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光学フィルムの製造方法、光学フィルム、偏光板及び液晶表示装置
説明

光学フィルムの製造方法、光学フィルム、偏光板及び液晶表示装置

【課題】アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂とを含む光学フィルムであって、偏光子に対する接着性が改善された光学フィルムを提供する。
【解決手段】樹脂溶液2を支持体101a上に流延する流延工程と、支持体101a上で形成されたウェブ3を支持体101aから剥離する剥離工程と、剥離したウェブ3を延伸する延伸工程とを備える光学フィルム5の製造方法であって、樹脂溶液2の樹脂としてアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂とを含み、延伸工程として第1の延伸工程とこの第1の延伸工程の後に行われる第2の延伸工程とを含み、第1の延伸工程におけるウェブ3の長手方向の延伸率と幅方向の延伸率との合計値をAとし、第2の延伸工程におけるウェブ3の長手方向の延伸率と幅方向の延伸率との合計値をBとしたときに、A≦Bである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの製造方法、前記製造方法によって製造された光学フィルム、前記光学フィルムを透明保護フィルムとして用いた偏光板、及び前記偏光板を備えた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置は、液晶テレビやパソコンの液晶ディスプレイ等の用途で需要が拡大してきた。近年では、液晶表示装置の大型化に伴い、街頭や店頭に設置される大型ディスプレイとしての利用や、デジタルサイネージと称される表示機器を用いた公共の場における広告用ディスプレイとしての利用等、用途がさらに多様化している。
【0003】
液晶表示装置は、透明電極、液晶層、カラーフィルター等をガラス板で挟み込んだ構成の液晶セルと、この液晶セルを挟むように液晶セルの両側に配置された2枚の偏光板とを備えている。偏光板は、偏光子(偏光膜、偏光フィルムともいう)と、この偏光子を挟むように偏光子の両側に配置された2枚の透明保護フィルムとを備えている。透明保護フィルムとしては光学フィルム、通常、例えばセルローストリアセテート等のセルロースエステル樹脂のフィルムでなる光学フィルムが用いられる。
【0004】
光学フィルムの製造方法として、溶液流延製膜法が知られている。溶液流延製膜法は、ドープと称される樹脂溶液を無端ベルトやドラム等の支持体の上に流延する流延工程、支持体上で形成されたウェブと称されるドープの流延膜を支持体から剥離する剥離工程、剥離したウェブを長手方向及び/又は幅方向に延伸する延伸工程、延伸したウェブを乾燥する熱処理工程、乾燥したウェブを光学フィルムとして巻き取る巻取工程等を備える。
【0005】
特許文献1には、アクリル系フィルムを溶液流延製膜法で製造する方法が記載され、特許文献2には、セルロースアシレートフィルムを溶液流延製膜法で製造する方法が記載されている。
【0006】
特許文献1に記載されるフィルムはセルロースエステル樹脂を含まず、特許文献2に記載されるフィルムはアクリル樹脂を含まないが、特許文献3には、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂との両方を含む光学フィルムが記載されている。この特許文献3に記載される光学フィルムは、低吸湿性で、透明度が高く、耐候性に優れ、脆性が改善された光学フィルムである。
【0007】
しかし、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂とを含む光学フィルムは、セルロースエステル樹脂のみを含む光学フィルムに比べて、偏光子に対する接着性が不足するという問題が生じた。これは、偏光子がポリビニルアルコール系フィルムで作製され、この偏光子に完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を接着剤として用いて光学フィルムを貼り合わせるので、セルロースエステル樹脂よりもケン化適性が低いアクリル樹脂を含む光学フィルムは、偏光子との接着力が低下するからであろうと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−118266号公報(段落0143)
【特許文献2】特開2009−126081号公報(段落0069)
【特許文献3】国際公開番号WO2009/047924号公報(段落0044)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂とを含む光学フィルムであって、偏光子に対する接着性が改善された光学フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面は、樹脂溶液を支持体上に流延する流延工程と、前記支持体上で形成されたウェブを支持体から剥離する剥離工程と、剥離したウェブを延伸する延伸工程とを備える光学フィルムの製造方法であって、樹脂溶液の樹脂としてアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂とを含み、延伸工程として第1の延伸工程とこの第1の延伸工程の後に行われる第2の延伸工程とを含み、第1の延伸工程におけるウェブの長手方向の延伸率と幅方向の延伸率との合計値をAとし、第2の延伸工程におけるウェブの長手方向の延伸率と幅方向の延伸率との合計値をBとしたときに、A≦Bであることを特徴とする光学フィルムの製造方法である。
【0011】
この光学フィルムの製造方法によれば、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂とを含む光学フィルムが製造される。このような光学フィルムは、低吸湿性で、透明度が高く、耐候性に優れ、脆性が改善された光学フィルムである。そして、このような光学フィルムを製造する際に、第1の延伸工程を行い、その後に第2の延伸工程を行い、その場合に、第1延伸工程におけるウェブの長手方向の延伸率と幅方向の延伸率との合計値(以下これを「第1延伸工程の合計延伸率」、「第1合計延伸率」等と略していう場合がある)をAとし、第2延伸工程におけるウェブの長手方向の延伸率と幅方向の延伸率との合計値(以下これを「第2延伸工程の合計延伸率」、「第2合計延伸率」等と略していう場合がある)をBとしたときに、A≦Bであるから、たとえセルロースエステル樹脂よりもケン化適性が低いアクリル樹脂を含む光学フィルムであっても、偏光子に対する接着性が改善された光学フィルムが得られる。
【0012】
これはおよそ次のような理由によるものであろうと考えられる。すなわち、第1延伸工程に加えて縦横の合計延伸率がより大きい第2延伸工程を追加して行うことにより、光学フィルムの表面にセルロースエステル樹脂が表面配向し、光学フィルムのケン化適性が向上する。その結果、この光学フィルムを、ポリビニルアルコール系フィルムで作製された偏光子に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせたときに、光学フィルムと偏光子との接着力が向上すると推察される。また、第1延伸工程に加えて第2延伸工程を追加して行うことにより、光学フィルムの表面粗さ(算術平均粗さ(Ra)や最大高さ(Rz))が大きくなることも作用しているものと考察される。
【0013】
前記製造方法においては、製造された光学フィルムのボイドのない良好な乾燥性や平面性や膜厚均一性の確保及び弾性率や光学特性の確保の観点から、第1延伸工程の合計延伸率Aが1〜30%であり、第2延伸工程の合計延伸率Bが1〜100%であることが好ましい。ここで、A≦Bであることが前提であるから、例えば、第1合計延伸率Aが1%のときは、第2合計延伸率Bは1〜100%であり、第1合計延伸率Aが30%のときは、第2合計延伸率Bは30〜100%であることはいうまでもない。
【0014】
前記製造方法においては、汎用性や操作の容易さの観点から、延伸工程においてウェブをクリップテンター又はピンテンターで延伸することが好ましい。
【0015】
前記製造方法においては、無理のない延伸を実現し、製造された光学フィルムのボイドのない良好な乾燥性や平面性や膜厚均一性の確保及び弾性率や光学特性の確保の観点から、第1延伸工程を、30℃以上、アクリル樹脂のガラス転移温度とセルロースエステル樹脂のガラス転移温度とのうち高いほうのガラス転移温度αより30℃高い温度α+30℃以下で、1〜30秒間、行い、第2延伸工程を、アクリル樹脂のガラス転移温度とセルロースエステル樹脂のガラス転移温度とのうち低いほうのガラス転移温度βより30℃低い温度β−30℃以上、アクリル樹脂のガラス転移温度とセルロースエステル樹脂のガラス転移温度とのうち高いほうのガラス転移温度αより50℃高い温度α+50℃以下で、1〜30秒間、行うことが好ましい。
【0016】
前記製造方法においては、製造された光学フィルムの用途を考慮し、製造された光学フィルムのカールや皺等を防止する観点から、膜厚が20〜100μmの光学フィルムを製造することが好ましい。
【0017】
前記製造方法においては、良好な耐熱分解性や流動性の確保の観点から、アクリル樹脂は、メチルメタクリレートと、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1つとを共重合させたものであることが好ましい。
【0018】
前記製造方法においては、アクリル樹脂との良好な相溶性の確保及び製造された光学フィルムの高い透明度の確保の観点から、セルロースエステル樹脂は、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースプロピオネート及びセルロースブチレートからなる群より選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
【0019】
本発明の他の一局面は、前述の製造方法によって製造されたことを特徴とする光学フィルムである。この光学フィルムは、低吸湿性で、透明度が高く、耐候性に優れ、脆性が改善された光学フィルムである。そして、光学フィルムの偏光子に対する接着性が改善されている。
【0020】
本発明のさらに他の一局面は、偏光子と、前記偏光子を挟むように偏光子の両側に配置された2枚の透明保護フィルムとを備える偏光板であって、前記2枚の透明保護フィルムのうちの少なくとも一方が、前述の光学フィルムであることを特徴とする偏光板である。この偏光板は、液晶表示装置の大型化要求に良好に対応し得るものである。そして、透明保護フィルムの偏光子に対する接着性が改善されている。
【0021】
本発明のさらに他の一局面は、液晶セルと、前記液晶セルを挟むように液晶セルの両側に配置された2枚の偏光板とを備える液晶表示装置であって、前記2枚の偏光板のうちの少なくとも一方が、前述の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置である。この液晶表示装置は、大型化要求に良好に対応し得るものである。そして、偏光板において、透明保護フィルムの偏光子に対する接着性が改善されている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂とを含む光学フィルムであって、偏光子に対する接着性が改善された光学フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の光学フィルムの製造方法の実施に用いられ得る光学フィルムの製造装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
<光学フィルムの製造装置>
まず、本発明の光学フィルムの製造方法を実施するのに用いられ得る光学フィルムの製造装置について説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係る光学フィルムの製造装置1は、流延装置101と、第1延伸装置102と、第2延伸装置103と、乾燥装置104と、巻取装置105とを備え、流延装置101で形成されたウェブ3を、搬送しつつ、第1延伸装置102で長手方向(搬送方向)及び幅方向(搬送方向に直交する方向)に延伸し、第2延伸装置103で同じく長手方向及び幅方向に追加延伸し、乾燥装置104で乾燥(熱処理)し、巻取装置105で光学フィルムとして巻き取るようになっている。第1延伸装置102と第2延伸装置103との間に乾燥装置を配置してウェブ3を乾燥させるようにしてもよい。
【0027】
[流延装置]
流延装置101は、支持体としての、表面が鏡面仕上げされた金属製の無端ベルト(無端ベルトに代えて、表面が鏡面仕上げされた金属製の円筒ドラム等でもよい。)101aと、樹脂溶液(ドープ)2を無端ベルト101a上に流延するためのダイ101bと、無端ベルト101a上に流延されたドープ2から溶媒を除去するための加熱装置101cと、無端ベルト101a上で形成されたウェブ3を無端ベルト101aから剥離するための剥離ローラ4とを備える。無端ベルト101aは、駆動ローラ101a1と従動ローラ101a2とに巻き掛けられて、図中の矢印方向に走行可能とされている。剥離ローラ4は、無端ベルト101a上にドープ2が流延される側の端部に配置されている。流延装置101は、樹脂溶液(ドープ)2を無端ベルト101a上に流延する流延工程と、無端ベルト101a上で形成されたドープ2の流延膜(ウェブ)3を無端ベルト101aから剥離する剥離工程とを行うものである。
【0028】
ダイ101bから無端ベルト101a上にドープ2が流延されると、ドープ2は無端ベルト101a上でゲル化して流延膜(ウェブ)3を形成する。無端ベルト101a上で形成されたウェブ3は剥離ローラ4によって無端ベルト101aから剥離される。ここで、無端ベルト101a上でのウェブ3の厚さは、巻取装置105で巻き取られた光学フィルムの厚さが所定の厚さとなるように、種々の値に変更可能とされている。なお、無端ベルト101a上でのウェブ3の厚さは、ドープ2の流延量や無端ベルト101aの走行速度等に応じて調整される。
【0029】
加熱装置101cは、乾燥箱101c1と、乾燥箱101c1に配設された第1加熱風供給装置101dと、第2加熱風供給装置101eと、排気口101fとを備える。第1加熱風供給装置101d及び第2加熱風供給装置101eは、それぞれ、加熱風供給管101d1,101e1と、ヘッダー101d2,101e2とを備える。
【0030】
第1加熱風供給装置101d側の無端ベルト101a上のウェブ3の温度及び第2加熱風供給装置101e側の無端ベルト101a上のウェブ3の温度は、それぞれ、溶媒の蒸発に要する時間に基いて決定される無端ベルト101aの走行速度、ドープ2中における微粒子の分散度合、生産性等を考慮して、例えば、−5℃〜70℃の範囲が好ましく、0℃〜60℃の範囲がより好ましい。
【0031】
第1加熱風供給装置101d及び第2加熱風供給装置101eから供給される加熱風の風圧は、溶媒の蒸発の均一性、ドープ2中における微粒子の分散度合等を考慮して、例えば、50Pa〜5000Paの範囲が好ましい。
【0032】
第1加熱風供給装置101d及び第2加熱風供給装置101eは、一定温度の加熱風だけを供給してもよいし、無端ベルト101aの走行方向に沿って複数の温度の加熱風を段階的に供給してもよい。
【0033】
図1に示した加熱装置101cは、ウェブ3を加熱風で加熱して溶媒を除去するものであるが、これに限らず、例えば、ウェブ3を赤外線ヒータで加熱するもの、無端ベルト101aの裏面に加熱風を吹き付けてウェブ3を裏面から加熱するもの等でもよい。
【0034】
無端ベルト101a上にドープ2を流延してから、無端ベルト101aからウェブ3を剥離するまでの時間は、製造された光学フィルムの厚さ、溶媒の種類等に応じて異なるが、無端ベルト101aからの良好な剥離性を考慮して、例えば、0.5分〜5分の範囲が好ましい。
【0035】
無端ベルト101aとしては、表面が鏡面仕上げされたものが好ましく、例えば、鋳物で表面がメッキ仕上げされた金属製の無端ベルトが好ましく用いられる。無端ベルト101aの幅は、製造しようとする光学フィルムの大きさに応じて異なるが、例えば、1700mm〜2700mmの範囲が好ましい。そして、ドープ2を流延する幅は、無端ベルト101aの幅のうちの、例えば、80%〜99%の範囲が好ましい。
【0036】
無端ベルト101a上で形成されたウェブ3を無端ベルト101aから剥離するときのウェブ3の残留溶媒率(剥離時のウェブ3の残留溶媒率)は、無端ベルト101aからのウェブ3の剥離性、剥離後のウェブ3の搬送性、延伸時のテンターによる保持性、製造された光学フィルムの外観や光学特性等を考慮して、例えば、20質量%〜100質量%の範囲が好ましく、35質量%〜90質量%の範囲がより好ましく、45質量%〜80質量%の範囲がさらに好ましい。
【0037】
なお、剥離後に、ウェブ3を第1延伸装置102で延伸開始するときのウェブ3の残留溶媒率(第1延伸装置102による延伸開始時のウェブ3の残留溶媒率)は、延伸時のテンターによる保持性、製造された光学フィルムの外観や光学特性等を考慮して、例えば、20質量%〜100質量%の範囲が好ましく、35質量%〜90質量%の範囲がより好ましく、45質量%〜80質量%の範囲がさらに好ましい。
【0038】
無端ベルト101aからウェブ3を剥離するときにウェブ3に作用する張力(剥離張力)、及び、剥離後にウェブ3を搬送するときにウェブ3に作用する張力(搬送張力)に起因して、ウェブ3は、ウェブ3の搬送方向(Machine Direction:MD方向)に延伸される。このことを考慮して、前記剥離張力及び前記搬送張力は、例えば、50N/m〜400N/mの範囲が好ましい。
【0039】
[第1延伸装置]
第1延伸装置102は、乾燥風取り入れ口102bと排出口102cとを有する外箱102aと、外箱102aの中に入れられたテンター延伸装置102dとを備える。第1延伸装置102は、無端ベルト101aから剥離されたウェブ3を長手方向(搬送方向:MD方向)及び/又は幅方向(搬送方向に直交する方向:Transverse Direction:TD方向)に延伸する第1の延伸工程を行うものである。テンター延伸装置102dに使用するテンターは、特に限定はなく、汎用性や操作の容易さの観点から、例えば、クリップテンター、ピンテンター等が挙げられ、必要に応じて選択し使用することが可能である。しかし、本実施形態では、特に、第1の延伸工程では、ピンテンターを用いる。その理由は、たとえ剥離時ないし第1延伸装置102による延伸開始時のウェブ3の残留溶媒率が20質量%〜100質量%残っており、ウェブ3に柔らかさが残っていても、ウェブ3を突き刺して保持する方式のピンテンターを用いて延伸するから、ウェブ3を把持して保持する方式のクリップテンターを用いて延伸する場合に比べて、ウェブ3の幅方向の側部をしっかりと保持でき、ウェブ3を均一に延伸することが可能だからである。
【0040】
これにより、残留溶媒が比較的高い状態で延伸が可能となり、乾燥性が向上する結果、生産性の向上と、外観や平面性等の光学的品質の向上とが可能となる。
【0041】
テンター延伸装置102dでは、ウェブ3をMD方向及びTD方向に必要に応じて延伸することが可能となっている。なお、乾燥風取り入れ口102bと排出口102cとは、逆であってもよい。第1延伸装置102における溶媒除去手段としては加熱風を使用した場合を示しているが、溶媒除去手段としては特に限定はなく、この他に、例えば赤外線ヒータで加熱する手段等が挙げられる。
【0042】
第1延伸装置102における乾燥条件は、剥離時ないし第1延伸装置102による延伸開始時のウェブ3の残留溶媒率に応じて好適温度が異なるが、乾燥時間、収縮ムラ、伸縮量の安定性等を考慮し、また、無理のない延伸を実現し、製造された光学フィルムのボイドのない良好な乾燥性や平面性や膜厚均一性の確保及び弾性率や光学特性の確保の観点から、30℃以上、アクリル樹脂のガラス転移温度とセルロースエステル樹脂のガラス転移温度とのうち高いほうのガラス転移温度αより30℃高い温度α+30℃以下で、1〜30秒間、より好ましくは10〜20秒間、乾燥を行うことが好ましい。また、一定の温度で乾燥してもよいし、3〜4段階の温度に分けて、数段階の温度に分けて乾燥してもよい。
【0043】
第1延伸装置102においては、製造された光学フィルムのボイドのない良好な乾燥性や平面性や膜厚均一性の確保及び弾性率や光学特性の確保の観点から、ウェブ3のMD方向(搬送方向又は長手方向)の延伸率と、ウェブ3のTD方向(搬送方向と直交する方向又は幅方向)の延伸率との合計値Aが1〜30%、より好ましくは10〜20%であることが好ましい。その場合、第1の延伸工程において、MD方向(搬送方向又は長手方向)の延伸率の比率と、TD方向(搬送方向と直交する方向又は幅方向)の延伸率の比率とは、特に限定されない。例えば、MD方向の延伸率が1〜30%で、TD方向の延伸率がゼロでもよい(ただしマイナスは除く)。その逆に、TD方向の延伸率が1〜30%で、MD方向の延伸率がゼロでもよい(ただしマイナスは除く)。MD方向の延伸率の比率とTD方向の延伸率の比率とは、50:50が好ましい。しかし、0:100〜98:2の範囲で適宜変化してよいものである。ただし、一般に、TD方向の延伸率の比率がMD方向の延伸率の比率よりも大きいことが、乾燥性向上による生産性の向上及び外観や平面性等の光学的品質の向上の観点から望ましい。
【0044】
ここで、第1の延伸工程におけるTD方向の延伸率は、式「第1の延伸工程におけるTD方向の延伸率(%)={(第1の延伸工程後のウェブの幅−第1の延伸工程前のウェブの幅)/第1の延伸工程前のウェブの幅}×100」で求められる。なお、ウェブの幅は、C型JIS1級の鋼製スケールで測定した値である。
【0045】
また、第1の延伸工程におけるMD方向の延伸率は、式「第1の延伸工程におけるMD方向の延伸率(%)={(第1の延伸工程後のウェブの搬送速度−第1の延伸工程前のウェブの搬送速度)/第1の延伸工程前のウェブの搬送速度}×100」で求められる。
【0046】
そして、これらの第1の延伸工程におけるTD方向の延伸率と第1の延伸工程におけるMD方向の延伸率とを足し合わせた値が「第1延伸工程の合計延伸率A」である。
【0047】
第1延伸工程後のウェブ3の残留溶媒率は20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
【0048】
[第2延伸装置]
第2延伸装置103は第1延伸装置102と基本的に構造が同じである。すなわち、第2延伸装置103は、乾燥風取り入れ口103bと排出口103cとを有する外箱103aと、外箱103aの中に入れられたテンター延伸装置103dとを備える。第2延伸装置103は、第1延伸装置102で延伸されたウェブ3をさらに長手方向及び/又は幅方向に追加延伸する第2の延伸工程を行うものである。テンター延伸装置103dに使用するテンターは、特に限定はなく、汎用性や操作の容易さの観点から、例えば、クリップテンター、ピンテンター等が挙げられ、必要に応じて選択し使用することが可能である。しかし、本実施形態では、特に、第2の延伸工程では、ある程度乾燥されたウェブ3の側部を把持して延伸するためにクリップテンターを用いる。
【0049】
テンター延伸装置103dでは、ウェブ3をMD方向及びTD方向に必要に応じて延伸することが可能となっている。なお、乾燥風取り入れ口103bと排出口103cとは、逆であってもよい。第2延伸装置103における溶媒除去手段としては加熱風を使用した場合を示しているが、溶媒除去手段としては特に限定はなく、この他に、例えば赤外線ヒータで加熱する手段等が挙げられる。
【0050】
第2延伸装置103における乾燥条件は、この第2延伸装置103による延伸開始時のウェブ3の残留溶媒率に応じて好適温度が異なるが、乾燥時間、収縮ムラ、伸縮量の安定性等を考慮し、また、無理のない延伸を実現し、製造された光学フィルムのボイドのない良好な乾燥性や平面性や膜厚均一性の確保及び弾性率や光学特性の確保の観点から、アクリル樹脂のガラス転移温度とセルロースエステル樹脂のガラス転移温度とのうち低いほうのガラス転移温度βより30℃低い温度β−30℃以上、アクリル樹脂のガラス転移温度とセルロースエステル樹脂のガラス転移温度とのうち高いほうのガラス転移温度αより50℃高い温度α+50℃以下で、1〜30秒間、より好ましくは10〜20秒間、乾燥を行うことが好ましい。また、一定の温度で乾燥してもよいし、3〜4段階の温度に分けて、数段階の温度に分けて乾燥してもよい。
【0051】
第2延伸装置103においては、製造された光学フィルムのボイドのない良好な乾燥性や平面性や膜厚均一性の確保及び弾性率や光学特性の確保の観点から、ウェブ3のMD方向(搬送方向又は長手方向)の延伸率と、ウェブ3のTD方向(搬送方向と直交する方向又は幅方向)の延伸率との合計値Bが1〜100%、より好ましくは20〜60%であることが好ましい。すなわち、「第1の延伸工程におけるウェブ3のMD方向の延伸率とTD方向の延伸率との合計値(第1延伸工程の合計延伸率)A≦第2の延伸工程におけるウェブ3のMD方向の延伸率とTD方向の延伸率との合計値(第2延伸工程の合計延伸率)B」の条件を満たすように2つの延伸装置102,103でウェブ3を延伸するのである。ここで、例えば、第1延伸工程の合計延伸率Aが1%のときは、第2延伸工程の合計延伸率Bは1〜100%であり、第1延伸工程の合計延伸率Aが30%のときは、第2延伸工程の合計延伸率Bは30〜100%であることはいうまでもない。その場合、第2の延伸工程において、MD方向(搬送方向又は長手方向)の延伸率の比率と、TD方向(搬送方向と直交する方向又は幅方向)の延伸率の比率とは、特に限定されない。例えば、MD方向の延伸率が1〜100%で、TD方向の延伸率がゼロでもよい(ただしマイナスは除く)。その逆に、TD方向の延伸率が1〜100%で、MD方向の延伸率がゼロでもよい(ただしマイナスは除く)。MD方向の延伸率の比率とTD方向の延伸率の比率とは、50:50が好ましい。しかし、0:100〜98:2の範囲で適宜変化してよいものである。ただし、一般に、TD方向の延伸率の比率がMD方向の延伸率の比率よりも大きいことが、乾燥性向上による生産性の向上及び外観や平面性等の光学的品質の向上の観点から望ましい。
【0052】
ここで、第2の延伸工程におけるTD方向の延伸率は、式「第2の延伸工程におけるTD方向の延伸率(%)={(第2の延伸工程後のウェブの幅−第2の延伸工程前のウェブの幅)/第2の延伸工程前のウェブの幅}×100」で求められる。なお、ウェブの幅は、C型JIS1級の鋼製スケールで測定した値である。
【0053】
また、第2の延伸工程におけるMD方向の延伸率は、式「第2の延伸工程におけるMD方向の延伸率(%)={(第2の延伸工程後のウェブの搬送速度−第2の延伸工程前のウェブの搬送速度)/第2の延伸工程前のウェブの搬送速度}×100」で求められる。
【0054】
そして、これらの第2の延伸工程におけるTD方向の延伸率と第2の延伸工程におけるMD方向の延伸率とを足し合わせた値が「第2延伸工程の合計延伸率B」である。
【0055】
第2延伸工程後のウェブ3の残留溶媒率は、次の乾燥装置104による乾燥工程の負荷、保存時の寸法安定性や伸縮率等を考慮して、例えば、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。また、例えば、0.05質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。20質量%を超えると、延伸工程後にウェブを乾燥する熱処理工程が長くなり過ぎる可能性がある。また、熱処理工程において溶媒が蒸発するときのボイドの発生が顕著になり、製造された光学フィルムの平面性や透明性等の外観や物性が損なわれる可能性が大きくなる。0.05質量%未満であると、それだけ延伸工程において無理な延伸をしたことになり、製造された光学フィルムの膜厚均一性が損なわれる可能性が大きくなる。
【0056】
[乾燥装置]
乾燥装置104は、乾燥風取り入れ口104bと排出口104cとを有する乾燥箱104aと、ウェブ3を搬送する上部の搬送ローラ104dと下部の搬送ローラ104eとを備える。乾燥装置104は、第1の延伸工程及び第2の延伸工程で長手方向及び/又は幅方向に延伸されたウェブ3を乾燥する熱処理工程を行うものである。上部の搬送ローラ104dと下部の搬送ローラ104eとは上下一組で、複数組から構成されている。第2乾燥装置104に配設される搬送ローラの数は、乾燥条件、乾燥方法、製造される光学フィルム5の長さ等により異なり適宜設定している。上部の搬送ローラ104dと下部の搬送ローラ104eとは駆動源によって回転駆動されない自由回転ローラとなっている。また、乾燥装置104から巻取装置105までの間には、全て自由回転する搬送ローラが用いられるわけではなく、通常、1本〜数本の搬送用駆動ローラ(駆動源によって回転駆動するローラ)の設置を必要とする。基本的に、搬送用駆動ローラは、その駆動でウェブ3を搬送するのが目的であるので、ニップやサクション(エアーの吸引)等により、ウェブ3の搬送と、駆動ローラの回転とを同期させる機構が付いている。
【0057】
乾燥装置104では、加熱空気、赤外線等を単独で用いて乾燥してもよいし、加熱空気と赤外線とを併用して乾燥してもよい。簡便さの点から加熱空気を用いることが好ましい。なお、図1は加熱空気を使用した場合を示している。乾燥温度は、乾燥工程に入る時のウェブの残留溶媒率により、好適温度が異なるが、乾燥時間、収縮ムラ、伸縮量の安定性等を考慮し、例えば、30℃〜180℃の範囲で残留溶媒率により適宜選択して決めればよい。また、一定の温度で乾燥してもよいし、3〜4段階の温度に分けて、数段階の温度に分けて乾燥してもよい。
【0058】
乾燥装置104での乾燥処理後のウェブ3の残留溶媒率は、この乾燥工程(熱処理工程)の負荷、保存時の寸法安定性や伸縮率等を考慮し、0.01質量%〜0.05質量%が好ましい。なお、本実施形態では、流延装置101で形成されたウェブ3が乾燥装置104で徐々に溶媒が除去され、全残留溶媒率が例えば2質量%以下となったウェブ3を光学フィルムという場合がある。
【0059】
[巻取装置]
巻取装置105は、乾燥装置104で、所定の残留溶媒率となった光学フィルム5を必要量の長さに巻き芯にロール状に巻き取る。巻き取る際の温度は、巻き取り後の収縮によるスリキズ、巻き緩み等を防止するために室温まで冷却することが好ましい。使用する巻き取り機は、特に限定なく使用でき、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等の巻き取り方法で巻き取ることができる。
【0060】
本実施形態においては、製造された光学フィルム5の用途を考慮し、製造された光学フィルム5のカールや皺等を防止する観点から、膜厚が20〜100μmの光学フィルムを製造することが好ましい。
【0061】
<光学フィルムの製造方法>
図1に示したような光学フィルムの製造装置1によれば、樹脂溶液2を金属支持体101a上に流延する流延工程と、支持体101a上で形成されたウェブ3を支持体101aから剥離する剥離工程と、剥離したウェブ3を長手方向及び/又は幅方向に延伸する第1延伸工程と、第1延伸工程後にウェブ3を長手方向及び/又は幅方向に追加延伸する第2延伸工程と、延伸したウェブ3を乾燥する熱処理工程と、乾燥したウェブ3を光学フィルムとして巻き取る巻取工程とを備える、溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法が実施される。このような溶液流延製膜法による光学フィルムの製造方法は、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイライン等の光学欠点の抑制等の観点から好ましい光学フィルムの製造方法である。なお、第1の延伸工程と第2の延伸工程との間に乾燥工程を行ってウェブ3を乾燥させるようにしてもよい。以下、前述した内容に加えて、さらに説明する。
【0062】
[溶解工程]
溶解工程は、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で該アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、場合によってアクリル粒子、その他の添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程、或いは該アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂溶液に、場合によってアクリル粒子溶液、その他の添加剤溶液を混合して主溶解液であるドープを形成する工程である。
【0063】
アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、または特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることが出来るが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
【0064】
ドープ中のアクリル樹脂と、セルロースエステル樹脂は、計15〜45質量%の範囲であることが好ましい。溶解中または後のドープに添加剤を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。
【0065】
濾過は捕集粒子径0.5〜5μmで、かつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることが好ましい。
【0066】
この方法では、粒子分散時に残存する凝集物や主ドープ添加時発生する凝集物を、捕集粒子径0.5〜5μmで、かつ濾水時間10〜25sec/100mlの濾材を用いることで凝集物だけ除去出来る。主ドープでは粒子の濃度も添加液に比べ十分に薄いため、濾過時に凝集物同士がくっついて急激な濾圧上昇することもない。
【0067】
必要な場合は、アクリル粒子仕込釜より濾過器で大きな凝集物を除去し、ストック釜へ送液する。その後、ストック釜より主ドープ溶解釜へアクリル粒子添加液を添加する。
【0068】
その後主ドープ液は主濾過器にて濾過され、これに紫外線吸収剤添加液等がさらにインライン添加されてもよい。
【0069】
多くの場合、主ドープには返材が10〜50質量%程度含まれることがある。返材にはアクリル粒子が含まれることがある、その場合には返材の添加量に合わせてアクリル粒子添加液の添加量をコントロールすることが好ましい。
【0070】
アクリル粒子を含有する添加液には、アクリル粒子を0.5〜10質量%含有していることが好ましく、1〜10質量%含有していることが更に好ましく、1〜5質量%含有していることが最も好ましい。
【0071】
上記範囲内であれば、添加液は低粘度で取り扱い易く、主ドープへの添加が容易であるため好ましい。
【0072】
返材とは、液晶偏光板用保護フィルムを細かく粉砕した物で、液晶偏光板用保護フィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷等でスペックアウトした液晶偏光板用保護フィルム原反が使用される。
【0073】
また、予めアクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、場合によってアクリル粒子を混練してペレット化したものも、好ましく用いることができる。
【0074】
(樹脂溶液(ドープ)の溶媒)
本発明に係る光学フィルムを溶液流延製膜法で製造する場合のドープを形成するのに有用な溶媒は、例えば有機溶媒である。そのような有機溶媒としては、例えば、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば制限なく用いることが出来る。
【0075】
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン(メチレンクロライド)、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることが出来、メチレンクロライド、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用し得る。
【0076】
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系でのアクリル樹脂、セルロースエステル樹脂の溶解を促進する役割もある。
【0077】
特に、メチレンクロライド、及び炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、アクリル樹脂と、セルロースエステル樹脂と、アクリル粒子との3種を、少なくとも計15〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
【0078】
炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることが出来る。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
【0079】
[流延工程]
再び図1を参照して説明する。流延工程は、ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイに送液し、無限に移送する無端の金属ベルト、例えばステンレスベルト、或いは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
【0080】
ダイの口金部分のスリット形状を調整出来、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、何れも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。或いは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
【0081】
(流延工程中の溶媒蒸発工程)
ウェブを支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
【0082】
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が乾燥効率が良く好ましい。又、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを−5〜70℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。
【0083】
面品質、透湿性、剥離性の観点から、0.5〜5分以内で該ウェブを支持体から剥離することが好ましい。
【0084】
[剥離工程]
剥離工程は、金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。
【0085】
金属支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10〜40℃であり、更に好ましくは11〜30℃である。
【0086】
尚、剥離する時点での金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒率は、前述した理由に加えて、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により20〜100質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒率がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損ね、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易いため、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒率が決められる。
【0087】
ウェブの残留溶媒率は下記式で定義される。
【0088】
残留溶媒率(%)={(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)}×100
尚、残留溶媒率を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
【0089】
金属支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、前述した値以外にも、通常、196〜245N/mであるが、剥離の際に皺が入り易い場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましく、更には、剥離できる最低張力〜166.6N/m、次いで、最低張力〜137.2N/mで剥離することが好ましいが、特に好ましくは最低張力〜100N/mで剥離することである。
【0090】
本発明においては、該金属支持体上の剥離位置における温度を−5℃〜70℃とするのが好ましく、0〜60℃がより好ましく、15〜60℃とするのが最も好ましい。
【0091】
[延伸工程(第1延伸工程、第2延伸工程)]
延伸工程(第1延伸工程及び第1延伸工程の後に行われる第2延伸工程)は、剥離後、ウェブの幅方向の側部をピンテンターやクリップテンター等で保持して搬送するテンター延伸装置を用いてウェブをMD方向及び/又はTD方向に延伸(第1の延伸及び第2の延伸)する工程である。
【0092】
第1、第2の延伸工程において、テンター延伸装置を用いる場合は、テンターによるフィルムの保持位置を左右で独立に制御出来る装置を用いることが好ましい。また、平面性を改善するため意図的に異なる温度を持つ区画を作ることも好ましい。また、異なる温度区画の間にそれぞれの区画が干渉を起こさないように、ニュートラルゾーンを設けることも好ましい。
【0093】
なお、第1、第2の延伸工程において、延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、長手方向(MD方向)と幅方向(TD方向)とに二軸延伸を実施することも好ましい。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。
【0094】
この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。即ち、第1、第2の延伸工程のそれぞれにおいて、例えば、次のような延伸ステップも可能である。
(a)MD方向に延伸のみ
(b)TD方向に延伸のみ
(c)MD方向とTD方向とに同時延伸
(d)MD方向に延伸−その後TD方向に延伸
(e)TD方向に延伸−その後TD方向に延伸−MD方向に延伸−その後MD方向に延伸
【0095】
また、同時2軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。同時2軸延伸の好ましい延伸倍率は幅方向、長手方向ともに、例えば、×1.01倍(延伸率:1%)〜×1.5倍(延伸率:50%)の範囲でとることができる。
【0096】
テンターを行う場合のウェブの残留溶媒率は、第1延伸開始時に20〜100質量%、第1延伸後に20質量%以下であるのが好ましく、かつ第2延伸後はウェブの残留溶媒率が10質量%以下になる迄テンターを掛けながら乾燥を行うことが好ましく、更に好ましくは5質量%以下である。
【0097】
延伸工程を行う場合の具体的温度は、前述したように、第1延伸工程については、30℃以上、アクリル樹脂のガラス転移温度とセルロースエステル樹脂のガラス転移温度とのうち高いほうのガラス転移温度αより30℃高い温度α+30℃以下が好ましく、第2延伸工程については、アクリル樹脂のガラス転移温度とセルロースエステル樹脂のガラス転移温度とのうち低いほうのガラス転移温度βより30℃低い温度β−30℃以上、アクリル樹脂のガラス転移温度とセルロースエステル樹脂のガラス転移温度とのうち高いほうのガラス転移温度αより50℃高い温度α+50℃以下が好ましいが、より具体的な数値としては、例えば、第1延伸工程については、30〜175℃、50〜150℃、70〜140℃等であり、第2延伸工程については、70〜200℃、90〜185℃、110〜175℃等である。また、例えば、アクリル樹脂のガラス転移温度が112℃で、セルロースエステル樹脂のガラス転移温度が158℃の場合、第1延伸工程については、30〜188℃となり、第2延伸工程については、82〜208℃となる。
【0098】
延伸工程において、雰囲気の幅方向の温度分布が少ないことが、フィルムの均一性を高める観点から好ましく、延伸工程での幅方向の温度分布は、±5℃以内が好ましく、±2℃以内がより好ましく、±1℃以内がさらに好ましい。
【0099】
そして、前述したように、延伸工程として第1の延伸工程と、第1の延伸工程の後に行われる第2の延伸工程とを含み、第1の延伸工程におけるウェブの長手方向の延伸率と幅方向の延伸率との合計値をAとし、第2の延伸工程におけるウェブの長手方向の延伸率と幅方向の延伸率との合計値をBとしたときに、A≦Bとするのである。
【0100】
これにより、たとえセルロースエステル樹脂よりもケン化適性が低いアクリル樹脂を含む光学フィルム5であっても、偏光子に対する接着性が改善された光学フィルム5が得られることとなる。
【0101】
具体的には、例えば、製造された光学フィルム5のボイドのない良好な乾燥性や平面性や膜厚均一性の確保及び弾性率や光学特性の確保の観点から、第1延伸工程の合計延伸率Aを1〜30%とし、第2延伸工程の合計延伸率Bを1〜100%とするのである。
【0102】
これにより、製造された光学フィルム5のボイドのない良好な乾燥性や平面性や膜厚均一性及び弾性率や光学特性が確保される。
【0103】
また、そのために、第1延伸工程では、例えば、30℃以上〜アクリル樹脂のガラス転移温度とセルロースエステル樹脂のガラス転移温度とのうち高いほうのガラス転移温度αより30℃高い温度α+30℃以下の範囲内の温度で、1〜30秒間、延伸を行うのである。これにより、無理のない延伸が実現され、製造された光学フィルム5のボイドのない良好な乾燥性や平面性や膜厚均一性及び弾性率や光学特性が確保される。
【0104】
また、そのために、第2延伸工程では、例えば、アクリル樹脂のガラス転移温度とセルロースエステル樹脂のガラス転移温度とのうち低いほうのガラス転移温度βより30℃低い温度β−30℃以上〜アクリル樹脂のガラス転移温度とセルロースエステル樹脂のガラス転移温度とのうち高いほうのガラス転移温度αより50℃高い温度α+50℃以下の範囲内の温度で、1〜30秒間、延伸を行うのである。これにより、無理のない延伸が実現され、製造された光学フィルム5のボイドのない良好な乾燥性や平面性や膜厚均一性及び弾性率や光学特性が確保される。
【0105】
[熱処理工程]
熱処理工程は、延伸したウェブを乾燥装置内に複数配置したローラに交互に通して搬送しつつ乾燥(熱処理)する工程である。
【0106】
乾燥手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。余り急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒率が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥は概ね40〜250℃で行われる。特に40〜160℃で乾燥させることが好ましい。
【0107】
[巻取工程]
巻取工程は、ウェブ中の残留溶媒率が2質量%以下となってから光学フィルムとして巻き取り機により巻き取る工程であり、残留溶媒率を0.05質量%以下にすることにより寸法安定性の良好な本発明に係る光学フィルムを得ることが出来る。特に0.00〜0.05質量%で巻き取ることが好ましい。
【0108】
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0109】
本発明に係る光学フィルムは、長尺フィルムであることが好ましく、具体的には、100m〜5000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。また、フィルムの幅は1.3〜4mであることが好ましく、1.4〜2.5mであることがより好ましい。
【0110】
本発明に係る光学フィルムの膜厚に特に制限はないが、液晶偏光板用保護フィルムに使用する場合は20〜100μmであることが好ましく、25〜90μmであることがより好ましく、30〜80μmであることがさらに好ましい。
【0111】
以上のような方法によって製造された光学フィルムは、低吸湿性で、透明度が高く、耐候性に優れ、脆性が改善された光学フィルムである。そして、光学フィルムの偏光子に対する接着性が改善されている。
【0112】
<光学フィルム>
[アクリル樹脂]
本発明に用いられるアクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。樹脂としては特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、およびこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが好ましい。
【0113】
共重合可能な他の単量体としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上の単量体を併用して用いることができる。
【0114】
これらの中でも、共重合体の良好な耐熱分解性や流動性の確保の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
【0115】
本発明に係る光学フィルムに用いられるアクリル樹脂は、特に液晶偏光板用保護フィルムとしての脆性の改善及びセルロースエステル樹脂と相溶した際の透明性の改善の観点で、重量平均分子量(Mw)が80,000以上である。アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)が80,000未満であると、十分な脆性の改善が得られず、セルロースエステル樹脂との相溶性が劣化する。アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、80,000〜1,000,000の範囲内であることが更に好ましく、100,000〜600,000の範囲内であることが特に好ましく、150,000〜400,000の範囲であることが最も好ましい。アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)の上限値は特に限定されるものではないが、製造上の観点から1,000,000以下とされることが好ましい形態である。
【0116】
本発明のアクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下の通りである。
【0117】
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2,800,000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
【0118】
本発明におけるアクリル樹脂の製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系およびアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。重合温度については、懸濁または乳化重合では30〜100℃、塊状または溶液重合では80〜160℃で実施し得る。得られた共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。
【0119】
本発明に係るアクリル樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80、BR83、BR85、BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。アクリル樹脂は2種以上を併用することもできる。
【0120】
[セルロースエステル樹脂]
本発明のセルロースエステル樹脂は、特に脆性の改善やアクリル樹脂と相溶させたときに透明性の観点から、アシル基の総置換度(T)が2.0〜3.0、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2〜3.0であり、炭素数3〜7のアシル基の置換度は、2.0〜3.0であることが好ましい。即ち、本発明のセルロースエステル樹脂は炭素数が3〜7のアシル基により置換されたセルロースエステル樹脂であり、具体的には、プロピオニル、ブチリル等が好ましく用いられるが、特にプロピオニル基が好ましく用いられる。
【0121】
セルロースエステル樹脂の、アシル基の総置換度が2.0未満の場合、即ち、セルロースエステル分子の2,3,6位の水酸基の残度が1.0を超える場合には、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂が十分に相溶せず液晶偏光板用保護フィルムとして用いる場合にヘーズが問題となる。また、アシル基の総置換度が2.0以上であっても、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2未満の場合は、やはり十分な相溶性が得られないか、脆性が低下することとなる。例えば、アシル基の総置換度が2.0以上の場合であっても、炭素数2のアシル基、即ちアセチル基の置換度が高く、炭素数3〜7のアシル基の置換度が1.2未満の場合は、相溶性が低下しヘーズが上昇する。また、アシル基の総置換度が2.0以上の場合であっても、炭素数8以上のアシル基の置換度が高く、炭素数3〜7のアシル基の置換度が1.2未満の場合は、脆性が劣化し、所望の特性が得られない。
【0122】
本発明のセルロースエステル樹脂のアシル置換度は、総置換度(T)が2.0〜3.0であり、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2〜3.0であれば問題ないが、炭素数が3〜7以外のアシル基、即ち、アセチル基や炭素数が8以上のアシル基の置換度の総計が1.3以下とされることが好ましい。
【0123】
また、セルロースエステル樹脂のアシル基の総置換度(T)は、2.5〜3.0の範囲であることが更に好ましい。
【0124】
本発明において前記アシル基は、脂肪族アシル基であっても、芳香族アシル基であってもよい。脂肪族アシル基の場合は、直鎖であっても分岐していても良く、さらに置換基を有してもよい。本発明におけるアシル基の炭素数は、アシル基の置換基を包含するものである。
【0125】
上記セルロースエステル樹脂が、芳香族アシル基を置換基として有する場合、芳香族環に置換する置換基Xの数は0〜5個であることが好ましい。この場合も、置換基を含めた炭素数が3〜7であるアシル基の置換度が1.2〜3.0となるように留意が必要である。例えば、ベンゾイル基は炭素数が7になる為、炭素を含む置換基を有する場合は、ベンゾイル基としての炭素数は8以上となり、炭素数が3〜7のアシル基には含まれないこととなる。
【0126】
更に、芳香族環に置換する置換基の数が2個以上の時、互いに同じでも異なっていてもよいが、また、互いに連結して縮合多環化合物(例えばナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリン等)を形成してもよい。
【0127】
上記のようなセルロースエステル樹脂においては、炭素数3〜7の脂肪族アシル基の少なくとも1種を有する構造を有することが、本発明のセルロースエステル樹脂に用いる構造として用いられる。
【0128】
本発明に係るセルロースエステル樹脂の置換度は、アシル基の総置換度(T)が2.0〜3.0、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2〜3.0である。
【0129】
また、炭素数が3〜7のアシル基以外、即ちアセチル基と炭素数が8以上のアシル基の置換度の総和が1.3以下であることが好ましい構造である。
【0130】
本発明に係るセルロースエステル樹脂としては、アクリル樹脂との良好な相溶性の確保及び製造された光学フィルムの高い透明度の確保の観点から、特に、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、即ち、炭素原子数3または4のアシル基を置換基として有するものが好ましい。
【0131】
これらの中で特に好ましいセルロースエステル樹脂は、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート及びセルロースプロピオネートである。
【0132】
アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することが出来る。
【0133】
なお、アセチル基の置換度や他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めたものである。
【0134】
本発明に係るセルロースエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特にアクリル樹脂との相溶性、脆性の改善の観点から75,000以上であり、75,000〜300,000の範囲であることが好ましく、100,000〜240,000の範囲内であることが更に好ましく、160,000〜240,000のものが特に好ましい。セルロースエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)が75,000を下回る場合は、耐熱性や脆性の改善効果が十分ではなく、本発明の効果が得られない。本発明では2種以上のセルロースエステル樹脂を混合して用いることもできる。
【0135】
本発明に係る光学フィルムにおいて、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂は、30:70〜95:5の質量比で、かつ相溶状態で含有されるが、好ましくは50:50〜95:5、さらに好ましくは60:40〜90:10である。
【0136】
アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の質量比が、95:5よりもアクリル樹脂が多くなると、セルロースエステル樹脂による効果が十分に得られず、同質量比が30:70よりもアクリル樹脂が少なくなると、耐湿性が不十分となる。
【0137】
本発明に係る光学フィルムにおいては、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂が相溶状態で含有される必要がある。光学フィルムとして必要とされる物性や品質を、異なる樹脂を相溶させることで相互に補うことにより達成している。
【0138】
アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂が相溶状態となっているかどうかは、例えばガラス転移温度Tgにより判断することが可能である。
【0139】
例えば、両者の樹脂のガラス転移温度が異なる場合、両者の樹脂を混合したときは、各々の樹脂のガラス転移温度が存在するため混合物のガラス転移温度は2つ以上存在するが、両者の樹脂が相溶したときは、各々の樹脂固有のガラス転移温度が消失し、1つのガラス転移温度となって相溶した樹脂のガラス転移温度となる。
【0140】
尚、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)とする。
【0141】
アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂は、それぞれ非結晶性樹脂であることが好ましく、いずれか一方が結晶性高分子、あるいは部分的に結晶性を有する高分子であってもよいが、本発明においてアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂が相溶することで、非結晶性樹脂となることが好ましい。
【0142】
本発明に係る光学フィルムにおけるアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)やセルロースエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)や置換度は、両者の樹脂の溶媒に対して溶解性の差を用いて、分別した後に、それぞれ測定することにより得られる。樹脂を分別する際には、いずれか一方にのみ溶解する溶媒中に相溶された樹脂を添加することで、溶解する樹脂を抽出して分別することができ、このとき加熱操作や還流を行ってもよい。これらの溶媒の組み合わせを2工程以上組み合わせて、樹脂を分別してもよい。溶解した樹脂と、不溶物として残った樹脂を濾別し、抽出物を含む溶液については、溶媒を蒸発させて乾燥させる操作によって樹脂を分別することができる。これらの分別した樹脂は、高分子の一般の構造解析によって特定することができる。本発明に係る光学フィルムが、アクリル樹脂やセルロースエステル樹脂以外の樹脂を含有する場合も同様の方法で分別することができる。
【0143】
また、相溶された樹脂の重量平均分子量(Mw)がそれぞれ異なる場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、高分子量物は早期に溶離され、低分子量物であるほど長い時間を経て溶離されるために、容易に分別可能であるとともに分子量を測定することも可能である。
【0144】
また、相溶した樹脂をGPCによって分子量測定を行うと同時に、時間毎に溶離された樹脂溶液を分取して溶媒を留去し乾燥した樹脂を、構造解析を定量的に行うことで、異なる分子量の分画毎の樹脂組成を検出することで、相溶されている樹脂をそれぞれ特定することができる。事前に溶媒への溶解性の差で分取した樹脂を、各々GPCによって分子量分布を測定することで、相溶されていた樹脂をそれぞれ検出することもできる。
【0145】
また、本発明において、「アクリル樹脂やセルロースエステル樹脂を相溶状態で含有する」とは、各々の樹脂(ポリマー)を混合することで、結果として相溶された状態となることを意味しており、モノマー、ダイマー、あるいはオリゴマー等のアクリル樹脂の前駆体をセルロースエステル樹脂に混合させた後に重合させることにより混合樹脂とされた状態は含まれないものとする。
【0146】
例えば、モノマー、ダイマー、あるいはオリゴマー等のアクリル樹脂の前駆体をセルロースエステル樹脂に混合させた後に重合させることにより混合樹脂を得る工程は、重合反応が複雑であり、この方法で作成した樹脂は、反応の制御が困難であり、分子量の調整も困難となる。また、このような方法で樹脂を合成した場合は、グラフト重合、架橋反応や環化反応が生じることが多く、溶媒に溶解し難いケースや、加熱により溶融できなくなることが多く、混合樹脂中におけるアクリル樹脂を溶離して重量平均分子量(Mw)を測定することも困難である為、物性をコントロールすることが難しく光学フィルムを安定に製造する樹脂として用いることはできない。
【0147】
本発明に係る光学フィルムは、光学フィルムとしての機能を損なわない限りは、アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂以外の樹脂や添加剤を含有して構成されていても良い。
【0148】
アクリル樹脂、セルロースエステル樹脂以外の樹脂を含有する場合、添加される樹脂が相溶状態であっても、溶解せずに混合されていてもよい。
【0149】
本発明の光学フィルムにおけるアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂の総質量は、光学フィルムの55質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは、70質量%以上である。
【0150】
アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂以外の樹脂や添加剤を用いる際には、本発明に係る光学フィルムの機能を損なわない範囲で添加量を調整することが好ましい。
【0151】
(イオン性界面活性剤)
本発明で用いることのできるイオン性界面活性剤としては、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、カチオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
【0152】
アニオン性界面活性剤としては、高級アルコール(C〜C22)硫酸エステル塩類(例えば、ラウリルアルコールサルフェートのナトリウム塩、オクチルアルコールサルフェートのナトリウム塩、ラウリルアルコールサルフェートのアンモニウム塩、「Teepol−81」(商品名・シェル化学社製)、第二ナトリウムアルキルサルフェート等)、脂肪族アルコールリン酸エステル塩類(例えば、セチルアルコールリン酸エステルのナトリウム塩等)、アルキルアリールスルホン酸塩類(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸のナトリウム塩、ジナフタレンジスルホン酸のナトリウム塩、メタニトロベンゼンスルホン酸のナトリウム塩等)、アルキルアミドのスルホン酸塩類(例えば、C1733CON(CH)CHSONa等)、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン酸塩類(例えば、ナトリウムスルホコハク酸ジオクチルエステル、ナトリウムスルホコハク酸ジヘキシルエステル等)がある。これらの中で特に硫酸塩類やスルホン酸塩類が好適に用いられる。両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0153】
本発明においては、アニオン性界面活性剤が好ましい。また上記の界面活性剤は、フィルムを構成する樹脂の総量に対して、0.01質量%以上5質量%以下、好ましくは0.05質量%以上3質量%以下、より好ましくは0.2質量%以上2質量%以下で用いることが好ましい。この範囲よりも添加量が多いと、フィルムから界面活性剤が析出したり、フィルムの吸湿性が高くなり、光学フィルムの品質に好ましくない品質が発現する。またこの範囲よりも添加量が少ないと界面活性剤を用いる本発明の効果が得られなくなったりする。
【0154】
(アクリル粒子)
本発明に係る光学フィルムは、アクリル粒子を含有することが好ましい。
【0155】
本発明に係るアクリル粒子とは、前記アクリル樹脂及びセルロースエステル樹脂を相溶状態で含有する光学フィルム中に粒子の状態(非相溶状態ともいう)で存在するアクリル成分を表す。つまりアクリル樹脂を主成分とする粒子である。
【0156】
上記アクリル粒子は、例えば、作製した光学フィルムを所定量採取し、溶媒に溶解させて攪拌し、充分に溶解・分散させたところで、アクリル粒子の平均粒子径未満の孔径を有するPTFE製のメンブレンフィルターを用いて濾過し、濾過捕集された不溶物の重さが、光学フィルムに添加したアクリル粒子の90質量%以上あることが好ましい。
【0157】
本発明に用いられるアクリル粒子は特に限定されるものではないが、2層以上の層構造を有するアクリル粒子であることが好ましく、特に下記多層構造アクリル系粒状複合体であることが好ましい。
【0158】
多層構造アクリル系粒状複合体とは、中心部から外周部に向かって最内硬質層重合体、ゴム弾性を示す架橋軟質層重合体、および最外硬質層重合体が、層状に重ね合わされてなる構造を有する粒子状のアクリル系重合体をいう。
【0159】
すなわち、多層構造アクリル系粒状複合体とは、中心部から外周部に向かって最内硬質層、架橋軟質層、および最外硬質層からなる多層構造アクリル系粒状複合体である。この3層コアシェル構造の多層構造アクリル系粒状複合体が好ましく用いられる。
【0160】
本発明に係るアクリル系樹脂組成物に用いられる多層構造アクリル系粒状複合体の好ましい態様としては、以下の様なものが挙げられる。(a)メチルメタクリレート80〜98.9質量%、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート1〜20質量%、および多官能性グラフト剤0.01〜0.3質量%からなる単量体の混合物を重合して得られる最内硬質層重合体、(b)上記最内硬質層重合体の存在下に、アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアクリレート75〜98.5質量%、多官能性架橋剤0.01〜5質量%および多官能性グラフト剤0.5〜5質量%からなる単量体の混合物を重合して得られる架橋軟質層重合体、(c)上記最内硬質層および架橋軟質層からなる重合体の存在下に、メチルメタクリレート80〜99質量%とアルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート1〜20質量%とからなる単量体の混合物を重合して得られる最外硬質層重合体、よりなる3層構造を有し、かつ得られた3層構造重合体が最内硬質層重合体(a)5〜40質量%、軟質層重合体(b)30〜60質量%、および最外硬質層重合体(c)20〜50質量%からなり、アセトンで分別したときに不溶部があり、その不溶部のメチルエチルケトン膨潤度が1.5〜4.0であるアクリル系粒状複合体、が挙げられる。
【0161】
なお、特公昭60−17406号あるいは特公平3−39095号において開示されている様に、多層構造アクリル系粒状複合体の各層の組成や粒子径を規定しただけでなく、多層構造アクリル系粒状複合体の引張り弾性率やアセトン不溶部のメチルエチルケトン膨潤度を特定範囲内に設定することにより、さらに充分な耐衝撃性と耐応力白化性のバランスを実現することが可能となる。
【0162】
ここで、多層構造アクリル系粒状複合体を構成する最内硬質層重合体(a)は、メチルメタクリレート80〜98.9質量%、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレート1〜20質量%および多官能性グラフト剤0.01〜0.3質量%からなる単量体の混合物を重合して得られるものが好ましい。
【0163】
ここで、アルキル基の炭素数が1〜8のアルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が挙げられ、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが好ましく用いられる。
【0164】
最内硬質層重合体(a)におけるアルキルアクリレート単位の割合は1〜20質量%であり、該単位が1質量%未満では、重合体の熱分解性が大きくなり、一方、該単位が20質量%を超えると、最内硬質層重合体(a)のガラス転移温度が低くなり、3層構造アクリル系粒状複合体の耐衝撃性付与効果が低下するので、いずれも好ましくない。
【0165】
多官能性グラフト剤としては、異なる重合可能な官能基を有する多官能性単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸のアリルエステル等が挙げられ、アリルメタクリレートが好ましく用いられる。多官能性グラフト剤は、最内硬質層重合体と軟質層重合体を化学的に結合するために用いられ、その最内硬質層重合時に用いる割合は0.01〜0.3質量%である。
【0166】
アクリル系粒状複合体を構成する架橋軟質層重合体(b)は、上記最内硬質層重合体(a)の存在下に、アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアクリレート75〜98.5質量%、多官能性架橋剤0.01〜5質量%および多官能性グラフト剤0.5〜5質量%からなる単量体の混合物を重合して得られるものが好ましい。
【0167】
ここで、アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアクリレートとしては、n−ブチルアクリレートや2−エチルヘキシルアクリレートが好ましく用いられる。
【0168】
また、これらの重合性単量体と共に、25質量%以下の共重合可能な他の単官能性単量体を共重合させることも可能である。
【0169】
共重合可能な他の単官能性単量体としては、スチレンおよび置換スチレン誘導体が挙げられる。アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルアクリレートとスチレンとの比率は、前者が多いほど重合体(b)のガラス転移温度が低下し、即ち軟質化できるのである。
【0170】
一方、樹脂組成物の透明性の観点からは、軟質層重合体(b)の常温での屈折率を最内硬質層重合体(a)、最外硬質層重合体(c)、および硬質熱可塑性アクリル樹脂に近づけるほうが有利であり、これらを勘案して両者の比率を選定する。
【0171】
多官能性グラフト剤としては、前記の最内硬質層重合体(a)の項で挙げたものを用いることができる。ここで用いる多官能性グラフト剤は、軟質層重合体(b)と最外硬質層重合体(c)を化学的に結合するために用いられ、その軟質層重合時に用いる割合は耐衝撃性付与効果の観点から0.5〜5質量%が好ましい。
【0172】
多官能性架橋剤としては、ジビニル化合物、ジアリル化合物、ジアクリル化合物、ジメタクリル化合物等の一般に知られている架橋剤が使用できるが、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量200〜600)が好ましく用いられる。
【0173】
ここで用いる多官能性架橋剤は、軟質層(b)の重合時に架橋構造を生成し、耐衝撃性付与の効果を発現させるために用いられる。ただし、先の多官能性グラフト剤を軟質層の重合時に用いれば、ある程度は軟質層(b)の架橋構造を生成するので、多官能性架橋剤は必須成分ではないが、多官能性架橋剤を軟質層重合時に用いる割合は耐衝撃性付与効果の観点から0.01〜5質量%が好ましい。
【0174】
多層構造アクリル系粒状複合体を構成する最外硬質層重合体(c)は、上記最内硬質層重合体(a)および軟質層重合体(b)の存在下に、メチルメタクリレート80〜99質量%およびアルキル基の炭素数が1〜8であるアルキルアクリレート1〜20質量%からなる単量体の混合物を重合して得られるものが好ましい。
【0175】
ここで、アルキルアクリレートとしては、前述したものが用いられるが、メチルアクリレートやエチルアクリレートが好ましく用いられる。最外硬質層(c)におけるアルキルアクリレート単位の割合は、1〜20質量%が好ましい。
【0176】
また、最外硬質層(c)の重合時に、アクリル樹脂との相溶性向上を目的として、分子量を調節するためアルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用い、実施することも可能である。
【0177】
とりわけ、最外硬質層に、分子量が内側から外側へ向かって次第に小さくなるような勾配を設けることは、伸びと耐衝撃性のバランスを改良するうえで好ましい。具体的な方法としては、最外硬質層を形成するための単量体の混合物を2つ以上に分割し、各回ごとに添加する連鎖移動剤量を順次増加するような手法によって、最外硬質層を形成する重合体の分子量を多層構造アクリル系粒状複合体の内側から外側へ向かって小さくすることが可能である。
【0178】
この際に形成される分子量は、各回に用いられる単量体の混合物をそれ単独で同条件にて重合し、得られた重合体の分子量を測定することによって調べることもできる。
【0179】
本発明に好ましく用いられるアクリル粒子の粒子径については、特に限定されるものではないが、10nm以上、1000nm以下であることが好ましく、さらに、20nm以上、500nm以下であることがより好ましく、特に50nm以上、400nm以下であることが最も好ましい。
【0180】
本発明に好ましく用いられる多層構造重合体であるアクリル系粒状複合体において、コアとシェルの質量比は、特に限定されるものではないが、多層構造重合体全体を100質量部としたときに、コア層が50質量部以上、90質量部以下であることが好ましく、さらに、60質量部以上、80質量部以下であることがより好ましい。なお、ここでいうコア層とは、最内硬質層のことである。
【0181】
このような多層構造アクリル系粒状複合体の市販品の例としては、例えば、三菱レイヨン社製“メタブレン”、鐘淵化学工業社製“カネエース”、呉羽化学工業社製“パラロイド”、ロームアンドハース社製“アクリロイド”、ガンツ化成工業社製“スタフィロイド”およびクラレ社製“パラペットSA”等が挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
【0182】
また、本発明に好ましく用いられるアクリル粒子として好適に使用されるグラフト共重合体であるアクリル粒子(C1)の具体例としては、ゴム質重合体の存在下に、不飽和カルボン酸エステル系単量体、不飽和カルボン酸系単量体、芳香族ビニル系単量体、および必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル系単量体からなる単量体の混合物を共重合せしめたグラフト共重合体が挙げられる。
【0183】
グラフト共重合体であるアクリル粒子(C1)に用いられるゴム質重合体には特に制限はないが、ジエン系ゴム、アクリル系ゴムおよびエチレン系ゴム等が使用できる。具体例としては、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンのブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ブタジエン−メチルメタクリレート共重合体、アクリル酸ブチル−メチルメタクリレート共重合体、ブタジエン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体、エチレン−イソプレン共重合体、およびエチレン−アクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。これらのゴム質重合体は、1種または2種以上の混合物で使用することが可能である。
【0184】
また、本発明に係る光学フィルムにアクリル粒子を添加する場合は、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂との混合物の屈折率とアクリル粒子の屈折率が近いことが、透明性が高いフィルムを得る点では好ましい。具体的には、アクリル粒子とアクリル樹脂の屈折率差が0.05以下であることが好ましく、より好ましくは0.02以下、とりわけ0.01以下であることが好ましい。
【0185】
このような屈折率条件を満たすためには、アクリル樹脂の各単量体単位組成比を調整する方法、および/またはアクリル粒子に使用されるゴム質重合体あるいは単量体の組成比を調製する方法等により、屈折率差を小さくすることができ、透明性に優れた光学フィルムを得ることができる。
【0186】
尚、ここで言う屈折率差とは、アクリル樹脂が可溶な溶媒に、本発明に係る光学フィルムを適当な条件で十分に溶解させ白濁溶液とし、これを遠心分離等の操作により、溶媒可溶部分と不溶部分に分離し、この可溶部分(アクリル樹脂)と不溶部分(アクリル粒子)をそれぞれ精製した後、測定した屈折率(23℃、測定波長:550nm)の差を示す。
【0187】
本発明においてアクリル樹脂に、アクリル粒子を配合する方法には、特に制限はなく、アクリル粒子を予め分散した溶液を、アクリル樹脂、及びセルロースエステル樹脂を溶解した溶液(ドープ液)に添加して混合する方法や、アクリル粒子及びその他の任意の添加剤を溶解、混合した溶液をインライン添加する方法が好ましく用いられる。また、アクリル樹脂とその他の任意成分を予めブレンドした後、通常200〜350℃において、アクリル粒子を添加しながら一軸または二軸押出機により均一に溶融混練する等の方法を用いることができる。
【0188】
本発明に係るアクリル粒子としては、市販のものも使用することができる。例えば、メタブレンW−341(C2)(三菱レイヨン(株)製)、ケミスノーMR−2G(C3)、MS−300X(C4)(綜研化学(株)製)等を挙げることができる。
【0189】
本発明に係る光学フィルムにおいて、該フィルムを構成する樹脂の総質量に対して、0.5〜30質量%のアクリル粒子を含有することが好ましく、1.0〜15質量%の範囲で含有することが更に好ましい。
【0190】
(その他の添加剤)
本発明に係る光学フィルムにおいては、組成物の流動性や柔軟性を向上するために、可塑剤を併用することも可能である。可塑剤としては、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系、あるいはエポキシ系等が挙げられる。
【0191】
この中で、ポリエステル系とフタル酸エステル系の可塑剤が好ましく用いられる。ポリエステル系可塑剤は、フタル酸ジオクチル等のフタル酸エステル系の可塑剤に比べて非移行性や耐抽出性に優れるが、可塑化効果や相溶性にはやや劣る。
【0192】
従って、用途に応じてこれらの可塑剤を選択、あるいは併用することによって、広範囲の用途に適用できる。
【0193】
ポリエステル系可塑剤は、一価ないし四価のカルボン酸と一価ないし六価のアルコールとの反応物であるが、主に二価カルボン酸とグリコールとを反応させて得られたものが用いられる。代表的な二価カルボン酸としては、グルタル酸、イタコン酸、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸等が挙げられる。
【0194】
特に、アジピン酸、フタル酸等を用いると可塑化特性に優れたものが得られる。グリコールとしてはエチレン、プロピレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレン、1,6−ヘキサメチレン、ネオペンチレン、ジエチレン、トリエチレン、ジプロピレン等のグリコールが挙げられる。これらの二価カルボン酸およびグリコールはそれぞれ単独で、あるいは混合して使用してもよい。
【0195】
このエステル系の可塑剤はエステル、オリゴエステル、ポリエステルの型のいずれでもよく、分子量は100〜10,000の範囲が良いが、好ましくは600〜3,000の範囲が、可塑化効果が大きい。
【0196】
また、可塑剤の粘度は分子構造や分子量と相関があるが、アジピン酸系可塑剤の場合相溶性、可塑化効率の関係から200〜5000MPa・s(25℃)の範囲が良い。さらに、いくつかのポリエステル系可塑剤を併用してもかまわない。
【0197】
可塑剤は本発明に係る光学フィルム100質量部に対して、0.5〜30質量部を添加するのが好ましい。可塑剤の添加量が30質量部を超えると、表面がべとつくので、実用上好ましくない。
【0198】
本発明に係る光学フィルムは、紫外線吸収剤を含有することも好ましく、用いられる紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系またはサリチル酸フェニルエステル系のもの等が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
【0199】
ここで、紫外線吸収剤のうちでも、分子量が400以上の紫外線吸収剤は、高沸点で揮発しにくく、高温成形時にも飛散しにくいため、比較的少量の添加で効果的に耐候性を改良することができる。
【0200】
分子量が400以上の紫外線吸収剤としては、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、さらには2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダードフェノールとヒンダードアミンの構造を共に有するハイブリッド系のものが挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上を併用して使用することができる。これらのうちでも、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾールや2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が特に好ましい。
【0201】
さらに、本発明の光学フィルムには、成形加工時の熱分解性や熱着色性を改良するために各種の酸化防止剤を添加することもできる。また帯電防止剤を加えて、光学フィルムに帯電防止性能を与えることも可能である。
【0202】
本発明の光学フィルムには、リン系難燃剤を配合した難燃アクリル系樹脂組成物を用いても良い。
【0203】
ここで用いられるリン系難燃剤としては、赤リン、トリアリールリン酸エステル、ジアリールリン酸エステル、モノアリールリン酸エステル、アリールホスホン酸化合物、アリールホスフィンオキシド化合物、縮合アリールリン酸エステル、ハロゲン化アルキルリン酸エステル、含ハロゲン縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合ホスホン酸エステル、含ハロゲン亜リン酸エステル等から選ばれる1種、あるいは2種以上の混合物を挙げることができる。
【0204】
具体的な例としては、トリフェニルホスフェート、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキシド、フェニルホスホン酸、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等が挙げられる。
【0205】
本発明に係る光学フィルムによれば、従来の樹脂フィルムでは成し得なかった低吸湿性、透明性、高耐候性及び脆性の改善を同時に達成することができる。そして、偏光子に対する接着性が改善されている。
【0206】
本発明においては、脆性の指標としては、「延性破壊が起こらない光学フィルム」であるかどうかという基準により判断する。延性破壊が起こらない、脆性が改善された光学フィルムを得ることで、大型の液晶表示装置用の偏光板を作成する際にも、製造時の破断や割れが発生せず、取り扱い性に優れた液晶偏光板用保護フィルムとすることができる。ここで、延性破壊とは、ある材料が有する強度よりも、大きな応力が作用することで生じる破断のことであり、最終破断までに材料の著しい伸びや絞りを伴う破壊と定義される。その破面には、ディンプルと呼ばれる窪みが無数に形成される特徴がある。
【0207】
本発明では、「延性破壊が起こらない光学フィルム」であるか否かは、フィルムを2つに折り曲げるような大きな応力を作用させても破断等の破壊がみられないことにより評価するものとする。このような大きな応力が加えられても延性破壊が起こらない光学フィルムであれば、大型化された液晶表示装置の偏光板用保護フィルムとして用いられた場合であっても製造時の破断等の問題を十分に低減することが可能となり、さらに、一度貼り合わされた後に再度引き剥がして液晶偏光板用保護フィルムを使用する場合においても、破断が発生せず、液晶偏光板用保護フィルムの薄型化へも十分に対応可能である。
【0208】
本発明においては、耐熱性の指標として、張力軟化点を用いる。液晶表示装置が大型化され、バックライト光源の輝度が益々高くなっていることに加え、デジタルサイネージ等の屋外用途への利用により、より高い輝度が求められていることから、液晶偏光板用保護フィルムはより高温の環境下での使用に耐えられることが求められているが、張力軟化点が、105℃〜145℃であれば、十分な耐熱性を示すものと判断できる。特に110℃〜130℃に制御することがより好ましい。
【0209】
液晶偏光板用保護フィルムの張力軟化点を示す温度の具体的な測定方法としては、例えば、テンシロン試験機(ORIENTEC社製、RTC−1225A)を用いて、液晶偏光板用保護フィルムを120mm(縦)×10mm(幅)で切り出し、10Nの張力で引っ張りながら30℃/minの昇温速度で昇温を続け、9Nになった時点での温度を3回測定し、その平均値により求めることができる。
【0210】
また、耐熱性の観点では、液晶偏光板用保護フィルムは、ガラス転移温度(Tg)が110℃以上であることが好ましい。より好ましくは120℃以上である。特に好ましくは150℃以上である。
【0211】
尚、ここでいうガラス転移温度とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。
【0212】
本発明における光学フィルムの透明性を判断する指標としては、ヘーズ値(濁度)を用いる。特に屋外で用いられる液晶表示装置においては、明るい場所でも十分な輝度や高いコントラストが得られることが求められる為、ヘーズ値は1.0%以下であることが必要とされ、0.5%以下であることが更に好ましい。
【0213】
アクリル系樹脂とセルロースエステル樹脂を含有する本発明に係る光学フィルムによれば、高い透明性を得ることができるが、別の物性を改善する目的でアクリル粒子を使用する場合は、樹脂(アクリル系樹脂とセルロースエステル樹脂)とアクリル粒子との屈折率差を小さくすることで、ヘーズ値の上昇を防ぐことができる。
【0214】
また、表面の粗さも表面ヘーズとしてヘーズ値に影響するため、アクリル粒子の粒子径や添加量を前記範囲内に抑えること、製膜時のフィルム接触部の表面粗さを小さくすることも、有効である。
【0215】
また、本発明における光学フィルムの吸湿性については、湿度変化に対する寸法変化により評価するものとする。
【0216】
湿度変化に対する寸法変化の評価方法としては、以下の方法が用いられる。
【0217】
作製した光学フィルムの流延方向(長手方向:MD方向)に、目印(十字)を2箇所つけて60℃、90%RHで1000時間処理し、処理前と処理後の目印(十字)の距離を光学顕微鏡で測定し、寸法変化率(%)を求める。寸法変化率(%)は下記式で表される。
【0218】
寸法変化率(%)=〔(a1−a2)/a1〕×100
a1:処理前の距離
a2:処理後の距離
【0219】
液晶表示装置の偏光板用保護フィルムとして光学フィルムが用いられる場合は、吸湿による寸法変化により液晶偏光板用保護フィルムにムラや位相差値の変化が発生してしまい、コントラストの低下や色ムラといった問題を発生させる。特に屋外で使用される液晶表示装置に用いられる偏光板用保護フィルムであれば、上記の問題は顕著となる。しかし、上記の条件における寸法変化率(%)が0.5%未満であれば、十分な低吸湿性を示す液晶偏光板用保護フィルムであると評価できる。更に、0.3%未満であることが好ましい。
【0220】
また、本発明に係る光学フィルムは、フィルム面内の直径5μm以上の欠点が1個/10cm四方以下であることが好ましい。更に好ましくは0.5個/10cm四方以下、一層好ましくは0.1個/10cm四方以下である。
【0221】
ここで欠点の直径とは、欠点が円形の場合はその直径を示し、円形でない場合は欠点の範囲を下記方法により顕微鏡で観察して決定し、その最大径(外接円の直径)とする。
【0222】
欠点の範囲は、欠点が気泡や異物の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の透過光で観察したときの影の大きさである。欠点が、ロール傷の転写や擦り傷等、表面形状の変化の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の反射光で観察して大きさを確認する。
【0223】
なお、反射光で観察する場合に、欠点の大きさが不明瞭であれば、表面にアルミや白金を蒸着して観察する。
【0224】
かかる欠点頻度にて表される品位に優れたフィルムを生産性よく得るには、ポリマー溶液を流延直前に高精度濾過することや、流延機周辺のクリーン度を高くすること、また、流延後の乾燥条件を段階的に設定し、効率よくかつ発泡を抑えて乾燥させることが有効である。
【0225】
欠点の個数が1個/10cm四方より多いと、例えば後工程での加工時等でフィルムに張力がかかると、欠点を基点としてフィルムが破断して生産性が低下する場合がある。また、欠点の直径が5μm以上になると、偏光板観察等により目視で確認でき、光学部材として用いたとき輝点が生じる場合がある。
【0226】
また、目視で確認できない場合でも、該フィルム上にハードコート層等を形成したときに、塗剤が均一に形成できず欠点(塗布抜け)となる場合がある。ここで、欠点とは、溶液製膜の乾燥工程において溶媒の急激な蒸発に起因して発生するフィルム中の空洞(発泡欠点)や、製膜原液中の異物や製膜中に混入する異物に起因するフィルム中の異物(異物欠点)をいう。
【0227】
また、本発明に係る光学フィルムは、JIS−K7127−1999に準拠した測定において、少なくとも一方向の破断伸度が、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上である。
【0228】
破断伸度の上限は特に限定されるものではないが、現実的には250%程度である。破断伸度を大きくするには異物や発泡に起因するフィルム中の欠点を抑制することが有効である。
【0229】
本発明に係る光学フィルムは、その全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは93%以上である。また、現実的な上限としては、99%程度である。かかる全光線透過率にて表される優れた透明性を達成するには、可視光を吸収する添加剤や共重合成分を導入しないようにすることや、ポリマー中の異物を高精度濾過により除去し、フィルム内部の光の拡散や吸収を低減させることが有効である。
【0230】
また、製膜時のフィルム接触部(冷却ロール、カレンダーロール、ドラム、ベルト、溶液製膜における塗布基材、搬送ローラ等)の表面粗さを小さくしてフィルム表面の表面粗さを小さくすることや、アクリル樹脂の屈折率を小さくすることによりフィルム表面の光の拡散や反射を低減させることが有効である。
【0231】
本発明に係る光学フィルムは、上記のような物性を満たしていれば、大型の液晶表示装置や屋外用途の液晶表示装置用の偏光板用保護フィルムとして特に好ましく用いることができる。
【0232】
このような物性は、光学フィルムを、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂を50:50〜95:5の質量比で含有し、前記アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)が80,000以上であり、前記セルロースエステル樹脂のアシル基の総置換度(T)が2.00〜3.00、炭素数が3〜7のアシル基の置換度が1.2〜3.0であり、重量平均分子量(Mw)が75,000以上であることを特徴とする光学フィルムとすることにより得ることができる。
【0233】
<偏光板>
本発明に係る光学フィルムを偏光板用保護フィルムとして用いる場合、偏光板は一般的な方法で作製することが出来る。本発明に係る光学フィルムの裏面側に粘着層を設け、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、貼り合わせることが好ましい。
【0234】
もう一方の面には本発明に係る光学フィルムを用いても、別の偏光板用保護フィルムを用いてもよい。例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UE、KC4UE、KC4FR−3、KC4FR−4、KC4HR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
【0235】
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光膜は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
【0236】
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。
【0237】
上記粘着層に用いられる粘着剤としては、粘着層の少なくとも一部分において25℃での貯蔵弾性率が1.0×10Pa〜1.0×10Paの範囲である粘着剤が用いられていることが好ましく、粘着剤を塗布し、貼り合わせた後に種々の化学反応により高分子量体または架橋構造を形成する硬化型粘着剤が好適に用いられる。
【0238】
具体例としては、例えば、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、水性高分子−イソシアネート系粘着剤、熱硬化型アクリル粘着剤等の硬化型粘着剤、湿気硬化ウレタン粘着剤、ポリエーテルメタクリレート型、エステル系メタクリレート型、酸化型ポリエーテルメタクリレート等の嫌気性粘着剤、シアノアクリレート系の瞬間粘着剤、アクリレートとペルオキシド系の2液型瞬間粘着剤等が挙げられる。
【0239】
上記粘着剤としては1液型であっても良いし、使用前に2液以上を混合して使用する型であっても良い。
【0240】
また上記粘着剤は有機溶媒を媒体とする溶媒系であってもよいし、水を主成分とする媒体であるエマルジョン型、コロイド分散液型、水溶液型等の水系であってもよいし、無溶媒型であってもよい。上記粘着剤液の濃度は、粘着後の膜厚、塗布方法、塗布条件等により適宜決定されれば良く、通常は0.1〜50質量%である。
【0241】
本実施形態に係る偏光板は、偏光子と、前記偏光子の表面上に配置された透明保護フィルムとを備え、前記透明保護フィルムが、前記光学フィルムである。前記偏光子とは、入射光を偏光に変えて射出する光学素子である。
【0242】
前記偏光板としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素溶液中に浸漬して延伸することによって作製される偏光子の少なくとも一方の表面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて、前記光学フィルムを貼り合わせたものが好ましい。また、前記偏光子のもう一方の表面にも、前記光学フィルムを積層させてもよいし、別の偏光板用透明保護フィルムを積層させてもよい。この別の偏光板用透明保護フィルムとしては、例えば、市販のセルロースエステルフィルムとして、KC8UX2M、KC4UX、KC5UX、KC4UY、KC8UY、KC12UR、KC8UY−HA、KC8UX−RHA(以上、コニカミノルタオプト株式会社製)等が好ましく用いられる。あるいは、セルロースエステルフィルム以外の環状オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート等の樹脂フィルムを用いてもよい。この場合は、ケン化適性が低いため、適当な接着層を介して偏光板に接着加工することが好ましい。
【0243】
前記偏光板は、上述のように、偏光子の少なくとも一方の表面側に積層する保護フィルムとして、前記光学フィルムを使用したものである。その際、前記光学フィルムが位相差フィルムとして働く場合、光学フィルムの遅相軸が偏光子の吸収軸に実質的に平行または直交するように配置されていることが好ましい。
【0244】
また、前記偏光子の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール系偏光フィルムが挙げられる。ポリビニルアルコール系偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものとがある。前記ポリビニルアルコール系フィルムとしては、エチレンで変性された変性ポリビニルアルコール系フィルムが好ましく用いられる。
【0245】
前記偏光子は、例えば、以下のようにして得られる。まず、ポリビニルアルコール水溶液を用いて製膜する。得られたポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸させた後染色するか、染色した後一軸延伸する。そして、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を施す。
【0246】
前記偏光子の膜厚は、5〜40μmであることが好ましく、5〜30μmであることがより好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。
【0247】
該偏光子の表面上に、セルロ−スエステル系樹脂フィルムを張り合わせる場合、完全ケン化ポリビニルアルコール等を主成分とする水系の接着剤によって貼り合わせることが好ましい。また、セルロースエステル系樹脂フィルム以外の樹脂フィルムの場合は、適当な粘着層を介して偏光板に接着加工することが好ましい。
【0248】
上述のような偏光板は、透明保護フィルムとして、本実施形態に係る光学フィルムを用いることによって、この光学フィルムは、変形が充分に抑制されているので、例えば、液晶表示装置に適用した際に、コントラストの向上等の、液晶表示装置の高画質化を実現できる。また、偏光板の透明保護フィルムとして適用された光学フィルムは、湿度変化による寸法変化も抑制されているので、例えば、液晶表示装置に適用した際に、いわゆる、コーナーむらの発生も抑制できる。
【0249】
このように、本実施形態に係る偏光板は、偏光子と、前記偏光子を挟むように偏光子の両側に配置された2枚の透明保護フィルムとを備える偏光板であって、前記2枚の透明保護フィルムのうちの少なくとも一方が、前述の光学フィルムであることを特徴とする偏光板である。この偏光板は、液晶表示装置の大型化要求に良好に対応し得るものである。そして、透明保護フィルムの偏光子に対する接着性が改善されている。
【0250】
<液晶表示装置>
本発明に係る光学フィルムを液晶偏光板用保護フィルムとして貼合した偏光板を液晶表示装置に組み込むことによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することが出来るが、特に大型の液晶表示装置やデジタルサイネージ等の屋外用途の液晶表示装置に好ましく用いられる。本発明に係る偏光板は、前記粘着層等を介して液晶セルに貼合する。
【0251】
本発明に係る偏光板は反射型、透過型、半透過型LCDまたはTN型、STN型、OCB型、HAN型、VA型(PVA型、MVA型)、IPS型(FFS方式も含む)等の各種駆動方式のLCDで好ましく用いられる。特に画面が30型以上、特に30型〜54型の大画面の表示装置では、画面周辺部での白抜け等もなく、その効果が長期間維持される。
【0252】
また、色ムラ、ギラツキや波打ちムラが少なく、長時間の鑑賞でも目が疲れないという効果があった。
【0253】
本実施形態に係る液晶表示装置は、液晶セルと、前記液晶セルを挟むように配置された2枚の偏光板とを備え、前記2枚の偏光板のうち少なくとも一方が、前記偏光板である。なお、液晶セルとは、一対の電極間に液晶物質が充填されたものであり、この電極に電圧を印加することで、液晶の配向状態が変化され、透過光量が制御される。このような液晶表示装置は、本実施形態に係る偏光板を用いることによって、偏光板用の透明保護フィルムとして、変形が充分に抑制されている光学フィルムが用いられているので、コントラスト等が向上された、高画質な液晶表示装置となる。また、偏光板に、湿度変化による寸法変化が抑制された光学フィルムを透明保護フィルムとして備えたものを用いているので、いわゆる、コーナーむらの発生も抑制できる。
【0254】
このように、本実施形態に係る液晶表示装置は、液晶セルと、前記液晶セルを挟むように液晶セルの両側に配置された2枚の偏光板とを備える液晶表示装置であって、前記2枚の偏光板のうちの少なくとも一方が、前述の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置である。この液晶表示装置は、大型化要求に良好に対応し得るものである。そして、偏光板において、透明保護フィルムの偏光子に対する接着性が改善されている。
【実施例】
【0255】
以下、実施例を通して、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例により限定されるものではない。
【0256】
<光学フィルムの製造試験>
[ドープ液組成]
アクリル樹脂:ダイヤナールBR85(三菱レイヨン(株)製、Tg:112℃) 94質量部
セルロースエステル樹脂:セルロースアセテートプロピオネート(アシル基総置換度2.75、アセチル基置換度0.19、プロピオニル基置換度2.56、Mw=200,000、Tg:158℃) 5質量部
アクリル粒子:C1(この製法は後述する) 1質量部
イオン性界面活性剤:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(エレカットS−412−2 竹本油脂(株)製) 0.75質量部
メチレンクロライド: 300質量部
エタノール: 40質量部
上記組成物を加熱しながら十分に溶解し、ドープ液を作製した。
【0257】
アクリル粒子(C1)は次のようにして製造したものである。略号は各々次の材料を示す。
APS:過硫酸アンモニウム
MMA:メチルメタクリレート
BA:n−ブチルアクリレート
ALMA:アリルメタクリレート
PEGDA:ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量200)
n−OM:n−オクチルメルカプタン
MA:メチルアクリレート
【0258】
内容積60リットルの還流冷却器付反応器に、イオン交換水38.2リットル、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム111.6gを投入し、250rpmの回転数で攪拌しながら、窒素雰囲気下75℃に昇温し、酸素の影響が事実上無い状態にした。APS0.36gを投入し、5分間攪拌後にMMA1657g、BA21.6g、およびALMA1.68gからなる単量体の混合物を一括添加し、発熱ピークの検出後さらに20分間保持して、最内硬質層の重合を完結させた。
【0259】
次に、APS3.48gを投入し、5分間攪拌後にBA8105g、PEGDA31.9g、およびALMA264.0gからなる単量体の混合物を120分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに120分間保持して、軟質層の重合を完結させた。
【0260】
次に、APS1.32gを投入し、5分間攪拌後にMMA2106g、BA201.6gからなる単量体の混合物を20分間かけて連続的に添加し、添加終了後さらに20分間保持して、最外硬質層1の重合を完結させた。
【0261】
次いで、APS1.32gを投入し、5分後にMMA3148g、BA201.6g、およびn−OM10.1gからなる単量体の混合物を20分間かけて連続的に添加し、添加終了後にさらに20分間保持した。ついで95℃に昇温し60分間保持して、最外硬質層2の重合を完結させた。
【0262】
このようにして得られた重合体ラテックスを、3質量%硫酸ナトリウム温水溶液中へ投入して、塩析・凝固させ、次いで、脱水・洗浄を繰り返したのち乾燥し、3層構造のアクリル粒子(C1)を得た。吸光度法により平均粒子径を求めたところ100nmであった。
【0263】
[試験1]
上記調製したドープ液を、図1に示した光学フィルムの製造装置1に類似の構造を有するベルト式流延装置を用いて、22℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶媒率が20質量%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力100N/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。
【0264】
剥離した樹脂のウェブをピンテンターを用いて、第1の延伸を行った。延伸条件は、70℃で、10秒間、乾燥させつつ、搬送方向(MD方向)に1.0025倍(延伸率:0.25%)、幅方向(TD方向)に1.0025倍(延伸率:0.25%)延伸した(第1延伸工程の合計延伸率A:0.5%)。なお、この第1延伸工程の乾燥温度を70℃、乾燥時間を10秒とした理由は、それぞれ最も良い結果が得られる数値の1つであるからである。次に、クリップテンターを用いて、第2の延伸を行った。延伸条件は、90℃で、10秒間、乾燥させつつ、搬送方向(MD方向)に1.0025倍(延伸率:0.25%)、幅方向(TD方向)に1.0025倍(延伸率:0.25%)延伸した(第2延伸工程の合計延伸率B:0.5%)。なお、この第2延伸工程の乾燥温度を90℃、乾燥時間を10秒とした理由は、それぞれ最も良い結果が得られる数値の1つであるからである。
【0265】
延伸後、130℃で5分間緩和を行った後、120℃、140℃の乾燥ゾーンを多数のローラで搬送させながら乾燥を終了させ、1.5m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm高さ5μmのナーリング加工を施し、初期張力220N/m、終張力110N/mで内径15.24cmコアに巻取ることで、例えば、液晶偏光板用保護フィルム等として用いられ得る光学フィルムのロールを得た。
【0266】
製造された光学フィルムの残留溶媒率は0.01%であり、膜厚は60μm、巻長は4000mであった。膜厚が20〜100μmのフィルムを製造することにより、光学フィルムの用途(例えば液晶偏光板用保護フィルム等としての用途)が考慮され、かつ、製造された光学フィルムのカールや皺等が防止される。
【0267】
[試験2]
試験1と同じドープ液及び同じ装置を用い、表1の製造方法仕様に示すように、第1延伸工程のMD方向の延伸率を0.5%、TD方向の延伸率を0.5%(第1合計延伸率A:1%)とし、第2延伸工程のMD方向の延伸率を0.5%、TD方向の延伸率を0.5%(第2合計延伸率B:1%)とした他は、試験1と同様にして光学フィルムを製造した。
【0268】
[試験3]
試験1と同じドープ液及び同じ装置を用い、表1の製造方法仕様に示すように、第1延伸工程のMD方向の延伸率を5%、TD方向の延伸率を5%(第1合計延伸率A:10%)とし、第2延伸工程のMD方向の延伸率を10%、TD方向の延伸率を10%(第2合計延伸率B:20%)とした他は、試験1と同様にして光学フィルムを製造した。
【0269】
[試験4]
試験1と同じドープ液及び同じ装置を用い、表1の製造方法仕様に示すように、第1延伸工程のMD方向の延伸率を10%、TD方向の延伸率を10%(第1合計延伸率A:20%)とし、第2延伸工程のMD方向の延伸率を20%、TD方向の延伸率を40%(第2合計延伸率B:60%)とした他は、試験1と同様にして光学フィルムを製造した。
【0270】
[試験5]
試験1と同じドープ液及び同じ装置を用い、表1の製造方法仕様に示すように、第1延伸工程のMD方向の延伸率を10%、TD方向の延伸率を20%(第1合計延伸率A:30%)とし、第2延伸工程のMD方向の延伸率を30%、TD方向の延伸率を70%(第2合計延伸率B:100%)とした他は、試験1と同様にして光学フィルムを製造した。
【0271】
[試験6]
試験1と同じドープ液及び同じ装置を用い、表1の製造方法仕様に示すように、第1延伸工程のMD方向の延伸率を10%、TD方向の延伸率を30%(第1合計延伸率A:40%)とし、第2延伸工程のMD方向の延伸率を30%、TD方向の延伸率を80%(第2合計延伸率B:110%)とした他は、試験1と同様にして光学フィルムを製造した。
【0272】
[試験7]
試験1と同じドープ液及び同じ装置を用い、表1の製造方法仕様に示すように、第1延伸工程のMD方向の延伸率を0.5%、TD方向の延伸率を0.5%(第1合計延伸率A:1%)とし、第2延伸工程のMD方向の延伸率を0.25%、TD方向の延伸率を0.25%(第2合計延伸率B:0.5%)とした他は、試験1と同様にして光学フィルムを製造した。
【0273】
[試験8]
試験1と同じドープ液及び同じ装置を用い、表1の製造方法仕様に示すように、第1延伸工程のMD方向の延伸率を5%、TD方向の延伸率を5%(第1合計延伸率A:10%)とし、第2延伸工程のMD方向の延伸率を2.5%、TD方向の延伸率を2.5%(第2合計延伸率B:5%)とした他は、試験1と同様にして光学フィルムを製造した。
【0274】
[試験9]
試験1と同じドープ液及び同じ装置を用い、表1の製造方法仕様に示すように、第1延伸工程のMD方向の延伸率を10%、TD方向の延伸率を10%(第1合計延伸率A:20%)とし、第2延伸工程のMD方向の延伸率を5%、TD方向の延伸率を5%(第2合計延伸率B:10%)とした他は、試験1と同様にして光学フィルムを製造した。
【0275】
[試験10]
試験1と同じドープ液及び同じ装置を用い、表1の製造方法仕様に示すように、第1延伸工程のMD方向の延伸率を10%、TD方向の延伸率を20%(第1合計延伸率A:30%)とし、第2延伸工程のMD方向の延伸率を10%、TD方向の延伸率を10%(第2合計延伸率B:20%)とした他は、試験1と同様にして光学フィルムを製造した。
【0276】
[試験11]
試験1と同じドープ液及び同じ装置を用い、表3の製造方法仕様に示すように、第1延伸工程の乾燥温度を25℃とし、第2延伸工程の乾燥温度を78℃とした他は、試験4と同様にして光学フィルムを製造した。
【0277】
[試験12]
試験1と同じドープ液及び同じ装置を用い、表3の製造方法仕様に示すように、第1延伸工程の乾燥温度を30℃とし、第2延伸工程の乾燥温度を82℃とした他は、試験4と同様にして光学フィルムを製造した。
【0278】
[試験13]
試験1と同じドープ液及び同じ装置を用い、表3の製造方法仕様に示すように、第1延伸工程の乾燥温度を188℃とし、第2延伸工程の乾燥温度を208℃とした他は、試験4と同様にして光学フィルムを製造した。
【0279】
[試験14]
試験1と同じドープ液及び同じ装置を用い、表3の製造方法仕様に示すように、第1延伸工程の乾燥温度を192℃とし、第2延伸工程の乾燥温度を212℃とした他は、試験4と同様にして光学フィルムを製造した。
【0280】
[試験15]
試験1と同じドープ液及び同じ装置を用い、表4の製造方法仕様に示すように、第1延伸工程の乾燥時間を0.5秒とし、第2延伸工程の乾燥時間を0.5秒とした他は、試験4と同様にして光学フィルムを製造した。
【0281】
[試験16]
試験1と同じドープ液及び同じ装置を用い、表4の製造方法仕様に示すように、第1延伸工程の乾燥時間を1秒とし、第2延伸工程の乾燥時間を1秒とした他は、試験4と同様にして光学フィルムを製造した。
【0282】
[試験17]
試験1と同じドープ液及び同じ装置を用い、表4の製造方法仕様に示すように、第1延伸工程の乾燥時間を30秒とし、第2延伸工程の乾燥時間を30秒とした他は、試験4と同様にして光学フィルムを製造した。
【0283】
[試験18]
試験1と同じドープ液及び同じ装置を用い、表4の製造方法仕様に示すように、第1延伸工程の乾燥時間を33秒とし、第2延伸工程の乾燥時間を33秒とした他は、試験4と同様にして光学フィルムを製造した。
【0284】
<評価方法>
試験1〜10について、次の評価(主評価)を実施した。結果を表1に示す。
【0285】
(偏光子との接着性)
ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸した後染色し、ホウ素化合物で耐久性処理を施して作製した膜厚20μmの偏光子の表面に、完全ケン化ポリビニルアルコールを主成分とする水系接着剤を用いて、各試験1〜10で得られた光学フィルムを貼り合わせた。貼り合わせた偏光子と光学フィルムとを手で引き剥がそうとしたときの状況を目視で観察し、下記基準で評価した。
○:偏光子と光学フィルムとを引き剥がそうとしても剥離しない
△:偏光子と光学フィルムとを引き剥がそうとすると一部剥離する
×:偏光子と光学フィルムとを引き剥がそうとすると全部剥離する
【0286】
試験1〜6,11〜18について、次の評価を実施した。結果を表2〜4に示す。
【0287】
(乾燥性)
得られた光学フィルムの内部の様子を目視で観察し、下記基準で評価した。
○:フィルムの内部にボイドが見られない
△:フィルムの内部にわずかにボイドが見られる
×:フィルムの内部にボイドがあり輝点状に見える
【0288】
(膜厚均一性)
得られた光学フィルムの厚みを膜厚計で測定し、下記基準で評価した。
○:幅方向の膜厚分布(バラツキ)がフィルム膜厚(60μm)の±5%未満
△:幅方向の膜厚分布(バラツキ)がフィルム膜厚(60μm)の±7%未満
×:幅方向の膜厚分布(バラツキ)がフィルム膜厚(60μm)の±7%以上
【0289】
【表1】

【0290】
【表2】

【0291】
【表3】

【0292】
【表4】

【0293】
<結果考察>
[表1]
表1から明らかなように、第1の延伸工程を行い、その後に第2の延伸工程を行い、その場合に、「第1延伸工程の合計延伸率A≦第2延伸工程の合計延伸率B」の条件を満たすように延伸されて製造された試験1〜6の光学フィルムは、たとえセルロースエステル樹脂よりもケン化適性が低いアクリル樹脂を含む光学フィルムであっても、偏光子に対する接着性が改善されて、主評価である偏光子との接着性に優れていた。これは、第1延伸工程に加えて縦横の合計延伸率がより大きい第2延伸工程を追加して行うことにより、光学フィルムの表面にセルロースエステル樹脂が表面配向し、光学フィルムのケン化適性が向上し、その結果、この光学フィルムを、ポリビニルアルコール系フィルムで作製された偏光子に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせたときに、光学フィルムと偏光子との接着力が向上したからと考察される。また、第1延伸工程に加えて第2延伸工程を追加して行うことにより、光学フィルムの表面粗さ(算術平均粗さ(Ra)や最大高さ(Rz))が大きくなることも作用したからと考察される。
【0294】
これに対し、第1の延伸工程を行い、その後に第2の延伸工程を行なっているが、「第1延伸工程の合計延伸率A>第2延伸工程の合計延伸率B」となるように延伸されて製造された試験7〜10の光学フィルムは、偏光子との接着性に劣っていた。
【0295】
[表2]
表2から明らかなように、試験2〜5は、第1延伸工程の合計延伸率Aが1〜30%であり、第2延伸工程の合計延伸率Bが1〜100%であったから、乾燥性及び膜厚均一性に優れていた。これは、製造された光学フィルムのボイドのない良好な乾燥性や平面性や膜厚均一性が確保されたからと考察される。そして、試験2〜5は、弾性率や光学特性も確保されていた。
【0296】
これに対し、試験1は、第1延伸工程の合計延伸率Aが1%未満であり、第2延伸工程の合計延伸率Bが1%未満であったから、乾燥性及び膜厚均一性がやや低下した。また、試験6は、第1延伸工程の合計延伸率Aが30%を超えており、第2延伸工程の合計延伸率Bが100%を超えていたから、膜厚均一性がやや低下した。
【0297】
[表3]
表3から明らかなように、試験4,12,13は、第1延伸工程の乾燥温度が30℃〜188℃、第2延伸工程の乾燥温度が82℃〜208℃であったから、乾燥性及び膜厚均一性に優れていた。これは、無理のない延伸が実現され、製造された光学フィルムのボイドのない良好な乾燥性や平面性や膜厚均一性が確保されたからと考察される。そして、試験4,12,13は、弾性率や光学特性も確保されていた。なお、第1延伸工程の乾燥温度の好ましい上限値を188℃としたのは、アクリル樹脂のガラス転移温度(112℃)とセルロースエステル樹脂のガラス転移温度(158℃)とのうち高いほうのガラス転移温度が158℃であることによる(158℃+30℃=188℃)。また、第2延伸工程の乾燥温度の好ましい下限値を82℃としたのは、アクリル樹脂のガラス転移温度(112℃)とセルロースエステル樹脂のガラス転移温度(158℃)とのうち低いほうのガラス転移温度が112℃であることによる(112℃−30℃=82℃)。また、第2延伸工程の乾燥温度の好ましい上限値を208℃としたのは、アクリル樹脂のガラス転移温度(112℃)とセルロースエステル樹脂のガラス転移温度(158℃)とのうち高いほうのガラス転移温度が158℃であることによる(158℃+50℃=208℃)。
【0298】
これに対し、試験11は、第1延伸工程の乾燥温度が30℃未満であり、第2延伸工程の乾燥温度が82℃未満であったから、乾燥性がやや低下した。また、試験14は、第1延伸工程の乾燥温度が188℃を超え、第2延伸工程の乾燥温度が208℃を超えていたから、膜厚均一性がやや低下した。
【0299】
[表4]
表4から明らかなように、試験4,16,17は、第1延伸工程の乾燥時間が1〜30秒、第2延伸工程の乾燥時間が1〜30秒であったから、乾燥性及び膜厚均一性に優れていた。これは、無理のない延伸が実現され、製造された光学フィルムのボイドのない良好な乾燥性や平面性や膜厚均一性が確保されたからと考察される。そして、試験4,16,17は、弾性率や光学特性も確保されていた。
【0300】
これに対し、試験15は、第1延伸工程の乾燥時間が1秒未満であり、第2延伸工程の乾燥時間が1秒未満であったから、乾燥性及び膜厚均一性がやや低下した。また、試験18は、第1延伸工程の乾燥時間が30秒を超え、第2延伸工程の乾燥時間が30秒を超えていたから、膜厚均一性がやや低下した。
【符号の説明】
【0301】
1 光学フィルムの製造装置
2 ドープ(樹脂溶液)
3 ウェブ(流延膜)
4 剥離ローラ
5 光学フィルム
101 流延装置
101a 金属支持体(無端ベルト)
101b ダイ
102 第1延伸装置
102d テンター延伸装置
103 第2延伸装置
103d テンター延伸装置
104 乾燥装置
105 巻取装置
105a 巻き取られたロール状の光学フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂溶液を支持体上に流延する流延工程と、前記支持体上で形成されたウェブを支持体から剥離する剥離工程と、剥離したウェブを延伸する延伸工程とを備える光学フィルムの製造方法であって、
樹脂溶液の樹脂としてアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂とを含み、
延伸工程として第1の延伸工程とこの第1の延伸工程の後に行われる第2の延伸工程とを含み、
第1の延伸工程におけるウェブの長手方向の延伸率と幅方向の延伸率との合計値をAとし、第2の延伸工程におけるウェブの長手方向の延伸率と幅方向の延伸率との合計値をBとしたときに、A≦Bであることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
Aが1〜30%、Bが1〜100%であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
延伸工程においてウェブをクリップテンター又はピンテンターで延伸することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
第1の延伸工程を、30℃以上、アクリル樹脂のガラス転移温度とセルロースエステル樹脂のガラス転移温度とのうち高いほうのガラス転移温度αより30℃高い温度α+30℃以下で、1〜30秒間、行い、
第2の延伸工程を、アクリル樹脂のガラス転移温度とセルロースエステル樹脂のガラス転移温度とのうち低いほうのガラス転移温度βより30℃低い温度β−30℃以上、アクリル樹脂のガラス転移温度とセルロースエステル樹脂のガラス転移温度とのうち高いほうのガラス転移温度αより50℃高い温度α+50℃以下で、1〜30秒間、行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
膜厚が20〜100μmの光学フィルムを製造することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
アクリル樹脂は、メチルメタクリレートと、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1つとを共重合させたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
セルロースエステル樹脂は、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースプロピオネート及びセルロースブチレートからなる群より選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする光学フィルム。
【請求項9】
偏光子と、前記偏光子を挟むように偏光子の両側に配置された2枚の透明保護フィルムとを備える偏光板であって、
前記2枚の透明保護フィルムのうちの少なくとも一方が、請求項8に記載の光学フィルムであることを特徴とする偏光板。
【請求項10】
液晶セルと、前記液晶セルを挟むように液晶セルの両側に配置された2枚の偏光板とを備える液晶表示装置であって、
前記2枚の偏光板のうちの少なくとも一方が、請求項9に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−16845(P2012−16845A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154245(P2010−154245)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】