説明

光学フィルム、画像表示装置、ジエチニルフルオレン及びそのポリマー

【課題】 本発明の課題は、好ましい波長分散を示し、さらに、比較的薄く形成することもできる光学フィルムを提供することである。
【解決手段】本発明は、下記一般式(II)で表される繰り返し単位を有するポリマーを含む光学フィルム。
式(II)において、A、A’、B及びB’は、それぞれ置換基を表し、a、a’、b及びb’は、対応するA、A’、B及びB’の置換数を表す。A、A’、B及びB’は、それぞれ独立して、ハロゲン又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基などを表す。Xは、−CO−、−SO−などを表す。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム及び画像表示装置、該光学フィルムの形成材料として用いることができるジエチニルフルオレン及びポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
位相差板は、例えば液晶表示装置の広視野角化等を実現するために利用される、液晶セル等を補償する光学フィルムである。位相差板の位相差は、波長に依存している。その位相差板の波長分散は、大別して次の3種類に分けられる。1つ目は、位相差が短波長側ほど大きい波長分散(以下、「正分散」という)を示す位相差板、2つ目は、位相差が短波長側から長波長側に亘って殆ど変わらない波長分散(以下、「フラット分散」という)を示す位相差板、3つ目は、位相差が短波長側ほど小さい波長分散(以下、「逆分散」という)を示す位相差板、である。
なお、正分散や逆分散は、位相差の波長依存性が大きく、フラット分散は、位相差の波長依存性が小さい。
【0003】
かかる3種の位相差板のうち、従来、フラット分散を示す位相差板として、ノルボルネン系樹脂を製膜延伸したノルボルネン系フィルムが利用されている(例えば、JSR株式会社製、商品名「アートンフィルム」)。しかしながら、ノルボルネン系フィルムは、厚み60〜80μm程度なので比較的厚い。このため、この光学フィルムを用いると、液晶表示装置の薄膜軽量化を図ることが困難である。
【0004】
一方、例えば、ポリイミドは、基材上にコーティングしてフィルム状に製膜することによって所定の位相差を示すことが知られている(特許文献1)。コーティングによって形成できるポリイミドを含む位相差板は、比較的薄く形成できる。しかしながら、ポリイミドからなるフィルムは、通常、正分散を示すため、これを用いた位相差板は、フラット分散とはならない。
【0005】
また、位相差板の厚み方向位相差値は、「Δnxz×厚み」で求められる。従って、Δnxzが大きい位相差板は、比較的薄く形成しても、所望の位相差値を有する。このため、Δnxzの大きいフィルムが求められている。
【特許文献1】特表2000−511296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、好ましい波長分散を示し、さらに、比較的薄く形成することもできる光学フィルム、及びこれを用いた画像表示装置を提供することである。また、本発明の他の目的は、前記光学フィルムの形成材料として好適なジエチニルフルオレンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
液晶表示装置の液晶セルとして、VA(Vertical Alignment)モードの液晶セルが広く普及している。本発明者らは、このVAモードの液晶セルの波長分散を詳細に調べたところ、近年のVAモードの液晶セルは、フラット分散を示すものが多くなってきていることが判った。このため、これを補償する位相差板は、波長分散がフラット分散の位相差板を用いることが好ましく、更に、軽量化の観点から比較的薄い位相差板が好ましい。しかし、上述のように、従来の位相差板は、一長一短がある。このため、本発明者らは、種々の材料について鋭意研究し、特定のポリマーを用いることにより、上記目的を達成できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリマーを含む光学フィルムに係る。
【0009】
【化1】

上記式(I)に於いて、A、A’、B及びB’は、それぞれ置換基を表し、a及びa’は、対応するA及びA’の置換数(0〜3の整数)を、b及びb’は、対応するB及びB’の置換数(0〜3の整数)を表す。A、A’、B及びB’は、それぞれ独立して、ハロゲン又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のビニル基、置換若しくは無置換のエチニル基、SiR基(R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基)、又はCR(OH)基(R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基)を表す。Xは、−CR−(Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、パーフルオロ基、又は置換若しくは無置換のアリール基)、−SiR−(Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基)、−O−、−NR10−(R10は、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基)、−CO−、又は−SO−を表す。
【0010】
式(I)で表される繰り返し単位は、主鎖部の2つのベンゼン環が2価の結合種Xによって結合されている。このため、この繰り返し単位が導入されたポリマーは、主鎖の剛直性が高くなる。かかるポリマーを製膜して得られる光学フィルムは、Δnxzが比較的大きくなる。従って、かかる光学フィルムは、比較的薄く形成しても、所望の位相差値を有する。
さらに、上記式(I)で表される繰り返し単位を有するポリマーは、側鎖であるフルオレン骨格の共役系が三重結合基(エチニル基)によって延出され、且つフルオレン骨格が主鎖の延びる方向に対して直交方向に配向する。このため、該ポリマーを製膜した光学フィルムは、その位相差の波長分散がフラット分散に近づくのである。
【0011】
本発明の好ましい態様では、波長550nmに於ける複屈折率Δnxzが、0.005〜0.070である上記光学フィルムに係る。
上記Δnxz=nx−nzであり、nxは、フィルム面内の屈折率が最大となる方向(X軸方向)に於ける屈折率を表し、nzは、厚み方向に於ける屈折率を表す。
【0012】
本発明の他の好ましい態様では、Rth(450)/Rth(550)<1.06を示す上記光学フィルムに係る。
本発明の他の好ましい態様では、Rth(650)/Rth(550)≧0.95を示す上記光学フィルムに係る。
上記Rth(450)、Rth(550)及びRth(650)は、波長450nm、波長550nm及び波長650nmに於ける厚み方向位相差値を表す。
また、本発明の好ましい態様では、上記ポリマーが、ポリエステル系ポリマーである上記光学フィルムに係る。
【0013】
また、本発明は、上記光学フィルムを有する画像表示装置を提供する。
【0014】
さらに、本発明は、下記一般式(X)で表されるジエチニルフルオレンを提供する。
【化2】

上記式(X)に於いて、A、A’、B及びB’は、それぞれ置換基を表し、a及びa’は、対応するA及びA’の置換数(0〜3の整数)を、b及びb’は、対応するB及びB’の置換数(0〜3の整数)を表す。A、A’、B及びB’は、それぞれ独立して、ハロゲン又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。D及びD’は、それぞれ独立して、OH基、NHR基(Rは、水素又は炭素数1〜4のアルキル基)、COOH基、又はNCO基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のビニル基、置換若しくは無置換のエチニル基、SiR基(R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基)、又はCR(OH)基(R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基)を表す。Xは、−CR−(Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、パーフルオロ基、又は置換若しくは無置換のアリール基)、−SiR−(Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基)、−O−、−NR10−(R10は、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基)、−CO−、又は−SO−を表す。
【0015】
また、本発明は、上記ジエチニルフルオレンを繰り返し単位として有するポリマーを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光学フィルムは、位相差の波長分散がフラット分散となる。このため、本発明の光学フィルムは、例えばVAモードの液晶セルを補償する位相差板として好適に使用できる。さらに、本発明の光学フィルムは、Δnxzが比較的大きい。このため、本発明の光学フィルムは、比較的薄い厚みでも、所望の厚み方向位相差値を有する。
かかる光学フィルムの具備された画像表示装置は、良好な視野角改善などを行え、又、薄型軽量化を図ることができる。
さらに、本発明のジエチニルフルオレンは、主鎖部の2つのベンゼン環が結合されているので(このベンゼン環は、式中、「X」で結合されている2つのベンゼン環である)、主鎖の剛直性及び直線性を向上させることができる。該ジエチニルフルオレンは、例えば、適宜なポリマーに導入して使用される。剛直で且つ直線性の高いジエチニルフルオレンが導入された本発明のポリマーは、これを製膜することにより、位相差の波長分散がフラット分散となる、比較的薄型の光学フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に於いて用いる用語の意味は、次の通りである。
「nx」とは、フィルム面内の屈折率が最大となる方向(X軸方向)に於ける屈折率を表し、「ny」とは、同面内でX軸方向に対して直交する方向(Y軸方向)に於ける屈折率(nx≧ny)を表し、「nz」とは、X軸及びY軸に直交する方向(厚み方向)に於ける屈折率を、それぞれ表す。
「Δnxz」とは、25℃で波長λ(nm)におけるフィルムの厚み方向の屈折率差をいう。Δnxz(λ)=nx−nzによって求めることができる。
「面内位相差値(Re(λ))」とは、25℃で波長λ(nm)におけるフィルムの面内位相差値をいう。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Re(λ)=(nx−ny)×dによって求めることができる。
「厚み方向位相差値(Rth(λ))」とは、25℃で波長λ(nm)におけるフィルムの厚み方向位相差値をいう。Rth(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Rth(λ)=(nx−nz)×dによって求めることができる。
「ポリマー」とは、重合度(当該ポリマーが、複数の繰り返し単位を含む場合は、各単位の合計の重合度)が20以上の高重合体を包含し、さらに、重合度が2以上20未満の低重合体(オリゴマーともいう)を包含する。
【0018】
本発明者らは、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリマーを製膜することにより、波長450〜750nmの可視光領域に於ける位相差の波長分散がフラット分散に近づき、且つΔnxzが比較的大きな光学フィルムを得ることができることを見出した。本発明は、このポリマーの性質を専ら利用して、フラット分散を示す(つまり位相差の波長依存性が小さい)薄型の光学フィルムを提供する。
【0019】
【化3】

【0020】
上記式(I)に於いて、A、A’、B及びB’は、それぞれ置換基を表し、a及びa’は、対応するA及びA’の置換数を、b及びb’は、対応するB及びB’の置換数を表す。前記a及びa’は、0〜3の整数であり、b及びb’は、0〜3の整数である。
A、A’、B及びB’は、それぞれ独立して、ハロゲン又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のビニル基、置換若しくは無置換のエチニル基、SiR基、及びCR(OH)基からなる群から選択される基を表す。前記R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基を表す。前記R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
式(I)のXは、−CR−、−SiR−、−O−、−NR10−、−CO−、又は−SO−を表す。前記Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、パーフルオロ基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。前記Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。前記R10は、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。
【0021】
上記式(I)で表される繰り返し単位の中でも、下記式(II)で表される繰り返し単位が好ましい。
【化4】

上記式(II)に於いて、A、A’、B、B’、a、a’、b、b’、R、R及びXは、式(I)と同じである。
【0022】
式(I)及び式(II)に於いて、A、A’、B及びB’が、ハロゲン又は炭素数1〜4のアルキル基であっても、光学フィルムの波長分散に特に影響を与えない。A及びA’が前記置換基の場合には、A及びA’の少なくとも何れか一方が炭素数1〜4のアルキル基(好ましくはメチル基)であり、その置換数が1又は2(a=1〜2、及びa’=1〜2)の繰り返し単位が好ましい。かかる繰り返し単位を有するポリマーは、透明性に優れ、且つ溶剤溶解性に優れているからである。
中でも、式(I)及び式(II)のA及びA’が無置換(a=0及びa’=0)である繰り返し単位を有するポリマーが好ましい。また、式(I)及び式(II)のB及びB’が無置換(b=0及びb’=0)である繰り返し単位を有するポリマーが好ましい。
【0023】
式(I)及び式(II)に於いて、Xが、−O−、−CO−又は−SO−である繰り返し単位を有するポリマーが好ましく、特に、Xが、−O−である繰り返し単位を有するポリマーがより好ましい。
上記式(I)又は式(II)の繰り返し単位を有するポリマーは、主鎖部の2つのベンゼン環が2価の結合種Xによって結合されているため、該ポリマーは、主鎖の直線性及び剛直性が高くなる。このため、該ポリマーを製膜したフィルムは、比較的大きなΔnxzを有する。
【0024】
式(I)及び式(II)に於いて、R及びRは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル基、トリメチルシリル基、又はC(CH(OH)基が好ましい。特に、式(I)及び式(II)に於いて、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、トリメチルシリル基、又はC(CH(OH)基がより好ましい。
上記式(I)又は式(II)の繰り返し単位を有するポリマーは、フルオレン骨格の共役系が三重結合基(エチニル基)によって延出され、且つフルオレン骨格が主鎖の延びる方向に対して直交方向に配向する。このため、本発明のポリマーは、式(I)又は式(II)の繰り返し単位を有する部位に於いて位相差の波長分散が大きくなる。従って、式(I)又は式(II)の繰り返し単位を多く導入するほど、得られるフィルムの位相差の波長分散は、逆分散となっていく傾向にある。
【0025】
上記式(I)又は式(II)で表される繰り返し単位の導入量は、特に限定されず、ポリマー全体の1モル%以上含まれていればよい。もっとも、上述のように、式(I)又は式(II)の繰り返し単位を多く導入するほど、得られる光学フィルムは逆分散となる傾向にある。このため、式(I)又は式(II)で表される繰り返し単位が、ポリマー全体の5モル%以上含まれているポリマーが好ましく、さらに、10モル%以上がより好ましく、12.5モル%以上が特に好ましい。
一方、式(I)又は式(II)で表される繰り返し単位の導入量が余りに多いと、耐熱性や透明性などに優れた光学フィルムが得られない虞がある。このような理由から、式(I)又は式(II)の繰り返し単位の導入量の上限は、ポリマー全体の90モル%以下が好ましく、更に、60モル%以下がより好ましく、40モル%以下が特に好ましい。
【0026】
上記式(I)又は式(II)の繰り返し単位は、適宜適切なポリマーの構成単位として導入される。好ましくは、製膜した際に正分散を示すフィルムを構成し得るポリマー(以下、このポリマーを「正分散ポリマー」という場合がある)に、上記式(I)又は式(II)の繰り返し単位が導入される。該正分散ポリマーに上記式(I)又は式(II)の繰り返し単位が導入された本発明のポリマーは、製膜した際に、フラット分散を示す光学フィルムを構成できる。
なお、式(I)又は式(II)の繰り返し単位の配列は、ランダムでもよいし、ブロックでもよい。
【0027】
上記正分散ポリマーとしては、ポリエステル系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリアミドイミド系ポリマーなどの各種ポリマーが挙げられる。これらの中でも、本発明のポリマーは、ポリエステル系ポリマーに上記式(I)又は式(II)で表される繰り返し単位が導入されたポリマーが好ましい。かかるポリマーを製膜したフィルムは、耐熱性に優れ、屈折率が比較的高く、コーティング法によって形成できるからである。
以下、ポリエステル系ポリマーに式(I)又は式(II)で表される繰り返し単位が導入されたポリマーを特に意味する場合に、「フルオレン導入ポリエステルポリマー」という。
【0028】
ポリエステル系ポリマーは、主鎖にエステル結合を有するものであれば特に限定されず、公知のポリエステル系ポリマーを用いることができる。好ましくは、ポリエステル系ポリマーとしては、直線性及び剛直性に優れていることから、芳香族ポリエステル系ポリマーが用いられる。
該芳香族ポリエステル系ポリマーとしては、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有するポリマーが挙げられる。
【0029】
【化5】

上記式(III)に於いて、Arは、芳香環を表す。式(III)に於いて、Arは、例えば、下記式群(IV)に表される芳香環群から選択される1つの芳香環である。
【0030】
【化6】

上記式群(IV)に於いて、Gは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン、炭素数1〜4のアルキル基又はフェニル基を表し、g1〜g3は、その置換数を表し、g1は、0〜4の整数を、g2は、0〜3の整数を、g3は、0〜2の整数を、それぞれ表す。式群(IV)のRは、水素原子または置換基(この置換基としては、好ましくは、ハロゲン、又は炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる)を表す。
【0031】
式(III)のArは、好ましくは下記式群(IV’)に表される単一の芳香環の何れかである。式群(IV’)のG及びg1は、式群(IV)と同じである。式群(IV’)に表される左側の芳香環を「p−置換体」、右側の芳香環を「m−置換体」という。
また、式(III)のArは、好ましくは式群(IV)又は式群(IV’)に表されるGが水素原子(無置換)である芳香環であり、Gが置換基を有する場合には、好ましくはその置換数は1〜2である。
【0032】
【化7】

【0033】
本発明の1つの実施形態において、上記ポリエステル系ポリマーは、より好ましくは、式(III)のArがp−置換体である繰り返し単位と、式(III)のArがm−置換体である繰り返し単位と、を分子構造中にそれぞれ有する。かかるポリマーは、p−置換体が導入されていることにより、Δnxzが高くなり、m−置換体が導入されていることにより、溶媒溶解性に優れる。
また、本発明の他の実施形態において、上記ポリエステル系ポリマーは、より好ましくは、式(III)のArがp−置換体のみで構成されている繰り返し単位を有する。
【0034】
さらに、上記ポリエステル系ポリマーには、繰り返し単位として、下記一般式(V)で表される繰り返し単位を更に含むポリマーが好ましい。
【0035】
【化8】

式(V)に於いて、Yは、共有結合、又は、CH基、C(CH基、C(CZ基(ここで、Zは、ハロゲンである。)、CO基、酸素原子、硫黄原子、SO基、Si(CHCH基、及び、N(CH)基からなる群から選択される原子又は基を表す。E及びHは、置換基であり、eは、Eの置換数(0〜4の整数)を、hは、Hの置換数(0〜4の整数)を表す。E及びHは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、及び置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子又は基を表し、複数の場合、それぞれ同一又は異なる。q1は、0〜3の整数を、q2は、1〜3の整数を表す。ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。置換アルキル基としては、例えば、ハロゲン化アルキル基があげられる。また、置換アリール基としては、例えば、ハロゲン化アリール基があげられる。
【0036】
式(V)に含まれる繰り返し単位のうち、Yが共有結合で且つq1、q2、e及びhが1である、下記式(VI)で表される繰り返し単位が好ましい。
【化9】

式(VI)に於いて、E及びHは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、及び置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子又は基を表す。好ましくは、E及びHは、水素以外の原子又は基であり、より好ましくは、E及びHは、CFなどのハロゲン化アルキル基などの炭素数1〜4の置換アルキル基、又はCHなどの炭素数1〜4のアルキル基である。
【0037】
本発明のフルオレン導入ポリエステルポリマーは、上記式(I)及び/又は式(II)の繰り返し単位と、上記式(III)の繰り返し単位と、を有するポリマーである。このうち、本発明のフルオレン導入ポリエステルポリマーの好ましい構成例としては、下記一般式(VII)または一般式(VIII)で表される繰り返し単位を有するポリマーが挙げられる。
【化10】

【化11】

式(VII)及び式(VIII)に於いて、A、a、A’、a’、B、b、B’、b’、R、R及びXは、上記式(I)と同じである。また、Ar及びArは、それぞれ独立して、上記式群(IV)又は式群(IV’)に表される芳香環群から選択される芳香環である。式(VII)及び式(VIII)に於いて、E、e、H、h、Y、q1及びq2は、上記式(V)と同じである。mは、1〜90モル%を、nは、10〜90モル%を表す。ただし、ポリマー全体を100とした場合、m+n≦100モル%である。
【0038】
式(VII)及び式(VIII)に於いて、A及びA’は、好ましくは無置換(a=0及びa’=0)である。A及びA’が置換基を有する場合には、A及びA’の少なくとも何れか一方が炭素数1〜4のアルキル基(好ましくはメチル基)であり、その置換数は1又は2(a=1〜2、及びa’=1〜2)であることが好ましい。
また、式(VII)及び式(VIII)に於いて、B及びB’は、好ましくは無置換(b=0及びb’=0)である。
さらに、式(VII)及び式(VIII)に於いて、Xは、好ましくは−O−、−CO−又は−SO−であり、より好ましくは、Xは、−O−である。
また、式(VII)及び式(VIII)に於いて、R及びRは、好ましくは、それぞれ独立して、水素、炭素数1〜6のアルキル基、トリメチルシリル基、又はC(CH(OH)基である。特に、R及びRは、より好ましくは、炭素数1〜6のアルキル基、トリメチルシリル基、又はC(CH(OH)基である。
さらに、式(VII)及び式(VIII)に於いて、Ar及びArは、好ましくは、それぞれ独立して式群(IV')に表されるp−置換体又はm−置換体の何れかである。特に、この式群(IV')に表すGが水素原子(無置換)であるp−置換体又はm−置換体がより好ましい。
【0039】
p−置換体及びm−置換体のうち、p−置換体のみを有するフルオレン導入ポリエステルポリマーは、下記式(XI)で表される。p−置換体及びm−置換体を有するフルオレン導入ポリエステルポリマーは、下記式(XII)で表される。
【0040】
【化12】

【0041】
【化13】

【0042】
式(XI)及び式(XII)において、A、a、A’、a’、B、b、B’、b’、R、R及びXは、上記式(VII)と同じである。E、e、H、h、Y、q1及びq2は、上記式(V)と同じであり、G及びg1は、上記式群(IV’)と同じである。式(XI)のmは、1〜90モル%を、nは、10〜90モル%をそれぞれ表す。ただし、ポリマー全体を100とした場合、50モル%≦m+n≦100モル%。また、式(XII)のlは、1〜30モル%を、mは、1〜30モル%を、nは、1〜30モル%を、oは、1〜30モル%をそれぞれ表す。ただし、ポリマー全体を100とした場合、70モル%≦l+m+n+o≦100モル%。
【0043】
本発明のポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、例えば、1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは、2,000〜500,000の範囲である。重量平均分子量がこれらの範囲内のポリマーは、溶剤に対する溶解性に優れており、該ポリマーを製膜して得られるフィルムは、伸縮、歪み等によるクラックが生じにくいからである。
また、本発明のポリマーのガラス転移温度は、式(I)における置換基の種類及び置換数、並びに主鎖の種類、各繰り返し単位の導入量などによって異なるが、100℃以上であり、好ましくは130℃以上である。かかるガラス転移温度のポリマーを製膜して得られるフィルムは、光学フィルムとして十分な耐熱性を有する。なお、このガラス転移温度は、JIS K 7121(1987)に準じたDSC法によって求められる。
【0044】
上記式(I)または式(II)の繰り返し単位を有するポリマーは、下記一般式(X)で表されるジエチニルフルオレン(モノマー)を正分散ポリマーに導入することにより得ることができる。
【0045】
【化14】

上記式(X)に於いて、A、A’、B及びB’は、それぞれ置換基を表し、a及びa’は、対応するA及びA’の置換数を、b及びb’は、対応するB及びB’の置換数を表す。前記a及びa’は、0〜3の整数であり、b及びb’は、0〜3の整数である。
A、A’、B及びB’は、それぞれ独立して、ハロゲン又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。D及びD’は、それぞれ独立して、OH基、NHR基(Rは、水素又は炭素数1〜4のアルキル基)、COOH基、又はNCO基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のビニル基、置換若しくは無置換のエチニル基、SiR基、及びCR(OH)基からなる群から選択される基を表す。前記R、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基を表す。前記R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基を表す。
式(X)のXは、−CR−、−SiR−、−O−、−NR10−、−CO−、又は−SO−を表す。前記Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、パーフルオロ基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。前記Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。前記R10は、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を表す。
【0046】
上記式(X)のD及びD’は、ポリマーを構成する他の繰り返し単位と結合する基である。上記式(X)で表されるジエチニルフルオレンは、例えばカルボン酸又は水酸基と反応して容易にエステル結合を形成できることから、D及びD’がOH基またはCOOH基であるジエチニルフルオレンが好ましく、特に、D及びD’がOH基であるジエチニルフルオレンがより好ましい。
【0047】
上記式(X)で表されるジエチニルフルオレンは、例えば、繰り返し単位としてポリマーに導入される。本発明のジエチニルフルオレンが、正分散ポリマーに導入されることによって、該ポリマーの光学的性質が改質され、該ポリマーを製膜して得られるフィルムの波長分散はフラット分散に近くなる。本発明のジエチニルフルオレン自体は、逆分散を示すが、このジエチニルフルオレンは、それが導入された正分散ポリマーの波長分散をフラット分散に近づけていくという作用を有する。
この作用は、ジエチニルフルオレンの導入量に対応し、この導入量を増やすに従ってフラット分散に近くなる。
従って、本発明は、ポリエステル系ポリマーなどの正分散ポリマーに上記式(X)で表されるジエチニルフルオレンを導入することにより、該正分散ポリマーを含む光学フィルムの位相差を調整する光学フィルムの位相差調整方法を提供する。かかる調整方法によれば、正分散ポリマーに対するジエチニルフルオレンの導入量を調整することで、フラット分散に近い光学フィルムからフラット分散を示す光学フィルムまで、任意に作製することができる。
【0048】
上記式(X)で表されるジエチニルフルオレンは、例えば、次の方法によって製造することができる(下記反応式(a)〜(c)参照)。ただし、下記反応式(a)〜(c)において、A、a、B、b、R及びRは、式(X)と同様である。
(1).式(X)のD及びD’がOH基であるジエチニルフルオレンの製法(反応式(a)参照)。
2,7−ジブロモフルオレン誘導体を酸触媒下、フェノール誘導体と反応させた後、パラジウム(0)触媒下、エチニル化合物と反応させる。
【0049】
【化15】

【0050】
(2).式(X)のD及びD’がCOOH基であるジエチニルフルオレンの製法(下記反応式(b)参照)。
2,7−ジブロモフルオレン誘導体を酸触媒下、フェノール誘導体と反応させた後、過マンガン酸カリウムで酸化し、エステルで保護した後、パラジウム(0)触媒下、エチニル化合物と反応させ、加水分解する。
【0051】
【化16】

【0052】
(3).式(X)のD及びD’がNCO基またはNH基であるジエチニルフルオレンの製法(下記反応式(c)参照)。
上記(2)の方法で得られたCOOH基を有するジエチニルフルオレンと塩化チオニルとを反応させた後、アジ化ナトリウムを反応させることにより、NCO基を有するジエチニルフルオレンを得ることができる。
さらに、これを加水分解することにより、NH基を有するジエチニルフルオレンを得ることができる。
【0053】
【化17】

【0054】
本発明の光学フィルムは、本発明のポリマーを含む形成材料を製膜することによって得ることができる。
なお、光学フィルムの形成材料には、本発明のポリマーに加えて、配向性が著しく低下しない範囲で、前記ポリマーとは構造の異なる他の樹脂が混合されていてもよい。かかる他の樹脂としては、例えば、汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等があげられる。汎用樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、アクロルニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂等があげられる。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等があげられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリイミド、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリマー等があげられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂等があげられる。これらの他の樹脂を本発明のポリマーに配合する場合、その配合量は、形成材料中、例えば、0〜50質量%であり、好ましくは、0〜30質量%である。
また、必要に応じて、前記形成材料には、例えば、安定剤、可塑剤、金属類等を含む種々の添加剤が混合されていてもよい。
【0055】
本発明の光学フィルムの厚みは、特に限定されず、通常、200μm以下である。中でも、主として画像表示装置の薄型化を図ることから、光学フィルムの厚みは、20μm以下が好ましく、更に、15μm以下が好ましく、特に10μm以下がより好ましい。一方、光学フィルムの厚みの下限は、補償対象の位相差に合わせて適宜設定されるが、通常、1μm以上、好ましくは2μm以上である。本発明のポリマーは、塗工によって光学的一軸性を示すことから、上記のように薄膜状に形成することもできる。
【0056】
本発明の光学フィルムの製造方法は、特に限定されず、例えば、上記形成材料を製膜し、必要に応じて延伸(又は収縮)することによって作製できる。本発明のポリマーは、溶剤溶解性に優れているので、適宜な溶剤に溶解させて製膜することもできる。
特に、上記式(I)又は式(II)の繰り返し単位を有する本発明のポリマーは、該ポリマーを含む形成材料を基材上に塗工することによって、負の一軸性(屈折率楕円体がnx≒ny>nz)を示すコーティング膜を形成できる。
本発明のポリマーを含む形成材料の塗工の方法としては、例えば、前記形成材料を加熱溶解して適切な基材上に塗工する方法や、前記形成材料を溶媒に溶解させたポリマー溶液を適切な基材上に塗工する方法、などがあげられる。製造効率、分子配向制御および光学異方性制御などの点から、ポリマー溶液を基材上に塗工する方法が好ましい。
具体的には、本発明のポリマーを含むポリマー溶液を基材上に塗工した後、乾燥する過程で、コーティング膜の面内(X軸及びY軸方向)に収縮力が加わり、負の一軸性を示すコーティング膜を形成できる。このように、本発明のポリマーは、基材の配向の有無に関わらず、基材に塗工することにより、光学的一軸性を示す膜を形成できる。
なお、「nx≒ny」とは、nxとnyが完全に同一である場合だけでなく、実質的に同一である場合も含まれるという意味である。nxとnyが実質的に同一である場合とは、例えば、Re[590]が0nm〜10nmであり、好ましくは0nm〜5nmである。
【0057】
上記ポリマー溶液は、本発明のポリマー(必要に応じて他の樹脂及び各種添加剤なども混合)を、適切な溶媒に溶解させることによって調製できる。
上記溶媒としては、本発明のポリマー等を溶解できるものであれば、特に制限はなく、適宜選択できる。具体的には、溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;二硫化炭素;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等があげられる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0058】
上記ポリマー溶液は、例えば、溶媒100質量部に対して、ポリマーなどの固形分が5〜50質量部の範囲で配合されることが好ましく、より好ましくは10〜40質量部の範囲である。前記範囲で配合されたポリマー溶液は、塗工に適した粘度となるので好ましい。
また、ポリマー溶液の塗工方法は、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延製膜法、バーコート法、グラビア印刷法等の適宜な方法で行うことができる。
【0059】
前記ポリマー溶液を基材上に塗工後、塗工によって形成された基材上のコーティング膜を乾燥しても良い。乾燥は、例えば、自然乾燥、風乾、加熱乾燥等により行うことができる。加熱乾燥の場合、その温度は、特に制限されないが、一般的には、25〜250℃であり、好ましくは40〜200℃である。
乾燥処理によって、最終的に得られるコーティング膜(すなわち光学フィルム)に残存する溶媒量が、1質量%以下に調整されることが好ましく、0.5質量%以下に調整されることがより好ましい。残存溶媒量が少ない光学フィルムは、寸法安定性に優れ、光学特性の経時的な変化が起こりにくくなるからである。
【0060】
上記形成材料を塗工する基材としては、特に限定されず、例えば、合成樹脂製の基材でもよいし、ガラス基材やシリコンウエハのような無機化合物製の基材でもよい。合成樹脂製基材としては、キャスト法で作製したフィルムや、溶融ポリマーを製膜後、延伸処理を施して作製したフィルム等があげられる。これらの中でも、精密に塗工できることから、延伸処理を施したフィルムが好ましい。
また、基材としては、透明性に優れた基材が好ましい。透明性に優れた基材を用いることによって、該基材上に形成されたコーティング膜(すなわち光学フィルム)を、基材から剥離せず、そのまま光学積層体として使用することもできる。
【0061】
上記合成樹脂製基材の樹脂成分としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリノルボルネン樹脂、セルロース樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリル樹脂や、これらの混合物等があげられる。また、液晶ポリマー等も使用できる。さらに、例えば、特開平2001−343529号公報に記載されているような、側鎖に置換イミド基または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とニトリル基とを有する熱可塑性樹脂との混合物等も使用できる。
基材の厚みは、例えば、12μm〜200μmであり、好ましくは20μm〜150μmであり、25μm〜100μmがより好ましい。基材の厚みが12μm以上であれば、ポリマー溶液を精密に塗工でき、200μm以下であれば、液晶パネルに実装した際に、光学フィルムの歪量をより一層抑制できるからである。
【0062】
本発明のポリマーは、上述のように、基材に塗工することによって、光学的一軸性を示すコーティング膜を形成できる。このコーティング膜は、本発明の光学フィルムとなる。従って、本発明によれば、薄膜で且つ光学的一軸性(屈折率楕円体がnx≒ny>nz)を示す光学フィルム(位相差板)を提供できる。
さらに、このコーティング膜を延伸又は収縮することによって、光学的二軸性(屈折率楕円体がnx>ny>nz)を示す光学フィルムを提供することもできる。
このコーティング膜の延伸方法としては、例えば、コーティング膜の長手方向に一軸に延伸する自由端縦延伸、コーティング膜の長手方向は固定しながら幅方向に一軸に延伸する固定端横延伸等が好ましい。その他の延伸方法としては、例えば、長手方向および幅方向の双方に延伸する、逐次または同時二軸延伸等があげられる。また、延伸処理は、コーティング膜の形成された基材が延伸可能な基材である場合、その基材を延伸することによって前記コーティング膜を延伸することが好ましい。この方法によれば、基材が均一に延伸されるので、この延伸に伴ってコーティング膜を間接的に均一延伸することができる。また、この方法は、連続生産工程に適用可能で、製品の量産性が高まる等の点からも好ましい。なお、前記基材とコーティング膜は、ともに延伸してもよい。
【0063】
また、コーティング膜の形成された基材が、収縮しうる基材である場合、基材を収縮させることにより、コーティング膜を間接的に収縮することができる。この際には、延伸機等を利用して収縮率を制御することが好ましい。その制御方法としては、例えば、延伸機のクリップを一時的に開放して、前記基材の移送方向に弛緩させる方法や、延伸機のクリップの間隔を徐々に狭くする方法等があげられる。
【0064】
本発明の光学フィルムに於いて、その厚み方向位相差値(Rth(λ))や面内位相差値(Re(λ))の制御は、例えば、ポリマーの構造及び分子量、光学フィルムの厚み、延伸(又は収縮)比率などを調整することによって行い得る。
本発明のポリマーを含む光学フィルムは、上記式(I)又は式(II)の繰り返し単位を有することにより、その波長分散がフラット分散に近づく。具体的には、本発明の光学フィルムは、0.97≦Rth(450)/Rth(550)<1.06、1.03≧Rth(650)/Rth(550)≧0.95の関係を示すフラット分散となり得る。
【0065】
特に、本発明のポリマーに於いて、式(I)又は式(II)の導入量を増やす或いは式(I)又は式(II)のR及びRとして適宜な置換基を選択することによって、0.97≦Rth(450)/Rth(550)≦1.03、更に、0.97≦Rth(450)/Rth(550)≦1.02のような、よりフラット分散に近似した波長分散を示す光学フィルムが得られ得る。
上記と同様に、本発明のポリマーに於いて、式(I)又は式(II)の導入量を増やすなどによって、1.03≧Rth(650)/Rth(550)≧0.97、更に、1.03≧Rth(650)/Rth(550)≧0.98のような、よりフラット分散に近似した波長分散を示す光学フィルムが得られ得る。
【0066】
また、本発明の光学フィルムの屈折率楕円体がnx>ny>nzの関係を示す場合、該光学フィルムの面内位相差値についても、Re(450)/Re(550) <1.06、Re(650)/Re(550)≧0.95の関係を満たしている。さらに、式(I)の導入量を増やすことによって、面内位相差値についても、よりフラット分散に近似した波長分散を示す光学フィルムが得られ得る。
なお、Rth(450)、Rth(550)及びRth(650)は、25℃で、波長450nm、波長550nm及び波長650nmに於ける厚み方向位相差値を表す。Re(450)、Re(550)及びRe(650)は、25℃で、波長450nm、波長550nm及び波長650nmに於ける面内位相差値を表す。
【0067】
本発明の光学フィルムの複屈折率は、上記式(I)又は式(II)の導入量、ポリエステルの構造などによって適宜設計できるが、本発明の光学フィルムの波長550nmにおける複屈折率(Δnxz(550))は、好ましくは0.005以上であり、より好ましくは0.01以上である。Δnxz(550)の上限は、好ましくは0.070以下である。
【0068】
本発明の光学フィルムは、任意の適切な用途に用いられ得る。本発明の光学フィルムは、例えば、液晶表示装置のλ/4板、λ/2板及び視野角拡大フィルム等のような位相差板として用いることができる。この他の用途としては、液晶表示装置、有機ELディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等の画像表示装置の反射防止フィルムなどが挙げられる。
【0069】
本発明の光学フィルムは、他の光学部材を積層した光学積層体の形態で使用することもできる。該光学積層体としては、例えば、本発明の光学フィルムに、保護層を有する偏光子を積層した積層体(この積層体は、通常、偏光板と呼ばれる)、本発明の光学フィルムに他の位相差板を積層した積層体などが挙げられる。
これら積層体を構成する各フィルムは、通常、公知の接着剤(又は粘着剤)を用いて積層接着される。この接着剤(又は粘着剤)としては、溶剤型接着剤、エマルジョン形接着剤、感圧性接着剤、再湿性接着剤、重縮合型接着剤、無溶剤型接着剤、フィルム状接着剤、ホットメルト型接着剤などが挙げられる。
【0070】
上記偏光子は、自然光又は偏光を直線偏光に変換する光学部材であれば、適宜、適切なものが採用され得る。上記偏光子は、好ましくは、ヨウ素または二色性染料を含有するビニルアルコール系ポリマーを主成分とする延伸フィルムである。偏光子の厚みは、通常、5μm〜50μmである。また、上記保護層は、偏光子が収縮や膨張することを防いだり、紫外線による劣化を防いだりするために偏光子に貼着される。保護層としては、好ましくは、セルロース系ポリマーまたはノルボルネン系ポリマーを含有する高分子フィルムである。保護層の厚みは、通常、10μm〜200μmである。なお、本発明の光学フィルムを形成する際の基材が、上記保護層を兼ねていてもよい。
【0071】
本発明の画像表示装置は、本発明の光学フィルムが用いられることを条件として、各種の画像表示装置を採用し得る。本発明の画像表示装置は、本発明の光学フィルムが液晶パネルなどに組み込まれていることを除いて、従来の画像表示装置と同様の構成を採用できる。
本発明の画像表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途は、液晶表示装置の場合には、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機などのOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機などの携帯機器、ビデオカメラ、電子レンジなどの家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオなどの車載用機器、商業店舗用インフオメーション用モニターなどの展示機器、監視用モニターなどの警備機器、介護用モニター、医療用モニターなどの介護・医療機器等である。
【0072】
本発明の画像表示装置は、液晶表示装置、有機ELディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等を含み、その好ましい用途は、テレビである。テレビの画面サイズは、好ましくはワイド17型(373mm×224mm)以上であり、さらに好ましくはワイド23型(499mm×300mm)以上であり、特に好ましくはワイド32型(687mm×412mm)以上である。
【0073】
本発明のポリマーは、透明性及び耐熱性に優れており、又、所定の位相差を示すため、各種光学部材として好適に用いられる。
また、光学フィルム以外の用途として、本発明のポリマーは、プラスチックレンズ、プリズム、光ディスク、光ファイバー、フォトレジスト、ホログラムなどの各種の光学部材の形成材料として使用できる。
また、本発明のポリマーは、例えば、燃料電池用電解質膜、半導体用コーティング材料(チップ表面保護材やチップ層間絶縁材料等)、半導体装置用封止材料、フレキシブル回路基板用材料、光配向膜用材料、光導波路材料、耐宇宙線材料(人工衛星等に用い得る)、分離膜用材料(気体分離用途等)、レジスト材料、プリンター用材料(カラープリンター用トナー転写ベルト等)などに使用できる。
さらに、本発明のポリマーは、溶剤溶解性に優れていることから、部材表面を保護するコーティング剤として使用することもできる。
【実施例】
【0074】
つぎに、実施例及び比較例を示し、本発明を詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例で用いた各分析方法は、以下の通りである。
(1)化学構造の特定:
核磁気共鳴スペクトルメーター[ブルカ社製、製品名「AVANCEII300」](測定溶媒;重クロロホルムあるいは重DMSO、周波数;300MHz、観測核;H、13C、測定温度;25℃)を用いた。以下、この方法をNMRと記する。
(2)分子量測定:
重量平均分子量は、各試料を0.1%DMF溶液に調整し、0.45μmメンブレンフィルターにてろ過した後、GPC本体として東ソー社製HLC−8120GPCを用い、検出器としてRI(GPC本体に内蔵)を用いて測定した。具体的には、カラム温度40℃、ポンプ流量0.40mL/分とし、データ処理は、あらかじめ分子量が既知の標準ポリエチレンオキシドの検量線を用いて、ポリエチレンオキシド換算分子量より分子量を得た。尚、使用カラムは、superAWM−H(径6.0mm×15cm)、superAW4000(径6.0mm×15cm)およびsuperAW2500(径6.0mm×15cm)を直列につないだものを用い、移動相としては、10mmolのLiBrと10mmolのリン酸とをメスフラスコに入れ、DMFで全量を1Lとしたものを用いた。
(3)厚みの測定:
SLOAN社製、商品名「Dektak」を用いて測定した。
(4)Δnxz、Rth(λ)の測定:
王子計測機器(株)製、商品名「KOBRA−WPR」を用いて、25℃、波長λで測定した。Rth(λ)は、波長λの光をサンプル法線から40度の角度で入斜させて、測定した値(R40λ)をRth(λ)に換算して求めた。
【0075】
<合成例1>
(2,7−ジヒドロキシ−9,9−[2,7−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシ−3−ブチニル)フルオレニル]キサンテンの合成)
30.0gの2,7−ジブロモフルオレノンと24.43gのレゾルシノールをトルエン100mLに溶解させ、そこに濃硫酸3.48gとメルカプトプロピオン酸0.09gを加え80℃で18時間加熱した。反応終了後、水酸化ナトリウムで中和した後、クロロホルムを加え析出した固体をろ過により分離し、ブロモ誘導体を得た。
次に、0.008gのビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(II)と0.002gのヨウ化銅(I)を窒素雰囲気下ジオキサンン1.0mLに溶解させ、そこにトリ(ターシャリーブチル)ホスフィン0.005g、ジイソプロピルアミン0.046g、2−メチル−3−ブチン−2−オール0.037g、上記で合成したブロモ誘導体0.10gを加え80℃で24時間攪拌した。その後、溶媒を減圧下で除去し、残渣を、展開溶媒(ヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒)を用いたシリカゲル充填カラムにて精製した。さらに混合溶媒(ヘキサン/クロロホルム=2/1)にて再結晶をくり返すことで目的の化合物0.057g(収率56.4%)を得た。得られた化合物をNMRで測定したところ、下記式(1)に示す2,7−ジヒドロキシ−9,9−[2,7−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシ−3−ブチニル)フルオレニル]キサンテンであった。
【0076】
【化18】

【0077】
<合成例2>
(2,7−ジヒドロキシ−9,9−[2,7−ビス(5−ヘキシニル)フルオレニル]キサンテンの合成)
1.010gのパラジウムカーボンと0.365gのヨウ化銅(I)を窒素雰囲気下ジメチルアセトアミド95mLと水5mLに溶解させ、そこにトリフェニルホスフィン0.800g、ジイソプロピルアミン0.046g、1−ヘキシン4.000g、上記<合成例1>で得られたブロモ誘導体10.00gを加え、80℃で24時間攪拌した。その後、溶媒を減圧下で除去し、残渣を、展開溶媒(ヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒)を用いたシリカゲル充填カラムにて精製した。精製後、目的の化合物3.370g(収率33.8%)を得た。得られた化合物をNMRで測定したところ、下記式(2)に示す2,7−ジヒドロキシ−9,9−[2,7−ビス(5−ヘキシニル)フルオレニル]キサンテンであった。
【0078】
【化19】

【0079】
[実施例1]
氷冷した塩化チオニル0.52gにピリジン4mLを加えた。イソフタル酸0.17gとテレフタル酸0.17gをピリジン4mLに溶解させた。これを、前記塩化チオニルを含むピリジンに5〜10分でゆっくり加えた。その後、冷却浴をはずし室温で20分かき混ぜた(この混合溶液を溶液Aという)。他方、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン0.34gと上記<合成例2>で得られた2,7−ジヒドロキシ−9,9−[2,7−ビス(5−ヘキシニル)フルオレニル]キサンテン0.52gを、ピリジン溶液4mLに溶解させた(この溶液を溶液Bという)。溶液Aに溶液Bを一度に加え、80℃で4時間加熱し、その後一晩撹拌させた。得られた溶液をクロロホルムで溶解、希釈した後メタノールに注いだ。析出したポリマーをメタノール中で還流し、ろ別、乾燥させた。得られたポリエステルの収量は0.91g(収率88.1%)であった。このポリマーの組成は、NMRにより、下記式(3)で表されるフルオレン導入ポリエステルポリマーであった。該ポリマーの重量平均分子量は、64,300であった。
【0080】
【化20】

【0081】
得られたフルオレン導入ポリエステルポリマーをシクロヘキサノンに溶解させてポリマー溶液(固形分濃度16質量%)を調製した。このポリマー溶液を、スピンコート法によってガラス上に塗工し、80℃で5分間乾燥した後、更に、150℃で30分乾燥させてポリエステルフィルムを作製した。
このポリエステルフィルムの乾燥厚は、9.81μmであった。
このポリエステルフィルムの550nmに於ける複屈折率(Δnxz)は、0.0066であった。
また、このフィルムの厚み方向位相差の波長分散を測定したところ、Rth(450)/Rth(550)=0.98、Rth(650)/Rth(550)=1.02であった。
【0082】
[実施例2]
実施例1のビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン0.34gの代わりに、ビスフェノールA 0.23gを用いたこと以外は実施例1と同様にしてポリマーを合成した。なお、このポリマーの組成は、NMRにより、下記式(4)で表されるフルオレン導入ポリエステルポリマーであった。該ポリマーの重量平均分子量は、17,200であった。
【0083】
【化21】

【0084】
得られたフルオレン導入ポリエステルポリマーを、実施例1と同様にして製膜し、ポリエステルフィルムを作製した(乾燥厚:4.36μm)。
この実施例2のポリエステルフィルムの550nmに於ける複屈折率(Δnxz)は、0.0067であった。
このフィルムのRth(450)/Rth(550)=0.98、Rth(650)/Rth(550)=1.01であった。
【0085】
[実施例3]
実施例1のビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン0.34gの代わりに、ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル0.32gを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリマーを合成した。なお、このポリマーの組成は、NMRにより、下記式(5)で表されるフルオレン導入ポリエステルポリマーであった。該ポリマーの重量平均分子量は、5,290であった。
【0086】
【化22】

【0087】
得られたフルオレン導入ポリエステルポリマーを、実施例1と同様にして製膜し、ポリエステルフィルムを作製した(乾燥厚:2.40μm)。
この実施例3のポリエステルフィルムの550nmに於ける複屈折率(Δnxz)は、0.011であった。
また、このフィルムのRth(450)/Rth(550)=1.00、Rth(650)/Rth(550)=1.02であった。
【0088】
[実施例4]
実施例1のビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン0.34gの代わりに、ビス(4,4’−ジヒドロキシ-2,2’−ジメチル)ビフェニル0.21gを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリマーを合成した。なお、このポリマーの組成は、NMRにより、下記式(6)で表されるフルオレン導入ポリエステルポリマーであった。該ポリマーの重量平均分子量は、13,100であった。
【0089】
【化23】

【0090】
得られたポリマーを、実施例1と同様にして製膜し、ポリエステルフィルムを作製した(乾燥厚:4.35μm)。
この実施例4のポリエステルフィルムの550nmに於ける複屈折率(Δnxz)は、0.011であった。
また、このフィルムのRth(450)/Rth(550)=1.00、Rth(650)/Rth(550)=1.02であった。
【0091】
[実施例5]
実施例1のイソフタル酸0.17gとテレフタル酸0.17gの代わりに、テレフタル酸0.33gを用いたこと、及び、実施例1のビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン0.34gの代わりに、ビス(4,4’−ジヒドロキシ-2,2’−ジメチル)ビフェニル0.21gを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリマーを合成した。なお、このポリマーの組成は、NMRにより、下記式(7)で表されるフルオレン導入ポリエステルポリマーであった。該ポリマーの重量平均分子量は、13,000であった。
【0092】
【化24】

【0093】
得られたフルオレン導入ポリエステルポリマーを、実施例1と同様にして製膜し、ポリエステルフィルムを作製した(乾燥厚:4.27μm)。
この実施例5のポリエステルフィルムの550nmに於ける複屈折率(Δnxz)は、0.015であった。
また、このフィルムのRth(450)/Rth(550)=1.00、Rth(650)/Rth(550)=1.02であった。
【0094】
[比較例]
6.77gのエチルメチルケトンと25.88gのレゾルシノールをトルエン7mLに溶解させ、そこに濃硫酸3.66gとメルカプトプロピオン酸0.09gを加え90℃で21時間加熱した。反応終了後、水酸化ナトリウムで中和した後、クロロホルムを加え、析出した固体をろ過により分離した。このようにして、2,7−ジヒドロキシ−9−エチル−9−メチルキサンテンを5.00gを合成した。
【0095】
実施例1のビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン0.34gの代わりに、ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル0.32gを用いたこと、及び、実施例1の2,7−ジヒドロキシ−9,9−[2,7−ビス(5−ヘキシニル)フルオレニル]キサンテン0.52gの代わりに、上記合成した2,7−ジヒドロキシ−9−エチル−9−メチルキサンテン0.26gを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてポリマーを合成した。なお、このポリマーの組成は、NMRにより、下記式(8)で表されるポリエステル系ポリマーであった。該ポリマーの重量平均分子量は、4,310であった。
【0096】
【化25】

【0097】
得られたポリマーを、実施例1と同様にして製膜し、ポリエステルフィルムを作製した(乾燥厚:1.96μm)。
この比較例のポリエステルフィルムの550nmに於ける複屈折率(Δnxz)は、0.0213であった。
また、このフィルムのRth(450)/Rth(550)=1.06、Rth(650)/Rth(550)=0.97であった。
【0098】
以上のように、実施例1〜実施例5の光学フィルムは、フラット分散を示した。一方、比較例の光学フィルムは、Rth(450)/Rth(550)=1.06であり、正分散を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリマーを含む光学フィルム。
【化1】

ただし、式(I)に於いて、A、A’、B及びB’は、それぞれ置換基を表し、a及びa’は、対応するA及びA’の置換数(0〜3の整数)を、b及びb’は、対応するB及びB’の置換数(0〜3の整数)を表す。A、A’、B及びB’は、それぞれ独立して、ハロゲン又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のビニル基、置換若しくは無置換のエチニル基、SiR基(R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基)、又はCR(OH)基(R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基)を表す。Xは、−CR−(Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、パーフルオロ基、又は置換若しくは無置換のアリール基)、−SiR−(Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基)、−O−、−NR10−(R10は、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基)、−CO−、又は−SO−を表す。
【請求項2】
前記繰り返し単位が、下記一般式(II)で表される請求項1に記載の光学フィルム。
【化2】

ただし、式(II)に於いて、A、A’、B、B’、a、a’、b、b’、R、R及びXは、式(I)と同じである。
【請求項3】
波長550nmに於ける複屈折率Δnxzが、0.005〜0.070である請求項1または2に記載の光学フィルム。
ただし、Δnxz=nx−nzを表し、nxは、フィルム面内の屈折率が最大となる方向(X軸方向)に於ける屈折率を表し、nzは、フィルムの厚み方向に於ける屈折率を表す。
【請求項4】
Rth(450)/Rth(550)<1.06を示す請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルム。
ただし、Rth(450)及びRth(550)は、波長450nm及び波長550nmに於ける厚み方向位相差値を表す。
【請求項5】
Rth(650)/Rth(550)≧0.95を示す請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルム。
ただし、Rth(550)及びRth(650)は、波長550nm及び波長650nmに於ける厚み方向位相差値を表す。
【請求項6】
前記ポリマーが、ポリエステル系ポリマーである請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項7】
nx≒ny>nzを示す請求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルム。
ただし、nxは、フィルム面内の屈折率が最大となる方向(X軸方向)に於ける屈折率を、nyは、同面内でX軸方向に対して直交する方向(Y軸方向)に於ける屈折率を、nzは、フィルムの厚み方向に於ける屈折率を、それぞれ表す。
【請求項8】
nx>ny>nzを示す請求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルム。
ただし、nxは、フィルム面内の屈折率が最大となる方向(X軸方向)に於ける屈折率を、nyは、同面内でX軸方向に対して直交する方向(Y軸方向)に於ける屈折率を、nzは、フィルムの厚み方向に於ける屈折率を、それぞれ表す。
【請求項9】
前記ポリマーを基材上に塗工して得られたコーティング膜から構成されている請求項1〜8のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項10】
厚み20μm以下である請求項1〜9のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の光学フィルムを有する画像表示装置。
【請求項12】
下記一般式(X)で表されるジエチニルフルオレン。
【化3】

ただし、式(X)に於いて、A、A’、B及びB’は、それぞれ置換基を表し、a及びa’は、対応するA及びA’の置換数(0〜3の整数)を、b及びb’は、対応するB及びB’の置換数(0〜3の整数)を表す。A、A’、B及びB’は、それぞれ独立して、ハロゲン又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。D及びD’は、それぞれ独立して、OH基、NHR基(Rは、水素又は炭素数1〜4のアルキル基)、COOH基、又はNCO基を表す。R及びRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜10のアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換のビニル基、置換若しくは無置換のエチニル基、SiR基(R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基又はアリール基)、又はCR(OH)基(R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基)を表す。Xは、−CR−(Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、パーフルオロ基、又は置換若しくは無置換のアリール基)、−SiR−(Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基)、−O−、−NR10−(R10は、水素、炭素数1〜4のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基)、−CO−、又は−SO−を表す。
【請求項13】
請求項12に記載のジエチニルフルオレンを繰り返し単位として有するポリマー。

【公開番号】特開2009−1769(P2009−1769A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305480(P2007−305480)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】