説明

光学フィルムおよび画像表示装置

【課題】高温で各種機能層を形成し得る優れた耐熱性と光学特性とを併有する光学フィルムおよびこれを用いた画像表示装置を提供する。
【解決手段】少なくとも2つの六員炭素環(ただし該六員炭素環内に炭素数2以下の橋かけ構造は存在しない)を有するテトラカルボン酸から誘導される構造を含むポリイミドを含有することを特徴とする光学フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性および光学特性に優れた光学フィルムおよび該光学フィルムを用い表示品位に優れた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下「有機EL素子」という)等のフラットパネルディスプレイ分野において、耐破損性の向上、軽量化、薄型化の要望から、基板をガラスからプラスチックに置き換えることが検討されている。特に、携帯電話や、電子手帳、ラップトップ型パソコンなど携帯情報端末などの移動型情報通信機器用表示装置では、プラスチック基板に対する強い要望がある。
【0003】
フラットパネルディスプレイ分野で用いられるプラスチック基板には導電性が要求される。このため、プラスチックフイルム上に、酸化インジウム、酸化錫もしくは錫−インジウム合金の酸化物等の半導体膜や、金、銀、パラジウム合金の酸化膜等の金属膜や、または前記半導体膜と前記金属膜とを組み合わせて形成された膜を透明導電層として設けた透明導電性基板を表示素子の電極基板として用いることが検討されている。
【0004】
前記目的で使用される電極性基板としては、耐熱性の非晶ポリマー、例えば、変性ポリカーボネート(変性PC)(例えば、特許文献1参照)、ポリエーテルスルホン(PES)(例えば、特許文献2参照)、シクロオレフィンコポリマー(例えば、特許文献3参照)からなるプラスチック基板上に透明導電層とガスバリア層とを積層したものが知られている。しかし、このような耐熱性プラスチックを用いてもプラスチック基板として十分な耐熱性が得られなかった。すなわち、これら耐熱性プラスチックを用いたプラスチック基板に導電層を形成させた後、配向膜などの付与のために150℃以上の温度にさらすと導電性やガスバリア性が大きく低下するという問題があった。
【0005】
また、近年、基材フィルムの耐熱性は、アクティブマトリクス型画像素子作製時のTFTを設置するために、さらに高いレベルが要求されている。例えば、特許文献4には、SiH4を含むガスをプラズマ分解することにより300℃もしくはそれ以下の温度で多結晶シリコン膜を形成する方法が記載されている。また特許文献5には、エネルギービームを照射して高分子基板上にアモルファスシリコンと多結晶シリコンとが混合された半導体層を形成する方法が記載されている。また特許文献6には、熱的バッファ層を設け、パルスレーザビームを照射してプラスチック基板上に多結晶シリコン半導体層を形成する方法が記載されている。このように300℃以下でTFT用多結晶シリコン膜を形成する方法は、種々提案されているものの、構成や装置が複雑であり、高コストであるため、300℃〜350℃以上の耐熱性がプラスチック基板に求められている。
【0006】
一方、特許文献7には、脂肪族テトラカルボン酸無水物から誘導されるポリイミドを用いた薄膜トランジスタ基板について記載されている。このポリイミドフィルムは透明性の点では優れているが、耐熱性に優れたTFT用多結晶シリコン膜を形成させるには十分とはいえなかった。したがって、かねてから耐熱性と光学特性とを併有した光学フィルムの開発が望まれていたが、これまで満足のいく光学フィルムは未だ得られていない。
【特許文献1】特開2000−227603号公報(請求項7、[0009]〜[0019])
【特許文献2】特開2000−284717号公報([0010]、[0021]〜[0027])
【特許文献3】特開2001−150584号公報([0027]〜[0039])
【特許文献4】特開平7−81919号公報(請求項3、[0016]〜[0020])
【特許文献5】特表平10−512104号公報(第14〜22頁、図1、図7)
【特許文献6】特開平11−102867号公報(請求項1〜10、[0036])
【特許文献7】特開2003−168800号公報(特許請求の範囲、[0021])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術の課題を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、高温で各種機能層を形成し得る優れた耐熱性と光学特性とを併有する光学フィルムを提供することにある。
【0008】
また、本発明の他の目的は、前記光学フィルムを用い表示品位に優れた画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決するために、ポリイミドの構造につき鋭意検討した結果、ある特定の構造を有するポリイミドで形成されたフィルムが耐熱性と光学特性とを兼ね備えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の目的は、以下の構成を有する光学フィルムにより解決される。
(1) 少なくとも2つの六員炭素環(ただし該六員炭素環内に炭素数2以下の橋かけ構造は存在しない)を有するテトラカルボン酸から誘導される構造を含むポリイミドを含有することを特徴とする光学フィルム。
(2) 前記ポリイミドが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする前記(1)に記載の光学フィルム。
【0011】
【化1】

[一般式(1)中、Aは構成する炭素原子数が12〜30であるビシクロヘキサン構造、構成する炭素原子数が10〜30であるテトラヒドロナフタレン構造、もしくは、構成する炭素原子数が10〜30であるデカヒドロナフタレン構造を含有する4価の連結基を表す。Xは単環式もしくは縮合多環式の芳香族基、または、単環式もしくは縮合多環式の脂肪族基を含有し、かつ、構成する炭素原子数が4〜30である2価の連結基を表す。]
(3) 上記一般式(1)において、Xが剛直性芳香族ジアミンであることを特徴とする前記(2)に記載の光学フィルム。
(4) 厚みが40μmの場合における全光線透過率が80%以上であることを特徴とする前記(1)〜(3)に記載のいずれか一項に記載の光学フィルム。
(5) 少なくとも片面に透明導電層が積層されていることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の光学フィルム。
(6) 少なくとも片面にガスバリア層が積層されていることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の光学フィルム。
(7) 前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の光学フィルムを用いたことを特徴とする画像表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光学フィルムは、優れた耐熱性と光学特性と併有するポリイミドからなる。これにより、本発明によれば、高温で各種機能層を形成し得る優れた耐熱性と光学特性とを併有する光学フィルムを提供することができる。
【0013】
さらに前記光学フィルムを用いた本発明の画像表示素子は、表示品位に優れているという特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の光学フィルムおよび該光学フィルムを用いた画像表示装置について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味として使用される。
【0015】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムは、少なくとも2つの六員炭素環(ただし該六員炭素環内に炭素数2以下の橋かけ構造は存在しない)を有するテトラカルボン酸から誘導される構造を含むポリイミド(以下「本発明におけるポリイミド」とも称する)を含有する光学フィルムである。
【0016】
本発明において「光学フィルム」とは、厚みが10μm〜700μmであり、厚みが40μmの場合における波長420nmの光線透過率が40%以上であり、さらに全光線透過率が同様の厚さの場合において60%以上であるものをいう。
【0017】
(ポリイミド)
以下、本発明におけるポリイミドについて説明する。本発明におけるポリイミドは少なくとも2つの六員炭素環(ただし該六員炭素環内に炭素数2以下の橋かけ構造は存在しない)を含むテトラカルボン酸を、少なくとも単量体の一部に使用したポリイミドである。本明細書において、「六員炭素環」とは、6つの炭素原子が環状に結合したシクロヘキサン骨格を意味し、不飽和結合の有無や骨格を形成している炭素原子に結合している原子種や原子数は問わない。また、該六員炭素環の環内には、炭素数2以下の橋かけ構造は存在しない。このため、ビシクロ[2.2.2]オクタン環などは、本明細書でいう六員炭素環には含まれない。
テトラカルボン酸に含まれる六員炭素環の数は2以上であるが、2〜4が好ましく、2〜3が更に好ましい。本発明におけるポリイミド中の前記テトラカルボン酸成分の含有量としては、全量を1モルとした場合、0.1〜1.0モルが好ましく、0.5〜1.0モルが更に好ましい。
【0018】
本発明におけるポリイミドは、一般式(1)に表される繰り返し単位を有することが好ましい。
【0019】
【化2】

【0020】
一般式(1)中、Aは構成する炭素原子数が12〜30であるビシクロヘキサン構造、構成する炭素原子数が10〜30であるテトラヒドロナフタレン構造、若しくは、構成する炭素原子数が10〜30であるデカヒドロナフタレン構造を含有する4価の連結基を表す。
前記ビシクロヘキサン構造の炭素原子数としては、12〜24が好ましく、12〜18が更に好ましい。前記ビシクロヘキサン構造としては、置換または無置換のビシクロヘキサン、置換または無置換のテルシクロヘキサン等が挙げられ、ビシクロヘキサンが好ましい。
前記テトラヒドロナフタレン構造の炭素原子数としては、10〜20が好ましく、10〜16が更に好ましい。前記テトラヒドロナフタレン構造としては、置換または無置換のテトラヒドロナフタレンが挙げられ、テトラヒドロナフタレンが好ましい。
前記デカヒドロナフタレン構造の炭素原子数としては、10〜20が好ましく、10〜16が更に好ましい。前記デカヒドロナフタレン構造としては、置換または無置換のデカヒドロナフタレン等が挙げられ、デカヒドロナフタレンが好ましい。
【0021】
一般式(1)中、Xは単環式もしくは縮合多環式の芳香族基、または、単環式もしくは縮合多環式の脂肪族基を含有し、かつ、構成する炭素原子数が4〜30である2価の連結基を表す。即ち、前記Xは、炭素原子数が4〜30であり且つ単環式もしくは縮合多環式の芳香族基を含有する2価の連結基、または、炭素原子数が4〜30であり且つ単環式もしくは縮合多環式の脂肪族基を含有する2価の連結基を表す。
前記Xとして好ましくは、芳香族基を含有し構成する炭素原子数が6〜28である2価の連結基、あるいは、単環式もしくは縮合多環式の脂肪族基を含有し構成する炭素原子数が4〜20である2価の連結基である。さらに好ましくは、芳香族基を含有し構成する炭素原子数が7〜28である2価の連結基、あるいは、単環式脂肪族基を含有し構成する炭素原子数が4〜12である2価の連結基、縮合多環式脂肪族基を含有し構成する炭素原子数が7〜20である2価の連結基、である。特に好ましくは、芳香族基を含有し構成する炭素原子数が12〜28である2価の連結基であり、剛直性芳香族ジアミンが最も好ましい。
【0022】
前記単環式もしくは縮合多環式の芳香族基の環構造の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピリジン環、ピラジン環、ベンゾフラン環、カルバゾール環などが挙げられ、中でもベンゼン環、ナフタレン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。また、前記単環式もしくは縮合多環式の脂肪族基の環構造の例としては、シクロブタン環、シクロヘキサン環、ビシクロヘプタン環、ビシクロオクタン環、アダマンタン環、ジアマンタン環、モルホリン環などが挙げられ、中でもシクロブタン環、ビシクロヘプタン環、ビシクロオクタン環が好ましい。
【0023】
Xは前記環構造1つから構成されていてもよいし、複数の環構造を有するものでもよい。前記Xが複数の環構造を有する場合、該複数の環構造は単結合で結合されていてもよいし、環を連結する基(カルボニル基、メチレン基、エーテル基など)で連結されていてもよい。高いTgを有し、かつ、フィルムとしての良好な特性を有するポリイミドを得るためには、2つ以上のベンゼン環が直接結合したビフェニルあるいはターフェニルが特に好ましい。
【0024】
本発明におけるポリイミドは、前記一般式(1)で表される繰り返し単位のモル百分率をiとした場合、50≦i≦100モル%であることが好ましく、60≦i≦100モル%であることがより好ましく、80≦i≦100モル%であることがさらに好ましい。
【0025】
本発明におけるポリイミドは、炭素原子数が12〜30であるビシクロヘキサン構造、構成する炭素原子数が10〜30であるテトラヒドロナフタレン構造、若しくは、構成する炭素原子数が10〜30であるデカヒドロナフタレン構造を含有するテトラカルボン酸およびその誘導体としての酸無水物、酸塩化物、エステル化物等(以下「特定構造を含有するテトラカルボン酸類」という)と、芳香族ジアミンまたは脂肪族ジアミン(以下「ジアミン類」という)とを用いて合成することができる。本発明におけるポリイミドは、耐熱性や透明性等の特性を調整する目的で、複数の特定構造を含有するテトラカルボン酸類およびジアミン類を用いて合成することもできる。さらに、本発明におけるポリイミドは、特定構造を含有するテトラカルボン酸類以外のテトラカルボン酸類(以下「その他のテトラカルボン酸類」という)を本発明の効果を損ねない範囲で共重合してもよい。
【0026】
特定構造を含有するテトラカルボン酸類をカルボン酸構造として例示すると次のようなものが挙げられる。
例えば、ビシクロヘキサン−3,3',4,4'−テトラカルボン酸、ビシクロヘキサン−2,3,3',4'−テトラカルボン酸、テトラヒドロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸、デカヒドロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸等が挙げられる。
【0027】
その他のテトラカルボン酸類をカルボン酸構造として例示すると次のようなものが挙げられる。
例えば、(トリフルオロメチル)ピロメリット酸、ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸、ジ(フェニル)ピロメリット酸、ペンタフルオロエチルピロメリット酸、ビス〔3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェノキシ〕ピロメリット酸、2,3,3',4'−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3',4,4'−テトラカルボキシジフェニルエーテル、2,3',3,4'−テトラカルボキシジフェニルエーテル、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、3,3',4,4'−テトラカルボキシジフェニルメタン、3,3',4,4'−テトラカルボキシジフェニルスルホン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、5,5'−ビス(トリフルオロメチル)−3,3',4,4'−テトラカルボキシビフェニル、2,2',5,5'−テトラキス(トリフルオロメチル)−3,3',4,4'−テトラカルボキシビフェニル、5,5'−ビス(トリフルオロメチル)−3,3',4,4'−テトラカルボキシジフェニルエーテル、5,5'−ビス(トリフルオロメチル)−3,3',4,4'−テトラカルボキシベンゾフェノン、ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸、2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン、シクロブタンテトラカルボン酸、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)テトラメチルジシロキサン、ジフルオロピロメリット酸、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)テトラフルオロベンゼン、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシトリフルオロフェノキシ)オクタフルオロビフェニル、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、ピロリジン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,3,5,6−テトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2,3,5,6−テトラカルボン酸などが挙げられる。
【0028】
本発明におけるポリイミドの合成において用いられるジアミン類としては、芳香族ジアミンおよび脂肪族ジアミンが挙げられる。芳香族ジアミンの例としては、次のようなものが挙げられる。
例えば、p−フェニレンジアミン、ベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、オクタフルオロベンジジン、3,3'−ジヒドロキシ−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジフルオロ−4,4'−ジアミノビフェニル、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフロオロプロパン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3'−ジアミノ−ジフェニルエーテル、3,3'−ジアミノ−ビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。また、脂肪族ジアミンの例としては、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、2,2−ジメチル−プロピレンジアミン、5−アミノ−1,3,3,−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、3(4),8(9)−ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.0]デカン等が挙げられる。
【0029】
前記ジアミン類としては、Tgを高くしたり、線熱膨張係数低下させるために剛直性芳香族ジアミンをジアミン成分の主成分とすることが好ましい。
【0030】
ここで「剛直性芳香族ジアミン」とは、エーテル基、メチレン基、2,2−プロピリデン基、ヘキサフルオロプロピリデン基、シクロへキシリデン基、カルボニル基等の屈曲基を主鎖中に含まず、主鎖の結合角が変化しないので、運動性の低いジアミンを意味する。剛直性芳香族ジアミンの例としては、p−フェニレンジアミン、ベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、オクタフルオロベンジジン、3,3'−ジメチル−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジメトキシ−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジクロロ−4,4'−ジアミノビフェニル、3,3'−ジフルオロ−4,4'−ジアミノビフェニル、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、3,3'−ジアミノ−ビフェニル等を挙げることができ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
一方、前記剛直性芳香族ジアミン以外のジアミンとして「柔軟性芳香族ジアミン」がある。「柔軟性芳香族ジアミン」とは、エーテル基、メチレン基、2,2−プロピリデン基、ヘキサフルオロプロピリデン基、シクロへキシリデン基、カルボニル基等の運動性をもたらし得る屈曲基を主鎖中に含むジアミンのことを意味する。柔軟性芳香族ジアミンの例としては、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフロオロプロパン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン等を挙げることができる。これらの柔軟性芳香族ジアミンを用いるとTgは低下する傾向にあるが、フィルムの濡れ性や接着性、密着性の向上が期待できるために、目的の物性に応じてこれらを少量組み合わせて用いてもよい。
【0032】
本発明におけるポリイミドは、ポリイミド前駆体を経る公知の方法によって合成することができ、例えば以下の方法により合成することができる。なお、ここでいう「ポリイミド前駆体」とは、加熱または化学的作用により閉環してイミド環を形成してポリイミドを生成し得る有機化合物をいい、「ポリイミド前駆体溶液」とは、ポリイミド前駆体を溶剤に溶解した溶液をいう。本発明に用いられるポリイミドフィルムは、ジアミンの溶液に酸二無水物を添加、あるいは酸二無水物の溶液にジアミンを添加してポリアミド酸溶液を得た後、その溶液をガラス板、金属板などの基板上に塗布し、200℃〜350℃に加熱して脱水反応を行うことにより製造される。また、原料を有機溶媒中に添加後、触媒(例としてはトリエチルアミンやピリジンが挙げられる)、共沸剤(例としてはトルエンやキシレンが挙げられる)および脱水剤(例として無水酢酸が挙げられる)などを用いて、ポリイミド溶液を直接調製した後、その溶液をガラス板、金属板などの基板上に塗布し、200℃〜350℃に加熱して溶剤を蒸発させることによっても製造することができる。
【0033】
本発明におけるポリイミドおよびポリイミド前駆体溶液を調製する場合に用いられる溶剤は、ジアミン類およびテトラカルボン酸類、並びに、反応によって生じたポリアミド酸やポリイミドを溶解可能な溶剤であればいかなる溶剤であってもよい。そのような溶剤の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−メトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、メチルイソブチルケトン、2−ブタノン、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、p−クロロフェノール、m−クレゾール等が挙げられ、中でもN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンを用いることが好ましい。溶剤は、単独または二種以上を混合して用いることができる。
【0034】
ここで、ポリアミド酸を経由してポリイミドを合成する方法について記載する。前記ポリイミド前駆体溶液は、溶剤中にジアミン類を溶解した後、ジアミン類1モルに対してテトラカルボン酸類を0.95〜1.05モル加えることによって調製することができる。ここでは、ポリアミド酸を経由してポリイミドを合成する方法の好ましい例として、テトラカルボン酸類の代表例としてテトラカルボン酸無水物を用いた方法について説明する。
【0035】
まず、ジアミン類を溶剤に溶解させた後、得られたジアミン溶液にテトラカルボン酸無水物を添加する。反応温度は−30〜200℃であることが好ましく、20〜180℃であることがより好ましい。ポリイミド前駆体の粘度が一定になった時点を反応の終点とし、これにより本発明におけるポリイミドが得られる。また、重合を促進するためには前記共沸剤を添加するのが好ましい。前記反応は、使用するテトラカルボン酸無水物とジアミン類との種類にもよるが、通常3〜15時間で完了できる。ポリイミド前駆体溶液の溶質濃度は10〜60質量%であることが好ましく、15〜50質量%であることがさらに好ましく、20〜40質量%であることが特に好ましい。
【0036】
ポリイミド前駆体またはポリイミドを合成する際に、分子量の調整や着色防止のためにジカルボン酸類やモノアミンを併用することができる。
本発明におけるポリイミドの分子量は、質量平均分子量で1万〜50万であることが好ましく、1万〜30万であることがより好ましく、2万〜20万であることが特に好ましい。ポリイミドの分子量が1万以上あれば、フィルム成形が可能であり、かつ良好な力学特性を維持しやすいため好ましい。一方、ポリイミドの分子量が50万以下であれば、合成上分子量をコントロールしやすく、また適度な粘度の溶液が得られやすいため好ましい。本発明のポリイミドの分子量はポリイミド溶液またはポリイミド前駆体溶液の粘度を目安にすることができる。
【0037】
本発明におけるポリイミド前駆体を調製する場合における溶液の粘度は、500〜20万mPa・sであることが好ましく、1000〜10万mPa・sであることがより好ましく、2000〜6万mPa・sであることがさらに好ましい。また、本発明におけるポリイミド前駆体を溶液にして用いる場合の濃度は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。ポリイミド前駆体の濃度が10質量%以上であれば、塗工の際の生産性を高めることができる。またポリイミド前駆体の濃度の上限は、ポリイミド前駆体を溶媒に十分に溶解させる観点から80質量%であることが好ましく、70質量%であることがさらに好ましい。
【0038】
本発明におけるポリイミドの耐熱温度は高い方が好ましい。本発明におけるポリイミドの耐熱温度は、DSC測定によるガラス転移温度(Tg)を目安にすることができる。この場合、本発明の光学フィルムを構成するポリイミドのガラス転移温度(Tg)は好ましくは300℃以上であり、より好ましくは320℃以上であり、特に好ましくは350℃以上である。Tgの上限値は高い方が好ましいが、700℃以下であることがより好ましい。
【0039】
以下に一般式(1)で表される繰り返し単位の具体例(P−1〜P−15)を挙げるが、本発明の光学フィルムに用いることができるポリイミドはこれに限定されるものではない。
【0040】
【化3】

【0041】
【化4】

【0042】
【化5】

【0043】
本発明の光学フィルムは、ポリイミド溶液を用いる場合、ポリイミド溶液を基体上に塗工し、剥離することにより得られる。また、ポリイミド前駆体溶液を用いる場合、ポリイミド前駆体溶液を基体上に塗工し、加熱してイミド化すると、ポリイミド塗膜が得られ、さらにポリイミド塗膜を基体から剥離することにより得られる。具体的には、ポリイミド前駆体溶液を従来公知のスピンコート法、スプレーコート法を用い、あるいはスリット状ノズルから押し出し、またはバーコーター等により基体上に塗工し、乾燥して溶媒をある程度除去し、剥離可能になった状態で、膜を基体から剥離し、さらに加熱することにより光学フィルムが得られる。この際の加熱条件の最大温度は200〜400℃であることが好ましく、250〜350℃であることがさらに好ましい。加熱条件が200〜400℃の範囲であれば、イミド化が行いやすく、また熱による塗膜の変形、劣化が起こりにくいため好ましい。
【0044】
本発明の光学フィルムの厚みは、特に規定されないが、好ましくは30〜700μmであり、より好ましくは40〜200μmであり、さらに好ましくは50〜150μmである。また、本発明の光学フィルムは、ヘイズは3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。また本発明のフィルムの全光線透過率は厚み40μmに場合において、80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。また、厚み40μmの場合における波長420nmの光線透過率としては、40%以上が好ましく、50%以上がさらに好ましい
【0045】
本発明の光学フィルムの耐熱温度は高い方が好ましい。光学フィルムの耐熱温度は、DSC測定によるガラス転移温度(Tg)を目安にすることができる。この場合、好ましいTgは300℃以上であり、より好ましくは320℃以上であり、特に好ましくは350℃以上である。
なお、本発明の光学フィルムを本発明におけるポリイミドのみを用いて溶液流延法により作製する場合、乾燥が十分であれば、用いたポリイミドのTgと光学フィルムのTgとの差はほとんどなく、測定誤差範囲内である。
【0046】
本発明の光学フィルムの表面には、用途に応じて他の層または部品との密着性を高めるために、ケン化処理、コロナ処理、火炎処理、グロー放電処理等を行うことができる。さらに、フィルム表面には接着層やアンカー層を形成してもよい。また、表面平滑化のための平滑化層、耐傷性付与のためのハードコート層、耐光性を高めるための紫外線吸収層、フィルムの搬送性を改良させるための表面粗面化層などの公知の機能層を目的に応じて付与することができる。
【0047】
−透明導電層−
本発明の光学フィルムは少なくとも片面に透明導電層を形成することができる。前記透明導電層としては、公知の金属膜や金属酸化物膜等を適用できるが、中でも透明性、導電性および機械特性の観点から、金属酸化物膜であることが好ましい。前記金属酸化物膜としては、例えば、不純物としてスズ、テルル、カドミウム、モリブテン、タングステン、フッ素、亜鉛、ゲルマニウム等を添加した酸化インジウム、酸化カドミウムおよび酸化スズ;不純物としてアルミニウムを添加した酸化亜鉛および酸化チタン;等の金属酸化物膜が挙げられる。中でも酸化スズを主としてなり、酸化亜鉛を2〜15質量%含有した酸化インジウムの薄膜は、透明性および導電性が優れているため好ましく用いられる。
【0048】
前記透明導電層の成膜方法は、目的の薄膜を形成できる方法であれば、いかなる方法でも用いることができる。例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等の気相中より材料を堆積させて膜形成する気相堆積法などが適している。前記透明導電層は、例えば、特許第3400324号公報、特開2002−322561号公報、特開2002−361774号公報等の各々に記載の方法で成膜することができる。中でも、特に優れた導電性・透明性が得られるという観点から、スパッタリング法を用いて製膜することが好ましい。
【0049】
このようなスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法の好ましい真空度は0.133mPa〜6.65Paであり、より好ましくは0.665mPa〜1.33Paである。このような透明導電層を形成する前に、プラズマ処理(逆スパッタ)、コロナ処理のように基材フィルムに表面処理を加えておくこと好ましい。
また透明導電層を設けている間に50〜200℃に昇温してもよい。
【0050】
本発明の光学フィルム上に形成される透明導電層の膜厚は20nm〜500nmであることが好ましく、50nm〜300nmであることがさらに好ましい。
【0051】
本発明の光学フィルム上に形成される透明導電層の25℃・相対湿度60%で測定した表面電気抵抗は、0.1〜200Ω/□であることが好ましく、より好ましくは0.1〜100Ω/□であり、さらに好ましくは0.5〜60Ω/□である。さらに本発明の光学フィルムの透明導電層の光透過性は80%以上であり、83%以上であることが好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。
【0052】
−ガスバリア層−
本発明の光学フィルムは、ガス透過性を抑制するために、ガスバリア層を形成することも好ましい。ガスバリア層としては、例えば特開昭50−12194号公報、特開平8−176326号公報、特開平11−309815号公報、特開2000−6301号公報、特開2002−322561号公報、特開2002−361774号公報、特許第3400324号公報等に記載の無機層、特開昭61−86252号公報等に記載のビニルアルコール系ポリマーが知られている。好ましいガスバリア層としては、例えば、珪素、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、ジルコニウム、チタン、イットリウム、およびタンタルからなる群から選ばれる1種または2種以上の金属を主成分とする金属酸化物や、珪素、アルミニウム、およびホウ素の金属窒化物またはこれらの混合物を挙げることができる。中でも、ガスバリア性、透明性、表面平滑性、屈曲性、膜応力、コスト等の点から珪素原子数に対する酸素原子数の割合が1.5〜2.0の珪素酸化物を主成分とする金属酸化物が好ましい。これら無機のガスバリア層は例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等の気相中より材料を堆積させて膜形成する気相堆積法により作製することができる。中でも、特に優れたガスバリア性が得られるという観点から、スパッタリング法が好ましい。またガスバリア層を形成している間に基材フィルムを50〜200℃に昇温してもよい。
【0053】
本発明の光学フィルム上に形成されるガスバリア層の膜厚は10nm〜300nmであることが好ましく、30nm〜200nmであることがさらに好ましい。
【0054】
ガスバリア層は、基材フィルムの透明導電層が設けられる側と同じ側または反対側いずれに形成してもよいが、透明導電層が設けられる側の反対側に設ける方が好ましい。
【0055】
ガスバリア層が形成された光学フィルムのガスバリア性は、40℃・相対湿度90%で測定した水蒸気透過度が5g/m2・day以下であることが好ましく、1g/m2・day以下であることがより好ましく、0.5g/m2・day以下であることがさらに好ましい。また、40℃・相対湿度90%で測定した酸素透過度は1ml/m2・day・atm以下であることが好ましく、0.7ml/m2・day・atm以下であることがより好ましく、0.5ml/m2・day・atm以下であることがさらに好ましい。
【0056】
−欠陥補償層−
本発明の光学フィルムは、バリア性を向上させる目的で、欠陥補償層を隣接させることが特に望ましい。欠陥補償層としては、(1)米国特許第6,171,663号明細書、特開2003−94572号公報記載のようにゾルゲル法を用いて作製した無機酸化物層を利用する方法、(2)米国特許第6,413,645号の各明細書に記載のように有機物層を利用する方法、また、これらの補償層は、記載のように真空か下で蒸着後、紫外線または電子線で硬化させる方法、あるいは、塗布した後、加熱、電子線、紫外線等で硬化させる事で作製することができる。欠陥補償層を塗布方式で作製する場合には、従来の種々の塗布方法、例えば、スプレーコート法、スピンコート法、バーコート法等の公知の方法を用いることができる。
【0057】
[画像表示装置]
本発明の光学フィルムは、薄膜トランジスタ(TFT)表示素子用基板として用いることができる。TFTアレイの作製方法は、例えば、特表平10−512104号公報に記載された方法等を用いることができる。さらに、これらの基板はカラー表示のためのカラーフィルターを有していてもよい。カラーフィルターは、いかなる方法を用いて作製してもよいが、フォトリソグラフィー手法を用いて作製することが好ましい。
【0058】
本発明の光学フィルムは、必要に応じて各種機能層を設けた上で画像表示装置に用いることができる。ここで、画像表示装置としては特に限定されず、従来知られているものを用いることができる。また、本発明の光学フィルムを用いて表示品質に優れたフラットパネルディスプレイを作製できる。フラットパネルディスプレイとしては、液晶、プラズマディスプレイ、EL、蛍光表示管、発光ダイオードなどが挙げられ、これら以外にも従来ガラス基板が用いられてきたディスプレイ方式のガラス基板に代わる基板として用いることができる。さらに、本発明の光学フィルムは、太陽電池、タッチパネルなどの用途にも利用可能である。タッチパネルは、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公報等に記載のものに応用できる。
【0059】
本発明の光学フィルムを液晶表示用途などに使用する場合には、光学的均一性を達成するために非晶性ポリマーであることが好ましい。また、複屈折が小さい方が好ましく、特に面内レタデーション(Re)が50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることがさらに好ましい。ここでいうReの測定は、フィルムを25℃・相対湿度60%にて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて25℃・相対湿度60%において行う。「Re」はKOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)において波長590±5nmの光をフィルム法線方向に入射させて測定する。
【0060】
液晶表示装置は反射型液晶表示装置と透過型液晶表示装置とに大別される。
前記反射型液晶表示装置は、下から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板および偏光膜からなる。このうち本発明の光学フィルムは、光学特性の調節によりλ/4板および偏光膜用保護フィルムとして用いてもよいが、その耐熱性の観点から基板(上・下基板)としての利用が好ましく、さらには透明性の観点から透明電極および配向膜付上基板として使用することが好ましい。また、必要に応じてガスバリア層、TFTなどを設けることもできる。カラー表示の場合、さらにカラーフィルター層を反射電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。
【0061】
透過型液晶表示装置は、下から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板および偏光膜からなる。このうち本発明の光学フィルムは、光学特性の調節によりλ/4板および偏光膜用保護フィルムとして用いてもよいが、その耐熱性の観点から上基板としての利用が好ましく、透明電極および配向膜付基板として使用することがさらに好ましい。また、必要に応じてガスバリア層、TFTなどを設けることもできる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を下透明電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。
【0062】
液晶セルの表示モードは特に限定されないが、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-P1ane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crysta1)、AFLC(Anti-ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optica1ly Compensated Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertical Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、前記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明の光学フィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
【0063】
これらは特開平2−176625号公報、特公平7−69536号公報、MVA(SID97,Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845、SID99, Digest of tech. Papers (予稿集)30(1999)206)、特開平11−258605号公報、SURVAIVAL(月刊ディスプレイ、第6巻、第3号(1999)14)、PVA(Asia Display 98,Proc. of the-18th-Inter. Display res. Conf.(予稿集)(1998)383)、Para−A(LCD/PDP Iternational`99)、DDVA(SID98, Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)838)、EOC(SID98, Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)319)、PSHA(SID98, Digest of tech. Papers(予稿集)29(1998)1081)、RFFMH(Asia Display 98, Proc. of the-18th-Inter. Display res. Conf. (予稿集)(1998)375)、HMD(SID98, Digest of tech. Papers (予稿集)29(1998)702)、特開平10−123478号公報、国際公開第98/48320号パンフレット、特許第3022477号公報、および国際公開第00/65384号パンフレット等に記載されている。
【0064】
本発明の光学フィルムは、必要に応じてガスバリア層、TFTを設け、透明電極付基板として有機EL表示用途に使用できる。
有機EL表示素子としての具体的な層構成としては、
・陽極/発光層/透明陰極、陽極/発光層/電子輸送層/透明陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/透明陰極
・陽極/正孔輸送層/発光層/透明陰極
・陽極/発光層/電子輸送層/電子注入層/透明陰極
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/透明陰極
等が挙げられる。
【0065】
本発明の光学フィルムが使用できる有機EL素子は、前記陽極と前記陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2〜40ボルト)、または直流電流を印加することにより、発光が得られる。
【0066】
前記の発光素子の駆動については、例えば、特開平2−148687号公報、特開平6−301355号公報、特開平5−29080号公報、特開平7−134558号公報、特開平8−234685号公報、特開平8−241047号公報、米国特許5828429号明細書、同6023308号明細書、日本特許第2784615号公報等に記載された方法を利用することができる。
【実施例】
【0067】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0068】
[実施例1]
1.フィルムの合成
(1)フィルムP−1の合成
温度計、攪拌器、窒素導入管を備えた反応容器にジメチルアセトアミド 160g、2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン 48.0g、デカヒドロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸41.7g、亜燐酸トリフェニル 4.0g、ピリジン 2.0gを添加した。50℃で1時間、次いで80℃で2時間、さらに100℃で8時間加熱して、透明な溶液を得た。この溶液を固形分濃度が10質量%になるようにジメチルアセトアミドで希釈し、メタノール中に添加することによって再沈殿精製を行った。得られた再沈殿精製物をメタノールで洗浄、乾燥してポリマーを得た。
得られたポリマーを20質量%になるようにジメチルアセトアミドに溶解して調製した溶液の粘度は3300mPa・sであった。フィルムアプリケーターを用い、得られた溶液をガラス板上に150μmの厚さで流延し、窒素雰囲気下80℃で2時間、150℃で1時間乾燥後、250℃で30分間、それぞれ加熱し、フィルムP−1を得た。
得られたフィルムP−1のIRスペクトルを測定した結果、波長1700、1770cm-1付近にピークがみられたことから、フィルムP−1はポリイミド(前記具体例P−1)からなるフィルムであることが確認できた。
【0069】
(2)フィルムP−2の合成
フィルムP−1において、「2,2'−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン48.0g」を「2,2'−ジメチルベンジジン31.8g」に、「デカヒドロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸41.7g」を「ビシクロヘキサン−3,3',4,4'−テトラカルボン酸42.0g」に、変更した以外はフィルムP−1の製造方法と同様の方法により、フィルムP−2を作製した。この際、固形分濃度が20質量%になるようにジメチルアセトアミドで溶解して調製した溶液の粘度は3000mPa・sであった。
得られた各フィルムのIRスペクトルを測定した結果、波長1700、1770cm-1付近にピークがみられたことから、フィルムP−2はポリイミド(前記具体例P−2)からなるフィルムであることが確認できた。
【0070】
(3)フィルムP−6の合成
フィルムP−2において、「2,2'−ジメチルベンジジン31.8g」を「3,4'−オキシジアニリン30.0g」に変更した以外はフィルムP−2の製造方法と同様の方法により、フィルムP−6を作製した。この際、固形分濃度が20質量%になるようにジメチルアセトアミドで溶解して調製した溶液の粘度は2800mPa・sであった。
得られた各フィルムのIRスペクトルを測定した結果、波長1700、1770cm-1付近にピークがみられたことから、フィルムP−6はポリイミド(前記具体例P−6)からなるフィルムであることが確認できた。
【0071】
(4)フィルムP−11の合成
フィルムP−1において、「デカヒドロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸41.7g」を「テトラヒドロナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸41.4g」に変更した以外はフィルムP−1の製造方法と同様の方法により、フィルムP−11を作製した。この際、固形分濃度が20質量%になるようにジメチルアセトアミドで溶解して調製した溶液の粘度は3000mPa・sであった。
得られた各フィルムのIRスペクトルを測定した結果、波長1700、1770cm-1付近にピークがみられたことから、フィルムP−11はポリイミド(前記具体例P−11)からなるフィルムであることが確認できた。
【0072】
2.特性値の測定
上記の各フィルムと比較用のフィルムPA−1(特開2003−168800号公報の実施例に記載の化合物)のそれぞれについて、以下の測定を行った。
(1)透明性
得られた各光学フィルム試料の透明性を目視で観察し、色のないものを「良」、色のあるものを「不良」とした。
【0073】
(2)透過率
各光学フィルム試料の全光線透過率(Tt)をスガ試験機(HGM-2DP)により測定した。また、紫外可視分光光度計(島津製作所(株)製、UV−3100PC)により波長420nmでの透過率(T420)を測定した。単位は%で表す。
【0074】
(3)ガラス転移温度(Tg)の測定
DSC(商品名:DSC6200、セイコー(株)製)を用いて、窒素中、昇温温度10℃/分により各光学フィルム試料のTgを測定した。結果を下記表1に示す。
【0075】
(4)耐熱性
得られた光学フィルム試料を真空で320℃、2時間加熱処理しフィルムの変化を目視で観察し、収縮や"なみうち"が殆どないものを「A」、収縮や"なみうち"が僅かなものを「B」、収縮や"なみうち"があるものを「C」とした。
【0076】
【表1】

【0077】
表1から、フィルムP−1、P−2、P−6、P−11は、いずれも透明性に加えて非常に優れた耐熱性を示していることがわかる。また、ジアミン類として剛直性芳香族ジアミンを用いたP−1、P−2、P−11は柔軟性芳香族ジアミンを用いたP−6よりも加熱処理性能(耐熱性)が優れていた。これに対し、比較例1のフィルムPA−1(特開2003−168800号公報の実施例に記載の化合物)は、透明性は十分であるが、Tgが320℃未満であるために加熱試験での耐熱性が十分ではなかった。これより、本発明のフィルムは、耐熱性と透明性とに優れた光学フィルムであることが分かる。
【0078】
[実施例2]
(有機EL素子試料F−1の作製)
1.ガスバリア層の形成
実施例1で作製した光学フィルム試料P−1(フィルムP−1)の両面にDCマグネトロンスパッタリング法により、Siをターゲットとして500Paの真空下で、Ar雰囲気下、酸素を導入し、圧力を0.1Paとし、出力5kWでスパッタリングした。得られたガスバリア層の膜厚は60nmであった。ガスバリア層を形成した光学フィルム試料の40℃・相対湿度90%における水蒸気透過度は0.1g/m2・day以下であり、40℃・相対湿度90%における酸素透過度は0.1ml/m2・day以下であった。
【0079】
2.透明導電層の形成
ガスバリア層を設置した光学フィルム試料を100℃に加熱しながら、ITO(In23 95質量%、Sn02 5質量%)をターゲットとしDCマグネトロンスパッタリング法により、0.665Paの真空下で、Ar雰囲気下、出力5kWで140nmの厚みのITO膜からなる透明導電層を、片面(ガスバリア層が設けられている側の逆側)に設けた。透明導電層を設置した光学フィルム試料の25℃・相対湿度60%における表面電気抵抗は30Ω/□であった。
【0080】
3.透明導電層付光学フィルムの加熱処理
前記で得られた透明導電層を設置した光学フィルム試料を、TFT設置を想定して300℃で1時間加熱処理した。
【0081】
4.有機EL素子の作製
前記で加熱処理を行った透明導電層を形成した光学フィルム試料の透明電極層より、アルミニウムのリード線を結線し、積層構造体を形成した。
透明電極の表面に、ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸の水性分散液(商品名:Baytron P、BAYER社製:固形分1.3質量%)をスピンコートした後、150℃で2時間真空乾燥し、厚さ100nmのホール輸送性有機薄膜層を形成した。これを基板Xとした。
【0082】
一方、厚さ188μmのポリエーテルスルホン(商品名:スミライトFS-1300、住友ベークライト(株)製)からなる仮支持体の片面上に、下記組成を有する発光性有機薄膜層用塗布液を、スピンコーターを用いて塗布し、室温で乾燥することにより、厚さ13nmの発光性有機薄膜層を仮支持体上に形成した。これを転写材料Yとした。
【0083】
〔発光性有機薄膜層用塗布液の組成〕
ポリビニルカルバゾール 40質量部
(Mw=63000、アルドリッチ社製)
トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム錯体 1質量部
(オルトメタル化錯体)
ジクロロエタン 3200質量部
【0084】
基板Xの有機薄膜層の上面に転写材料Yの発光性有機薄膜層側を重ね、一対の熱ローラーを用い160℃、0.3MPa、0.05m/minで加熱・加圧し、仮支持体を引き剥がすことにより、基板Xの上面に発光性有機薄膜層を形成した。これを基板XYとした。
【0085】
また、25mm角に裁断した厚さ50μmのポリイミドフィルム(商品名:UPILEX−50S、宇部興産(株)製)片面上に、パターニングした蒸着用のマスク(発光面積が5mm×5mmとなるマスク)を設置し、約0.1mPaの減圧雰囲気中でAlを蒸着し、膜厚0.3μmの電極を形成した。Al23ターゲットを用いて、DCマグネトロンスパッタリングにより、Al23をAl層と同パターンで蒸着し、膜厚3nmとした。Al電極よりアルミニウムのリード線を結線し、積層構造体を形成した。得られた積層構造体の上に下記組成を有する電子輸送性有機薄膜層用塗布液を、スピンコーター塗布機を用いて塗布し、80℃で2時間真空乾燥することにより、厚さ15nmの電子輸送性有機薄膜層を形成した。これを基板Zとした。
【0086】
〔電子輸送性有機薄膜層用塗布液の組成〕
ポリビニルブチラール2000L 10質量部
(Mw=2000、電気化学工業社製)
1−ブタノール 3500質量部
下記構造を有する電子輸送性化合物 20質量部
【0087】
【化6】

【0088】
基板XYと基板Zとを用い、電極同士が発光性有機薄膜層を挟んで対面するように重ね合せ、一対の熱ローラーを用い160℃、0.3MPa、0.05m/minで加熱・加圧し、貼り合せ、有機EL素子F−1を得た。
【0089】
得られた有機EL素子F−1をソースメジャーユニット2400型(東洋テクニカ(株)製)を用いて、直流電圧を有機EL素子に印加した。この印加によって、本発明の有機EL素子F−1が発光することを確認した。
【0090】
前記実施例より、本発明の光学フィルムは、耐熱性、透明性に優れていることが明らかとなった。また、ガスバリア層、透明導電層を積層可能でTFT工程を想定した加熱処理を行っても有機EL素子用基板フィルムとして機能することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の光学フィルムは、優れた耐熱性および光学特性を併有するため、必要に応じて各種機能層を設けた上で、液晶、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンス(EL)、蛍光表示管、発光ダイオードなどフラットパネルディスプレイなどの画像表示装置に用いることができる。また、本発明の光学フィルムは、太陽電池、タッチパネルなどの用途にも利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの六員炭素環(ただし該六員炭素環内に炭素数2以下の橋かけ構造は存在しない)を有するテトラカルボン酸から誘導される構造を含むポリイミドを含有することを特徴とする光学フィルム。
【請求項2】
前記ポリイミドが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【化1】

[一般式(1)中、Aは構成する炭素原子数が12〜30であるビシクロヘキサン構造、構成する炭素原子数が10〜30であるテトラヒドロナフタレン構造、もしくは、構成する炭素原子数が10〜30であるデカヒドロナフタレン構造を含む4価の連結基を表す。Xは単環式もしくは縮合多環式の芳香族基、または、単環式もしくは縮合多環式の脂肪族基を含有し、かつ、構成する炭素原子数が4〜30である2価の連結基を表す。]
【請求項3】
上記一般式(1)において、Xが剛直性芳香族ジアミンであることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
厚みが40μmの場合における全光線透過率が80%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項5】
少なくとも片面に透明導電層が積層されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項6】
少なくとも片面にガスバリア層が積層されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学フィルムを用いたことを特徴とする画像表示装置。

【公開番号】特開2007−161930(P2007−161930A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362134(P2005−362134)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】