説明

光学フィルムおよびその製造方法、偏光板、ならびに画像表示装置

【課題】基材フィルム上に微粒子含有層を備える光学フィルムであって、微粒子含有層の厚膜化を伴わずに粗大な粒子に起因する凸状欠陥の発生が十分に抑制または防止されており、良好な表面均質性を有する微粒子含有層を備えた光学フィルムおよびこのような光学フィルムを効率的にかつ低コストで製造する方法を提供する。
【解決手段】基材フィルム101上に、微粒子104を含有する樹脂液より形成される微粒子含有層102を備える光学フィルムであって、微粒子含有層102の平均膜厚hより大きい粒子径を有する微粒子である粗大粒子の割合が、樹脂液に含有される微粒子104全体の2%以下であり、微粒子含有層102の表面が、鋳型の表面を押し当ててなる形状を有する光学フィルム、ならびにこれを適用した偏光板および画像表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材フィルム上に微粒子含有層を備える光学フィルムおよびその製造方法に関する。また本発明は、当該光学フィルムを用いた偏光板および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイパネル、ブラウン管(陰極線管:CRT)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイなどの画像表示装置は、その表示面に外光が映り込むと視認性が著しく損なわれてしまう。このような外光の映り込みを防止するために、表面に微細な凹凸を有し、入射光を散乱させて映り込み像をぼかす防眩フィルムを画像表示装置の表面に配置することが従来行なわれている。
【0003】
防眩フィルムは、たとえば、基材フィルム上に微粒子を分散させた樹脂液を塗工して防眩層を形成することにより製造することができる。しかし、このような微粒子を含有させることにより表面凹凸を付与した防眩フィルムにおいては、微粒子に含まれる粒子径の大きい粗粒子が防眩層表面から突出することに起因する凸状欠陥が生じる場合がある。かかる凸状欠陥は、防眩層表面へ入射する光の過度の散乱を招き、画面全体が白っぽく感じられる、いわゆる白ちゃけやコントラスト低下を生じさせる。また、防眩層表面の面質を悪化させる。したがって、粗粒子が防眩層表面から突出することに起因する凸状欠陥を極力発生させないことが肝要である。
【0004】
特許文献1には、防眩層表面に粒子由来の大きな凸部が形成させることを防止すべく、粒子の平均粒径Rを防眩層の平均膜厚Hで除した値R/Hを0.8以下とすることが開示されている。また、特許文献2には、光拡散層(防眩層)の表面の均質性などを向上させる観点から、光拡散層に含有される透光性微粒子として、粗大粒子(平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子)の割合が全粒子数の1%以下(より好ましくは0.1%以下、さらに好ましくは0.01%以下)であるものを分級操作などにより取得し使用することが好ましい旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−102291号公報
【特許文献2】特開2010−159421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1が提案する平均粒径R/平均膜厚Hを0.8以下にするという手法は、とりわけ平均粒径Rの値と平均膜厚Hの値が近い場合、上記凸状欠陥を解消するための手法として不十分である。一方、凸状欠陥を有効に解消するために、平均膜厚Hを平均粒径Rと比べて十分大きくすると、防眩層の厚膜化により製造コストが増大するとともに、光学フィルムの薄膜化の要求に沿わないものとなる。
【0007】
また、特許文献2が提案する微粒子の粒径分布を制御する手法においては、凸状欠陥の発生が十分に抑制される程度にまで粗大粒子の含有量を低減するためには、分級操作を繰り返す必要があり、製造コストが増大するとともに、製造効率が大きく低下する。
【0008】
本発明の目的は、基材フィルム上に微粒子含有層を備える光学フィルムであって、微粒子含有層の厚膜化を伴わずに粗大な粒子に起因する凸状欠陥の発生が十分に抑制または防止されており、良好な表面均質性を有する微粒子含有層を備えた光学フィルムおよびこのような光学フィルムを効率的にかつ低コストで製造する方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記光学フィルムを適用した偏光板および画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基材フィルム上に、微粒子を含有する樹脂液より形成される微粒子含有層を備える光学フィルムであって、微粒子含有層の平均膜厚hより大きい粒子径を有する微粒子である粗大粒子の割合が、樹脂液に含有される微粒子全体の2%以下(好ましくは0.2%以下)であり、微粒子含有層の表面が、鋳型の表面を押し当ててなる形状を有する光学フィルムを提供する。微粒子含有層は、上記樹脂液の硬化物層であることが好ましい。
【0010】
樹脂液に含有される微粒子の重量平均粒径rと微粒子含有層の平均膜厚hとの比r/hは、好ましくは0.3以上であり、また好ましくは0.9以下である。微粒子含有層に含有される微粒子の最大粒径Rと微粒子含有層の平均膜厚hとの比R/hは、好ましくは2以下である。
【0011】
樹脂液に含有される微粒子の重量平均粒径rは、1μm以上15μm以下であることができ、微粒子含有層の平均膜厚hは、3μm以上20μm以下であることができる。
【0012】
上記鋳型は、鏡面からなる表面を有する鋳型であるか、または凹凸表面を有する鋳型であることが好ましい。本発明の光学フィルムは、微粒子含有層上に積層された反射防止層をさらに備えていてもよい。
【0013】
また本発明は、上記光学フィルムを製造するための方法を提供する。本発明の製造方法は、基材フィルム上に、微粒子を含有する樹脂液を塗工して塗工層を形成する工程と、該塗工層の表面に、鋳型の表面を押し当てる工程と、塗工層の表面に鋳型の表面を押し当てた状態で、塗工層を上記基材フィルム上に固着させることにより、微粒子含有層を形成する工程とを含む。微粒子含有層を形成する工程は、塗工層の表面に鋳型の上記表面を押し当てた状態で、基材フィルム側から活性エネルギー線を照射し、塗工層を硬化させる工程を含むことが好ましい。
【0014】
さらに本発明は、偏光フィルムと、基材フィルム側が該偏光フィルムに対向するように該偏光フィルム上に積層される上記本発明の光学フィルムとを備える偏光板を提供する。
【0015】
さらに本発明は、上記本発明の偏光板と画像表示素子とを備える画像表示装置を提供する。当該画像表示装置において、偏光板は、その微粒子含有層側を外側にして画像表示素子上に配置される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、微粒子含有層における粗大な粒子に起因する凸状欠陥の発生が十分に抑制または防止されており、良好な表面均質性を有する微粒子含有層を備えた光学フィルムを提供できる。このような光学フィルムを、たとえば防眩フィルムや光拡散フィルムなどとして用いた場合には、微粒子含有層表面へ入射する光の過度の散乱を有効に抑制することができ、白ちゃけの発生やコントラストの低下を防止することができる。また、本発明の製造方法によれば、上記のような光学フィルムを効率的にかつ低コストで製造することができる。本発明の光学フィルムは、偏光板や、液晶表示装置等の画像表示装置に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の光学フィルムの好ましい一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の光学フィルムを製造するための装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<光学フィルム>
図1は、本発明の光学フィルムの好ましい例を示す概略断面図である。本発明に係る図1に示される光学フィルム100は、基材フィルム101と、基材フィルム101上に積層された微粒子含有層102とを備える。微粒子含有層102は、透光性樹脂103を基材とする層であって、透光性樹脂103中に透光性の微粒子104が分散されてなる。微粒子含有層102は、微粒子104を含有する樹脂液を基材フィルム101上に塗工することによって形成されるものである。微粒子含有層102の表面(外側表面)は、鋳型の表面を押し当てることによって形成されている。したがって図示されるように、本発明の光学フィルムにおいては、微粒子104中に粗大粒子110(微粒子含有層102の平均膜厚hよりも大きい粒子径を有する微粒子)が含まれている場合であっても、この粗大粒子110における微粒子含有層102表面から突出するはずの部分が上記鋳型の押し当てにより押し潰された状態となるため、粗大粒子110の突出に起因する凸状欠陥が効果的に抑制または防止され、表面均質性に優れたものとなる。
【0019】
本発明の光学フィルムは、各種用途の画像表示装置用光学フィルムとして使用することができる。たとえば、上記鋳型として凹凸表面を有する鋳型を用いた場合には、微粒子含有層102の表面には凹凸構造が付与されるため、画像表示装置の表面に配置され、ギラツキや外光の映り込みを防止する防眩フィルムとして用いることができる(微粒子含有層102は防眩層として機能する)。また、上記鋳型として鏡面からなる表面を有する鋳型を用いた場合には、微粒子含有層102の表面は平坦面となるが、該表面が凹凸形状および平坦面のいずれの場合においても、画像表示装置の視認側(表面)に配置され、視野角等を改善する光拡散フィルムとして、あるいは、液晶表示装置等のバックライト側に配置され、液晶セルに入射する光を拡散させ、モアレ等を防止する拡散板(または拡散シート)として用いることができる(微粒子含有層102は光拡散層として機能する)。
【0020】
以下、本発明の光学フィルムについて、さらに詳細に説明する。
〔基材フィルム〕
基材フィルム101は透光性のものであればよく、たとえばガラスやプラスチックフィルムなどを用いることができる。プラスチックフィルムとしては適度の透明性、機械強度を有していればよい。具体的には、たとえば、TAC(トリアセチルセルロース)等のセルロースアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。基材フィルム101の厚みは、たとえば10〜500μmであり、光学フィルムの薄膜化等の観点から、好ましくは10〜300μmであり、より好ましくは20〜300μmである。
【0021】
〔微粒子含有層〕
本発明の光学フィルムは、基材フィルム101上に積層された微粒子含有層102を備える。微粒子含有層102は、透光性樹脂103を基材とする層であって、透光性樹脂103中に透光性の微粒子104が分散されてなる。なお、基材フィルム101と微粒子含有層102との間に他の層(接着剤層を含む)を有していてもよい。
【0022】
(1)透光性樹脂
透光性樹脂103としては、透光性を有するものであれば特に限定はなく、たとえば、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂などの活性エネルギー線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂の硬化物、熱可塑性樹脂、金属アルコキシドの硬化物などを用いることができる。この中でも、高い硬度を有し、画像表示装置表面に設ける防眩フィルムや光拡散フィルムとして高い耐擦傷性を付与できることから、活性エネルギー線硬化型樹脂が好適である。活性エネルギー線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂または金属アルコキシドを用いる場合は、活性エネルギー線の照射または加熱により当該樹脂を硬化させることにより透光性樹脂103が形成される。
【0023】
活性エネルギー線硬化型樹脂としては、多官能(メタ)アクリレート化合物を含有するものであることができる。多官能(メタ)アクリレート化合物とは、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。
【0024】
多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、たとえば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物等の(メタ)アクリロイル基を2個以上含む多官能重合性化合物等が挙げられる。
【0025】
多価アルコールとしては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2’−チオジエタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのような2価のアルコール;トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ジペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパンのような3価以上のアルコールが挙げられる。
【0026】
多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物として、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0027】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、1分子中に複数個のイソシアネート基を有するイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体のウレタン化反応物を挙げることができる。1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレリンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の1分子中に2個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート、それら有機イソシアネートをイソシアヌレート変性、アダクト変性、ビウレット変性した1分子中に3個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート等が挙げられる。水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートが挙げられる。
【0028】
ポリエステル(メタ)アクリレート化合物として好ましいものは、水酸基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレートである。好ましく用いられる水酸基含有ポリエステルは、多価アルコールとカルボン酸や複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物のエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルである。多価アルコールとしては前述した化合物と同様のものが例示できる。また、多価アルコール以外にも、フェノール類としてビスフェノールA等が挙げられる。カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、ブチルカルボン酸、安息香酸等が挙げられる。複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物としては、マレイン酸、フタル酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、テレフタル酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、トリメリット酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0029】
以上のような多官能(メタ)アクリレート化合物の中でも、硬化物(被膜)の強度向上や入手の容易性の点から、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のエステル化合物;ヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体;イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体;トリレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体;アダクト変性イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体;およびビウレット変性イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加体が好ましい。さらに、活性エネルギー線硬化型樹脂は、厚膜化したときに良好な可撓性(柔軟性を示す性質)を示すことから、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。これらの多官能(メタ)アクリレート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0030】
活性エネルギー線硬化型樹脂は、上記の多官能(メタ)アクリレート化合物のほかに、単官能(メタ)アクリレート化合物を含有していてもよい。単官能(メタ)アクリレート化合物としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アセチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類を挙げることができる。これらの化合物はそれぞれ単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。
【0031】
活性エネルギー線硬化型樹脂は重合性オリゴマーを含有していてもよい。重合性オリゴマーを含有させることにより、微粒子含有層102の硬度を調整することができる。重合性オリゴマーは、たとえば、前記多官能(メタ)アクリレート化合物、すなわち、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート化合物またはエポキシ(メタ)アクリレート等の2量体、3量体などのようなオリゴマーであることができる。
【0032】
また、その他の重合性オリゴマーとして、分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとの反応により得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを挙げることができる。ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレリンジイソシアネートの重合物等が挙げられ、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化反応によって得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルであって、多価アルコールとして、たとえば、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等であるものが挙げられる。この少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールは、多価アルコールのアルコール性水酸基の一部が(メタ)アクリル酸とエステル化反応しているとともに、アルコール性水酸基が分子中に残存するものである。
【0033】
さらに、その他の重合性オリゴマーの例として、複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物と、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとの反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーを挙げることができる。複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物としては、前記多官能(メタ)アクリレート化合物のポリエステル(メタ)アクリレートで記載したものと同様のものが例示できる。また、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとしては、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーで記載したものと同様のものが例示できる。
【0034】
以上のような重合性オリゴマーに加えて、さらにウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの例として、水酸基含有ポリエステル、水酸基含有ポリエーテルまたは水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの水酸基にイソシアネート類を反応させて得られる化合物が挙げられる。好ましく用いられる水酸基含有ポリエステルは、多価アルコールとカルボン酸や複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物のエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルである。多価アルコールや、複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物としては、それぞれ、多官能(メタ)アクリレート化合物のポリエステル(メタ)アクリレート化合物で記載したものと同様のものが例示できる。好ましく用いられる水酸基含有ポリエーテルは、多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドおよび/またはε−カプロラクトンを付加することによって得られる水酸基含有ポリエーテルである。多価アルコールは、前記水酸基含有ポリエステルに使用できるものと同じものであってよい。好ましく用いられる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、重合性オリゴマーのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーで記載したものと同様のものが例示できる。イソシアネート類としては、分子中に1個以上のイソシアネート基を持つ化合物が好ましく、トリレンジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの2価のイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0035】
これらの重合性オリゴマー化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0036】
熱硬化型樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化型ウレタン樹脂のほか、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。
【0037】
熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体;酢酸ビニルおよびその共重合体、塩化ビニルおよびその共重合体、塩化ビニリデンおよびその共重合体等のビニル系樹脂;ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂;アクリル樹脂およびその共重合体、メタクリル樹脂およびその共重合体等のアクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。
【0038】
金属アルコキシドとしては、珪素アルコキシド系の材料を原料とする酸化珪素系マトリックス等を使用することができる。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等であり、加水分解や脱水縮合により無機系または有機無機複合系マトリックス(透光性樹脂)とすることができる。
【0039】
(2)微粒子
微粒子104としては、透光性を有する限り特に限定されるものではなく従来公知のものが使用できる。たとえば、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、有機シリコーン樹脂、アクリル−スチレン共重合体等からなる有機微粒子や、炭酸カルシウム、シリカ、酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ガラス等からなる無機微粒子などを挙げることができる。また、有機重合体のバルーンやガラス中空ビーズを使用することもできる。これらの微粒子は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。微粒子104の形状は、球状、扁平状、板状、針状、不定形状等のいずれであってもよいが、球状または略球状が好ましい。
【0040】
微粒子104の重量平均粒径rは、好ましくは1μm以上15μm以下であり、より好ましくは4μm以上10μm以下である。重量平均粒径rが1μm未満であると、効果的に内部ヘイズを発現させることができず、防眩フィルムとしてのギラツキ低減効果が不十分になるか、あるいは、光拡散フィルム等としての光拡散性が不十分となる傾向にある。一方、重量平均粒径rが15μmを超えると、これに伴い微粒子含有層102の平均膜厚hも大きく設定される傾向にあるため(この点については後で詳述)、光学フィルムの厚膜化を招きやすい。また、防眩性や光拡散性が過度に高くなることがある。過度の光拡散性は、たとえば、液晶表示装置の視認側表面に光学フィルムを配置した場合、黒表示において、液晶パネルの正面方向に対して斜めに漏れ出してくる光が正面方向へ強く散乱されてしまう等の理由によりコントラストを低下させる。なお、微粒子104の重量平均粒径rは、コールターカウンター法により測定される。
【0041】
微粒子含有層102を形成するための樹脂液に含有される(微粒子含有層102に含有されることとなる)微粒子104は、典型的には、上述した凸状欠陥を生じさせ得る粒子径が大きな粗大粒子を含有するものであるが、その含有割合は、粒子数割合で、樹脂液に含有される微粒子104全体の2%以下であることができ、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.2%以下である。本発明によれば、粗大粒子の割合が微粒子全体の少なくとも2%以下であれば、凸状欠陥の発生を十分に抑制することができ、良好な表面均質性を有する微粒子含有層を備えた光学フィルムを得ることができる。また、粗大粒子含有量の許容範囲が比較的広いので、上記特許文献2に記載されるような分級操作を不要とすることができるか、または簡略化できる。微粒子104全体に占める粗大粒子数の割合は、たとえば1.0×10-9%以上であることができる。ここで、本発明でいう「粗大粒子」とは、微粒子含有層102の平均膜厚hよりも大きい粒子径を有する微粒子をいう。したがって、粗大粒子は、これを含む樹脂液を用いて微粒子含有層を形成したときに、微粒子含有層表面から突出し凸状欠陥を発生させ得る微粒子である。微粒子104全体に占める粗大粒子数の割合は、コールターカウンター法により50000個の粒子について粒子径を測定し、このうち微粒子含有層の平均膜厚hよりも大きい粒子径を有する粒子(粗大粒子)の数をカウントし、これを50000で除することにより求められる。
【0042】
なお、凸状欠陥の存在は、目視による透過または反射観察によって確認することができる。光学顕微鏡や電子顕微鏡などを用いて表面や断面を観察することにより確認してもよい。凸状欠陥のサイズは粗大粒子の粒子径に依存し、通常、粗大粒子の粒子径と略同じか、これより大きいサイズとなる。
【0043】
微粒子104と透光性樹脂103との間の屈折率差は、は0.04〜0.15の範囲が好ましい。屈折率差を上記範囲内とすることによって、当該屈折率差による適度な内部散乱が生じ、十分なギラツキ低減効果または適度な光拡散性を得ることができる。
【0044】
微粒子含有層102における微粒子104の含有量(後述する樹脂液における微粒子104の含有量と実質的に同じである)は、透光性樹脂103の100重量部に対して3重量部以上60重量部以下であることが好ましく、5重量部以上50重量部以下であることがより好ましい。微粒子104の含有量が透光性樹脂100重量部に対して3重量部未満であると、防眩性が不十分になるとともに、ギラツキ低減のための十分な内部ヘイズが得られず、あるいは光拡散性が不十分となる。また、微粒子104の含有量が透光性樹脂100重量部に対して60重量部を超えると、防眩性や光拡散性が過度に高くなり、コントラストが低下する傾向にある。
【0045】
(3)微粒子含有層の平均膜厚
微粒子含有層102の平均膜厚hは、好ましくは3μm以上20μm以下とされ、より好ましくは5μm以上15μm以下とされる。本発明によれば、平均膜厚hが3μm程度と小さい場合であっても、凸状欠陥の発生を良好に抑制することができる。平均膜厚hが極端に小さいと、全微粒子に占める粗大粒子の割合が大きくなり過ぎて、凸状欠陥の発生を十分に抑制できないことがあり、また、光学フィルムの機械強度の面で不利である。一方、微粒子含有層102の平均膜厚hを、20μmを超える程度まで極端に大きくすることは、既述したように、かかる手段によって仮に凸状欠陥の発生を抑えることができたとしても製造コストの増大をもたらし、また、光学フィルムの薄膜化の要求に沿わないものとなる。さらに、平均膜厚hが20μmを超える場合には、作製した光学フィルムに発生するカールの量が大きくなり、他のフィルムや基板への貼合等における取り扱い性が悪くなることがある。微粒子含有層102の「平均膜厚h」とは、光学フィルムの有効範囲幅方向に沿って任意に選択された2点以上の微粒子含有層の膜厚の平均値である。各膜厚値は接触式膜厚計を用いて測定される。
【0046】
微粒子104の重量平均粒径rと微粒子含有層102の平均膜厚hとの比r/hは、好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.5以上である。当該比r/hが0.3を下回ることは、平均膜厚hを大きくすること、または、重量平均粒径rを小さくすることを意味しており、前者の場合、上述の理由から好ましくない。また、後者の場合、防眩フィルムとしてのギラツキ低減効果が不十分になるか、あるいは、光拡散フィルム等としての光拡散性が不十分となる傾向にある。
【0047】
一方、上記比r/hは、好ましくは0.9以下であり、より好ましくは0.85以下である。当該比r/hが0.9を超えることは、平均膜厚hを大きくすること、または、重量平均粒径rを大きくすることを意味しており、前者の場合、上述の理由から好ましくない。また、後者の場合、防眩性や光拡散性が過度に高くなることがある。このように本発明においては、比r/hは0.3〜0.9の範囲内が好適であり、すなわち、本発明は微粒子104の重量平均粒径rと微粒子含有層102の平均膜厚hとが比較的近い場合に好適である。そして、本発明は、このような凸状欠陥が多発しやすい条件下においても凸状欠陥を十分に抑制できるという点において格別の効果を示す。
【0048】
微粒子含有層102に含有される微粒子104の最大粒径R(微粒子含有層102に含有される粗大粒子の最大粒径ともいえる)は特に限定されるものではないが、微粒子含有層102の平均膜厚hとの関係でいえば、最大粒径Rと平均膜厚hとの比R/hは2以下とすることが好ましく、1.8以下とすることがより好ましい。当該比が極端に大きいと、粗大粒子の突出部分の平坦化が不十分となり、良好な表面平滑性が得られないことがあり得る。微粒子含有層102に含有される微粒子104の最大粒径Rとは、鋳型の表面を押し当てることなく微粒子含有層を形成すること以外は同一の方法で作製した光学フィルムについて微粒子含有層表面の顕微鏡観察を行ない、任意の100個の欠陥(微粒子含有層表面からの粗大粒子の突出部分)を選択し、これら100個の欠陥を形成している微粒子の粒子径のうちの最大の粒子径をいう。
【0049】
〔微粒子含有層の表面形状〕
微粒子含有層102の表面形状は、たとえば平坦面からなることができる。このような平坦面は、鋳型として鏡面からなる表面を有する鋳型を用い、微粒子含有層102の表面に該鏡面を転写した転写構造として形成することができる。該転写は、微粒子含有層102を形成する塗工層の表面に鋳型の表面を押し当てることによりなされるので、粗大粒子の塗工層から突出した部分は押し潰されて、結果、凸状欠陥が効果的に抑制または防止される。上述のように、このような平坦面を有する光学フィルムは、光拡散フィルムなどとして機能し得る。
【0050】
微粒子含有層102は表面凹凸を有していてもよい。このような表面凹凸は、鋳型として凹凸表面を有する鋳型を用い、微粒子含有層102の表面に該凹凸表面を転写した転写構造として形成することができる。該転写は、微粒子含有層102を形成する塗工層の表面に鋳型の表面を押し当てることによりなされるので、粗大粒子の塗工層から突出した部分は押し潰されて、結果、凸状欠陥が効果的に抑制または防止される。上述のように、このような表面凹凸を有する光学フィルムは、防眩フィルムや光拡散フィルムなどとして機能し得る。
【0051】
〔光学フィルムのヘイズ〕
本発明の光学フィルムは、全ヘイズが10%以上70%以下であることが好ましく、内部ヘイズもまた10%以上70%以下であることが好ましい。また、微粒子含有層102の表面形状に起因する表面ヘイズは6%以下であることが好ましい。ここで、「全ヘイズ」とは、光学フィルムに光を照射して透過した光線の全量を表す全光線透過率(Tt)と、光学フィルムにより拡散されて透過した拡散光線透過率(Td)との比から下記式(1):
全ヘイズ(%)=(Td/Tt)×100 (1)
により求められる。
【0052】
全光線透過率(Tt)は、入射光と同軸のまま透過した平行光線透過率(Tp)と拡散光線透過率(Td)の和である。全光線透過率(Tt)および拡散光線透過率(Td)は、JIS K 7361に準拠して測定される値である。
【0053】
また、光学フィルムの「内部ヘイズ」とは、全ヘイズのうち、微粒子含有層102の表面形状に起因するヘイズ(表面ヘイズ)以外のヘイズである。
【0054】
全ヘイズおよび/または内部ヘイズが10%未満の場合、防眩性およびギラツキ低減効果、あるいは光拡散性が不十分になる傾向にある。一方、全ヘイズおよび/または内部ヘイズが70%を超える場合は、防眩性や光拡散性が過度に高くなり、コントラストが低下する傾向にある。また、光学フィルムの透明性が損なわれる傾向にある。全ヘイズおよび内部ヘイズはそれぞれ、20%以上65%以下であることが好ましい。微粒子含有層102の表面形状に起因する表面ヘイズが6%を超える場合には、微粒子含有層の表面乱反射により画面全体が白っぽく感じられる白ちゃけが発生しやすくなる。白ちゃけをより効果的に防止するためには、表面ヘイズは3%以下であることが好ましい。
【0055】
光学フィルムの全ヘイズ、内部ヘイズおよび表面ヘイズは、具体的には次のようにして測定される。すなわち、まず、フィルムの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて光学フィルムを、微粒子含有層102が表面となるように、基材フィルム101側をガラス基板に貼合して測定用サンプルを作製し、当該測定用サンプルについて全ヘイズ値を測定する。全ヘイズ値は、JIS K 7136に準拠したヘイズ透過率計(たとえば、株式会社村上色彩技術研究所製のヘイズメーター「HM−150」)を用いて、全光線透過率(Tt)および拡散光線透過率(Td)を測定し、上記式(1)によって算出される。
【0056】
ついで、微粒子含有層102の表面に、ヘイズがほぼ0%であるトリアセチルセルロースフィルムを、グリセリンを用いて貼合し、上述の全ヘイズの測定と同様にしてヘイズを測定する。当該ヘイズは、微粒子含有層102の表面形状に起因する表面ヘイズが貼合されたトリアセチルセルロースフィルムによってほぼ打ち消されていることから、光学フィルムの「内部ヘイズ」とみなすことができる。したがって、光学フィルムの「表面ヘイズ」は、下記式(2):
表面ヘイズ(%)=全ヘイズ(%)−内部ヘイズ(%) (2)
より求められる。
【0057】
〔光学フィルムの製造方法〕
次に、本発明の光学フィルムを製造するための方法について説明する。本発明の光学フィルムは、次の工程(A)〜(C)を含む方法によって好適に(効率的にかつ低コストで)製造することができる。
(A)基材フィルム101上に、微粒子104を含有する樹脂液を塗工して塗工層を形成する工程、
(B)塗工層の表面に、鋳型の表面を押し当てる工程、および
(C)塗工層の表面に鋳型の上記表面を押し当てた状態で、塗工層を基材フィルム101上に固着させることにより、微粒子含有層102を形成する工程。
【0058】
上記工程(A)で用いる樹脂液は、微粒子104、透光性樹脂103またはこれを形成する樹脂(たとえば、活性エネルギー線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂または金属アルコキシド)を含み、および必要に応じて有機溶剤等の溶剤、レベリング剤、分散剤、帯電防止剤、防汚剤等のその他の成分を含んでいてもよい。また、透光性樹脂103を形成する樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いる場合、上記樹脂液は、光重合開始剤(ラジカル重合開始剤)を含む。
【0059】
光重合開始剤としては、たとえば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、オキサジアゾール系光重合開始剤などが用いられる。また、光重合開始剤として、たとえば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアントラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物等も用いることができる。光重合開始剤の使用量は、通常、樹脂液に含有される樹脂100重量部に対して0.5〜20重量部であり、好ましくは、1〜5重量部である。
【0060】
有機溶剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル化グリコールエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のセルソルブ類;2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のカルビトール類などから、粘度等を考慮して選択して用いることができる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、必要に応じて数種類を混合して用いてもよい。塗工後は、上記有機溶剤を蒸発させる必要がある。そのため、沸点は60℃〜160℃の範囲であることが望ましい。また、20℃における飽和蒸気圧は0.1kPa〜20kPaの範囲であることが好ましい。
【0061】
なお、光学フィルムの光学特性および表面形状を均質なものとするために、樹脂液中の微粒子104の分散は等方分散であることが好ましい。
【0062】
上記樹脂液の基材フィルム101上への塗工は、たとえば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ロッドコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、キスコート法、ダイコート法などによって行なうことができる。樹脂液の塗工にあたっては、上述のように、好ましくは、微粒子含有層102の平均膜厚h、微粒子104の重量平均粒径rと平均膜厚hとの比r/hおよび微粒子104の最大粒径Rと平均膜厚hとの比R/hが上記好ましい範囲となるように塗工膜厚を調整して塗工層を形成する。
【0063】
樹脂液の塗工性の改良または微粒子含有層102との接着性の改良を目的として、基材フィルム101の表面(微粒子含有層側表面)には、各種表面処理を施してもよい。表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、酸表面処理、アルカリ表面処理、紫外線照射処理などが挙げられる。また、基材フィルム101上に、たとえばプライマー層等の他の層を形成し、この他の層の上に、樹脂液を塗工するようにしてもよい。
【0064】
また、本発明の光学フィルムを、後述する偏光フィルムの保護フィルムとして使用する場合には、基材フィルム101と偏光フィルムとの接着性を向上させるために、基材フィルム101の表面(微粒子含有層とは反対側の表面)を各種表面処理によって親水化しておくことが好ましい。
【0065】
ついで、上記工程(B)において、塗工層(樹脂液からなる層)の表面に、鋳型の表面を押し当てて、該表面の形状を塗工層表面に転写する。鋳型は、微粒子含有層102表面に所望の形状を付与するためのものであり、当該所望の形状の転写構造からなる表面形状を有している。該表面形状を塗工層表面に押し付けながら塗工層を基材フィルム101上に固着させることにより、鋳型の表面形状を転写できるとともに、粗大粒子の突出部が押し潰される。鋳型としては、鏡面からなる表面を有する鋳型(たとえば鏡面ロール)および凹凸表面を有する鋳型(たとえばエンボスロール)を挙げることができる。
【0066】
鋳型が凹凸表面を有する場合において、凹凸形状のバターンは、規則的なパターンであってもよいし、ランダムパターン、あるいは特定サイズの1種類以上のランダムパターンを敷き詰めた、擬似ランダムパターンであってもよいが、表面形状に起因する反射光の干渉により、反射像が虹色に色づくことを防止する点から、ランダムパターンまたは擬似ランダムパターンであることが好ましい。
【0067】
鋳型の外形形状は特に制限されるものではなく、平板状であってもよいし、円柱状または円筒状のロールであってもよいが、連続生産性の点から、鏡面ロールやエンボスロール等の、円柱状または円筒状の鋳型であることが好ましい。この場合、円柱状または円筒状の鋳型の側面に所定の表面形状が形成される。
【0068】
鋳型の基材の材質は特に制限されるものではなく、金属、ガラス、カーボン、樹脂、あるいはそれらの複合体から適宜選択できるが、加工性等の点から金属が好ましい。好適に用いられる金属材料としては、コストの観点からアルミニウム、鉄、またはアルミニウムもしくは鉄を主体とする合金などが挙げられる。
【0069】
鋳型を得る方法としては、たとえば、基材を研磨し、サンドブラスト加工を施した後、無電解ニッケルめっきを施す方法(特開2006−53371号公報);基材に銅めっきまたはニッケルめっきを施した後、研磨し、サンドブラスト加工を施した後、クロムめっきを施す方法(特開2007−187952号公報);銅めっきまたはニッケルめっきを施した後、研磨し、サンドブラスト加工を施した後、エッチング工程または銅めっき工程を施し、ついでクロムめっきを施す方法(特開2007−237541号公報);基材の表面に銅めっきまたはニッケルめっきを施した後、研磨し、研磨された面に感光性樹脂膜を塗布形成し、該感光性樹脂膜上にパターンを露光した後、現像し、現像された感光性樹脂膜をマスクとして用いてエッチング処理を行ない、感光性樹脂膜を剥離し、さらにエッチング処理を行ない、凹凸面を鈍らせた後、形成された凹凸面にクロムめっきを施す方法;および旋盤等の工作機械を用いて、切削工具により鋳型となる基材を切削する方法(国際公開第2007/077892号パンフレット)等が挙げられる。
【0070】
ランダムパターンまたは擬似ランダムパターンからなる鋳型の表面凹凸形状は、たとえば、FMスクリーン法、DLDS(Dynamic Low−Discrepancy Sequence)法、ブロック共重合体のミクロ相分離パターンを利用する方法またはバンドパスフィルター法等によって生成されたランダムパターンを感光性樹脂膜上に露光、現像し、現像された感光性樹脂膜をマスクとして用いてエッチング処理を行なうことにより形成することができる。
【0071】
次に、上記工程(C)において、塗工層の表面に鋳型の表面を押し当てた状態で、塗工層を基材フィルム101上に固着させて微粒子含有層102を形成し、光学フィルムを得る。具体的には、透光性樹脂103を形成する樹脂として活性エネルギー線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂または金属アルコキシドを用いる場合は、必要に応じて乾燥(溶媒の除去)を行なった後、塗工層表面に鋳型表面を押し当てた状態で、基材フィルム101側から塗工層に対し活性エネルギー線の照射を行なうか(活性エネルギー線硬化型樹脂を用いる場合)または加熱する(熱硬化型樹脂または金属アルコキシドを用いる場合)ことにより、塗工層を硬化させる。活性エネルギー線としては、樹脂液に含まれる樹脂の種類に応じて紫外線、電子線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、X線などから適宜選択することができるが、これらの中で紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが得られることから紫外線が好ましい。
【0072】
紫外線の光源としては、たとえば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も用いることができる。これらの中でも、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンアーク、メタルハライドランプが好ましく用いられる。
【0073】
また、電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線を挙げることができる。
【0074】
一方、透光性樹脂103として熱可塑性樹脂を用いる場合には、必要に応じて乾燥(溶媒の除去)を行なった後、塗工層を軟化または溶融させ、塗工層表面に鋳型表面を押し当て、この状態で塗工層を冷却することにより、鋳型の表面形状が転写された光学フィルムを作製することができる。
【0075】
以上に示される本発明の製造方法によれば、微粒子含有層102を厚膜化することなく(微粒子含有層102の平均膜厚hが微粒子104の重量平均粒径rと比較的近い場合であっても)、また、微粒子の分級などの付加的な操作を実施することなく、凸状欠陥を効果的に低コストで抑制することができる。
【0076】
次に、本発明の光学フィルムを製造するための好ましい実施形態について説明する。当該好ましい実施形態に係る製造方法は、本発明の光学フィルムを連続的に製造するために、ロール状に巻き付けられた基材フィルム101を連続的に送り出す工程、微粒子104および紫外線硬化型樹脂を含有する樹脂液を塗工し、必要に応じて乾燥させる工程、鋳型表面を塗工層表面に押し当てながら塗工層を硬化させる工程、および、得られた光学フィルムを巻き取る工程を含む。かかる製造方法は、たとえば図2に示される製造装置を用いて実施することができる。以下、図2を参照しながら、当該好ましい実施形態に係る製造方法について説明する。
【0077】
まず、巻き出し装置201により基材フィルム101が連続的に巻き出される。ついで、巻き出された基材フィルム101上に、塗工装置202およびこれに対向するバックアップロール203を使用して、微粒子104および紫外線硬化型樹脂を含有する樹脂液が塗工される。次に、樹脂液に溶媒が含まれる場合には、乾燥機204を通過させることにより乾燥される。次に、塗工層が設けられた基材フィルム101は、鏡面金属製ロールまたはエンボス加工用金属製ロール205とニップロール206との間へ、その塗工層が鏡面金属製ロールまたはエンボス加工用金属製ロール205と密着するように巻き掛けられる。これにより、塗工層の表面に鏡面金属製ロールの鏡面またはエンボス加工用金属製ロールの凹凸面が押し付けられ、表面形状が転写される。ついで、基材フィルム101が鏡面金属製ロールまたはエンボス加工用金属製ロール205に巻き掛けられた状態で、基材フィルム101を通して、紫外線照射装置208から紫外線を照射することにより、塗工層を硬化させる。紫外線照射により照射面が高温になることから、鏡面金属製ロールまたはエンボス加工用金属製ロール205は、その表面温度を室温〜80℃程度に調整するための冷却装置をその内部に備えることが好ましい。また、紫外線照射装置208は、1機、もしくは複数機を使用することができる。微粒子含有層102が形成された基材フィルム101(光学フィルム)は、剥離ロール207によって、鏡面金属製ロールまたはエンボス加工用金属製ロール205から剥離される。以上のようにして作製された光学フィルムは、巻き取り装置209へ巻き取られる。この際、微粒子含有層102を保護する目的で、再剥離性を有した粘着剤層を介して、微粒子含有層102表面にポリエチレンテレフタレートやポリエチレン等からなる保護フィルムを貼着しながら巻き取ってもよい。
【0078】
なお、剥離ロール207によって鏡面金属製ロールまたはエンボス加工用金属製ロール205から剥離された後に、追加の紫外線照射を行なってもよい。
【0079】
〔光学フィルムの他の実施形態〕
本発明の光学フィルムは、微粒子含有層102上(基材フィルム101とは反対側の面)に積層された反射防止層をさらに備えていてもよい。反射防止層は微粒子含有層102上に直接形成してもよく、透明フィルム上に反射防止層を形成した反射防止フィルムを別途用意し、これを粘着剤または接着剤を用いて微粒子含有層102に積層してもよい。反射防止層は、反射率を限りなく低くするために設けられるものであり、反射防止層の形成により、表示画面への映り込みをより効果的に防止することができる。反射防止層としては、微粒子含有層102の屈折率よりも低い材料から構成された低屈折率層;微粒子含有層102の屈折率より高い材料から構成された高屈折率層と、この高屈折率層の屈折率より低い材料から構成された低屈折率層との積層構造などを挙げることができる。反射防止フィルムを粘着剤または接着剤を用いて微粒子含有層102に積層する場合、市販の反射防止フィルムを使用できる。
【0080】
<偏光板>
本発明の偏光板は、偏光フィルムと、基材フィルム101側が該偏光フィルムに対向するように該偏光フィルム上に積層される前述の光学フィルムとを備えるものである。偏光フィルムは、入射光から直線偏光を取り出す機能を有するものであって、その種類は特に限定されない。好適な偏光フィルムの例として、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルムを挙げることができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸ビニルのケン化物であるポリビニルアルコールのほか、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、エチレン/酢酸ビニル共重合体のケン化物などが挙げられる。二色性色素としては、ヨウ素または二色性の有機染料が用いられる。また、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物のポリエン配向フィルムも、偏光フィルムとなり得る。偏光フィルムの厚さは、通常5〜80μm程度である。
【0081】
本発明の偏光板は、上記偏光フィルムの片面または両面(通常は片面である)に本発明の光学フィルムを積層したものであってもよく、上記偏光フィルムの一方の面に透明保護層を積層し、他方の面に本発明の光学フィルムを積層したものであってもよい。この際、光学フィルムは、偏光フィルムの透明保護層としての機能も有する。光学フィルムの微粒子含有層102に表面凹凸形状が付与されている場合、この微粒子含有層は防眩層としての機能も有する。透明保護層は、透明樹脂フィルムを、接着剤等を用いて貼合する方法や透明樹脂含有塗工液を塗布する方法などによって偏光フィルム上に形成することができる。同様に、本発明の光学フィルムは、接着剤等を用いて偏光フィルムに貼合することができる。
【0082】
透明保護層となる透明樹脂フィルムは、透明性や機械強度、熱安定性、水分遮蔽性などに優れることが好ましく、このようなものとしては、たとえば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースアセテートなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどの鎖状ポリオレフィン系樹脂;環状ポリオレフィン系樹脂;スチレン系樹脂;ポリサルフォン;ポリエーテルサルフォン;ポリ塩化ビニル系樹脂などからなるフィルムが例示される。これらの透明樹脂フィルムは、光学的に等方性のものであってもよいし、画像表示装置に組み込んだ際の視野角の補償を目的として、光学的に異方性を有するものであってもよい。
【0083】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、上記本発明の偏光板と、種々の情報を画面に映し出す画像表示素子とを組み合わせたものである。本発明の画像表示装置の種類は特に限定されず、液晶パネルを使用した液晶ディスプレイ(LCD)のほか、ブラウン管(陰極線管:CRT)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PDP)、電解放出ディスプレイ(FED)、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、有機ELディスプレイ、レーザーディスプレイ、プロジェクタテレビのスクリーン等が挙げられる。
【0084】
たとえば、本発明の偏光板を液晶セル上に配置して液晶パネルを製造する場合、偏光板は、その微粒子含有層102を外側にして液晶セル上に配置される。他の画像表示装置についても同様である。光学フィルムは、画像表示素子の視認側に配してもよいし、バックライト側に配してもよいし、あるいはその両方に配してもよい。光学フィルムを視認側に配した場合、光学フィルムは、ギラツキや外光の映り込みを防止する防眩フィルムまたは視野角等を改善する光拡散フィルムとして機能する。一方、光学フィルムをバックライト側に配した場合、光学フィルムは、液晶セルに入射する光を拡散させ、モアレ等を防止する拡散板(または拡散シート)として機能する。
【0085】
本発明の画像表示装置は、凸状欠陥の発生が効果的に抑制または防止された光学フィルムを含むものであるため、白ちゃけの発生やコントラストの低下が効果的に抑制されており、視認性に優れる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、微粒子含有層の平均膜厚h、微粒子の重量平均粒径r、標準偏差および最大粒径R、ならびに微粒子全体に占める粗大粒子数の割合の測定方法は、下記のとおりである。
【0087】
(a)微粒子含有層の平均膜厚h
光学フィルムの有効範囲幅方向に沿って5cmおきに基材フィルムと微粒子含有層を含めた総膜厚を、接触式膜厚計〔NIKON社製 DIGIMICRO MH−15(本体)およびZC−101(カウンター)〕を用いて測定してこれらの平均値を算出し、この平均値から、基材フィルムの厚み80μmを差し引くことにより微粒子含有層の平均膜厚hとした。
【0088】
(b)微粒子の重量平均粒径rおよび標準偏差
コールターカウンター法により測定した。
【0089】
(c)微粒子含有層に含有される微粒子の最大粒径R
後述する比較例の光学フィルム等について微粒子含有層表面の顕微鏡観察を行ない、任意の100個の欠陥(微粒子含有層表面からの粗大粒子の突出部分)を選択し、これら100個の欠陥を形成している微粒子の粒子径のうちの最大の粒子径を最大粒径Rとした。
【0090】
(d)微粒子全体に占める粗大粒子数の割合
コールターカウンター法により50000個の粒子について粒子径を測定し、このうち微粒子含有層の平均膜厚hよりも大きい粒子径を有する粒子(粗大粒子)の数をカウントし、これを50000で除することにより粗大粒子数の割合とした。なお、下記実施例3および比較例2で用いたポリスチレン系粒子(実施例1で使用したものと同一)について当該測定方法を適用した場合、粒子径が13μmを超える粗大粒子数の割合は0.002%以下であるが、顕微鏡観察を行なうと、粒子径が13μmを超える粗大粒子が確認できることから、微粒子含有層の平均膜厚hが13μm(実施例3および比較例2)であっても、粗大粒子による凸状欠陥が問題となることがわかる。
【0091】
<実施例1>
ペンタエリスリトールトリアクリレート60重量部、多官能ウレタン化アクリレート(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物)40重量部、微粒子としてのポリスチレン系粒子(重量平均粒径:6.9μm、標準偏差:1.3μm、微粒子全体に占める粒子径が10μmを超える粗大粒子の割合:0.12%、微粒子全体に占める粒子径が13μmを超える粗大粒子の割合:0.002%以下)20重量部、光重合開始剤「ルシリン TPO」(BASF社製、化学名:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)5重量部、および、希釈溶剤としてのプロピレングリコールモノメチルエーテル80重量部を混合し、塗工層となる紫外線硬化性の樹脂液を調製した。
【0092】
上記樹脂液を、厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(基材フィルム)上にダイコーターで塗工して塗工層を形成し、基材フィルムと塗工層との積層体を得た。得られた積層体を乾燥炉で乾燥させた後、表面が鏡面になるように研磨処理したクロムめっきロールを、積層体の塗工層表面にニップロールを用いて押し当て密着させた。この状態で基材フィルム側より、UVAにおける最大照度が700mW/cm2、UVAにおける光積算光量が300mJ/cm2となるように紫外線を照射し、塗工層を硬化させた。その後、クロムめっきロールから積層体を剥離することで、微粒子含有層の平均膜厚hが10μmの光学フィルムを得た。
【0093】
<実施例2>
微粒子として、ポリスチレン系粒子(重量平均粒径:8.2μm、標準偏差:0.6μm、微粒子全体に占める粒子径が10μmを超える粗大粒子の割合:1.6%)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学フィルムを作製した。なお、鋳型の表面を押し当てることなく微粒子含有層を形成すること以外は同一の方法で作製した光学フィルムについて微粒子含有層表面の顕微鏡観察を行ない最大粒径Rを測定したところ、14.2μmであった。
【0094】
<実施例3>
微粒子含有層の平均膜厚hを13μmとしたこと以外は実施例1と同様にして光学フィルムを作製した。
【0095】
<比較例1>
実施例1と同様にして作製した基材フィルムと塗工層との積層体に、転写工程(クロムめっきロールの押し当て)を実施せずに、塗工層側より紫外線を照射したこと以外は実施例1と同様にして光学フィルムを作製した。この光学フィルムについて最大粒径Rを測定したところ、13.5μmであった(したがって、実施例1の光学フィルムにおける最大粒径Rも13.5μmである)。
【0096】
<比較例2>
微粒子含有層の平均膜厚hを13μmとしたこと以外は比較例1と同様にして光学フィルムを作製した。この光学フィルムについて最大粒径Rを測定したところ、13.5μmであった(したがって、実施例3の光学フィルムにおける最大粒径Rも13.5μmである)。
【0097】
[光学フィルムの凸欠陥の評価]
得られた光学フィルムについて、粗大粒子(実施例1、2および比較例1については粒子径が10μmを超える粒子、実施例3および比較例2については粒子径が13μmを超える粒子)の微粒子含有層表面からの突出に起因する凸状欠陥の有無を、目視による透過または反射観察によって確認した。結果を表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
表1に示されるとおり、微粒子含有層の平均膜厚hよりも大きい粒子径を有する粗大粒子の割合を2%以下とし、転写工程を実施した実施例1〜3においては、凸状欠陥の発生を防止することができたが、転写工程を実施しなかった比較例1および2においては、凸状欠陥が発生した。
【符号の説明】
【0100】
100 光学フィルム、101 基材フィルム、102 微粒子含有層、103 透光性樹脂、104 微粒子、110 粗大粒子、201 巻き出し装置、202 塗工装置、203 バックアップロール、204 乾燥機、205 鏡面金属製ロールまたはエンボス加工用金属製ロール、206 ニップロール、207 剥離ロール、208 紫外線照射装置、209 巻き取り装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム上に、微粒子を含有する樹脂液より形成される微粒子含有層を備える光学フィルムであって、
前記微粒子含有層の平均膜厚hより大きい粒子径を有する微粒子である粗大粒子の割合が、前記樹脂液に含有される微粒子全体の2%以下であり、
前記微粒子含有層の表面は、鋳型の表面を押し当ててなる形状を有する光学フィルム。
【請求項2】
前記樹脂液に含有される微粒子の重量平均粒径rと前記微粒子含有層の平均膜厚hとの比r/hが0.3以上である請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記樹脂液に含有される微粒子の重量平均粒径rと前記微粒子含有層の平均膜厚hとの比r/hが0.9以下である請求項1または2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記微粒子含有層に含有される微粒子の最大粒径Rと前記微粒子含有層の平均膜厚hとの比R/hが2以下である請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記樹脂液に含有される微粒子の重量平均粒径rが1μm以上15μm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記微粒子含有層の平均膜厚hが3μm以上20μm以下である請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記微粒子含有層は、前記樹脂液の硬化物層である請求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記粗大粒子の割合が、前記樹脂液に含有される微粒子全体の0.2%以下である請求項1〜7のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記鋳型が鏡面からなる表面を有する鋳型または凹凸表面を有する鋳型である請求項1〜8のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記微粒子含有層上に積層された反射防止層をさらに備える請求項1〜9のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項11】
請求項1に記載の光学フィルムの製造方法であって、
基材フィルム上に、微粒子を含有する樹脂液を塗工して塗工層を形成する工程と、
前記塗工層の表面に、鋳型の表面を押し当てる工程と、
前記塗工層の表面に前記鋳型の前記表面を押し当てた状態で、前記塗工層を前記基材フィルム上に固着させることにより、微粒子含有層を形成する工程と、
を含む光学フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記微粒子含有層を形成する工程は、前記塗工層の表面に前記鋳型の前記表面を押し当てた状態で、前記基材フィルム側から活性エネルギー線を照射し、前記塗工層を硬化させる工程を含む請求項11に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項13】
偏光フィルムと、
前記基材フィルム側が前記偏光フィルムに対向するように、前記偏光フィルム上に積層される請求項1〜10のいずれかに記載の光学フィルムと、
を備える偏光板。
【請求項14】
請求項13に記載の偏光板と、画像表示素子とを備え、
前記偏光板は、その微粒子含有層側を外側にして前記画像表示素子上に配置される画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−98368(P2012−98368A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243980(P2010−243980)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】