説明

光学フィルムの製造における品種切り替え方法及び光学フィルム

【課題】溶液流延製膜法による光学フィルムの製造における品種切り替えを、短時間にでき、かつ異物の含有量を低減できる品種切り替え方法を提供する。また、当該品種切り替え方法を用いて製造された光学フィルムを提供する。
【解決手段】溶液流延製膜法による光学フィルムの製造における品種切り替え方法であって、ドープの調製工程において、当該ドープの粘度を30〜300%の範囲内で変動させることを特徴とする光学フィルムの製造における品種切り替え方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液流延製膜法による光学フィルムの製造における品種切り替え方法及び当該方法を用いて製造された光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の偏光板の位相差フィルム、偏光子保護フィルム等に用いられている光学フィルムとして、従来、一般に、セルロースエステル樹脂を含有する光学フィルムが用いられている。
【0003】
セルロースエステル樹脂を含有する光学フィルムの製造方法としては、溶液流延製膜法が良く知られている。当該溶液製膜方法では、先ず、ジクロロメタンや酢酸メチルを主溶媒とする混合溶媒にセルロースエステル樹脂及び、紫外線吸収剤、マット剤、リターデーション制御剤、可塑剤等の各種添加剤を混合してドープを調製する。次いで、ドープを流延ダイより支持体上に流延して流延膜を形成する。そして、流延膜が支持体上で自己支持性を有するものとなった後に、支持体から流延膜を湿潤フィルムとして剥ぎ取り、乾燥させた後に製品フィルムとしてロール形態に巻き取る。
【0004】
ところで、樹脂フィルムは、用途に応じた品種を製造する必要がある。しかし、品種毎に溶液製膜設備を備えることは現実的ではなく、一つの溶液製膜設備で複数の品種を製造するのが通常である。溶液製膜設備は、複数の品種を同時には製造することができないものであるので、一つの溶液製膜設備で複数の品種を製造する場合には、まず、一つの品種を製造し、その製造の後に他の品種の製造をする、というように、品種の変更をする。
【0005】
この品種の変更の方法としては、先ず、添加剤の種類や添加量を変更した新たなドープを溶解タンクにて調製する。次に、調製した新たなドープを製膜ラインに流して、この新たなドープで古いドープを置換することによりドープを切り替える、というような方法がある。
【0006】
しかしながら、古いドープを新処方の新たなドープに置換して品種を切り替える方法の場合には、別系統の仕込み装置を設ける必要がなく構成が簡単になるものの、押し出し置換を行い、置換が完了するまでに、配管容量の3倍程度の新たなドープを流す必要がある。このため、押し出し中の時間のロスや製品ロスが大きくなるという問題がある(例えば特許文献1参照)。
【0007】
また、この方法において、時間のロスや製品ロスを少なくしようとすると、品種を切り替える前の品種の成分が幾らか残存し、品種を切り替えた後の品種にとって品質故障を招く異物となってしまうおそれがあることから、このような異物を完全に取り除く必要がある。
【0008】
例えば、参考となる技術として、特許文献2には、流量変動によるフラッシング技術によって異物低減する方法が提案されている。しかしながら、高粘度ドープの置換に対しては、大幅な流量変動は適用しづらく、また、異物低減効果も不十分であることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−100042号公報
【特許文献2】特開2003−88819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、溶液流延製膜法による光学フィルムの製造における品種切り替えを、短時間にでき、かつ異物の含有量を低減できる品種切り替え方法を提供することである。また、当該品種切り替え方法を用いて製造された光学フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0012】
1.溶液流延製膜法による光学フィルムの製造における品種切り替え方法であって、ドープの調製工程において、当該ドープの粘度を30〜300%の範囲内で変動させることを特徴とする光学フィルムの製造における品種切り替え方法。
【0013】
2.前記ドープの温度を−30〜60℃の範囲内で変動させることを特徴とする前記第1項に記載の光学フィルムの製造における品種切り替え方法。
【0014】
3.超音波洗浄工程を有することを特徴とする前記第1項又は第2項に記載の光学フィルムの製造における品種切り替え方法。
【0015】
4.前記第1項から第3項までのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造における品種切り替え方法を用いて製造されたことを特徴とする光学フィルム。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記手段により、溶液流延製膜法による光学フィルムの製造における品種切り替えを、短時間にでき、かつ異物の含有量を低減できる品種切り替え方法を提供することができる。また、当該品種切り替え方法を用いて製造された光学フィルムを提供することができる。
【0017】
本発明では、高粘度ドープの置換方法について、ドープ温度を変動させることで粘度変動させて流動性を変化させ、かつ配管を超音波振動させることで、品種切り替え時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に用いられる溶液流延製膜法のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程を模式的に示した図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の光学フィルムの製造における品種切り替え方法は、溶液流延製膜法による光学フィルムの製造における品種切り替え方法であって、ドープの調製工程において、当該ドープの粘度を30〜300%の範囲内で変動させることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項5までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0020】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記ドープの温度を−30〜60℃の範囲内で変動させることであることが好ましい。さらに、超音波洗浄工程を有することも、異物を完全に除去する観点から、好ましい。
【0021】
本発明の品種切り替え方法は、光学フィルムの製造において好適に用いることができる。
【0022】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0023】
(光学フィルムの製造における品種切り替え方法の概要)
本発明の光学フィルムの製造における品種切り替え方法は、溶液流延製膜法による光学フィルムの製造における品種切り替え方法である。特に、ドープの調製工程において、当該ドープの粘度を30〜300%の範囲内で変動させることを特徴とする。
【0024】
粘度変動が30%未満の場合は、品種切り替え時間が長くなってしまう。反対に、粘度変動が300%より大きい場合は、急激なろ圧の上昇によってフィルターが破損してしまう。
【0025】
ドープの粘度を変動させる方法としては、温度を変化させる方法、溶媒の含有率を変化させる方法等を採用し得る。本発明においては、特に、ドープの温度を変化させる方法が好ましい。この場合、ドープの温度を−30〜60℃の範囲内で変動させることであることが好ましい。
【0026】
例えば、トリアセチルセルロースを主成分として含有するドープの場合、5400〜540000mPa・sの範囲内で変動させる。また、例えば、アクリル樹脂を主成分として含有するドープの場合、2700〜27000mPa・sの範囲内で変動させる。
【0027】
なお、本発明に係る粘度の測定に用いる粘度計は、JIS Z 8809に規定されている粘度計校正用標準液で検定されたものであれば特に制限はなく、回転式、振動式や細管式の粘度計を用いることができる。粘度計としては、Saybolt粘度計、Redwood粘度計等で測定でき、例えば、トキメック社製、円錐平板型E型粘度計、東機産業社製のE Type Viscometer(回転粘度計)、東京計器社製のB型粘度計BL、山一電機社製のFVM−80A、Nametore工業社製のViscoliner、山一電機社製のVISCO MATE MODEL VM−1G等を挙げることができる。
【0028】
本発明においいては、振動式粘度計を用いて測定した。
【0029】
本発明の実施態様としては、異物を完全に除去するために、超音波洗浄工程を有する態様の品種切り替え方法であることも好ましい。
【0030】
当該超音波洗浄工程における超音波の周波数としては、周波数は、10〜500kHzが好ましく、20〜100kHzがより好ましく、更に30〜50kHzが好ましい。
【0031】
本発明においては、当該超音波洗浄工程において、超音波洗浄装置(例えば、新科産業有限会社製 SPC−P型、超音波周波数:40kHz、超音波出力:1000W)を用いて、ドープが通過する配管内に超音波振動を与え、異物を剥離・分離等して洗浄する。なお、洗浄液としては、ドープに含有されている溶媒と同種の溶媒を用いることが好ましい。
【0032】
なお、超音波洗浄工程の後に、遠心分離工程を設けて、更に異物を分離して除去する態様の品種切り替え方法とすることも好ましい。
【0033】
〈セルロースエステル樹脂〉
本発明においては、光学フィルムを構成する成分としてセルロースエステル樹脂を用いることができる。
【0034】
本発明に係る光学フィルムは、セルロースエステルを含有する場合、その含有率は40〜100質量%の範囲内であることが好ましい。
【0035】
本発明において用いることができるセルロースエステル樹脂は、目的に応じて適切なセルロースエステル樹脂を選択することを要するが、脂肪族のアシル基、芳香族のアシル基のいずれで置換されていても良いが、アセチル基で置換されていることが好ましい。
【0036】
本発明に係るセルロースエステル樹脂が、脂肪族アシル基を有するエステルであるとき、脂肪族アシル基は、炭素原子数が2〜20で、具体的には、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ステアロイル等が挙げられる。
【0037】
本発明において前記脂肪族アシル基とは、さらに置換基を有するものも包含する意味であり、置換基としては上述の芳香族アシル基において、芳香族環がベンゼン環であるとき、ベンゼン環の置換基として例示したものが挙げられる。
【0038】
上記セルロースエステル樹脂が、芳香族アシル基とのエステルであるとき、芳香族環に置換する置換基Xの数は0又は1〜5個であり、好ましくは1〜3個で、特に好ましいのは1又は2個である。
【0039】
更に、芳香族環に置換する置換基の数が二個以上の時、互いに同じでも異なっていてもよいが、また、互いに連結して縮合多環化合物(例えばナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリンなど)を形成してもよい。
【0040】
上記セルロースエステル樹脂において置換もしくは無置換の脂肪族アシル基、置換もしくは無置換の芳香族アシル基の少なくともいずれか一種選択された構造を有する構造を有することが、本発明に係るセルロース樹脂に用いる構造として用いられ、これらは、セルロースの単独又は混合酸エステルでもよい。
【0041】
本発明に係るセルロースエステル樹脂の置換度は、アシル基の総置換度(T)が2.00〜3.00である。アセチル基以外のアシル基は、炭素数が3〜7であることが好ましい。
【0042】
本発明に係るセルロースエステル樹脂において、炭素原子数2〜7のアシル基を置換基として有するもの、即ちセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、及びセルロースベンゾエートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0043】
これらの中で特に好ましいセルロースエステル樹脂は、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートが挙げられる。
【0044】
混合脂肪酸として、さらに好ましくは、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートの低級脂肪酸エステルであり、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有するものが好ましい。
【0045】
アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。
【0046】
なお、アセチル基の置換度や他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めたものである。
【0047】
本発明に係るセルロースエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、75000以上であれば、1000000程度のものであっても本発明の目的を達成することができるが、生産性を考慮すると75000〜280000のものが好ましく、100000〜240000のものが更に好ましい。
【0048】
〈アクリル樹脂〉
本発明に係る光学フィルムは、それを構成する成分として、アクリル樹脂を含有することも好ましい。例えば、アクリル樹脂と前記セルロースエステル樹脂を95:5〜30:70の範囲内の質量比で含有することが好ましい。
【0049】
本発明に用いられるアクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。樹脂としては特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、及びこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。
【0050】
共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン、核置換スチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは二種以上を併用して用いることができる。
【0051】
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
【0052】
本発明に係る光学フィルムに用いられるアクリル樹脂は、フィルムとしての機械的強度、フィルムを生産する際の流動性の点から重量平均分子量(Mw)が80000〜1000000であることが好ましい。
【0053】
本発明に係るアクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下の通りである。
【0054】
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2,800,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0055】
本発明におけるアクリル樹脂の製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系及びアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。重合温度については、懸濁又は乳化重合では30〜100℃、塊状又は溶液重合では80〜160℃で実施しうる。さらに、生成共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。
【0056】
この分子量とすることで、耐熱性と脆性の両立を図ることができる。
【0057】
本発明に係るアクリル樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80,BR83,BR85,BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0058】
本発明においては、本発明に係る光学フィルムの構成成分として用いる樹脂フィルム基材としては、上述のアクリル樹脂及びセルロースエステル樹脂以外に、本発明の効果を阻害しない限り、他種の熱可塑性樹脂を併用することもできる。ここで、「熱可塑性樹脂」とは、ガラス転移温度又は融点まで加熱することによって軟らかくなり、目的の形に成形できる樹脂のことをいう。
【0059】
熱可塑性樹脂としては、一般的汎用樹脂としては、ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、テフロン(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン、PTFE)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)、AS樹脂等があり、溶媒に可溶なものを適宜溶解して本発明の方法で処理することが好ましい。
【0060】
また、強度や壊れにくさを特に要求される場合、ポリアミド(PA)、ナイロン、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE、変性PPE、PPO)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)、環状ポリオレフィン(COP)等を用いることができる。
【0061】
更に高い熱変形温度と長期使用できる特性を要求される場合は、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等を用いることができる。
【0062】
なお、本発明の用途にそって樹脂の種類、分子量の組み合わせを行うことが可能である。
【0063】
〈その他の添加剤〉
本発明に係る光学フィルムにおいては、組成物の流動性や柔軟性を向上するために、可塑剤を併用することも可能である。可塑剤としては、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、あるいはエポキシ系等が挙げられる。
【0064】
この中で、ポリエステル系とフタル酸エステル系の可塑剤が好ましく用いられる。ポリエステル系可塑剤は、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステル系の可塑剤に比べて非移行性や耐抽出性に優れるが、可塑化効果や相溶性にはやや劣る。
【0065】
従って、用途に応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用することによって、広範囲の用途に適用できる。
【0066】
ポリエステル系可塑剤は、一価ないし四価のカルボン酸と一価ないし六価のアルコールとの反応物であるが、主に二価カルボン酸とグリコールとを反応させて得られたものが用いられる。代表的な二価カルボン酸としては、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられる。
【0067】
特に、アジピン酸、フタル酸などを用いると可塑化特性に優れたものが得られる。グリコールとしてはエチレン、プロピレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレン、1,6−ヘキサメチレン、ネオペンチレン、ジエチレン、トリエチレン、ジプロピレンなどのグリコールが挙げられる。これらの二価カルボン酸及びグリコールはそれぞれ単独で、あるいは混合して使用してもよい。
【0068】
このエステル系の可塑剤はエステル、オリゴエステル、ポリエステルの型のいずれでもよく、分子量は100〜10000の範囲が良いが、好ましくは600〜3000の範囲が可塑化効果が大きい。
【0069】
また、可塑剤の粘度は分子構造や分子量と相関があるが、アジピン酸系可塑剤の場合相溶性、可塑化効率の関係から200〜5000mPa・s(25℃)の範囲が良い。さらに、いくつかのポリエステル系可塑剤を併用してもかまわない。
【0070】
可塑剤はフィルム基材を含有する組成物100質量部に対して、0.5〜30質量部を添加するのが好ましい。可塑剤の添加量が30質量部を越えると、表面がべとつくので、実用上好ましくない。
【0071】
本発明に係るフィルム基材を含有する組成物は紫外線吸収剤を含有することも好ましく、用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系又はサリチル酸フェニルエステル系のもの等が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
【0072】
ここで、紫外線吸収剤のうちでも、分子量が400以上の紫外線吸収剤は、高沸点で揮発しにくく、高温成形時にも飛散しにくいため、比較的少量の添加で効果的に耐候性を改良することができる。
【0073】
また、特に薄い被覆層から基板層への移行性も小さく、積層板の表面にも析出しにくいため、含有された紫外線吸収剤量が長時間維持され、耐候性改良効果の持続性に優れるなどの点から好ましい。
【0074】
分子量が400以上の紫外線吸収剤としては、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、さらには2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダードフェノールとヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系のものが挙げられ、これらは単独で、あるいは二種以上を併用して使用することができる。これらのうちでも、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾールや2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が特に好ましい。
【0075】
さらに、本発明に係る光学フィルムに用いられるアクリル樹脂には成形加工時の熱分解性や熱着色性を改良するために各種の酸化防止剤を添加することもできる。また帯電防止剤を加えて、光学フィルムに帯電防止性能を与えることも可能である。
【0076】
本発明に係るアクリル樹脂組成物として、リン系難燃剤を配合した難燃アクリル系樹脂組成物を用いても良い。
【0077】
ここで用いられるリン系難燃剤としては、赤リン、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる一種、あるいは二種以上の混合物を挙げることができる。
【0078】
具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
【0079】
本発明では、上記添加剤以外に、リターデーション調整剤、マット剤などの添加剤を加えることもできる。
【0080】
〈光学フィルムの製膜方法〉
本発明の光学フィルムの製造における品種切り替え方法は、溶液流延製膜法による光学フィルムの製造における品種切り替え方法であって、ドープの調製工程において、当該ドープの粘度を30〜300%の範囲内で変動させることを特徴とする。
【0081】
《溶液流延製膜法》
(有機溶媒)
本発明に係る光学フィルムを溶液流延法で製造する場合のドープを形成するのに有用な有機溶媒は、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。
【0082】
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。
【0083】
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系でのアクリル樹脂、セルロースエステル樹脂の溶解を促進する役割もある。
【0084】
特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、アクリル樹脂と、セルロースエステル樹脂と、アクリル粒子(C)の3種を、少なくとも計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
【0085】
炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
【0086】
以下、本発明に係る光学フィルムの好ましい製膜方法について説明する。
【0087】
1)溶解工程
アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂に対する良溶媒を主とする有機溶に、溶解釜中で該アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、場合によってアクリル粒子(C)、その他の添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程、或いは該アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂溶液に、場合によってアクリル粒子(C)溶液、その他の添加剤溶液を混合して主溶解液であるドープを形成する工程である。
【0088】
アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、又は特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
【0089】
ドープ中のアクリル樹脂と、セルロースエステル樹脂は、計15〜45質量%の範囲であることが好ましい。溶解中又は後のドープに添加剤を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。
【0090】
濾過は捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることが好ましい。
【0091】
この方法では、粒子分散時に残存する凝集物や主ドープ添加時発生する凝集物を、捕集粒子径0.5〜5μmでかつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることで凝集物だけ除去できる。主ドープでは粒子の濃度も添加液に比べ十分に薄いため、濾過時に凝集物同士がくっついて急激な濾圧上昇することもない。
【0092】
図1は本発明に好ましい溶液流延製膜方法のドープ調製工程、流延工程及び乾燥工程を模式的に示した図である。
【0093】
必要な場合は、アクリル粒子仕込釜41より濾過器44で大きな凝集物を除去し、ストック釜42へ送液する。その後、ストック釜42より主ドープ溶解釜1へアクリル粒子添加液を添加する。
【0094】
その後主ドープ液は主濾過器3にて濾過され、これに紫外線吸収剤添加液が16よりインライン添加される。
【0095】
多くの場合、主ドープには返材が10〜50質量%程度含まれることがある。返材にはアクリル粒子が含まれることがある、その場合には返材の添加量に合わせてアクリル粒子添加液の添加量をコントロールすることが好ましい。
【0096】
アクリル粒子を含有する添加液には、アクリル粒子を0.5〜10質量%含有していることが好ましく、1〜10質量%含有していることが更に好ましく、1〜5質量%含有していることが最も好ましい。
【0097】
アクリル粒子の含有量の少ない方が、低粘度で取り扱い易く、アクリル粒子の含有量の多い方が、添加量が少なく、主ドープへの添加が容易になるため、上記の範囲が好ましい。
【0098】
返材とは、光学フィルムを細かく粉砕した物で、光学フィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでスペックアウトしたフィルム原反が使用される。
【0099】
また、予めアクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、場合によってアクリル粒子を混練してペレット化したものも、好ましく用いることができる。
【0100】
2)流延工程
ドープを送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイ30に送液し、無限に移送する無端の金属ベルト31、例えばステンレスベルト、或いは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
【0101】
ダイの口金部分のスリット形状を調整出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、何れも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。或いは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
【0102】
3)溶媒蒸発工程
ウェブ(流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブと呼ぶ)を流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
【0103】
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が乾燥効率が良く好ましい。又、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
【0104】
面品質、透湿性、剥離性の観点から、30〜120秒以内で該ウェブを支持体から剥離することが好ましい。
【0105】
4)剥離工程
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。
【0106】
金属支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10〜40℃であり、更に好ましくは11〜30℃である。
【0107】
尚、剥離する時点での金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により50〜120質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損なったり、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易いため、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。
【0108】
ウェブの残留溶媒量は下記式で定義される。
【0109】
残留溶媒量(%)=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100
尚、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
【0110】
金属支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常、196〜245N/mであるが、剥離の際に皺が入り易い場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましく、更には、剥離できる最低張力〜166N/m、次いで、最低張力〜137N/mで剥離することが好ましいが、特に好ましくは最低張力〜100N/mで剥離することである。
【0111】
本発明においては、該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
【0112】
5)乾燥及び延伸工程
剥離後、ウェブを乾燥装置内に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置35、及び/又はクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター延伸装置34を用いて、ウェブを乾燥する。
【0113】
乾燥手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。余り急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥は概ね40〜250℃で行われる。特に40〜160℃で乾燥させることが好ましい。
【0114】
テンター延伸装置を用いる場合は、テンターの左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御できる装置を用いることが好ましい。また、テンター工程において、平面性を改善するため意図的に異なる温度を持つ区画を作ることも好ましい。
【0115】
また、異なる温度区画の間にそれぞれの区画が干渉を起こさないように、ニュートラルゾーンを設けることも好ましい。
【0116】
尚、延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施することも好ましい。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。
【0117】
この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。即ち、例えば、次のような延伸ステップも可能である。
【0118】
・流延方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
・幅手方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
また、同時2軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。同時2軸延伸の好ましい延伸倍率は幅手方向、長手方向ともに×1.01倍〜×1.5倍の範囲でとることができる。
【0119】
テンターを行う場合のウェブの残留溶媒量は、テンター開始時に20〜100質量%であるのが好ましく、かつウェブの残留溶媒量が10質量%以下になる迄テンターを掛けながら乾燥を行うことが好ましく、更に好ましくは5質量%以下である。
【0120】
テンターを行う場合の乾燥温度は、30〜150℃が好ましく、50〜120℃が更に好ましく、70〜100℃が最も好ましい。
【0121】
テンター工程において、雰囲気の幅手方向の温度分布が少ないことが、フィルムの均一性を高める観点から好ましく、テンター工程での幅手方向の温度分布は、±5℃以内が好ましく、±2℃以内がより好ましく、±1℃以内が最も好ましい。
【0122】
6)巻き取り工程
ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってからフィルムとして巻き取り機37により巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
【0123】
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0124】
本発明に係る光学フィルムは、長尺フィルムであることが好ましく、具体的には、100m〜5000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。また、フィルムの幅は1.3〜4mであることが好ましく、1.4〜2mであることがより好ましい。
【0125】
本発明に係る光学フィルムの膜厚に特に制限はないが、後述する偏光板保護フィルムに使用する場合は20〜200μmであることが好ましく、25〜100μmであることがより好ましく、30〜80μmであることが特に好ましい。
【0126】
<偏光板>
偏光板は一般的な方法で作製することができる。本発明に係る光学フィルムの裏面側に粘着層を設け、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、貼り合わせることが好ましい。
【0127】
もう一方の面には、本発明に係る光学フィルムを用いても、別の偏光板保護フィルムを用いてもよい。例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KV8UY−HA、KV8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
【0128】
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
【0129】
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
【0130】
上記粘着層に用いられる粘着剤としては、粘着層の少なくとも一部分において25℃での貯蔵弾性率が1.0×10Pa〜1.0×10Paの範囲である粘着剤が用いられていることが好ましく、粘着剤を塗布し、貼り合わせた後に種々の化学反応により高分子量体又は架橋構造を形成する硬化型粘着剤が好適に用いられる。
【0131】
具体例としては、例えば、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、水性高分子−イソシアネート系粘着剤、熱硬化型アクリル粘着剤等の硬化型粘着剤、湿気硬化ウレタン粘着剤、ポリエーテルメタクリレート型、エステル系メタクリレート型、酸化型ポリエーテルメタクリレート等の嫌気性粘着剤、シアノアクリレート系の瞬間粘着剤、アクリレートとペルオキシド系の二液型瞬間粘着剤等が挙げられる。
【0132】
上記粘着剤としては1液型であっても良いし、使用前に2液以上を混合して使用する型であっても良い。
【0133】
また上記粘着剤は有機溶剤を媒体とする溶剤系であってもよいし、水を主成分とする媒体であるエマルジョン型、コロイド分散液型、水溶液型などの水系であってもよいし、無溶剤型であってもよい。上記粘着剤液の濃度は、粘着後の膜厚、塗布方法、塗布条件等により適宜決定されれば良く、通常は0.1〜50質量%である。
【0134】
<液晶表示装置>
本発明に係る光学フィルムを貼合した偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができる。
【0135】
本発明に係る偏光板は、前記粘着層等を介して液晶セルに貼合する。
【0136】
本発明に係る偏光板は反射型、透過型、半透過型LCD又はTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。特に画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、画面周辺部での白抜け等もなく、その効果が長期間維持される。
【0137】
また、色ムラ、ギラツキや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
【実施例】
【0138】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0139】
実施例1
〈微粒子分散液1〉
微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。
【0140】
〈微粒子添加液1〉
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに十分攪拌しながら、微粒子分散液1をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
【0141】
メチレンクロライド 99質量部
微粒子分散液1 5質量部
[ドープの調製]
下記組成のドープ1を調製した。
【0142】
(ドープ1の組成)
メチレンクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
トリアセチルセルロース(アセチル置換度2.79,重量平均分子量230,000;表中、TACと記載) 100質量部
トリフェニルホスフェート 5質量部
エチルフタリルエチルグリコレート 5質量部
微粒子添加液1 1質量部
以上を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープを調製した。
【0143】
(ドープ2の組成)
次に、下記組成のドープ2を調製した。
【0144】
アクリル樹脂(重量平均分子量:130000(Tg140℃)、重合率97%)
70質量部
セルロースエステル(セルロースアセテートプロピオネート アシル基総置換度2.75、アセチル基置換度0.19、プロピオニル基置換度2.56、Mw=200000)
30質量部
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 40質量部
以上を密閉容器に投入し、攪拌しながら溶解してドープを調製した。
【0145】
(ドープ1の充填)
ドープ1を工場の配管に完全に充填した。
【0146】
(ドープ2による置換)
ドープ1で充填された配管にドープ2を流し始めた。流速は、500L/hrであった。
【0147】
粘度を変動させるために、ドープ2の温度を変化させた。1時間ごとに、ドープ2の温度は、5℃〜60℃の範囲で変動させた。ドープ温度の変更方法は、ドープ2を密閉容器内で調製した後にジャケットにより温度調節したものを払い出すことで変更した。
【0148】
粘度は、インライン型の振動粘度計で計測し、温度変動させたときの粘度変化は、30〜300%であった。
【0149】
[評価]
(品種切り替え時間)
品種切り替え時間は、異物が無くなるまでにかかる時間によって以下のように判断した。
【0150】
◎:異物が無くなるまでにかかる時間が12時間以内
○:異物が無くなるまでにかかる時間が12時間より長く48時間以内
×:異物が無くなるまでにかかる時間が48時間より長い
××:生産性確保できるには程遠い
(フィルター破損)
フィルター破損については、フィルターの破損に伴うメッシュの目開きによる異物の急激な増加の有無により判断した。
【0151】
◎:異物の増加は殆どなく、品質上は十分に良好である
○:異物の増加は僅少であり、品質上は良好である
×:異物が急激に、品質上、問題になるほど多数増加した
実施例2
配管に、超音波洗浄装置(新科産業有限会社製 SPC−P型)を取り付け、ドープが通過する配管内に超音波振動を与え、異物を剥離・分離等して洗浄したこと以外は、調液、充填、粘度変動は実施例1と同様の方法で行った。
【0152】
超音波を付与した際の条件は、超音波周波数:40kHz、超音波出力:1000Wであった。
【0153】
比較例1
置換の際の粘度変動を起こすためのドープ温度変動が、38〜45℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。粘度変動は30%未満であった。
【0154】

比較例2
置換の際の粘度変動を起こすためのドープ温度変動が、38〜45℃としたこと以外は、実施例2と同様の方法で行った。粘度変動は30%未満であった。
【0155】
比較例3
置換の際の粘度変動を起こすためのドープ温度変動が、2〜70℃としたこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。粘度変動は300%より大きかった。
【0156】
比較例4
置換の際の粘度変動を起こすためのドープ温度変動が、2〜70℃としたこと以外は、実施例2と同様の方法で行った。粘度変動は300%より大きかった。
【0157】
評価結果を表1に示す。
【0158】
【表1】

【0159】
表1に示した結果から明らかなように、光学フィルムの製造における品種切り替えの際のドープ置換において、ドープの粘度を30〜300%の範囲で変動させることにより、かつ超音波洗浄工程を設けることにより、品種切り替え時間を短縮することがでることが分かる。
【符号の説明】
【0160】
1 溶解釜
3、6、12、15 濾過器
4、13 ストックタンク
5、14 送液ポンプ
8、16 導管
17 三方弁
10 紫外線吸収剤仕込釜
20 合流管
21 混合機
30 ダイ
31 金属支持体
32 ウェブ
33 剥離位置
34 テンター装置
35 ロール乾燥装置
41 粒子仕込釜
42 ストックタンク
43 ポンプ
44 濾過器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液流延製膜法による光学フィルムの製造における品種切り替え方法であって、ドープの調製工程において、当該ドープの粘度を30〜300%の範囲内で変動させることを特徴とする光学フィルムの製造における品種切り替え方法。
【請求項2】
前記ドープの温度を−30〜60℃の範囲内で変動させることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造における品種切り替え方法。
【請求項3】
超音波洗浄工程を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学フィルムの製造における品種切り替え方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の光学フィルムの製造における品種切り替え方法を用いて製造されたことを特徴とする光学フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2013−22746(P2013−22746A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156463(P2011−156463)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】