説明

光学フィルム、偏光板、画像表示装置、及び光学フィルムの製造方法

【課題】干渉ムラが抑制され、十分な硬度を有し、更にカールが抑制された光学フィルムを提供すること。
【解決手段】透明基材上に、下記(a)、(b)及び(c)を含有するハードコート層形成用組成物から形成されるハードコート層を有する光学フィルムで、ハードコート層形成用組成物を硬化させた層の屈折率が1.45以上1.55以下であり、下記(b)に対する下記(a)の含有量が0.5質量%以上10質量%以下である光学フィルム。
(a)1分子中に2つ以下の官能基を有する化合物であって、質量平均分子量Mwが40<Mw<500で、Hoy法によるSP値SPが19<SP<24.5である化合物
(b)1分子中に3つ以上の官能基を有する化合物であって、質量平均分子量Mwが100<Mw<1600で、Hoy法によるSP値SPが19<SP<24.5で、70<(Mw/(1分子中の官能基数))<300である化合物
(c)透明基材に対する溶解能及び膨潤能を有する溶剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、偏光板、画像表示装置、及び光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、蛍光表示ディスプレイ(VFD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置では、表示面への傷付きを防止するために、透明基材上にハードコート層を有するハードコートフィルムを設けることが好適である。
また、近年のLCDのように高精細、高品位化された画像表示装置の場合には、上記表示面への傷付き防止の他に、表示面での外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するためにハードコート層上に反射防止層又は反射防止層を有する光学フィルムを設けることも行われている。
【0003】
このようなハードコート層を設けた光学フィルムにおいては、透明基材とハードコート層との界面による反射光と、ハードコート層表面からの反射光の干渉により干渉縞が生じ、更には色味がついた干渉ムラが発生する場合がある。干渉ムラは、画像表示装置の表示画像の視認性や画像品位を損なうため、その改善が求められている。
干渉ムラの改善方法として、例えば、特許文献1には、有機溶媒と樹脂組成部とを主成分とする塗料をフィルム基体に塗工してハードコート層を形成する際に、フィルム基体の表面を塗料により溶解(膨潤)させ、ハードコート層とフィルム基体との界面を一体化させることで干渉ムラを防止できることが記載されている。
特許文献2には、界面反射による干渉縞の発生を抑制するために、平均分子量と官能基数が異なる2種類の樹脂と、基材に対して浸透性を有する溶剤とを含む組成物からハードコート層を形成することが記載されている。また、特許文献3では、界面反射による干渉縞の発生防止に加え、カール抑制や基材とハードコート層間の密着性向上等のために、ラジカル重合性官能基を有する樹脂と低分子のカチオン重合性官能基を有する樹脂とを硬化させてハードコート層を形成し、かつカチオン重合性官能基を有する樹脂を基材に浸透させて硬化させることが記載されている。
【0004】
また、干渉ムラについての記載はないが、特許文献4には、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びヒドロキシエチルメタクリレートの2種のモノマーと、酸化ジルコニウムと、溶剤として酢酸エチルやアセトンを含むハードコート層形成用組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−263082号公報
【特許文献2】特開2006−299221号公報
【特許文献3】特開2007−237483号公報
【特許文献4】特開2009−187670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3に記載の手法でも、透明基材とハードコート層との間の界面反射により生じる干渉ムラがある程度抑制される。しかしながら、最近の画像表示装置はコントラスト比が高く、より黒締りのある高品位画像の要求が高まってきている。また、三波長光源下では干渉ムラが強調され易く、これらに応じて干渉ムラ抑制もより高いレベルのものが求められている。
干渉ムラの原因となる界面反射は、透明基材とハードコート層との屈折率差が大きく、両者の間に明瞭な界面がある場合に起こり易い。特許文献4に記載の、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、及び酸化ジルコニウム(およそ1.64)を含む組成物を硬化して得られたハードコート層は、酸化ジルコニウムを含むため屈折率が高い(およそ1.58)ため、干渉ムラ抑制が十分でないと推測される。
また、本発明者らの検討結果、特許文献1〜3に記載されるような基材に対して溶解性を有する溶剤や浸透性を有する溶剤の基材の溶解や基材への浸透の程度によっては、ハードコート層形成時に硬化に伴う収縮を透明基材のハードコート層側が強く受けることなりカールが生じてしまう場合や、基材とハードコート層との間の界面がなくならず界面反射を有効に抑えられない場合があることが分かった。
【0007】
本発明の目的は、干渉ムラが抑制され、十分な硬度を有し、更にカールが抑制された光学フィルムを提供することである。
本発明の別の目的は、該光学フィルムの製造方法、該光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いた偏光板、及び該光学フィルム又は偏光板を有する画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解消すべく鋭意検討した結果、ハードコート層形成用組成物に用いる溶剤として、基材に対する溶解能と膨潤能を有する溶剤を用いることで、基材の膨潤によるモノマーの基材中への浸透と基材自体の溶解により基材とモノマーとが効果的に混ざり合って基材とハードコート層との界面がなくなり、干渉ムラを従来と比べて抜本的に抑えることができると分かった。また、基材との親和性がよく(SP値が近く)、低分子量のモノマーを使用することで、基材への該モノマーの浸透が進み、基材とハードコート層との混じり合いに効果的であり、更に官能基数の小さい低分子量モノマーを使用することでカールを抑制できることが分かった。一方で、基材への浸透性が低い、高分子量で多官能モノマーを使用することで、硬度の高いハードコート層が得られる。
即ち、上記本発明の目的は、下記手段により達成することができる。
【0009】
[1]
透明基材上に、下記(a)、(b)及び(c)を含有するハードコート層形成用組成物から形成されるハードコート層を有する光学フィルムであって、
該ハードコート層の屈折率が1.45以上1.55以下であり、
下記(b)に対する下記(a)の含有量が0.5質量%以上10質量%以下である光学フィルム。
(a)1分子中に2つ以下の官能基を有する化合物であって、質量平均分子量Mwが40<Mw<500で、Hoy法によるSP値SPが19<SP<24.5である化合物
(b)1分子中に3つ以上の官能基を有する化合物であって、質量平均分子量Mwが100<Mw<1600で、Hoy法によるSP値SPが19<SP<24.5で、70<(Mw/(1分子中の官能基数))<300である化合物
(c)前記透明基材に対する溶解能及び膨潤能を有する溶剤
[2]
前記(c)の溶剤が、酢酸メチル、アセトン及びメチルエチルケトンの少なくとも1種を含む、[1]に記載の光学フィルム。
[3]
前記(a)のMwが30<Mw<250である、[1]又は[2]に記載の光学フィルム。
[4]
前記(a)のSPが22<SP<24.5である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[5]
前記(b)として2種以上の化合物を含有し、少なくとも1種がウレタン化合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[6]
前記(c)が、前記透明基材に対する溶解能を有する第1の溶剤及び前記透明基材に対する膨潤能を有する第2の溶剤をそれぞれ1種以上含み、
全溶剤中での前記第1の溶剤の割合が前記第2の溶剤の割合以上である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の光学フィルム。
[7]
前記透明基材がセルロースアシレートフィルムである、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[8]
前記ハードコート層のヘイズが1.0%以下である、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の光学フィルム。
[9]
透明基材上に、ヘイズが1.0%以下であるハードコート層を有する光学フィルムであって、光干渉法による反射率スペクトルをフーリエ変換して得られたパワースペクトルのピーク強度PV値が0.000〜0.006である光学フィルム。
[10]
前記PV値が0.000〜0.003である、請求項9に記載の光学フィルム。
[11]
[1]〜[10]のいずれか1項に記載の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして含む偏光板。
[12]
[1]〜[10]のいずれか1項に記載の光学フィルム又は[11]に記載の偏光板を有する画像表示装置。
[13]
[1]〜[8]のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記透明基材上に、前記ハードコート層形成用組成物を塗布、硬化して前記ハードコート層を形成する工程を有する、光学フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、干渉ムラが抑制され、十分な硬度を有し、カールが抑制された光学フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】薄膜の光干渉を説明する図である。
【図2】光干渉法により得られる薄膜の反射率スペクトルの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」等も同様である。
なお、本発明においては、「モノマーに相当する繰り返し単位」、及び「モノマーに由来する繰り返し単位」とは、モノマーの重合後に得られる成分が繰り返し単位となることを意味している。
【0013】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムの一態様は、透明基材上に、下記(a)、(b)及び(c)を含有するハードコート層形成用組成物から形成されるハードコート層を有する光学フィルムで、ハードコート層の屈折率が1.45以上1.55以下であり、下記(b)に対する下記(a)の含有量が0.5質量%以上10質量%以下である。
(a)1分子中に2つ以下の官能基を有する化合物であって、質量平均分子量Mwが40<Mw<500で、Hoy法によるSP値SPが19<SP<24.5である化合物
(b)1分子中に3つ以上の官能基を有する化合物であって、質量平均分子量Mwが100<Mw<1600で、Hoy法によるSP値SPが19<SP<24.5で、70<(Mw/(1分子中の官能基数))<300である化合物
(c)透明基材に対する溶解能及び膨潤能を有する溶剤
【0014】
上記構成のハードコート層形成用組成物により、透明基材上にハードコート層を形成すると、透明基材とハードコート層との間の界面反射が抑えられ、干渉ムラを抑制することができる。特に、透明基材としてセルロースエステルフィルム(なかでもセルロースアシレートフィルム)を用いた場合に、干渉ムラ抑制効果が大きい。その理由としては以下のような機構が働いているためと推定している。即ち、(c)の溶剤がセルロースエステルフィルムを膨潤させることに伴い(a)及び(b)の化合物がセルロースエステルフィルムに浸透する。また(c)の溶剤がセルロースエステルフィルムを溶解することでセルロースエステルがハードコート層側に拡散する。ここで、(a)及び(b)の化合物の透明基材中への浸透度が異なるため、セルロースエステルフィルムとハードコート層との間に、化合物分布がセルロースエステルフィルム側からハードコート層側にかけて徐々に変化する領域(以下、「グラデーション領域」又は「グラデーション層」と呼ぶ)が形成される。このため、セルロースエステルフィルムとハードコート層との間の屈折率変化が非常に緩やかとなり(界面がなくなり)、界面反射が抑えられ、干渉ムラが抑制される。なお、ハードコート層から支持体にかけた化合物分布は、界面部分で滑らかに分布が変化していれば干渉ムラは抑制される。
以下、まずハードコート層形成用組成物について詳細に説明する。
【0015】
[ハードコート層形成用組成物]
[(a)1分子中に2つ以下の官能基を有する化合物]
本発明に係るハードコート層形成用組成物に含有される(a)1分子中に2つ以下の官能基を有する化合物について説明する。
本発明に用いる(a)1分子中に2つ以下の官能基を有する化合物は、質量平均分子量Mwが40<Mw<500で、Hoy法によるSP値SPが19<SP<24.5である化合物である。このような分子量とSP値を有する化合物は、セルロースエステルフィルムへ浸透し易く、セルロースエステルフィルムとハードコート層との間のグラデーション領域形成に好ましい化合物である。また、官能基数が2つ以下であるため硬化時の収縮が小さく、セルロースエステルフィルム側へ浸透させ硬化させてもカールを生じさせることがない。
1分子中の官能基の数は1又は2が好ましく、1がより好ましい。
【0016】
(a)1分子中に2つ以下の官能基を有する化合物としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性官能基(重合性の不飽和二重結合)を有する化合物が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基及び−C(O)OCH=CHを有する化合物好ましい。
【0017】
(a)1分子中に2つ以下の官能基を有する化合物の具体例としては、
ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、などのエチレンユニット繰り返し数8以下のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、などのプロピレンユニット繰り返し数6以下のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類;
2,2−ビス{4−(メタクリロキシ・エトキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル}プロパン等のエチレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類;
イソボルニル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、脂肪族エポキシ(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、β−カルボキエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の単官能の(メタ)アクリル酸エステル類;
等が挙げられる。
【0018】
(a)1分子中に2つ以下の官能基を有する化合物の質量平均分子量Mwは40<Mw<500とする。グラデーション領域の形成による干渉ムラ抑制の観点から、好ましくは40<Mw<400であり、より好ましくは40<Mw<200である。
なお、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算質量平均分子量である。
【0019】
(a)1分子中に2つ以下の官能基を有する化合物の、Hoy法によるSP値SPは19<SP<24.5とする。グラデーション領域の形成による干渉ムラ抑制の観点から、好ましくは19.5<SP<24.5であり、より好ましくは20<SP<24.5である。
なお、本発明におけるSP値(溶解性パラメーター)は、Hoy法によって算出した値であり、Hoy法は、POLYMER HANDBOOK FOURTH EDITIONに記載がある。
【0020】
(a)1分子中に2つ以下の官能基を有する化合物としては市販されているものを用いることもでき、日油株式会社製のブレンマーE、同ブレンマーPE―90、同ブレンマーGMR、同ブレンマーPME−100、同ブレンマーPME−200、同ブレンマーPME−400、同ブレンマーPDE―200、同ブレンマーPDE―400、新中村化学社製のABE10、同ABE300、同A−200、同A−400、大阪有機化学工業株式会社製のビスコート#195、ダイセル工業のEB4858等を挙げることができる。
【0021】
本発明に係るハードコート層形成用組成物中の(a)1分子中に2つ以下の官能基を有する化合物の含有量は、ハードコート組成物中に含まれる多官能材料に対して0.5質量%以上10質量%以下とする。0.5〜9質量%が好ましく、0.5〜8質量%がより好ましい。(a)の添加量を上げることでカールが顕著に良化する一方、多量に添加しすぎると鉛筆硬度が下がる場合もあり、カールを良化させつつも硬度が良い領域をとる観点からは前記添加量領域が好ましい。
ただし上記添加量は、単官能の化合物と2官能の化合物とで最適範囲が±5%ずれてもよい。これは(a)として2官能の化合物の使用時に比べて単官能の化合物の使用時のカール良化効果が大きいためである。
【0022】
[(b)1分子中に3つ以上の官能基を有する化合物]
次に、本発明に係るハードコート層形成用組成物に含有される(b)1分子中に3つ以上の官能基を有する化合物について説明する。
本発明に用いる(b)1分子中に2つ以下の官能基を有する化合物は、質量平均分子量Mwが100<Mw<1600で、Hoy法によるSP値SPが19<SP<24.5で、70<(Mw/(1分子中の官能基数))<300である化合物である。このような分子量とSP値を有する化合物は、上記の(a)1分子中に2つ以下の官能基を有する化合物に比べてセルロースエステルフィルムへの浸透はし難いが相溶性は良く、上記(a)の化合物と併用することで、グラデーション領域を形成し、かつグラデーション層とハードコート層の屈折率界面も実質なくすことができる。
また(b)1分子中に3つ以上の官能基を有する化合物はハードコート層のバインダー及び硬化剤として機能することができ、塗膜の硬度や耐擦傷性を向上させることが可能となる。
1分子中の官能基の数は、3〜20であることが好ましく、3〜10であることがより好ましく、3〜5であることが更に好ましい。
(b)1分子中に3つ以上の官能基を有する化合物は、本発明のハードコート層形成用組成物において2種類以上併用することも好ましい。
【0023】
(b)1分子中に3つ以上の官能基を有する化合物としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性官能基(重合性の不飽和二重結合)を有する化合物が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基及び−C(O)OCH=CHを有する化合物好ましい。特に好ましくは下記の1分子内に3つ以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を用いることができる。
【0024】
重合性の官能基を有する化合物の具体例としては、アルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、エチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類、エポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0025】
中でも、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル類が好ましい。例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0026】
(b)1分子中に3つ以上の官能基を有する化合物の質量平均分子量Mwは100<Mw<1600とする。グラデーション領域の形成による干渉ムラ抑制とハードコート層の硬度向上の観点から、好ましくは200<Mw<1600である。
なお、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定されるポリスチレン換算質量平均分子量である。
【0027】
(b)1分子中に3つ以上の官能基を有する化合物の、Hoy法によるSP値SPは19<SP<24.5とする。グラデーション領域の形成による干渉ムラ抑制の観点から、好ましくは19.5<SP<24.5であり、より好ましくは20<SP<24.5である。
なお、本発明におけるSP値(溶解性パラメーター)は、Hoy法によって算出した値であり、Hoy法は、POLYMER HANDBOOK FOURTH EDITIONに記載がある。
【0028】
(b)1分子中に3つ以上の官能基を有する化合物の質量平均分子量Mwと1分子中の官能基数との比率は、70<(Mw/(1分子中の官能基数))<300とする。好ましくは70<(Mw/(1分子中の官能基数))<290であり、より好ましくは70<(Mw/(1分子中の官能基数))<280である。質量平均分子量Mwと官能基数との比率をこの範囲とすることで架橋基密度が高くなり、高硬度にすることができる。
なお、(b)1分子中に3つ以上の官能基を有する化合物を2種類以上併用した場合、(Mw/(1分子中の官能基数))については併用した化合物の平均値が上記範囲にあることが好ましい。
【0029】
(b)1分子中に3つ以上の官能基を有する化合物としては市販されているものを用いることもできる。例えば、(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類としては、日本化薬(株)製KAYARAD DPHA、同DPCA−30、同PET30を挙げることができる。また、ポリウレタンポリアクリレートとしては、新中村化学工業(株)15HA、同U4HA、同UA306H、同EB5129等を挙げることができる。
【0030】
本発明に係るハードコート層形成用組成物中の(b)1分子中に3つ以上の官能基を油酢売る化合物の含有量は、十分な重合率を与えて硬度などを付与するため、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、40〜70質量%が好ましく、45〜65質量%がより好ましく、50〜65質量%が更に好ましく、55〜65質量%が最も好ましい。
【0031】
[(c)溶剤]
本発明に係るハードコート層形成用組成物に含有される(c)透明基材に対する溶解能及び膨潤能を有する溶剤について説明する。
【0032】
本発明に係るハードコート層形成用組成物に用いる(c)溶剤は、透明基材に対する溶解能及び膨潤能を有する溶剤である。
(c)溶剤が透明基材に対して溶解能及び膨潤能を有することで、透明基材とハードコート層との間の界面反射を抑えられ、干渉ムラを効果的に抑制することができる。
ここで、本発明において透明基材に対して溶解能を有する溶剤とは、24mm×36mm(厚み80μm)の大きさの基材フィルムを該溶剤の入った15ccの瓶に室温下(25℃)で60秒浸漬させて取り出した後に、浸漬させた溶液をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で分析したとき、基材成分のピーク面積が400mV/sec以上である溶剤のことを意味する。若しくは24mm×36mm(厚み80μm)の大きさの基材フィルムを該溶剤の入った15ccの瓶に室温下(25℃)で24時間経時させ、適宜瓶を揺らすなどして、フィルムが完全に溶解して形をなくすものも、基材に対して溶解能を有する溶剤を意味する。
また、透明基材に対して膨潤能を有する溶剤とは、24mm×36mm(厚み80μm)の大きさの基材フィルムを該溶剤の入った15ccの瓶に縦に入れ、25℃で60秒浸漬し、適宜該瓶を揺らしながら観察し、折れ曲がりや変形が見られる溶剤を意味する(フィルムは膨潤した部分の寸度が変化し折れ曲がりや変形として観察される。膨潤能の無い溶媒では折れ曲がりや変形といった変化が見られない)。
【0033】
(c)溶剤としては、透明基材に対して溶解能及び膨潤能の両方の機能を有する溶剤でもよいし、透明基材に対して溶解能を有する第1の溶剤と膨潤能を有する第2の溶剤をそれぞれ1種以上含む混合溶剤であってもよい。透明基材に対して溶解能及び膨潤能の両方の機能を有する溶剤を2種類以上用いてもよい。
【0034】
以下、透明基材としてトリアセチルセルロースフィルムを用いる場合を例に、溶解能又は膨潤能を有する溶剤を例示する。
基材に対して溶解能を有する第1の溶剤としては、例えば酢酸メチル、アセトン、メチレンクロライドなどが挙げられる。
基材に対して膨潤能を有する第2の溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)が挙げられる。
また、トリアセチルセルロースフィルムに対して溶解能も膨潤能も持たない溶剤としては、例えば、メチルイソブチルケトン(MIBK)が挙げられる。本発明では、このような溶解能も膨潤能も持たない溶剤も、本願発明の効果を損なわない限り用いることができる。溶解能及び膨潤能を持つ溶剤の効果を得るために、溶解能も膨潤能も持たない溶剤の添加量は、使用する全溶剤に対して10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%が特に好ましい。
【0035】
透明基材とハードコート層との間のグラデーション領域の形成による干渉ムラ抑制の観点から、(c)溶剤には、酢酸メチル、アセトン及びメチルエチルケトンの少なくとも1種を含むことが好ましい。好ましくは、酢酸メチル又はアセトン(前記第1の溶剤)と、メチルエチルケトン(前記第2の溶剤)とを含む混合溶剤である。
【0036】
透明基材とハードコート層との間のグラデーション領域の形成による干渉ムラ抑制の観点から、(c)溶剤は、基材に対して溶解能を有する前記第1の溶剤と膨潤能を有する前記第2の溶剤をそれぞれ1種以上含む混合溶剤であり、全溶剤中での第1の溶剤の割合が第2の溶剤の割合以上であるが好ましい。全溶剤中での第1の溶剤と第2の溶剤の割合((第1の溶剤):(第2の溶剤))が50:50〜95:5であることが、干渉ムラ抑制に適したグラデーション領域の形成とハードコート層の膜硬度の観点から好ましい。
【0037】
本発明のハードコート層形成用組成物中の全溶剤量は、組成物中の固形分の濃度が好ましくは1〜70質量%の範囲、より好ましくは20〜70質量%の範囲、更に好ましくは40〜70質量%が好ましく、45〜65質量%がより好ましく、50〜65質量%が更に好ましく、55〜65質量%が最も好ましい。
【0038】
[(d)光重合開始剤]
本発明に係るハードコート層形成用組成物には(d)光重合開始剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類、ロフィンダイマー類、オニウム塩類、ボレート塩類、活性エステル類、活性ハロゲン類、無機錯体、クマリン類などが挙げられる。光重合開始剤の具体例、及び好ましい態様、市販品などは、特開2009−098658号公報の段落[0133]〜[0151]に記載されており、本発明においても同様に好適に用いることができる。
【0039】
「最新UV硬化技術」{(株)技術情報協会}(1991年)、p.159、及び、「紫外線硬化システム」加藤清視著(平成元年、総合技術センター発行)、p.65〜148にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
【0040】
本発明に係るハードコート層形成用組成物中の光重合開始剤の含有量は、ハードコート層形成用組成物に含まれる重合可能な化合物を重合させるのに十分多く、かつ開始点が増えすぎないよう十分少ない量に設定するという理由から、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、0.5〜8質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0041】
[(e)レベリング剤]
本発明に係るハードコート層形成用組成物に含んでもよい(e)レベリング剤について説明する。
レベリング剤は、下記含フッ素ポリマー(1)及び含フッ素ポリマー(2)から選ばれる少なくともいずれかであることが好ましい。
【0042】
含フッ素ポリマー(1)は、下記一般式[1]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーに由来する重合単位を全重合単位に対して50質量%より多く含有するポリマーである。
【0043】
【化1】

【0044】
(上記一般式[1]において、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を表し、Lは2価の連結基を表し、nは1以上18以下の整数を表す。)
【0045】
含フッ素ポリマー(1)において、一般式[1]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーに由来する繰り返し単位の含有量は、含フッ素ポリマー(1)を構成する全重合単位の50質量%を超えるが、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。
【0046】
一般式[1]においてR0は、水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を表し、水素原子、メチル基がより好ましい。
nは1以上18以下の整数を表し、4〜12がより好ましく、6〜8が更に好ましく、8であることが最も好ましい。
また、含フッ素ポリマー(1)中に一般式[1]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位が2種類以上構成単位として含まれていても良い。
【0047】
含フッ素ポリマー(1)において、一般式[1]は下記一般式[1−2]であることが好ましい。
【0048】
【化2】

【0049】
(上記一般式[1−2]において、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子、又は−N(R)−を表し、mは1以上6以下の整数を表し、nは1以上18以下の整数を表す。ここで、Rは水素原子又は置換基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基を表す。)
【0050】
一般式[1−2]において、Rは水素原子、ハロゲン原子、又はメチル基を表し、水素原子、メチル基がより好ましい。
Xは酸素原子、硫黄原子、又は−N(R2)−を表し、酸素原子又は−N(R2)−がより好ましく、酸素原子が更に好ましい。R2は、水素原子又は置換基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、置換基としてはフェニル基、ベンジル基、エーテル酸素などが挙げられる。水素原子又は置換基を有しても良い炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、水素原子又はメチル基が更に好ましい。
mは1〜6の整数を表し、1〜3がより好ましく、1であることが更に好ましい。
nは1〜18の整数を表し、4〜12がより好ましく、6〜8が更に好ましく、8であることが最も好ましい。
含フッ素ポリマー(1)中に、一般式[1−2]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位が2種類以上構成単位として含まれていても良い。
【0051】
次に、含フッ素ポリマー(2)について説明する。
含フッ素ポリマー(2)は、下記一般式[2]で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーに由来する重合単位と、ポリ(オキシアルキレン)アクリレート及びポリ(オキシアルキレン)メタクリレートから選ばれる少なくともいずれかに由来する重合単位とを含むポリマーである。
【0052】
【化3】

【0053】
(上記一般式[2]において、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは酸素原子、イオウ原子又は−N(R)−を表し、mは1以上6以下の整数、nは1〜3の整数を表す。Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
【0054】
含フッ素ポリマー(2)におけるフルオロ脂肪族基の一つは、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)若しくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれるものであることが好ましい。これらのフルオロ脂肪族化合物の製造法に関しては、例えば、「フッ素化合物の合成と機能」(監修:石川延男、発行:株式会社シーエムシー、1987)の117〜118ページや、「Chemistry of Organic Fluorine Compounds II」(Monograph 187,Ed by Milos Hudlicky and Attila E.Pavlath,American Chemical Society 1995)の747−752ページに記載されている。
【0055】
上記フルオロ脂肪族基含有モノマー[1]及び[2]、並びに含フッ素ポリマー(1)及び(2)の具体例については、特開2010−1549434号公報、特開2010−121137号公報、特開2004−331812号公報、及び特開2004−163610号記載の具体例を挙げることができるが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0056】
また、レベリング剤としては、特許4474114号に記載されているフルオロ脂肪族基含有ポリマーも好ましい。特許4474114号に記載のフルオロ脂肪族基含有ポリマーの組成比違いとして、フルオロ脂肪族基含有の重合単位の比率が50〜70%の範囲のフルオロ脂肪族基含有ポリマーもレベリング剤として用いることもできる。
【0057】
本発明において、レベリング剤は、ハードコート層の塗布ムラを解消するために、ハードコート層表面に十分量が並ぶことが望ましい。しかしながら、ハードコート層の上に反射防止層を積層する際、ハードコート層に含有されたレベリング剤が、ハードコート層と反射防止層との界面に残ったままだと密着性を悪化させ、耐擦傷性を著しく減損させてしまう。このため、レベリング剤は反射防止層を積層した際に速やかに反射防止層中に抽出され、界面に残らないことが重要となる。含フッ素ポリマー(1)は、フルオロ脂肪族基の末端が水素原子であることにより、末端がフッ素原子である含フッ素ポリマー(2)よりも上層の塗布液をはじきにくく、速やかに上層に抽出されて、反射防止層とハードコート層との界面に残り難いという理由から、含フッ素ポリマー(1)がより好ましい。
【0058】
本発明に係るハードコート層形成用組成物中のレベリング剤の含有量は、十分なレベリング性を付与して塗布ムラを改良してかつハードコート層と他の層の界面に残存しないよう十分少なく設定する必要がある理由から、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、0.0005質量%〜2.5質量%が好ましく、0.005質量%〜0.5質量%がより好ましい。
【0059】
[(f)シリカ微粒子]
本発明に係るハードコート層形成用組成物に用いることのできるシリカ微粒子のサイズ(1次粒径)は15nm以上100nm未満、更に好ましくは20nm以上80nm以下、最も好ましくは25nm以上60nm以下であり、微粒子の平均粒径は電子顕微鏡写真から求めることができる。無機微粒子の粒径が小さすぎると、レベリング剤の表面偏在性を高める効果が少なくなり、大きすぎるとハードコート層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりといった外観、積分反射率が悪化する。シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球形が最も好ましいが、不定形等の球形以外であっても問題無い。また、シリカ微粒子は粒子平均粒子サイズの異なるものを2種以上併用して用いてもよい。
【0060】
本発明に使用することができるシリカ微粒子は塗布液中での分散性向上、膜強度向上のために表面処理を施していてもよく、表面処理方法の具体例及びその好ましい例は、特開2007−298974号公報の[0119]〜[0147]に記載のものと同様である。
【0061】
シリカ微粒子の具体的な例としては、MiBK−ST、MiBK−SD(以上、平均粒子径15nm、日産化学工業(株)製シリカゾル)、MEK−ST−L(平均粒子径50nm、日産化学工業(株)製シリカゾル)などを好ましく用いることができる。
【0062】
本発明に係るハードコート層形成用組成物には、これらの他に更に添加剤を含有することも可能である。更に含有し得る添加剤としては、ポリマーの分解を抑える目的で、紫外線吸収剤、亜リン酸エステル、ヒドロキサム酸、ヒドロキシアミン、イミダゾール、ハイドロキノン、フタル酸、などを挙げることができる。また、膜強度を高める目的で無機微粒子、ポリマー微粒子、シランカップリング剤、屈折率を下げて透明性を高める目的でフッ素系化合物(特に、フッ素系界面活性剤)、内部散乱性付与の目的でマット粒子などを挙げることができる。
【0063】
[光学フィルムの層構成]
本発明の光学フィルムは、透明基材上にハードコート層を有し、更に目的に応じて、必要な機能層を単独又は複数層設けてもよい。例えば、反射防止層(低屈折率層、中屈折率層、高屈折率層など屈折率を調整した層)、防眩層などを設けることができる。
【0064】
本発明の光学フィルムのより具体的な層構成の例を下記に示す。
透明基材/ハードコート層
透明基材/ハードコート層/低屈折率層
透明基材/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
透明基材/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
【0065】
[透明基材]
本発明の光学フィルムにおいては、透明基材(支持体)として種々用いることができるが、セルロースエステルフィルムが好ましく、セルロースアシレートフィルムを用いることがより好ましい。
セルロースアシレートフィルムとしては、特に限定されないが、ディスプレイに設置する場合は、セルローストリアセテートフィルムを偏光板の偏光層を保護する保護フィルムとしてそのまま用いることができるため、生産性やコストの点でセルローストリアセテートフィルムが特に好ましい。
透明基材の厚さは、通常、25μm〜1000μm程度であるが、取り扱い性が良好で、かつ必要な基材強度が得られる25μm〜200μmが好ましい。
【0066】
(セルロースアシレート)
本発明ではセルロースアシレートフィルムに、酢化度が59.0〜61.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定及び計算に従う。セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることが更に好ましい。
【0067】
また、本発明に使用するセルロースアシレートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の値が1.0に近いこと、換言すれば分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜1.7であることが好ましく、1.3〜1.65であることが更に好ましく、1.4〜1.6であることが最も好ましい。
【0068】
一般に、セルロースアシレートの2,3,6位の水酸基は全体の置換度の1/3ずつに均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度が小さくなる傾向がある。本発明ではセルロースアシレートの6位水酸基の置換度が、2,3位に比べて多いほうが好ましい。
全体の置換度に対して6位の水酸基が32%以上アシル基で置換されていることが好ましく、更には33%以上、特に34%以上であることが好ましい。更にセルロースアシレートの6位アシル基の置換度が0.88以上であることが好ましい。6位水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基であるプロピオニル基、ブチロイル基、バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基などで置換されていてもよい。各位置の置換度の測定は、NMRによって求めることができる。
【0069】
本発明ではセルロースアシレートとして、特開平11−5851号公報の段落番号0043〜0044、実施例、合成例1、段落番号0048〜0049、合成例2、段落番号0051〜0052、合成例3に記載の方法で得られたセルロースアセテートを用いることができる。
【0070】
[ハードコート層の物性]
前記ハードコート層形成用組成物から形成されたハードコート層の屈折率は、干渉ムラ抑制及び反射防止性能を得るための光学設計から、1.45以上1.55以下とする。好ましくは1.46以上1.54以下であり、より好ましくは1.48以上1.54以下である。
【0071】
ハードコート層の膜厚は、フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、0.5μm〜20μmとし、好ましくは1μm〜15μm、更に好ましくは3μm〜13μmである。ここで、ハードコート層の膜厚には、後述するグラデーション領域の厚みは含まない。
また、ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。更に、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0072】
本発明に係る光学フィルムをコントラスト比の高い画像表示装置に適用する場合、ハードコート層は透明性が高いクリアハードコート層であることが好ましい。即ち、ハードコート層のヘイズは1.0%以下であることが好ましく、0.01〜0.7%であることがより好ましい。ヘイズの測定は、ヘイズメーター“HGM−2DP”{スガ試験機(株)製}を用いJIS K−6714に従って測定することができる。
【0073】
[反射防止層]
(低屈折率層)
本発明の光学フィルムは、前記ハードコート層上に直接又は他の層を介して反射防止層(低屈折率層など)を有することが好ましい。この場合、本発明の光学フィルムは、反射防止フィルムとして機能することができる。
低屈折率層をハードコート層上に直接設ける場合には、層厚200nm以下の薄膜層とすることが好ましい。更に、光学層厚で設計波長の約1/4の層厚で形成すればよい。但し、最も単純な構成である低屈折率層1層で反射防止を行う1層薄膜干渉型の場合は、反射率0.5%以下を満足し、かつ、ニュートラルな色味、高い耐擦傷性、耐薬品性、耐候性を有する実用的な低屈折率材料がないため、更に低反射化が必要な場合には、ハードコート層と低屈折率層との間に高屈折率層を形成する2層薄膜干渉型、又は、ハードコート層と低屈折率層の間に中屈折率層、高屈折率層を順次形成する3層薄膜干渉型など、多層の光学干渉によって反射を防止する多層薄膜干渉型反射防止フィルムとすればよい。
この場合、低屈折率層は、屈折率が1.30〜1.51であることが好ましい。1.30〜1.46であることが好ましく、1.32〜1.38が更に好ましい。上記範囲内とすることで反射率を抑え、膜強度を維持することができ、好ましい。低屈折率層の形成方法も化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により、無機物酸化物の透明薄膜を用いることもできるが、低屈折率層用組成物を用いてオールウェット塗布による方法を用いることが好ましい。
【0074】
低屈折率層は上記屈折率範囲の層であれば特に限定されないが、構成成分としては公知のものを用いることができ、具体的には特開2007−298974号公報に記載の含フッ素硬化性樹脂と無機微粒子を含有する組成物や、特開2002−317152号公報、特開2003−202406号公報、及び特開2003−292831号公報に記載の中空シリカ微粒子含有低屈折率コーティングを好適に用いることができる。
【0075】
(高屈折率層及び中屈折率層)
高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.20であることが好ましく、1.70〜1.80であることがより好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整される。中屈折率層の屈折率は、1.55〜1.65であることが好ましく、1.58〜1.63であることが更に好ましい。
高屈折率層及び中屈折率層の形成方法は化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により、無機物酸化物の透明薄膜を用いることもできるが、オールウェット塗布による方法が好ましい。
【0076】
中屈折率層、高屈折率層は上記屈折率範囲の層であれば特に限定されないが、構成成分として公知のものを用いる事ができ、具体的には特開2008−262187の段落番号[0074]〜[0094]に示される。
【0077】
(グラデーション領域)
本発明の光学フィルムでは、透明基材とハードコート層との間には化合物分布(基材成分とハードコート層成分)が透明基材側からハードコート層側にかけて徐々に変化するグラデーション領域が存在する。
ここで、ハードコート層とは、ハードコート層成分のみが含まれており、基材成分を含まない部分を指し、基材とは、ハードコート層成分を含まない部分を示すこととする。
グラデーション領域の厚さは、干渉ムラ抑制の観点から、ハードコート層の厚さに対して5%以上200%以下であることが好ましく、5%以上150%以下であることが更に好ましく、5%以上95%以下であることが最も好ましい。
上記の領域が好ましい理由として、グラデーション領域が薄ければ薄く形成できると、ハードコート厚みがその分厚くなるので良好なハードコート性(高硬度・低カール)を保ちやすいためである。
また、グラデーション領域は、フィルムをミクロトームで切削し、断面を飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF−SIMS)で分析した時に、基材成分とハードコート層成分が共に検出される部分として測定することができ、この領域の膜厚も同様にTOF−SIMSの断面情報から測定することができる。
【0078】
(光学フィルムの製造方法)
本発明の光学フィルムは以下の方法で形成することができるが、この方法に制限されない。
まずハードコート層形成用組成物が調製される。次に、該組成物をディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等により透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥する。マイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法(米国特許2681294号明細書、特開2006−122889号公報参照)がより好ましく、ダイコート法が特に好ましい。
【0079】
塗布した後、乾燥、光照射してハードコート層形成用組成物から形成される層を硬化し、これによりハードコート層が形成される。必要に応じて、透明基材上にあらかじめその他の層を塗設しておき、その上にハードコート層を形成することも可能である。このようにして本発明の光学フィルムが得られる。また必要に応じて前記したようなその他の層を設けることもできる。本発明の光学フィルムの製造方法において、複数の層を同時に塗布してもよいし、逐次塗布してもよい。
【0080】
[低PV値の光学フィルム]
本発明は、透明基材上にクリアな(ヘイズが1.0%以下の)ハードコート層を有する光学フィルムであって、光干渉法による反射率スペクトルをフーリエ変換して得られたパワースペクトルのピーク強度PV値が0.000〜0.006である光学フィルムにも関する。PV値としては、0.000〜0.003が好ましい。
【0081】
まず、PV値について、説明する。
図1のように、基板1上にコーティングされた膜2(膜厚d)を例にとると、対象サンプル上方から入射した光は膜2の表面で反射し(R1)、更に膜を透過した光が基板1と膜2との界面で反射する(R2)。このとき光路差による位相のズレによって起こる光干渉により、図2のような反射率スペクトルが得られる。このような反射率スペクトルのピークとバレイの位置と数は、入射光の波長、膜の屈折率n、及び膜厚dに依存するため、ピーク波長及びバレイ波長から膜の膜厚を演算することができる。例えば、2つのピーク波長λとλとの間隔から膜厚を演算することができる。反射率が小さくてノイズの影響が大きいと反射率スペクトルからピークとバレイの検出が困難で、正しい膜厚を得られないことがあるが、そのような反射率スペクトルに対してはフーリエ変換を行うと、ノイズの影響をほとんど受けずに、また、多層膜の膜厚も解析できる。具体的には、反射率スペクトルをフーリエ変換し、そのパワースペクトルを見ると、それぞれ光学的膜厚値(屈折率×膜厚;nd)のところにピークをもつスペクトルとなり、ピーク値の値を読み取ると対応した膜の膜厚を知ることができる。多層膜の場合は、各薄膜層の屈折率と膜厚の積、すなわち光学的膜厚に由来する周期を持つスペクトルになるため、フーリエ変換により各層の光学膜厚を抽出する事が可能になる。
PV値とは界面の反射の大きさを表す値で、上記のような反射率スペクトルの薄膜干渉由来の変動を高速フーリエ変換して得たパワースペクトルのピークとのピーク強度をいう。界面での屈折率差が小さければ強度は小さく、屈折率差が大きくなれば強度は大きくなる。
本発明では、上記パワースペクトルにおける透明基材とグラデーション層及びグラデーション層とハードコート層との2つの界面に対応するピーク強度のうち値の大きい方をPV値として、干渉ムラの指標とする。この値が小さいほど干渉ムラがより抑制されたことを意味する。また実際は、PV値の値が同じでも、2つの界面の両方でPV値が検出される場合は、1つの界面のみでPV値が検出される場合と比べて、干渉ムラのレベルが悪いことが分かっている。これは界面反射量が後者は前者のおおよそ倍になるためである。
【0082】
PV値が0.000〜0.006である光学フィルムにおいて、透明基材としては前述した透明基材を用いることができる。またクリアハードコート層とは、ヘイズが1%以下のハードコート層を意味し、例えば、前述のハードコート層形成用組成物から形成することができる。
【0083】
PV値が0.000〜0.006である光学フィルムは、以下の(1)又は(2)の手段により作製することもできる。
(1)ハードコート層の屈折率を透明基材の屈折率に近づけて、基材とハードコート層との屈折率差の絶対値を減らす。ハードコート層は、透明基材に対して溶解能を有する溶剤も用いてを形成する。基材とハードコート層との屈折率差の絶対値を減らす方法としては、基材と屈折率の近い素材をハードコート層に使用する方法や、ハードコート層の硬化度合いを調整する方法がある。
(2)ハードコート層形成用組成物に透明基材に対して溶解能と膨潤能を有する溶剤を用い、干渉条件により硬化性化合物(モノマー)の透明基材中への拡散を調整する。例えば、透明基材の裏からヒーターを当ててモノマーの基材中への拡散を促進したり、乾燥速度を遅らせることなどが挙げられる。
【0084】
[偏光板用保護フィルム]
光学フィルムを偏光膜の表面保護フィルム(偏光板用保護フィルム)として用いる場合、薄膜層を有する側とは反対側の透明支持体の表面、すなわち偏光膜と貼り合わせる側の表面を親水化する、所謂ケン化処理を行うことで、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良することができる。
2枚の偏光子保護フィルムのうち、光学フィルム以外のフィルムが、光学異方層を含んでなる光学補償層を有する光学補償フィルムであることも好ましい。光学補償フィルム(位相差フィルム)は、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。
光学補償フィルムとしては、公知のものを用いることができるが、視野角を広げるという点では、特開2001−100042号公報に記載されている光学補償フィルムが好ましい。
【0085】
上述したケン化処理について説明する。ケン化処理は、加温したアルカリ水溶液中に一定時間光学フィルムを浸漬し、水洗を行った後、中和するための酸洗浄を行う処理である。透明支持体の偏光膜と貼り合わせる側の面が浸水化されればどのような処理条件でも構わないため、処理剤の濃度、処理剤液の温度、処理時間は適宜決定されるが、通常生産性を確保する必要から3分以内で処理可能なように処理条件を決定する。一般的な条件としては、アルカリ濃度が3質量%〜25質量%であり、処理温度は30℃〜70℃、処理時間は15秒〜5分である。アルカリ処理に用いるアルカリ種としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好適であり、酸洗浄に使用する酸としては硫酸が好適であり、水洗に用いる水はイオン交換水又は純水が好適である。
本発明の光学フィルムの帯電防止層は、このようなケン化処理によってアルカリ水溶液に晒されても、帯電防止性能が良好に保たれる。
【0086】
本発明の光学フィルムを偏光膜の表面保護フィルム(偏光板用保護フィルム)として用いる場合、セルロースアシレートフィルムは、セルローストリアセテートフィルムであることが好ましい。
【0087】
[偏光板]
次に、本発明の偏光板について説明する。
本発明の偏光板は、偏光膜と該偏光膜の両面を保護する2枚の保護フィルムを有する偏光板であって、該保護フィルムの少なくとも一方が本発明の光学フィルム又は反射防止フィルムであることを特徴とする。
【0088】
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造することができる。
【0089】
光学フィルムのセルロースアシレートフィルムが、必要に応じてポリビニルアルコールからなる接着剤層等を介して偏光膜に接着しており、偏光膜のもう一方の側にも保護フィルムを有する構成が好ましい。もう一方の保護フィルムの偏光膜と反対側の面には粘着剤層を有していても良い。
【0090】
本発明の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いることにより、物理強度、帯電防止性、耐久性に優れた偏光板が作製できる。
【0091】
また、本発明の偏光板は、光学補償機能を有することもできる。その場合、2枚の表面保護フィルムの表面及び裏面のいずれかの一面側のみを上記光学フィルムを用いて形成されており、該偏光板の光学フィルムを有する側とは他面側の表面保護フィルムが光学補償フィルムであることが好ましい。
【0092】
本発明の光学フィルムを偏光板用保護フィルムの一方に、光学異方性のある光学補償フィルムを偏光膜の保護フィルムのもう一方に用いた偏光板を作製することにより、更に、液晶表示装置の明室でのコントラスト、上下左右の視野角を改善することができる。
【0093】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、本発明の光学フィルム、反射防止フィルム又は偏光板をディスプレイの最表面に有する。
本発明の光学フィルム、反射防止フィルム及び偏光板は液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に好適に用いることができる。
特に、液晶表示装置等の画像表示装置に有利に用いることができ、透過型/半透過型液晶表示装置において、液晶セルのバックライト側の最表層に用いることが特に好ましい。
一般的に、液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有し、液晶セルは、2枚の電極基板の間に液晶を担持している。更に、光学異方性層が、液晶セルと一方の偏光板との間に一枚配置されるか、又は液晶セルと双方の偏光板との間に2枚配置されることもある。
液晶セルは、TNモード、VAモード、OCBモード、IPSモード又はECBモードであることが好ましい。
【実施例】
【0094】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定して解釈されるものではない。なお、特別の断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0095】
〔光学フィルムの作製〕
下記に示す通りに、各層形成用の塗布液を調製し、各層を形成して、光学フィルム試料1〜18を作製した。
【0096】
(ハードコート層用塗布液の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用塗布液A−1(固形分濃度64質量%)とした。
溶剤(表1記載) 18.5質量部(2種以上の場合には合計量)
(a)モノマー:ブレンマーE 1.53質量部
(b)モノマー:PET30 30.59質量部

光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
0.91質量部
レベリング剤(SP―13) 0.006質量部
【0097】
ハードコート層用塗布液A−1と類似の方法で、各成分を下記表1のように混合して溶剤に溶解して表1記載の比率になるように調整し、固形分濃度64質量%のハードコート層用塗布液A−2〜A−17を作製した。
【0098】
【表1】

【0099】
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
レベリング剤(SP―13):下記化合物
【0100】
【化4】

【0101】
ブレンマーE:日油(株)製、下記構造の化合物。質量平均分子量は130で、1分子中の官能基の数は1
【0102】
【化5】

【0103】
ブレンマーGLM:日油(株)製、下記構造の化合物。質量平均分子量は160で、1分子中の官能基の数は1
【0104】
【化6】

【0105】
ブレンマーGMR:日油(株)製、下記構造の化合物。質量平均分子量は228で、1分子中の官能基の数は2。
【0106】
【化7】

【0107】
ブレンマーDMA:日油(株)製、下記構造の化合物。質量平均分子量は226で、1分子中の官能基の数は1。
【0108】
【化8】

【0109】
DPHA:日本化薬(株)製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物。質量平均分子量は559で、1分子中の官能基の数は5.5(平均)。
【0110】
SP327:大阪有機化学工業株式会社製、下記構造の化合物。質量平均分子量は450で、1分子中の官能基の数は3。
【0111】
【化9】

【0112】
PET30:日本化薬(株)製、下記構造の化合物の混合物。質量平均分子量は298で、1分子中の官能基の数は3.4(平均)。
【0113】
【化10】

【0114】
ウレタンモノマー:下記構造の化合物。質量平均分子量は596で、1分子中の官能基の数は4。
【0115】
【化11】

【0116】
EB5129:ダイセル工業製、下記構造の化合物。質量平均分子量は765で、1分子中の官能基の数は6。
【0117】
【化12】

【0118】
DPCA30:日本化薬(株)製、下記構造の化合物。質量平均分子量は921で、1分子中の官能基の数は6。
【0119】
【化13】

【0120】
DPCA120:日本化薬(株)製、下記構造の化合物。質量平均分子量は1947で、1分子中の官能基の数は6。
【0121】
【化14】

【0122】
A−9300:新中村化学製、下記構造の化合物。質量平均分子量は423で、1分子中の官能基の数は3。
【0123】
【化15】

【0124】
(低屈折率層用塗布液の調製)
(パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
【0125】
【化16】

【0126】
上記構造式中、50:50はモル比を表す。
【0127】
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7g及び過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。更にヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は、0.53MPa(5.4kg/cm)であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。更にこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.422、質量平均分子量は50000であった。
【0128】
(中空シリカ粒子分散液Aの調製)
中空シリカ粒子微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31)500質量部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン30質量部、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.51質量部加え混合した後に、イオン交換水9質量部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加し、分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度18.2質量%の分散液Aを得た。得られた分散液AのIPA残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ0.5質量%以下であった。
【0129】
(低屈折率層用塗布液Aの調製)
パーフルオロオレフィン共重合体(1)の21.0質量部、反応性シリコーン(X22−164C、信越化学(株)製)2.5質量部、イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)1.5質量部、中空シリカ粒子分散液A137.4質量部をメチルエチルケトンに添加して1000質量部とし、攪拌の後、孔径5μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液Aを調製した。
【0130】
(ハードコート層A−1の作製)
厚さ80μmの透明基材としてのトリアセチルセルロースフィルム(TD80UF、富士フイルム(株)製、屈折率1.48)上に、前記ハードコート層用塗布液A−1をグラビアコーターを用いて表2に記載の固形分塗布量で塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度60mW/cm、照射量120mJ/cmの紫外線を照射して塗布層を硬化させ、ハードコート層A−1を形成し、光学フィルム試料No.1を作製した。
【0131】
同様の方法でハードコート層用塗布液A−2〜17を用いてハードコート層A−2〜18をそれぞれ作製し、フィルム試料No.2〜18を作製した。
なお、各フィルムのハードコート層について下記で述べる方法で測定した屈折率は1.45〜1.55の範囲にあった。
【0132】
ハードコート層のヘイズはヘイズメーター“HGM−2DP”{スガ試験機(株)製}を用いJIS K−6714に従って測定した。測定結果は表2に示す。
【0133】
(低屈折率層Aの作製)
各フィルムのハードコート層の上に、低屈折率層用塗布液Aをグラビアコーターを用いて塗布し、厚さ94nmの低屈折率層を形成した。低屈折率層の乾燥条件は60℃、60秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm、照射量300mJ/cmの照射量とした。低屈折率層の屈折率は1.36であった。
【0134】
ハードコート層及び低屈折率層の屈折率の測定は、各層の塗布液を約4μmの厚みになるようにガラス板に塗布し、多波長アッベ屈折計DR−M2(アタゴ(株)製)にて測定した。「DR−M2,M4用干渉フィルター546(e)nm 部品番号:RE−3523」のフィルターを使用して測定した屈折率を波長550nmにおける屈折率として採用した。
また、低屈折率層の膜厚は、反射分光膜厚計“FE−3000”(大塚電子(株)製)を用いて算出した。算出の際の各層の屈折率は上記アッベ屈折率計で導出した値を使用して調整した。
【0135】
(光学フィルムの評価)
以下の方法により光学フィルムの諸特性の評価を行った。結果を表2に示す。
(1)PV値、干渉ムラ
各試料について、低屈折率層を設けない試料を同条件で作製し、透明基材の裏面(ハードコート層を設けていない側の面)を紙やすりでやすり、その面に黒く塗り潰したPETフィルム貼り付けた。該試料を反射分光膜厚計(FE−3000 大塚電子(株)製)にセットし、3波長光源を用いて、反射率スペクトルを求めた。得られた反射率スペクトルをフーリエ変換し、光学膜厚に対するパワースペクトルを求めた。得られたパワースペクトルから透明基材とハードコート層との界面からのピーク強度をPV値として求めた。FE−3000においてフーリエ変換解析を行う際の測定条件及び演算条件は以下記載の通りである。
【0136】
(測定条件)
測定手法 : 絶対反射率
測定モード : マニュアル
(演算条件)
材料カテゴリ : Standard
アルゴリズム : FFT
計算方法 : 2層2ピーク
n1d1 形式 : FIX 屈折率 : 前述の方法で測定したハードコート層の屈折率を指定
n2d2 形式 : FIX 屈折率 : 前述の基材の屈折率と前述の方法で測定したハードコート層の屈折率の平均値を指定
【0137】
得られたPV値に基づいて、下記の基準により干渉ムラを評価した。
◎:PV値が0.000以上0.003以下
○:PV値が0.003超0.006以下
×:PV値が0.006超
【0138】
(2)カール、F式カール
(F式カールの評価法)
作製した各フィルムを3mm×35mmに、裁断したサンプルをカール板に垂直にかつセットする支柱からサンプルがきっちりはみ出さないようにセットし、25℃、相対湿度60%、調湿時間10時間で調湿する。調湿後、サンプルの先がカール板のどのメモリまでカールしているかを読み取る(=F式カール値)。このときフィルムのカールする方向によって±がつくが、絶対値が大きいほどカールが強いことを意味する。
各フィルムのカール(絶対値)を以下の基準で評価した。
◎: 0.5以下
○:0.5より大きく1.5以下
×:1.5より大きい
【0139】
(3)鉛筆硬度
JIS K5400に記載の鉛筆硬度評価を行い、下記の基準で評価した。
◎:4H以上
○:3H
×:2H未満
【0140】
【表2】

【0141】
表2に示すように、本発明の光学フィルムは、硬度が高く、干渉ムラ及びカールが抑制されていた。
【0142】
(光学フィルムの鹸化処理)
前記試料No.1に以下の処理を行った。1.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.01mol/lの希硫酸水溶液を調製し、30℃に保温した。作製した光学フィルムを前記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、前記の希硫酸水溶液に20秒間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
このようにして、鹸化処理済みの光学フィルムを作製した。
【0143】
(偏光板の作製)
1.5mol/L、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬したあと中和、水洗した、80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士フイルム(株)製)と、鹸化処理済みの光学フィルムを、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸して作製した偏光子の両面に接着、保護して偏光板を作製した。
(円偏光板の作製)
偏光板試料の低屈折率層と反対側の面にλ/4板を粘着剤で貼り合せ円偏光板を作製し、有機ELディスプレイの表面に低屈折率層が外側になるように該円偏光板を粘着剤で貼り付けた。傷つきや色ムラがなく、良好な表示性能が得られた。
【0144】
反射型液晶ディスプレイ及び半透過型液晶ディスプレイの表面の偏光板として、低屈折率層が外側になるように上記円偏光板を用いたところ、傷つきや色ムラがなく、良好な表示性能が得られた。
【0145】
なお、上記トリアセチルセルロースフィルムを厚さ60μmのもの(TAC−TD60U、富士フイルム(株)製)に替えても、同様に傷つきや色ムラがなく、良好な表示性能が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に、下記(a)、(b)及び(c)を含有するハードコート層形成用組成物から形成されるハードコート層を有する光学フィルムであって、
該ハードコート層の屈折率が1.45以上1.55以下であり、
下記(b)に対する下記(a)の含有量が0.5質量%以上10質量%以下である光学フィルム。
(a)1分子中に2つ以下の官能基を有する化合物であって、質量平均分子量Mwが40<Mw<500で、Hoy法によるSP値SPが19<SP<24.5である化合物
(b)1分子中に3つ以上の官能基を有する化合物であって、質量平均分子量Mwが100<Mw<1600で、Hoy法によるSP値SPが19<SP<24.5で、70<(Mw/(1分子中の官能基数))<300である化合物
(c)前記透明基材に対する溶解能及び膨潤能を有する溶剤
【請求項2】
前記(c)の溶剤が、酢酸メチル、アセトン及びメチルエチルケトンの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記(a)のMwが30<Mw<250である、請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記(a)のSPが22<SP<24.5である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記(b)として2種以上の化合物を含有し、少なくとも1種がウレタン化合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記(c)が、前記透明基材に対する溶解能を有する第1の溶剤及び前記透明基材に対する膨潤能を有する第2の溶剤をそれぞれ1種以上含み、
全溶剤中での前記第1の溶剤の割合が前記第2の溶剤の割合以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記透明基材がセルロースアシレートフィルムである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記ハードコート層のヘイズが1.0%以下である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項9】
透明基材上に、ヘイズが1.0%以下であるハードコート層を有する光学フィルムであって、光干渉法による反射率スペクトルをフーリエ変換して得られたパワースペクトルのピーク強度PV値が0.000〜0.006である光学フィルム。
【請求項10】
前記PV値が0.000〜0.003である、請求項9に記載の光学フィルム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして含む偏光板。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学フィルム又は請求項11に記載の偏光板を有する画像表示装置。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法であって、前記透明基材上に、前記ハードコート層形成用組成物を塗布、硬化して前記ハードコート層を形成する工程を有する、光学フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−78541(P2012−78541A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223286(P2010−223286)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】