説明

光学フィルム及び面光源装置

【課題】輝度を落とさずに部分的な密着を防止し、分光による着色を防止することが可能な光学フィルムを提供する。
【解決手段】互いに対向する第1及び第2主面を有する透光性のベースフィルム1と、第1主面に配置され、互いに隣接して一方向に延伸する複数の偏向素子3を有する偏向素子層2と、第2主面に配置され、複数の突起5を有する突起層4とを備える。突起層4は、バインダ樹脂、及びバインダ樹脂とは屈折率が異なる樹脂からなる複数の光拡散材を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光を偏向する光学フィルム及び面光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー液晶表示装置は携帯電話、携帯用ノートパソコン、携帯用液晶テレビ、あるいはビデオ一体型液晶テレビ等として種々の分野で広く利用されている。この液晶表示装置は、基本的に面光源装置と液晶表示装置から構成されている。面光源装置としては、直下方式やエッジライト方式が用いられる。直下方式では、液晶表示装置の直下に光源が設けられる。エッジライト方式では、透光性平板の導光板の側面部に光源が配置され、導光板の表面全体から光を出射させる。液晶表示装置のコンパクト化からエッジライト方式の面光源装置が多用されている。
【0003】
現在普及している面光源装置では、光源から出射した光は、導光板側面の入光面から入射し、導光板内部に導かれる。導光板の反射面に設けられた反射溝で偏向して反射された光は、導光板の出射面から出射する。一部の光は、反射面側から出射するが、反射面に対向して配置されたリフレクタにより反射されて導光板に再度入射する。導光板の出射面から出射した光は、光学フィルムにより偏向され、光学フィルムからほぼ垂直に出射する。更に、光学フィルムから出射した光は、拡散フィルムにより拡散され、要求される視野角特性を有する面光源となる。
【0004】
光学フィルムの出射面と拡散フィルムの入射面が共に平滑である場合、平滑面同士の部分的な密着により「ウェットアウト」や「ニュートンリング」と呼ばれる表示欠陥が発生しやすくなる。「ウェットアウト」とは、2枚のフィルムが部分的に面接触した場合、密着領域(空気層が無い領域)がその周囲の非密着領域(空気層が有る領域)と異なる部分として視認される表示欠陥である。これは、非密着領域では空気層の存在によりフィルム/空気界面での反射や屈折の影響を受けるのに対して、密着領域では空気層の影響が無く、光の透過特性が非密着領域と異なるためである。
【0005】
一方「ニュートンリング」とは、2枚のフィルムの隙間が数μm以下の場合に、着色および明暗の縞模様が視認される表示欠陥である。これは、2枚のフィルムの隙間(空気層の厚み)の微量な違いに伴い、光の干渉により隙間が光の1/4波長の偶数倍の所で明るく(強く)なり、奇数倍の所で暗く(弱く)なることによる。その結果、光の波長に依存した明暗差が現れるために、着色および明暗の縞模様が視認される。ニュートンリングが顕著に発生するのは、白色光の場合隙間が1.5μm以下の場合である。
【0006】
このような表示品質の低下の課題を解決するため、光学フィルムに用いる樹脂中にビーズを分散させ、拡散フィルムに対向する光学フィルムの表面に突起を形成する技術が提案されている(特許文献1及び2参照)。しかしながら、樹脂中にビーズを均一に分散させ、かつ突起の高さを精度よく制御することは困難である。また、光学フィルムとビーズの樹脂は異なる組成であり、光学フィルムにそりを発生させることがある。更に、樹脂中に分散したビーズは光の拡散体となるため、輝度が低下する問題もある。
【0007】
また、略直角を成す2等辺三角形状のプリズムの偏向素子を約50μmの間隔で表面に配置した光学フィルムにおいて、ニュートンリングを発生させないように、裏面に突起を形成する技術が提案されている(特許文献3参照)。特許文献3では、ベースフィルム部、偏向素子部、及び突起部が一体化形成されている。一般に、ベースフィルム上にプリズム部や突起部を一体化形成する場合、熱転写により形状がベースフィルムに転写される。しかし、高強度の樹脂が用いられるベースフィルムへの熱転写は、形状転写性が悪い。そのため、熱転写により形成した偏向素子は、設計形状からずれてしまう。
【0008】
特に、偏向素子の間隔を10μm以下とすることにより、回折現象を利用して出射光の角度分布を狭くすることができる。その結果、面光源装置の正面輝度を向上させることができる。熱転写により、高強度のベースフィルムに間隔及び高さが5μm〜10μm程度の偏向素子を形成する場合、偏向素子の先端が丸みを帯び、設計値より0.3μm〜1μm程度低い偏向素子が形成されてしまう。一方、形状転写性のよい樹脂を用いれば、設計形状からのずれを0.2μm以下と低減することができる。しかし、一般的に、形状転写性のよい樹脂は強度がないため、光学フィルムのベースフィルムとしては適していない。このように、従来においては、2枚のフィルム間の部分的な密着によるウェットアウトやニュートンリングを防止することができる高輝度の面光源装置を実現することは困難であった。
【0009】
更に、波動光学に基づく回折・干渉現象を利用した光学フィルムを用いた場合、光学フィルムから出射する光が分光して虹色に着色して見える不具合が発生する(特許文献4参照)。この不具合は従来の幾何光学に基づく屈折・全反射現象を利用したプリズムシートには現れない、独特の不具合である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−249220号公報
【特許文献2】特許第3968155号公報
【特許文献3】特開平09−021907号公報
【特許文献4】特許第4265602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、輝度を落とさずに2枚のフィルム間の部分的な密着によるウェットアウトやニュートンリングを防止し、分光による着色を防止することが可能な光学フィルム及び面光源装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様は、互いに対向する第1及び第2主面を有する透光性のベースフィルムと、第1主面に配置され、互いに隣接して一方向に延伸する複数の偏向素子を有する偏向素子層と、第2主面に配置され、複数の突起を有する突起層とを備え、突起層は、バインダ樹脂、及びバインダ樹脂とは屈折率が異なる樹脂からなる複数の光拡散材を含む光学フィルムであることを要旨とする。
【0013】
本発明の第2の態様は、光源と、光源と対向する端面を入射面、入射面に直交する一対の主面のそれぞれを反射面及び出射面とし、反射面に配置され、光源から入射面を通して入射した光を出射面に向かうように反射する反射素子を有する導光板と、出射面に対向して配置された本発明の第1の態様による光学フィルムと、光学フィルムを挟んで出射面と対向する拡散フィルムと、反射面と対向して配置され、反射面から出射した光を導光板に入射させるリフレクタとを備える面光源装置であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、輝度を落とさずに2枚のフィルム間の部分的な密着によるウェットアウトやニュートンリングを防止し、分光による着色を防止することが可能な光学フィルム及び面光源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る面光源装置の一例を示す断面概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る面光源装置に使用する導光板の一例を示す上面図である。
【図3】図2に示した導光板のA−A断面を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る面光源装置に使用する導光板の入射面の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る面光源装置に使用する導光板の入射面の他の例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る面光源装置に使用する導光板の入射面の他の例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る面光源装置に使用する導光板の入射面の他の例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る面光源装置に使用する導光板の反射素子の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る面光源装置に使用する導光板の反射素子の他の例を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る面光源装置に使用する導光板内での光の伝播の一例を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る面光源装置に使用する導光板の他の例を示す図である。
【図12】面光源装置に使用する光学フィルムを示す図である。
【図13】図12に示した光学フィルムのB−B断面を示す図である。
【図14】図12に示した光学フィルムを用いた面光源装置を示す図である。
【図15】光学フィルムと導光板の配置の一例を示す図である。
【図16】光学フィルムと導光板の配置の他の例を示す図である。
【図17】導光板及び光学フィルム内での光の伝播の一例を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態に係る光学フィルムの一例を示す図である。
【図19】図18に示した光学フィルムのC−C断面を示す図である。
【図20】本発明の実施の形態に係る光学フィルムの突起の一例を示す図である。
【図21】本発明の実施の形態に係る光学フィルムの突起の他の例を示す図である。
【図22】本発明の実施の形態に係る面光源装置の出射角度と輝度の関係の一例を示す図である。
【図23】本発明の実施の形態に係る面光源装置の部分的密着及び着色の評価結果の一例を示す表である。
【図24】本発明の実施の形態に係る光学フィルムの製造方法の一例を示す図(その1)である。
【図25】本発明の実施の形態に係る光学フィルムの製造方法の一例を示す図(その2)である。
【図26】本発明の実施の形態に係る光学フィルムの偏向素子の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0017】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
本発明の実施の形態に係る面光源装置は、図1に示すように、光源10、導光板7、光学フィルム6、拡散フィルム8、リフレクタ9を備える。光源10は、導光板7の入射面に対向して配置される。導光板7は、複数の反射素子14が配置された反射面を有する。反射素子14は、光源10から入射した光を出射面12に向かうように反射する。
【0019】
光学フィルム6は、透光性を有し、ベースフィルム1、偏向素子層2、及び突起層4を備える。ベースフィルム1は、互いに対向する第1主面、及び第2主面を有する。偏向素子層2は、導光板7の出射面12に面するようにベースフィルム1の第1主面に配置される。偏向素子層2は、互いに隣接して一方向に延伸する複数の偏向素子3を有する。偏向素子3は、導光板7の出射面12から光学フィルムに入射する光を偏光し、光学フィルム6の第2主面からほぼ垂直に出射させる。突起層4は、ベースフィルム1の第2主面に配置される。突起層4は、複数の突起5を有する。
【0020】
拡散フィルム8は、光学フィルム6を挟んで導光板7の出射面12と対向する。拡散フィルム8は、所望の視野角特性となるように光学フィルム6から入射した光を拡散させる。リフレクタ9は、導光板7の反射面13に面して配置される。リフレクタ9は、導光板7の反射面から出射した光を導光板7に向かって反射させる。
【0021】
より詳細には、図2及び図3に示すように、導光板7は、略矩形状の一対の主面を有する略板状の形状である。光源10と対向する導光板7の端面を入射面11とする。入射面11に直交する導光板7の一対の主面をそれぞれ反射面13及び出射面12とする。反射面13に配置された複数の反射素子14は、光源10から入射面11を通して入射した光を出射面12に向かうように反射する。
【0022】
光源10として、複数の発光ダイオードが用いられる。図2では、4個の発光ダイオードを用いているが、発光ダイオードの個数は限定されない。また、光源10として、冷陰極管などの蛍光管も利用できるが、面光源装置の薄型化のためには発光面が短い発光ダイオードが望ましい。
【0023】
導光板7の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリオレフィン(PO)、ポリカーボネート(PC)、アクリル等の透明材料が利用できる。また、上記以外の材料でも、上記のような一定の屈折率を有する透明な材料であれば利用できる。
【0024】
導光板7の入射面11に対向して略等間隔で直線状に配置された複数の光源10から出射した光は、入射面11から導光板7内に入射される。入射面11に光制御部として、導光板7の厚み方向に伸びる偏向素子を形成することで、入射面11付近の光を拡散させ、あるいは光の進行方向を制御することができる。特に、入射面11付近の明暗差による表示品質を改善することができる。入射面11の光制御部として、図4〜図7に示すように、断面形状が略三角形(図4)、略台形(図5)、略半楕円形(図6)、もしくはなめらかな波型形状(図7)の偏向素子が用いられる。また、図4〜図7に示した偏向素子の表面に微細な凹凸形状を形成したものは、作製が比較的簡単で光制御の効果を得やすい。
【0025】
光の進行方向を変えるための光制御部である溝状の反射素子14は、反射面13に形成される。反射素子14は断面略三角形であり、その稜線は入射面11と略平行方向に延伸する。反射素子14の稜線は、直線状である。反射素子14は、入射面11から入射面11と対向する面に連続して複数形成される。なお、反射素子14は、出射面12に形成してもよい。この場合、反射面13は平坦面となる。また、反射素子14の稜線は、曲線状であってもよい。
【0026】
隣り合う反射素子14同士の間隔は一定でもよく、あるいは入射面11からの距離によって変化させてもよい。隣り合う反射素子14同士の間隔が一定の場合、出射面12から出射する光のうち、入射面11付近から出射する光量に対して、入射面11と対向する面の付近から出射する光量が少なくなる虞がある。この場合、反射素子14同士の間隔を入射面11から遠ざかるに従って密にすることで、入射面11と対向する面の付近から出射する光量を増加させることができる。隣り合う反射素子14同士の間隔を調整することによって、導光板7から出射する光の強度の位置分布を調整することができ、面内で均一な出射特性を有する面光源装置を実現できる。
【0027】
図8に示すように、反射素子14は、厚さaの導光板7の反射面13に周期pで配置される。反射素子14は、入射面11側の第1傾斜面14aと、導光板7の入射面11と対向する面側の第2傾斜面14bとを有する。出射面12に対し、第1傾斜面14aは傾斜角度α1を、第2傾斜面14bは傾斜角度α2を有する。傾斜角度α1、α2は全ての反射素子14において一定でもよく、一部あるいは全ての反射素子14において異なってもよい。
【0028】
反射素子14の周期pは、例えば1μm〜1000μm、好ましくは5μm〜500μm、より好ましくは10μm〜200μm、更に好ましくは20μm〜150μm、更により好ましくは67μm〜81μmの範囲である。傾斜角度α1は、例えば0.01°〜5°、好ましくは0.05°〜2°、より好ましくは0.1°〜0.8°、更に好ましくは0.15°〜0.65°、更により好ましくは0.25°〜0.55°の範囲である。傾斜角度α2は、例えば70°〜90°、好ましくは75°〜85°、より好ましくは78°〜83°、更に好ましくは79.35°〜79.85°、更により好ましくは79.45°〜79.75°の範囲である。導光板7の厚さaは、例えば0.04mm〜5mm、好ましくは0.05mm〜3mm、より好ましくは0.1mm〜1mm、更に好ましくは0.15mm〜0.6mm、更により好ましくは0.2mm〜0.4mmの範囲である。
【0029】
また、図9に示すように、隣接する反射素子14の間に平坦部を設けてもよい。幅paの溝形状の反射素子14が、周期pbで配置される。平坦部を設けることにより、導光板7から出射する光の強度の位置分布を調整することができ、面内で均一な出射特性を有する面光源装置を実現できる。なお、反射素子14の溝の底面に平坦部を設けてもよい。
【0030】
図10に示すように、第1傾斜面14aは、反射素子14が形成されていない出射面12において、入射面11から出射面12の法線と角度ψ1で入射した光を、出射面12の法線に対して角度ψ2となるように反射する。即ち、出射面12の法線に対してある角度をなして進む光は、第1傾斜面14aで反射することで、出射面12の法線とのなす角度が減少する。第1傾斜面14aでの反射を繰り返すことで、出射面12の位置Xにおいて出射面12の法線となす角度が臨界角より小さくなった光が、出射面12から出射される。このように、図10に示すように、光源10から導光板7の入射面11に入射した光は、出射面12の法線となす角が臨界角に達するまでは出射面12と反射面13で全反射を繰り返しながら導光板7の内部を進む。
【0031】
上述のように溝形状の反射素子14を反射面13に形成した導光板7では、第1傾斜面14aの傾斜角度α1は、第2傾斜面14bの傾斜角度α2より小さい。したがって、反射素子14の大部分が光の反射に使用されるため、導光板7内に入射した光を出射面12方向に反射する効率が高く、光利用効率が高い。
【0032】
導光板7の出射面12に、図11に示すように、断面が略三角形で、稜線が入射面11から入射面11と対向する面に向かって互に平行に延伸する複数の異方性拡散パターン30を形成してもよい。隣り合う異方性拡散パターン30の間隔は、1μm〜1000μm、好ましくは5μm〜300μm、より好ましくは10μm〜200μm、更に好ましくは15μm〜100μm、更により好ましくは20μm〜81μmの範囲である。また、異方性拡散パターン30として、ホログラムパターンを用いてもよい。なお、反射素子14が出射面12に形成される場合は、異方性拡散パターン30は、反射面13に形成される。
【0033】
異方性拡散パターン30は、導光板7の出射面12内で均一な出射特性を得ることに効果がある。特に、導光板7の入射面11付近において、光源10付近、及び隣接する光源10との間付近における光の出射強度差を減少させることに効果があり、面内で均一な出射特性を有するとともに表示品質の高い面光源装置を実現できる。
【0034】
光学フィルム6aは、図12及び図13に示すように、ベースフィルム1、及び偏向素子層2を備える。偏向素子層2は、厚さh2のベース層と、ベース層上に形成されたプリズム状の複数の偏向素子3とを有する。偏向素子3は、互に隣接して一方向に延伸する。偏向素子3は高さh1で、周期d1の間隔で配置される。偏向素子3の断面形状は、三角形で、稜線は直線状である。偏向素子3の延伸方向に直交する方向に切った断面において、頂点からの法線と偏向素子3の入射面11側の第1傾斜面3a及びその反対側の第2傾斜面3bとがなす角度をそれぞれβ1及びβ2とする。なお、偏向素子3は、断面形状が略楕円や略台形等でもよく、稜線は曲線状であってもよい。また、隣り合う偏向素子3は互いに離れていてもよい。しかし、偏向素子3を互に接して配置するほうが光をよく偏向することができ、面光源装置の輝度が高くなる。
【0035】
ベースフィルム1として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリオレフィン(PO)、ポリカーボネート(PC)、アクリル等のような透明な材料の単体もしくは2種類以上の組み合わせが利用できる。偏向素子層2として、ウレタンアクリレート樹脂、オリゴエステルアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、シリコンアクリレート樹脂、アクリルアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂等の透光性の光硬化型樹脂が用いられる。
【0036】
光学フィルム6aには、出射光の角度分布を狭く、出射光をほぼ垂直に狭い角度分布で出射すること、及び出射光の輝度を上げること等の出射特性が要求される。このような出射特性を実現するため、光学フィルム6aの成形に用いる金型の加工性を考慮して、偏向素子層2のベース層の厚さh2、偏向素子3の高さh1、周期d1、第1及び第2傾斜面の角度β1、β2等が決定される。
【0037】
例えば、偏向素子層2のベース層の厚さh2を略0μmにすれば、偏向素子層2に使用する材料を減らすことができるため、製造原価を抑えることが可能である。また、面光源装置の総厚を薄くすることができる。一方、厚さh2を0μmより厚くすれば、偏向素子3を形成するときの異物混入等による変形を抑えることができ、面光源装置の表示品質の低下を防ぐことができる。よって、厚さh2の大きさは、実用的には、異物混入等による偏向素子3変形を抑えることができる最低の厚みにすることが望ましい。また、製造時の厚さばらつきがある場合には、ばらつきを考慮して厚さh2を厚くすることが望ましい。
【0038】
偏向素子層2のベース層の厚さh2は、例えば2μm〜20μm、好ましくは2.5μm〜16μm、より好ましくは3μm〜14μm、更に好ましくは4μm〜12μm、更により好ましくは5μm〜10μmの範囲である。
【0039】
また、偏向素子3の高さh1は、例えば3μm〜100μm、好ましくは3.5μm〜50μm、より好ましくは4μm〜20μm、更に好ましくは5μm〜10μm、更により好ましくは5.4μm〜6.4μmの範囲である。周期d1は、例えば3μm〜50μm、好ましくは3.5μm〜30μm、より好ましくは4.5μm〜15μm、更に好ましくは4.9μm〜10.1μm、更により好ましくは4.9μm〜5.1μmの範囲である。
【0040】
偏向素子3の第1傾斜面3aの角度β1は、例えば0°〜30°、好ましくは4°〜20°、より好ましくは6°〜16°、更に好ましくは8°〜12°、更により好ましくは9.8°〜10.8°の範囲である。第2傾斜面3bの角度β2は、例えば10°〜60°、好ましくは20°〜50°、より好ましくは30°〜40°、更に好ましくは34°〜38°、更により好ましくは35.5°〜36.5°の範囲である。
【0041】
また、偏向素子3として、例えば、断面が鋸歯形状で、各歯の先端をはさむ二辺の長さが10%以上異なり、夾角が60°以下の偏向素子を用いてもよい。偏向素子の光学材料の屈折率がnの場合、偏向素子は、溝の平均の深さhが、h=α×d/(n−1)であることが望ましい(但し、0.4≦α≦1.0、dは偏向素子の平均周期)。0.46μm≦λ1≦0.50μm、0.53μm≦λ2≦0.57μm、0.60μm≦λ3≦0.64μmの範囲にある3波長λ1、λ2、λ3の光を15度≦γ1≦70度の範囲内のある角度γ1で入射させた時、各波長の回折効率が最大となる回折角度が、−5度から+5度の範囲に含まれているように設計した場合、高輝度な面光源装置を得ることができる。
【0042】
また、偏向素子3として、例えば、ホログラムを構成する平均周期200μm以下の溝又は山からなる形状の偏向素子を用いてもよい。ホログラムは、入射角が30°±15°の白色光を光学フィルムの偏向素子が形成されてない面に垂直な方向に曲げる。偏向素子の光学材料の屈折率をnとした時、偏向素子は、平均周期が5.0±1.0μm、平均深さが(3.7±1.0)/(n−1)μmである鋸歯形状、または、鋸歯形状の溝が深さの50%未満だけ埋まっている形状であることが望ましい。偏向素子の平均周期dと鋸歯の山の位置ずれuが、u/d≦0.2の範囲にあるように設計した場合、高輝度な面光源装置を得ることが出来る。
【0043】
図14に示すように、面光源装置において、光学フィルム6aは、偏向素子層2が導光板7の出射面12に面するように設置する。光学フィルム6aは、図15に示すように、偏向素子3の稜線が、導光板7に形成された反射素子14の稜線とほぼ平行に設置する。あるいは、図16に示すように、偏向素子3の稜線を、反射素子14の稜線に対して所定の角度で傾けてもよい。この場合、偏向素子3の第1傾斜面3aが入射面11側を向くように設置する。偏向素子3の稜線を反射素子14の稜線に対して所定の角度で傾けることにより、導光板7と光学フィルム6aとの間、あるいは光学フィルム6aと面光源装置の出射側に配置される液晶表示装置との間でモアレ干渉縞が発生しにくくなる。
【0044】
図17に示すように、導光板7の出射面12から出射する光の多くは、出射面12となす角度が小さい。出射面12となす角度γ1、γ2で出射する光L1,L2は、光学フィルム6a内に偏向素子3の第1傾斜面3aから入射する。入射した光L1、L2は、第2傾斜面3bで反射されて、光学フィルム6aの上面に対して垂直に近い角度に偏向される。したがって、光学フィルム6aの上面に対して垂直に近い角度γo1、γo2で偏向した光Lo1、Lo2が光学フィルム6aから出射する。その結果、光学フィルム6aは、面光源装置から出射する光の正面強度を向上させる。
【0045】
なお、光学フィルム6aによる光の偏向については、次のような注意が必要である。光学フィルム6aの隣り合う偏向素子3同士の距離が充分大きい場合には、光の屈折・全反射現象をもとにして偏向素子3の形状や距離を設計すればよい。一方、光学フィルム6aの隣り合う偏向素子3同士の距離が10μm程度以下になると、光の回折・干渉現象を考慮して偏向素子3の形状や距離を設計する必要がある。(例えば、特開2006−58844号公報参照)。
【0046】
例えば、光学フィルム6aにおいて、光の回折現象を考慮して、図17に示した偏向素子3の周期d1を4.9μm〜5.1μmの範囲、角度β1を9.8°〜10.8°の範囲、かつ角度β2を35.5°〜36.5°の範囲とする。このように設計された光学フィルム6aを用いることにより、面光源装置の正面輝度を向上させることができる。
【0047】
光学フィルム6aと拡散フィルム8とは、実際には近接して配置される。光学フィルム6aの上面と拡散フィルム8の入射面が共に平滑の場合、光学フィルム6aと拡散フィルム8が部分的に密着する。そのため、ウェットアウトやニュートンリング等の表示欠陥が発生し、表示品質が悪くなる。また、偏向素子3による光の回折が発生し、虹色に着色する問題も起こりやすい。
【0048】
実施の形態に係る光学フィルム6は、図18及び図19に示すように、偏向素子層2が形成されたベースフィルム1の反対側の面に突起層4を設ける。突起層4は、厚さHr2のベース層と、ベース層上に形成された高さHr1で、半値幅Drの複数の突起5を有する。突起5は、隣り合う突起5との距離Prで配列される。なお、「半値幅」とは、突起5の高さHr1の半分の位置で突起5を切断した場合の切り口において最大となる径のことである。
【0049】
突起層4は、バインダ樹脂、及びバインダ樹脂に混合された複数の光拡散材を含む。複数の光拡散材のそれぞれは、バインダ樹脂とは屈折率が異なる樹脂からなる。光拡散材とバインダ樹脂との界面で、屈折率の相違により光が散乱及び拡散される。したがって、偏向素子3による光の回折が緩和され、虹色着色を解消することが可能となる。
【0050】
突起層4のバインダ樹脂として、ウレタンアクリレート樹脂、オリゴエステルアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、シリコンアクリレート樹脂、アクリルアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂等の透光性の光硬化型樹脂が用いられる。
【0051】
突起層4の光拡散材としては、輝度を減少させないために透光性を有する樹脂が望ましい。例えば、光拡散材として、スチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリオレフィン(PO)、ポリカーボネート(PC)、アクリル、ウレタンアクリレート樹脂、オリゴエステルアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、シリコンアクリレート樹脂、アクリルアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート樹脂等のような透明な樹脂が用いられる。また、上記した樹脂の中から2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0052】
突起層4のヘイズ値は、例えば10〜80の範囲、好ましくは15〜70の範囲、より好ましくは20〜60の範囲である。ヘイズ値が10%より小さいと、虹色の着色の解消が困難となる。ヘイズ値が80を超すと、光学フィルム6から出射する光の指向性及びピーク輝度が減少する。なお、ヘイズ値は、フィルムの曇度を表し、拡散透過光の全光線透過光に対する割合(%)から求められるもので、ヘイズメータで測定される。
【0053】
突起層4には、光拡散材を5質量%〜20質量%の範囲で混合することが望ましい。光拡散材が5質量%未満だと、ヘイズ値が好ましい範囲より小さくなり、虹色の着色の解消が困難となる。一方、光拡散材が20質量%を超えるとヘイズ値が好ましい範囲よりも大きくなり、光学フィルム6から出射する光の指向性及びピーク輝度が減少する。
【0054】
更に、突起層4の光拡散材として、ビーズ等の略球形の粒子を用いることが望ましい。粒状の光拡散材を用いることにより、均一でばらつきのない拡散性能が得やすくなる。粒状の光拡散材の平均粒径は、0.01μm〜10μmの範囲が望ましい。
【0055】
例えば、突起層4のベース層の厚さHr2を略0.1μmのように薄くすれば、突起層4に使用する材料を減らすことができるため、製造原価を抑えることができる。また、面光源装置の総厚を薄くすることができる。一方、厚さHr2を略0.1μmより厚くすれば、突起層4を形成するときの異物混入等による変形を抑えることができるため、面光源装置の表示品質の低下を防ぐことができる。よって、厚さHr2の大きさは、実用的には、突起層4を形成するときの異物混入などによる変形を抑えることが可能な最低の厚みにすることが望ましい。また、生産時の厚さのばらつきがある場合には、ばらつきを考慮して厚さHr2を厚くすることが望ましい。厚さHr2は、例えば2μm〜20μm、好ましくは2.5μm〜16μm、より好ましくは3μm〜14μm、更に好ましくは4μm〜12μm、更により好ましくは5μm〜10μmの範囲である。
【0056】
突起5は、光学フィルム6と拡散フィルム8との部分的な密着を防止することができる。突起5は、円柱状、円錐状、三角柱状、三角錐状、四角柱状、四角錐状、あるいは半球状である。光学フィルム6と拡散フィルム8との部分的密着を防ぐためには、突起5の接触面積が少ないほうが望ましい。例えば、図20に示すような先端がなだらかな形状よりも、図21に示すような先端が尖った形状のほうが先端部の面積を少なくできる。したがって、突起5としては、柱状よりも半球状や錐状のほうが効果的である。また、微小な面積内に形成した複数の凹凸を、突起5としてもよい。
【0057】
突起5の高さHr1は、例えば3μm〜30μm、好ましくは4μm〜20μm、より好ましくは5μm〜16μm、更に好ましくは7μm〜13μm、更により好ましくは9μm〜12μmの範囲である。突起5は、光学フィルム6と拡散フィルム8の間に隙間を作ることが目的である。しかし、面光源装置を薄くしたいため、突起5の高さHr1は30μmを越えて高くするのは好ましくない。また、突起5の高さHr1が3μmより低すぎると、隙間が狭くなり面光源装置を表面から軽く押しただけで光学フィルム6と拡散フィルム8が部分的に密着してしまう。
【0058】
突起5の半値幅Drは、例えば1μm〜60μm、好ましくは4μm〜40μm、より好ましくは5μm〜30μm、更に好ましくは6μm〜20μm、更により好ましくは10μm〜17μmの範囲である。半値幅Drが広い突起5においては、光学フィルム6と拡散フィルム8の接触面積が広くなりやすく、部分的な密着を起こしやすい。一方、高さHr1を変えず半値幅Drを狭くした突起5は形成することが難しく、また突起5の強度も弱くなり破壊しやすい。
【0059】
隣り合う突起5の距離Prは、例えば50μm〜3000μm、好ましくは75μm〜1000μm、より好ましくは100μm〜500μm、更に好ましくは240μm〜350μm、更により好ましくは285μm〜295μmの範囲である。突起5の距離Prが3000μmより大きすぎると、光学フィルム6もしくは拡散フィルム8がたわんで互いに接触し、部分的に密着しやすくなってしまう。距離Prが50μmより小さすぎると、突起5による光の散乱量が無視できなくなり、光学フィルム6が白濁したり、光学フィルム6からの出射光が暗くなったり、出射光の出射角度分布が変化してしまう。
【0060】
また、輝度を高くする光学フィルムが提案されている(例えば、特許第4265602号公報、特許第4240037号公報参照)。提案された光学フィルムには、透過型回折格子やホログラム光学素子が形成されている。透過型回折格子やホログラム光学素子が形成された面とは反対の面に複数の突起を形成することは、見栄えのよい高輝度な面光源装置を実現することに対し非常に有効である。
【0061】
しかし、特許第4240037号公報に記載の液晶ディスプレー装置の例においては、2枚の光学フィルムを使用している。それに対して、実施の形態に係る面光源装置では、光学フィルム6を1枚しか使用せずに高輝度を実現することができる。このように、実施の形態では、部材数の低減、及び面光源装置の薄型化に貢献することができる。
【0062】
図1に示したように、光学フィルム6は、偏向素子3が形成されている偏向素子層2が導光板7の出射面12に面する向きで設置する。偏向素子3の稜線は、図15あるいは図16に示したように、導光板7に形成された反射素子14の稜線とほぼ平行か、所定の角度傾ける。また、偏向素子3の第1傾斜面3a側(図19参照)が入射面11側を向くように設置する。反射素子14に対して偏向素子3の稜線を所定の角度傾けることによって、導光板7と光学フィルム6、あるいは光学フィルム6と液晶表示装置間でモアレ干渉縞が発生しにくくなり、全く発生しなくなる場合もある。
【0063】
実施の形態に係る面光源装置では、光学フィルム6の上面に突起5が形成されている。そのため、拡散フィルム8の入射面が平滑の場合であっても、光学フィルム6と拡散フィルム8が部分的に密着することなく、表示品質を良好のまま保つことができる。
【0064】
突起5は規則的に、周期的に配列する。特に、格子状の配列は設計が容易である。格子状に突起5を配列する場合、単位格子は正方形、長方形、平行四辺形等を用いることができる。また、突起5を配列する方向は、光学フィルム6の偏向素子3の稜線に対して平行に配置すると、設計が比較的容易である。突起5と偏向素子3、又は突起5と液晶表示装置が干渉して干渉縞を発生する場合は、突起5を配列する方向は光学フィルム6の偏向素子3の稜線に対して所定の角度傾けることで干渉を解消することができる。
【0065】
図22及び図23には、図1に示した面光源装置により、光出射角度分布、部分的密着及び虹色着色の評価を行っている。実施例1〜4の光学フィルム6では、屈折率が1.497のウレタンアクリレート樹脂が突起層4のバインダ樹脂として用いられる。実施例1〜4ではそれぞれ、突起層4の光拡散材として屈折率が1.51のスチレン系樹脂ビーズ(積水化学工業株式会社製、品名XX1732Z)が、約2質量%、約5質量%、約10質量%、及び約20質量%混合されている。また、実施例1〜4において、突起5は、半値幅Dr=約13μm、距離Pr=約290μm、高さHr1=約9.3μm〜約10.2μmである。比較例として、図14に示した突起層を形成しない光学フィルム6aが用いられている。なお、偏向素子3は、実施例1〜4の光学フィルム6、及び比較例の光学フィルム6a共に、第2傾斜面3bの角度β2=36°、第1傾斜面3aの角度β1=10.3°、周期d1=5μmである。
【0066】
図22には、図1に示した面光源装置において、拡散フィルム8を取り除いて光出射角度分布を測定した結果を示している。図22に示すように、突起層4の有無によって、面光源装置からの出射光の角度分布はほとんど変わらないことがわかる。突起層4を有する光学フィルム6においては、出射光が光拡散材により拡散される。そのため、実施例2〜4では、それぞれピーク輝度が約10%〜約40%減少する。
【0067】
図23に、光学フィルム6、6aと拡散フィルム8の部分的密着及び虹色着色を評価した結果を示す。光学フィルム6、6aによる虹色着色は、図1に示した構成において光源10を点灯させ、目視により評価する。光学フィルム6、6aと拡散フィルム8の部分的密着は、光源10を点灯させない状態、及び点灯させた状態で、綿棒で30g重程度の力で拡散フィルム8を上方から押し付けながらこすって評価する。こすった部分で光学フィルム6、6aと拡散フィルム8が密着すると、その部分が目視で暗くなったり着色したりして、こすっていない部分との輝度むらが確認できる。
【0068】
図23の表において、○は部分的密着あるいは虹色着色が解消されていることを示し、×は部分的密着あるいは虹色着色が解消されていないことを示す。図23に示すように、実施例1〜4のヘイズ値は、それぞれ9.4%、21.8%、55.9%、及び74.2%である。比較例のヘイズ値は、2%である。比較例では部分的密着が解消されず、突起5が形成された実施例1〜4では、部分的密着が解消されていることが分かる。また、ヘイズ値が2%の比較例、及びヘイズ値が9.4%の実施例1では、虹色解消はできない。ヘイズ値が10%以上の範囲の実施例2〜4では、虹色着色の解消がなされている。
【0069】
次に、実施の形態に係る面光源装置に用いる光学フィルム6の製造方法を、図24及び図25を用いて説明する。突起5及び偏向素子3は、転写用金型60a、60bを用いて転写工程により転写される。金型60aは、銅めっき等を施した円筒状の金属の表面にエッチング等により突起5に対応するくぼみが形成されている。銅めっきの場合、さびを防止するために、くぼみを形成後、クロムめっき等で表面保護層を形成する。金型60bは、ニッケルめっき等を施した円筒状の金属の表面にバイトで切削加工することにより偏向素子3の形状に対応する溝を形成する。あるいは、エッチング等により偏向素子3の形状に対応する溝を形成してもよい。また、金型60bに形成する溝の稜線方向は、金型60bの円周方向、あるいは長手方向でもよく、それらの方向から所定の角度傾けた方向でもよい。
【0070】
また、ベースフィルム1には、PETフィルム、例えば東洋紡株式会社製、商品名コスモシャイン、品番A4300、厚み50μmが使用できる。他にも透明なフィルム、特に紫外線をよく透過するフィルムが使用可能である。光硬化型樹脂63には、例えばウレタンアクリレート型光硬化型樹脂が用いられる。光硬化型樹脂63には、ウレタンアクリレート樹脂とは屈折率が異なる光拡散材、例えばスチレン系樹脂ビーズが混合されている。
【0071】
図24に示すように、光学フィルム成形装置のフィルム供給部にローラ61a、転写部に金型60a、及びフィルム巻取り部にローラ61bを設置する。ローラ61aから供給されたベースフィルム1の面上に、ディスペンサ62から複数の光拡散材が混合された光硬化型樹脂63が滴下される。ベースフィルム1上の光硬化型樹脂63に金型60aにより突起5を形成しながら、光照射装置64により紫外線等を照射して光硬化型樹脂63を硬化させて、ベースフィルム1に突起層4を一体に圧着する。金型60aから離型したベースフィルム1は、ローラ61bに巻き取られる。
【0072】
図25に示すように、光学フィルム成形装置のフィルム供給部にローラ61b、転写部に金型60b、及びフィルム巻取り部にローラ61cを設置する。ローラ61bから供給されたベースフィルム1の、突起層4が圧着されていない面上にディスペンサ62から光硬化型樹脂63が滴下される。ベースフィルム1上の光硬化型樹脂63に金型60bにより偏向素子3を形成しながら、光照射装置64により紫外線等を照射して光硬化型樹脂63を硬化させて、ベースフィルム1に偏向素子層2を一体に圧着する。金型60bから離型したベースフィルム1は、ローラ61cに巻き取られる。このようにして、光学フィルム6が製造される。
【0073】
実施の形態に係る光学フィルム6では、形状転写性のよい光硬化型樹脂63を用いて偏向素子層2及び突起層4が成形される。そのため、転写された偏向素子3は、図26に示すように、先端を鋭角に成形することができる。例えば、偏向素子3の高さを設計値の0.2μm以下のずれにすることができる。また、ベースフィルム1には、強度の高いPETフィルムが用いられるので、光学フィルム6の強度を確保することができる。
【0074】
なお、上記の説明では、突起層4を成形した後に偏向素子層2を成形しているが、成形順番は限定されない。始めに偏向素子層2を成形した後に突起層4を成形してもよい。
【0075】
また、光硬化型樹脂63に突起5あるいは偏向素子3を転写する転写工程において、光硬化型樹脂63が金型60a、あるいは金型60bから離型しにくいことがある。光硬化型樹脂63が金型60a、あるいは金型60bから離型しなかった場合、光学フィルム6に欠陥が発生し不良品となる。この不具合を防ぐために、金型60a及び金型60bに対して、離型剤(例えば、ダイキン化成品販売株式会社製、製品名デュラサーフ、品番HD−2101Z)を用いて離型処理を行うとよい。離型処理により、光硬化型樹脂63の金型60a及び金型60bからの離型性を向上させることができ、光硬化型樹脂63が金型60a及び金型60bに残ることを防止することができる。その結果、光学フィルム6に欠陥が発生しにくくなる。
【0076】
次に、光拡散材が混合された光硬化型樹脂63の作製方法について説明する。光拡散材が混合された光硬化型樹脂63として、スチレン系樹脂ビーズが混合されたウレタンアクリレート型光硬化型樹脂を例として説明する。
【0077】
攪拌機、温度計、冷却管及び空気ガス導入管を2Lの三口フラスコに取り付ける。三口フラスコに、空気ガスを導入した後、ポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学株式会社製、商品名:PTG850SN)520.80g、ジエチレングリコール1.06g、不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキレンエステル修飾ε−カプロラクトン(ダイセル化学工業株式会社製、商品名:FA2D)275.20g、重合禁止剤としてp−メトキシキノン0.5g、触媒としてジブチルチ錫ジラウレート(東京ファインケミカル株式会社製、商品名:L101)0.3gを入れ、70℃に昇温する。昇温後、70℃〜75℃で攪拌しつつイソホロンジイソシアネート(住化バイエルウレタン株式会社製、商品名:デスモジュールI)222gを2時間かけて均一滴下し、反応を行う。滴下終了後、約5時間反応させてIR測定を行う。IR測定の結果、イソシアネートが消失したことを確認して反応を終了し、重量平均分子量が7,000のウレタンオリゴマーが得られる。
【0078】
ウレタンオリゴマーと、1,9−ノナンジオールジアクリレート(共栄社化学株式会社製)を、3:7ないし5:5の割合で混合して、光硬化型樹脂を調整する。なお、上記の成分以外に、光開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャリティーケミカル社製、商品名:イルガキュア184)が1質量部含まれる。このようにして作製された光硬化型樹脂と、例えばスチレン樹脂系ビーズを蓋付きガラス容器に入れて攪拌することにより、光拡散材が混合された光硬化型樹脂63が作製される。
【0079】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は本発明の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係わる発明特定事項によってのみ定められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の光学フィルム及び面光源装置は、携帯電話機、ゲーム機器、電子手帳、カーナビゲーション、ノートPC、TV等の液晶表示装置等に於いて、バックライトとして使用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1…ベースフィルム
2…偏向素子層
3…偏向素子
3a…第1傾斜面
3b…第2傾斜面
4…突起層
5…突起
6…光学フィルム
7…導光板
8…拡散フィルム
9…リフレクタ
10…光源
11…入射面
12…出射面
13…反射面
14…反射素子
15…拡散形状
16…単レンズ形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1及び第2主面を有する透光性のベースフィルムと、
前記第1主面に配置され、互いに隣接して一方向に延伸する複数の偏向素子を有する偏向素子層と、
前記第2主面に配置され、複数の突起を有する突起層とを備え、
前記突起層は、バインダ樹脂、及び前記バインダ樹脂とは屈折率が異なる樹脂からなる複数の光拡散材を含むことを特徴とする光学フィルム。
【請求項2】
前記突起層は、前記複数の光拡散材を5質量%〜20質量%の範囲で含むことを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記突起層のヘイズ値が、10〜80であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記複数の光拡散材のそれぞれは、平均粒径が0.01μm〜10μmの範囲の透光性粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記複数の突起のそれぞれは、高さが3〜30μmの範囲で、前記高さの半分の位置での幅が1〜60μmの範囲で、隣り合う突起間の距離が50〜3000μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記複数の偏向素子は、3.5〜30μm周期の間隔で配置され、
前記複数の偏向素子のそれぞれは、前記複数の偏向素子の延伸方向に直交する方向に切った断面が第1及び第2傾斜面を有する三角形で、前記第1及び第2傾斜面が前記第1主面の法線と成す角度がそれぞれ6〜16°の範囲及び30〜40°の範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記複数の偏向素子は、4.9〜10.1μm周期の間隔で配置され、
前記第1及び第2傾斜面が前記第1主面の法線と成す角度がそれぞれ8〜12°の範囲及び34〜38°の範囲であり、
前記複数の突起のそれぞれは、高さが7〜13μmの範囲で、前記高さの半分の位置での幅が6〜20μmの範囲で、隣り合う突起間の距離が250〜350μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記複数の偏向素子は、4.9〜5.1μm周期の間隔で配置され、
前記第1及び第2傾斜面が前記第1主面の法線と成す角度がそれぞれ9.8〜10.8°の範囲及び35.5〜36.5°の範囲であり、
前記複数の突起のそれぞれは、高さが9〜12μmの範囲で、前記高さの半分の位置での幅が10〜17μmの範囲で、隣り合う突起間の距離が285〜295μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記複数の偏向素子の延伸方向に直交する方向に切ったそれぞれの断面が、歯の先端をはさむ二辺の長さが10%以上異なり、夾角が60°以下の鋸歯形状であり、前記複数の偏向素子の屈折率をn、平均周期をdとして、前記鋸歯形状の溝の平均深さhが、h=α×d/(n−1) (但し、0.4≦α≦1.0)であり、0.46μm≦λ1≦0.50μm、0.53μm≦λ2≦0.57μm、0.60μm≦λ3≦0.64μmの範囲にある3波長λ1、λ2、λ3の光を15度≦γ1≦70度の範囲内の角度γ1で入射させた時、各波長λ1、λ2、λ3の回折効率が最大となる回折角度が、−5度から+5度の範囲に含まれ、
前記複数の突起のそれぞれは、高さが9〜12μmの範囲で、前記高さの半分の位置での幅が10〜17μmの範囲で、隣り合う突起間の距離が285〜295μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記複数の偏向素子のそれぞれが、ホログラムを構成する平均周期200μm以下の溝又は山からなり、前記ホログラムは、入射角が30°±15°の白色光を前記突起層に垂直な方向に曲げ、前記複数の偏向素子の屈折率をnとし、平均周期が5.0±1.0μm、平均深さが(3.7±1.0)/(n−1)μmである鋸歯形状、または、該形状の溝が深さの50%未満埋まっている形状であり、前記平均周期dと鋸歯の山の位置ずれuが、u/d≦0.2の範囲にあり、
前記複数の突起のそれぞれは、高さが9〜12μmの範囲で、前記高さの半分の位置での幅が10〜17μmの範囲で、隣り合う突起間の距離が285〜295μmの範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項11】
前記複数の突起が規則的に配列していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項12】
前記突起の配列が、単位格子が正方形の格子配列であることを特徴とする請求項11に記載の光学フィルム。
【請求項13】
前記突起の配列の方向が、前記複数の偏向素子の延伸方向と平行であることを特徴とする請求項10又は11に記載の光学フィルム。
【請求項14】
前記偏向素子層及び前記突起層が、光硬化型樹脂であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項15】
光源と、
前記光源と対向する端面を入射面、前記入射面に直交する一対の主面のそれぞれを反射面及び出射面とし、前記反射面に配置され、前記光源から前記入射面を通して入射した光を前記出射面に向かうように反射する反射素子を有する導光板と、
前記出射面に対向して配置された請求項1〜14のいずれか1項に記載の光学フィルムと、
前記光学フィルムを挟んで前記出射面と対向する拡散フィルムと、
前記反射面と対向して配置され、前記反射面から出射した光を前記導光板に入射させるリフレクタ
とを備えることを特徴とする面光源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2013−73192(P2013−73192A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214161(P2011−214161)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000004455)日立化成株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】