265】
透明フィルムの面内において分子を配向させる処理は、フィルムの延伸処理又は/及び収縮処理として施すことができる。延伸処理には逐次方式や同時方式等による二軸延伸方式、自由端方式や固定端方式等の一軸延伸方式などの適宜な方式の1種又は2種以上を適用することができる。ボーイング現象を抑制する点から、一軸延伸方式が好ましい。延伸処理温度は従来方法に準じることができ、透明フィルムを形成する固体ポリマーおよび支持体である光学フィルムのガラス転移温度の近傍、より好ましくはガラス転移温度以上が一般的である。
【0266】
一方、収縮処理は、例えば透明フィルムの塗工形成を基材上で行って、その基材の温度変化等に伴う寸法変化を利用して収縮力を作用させる方式などにより行うことができる。その場合、熱収縮性フィルムなどの収縮能を付与した基材を用いることもでき、そのときには延伸機等を利用して収縮率を制御することが望ましい。
収縮処理で用いる支持体は、あらかじめ延伸処理されていることが望ましい。延伸処理は一般的な方法を用いることが出来る。延伸時の温度は、支持体となる本発明の光学フィルムの残留溶剤量が1.5質量%未満の場合にはガラス転移温度の以上の温度で行うことが好ましい。一方、残留溶剤量が1.5質量%以上の場合には30℃〜160℃で行うことが好ましく、より好ましくは70℃〜150℃であり、特に好ましくは85〜150℃である。残留溶剤量が1.5質量%以上の場合には、延伸温度が低温で行えるという利点がある。その場合、支持体である本発明の光学フィルムの残留溶剤量が1.5質量%以上70質量%以下の状態で行なわれることが好ましく、より好ましくは30質量%以上60質量%以下である。
透明フィルムと光学フィルムを有してなる積層体の延伸処理および/または収縮処理は、前記光学フィルムの残留溶剤量が1.5質量%以下の状態で行うことが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、特に好ましくは0.2質量%以下である。
なお、延伸処理および/または収縮処理後の光学補償フィルム中の残留溶剤は、その量に比例してフィルムの光学特性を経時変化させる可能性があるため、光学補償フィルムをなす透明フィルムおよび光学フィルム中のそれぞれにおける残留溶媒量が1.5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.2質量%以下である。
【0267】
(延伸方法)
延伸方法は例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、特開平11−48271号などに記載されている。フィルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度以下であることが好ましい。フィルムの延伸は、一軸延伸でもよく2軸延伸でもよい。フィルムは、乾燥中の処理で延伸することができ、特に溶媒が残存する場合は有効である。例えば、フィルムの搬送ローラーの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりもフィルムの巻き取り速度の方を速くするとフィルムは延伸される。フィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもフィルムを延伸できる。フィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。また、延伸は1段で行っても良く、多段で行っても良い。多段で行なう場合は各延伸倍率の積がこの範囲にはいるようにすれば良い。
延伸はヒートロールあるいは/および放射熱源(IRヒーター等)、温風により行うことが好ましい。また、温度の均一性を高めるために恒温槽を設けてもよい。ロール延伸で一軸延伸を行う場合、ロール間距離(L)と該フィルム幅(W)の比であるL/Wが、2.0乃至5.0であることが好ましい。
【0268】
得られる複屈折性フィルムにおけるRthとReの大きさは、固体ポリマーの種類や、液状化物の塗工方式等の展開層の形成方式、乾燥条件等の展開層の固定化方式や、形成する透明フィルムの厚さなどにて制御することができる。透明フィルムの一般的な厚さは、0.5〜100μm、より好ましくは1〜50μm、特に好ましくは2〜20μmである。
この方法にで作製した複屈折フィルムはそのまま用いても良いし、粘着剤等によりその他のフィルムに貼合しても良い。
【0269】
[用途(偏光板)]
本発明の光学フィルムの用途について説明する。
本発明の光学フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。特に、本発明の光学フィルムがセルロースアシレートによって形成されている場合は、通常、偏光子の保護フィルムとしてセルロースアシレートフィルムが用いられるため有用となる。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような易接着加工を施してもよい。
保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが得に好ましい。また、本発明の光学補償フィルムも支持体である本発明の光学フィルム面側を偏光子の保護フィルムとして貼り付けることにより、光学補償偏光板としても用いることができる。
【0270】
(一般的な液晶表示装置の構成)
光学フィルムを光学補償フィルムの支持体として用いる場合は、偏光子の透過軸と、光学フィルムを有してなる光学補償フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光子、および該液晶セルと該偏光子との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。
【0271】
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さを有する。
【0272】
(液晶表示装置の種類)
本発明の光学フィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明の光学フィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
【0273】
(TN型液晶表示装置)
本発明の光学フィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.143や、Jpn. J. Appl. Phys. Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
【0274】
(STN型液晶表示装置)
本発明の光学フィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
【0275】
(VA型液晶表示装置)
本発明の光学フィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのReレターデーション値を0乃至150nmとし、Rthレターデーション値を70乃至400nmとすることが好ましい。Reレターデーション値は、20乃至70nmであることが更に好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は70乃至250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は150乃至400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
【0276】
(IPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置)
本発明の光学フィルムは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、または偏光板の保護膜としても特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明の光学フィルムを用いた偏光板は視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、前記偏光板の保護膜と保護膜と液晶セルの間に配置された光学異方性層のリターデーションの値は、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定するのが好ましい。またRth値の絶対値|Rth|は、25nm以下、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは15nm以下に設定するのが好ましいため、本発明の光学フィルムが有利に用いられる。
【0277】
(OCB型液晶表示装置およびHAN型液晶表示装置)
本発明の光学フィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn. J.
Appl. Phys. Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
【0278】
(反射型液晶表示装置)
本発明の光学フィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO9848320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00−65384号に記載がある。
【0279】
(その他の液晶表示装置)
本発明の光学フィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。
【0280】
(自発光型表示装置)
本発明による複屈折性フィルムや光学補償偏光板などの光学部材は、自発光型の表示装置に設けて表示品位の向上などを図ることもできる。その自発光型の表示装置については特に限定はない。ちなみにその例としては、有機ELやPDP、FEDなどがあげられる。自発光型フラットパネルディスプレイにReが1/4波長の複屈折性フィルムを適用することにより直線偏光を円偏光に変換して、反射防止フィルターを形成することができる。
前記において液晶表示装置等の表示装置の形成部品は、積層一体化されていてもよいし、分離状態にあってもよい。また表示装置の形成に際しては、例えばプリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板や保護板などの適宜な光学素子を適宜に配置することができる。かかる素子は、複屈折性フィルムと積層してなる上記した光学部材の形態にて表示装置の形成に供することもできる。
【0281】
(ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム)
本発明の光学フィルムは、またハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへの適用が好ましく実施できる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明の光学フィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明の光学フィルムを好ましく用いることができる。
【0282】
(透明基板)
本発明の光学フィルムは、光学的異方性がゼロに近く、優れた透明性を持っていることから、液晶表示装置の液晶セルガラス基板の代替、すなわち駆動液晶を封入する透明基板としても用いることができる。
液晶を封入する透明基板はガスバリア性に優れる必要があることから、必要に応じて本発明の光学フィルムの表面にガスバリアー層を設けてもよい。ガスバリアー層の形態や材質は特に限定されないが、本発明の光学フィルムの少なくとも片面にSiO2等を蒸着したり、プラズマ処理を行うことが出来る。あるいは塩化ビニリデン系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーなど相対的にガスバリアー性の高いポリマーのコート層を設ける方法が考えられ、これらを適宜使用できる。
【0283】
また液晶を封入する透明基板として用いるには、電圧印加によって液晶を駆動するための透明電極を設けてもよい。透明電極としては特に限定されないが、本発明の光学フィルムの少なくとも片面に、金属膜、金属酸化物膜などを積層することによって透明電極を設けることができる。中でも透明性、導電性、機械的特性の点から、金属酸化物膜が好ましく、なかでも酸化スズを主として酸化亜鉛を2〜15%含む酸化インジウムの薄膜が好ましく使用できる。これら技術の詳細は例えば、特開2001−125079や特開2000−227603などに公開されている。
【実施例】
【0284】
(セルロースアシレートフィルムの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Aを調製した。
【0285】
<セルロースアシレート溶液A組成>
置換度2.85のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール 11質量部
【0286】
別のミキシングタンクに、下記の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液B−1〜B−4を調製した。
【0287】
【表1】

【0288】
<セルロースアセテートフィルム試料1の作製>
セルロースアシレート溶液Aを477質量部に、添加剤溶液B−4の40質量部を添加し、充分に攪拌して、ドープを調製した。ドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率70質量%の場外で剥ぎ取り、フィルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率が3乃至5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み80μmのセルロースアセテートフィルム試料1を作製した。
【0289】
<セルロースアセテートフィルム試料2〜4、101〜103の作製>
セルロースアセテートフィルム1の作製において添加剤溶液および置換度を表2のものに変更した以外はセルロースアセテートフィルム試料1と同様にしてセルロースアセテートフィルム試料2〜4、比較試料101−103を作製した。
【0290】
(セルロースアセテート溶液Zの調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した。シリカ粒子はあらかじめ溶媒に分散した後に投入した。
平均酢化度2.93のセルロースアセテート 100.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 517.6質量部
メタノール(第2溶媒) 77.3質量部
平均粒径16nmのシリカ粒子 0.13質量部
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
光学的異方性を低下する化合物 (A-19) 11.7質量部
波長分散調整剤 (UV-102) 1.2質量部
クエン酸エステル 0.01質量部
【0291】
(セルロースアセテートフィルム試料401の作製)
上記セルロースアセテート溶液Zをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量約60質量%でフィルムをバンドから剥離し、135℃で20分間乾燥させセルロースアセテートフィルムを製造した。出来あがったセルロースアセテートフィルムの残留溶剤量は0.15質量%であり、膜厚は80μmであった。
【0292】
(セルロースアセテートフィルム試料402の作製)
上記セルロースアセテート溶液Zをバンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量60質量%でフィルムをバンドから剥離し、フィルムの巾方向の両端をピンテンターで固定し、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が25%となる間隔を保ちつつ120℃で40分間乾燥させセルロースアセテートフィルムを製造した。出来あがったセルロースアセテートフィルムの残留溶剤量は0.15質量%であり、膜厚は80μmであった。
【0293】
[ノルボルネン系高分子試料201の作製]
炭酸カルシウムの針状結晶微粒子(丸尾カルシウム(株))を、超音波を照射することによりTHF中に均一に分散させた。さらにポリマーとしてペレット状のアートン(JSR(株))を加え、約24時間撹拌し溶解させた。試薬の混合比は、テトラヒドロフランはアートンに対し質量比で4倍、炭酸カルシウムはアートンに対し1.3wt%とした。このようにして得られたポリマー溶液をガラス板上にナイフコーターを用いて展開し、溶媒を蒸発させた。ガラス板よりフィルム状の試料(厚さ約80μm)をはがし、さらに80℃で1時間乾燥を行いノルボルネン系高分子試料201を得た。
【0294】
[セルロースアシレート試料501の作製]
セルロースアセテートフィルム試料401の作成において、130℃で15分の乾燥とした以外は同様の方法で、残留溶剤量が10質量%であるセルロースアセテートフィルム試料501を作成した。
【0295】
これら試料の光学特性等を表2にまとめた。
延伸時はテンシロン万能試験機(ORIENTEC(株)製)を用い、一軸延伸を行った。延伸温度は160℃、延伸速度は4mm/mim、延伸倍率は1.15倍とした。延伸後のレターデーションはエリプソメーターで測定を行った。
試料402に関しては170℃で30分処理することにより、15%収縮させた。
【0296】
本発明のセルロースアセテートフィルム試料401において、セルロースセテートを下記のセルロースアシレートSEF−1、セルロースアシレートSEF−2及びセルロースアシレートSFE−3に変更し、光学的異方性を低下する化合物をA-19の代わりにI-1とし、セルロースアシレートに対し20.0質量部添加した以外は、セルロースアセテートフィルム試料401と全く同様にして、本発明の試料601、602及び603を作製し、その特性を評価した。その結果、セルロースアセテートフィルム試料401と同様に優れた特性をうることができた。結果を表2に示す。
【0297】
(セルロースアシレートSEF−1)
綿から採取したセルロースを原料としてセルロースアシレートSEF−1を合成した。セルロースアシレートSEF−1は、アセチル置換度が1.20、ブチリル置換度が1.50、トータル置換度が2.70、粘度平均重合度が280、含水率が0.2質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度が235mPa・s、平均粒子サイズが1.5mmであって標準偏差0.6mmである粉体であった。また、セルロースアシレート固形分中の残存酢酸量が0.1質量%以下、残留ブタン酸が0.1質量%以下であり、Ca含有量が85ppm、Mg含有量が30ppm、Fe含有量が0.3ppmであり、さらに硫酸基としてのイオウ量を130ppm含むものであった。また6位アセチル基の置換度は0.40、6位ブチリル基の置換度は0.48であった。また、重量平均分子量/数平均分子量比(GPCにより測定)は2.6である。
【0298】
(セルロースアシレートSEF−2)
セルロースアシレートSEF−2は、アセチル置換度2.58、ブチリル置換度1.30、トータル置換度2.88、粘度平均重合度365、含水率0.2質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度290mPa・s、平均粒子サイズ1.4mmであって標準偏差0.6mmである粉体である。
【0299】
(セルロースアシレートSEF−3)
セルロースアシレートSEF−3は、アセチル置換度1.00、プロピオニル置換度1.85、トータル置換度2.85、粘度平均重合度280、含水率0.19質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度105mPa・s、平均粒子サイズ1.5mmであって標準偏差0.4mmの粉体である。
【0300】
【表2】

【0301】
(光学異方性層の形成)
<直接延伸法>
2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンと、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'一ジアミノビフェニルから合成されたポリイミド(下記式A501)の15質量%シクロヘキサノン溶液を上記で作製したセルロースアセテートフィルム試料1上に塗布し、100℃で10分間乾燥処理して、残存溶媒量が7質量%で、厚さが6μm、Rthが240nmであり、Re=0の透明フィルムを得た後、試料1フィルムと共に160℃で15%の縦一軸延伸処理を加えてRe=55nm、Rth=238nmのnx>ny>nzの特性を示す光学異方性層を有する光学補償フィルム1A得た。
【0302】
式 A501
【化68】

【0303】
(偏光板作製)
上記の光学フィルム試料に光学異方性層を積層したサンプル1Aをセルロースフィルム側に偏光子がくるように、偏光子にポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り付け、さらに偏光子の片側に市販のセルロールアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製、Re値は3nm、Rth値は50nm)をポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り付け偏光板1Bを作製した。
更に、両側に市販のセルロールアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士写真フイルム(株)製、Re値は3nm、Rth値は50nm)をポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り付けた偏光板301Bを作製した。
【0304】
(VA型液晶表示装置への実装評価)
<垂直配向液晶セルの作製>
ポリビニルアルコール3質量%水溶液に、オクタデシルジメチルアンモニウムクロライド(カップリング剤)を1質量%添加した。これを、ITO電極付きのガラス基板上にスピンコートし、160℃で熱処理した後、ラビング処理を施して、垂直配向膜を形成した。ラビング処理は、2枚のガラス基板において反対方向となるように実施した。セルギャップ(d)が約4.3μmとなるように2枚のガラス基板を向かい合わせた。セルギャップに、エステル系とエタン系を主成分とする液晶性化合物(Δn:0.06)を注入し、垂直配向液晶セルを作製した。Δnとdとの積は260nmであった。
この液晶セルに、上記の偏光板1Bの複屈折性フィルム側を液晶セル側にし、粘着剤により貼り付け、更に液晶セルの片側に対向の偏光板と吸収軸が直交するように偏光板301Bを粘着剤により貼り付けVA型液晶表示装置を作製した。
そのほかのセルロースアシレートフィルム試料2〜4、401、601、602、603、ノルボルネン系高分子試料201、セルロースアセテートフィルム比較試料101〜103に関しても同様に各々光学補償フィルムおよび偏光板を作成し、VA型液晶表示装置に実装した。
【0305】
さらに、光学補償フィルム1Aの作製法と同様の方法で、光学フィルムおよび透明フィルムの残留溶剤量がそれぞれ2質量%の光学補償フィルム501Aを作成し、偏光板加工およびVA型液晶表示装置への実装も同様に行った。
さらに、光学異方性層を形成する際のポリイミド溶液濃度を変化させ、融合層の膜厚をを変化させたサンプルも作成した。(表3参照)
また、試料501を用い、光学補償フィルム501Aを作成する際に140℃で5分または20分の乾燥処理を行い、それぞれ残留溶剤量1.5質量%、 0.5質量%の光学補償フィルム502A、503Aを作成した。これらの耐久性試験(60℃90%RHで100時間処理)後の表示ムラを観察すると、残量溶剤量が0.5質量%、1.5質量%では許容であったが、2.0質量%ではムラが許容できない状態であった。
【0306】
<収縮法>
セルロースアセテートフィルム試料401の加工:
セルロースアセテートフィルム試料401を170度で25%延伸した。その後、2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンと、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'一ジアミノビフェニルから合成されたポリイミドの15質量%シクロヘキサノン溶液を上記延伸したフィルムに塗布し、100℃で10分間乾燥処理し、残存溶媒量が7質量%で、厚さが6μm、Rthが230nmであり、Re=5の透明フィルムを得た後、170℃で処理し15%収縮させ、Re=63nm、Rth=240nmのnx>ny>nzの特性を示す光学異方性層を有する光学補償フィルム401Bを得た。
偏光板加工、VA型液晶表示装置への実装はセルロースアセテートフィルム試料1と同様に行った。
【0307】
セルロースアセテートフィルム試料402の加工:
セルロースアセテートフィルム試料402は、2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンと、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'一ジアミノビフェニルから合成されたポリイミドの15質量%シクロヘキサノン溶液を上記で作製したセルロースアセテートフィルム試料402上に塗布し、100℃で10分間乾燥処理して、残存溶媒量が7質量%で、厚さが6μm、Rthが230nmであり、Re=5の透明フィルムを得た後、170℃で処理し15%収縮させ、Re=60nm、Rth=235nmのnx>ny>nzの特性を示す光学異方性層を有する光学補償フィルム402Aを得た。
偏光板加工、VA型液晶表示装置への実装はセルロースアセテートフィルム試料1と同様に行った。
また、光学異方性層の延伸条件を以下のように変えた場合にも同様に偏光板を作製し、VA型液晶表示装置を作成した。
【0308】
<その他延伸条件>
5%延伸条件:
光学異方性層製造時に、厚さが7μm、Rthが230nmであり、Re=0の透明フィルムを得た後、セルロースアセテートフィルム試料1フィルムと共に150℃で5%の縦一軸延伸処理を加えてRe=58nm、Rth=246nmのnx>ny>nzの特性を示す光学異方性層を得た。
【0309】
0%延伸条件:
0%延伸条件では、どのセルロースアシレートフィルム、ノルボルネン系高分子試料を用いた場合にも光学異方性層のReが0となり、目的とするフィルムが製造できなかった。
110℃延伸条件:
セルロースアセテートフィルム1〜4に関し110℃延伸条件を試みたが、延伸温度がフィルムのTg以下でありフィルムに微少な亀裂が入り目的のフィルムが出来なかった。
【0310】
<光学異方性層形成:転写法>
2,2'−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンと、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'一ジアミノビフェニルから合成されたポリイミドの15質量%シクロヘキサノン溶液を上記で作製したセルロースアセテートフィルム試料1上に塗布し、100℃で10分間乾燥処理して、残存溶媒量が7質量%で、厚さが6μm、Rthが240nmであり、Re=0の透明フィルムを得た後、試料1フィルムと共に160℃で15%の縦一軸延伸処理した。
さらに、片面に粘着材を貼合した未延伸の試料1の粘着材側に、該縦一軸延伸処理したポリイミドが塗布されている面を貼合し、延伸した試料1のみをはがし取ることにより、未延伸の試料1上に延伸したポリイミド層を転写し、Re=55nm、Rth=240nmのnx>ny>nzの特性を示す光学異方性層を有する光学補償フィルムを得た。さらに、得られた光学補償フィルムを用いて偏光板を作製し、VA型液晶表示装置を作成した。
【0311】
<評価試験>
[パネル評価]
<位相差膜の評価および作製した液晶表示装置の漏れ光の測定>
作成した液晶表示装置の透過率の視野角依存性を測定した。抑角は正面から斜め方向へ10°毎に80°まで、方位角は水平右方向(0°)を基準として10°毎に360°まで測定した。黒表示時の輝度は正面方向から抑角が増すにつれ、漏れ光透過率も上昇し、抑角70°近傍で最大値をとることがわかった。また黒表示透過率が増すことで、コントラストが悪化することもわかった。そこで、正面の黒表示透過率と抑角60°の漏れ光透過率の最大値で、視野角特性を評価することにした。
また、耐久性試験として、60℃90%RHで100時間の処理後の表示ムラの観察を行った。ムラはパネルの四隅に主に発生していた。
【0312】
得られた結果を表3に示す。
本発明の試料では、転写法による作製において液晶表示の視野角特性がよく、また、パネルに現れるムラも少ないことが分かる。さらに、延伸時のレタデーションが少ないため、転写という工程を省いた場合であっても、液晶表示の視野角特性がよく、また、パネルに現れるムラも少ないことが分かる。
【0313】
表示特性変動の評価
◎:視野角特性差が極めてわずかであり良好
○:視野角特性差がわずかであり良好
△:視野角特性差がわずかながら見られる
×:視野角特性差が大きい
表示ムラの評価
◎:ムラが極めてわずかであり良好
○:ムラがわずかであり良好
△:ムラがわずかながら見られる
×:ムラが大きい
【0314】
<厚み計測>
前記各光学フィルムは、SEMによってその断面を観察し、融合層の厚みdyを測定した。
【0315】
<密着評価>
各光学フィルムと光学異方性層との密着性は、密着性を評価する試験として、JIS K 5400 8.5.1の規定に基づいて、基板目試験を行い、前記規定に基づいて評価を行った。前記規定による0点〜10点(2点きざみ)の評価をについて、10点を○、8点または6点を△、6点未満を×とした。
融合層の厚みおよび密着評価結果は表3に示した。
【0316】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Re(λ)およびRth(λ)が、下記式をみたし、アシル置換基がアセチル基のみからなり、その全置換度が2.50〜3.00であるセルロースアセテートからなることを特徴とする光学フィルム。
0≦Re(590)≦5かつ|Rth(590)|≦10
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
【請求項2】
前記光学フィルムが、式(IX)をみたすことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
(IX)|ReMAX−ReMIN|≦3かつ|RthMAX−RthMIN|≦5
[式中、ReMAX、RthMAXは任意に切り出した1m四方のフィルムの最大レターデーション値(単位:nm)、ReMIN、RthMINは最小レターデーション値(単位:nm)である。]
【請求項3】
15%延伸または収縮した際のRe、およびRthの少なくとも一方の変化が0〜20nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
下記式(IV)を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
(IV)|Re(400)−Re(700)|≦10かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35
【請求項5】
光弾性係数が、25×10-13cm2/dyne以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項6】
フィルムの光学的異方性を低下させ、オクタノール−水分配係数(LogP値)が0〜7である、多価アルコールエステル化合物、カルボン酸エステル化合物、多環カルボン酸化合物、及びビスフェノール誘導体の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項7】
フィルムの光学的異方性を低下させ、オクタノール−水分配係数(LogP値)が0〜7であり、且つ下記一般式(1)〜(18)のいずれかで表される化合物の少なくとも1種を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【化1】


式中、R11〜R13はそれぞれ独立に、炭素数が1〜20の脂肪族基を表し;R11〜R13は互いに連結して環を形成してもよい;
【化2】


一般式(2)および(3)中、Zは炭素原子、酸素原子、硫黄原子または−NR25−を表し;R25は水素原子またはアルキル基を表し;Zを含んで構成される5または6員環は置換基を有していてもよく;Y21及びY22はそれぞれ独立に、炭素数が1〜20の、エステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基またはカルバモイル基を表し、Y21及びY22は互いに連結して環を形成してもよく;mは1〜5の整数を表し、nは1〜6の整数を表す;
【化3】


一般式(4)〜(12)中、Y31〜Y70はそれぞれ独立に、炭素数が1〜20のエステル基、炭素数が1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数が1〜20のアミド基、炭素数が1〜20のカルバモイル基またはヒドロキシ基を表し;V31〜V43はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の脂肪族基を表し;L31〜L80はそれぞれ独立に、原子数0〜40かつ、炭素数0〜20の2価の飽和の連結基を表し;ここで、L31〜L80の原子数が0であるということは、連結基の両端にある基が直接に単結合を形成していることを意味し;V31〜V43およびL31〜L80は、さらに置換基を有していてもよい;
【化4】


式中、R1aはアルキル基またはアリール基を表し;R2aおよびR3aは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し;R1a、R2aおよびR3aの炭素原子数の総和は10以上であり、各々、アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい;
【化5】


式中、R4aおよびR5aはそれぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を表し;R4aおよびR5aの炭素原子数の総和は10以上であり、各々、アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい;
【化6】


式中、R1b、R2bおよびR3bはそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表し;X15は下記の連結基群1から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表し;Y15は水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す;
(連結基群1) 単結合、−O−、−CO−、−NR4b−、アルキレン基及びアリーレン基を表し、R4bは水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す;
【化7】


式中、Q1、Q2およびQ3はそれぞれ独立に、5又は6員環を表し;X16はB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す)、N、P、又はP=Oを表す;
【化8】


式中、X17はB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す)、又はNを表し;R11c、R12c、R13c、R14c、R15c、R21c、R22c、R23c、R24c、R25c、R31c、R32c、R33c、R34c及びR35cはそれぞれ水素原子または置換基を表す;
【化9】


式中、R1dはアルキル基またはアリール基を表し、R2dおよびR3dはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基またはアリール基を表し;アルキル基およびアリール基は置換基を有していてもよい。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルムを、偏光子の少なくとも一方の保護フィルムとしたことを特徴とする偏光板。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルム、または請求項8に記載の偏光板を用いたことを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2012−163982(P2012−163982A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−104967(P2012−104967)
【出願日】平成24年5月1日(2012.5.1)
【分割の表示】特願2010−162315(P2010−162315)の分割
【原出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】