説明

光学フィルムの製造用部材および製造装置

【課題】腐食が抑制されるとともに、ドープ組成の変更時において変更後のドープに置換するための置換時間が短縮される光学フィルムの製造用部材および製造装置を提供する。
【解決手段】溶液流延法で使用される光学フィルムの製造用部材であって、少なくとも溶媒との接触面がプラズマ処理されたことを特徴とする光学フィルムの製造用部材、および該光学フィルムの製造用部材を備えた光学フィルムの製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液流延法を採用した光学フィルムの製造装置に使用されるドープ調製釜、ドープ静置釜、配管、濾過装置およびドープ流延ベルト等のような光学フィルムの製造用部材、ならびに当該部材を備えた光学フィルムの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今ではフィルムの更なる品質向上が求められており、中でも、フィルム中の異物低減化が要求されている。例えば、溶液流延法によりドープを用いて光学フィルムを製造する際、溶媒と接触する面を有するドープ調製釜、ドープ静置釜、配管、濾過装置およびドープ流延ベルト等のような光学フィルムの製造用部材が、溶媒中に塩化物が含まれる環境において経時使用されると腐食が進行する。その結果、腐食によるサビが異物としてドープに混入し、光学フィルム中で目視レベルで確認されることが問題となっている。
【0003】
そこで、ドープ調製設備における摺動部分のステンレス素材の組成を規定することにより、当該摺動部分の腐食を抑制する技術が開示されている(特許文献1〜3)。しかしながら、そのような技術では、摺動部分の腐食を抑制できるものの、生産品種の切替の際、ドープ組成の変更時において、切り替え時間を比較的長く確保する必要があるので、生産性が低下する、という新たな問題が生じていた。光学フィルムを連続的に製造する生産ラインにおいて、ドープ組成を変更する時は、製造装置の洗浄等を行うことなく、変更後のドープを使用し続けて、装置内の変更前のドープを変更後のドープに置換させるのが一般的である。変更後のドープに十分に置換されるまでの間に製造されたフィルムは、組成の変化によって、凝集物等が生成し、異物として含有される。そのため、従来の光学フィルムの製造装置では、ドープ組成変更時において置換時間を比較的長く確保する必要があり、生産性の低下をもたらしていた。したがって、生産性向上に寄与する置換時間の短縮化が必須である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−253497号公報
【特許文献2】特開2007−253498号公報
【特許文献3】特開2007−253499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、腐食が抑制されるとともに、ドープ組成の変更時において変更後のドープに置換するための置換時間が短縮される光学フィルムの製造用部材および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、溶液流延法で使用される光学フィルムの製造用部材であって、少なくとも溶媒との接触面がプラズマ処理されたことを特徴とする光学フィルムの製造用部材に関する。
【0007】
本発明はまた、上記光学フィルムの製造用部材を備えた光学フィルムの製造装置、および該製造装置によって製造された光学フィルムに関する。
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る光学フィルムの製造用部材は、腐食が十分に抑制されるので、光学フィルムへの異物(サビ)の混入を抑制できる。
しかも、そのような部材におけるプラズマ処理面は溶媒に対する耐濡れ性が向上し、溶媒やドープの付着が抑制されるので、ドープ組成の変更時において変更後のドープに置換するための置換時間が短縮され、結果として生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の光学フィルムの製造用部材を備えた光学フィルムの製造装置の一例を示す。
【図2】10年後相当の表面粗さの算出方法を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[光学フィルムの製造用部材]
本発明に係る光学フィルムの製造用部材(以下、単に「本発明の部材」ということがある)は、いわゆる溶液流延法を採用した光学フィルムの製造装置において使用されるものである。本発明の部材の具体例として、例えば、ドープを調製するための調製釜、調製されたドープを静置し脱泡するための静置釜、ドープまたは溶媒を移送するための配管、ドープ中の異物を濾過・除去するための濾過装置、およびドープを流延・乾燥してフィルム形状に製膜するための流延ベルト等が挙げられる。
【0011】
本発明の部材は、溶媒との接触面を有し、少なくとも当該溶媒との接触面がプラズマ処理されている。溶媒との接触面とは、溶媒と接触し得る面を意味し、溶媒を含有するドープと接触し得る面も包含して意味するものとする。溶媒との非接触面がプラズマ処理されていてもよい。
【0012】
調製釜はドープの調製時にドープまたは溶媒を内部に収容して使用される釜であり、その内壁面がプラズマ処理されている。
静置釜はドープを内部に収容して静置することによって脱泡するための釜であり、その内壁面がプラズマ処理されている。
配管はドープの調製時にドープまたは溶媒を移送するために使用される配管であり、その内壁面がプラズマ処理されている。
【0013】
濾過装置は濾紙をセットすることにより濾過を行うフィルタープレス、或いは金属フィルターから任意に選択することができる。フィルタープレスについては濾紙をセットごとに濾過装置を分解(濾紙を挟みこんだ金属板を開枠)するため、濾過装置内の内壁面のプラズマ処理面に関しては任意に選択が可能である。金属フィルターを収納するハウジング内のドープが接触する壁面に至ってはプラズマ処理されていることが好ましい。
【0014】
流延ベルトは、外周面にドープを流延され、乾燥によってフィルム形状に製膜するためのベルトであり、その外周面がプラズマ処理されている。
【0015】
本発明の部材は、母材がステンレス鋼であり、プラズマ処理されたステンレス鋼を、プラズマ処理面が溶媒との接触面になるように成形・加工することによって製造できる。
ステンレス鋼母材としては、従来から光学フィルムの製造用部材の母材として使用されているステンレス鋼が使用可能である。ステンレス鋼母材の具体例として、例えば、SUS314、SUS304(304L)、SUS305、SUS303、SUS309、SUS310、SUS316(316L)およびCu含有のXM−7などが挙げられる。
【0016】
本発明においてプラズマ処理は、対向する電極間に、高周波電圧を印加して放電させることにより、反応性ガスをプラズマ状態とし、金属支持体表面をこのプラズマ状態の反応性ガスに晒すことによって、母材の表面を改質する処理である。そのようなプラズマ処理は、母材内部の表層部分を改質する処理であり、母材表面の上に新たに膜または層が形成される処理ではない。反応性ガスとしては、例えば、窒素ガス;炭化水素ガス;およびフッ素化合物、ケイ素化合物、チタン化合物等の有機金属化合物のガスを挙げることができ、それらの混合ガス等が使用可能である。炭化水素ガスとして、例えば、C2n+2で示されるメタン同属体であって、処理温度において気体であるものを種類に限定なく使用することができる。特に、常温で気体のメタン、エタン、プロパン、ブタンは、使用に際して気化設備が不要であるので、好ましいものであるといえる。
【0017】
例えば、反応性ガスとして窒素ガスを用いるとき、当該プラズマ処理はプラズマ窒化処理と呼ばれ、母材表面の内部側に窒化層が形成される。窒化層の厚みは通常、5〜1000μmであり、好ましくは5〜500μmである。
また例えば、反応性ガスとして炭化水素ガスを用いるとき、当該プラズマ処理はプラズマ浸炭処理と呼ばれ、母材表面の内部側に浸炭層が形成される。浸炭層の厚みは通常、5〜1000μmであり、好ましくは5〜500μmである。
【0018】
また例えば、反応性ガスとしてフッ素原子含有有機金属化合物ガスを用いるとき、当該プラズマ処理はプラズマフッ素処理と呼ばれ、母材表面の内部側にフッ化層が形成される。フッ化層の厚みは通常、5〜1000μmであり、好ましくは5〜500μmである。
また例えば、反応性ガスとしてケイ素原子含有有機金属化合物ガスを用いるとき、当該プラズマ処理はプラズマケイ素処理と呼ばれ、母材表面の内部側にケイ素原子含有層が形成される。ケイ素原子含有層の厚みは通常、5〜1000μmであり、好ましくは5〜500μmである。
また例えば、反応性ガスとしてチタン原子含有有機金属化合物ガスを用いるとき、当該プラズマ処理はプラズマチタン処理と呼ばれ、母材表面の内部側にチタン原子含有層が形成される。チタン原子含有層の厚みは通常、5〜1000μmであり、好ましくは5〜500μmである。
【0019】
そのような改質層(例えば、窒化層、浸炭層、フッ化層、ケイ素原子含有層、チタン原子含有層)等の厚みは、ビッカース硬度計を用いて表面からの深さごとの硬度を測定することによって測定できる。
【0020】
本発明においてプラズマ処理としては、腐食抑制効果および置換時間短縮効果をより一層有効に享受する観点から、プラズマ窒化処理またはプラズマ浸炭処理の少なくとも一方の処理を行うことが好ましく、より好ましくは少なくともプラズマ窒化処理を行う。さらにコスト対効果も考慮すると、プラズマ窒化処理を単独で行うことが最も好ましい。例えば、プラズマ窒化処理およびプラズマ浸炭処理の両方を行う場合、いずれの処理を先に行ってもよいし、または同時に行ってもよい。プラズマ窒化処理およびプラズマ浸炭処理を同時に行う場合、反応性ガスとして窒素ガスと炭化水素ガスとの混合ガスが使用される。この場合、浸炭窒化層が形成される。
【0021】
プラズマ処理に際して、詳しくは、まず、処理室にステンレス鋼からなる母材を装入し、排気した後、所定の反応性ガスを、希釈用ガスと共に注入する。希釈用ガスとしては、例えば、水素ガス、アルゴンガス、酸素ガス等が使用可能である。反応性ガスの濃度は、本発明の目的が達成される限り特に制限されず、窒素ガスを使用する場合は0.01〜10%が適当であり、炭化水素ガスを使用する場合は0.05〜5%が適当であり、有機金属化合物ガスを使用する場合は0.05〜5%が適当であり、残りが希釈用ガスであればよい。反応性ガスが2種類以上組み合わされて使用される場合、各反応性ガスの濃度は上記したそれぞれの範囲内であればよい。
【0022】
反応性ガスおよび希釈用ガスを注入した後は、加熱下、放電処理炉全体を陽極とし、母材(陰極)との間に直流高電圧を印加して保持する。このとき、導入された反応性ガスや希釈用ガスがプラズマ化し、陰極付近で急激に電位が低下する。このため、プラズマ中の反応性ガスがイオン化した状態で陰極降下によって加速され、母材表面に衝突して打ち込まれ、反応性ガスの種類に応じた改質層が形成される。
【0023】
処理温度は、本発明の目的が達成される限り特に制限されず、窒素ガスを使用する場合は600℃以下、特に500〜550℃が適当であり、炭化水素ガスを使用する場合および炭化水素ガスと窒素ガスとを併用する場合は400〜600℃が適当であり、有機金属化合物ガスを使用する場合は400〜600℃が適当である。
【0024】
直流高電圧を印加した際の電流密度は0.1〜5A/cmが適当である。
そのような電圧印加状態での保持時間は本発明の目的が達成される限り特に制限されず、いずれの反応性ガスを使用する場合においても、120〜480分間であってよい。
【0025】
本発明においてプラズマ処理された面は、製造装置の稼働開始前における純水滴下による接触角と、稼働開始30日後における純水滴下による接触角との差が10°以下あり、好ましくは5°以下である。例えば、流延ベルトにおけるプラズマ処理された外周面は、製造装置の稼働開始前における純水滴下による接触角と、稼働開始30日後における純水滴下による接触角との差が上記範囲内である。このことより、プラズマ処理された面は、ドープ(特に溶媒)との接触によっても表面活性が有効に維持されることが明らかである。そのため、腐食が十分に抑制される。しかも、溶媒に対する耐濡れ性が向上し、有効に維持されるので、溶媒やドープの付着が抑制され、ドープ組成の変更時において変更後のドープに置換するための置換時間が短縮され、結果として生産性が向上する。
【0026】
本発明においてプラズマ処理された面は、アレニウス式による換算に基づく、10年間稼働時における表面粗さRaの変動率が20%以下、好ましくは10%以下である。
【0027】
アレニウス式は、以下の式(1)であり、化学反応速度の温度依存性を定量的に表すものであり、各種機器の温度劣化を評価する場合に利用される。
K=A×e−Ea/RT (1)
但し、K :反応速度定数
A :頻度因子
Ea:活性化エネルギー
R :気体定数(8.314J/mol−K)
T :温度(絶対温度K)
【0028】
アレニウス式は、各種部材の劣化反応の速度定数についても適用することができ、部材表面の腐食による劣化の度合いをYrとすると、この劣化度合いYrの時間Txに対する変化(劣化速度)dYr/dTxが反応速度定数Kに相当するものと考えることができる。この場合、式(1)を自然対数で表現した以下の式(1’)からもわかるように、劣化速度は、温度Tによる影響に加えて、頻度因子Aによる影響を考慮する必要がある。頻度因子Aは、温度に無関係な因子であり、ストレスの大きさを劣化の速度定数へ置き換えた値と見做すことができる。
lnK=(−Ea/R)×(1/T)+lnA (1’)
部材の表面粗さ増加率(劣化の度合い)をYr、保存時間をTxとしたとき、Yr=aTxで示される線形関係となることが経験則としてあり、直線の傾きa(=dYr/dTx)が式(1’)式の活性化エネルギーEaに関する項で関連付けられる。
以上の劣化速度aは、具体的には、部材温度Tやドープ中の固形分濃度Iをパラメータとして関数或いはマップ化される。そして、以下の式(2)に示すように、劣化速度aに基づいて設定時間Tx毎の部材の表面劣化率Yrを積算することにより部材表面の劣化状況を把握することができる。
Yr=a・Tx (2)
【0029】
10年後相当の表面粗さ(10年間稼働時の表面粗さ)は具体的には以下に示すアレニウスの式に基づく方法により算出できる。詳しくは、所定の3つのサンプルをそれぞれ80℃,65℃,50℃のドープに1週間浸漬する。これらのサンプルの表面粗さt(t80、t65、t50)を測定し、当該ドープ温度と測定値に基づいて、図2に示すように、横軸;1/T(Tは当該ドープ温度に対応する絶対温度(K))−縦軸;ln(1/t)(tは当該ドープ温度での表面粗さ)のグラフにプロットする。これらのプロットから近似直線を求め、当該近似直線に基づいてドープ温度が35℃のときの表面粗さt35を求め、当該値を10年後相当の表面粗さとする。
変動率は、現状の値からの変動率であり、以下の式に基づいて算出できる。
変動率=(10年後相当の値−現状の値)/現状の値)
現状の値は、後述する実施例1および評価の方法と同様の方法によって測定された表面粗さである。
【0030】
[光学フィルムの製造装置]
本発明の光学フィルムの製造装置においては、調製釜、静置釜、配管、濾過装置および流延ベルトからなる群から選択される全ての部材における溶媒との接触面がプラズマ処理されていなければならないというわけではなく、当該群から選択される少なくとも1つの部材における溶媒との接触面がプラズマ処理されていればよい。好ましくは少なくとも流延ベルトにおける溶媒との接触面がプラズマ処理される。より好ましくは調製釜、静置釜、配管、濾過装置および流延ベルトの全ての部材における溶媒との接触面がプラズマ処理される。
【0031】
以下、光学フィルムの製造装置の一例を示す図1を用いて、本発明の部材について説明する。図1において、1は溶媒混合釜、2はドープ仕込み釜、3はドープ静置釜、4は添加液調製釜、5、6、7および8は配管、9a、9b、9cおよび9dは濾過装置、10a、10b、10cおよび10dはポンプ、11はスタティックミキサー、101はドープ流延ベルト、102は流延ダイ、103は剥離ロール、104はフィルム、105はテンター・乾燥装置、106はロール搬送・乾燥装置を示す。
【0032】
そのような部材のうち、溶媒混合釜1、ドープ仕込み釜2、および添加液調製釜4は前記調製釜に対応し、ドープ静置釜3は前記静置釜に対応し、配管5、6、7および8は前記配管に対応し、濾過装置9a、9b、9cおよび9dは前記濾過装置に対応し、ドープ流延ベルト101は前記流延ベルトに対応する。
【0033】
図1の装置では、溶媒混合釜1において溶媒が均一に混合され、混合された溶媒はドープ仕込み釜2に配管5を経て移送される。その際、ポンプ10aが使用され、濾過装置9aによって濾過が行われているが、これらは必ずしも使用されなければならないというわけではない。
【0034】
ドープ仕込み釜2では、加熱、加圧および撹拌により、移送された溶媒に対してフィルムの固形原料が溶解・分散され、ドープが調製される。ドープ仕込み釜2で調製されたドープは、ドープ静置釜3に配管6を経て移送される。その際、ポンプ10bが使用され、濾過装置9bによって濾過が行われているが、これらは必ずしも使用されなければならないというわけではない。
【0035】
一方、フィルム原料のうち、ドープの流延直前に、ドープに添加されるのが好ましい原料(例えば、紫外線吸収剤等)は、必要により、添加液調製釜4において、別途、溶媒に対して溶解される。
【0036】
ドープ静置釜3では、ドープが静置され、脱泡を行う。脱泡されたドープは、配管7を経て流延ダイ102に導入される。添加液調製釜4で添加液が調製されている場合、ドープは、添加液を配管8を経由してスタティックミキサー11に導入し、インライン添加された後、流延ダイ102に導入することもできる。ドープおよび添加液は、移送に際しポンプ10c、10dが使用され、濾過装置9c、9dによって濾過が行われているが、これらは必ずしも使用されなければならないというわけではない。
【0037】
流延ダイ102に導入されたドープは流延ベルト101上に流延され、乾燥によって製膜され、フィルムを得た後は、剥離ロール103によってフィルムを剥離する。剥離されたフィルム104は、必要により、テンター・乾燥装置105で延伸されながら乾燥された後、ロール搬送・乾燥装置106で乾燥され、巻き取られる。
【0038】
[光学フィルム]
本発明の光学フィルムの製造装置は腐食が抑制されるので、当該装置によって製造された光学フィルムは、腐食によって混入される黒・褐色異物の含有量が低減される。例えば、調製釜、静置釜、配管、濾過装置および流延ベルトの全ての部材における溶媒との接触面がプラズマ処理、特にプラズマ窒化処理された製造装置を用いた場合、製造装置の稼働開始直後から製造された光学フィルム50000m相当における最大長径10μm以上の黒・褐色異物の含有量は1.0個/m以下、特に0.5個/m以下である。
【0039】
アレニウス式による換算に基づくと、10年間稼働時における最大長径10μm以上の黒・褐色異物の含有量変動率は200%以下、好ましくは150%以下である。
【0040】
10年後相当の異物含有量(10年間稼働時の異物含有量)は具体的には以下に示すアレニウスの式に基づく方法により算出できる。詳しくは、10年後相当の表面粗さを算出する際に使用した80℃,65℃,50℃のドープを用いて製膜し、フィルム中に含まれる上記異物の個数をカウントし、フィルム1mあたりの異物故障数の平均値k(k80、k65、k50)を算出する。当該ドープ温度と算出値に基づいて、横軸;1/T(Tは当該ドープ温度に対応する絶対温度(K))−縦軸;ln(1/k)(kは当該温度でのフィルム1mあたりの異物故障数の平均値)のグラフにプロットする。これらのプロットから近似直線を求め、当該近似直線に基づいてドープ温度が35℃のときのフィルム1mあたりの異物故障数の平均値k35を求め、当該値を10年後相当の異物含有量とする。製膜方法は後述する実施例1と同様の方法である。
変動率は、現状の値からの変動率であり、以下の式に基づいて算出できる。
変動率=(10年後相当の値−現状の値)/現状の値)
現状の値は、後述する実施例1および評価の方法と同様の方法によって測定されたフィルム1mあたりの異物故障数の平均値である。
【0041】
本発明において製造される光学フィルムは、液晶表示用部材に好ましく用いることができる。本発明でいう液晶表示用部材とは、液晶画像表示装置に使用される部材のことで、例えば、偏光板、偏光板用保護フィルム、位相差板、反射板、光学補償フィルム、視野角向上フィルム、防眩フィルム、無反射フィルム、帯電防止フィルム等があげられる。上記記載の中でも、偏光板または偏光板用保護フィルム用に好ましく用いられる。
【0042】
[ドープ]
ドープは、少なくとも高分子材料が溶媒に溶解されてなるものであり、所望により、可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤、酸化防止剤などの添加剤が溶解または分散される。
【0043】
溶媒が2種類以上使用される場合、図1における溶媒混合釜1で均一に混合される。溶媒混合釜1で調製された溶媒は、ドープ仕込み釜2だけでなく、添加液調製釜4で使用されてもよい。
高分子材料は通常、図1におけるドープ仕込み釜2で溶媒に溶解される。
可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤、酸化防止剤などの添加剤はそれぞれ独立して、図1において、ドープ仕込み釜2で溶媒に溶解または分散されてドープを構成してもよいし、または添加液調製釜4において溶媒に溶解または分散された後、ドープに混合されてもよいが、通常は全ての添加剤はドープ仕込み釜2で溶媒に溶解または分散される。
【0044】
高分子材料は特に制限されず、フィルムの分野で公知の高分子材料が使用可能である。特に光学フィルムを製造する場合においては、セルロースエステルが好ましく使用される。以下、セルロースエステルを用いる場合について詳しく説明するが、以下の説明に限定されるものではない。
【0045】
セルロースエステルは光学フィルムの分野で従来より使用されているセルロースエステルであれば特に制限されず、例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、またはセルロースアセテートプロピオネートブチレートなどが使用可能である。2種類以上のセルロースエステルを組み合わせて用いてもよい。
【0046】
セルロースエステルは、セルロース原料をアシル化することによって得ることができる。例えば、アシル化剤が酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)である場合には、酢酸のような有機酸やメチレンクロライド等の有機溶媒を用い、硫酸のようなプロトン性触媒を用いて合成する。また例えば、アシル化剤が酸クロライド(CHCOCl、CCOCl、CCOCl)の場合には、触媒としてアミンのような塩基性化合物を用いて反応が行われる。具体的には特開平10−45804号公報に記載の方法で合成することが出来る。アシル基をセルロース分子の水酸基に反応させる。セルロース分子はグルコースユニットが多数連結したものからなっており、グルコースユニットに3個の水酸基がある。この3個の水酸基にアシル基が誘導された数を置換度という。例えば、セルローストリアセテートはグルコースユニットの3個の水酸基全てにアセチル基が結合している。アシル基の置換度はASTM−D817−96に準じて測定することができる。
【0047】
セルロース原料としては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプ)、ケナフなどを挙げることが出来る。またそれらのセルロース原料はそれぞれ任意の割合で混合使用することが出来る。
【0048】
セルロースエステルの数平均分子量Mnは通常、50000〜200000であり、Mwは通常、150000〜400000である。
【0049】
分子量分布の測定としては、高速液体クロマトグラフィーを用いることができ、これを用いて数平均分子量を算出することができる。
測定条件の一例を以下に示す。
溶媒:メチレンクロライドカラム: Shodex K806,K805,K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した。)
カラム温度:25℃試料濃度: 0.1質量%検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に得ることが好ましい。
【0050】
セルロースエステルの濃度は10〜30質量%が好ましく、15〜25質量%がより好ましい。セルロースエステル濃度はドープ全体に対する割合である。
【0051】
可塑剤としては、特に限定しないが、例えば、リン酸エステル化合物、フタル酸エステル化合物、グリコール酸化合物等が使用可能である。リン酸エステル化合物の具体例としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。フタル酸エステル化合物の具体例としては、例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート等が挙げられる。グリコール酸エステル化合物の具体例としては、例えば、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等が挙げられる。可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0052】
リン酸エステル化合物の使用比率はセルロースエステルに対して50質量%以下とすることが、セルロースエステルフィルムの加水分解を引き起こしにくく、耐久性に優れるため好ましい。リン酸エステル化合物の比率は少ない方がさらに好ましく、特には、フタル酸エステル化合物やグリコール酸エステル化合物だけを使用することが好ましい。可塑剤のセルロースエステルに対する添加量としては、0.5〜30質量%が好ましく、特に2〜15質量%が好ましい。
【0053】
紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の観点より、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものが好ましく用いられる。特に、波長370nmでの透過率が10%以下であることが必要となり、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下である。本発明において、使用し得る紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。ベンゾトリアゾール系の市販の紫外線吸収剤として、例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等を好ましく用いることができるが、これらには限定されない。紫外線吸収剤は、2種以上用いてもよい。
【0054】
紫外線吸収剤の使用量はセルロースエステルに対し0.5〜20質量%の範囲で添加することができ、0.6〜5.0質量%が好ましく、特に好ましくは0.6〜2.0質量%である。
【0055】
マット剤としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子微粒子を含有させることが好ましい。中でも、二酸化ケイ素がフィルムのヘイズ(失透性)を小さくできるので好ましい。微粒子の2次粒子としては、平均粒径で0.01〜1.0μmであることが好ましい。マット剤の含有量はセルロースエステルに対して0.005〜0.5質量%が好ましい。二酸化ケイ素のような微粒子では、有機物により表面処理されている場合が多いが、このようなものはフィルムのヘイズを低下できるため好ましい。表面処理で好ましい有機物としては、例えば、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサン等が挙げられる。マット剤の平均粒径としては、大きい方がマット効果は大きく、逆に平均粒径の小さい方は透明性に優れるため、好ましい微粒子の一次粒子の平均粒径として5〜50nmで、より好ましくは7〜20nmである。これらの微粒子は、セルロースエステルフィルム中では、通常、凝集体として存在しセルロースエステルフィルム表面に0.01〜1.0μmの凹凸を形成させることが好ましい。二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、日本アエロジル(株)製のAEROSIL 200、200V、300、R972、R972V、R974、R202、R812,OX50、TT600等を挙げることができ、好ましくはAEROSIL200V、R972、R972V、R974、R202、R812である。これらのマット剤は2種以上併用してもよい。2種以上併用する場合、任意の割合で混合して使用することができる。この場合、平均粒径や材質の異なるマット剤、例えば、AEROSIL 200Vと同R972Vとを質量比で0.1:99.9〜99.9〜0.1の範囲で使用できる。
【0056】
溶媒としては、セルロースエステルに対する良溶媒を主とする有機溶媒を用いる。良溶媒としては、セルロースエステルに対して良好な溶解性を有する有機溶媒であり、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、アセトン、シクロヘキサノン、アセト酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、塩化メチレン、ブロモプロパン等を挙げることができ、特に、酢酸メチル、アセトン、塩化メチレンを好ましく用いることができる。これらの有機溶媒に、メタノール、エタノール、ブタノール等の低級アルコールを併用することにより、セルロースエステルの有機溶媒への溶解性が向上したりドープ粘度を低減できるので好ましい。特に、沸点が低く、毒性の少ないエタノールが好ましい。
【0057】
ドープに使用する有機溶媒は、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤と貧溶剤の混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%である。本発明に用いられる良溶剤、貧溶剤とは、使用するセルロースエステルを単独で溶解するものを良溶剤、単独では溶解しないものを貧溶剤と定義している。本発明に係るドープに使用する貧溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン等を好ましく使用し得る。
【実施例】
【0058】
図1に示す光学フィルムの製造装置の各種部材をプラズマ処理して、製造装置A1およびA2を得た。
(製造装置A1の各種部材)
溶媒混合釜1、ドープ仕込み釜2、ドープ静置釜3および添加液調製釜4、ならびに配管5、6、7および8は、以下に示す方法でプラズマ窒化処理されたステンレス鋼(SUS314)を、プラズマ処理面が内壁面になるように成形・加工することによって製造した。
濾過装置9a、9cおよび9dは、金属焼結フィルタ(日本精線株式会社製)を用いたものであって、上記と同様のプラズマ窒化処理ステンレス鋼を、プラズマ処理面がハウジング内壁面になるように成形・加工することによって製造した。
濾過装置9bは、濾紙(安積濾紙製)を用いたものであって、上記と同様のプラズマ窒化処理ステンレス鋼を、プラズマ処理面がハウジング内壁面になるように成形・加工することによって製造した。
ドープ流延ベルト101は、上記と同様のプラズマ窒化処理ステンレス鋼を、プラズマ処理面が外周面になるように成形・加工することによって製造した。
【0059】
(プラズマ窒化処理方法)
処理室内の80%N、20%Hの混合ガス流雰囲気を667Pa(5Torr)に減圧し、所定のステンレス鋼母材を陰極として約300Vを印加し、グロー放電状態で母材周囲にプラズマシースを形成させた。母材の温度は、外部からの加熱なしで行なった。500℃まで電流制御によって900秒で昇温した。500℃で約3A/cmの電流密度となった。8時間保持後、高真空の装置内で室温まで冷却した。
ビッカース硬度計(ミツトヨ製)により窒化層の厚みを測定したところ、500μmであった。
【0060】
(製造装置A2の各種部材)
溶媒混合釜1、ドープ仕込み釜2、ドープ静置釜3および添加液調製釜4、ならびに配管5、6、7および8は、以下に示す方法でプラズマ浸炭処理されたステンレス鋼(SUS314)を、プラズマ処理面が内壁面になるように成形・加工することによって製造した。
濾過装置9a、9b、9cおよび9dは、上記と同様のプラズマ浸炭処理ステンレス鋼を、プラズマ処理面がハウジング内壁面になるように成形・加工することによって製造した。フィルタは製造装置A1においてと同様であった。
ドープ流延ベルト101は、上記と同様のプラズマ浸炭処理ステンレス鋼を、プラズマ処理面が外周面になるように成形・加工することによって製造した。
【0061】
(プラズマ浸炭処理方法)
処理室内の混合ガス流雰囲気を、5%メタン、15%水素、80%アルゴンとしたこと以外、上記プラズマ窒化処理方法と同様の方法により、プラズマ浸炭処理を行った。
ビッカース硬度計(ミツトヨ製)により浸炭層の厚みを測定したところ、200μmであった。
【0062】
(実施例1)
製造装置A1により光学フィルムを製造した。
詳しくは、以下に示す組成のドープを調製するに際し、メチレンクロライドおよびエタノールは溶媒混合釜1に添加した。セルロースアセテートプロピオネート、トリフェニルフォスフェート、エチルフタリルエチルグリコレートはドープ仕込み釜2に添加した。チヌビン109、チヌビン171、二酸化珪素微粒子は添加液調製釜4にて混合溶液を調液後、ドープ仕込み釜2に添加した。
【0063】
(ドープ組成)
セルロースアセテートプロピオネート 100重量部
(アセチル基置換度1.9、プロピオニル基置換度0.8、
Mn=70000、Mw=220000、Mw/Mn=3.14)
トリフェニルフォスフェート 8重量部
エチルフタリルエチルグリコレート 2重量部
チヌビン109(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製) 0.5重量部
チヌビン171(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製) 0.5重量部
メチレンクロライド 300重量部
エタノール 60重量部
二酸化珪素微粒子 2重量部
(商品名:AEROSIL−R972V,1次粒径:16nm)
【0064】
各種成分を所定の部位から所定の比率で添加して得られたドープを、流延ダイ102から流延ベルト101上に流延し、乾燥によってフィルムを得た後は、剥離ロール103によってフィルムを剥離した。剥離時のフィルム残留溶媒量は100%であった。次いで、剥離されたフィルム104を、テンター・乾燥装置105で延伸しがら乾燥した後、ロール搬送・乾燥装置106で乾燥し、ドライ膜厚40μmのフィルムを得た。
【0065】
(実施例2)
製造装置A2を用いたこと以外、実施例1と同様の方法により光学フィルムを製造した。
【0066】
(比較例1)
製造装置Bを用いたこと以外、実施例1と同様の方法により光学フィルムを製造した。
製造装置Bは、プラズマ窒化処理を行わなかったこと以外、製造装置A1と同様の装置である。
【0067】
(評価)
・接触角
流延ベルトにおける外周面の純水滴下による接触角を、製造装置の稼働開始前と、稼働開始30日後とにおいて、測定し、それらの差を求めた。詳しくは、シリンジから一滴の純水を乗せ、接触角測定器(マツボー社製PG−X)を使用して滴下3秒後の接触角を測定した。装置の稼働によって外周面はドープと接触するため、接触角は低下した。
【0068】
・フィルム異物の数(現状)
製造装置の稼働開始直後から光学フィルム50000mを製造した際、無作為に100mを採取し、目視により最大長径が10μm以上の錆由来の黒色或いは褐色の異物故障数を測定した。フィルム1mあたりの最大長径10μm以上の錆由来の黒色或いは褐色の異物故障数の平均値を算出した。
【0069】
・フィルム異物の数(10年後相当)
アレニウス式を用いた前記した方法により、10年後相当の異物数を算出し、現状の値からの変動率を求めた。
【0070】
・表面粗さRa(現状)
製造装置の稼働開始前において、流延ベルトの外周面にドープを付着させ、乾燥・剥離して、テスト用フィルムを得た。テスト用フィルムには流延ベルト外周面の表面形状が転写されていた。テスト用フィルムにおける転写面の表面粗さRaを、ZYGO社製 New View5010を用いて、下記の測定条件にて測定した。
測定条件
対物レンズ:50倍
中間レンズズーム:1倍
カメラ解像度:320×240 30Hz
走査距離(Scan length):5μm(5sec)
最小変調許容値(min mod):7%
【0071】
・表面粗さRa(10年後相当)
アレニウス式を用いた前記した方法により、10年後相当の表面粗さを算出し、現状の値からの変動率を求めた。
【0072】
・ドープ組成変更時における置換時間
上記ドープ組成にて光学フィルムを10日間製造した後、下記ドープ組成にて光学フィルムを製造した。変更後のドープの送液を開始してから、フィルム異物の数が30個/100m以内になるまでに要する時間を測定した。
【0073】
(変更後のドープ組成)
ドープ組成を以下の組成に変更し、ドープを調製した。
アセチル基置換度2.88、プロピオニル基置換度0およびブチリル基置換度0のセルローストリアセテート(数平均分子量15万)100重量部、トリフェニルホスフェート10重量部、エチルフタリルエチルグリコレート2重量部、チヌビン326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)1重量部、AEROSIL 200V(日本アエロジル社製)0.1重量部、メチレンクロライド475重量部、およびエタノール25重量部にてドープを調製した。
【0074】
【表1】

【符号の説明】
【0075】
1:溶媒混合釜
2:ドープ仕込み釜
3:ドープ静置釜
4:添加液調製釜
5:6:7:8:配管
9a:9b:9c:9d:濾過装置
10a:10b:10c:10d:ポンプ
11:スタティックミキサー
101:ドープ流延ベルト
102:流延ダイ
103:剥離ロール
104:フィルム
105:テンター・乾燥装置
106:ロール搬送・乾燥装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液流延法で使用される光学フィルムの製造用部材であって、少なくとも溶媒との接触面がプラズマ処理されたことを特徴とする光学フィルムの製造用部材。
【請求項2】
プラズマ処理としてプラズマ窒化処理またはプラズマ浸炭処理の少なくとも一方の処理を行う請求項1に記載の光学フィルムの製造用部材。
【請求項3】
母材がステンレス鋼であり、プラズマ処理されたステンレス鋼を、プラズマ処理面が溶媒との接触面になるように成形・加工することによって製造された請求項1または2に記載の光学フィルムの製造用部材。
【請求項4】
光学フィルムの製造用部材が、ドープを調製するための調製釜、調製されたドープを静置し脱泡するための静置釜、ドープまたは溶媒を移送するための配管、ドープ中の異物を濾過・除去するための濾過装置、またはドープを流延・乾燥してフィルム形状に製膜するための流延ベルトである請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルムの製造用部材。
【請求項5】
プラズマ処理された面における、アレニウス式換算に基づく、10年間稼働時の表面粗さ変動率が20%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルムの製造用部材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルムの製造用部材を備えた光学フィルムの製造装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光学フィルムの製造装置によって製造された光学フィルム。
【請求項8】
最大長径10μm以上の黒・褐色異物の含有量が1.0個/m以下である請求項7に記載の光学フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−167917(P2011−167917A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33417(P2010−33417)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】