説明

光学フィルム、画像表示装置および画像表示装置の製造方法

【課題】ディスプレイ表面の光学フィルムに層間充填剤を均一に塗布でき、前面板搭載モデルにも使用可能な、光学フィルムを提供する。
【解決手段】画像表示装置に使用される光学フィルムであって、前記光学フィルムに、層間充填剤を介して、前面板が貼り合わされる際の前記層間充填剤の粘度(Pa・s)をaとし、前記光学フィルム表面のケイ素原子の占める原子比率(atm%)をbとしたとき、下記式(1)の関係を満たし、かつ、前記光学フィルム表面の酸素原子の占める原子比率が26atm%以上であることを特徴とする光学フィルム。
b≦0.2a+1.8 (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、画像表示装置および画像表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、液晶表示装置(LCD)等の画像表示装置において、ディスプレイ表面には、ディスプレイ表面の傷つき防止(機械強度向上)、外光の映り込み防止等の観点から、ハードコートフィルム、防眩フィルム等の光学フィルムが配置されている。また近年、ディスプレイ表面の機械強度向上や意匠性等の観点から、ディスプレイの最表面に、透明なプラスチックやガラス等からなる前面板を搭載したものが上市されている。前面板をディスプレイ最表面に搭載する場合、ディスプレイ表面の前記光学フィルムと前面板との間に空隙が生じるため、前記空隙を埋める目的で前面板と表面の光学フィルムとの層間に樹脂(層間充填剤)が充填されている(例えば、特許文献1等)。前記特許文献1では、前記層間充填剤として、光硬化性樹脂等の活性エネルギー線硬化性樹脂が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−241728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前面板と表面の光学フィルムとの層間に、層間充填剤を充填するために、前記光学フィルムの表面に前記層間充填剤を塗布した場合、前記光学フィルムの表面において、前記層間充填剤がハジかれてしまい、均一に塗布できず、工程歩留まりが低下するという問題が起こりうる。
【0005】
そこで、本発明は、ディスプレイ表面の光学フィルムに層間充填剤を均一に塗布でき、前面板搭載モデルにも使用可能な、光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の光学フィルムは、画像表示装置に使用される光学フィルムであって、
前記光学フィルムに、層間充填剤を介して、前面板が貼り合わされる際の前記層間充填剤の粘度(Pa・s)をaとし、
前記光学フィルム表面のケイ素原子の占める原子比率(atm%)をbとしたとき、下記式(1)の関係を満たし、かつ、
前記光学フィルム表面の酸素原子の占める原子比率が26atm%以上であることを特徴とする。
b≦0.2a+1.8 (1)

【0007】
本発明の画像表示装置は、前面板を備えた画像表示装置であって、
前記画像表示装置の表面に光学フィルムが配置され、前記光学フィルムと前記前面板とが、層間充填剤を介して貼り合わされており、
前記光学フィルムが、前記本発明の光学フィルムであることを特徴とする。
【0008】
本発明の画像表示装置の製造方法は、前面板および光学フィルムを備えた画像表示装置の製造方法であって、
前記光学フィルム表面に、層間充填剤を塗布する塗布工程、および
前記層間充填剤が塗布された光学フィルムと、前記前面板とを貼り合せる貼り合せ工程を含み、
前記光学フィルムが、前記本発明の光学フィルムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、層間充填剤の粘度とフィルム表面のケイ素(Si)原子比率とが特定の関係を有しており、かつ、フィルム表面の酸素(O)原子比率が26atm%以上であるので、層間充填剤を均一に塗布でき、前面板搭載モデルにも使用可能な、光学フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の光学フィルム(ハードコートフィルム)の構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の画像表示装置の構成の一例を示す概略断面図である。
【図3】図3(a)は、実施例1〜14、比較例1〜3、5および8における、光学フィルム表面のSi原子比率と層間充填剤の粘度との関係を示すグラフである。図3(b)は、図3(a)に示す関係から、Box Wilson法により、光学フィルム表面のケイ素原子の占める原子比率と層間充填剤の粘度との関係式を算出した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の光学フィルムにおいて、前記光学フィルムの表面とは、前記光学フィルムにおける、前記層間充填剤を介して前面板を貼り合せる側の面(貼り合わせ面)の表面を示す。具体的には、例えば、前記貼り合わせ面の表面からの垂直深さ方向に20nm以下の部分を示す。前記前面板は、例えば、ガラス板、樹脂板があげられ、センサー付きのタッチパネル等の光学的機能を備えるものであってもよい。
【0012】
本発明の光学フィルムが、ハードコート層が形成されたフィルムであることが好ましい。
【0013】
前記ハードコート層が、酸素濃度500〜50000ppmの雰囲気中で形成されたものであることが好ましい。
【0014】
前記ハードコート層が、レベリング剤を含んでいるものであることが好ましい。
【0015】
前記レベリング剤が、非反応性レベリング剤であることが好ましい。
【0016】
前記光学フィルムは、その表面が表面改質をされたものであり、前記表面改質が、溶媒処理、アルカリ処理、プラズマ照射処理およびコロナ照射処理からなる群から選択される少なくとも1つの処理によることが好ましい。
【0017】
本発明の画像表示装置において、前記層間充填剤は、前記光学フィルム表面のケイ素原子の占める原子比率との関係において、前記式(1)の関係を満たす粘度範囲のものである。前記層間充填剤は、活性エネルギー線硬化性樹脂であることが好ましい。前記活性エネルギー線硬化性樹脂は、例えば、紫外線、電子線等により硬化可能な樹脂であり、具体的には、例えば、アクリル系樹脂(アクリレート、ウレタンアクリレート)、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、キシレン系樹脂等があげられる。前記キシレン系樹脂は、例えば、アルキルフェノール変性タイプ、レゾール、ポリオール等の親水性のもの、または疎水性のもの等があげられる。なお、前記層間充填剤は、活性エネルギー線硬化性樹脂に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂でもよい。
【0018】
つぎに、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の記載により制限されない。
【0019】
本発明の光学フィルムは、画像表示装置に使用される光学フィルムであり、前述のように、層間充填剤の粘度とフィルム表面のケイ素原子の占める原子比率(Si原子比率)とが前記式(1)の関係を有しており、かつ、フィルム表面の酸素原子の占める原子比率(O原子比率)が26atm%以上に設定されていることを特徴とする。本発明の光学フィルムとして、例えば、光学機能層であるハードコート層が形成されたフィルム(ハードコートフィルム)をあげることができる。以下、本発明の光学フィルムについて、ハードコートフィルムを例にとり、説明する。なお、本発明の光学フィルムは、ハードコートフィルムには限定されない。
【0020】
本発明のハードコートフィルムは、樹脂フィルム表面に、ハードコート層を有するものであり、例えば、図1に示す構成のものがあげられる。図1は、本発明のハードコートフィルムの構成の一例の概略断面図である。図1に示すとおり、このハードコートフィルム100は、樹脂フィルム110上にハードコート層120を有している。
【0021】
前記樹脂フィルムは、特に制限されないが、可視光の光線透過率に優れ(好ましくは光線透過率90%以上)、透明性に優れるもの(好ましくはヘイズ値1%以下のもの)が好ましく、例えば、特開2008−90263号公報に記載の透明プラスチックフィルム基材があげられる。前記樹脂フィルムとしては、光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。本発明のハードコートフィルムは、例えば、保護フィルムとして偏光板に使用することもでき、この場合には、前記樹脂フィルムとしては、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン等から形成されたフィルムが好ましい。また、本発明において、後述するように、前記樹脂フィルムは、偏光子自体であってもよい。このような構成であると、TAC等からなる保護層を不要とし偏光板の構造を単純化できるので、偏光板若しくは画像表示装置の製造工程数を減少させ、生産効率の向上が図れる。また、このような構成であれば、偏光板を、より薄層化できる。なお、前記樹脂フィルムが偏光子である場合には、ハードコート層が、従来の保護層としての役割を果たすことになる。また、このような構成であれば、例えば、液晶セル表面に前面板を設けない場合において、ハードコートフィルムは、例えば、液晶セル表面に装着されることで、カバープレートとしての機能を兼ねることになる。
【0022】
前記樹脂フィルムの厚みは、特に制限されないが、例えば、強度、取り扱い性などの作業性および薄層性などの点を考慮すると、10〜500μmの範囲が好ましく、より好ましくは20〜300μmの範囲であり、最適には、30〜200μmの範囲である。前記透明プラスチックフィルム基材の屈折率は、特に制限されない。前記屈折率は、例えば、1.30〜1.80の範囲であり、好ましくは、1.40〜1.70の範囲である。
【0023】
前記ハードコート層は、例えば、紫外線反応性樹脂および溶剤を含むハードコート層形成材料を用いて形成されている。前記紫外線反応性樹脂としては、例えば、紫外線で硬化する紫外線硬化性樹脂があげられ、市販の紫外線硬化型樹脂等を用いることも可能である。
【0024】
前記紫外線硬化型樹脂としては、例えば、光(紫外線)により硬化するアクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する硬化型化合物が使用でき、例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物のアクリレートやメタクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマー等があげられる。これらは、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。
【0025】
前記紫外線反応性樹脂には、例えば、アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する反応性希釈剤を用いることもできる。前記反応性希釈剤は、例えば、特開2008−88309号公報に記載の反応性希釈剤を用いることができ、例えば、単官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能アクリレート、多官能メタクリレート等を含む。前記反応性希釈剤としては、3官能以上のアクリレート、3官能以上のメタクリレートが好ましい。これは、ハードコート層の硬度を、優れたものにできるからである。前記反応性希釈剤としては、例えば、ブタンジオールグリセリンエーテルジアクリレート、イソシアヌル酸のアクリレート、イソシアヌル酸のメタクリレート等もあげられる。これらは、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。
【0026】
また、前記ハードコート層形成材料は、さらに反応開始剤を含んでいてもよく、前記反応開始剤が、紫外線反応型ラジカル発生開始剤であることが好ましい。前記紫外線反応型ラジカル発生開始剤樹脂としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−アルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類、芳香族スルホニウム類等があげられる。前記アセトフェノン類としては、例えば、2,2−エトキシアセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン等があげられる。前記ベンゾイン類としては、例えば、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等があげられる。前記ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン等があげられる。前記ホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等があげられる。これらの中でも、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の商品名「IRGACURE184」または「IRGACURE907」を、特に好ましく用いることができる。これらは、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を併用してもよい。
【0027】
前記溶剤は、特に制限されず、種々の溶剤を使用可能であり、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等があげられる。
【0028】
前記ハードコート層形成材料には、各種レベリング剤を添加でき、これにより、ハードコートフィルムの外観を良好にできる。前記レベリング剤としては、塗工ムラ防止(塗工面の均一化)を目的に、例えば、非反応性レベリング剤または反応性レベリング剤を用いることができる。両者のうち、前記非反応性レベリング剤が好ましい。前記非反応性レベリング剤を使用した場合、後述の表面改質により、例えば、前記ハードコート層表面のSi原子比率を低下させやすい。前記非反応性レベリング剤としては、特に制限されないが、例えば、フッ素系のレベリング剤およびシリコーン系のレベリング剤があげられる。前記反応性レベリング剤としては、特に制限されないが、例えば、フッ素系またはシリコーン系の骨格を有し、例えば、反応性重合基を有しているレベリング剤があげられる。本発明のハードコートフィルムでは、例えば、反射防止層(低屈折率層)等が前記ハードコート層上に形成される場合などに応じて、適宜レベリング剤を選定できる。
【0029】
前記レベリング剤の配合量は、前記紫外線反応性樹脂100重量部に対して、例えば、0.05〜2重量部の範囲である。前記レベリング剤を前記範囲とすることで、例えば、前記ハードコート層形成材料の塗工ムラをより防止できる。好ましくは0.1〜1.5重量部の範囲であり、より好ましくは0.5〜1.25重量部の範囲である。
【0030】
前記ハードコート層は、前述のように、例えば、酸素濃度500〜50000ppmの雰囲気中で形成されたものである。このような酸素濃度雰囲気中で、前記ハードコート層を形成することにより、例えば、塗膜硬化後にアルカリ処理等の表面改質を行う際に、本発明のハードコートフィルム表面において、ケイ素原子(およびフッ素原子)を除去しやすくなり、ハードコート層表面におけるO原子比率の向上、およびSi原子比率(およびF原子比率)の低減により、Si原子比率を適した範囲とすることができ、ヌレ性を向上できる。前記ハードコート層表面におけるO原子比率の向上は、例えば、前記ハードコート層表面におけるSi原子およびF原子が前記表面改質により除去され、この部分に、ハードコート層形成材料に含まれる紫外線反応性樹脂等由来のO原子、または前記表面改質により前記ハードコート層に導入されるO原子が現われることによると推察される。ただし、本発明は、この推察により、なんら制限および限定されない。前記ハードコート層は酸素濃度500〜50000ppmの雰囲気中で形成されたものであることが好ましく、より好ましくは酸素濃度2500〜15000ppmである。
【0031】
本発明のハードコートフィルムは、前述のように、その表面が表面改質をされたものであることが好ましい。本発明のハードコートフィルムの表面に前記表面改質をすることにより、例えば、前記層間充填剤のヌレ性を向上できる。前記表面改質の方法は、例えば、アルカリ処理(ケン化処理)、プラズマ照射処理、コロナ照射処理、溶媒処理等があげられ、これらの中でも、アルカリ処理が好ましい。これらの表面改質の方法は、一種類を単独で行ってもよいし、複数を組み合わせて行ってもよい。
【0032】
前記溶媒処理としては、例えば、前記ハードコート層表面に、前記溶媒を接触させて、前記表面を洗浄する方法があげられる。前記溶媒処理により、例えば、前記ハードコート層表面の付着物(例えば、ケイ素原子を含む付着物)を洗い流すことができる。前記溶媒処理に使用する溶媒は、特に制限されず、例えば、水、有機溶媒、無機溶媒、またはこれらの混合溶媒があげられる。前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール等があげられる。
【0033】
前記アルカリ処理としては、例えば、前記ハードコート層表面に、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液を接触させる方法があげられ、具体的には、例えば、前記アルカリ水溶液に、前記ハードコートフィルムを浸漬する方法があげられる。前記浸漬におけるアルカリ水溶液の濃度、浸漬時間、温度等は、例えば、適宜設定できる。
【0034】
前記プラズマ照射処理としては、例えば、N、大気雰囲気下でのプラズマ放電処理があげられる。照射時間、放電電圧等は適宜選択できる。これにより、例えば、フィルムの外観を損なうことなく、光学フィルム表面におけるヌレを阻害する成分であるケイ素原子(およびフッ素原子等)を除去でき、且つ表面における酸素存在比率を向上させることができ、ヌレ性の向上につながる。
【0035】
前記コロナ照射処理としては、例えば、N、大気雰囲気下でのコロナ放電処理があげられる。照射時間、放電電圧等は適宜選択できる。これにより、例えば、フィルムの外観を損なうことなく、光学フィルム表面におけるヌレを阻害する成分であるケイ素原子(およびフッ素原子等)を除去でき、且つ表面における酸素存在比率を向上させることができ、ヌレ性の向上につながる。
【0036】
本発明のハードコートフィルムと前面板とを、前記層間充填剤を介して貼り合せる場合には、例えば、本発明のハードコートフィルムの前記ハードコート層側の面が、前記前面板との貼り合せ面となる。したがって、本発明のハードコートフィルムにおいて、「光学フィルムの表面」とは、前記ハードコート層表面(前記樹脂フィルム側とは反対側の面)を示し、具体的には、例えば、前記ハードコート層表面からの垂直深さ方向に20nm以下の部分(表面部分)を示す。
【0037】
本発明のハードコートフィルムにおいて、前記表面部分におけるSi原子比率(atm%)と前記層間充填剤の粘度とが、下記式(1)の関係を満たす。これに加えて、前記表面部分におけるO原子比率は、26atm%以上である。このため、本発明のハードコートフィルムは、前記ハードコート層表面に、前記層間充填剤を均一に塗布できる。これにより、本発明のハードコートフィルムは、前面板搭載モデルの画像表示装置に好適に使用できる。前述のように、液晶テレビ等の画像表示装置のディスプレイ表面には、ハードコートフィルムや防眩フィルム等の光学フィルムが配置されていることが一般的であり、市場全体からみると前面板搭載モデルの画像表示装置は一部分にとどまっている。このため、前面板搭載モデルの画像表示装置、および前面板を搭載しないモデルの画像表示装置の両方に対応できるハードコートフィルム、防眩フィルム等の光学フィルムは、前記市場の部材共通化による生産性向上の観点から、開発が望まれていた。ここで、前述のようなハードコートフィルム、防眩フィルム等の光学フィルムは、その表面に層間充填樹脂を均一に塗布できることが有利であるが、前述のように、前記光学フィルムの表面に前記層間充填樹脂を塗布した場合、前記層間充填樹脂がハジかれてしまい、均一に塗布できないという課題が生じていた。本発明は、このような課題を解決したものであり、これにより、例えば、前記市場の部材共通化による生産性向上を実現できる。なお、本発明において、前記層間充填剤の均一な塗布とは、例えば、常温において前記層間充填剤の塗布から所定時間が経過するまでの間に、前記ハードコート層上において、前記層間充填剤のはじき速度が遅く、ヌレ広がった状態を維持していることを示す。このように、所定時間ヌレ広がった状態を維持できることで、例えば、前面板と本発明のハードコートフィルムとを、前記層間充填剤を介して貼り合せる際の歩留まりを確保できる。

b≦0.2a+1.8 (1)

a :層間充填剤の粘度(Pa・s)
b :ハードコート層表面のケイ素原子比率(atm%)

【0038】
本発明のハードコートフィルムが、前述の効果を奏するのは、以下のメカニズムによると推察される。ただし、本発明は、この推察により、なんら制限および限定されない。一般に、ハードコートフィルムにおいて、ハードコート層表面のSi原子比率が高く、ハードコート層表面のO原子比率が低い場合、そのハードコート層表面に、さらに、他の層を形成する形成材料をリコートすると、前記形成材料が前記ハードコート層表面上ではじかれてしまう。そこで、本発明では、例えば、ハードコート層を前記所定の酸素濃度の雰囲気中で形成し、前記表面改質を行うことにより、前記ハードコート層表面の前記O原子比率を26atm%以上とし、かつ前記ハードコート層表面の前記Si原子比率に対して、前記式(1)の関係を満たす粘度を有する層間充填剤を、前記ハードコート層表面にリコートすることで、前記層間充填剤を均一に塗布できる。ここで、本発明では、前記ハードコート層を形成する際、前記ハードコート層形成材料におけるSi原子比率を高めることが好ましい。ハードコート層表面のケイ素(Si)の原子比率が低くなるように、ハードコート層形成材料を前記樹脂フィルム上に塗布する場合、塗布膜(ハードコート層)に塗工ムラが発生してしまい、ハードコートフィルムの外観が悪くなるためである。前記ハードコート層形成材料におけるSi原子比率を高めることで、塗工ムラを防止できる。ハードコートフィルムにおいて、ハードコート層上に他の層を形成する形成材料のリコート性と、ハードコートフィルムの外観性とは、トレードオフの関係にあるが、前述のようにすることで、本発明のハードコートフィルムは、リコート性に優れ、かつ、例えば、外観性に優れたものとすることもできる。
【0039】
本発明のハードコートフィルムでは、前述のように、前記ハードコート層を、例えば、前述の表面改質により、前記ハードコート層表面のSi原子比率を低下させ、かつ、O原子比率を増加させることができる。このため、例えば、前記式(1)の関係において、より低粘度の層間充填剤を使用することでき、適用できる層間充填剤の範囲を広げることができる。本発明では、前記表面改質により、前記ハードコート層表面のO原子比率を26atm%以上とすることが好ましい。このようにすることで、例えば、前記Si原子比率を十分に低下させることができる。また、前記表面改質によれば、ケイ素のみでなく、例えば、フッ素等の表面自由エネルギーの低い成分(元素)を除去することもできる。
【0040】
前記ハードコート層表面のSi原子比率およびO原子比率を制御する方法としては、例えば、下記化学式(1)〜(3)に示す構造の化合物を、前記ハードコート層表面に存在させる方法があげられる。前述の化合物を、前記ハードコート層表面に存在させる方法としては、例えば、前述の化合物をハードコート層形成材料に添加し、このハードコート層形成材料を、前記樹脂フィルム上に塗工し、当該塗膜を乾燥、硬化する方法があげられる。
【化1】

【化2】

【化3】

【0041】
前記化学式(1)において、Rは、例えば、エポキシ基、脂環式エポキシ基、アミノ基、ポリエーテル基、メタクリル基、カルボキシル基、フェノール基、フェニル基、メルカプト基、ヒドロキシル基であり、n1は、例えば、10〜2000である。前記化学式(2)および前記化学式(3)における、n2およびn3は、任意の正の整数である。
【0042】
前記ハードコート層表面の酸素原子比率は、26atm%以上であり、好ましくは30atm%以上である。
【0043】
前記ハードコート層表面のケイ素原子比率は、前記式(1)の関係を満たすように設定されるが、2.4atm%以下が好ましく、より好ましくは1.8atm%以下である。
【0044】
前記層間充填剤の粘度は、前記式(1)の関係を満たすように設定されるが、前記粘度は、例えば0.5〜15Pa・sの範囲である。前記ハードコート層上で発生する層間充填剤のはじきは、一般に、前記層間充填剤と前記ハードコート層との間の表面自由エネルギー差が大きいことによっておこるものと考えられる。ここで、前記粘度が0.5Pa・s以上であれば、例えば、前記層間充填剤がハードコート層上で動くことがなく、前記層間充填剤同士で集まることもないため、前記はじきが促進されることがない。また、前記粘度が15Pa・s以下であれば、例えば、前記ハードコート層上に、より均一な塗工が可能となる。前記粘度は、1〜10Pa・sの範囲が好ましく、より好ましくは3〜8.5Pa・sの範囲である。
【0045】
前記ハードコート層には、粒子が含有されていてもよい。前記粒子は、形成されるハードコート層表面を凹凸形状にして防眩性を付与し、また、前記ハードコート層のヘイズ値を制御するために、前記ハードコート層形成材料に添加できる。前記ハードコート層のヘイズ値は、前記粒子と前記紫外線反応性樹脂との屈折率差を制御することで、設計できる。前記粒子としては、例えば、無機粒子と有機粒子とがある。前記無機粒子は、特に制限されず、例えば、酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化錫粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、タルク粒子、カオリン粒子、硫酸カルシウム粒子等があげられる。また、前記有機粒子は、特に制限されず、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末(PMMA微粒子)、シリコーン樹脂粉末、ポリスチレン樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、アクリルスチレン樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、ポリオレフィン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末、ポリイミド樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂粉末等があげられる。これらの無機粒子および有機粒子は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0046】
前記粒子の重量平均粒径は、0.5〜10μmの範囲内にあることが好ましい。前記粒子の重量平均粒径を、前記範囲とすることで、例えば、より防眩性に優れ、かつ白ボケが防止できるハードコートフィルムとすることができる。前記粒子の重量平均粒径は、より好ましくは、2〜8μmの範囲内である。なお、前記粒子の重量平均粒径は、例えば、コールターカウント法により測定できる。例えば、細孔電気抵抗法を利用した粒度分布測定装置(商品名:コールターマルチサイザー、ベックマン・コールター社製)を用い、粒子が前記細孔を通過する際の粒子の体積に相当する電解液の電気抵抗を測定することにより、前記粒子の数と体積を測定し、重量平均粒径を算出する。
【0047】
前記粒子の形状は、特に制限されず、例えば、ビーズ状の略球形であってもよく、粉末等の不定形のものであってもよいが、略球形のものが好ましく、より好ましくは、アスペクト比が1.5以下の略球形の粒子であり、最も好ましくは球形の粒子である。
【0048】
前記ハードコート層における前記粒子の割合は、前記紫外線反応性樹脂100重量部に対し、0.5〜20重量部の範囲が好ましく、より好ましくは、3〜10重量部の範囲である。前記範囲とすることで、例えば、より防眩性に優れ、かつ白ボケが防止できるハードコートフィルムとすることができる。
【0049】
前記ハードコート層形成材料には、必要に応じて、性能を損なわない範囲で、顔料、充填剤、分散剤、可塑剤、界面活性剤、防汚剤、酸化防止剤、チクソトロピー化剤等が添加されてもよい。これらの添加剤は一種類を単独で使用してもよく、また二種類以上併用してもよい。
【0050】
前記ハードコート層の厚みは、本発明のハードコートフィルムの全体厚みを測定し、前記全体厚みから、前記樹脂フィルムの厚みを差し引くことにより算出される、前記ハードコート層の厚みである。前記全体厚みおよび前記樹脂フィルムの厚みは、例えば、マイクロゲージ式厚み計によって、測定できる。
【0051】
前記ハードコート層の厚みは、特に制限されないが、1〜20μmの範囲にあることが好ましい。前記ハードコート層の厚みを、前記範囲とすることで、例えば、ハードコートフィルムにおけるカールの発生を防ぐことができ、搬送性不良等の生産性の低下の問題を回避できる。前記ハードコート層の厚みは、より好ましくは、2〜15μmの範囲であり、さらに好ましくは、3〜10μmの範囲である。
【0052】
本発明のハードコートフィルムに防眩性を付与した場合には、本発明のハードコートフィルムにおけるヘイズ値は、特に制限されず、例えば、これを装着するディスプレイの用途等により、適宜設定できる。
【0053】
本発明のハードコートフィルムは、例えば、まず、前記紫外線反応性樹脂および前記溶剤を含むハードコート層形成材料を準備し、前記ハードコート層形成材料を前記樹脂フィルムの少なくとも一方の面に塗工して塗膜を形成し、紫外線を照射して前記塗膜を硬化させて前記ハードコート層を形成する。さらに、前記形成されたハードコート層表面に、前述の表面改質を行ってもよい。本発明のハードコートフィルムの製造においては、金型による転写方式や、サンドブラスト、エンボスロールなどの適宜な方式で凹凸形状を付与する方法などを、併せて用いることもできる。
【0054】
前記塗工方法としては、例えば、ファンテンコート法、ダイコート法、スピンコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法等の塗工法を用いることができる。
【0055】
前記塗膜の前記硬化に先立ち、前記塗膜を乾燥させることが好ましい。前記乾燥は、例えば、自然乾燥でもよいし、風を吹きつけての風乾であってもよいし、加熱乾燥であってもよいし、これらを組み合わせた方法であってもよい。乾燥温度、乾燥時間等は、適宜選択できる。
【0056】
前記塗膜の硬化は、前述のように、酸素濃度を500〜50000ppmの雰囲気中で行うことが好ましい。このような条件で塗膜を硬化させてハードコート層を形成することで、例えば、塗膜硬化後にアルカリ処理等の表面改質を行う際に、本発明のハードコートフィルム表面において、ケイ素原子(およびフッ素原子)を除去しやすくなり、ハードコート層表面におけるO原子比率の向上、およびSi原子比率(およびF原子比率)の低減により、Si原子比率を適した範囲とすることができ、ヌレ性を向上できる。前記ハードコート層表面におけるO原子比率の向上は、例えば、前記ハードコート層表面におけるSi原子およびF原子が前記表面改質により除去され、この部分に、ハードコート層形成材料に含まれる紫外線反応性樹脂等由来のO原子、または前記表面改質により前記ハードコート層に導入されるO原子が現われることによると推察される。ただし、本発明は、この推察により、なんら制限および限定されない。
【0057】
前記紫外線照射の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50〜500mJ/cmが好ましい。前記照射量が、50mJ/cm以上であれば、硬化がより十分となり、形成されるハードコート層の硬度もより十分なものとなる。また、500mJ/cm以下であれば、形成されるハードコート層の着色を防止できる。
【0058】
本発明では、前述のように、前記ハードコート層を形成する際、例えば、前記ハードコート層形成材料におけるケイ素原子比率を高めることで、塗工ムラを防止し、優れた外観を有するハードコートフィルムを製造する。前記ハードコート層形成材料の固形分におけるケイ素原子比率は、好ましくは1〜7atm%の範囲であり、より好ましくは1.5〜7atm%の範囲である。このように、前記ハードコート層形成材料の固形分におけるケイ素原子比率を調整する方法は、例えば、ハードコートフィルムの外観向上方法ということもできる。
【0059】
前記表面改質は、前述のように、前記アルカリ処理が好ましい。アルカリ処理の具体例は、前述のとおりである。
【0060】
以上のようにして、前記樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、前記ハードコート層を形成することにより、本発明のハードコートフィルムを製造できる。なお、本発明のハードコートフィルムは、前述の方法以外の製造方法で製造してもよい。本発明のハードコートフィルムの硬度は、鉛筆硬度において、層の厚みにも影響されるが、2H以上の硬度を有することが好ましい。また、この例のハードコート層は、単層であるが、本発明のハードコートフィルムは、これに制限されず、前記ハードコート層は、二層以上が積層された複数層構造であってもよい。前記ハードコート層が複数層構造である場合、前記表面改質は、例えば、最外層の層に対して実施すればよい。
【0061】
本発明のハードコートフィルムにおいて、前記ハードコート層の上に、反射防止層(低屈折率層)を配置してもよい。例えば、画像表示装置にハードコートフィルムを装着した場合、画像の視認性を低下させる要因のひとつに空気とハードコート層界面での光の反射があげられる。反射防止層は、その表面反射を低減させるものである。なお、ハードコート層および反射防止層は、樹脂フィルムの両面に形成してもよい。この場合、本発明のハードコートフィルムの表面のうち、前記前面板と貼り合せる側の表面に位置するハードコート層表面のSi原子比率およびO原子比率が、前述のとおりであればよい。また、ハードコート層および反射防止層は、それぞれ、二層以上が積層された複数層構造であってもよい。前記ハードコート層の上に、前記反射防止層が配置される場合、前記表面改質は、例えば、最外層の反射防止層に対して実施すればよい。
【0062】
本発明において、前記反射防止層は、厚みおよび屈折率を厳密に制御した光学薄膜若しくは前記光学薄膜を二層以上積層したものである。前記反射防止層は、光の干渉効果を利用して入射光と反射光の逆転した位相を互いに打ち消し合わせることで反射防止機能を発現する。反射防止機能を発現させる可視光線の波長領域は、例えば、380〜780nmであり、特に視感度が高い波長領域は450〜650nmの範囲であり、その中心波長である550nmの反射率を最小にするように反射防止層を設計することが好ましい。
【0063】
光の干渉効果に基づく前記反射防止層の設計において、その干渉効果を向上させる手段としては、例えば、前記反射防止層と前記ハードコート層の屈折率差を大きくする方法がある。一般的に、二ないし五層の光学薄層(厚みおよび屈折率を厳密に制御した薄膜)を積層した構造の多層反射防止層では、屈折率の異なる成分を所定の厚さだけ複数層形成することで、反射防止層の光学設計の自由度が上がり、より反射防止効果を向上させることができ、分光反射特性も可視光領域で均一(フラット)にすることが可能になる。前記光学薄膜において、高い厚み精度が要求されるため、一般的に、各層の形成は、ドライ方式である真空蒸着、スパッタリング、CVD等で実施される。
【0064】
前記樹脂フィルムの一方の面に前記ハードコート層が形成されているハードコートフィルムにおいて、カール発生を防止するために、他方の面に対し溶剤処理を行ってもよい。また、前記樹脂フィルムの一方の面に前記ハードコート層が形成されているハードコートフィルムにおいて、カール発生を防止するために、他方の面に透明樹脂層を形成してもよい。
【0065】
以上のように、本発明の光学フィルムについて、ハードコートフィルムを例にとり、説明してきたが、本発明の光学フィルムは、ハードコートフィルムには限定されない。本発明の光学フィルムは、例えば、前記樹脂フィルム上に、前記ハードコート層以外の光学機能層が形成されたフィルムであってもよい。前記ハードコート層以外の光学機能層としては、例えば、防眩層、反射防止層、光学補償層等があげられる。このような光学フィルムの場合には、前記前面板と貼り合せる面を前記光学機能層が形成されている面とし、前記光学機能層の表面は、前述のハードコートフィルムで説明したのと同様である。
【0066】
本発明の光学フィルムは、前述の光学機能層が形成されていないフィルムであってもよい。このような光学フィルムの場合には、光学フィルムの前記前面板と貼り合せる面の表面は、前述のハードコートフィルムで説明したのと同様である。この光学フィルムに使用される樹脂フィルムは、例えば、前述と同様のものがあげられる。また、この光学フィルムは、偏光板であってもよい。すなわち、前記偏光子の片面または両面に透明保護フィルムが設けられた偏光板の場合には、前記透明保護フィルムが設けられている面を、前記前面板との貼り合せ面としてもよいし、前記透明保護フィルムが設けられていない面(前記偏光子の面)を、前記前面板との貼り合せ面としてもよい。前記貼り合せ面の表面は、前述のハードコートフィルムで説明したのと同様である。この偏光板における前記保護フィルムまたは偏光子は、前述のように、前記表面改質が行われるのが好ましい。前記透明保護フィルムを形成する材料としては、例えば、前記樹脂フィルムと同様のものがあげられる。
【0067】
本発明のハードコートフィルムは、通常、前記樹脂フィルム側(前面板貼り合わせ面とは反対側)を、粘着剤や接着剤を介して、LCDに用いられている光学部材に貼り合せることができる。なお、この貼り合わせにあたり、前記樹脂フィルム表面(前面板貼り合わせ面とは反対側の表面)に対し、前述のような各種の表面処理を行ってもよい。
【0068】
前記光学部材としては、例えば、偏光子または偏光板があげられる。偏光板は、偏光子の片側または両側に透明保護フィルムを有するという構成が一般的である。偏光子の両面に透明保護フィルムを設ける場合は、表裏の透明保護フィルムは、同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。偏光板は、通常、液晶セルの両側に配置される。また、偏光板は、2枚の偏光板の吸収軸が互いに略直交するように配置される。
【0069】
つぎに、本発明のハードコートフィルムを積層した光学部材について、偏光板を例にして説明する。本発明のハードコートフィルムを、接着剤や粘着剤などを用いて偏光子または偏光板と積層することによって、本発明の機能を有した偏光板を得ることができる。
【0070】
前記偏光子としては、特に制限されず、各種のものを使用できる。前記偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等があげられる。
【0071】
前記偏光子の片面または両面に設けられる透明保護フィルムとしては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、位相差値の安定性などに優れるものが好ましい。前記透明保護フィルムを形成する材料としては、例えば、前記樹脂フィルムと同様のものがあげられる。
【0072】
前記、透明保護フィルムとしては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載の高分子フィルムがあげられる。前記高分子フィルムは、前記樹脂組成物を、フィルム状に押出成型することにより製造できる。前記高分子フィルムは、位相差が小さく、光弾性係数が小さいため、偏光板等の保護フィルムに適用した場合には、歪みによるムラなどの不具合を解消でき、また透湿度が小さいため、加湿耐久性に優れる。
【0073】
前記透明保護フィルムは、偏光特性や耐久性などの点から、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂製のフィルムおよびノルボルネン系樹脂製のフィルムが好ましい。前記透明保護フィルムの市販品としては、例えば、商品名「フジタック」(富士フイルム社製)、商品名「ゼオノア」(日本ゼオン社製)、商品名「アートン」(JSR社製)などがあげられる。前記透明保護フィルムの厚みは、特に制限されないが、強度、取扱性等の作業性、薄層性等の点より、例えば、1〜500μmの範囲である。
【0074】
前記ハードコートフィルムを積層した偏光板の構成は、特に制限されないが、例えば、前記ハードコートフィルムの上に、透明保護フィルム、前記偏光子および前記透明保護フィルムを、この順番で積層した構成でもよいし、前記ハードコートフィルム上に、前記偏光子、前記透明保護フィルムを、この順番で積層した構成でもよい。
【0075】
図2に、本発明の画像表示装置の構成の一例を示す。図2は、本発明の画像表示装置の構成の一例の概略断面図である。図2に示すように、この画像表示装置200は、画像表示装置本体210と、ハードコートフィルム100と、前面板220とを備える。画像表示装置本体210の視認側表面には、ハードコートフィルム100が配置されている。このハードコートフィルム100は、前述の本発明のハードコートフィルムである。ハードコートフィルム100と前面板220とは、層間充填剤230を介して貼り合わされている。
【0076】
前記画像表示装置本体は、例えば、LCD、PDP、ELD、CRT等があげられる。前記LCDの場合、液晶セル、偏光板等の光学部材、および必要に応じ照明システム(バックライト等)等の各構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むこと等により、前記画像表示装置本体を製造できる。
【0077】
前記前面板は、特に制限されず、従来公知のものが使用できる。前記前面板の材質、厚み等は、例えば、前記画像表示装置の用途等に応じて、適宜選択できる。
【0078】
前記層間充填剤としては、例えば、前述のものを使用でき、一種類を単独で使用してもよいし、複数種類を併用してもよい。前記層間充填剤は、無溶剤層間充填剤が好ましい。
【0079】
前記本発明のハードコートフィルムと前記前面板との貼り合せは、例えば、以下のようにして行える。すなわち、まず、前記層間充填剤を準備する。この際、前記本発明のハードコートフィルムの前記ハードコート層表面のSi原子比率との関係(前記式(1)の関係)を満たすように、前記層間充填剤の粘度を所望の値に設定する。このように、前記層間充填剤の粘度を所望の値に設定する方法は、例えば、層間充填剤のはじき防止方法ということもできる。ついで、前記ハードコート層表面に前記層間充填剤を塗工し、前記層間充填剤の塗膜上に前記前面板を重ね合わせる。この状態で、前記層間充填剤の硬化などにより、前記本発明のハードコートフィルムと前記前面板とを貼り合せる。本発明では、前記ハードコート層表面に前記層間充填剤を塗工する際に、前記ハードコート層表面において、前記層間充填剤がはじかれることなく、前記層間充填剤が均一にヌレ広がった状態を維持できる。
【0080】
本発明の画像表示装置において、前記画像表示装置本体の表面に配置する光学フィルムは、本発明のハードコートフィルムである場合のみには限定されない。本発明の画像表示装置は、本発明のハードコートフィルムの他に、前述のハードコート層以外の光学機能層が形成された光学フィルム、前述の光学機能層が形成されていない光学フィルム、前述の偏光板等が前記画像表示装置本体の表面に配置されていてもよい。
【0081】
本発明の画像表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途は、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等である。
【実施例】
【0082】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例および比較例により制限されない。なお、下記実施例および比較例における各種特性は、下記の方法により評価または測定を行った。
【0083】
(層間充填剤のハジキ性評価)
実施例記載の方法で作製した光学フィルムの塗布液が塗布されていない面(樹脂フィルム側)に粘着剤を転写形成したものを、8×8cmのガラス上に貼り付け、サンプルとした。前記光学フィルム上に、各粘度の無溶剤樹脂(層間充填剤)を滴下し、スピンコーターを用いて、2000rpm、15secの条件で全面均一に塗布した。30分間静置後、サンプルの4辺の任意の場所からのハジキ量をノギスで測定し、その4点の平均ハジキ幅を測定値とした。
【0084】
(ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)による原子比率測定)
前記光学フィルムを5mm角程度に切断して得た試料片を、モリブデン(Mo)板上に配置し、Mo板ごと試料台に固定した。アルバック・ファイ(株)製「Quantum 2000」を用いて、原子強度の測定を行った。X線源はモノクロAlKα、X線出力は30W(15kV)、測定領域は200μmφ、光電子取り出し角は試料表面に対して45°とした。結合エネルギーの補正は、C1sスペクトルのC−C結合に起因するピークを285.0eVに補正することで行った。中和条件は、中和銃とArイオン銃(中和モード)を併用することで行った。前記条件によって、試料の最表面から深さ約5〜10nmまでの領域についての各原子強度比が測定できる。試料表面は、予め、汚染物を除去するために、試料表面を破壊しない程度に拭取りすることで洗浄を行った。さらにC60イオン銃によりエッチング除去することにより、汚染物の除去を行った。
【0085】
(フィルムの外観評価)
得られた光学フィルムの塗布液が塗布されていない面に、黒色PETフィルム(リンテック株式会社製、厚み75μm)を粘着剤で貼り合わせ、裏面の反射をなくしたサンプルを作製した。塗布液塗工面側を蛍光灯(三波長光源)で照らして目視検査し、下記の基準で判定した。前記目視検査は、樹脂フィルムに形成された防眩性ハードコート層の有無に分けて、それぞれの評価基準で判定した(判定基準1および2)。

判定基準1(防眩性ハードコート層有り)
G :ムラが気にならない(白黒の濃淡なく均一な防眩性が付与されている)。
NG:ムラが目立つ(白黒の濃淡模様が強く見える)。

判定基準2(防眩性ハードコート層無し)
G :ムラが気にならない(干渉ムラ発生なし)。
NG:ムラが目立つ(干渉ムラが発生し、虹色の模様が強く目立つ)。

【0086】
[実施例1]
透明支持体(樹脂フィルム)として、80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム(株)製、商品名「TAC−TD80U」)を準備した。多官能ウレタンアクリレート(DIC(株)製、商品名「ユニディック17−806」)を100重量部、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGACURE907」)を5.0重量部、光拡散性粒子(積水化成品工業(株)製ポリスチレン/ポリメチルメタクリレート共重合粒子、商品名「SSX103DXE」、重量平均粒子径3.0μm)を5.0重量部、溶剤として、イソプロピルアルコール(IPA)79.2重量部およびシクロペンタノン(CPN)34.0重量部、フッ素系レベリング剤(DIC(株)製、商品名「メガファックF556」)を1.0重量部混合し、塗布液(ハードコート剤)を調製した。この塗布液を、ワイヤーバー#7を用いて塗布し、乾燥オーブンにて60℃の雰囲気下で1分間乾燥させ、溶剤を揮発させ、塗布膜を形成した。その後、酸素濃度5000ppmの雰囲気下で160W/cmの空冷水銀ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度40mW/cm、照射量250mJ/cmの紫外線を照射して前記塗布膜を硬化させた。このようにして、前記樹脂フィルム上に、防眩性ハードコート層(防眩性ハードコートフィルム)を形成した。前記防眩性ハードコートフィルムを、10重量%濃度に調整したNaOH水溶液中(55℃)に20秒間浸漬させた後、乾燥オーブンにて65℃の雰囲気下で30秒間乾燥させ、実施例1の光学フィルムを得た。層間充填剤として、アクリルモノマー(新中村化学(株)製、商品名「DPHA」、粘度5.5Pa・s/25℃)を用い、ハジキ性評価を行った。
【0087】
[実施例2]
塗布膜硬化時の酸素濃度を、10000ppm雰囲気とした以外は、実施例1と同様の方法で実施例2の光学フィルムを作製し、層間充填剤のハジキ幅を評価した。
【0088】
[実施例3]
塗布膜硬化時の酸素濃度を、7500ppm雰囲気とした以外は、実施例1と同様の方法で実施例3の光学フィルムを作製し、層間充填剤のハジキ幅を評価した。
【0089】
[実施例4]
実施例1と同様の方法で実施例4の光学フィルムを作製し、層間充填剤として、UV硬化型接着剤「ソニーケミカル(株)製、無溶剤型UV反応型接着剤、粘度8.5Pa・s/25℃)を用い、層間充填剤のハジキ幅を評価した。
【0090】
[実施例5]
塗布膜硬化時の酸素濃度を7500ppm雰囲気とした以外は、実施例1と同様の方法で実施例5の光学フィルムを作製し、層間充填剤として、無溶剤アクリレート樹脂(日本合成(株)製、商品名「ルシフラール12」、粘度1.0Pa・s/25℃)を用い、層間充填剤のハジキ幅を評価した。
【0091】
[実施例6]
実施例2と同様の方法で実施例6の光学フィルムを作製し、層間充填剤として、実施例5と同様の無溶剤アクリレート樹脂(粘度1.0Pa・s/25℃)を用い、層間充填剤のハジキ幅を評価した。
【0092】
[実施例7]
実施例2と同様の方法で実施例7の光学フィルムを作製し、層間充填剤として、実施例4と同様のUV硬化型接着剤(粘度8.5Pa・s/25℃)を用い、層間充填剤のハジキ幅を評価した。
【0093】
[実施例8]
実施例3と同様の方法で実施例8の光学フィルムを作製し、層間充填剤として、実施例4と同様のUV硬化型接着剤(粘度8.5Pa・s/25℃)を用い、層間充填剤のハジキ幅を評価した。
【0094】
[実施例9]
実施例1におけるフッ素系レベリング剤をDIC(株)製、商品名「メガファックF477」とし、塗布膜硬化時の酸素濃度を150ppm雰囲気とした以外は実施例1と同様の方法で実施例9の光学フィルムを作製し、層間充填剤として、実施例5と同様の無溶剤アクリレート樹脂(粘度1.0Pa・s/25℃)を用い、層間充填剤のハジキ幅を評価した。
【0095】
[実施例10]
実施例9と同様の方法で実施例10の光学フィルムを作製し、層間充填剤として、実施例1と同様のアクリルモノマー(粘度5.5Pa・s/25℃)を用い、層間充填剤のハジキ幅を評価した。
【0096】
[実施例11]
実施例9と同様の方法で実施例11の光学フィルムを作製し、層間充填剤として、実施例4と同様のUV硬化型接着剤(粘度8.5Pa・s/25℃)を用い、層間充填剤のハジキ幅を評価した。
【0097】
[実施例12]
塗布膜硬化時の酸素濃度を2500ppm雰囲気とした以外は、実施例1と同様の方法で実施例12の光学フィルムを作製し、層間充填剤として、実施例1と同様のアクリルモノマー(粘度5.5Pa・s/25℃)を用い、層間充填剤のハジキ幅を評価した。
【0098】
[実施例13]
塗布膜硬化時の酸素濃度を2500ppm雰囲気とした以外は、実施例1と同様の方法で実施例13の光学フィルムを作製し、層間充填剤として、実施例4と同様のUV硬化型接着剤(粘度8.5Pa・s/25℃)を用い、層間充填剤のハジキ幅を評価した。
【0099】
[実施例14]
樹脂フィルムとして、実施例1と同様のトリアセチルセルロースフィルムを準備し、この樹脂フィルムを10重量%濃度に調整したNaOH水溶液中(55℃)に20秒間浸漬させた後、乾燥オーブンにて65℃の雰囲気下で30秒間乾燥させて、実施例14の光学フィルムを作製し、層間充填剤として、実施例1と同様のアクリルモノマーを用い、ハジキ性評価を行った。
【0100】
[比較例1]
レベリング剤として、フッ素系レベリング剤に代えて、シリコーン系反応性レベリング剤(DIC(株)製、商品名「GRANDIC PC4100」)を添加した以外は、実施例1と同様に塗布液(ハードコート剤)を調製した。この塗布液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で比較例1の光学フィルムを作製し、層間充填剤のハジキ幅を評価した。
【0101】
[比較例2]
比較例1と同様の方法で比較例2の光学フィルムを作製し、実施例5と同様の無溶剤アクリレート樹脂(粘度1.0Pa・s/25℃)を用い、層間充填剤のハジキ幅を評価した。
【0102】
[比較例3]
比較例1と同様の方法で比較例3の光学フィルムを作製し、層間充填剤として、実施例4と同様のUV硬化型接着剤(粘度8.5Pa・s/25℃)を用い、層間充填剤のハジキ幅を評価した。
【0103】
[比較例4]
塗布膜硬化時の酸素濃度を150ppm雰囲気とした以外は実施例1と同様の方法で比較例4の光学フィルムを作製し、層間充填剤として、実施例5と同様の無溶剤アクリレート樹脂(粘度1.0Pa・s/25℃)を用い、層間充填剤のハジキ幅を評価した。
【0104】
[比較例5]
実施例1と同様の方法で比較例5の光学フィルムを作製し、層間充填剤として、実施例5と同様の無溶剤アクリレート樹脂(粘度1.0Pa・s/25℃)を用い、層間充填剤のハジキ幅を評価した。
【0105】
[比較例6]
塗布膜硬化時の酸素濃度を150ppm雰囲気とした以外は実施例1と同様の方法で比較例6の光学フィルムを作製し、層間充填剤として、実施例1と同様のアクリルモノマー(粘度5.5Pa・s/25℃)を用い、層間充填剤のハジキ幅を評価した。
【0106】
[比較例7]
比較例6と同様の方法で比較例7の光学フィルムを作製し、層間充填剤として、実施例4と同様のUV硬化型接着剤(粘度8.5Pa・s/25℃)を用い、層間充填剤のハジキ幅を評価した。
【0107】
[比較例8]
塗布膜硬化時の酸素濃度を2500ppm雰囲気とした以外は、実施例1と同様の方法で比較例8の光学フィルムを作製し、層間充填剤として、実施例5と同様の無溶剤アクリレート樹脂(粘度1.0Pa・s/25℃)を用い、層間充填剤のハジキ幅を評価した。
【0108】
このようにして得られた実施例1〜14、比較例1〜8の各光学フィルムについての、各種特性の測定若しくは評価結果を下記表1に示す。
【0109】
【表1】

【0110】
前記表1に示すように、防眩性ハードコート層を形成した実施例1〜13の光学フィルムでは、層間充填剤のハジキ幅が14mm以下と、良好な均一塗布性を示し、さらに、実施例1〜4、6〜8、10〜13の光学フィルムでは、層間充填剤のハジキ幅が10mm以下と、より良好な均一塗布性を示した。また、防眩性ハードコート層を形成していない実施例14の光学フィルムについても、層間充填剤粘度との関係が、前記式(1)を満たすことで、層間充填剤をはじかなかった(層間充填剤のハジキ幅:0mm)。さらに、実施例1〜14の光学フィルムでは、層間充填剤塗布前の光学フィルム外観は良好であった。一方、比較例1〜5および8は、表面改質後のSi原子比率と、層間充填剤粘度との関係が、前記式(1)を満たさず、前記ハジキ幅が15mmより大きい値となった。また、比較例6および7は、光学フィルム表面のO原子比率が26atm%未満であり、前記ハジキ幅が15mmより大きい値となった。表面改質後のSi原子比率が高い比較例1〜3においては、反応性レベリング剤を用いており、この条件での表面改質では、Si原子比率を低下させることができなかったものと考えられる。
【0111】
図3(a)のグラフに、実施例1〜14、比較例1〜3、5および8における光学フィルム表面のケイ素原子の占める原子比率と、層間充填剤の粘度との関係を示す。図3(a)において、横軸は、層間充填剤の粘度(Pa・s)を示し、縦軸は、光学フィルム表面のケイ素原子の占める原子比率(atm%)を示す。各実施例および各比較例のプロットから、Box Wilson法により、図3(b)に示すように、b=0.2a+1.8(a:層間充填剤の粘度(Pa・s)、b:光学フィルム表面のケイ素原子の占める原子比率(atm%)、R=0.9527)を算出した。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明によれば、ディスプレイ表面の光学フィルムに層間充填剤を均一に塗布でき、前面板搭載モデルにも使用可能な、光学フィルムを提供できる。したがって、本発明の光学フィルムの用途は制限されず、広い分野に適用可能である。例えば、偏光板等の光学部材、液晶パネル、および、LCD(液晶ディスプレイ)やOLED(有機ELディスプレイ)等の画像表示装置等に好適に使用できる。
【符号の説明】
【0113】
100 ハードコートフィルム
110 樹脂フィルム
120 ハードコート層
200 画像表示装置
210 画像表示装置本体
220 前面板
230 層間充填剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置に使用される光学フィルムであって、
前記光学フィルムに、層間充填剤を介して、前面板が貼り合わされる際の前記層間充填剤の粘度(Pa・s)をaとし、
前記光学フィルム表面のケイ素原子の占める原子比率(atm%)をbとしたとき、下記式(1)の関係を満たし、かつ、
前記光学フィルム表面の酸素原子の占める原子比率が26atm%以上であることを特徴とする光学フィルム。
b≦0.2a+1.8 (1)

【請求項2】
前記光学フィルムが、ハードコート層が形成されたフィルムであることを特徴とする、請求項1記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層が、酸素濃度500〜50000ppmの雰囲気中で形成されたものであることを特徴とする、請求項2記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記ハードコート層が、レベリング剤を含んでいることを特徴とする、請求項2または3記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記レベリング剤が、非反応性レベリング剤であることを特徴とする、請求項4記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記光学フィルムは、その表面が表面改質をされたものであり、
前記表面改質が、溶媒処理、アルカリ処理、プラズマ照射処理およびコロナ照射処理からなる群から選択される少なくとも1つの処理によることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前面板を備えた画像表示装置であって、
前記画像表示装置の表面に光学フィルムが配置され、前記光学フィルムと前記前面板とが、層間充填剤を介して貼り合わされており、
前記光学フィルムが、請求項1から6のいずれか一項に記載の光学フィルムであることを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
前記層間充填剤が、活性エネルギー線硬化性樹脂であることを特徴とする、請求項7記載の画像表示装置。
【請求項9】
前面板および光学フィルムを備えた画像表示装置の製造方法であって、
前記光学フィルム表面に、層間充填剤を塗布する塗布工程、および
前記層間充填剤が塗布された光学フィルムと、前記前面板とを貼り合せる貼り合せ工程を含み、
前記光学フィルムが、請求項1から6のいずれか一項に記載の光学フィルムであることを特徴とする画像表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記光学フィルムが、ハードコート層が形成されたハードコートフィルムであり、
前記塗布工程において、前記ハードコート層表面に、前記層間充填剤を塗布することを特徴とする、請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
さらに、前記塗布工程に先立ち、
前記光学フィルムの表面を表面改質する表面改質工程を含み、
前記表面改質工程において、前記表面改質が、溶媒処理、アルカリ処理、プラズマ照射処理およびコロナ照射処理からなる群から選択される少なくとも1つの処理により行われることを特徴とする、請求項9または10記載の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−101274(P2013−101274A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245851(P2011−245851)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】