説明

光学フィルムの製造方法、該方法により得られた光学フィルム、および該光学フィルムを用いた偏光板

【課題】セルロースエステル不溶解物のフィルムへの混入を十分に防止でき、濾紙の交換サイクルを有効に延ばすことができる光学フィルムの製造方法、該方法により得られた光学フィルム、および該光学フィルムを用いた偏光板を提供すること。
【解決手段】セルロースエステルを溶解したドープを濾過した後、該ドープを用いて溶液流延法により光学フィルムを製造する方法であって、該濾過を、透気度が10秒/300cc以上15秒/300cc以下の濾紙Xおよび透気度が5秒/300cc以上10秒/300cc未満の濾紙Yを用いて行うことを特徴とする光学フィルムの製造方法、当該方法によって得られた光学フィルム、および当該光学フィルムを用いた偏光板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの製造方法、該方法により得られた光学フィルム、および該光学フィルムを用いた偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置(LCD)は、低電圧かつ低消費電力でIC回路への直結が可能であり、しかも薄型化が可能であるから、ワードプロセッサーやパーソナルコンピュータ等の表示装置として広く使用されている。このLCDの基本的な構成は、液晶セルの両側に偏光板を設けたものであり、偏光板の性能によってLCDの性能が大きく左右される。偏光板は偏光子と、偏光子の両面に積層された保護フィルムとよりなる。そして、このような偏光板の保護フィルムとして、例えば、セルロースエステルフィルムが広く用いられている。
【0003】
このようなセルロースエステルフィルムは、一般に、溶液流延法により製造されている。このセルロースエステルフィルムの製造方法は、まず、セルロースエステルを、例えばメチレンクロライド等のセルロースエステルに対する良溶媒と、例えばメタノール、エタノール、ブタノールあるいはシクロヘキサン等のセルロースエステルに対する貧溶媒とを加えた混合溶媒に溶解し、これに可塑剤や紫外線吸収剤を添加して、セルロースエステル溶液(以下、ドープとも呼ぶ)を調製し、ドープを、鏡面処理された表面を有する無限移行する無端の金属支持体(例えばベルトあるいはドラム、以下、支持体とも呼ぶ)上に流延ダイから均一に流延し、支持体上で溶媒を蒸発させ、ドープ膜(以下、ウェブとも呼ぶ)が固化した後、これを剥離ロールで剥離し、これを移送ロールで移送し、さらに乾燥装置あるいはテンターを通して乾燥させ、セルロースエステルフィルムを得るものである。
【0004】
近年、液晶表示装置の高画質化、高精細化が一段と加速している。それに伴って液晶表示装置に用いられる偏光板保護フィルムに対しても、フィルムに含まれる異物の低減に対する要求が強くなってきている。偏光板用保護フィルムに用いられるセルロースエステルは半合成高分子であるため、エステル化工程の不均一反応による不要成分の生成だけでなく、出発原料品質の影響を強く受ける。そのため、一般的な合成高分子に比べて、不要成分除去の必要性が高い。
【0005】
セルロースエステルフィルムから検出される異物には、用いる添加剤に起因するもの、製造工程において混入するゴミに起因するもの、及びセルロースエステル中に含まれる未酢化もしくは低酢化度のセルロースエステル繊維に起因するもの等が挙げられる。
【0006】
フィルムにおいて異物を低減するために、ドープを溶液流延法に供するに先立って濾過を行うことが知られており、そのようなドープの濾過や当該濾過に使用されるフィルターに関する種々の提案がなされている。
例えば、ドープを、濾水時間が20秒以上の濾紙を重ねて用い、かつ、16kg/cm以下の濾過圧力で濾過、製膜する技術が開示されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2000−204173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ドープの濾過は、その後の溶液流延法によるフィルム製造工程への連続供給の観点から、一般に定速で行われるが、上記特許文献1のように目が比較的粗い濾紙を用いて濾過を行う技術では、異物の捕捉が十分でなく、初期からフィルムへの異物の混入を十分に防止できなかった。また、濾紙に異物が捕捉・蓄積されるにつれ、濾過圧が上昇するが、捕捉された異物が上昇した濾過圧により、濾紙を通過してしまい、フィルムへの異物の混入防止が十分ではなかった。そのため、濾過圧が比較的低い段階で濾紙を交換する必要が生じるので、濾紙を比較的短いサイクルで交換する必要が生じた。従来の濾紙では、濾過圧が高くなるほど、例えば1500kPa以上になると、濾紙に捕捉された異物が濾紙を通過し、フィルムへの異物の混入を十分に防止できなかった。
【0008】
そこで、本発明の発明者等は目が比較的細かい濾紙を重ねて用いることを検討してみたところ、異物の中でも特にドープ中、完全には溶解されることなく残っている低酢化度のセルロースエステル等の不溶解物が比較的早期にフィルムに混入し始める、という新たな問題が生じた。そのため、濾紙の交換サイクルを十分に延ばすことができなかった。
【0009】
本発明は、セルロースエステル不溶解物のフィルムへの混入を十分に防止でき、濾紙の交換サイクルを有効に延ばすことができる光学フィルムの製造方法、該方法により得られた光学フィルム、および該光学フィルムを用いた偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、セルロースエステルを溶解したドープを濾過した後、該ドープを用いて溶液流延法により光学フィルムを製造する方法であって、該濾過を、透気度が10秒/300cc以上15秒/300cc以下の濾紙Xおよび透気度が5秒/300cc以上10秒/300cc未満の濾紙Yを用いて行うことを特徴とする光学フィルムの製造方法、当該方法によって得られた光学フィルム、および当該光学フィルムを用いた偏光板に関する。
【0011】
本発明はまた、セルロースエステルを溶解したドープを濾過した後、該ドープを用いて溶液流延法により光学フィルムを製造する方法であって、濾過圧が1500〜2000kPaのいずれかの値のときにおいて、濾過直前のドープ中の不溶解物数αに対する濾過直後のドープ中の不溶解物数βの比率(β/α)が0.5以下であり、不溶解物数βが50個/80mm以下であることを特徴とする光学フィルムの製造方法、当該方法によって得られた光学フィルム、および当該光学フィルムを用いた偏光板に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光学フィルムの製造方法では、長期にわたってセルロースエステル不溶解物のフィルムへの混入を十分に防止できる。そのため、濾紙の交換サイクルを有効に延ばすことができる。本発明では通常、10日間以上継続して濾過を行っても、セルロースエステル不溶解物のフィルムへの混入を十分に防止でき、結果としてフィルムへの異物混入を有効に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明においてはまず、セルロースエステルを溶解したドープ(セルロースエステル溶液)を調製する。
【0014】
セルロースエステルは光学フィルムの分野で従来より使用されているセルロースエステルであれば特に制限されず、例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネートブチレートなどが使用可能であり、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートが好ましい。2種類以上のセルロースエステルを組み合わせて用いてもよい。
【0015】
セルロースエステルの原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)、ケナフなどを挙げることが出来る。またそれらから得られたセルロースエステルはそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。
【0016】
セルロースエステルは、セルロース原料をアシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて合成する。アシル化剤が酸クロライド(CHCOCl、CCOCl、CCOCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には特開平10−45804号公報に記載の方法で合成することが出来る。アシル基をセルロース分子の水酸基に反応させる。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度という。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している。
アシル基の置換度はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
【0017】
セルロースエステルは重合度が100〜1000、特に250〜400のものが好ましく使用される。
【0018】
セルロースエステルは、溶媒等に溶解してドープとする。本発明で用いることのできる溶媒は良溶媒と貧溶媒を混合して使用することが、生産効率の点で好ましい。良溶媒と貧溶媒の混合比率は良溶媒70〜95質量%、貧溶媒は30〜5質量%が好ましい。又、セルロースエステルの濃度は10〜30質量%が好ましく、15〜25質量%がより好ましい。セルロースエステル濃度はドープ全体に対する割合である。
【0019】
本発明でいう良溶媒、貧溶媒とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶媒、単独で膨潤するかまたは溶解しないものを貧溶媒と定義している。そのため、セルロースエステルの結合酢酸量によって良溶媒、貧溶媒が変わり、例えばアセトンは結合酢酸量55%では良溶媒、結合酢酸量60%では貧溶媒となる。本発明に使用される良溶媒は、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類がある。本発明に使用される貧溶媒は例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサンが好ましい。使用される溶媒のうち、最も使用割合の大きい溶媒を主溶媒と呼ぶものとする。
【0020】
セルロースエステルの溶解方法は、一般的な方法を用いることができ、例えば、(1)セルロースエステルに対する良溶媒を主とする有機溶媒に、セルロースエステルを添加、攪拌しながら溶解する方法、および(2)セルロースエステルを貧溶媒と混合し、湿潤あるいは膨潤させ、さらに良溶媒と混合して撹拌しながら溶解する方法である。これらの方法ではセルロースエステルが完溶せず、一部僅かながらも不溶解物が残存し、後述の濾過工程にてこれらが捕捉されることにより濾過圧が比較的早期に高くなるので、セルロースエステルの不溶解物の通過防止のために濾紙の交換サイクルを短くする必要があるが、本発明では、そのような方法によって調製されたドープを用いてもセルロースエステルの不溶解物の通過を充分に防止でき、また濾過時にこれらの不溶解物が溶解する機能を持たせることが期待できるため、その結果濾紙の交換サイクルを有効に延ばすことができる。
【0021】
セルロースエステルの不溶解物とは、フィルム中において異物として認識される欠陥のひとつである「輝点」の原因となるものであり、低酢化度のセルロースエステル、未酢化のセルロース、セルロースエステルの溶解不良による未溶解物などのようなドープ中で完全には溶解されていないセルロースエステルに由来するものである。
【0022】
溶解条件には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う高温溶解方法、冷却して溶解する冷却溶解方法、かなりの高圧で行う高圧溶解方法等種々の方法があり、いずれの方法を採用してもよい。高温溶解方法では詳しくは、加圧下で、主溶媒の常温での沸点以上でかつ主溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱し、攪拌しながら溶解する。本発明では調製コストの観点から、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法を採用することが好ましい。そのような方法を採用しても、本発明の目的を有効に達成できるためである。
【0023】
本発明においてドープは通常、40℃において10000〜25000mPa・sec、特に13000〜22000mPa・secの粘度を有する。
【0024】
本明細書中、粘度はエンジニアリング業界で通常に扱われる市販の振動式粘度計(例えばビスコメイトシリーズFVM−80A、FVM−80A−EX、FVM−80A−EXTH;シービーシー株式会社製)によって測定された値であり、40℃における測定値に読みかえた値である。
【0025】
ドープには、セルロースエステルと溶媒の他に、必要に応じて、可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加剤を含有させてもよい。添加剤は、予め溶媒と混合し、溶解または分散してから、セルロースエステル溶解前の溶媒に投入しても、セルロースエステル溶解後のドープへ投入しても良い。また添加剤はセルロースエステルと同時に使用してもよく、同時に使用することが調製コストの観点から好ましい。
【0026】
可塑剤としては特に限定しないが、リン酸エステル系では、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系では、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等、グリコール酸エステル系では、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を単独あるいは併用するのが好ましい。上記の可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。これらの可塑剤を含有することにより、寸法安定性、耐水性に優れたフィルムが得られるため、特に好ましい。
可塑剤の添加量は特に制限されず、通常はセルロースエステルに対して12重量%以下が好適である。可塑剤を2種類以上併用する場合には、これらの可塑剤の合計量が上記範囲内であれば良い。
【0027】
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。具体例として、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがあげられるが、これらに限定されない。
【0028】
マット剤としては、無機化合物が使用可能であり、具体例として、例えば二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。
【0029】
ドープを調製した後は、ドープの濾過を行う。詳しくは、調製されたドープを収容するドープ調製タンク(例えば、密閉釜)に連結した配管を経て濾過装置であるフィルタープレスに、加圧型ポンプによりドープを送液し濾過を行う。工業的には一般に定速で濾過を行う。
【0030】
濾過に使用される濾紙は、透気度が10秒/300cc以上15秒/300cc以下、好ましくは10.5秒/300cc以上14秒/300cc以下の濾紙(本明細書中、「濾過X」という)および透気度が5秒/300cc以上10秒/300cc未満、好ましくは6秒/300cc以上9秒/300cc以下の濾紙(本明細書中、「濾過Y」という)を組み合わせて使用する。そのような濾紙Xおよび濾紙Yを組み合わせて使用することにより、セルロースエステル不溶解物のフィルムへの混入を十分に防止できる。その結果として、フィルムへの異物の混入を長期にわたって有効に防止でき、濾紙の交換サイクルを十分に延ばすことができる。濾紙Xおよび濾紙Yを組み合わせて使用することにより、セルロースエステル不溶解物のフィルムへの混入を十分に防止できる現象の詳細は明らかではないが、以下のメカニズムに基づくものと考えられる。セルロースエステル不溶解物は一般にドープ中、溶媒に膨潤され、形状変形が容易であるため、濾過圧が高くなると濾紙を容易に通過するようになる。しかしながら、本発明において濾紙Xおよび濾紙Yを組み合わせて使用すると、初期の濾過圧を比較的低く抑えることができるので、濾紙に捕捉されたセルロースエステル不溶解物の濾紙通過を抑制できる。しかも、濾紙上に捕捉されたセルロースエステル不溶解物は、有効にドープ流に曝されて、ドープへの溶解が促進され、濾過圧の上昇を抑えることができるので、結果として濾過圧を比較的低く維持できる。そのため、セルロースエステル不溶解物のフィルムへの混入を長期にわたって防止できるので、濾紙の交換サイクルをより有効に延ばすことができるものと考えられる。
【0031】
異物とは、セルロースエステルの不溶解物だけでなく、添加剤に混入される不純物、外部から混入されるゴミ、及び製造設備、例えば溶解釜、配管などの材質から混入する小片などに由来するものを包含して意味するものとする。この異物は目視で観察でき、フィルム中、不純物として認識される透明又は不透明のものである。
【0032】
濾紙Xのみを重ねて使用した場合および濾紙Xの透気度が大きすぎる場合、濾過圧が初期から比較的高いので、セルロースエステル不溶解物は濾紙に一旦、捕捉されても、濾紙を比較的容易に通過する。しかも、濾過圧が上昇すると、セルロースエステル不溶解物の濾紙通過は顕著になる。そのため、フィルムへのセルロースエステル不溶解物の混入が比較的早期に問題となり、濾紙の交換サイクルを十分に延ばすことができない。濾紙Yのみを重ねて使用した場合および濾紙Yの透気度が小さすぎる場合、セルロースエステル不溶解物だけでなく、それ以外の異物も濾紙を通過するため、初期からフィルムへの異物の混入を十分に防止できない。また、わずかな濾過圧の上昇によっても、捕捉した異物の通過が顕著になり、フィルムへの異物の混入も顕著になる。そのため、濾過圧を比較的低く制御する必要が生じるので、濾過効率が低下するだけでなく、濾過を定速で行った場合には濾紙を比較的短いサイクルで交換する必要が生じる。
【0033】
本発明において濾紙Xおよび濾紙Yはそれぞれ1枚以上使用する。詳しくは1枚以上、好ましくは1〜4枚の濾紙Xおよび1枚以上、好ましくは1〜4枚の濾紙Yは重ね合わせて使用する。2枚以上の濾紙Xが使用される場合、それらの濾紙Xの透気度は前記した濾紙Xの透気度範囲内であれば、同一であっても、または異なっていてもよい。2枚以上の濾紙Yが使用される場合、それらの濾紙Yの透気度は前記した濾紙Yの透気度範囲内であれば、同一であっても、または異なっていてもよい。
【0034】
使用される濾紙Xと濾紙Yとの合計枚数は本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではないが、セルロースエステル不溶解物の混入防止効果と濾過量とのバランスの観点から、通常は2〜8枚、特に3〜5枚が好ましい。
【0035】
濾紙Xと濾紙Yとの使用比率(X/Y)は、セルロースエステル不溶解物の混入をより有効に防止する観点から、枚数比率で20/80〜80/20、特に30/70〜70/30であることが好ましい。
【0036】
濾紙Xおよび濾紙Yの重ね合わせ順序は、本発明の目的が達成される限り特に制限されるものではなく、例えば、ランダムであっても、または規則的であってもよいが、濾過効果、不溶解物の混入防止効果、濾過量、濾過圧、フィルターの寿命の観点から、濾紙Xまたは濾紙Yごとに集結させた順序であることが好ましい。すなわち、ドープ流れ方向の上流側または下流側の一方において全ての濾紙Xを集結させ、他方において全ての濾紙Yを集結させることが好ましい。
【0037】
上流側または下流側の一方において全ての濾紙Xを集結させるとは、重ねて使用される全ての濾紙Xおよび濾紙Yの積層体において、ドープ流れ方向の上流側または下流側の一方に、全ての濾紙Xが互いに隣接するように配置されることを意味する。
他方において全ての濾紙Yを集結させるとは、重ねて使用される全ての濾紙Xおよび濾紙Yの積層体において、全ての濾紙Xが集結した上流側または下流側の一方とは逆の他方に、全ての濾紙Yが互いに隣接するように配置されることを意味する。従って、例えば、ドープ流れ方向において上流側に全ての濾紙Xを集結させる場合、全ての濾紙Yは下流側に集結させる。また例えば、ドープ流れ方向において下流側に全ての濾紙Xを集結させる場合、全ての濾紙Yは上流側に集結させる。
【0038】
より好ましくは、ドープ流れ方向において上流側に全ての濾紙Xを集結させ、下流側に全ての濾紙Yを集結させることである。
【0039】
濾紙の透気度は300mlの空気を特定の圧力および濾過面積の下で濾紙を透過させるのに要する時間で表される濾紙の特性値であり、値が大きいほど当該濾紙の目は詰まっていることを意味する。
【0040】
本明細書中、透気度はJIS−P8117(1998年版)に準拠して測定された値を用いている。
【0041】
濾紙Xおよび濾紙Yはいずれも、例えば木材パルプ、綿花リンターなどの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維、およびポリエステル繊維などの合繊繊維からなる群から選択される1種類またはそれ以上の繊維を原料として形成されたものである。
【0042】
濾紙Xおよび濾紙Yを形成する繊維の平均繊維径および濾紙の厚さは、濾紙Xおよび濾紙Yがそれぞれ前記透気度を有する限り特に制限されるものではなく、異物除去の効果を得る観点からは、以下の範囲内であることが好ましい;
濾紙X;平均繊維径7〜15μm;厚さ0.5〜2mm;
濾紙Y;平均繊維径10〜20μm;厚さ0.5〜2mm。
【0043】
厚さは、JIS−P8118に準拠して測定されるものであって、一定の荷重を加えた時に測定した厚さである。
【0044】
濾紙Xおよび濾紙Yは市販品として入手可能である。
濾紙Xの市販品として、例えば、安積濾紙製のKD03RE、KD03T、およびKD03等の各々高透気度タイプが使用可能である。
濾紙Yの市販品として、例えば、安積濾紙製のKD03RE、KD03T、およびKD03等の各々低透気度タイプが使用可能である。
【0045】
本発明は、本発明の目的が達成される限り、濾紙Xおよび濾紙Y以外の濾紙を使用することを妨げるものではない。
【0046】
本発明においては濾過圧の上昇が抑制されるので、濾過を例えば、後述の濾過量で10日間以上継続して行っても、濾過圧は2000kPa以下、特に1800kPa以下を維持できる。濾過を継続して行うとは、濾紙を交換することなく濾過をし続けるという意味である。濾紙交換の際は、濾過圧が上記値に達したとき、濾過を一時停止して、濾紙を新しいものに交換し、濾過を再開すればよい。現実には濾紙交換のタイミングを、濾過圧が上記値に達したときに厳密に合わせるのは困難であるので、本発明においては濾過圧が1500〜2000kPaの範囲内になることを目安に濾過を一時停止して、濾紙の交換を行えばよい。濾過圧がそのような範囲内のときに濾紙の交換を行えば、本発明の効果を十分に享受できる。本発明では、濾紙交換をするために濾過を終了(一時停止)する直前の上記範囲内の濾過圧を終期圧と呼ぶものとする。終期圧が上記範囲より小さいと、交換サイクルが短くなる。終期圧が上記範囲より大きいと、フィルムへのセルロースエステル不溶解物の混入が顕著になる。
【0047】
一方、上記濾紙を用いて濾過を行ったとき、濾過開始直後の濾過圧は通常、500〜690kPa、特に580〜690kPaである。そのような濾過開始直後の濾過圧を初期圧と呼ぶものとする。
【0048】
濾過圧は詳しくは、フィルタープレス入り側での送液圧、すなわち濾紙がドープ調製タンク側の面で受けるドープ圧力であり、エンジニアリング業界で通常に扱われる市販の圧力計によって測定可能である。
【0049】
濾過は通常、50〜100kg/(m・時)、特に60〜90kg/(m・時)の濾過量で行われる。
濾過量は濾過時のドープ処理量であり、すなわち濾紙が1時間で濾過処理する濾過面積1mあたりのドープ処理量で示されるものである。
【0050】
濾過面積は特に制限されるものではないが、後述の光学フィルム製造工程へ連続的かつ円滑に濾過したドープを供給する観点から、通常は10〜100m、特に20〜80mに設定される。
【0051】
濾過温度、すなわち濾過時のドープ温度は特に制限されるものではない。ドープ溶解性、送液性、製造するフィルム品質の観点から、通常は35〜50℃、特に35〜45℃に設定される。そのようなドープの濾過温度は通常、前記ドープの調製工程におけるドープ調製タンク内で達成される。
【0052】
本発明では、セルロースエステル不溶解物だけでなく、他の異物のフィルムへの混入も十分に防止できる。すなわち、濾過圧が前記初期圧範囲内のいずれかの値のときに濾過されたドープから作製されたフィルムの異物数をA、濾過圧が前記終期圧範囲内のいずれかの値のときに濾過されたドープから作製されたフィルムの異物数をBとしたときのB/Aが1.00〜1.50、特に1.00〜1.40である。
【0053】
連続ライン工程を経て作製されたフィルムを構成するドープが濾過されたときの濾過圧を知見することは、濾過後の工程速度、濾過圧の経時変化等に基づいて容易に可能である。
【0054】
本発明では濾紙Xおよび濾紙Yを用いて以上のような濾過を行うので、濾過によるセルロースエステル不溶解物の残留割合を比較的低いままで長期にわったって維持できる。すなわち濾過圧が1500〜2000kPaのいずれかの値になっても、濾過直前のドープ中の不溶解物数αに対する濾過直後のドープ中の不溶解物数βの比率(β/α)は0.5以下、好ましくは0.45以下であって、しかも不溶解物数βは50個/80mm以下、好ましくは45個/80mm以下である。このとき不溶解物数αは100個/80mm以下、特に90個/80mm以下であることが好ましい。
【0055】
濾過直前のドープ中の不溶解物数αおよび濾過直後のドープ中の不溶解物数βは、所定の濾過圧のときに濾過直前のドープおよび濾過直後のドープを取り出し、これらのドープより作製した厚み80μmのフィルムにおける輝点異物の数に基づいて測定された値を用いている。
【0056】
本発明において以上のような濾過を行った後は、さらに別に濾過を行ってもよい。すなわち、上記のような濾過を一次濾過として行った後で、二次濾過を行う。
二次濾過は、異物のさらなる低減を目的として行われるものであって、フィルターの材質としては特に制限はなく、一般的な各種フィルターを使用することができるが、特にポリプロピレン、テフロン等のプラスチック製のフィルターやステンレス等の金属製のフィルターがフィルター繊維の脱落等がなく好ましい。
【0057】
ドープの濾過を行った後は、溶液流延法により光学フィルムを製造する。濾過されたドープは、フィルムの製造効率の観点から、連続的に溶液流延法による光学フィルム製造工程に送液することが好ましいが、一旦、ストックタンクで静置して脱泡した後で、ストックタンクに連結した配管を経て加圧型ポンプにより光学フィルム製造工程に送液してもよい。
【0058】
本発明において光学フィルム製造工程は特に制限されるものではなく、光学フィルムの分野で一般に採用されている溶液流延法を採用した光学フィルム製造工程であればよい。例えば、ドープを支持体上に流延(キャスト工程)し、加熱して溶剤の一部を除去(支持体上乾燥工程)した後、支持体から剥離し、剥離したフィルムを乾燥(フィルム乾燥工程)して、光学フィルムを得る。光学フィルムの製造工程では、例えば、米国特許第2,492,978号、同2,739,070号、同2,739,069号、同2,492,977号、同2,336,310号、同2,367,603号、同2,607,704号、英国特許64,071号、同735,892号、特公昭45−9074号、同49−4554号、同49−5614号、同60−27562号、同61−39890号、同62−4208号に記載の方法を参照して製膜できる。
【0059】
キャスト工程における支持体は、ベルト状もしくはドラム状のステンレスを鏡面仕上げした支持体が好ましく用いられる。キャスト工程の支持体の温度は一般的な温度範囲0℃〜溶剤の沸点未満の温度で、流延することができるが、0〜35℃の支持体上に流延するほうが、ドープをゲル化させ剥離限界時間をあげられるため好ましく、5〜35℃の支持体上に流延することがさらに好ましい。剥離限界時間とは透明で平面性の良好なフィルムを連続的に得られる流延速度の限界において、流延されたドープが支持体上にある時間をいう。剥離限界時間は短い方が生産性に優れていて好ましい。
【0060】
支持体上乾燥工程ではドープを流延し、一旦ゲル化させた後、流延から剥離するまでの時間を100%としたとき、流延から30%以内にドープ温度を40〜70℃にすることで、溶剤の蒸発を促進し、それだけ早く支持体上から剥離することができ、さらに剥離強度が増すため好ましく、30%以内にドープ温度を55〜70℃にすることがより好ましい。この温度を20%以上維持することが好ましく、40%以上がさらに好ましい。支持体上での乾燥は残留溶媒量60〜150%で支持体から剥離することが、支持体からの剥離強度が小さくなるため好ましく、80〜120%がより好ましい。剥離するときのドープの温度は0〜30℃にすることが剥離時のベース強度をあげることができ、剥離時のベース破断を防止できるため好ましく、5〜20℃がより好ましい。残留溶媒量は固形分に対する残留溶媒量の重量割合で示される。
【0061】
フィルム乾燥工程においては支持体より剥離したフィルムをさらに乾燥し、残留溶媒量を3質量%以下、好ましくは0.5質量%以下にする。フィルム乾燥工程では一般にロール懸垂方式か、ピンテンター方式でフィルムを搬送しながら乾燥する方式が採られる。液晶表示部材用としては、ピンテンター方式で幅を保持しながら乾燥させることが、寸法安定性を向上させるために好ましい。特に支持体より剥離した直後の残留溶媒量の多いところで幅保持を行うことが、寸法安定性向上効果をより発揮するため特に好ましい。フィルムを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ロール、マイクロ波等で行う。簡便さの点で熱風で行うのが好ましい。乾燥温度は40〜150℃の範囲で3〜5段階の温度に分けて、段々高くしていくことが好ましく、80〜140℃の範囲で行うことが寸法安定性を良くするためさらに好ましい。
【0062】
本発明の光学フィルムの厚さは特に制限されないが、10〜100μmであることが液晶表示部材用として好ましく、より好ましくは20〜80μmである。
【0063】
本発明の光学フィルムは液晶表示用部材として有用である。液晶表示用部材とは液晶表示装置に使用される部材のことで、例えば、偏光板用保護フィルム、位相差板、反射板、視野角向上フィルム、防眩フィルム、無反射フィルム、帯電防止フィルムなどがあげられる。
【0064】
本発明の光学フィルムを用いて偏光板を一般的な方法で作製することができる。例えば、光学フィルム(セルロースエステルフィルム)をアルカリ処理し、沃素溶液中で浸漬延伸して作製した偏光膜の両面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような接着性を高める方法を使用しても良い。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
実施例/比較例
<ドープの調製>
下記の成分からなるドープを調製した。セルローストリアセテートは重合度350のものを用いた。
セルローストリアセテート 100重量部
トリフェニルホスフェート 7重量部
メチレンクロライド 394重量部
エタノール 34重量部
【0067】
詳しくは上記の成分を耐圧性の密閉釜に順次投入し、釜内温度を40℃まで昇温したのち、40℃で4時間攪拌を行なって、各成分を溶解した。その後、攪拌を停止し、ドープ温度を35℃まで低下させて、直ちに、密閉釜からこれに連結した配管を経て濾過装置であるフィルタープレスに連続的に送液した。ドープの粘度は40℃換算で15000mPa・secであった。
【0068】
<ドープの濾過>
濾過面積が40mのフィルタープレスを使用し、これに、表1または表2に示す構成のフィルターペーパー(濾紙)を装填した。フィルターペーパーは表に記載の順序で濾紙を重ね合わせ、最左欄の濾紙がドープ流れ方向上流側に、最右欄の濾紙がドープ流れ方向下流側に配向するように装填した。上記のように調製したドープを75kg/(m・時)の濾過量で定速一次濾過した。当該濾過開始直後の濾過圧を測定し、初期圧として表に示した。その後、ドープにさらに濾過面積20mの金属フィルター(NF−06D2;日本精線社製)を通過させることにより二次濾過した。
【0069】
<フィルムの作製>
濾過したドープを連続的に溶液流延法に供してフィルムを作製した。詳しくは、濾過した35℃のドープを、ベルト流延装置を用い、32℃のステンレスベルト支持体上に流延した。その後、支持体上で乾燥させた後、ステンレスバンド支持体上からフィルムを剥離した。このときのフィルムの残留溶媒量は80%であった。ステンレスバンド支持体から剥離した後、80℃に維持された乾燥ゾーンで15分間乾燥させ、残留溶媒量を0.15%として、膜厚80μmのフィルムを作製した。
【0070】
<評価>
・実施時間
そのようなドープの調製、ドープの濾過およびフィルムの作製からなる連続ライン工程を、一次濾過圧が表1または表2に示す終期圧になるまで実施し、一次濾過圧が初期圧から終期圧になるまでの時間を評価した。
○;10.0日間以上であった;
×;5.0日間以上10.0日間未満であり、実用上問題があった;
××;5.0日間未満であった。
【0071】
・ドープ不溶解物数(α、β)
一次濾過圧が終期圧のときに一次濾過直前のドープおよび一次濾過直後のドープを取り出し、これらのドープ中に含まれるセルロースエステル不溶解物の数(それぞれαおよびβ)を測定した。詳しくは各ドープより以下の方法に従って別にフィルムを作製し、不溶解物に起因する輝点異物の数をフィルム80mmあたりの値として求めた。
(フィルムの作製方法)
配管の特定の部位より採取した該当のドープを平面板上に流し、それを適度な間隙のブレードを有する簡易製膜器具を用い、フィルム状になるように製膜した。溶剤が乾燥し平面板より剥離可能な状態になったフィルムを剥離し、乾燥用枠にセットした後に、110℃20分間の乾燥を行い、厚さ80μmのフィルムを得た。
(輝点異物の測定方法)
市販の光学顕微鏡でフィルムを観察し、長径、短径の平均が10μm以上の粒子状に観察される固形状のもののうち、透過光で観察した際に透明状になって見える粒子状の固形物を輝点異物として数量計測し、80mmあたりの数量に換算した。
【0072】
また一次濾過圧が終期圧のときに一次濾過されたドープから上記連続ライン工程を経て得られたフィルム部分を追跡し、当該フィルム部分について、上記と同様の方法により、不溶解物に起因する輝点異物の数をフィルム80mmあたりの値として求め、「最終」製品としての不溶解物数とした。
「最終」製品としての不溶解物数の評価基準は以下の通りである。
○;20個以下;
×;21〜50個(実用上問題があった);
××;51個以上。
【0073】
・異物数
一次濾過圧が初期圧のときに濾過されたドープから上記連続ライン工程を経て作製されたフィルム部分X、および濾過圧が終期圧のときに濾過されたドープから上記連続ライン工程を経て作製されたフィルム部分Xを追跡し、これらのフィルム部分における異物の個数(A,B)を測定した。
【0074】
異物の測定は詳しくは、フィルム部分Xおよびフィルム部分Xを目視観察によりそれぞれ観察し、フィルムの長手方向の長さが20μm以上ある透明あるいは不透明の異物の個数を1mあたりの平均値として求めることにより行い、実際のフィルム製造方法でのフィルム物性より濾紙の性能を評価した。
○;異物数の平均値が10未満であった;
×;異物数の平均値が10以上20以下であり、実用上問題があった;
××;異物数の平均値が20を越えた。
【0075】
またフィルム部分Xの初期異物数平均値Aに対するフィルム部分Xの終期異物数平均値Bの割合B/Aを算出して評価した。
○;1.00≦B/A≦1.50;
×;1.50<B/A≦2.00(実用上問題があった);
××;2.00<B/A。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
濾紙x1:レーヨン(平均繊維径10μm)100%の濾紙(厚み1.6mm、透気度10.5秒/300cc)を使用。
濾紙x2:レーヨン(平均繊維径8μm)100%の濾紙(厚み1.7mm、透気度14.0秒/300cc)を使用。
濾紙x3:レーヨン(平均繊維径6μm)100%の濾紙(厚み1.7mm、透気度16.0秒/300cc)を使用。
濾紙y1:レーヨン(平均繊維径40μm)100%の濾紙(厚み1.6mm、透気度3.0秒/300cc)を使用。
濾紙y2:レーヨン(平均繊維径30μm)100%の濾紙(厚み1.6mm、透気度6.0秒/300cc)を使用。
濾紙y3:レーヨン(平均繊維径20μm)100%の濾紙(厚み1.6mm、透気度8.0秒/300cc)を使用。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の方法は、液晶表示装置に使用される偏光板用保護フィルム、位相差板、反射板、視野角向上フィルム、防眩フィルム、無反射フィルム、帯電防止フィルム等の光学フィルムの製造に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースエステルを溶解したドープを濾過した後、該ドープを用いて溶液流延法により光学フィルムを製造する方法であって、該濾過を、透気度が10秒/300cc以上15秒/300cc以下の濾紙Xおよび透気度が5秒/300cc以上10秒/300cc未満の濾紙Yを用いて行うことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
濾紙Xおよび濾紙Yをそれぞれ1枚以上使用し、濾紙Xと濾紙Yとの使用比率(X/Y)が枚数比率で20/80〜80/20であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
濾紙Xおよび濾紙Yを重ねて使用し、ドープ流れ方向の上流側または下流側の一方において全ての濾紙Xを集結させ、他方において全ての濾紙Yを集結させることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
ドープ流れ方向において上流側に全ての濾紙Xを集結させ、下流側に全ての濾紙Yを集結させることを特徴とする請求項3に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
セルロースエステルを溶解したドープを濾過した後、該ドープを用いて溶液流延法により光学フィルムを製造する方法であって、濾過圧が1500〜2000kPaのいずれかの値のときにおいて、濾過直前のドープ中の不溶解物数αに対する濾過直後のドープ中の不溶解物数βの比率(β/α)が0.5以下であり、不溶解物数βが50個/80mm以下であることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
濾過を濾過圧500〜690kPaで開始することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
濾過量が50〜100kg/(m・時)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
ドープの粘度(40℃)が10000〜25000mPa・secであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項9】
濾過温度が35〜50℃であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項10】
濾過圧が500〜690kPaのいずれかの値のときに濾過されたドープから作製されたフィルムの異物数をA、濾過圧が1500〜2000kPaのいずれかの値のときに濾過されたドープから作製されたフィルムの異物数をBとしたときのB/Aが1.00〜1.50であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法によって得られた光学フィルム。
【請求項12】
請求項11に記載の光学フィルムを用いた偏光板。

【公開番号】特開2007−249094(P2007−249094A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75782(P2006−75782)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】