説明

光学フィルムの製造方法

【課題】 本発明は複屈折の制御を必要とする液晶ディスプレイ(以下、LCDと称する)の位相差フィルムまたは光学補償フィルム用としての光学フィルムの製法を提供する。
【解決手段】 少なくとも1種類以上の光学異方性を有する針状または紡錘状の粒子1〜50重量%と透明ポリマー50〜99重量%を含んでなる光学フィルム用樹脂組成物を、塗工剪断速度100〜20,000sec−1で製膜することを特徴とする光学フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複屈折の制御を必要とする液晶ディスプレイ(以下、LCDと称する)の位相差フィルムまたは光学補償フィルム用としての光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LCDは表示特性の向上のために多くの光学フィルムを必要であり、表示特性の視認性を広げるための視野角の拡大や色調の補償などのために位相差フィルムまたは光学補償フィルムなどの光学フィルムが用いられている。
【0003】
透明樹脂材料は光学フィルムとして軽量性、生産性及びコストの面から多用される状況にある。
【0004】
近年、LCDの特性の向上のために、位相差フィルムにも広帯域性として幅広く可視光領域の位相差制御できるような特性が重要視されている。例えば、反射型LCDにおいては、広帯域にて1/4波長の位相差を示すフィルム(円偏光板とも称する)が利用されている。
【0005】
例えば、これらには、単一波長において1/4波長の位相差を示すポリカーボネートや環状ポリオレフィン樹脂などからなる1枚の位相差フィルムに、波長分散特性を相殺するように1/2波長の位相差フィルムを積層させれば広帯域性が発現することが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
また、この他に正の複屈折性を示す分子構造単位と負の複屈折性を示す分子構造単位を組合わせた共重合体、あるいは正の複屈折性を示すポリマーと負の複屈折性を示すポリマーとのブレンド物などを利用したフィルムが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0007】
また、光学異方性粒子を用いた光学材料が提案されている(例えば、特許文献4、非特許文献2参照)。しかし、特許文献4及び非特許文献2において提案されたものは、実質的にゼロ複屈折(非複屈折)材料に関するものであり、位相差フィルム及びその波長分散性への言及はない。
【0008】
光学異方性粒子を用いた光学フィルムの提案として、粒子のアスペクト比と上限粒子サイズに関する記述と、配合量などについて言及する(例えば、特許文献5〜7参照)が、いずれも製膜した後のフィルムを延伸加工により配向させた場合の光学特性について述べているが製膜そのものによる光学異方性を発現についての言及はない。
【0009】
高アスペクト比を有する無機層状化合物として板状のクレイフィラーを複合化した光学フィルムについて、板状フィラーは溶液キャスト法によるフィルム製膜によってフィルム面内に板状フィラーが平行に配列することを報告している(例えば、特許文献8参照)が、それ以外の針状または紡錘状の粒子については言及していない。
【0010】
【特許文献1】特開2000−137116号公報
【特許文献2】特開2001−337222号公報
【特許文献3】特開2001−235622号公報
【特許文献4】特開平11−293116号公報
【特許文献5】特開2005−156862号公報
【特許文献6】特開2005−156863号公報
【特許文献7】特開2005−156864号公報
【特許文献8】特開平10−10320号公報
【非特許文献1】SID‘02 Digest ,p862(2002)
【非特許文献2】高分子学会予稿集 Vol.52,No.4,p748(2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上述の事実に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、特定の粒子サイズの光学異方性粒子と透明ポリマーを配合した光学フィルム用樹脂組成物を用いて特定の条件で製膜することでフィルム面内複屈折を発現する光学フィルムを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意検討した結果、少なくとも1種類以上の光学異方性を有する針状または紡錘状の粒子1〜50重量%と透明ポリマー50〜99重量%を含んでなる光学フィルム用樹脂組成物を、塗工剪断速度100〜20,000sec−1で製膜することを特徴とする光学フィルムの製造方法に関する。
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明の光学フィルムの製造方法に用いるフィルム用樹脂組成物としては、少なくとも1種類以上の光学異方性を有する針状または紡錘状の粒子1〜50重量%と透明ポリマー50〜99重量%を含んでなるものである。
【0015】
本発明の光学フィルムの製造方法における光学フィルム用樹脂組成物に含まれる針状または紡錘状の粒子としては、該粒子の平均長軸径が50nm以上400nm未満が好ましく、特に50nm以上300nm以下であることが好ましい。また、該粒子の形状は平均アスペクト比(短軸径と長軸径の比)が1.5以上であることが好ましく、特に3以上であることが好ましい。
【0016】
本発明の光学フィルムの製造方法における光学フィルム用樹脂組成物に用いる光学異方性粒子としては、例えば、鉱物、無機物として針状または紡錘状の結晶系無機化合物、セラミックスなどが、有機物として針状または紡錘状の有機化合物結晶などが挙げられ、少なくとも1種類以上を用いることができる。具体的な例として、負の光学異方性を示すものとしては、例えば、カルサイト、アラゴナイトなどの炭酸カルシウム;炭酸マグネシウム;炭酸ジルコニウム;炭酸ストロンチウム;炭酸コバルト;炭酸マンガンなどが挙げられ、正の光学異方性を示すものとして、例えば、酸化チタン(ルチル型)、石英ガラス(シリカ)、ホウケイ酸ガラスなどが挙げられる。また、光学異方性を有する針状または紡錘状の該粒子としてはここに挙げたもの以外のものも用いることができる。
【0017】
該粒子は製膜した際に透明ポリマー中に分散させるために分散性を高めることが好ましく、表面処理などを行なってもよい。この表面処理としては、例えば脂肪酸処理、アルキルアンモニウム処理、エポキシ樹脂処理、シラン処理、チタネート処理、ウレタン処理などが挙げられる。
【0018】
本発明における透明ポリマーは透明性を有する樹脂であれば如何なるものでもよく、例えばポリメチルメタクリレート及びメタクリレート系共重合体、ポリスチレン及びスチレン系共重合体、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリN−置換マレイミド及びマレイミド系共重合体、フマル酸エステル系樹脂、セルロース系樹脂などが挙げられる。
【0019】
本発明の光学フィルムの製造方法における光学フィルム用樹脂組成物に用いる1種類以上の光学異方性を有する針状または紡錘状の粒子の配合量は光学フィルムの光学異方性を制御する目的から1〜50重量%であることが好ましく、さらに5〜30重量%、特に8〜20重量%であることが好ましい。
【0020】
本発明の光学フィルムの製造方法に用いる光学フィルム用樹脂組成物の製造方法としては、例えば、光学異方性を有する微粒子を分散するための溶剤へ投入、攪拌・混合することによって均一な粒子スラリーを調整し、透明ポリマーを加えて更に攪拌・混合する方法で製造することができる。この際、攪拌・混合に用いる装置としては公知のものを用いることができ、例えば粒子分散スラリーの調整に広く用いられるホモジナイザー、ディスク型ミキサー、旋回型ミキサー、超音波分散機など各種用いることができる。また、高度な分散状態を得るために高い剪断を付与するような場合には冷却装置を付して摩擦発熱による温度上昇を抑制するようにして攪拌・混合することで光学フィルム用樹脂組成物を得ることかできる。
【0021】
本発明の光学フィルムの製造方法では、上記光学フィルム用樹脂組成物を、塗工剪断速度100〜20,000sec−1で製膜する製造方法である。
【0022】
光学フィルム用樹脂組成物溶液(以下、ドープという)の粘度は製膜する際に光学フィルムに適したフィルム厚さを得るために、溶液粘度が500〜20,000cPであることが好ましく、さらに1,000〜10,000cP、特に1,000〜5,000cPであることがより好ましい。
【0023】
光学フィルムの製膜は上記のようにして作成したドープを用いて溶液キャスティング法により行うことができ、ドープを製膜するための支持基板上に流延する際にこのドープに対する塗工操作としては塗工剪断速度が100〜20,000sec−1であり、さらに100〜10,000sec−1、特に100〜5,000sec−1であることがより好ましい。
【0024】
この特定の粘度挙動を有するドープを用いて塗工条件として一定の剪断速度を付与することでドープ及びドープ中に分散している粒子に対して剪断応力が働くことにより粒子配向を形成させることができる。
【0025】
この塗工操作を行う方法としては、例えばTダイ法、ドクターブレード法、バーコーター法、ロールコーター法、リップコーター法などが挙げられる。塗工のために用いるフィルム支持基板としては、フィルム化した際のフィルム表面平滑性、光学的均一性を可能とするものであれば如何なるものでもよく、例えばガラス基板、金属基板、溶剤耐性を示すポリエチレンテレフタレートフィルム等のプラスチックフィルムなどを用いることができる。
【0026】
この溶液キャスト法によりフィルム化する際のフィルム厚さは、光学的性質、機械的特性、生産性に優れた光学フィルムとなることから10〜500μmが好ましく、特に20〜300μmがより好ましい。
【0027】
このような塗工操作の後、直ちに加熱などにより溶剤を乾燥除去してフィルム化することでフィルム面内の複屈折を発現させることができ、フィルムを製膜する際のフィルム面内における製膜方向の屈折率をnx、これと直交する方向の屈折率をnyとした場合、フィルム面内の複屈折Δn(フィルム面内の平均屈折率の差の絶対値)|nx−ny|が0.0005以上を発現させることができる。
【0028】
本発明の製造方法では、製膜後乾燥工程を経て光学フィルムが得られるものであり、乾燥工程としては光学フィルム中の溶剤を加熱除去できればよく、公知の乾燥装置を用いることができる。乾燥装置として、例えばバッチ式の棚段乾燥機、連続ロールフィルム製造に用いる多段連続乾燥炉などを用いることができる。この際、乾燥温度としては製膜後の初期の異常加熱による発泡、液流動などが発生しなければ如何なる条件でも良く、製膜環境温度を下限として透明ポリマーのガラス転移温度(以下、Tgという)+40℃にて乾燥することが好ましい。また、乾燥工程においては適宜送風、換気を行うことで乾燥速度を制御してもよい。
【0029】
本発明の光学フィルムの製造方法によって得られる光学フィルムはフィルム面内の複屈折Δnが0.0005以上であり、光学補償または位相差フィルムとして用いるためには目的とする位相差量に応じて適宜光学異方性粒子の種類と濃度ならびに製膜条件を選択することで任意の位相差を得ることができる。
【0030】
また、二次的に複屈折を操作する目的で光学フィルムを後加工として延伸加工することにより複屈折操作することもでき、従来、ポリカーボネートや環状ポリオレフィンフィルムなどの延伸加工による複屈折制御と同様に、延伸加工によって更に複屈折を操作することも出来、フィルムの一軸延伸、二軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸など公知の方法を利用することができる。
【0031】
本発明の光学フィルムの製造方法により得られる光学フィルムは、光学補償フィルムや位相差フィルムは偏光板との積層体として液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、輝度向上フィルムなどにも有用である。更に本発明により得られる位相差フィルムどうしまたは他の位相差フィルムとの積層をすることもできる。
【0032】
本発明の光学フィルムの製造方法においては、係る光学フィルム用樹脂組成物に対して光学特性や力学的性質を操作する目的で可塑剤を配合してもよい。該可塑剤は、公知のものを用いることができ、例えばフタル酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、ホスフェート系可塑剤などが挙げられ、これら可塑剤はそれぞれ単独または併用して用いてもよい。
【0033】
また、フィルム製膜の際または位相差フィルム自体の熱安定性を高めるために酸化防止剤などを配合してもよい。該酸化防止剤としては、公知のものを用いることができ、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、その他の酸化防止剤が挙げられ、これら酸化防止剤はそれぞれ単独または併用して用いてもよく、相乗的に酸化防止作用が向上することからヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤を併用することが好ましい。
【0034】
さらに、得られるフィルムの熱着色および光劣化抑制のために光安定剤を配合してもよい。光安定剤としては公知のものを用いることができ、例えばヒンダードアミン系光安定剤などがあり、熱着色および光安定化に優れるものとして分子量1,000以上のものが好ましい。
【0035】
フィルムの紫外線劣化を抑制するために紫外線防止剤を配合してもよい。紫外線防止剤としては公知のものを用いることができ、例えばベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、ベンゾエートなどの紫外線吸収剤を用いることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の光学フィルムの製造方法により得られる光学フィルムは液晶ディスプレイの光学補償フィルムや位相差フィルムなどに有用である。
【実施例】
【0037】
以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
【0038】
以下、実施例の評価・測定に用いた方法を示す。
【0039】
〜数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)の測定〜
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製、商品名HLC−802A)を用い、ジメチルホルムアミドを溶剤とし標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0040】
〜溶液粘度の測定〜
回転型粘度計(東機産業(株)製、商品名TV−20型粘度計)を用いて、25℃にて測定した。
【0041】
〜ガラス転移温度の測定〜
示差走査型熱量計(セイコー電子工業株式会社製、商品名DSC200)を用い、昇温速度10℃/min.にて測定した。
【0042】
〜光線透過率の測定〜
JIS−K−7361−1に準拠してヘーズメーター(日本電色工業株式会社製、商品名NDH−2000)により測定した。
【0043】
〜フィルムの複屈折および位相差の測定〜
全自動複屈折計(王子計測器株式会社製、商品名KOBRA−21ADH)を用いて測定した。
【0044】
フィルムの複屈折は、フィルム面内における製膜方向の屈折率をnx、これと直交する方向の屈折率をny、フィルム厚さをdとした場合、フィルム面内の複屈折Δn(フィルム面内の平均屈折率の差の絶対値)|nx−ny|として表され、フィルム面内の位相差=(nx−ny)・dとして表される。
【0045】
合成例1(N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の製造例)
1リッターオートクレーブ中に溶媒としてトルエン400ml、重合開始剤としてパーブチルネオデカノエート0.001モル、N−フェニルマレイミド0.42モル、イソブテン0.67モルとを仕込み、重合温度60℃、重合時間5時間の重合条件にて重合反応を行い、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体(重量平均分子量(Mw)=220,000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)で示される分子量分布(Mw/Mn)=2.6)を得た。ガラス転移温度(Tg)は188℃であった。
【0046】
実施例1
負の複屈折性を示す炭酸ストロンチウム粒子(ステアリン酸処理品、平均短軸径60nm、平均長軸径270nm)の塩化メチレン溶液として炭酸ストロンチウム粒子5重量%となるように調整してプライミクス社製TKロボキクサーホモジナイザーにより6,000rpm、30分間の分散混合を行った後、ポリメチルメタクリレート(三菱レイヨン製、商品名アクリペットV001、Tg=100℃)の塩化メチレン溶液に炭酸ストロンチウムの塩化メチレン溶液を加えて、再びホモジナイザーにより混合攪拌することでポリメチルメタクリレート19重量%、炭酸ストロンチウム1重量%、塩化メチレン80重量%の光学フィルム用樹脂組成物(粒子:透明性ポリマー=5:95(重量%))溶液を調整した。溶液の粘度は650cPであった。
【0047】
この溶液を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム基板の上にバーコーターを用いてコーター隙間0.75mm、速度100mm/sec(塗工剪断速度=133sec−1)にて製膜した。製膜後、直ちに40℃×10min.送風による加熱乾燥を行い、更に24hrs静置乾燥した。これにより得られた光学フィルムの厚さは112μm、光線透過率は91%、ヘーズ値は3.2%、複屈折Δnは6.25×10−4、位相差は−70nmであった。
【0048】
これらの結果から得られた光学フィルムは光学補償フィルムまたは位相差フィルムに好適なものであった。
【0049】
実施例2
実施例1においてポリメチルメタクリレートの代わりにポリカーボネート(帝人化成製、商品名パンライト、ガラス転移温度141℃)を用いた以外は同様にして光学フィルムを作成した。この時、溶液の粘度は850cPであった。得られた光学フィルムの厚さは115μm、光線透過率は91%、ヘーズ値は3.4%、複屈折Δnは5.70×10−4、位相差は−66nmであった。
【0050】
これらの結果から得られた光学フィルムは光学補償フィルムまたは位相差フィルムに好適なものであった。
【0051】
実施例3
実施例1においてポリメチルメタクリレートの代わりに環状ポリオレフィン樹脂(JSR製、商品名アートンF4520)用いた以外は同様にして光学フィルムを作成した。この時、溶液の粘度は700cPであった。得られた光学フィルムの厚さは110μm、光線透過率は91%、ヘーズ値は4%、複屈折Δnは6.50×10−4、位相差は−72nmであった。
【0052】
これらの結果から得られた光学フィルムは光学補償フィルムまたは位相差フィルムに好適なものであった。
【0053】
実施例4
実施例1においてポリメチルメタクリレートの代わりに合成例1のN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体を用いた以外は同様にして光学フィルムを作成した。この時、溶液の粘度は680cPであった。得られた光学フィルムの厚さは80μm、光線透過率は91%、ヘーズ値は5%、複屈折Δnは6.70×10−4、位相差は−54nmであった。
【0054】
これらの結果から得られた光学フィルムは光学補償フィルムまたは位相差フィルムに好適なものであった。
【0055】
実施例5
実施例1においてポリメチルメタクリレートの代わりにポリアリレート(ユニチカ製、商品名UポリマーP−3001)を用いた以外は同様にして光学フィルムを作成した。この時、溶液の粘度は950cPであった。得られた光学フィルムの厚さは105μm、光線透過率は91%、ヘーズ値は4.5%、複屈折Δnは5.50×10−4、位相差は−58nmであった。
【0056】
これらの結果から得られた光学フィルムは光学補償フィルムまたは位相差フィルムに好適なものであった。
【0057】
実施例6
実施例1においてポリメチルメタクリレートの代わりにポリスチレン(東ソー製、標準ポリスチレン)を用いた以外は同様にして光学フィルムを作成した。この時、溶液の粘度は650cPであった。
【0058】
得られた光学フィルムの厚さは85μm、光線透過率は91%、ヘーズ値は2.8%、複屈折Δnは6.50×10−4、位相差は−55nmであった。
【0059】
これらの結果から得られた光学フィルムは光学補償フィルムまたは位相差フィルムに好適なものであった。
【0060】
実施例7
実施例2においてポリカーボネート18.4重量%、炭酸ストロンチウム1.6重量%、塩化メチレン80重量%の光学フィルム用樹脂組成物(粒子:透明性ポリマー=8:92(重量%))溶液を用いた以外は同様にして光学フィルムを作成した。この時、溶液の粘度は2,000cPであった。得られた光学フィルムの厚さは120μm、光線透過率は91%、ヘーズ値は5%、複屈折Δnは9.30×10−4、位相差は−112nmであった。
【0061】
これらの結果から得られた光学フィルムは光学補償フィルムまたは位相差フィルムに好適なものであった。
【0062】
実施例8
実施例7において製膜の際、コーター隙間0.75mm、速度500mm/sec(塗工剪断速度=660sec−1)とした以外は同様にして光学フィルムを作成した。得られた光学フィルムの厚さは118μm、光線透過率は91%、ヘーズ値は4%、複屈折Δnは1.06×10−3、位相差は−125nmであった。
【0063】
これらの結果から得られた光学フィルムは光学補償フィルムまたは位相差フィルムに好適なものであった。
【0064】
実施例9
実施例7において製膜の際、コーター隙間0.50mm、速度500mm/sec(塗工剪断速度=1,000sec−1)とした以外は同様にして光学フィルムを作成した。得られた光学フィルムの厚さは79μm、光線透過率は92%、ヘーズ値は3%、複屈折Δnは1.19×10−3、位相差は−91nmであった。
【0065】
これらの結果から得られた光学フィルムは光学補償フィルムまたは位相差フィルムに好適なものであった。
【0066】
実施例10
実施例1において炭酸ストロンチウム粒子の代わりに酸化チタン粒子(粒子重量あたり10重量%のアシドホスホキシエチルメタクリレートにて処理したもの、短軸径の平均寸法40nm、長軸径の平均寸法380nm)を用いた以外は同様にして光学フィルムを作成した。この時、溶液粘度は700cPであった。
【0067】
得られた光学フィルムの厚さは110μm、光線透過率は90%、ヘーズ値は5.2%、複屈折Δnは5.64×10−4、位相差は+62nmであった。
【0068】
これらの結果から得られた光学フィルムは光学補償フィルムまたは位相差フィルムに好適なものであった。
【0069】
実施例11
実施例1において製膜の際、コーター隙間0.05mm、速度500mm/sec(塗工剪断速度=10,000sec−1)とした以外は同様にして光学フィルムを作成した。得られた光学フィルムの厚さは10μm、光線透過率は92%、ヘーズ値は1.9%、複屈折Δnは1.20×10−3、位相差は−12nmであった。
【0070】
これらの結果から得られた光学フィルムは光学補償フィルムまたは位相差フィルムに好適なものであった。
【0071】
実施例12
実施例2においてポリカーボネート7.2重量%、炭酸ストロンチウム4.8重量%、塩化メチレン88重量%の光学フィルム用樹脂組成物(粒子:透明性ポリマー=40:60(重量%))溶液を用いた以外は同様にして光学フィルムを作成した。この時、溶液の粘度は1,600cPであった。得られた光学フィルムの厚さは68μm、光線透過率は90%、ヘーズ値は19%、複屈折Δnは1.75×10−3、位相差は−120nmであった。
【0072】
これらの結果から得られた光学フィルムは光学補償フィルムまたは位相差フィルムに好適なものであった。
【0073】
実施例13
実施例2で得られた光学フィルムを用いて二軸延伸装置(井元製作所製、型式16A1)自由幅一軸延伸により170℃、2.0倍延伸したものを作成した。
延伸させられた光学フィルムの厚さは62μm、光線透過率は90%、ヘーズ値は4.5%、複屈折Δnは1.51×10−3、位相差は−94nmであった。
【0074】
これらの結果から得られた光学フィルムは光学補償フィルムまたは位相差フィルムに好適なものであった。
【0075】
比較例1
実施例1における製膜の際、コーター隙間0.75mm、剪断速度10mm/sec(塗工剪断速度=13sec−1)にて光学フィルムを作成した。
【0076】
得られた光学フィルムの厚さは112μm、光線透過率は91%、ヘーズ値は3.2%、複屈折Δn及び位相差は検出されなかった。
【0077】
これらの結果から剪断速度が小さく得られた光学フィルムは複屈折及び位相差が検出されず光学補償フィルムまたは位相差フィルムに好適なものではなかった。
【0078】
比較例2
実施例1において、炭酸ストロンチウム粒子を配合せずに、ポリメチルメタクリレート20重量%、塩化メチレン80重量%の溶液を用いた以外は同様にして光学フィルムを作成した。この時、溶液の粘度は510cPであった。
【0079】
得られた光学フィルムの厚さは100μm、光線透過率は91%、ヘーズ値は0.3%、複屈折Δn及び位相差は検出されなかった。
【0080】
これらの結果から光学異方性を有する針状または紡錘状の粒子を配合しなかったことから得られた光学フィルムは複屈折及び位相差が検出されず光学補償フィルムまたは位相差フィルムに好適なものではなかった。
【0081】
比較例3
実施例2においてポリカーボネート3.6重量%、炭酸ストロンチウム8.4重量%、塩化メチレン88重量%の光学フィルム用樹脂組成物(粒子:透明性ポリマー=70:30(重量%))溶液を用いた以外は同様にして光学フィルムを作成したが、乾燥工程において粒子の凝集とフィルム割れを生じたために光学フィルムを得ることはできなかった。この時、溶液の粘度は600cPであった。
【0082】
これらの結果から透明性ポリマーの配合量が多く光学フィルムを得ることができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類以上の光学異方性を有する針状または紡錘状の粒子1〜50重量%と透明ポリマー50〜99重量%を含んでなる光学フィルム用樹脂組成物を、塗工剪断速度100〜20,000sec−1で製膜することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
光学フィルムを製膜する際、フィルム面内におけるフィルム製膜方向の屈折率をnx、これと直交する方向の屈折率をnyとした場合、フィルム面内の複屈折Δn(フィルム面内の平均屈折率の差の絶対値)|nx−ny|が0.0005以上であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
製膜する際の溶液粘度が500〜20,000cPであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
透明ポリマーが、ポリメチルメタクリレート及びメタクリレート共重合体、ポリスチレン及びスチレン系共重合体、ポリエーテルスルフォン、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリN−置換マレイミド及びマレイミド系共重合体、フマル酸エステル系樹脂、セルロース系樹脂からなる群から選ばれる1種以上のポリマーであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
光学異方性を有する針状または紡錘状の粒子が、鉱物またはセラミックスなどの無機化合物からなる群より選ばれ粒子の短軸径と長軸径の比が1.5以上、またはその粒子の平均長軸径が50nm以上400nm未満であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
光学異方性を有する針状または紡錘状の粒子が、炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸コバルト及び炭酸マンガンなどの負の光学異方性を有する無機粒子または酸化チタン、シリカ、ホウケイ酸ガラスなどの正の光学異方性を有する無機粒子であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法より得られる光学フィルムからなることを特徴とする光学補償フィルムまたは位相差フィルム。

【公開番号】特開2010−128166(P2010−128166A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302543(P2008−302543)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】