説明

光学フィルムの製造方法

【課題】ラビング処理の条件から簡便、容易にかつ再現性よく、得られる複屈折層の複屈折性を予測し、所望の複屈折性が与えられた複屈折層を含む光学フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】第1〜第6ステップを含む光学フィルムの製造方法。
ラビング処理する際の摩擦強度を規定するパラメータの値が互いに異なる値で複数の配向膜用フィルムをラビング処理する第1ステップ。
前記配向膜に高分子を被覆して、複屈折層と配向膜との積層体を製造する第2ステップ。
前記積層体の複屈折層における複屈折性を測定する第3ステップ。
前記パラメータ値と、前記複屈折性の値との相関関係を算出する第4ステップ。
前記相関関係から、所望の複屈折性を複屈折層に与えるための配向膜のパラメータ値を算出する第5ステップ。
第5ステップで求めたパラメータ値にて、配向膜用フィルムをラビング処理し、得られた配向膜に高分子を被覆する第6ステップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配向膜用フィルムをラビング処理して得られる配向膜に高分子を被覆して得られる被覆層を含む光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CRTと比較して省スペースや低消費電力である液晶表示装置(LCD)や有機エレクトロルミネッセンス(EL)などのフラットパネル表示装置(FPD)は、コンピュータ、テレビ、携帯電話、カーナビゲーションあるいは携帯情報端末の画面として、広く普及している。そして、FPDには、反射防止、視野角拡大などのためにさまざまな光学フィルムが用いられている。例えば、屈折率の異なる光学薄膜層を多層化して光の干渉効果で表面の反射率を低減させるアンチリフレクション(AR)フィルムなどの反射防止フィルム、特定の振動方向の光だけ透過させ他の光を遮断する偏光フィルム、STN方式やTN方式などのLCDの干渉色を光学的に色補償する位相差フィルム、偏光フィルムと位相差フィルムを一体化した楕円偏光フィルム、LCDの視野角を拡大する視野角拡大フィルムなどが挙げられる。
光学フィルムの1種としては、λ/4板が知られ、その製造方法としては、ポリビニルアルコール、ポリカーボネートやシクロオレフィン系などのフィルムを延伸する方法が一般的である。
また、延伸フィルムとは異なる光学補償性を与える光学フィルムとしては、例えば、アルキル変性ポリビニールアルコールやポリイミド等の配向膜用フィルムをラビング処理して配向膜を得、該配向膜に重合性液晶分子を被覆・重合させて、得られる高分子の層が複屈折性を示す層である被覆層を含む光学フィルムが知られている(特許文献1)。
ところで、ラビング処理によって得られる配向膜における面内位相差値、チルト角などの複屈折性を制御する方法については、例えば、非特許文献1に記載されているように未だ提案されていない。もちろん、配向膜に被覆される被覆層の複屈折性を制御する方法についても未だ提案されていない。
最近、FPDの大型化にともない、表示画面全体を広い角度から観察すると、表示画像が着色したり(着色現象という)、白黒が反転したり(反転現象という)、表示画面の上方向である反視角方向に視角を傾けていくと、コントラストが低下したりするという問題が生じることが明らかになっている。
このような広視野角化、高表示品位化に対応した光学フィルムには、光学補償効果及び反射防止機能に加えて、視野角依存性の改善や着色現象のさらなる改善が求められている。このような改善には、光学フィルムの被覆層において、面内位相差値、チルト角などの複屈折性を任意に制御する方法が不可欠である。しかしながら、所望の複屈折性が与えられた被覆層を含む光学フィルムの製造条件は、従来から予測することができず、予測に基づいて所望の光学フィルムを製造することもできなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2003−114330号公報
【非特許文献1】Jpn. J. Appl. Phys. Vol.32(1993) pp.L1242-1244
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、配向膜用フィルムをラビング処理して得られる配向膜に高分子を被覆して得られる被覆層を含む光学フィルムの製造方法において、ラビング処理における摩擦係数を指標として配向膜の複屈折性の制御を行い、配向膜に被覆される被覆層の複屈折性を制御する方法を検討したが、摩擦係数は布や複屈折性を制御する前のフィルム(以下、配向膜用フィルムという)の表面状態によって異なり、ラビング処理によって直ちに布や配向膜用フィルムの表面状態は変化することから、摩擦係数を再現性良く求めることは困難なため、摩擦係数を指標として配向膜の複屈折性の制御を行うことは困難で、被覆層の複屈折性も制御することはできなかった。
本発明の目的は、配向膜用フィルムをラビング処理して得られる配向膜に高分子を被覆して得られる被覆層を含む光学フィルムについて、ラビング処理の条件から簡便、容易にかつ再現性よく、得られる被覆層の複屈折性を予測し、所望の複屈折性が与えられた被覆層を含む光学フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、配向膜用フィルムをラビング処理して得られる配向膜に高分子を被覆して得られる被覆層を含む光学フィルムの製造方法において、該被覆層は複屈折性を有し、次の第5及び第6ステップを含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法である。
[第5ステップ]
該配向膜用フィルムにラビング処理する際の摩擦強度を規定するパラメータ値と該被覆層の複屈折性との相関関係から、所望の複屈折性を被覆層に与えるための配向膜用フィルムに実施されるパラメータ値を算出するステップ。
[第6ステップ]
前記第5ステップで求めたパラメータ値に基づいて選択されたパラメータ値にて、配向膜用フィルムをラビング処理し、得られた配向膜に前記と同種の高分子を被覆するステップ。
【0006】
中でも、第5ステップの相関関係が、次の第1〜第4ステップを含むステップを用いて算出されることが好ましい。
[第1ステップ]
配向膜用フィルムにラビング処理して複数の配向膜を製造するステップであって、ラビング処理する際の摩擦強度を規定するパラメータの値が互いに異なる値で、複数の配向膜用フィルムのそれぞれにラビング処理するステップ。
[第2ステップ]
第1ステップで測定された配向膜のそれぞれに、複屈折性を与える高分子を被覆して得られる被覆層と、配向膜との積層体を複数、製造するステップ。
[第3ステップ]
前記第2ステップで得られた複数の積層体の被覆層における複屈折性を測定するステップ。
[第4ステップ]
第2ステップで得られた複数の積層体について、第1ステップで得られたパラメータ値と、第3ステップで得られた複屈折性の値との相関関係を算出するステップ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、配向膜用フィルムをラビング処理して得られる配向膜に高分子を被覆して得られる被覆層を含む光学フィルムについて、被覆層の複屈折性をラビング処理の摩擦強度を表すパラメータの値から簡便、容易にかつ再現性よく、得られる被覆層の複屈折性を予測することができる。
また、上記予測に基づいて、所望の複屈折性が与えらた被覆層を含む光学フィルムを簡便かつ容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を第1ステップから順次、説明する。
第1ステップは、配向膜用フィルムにラビング処理して複数の配向膜を製造するステップであって、ラビング処理する際の摩擦強度を規定するパラメータの値が互いに異なる値で複数の配向膜用フィルムのそれぞれにラビング処理するステップである。
第1ステップに用いられる配向膜用フィルムは、例えば、可溶性ポリイミド、ポリアミック酸とポリアミンとの共重合フィルム、アルキル鎖変性ポリビニルアルコール、ゼラチンのフィルムが挙げられる。中でも可溶性ポリイミド、アルキル鎖変性ポリビニルアルコールは入手が容易であることから好ましい。
配向膜用フィルムとしては、例えば、オプトマーALシリーズ(登録商標、JSR製)、サンエバーSEシリーズ(登録商標、日産化学工業製)、アルキル鎖変性ポリビニルアルコールなどの市販の配向膜用フィルムをそのまま用いてもよい。
本発明の全ステップにおいて、配向膜用フィルムの厚み、幅などの大きさは変更されてもよいが、配向膜用フィルムに用いられる原料は同じ種類であり、その製造方法は実質的に同一方法であることが好ましい。通常は、市販されている配向膜用フィルムが同一品種のものを用いればよい。
【0009】
ラビング処理とは、配向膜用フィルムを布で摩擦する処理を意味し、例えば、図1に記載のような装置を用いて実施する。図1の1は、ローラーでありその外周部に布2が外周に巻かれている。図1の3は矢印7の方向に移動し得るテーブルであり、テーブル3には、配向膜用フィルム4が載置されている。テーブル3の上には、ガラス板、金属板、基材フィルムなどの基材の上に積層された配向膜用フィルムが載置されていてもよい。
回転するローラー1にテーブル3が移動して、配向膜用フィルム4と布2とが接触して摩擦される。
図1のラビング処理の装置を用いた場合、摩擦強度のパラメータとは、例えば、ローラー1の回転数、ローラー1とテーブル3との間隔6(以下、押込量という場合がある)、配向膜用フィルムの送出速度(テーブル3がローラー1に送出される速度)、テーブル3がローラー1の下を通過する回数(以下、ラビング回数という。例えば、回転するローラー1の下をテーブル3が1回、通過するとラビング回数1回という。)、及び布の性質などが挙げられる。
ローラー1の回転数が大きくなると配向膜用フィルムとの接触回数が大きくなり摩擦強度が大きくなり、押込量6が小さくなると布2と配向膜用フィルムとが強く接触して摩擦強度が大きくなり、配向膜用フィルムの送出速度が小さくなると、ローラー1との摩擦時間が長くなるから摩擦強度が大きくなり、ラビング回数を多くすると摩擦強度が大きくなる。
【0010】
ラビング処理に用いられる布は、例えば、麻、絹、木綿、羊毛などの天然繊維布、例えば、人絹、ポリアミド、ポリイミドなどの人工繊維布などが挙げられる。布の表面は、通常、ベルベット地のものが用いられる。
第1ステップで用いられるラビング処理の装置の大きさや布の種類と、後述する第6ステップのラビング処理の装置の大きさや布の種類とは、同じであることが好ましく、とりわけ、同一装置や同一布であることが好ましい。
【0011】
第1ステップで「パラメータの値が互いに異なる値で複数の配向膜用フィルムのそれぞれにラビング処理する」とは、例えば、値が異なるパラメータとしてはローラー1の回転数のみである場合、同種類の配向膜用フィルム(A、B、C・・・)について、他のパラメータである押込量、配向膜用フィルムの送出速度及びラビング回数を一定にして、ローラー1の回転数をa, b, c・・・と変えてラビング処理し、ラビング処理された配向膜(A−a、B−b、C−c・・・)を製造することを意味する。
得られる配向膜の枚数は多いほど、後述する第4ステップの相関関係の相関係数が向上する傾向があることから好ましい。パラメータの値を1つだけ変更する場合、通常、3〜5枚の配向膜を作成する。
【0012】
本発明の第2ステップは、第1ステップで測定された配向膜のそれぞれに、複屈折性を与える高分子を被覆して得られる被覆層と、配向膜との積層体を複数、製造するステップである。通常、配向膜に直接、被覆層が被覆されている。
高分子を被覆する方法としては、例えば、第1ステップで得られた配向膜に、溶融した液晶性高分子を被覆する方法、例えば、重合性液晶化合物を含む溶液を配向膜に塗工、重合させて配向膜に高分子を被覆する方法などが挙げられる。中でも後者の重合による被覆方法は塗工液の粘度が低いので平滑性に優れる等の取り扱いが容易であることや、被覆層の形成工程が比較的低温で行うことができることから好ましい。
【0013】
以下、重合による被覆方法をさらに詳しく説明する。
まず、重合性液晶化合物及び有機溶媒に、必要に応じて、非重合性液晶性高分子、重合開始剤、重合禁止剤、光増感剤、架橋剤、レベリング剤などの添加剤を加えて、溶液を調製する。
ここで、重合性液晶化合物とは、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の3章 分子構造と液晶性の、3.2 ノンキラル棒状液晶分子、3.3 キラル棒状液晶分子に記載された化合物の中で重合性基を有する化合物が挙げられる。
重合性液晶化合物として、異なる複数の重合性液晶化合物を用いてもよい。
【0014】
重合性液晶化合物としては、中でも、式(1)
P1−E1−B1−A1-B2-A2-B3−A3−B4−E2−P2 (1)
で表される化合物が好ましい。
式(1)中、A1、A2及びA3はそれぞれ独立に、2価の環状炭化水素基、2価の複素環基、メチレンフェニレン基、オキシフェニレン基またはチオフェニレン基を表す。A1、A2及びA3には、メチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4程度のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基などの炭素数1〜4程度のアルコキシ基;トリフルオロメチル基;トリフルオロメチルオキシ基;ニトリル基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子が置換されていてもよい。
【0015】
2価の環状炭化水素基の具体例としては、下記式で表される芳香族基などが挙げられ、

【0016】
2価の環状炭化水素基のその他の例としては、下記式で表される脂環式基などが挙げられる。

【0017】
複素環基としては、例えば、下記式が挙げられる。

【0018】
A1、A2及びA3としては、中でも、いずれも同種類の基であると、製造が容易であることから好ましく、とりわけ、1,4−フェニレン基または1,4−シクロヘキシレン基は、製造が容易であることから好ましい。
【0019】
式(1)中のB1、B2、B3及びB4はそれぞれ独立に、−CH−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH−CH−、−O−、−S−、−C(=O)−、
−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−、−CH=N−、
−N=CH−、−N=N−、−N(→O)=N−、−N=N(→O)−、
−C(=O)−NR’−、−NR’−C(=O)−、−OCH−、−NR’−、
−CHO−、−SCH−、−CHS−、−CH=CH−C(=O)−O−、
−O−C(=O)−CH=CH−、単結合から選ばれる2価の基を表す。ここで、R’は水素原子またはアルキル基を表す。
中でも、単結合、−C≡C−、−O−、−O−C(=O)−O−、−O−C(=O)−、−O−C(=O)−O−が、製造が容易で、複屈折性に優れることから好ましい。
また、B1、B2、B3及びB4は、同じ種類の2価の基であると製造が容易なことから好ましい。
【0020】
式(1)中、E1及びE2は、それぞれ独立に、炭素数2〜25のアルキレン基、好ましくは、炭素数4〜10のアルキレン基を表す。
E1及びE2の水素原子は、アルキル基、アルコキシ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメチルオキシ基、ニトリル基、ニトロ基、ハロゲン原子に置換されていてもよいが、水素原子のままであることが好ましい。
E1及びE2は、同じ種類のアルキレン基であると製造が容易なことから好ましい。
【0021】
式(1)中、P1及びP2は、水素原子または重合性基を表し、P1及びP2の少なくとも1つは重合性基である。
ここで、重合性基とは、本発明の重合性液晶化合物を重合させることのできる置換基であり、具体的には、ビニル基、p−スチルベン基、アクリロイル基、メタクロイル基、カルボキシル基、メチルカルボニル基、水酸基、アミド基、炭素数1〜4もアルキルアミノ基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、アルデヒド基、イソシアネート基、チオイソシアネート基などが例示される。
また、重合性基には、上記例示の基とE1及びE2を連結するために、B1及びB2に例示される基が含まれていてもよい。
中でも、光重合させる際の取扱いが容易な上、製造も容易であることからアクリロイル基又はメタクロイル基が好ましく、とりわけ、アクリロイル基が好ましい。
P1及びP2の少なくとも一方は重合性基であり、好ましくは、P1及びP2はいずれも重合性基であると、得られる光学フィルムの膜硬度が優れる傾向があることから、好ましい。
【0022】
重合性液晶化合物としては、中でも、式(1−1)〜(1−10)がアクリロイル基を有する化合物が入手容易であることから好ましい。

【0023】
非重合性液晶化合物とは、前記液晶便覧の3章 分子構造と液晶性の、3.2 ノンキラル棒状液晶分子、3.3 キラル棒状液晶分子に記載された化合物の中で重合性基を有しない化合物が挙げられる。具体例として下記式の化合物が挙げられる。

【0024】
重合による被覆方法で用いられる有機溶媒としては、重合性液晶化合物、非重合性液晶化合物などを溶解し得る有機溶媒であり、具体的には、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンなどの炭化水素溶媒などが例示される。有機溶媒として複数種の有機溶媒を用いてもよい。
得られた溶液は、塗工しやすいように、通常、10Pa・s以下、好ましくは0.1mPa・s〜7Pa・s程度に調整される。
【0025】
続いて、得られた溶液を配向膜に塗工し、乾燥、重合させて、配向膜上に被覆層を得ることができる。
重合は、重合性液晶化合物の重合性基が光重合性であれば、可視光、紫外光、レーザー光などの光を照射して硬化させ、該重合性基が熱重合性であれば、加熱によって重合させる。
成膜性の観点から、光重合の方が好ましく、取り扱い性の観点から、紫外光による重合がとりわけ好ましい。
【0026】
溶媒の乾燥は、光重合の場合には、成膜性を向上させるために、光重合前にほとんど溶媒を乾燥させておくことが好ましい。また、熱重合の場合には、通常、乾燥とともに重合を進行させ、好ましくは、重合前にほとんどの溶媒を乾燥させておくと、成膜性に優れる傾向がある。
溶媒の乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、通風乾燥、減圧乾燥などの方法が挙げられる。
【0027】
配向膜への塗工方法としては、例えば、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、CAPコーティング法、ダイコーティング法などが挙げられる。また、ディップコーター、バーコーター、スピンコーターなどのコーターを用いて塗工する方法などが挙げられる。
【0028】
第3ステップは、前記第2ステップで得られた複数の積層体の被覆層における複屈折性を測定するステップであり、複屈折性としては、例えば、チルト角、面内位相差値などが挙げられる。
複屈折性について図2に基づいて説明すると、被覆層11の光学特性を示す屈折率楕円体12において、3次元の主屈折率na、nb、ncが定義される。Z軸と主屈折率ncとのなす角13をチルト角と定義され、Z方向から観察したときにコーティングフィルム上にできる垂直楕円面14の長軸nyと短軸nxが定義されnyとnxの差と膜厚dの積(ny−nx)・dを面内位相差値と定義される。
面内位相差値の測定法としては、例えば、エリプソメータ測定などの方法が挙げられる。チルト角の測定法としては、例えば、面内位相差値の測定において、光の入射角依存性を測定し、理想屈折率楕円体の位相差値の入射角依存による変化の計算値を用いてカーブフィッティングから算出する方法などが挙げられる。
【0029】
得られる光学フィルムの面内位相差値(リタデーション値)は、式(2)のように決定される。後述する第2ステップで用いられる配向膜とは異なる厚みの配向膜を用いて第1ステップの面内位相差値を得た場合、式(2)を用いて第2ステップで用いる配向膜の厚みに換算して面内位相差値を求めればよい。
Re(λ)=d×Δn(λ) (2)
(式中、Re(λ)は、波長 λ nmにおける位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長 λ nmにおける屈折率異方性を表す。)
【0030】
第4ステップとは、第2ステップで得られた複数の積層体について、第1ステップで得られたパラメータ値と、第3ステップで得られ複屈折性の値との相関関係を算出するステップである。
図3(実施例1)では、パラメータとしてローラー回転数(x)を用い、ローラー回転数をさまざまに変えて得られた配向膜について、それぞれに被覆された面内位相差値(y)を測定し、これらをプロットしたグラフであり、累乗近似で近似したところ、
近似式 y=133.71x0.023(相関係数 0.9588)の相関関係が得られたものである。
表1には、同様に、布としてYA−20−R(吉川化工製)を用いた場合(実施例1〜6)のパラメータ(x)の種類、複屈折性(y)の種類、相関関係を表す式、該式の相関係数についてまとめたものである。
【0031】
【表1】

【0032】
ラビング処理において変更されたパラメータ値と被覆層の複屈折性との相関関係の算出する方法とは、布の種類、配向膜用フィルム、被覆層の原料及び製造方法、該パラメータ値以外のパラメータは一定として、変更されたパラメータ値と、配向膜に被覆された被覆層の複屈折性の値との関係を線形近似、累乗近似、最小二乗法などの従来公知の数学、統計学および化学工学などの分野における回帰式を用いて相関関係を算出する方法である。算出する際には、表計算ソフトウェアや、数学計算用ソフトウェアや、化学プロセス設計用ソフトウェアなどのフィティング方法が好適に使用可能である。
また、その他の相関関係を算出する方法としては、布の種類、配向膜用フィルム、該パラメータ値以外のパラメータ、並びに、被覆層の原料及び製造法は固定するが、変更されたパラメータ値と該配向膜に被覆された被覆層の複屈折性の値とを、ニューラルネットワークモデルを構築して、相関関係を見出す手法を用いてもよい。
【0033】
第5ステップは該配向膜用フィルムにラビング処理する際の摩擦強度を規定するパラメータ値と該被覆層の複屈折性との相関関係から、所望の複屈折性を被覆層に与えるための配向膜用フィルムに実施されるパラメータ値を算出するステップである。通常、第5ステップの相関関係は、第4ステップで求められた相関関係が用いられる。
尚、予め、相関関係が算出されていれば、算出された相関関係に基づいて、第5ステップを実施すればよく、第5ステップを実施する毎に第1〜第4ステップを実施する必要はない。
【0034】
また、本発明の予測方法は、配向膜用フィルムをラビング処理して得られる配向膜に高分子を被覆して得られる被覆層を含む光学フィルムにおける被覆層の複屈折性を予測する方法であって、前記第5ステップ、すなわち、該配向膜用フィルムにラビング処理する際の摩擦強度を規定するパラメータ値と該被覆層の複屈折性との相関関係から、所望の複屈折性を被覆層に与えるための配向膜用フィルムに実施されるパラメータ値を算出するステップを含むことを特徴とする被覆層の複屈折性予測方法である。
上記相関関係は、通常、第4ステップで求められた相関関係が用いられる。つまり、予め、相関関係が算出されていれば、算出された相関関係に基づいて、第5ステップを実施すればよく、第5ステップを実施する毎に第1〜第4ステップを実施する必要はない。
具体的には、被覆層の面内位相差値が155nmであることを所望した場合、実施例1の相関式からローラー回転数を616rpmとすればよいことが予測されることになる。実際、ローラー回転数600rpmのラビング処理を施した配向膜から得られた被覆層の面内位相差値が155nmであり、予測値とほぼ一致する。
【0035】
また、本発明の予測方法は、プログラムで表すことができる。図8は本発明のプログラムを実行するコンピュータシステムの一例であり、図9は本発明のプログラムをフローチャートとして表した例示である。以下、本発明のプログラムを説明する。
第1ステップで実施されたパラメータを入力部から入力し(S1)、第3ステップで測定された複屈折性を入力部から入力する(S2)。これらの入力値はCPUを介してメモリ又は外部記憶装置に保存される。
次に、入力値の入力が終了したか否かを判断したのち(S3)、メモリまたは外部記憶装置に保存されたアプリケーションソフトを用いて、CPUにてパラメータと複屈折性との相関式を算出する(S4、第4ステップ)。算出された相関式はメモリ及び/又は外部記憶装置に保存される。
続いて、被覆層における所望の複屈折性を入力部から入力し(S5)、S4で求め、保存された相関式に該入力値を代入してラビング処理に必要なパラメータの予測結果を算出し(S6)、ディスプレイ、プリンターなどの提示部から提示する(S7)。
さらに、パラメータの予測を実行すると判断した場合にはS5から繰り返せばよく、それ以外は終了することになる。
【0036】
上記プログラムは、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにコンピュータ上でソフトウェアによって実現してもよい。
すなわち、コンピュータは、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、図9に示される各処理を実現するソフトウェアである制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記コンピュータに供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
また、上記コンピュータを通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された搬送波あるいはデータ信号列の形態でも実現され得る。
【0037】
第6ステップは、前記第5ステップで求めたパラメータ値に基づいて選択されたパラメータ値にて、配向膜用フィルムをラビング処理し、得られた配向膜に前記と同種の高分子を被覆するステップである。通常、被覆層は配向膜に直接、被覆されている。
第6ステップに用いられる配向膜用フィルムは、通常、材料及び製造方法は第1ステップで用いられた配向膜用フィルムと実質的に同一の材料及び製造方法であり、好ましくは、第1ステップで用いられた配向膜用フィルムと同一品種の配向膜用フィルムが用いられる。
第6ステップに用いられる高分子は、第2ステップで用いられた高分子と同種類の高分子が用いられる。
【0038】
かくして得られた積層体は、配向膜を積層したまま本発明の光学フィルムとして用いてもよいし、積層体の被覆層の面を他の透明フィルムなどに転写するなどして、配向膜から被覆層のみを取り出して光学フィルムとして用いてもよい。
本発明の光学フィルムは、そのまま、反射防止フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、光学補償フィルムとして使用してもよい。
また、他のフィルムと組み合わせてもよい。具体的には、偏光フィルムに本発明の光学フィルムを貼合させた楕円偏光板、該楕円偏光板にさらに本発明の光学フィルムを広域帯λ/4板として貼合させた広域帯円偏光板などが挙げられる。
【0039】
本発明の表示装置は、前記光学フィルムを含むフラットパネル表示装置(FPD)であり、具体的には、電極、及び配向膜が形成された二枚の透明基板に液晶材料が挟まれ、電圧を印加することにより、液晶分子を駆動させて、光シャッター効果を有する液晶表示素子に、本発明の光学フィルムを含む偏光板を貼合してなる液晶表示装置(LCD);電極が形成された透明基板と、金、銀、アルミニウム、白金等や合金の電極の間に、少なくとも1層の導電性有機化合物からなる発光層が形成され、透明基板上に本発明の光学フィルムを含む広域帯円偏光板を有する有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)などが挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
【0041】
[実施例1]
(第1及び第2ステップ)
ガラス基板上にポリイミド サンエバーSE−610(日産化学社製)を塗布した後、乾燥、アニ−ルして、膜厚約100nmの配向膜用フィルムを得た。続いてラビング処理において、押込み量lを0.5mm、ステージの送出速度vを12mm/s、ラビング回数Nを1回、ラビング布YA−20−R吉川化工社製と固定し、ローラー回転数nを240r.p.m.、360r.p.m.、480r.p.m.、600r.p.m.、760r.p.m.、840r.p.m.、1000r.p.m.と変化させて各々異なる配向膜についてラビング処理を施したのち、ラビング処理を施した面に、表2の組成の塗布液をスピンコート法により塗布し、55℃で1分間乾燥したのち、紫外線を照射して、厚さ1.5μmの被覆層を含む光学フィルムを作成した。
【0042】
【表2】

*1:イルガキュア907(チバスペシャリティーケミカルズ社製)
【0043】
(第3ステップ及び第4ステップ)
作成した光学フィルムの被覆層の光学特性について、測定器(KOBRA−WR、王子計測機器社製)を用いて、被覆層の位相差の視角依存性を測定した。結果を図3、図4に示す。面内位相差はローラー回転数に依存し、151nmから156.5nmまで変化した。また、被覆層の屈折率楕円体のチルト角についてもローラー回転数に依存し6.6°から8.5°に変化した。
また、ローラー回転数と面内位相差値との相関関係、ローラー回転数とチルト角との相関関係については前記表1に記載のとおりである。
【0044】
(第5ステップ及び第6ステップ)
表1に記載の相関式を格納したコンピュータに、所望の面内位相差値155nmを入力すると、ローラー回転数が616nmであることが出力される。
第1ステップ及び第2ステップで示したように、ポリイミド配向膜SE−610(日産化学社製)を塗布した後、乾燥、アニ−ルして、膜厚約100nmの膜を得、続いてラビング処理において、押込み量lを0.5mm、ステージ速度vを12mm/s、ラビング回数Nを1回、ラビング布YA−20−R吉川化工社製と固定し、ローラー回転数nを600r.p.m.のラビング処理を施したのち、ラビング処理を施した面に、表2の組成の塗布液をスピンコート法により塗布し、55℃で1分間乾燥したのち、紫外線を照射して、厚さ1.5μmの被覆層を含む光学フィルムを作成すると、該被覆層は面内位相差値は155nmである。
【0045】
[実施例2]
ラビング条件として、ローラー回転数nを480r.p.m.、送出速度vを12mm/s、ラビング回数Nを1回、ラビング布YA−20−Rと固定し、押込み量lを0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mmと変化させる以外は、実施例1と同様にして、被覆層を含む光学フィルムを製造した。
得られた光学フィルムについて、実施例1と同様に、被覆層の面内位相差の視角依存性を測定した。結果を図5に示したように、被覆層の屈折率楕円体のチルト角は押込み量に依存し5.3°から8.8°に変化した。
チルト角と押込み量との相関関係等の結果を表1にまとめた。
【0046】
[実施例3]
ポリイミドとして、サンエバー SE−1410(登録商標、日産化学社製)及びラビング条件として、ローラー回転数nを480r.p.m.、押込み量lを0.5mm、ラビング回数Nを1回、ラビング布YA−20−Rと固定し、送出速度vを3mm/s、4mm/smm/s、6mm/s、9mm/s、12mm/sと変化させる以外は、実施例1と同様にして、被覆層を含む光学フィルムを製造した。
得られた光学フィルムについて、実施例1と同様に、被覆層の面内位相差を測定した。結果を図6に示す。被覆層の面内位相差は送出速度に依存し、153.5nmから149nmまで変化した。
面内位相差とステージ速度との相関関係等の結果を表1にまとめた。
【0047】
[実施例4]
ポリイミドとして、サンエバー SE−1410(日産化学社製)及びラビング条件として、ローラー回転数nを480r.p.m.、押込み量lを0.5mm、送出速度12mm/s、ラビング布YA−20−Rと固定し、ラビング回数Nを1回、2回、3回、4回、5回と変化させる以外は、実施例1と同様にして、被覆層を含む光学フィルムを製造した。
得られた光学フィルムについて、実施例1と同様に、被覆層のチルト角を測定した。結果を図7に示す。被覆層のチルト角はラビング回数に依存し1.37°から3.08°に変化している。また、被覆層の屈折率楕円体のチルト角についても押込み量に依存し2.7°から4.6°に変化した。
チルト角とラビング回数との相関関係等の結果を表1にまとめた。
【0048】
[実施例5]
ガラス基板上にポリイミド サンエバーSE−610(日産化学社製)を塗布した後、乾燥、アニ−ルして、膜厚約100nmの配向膜用フィルムを得た。続いてラビング処理において、押込み量lを0.5mm、ステージの送出速度vを12mm/s、ラビング回数Nを1回に固定、ラビング布をYA−18−R吉川化工社製に変更し、ローラー回転数nを240r.p.m.、360r.p.m.、480r.p.m.、600r.p.m.、840r.p.m.、1000r.p.m.と変化させて各々異なる配向膜についてラビング処理を施したのち、ラビング処理を施した面に、表2の組成の塗布液をスピンコート法により塗布し、55℃で1分間乾燥したのち、紫外線を照射して、厚さ1.5μmの被覆層を含む光学フィルムを作成した。
得られた光学フィルムについて、実施例1と同様に、被覆層の位相差の視角依存性を測定した。結果を図10、図11に示す。面内位相差はローラー回転数に依存し、146nmから147.6nmまで変化した。また、被覆層の屈折率楕円体のチルト角についてもローラー回転数に依存し11.9°から10.8°に変化した。
また、ローラー回転数と面内位相差値との相関関係、ローラー回転数とチルト角との相関関係については前記表1に記載のとおりである。
【0049】
[実施例6]
ガラス基板上にポリイミド サンエバーSE−610(日産化学社製)を塗布した後、乾燥、アニ−ルして、膜厚約100nmの配向膜用フィルムを得た。続いてラビング処理において、押込量lを0.5mm、ステージの送出速度vを12mm/s、ラビング回数Nを1回に固定、ラビング布をYA−19−R吉川化工社製に変更し、ローラー回転数nを240r.p.m.、360r.p.m.、480r.p.m.、600r.p.m.、840r.p.m.、1000r.p.m.と変化させて各々異なる配向膜についてラビング処理を施したのち、ラビング処理を施した面に、表2の組成の塗布液をスピンコート法により塗布し、55℃で1分間乾燥したのち、紫外線を照射して、厚さ1.5μmの被覆層を含む光学フィルムを作成した。
得られた光学フィルムについて、実施例1と同様に、被覆層の位相差の視角依存性を測定した。結果を図12、図13に示す。面内位相差はローラー回転数に依存し、149.5nmから150.6nmまで変化した。また、被覆層の屈折率楕円体のチルト角についてもローラー回転数に依存し10.2°から8.45°に変化した。
また、ローラー回転数と面内位相差値との相関関係、ローラー回転数とチルト角との相関関係については前記表1に記載のとおりである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、アンチリフレクション(AR)フィルムなどの反射防止フィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、視野角拡大フィルムなど、光学フィルムの光学特性を簡便な方法で制御することができ、配向膜について所望の光学特性になるように配向処理すれば、光学フィルムとして、重合性化合物の配向を制御でき、所望する光学特性を簡便な方法で調整することができる。また、本発明の光学フィルムは液晶表示装置(LCD)や有機エレクトロルミネッセンス(EL)などのフラットパネル表示装置(FPD)に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】ラビング処理の装置に係る概略図である。
【図2】被覆層における屈折率楕円体の模式図である。
【図3】実施例1で作成した被覆層における面内位相差値とラビング処理におけるローラー回転数との相関関係を示すグラフである。
【図4】実施例1で作成した被覆層におけるチルト角とラビング処理におけるローラー回転数との相関関係を示すグラフである。
【図5】実施例2で作成した被覆層におけるチルト角とラビング処理における押込量との相関関係を示すグラフである。
【図6】実施例3で作成した被覆層における面内位相差値とラビング処理におけるテーブル送出速度との相関関係を示すグラフである。
【図7】実施例4で作成した被覆層におけるチルト角とラビング処理におけるラビング回数との相関関係を示すグラフである。
【図8】本発明のプログラムを実行するコンピュータシステムの一例である。
【図9】本発明のプログラムのフローチャートの一例である。
【図10】実施例5で作成した被覆層における面内位相差値とラビング処理におけるローラー回転数との相関関係を示すグラフである。
【図11】実施例5で作成した被覆層におけるチルト角とラビング処理におけるローラー回転数との相関関係を示すグラフである。
【図12】実施例6で作成した被覆層における面内位相差値とラビング処理におけるローラー回転数との相関関係を示すグラフである。
【図13】実施例6で作成した被覆層におけるチルト角とラビング処理におけるローラー回転数との相関関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0052】
1・・・ローラー
2・・・布
3・・・テーブル
4・・・配向膜用フィルム
5・・・ローラーの回転方向
6・・・押込量
7・・・テーブルの移動方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配向膜用フィルムをラビング処理して得られる配向膜に高分子を被覆して得られる被覆層を含む光学フィルムの製造方法において、該被覆層は複屈折性を有し、次の第5及び第6ステップを含むことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
[第5ステップ]
該配向膜用フィルムにラビング処理する際の摩擦強度を規定するパラメータ値と該被覆層の複屈折性との相関関係から、所望の複屈折性を被覆層に与えるための配向膜用フィルムに実施されるパラメータ値を算出するステップ。
[第6ステップ]
前記第5ステップで求めたパラメータ値に基づいて選択されたパラメータ値にて、配向膜用フィルムをラビング処理し、得られた配向膜に前記と同種の高分子を被覆するステップ。
【請求項2】
配向膜用フィルムにラビング処理する際の摩擦強度を規定するパラメータ値と被覆層の複屈折性との相関関係が、次の第1〜第4ステップを含むステップを用いて算出されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
[第1ステップ]
配向膜用フィルムにラビング処理して複数の配向膜を製造するステップであって、ラビング処理する際の摩擦強度を規定するパラメータの値が互いに異なる値で、複数の配向膜用フィルムのそれぞれにラビング処理するステップ。
[第2ステップ]
第1ステップで測定された配向膜のそれぞれに、複屈折性を与える高分子を被覆して得られる被覆層と、配向膜との積層体を複数、製造するステップ。
[第3ステップ]
前記第2ステップで得られた複数の積層体の被覆層における複屈折性を測定するステップ。
[第4ステップ]
第2ステップで得られた複数の積層体について、第1ステップで得られたパラメータ値と、第3ステップで得られた複屈折性の値との相関関係を算出するステップ。
【請求項3】
配向膜用フィルムにラビング処理する際の摩擦強度を規定するパラメータ値と被覆層の複屈折性との相関関係が、第1ステップで実施されるパラメータ値と第3ステップで測定される複屈折性との回帰式であることを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
パラメータが、ラビング処理におけるローラーの回転数、ラビング回数、ローラーの押込量及び配向膜用フィルムの送出速度からなる群から選ばれる少なくとも1種のパラメータであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
複屈折性がチルト角又は面内位相差値であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
高分子が、重合性液晶化合物を重合して得られる液晶性高分子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
配向膜用フィルムをラビング処理して得られる配向膜に高分子を被覆して得られる被覆層を含む光学フィルムにおける被覆層の複屈折性を予測する方法であって、前記第5ステップを含むことを特徴とする被覆層の複屈折性予測方法。
【請求項8】
配向膜用フィルムにラビング処理する際の摩擦強度を規定するパラメータ値と被覆層の複屈折性との相関関係が、前記第1〜第4ステップを含むステップを用いて算出されることを特徴とする請求項7に記載の予測方法。
【請求項9】
請求項8に記載の予測方法における各ステップの中で、第1ステップで実施したパラメータ値を入力するステップと、第3ステップで測定された複屈折性の値を入力するステップと、第4ステップの相関関係を算出するステップと、被覆層における所望の複屈折性の値を入力するステップと、被覆層における所望の複屈折性の値と第4ステップで算出された相関関係とから配向膜用フィルムに実施されるべきパラメータ値を算出するステップと、算出されたパラメータ値を提示するステップとを具備することを特徴とする複屈折性の予測プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の予測プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能な記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−79547(P2007−79547A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173683(P2006−173683)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】