説明

光学フィルムの製造方法

【課題】セルロース系樹脂フィルムにおいて、厚み方向位相差(Rth)値を簡便に低減することが可能な、セルロース系樹脂フィルムを含む光学フィルムの簡便な製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明の光学フィルムの製造方法は、未処理セルロース系樹脂フィルムにカルボニル化合物含有有機溶媒で処理することを特徴とする。この処理により、セルロース系樹脂フィルムのRthは、処理前より低減させることができる。この製造方法は、製膜化されたセルロース系樹脂フィルムを利用できるので、簡便な製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース系樹脂フィルムは、その様々な特性に応じて、画像表示装置等において、光学フィルムとして用いられている。例えば、セルロース系樹脂フィルムは、画像表示装置等において、偏光板用保護フィルムとして、広く用いられている。そのようなセルロース系樹脂フィルムの中には、用途によっては、好ましくない特性、例えば高い厚み方向位相差(Rth)値を有するものがある。このようなRth値が高いセルロース系樹脂フィルムを、画像表示装置、例えばSTN、TFT、TN等の種々な方式の液晶表示装置において、偏光板用保護フィルムとして用いると、画像表示装置を斜め方向から見たときのコントラストが低下し、視野角が狭くなるという問題点があった。そこで、画像表示装置等に用いるためには、Rth値が低いセルロース系樹脂フィルムが望まれていた。
【0003】
従来、Rth値が低いセルロース系樹脂フィルムを得る方法として、例えば、セルロースエステル誘導体からフィルムに加工する際の工程に特徴がある方法や、セルロースエステルフィルムを製造する際の原料である、セルロースエステル誘導体に特徴がある方法がある。前者の方法としては、例えば、ソルベントキャスト方法によるセルロースアセテートの製造方法において、原料であるセルロースアセテート溶液の調製の際、特定の双極子モーメントを有する有機溶媒を、特定範囲の量で使用することを特徴とする方法(特許文献1参照)、冷却溶解法によるセルロースアセテートフィルムの製造方法において、セルロースエステル溶液の安定性を向上させる可塑剤として、特定なグリセリドを使用することに特徴がある製造方法(特許文献2参照)、および溶液流延製膜法によるセルロースアセテートフィルムの製造方法において、セルロースエステルとブロムプロパンを含有する混合物を、特定の温度および圧力条件下で溶解させることに特徴がある製造方法(特許文献3参照)等が挙げられる。後者の方法としては、例えば、2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.67以上であり、かつ2位および3位のアセチル置換度の合計が1.97以下である新規セルロースアセテート誘導体(特許文献4参照)、炭素数2〜3のアシル基を有する脂肪酸セルロースエステル(特許文献5参照)、および脂肪酸ジ塩基酸ジエステル、トリメリット酸トリエステルおよびリン酸トリエステルから選択される少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とするセルロースアセテートフィルム(特許文献6参照)等のセルロースエステル誘導体が提案されている。しかし、これらの方法は、煩雑であった。また、Rth値に限らず、光学フィルムの特性を、簡便に制御可能な方法が、求められていた。
【特許文献1】特開平10−330538号公報
【特許文献2】特開平11−246704号公報
【特許文献3】特開平2001−206981号公報
【特許文献4】特開平11−5851号公報
【特許文献5】特開平2001−129927号公報
【特許文献6】特開平2001−163995号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、セルロース系樹脂フィルムにおいて、Rth値を簡便に低減することが可能な、セルロース系樹脂フィルムを含む光学フィルムの簡便な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の光学フィルムの製造方法は、未処理セルロース系樹脂フィルムを、カルボニル化合物含有有機溶媒で処理する工程を含む。
【発明の効果】
【0006】
このように、セルロース系樹脂フィルムを、カルボニル化合物含有有機溶媒で処理することにより、簡便にセルロース系樹脂フィルムのRth値を低減することができる。また、この方法により、セルロース系樹脂フィルムのRth値以外の他の特性を変更できてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
前記のように、セルロース系樹脂フィルムのRth値以外の特性も、変更されていてもよいし、Rth値が低減されているのみであってもよい。なお、厚み方向位相差値(Rth)は、下記式(1)により算出される。下記式(1)において、nxおよびnzは、それぞれ前記セルロース系樹脂フィルム等におけるX軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸方向は、前記セルロース系樹脂フィルム等の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Z軸方向は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向であり、前記Y軸方向は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、dは、前記セルロース系樹脂フィルム等の厚みである。
【0008】
Rth=(nx−nz)・d (1)
前記厚み方向位相差(Rth)値は、特に限定されないが、例えば、波長590nmの光で測定されたものであってもよい。なお、本発明の製造方法において、前記セルロース系樹脂フィルムの厚み方向位相差値は、処理前の、例えば1/2以下、好ましくは1/3以下、より好ましくは1/4以下に低減される。さらに、前記セルロース系樹脂フィルムの厚み方向位相差値は、マイナスの値になってもよい。
【0009】
本発明の製造方法において、前記未処理(処理前)セルロース系樹脂フィルムとしては、例えば、セルロースエステルフィルムが挙げられ、これとしては、例えばトリアセチルセルロースフィルムが挙げられる。トリアセチルセルロースフィルムの材料であるトリアセチルセルロース(ポリマー)としては、例えば、2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.67以上であるポリマー、2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.67以上であり、かつ2位および3位のアセチル置換度の合計が1.97以下であるポリマー、2位、3位および6位のアセチル置換度の合計が2.67以上であり、かつ2位および3位のアセチル置換度の合計が1.97以下であり、セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位が2位、3位および6位に遊離の水酸基を有し、これらの水酸基の一部または全部がアセチル化されたポリマー等が挙げられる。
【0010】
前記未処理(処理前)セルロース系樹脂フィルムは、例えば、前記ポリマーを原料とし、押出成形、カレンダー法、溶媒キャスティング法、ソルベントキャスト法、冷却溶解法、溶液流延製膜法等に従い、製造することができる。
【0011】
また、前記未処理(処理前)セルロース系樹脂フィルムとしては、市販品も使用することができ、例えば、セルロースエステルフィルムの片面に、液晶化合物等の塗料がコーティングされている、WVフィルム(商品名)(富士写真フィルム株式会社製)、LCフィルム(商品名)(新日本石油株式会社製)等も、用いることができる。
【0012】
本発明において、未処理セルロース系樹脂フィルムの「未処理」とは、カルボニル化合物含有有機溶媒の処理をしていないことを意味する。例えば、延伸処理、収縮処理等の、他の処理については、未処理セルロース系樹脂フィルムは、処理されていても、処理されていなくてもよい。例えば、前記未処理セルロース系樹脂フィルムは、未延伸のセルロース系樹脂フィルムそのままでもよいし、延伸されたセルロース系樹脂フィルムでもよい。
【0013】
本発明の製造方法において、前記未処理セルロース系樹脂フィルムの400nm〜800nmの波長領域における透過率は、例えば80%以上、好ましくは90%以上である。透過率が80%以上であれば、セルロース系樹脂フィルムを含む光学フィルムが、画像表示装置に組み込まれた際、画像表示に影響を与えないからである。
【0014】
前記未処理セルロース系樹脂フィルムの厚みは、例えば500μm以下、好ましくは5〜300μm、より好ましくは5〜150μmである。この厚みが500μm以下であれば、前記セルロース系樹脂フィルムを含む光学フィルムを、画像表示装置内、例えば偏光板に実装した場合、画像表示装置の外観をより一層向上することができるからである。なお、本発明の製造方法において、前記有機溶媒での処理の一部として、前記未処理セルロース系樹脂フィルム上に前記有機溶媒を塗布する場合、この厚みが5μm以上であれば、好ましい。前記有機溶媒の塗工精度が優れるからである。
【0015】
つぎに、本発明の光学フィルムの製造方法は、例えば以下のようにして行う。まず、未処理セルロース系樹脂フィルムと、カルボニル化合物含有有機溶媒とを準備する。未処理セルロース系樹脂フィルムとしては、前記のものを用いることができる。
【0016】
前記カルボニル化合物としては、例えば、ケトン類、エステル類等が挙げられる。前記ケトン類としては、例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン等が挙げられる。前記エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル等が挙げられる。前記カルボニル化合物としては、ケトン類およびエステル類の少なくとも一方が好ましい。前記カルボニル化合物含有有機溶媒は、1種類の前記カルボニル化合物を含んでもよいし、2種類以上を混合して含んでもよい。また、前記カルボニル化合物含有有機溶媒は、前記カルボニル化合物以外の溶媒等を含んでもよい。
【0017】
前記有機溶媒での処理は、例えば、前記有機溶媒に未処理セルロース系樹脂フィルムを含浸させ、次いで、その溶媒を除去する処理である。このような処理は、例えば、2通りある。1つは、基材フィルム上に前記有機溶媒を塗布し、その上に前記未処理セルロース系樹脂フィルムを積層して、その後乾燥させ、次いで前記基材フィルムを剥離する処理である。もう1つは、ノルボルネン系樹脂を前記有機溶媒に溶解させた溶液を準備し、前記未処理セルロース系樹脂フィルム上に、前記溶液を塗布し、塗布された前記溶液を乾燥させて、ノルボルネン系樹脂フィルムを形成し、次いで、前記ノルボルネン系樹脂フィルムを剥離する処理である。
【0018】
まず、1つめの処理について、説明する。最初に、基材フィルムを準備する。基材フィルムとしては、例えば、前記有機溶媒に対し不溶性のフィルムが挙げられる。前記基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のポリエステルフィルムが挙げられる。
【0019】
次に、前記基材フィルム上に、前記有機溶媒を塗布する。この塗布方法としては、特に限定されず、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。なお、前記有機溶媒の塗布量は、例えば、厚さ40μm、縦10cm×横20cmの大きさのフィルムの場合には2mL以上である。塗布量は、未処理セルロース系樹脂フィルムの厚み、大きさが増せば、それに応じて適宜増加させれば良い。
【0020】
つぎに、前記基材フィルムの、前記有機溶媒が塗布されたその上に、未処理セルロース系樹脂フィルムを積層する。この積層により、前記有機溶媒を、前記未処理セルロース系樹脂フィルムに含浸させることができる。このようにすると、前記基材フィルムが覆いとなるため、前記有機溶媒の揮発が抑制され、前記有機溶媒を前記未処理セルロース系樹脂フィルムへ、より含浸させることができる。
【0021】
つぎに、前記基材フィルムと、前記未処理セルロース系樹脂フィルムとの積層体(形成された積層体)を乾燥させ、その後、前記基材フィルムを剥離する。この乾燥方法は、前記有機溶媒の種類、前記未処理セルロース系樹脂フィルムの種類等に応じて決定されるが、例えば、自然乾燥、加熱処理等が挙げられ、具体的には、有機溶媒の塗布量、未処理セルロース系樹脂フィルムの厚みにより適宜決定される。例えば、温度90〜145℃で1〜10分程度であるが、これに限定されない。
【0022】
つぎに、2つめの処理について説明する。まず、ノルボルネン系樹脂を前記有機溶媒に溶解して、ノルボルネン系樹脂の溶液を調製する。前記ノルボルネン系樹脂は、例えば、アートン(商品名)(JSR社製)、ゼオノア(商品名)(日本ゼオン社製)、トーパス(ティコナ社製)等が挙げられる。中でも、前記ノルボルネン系樹脂としては、後ほど行う乾燥により生じるフィルムが、剥離されやすいため、アートン(商品名)(JSR社製)およびゼオノア(商品名)(日本ゼオン社製)が好ましい。前記有機溶媒は、前述のものを用いることができる。前記溶液中の前記ノルボルネン系樹脂の濃度は、例えば10重量%〜25重量%である。
【0023】
つぎに、前記未処理セルロース系樹脂フィルム上に、前記溶液を塗布して、前記溶液中の前記有機溶媒を前記未処理セルロース系樹脂フィルムに含浸させる。この塗布方法としては、前記基材フィルム上に、前記有機溶媒を塗布する方法と同様の方法を用いることができる。前記溶液の塗布量は、例えば、厚さ40μm、縦10cm×横20cmの大きさのフィルムの場合には2mL以上である。塗布量は、未処理セルロース系樹脂フィルムの厚み、大きさが増せば、それに応じて適宜増加させれば良い。
【0024】
つぎに、前記未処理セルロース系樹脂フィルム上に塗布された、前記溶液を乾燥させる。この乾燥方法は、前記有機溶媒の種類、未処理セルロース系樹脂フィルムの種類等に応じて決定されるが、例えば、自然乾燥、加熱処理等が挙げられ、具体的には、有機溶媒の塗布量、未処理セルロース系樹脂フィルムの厚みにより適宜決定される。例えば、温度90〜145℃で1〜10分程度であるが、これに限定されない。このようにすると、前記溶液の塗布表面がまず乾燥し、例えば、フィルム状になる。そのフィルム状物が、覆いとなるため、前記有機溶媒の揮発が抑制され、前記有機溶媒を前記未処理セルロース系樹脂フィルムへより含浸させることができる。
【0025】
つぎに、前記溶液を乾燥することにより生じたノルボルネン系樹脂フィルムを剥離する。本発明の光学フィルムは、前述のような製造方法により得られる、前記セルロース系樹脂フィルムを含んでいれば、特に制限されず、前記セルロース系樹脂フィルム単独で構成されていてもよいし、必要に応じて、さらに他の光学部材と組み合わせて構成されていてもよい。
【0026】
この光学フィルムは、処理前よりも、厚み方向位相差値(Rth)が低減されているセルロース系樹脂フィルムを含むので、画像表示装置、例えばSTN、TFT、TN等の種々な方式の液晶表示装置において用いたとき、未処理のものを用いた場合よりも、前記画像表示装置のコントラストが、より良好になる。
【0027】
また、前記セルロース系樹脂フィルムの厚みは、処理前の、例えば1.05〜1.50倍、好ましくは1.10〜1.40倍である。
【0028】
また、前記セルロース系樹脂フィルムにおける残留有機溶媒量は、寸法安定性の観点から、相対的に少なければ少ないほど好ましい。この残留有機溶媒量は、例えば1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下である。この残留有機溶媒量が、1重量%以下であれば、寸法安定性のため、光学特性も安定して、好ましい。
【0029】
本発明の光学フィルムは、偏光板用保護フィルムとして、用いることができる。この場合、本発明の光学フィルムは、例えば、偏光子の少なくとも片側に、配置される。前記光学フィルムに含まれるセルロース系樹脂フィルムは、Rthが低減されているので、そのような光学フィルムを、偏光板用保護フィルムとして用いると、その偏光板を用いた画像表示装置のコントラストは、良好になり、好ましい。
【0030】
または、本発明の光学フィルムは、さらに他の光学部材として、偏光子と組み合わせて構成されていてもよい。このようなさらに偏光子を含む光学フィルムの構成は、特に制限されないが、例えば、偏光子の少なくとも片側に、前記セルロース系樹脂フィルムが配置されているものが挙げられる。この場合、従来用いられている保護層を、前記セルロース系樹脂フィルムと一緒に用いてもよいが、偏光子の両側に、前記セルロース系樹脂フィルムが配置されているものが、好ましい。
【0031】
前記偏光子としては、特に制限されず、例えば、従来公知の方法により、各種フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて染色し、架橋、延伸、乾燥することによって調製したもの等が使用できる。この中でも、自然光を入射させると直線偏光を透過するフィルムが好ましく、光透過率や偏光度に優れるものが好ましい。前記二色性物質を吸着させる各種フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム、セルロース系フィルム等の親水性高分子フィルム等があげられ、これらの他にも、例えば、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルム等も使用できる。これらの中でも、PVA系フィルムが好ましい。また、前記偏光子の厚みは、通常、1〜80μmの範囲であるが、これには限定されない。
【0032】
前記従来の保護層としては、特に制限されず、従来公知の透明フィルムを使用できるが、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。このような従来の保護層の材質の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、従来の保護層の材質の具体例としては、前記アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この中でも、偏光特性や耐久性の点から、従来の保護層としては、表面をアルカリ等でケン化処理したTACフィルムが好ましい。
【0033】
前記従来の保護層としては、また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムが挙げられる。このポリマー材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。なお、前記ポリマーフィルムは、例えば、前記樹脂組成物の押出成形物であってもよい。
【0034】
また、前記従来の保護層は、例えば、色付きが無いことが好ましい。具体的には、下記式(2)で表される保護層の厚み方向の位相差値(Rth)が、−90nm〜+75nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは−80nm〜+60nmであり、特に好ましくは−70nm〜+45nmの範囲である。前記位相差値が−90nm〜+75nmの範囲であれば、前記従来の保護層に起因する偏光板の着色(光学的な着色)を十分に解消できる。なお、下記式(2)において、nx,ny,nzは、それぞれ前記従来の保護層におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す。dは、その膜厚を示す。
Rth=(nx-nz)・d (2)
【0035】
前記従来の保護層の厚みは、特に制限されず、例えば、位相差や保護強度等に応じて適宜決定できるが、例えば、500μm以下であり、好ましくは5〜300μm、より好ましくは5〜150μmの範囲である。
【0036】
また、本発明の光学フィルムは、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキングの防止や拡散、アンチグレア等を目的とした処理等が、さらに施されていてもよい。前記ハードコート処理とは、偏光板表面の傷付き防止等を目的とし、例えば、前記光学フィルムの表面に、硬化型樹脂から構成される、硬度や滑り性に優れた硬化被膜を形成する処理である。前記硬化型樹脂としては、例えば、シリコーン系、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系等の紫外線硬化型樹脂等が使用でき、前記処理は、従来公知の方法によって行うことができる。スティッキングの防止は、隣接する層との密着防止を目的とする。前記反射防止処理とは、偏光板表面での外光の反射防止を目的とし、従来公知の反射防止層等の形成により行うことができる。
【0037】
前記アンチグレア処理とは、偏光板表面において外光が反射することによる、偏光板透過光の視認妨害を防止すること等を目的とし、例えば、従来公知の方法によって、前記光学フィルムの表面に、微細な凹凸構造を形成することによって行うことができる。このような凹凸構造の形成方法としては、例えば、サンドブラスト法やエンボス加工等による粗面化方法や、前述のような透明樹脂に透明微粒子を配合して前記光学フィルムを形成する方法等が挙げられる。
【0038】
前記透明微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等が挙げられ、この他にも導電性を有する無機系微粒子や、架橋または未架橋のポリマー粒状物等から構成される有機系微粒子等を使用することもできる。前記透明微粒子の平均粒径は、特に制限されないが、例えば、0.5〜20μmの範囲である。また、前記透明微粒子の配合割合は、特に制限されないが、例えば、前述のような透明樹脂100質量部あたり2〜70質量部の範囲、好ましくは5〜50質量部の範囲である。
【0039】
前記透明微粒子を配合したアンチグレア層は、例えば、従来の保護層そのものとして使用することもでき、また、本発明の光学フィルムの表面に塗工層等として形成されてもよい。さらに、前記アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角を拡大するための拡散層(視覚補償機能等)を兼ねるものであってもよい。
【0040】
なお、本発明の光学フィルムには、位相差板を、さらに含んでもよい。
【0041】
前記位相差板としては、光透過率が80%以上であるポリマーフィルムを原料として、一軸延伸、二軸延伸、Z軸配向処理等することにより、製造されたものを用いることができる。前記原料のポリマーフィルムとしては、外力により複屈折が生じにくいものが好ましい。このような原料のポリマーフィルムとしては、例えば、セルロース系ポリマーフィルム(セルロースエステルフィルムが好ましい)、ノルボルネン系ポリマーフィルム(アートン(商品名)フィルム(JSR株式会社製)、ゼオノア(商品名)フィルム(日本ゼオン株式会社製)等)、ポリメチルメタクリレートフィルム等が挙げられる。また、この原料のポリマーフィルムは、紫外線吸収剤等を含むのが好ましい。また、前記位相差板は、表面処理(例えば、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線処理等)を施されたものが好ましい。前記位相差板の表面の接着性が高まるからである。前記位相差板は、その表面に接着層を設けてもよい。前記接着層の材料としては、特に制限されないが、例えば、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系等のポリマー製感圧接着剤や、ゴム系感圧接着剤等が使用できる。また、これらの材料に、微粒子を含有させて光拡散性を示す層としてもよい。これらの中でも、例えば、吸湿性や耐熱性に優れる材料が好ましい。このような性質であれば、例えば、本発明の光学フィルムを液晶表示装置に使用した場合に、吸湿による発泡や剥離、熱膨張差等による光学特性の低下や、液晶セルの反り等を防止でき、高品質で耐久性にも優れる表示装置となる。
【0042】
また、前記位相差板としては、配向した液晶性化合物を含むフィルムであってもよい。前記液晶性化合物は特に限定されないが、例えば、棒状液晶性化合物、平板状液晶性化合物およびそれらの重合物等を使用することができる。また、前記液晶性化合物としては、単独で使用しても二種類以上を混合して使用しても良く、重合物の場合はホモポリマーでもヘテロポリマー(共重合体)でも良い。前記重合物は、液晶性を残していても良いし、重合や架橋により液晶性が失われていても良い。配向状態が固定化され熱に対して安定であるため、前記液晶性化合物が、架橋構造を有するのが好ましい。また、配向性が良好であり配向欠陥が少ないという理由により、前記液晶性化合物は、ネマチック液晶性化合物を含むことが好ましい。
【0043】
前記液晶性化合物としては、例えば、ディスコティック液晶、ネマチック液晶、コレステリック液晶、スメチック液晶、重合性液晶、ライオトロピック液晶等が挙げられる。前記液晶性化合物としては、より具体的には、例えば、シッフ系液晶、アゾキシ系液晶、アルキルシアノビフェニル系液晶、アルキルシアノターフェニル系液晶、アルキルシアノクオーターフェニル液晶、シアノフェニルシクロヘキサン系液晶、シアノフェニルエステル系液晶、安息香酸フェニルエステル系液晶、フェニルピリミジン系液晶、フェニルジオキサン系液晶等が挙げられる。
【0044】
前記液晶性化合物の誘電率異方性、および屈折率異方性は、負および正のいずれであってもよい。また、前記液晶性化合物は、前記化合物を単独または混合して用いてもよい。前記液晶性化合物の混合物を用いる場合は、その混合物が、ある温度領域で液晶相を発現するか、または、前記混合物の構成成分である、前記液晶性化合物の少なくとも1つが、単独で、ある温度領域で液晶相を発現すればよい。前記液晶性化合物を単独で用いる場合には、その化合物が、ある温度範囲で液晶相を発現すればよい。
【0045】
各構成物(本発明の光学フィルム、偏光子、位相差板、従来の保護層等)の積層方法は、特に制限されず、従来公知の方法によって行うことができる。一般には、接着剤や粘着剤等が使用でき、その種類は、前記各構成物の材質等によって適宜決定できる。前記接着剤としては、例えば、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系等のポリマー製接着剤や、ゴム系接着剤等が挙げられる。また、ホウ酸、ホウ砂、グルタルアルデヒド、メラミン、シュウ酸等のビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤等から構成される接着剤等も使用できる。前記粘着剤としては、例えば、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性や接着性の粘着特性を示すものが好ましい。前記粘着剤の具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等が挙げられる。前述のような接着剤、粘着剤は、例えば、湿度や熱の影響によっても剥がれ難く、光透過率や偏光度にも優れる。具体的には、前記偏光子がPVA系フィルムの場合、例えば、接着処理の安定性等の点から、PVA系接着剤が好ましい。これらの接着剤や粘着剤は、例えば、そのまま偏光子や偏光板用保護フィルムの表面に塗布してもよいし、前記接着剤や粘着剤から構成されたテープやシートのような層を前記表面に配置してもよい。また、例えば、水溶液として調製した場合、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。また、これらの材料に、微粒子を含有させて光拡散性を示す層としてもよい。これらの中でも、例えば、吸湿性や耐熱性に優れる材料が好ましい。このような性質であれば、例えば、液晶表示装置に使用した場合に、吸湿による発泡や剥離、熱膨張差等による光学特性の低下や、液晶セルの反り等を防止でき、高品質で耐久性にも優れる表示装置となる。なお、前記接着剤を塗布する場合は、例えば、前記接着剤水溶液に、さらに、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。このような接着層の厚みは、特に制限されないが、例えば、1nm〜500nmであり、好ましくは10nm〜300nmであり、より好ましくは20nm〜100nmである。また、湿度や熱等によっても剥がれにくく、光透過率や偏光度に優れる偏光板を形成できることから、さらに、グルタルアルデヒド、メラミン、シュウ酸等のPVA系ポリマーの水溶性架橋剤を含む接着剤が好ましい。これらの接着剤は、例えば、その水溶液を前記各構成物表面に塗工し、乾燥すること等によって使用できる。前記水溶液には、例えば、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒も配合できる。これらの中でも、前記接着剤としては、PVAフィルムとの接着性に優れる点から、PVA系接着剤が好ましい。
【0046】
本発明の光学フィルムは、実用に際して、前記位相差板等以外の他の光学層をさらに含んでもよい。前記光学層としては、例えば、従来公知の反射板、半透過反射板、拡散制御フィルム、輝度向上フィルム等、液晶表示装置等の形成に使用される、従来公知の各種光学層が挙げられる。これらの光学層は、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよく、また、一層でもよいし、二層以上を積層してもよい。
【0047】
前記反射板は、その表面が微細凹凸構造であり、例えば、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制できるという利点を有する。このような反射板は、例えば、前記透明保護層の凹凸表面に、真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式等、従来公知の方法により、直接、前記金属箔や金属蒸着膜として形成することができる。
【0048】
前記半透過反射板としては、例えば、反射層で光を反射し、かつ、光を透過するハーフミラー等が挙げられる。
【0049】
前記拡散制御フィルムとしては、例えば、拡散、散乱、屈折を利用したフィルムが挙げられ、例えば、視野角の制御や、解像度に関わるギラツキや散乱光の制御等に使用することができる。
【0050】
前記輝度向上フィルムとしては、例えば、誘電体の多層薄膜や、屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体のような、所定偏光軸の直線偏光を透過して、他の光を反射する特性を示すもの等が使用できる。このような輝度向上フィルムとしては、例えば、3M社製の商品名「D-BEF」等が挙げられる。また、コレステリック液晶層、特にコレステリック液晶ポリマーの配向フィルムや、その配向液晶層をフィルム基材上に支持したもの等が使用できる。これらは、左右一方の円偏光を反射して、他の光は透過する特性を示すものであり、例えば、日東電工社製の商品名「PCF350」、Merck社製の商品名「Transmax」等が挙げられる。
【0051】
本発明の光学フィルムは、液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成に用いることができる。例えば、本発明の液晶パネルは、前記光学フィルムを液晶セルの片側または両側に配置した液晶パネルである。このような液晶パネルは、反射型や半透過型、あるいは透過・反射両用型等の液晶表示装置に用いることができる。前記液晶セルは、IPSモード、OCBモード、VAモードまたはTNモードであってもよい。また、例えば、本発明の液晶表示装置は、本発明の液晶パネルを含む表示装置である。
【0052】
液晶表示装置を形成する前記液晶セルの種類は、任意で選択でき、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、ツイストネマチック型やスーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のもの等、種々のタイプの液晶セルが使用できる。
【0053】
また、前記液晶セルは、例えば、対向する液晶セル基板の間隙に液晶が注入された構造である。この液晶セル基板としては、特に制限されず、例えば、ガラス基板やプラスチック基板が使用できる。なお、このプラスチック基板の材質としては、特に制限されず、従来公知の材料が挙げられる。
【0054】
本発明の液晶表示装置は、さらに反射板を含んでもよい。このような反射板は、例えば、前述のように、前記透明保護層の凹凸表面に、真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式等、従来公知の方法により、直接、前記金属箔や金属蒸着膜として形成することができる。
【0055】
なお、本発明の光学フィルムは、前述のような液晶表示装置には限定されず、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、FED(電界放出ディスプレイ:Field Emission Display)等の自発光型画像表示装置にも使用できる。従って、本発明の画像表示装置は、本発明の光学フィルムを含む画像表示装置である。
【0056】
次に、本発明の実施例について、比較例とあわせて説明する。なお、セルロース系樹脂フィルム、未処理セルロース系樹脂フィルムおよび光学フィルムの特性は、以下の方法で評価した。
【0057】
(屈折率の測定)
アッベ屈折率計を用いて、セルロース系樹脂フィルム等の屈折率を測定した。
【0058】
(位相差、複屈折率および透過率の測定)
自動複屈折計(商品名KOBRA−21ADH;王子計測機器社製)を用いて、セルロース系樹脂フィルム等の波長590nmにおける値を測定した。なお、厚み方向の位相差(Rth)は、セルロース系樹脂フィルム等の法線から0〜40°傾斜した方向からの入射光に対する値を測定した。
【0059】
厚み方向位相差値Rthおよび面内位相差値Reは、下記式(1)および(3)によりそれぞれ算出した。下記式(1)および(3)において、nx,ny,nzは、それぞれ前記セルロース系樹脂フィルム等におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す。dは、前記セルロース系樹脂フィルム等の膜厚を示す。
【0060】
Rth=(nx−nz)・d (1)
Re=(nx−ny)・d (3)
(膜厚測定)
接触式ダイヤルゲージ(商品名FILM THICKNESS TESTER KG601B、アンリツ社製)を用いて、セルロース系樹脂フィルム等の膜厚を測定した。
【0061】
また、以下の実施例で使用した、2種類の厚み40μmと80μmのトリアセチルセルロースフィルム(商品名UZ−TAC、富士写真フィルム株式会社製)(未処理セルロース系樹脂フィルム)の特性は、以下のとおりであった。
【0062】
厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム(商品名UZ−TAC、富士写真フィルム株式会社製)
nx=1.49035、ny=1.4903、nz=1.48935、
Re=2nm、Rth=40nm。
【0063】
厚み80μmのトリアセチルセルロースフィルム(商品名UZ−TAC、富士写真フィルム株式会社製)
nx=1.49026、ny=1.49025、nz=1.48949、
Re=1.3nm、Rth=63.9nm。
【実施例1】
【0064】
まず、シクロペンタノン(カルボニル化合物含有有機溶媒)(5mL)をPETフィルム(厚み75μm、縦10cm×横20cm)(基材フィルム)上にバーコート法により塗布した。そのシクロペンタノンの塗布された面上に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み40μm、縦10cm×横20cm、透過率93%)(商品名UZ−TAC、富士写真フィルム株式会社製)(未処理セルロース系樹脂フィルム)を積層した。この積層体を、100℃で5分間乾燥させた。その後、この積層体から、前記PETフィルムを剥離して、セルロース系樹脂フィルム単独からなる光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの厚みは45μm、透過率は93%、屈折率はnx=1.49002、ny=1.49002、nz=1.48996、面内位相差値Reは0nm、厚み方向位相差値Rthは2.4nmであった。
【実施例2】
【0065】
まず、メチルエチルケトン(カルボニル化合物含有有機溶媒)(5mL)をPETフィルム(厚み75μm、縦10cm×横20cm)(基材フィルム)上にバーコート法により塗布した。そのメチルエチルケトンの塗布された面上に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み40μm、縦10cm×横20cm、透過率93%)(商品名UZ−TAC、富士写真フィルム株式会社製)(未処理セルロース系樹脂フィルム)を積層した。この積層体を、100℃で5分間乾燥させた。その後、この積層体から、前記PETフィルムを剥離して、セルロース系樹脂フィルム単独からなる光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの厚みは43μm、透過率は93%、屈折率はnx=1.49016、ny=1.49015、nz=1.48969、面内位相差値Reは0.4nm、厚み方向位相差値Rthは18.8nmであった。
【実施例3】
【0066】
まず、ノルボルネン系樹脂(アートン(商品名)、JSR社製)をシクロペンタノン(カルボニル化合物含有有機溶媒)に溶解させ、15重量%の溶液を調製した。次いで、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み80μm、縦10cm×横20cm、透過率93%)(商品名UZ−TAC、富士写真フィルム株式会社製)(未処理セルロース系樹脂フィルム)の面上に、前記溶液を塗布した。前記溶液の塗布量は、乾燥後に得られるノルボルネン系樹脂フィルムの厚みが15μmになるような量であった。この前記溶液を塗布したTACフィルムを、140℃で3分間乾燥させた。その後、形成されたノルボルネン系樹脂フィルムを剥離して、セルロース系樹脂フィルム単独からなる光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの厚みは98μm、透過率は93%、屈折率はnx=1.49002、ny=1.49、nz=1.48998、面内位相差値Reは2.4nm、厚み方向位相差値Rthは4nmであった。
【実施例4】
【0067】
トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み80μm、縦10cm×横20cm、透過率93%)(商品名UZ−TAC、富士写真フィルム株式会社製)(未処理セルロース系樹脂フィルム)の面上に、実施例3で調製した溶液を塗布した。前記溶液の塗布量は、乾燥後に得られるノルボルネン系樹脂フィルムの厚みが30μmになるような量であった。この前記溶液を塗布したTACフィルムを、110℃で3分間乾燥させた。その後、形成されたノルボルネン系樹脂フィルムを剥離して、セルロース系樹脂フィルム単独からなる光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの厚みは107μm、透過率は93%、屈折率はnx=1.48001、ny=1.47996、nz=1.48003、面内位相差値Reは4.9nm、厚み方向位相差値Rthは−2.8nmであった。
【0068】
(比較例1)
まず、メタノール(非カルボニル化合物含有有機溶媒)(5mL)をPETフィルム(厚み75μm、縦10cm×横20cm)(基材フィルム)上にバーコート法により塗布した。そのメタノールの塗布された面上に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み40μm、縦10cm×横20cm、透過率93%)(商品名UZ−TAC、富士写真フィルム株式会社製)を積層した。この積層体を、100℃で5分間乾燥させた。その後、この積層体から、前記PETフィルムを剥離して、溶媒処理されたセルロース系樹脂フィルムを得た。このセルロース系樹脂フィルムの厚みは40μm、透過率は93%、屈折率はnx=1.49002、ny=1.49、nz=1.48907、面内位相差値Reは0.8nm、厚み方向位相差値Rthは38nmであった。
【0069】
(比較例2)
メタノールの代わりに、エタノールを用いた以外は、比較例1と同様にした。溶媒処理されたセルロース系樹脂フィルムの厚みは40μm、透過率は93%、屈折率はnx=1.49002、ny=1.49001、nz=1.48905、面内位相差値Reは0.4nm、厚み方向位相差値Rthは39nmであった。
【0070】
(比較例3)
メタノールの代わりに、トルエンを用いた以外は、比較例1と同様にした。溶媒処理されたセルロース系樹脂フィルムの厚みは41μm、透過率は93%、屈折率はnx=1.4901、ny=1.49007、nz=1.4893、面内位相差値Reは1.2nm、厚み方向位相差値Rthは33nmであった。
【0071】
(比較例4)
メタノールの代わりに、65℃の温水を用いた以外は、比較例1と同様にした。溶媒処理されたセルロース系樹脂フィルムの厚みは40μm、透過率は93%、屈折率はnx=1.49002、ny=1.49、nz=1.4891、面内位相差値Reは0.8nm、厚み方向位相差値Rthは36.8nmであった。
【0072】
前記実施例1〜4の光学フィルムおよび比較例1〜4の溶媒処理されたセルロース系樹脂フィルムの光学特性を下記表1に示す。
【0073】
【表1】

【0074】
実施例1〜4のセルロース系樹脂フィルム単独からなる光学フィルムのRthは、処理前より低減されており、詳細には1/2以下であった。一方、比較例1〜4のセルロース系樹脂フィルムのRthは、処理前とほとんど同じであった。従って、本発明の製造方法によれば、例えば、Rthを低減させたセルロース系樹脂フィルムを含む光学フィルムを、簡便に製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の製造方法は、例えば、画像表示装置に用いる偏光板用保護フィルムに用いられる光学フィルムの製造に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未処理セルロース系樹脂フィルムを、カルボニル化合物含有有機溶媒で処理する工程を含む、セルロース系樹脂フィルムを含む光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記処理により、前記セルロース系樹脂フィルムの厚み方向位相差値を、処理前より低減させる請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記未処理セルロース系樹脂フィルムが、セルロースエステルフィルムである請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記カルボニル化合物が、ケトン類およびエステル類の少なくとも一方である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記有機溶媒での処理が、前記有機溶媒の含浸およびその除去である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記有機溶媒の含浸およびその除去が、
基材フィルム上に前記有機溶媒を塗布し、
その上に前記未処理セルロース系樹脂フィルムを積層して、その後乾燥させ、
次いで前記基材フィルムを剥離することにより行われる請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記基材フィルムが、ポリエステルフィルムである請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記有機溶媒の含浸およびその除去が、
ノルボルネン系樹脂を前記有機溶媒に溶解させた溶液を準備し、
前記未処理セルロース系樹脂フィルム上に、前記溶液を塗布し、
塗布された前記溶液を乾燥させて、ノルボルネン系樹脂フィルムを形成し、
次いで、前記ノルボルネン系樹脂フィルムを剥離することにより行われる請求項5に記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−10863(P2006−10863A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185321(P2004−185321)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】