説明

光学フィルムの製造方法

【課題】 膜厚均一性および表面平滑性に優れ、光学ムラが少ない光学フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】 環状オレフィン系樹脂と帯電防止剤とを溶融混合した状態でダイから押し出し、冷却ロールに静電圧着してフィルム化することを特徴とする、光学フィルムの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイラインのない光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学フィルムは、透明性などの光学特性に優れることが求められるとともに、フィルムが均質で表面平滑性に優れ、光学ムラが少ないことが肝要である。そのため、溶融押出成形によりフィルムを成形する場合、フィルムを押し出した後に冷却ロールに圧着する際に、フィルム表面を冷却ロール表面に静電圧着させる製法(特許文献1、2参照)により、ダイラインと呼ばれるフィルム長手方向に発生する筋状ムラ等の無い表面平滑性に優れたフィルムを得る方法が用いられる。しかしながら、ノルボルネン系熱可塑性樹脂フィルムにおいて静電圧着を行った場合には、高電圧をかけなければフィルムが圧着しにくく、高電圧をかけるとフィルム表面の外観を損ねるという問題点があった。
【特許文献1】特開昭61−83017号公報
【特許文献2】特開2001−192458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、膜厚均一性および表面平滑性に優れ、光学ムラが少ない光学フィルムの製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、下記式(1)で表される化合物(以下、「特定単量体」ともいう)由来の構造単位を有する環状オレフィン系樹脂と帯電防止剤とを溶融混合した状態でダイから押し出し、冷却ロールに静電圧着してフィルム化することを特徴とする、光学フィルムの製造方法に関する。
【0005】
【化1】

(式(1)中、R〜Rは、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、またはその他の1価の有機基であり、それぞれ同一または異なっていても良い。また、R〜R のうち任意の2つが互いに結合して、単環または多環構造を形成しても良い。mは0または正の整数であり、pは0または正の整数である。)
帯電防止剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリアミドオリゴマーおよびポリエチレングリコールから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
本発明の製造方法においては、冷却ロールがフィルム圧着面の両端部に静電電極を有する構造であり、当該電極から2〜8kVの電圧をかけて静電圧着することが好ましい。
本発明は、上記光学フィルムをさらに延伸してなる光学フィルムの製造方法であってもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、膜厚均一性および表面平滑性に優れ、光学ムラが少ない光学フィルムの製造方法を提供することができる。また、光学フィルムが延伸を施したフィルムである場合には、位相差や光軸の安定した、光学的にムラのないフィルムとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
環状オレフィン系樹脂
本発明に用いられる環状オレフィン系樹脂は、特定単量体由来の構造単位を有する樹脂であり、次のような(共)重合体が挙げられる。
(1)特定単量体の開環(共)重合体。
(2)特定単量体と共重合性単量体との開環共重合体。
(3)上記(1)または(2)の開環(共)重合体の水素添加(共)重合体。
(4)上記(1)または(2)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加した(共)重合体。
(5)特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体。
(6)特定単量体、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体の付加型(共)重合体およびその水素添加(共)重合体。
(7)特定単量体とアクリレートとの交互共重合体。
これらのうち、光学特性と加工特性の両方に優れる(3)の開環(共)重合体の水素添加(共)重合体が、特に好ましく用いられる。
【0008】
<特定単量体>
上記特定単量体の具体例としては、次のような化合物が挙げられるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[4.3.0.12,5 ]−8−デセン、
トリシクロ[4.4.0.12,5 ]−3−ウンデセン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[6.5.1.13,6 .02,7 .09,13]−4−ペンタデセン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−iso−プロピル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロiso−プロピル−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5 .17,10]−3−ドデセン
などを挙げることができる。
これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0009】
特定単量体のうち好ましいのは、上記式(1)中、RおよびRが水素原子または炭素数1〜10、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2の炭化水素基であり、R およびR が水素原子または一価の有機基であって、RおよびRの少なくとも一つは水素原子および炭化水素基以外の極性を有する極性基を示し、mは0〜3の整数、pは0〜3の整数であり、より好ましくはm+p=0〜4、さらに好ましくは0〜2、特に好ましくはm=1、p=0であるものである。m=1、p=0である特定単量体は、得られる環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度が高くかつ機械的強度も優れたものとなる点で好ましい。
上記特定単量体の極性基としては、カルボキシル基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アリロキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基などが挙げられ、これら極性基はメチレン基などの連結基を介して結合していてもよい。また、カルボニル基、エーテル基、シリルエーテル基、チオエーテル基、イミノ基など極性を有する2価の有機基が連結基となって結合している炭化水素基なども極性基として挙げられる。これらの中では、カルボキシル基、水酸基、アルコキシカルボニル基またはアリロキシカルボニル基が好ましく、特にアルコキシカルボニル基またはアリロキシカルボニル基が好ましい。
【0010】
さらに、RおよびRの少なくとも一つが式−(CHCOORで表される極性基である単量体は、得られる環状オレフィン系樹脂が高いガラス転移温度と低い吸湿性、各種材料との優れた密着性を有するものとなる点で好ましい。上記の特定の極性基にかかる式において、Rは炭素原子数1〜12、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2の炭化水素基、好ましくはアルキル基である。また、nは、通常、0〜5であるが、nの値が小さいものほど、得られる環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度が高くなるので好ましく、さらにnが0である特定単量体はその合成が容易である点で好ましい。
【0011】
また、上記式(1)において、RまたはRがアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基、さらに好ましくは1〜2のアルキル基、特にメチル基であることが好ましく、特に、このアルキル基が上記の式−(CHCOORで表される特定の極性基が結合した炭素原子と同一の炭素原子に結合されていることが、得られる環状オレフィン系樹脂の吸湿性を低くできる点で好ましい。
【0012】
<共重合性単量体>
共重合性単量体の具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエンなどのシクロオレフィンを挙げることができる。
シクロオレフィンの炭素数としては、4〜20が好ましく、さらに好ましいのは5〜12である。これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
特定単量体/共重合性単量体の好ましい使用範囲は、重量比で100/0〜50/50であり、さらに好ましくは100/0〜60/40である。
【0013】
<開環重合触媒>
本発明において、(1)特定単量体の開環重合体、および(2)特定単量体と共重合性単量体との開環共重合体を得るための開環重合反応は、メタセシス触媒の存在下に行われる。
このメタセシス触媒は、(a)W、MoおよびReの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)デミングの周期律表IA族元素(例えばLi、Na、Kなど)、IIA族元素(例えば、Mg、Caなど)、IIB族元素(例えば、Zn、Cd、Hgなど)、IIIA族元素(例えば、B、Alなど)、IVA族元素(例えば、Si、Sn、Pbなど)、あるいはIVB族元素(例えば、Ti、Zrなど)の化合物であって、少なくとも1つの該元素−炭素結合あるいは該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組合せからなる触媒である。また、この場合に触媒の活性を高めるために、後述の(c)添加剤が添加されたものであってもよい。
【0014】
(a)成分として適当なW、MoあるいはReの化合物の代表例としては、WCl、MoCl、ReOCl などの特開平1−132626号公報第8頁左下欄第6行〜第8頁右上欄第17行に記載の化合物を挙げることができる。
(b)成分の具体例としては、n−CLi、(CAl、(CAlCl、(C1.5AlCl1.5、(C)AlCl、メチルアルモキサン、LiHなど特開平1−132626号公報第8頁右上欄第18行〜第8頁右下欄第3行に記載の化合物を挙げることができる。
添加剤である(c)成分の代表例としては、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などが好適に用いることができるが、さらに特開平1−132626号公報第8頁右下欄第16行〜第9頁左上欄第17行に示される化合物を使用することができる。
【0015】
メタセシス触媒の使用量としては、上記(a)成分と特定単量体とのモル比で「(a)成分:特定単量体」が、通常、1:500〜1:50,000となる範囲、好ましくは1:1,000〜1:10,000となる範囲とされる。
(a)成分と(b)成分との割合は、金属原子比で(a):(b)が1:1〜1:50、好ましくは1:2〜1:30の範囲とされる。
(a)成分と(c)成分との割合は、モル比で(c):(a)が0.005:1〜15:1、好ましくは0.05:1〜7:1の範囲とされる。
【0016】
<重合反応用溶媒>
開環重合反応において用いられる溶媒(分子量調節剤溶液を構成する溶媒、特定単量体および/またはメタセシス触媒の溶媒)としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカン類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナンなどのシクロアルカン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンなどの芳香族炭化水素、クロロブタン、ブロモヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどの、ハロゲン化アルカン、ハロゲン化アリールなどの化合物、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル、ジメトキシエタンなどの飽和カルボン酸エステル類、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル類などを挙げることができ、これらは単独であるいは混合して用いることができる。これらのうち、芳香族炭化水素が好ましい。
溶媒の使用量としては、「溶媒:特定単量体(重量比)」が、通常、1:1〜10:1となる量とされ、好ましくは1:1〜5:1となる量とされる。
【0017】
<分子量調節剤>
得られる開環(共)重合体の分子量の調節は、重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によっても行うことができるが、本発明においては、分子量調節剤を反応系に共存させることにより調節する。
ここに、好適な分子量調節剤としては、例えばエチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィン類およびスチレンを挙げることができ、これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが特に好ましい。
これらの分子量調節剤は、単独であるいは2種以上を混合して用いることができる。
分子量調節剤の使用量としては、開環重合反応に供される特定単量体1モルに対して0.005〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルとされる。
【0018】
(2)開環共重合体を得るには、開環重合工程において、特定単量体と共重合性単量体とを開環共重合させてもよいが、さらに、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどの共役ジエン化合物、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなどの主鎖に炭素−炭素間二重結合を2つ以上含む不飽和炭化水素系ポリマーなどの存在下に特定単量体を開環重合させてもよい。
【0019】
以上のようにして得られる開環(共)重合体は、そのままでも用いられるが、これをさらに水素添加して得られた(3)水素添加(共)重合体は、耐衝撃性の大きい樹脂の原料として有用である。
<水素添加触媒>
水素添加反応は、通常の方法、すなわち開環重合体の溶液に水素添加触媒を添加し、これに常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧の水素ガスを0〜200℃、好ましくは20〜180℃で作用させることによって行われる。
水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを使用することができる。この水素添加触媒としては、不均一系触媒および均一系触媒が挙げられる。
【0020】
不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属触媒物質を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒を挙げることができる。また、均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを挙げることができる。触媒の形態は、粉末でも粒状でもよい。
【0021】
これらの水素添加触媒は、開環(共)重合体:水素添加触媒(重量比)が、1:1×10−6〜1:2となる割合で使用される。
このように、水素添加することにより得られる水素添加(共)重合体は、優れた熱安定性を有するものとなり、成形加工時や製品としての使用時の加熱によっても、その特性が劣化することはない。ここに、水素添加率は、通常、50%以上、好ましく70%以上、さらに好ましくは90%以上であり、特に好ましくは99%以上である。
【0022】
また、水素添加(共)重合体の水素添加率は、500MHz、H−NMRで測定した値が50%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。水素添加率が高いほど、熱や光に対する安定性が優れたものとなり、本発明の波長板として使用した場合に長期にわたって安定した特性を得ることができる。
なお、本発明の環状オレフィン系樹脂として使用される水素添加(共)重合体は、該水素添加(共)重合体中に含まれるゲル含有量が5重量%以下であることが好ましく、さらに1重量%以下であることが特に好ましい。
【0023】
また、本発明の環状オレフィン系樹脂として、(4)上記(1)または(2)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化したのち、水素添加した(共)重合体も使用できる。
<フリーデルクラフト反応による環化>
(1)または(2)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化する方法は特に限定されるものではないが、特開昭50−154399号公報に記載の酸性化合物を用いた公知の方法が採用できる。酸性化合物としては、具体的には、AlCl、BF、FeCl、Al、HCl、CHClCOOH、ゼオライト、活性白土などのルイス酸、ブレンステッド酸が用いられる。
環化された開環(共)重合体は、(1)または(2)の開環(共)重合体と同様に水素添加できる。
【0024】
さらに、本発明の環状オレフィン系樹脂として、(5)上記特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体も使用できる。
<不飽和二重結合含有化合物>
不飽和二重結合含有化合物としては、例えばエチレン、プロピレン、ブテンなど、好ましくは炭素数2〜12、さらに好ましくは炭素数2〜8のオレフィン系化合物を挙げることができる。
特定単量体/不飽和二重結合含有化合物の好ましい使用範囲は、重量比で90/10〜40/60であり、さらに好ましくは85/15〜50/50である。
【0025】
本発明において、(5)特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体を得るには、通常の付加重合法を使用できる。
<付加重合触媒>
上記(5)飽和共重合体を合成するための触媒としては、チタン化合物、ジルコニウム化合物およびバナジウム化合物から選ばれた少なくとも一種と、助触媒としての有機アルミニウム化合物とが用いられる。
ここで、チタン化合物としては、四塩化チタン、三塩化チタンなどを、またジルコニウム化合物としてはビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどを挙げることができる。
【0026】
さらに、バナジウム化合物としては、式
VO(OR)、またはV(OR)
〔ただし、Rは炭化水素基、Xはハロゲン原子であって、0≦a≦3、0≦b≦3、2≦(a+b)≦3、0≦c≦4、0≦d≦4、3≦(c+d)≦4である。〕
で表されるバナジウム化合物、あるいはこれらの電子供与付加物が用いられる。
上記電子供与体としては、アルコール、フェノール類、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、有機酸または無機酸のエステル、エーテル、酸アミド、酸無水物、アルコキシシランなどの含酸素電子供与体、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアナートなどの含窒素電子供与体などが挙げられる。
【0027】
さらに、助触媒としての有機アルミニウム化合物としては、少なくとも1つのアルミニウム−炭素結合あるいはアルミニウム−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも一種が用いられる。
上記において、例えばバナジウム化合物を用いる場合におけるバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物の比率は、バナジウム原子に対するアルミニウム原子の比(Al/V)が2以上であり、好ましくは2〜50、特に好ましくは3〜20の範囲である。
【0028】
付加重合に使用される重合反応用溶媒は、開環重合反応に用いられる溶媒と同じものを使用することができる。また、得られる(5)飽和共重合体の分子量の調節は、通常、水素を用いて行われる。
【0029】
さらに、本発明の環状オレフィン系樹脂として、(6)上記特定単量体、およびビニル系環状炭化水素系単量体またはシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体の付加型共重合体およびその水素添加共重合体も使用できる。
<ビニル系環状炭化水素系単量体>
ビニル系環状炭化水素系単量体としては、例えば、4−ビニルシクロペンテン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロペンテンなどのビニルシクロペンテン系単量体、4−ビニルシクロペンタン、4−イソプロペニルシクロペンタンなどのビニルシクロペンタン系単量体などのビニル化5員環炭化水素系単量体、4−ビニルシクロヘキセン、4−イソプロペニルシクロヘキセン、1−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセン、2−メチル−4−ビニルシクロヘキセン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセンなどのビニルシクロヘキセン系単量体、4−ビニルシクロヘキサン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキサンなどのビニルシクロヘキサン系単量体、スチレン、α―メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、4−フェニルスチレン、p−メトキシスチレンなどのスチレン系単量体、d−テルペン、1−テルペン、ジテルペン、d−リモネン、1−リモネン、ジペンテンなどのテルペン系単量体、4−ビニルシクロヘプテン、4−イソプロペニルシクロヘプテンなどのビニルシクロヘプテン系単量体、4−ビニルシクロヘプタン、4−イソプロペニルシクロヘプタンなどのビニルシクロヘプタン系単量体などが挙げられる。好ましくは、スチレン、α−メチルスチレンである。これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0030】
<シクロペンタジエン系単量体>
本発明の(6)付加型共重合体の単量体に使用されるシクロペンタジエン系単量体としては、例えばシクロペンタジエン、1−メチルシクロペンタジエン、2−メチルシクロペンタジエン、2−エチルシクロペンタジエン、5−メチルシクロペンタジエン、5,5−メチルシクロペンタジエンなどが挙げられる。好ましくはシクロペンタジエンである。これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
【0031】
上記特定単量体、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロペンタジエン系単量体から選ばれる1種以上の単量体の付加型(共)重合体は、上記(5)特定単量体と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体と同様の付加重合法で得ることができる。
また、上記付加型(共)重合体の水素添加(共)重合体は、上記(3)開環(共)重合体の水素添加(共)重合体と同様の水添法で得ることができる。
【0032】
さらに、本発明の環状オレフィン系樹脂として、(7)上記特定単量体とアクリレートとの交互共重合体も使用できる。
<アクリレート>
本発明の(7)上記特定単量体とアクリレートとの交互共重合体の製造に用いられるアクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどの炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状または環状アルキルアクリレート、グリシジルアクリレート、2−テトラヒドロフルフリルアクリレートなどの炭素原子数2〜20の複素環基含有アクリレート、ベンジルアクリレートなどの炭素原子数6〜20の芳香族環基含有アクリレート、イソボロニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレートなどの炭素数7〜30の多環構造を有するアクリレートが挙げられる。
【0033】
本発明において、(7)上記特定単量体とアクリレートとの交互共重合体を得るためには、ルイス酸存在下、上記特定単量体とアクリレートとの合計を100モルとしたとき、通常、上記特定単量体が30〜70モル、アクリレートが70〜30モルの割合で、好ましくは上記特定単量体が40〜60モル、アクリレートが60〜40モル割合で、特に好ましくは上記特定単量体が45〜55モル、アクリレートが55〜45モルの割合でラジカル重合する。
(7)上記特定単量体とアクリレートとの交互共重合体を得るために使用するルイス酸の量は、アクリレート100モルに対して0.001〜1モルとなる量とされる。また、公知のフリーラジカルを発生する有機過酸化物またはアゾビス系のラジカル重合開始剤を用いることができ、重合反応温度は、通常、−20℃〜80℃、好ましくは5℃〜60℃である。また、重合反応用溶媒には、開環重合反応に用いられる溶媒と同じものを使用することができる。
なお、本発明でいう「交互共重合体」とは、上記特定単量体に由来する構造単位が隣接しない、すなわち、上記特定単量体に由来する構造単位の隣は必ずアクリレートに由来する構造単位である構造を有する共重合体のことを意味しており、アクリレート由来の構造単位どうしが隣接して存在する構造を否定するものではない。
【0034】
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂の好ましい分子量は、固有粘度〔η〕inhで0.2〜5dl/g、さらに好ましくは0.3〜3dl/g、特に好ましくは0.4〜1.5dl/gであり、テトラヒドロフランに溶解してゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は8,000〜100,000、さらに好ましくは10,000〜80,000、特に好ましくは12,000〜50,000であり、重量平均分子量(Mw)は20,000〜300,000、さらに好ましくは30,000〜250,000、特に好ましくは40,000〜200,000の範囲のものが好適である。また、分子量分布(Mn/Mw)は、好ましくは 2.0〜4.0、さらに好ましくは2.5〜3.7であり、さらに好ましくは2.8〜3.5である。
固有粘度〔η〕inh、数平均分子量および重量平均分子量が上記範囲にあることによって、環状オレフィン系樹脂の耐熱性、耐水性、耐薬品性、機械的特性と、本発明の光学フィルムとしての成形加工性が良好となる。
【0035】
本発明に用いられる環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、通常、110℃以上、好ましくは110〜350℃、さらに好ましくは120〜250℃、特に好ましくは120〜200℃である。Tgが110℃未満の場合は、高温条件下での使用、あるいはコーティング、印刷などの二次加工により変形するので好ましくない。一方、Tgが350℃を超えると、成形加工が困難になり、また成形加工時の加熱温度を高くする必要が生じるため、熱によって樹脂が劣化する可能性が高くなる。
【0036】
以上の環状オレフィン系樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば特開平9−221577号公報、特開平10−287732号公報に記載されている、特定の炭化水素系樹脂、あるいは公知の熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム質重合体、有機微粒子、無機微粒子などを配合しても良い。
【0037】
また、本発明に用いる環状オレフィン系樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲において、耐熱劣化性や耐光性の改良のために公知の酸化防止剤や紫外線吸収剤などの添加剤を添加することができる。例えば、下記フェノール系化合物、チオール系化合物、スルフィド系化合物、ジスルフィド系化合物、リン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を、本発明の環状オレフィン系樹脂100重量部に対して0.01〜10重量部添加することで、耐熱劣化性を向上させることができる。
【0038】
フェノール系化合物:
フェノール系化合物としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ―t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)―6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−3,5−トリアジン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4―ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕―1,1−ジメチルエチル]―2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、などを挙げることができる。好ましくは、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4―ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が挙げられ、特に好ましくは、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などを挙げることができる。
【0039】
チオール系化合物:
チオール系化合物としては、t−ドデシルメルカプタン、ヘキシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプト−6−メチルベンズイミダゾール、1−メチル−2−(メチルメルカプト)ベンズイミダゾール、2−メルカプト−1−メチルベンズイミダゾール、2−メルカプト−4−メチルベンズイミダゾール、2−メルカプト−5−メチルベンズイミダゾール、2−メルカプト−5,6−ジメチルベンズイミダゾール、2−(メチルメルカプト)ベンズイミダゾール、1−メチル−2−(メチルメルカプト)ベンズイミダゾール、2−メルカプト−1,3−ジメチルベンズイミダゾール、メルカプト酢酸などを挙げることができる。
【0040】
スルフィド系化合物:
スルフィド系化合物としては、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス(n−オクチルチオメチル)−6−メチルフェノール、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジトリデシル3,3’−チオジプロピオネートなどを挙げることができる。
【0041】
ジスルフィド系化合物:
ジスルフィド系化合物としては、ビス(4−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2−クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5−ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2−ニトロフェニル)ジスルフィド、2,2’−ジチオジ安息香酸エチル、ビス(4−アセチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4−カルバモイルフェニル)ジスルフィド、1,1’−ジナフチルジスルフィド、2,2’−ジナフチルジスルフィド、1,2’−ジナフチルジスルフィド、2,2’−ビス(1−クロロジナフチル)ジスルフィド、1,1’−ビス(2−クロロナフチル)ジスルフィド、2,2’−ビス(1−シアノナフチル)ジスルフィド、2,2’−ビス(1−アセチルナフチル)ジスルフィド、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオン酸エステルなどを挙げることができる。
【0042】
リン系化合物:
リン系化合物としては、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどを挙げることができる。
【0043】
さらに、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、N−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物、あるいは2−エチルオキサニリド、2−エチル−2’−エトキシオキサニリドなどのオキサニリド系化合物を、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、0.01〜3重量部、好ましくは0.05〜2重量部添加することにより、耐光性を向上させることができる。
【0044】
帯電防止剤
帯電防止剤は、静電圧着を低電圧で行うことで、フィルムの外観悪化を防止する目的で添加される。本発明に用いられる帯電防止剤としては、低分子型帯電防止剤、高分子型帯電防止剤、導電性フィラー等が挙げられ、帯電防止効果があれば種類は特に制限されないが、フィルム成形の際に蒸発・昇華等が起こりにくいものが好ましく用いられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
上記低分子型帯電防止剤としては、例えば、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノラウリレートなどのグリセリン酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−ヒドロキシアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンの脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤;アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルホスフェートなどのアニオン界面活性剤;テトラアルキルアンモニウム塩、テトラアルキルベンジルアンモニウム塩などのカチオン界面活性剤;アルキルベタイン、アルキルイミダゾリウムベタインなどの両性界面活性剤等が挙げられる。
上記高分子型帯電防止剤としては、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドイミド、エチレンオキシド・エピクロルヒドリン共重合体、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体などのポリエーテル系ポリマー;第4級アンモニウム塩含有(メタ)アクリレート共重合体、第4級アンモニウム塩基含有マレイミド共重合体などの第4級アンモニウム塩基含有ポリマー;ポリスチレンスルホン酸塩などのスルホン酸塩含有ポリマー等が挙げられる。
上記導電性フィラーとしては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどのカーボン、ニッケル、銅、銀、金などの金属粒子、金属ワイヤー等が挙げられる。
【0046】
これらのうち、添加によるフィルムの外観悪化がなく、特に表面荒れ、白化などが起こらない点から、スルホン酸塩系のアニオン界面活性剤が好ましく、特にアルキルベンゼンスルホン酸塩が、添加によるフィルムの外観変化が小さいことから好ましく用いられる。
【0047】
上記帯電防止剤の使用量は特に限定されないが、樹脂成分の全量を100質量部とした場合、好ましくは0.05〜30質量部、より好ましくは0.1〜25質量部、更に好ましくは0.1〜20質量部、特に好ましくは0.1〜15質量部である。帯電防止剤の量が0.05質量部未満では、帯電防止効果が十分でなく帯電電圧を低減することができず好ましくない。30質量部を超えると、フィルムの表面にブリードするなどして外観悪化のおそれがある場合があるため好ましくはない。
係る帯電防止剤は、環状オレフィン系樹脂をペレット化する際に添加してもよいし、溶融押出する際に環状オレフィン系樹脂のペレットとともに配合してもよい。
【0048】
その他の添加剤
本発明に係る光学フィルムの製造方法においては、溶融押出時の熱履歴により該樹脂が熱劣化するのを防止するため酸化防止剤を添加してもよい。
上記酸化防止剤の具体例としては、例えば、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアネート、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではなく、また、これらについても、溶融押出する環状オレフィン系樹脂のTgによっては不適な場合がある。なお、本発明の効果を損なわない限り、これらは組み合わせて使用しても良いし、単独で使用しても良い。
【0049】
これらの酸化防止剤の添加量は、環状オレフィン系樹脂100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜4重量部、さらに好ましくは、0.1〜1.5重量部である。酸化防止剤の添加量が0.01重量部に満たない場合には、押出加工時に樹脂にゲルが発生しやすくなり、これに起因して、得られたフィルム上に欠陥として認識されることがあり好ましくない。一方、添加剤量が、5重量部を超えると、ダイライン、フィルム上のフィッシュアイ、焼けなどの発生を招くおそれがあるため好ましくない。
係る酸化防止剤は、環状オレフィン系樹脂を製造する際に添加してもよいし、溶融押出する際に環状オレフィン系樹脂のペレットとともに配合してもよい。
また、本発明の環状オレフィン系樹脂を溶融押出しにより成形する場合においては、本発明の効果を損なわない範囲において、滑剤、紫外線吸収剤、染料あるいは顔料などの上記酸化防止剤以外の添加剤を用いることができる。もちろんこの場合でも、融点を有する添加剤の場合、その融点が本発明の必須酸化防止剤の融点の範囲にあることが好ましい。
【0050】
フィルム成形
本発明の光学フィルムの成形方法は、上述した環状オレフィン系樹脂と帯電防止剤とを溶融混合した状態でダイから押し出し、冷却ロールに静電圧着してフィルム化することを特徴とする。特に、冷却ロールがフィルム圧着面の両端部に静電電極を有する構造であり、当該電極から2〜8kVの電圧をかけて静電圧着することが好ましい。
【0051】
本発明における溶融押出法においては、通常、押出機に樹脂ペレットを投入する前に、該樹脂中に含まれている水分、気体(酸素など)、残溶剤などを予め除去することを目的として樹脂のTg以下の適切な温度で樹脂の乾燥を行う。
乾燥に用いる乾燥機は特に限定されるものではないが、通常、熱風循環乾燥機、除湿式乾燥機、真空乾燥機、窒素などの不活性ガス循環式乾燥機が用いられ、樹脂の揮発成分あるいは溶存酸素を効率よく取り省ける点で、特に不活性ガス循環式乾燥機あるいは真空乾燥機を用いることが好ましい。また、ホッパー中での吸湿や酸素の吸収を抑えるため、ホッパーを窒素やアルゴンなどの不活性ガスでシールしたり、減圧状態に保持できる真空ホッパーを使用したりすることも好ましいものである。さらに、押出機シリンダーには、溶融押出中に発生する揮発成分を取り除くためにベント機能や酸素混入によるポリマーの劣化を押させるために窒素やアルゴンなどの不活性ガスによりシールする機能を設けることが好ましい。
【0052】
溶融押出法により環状オレフィン系樹脂フィルムを得る方法としては特に限定されるものではなく、公知の方法を適用すればよい。例えば、押出機に取り付けられたダイから溶融状態の環状オレフィン系樹脂を押し出し、当該樹脂を鏡面ロール表面に圧着し、その後、冷却して剥離し、シート化する方法が挙げられる。
【0053】
環状オレフィン系樹脂および帯電防止剤を溶融混合する方法としては、押出機により樹脂ペレットと帯電防止剤を混合して溶融する方法や、樹脂と帯電防止剤とを含有するペレットを溶融する方法、また樹脂を合成する段階で溶液に添加して樹脂と同時に仕上げする方法が好ましく、当該溶融混合物をギアポンプにより定量供給し、これを金属フィルターなどでろ過して不純物を除去した後、ダイにてフィルム形状に賦型しつつ押し出す方法が好ましい。
ダイから押出されたフィルムを冷却してシート化する方法としては、片面ベルト式、中でもスリーブ式と呼ばれるシート製造装置を用いることが好ましい。例えば、ダイの吐出口下方に鏡面ロールと金属ベルトが配置され、当該鏡面ロールと並行に並ぶように剥離ロールが配置されているフィルム製造装置が挙げられる。静電圧着の方法としては、ダイの吐出口下方に、鏡面ロールと相対するように帯電電極を配置し、当該帯電電極から、フィルムの両端部に静電圧着を施す方法を用いる。上記金属ベルトは、その内面に接するように設けられた2つの保持ロールによって張力が作用された状態で保持されている。吐出口より吐出されたフィルム状の樹脂組成物は、その幅方向における両端部が帯電電極により鏡面ロールに静電圧着され、該鏡面ロールと金属ベルトの間を通って挟圧され、鏡面ロールに転写されて冷却された後、剥離ロールにより剥離されフィルム化される。
押出機としては、単軸、二軸、遊星式、コニーダーなどいずれを用いても良いが、好ましくは、単軸押出機が用いられる。また、押出機のスクリュー形状としては、ベント型、サブフライト型、先端ダルメージ型、フルフライト型など、圧縮比の大きなもの、小さなもの、圧縮部の長さが長い緩圧縮、長さが短い急圧縮タイプなどが挙げられるが、酸素の溶解を抑制でき、せん断発熱を抑制できるフライト形状・圧縮タイプのものが好ましい。好ましい圧縮比は、1.5〜4.5、特に好ましくは1.8〜3.6である。樹脂の計量に使用されるギアポンプは、内部潤滑式、外部潤滑式いずれを使用しても良いが、中でも外部潤滑方式が好ましい。
【0054】
異物のろ過に使用するフィルターに関しては、リーフディスクタイプ、キャンドルフィルタータイプ、リーフタイプ、スクリーンメッシュなどが挙げられる。なかでも、樹脂の滞留時間分布を小さくする目的では、リーフディスクタイプが最も好ましく、フィルターの目の開きを意味する公称目開きは、20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下であることである。最も好ましくは3μm以下である。公称目開きが、20μmよりも大きい場合には、目に見える異物のほかに、ゲルなどを除去することが難しいために、光学フィルムを作るためのフィルターとしては、好ましくない。
【0055】
ダイとしては、ダイ内部の樹脂流動を均一にすることが必須であり、フィルムの厚みの均一性を保つには、ダイ出口近傍でのダイ内部の圧力分布が幅方向で一定であることが必須である。このような条件を満たすものとしては、マニホールドダイ、フィッシュテールダイ、コートハンガーダイなどを用いることができ、これらの中では、コートハンガーダイが好ましい。またダイの流量調整には、ベンディングリップタイプが好ましい。また、ヒートボルト方式による自動制御により厚薄調整を行う機能がついているダイが特に好ましい。流量調整のためにチョークバーを取り付けることや、厚み調整のためのリップブロックを取り付けることは、取り付け部分に段差を生じたり、取り付け部分の隙間などに、空気などをかみこんだりして、焼けの発生原因になったり、ダイラインの原因になりうるので好ましくない。ダイの吐出口は、タングステンカーバイドなどの超硬コーティングなどのコーティングがなされていることが好ましい。また、ダイの材質としては、SCM系の鋼鉄、SUSなどのステンレス材などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、表面にクロム、ニッケル、チタンなどのメッキが施されたもの、PVD(Physical Vapor Deposition)法などにより、TiN、TiAlN、TiC、CrN、DLC(ダイアモンド状カーボン)などの被膜が形成されたもの、その他のセラミックスが溶射されたもの、表面が窒化処理されたものなどを用いることができる。このようなダイは、表面硬度が高く、樹脂との摩擦が小さいため、得られる透明樹脂シートに、焼けゴミなどが混入することを防止することができると共に、ダイラインが発生することを防止することができる点で、好ましい。
【0056】
鏡面ロールは、内部に加熱手段および冷却手段を有するものが好ましく、その表面粗さは0.5μm以下、特に、0.3μm以下であることが好ましい。鏡面ロールとしては、金属ロールにメッキが施されたものを用いることが好ましく、クロムメッキ、無電解ニッケルメッキなどが施されたものが特に好ましい。
鏡面ロールの加熱方法は、ジャケット式オイル温調方式や、誘電加熱方式などが好ましい方法として用いられる。ロールの加熱方法は特に限定されないが、ロールの温度がフィルム製膜範囲で、温度差が無いことが好ましく、許容されるロールの幅方向の温度差は好ましくは2℃以内、さらに好ましくは1℃以内である。
また、帯電電極は、2〜5本の針状のものであり、フィルムの両端から50mm以内、かつロールから10mm以内に設置することが好ましい。両端から内側に設置しすぎると、フィルムの歩留まりが悪化するために好ましくない。
【0057】
片面ベルト式装置や、スリーブ式引き取り装置に使用する、金属ベルトとしては、継ぎ目のない無端ベルトを用いることが好ましい。金属ベルトを構成する材料としては、ステンレス、ニッケルなどを用いることができる。また、金属ベルトを保持する保持ロールは、その表面がシリコーンゴムまたその他の耐熱性を有するエラストマーなどによって被覆されていることが好ましい。金属ベルトの厚みは、0.1〜0.4mmが好ましく、0.1mm未満であると、たわみが大きくベルトにすぐに傷がつくことがあり好ましくない。一方、0.4mmよりも厚みがあると、加工時にフィルムに追従して変形しないため、好ましくない。
【0058】
上記の装置により、例えば次のようにしてフィルムが製造される。
押出機シリンダーは、溶融押出中に樹脂組成物が酸化されてゲルなどが発生することを防止するために、窒素やアルゴンなどの不活性ガスによりシールすることが好ましい。
押出機により溶融混合された環状オレフィン系樹脂および帯電防止剤は、ダイ吐出口から垂直方向である下方に向かってシート状に押し出される。ダイ出口の温度分布は、樹脂組成物の溶融粘度差を少なくするため、好ましくは±1℃以下に制御される。
その後、押し出された樹脂組成物が、その幅方向における両端部または全面が帯電電極により鏡面ロールに静電圧着され、冷却される。そして、鏡面ロール表面に転写された樹脂組成物が、剥離用ロールによって鏡面ロールの表面から剥離されることにより、シート状のフィルムが製造される。
【0059】
本発明においては、樹脂組成物の加工温度すなわち押出機およびダイの設定温度は、流動性が均一な溶融状態の樹脂組成物をダイから吐出させることができ、劣化を抑制することができる観点から、樹脂のTg+100℃以上でTg+200℃以下であることが好ましい。
【0060】
この時、鏡面ロールと金属ベルトの周速度を近くすることが好ましい。好ましい範囲としては、鏡面ロールの周速度を1.00としたときに、金属ベルトの周速度は0.95〜1.05、特に好ましくは0.99〜1.01である。
さらに、フィルム剥離時の条件として、剥離温度T(℃)、剥離応力T(MPa)とする時、それぞれTg−30℃≦T≦Tg+5℃、0.01MPa≦T≦5MPaの範囲であることが好ましい。
【0061】
ここで、冷却ロールである鏡面ロールの温度は、通常、Tg−80〜Tg+10℃、好ましくはTg−60〜Tg−2℃である。
本発明のダイの流路の水平部分はダイの出口の先端部分に当たるが、この先端の水平部分をダイランドと称する。ダイランドの長さは、10〜50mmであり、好ましくは、11〜40mmである。
【0062】
<フィルム延伸加工>
本発明の光学フィルムは、上記のようにして得られる光学フィルムを、さらに延伸することもできる。その場合の延伸加工方法としては、具体的には、公知の一軸延伸法又は二軸延伸法を挙げることができる。すなわち、テンター法による横一軸延伸法、ロール間圧縮延伸法、円周の異なる二組のロールを利用する縦一軸延伸法など、あるいは横一軸と縦一軸を組合わせた二軸延伸法、インフレーション法による延伸法などを用いることができる。
一軸延伸法の場合、延伸速度は通常は1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、さらに好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜500%/分である。
二軸延伸法の場合、同時2方向に延伸を行う場合や一軸延伸後に最初の延伸方向と異なる方向に延伸処理する場合がある。この時、延伸後のフィルムの屈折率楕円体の形状を制御するための2つの延伸軸の交わり角度は、所望の特性により決定されるため特に限定はされないが、通常は120〜60度の範囲である。また、延伸速度は各延伸方向で同じであってもよく、異なっていてもよく、通常は1〜5,000%/分であり、好ましくは50〜1,000%/分であり、さらに好ましくは100〜1,000%/分であり、特に好ましくは100〜500%/分である。
【0063】
延伸加工温度は、特に限定されるものではないが、本発明の樹脂のガラス転移温度Tgを基準として、通常はTg±30℃、好ましくはTg±15℃、さらに好ましくはTg−5℃〜Tg+15℃の範囲である。前記範囲内とすることで、位相差ムラの発生を抑えることが可能となり、また、屈折率楕円体の制御が容易になることから好ましい。
延伸倍率は、所望の特性により決定されるため特に限定はされないが、通常は1.01〜10倍、好ましくは1.03〜5倍、さらに好ましくは1.03〜3倍である。延伸倍率が10倍以上であると、位相差の制御が困難になる場合がある。
【0064】
延伸したフィルムは、そのまま冷却してもよいが、Tg−20℃〜Tgの温度雰囲気下に少なくとも10秒以上、好ましくは30秒〜60分間、さらに好ましくは1分〜60分間保持してヒートセットすることが好ましい。これにより、透過光の位相差の経時変化が少なく安定した位相差フィルムが得られる。
【0065】
延伸加工を施さない場合の本発明の光学用フィルムの加熱による寸法収縮率は、100℃における加熱を500時間行った場合に、通常5%以下、好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.5%以下である。
また、本発明の位相差フィルムの加熱による寸法収縮率は、100℃における加熱を500時間行った場合に、通常10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
寸法収縮率を上記範囲内にするためには、本発明の樹脂の原料である単量体A,Bの選択に加え、キャスト方法や延伸方法によりコントロールすることが可能である。
【0066】
上記のようにして延伸したフィルムは、延伸により分子が配向し透過光に位相差を与えるようになるが、この位相差は、延伸倍率、延伸温度あるいはフィルムの厚さなどにより制御することができる。例えば、延伸前のフィルムの厚さが同じである場合、延伸倍率が大きいフィルムほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸倍率を変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。一方、延伸倍率が同じである場合、延伸前のフィルムの厚さが厚いほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸前のフィルムの厚さを変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。また、上記延伸加工温度範囲においては、延伸温度が低いほど透過光の位相差の絶対値が大きくなる傾向があるので、延伸温度を変更することによって所望の位相差を透過光に与える位相差フィルムを得ることができる。
【0067】
上記のように延伸して得た位相差フィルムの厚さは、通常100μm以下、好ましくは100〜20μm、さらに好ましくは80〜20μmである。厚みを薄くすることで位相差フィルムが使われる分野の製品に求める小型化、薄膜化に大きく応えることができる。ここで、位相差フィルムの厚みをコントロールするためには、延伸前の光学フィルムの厚さをコントロールしたり、延伸倍率をコントロールしたりすることによりなし得る。例えば、延伸前の光学フィルムを薄くしたり、延伸倍率を比較的に大きくしたりすることでより一層位相差フィルムの厚さを薄くすることができる。
【0068】
<フィルム特性>
以上のようにして得られる本発明の光学フィルム(溶融押出フィルム、延伸フィルム)は、フィルム表面におけるダイラインによる厚みムラが小さい、好ましくは無いことを特徴とする。ダイラインとは、ダイ出口に付着するやけ樹脂がつける傷のことであり、フィルムの長手方向の厚みムラとなる。本発明で得られる光学フィルムは、ダイラインの高さが0.05μm以下であるという特徴を有する。
本発明の製造方法で得られる光学フィルムは、厚みムラが小さく長手方向に均一なものが得られやすいことから、光学的な品質を重視される光学フィルムの原反に好ましく用いられる。好ましい厚みムラの範囲は、長手方向1mあたりで2μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下、特に好ましくは1.0μm以下、もっとも好ましくは0.6μm以下である。
【0069】
また、本発明の延伸された光学フィルムは、表面平滑性に優れるため、ASTM D1003に準じて測定した厚みが3mmにおけるヘイズ値が1%以下、好ましくは0.8%以下である。
また、当該成形方法で得られたフィルムの平均粗さRaは、0.010μm以下、好ましくは0.008μm以下、さらに好ましくは、0.007μm以下である。
【0070】
≪偏光板≫
本発明の偏光板は、PVA系フィルムなどからなる偏光子の少なくとも片面に、本発明の光学フィルムを、PVA樹脂を主体とした水溶液からなる水系接着剤、極性基含有粘接着剤、光硬化性接着剤などを使用して貼り合わせ、必要に応じてこれを加熱または露光し、圧着して、偏光子と光学フィルムとを接着(積層)させることにより製造することができる。
【0071】
≪液晶パネル≫
本発明の液晶パネルは、2枚のガラス基板間に液晶が挟持されてなる液晶表示素子の少なくとも片面に、本発明の偏光板を貼り合わせ、液晶表示素子と偏光板とを接着(積層)させることにより製造することができる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」、「%」は、特に断りのない限り「重量部」、「重量%」を意味する。
また、以下の実施例において、各種評価は下記の方法により測定した。
[ガラス転移温度(Tg)]
セイコーインスツルメンツ社製の示差走査熱量計(DSC)を用い、窒素雰囲気で昇温速度が20℃/分の条件でガラス転移温度を測定した。
[ダイラインおよび表面粗さ]
フィルムを垂直に固定し、500mm後方に白色のスクリーンを設置した。フィルムの45度斜め前方から、キセノンランプにより照射した光をフィルムに透過させ、スクリーンに映る映像からダイラインの位置を特定した。
フィルムの上記特定位置について、表面粗さ計(株式会社小坂研究所製 CT−30K)を用いて、フィルムのダイラインの大きさと平均表面粗さを求めた。
[全光線透過率、ヘーズ]
村上色彩技術研究所製のヘイズメーター「HM−150型」を用い、全光線透過率ならびにヘーズを測定した。
[透過光の面内位相差(R0)]
王子計測機器(株)製の「KOBRA−21ADH」を用い、フィルムに垂直に光が入射したときの面内位相差(R0)を、波長550nmにおいて測定した。
[偏光板の透過率および偏光度]
大塚電子(株)製の「RETS」を用い、偏光板の透過率および偏光度を測定した。測定波長は550nmとした。
[フィルム厚み分布]
フィルム厚み分布測定装置(MOCON)を使用して、フィルム長手方向に測定した。
【0073】
<調製例1>
アクリル酸ブチル94.8部、アクリル酸5部、2ーヒドロキシエチルメタクリレート0.2部からなり、重量平均分子量(Mw)120万、重量平均分子量と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)3.9のアクリル系ポリマーの酢酸エチル溶液にトルエンを加えて希釈し、上記アクリル系ポリマーの13%のトルエン溶液とし、イソシアネート架橋剤〔コロネートL(日本ポリウレタン社製)〕2.0部添加し攪拌した溶液を離型フィルム上に塗布し、発泡しないように60℃×5分間、100℃×5分間の2段階で乾燥させた後、さらに軽剥離タイプの離型フィルムを粘着剤面にラミネート仮止めし、乾燥後の粘着剤厚み(平均値)が25μmのノンサポートフィルムを作製した。
【0074】
[実施例1]
樹脂として、環状オレフィン系樹脂(JSR株式会社製:商品名「ARTON D4531」、ガラス転移温度130℃)ペレット100重量部と、帯電防止剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0重量部を、酸素濃度0.1ppmの窒素200l/minを用いて押出機(ジーエムエンジニアリング社製:GM−90)に導き、260℃で溶融混合し、ギアポンプを用いて定量で送液し、5μmリーフディスクフィルターを用いて、異物を除去し、250℃に設定したアルミ鋳込みヒーターにより加熱されたTダイから押出を実施した。また、このときのTダイの開口は0.5mmであり、Tダイ出口と冷却ロールのフィルムの圧着点間の距離は、70mmとして、フィルム両端部に3kV、2.5mAの条件で冷却ロール表面に静電圧着し、250mmφの冷却ロールに圧着させた。冷却ロールの温度は120℃として、その下流側に250mmφの冷却ロール2を、さらに下流側に250mmφの剥離ロールを設けた。それぞれのロールの温度を115℃、110℃として、フィルム表面温度108℃で剥離ロールから膜厚100μmのフィルムを剥離させて、光学フィルムを得た。
得られた光学フィルムのダイラインの高さは0.015μmであった。また、フィルムの表面粗さは0.004μmであった。また、当該光学フィルムの全光線透過率は93%、ヘーズは0.2%であった。さらに、フィルム長手方向における厚みムラは、0.76μmであった。
[実施例2]
上記、実施例1において、帯電防止剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウムを用いた他は、実施例1と同様に光学フィルムを作製した。
得られた光学フィルムのダイラインの高さは0.018μmであった。また、フィルムの表面粗さは0.004μmであった。また、当該光学フィルムの全光線透過率は92%、ヘーズは0.2%であった。さらに、フィルム長手方向における厚みムラは、0.68μmであった。
【0075】
[比較例1]
帯電防止剤を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、光学フィルムを得た。
得られた光学フィルムのダイラインの高さは0.055μmであった。また、フィルムの表面粗さは0.016μmであった。また、当該光学フィルムの全光線透過率は93%、ヘーズは0.5%であった。さらに、フィルム長手方向における厚みムラは、1.55μmであった。
[比較例2]
静電圧着を行わなかった以外は実施例1と同様にして、光学フィルムを得た。
得られた光学フィルムのダイラインの高さは0.085μmであった。また、フィルムの表面粗さは0.021μmであった。また、当該光学フィルムの全光線透過率は93%、ヘーズは0.4%であった。さらに、フィルム長手方向における厚みムラは、2.35μmであった。
【0076】
[実施例3]
厚さ50μmのポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素5g、ヨウ化カリウム250g、ほう酸10g、水1000gからなる40℃の浴に浸漬しながら約5分間で4倍まで一軸延伸して偏光膜を得た。この偏光膜の表面に、調整例1で得られた粘着剤を用い、実施例1で作製した光学フィルム(a−1)と実施例2で作製した光学フィルム(a−1)をそれぞれ偏光膜に片面ずつ連続して接着させ偏光板(a)を得た。この偏光板(a)の透過率と偏光度を測定したところ、それぞれ43%、99.99%であった。また、当該偏光板(a)を二枚クロスニコル状態にして、一方から輝度10000cdのバックライトで照射したときに、もう一方から観察してもダイライン起因のフィルムの長手方向の筋状の白い色抜けは見られなかった。
【0077】
[比較例3]
光学フィルム(b−2)と(c−1)を使用したこと以外は実施例3と同様にして、偏光板(b)を得た。この偏光板(b)の透過率と偏光度を測定したところ、それぞれ42%、99.87%であった。また、当該偏光板(b)を光学フィルムロール(b−2)が内側になるようにして二枚クロスニコル状態にし、一方から輝度10000cdのバックライトで照射したときに、もう一方から観察したときにダイライン起因のフィルムの長手方向の筋状の白い色抜けが2本見られた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の光学フィルムは、光学フィルム表面にダイラインが少なく、光学ムラが生じない。従って、本発明の光学フィルムロールから得られる光学フィルムは、例えば携帯電話、デジタル情報端末、ポケットベル、ナビゲーション、車載用液晶ディスプレイ、液晶モニター、液晶テレビ、調光パネル、OA機器用ディスプレイ、AV機器用ディスプレイなどの各種液晶表示素子やエレクトロルミネッセンス表示素子あるいはタッチパネルなどに用いることができる。また、CD、CD−R、MD、MO、DVDなどの光ディスクの記録・再生装置に使用される波長板としても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物由来の構造単位を有する環状オレフィン系樹脂と帯電防止剤とを溶融混合した状態でダイから押し出し、冷却ロールに静電圧着してフィルム化することを特徴とする、光学フィルムの製造方法。
【化1】

(式(1)中、R1〜R4は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、またはその他の1価の有機基であり、それぞれ同一または異なっていても良い。また、R1〜R4 のうち任意の2つが互いに結合して、単環または多環構造を形成しても良い。mは0または正の整数であり、pは0または正の整数である。)
【請求項2】
帯電防止剤が、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリアミドオリゴマーおよびポリエチレングリコールから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
冷却ロールがフィルム圧着面の両端部に静電電極を有する構造であり、当該電極から2〜8kVの電圧をかけて静電圧着することを特徴とする、請求項1記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
さらに延伸することを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2008−207446(P2008−207446A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46175(P2007−46175)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】