説明

光学フィルム、偏光板および画像表示装置

【課題】透明性の低下、干渉縞の発生を抑制し、密着性に優れた帯電防止ハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】基材1Aの表面に、導電性の鎖状金属酸化物粒子と、官能基を6個以上有する分子量が1000以上のウレタン(メタ)アクリレートおよび官能基を10個以上有する分子量が10000以上のポリマー(メタ)アクリレートの少なくともいずれかと、基材1Aに対する浸透性溶剤とを含む帯電防止ハードコート層用光硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥させて、該層上に鎖状金属酸化物粒子と光重合性モノマーとウレタン(メタ)アクリレートおよびポリマー(メタ)アクリレートの少なくともいずれかと、を含む鎖状金属酸化物粒子含有層を形成し、該二層を光硬化させて、第1ハードコート層5と、第2ハードコート層6と、からなる帯電防止ハードコート層7を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、偏光板および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)、陰極線管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)等の画像表示装置における画像表示面には、通常、耐擦傷性機能等の機能が付与された機能層が設けられている。機能層の一つとして、耐擦傷性機能と帯電防止機能とを兼ね備えた帯電防止ハードコート層がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
帯電防止ハードコート層を形成する場合には、通常、光透過性基材上に帯電防止剤を含む帯電防止ハードコート層用組成物を塗布し、乾燥させる。そして、乾燥した帯電防止ハードコート層用組成物に紫外線等を照射して硬化させて、帯電防止ハードコート層を形成する。
【0004】
帯電防止剤として単独の導電性金属酸化物粒子を用いる場合、導電性金属酸化物粒子の添加量が少ないと、導電性金属酸化物粒子が帯電防止ハードコート層中において均一に分散してしまい、導電性金属酸化物粒子間の距離が大きくなってしまう。このため、導電性金属酸化物粒子同士が接触することによって形成される導電パスが形成されにくく、帯電防止性に劣るという問題がある。
【0005】
このようなことから、単独の導電性金属酸化物粒子を用いる場合には、導電性金属酸化物粒子の添加量を多くして、例えば、導電性金属酸化物粒子が帯電防止ハードコート層用組成物におけるバインダ成分の量とほぼ同量となるように添加して、導電性金属酸化物粒子を凝集させることにより、導電パスを形成して、帯電防止性を得ている。
【0006】
しかしながら、導電性金属酸化物粒子の添加量を多くした場合には、導電性金属酸化物粒子の量が多いので、ヘイズが高くなり、透明性が低下してしまうという問題がある。また、導電性金属酸化物粒子の量が多いので、一部の導電性金属酸化物粒子が沈み込んでしまい、帯電防止ハードコート層と光透過性基材の界面に導電性金属酸化物粒子が並んでしまう。このため、帯電防止ハードコート層と光透過性基材との屈折率差がこれらの界面付近で急激に変化してしまい、干渉縞の発生が発生してしまうという問題がある。
【0007】
また、導電性金属酸化物粒子の添加量を多くした場合には、光透過性基材と帯電防止ハードコート層との密着性が悪化することもある。さらに、帯電防止ハードコート層上に別の層を設ける場合、帯電防止ハードコート層と別の層との密着性が悪化することもある。
【0008】
なお、特許文献2(特開2006−126808号公報)には、ハードコート層とは別に帯電防止層を形成し、かつ帯電防止層にクラックを入れることが開示されている。特許文献2では、帯電防止層にクラックを入れることにより、帯電防止層と光透過性基材との界面における干渉縞を防止しているが、帯電防止層を別途設けるので、帯電防止層とハードコート層との間に新たな界面が生じてしまう(特許文献2の図3および図4参照)。したがって、帯電防止層にクラックを入れることによって多少干渉縞の発生を抑制できるかもしれないが、干渉縞の発生を抑制する観点からは不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−130667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、優れた帯電防止性を得ることができるとともに帯電防止ハードコート層の透明性の低下を抑制でき、干渉縞の発生を十分に抑制でき、かつ密着性にも優れた光学フィルムの製造方法、およびこのような光学フィルム、偏光板およびこれを備えた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一の態様によれば、光透過性基材の表面に、鎖状に連結した2個以上の導電性金属酸化物粒子からなる鎖状金属酸化物粒子と、光重合性モノマーと、光重合性官能基を6個以上有する重量平均分子量が1000以上のウレタン(メタ)アクリレートおよび光重合性官能基を10個以上有する重量平均分子量が10000以上のポリマー(メタ)アクリレートの少なくともいずれかと、前記光透過性基材に対して浸透性を有する浸透性溶剤とを含む帯電防止ハードコート層用光硬化性樹脂組成物を塗布し、乾燥させて、前記光透過性基材の上部に前記光透過性基材の主成分と前記光重合性モノマーとが混ざり合った混合層を形成するとともに、前記混合層上に前記鎖状金属酸化物粒子と前記光重合性モノマーと前記ウレタン(メタ)アクリレートおよび前記ポリマー(メタ)アクリレートの少なくともいずれかとを含む鎖状金属酸化物粒子含有層を形成する工程と、前記混合層および前記鎖状金属酸化物粒子含有層を光照射により硬化させて、前記混合層の硬化物である第1のハードコート層と、前記鎖状金属酸化物粒子含有層の硬化物であり、かつ前記第1のハードコート層上に形成された第2のハードコート層とからなる帯電防止ハードコート層を形成する工程とを備え、前記帯電防止ハードコート層用光硬化性樹脂組成物の全固形分に対する前記鎖状金属酸化物粒子の含有量が、2〜20質量%であることを特徴とする、光学フィルムの製造方法が提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、光透過性基材と、前記光透過性基材上に形成された帯電防止ハードコート層とを備える光学フィルムであって、前記帯電防止ハードコート層が、前記光透過性基材上に形成された第1のハードコート層と、前記第1のハードコート層上に形成された第2のハードコート層とからなり、前記第1のハードコート層が、前記光透過性基材の主成分と第1のバインダ樹脂とを含み、前記第2のハードコート層が、鎖状に連結した2個以上の導電性金属酸化物粒子からなる鎖状金属酸化物粒子と第2のバインダ樹脂とを含み、前記第2のバインダ樹脂が、光重合性モノマーと、光重合性官能基を6個以上有する重量平均分子量が1000以上のウレタン(メタ)アクリレートおよび光重合性官能基を10個以上有する重量平均分子量が10000以上のポリマー(メタ)アクリレートの少なくともいずれかとの重合体を含み、前記第1のハードコート層の屈折率が、前記第2のハードコート層側から前記光透過性基材側に向けて徐々に前記光透過性基材の屈折率に近づくように変化しており、かつ前記光透過性基材と前記第1のハードコート層との間および前記第1のハードコート層と前記第2のハードコート層との間に界面が存在しないことを特徴とする、光学フィルムが提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、上記の光学フィルムと、前記光学フィルムの前記光透過性基材における前記第1のハードコート層が形成されている面とは反対側の面に形成された偏光素子とを備えることを特徴とする、偏光板が提供される。
【0014】
本発明の他の態様によれば、上記の光学フィルム、または上記の偏光板を備えることを特徴とする、画像表示装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一の態様の光学フィルムの製造方法によれば、帯電防止剤として鎖状金属酸化物粒子を使用しているので、鎖状金属酸化物粒子の含有量が帯電防止ハードコート層用光硬化性樹脂組成物の全固形分に対して2〜20質量%という少ない量であっても、優れた帯電防止性を得ることができる。また、鎖状金属酸化物粒子の含有量が帯電防止ハードコート層用光硬化性樹脂組成物の全固形分に対して2〜20質量%という少ない量であるので、帯電防止ハードコート層の透明性の低下を抑制することができる。さらに、鎖状金属酸化物粒子は単独の導電性金属酸化物粒子に比べて嵩高いので、沈み込みにくく、またたとえ沈み込んだとしても、立体障害により、第1のハードコート層と第2のハードコート層との間の界面付近に並ぶことがないので、第1のハードコート層と第2のハードコート層の界面付近において屈折率差が急激に変化することを抑制することができる。またこの製造方法によれば、第1のハードコート層と第2のハードコート層との間の界面のみならず、光透過性基材と第1のハードコート層の間の界面が存在せず、かつ第1のハードコート層の屈折率が第2のハードコート層側から光透過性基材側に向けて徐々に光透過性基材の屈折率に近づくように変化した帯電防止ハードコート層を形成することができる。これにより、干渉縞の発生を十分に抑制することができる。また、光透過性基材と第1のハードコート層の間の界面が存在せず、かつ第1のハードコート層と第2のハードコート層との間の界面も存在しない帯電防止ハードコート層を形成することができるので、密着性を向上させることができる。さらに、帯電防止ハードコート層用光硬化性樹脂組成物に、光重合性官能基を6個以上有する重量平均分子量が1000以上のウレタン(メタ)アクリレートおよび光重合性官能基を10個以上有する重量平均分子量が10000以上のポリマー(メタ)アクリレートの少なくともいずれかを含ませているので、帯電防止ハードコート層の硬度をより向上させることができる。
【0016】
また、本発明の他の態様の光学フィルム、偏光板および画像表示装置によれば、第2のハードコート層が帯電防止剤としての鎖状金属酸化物粒子を含んでいるので、優れた帯電防止性を得ることができるとともに帯電防止ハードコート層の透明性の低下を抑制することができる。また、鎖状金属酸化物粒子は単独の導電性金属酸化物粒子に比べて嵩高いので、第1のハードコート層と第2のハードコート層との間の界面付近には並ぶことがなく、第1のハードコート層と第2のハードコート層との屈折率差がこれらの界面付近においてが急激に変化することを抑制することができる。さらに、第1のハードコート層と第2のハードコート層との間の界面のみならず、光透過性基材と第1のハードコート層の間の界面が存在せず、かつ第1のハードコート層の屈折率が第2のハードコート層側から光透過性基材側に向けて徐々に光透過性基材の屈折率に近づくように変化している。これにより、干渉縞の発生を十分に抑制できる。また、光透過性基材と第1のハードコート層の間の界面が存在せず、かつ第1のハードコート層と第2のハードコート層との間の界面も存在しないので、密着性に優れている。さらに、第2のバインダ樹脂が、光重合性モノマーと、光重合性官能基を6個以上有する重量平均分子量が1000以上のウレタン(メタ)アクリレートおよび光重合性官能基を10個以上有する重量平均分子量が10000以上のポリマー(メタ)アクリレートの少なくともいずれかとの重合体を含むので、硬度にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る光学フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
【図2】実施形態に係る光学フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
【図3】実施形態に係る光学フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
【図4】実施形態に係る偏光板の概略構成図である。
【図5】実施形態に係る画像表示装置の概略構成図である。
【図6】走査電子顕微鏡の走査透過電子顕微鏡機能を用いて撮影した実施例1に係る光学フィルムの断面写真である。
【図7】走査電子顕微鏡の走査透過電子顕微鏡機能を用いて撮影した実施例1に係る光学フィルムの表面付近の断面写真である。
【図8】図7に示されている光学フィルムの表面付近をさらに拡大した断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る光学フィルムの製造方法等について、図面を参照しながら説明する。図1〜3は本実施形態に係る光学フィルムの製造工程を模式的に示した図である。
【0019】
≪光学フィルムの製造方法≫
まず、図1(A)に示されるように、光透過性基材1を用意する。光透過性基材1としては、光透過性を有すれば特に限定されない。具体的には、光透過性基材1としては、セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、またはアクリレート系ポリマーが挙げられる。
【0020】
セルロースアシレートとしては、例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテートが挙げられる。シクロオレフィンポリマーとしては、例えばノルボルネン系モノマーおよび単環シクロオレフィンモノマー等の重合体が挙げられる。
【0021】
ポリカーボネートとしては、例えば、ビスフェノール類(ビスフェノールA等)をベースとする芳香族ポリカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等の脂肪族ポリカーボネート等が挙げられる。
【0022】
アクリレート系ポリマーとしては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等が挙げられる。
【0023】
これらの中でも、光透過性に優れていることからセルロースアシレートが好ましく、さらにセルロースアシレートの中でもトリアセチルセルロースが好ましい。トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)は、可視光域380〜780nmにおいて、平均光透過率を50%以上とすることが可能な光透過性基材である。TACフィルムの平均光透過率は70%以上、更に85%以上であることが好ましい。
【0024】
なお、トリアセチルセルロースとしては、純粋なトリアセチルセルロース以外に、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートの如くセルロースとエステルを形成する脂肪酸として酢酸以外の成分も併用した物であってもよい。また、これらトリアセチルセルロースには、必要に応じて、ジアセチルセルロース等の他のセルロース低級脂肪酸エステル、或いは可塑剤、紫外線吸收剤、易滑剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
【0025】
光透過性基材1を用意した後、図1(B)に示されるように光透過性基材1の表面に、帯電防止ハードコート層用光硬化性樹脂組成物を塗布する(以下、簡略化のために「帯電防止ハードコート層用光硬化性樹脂組成物」を、「帯電防止ハードコート層用組成物」と称する)。帯電防止ハードコート層用組成物を塗布する方法としては、スピンコート、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法等の公知の塗布方法が挙げられる。
【0026】
<帯電防止ハードコート層用組成物>
帯電防止ハードコート層用組成物は、鎖状金属酸化物粒子、光照射による硬化後にバインダ樹脂またはバインダ樹脂の一部となる光重合性モノマーと、光重合性官能基を6個以上有する重量平均分子量が1000以上のウレタン(メタ)アクリレートおよび光重合性官能基を10個以上有する重量平均分子量が10000以上のポリマー(メタ)アクリレートの少なくともいずれかと、浸透性溶剤とを含む。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」および「メタアクリレート」の少なくともいずれかを意味するものである。
【0027】
(鎖状金属酸化物粒子)
鎖状金属酸化物粒子は、導電性を有する金属酸化物粒子が2個以上鎖状に連結した形態を有している。ここで、本発明における「金属酸化物」とは、異種金属がドープされた金属酸化物をも含む概念である。また「鎖状」とは、直鎖状および分岐鎖状の両方を含む概念である。
【0028】
鎖状金属酸化物粒子は、導電性金属酸化物粒子の一次粒子が単に粒子間引力等によって凝集しているのとは相異し、導電性金属酸化物粒子同士が結合している。このような鎖状金属酸化物粒子は、直線状であっても、折れ線状であってもよく、また湾曲状となっていてもよい。
【0029】
鎖状金属酸化物粒子は、2個以上の導電性金属酸化物粒子が鎖状に連結した形態を有していればよいが、導電性金属酸化物粒子は2〜50個鎖状に連結しているものが好ましく、3〜30個連結しているものがより好ましい。導電性金属酸化物粒子の連結個数を上記範囲としたのは、連結していない導電性金属酸化物粒子、すなわち導電性金属酸化物粒子単体であると、表面抵抗値を有効に低下させることができないおそれがあるからであり、また、連結個数が50個を超えると、帯電防止ハードコート層の光透過率が低下し、ヘイズが上昇してしまうおそれがあるからである。
【0030】
導電性金属酸化物粒子の平均一次粒径は、1〜100nmであることが好ましく、5〜80nmであることがより好ましい。導電性金属酸化物粒子の平均一次粒径を上記範囲としたのは、導電性金属酸化物粒子の平均一次粒径が100nmを越えると、導電性金属酸化物粒子を連結させることが困難となり、また仮にできたとしても導電性金属酸化物粒子の接点が減少するために表面抵抗値を有効に低下させることが困難となるおそれがあるからである。また、導電性金属酸化物粒子の平均一次粒径が100nmを越えると、導電性金属酸化物粒子による光の吸収が大きくなり、帯電防止ハードコート層の光透過率が低下したり、また帯電防止ハードコート層のヘイズ値が高くなるおそれがあるからである。また、導電性金属酸化物粒子の平均粒径が1nm未満の場合には粒界抵抗が急激に大きくなるため、表面抵抗値を有効に低下させることができないおそれがあるからである。
【0031】
上記「平均一次粒径」とは、組成物においては、日機装株式会社製のMicrotrac粒度分析計を用いて測定した値を意味し、硬化膜においては、硬化膜の断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真や走査透過電子顕微鏡(STEM)写真により観察される導電性金属酸化物粒子の10個の平均値を意味するものとする。具体的には、例えば、図8に示されるような導電性金属酸化物粒子の1個の大きさが確認できる倍率(例えば20万倍)で撮影した断面写真において導電性金属酸化物粒子10個選択し、選んだ導電性金属酸化物粒子の直径をそれぞれ測定し、その平均値を求めることにより、硬化膜中における導電性金属酸化物粒子の平均一次粒径を求めることができる。
【0032】
硬化膜を断面観察したときの硬化膜中の鎖状金属酸化物粒子の平均長さは、10〜500nmであることが好ましい。鎖状金属酸化物粒子の平均長さを上記範囲としたのは、平均長さが10nm未満であると、接触抵抗が増加し、表面抵抗値を有効に低下させることができないおそれがあるからであり、また、500nmを超えると、第2のハードコート層の透明性が得られないおそれがあるからである。「硬化膜中の鎖状金属酸化物粒子の平均長さ」とは、硬化膜の断面の透過型電子顕微鏡(TEM)写真や走査透過電子顕微鏡(STEM)写真により観察される鎖状導電性金属酸化物粒子の10個の平均値を意味するものとする。具体的には、例えば、導電性金属酸化物粒子が2個以上連結している鎖状導電性金属酸化物粒子の1個の大きさが確認できる倍率(例えば20万倍以上)で撮影した断面写真において鎖状導電性金属酸化物粒子10個選択し、選んだ鎖状導電性金属酸化物粒子の最も長い部分の長さをそれぞれ測定し、その平均値を求めることにより、硬化膜中における鎖状導電性金属酸化物粒子の平均長さを求めることができる。なお、鎖状金属酸化物粒子は、曲線状など多様な形状で存在しているが、その長さ測定においては、写真上に糸状のものを置いて多様な形状をなぞったりすることで測定できる。
【0033】
導電性金属酸化物粒子としては、導電性を有する金属酸化物の粒子であれば特に限定されないが、例えば、アンチモンドープ酸化スズ(略称;ATO)、リンドープ酸化スズ(略称;PTO)、スズドープ酸化インジウム(略称;ITO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(略称;AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(略称;GZO)、ZnO、CeO、Sb、SnO、In、およびAlを挙げることができる。
【0034】
帯電防止ハードコート層用組成物の全固形分に対する鎖状金属酸化物粒子の含有量は、2〜20質量%であることが必要である。この範囲が好ましいとしたのは、鎖状金属酸化物粒子の含有量が2%未満であると、目的とする帯電防止性能が発現されないおそれがあるからであり、また20%を超えると、帯電防止性能が頭打ちとなる一方で帯電防止ハードコート層の透明性が低下し、かつヘイズ値が上昇してしまうおそれがあり、さらには帯電防止ハードコート層用組成物の保管安定性が悪化するおそれがあるからである。本発明においては、帯電防止ハードコート層用組成物に重合開始剤が含まれている場合には、重合開始剤は固形分として換算しないものとする。
【0035】
鎖状金属酸化物粒子は、次のようにして得ることができる。まず、金属塩または金属アルコキシドが0.1〜5質量%の濃度で含まれるアルコール溶液を加熱して加水分解させる。このとき必要に応じて温水やアルカリを加える。このような加水分解によって、一次粒子径が1〜100nmの金属水酸化物のゲル分散液を調製する。次いで、ゲル分散液を濾別・洗浄し、空気中、200〜800℃の温度で焼成して導電性金属酸化物粒子を調製する。
【0036】
次いで、この粉末を酸性またはアルカリ性の水およびアルコール溶媒の少なくともいずれかに分散させて濃度10〜50質量%の分散液とし、必要に応じて有機安定剤の存在下でこの分散液をメカニカル分散処理する。有機安定剤として具体的には、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、クエン酸などの多価カルボン酸およびその塩、複素環化合物あるいはこれらの混合物などが挙げられる。このメカニカル分散処理によって、生成ゲルが解膠し、鎖状金属酸化物粒子が分散したゾルが得られる。このようなメカニカル分散処理としては、サンドミル法、衝撃分散法などが挙げられ、特に、衝撃分散法が好ましく使用される。
【0037】
こうして得られた鎖状金属酸化物粒子は、通常、遠心分離などの方法によって生成後の分散液から取り出され、必要に応じて酸などで洗浄される。また、得られた鎖状金属酸化物子を含む分散液は、そのまま塗布液として使用することもできる。
【0038】
鎖状金属酸化物粒子の市販品としては、例えば、日揮触媒化成株式会社製のELCOM-V3560、DP1197、DP1203、DP1204、DP1207、DP1208等が挙げられる。
【0039】
(光重合性モノマー)
光重合性モノマーは、光重合性官能基を少なくとも1つ有するものである。本発明における「光重合性官能基」とは、光照射により重合反応し、分子間に架橋結合を形成し得る官能基である。光重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」および「メタクリロイル基」の少なくともいずれかを意味するものである。また、本発明における「光」には、可視領域の波長および紫外線等の非可視領域の波長の電磁波のみならず、電子線のような粒子線、および電磁波と粒子線を総称する放射線または電離放射線が含まれるものとする。光重合性モノマーとしては、重量平均分子量が1000未満の2以上の光重合性官能基を有する多官能モノマー等が挙げられる。
【0040】
2官能モノマーとしては、例えば、1,6‐ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール400ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA EO変成ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボロニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン等の変成がなされていてもよい。
【0041】
3官能以上のモノマーとしては、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスルトール、エポキシ樹脂等に(メタ)アクリル酸又はその誘導体を反応させて得られる3官能以上の(メタ)アクリロイルモノマーなどが適用でき、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変成トリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0042】
これらの中でも硬度が高い帯電防止ハードコート層が得られる観点から、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)等が好ましい。
【0043】
帯電防止ハードコート層用組成物の全固形分に対する光重合性モノマーの含有量は、10〜70質量%であることが好ましい。この範囲が好ましいとしたのは、光重合性モノマーの含有量が10質量%未満であると、光学積層体の硬度として所望の硬度が得られないおそれがあり、また干渉縞も発生するおそれがあるからであり、また70質量%を超えると、硬度を良好にするために、多官能の光重合性モノマーを使用した場合には、カールが発生するおそれがあり、また硬化時(架橋反応時)の反応熱によって光学積層体に熱ダメージを与えてしまうため、皺が発生してしまい、外観が悪化してしまうおそれがあるからである。
【0044】
(ウレタン(メタ)アクリレートおよびポリマー(メタ)アクリレート)
ウレタン(メタ)アクリレートは、光重合性官能基(例えば(メタ)アクリロイル基)を6個以上有し(6官能)、かつ重量平均分子量が1000以上のものである。ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は1000以上であればよいが、例えば重量平均分子量として1000以上10000以下のものを使用することができる。「重量平均分子量」は、テトラヒドロフラン(THF)等の溶媒に溶解して、従来公知のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算により得られる値である。
【0045】
ポリマー(メタ)アクリレートは、光重合性官能基(例えば(メタ)アクリロイル基)を10個以上有し(10官能)、かつ重量平均分子量が10000以上のものである。ポリマー(メタ)アクリレートの重量平均分子量は10000以上であればよいが、重量平均分子量としては10000〜80000程度が好ましく、10000〜40000程度がより好ましい。重量平均分子量が80000を超える場合は、粘度が高いため塗工適性が低下してしまい、得られる光学積層体の外観が悪化するおそれがある。
【0046】
帯電防止ハードコート層用組成物にバインダ成分として光重合性モノマーのみを含ませた場合には、帯電防止ハードコート層が脆くなるおそれがあるが、本実施形態のように、帯電防止ハードコート層用組成物に、光重合性モノマーの他に、上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはポリマー(メタ)アクリレートを含ませた場合には、ウレタン(メタ)アクリレートやポリマー(メタ)アクリレートにより帯電防止ハードコート層に靱性を付与することができる。これにより、帯電防止ハードコート層の硬度を高めることができる。また、帯電防止ハードコート層用組成物に、上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはポリマー(メタ)アクリレートを含ませることにより、光重合性モノマーの浸透度合いを調製することもできる。また、帯電防止ハードコート層用組成物にウレタン(メタ)アクリレートを含ませた場合には、帯電防止ハードコート層上に設けられる別の層(例えば、低屈折率層)との密着性を高めることができる。
【0047】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの官能基当量および上記ポリマー(メタ)アクリレートの官能基当量は、150以上500以下であることが好ましく、160以上400以下であることがより好ましい。ここで、「官能基当量」とは、光重合性官能基1個当たりの重量平均分子量を意味する。例えば、光重合性官能基を6個以上有する重量平均分子量が1000のウレタン(メタ)アクリレートの場合、官能基当量は1000/6で計算され、約167となる。上記において、150以上500以下の官能基当量が好ましいとしたのは、150以上であればカールが発生し難いからであり、また500以下であれば所望の鉛筆硬度を確保できるからである。
【0048】
また、ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリマー(メタ)アクリレートに比べ、靱性が高いので、ポリマー(メタ)アクリレートより官能基当量が小さいものを用いた場合であっても、帯電防止ハードコート層に靱性を付与することができる。このため、ウレタン(メタ)アクリレートにおいては、官能基当量を小さくすることが可能であり、重量平均分子量を小さくすることができるので、帯電防止ハードコート層用組成物の粘度を低く保ち、良好な塗工適性を得ることができる。このような観点から、ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリマー(メタ)アクリレートよりも好ましい。
【0049】
帯電防止ハードコート層用組成物の全固形分に対するウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはポリマー(メタ)アクリレートの含有量は、10〜70質量%であることが好ましい。ここで、帯電防止ハードコート層用組成物にウレタン(メタ)アクリレートおよびポリマー(メタ)アクリレートの両方が含まれている場合には、上記含有量は、ウレタン(メタ)アクリレートとポリマー(メタ)アクリレートとを合わせた含有量を意味するものとする。この範囲が好ましいとしたのは、ウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはポリマー(メタ)アクリレートの含有量が10質量%未満であると、特に帯電防止ハードコート層上の層(低屈折率層)との密着性が悪くなり、後述する耐SW性が悪化してしまうおそれがある。また、優れた硬度を得られないおそれがある。また70質量%を超えると、光重合性モノマーの割合が減少するため干渉縞が発生するおそれがある。
【0050】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、以下のポリオールとジイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート化合物と、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーの反応による化合物を用いることができるが、その組合せには限定されない。
【0051】
ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオールが挙げられる。ポリエステルポリオールの製造方法は特に限定されず、公知の製造方法により製造することができる。例えば、ジオールとジカルボン酸またはジカルボン酸クロライドとを重縮合反応させたり、ジオールまたはジカルボン酸をエステル化して、エステル交換反応させたりすることにより得られる。
【0052】
ジオールとしてはエチレングリコール、1、4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられる。ジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸等が挙げられる。
【0053】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシドランダム共重合等が挙げられる。
【0054】
ポリカーボネートジオールとしては、1、4−ブタンジオール、1、6−へキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1、2−プロピレングリコール、1、3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−エチル−1、3−ヘキサンジオール、1、5−ペンタンジオール、3−メチル−1、5−ペンタンジオール、1、4−シクロヘキサンジオール、ポリオキシエチレングリコールなどが挙げられる。
【0055】
ジイソシアネートとしては、直鎖式あるいは環式の脂肪族ジイソシアネートまたは芳香族ジイソシアネートが用いられる。直鎖式あるいは環式の脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネートが挙げられる。芳香族ジイソシアネートとしてはトリレンジイソシアネート、キリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0056】
水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、ジトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。
【0057】
上記ウレタンアクリレートは、市販品を用いても良く、市販品としては例えば、日本合成化学工業株式会社製のUV1700B(分子量2000、10官能)、UV6300B(分子量3700、7官能)およびUV7640B(分子量1500、7官能)、日本化薬株式会社製のDPHA40H(分子量7000、8官能)、UX5000(分子量1000、5官能)およびUX5001T(分子量6200、8官能)、根上工業株式会社製のUN3320HS(分子量5000、15官能)、UN904(分子量4900、10官能)、UN3320HC(分子量1500、6官能)およびUN3320HA(分子量1500、6官能)、荒川化学工業株式会社製のBS577(分子量1000、6官能)、並びに新中村化学工業株式会社製のU15H(15官能)及びU6H(6官能)等が挙げられる。
【0058】
上記ポリマー(メタ)アクリレートとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル−ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0059】
エポキシアクリレートの市販品としては、荒川化学工業株式会社製のビームセット371等が挙げられる。
【0060】
(浸透性溶剤)
「浸透性溶剤」とは、光透過性基材に対して浸透性が高く、光透過性基材を溶解または膨潤させる溶剤である。浸透性溶剤を用いることにより、光透過性基材に浸透性溶剤のみならず、光重合性モノマーをも浸透させることができる。
【0061】
浸透性溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘプタノン、ジエチルケトン等のケトン類;蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル等のエステル類;ニトロメタン、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物;メチルグリコール、メチルグリコールアセテート等のグリコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジオキソラン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロルエタン等のハロゲン化炭化水素;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のグリコールエーテル類;その他、ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレンが挙げられる。また、これらの混合物であってもよい。これらの中でも、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル及びメチルエチルケトンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0062】
浸透性溶剤の添加量は、帯電防止ハードコート層用組成物の全固形分100質量部に対して、50〜500質量部であることが好ましい。この範囲が好ましいとしたのは、浸透性溶剤の添加量が50質量部未満であると、浸透性溶剤が充分に光透過性基材に浸透せず、干渉縞が発生するおそれがあるからであり、また、500質量部を超えると、浸透性溶剤が、光透過性基材を必要以上に溶解又は膨潤させる可能性があり、光学フィルムとして所望の硬度が得られないおそれがあるからである。
【0063】
(その他の成分)
帯電防止ハードコート層用組成物には、その他、必要に応じて、重合開始剤、分散剤、易滑剤、微粒子、防眩剤等を添加してもよい。
【0064】
(重合開始剤)
重合開始剤は、光照射により分解されて、ラジカルを発生して光重合性モノマーの重合を開始または進行させる成分である。
【0065】
重合開始剤は、光照射によりラジカル重合を開始させる物質を放出することが可能であれば特に限定されない。重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、ジスルフィド化合物類、チウラム化合物類、フルオロアミン化合物類等が挙げられる。より具体的には、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケトン、1−(4−ドテシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン等を例示できる。これらの中でも、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、及び2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンは、少量でも光照射による重合反応を開始または促進することができるので、好ましい。重合開始剤は、以上に示したいずれか一つを単独で、又は、複数を組み合わせて用いることができる。
【0066】
重合開始剤の市販品としては、例えば、BASF社製のイルガキュア(登録商標)184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、イルガキュア(登録商標)907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、イルガキュア(登録商標)127(2−ヒドロキシ−1[4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン)、ルシリン(登録商標)TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)等が挙げられる。
【0067】
(易滑剤)
易滑剤(アンチブロッキング剤)は、ロール状態にするなど帯電防止ハードコート層と光透過性基材とを重ね合わせた際の貼り付きを防止する成分である。易滑剤としては、従来公知の易滑剤を使用することができ、例えば、平均一次粒径100〜1000nmの特開2004−284126号公報に記載のシリカ等の無機化合物の微粒子及び高密度ポリエチレンや、ポリスチレン、ポリスチレンアクリル等の有機化合物の微粒子を用いることができる。易滑剤の含有量は、帯電防止ハードコート層用組成物の全固形分の合計質量に対して、0.1〜5質量%であることが好ましい。
【0068】
(硬度付与微粒子)
硬度付与微粒子は、帯電防止ハードコート層の硬度を向上させる成分である。微粒子としては帯電防止ハードコート層に用いることができる公知のものを要求性能に応じて適宜採用すればよい。
【0069】
硬度付与微粒子の平均粒径は、ハードコート層の透明性の点から1〜100nmであることが好ましい。この範囲であることにより、ハードコート層の透明性を維持しながら硬度を付与しやすい。微粒子は、凝集粒子であってもよく、凝集粒子である場合は、二次粒径が上記範囲内であれば良い。
【0070】
硬度付与微粒子の帯電防止ハードコート層用組成物における添加量は特に制限が無く、硬度等を考慮して適宜設定すれば良い。微粒子の添加量は、帯電防止ハードコート層用組成物の全固形分に対し、0〜40質量%であることが帯電防止ハードコート層の硬度向上の点から好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。40質量%を超えると、帯電防止性能が発現されなくなってしまうおそれがある。
【0071】
微粒子は、無機微粒子でも有機微粒子でもよいが、硬度付与の観点から無機微粒子であることが好ましい。無機微粒子としては、例えば、シリカ(SiO)微粒子、アルミナ微粒子等が挙げられる。
【0072】
シリカ微粒子は、表面処理が施されたものであってもよい。また、シリカ微粒子としては、硬度の面から表面に紫外線反応基を有するものが好ましい。シリカ微粒子の形状は、球状、不定形、異形、鎖状であってもよい。シリカ微粒子の市販品としては、日産化学工業株式会社製のIPA−ST、IPASTMS、IPAST(L)等が挙げられる。
【0073】
アルミナはモース硬度が高い材料であるので、無機微粒子としてアルミナ微粒子を使用した場合には、より硬度を向上させることができる。アルミナ微粒子は、シリカ微粒子と同様に表面処理が施されたものであってもよい。
【0074】
有機微粒子としては、例えば、プラスチックビーズを挙げることができる。プラスチックビーズとしては、具体例としては、ポリスチレンビーズ、メラミン樹脂ビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、シリコーンビーズ、ベンゾグアナミンビーズ、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合ビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ等が挙げられる。上記プラスチックビーズは、その表面に疎水性基を有することが好ましく、例えば、スチレンビーズを挙げることができる。
【0075】
(防眩剤)
防眩剤は、ハードコート層に防眩機能を付与するための成分である。防眩剤としては微粒子が挙げられ、微粒子の形状は、真球状、楕円状などのものであってよく、好ましくは真球状のものが挙げられる。また、微粒子は無機系、有機系のものが挙げられるが、好ましくは有機系材料により形成されてなるものが好ましい。微粒子は、防眩性を発揮するものであり、好ましくは透明性のものがよい。微粒子の具体例としては、プラスチックビーズが挙げられ、より好ましくは、透明性を有するものが挙げられる。プラスチックビーズの具体例としては、スチレンビーズ(屈折率1.59)、メラミンビーズ(屈折率1.67)、アクリルビーズ(屈折率1.49)、アクリル−スチレンビーズ(屈折率1.54)、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズなどが挙げられる。
【0076】
光透過性基材1の表面に、帯電防止ハードコート層用組成物2を塗布すると、光透過性基材1の上部に一部の浸透性溶剤および一部の光重合性モノマーが浸透する。一方で、ハードコート層用組成物2中の鎖状金属酸化物粒子、光重合性官能基を6個以上有する重量平均分子量が1000以上のウレタン(メタ)アクリレートおよび/または光重合性官能基を10個以上有する重量平均分子量が10000以上のポリマー(メタ)アクリレートは大きさが大きいため、光透過性基材1には浸透せずに光透過性基材1上に残存する。
【0077】
次いで、例えば30〜100℃で15秒以上乾燥させて浸透性溶剤を除去すると、図2(A)に示されるように、光透過性基材1の上部に光透過性基材2の主成分と光重合性モノマーが混ざり合った混合層3が形成されるとともに、混合層3上に鎖状金属酸化物粒子と透過性基材1に浸透せずに光透過性基材1上に残留した光重合性モノマーと、上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび/または上記ポリマー(メタ)アクリレートとを含む鎖状金属酸化物粒子含有層4が形成される。混合層3を形成した後における光透過性基材1Aは混合層3の厚みだけ光透過性基材1よりも薄くなっている。また、本発明における「光透過性基材の主成分」とは、光透過性基材の構成成分の中で最も含有割合が高い成分を示すものである。
【0078】
その後、図2(B)に示されるように、混合層3と鎖状金属酸化物粒子含有層4とに紫外線等の光を照射して、混合層3に含まれる光重合性モノマーを重合させることにより混合層3を硬化させるとともに、鎖状金属酸化物粒子含有層4に含まれる光重合性モノマーならびにウレタン(メタ)アクリレートおよび/またはポリマー(メタ)アクリレートを重合させることにより、鎖状金属酸化物粒子含有層4を硬化させる。これにより、混合層3の硬化物である第1のハードコート層5と、鎖状金属酸化物粒子含有層4の硬化物である第2のハードコート層6とから構成された帯電防止ハードコート層7が形成される。光として、紫外線を用いる場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる紫外線等が利用できる。
【0079】
第1のハードコート層5は、光透過性基材1Aの主成分と、光重合モノマーの重合体を含む第1のバインダ樹脂とを含んでいる。また、第2のハードコート層6は、鎖状金属酸化物粒子と、第2のバインダ樹脂とを含んでいる。第2のバインダ樹脂は、光重合性モノマーと、上記ウレタン(メタ)アクリレートおよび/または上記ポリマー(メタ)アクリレートとの重合体を含むものである。帯電防止ハードコート層7は、JIS K5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を有する。
【0080】
帯電防止ハードコート層7を形成した後、図3に示されるように、必要に応じて第2のハードコート層6上に帯電防止ハードコート層7の屈折率よりも低い屈折率を有する低屈折率層8を形成する。具体的には、例えば、低屈折率層8は、第2のハードコート層6上に低屈折率層用硬化性樹脂組成物(以下、簡略化のために「低屈折率層用硬化性樹脂組成物」を、「低屈折率層用組成物」と称する。)を塗布し、乾燥させて、硬化させることにより形成することができる。これにより、図3に示される光学フィルム10が作製される。
【0081】
(低屈折率層用組成物)
低屈折率層用組成物としては、例えば、シリカやフッ化マグネシウム等の屈折率の低い成分と硬化後バインダ樹脂となる光重合性モノマー、光重合性オリゴマー、あるいは光重合性ポリマーとを含む組成物が挙げられる。なお、低屈折率層用組成物中に重合開始剤等を添加してもよい。光重合性モノマー、光重合性オリゴマー、あるいは光重合性ポリマーとしては、帯電防止ハードコート層用組成物で挙げられた光重合性モノマー等と同様のものを使用することができる。他にも、有機フッ素化合物のモノマー、オリゴマー、およびポリマーの少なくともいずれかを用いてもよい。有機フッ素化合物は硬度が弱いため、紫外線硬化型のものが好ましい。
【0082】
また、低屈折率層を形成するための組成物には、低屈折率層の屈折率を低減させるために中空シリカ粒子等の中空粒子を含有させてもよい。中空粒子は、外殻層を有し外殻層に囲まれた内部が多孔質組織又は空洞である粒子をいう。この多孔質組織や空洞には空気(屈折率:1)が含まれており、屈折率1.20〜1.45の中空粒子を低屈折率層に含有させることで低屈折率層の屈折率を低下させることができる。中空粒子の平均粒径は1〜100nmであることが好ましい。中空粒子としては従来公知の低屈折率層に用いられているものを用いることができ、例えば、特開2008−165040号公報に記載の空隙を有する微粒子が挙げられる。低屈折率層の膜厚は要求される性能に応じて適宜選択すればよく、80〜120nmであることが好ましい。
【0083】
≪光学フィルム≫
本実施形態に係る光学フィルムは、上記製造方法により得られるものである。すなわち、図3に示されるように、光学フィルム10は、光透過性基材1Aと、光透過性基材1A上に形成された帯電防止ハードコート層7とを備えている。
【0084】
帯電防止ハードコート層7は、光透過性基材1A上に形成され、光透過性基材1Aの主成分と第1のバインダ樹脂とを含む第1のハードコート層5と、第1のハードコート層5上に形成され、第2のバインダ樹脂と、第2のバインダ樹脂中に分散された、鎖状に連結した2個以上の導電性金属酸化物粒子からなる鎖状金属酸化物粒子とを含む第2のハードコート層6とから構成されている。なお、図3に示される光学フィルム10は、低屈折率層8をさらに備えているが、光学フィルム10は低屈折率層8を備えていなくともよい。
【0085】
第1のハードコート層5の厚みは、0.5〜10μmであることが好ましい。この範囲が好ましいとしたのは、第1のハードコート層5の厚みが0.5μm未満であると、光透過性基材との密着に劣るおそれがあり、また10μmを超えると、紫外線等の光がハードコート層中に十分に到達しないので、硬化不良を起こしたり、乾燥後に浸透性溶剤が光透過性基材中に残存してしまったり、硬化後に皺やカールが発生してしまうおそれがあるからである。
【0086】
第2のハードコート層6の厚みは、1〜10μmであることが好ましい。この範囲が好ましいとしたのは、第2のハードコート層6の厚みが1μm未満であると、ハードコート層としての硬度が低くなるおそれがある。また、浸透性溶剤の使用によって光透過性基材が膨潤するので光透過性基材の表面に微細な凹凸が形成されるが、第2のハードコート層の厚みが1μm未満であると、この凹凸によってヘイズが若干上昇してしまい、特に斜めから第2のハードコート層を見た場合に第2のハードコート層が白く見えてしまうおそれがある。一方で10μmを超えると、第2のハードコート層の光透過率が低下してしまうとともに、カールやクラックが発生するおそれがある。また、鎖状金属酸化物粒子はコストも高いので、コストの上昇を引き起こすおそれがある。
【0087】
第1のハードコート層5の屈折率は、第2のハードコート層6側から光透過性基材1A側に向けて徐々に光透過性基材1Aの屈折率に近づくように変化している。これは、上述したように光重合性モノマーを光透過性基材1の表面側から光透過性基材1に浸透させるので、混合層3中の光重合性モノマーが、混合層3の鎖状金属酸化物粒子層4側から光透過性基材1A側に向けて徐々に小さくなる濃度勾配を有するために生じるものと考えられる。
【0088】
このような屈折率の変化は、光学フィルムの膜厚方向の断面の透過型電子顕微鏡(TEM)または走査透過電子顕微鏡(STEM)を用いた観察において、確認することができる。
【0089】
光透過性基材1Aと第1のハードコート層5との間および第1のハードコート層5と第2のハードコート層6の間には界面が存在しない。これらの界面は、光学フィルム10の膜厚方向の断面の透過型電子顕微鏡(TEM)や走査透過電子顕微鏡(STEM)を用いた観察において、視認できる界面を意味する。したがって、TEMやSTEMを用いた観察でこれらの界面が視認できなければ、界面はないと判断する。なお、TEMやSTEMでは電子線照射により生じる二次電子を測定しているので、上層と下層との間の界面において、上層を構成する物質と下層を構成する物質とがグラデーション状に混合されている場合、または上層を構成する物質と下層を構成する物質との二次電子の電子放出特性が同じである場合には界面が存在しても、TEMを用いた観察では界面が視認されない。また、これらの界面がないことは、干渉縞がないことによっても確かめられる。干渉縞がなければ層界面はないためである。干渉縞は、光学フィルムの光透過性基材における第1のハードコート層が形成されている面とは反対側の面に黒いテープを貼り、3波長蛍光ランプ下で観察することで有無を確かめられる。
【0090】
光学フィルム10の表面抵抗値は、優れた帯電防止性を得る観点から、1012Ω/□以下であることが好ましく、1011Ω/□以下であることがより好ましく、1010Ω/□以下であることがさらに好ましい。低屈折率層8を備えない場合には、光学フィルムを鹸化処理後、または溶剤で表面を拭き取った後でも、表面抵抗値は、1012Ω/□以下であることが好ましく、1011Ω/□以下であることがより好ましく、1010Ω/□以下であることがさらに好ましい。鹸化処理は、光学フィルムを、1.5〜4.5規定に調整された40℃〜70℃のNaOHまたはKOH水溶液に15秒〜5分浸漬することにより行われる。表面抵抗値の測定に使用できる機器としては、三菱油化株式会社製のハイレスターHT−210等が挙げられる。
【0091】
光学フィルム10の全光線透過率は、優れた透明性を得る観点から、低屈折率層8を備えない場合には88%以上であることが好ましい。また低屈折率層8を備える場合には90%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましい。また、光学フィルム10のヘイズ値は、優れた透明性を得る観点から、1.0%以下であることが好ましく、0.7%以下であることがより好ましい。全光線透過率はJIS K7361に従って測定し、かつヘイズ値はJIS K7136に従って測定する。全光線透過率およびヘイズ値の測定に使用できる機器としては、村上色彩技術研究所製のHM−150等が挙げられる。なお、「透明性」は、全光線透過率およびヘイズ値によって評価することができる。
【0092】
光学フィルム10の反射Y値は、外光の反射を防止する観点から、2.0%以下であることが好ましく、1.5%以下であることがより好ましく、1.2%以下であることがさらに好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましく、0.7%以下であることがさらに好ましい。反射Y値は、5°正反射率を380〜780nmまでの波長範囲で測定し、その後、人間が目で感じる明度として換算するソフト(後述するMCP3100に内蔵)で算出される、視感反射率で示す値である。なお、5°正反射率を測定する場合には、光学フィルムであるフィルムの裏面反射を防止するため、測定膜面とは逆側に、黒テープを貼って測定する。反射Y値の測定に使用できる機器としては、島津製作所株式会社製のMCP3100等が挙げられる。
【0093】
光学フィルム10の耐スチールウール摩耗性は、光学フィルム10の表面を♯0000のスチールウールを用い、荷重100g/cmを加えながら、速度100mm/秒で10往復擦った場合に傷がないことが好ましく、荷重300g/cmを加えながら、速度100mm/秒で10往復擦った場合に傷がないことがより好ましい。
【0094】
≪偏光板≫
光学フィルム10は、例えば、偏光板に組み込んで使用することができる。図4は本実施形態に係る光学フィルムを組み込んだ偏光板の概略構成図である。図4に示されるように偏光板20は、光学フィルム10と、偏光素子21とを備えている。偏光素子21は、光透過性基材1Aにおける第1のハードコート層5が形成されている面とは反対側の面に形成されている。
【0095】
偏光素子21としては、例えば、ヨウ素等により染色し、延伸したポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等が挙げられる。光学フィルム10と偏光素子21とを積層する際には、予め光透過性基材1Aに鹸化処理を施すことが好ましい。鹸化処理を施すことによって、接着性が良好になり帯電防止効果も得ることができる。
【0096】
≪画像表示装置≫
光学フィルム10や偏光板20は、画像表示装置に組み込んで使用することができる。画像表示装置としては、例えば液晶ディスプレイ(LCD)、陰極線管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、タッチパネル、タブレットPC、電子ペーパー等が挙げられる。図5は本実施形態に係る光学フィルムを組み込んだ画像表示装置の概略構成図である。
【0097】
図5に示される画像表示装置30は、液晶ディスプレイである。画像表示装置30は、光源側(バックライト側)から観察者側に向けて、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)等の保護フィルム31、偏光素子32、位相差フィルム33、接着剤層34、液晶セル35、接着剤層36、位相差フィルム37、偏光素子21、光学フィルム10の順に積層された構造を有している。液晶セル35は、2枚のガラス基材間に、液晶層、配向膜、電極層、カラーフィルタ等を配置したものである。
【0098】
位相差フィルム33、37としては、トリアセチルセルロースフィルムやシクロオレフィンポリマーフィルムが挙げられる。接着剤層34、36を構成する接着剤としては、感圧接着剤(PSA)が挙げられる。
【0099】
鎖状金属酸化物粒子は嵩高いので、浸透性溶剤が光透過性基材1に浸透する際に、光透過性基材1には鎖状金属酸化物粒子はほぼ入り込まない。すなわち、本実施形態の光学フィルム10においては、鎖状金属酸化物粒子は、第2のハードコート層6中に存在しており、第1のハードコート層5中にはほぼ存在していない。また、鎖状金属酸化物粒子は導電性金属酸化物粒子が鎖状に連結しているので、単独の導電性金属酸化物粒子よりも導電パスを形成しやすい。したがって、鎖状金属酸化物粒子と、単独の導電性金属酸化物粒子とを同じ量を用いた場合には、単独の導電性金属酸化物粒子よりも鎖状金属酸化物粒子の方が、帯電防止性を向上させることができる。したがって、鎖状金属酸化物粒子の含有量が帯電防止ハードコート層用組成物の全固形分に対して2〜20質量%という少ない量であったとしても、優れた帯電防止性を得ることができる。
【0100】
本実施形態においては、鎖状金属酸化物粒子の含有量が帯電防止ハードコート層用組成物の全固形分に対して2〜20質量%という少ない量となっているので、ヘイズの上昇を抑制することができる。これにより、帯電防止ハードコート層7の透明性の低下を抑制することができる。
【0101】
本実施形態においては、鎖状金属酸化物粒子は嵩高いので、第2のハードコート層6において沈み込みにくく、また、たとえ、鎖状金属酸化物粒子が第2のハードコート層6中において沈み込んで第1のハードコート層5と第2のハードコート層6との界面付近に存在したとしても、鎖状金属酸化物粒子は鎖状形態となっているので、立体障害により鎖状金属酸化物粒子は、第1のハードコート層5と第2のハードコート層6との界面付近には並ばない。これにより、第1のハードコート層5と第2のハードコート層6との屈折率差がこれらの界面付近において急激に変化することを抑制できる。さらに、第1のハードコート層5の屈折率が第2のハードコート層6側から光透過性基材1A側に向けて徐々に光透過性基材1Aの屈折率に近くになるように変化しており、かつ光透過性基材1Aと第1のハードコート層5との間および第1のハードコート層5と第2のハードコート層6の間には界面が存在しない。これにより、干渉縞の発生を十分に抑制することができる。
【0102】
本実施形態においては、帯電防止剤として鎖状金属酸化物粒子を用いているので、薬品等による脱落を抑制でき、かつ鉛筆硬度を向上させることができる。
【0103】
本実施形態においては、帯電防止ハードコート層用組成物2に、光重合性官能基を6個以上有する重量平均分子量が1000以上のウレタン(メタ)アクリレートおよび光重合性官能基を10個以上有する重量平均分子量が10000以上のポリマー(メタ)アクリレートの少なくともいずれかを含ませているので、帯電防止ハードコート層7の硬度をより向上させることができる。
【0104】
帯電防止ハードコート層用組成物2に光重合性官能基を6個以上有する重量平均分子量が1000以上のウレタン(メタ)アクリレートを含ませた場合には、低屈折率層8に対する帯電防止ハードコート層7の密着性をより向上させることができる。
【0105】
本実施形態によれば、浸透性溶剤により光重合性モノマーを光透過性基材1に浸透させて、帯電防止ハードコート層7の一部である第1のハードコート層5を形成しているので、帯電防止ハードコート層7と光透過性基材1Aとの密着性にも優れている。
【0106】
本実施形態によれば、帯電防止ハードコート層7の表層部に鎖状金属酸化物粒子が偏在しているので、帯電防止ハードコート層に均一に鎖状金属酸化物粒子が分散している場合よりも、光学フィルム10のカール化難くい。また、帯電防止ハードコート層7の表層部に鎖状金属酸化物粒子が偏在しているので、帯電防止ハードコート層に均一に鎖状金属酸化物粒子が分散している場合よりも、反射率が低い。
【実施例】
【0107】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。
【0108】
<帯電防止ハードコート層用組成物の調製>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、帯電防止ハードコート層用組成物を得た。
(帯電防止ハードコート層用組成物1)
・鎖状アンチモンドープ酸化スズのアルコール分散液(鎖状金属酸化物粒子の分散液、ELCOM-V3560、日揮触媒化株式会社製):50質量部(固形分10質量部、アルコール40質量部)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(光重合性モノマー、DPHA、日本化薬株式会社製、重量平均分子量578、6官能):45質量部
・ウレタンアクリレート(アートレジンUN3320HA、根上工業株式会社、重量平均分子量1500、6官能、官能基当量250):45質量部
・メチルエチルケトン(浸透性溶剤):140質量部
・重合開始剤(イルガキュア184、BASF社製):4質量部
【0109】
(帯電防止ハードコート層用組成物2)
・鎖状アンチモンドープ酸化スズのアルコール分散液(鎖状金属酸化物粒子の分散液、ELCOM-V3560、日揮触媒化株式会社製):50質量部(固形分10質量部、アルコール40質量部)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(光重合性モノマー、DPHA、日本化薬株式会社製、重量平均分子量578、6官能):45質量部
・ウレタンアクリレート(UV1700B、日本合成株式会社、重量平均分子量2000、10官能、官能基当量200):45質量部
・メチルエチルケトン(浸透性溶剤):140質量部
・重合開始剤(イルガキュア184、BASF社製):4質量部
【0110】
(帯電防止ハードコート層用組成物3)
・鎖状アンチモンドープ酸化スズのアルコール分散液(鎖状金属酸化物粒子の分散液、ELCOM-V3560、日揮触媒化株式会社製):50質量部(固形分10質量部、アルコール40質量部)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(光重合性モノマー、DPHA、日本化薬株式会社製、重量平均分子量578、6官能):45質量部
・ウレタンアクリレート(アートレジンUN3320HS、根上工業株式会社、重量平均分子量5000、15官能、官能基当量333):45質量部
・メチルエチルケトン(浸透性溶剤):140質量部
・重合開始剤(イルガキュア184、BASF社製):4質量部
【0111】
(帯電防止ハードコート層用組成物4)
・鎖状アンチモンドープ酸化スズのアルコール分散液(鎖状金属酸化物粒子の分散液、ELCOM-V3560、日揮触媒化株式会社製):50質量部(固形分10質量部、アルコール40質量部)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(光重合性モノマー、DPHA、日本化薬株式会社製、重量平均分子量578、6官能):45質量部
・ポリマーアクリレートの酢酸ブチル溶解液(ビームセット371、荒川化学株式会社製、重量平均分子量40000、100官能、官能基当量400):69質量部(固形分45質量部、酢酸ブチル24質量部)
・メチルエチルケトン(浸透性溶剤):140質量部
・重合開始剤(イルガキュア184、BASF社製):4質量部
【0112】
(帯電防止ハードコート層用組成物5)
・鎖状アンチモンドープ酸化スズのアルコール分散液(鎖状金属酸化物粒子の分散液、ELCOM-V3560、日揮触媒化株式会社製):50質量部(固形分10質量部、アルコール40質量部)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(光重合性モノマー、DPHA、日本化薬株式会社製、重量平均分子量578、6官能):30質量部
・ポリマーアクリレートの酢酸ブチル溶解液(ビームセット371、荒川化学株式会社製、重量平均分子量40000、100官能、官能基当量400):46質量部(固形分30質量部、酢酸ブチル16質量部)
・ウレタンアクリレート(UV1700B、日本合成株式会社、重量平均分子量2000、10官能、官能基当量200):45質量部
・メチルエチルケトン(浸透性溶剤):140質量部
・重合開始剤(イルガキュア184、BASF社製):4質量部
【0113】
(帯電防止ハードコート層用組成物6)
鎖状アンチモンドープ酸化スズのアルコール分散液(鎖状金属酸化物粒子の分散液、ELCOM-V3560、日揮触媒化株式会社製):50質量部(固形分10質量部、アルコール40質量部)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(光重合性モノマー、DPHA、日本化薬株式会社製、重量平均分子量578、6官能):45質量部
・ウレタンアクリレート(アートレジンUN333、根上工業株式会社、重量平均分子量5000、2官能、官能基当量2500):45質量部
・メチルエチルケトン(浸透性溶剤):140質量部
・重合開始剤(イルガキュア184、BASF社製):4質量部
【0114】
(帯電防止ハードコート層用組成物7)
・鎖状アンチモンドープ酸化スズのアルコール分散液(鎖状金属酸化物粒子の分散液、ELCOM-V3560、日揮触媒化株式会社製):50質量部(固形分10質量部、アルコール40質量部)
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(光重合性モノマー、DPHA、日本化薬株式会社製、重量平均分子量578、6官能):45質量部
・ポリマーアクリレート(アートレジンUN7700、根上工業株式会社、重量平均分子量20000、2官能、官能基当量10000):45質量部
・メチルエチルケトン(浸透性溶剤):140質量部
・重合開始剤(イルガキュア184、BASF社製):4質量部
【0115】
(帯電防止ハードコート層用組成物8)
・鎖状アンチモンドープ酸化スズのアルコール分散液(鎖状金属酸化物粒子の分散液、ELCOM-V3560、日揮触媒化株式会社製):200質量部(固形分40質量部、アルコール160質量部)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(光重合性モノマー、PET30、日本化薬株式会社製、重量平均分子量298、3官能):30質量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(光重合性モノマー、DPHA、日本化薬株式会社製、重量平均分子量578、6官能):30質量部
・イソプロピルアルコール(非浸透性溶剤):25質量部
・重合開始剤(イルガキュア184、BASF社製):4質量部
【0116】
(帯電防止ハードコート層用組成物9)
・鎖状アンチモンドープ酸化スズのアルコール分散液(鎖状金属酸化物粒子の分散液、ELCOM-V3560、日揮触媒化株式会社製):50質量部(固形分10質量部、アルコール45質量部)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(光重合性モノマー、PET30、日本化薬株式会社製、重量平均分子量298、3官能):45質量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(光重合性モノマー、DPHA、日本化薬株式会社製、重量平均分子量578、6官能):30質量部
・イソプロピルアルコール(非浸透性溶剤):140質量部
重合開始剤(イルガキュア184、BASF社製):4質量部
【0117】
(帯電防止ハードコート層用組成物10)
・鎖状アンチモンドープ酸化スズのアルコール分散液(鎖状金属酸化物粒子の分散液、ELCOM-V3560、日揮触媒化株式会社製):200質量部(固形分40質量部、アルコール160質量部)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(光重合性モノマー、PET30、日本化薬株式会社製、重量平均分子量298、3官能):30質量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(光重合性モノマー、DPHA、日本化薬株式会社製、重量平均分子量578、6官能):30質量部
・メチルエチルケトン(浸透性溶剤):200質量部
・重合開始剤(イルガキュア184、BASF社製):4質量部
【0118】
(帯電防止ハードコート層用組成物11)
・鎖状アンチモンドープ酸化スズのアルコール分散液(鎖状金属酸化物粒子の分散液、ELCOM-V3560、日揮触媒化株式会社製):5質量部(固形分1質量部、アルコール9質量部)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(光重合性モノマー、PET30、日本化薬株式会社製、重量平均分子量298、3官能):49質量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(光重合性モノマー、DPHA、日本化薬株式会社製、重量平均分子量578、6官能):49質量部
・メチルエチルケトン(浸透性溶剤):172質量部
・重合開始剤(イルガキュア184、BASF社製):4質量部
【0119】
(帯電防止ハードコート層用組成物12)
・非鎖状アンチモンドープ酸化スズのメチルイソブチルケトン分散液(非鎖状金属酸化物粒子の分散液、EPT5DL2MIBK、三菱マテリアル電子化成株式会社製):50質量部(固形分10質量部、メチルイソブチルケトン40質量部)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(光重合性モノマー、PET30、日本化薬株式会社製、重量平均分子量298、3官能):30質量部
・ウレタンアクリレート(UV1700B、日本合成株式会社、重量平均分子量2000、10官能、官能基当量200):30質量部
・イソプロピルアルコール(非浸透性溶剤):25質量部
・重合開始剤(イルガキュア184、BASF社製):4質量部
【0120】
(帯電防止ハードコート層用組成物13)
・非鎖状アンチモンドープ酸化スズのメチルイソブチルケトン分散液(非鎖状金属酸化物粒子の分散液、EPT5DL2MIBK、三菱マテリアル電子化成株式会社製):200質量部(固形分40質量部、メチルイソブチルケトン160質量部)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(光重合性モノマー、PET30、日本化薬株式会社製、重量平均分子量298、3官能):30質量部
・ウレタンアクリレート(UV1700B、日本合成株式会社、重量平均分子量2000、10官能、官能基当量200):30質量部
・イソプロピルアルコール(非浸透性溶剤):25質量部
・重合開始剤(イルガキュア184、BASF社製):4質量部
【0121】
<低屈折率層用組成物の調製>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、ハードコート層用組成物を得た。
(低屈折率層用組成物)
・中空状処理シリカ微粒子のメチルイソブチルケトン分散液(日揮触媒化株式会社製、平均粒径60nm):60質量部(固形分20質量%)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(PET30、日本化薬株式会社製、3官能):10質量部
・反応型シリコーン(X22164E、信越化学株式会社製):0.6質量部
・メチルイソブチルケトン:350質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:161質量部
・重合開始剤(イルガキュア127、BASF社製):0.4質量部
【0122】
<実施例1>
厚さ40μmのトリアセチルセルロース基材(KC4UY、コニカミノルタ株式会社製)の一方の表面に、ロールコート法を用いて帯電防止ハードコート層用組成物1を塗布して塗膜を形成した。その塗膜を70℃で60秒間乾燥させた後、紫外線照射装置を用いて、照射量100mJ/cmで紫外線照射を行い、塗膜を硬化させた。これにより、トリアセチルセルロースと、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの重合体とを含む乾燥膜厚4μmの第1のハードコート層と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートおよびウレタンアクリレートの重合体と鎖状アンチモンドープ酸化スズとを含む乾燥膜厚1.5μmの第2のハードコート層とから構成された帯電防止ハードコート層を形成した。さらに、第2のハードコート層の表面に低屈折率層用組成物を塗布して塗膜を形成した。その塗膜を70℃で60秒間乾燥させた後、紫外線照射装置を用いて、照射量150mJ/cmで紫外線照射を行い、塗膜を硬化させて、低屈折率層を得た。これにより、トリアセチルセルロース基材上に帯電防止ハードコート層および低屈折率層がこの順で形成された光学フィルムが作製された。
【0123】
<実施例2〜5および比較例1〜8>
実施例2、3および比較例1〜8においては、帯電防止ハードコート層用組成物として表1に示すものを用いた以外は、実施例1と同様の方法により光学フィルムを作製した。
【0124】
<光学フィルムの断面観察>
上記実施例1において作製された光学フィルムの断面を、走査電子顕微鏡(SEM)(S−4800、日立協和エンジニアリング株式会社製)の走査透過電子顕微鏡(STEM)機能を用いて撮影し、得られたSTEM断面写真を観察した。図6は走査電子顕微鏡の走査透過電子顕微鏡機能を用いて撮影した実施例1に係る光学フィルムの断面写真である。図7は走査電子顕微鏡の走査透過電子顕微鏡機能を用いて撮影した実施例1に係る光学フィルムの表面付近の断面写真である。
【0125】
図6および図7の写真により、トリアセチルセルロール基材上に第1のハードコート層が存在し、第1のハードコート層上に鎖状金属酸化物粒子を含む第2のハードコート層が存在し、第2のハードコート層上に低屈折率層が存在していることが確認できた。また、図6および図7の写真により、トリアセチルセルロース基材と第1のハードコート層との間および第1のハードコート層と第2のハードコート層との間に界面がないことが確認できた。
【0126】
<光学フィルムの評価>
上記実施例および比較例において作製された光学フィルムについて、それぞれ以下に示す試験を行って、評価した。
【0127】
(表面抵抗値測定)
上記実施例および比較例で作製したそれぞれの光学フィルムについて、表面抵抗値測定器(ハイレスターHT−210、三菱油化株式会社製)を用いて表面抵抗値を測定した。
【0128】
(全光線透過率測定)
上記実施例および比較例で作製したそれぞれの光学フィルムについて、ヘイズメーター(HM−150、村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS K−7361に従って全光線透過率を測定した。
【0129】
(ヘイズ値測定)
上記実施例および比較例で作製したそれぞれの光学フィルムについて、ヘイズメーター(HM−150、村上色彩技術研究所製)を用いて、JIS K−7361に従ってヘイズ値を測定した。
【0130】
(反射Y値測定)
上記実施例および比較例で作製したそれぞれの光学フィルムについて、分光光度計(MCP3100、島津製作所株式会社製)を用いて、反射Y値を測定した。なお、反射Y値を求めるための5°正反射率の測定においては、光学フィルムの裏面反射を防止するため、測定膜面とは逆側に、黒いテープ(寺岡製作所製)を貼った。
【0131】
(鉛筆硬度試験)
上記実施例および比較例で作製したそれぞれの光学フィルムの低屈折率層の表面に対して、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(4.9N荷重)を行った。評価基準は以下の通りとした。
○:傷なし/測定回数=4/5、5/5
×:傷なし/測定回数=0/5、1/5、2/5、3/5
【0132】
(干渉縞評価)
1.目視評価
上記実施例および比較例で作製したそれぞれの光学フィルムのトリアセチルセルロース基材における帯電防止ハードコート層が形成されている面とは反対側の面に黒いテープを貼り、3波長蛍光ランプ下で目視して、干渉縞の有無を評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:干渉縞が確認されなかった。
×:干渉縞が確認された。
【0133】
2.分光反射率評価
上記実施例および比較例で作製したそれぞれの光学フィルムについて、分光光度計(MCP3100、島津製作所株式会社製)を用いて、5°正反射率を測定し、分光反射率曲線を得た。そして、分光反射曲線におけるリップル(極大極小の波)の有無を調べた。なお、5°正反射率の測定においては、光学フィルムの裏面反射を防止するため、測定膜面とは逆側に、黒いテープ(寺岡製作所製)を貼った。評価基準は以下の通りとした。
○:リップルが確認されない、またはリップルが確認されたが非常に少なかった。
×:リップルが多数確認された。
【0134】
(密着性評価)
上記実施例および比較例で作製したそれぞれの光学フィルムについて、密着性評価として、碁盤目密着試験を行い、密着率を算出した。碁盤目密着試験は、以下のようにして行われた。光学フィルムの低屈折率層側の表面に1mm角で合計100目の碁盤目を入れ、ニチバン株式会社製工業用24mmセロテープ(登録商標)を用いて5回連続剥離試験を行い、剥がれずに残ったマス目の割合(密着率)を求めた。なお、密着率は、以下の式に基づいて算出された。
密着率(%)=(剥がれなかったマス目の数/合計のマス目数100)×100
【0135】
(耐スチールウール(SW)摩耗性評価)
上記実施例および比較例で作製したそれぞれの光学フィルムを♯0000のスチールウール(商品名「BON STAR」、日本スチールウール株式会社製)を用い、荷重300g/cmを加えながら、速度100mm/秒で10往復擦った後、トリアセチルセルロース基材における帯電防止ハードコート層が形成されている面とは反対側の面に黒いテープを貼り、傷の有無を3波長蛍光ランプ下での目視により評価した。評価基準は以下の通りとした。
○:傷が確認されなかった。
×:傷が確認された。
【0136】
評価結果を表1に示す。なお、表1に記載されている「鎖状金属酸化物粒子の含有量(質量%)」は、帯電防止ハードコート層用組成物の全固形分に対する鎖状金属酸化物粒子の含有量を意味するものとする。
【表1】

【0137】
表1に示されるように、実施例1〜5の光学フィルムは、表面抵抗値、全光線透過率、ヘイズ値、反射Y値、鉛筆硬度、干渉縞防止性、密着性、耐SW摩耗性の全てを満足させる結果が得られた。特に干渉縞防止性に関しては、従来からハードコート層と光透明基材との界面で生じる干渉縞は、ハードコート組成物中に浸透性溶剤を適切量添加することで防止できることが知られているが、帯電防止ハードコート層の場合、この浸透性溶剤だけでは不十分であった(比較例の結果参照)。これは、帯電防止性微粒子等の帯電防止材料を添加した場合、帯電防止材料は浸透性溶剤とともに光透過性基材中に、干渉縞防止可能なレベルで浸透することが出来ず、そのために帯電防止材料起因の新たな界面が帯電防止ハードコート層と光透過性基材の間に生じて干渉縞になっていたからであると考えられる。これに対し、本発明においては、鎖状金属酸化物粒子を帯電防止材料に用いているため、このような界面が生じないと考えられる。このため、実施例においては、良好な干渉縞防止性が得られている。
【0138】
一方、比較例1〜8の光学フィルムは、表面抵抗値、全光線透過率、ヘイズ値、反射Y値、鉛筆硬度、干渉縞防止性、密着性、耐SW摩耗性の全てを満足させる結果は得られなかった。比較例1、2は、ウレタン(メタ)アクリレートやポリマー(メタ)アクリレートの官能基当量が大きすぎるため、また比較例3、5は浸透性溶剤を使用しておらず、比較例6はウレタン(メタ)アクリレートやポリマー(メタ)アクリレートを使用していないために、上記性能のいずれかを満足できなかったと考えられる。
【0139】
比較例7における表面抵抗値の結果が「over」となっているのは、比較例7に係る光学フィルムにおいては、非鎖状アンチモンドープ酸化スズ粒子のバインダ成分に対する量が少ないために、バインダ成分に均一に分散することにより、この粒子同士の間隔が広くなり、導電パスが形成されていないためであると考えられる。また、比較例7における干渉縞防止性の目視評価の結果が「○」となっているのは、比較例7に係る光学フィルムにおいては、非鎖状アンチモンドープ酸化スズ粒子がバインダ成分の量に対して均一分散性が高く保てる程度の量で添加されているので、この粒子の比重がバインダ成分よりも高いにも関わらず第1のハードコート層側への沈み込みがほぼなくなるため、第1のハードコート層と第2のハードコート層との屈折率差の変化が小さくなることに起因すると考えられる。しかし、帯電防止ハードコート層全体としての屈折率は比較例6と比較すると大きいため、比較例7の3波長蛍光ランプの目視評価における「○」は、製品として使用できるレベルであるが、比較例6の「○」と比較すると、レベル的に悪い。このことは、比較例7における干渉縞防止性の分光反射率評価の結果が「×」となっていることに表れており、干渉縞防止性としてやはり不十分であった。
【0140】
また、比較例8における表面抵抗値の結果が9×10となっているのは、比較例8に係る光学フィルムにおいては、非鎖状アンチモンドープ酸化スズ粒子の量が多いので、比較例7とは反対にこの粒子同士の間隔が密であり、十分な導電パスが形成されためであると考えられる。また、比較例8における干渉縞防止性の目視評価および分光反射率評価の結果が「×」となっているのは、比較例8に係る光学フィルムにおいては、多量の非鎖状アンチモンドープ酸化スズ粒子が存在することによって帯電防止ハードコート層の屈折率が高くなっているだけでなく、この粒子の比重が大きいため、第1のハードコート層側へ沈み込んでしまい、第1のハードコート層と第2のハードコート層との界面で屈折率差が大きく変化したためであると考えられる。
【符号の説明】
【0141】
1、1A…光透過性基材
2…帯電防止ハードコート層用光硬化性樹脂組成物
3…混合層
4…鎖状金属酸化物粒子含有層
5…第1のハードコート層
6…第2のハードコート層
7…帯電防止ハードコート層
8…低屈折率層
10…光学フィルム
20…偏光板
21…偏光素子
30…画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材の表面に、鎖状に連結した2個以上の導電性金属酸化物粒子からなる鎖状金属酸化物粒子と、光重合性モノマーと、光重合性官能基を6個以上有する重量平均分子量が1000以上のウレタン(メタ)アクリレートおよび光重合性官能基を10個以上有する重量平均分子量が10000以上のポリマー(メタ)アクリレートの少なくともいずれかと、前記光透過性基材に対して浸透性を有する浸透性溶剤とを含む帯電防止ハードコート層用光硬化性樹脂組成物を塗布し、乾燥させて、前記光透過性基材の上部に前記光透過性基材の主成分と前記光重合性モノマーとが混ざり合った混合層を形成するとともに、前記混合層上に前記鎖状金属酸化物粒子と前記光重合性モノマーと前記ウレタン(メタ)アクリレートおよび前記ポリマー(メタ)アクリレートの少なくともいずれかとを含む鎖状金属酸化物粒子含有層を形成する工程と、
前記混合層および前記鎖状金属酸化物粒子含有層を光照射により硬化させて、前記混合層の硬化物である第1のハードコート層と、前記鎖状金属酸化物粒子含有層の硬化物であり、かつ前記第1のハードコート層上に形成された第2のハードコート層とからなる帯電防止ハードコート層を形成する工程とを備え、
前記帯電防止ハードコート層用光硬化性樹脂組成物の全固形分に対する前記鎖状金属酸化物粒子の含有量が、2〜20質量%であることを特徴とする、光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記ウレタン(メタ)アクリレートの官能基当量および前記ポリマー(メタ)アクリレートの官能基当量が150以上500以下である、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記鎖状金属酸化物粒子が、2〜50個鎖状に連結した前記導電性金属酸化物粒子からなる、請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記導電性金属酸化物粒子が、アンチモンドープ酸化スズ、リンドープ酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、ZnO、CeO、Sb、SnO、In、およびAlからなる群から選択される金属酸化物の粒子である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記光透過性基材がトリアセチルセルロース基材である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
光透過性基材と、前記光透過性基材上に形成された帯電防止ハードコート層とを備える光学フィルムであって、
前記帯電防止ハードコート層が、前記光透過性基材上に形成された第1のハードコート層と、前記第1のハードコート層上に形成された第2のハードコート層とからなり、
前記第1のハードコート層が、前記光透過性基材の主成分と第1のバインダ樹脂とを含み、
前記第2のハードコート層が、鎖状に連結した2個以上の導電性金属酸化物粒子からなる鎖状金属酸化物粒子と第2のバインダ樹脂とを含み、
前記第2のバインダ樹脂が、光重合性モノマーと、光重合性官能基を6個以上有する重量平均分子量が1000以上のウレタン(メタ)アクリレートおよび光重合性官能基を10個以上有する重量平均分子量が10000以上のポリマー(メタ)アクリレートの少なくともいずれかとの重合体を含み、
前記第1のハードコート層の屈折率が、前記第2のハードコート層側から前記光透過性基材側に向けて徐々に前記光透過性基材の屈折率に近づくように変化しており、かつ
前記光透過性基材と前記第1のハードコート層との間および前記第1のハードコート層と前記第2のハードコート層との間に界面が存在しないことを特徴とする、光学フィルム。
【請求項7】
前記ウレタン(メタ)アクリレートの官能基当量および前記ポリマー(メタ)アクリレートの官能基当量が150以上500以下である、請求項6に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記鎖状金属酸化物粒子が、2〜50個鎖状に連結した前記導電性金属酸化物粒子からなる、請求項6または7に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記導電性金属酸化物粒子が、アンチモンドープ酸化スズ、リンドープ酸化スズ、スズドープ酸化インジウム、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、ZnO、CeO、Sb、SnO、In、およびAlからなる群から選択される金属酸化物の粒子である、請求項6ないし8のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記光透過性基材がトリアセチルセルロース基材である、請求項6ないし9のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項11】
請求項6ないし10のいずれか一項に記載の光学フィルムと、
前記光学フィルムの前記光透過性基材における前記第1のハードコート層が形成されている面とは反対側の面に形成された偏光素子とを備えることを特徴とする、偏光板。
【請求項12】
請求項6ないし10のいずれか一項に記載の光学フィルム、または請求項11に記載の偏光板を備えることを特徴とする、画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−101330(P2013−101330A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−227131(P2012−227131)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】