説明

光学フィルム用樹脂組成物およびこれからなる光学フィルム

【課題】 本発明は、偏光した光の選択透過性に優れた光学フィルム用樹脂組成物、詳細には光学特性を利用する機器に対して利用できる偏光散乱型光学部材と同部材を組合わせた光利用機構部品に利用可能な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 少なくとも1種類以上の繊維状または柱状の粒子であって粒子の短軸径の平均寸法が1〜70nmであり、長軸径の平均寸法が600nm〜5μmである粒子1〜30重量%と透明性を有する樹脂70〜99重量%からなることを特徴とする光学フィルム用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光した光の選択透過性に優れた光学フィルム用樹脂組成物に関するものであり、詳細には光学特性を利用する機器に対して利用できる偏光散乱型光学部材と同部材を組合わせた光利用機構部品に利用可能な樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より特定の偏光を得る技術は、光学部品としてプリズムによる反射と透過により光の偏光成分の分波を利用するBrewsterの法則として知られる方法や、複屈折性を示す方解石を利用して常光屈折と異常光屈折により偏光成分を分波するGlan−Foucault偏光子やGlan−Thomson偏光子などが、またプリズムと複屈折性素子を組合わせて2つの偏光成分を分割して出射できるWollastonプリズムなどのビームスプリッターが知られている。また、光の成分のうち特定の偏光成分だけを吸収しこれと直交する偏光成分を透過させる二色性物質を利用した光吸収型偏光子が液晶ディスプレイなどの偏光板などに利用されており良く知られている。
【0003】
これら偏光子として、大きな面積にて表示機能を担うディスプレイへの利用を考えた場合、従来のガラス製の偏光子などは大型化と薄型化が難しく、利用できない。そこで、分子の配向した状態において特定偏光の吸収を示す二色性材料としてヨウ素系化合物や有機色素を樹脂フィルム中に分散、配向させた偏光フィルムが利用されている。
【0004】
しかし、二色性材料を利用する偏光子は、光を入射した際に二色性分子の分子鎖配向に平行な偏光成分を吸収し、これと直交する偏光成分のみを通過させる。即ち、光の表面反射、散乱成分を無視しても概ね50%の偏光成分を利用せずに吸収しており、エネルギーを無駄に消費している。
【0005】
例えば液晶ディスプレイなどへの偏光子の利用において、エネルギー利用効率の観点から見ると、二色性材料を用いる偏光子の利用は光源のエネルギーを約50%使用せずに捨てていることになり、一定の明るさ、輝度を確保するためには余剰の明るさの光源が必要となってしまう。
【0006】
そこで、このような二色性の偏光子を利用するディスプレイにおいてはエネルギー損失を少なくする省エネルギー化技術が期待される。
【0007】
光源の光を有効に活用するためには吸収損失が小さい偏光制御を必要とし、屈折制御型や散乱制御型などが挙げられる。
【0008】
散乱型偏光子は、光透過する側の偏光と直交する偏光成分は内部で散乱されるために偏光子内部或いはその背面において、光散乱体や拡散体などによって散乱した偏光を非偏光の光に戻して再利用することで利用効率を高めることが可能と考えられる。
【0009】
異方性光散乱を利用した偏光制御技術の原理は古く、ヨウ化銀の針状結晶粒子を利用したものに端を発するものとして報告されている(例えば非特許文献1参照)。また、マイカ上に硝酸ナトリウム単結晶を晶析させた板状物を挟みこむ側のガラス板を粗く磨いたものとして一定の空隙を保持して挟み込んだ偏光子が報告されている(例えば非特許文献2参照)。
【0010】
非特許文献2における偏光子は光学異方性を有しており、ガラス板の屈折率と内部の板状物の常光屈折率が一致する場合に光が通過し、ガラス板の屈折率と内部の板状物の異常光屈折率が一致しない場合に光が内部で反射、散乱してしまうために光が通過しないことを利用する偏光制御法を報告している。
【0011】
光散乱を利用した偏光の制御技術としては、この他に、複屈折性を示す棒状アラゴナイト系炭酸カルシウムと複屈折性の樹脂からなるフィルム部材を延伸加工してなる方法を報告している(例えば特許文献1参照)。特許文献1の方法においては粒子の屈折率と樹脂の屈折率との整合性を発現させる方向と不整合性を発現させる方向を制御することで、整合した軸方向の偏光成分のみを通過させて不整合軸方向の偏光成分を反射・散乱させて光源側へ戻す方法を報告しているが、粒子の形状特性として棒状でなくともよい旨の記述が明細書中にあり、発現する性能に関する具体的な実施例および粒子と樹脂との屈折率の整合性を得るための施策の記述がない。
【0012】
その他、樹脂ブレンド系材料のモルホロジーを制御して散乱型偏光制御する方法が報告されている(例えば非特許文献3、4参照)。この非特許文献3、4においてもマトリックスとなる樹脂と分散相を構成する樹脂との屈折率の整合性と不整合性を両立させることで機能を発現することを報告している。また、ブレンドされる物質がコアーシェル型のゴム粒子となる場合のものについて樹脂基材との屈折率の整合性と不整合性を制御する方法について報告している(例えば非特許文献5参照)。
【0013】
更に、樹脂基材中に繊維状物質を配列させて基材との屈折率の整合性と不整合性を発現させる方法が報告されている(例えば特許文献2参照)。
【0014】
樹脂基材に対して複屈折性を示す無機粒子として粒子の長さが10nmから使用する光の波長より小さいサイズ粒子を0.01〜30重量%配合した光学材料の製法について報告されている(例えば特許文献3参照)。特許文献3において、粒子を配合した樹脂組成物が光に対して均一な媒質として作用し、その複屈折性が複屈折性結晶(ここでいう粒子)の複屈折性と樹脂の複屈折性との和と見なせるようにするためには複屈折性結晶の大きさは光の波長よりも小さくなければならないと記載し、実施例における粒子サイズはいずれも500nm未満の粒子を用いたものであり、粒子がこれより大きい場合の挙動並びに粒子を配合した樹脂組成物が光に対して不均一な媒質になる場合の挙動について記載されていない。更には具体的な光学素子の光の波長を明記しておらず、実施例においても評価に用いた光の波長が記載されておらず、500nm以上の粒子に関する知見は確認できない。
【0015】
この他、500nm以下の粒子として負の複屈折性を示す炭酸ストロンチウムを配合することで非複屈折性を示す樹脂材料が報告されている(例えば特許文献4参照)。特許文献4において、光学樹脂材料として透明性を保つためには500nm以下の粒子が望まれるとして、500nm以下の粒子の製造法ならびにこれを用いた樹脂の光学特性として配向複屈折の減殺効果を示しているが、これより大きいサイズでは透明性に問題があると記載している。
【0016】
ここに挙げた非特許文献1〜5と特許文献1〜2はいずれもが基材物質と内部に配置される物質との間で光が透過または散乱する散乱型偏光制御の報告であるが、非特許文献1と非特許文献2は当時、粒子サイズと粒子屈折率を樹脂の複屈折率の整合性と不整合性とを制御が出来ておらず、実用化に至っていない。
【0017】
非特許文献3〜5と特許文献1〜2においては基材物質と内部に配置される光学異方性物質との屈折率差の整合性を操作することによって、偏光成分に応じた光の透過と散乱の異方性を発現させることを提案しているが、特に散乱型偏光制御においてはいずれもその物質間の屈折率差の制御が重要な構成要件になっているが、制御が非常に難しく、実用化に至っていない。
【0018】
特許文献3と特許文献4は粒子として複屈折性を示す特定のサイズの粒子を配合することで透明性を保持しつつ複屈折を減殺する方法についての記載であり、粒子サイズを500nm以下または光の波長よりも小さくする必要がある。
【0019】
【特許文献1】特開2002−258039号広報
【特許文献2】再公表2005−008302号広報
【特許文献3】特開2004−109355号広報
【特許文献4】特開2004−035347号広報
【非特許文献1】E.H.Land,J.Opt.Soc.Am.,Vol.41,No.21,957−963(1951)
【非特許文献2】T.Yamaguti,J.Opt.Soc.Am.,Vol.45,No.10,p891−892(1955)
【非特許文献3】H.Jagt,C.Bastiaansen etal,Adv.Mater.,Vol.10,No.12,934−937(1998)
【非特許文献4】T.Koyano,I.Akiba,SEN‘I GAKKAISHI,Vol.60,No.6,179−182(2004)
【非特許文献5】Y.Dirix etal,J.Appl.Phys.,Vol.83,No.6,2927−2933(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、上述の事実に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、特定の粒子サイズの繊維状または柱状の粒子と透明性を有する樹脂からなる光学フィルム用樹脂組成物およびこれからなるフィルムであって、該フィルムに光を入射させた場合に偏光成分を選択的に透過または散乱させる光学部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の粒子サイズの繊維状または柱状の粒子と透明性を有する樹脂からなる樹脂組成物が上記の課題を解決することを見出した。
【0022】
すなわち、本発明は、少なくとも1種類以上の繊維状または柱状の粒子であって粒子の短軸径の平均寸法が1〜70nmであり、長軸径の平均寸法が600nm〜5μmである粒子1〜30重量%と透明性を有する樹脂70〜99重量%からなることを特徴とする光学フィルム用樹脂組成物およびこれからなる光学フィルムに関するものである。
【0023】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明で用いる繊維状または柱状の粒子は、短軸径の平均寸法が1〜70nmであり、特に40〜60nmが好ましく、長軸径の平均寸法が600nm〜5μmであり、特に600nm〜3μmが好ましい。粒子の短軸径の平均寸法が1nm未満であると実質的な粒子合成が困難であり、70nmを越えると光学フィルム用樹脂組成物を光学フィルムとした場合に、短軸方向に平行な偏光成分が散乱されてしまう。また、粒子の長軸径の方向に平行な偏光成分を散乱させるのに十分な大きさとして長軸径の平均寸法が600nm以上であることが必要である。しかし、長軸径の平均寸法が600nm未満の場合には光学フィルム用樹脂組成物を光学フィルムとした場合に、選択的な光の透過が困難であり、偏光成分を十分に散乱させることができず、5μmを超えると剪断などによって破断しやすく、光学フィルム用樹脂組成物の成形性に劣る。これらの繊維状または柱状の粒子は1種以上用いることができる。
【0025】
特に、より広い波長範囲において偏光成分を選択的に透過または散乱させる効果を発現し、液晶ディスプレイなどの偏光制御において輝度向上フィルムおよび高い偏光効率を必要とする装置などにおいて性能向上のために有用に用いることが可能となることから、繊維状または柱状の粒子が、短軸径の平均寸法が1〜70nmであり、長軸径の平均寸法が600nm以上800nm未満の粒子(a)及び短軸径の平均寸法が1〜70nmであり、長軸径の平均寸法が800nm以上5μm以下の粒子(b)からなることが好ましい。これらの粒子(a)と粒子(b)の配合割合(重量比)は、10:95〜95:5が好ましく、特に30:70〜70:30が好ましい。
【0026】
本発明の繊維状または柱状の粒子としては、本発明の目的を損なうことなく、本発明において規定した形状と粒子サイズの範囲内のものであれば、如何なるものを用いてもよく、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸コバルト、炭酸マンガン、ケイ酸カルシウム、塩基性硫酸カルシウム、水酸化酸化アルミニウム、イモゴライト、炭化ケイ素等の無機結晶粒子が挙げられ、特に酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭化ケイ素等が好ましい。但し、本発明の目的を損なう恐れのある紫外領域から可視光域に渡る光吸収などにより発色する粒子は用いることができない。繊維状または柱状の粒子は結晶状態に起因した光学的異方性(複屈折)の有無に関わらず、本発明の目的と効果を発現することができれば上述したもの以外の種類の粒子も用いることができる。
【0027】
本発明の透明性を有する樹脂としては本発明の効果を損なわないものであれば如何なるものでもよく、例えばポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体、ポリフマル酸ジエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、環状ポリオレフィン、マレイミド系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられ、特にポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート等が好ましい。また、本発明の透明性有する樹脂としてその複屈折の有無、複屈折の正負ならびにその大きさを問うことなく用いることができる。
【0028】
また、繊維状または柱状の粒子と透明性を有する樹脂の組合わせとしてそれぞれが複屈折を有するものである場合、それぞれを組合わせた結果としての複屈折の相殺などを考慮することなく組合わせて利用することができ、例えば、正の複屈折性を示す酸化チタンと正の複屈折を示すポリカーボネートを組合わせて用いることができる。同様に負の複屈折性を示す炭酸カルシウムと負の複屈折性を示すポリスチレン或いはポリメチルメタクリレートを組合わせることもできる。
【0029】
本発明の光学フィルム用樹脂組成物における少なくとも1種類以上の繊維状または柱状の粒子と透明性を有する樹脂の配合割合は、少なくとも1種類以上の繊維状または柱状の粒子1〜30重量%、透明性を有する樹脂70〜99重量%であり、好ましくは繊維状または柱状の粒子5〜30重量%、透明性を有する樹脂70〜95重量%、特に好ましくは繊維状または柱状の粒子10〜30重量%、透明性を有する樹脂70〜90重量%である。繊維状または柱状の粒子が1重量%未満である場合、光学フィルム用樹脂組成物を光学フィルムとした場合には、偏光した光の透過と散乱を生じさせるのに不十分であり、30重量%を超える場合には、光学フィルム用樹脂組成物の成形加工性が劣る。
【0030】
本発明の光学フィルム用樹脂組成物の製造方法としては、特に制限はなく、例えば攪拌混合装置を用い分散混合して得ることができる。そして、具体的な攪拌混合装置としては、例えばディスク型攪拌混合装置、円筒ローター型攪拌混合装置、ホモジナイザーなどが挙げられる。攪拌混合装置を用いる際には、繊維状または柱状の粒子は透明性を有する樹脂中にあって個々に孤立して均一に分散させた状態にあることが好ましく、そのためには、高い剪断速度において分散混合を行うことが好ましく、特に剪断速度が500〜50,000sec−1、さらに1,000〜25,000sec−1で行うことが好ましい。
【0031】
また、分散混合の際には、より均一の分散が可能であることから予め繊維状または柱状の粒子表面を表面処理剤などで処理した後、該表面処理した繊維状または柱状の粒子と透明性を有する樹脂とが共に親和性を示す溶剤を用いて攪拌混合することが好ましい。前記溶剤にさらに溶剤粘度、揮発速度などを操作する目的から繊維状または柱状の粒子と透明性を有する樹脂成分の一方あるいは両方が親和性の乏しくなるような貧溶剤を配合してもよい。
【0032】
繊維状または柱状の粒子の表面処理剤としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば如何なるものでも用いることができ、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、酸性海面活性剤、塩基性界面活性剤、塩型界面活性剤などがあり、さらにこれらの分子量を操作した高分子型界面活性剤などが利用できる。酸型界面活性剤としては、例えばリン酸エステル、脂肪酸エステル、スルホン酸エステルおよびこれらの誘導体などが挙げられる。また、塩基性界面活性剤としては、例えばアルキルアミン型の誘導体などが挙げられる。塩型界面活性剤としては、例えば酸型と塩基型の両者が混在するような塩型のものと酸と塩基が中和されたタイプのものが挙げられる。粒子の表面エネルギー、官能基および比表面積などの知見に応じて適宜表面処理して用いてよく、本発明の目的と効果を損なわない範囲で如何なる表面処理を施しても良い。
【0033】
表面処理した繊維状または柱状の粒子と透明性を有する樹脂が共に親和性を示す溶媒としては、特に制限はなく、例えば塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、テトラヒドロフラン、アセトン、N−メチルピロリドン、酢酸エチルエステル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル等が挙げられる。
【0034】
上記のようにして繊維状または柱状の粒子と透明性を有する樹脂とを含む溶液中に均一に分散させたものから溶剤を除去し、固化させることで透明性を有する樹脂中に均一に繊維状または柱状の粒子が分散した状態を有する光学フィルム用樹脂組成物を得ることができる。
【0035】
また、繊維状または柱状の粒子と透明性を有する樹脂を予め上述したような方法によって分散混合したものを溶融混合することで更に分散混合して、Tダイ押出し成形などに供してもよい。この場合、溶融混練装置としては広く知られているものを用いることができ、例えばロール混練機、単軸押出し機、二軸押出し機などを挙げることができる。
【0036】
本発明の光学フィルム用樹脂組成物のフィルムヘーズ値は10%以上であることが好ましく、光の透過と散乱を制御するのに有効である。
【0037】
また、本発明の光学フィルム用樹脂組成物は、偏光した光の選択透過性に優れたものであり、具体的には繊維状または柱状の粒子を配向させたものに対して、繊維状または柱状の粒子の長軸に相当する方向を基準としてこれに平行かつ垂直方向からの偏光成分を入射した場合の偏光光強度(T//)と繊維状または柱状の粒子の長軸に直交かつ垂直方向の偏光成分を入射した場合の偏光光強度(T)の関係として透過光強度比が、(T)/(T//)>1.0である。
【0038】
本発明の光学フィルム用樹脂組成物は、その熱安定性を高めるために酸化防止剤などを配合してもよい。該酸化防止剤としては、公知のものを用いることができ、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、その他の酸化防止剤が挙げられ、これら酸化防止剤はそれぞれ単独または併用して用いてもよく、相乗的に酸化防止作用が向上することからヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤を併用することが好ましい。
【0039】
本発明の光学フィルム用樹脂組成物は、フィルムの熱着色および光劣化抑制のために光安定剤を配合しても良い。光安定剤としては公知のものを用いることができ、例えばヒンダードアミン系光安定剤などがあり、熱着色および光安定化に優れるものとして分子量1,000以上のものが好ましい。
【0040】
更に本発明の光学フィルム用樹脂組成物は、フィルムの紫外線劣化を抑制するために紫外線安定剤を配合してもよい。紫外線安定剤としては公知のものを用いることができ、例えばベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、トリアジン、ベンゾエートなどの紫外線吸収剤を用いることができる。
【0041】
本発明の光学フィルム用樹脂組成物は光学フィルムとすることが好ましく、該光学フィルムの製造方法としては、特に制限はなく、例えば繊維状または柱状の粒子と透明性を有する樹脂および溶剤からなる溶液を均一に分散混合したものを溶液キャスティング法として直接、成膜して、溶剤を除去し、光学フィルムとすることができる。
【0042】
また、本発明の光学フィルム用樹脂組成物を粉砕し、フレーク状にしてこれを加熱溶融押出し装置を用いてペレットを作成し、これに続くTダイ押出し成形によってフィルムとしても良い。
【0043】
溶液キャスティング法によるフィルムとする場合には、例えば前述したように透明性を有する樹脂が可溶性を示す溶剤中にて透明性を有する樹脂および繊維状または柱状の粒子を高速剪断場において分散混合して得られる光学フィルム用樹脂組成物の溶液(以下、ドープと称する。)を支持基板上に流延した後に、加熱などにより溶媒を除去しフィルムを得る方法を挙げることができる。ドープを流延する方法としては、これによりフィルム化を可能とする方法であれば如何なる方法でもよく、例えばTダイ法、ドクターブレード法、バーコーター法、ロールコーター法、リップコーター法などが挙げられる。用いる支持基板としては、フィルム化した際のフィルム表面平滑性、光学的均一性を可能とするものであれば如何なるものでもよく、例えばガラス基板、金属基板、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックフィルムなどを用いることができる。
【0044】
本発明の光学フィルム用樹脂組成物からなる光学フィルムは、より偏光した光の選択透過性に優れた光学フィルムとなることから、繊維状または柱状の粒子を特定方向へ配向させることが好ましく、該配向方法としては、特に制限はなく、例えば射出成形法、押出し成形法、ブロー成形法、圧空成形法、力学的延伸加工法等の剪断応力場において配向させる方法;電場或いは磁場を印加して配向させる方法等を挙げることができ、その中でも剪断応力場において配向させる方法が好ましく、特に力学的延伸加工法、押出し成形法が好ましい。
【0045】
力学的延伸加工法としては、例えば一軸延伸、二軸延伸等が挙げられ、その中でも一軸延伸が好ましく、特にTダイ押出し成形による成形法によりフィルムに加工するのと同時に配向を付与する方法、予めフィルムとした後で延伸加工機によって一軸延伸する方法が好ましい。
【0046】
以下に延伸加工方法の一例を紹介する。フィルムの一軸延伸方法としては、例えばテンターにより延伸する方法、カレンダーにより圧延して延伸する方法、ロール間で延伸する方法などが挙げられる。また、一軸延伸を可能とする実験用の小型延伸装置を用いることもできる。
【0047】
フィルムの一軸延伸加工によって繊維状または柱状の粒子を特定方向に配向させる場合の延伸加工条件としては、透明性を有する樹脂のガラス転移温度(Tg)+10℃〜Tg+40℃にて延伸配向させることが好ましく、特にTg+10℃〜Tg+30℃で配向させることが好ましい。延伸倍率は原寸法を上回るサイズであれば良く、1.1倍以上であることが好ましく、これより更に高倍率延伸であっても良い。
【0048】
押出し成形法としては、特に制限はなく、例えば溶融キャスティング法としてTダイ押出し成形法によって繊維状または柱状の粒子を配向させることができ、より具体的なTダイ押出し成形法としては、本発明の光学フィルム用樹脂組成物をTダイなどの狭いスリットダイからフィルム状に押出した後に、冷却ロールやエアーなどで冷却しつつ成形することができる。このTダイ押出し成形法を用いる場合、透明性を有する樹脂のTg以上の温度域において溶融成形加工できる温度であればよく、さらに上限を350℃とするTg+10℃〜Tg+130℃において溶融押出しすることが好ましい。Tダイから押出された成形品はそのまま冷却ロールなどを用いて繊維状または柱状の粒子の配向を固定して安定化させてもよく、更に、前述の延伸加工を行うことでより一層の繊維状または柱状の粒子の配向処理を行っても良い。
【0049】
本発明の光学フィルム用樹脂組成物およびこれからなる光学フィルムは上述したような方法によって得ることができ、またその機能は光学的特性として評価できる。
【0050】
従来の二色性材料を用いた偏光子では一方の偏光を通過させ、もう一方の偏光を吸収する(図1)。しかし、本発明によれば、該光学フィルム用樹脂組成物からなる光学フィルム中の繊維状または柱状の粒子を配向させたものに対して、繊維状または柱状の粒子の長軸に相当する方向を基準としてこれに平行かつ垂直方向からの偏光成分を入射した場合の偏光光強度(T//)と繊維状または柱状の粒子の長軸に直交かつ垂直方向の偏光成分を入射した場合の偏光光強度(T)の関係として、透過光強度(T)/(T//)>1.0となるものを得ることができる。即ち、偏光した光の選択透過特性が発現することによって、透過しない偏光成分は散乱によって再び光源側へ戻されて、損失することなくリサイクルできる。
【0051】
この原理を図2において説明する。
a)光源からの光が該光学フィルム用組成物からなる光学フィルムへ入射される。
b)該光学フィルム用樹脂組成物からなる光学フィルムにおいて、繊維状または柱状の粒子の長軸と偏光板の光透過軸が直交する場合における偏光成分が多く通過する。
c)該光学フィルム用樹脂組成物からなる光学フィルムにおいて、繊維状または柱状の粒子の長軸と偏光板の光透過軸が直交する場合において透過する偏光成分に対して直交する偏光成分は粒子によって散乱させられることにより透過量が減少し、光源側へ戻される成分が多い。
d)光源側へ戻された光は再び該光学フィルム用樹脂組成物からなる光学フィルムへ入射される。
【0052】
本発明の光学フィルム用樹脂組成物からなる光学フィルムは、偏光子または保護層を有する偏光板と積層して用いることができる。また、導光板および偏光板とを組合わせて積層した部材として用いることができる。
【0053】
さらに、本発明の光学フィルムに偏光子または保護層を有する偏光板と積層された光学フィルムは、輝度向上フィルムとして用いることができる。特に偏光板と光源の間に該輝度向上フィルムを設置することで、光源の光を輝度向上フィルムが選択的に偏光として透過光と散乱光へと変えた際に、偏光の透過光はそのまま偏光板を通過するために偏光板による光吸収損失が低減され、また、光源側へ戻された散乱光は再度反射させることで出射光として利用するシステムにより光源の光利用効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0054】
特定の粒子サイズの繊維状または柱状の粒子と透明性を有する樹脂とからなる光学フィルム用樹脂組成物であって、該光学フィルム用樹脂組成物からなる光学フィルムに対して入射する偏光成分に対して繊維状または柱状の粒子が配向した状態を形成し、繊維状または柱状の粒子の長軸方向の屈折率が透明性を有する樹脂の屈折率と一致させないようにすることで偏光成分を選択的に透過または散乱させるようにした光学フィルムであり、液晶ディスプレイなどの偏光制御において輝度向上フィルムおよび高い偏光効率を必要とする装置などに有用である。
【実施例】
【0055】
以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
【0056】
以下、実施例の評価・測定に用いた方法を示す。
【0057】
〜透明性を有する樹脂のガラス転移温度の測定〜
示差走査型熱量計(セイコー電子工業株式会社製、商品名DSC200)を用い、昇温速度10℃/min.にて測定した。
【0058】
〜ヘーズの測定方法〜
JIS K7136(2000年)に準拠して、ヘーズメーター(日本電色工業社製、商品名NDH5000)を用い、測定した。
【0059】
〜全光線透過率の測定方法〜
JIS K7361−1(1997年)に準拠して、ヘーズメーター(日本電色工業社製、商品名NDH5000)を用い、測定した。
【0060】
〜T、T//の測定および透過光強度比の計算〜
光学フィルム用樹脂組成物からなる光学フィルム中の繊維状または柱状の粒子の長軸が配向した方向に対して偏光板の吸収軸が直交するように積層配置して偏光板側から該光学フィルムに向けて光を入射して、光学フィルムからの出射光強度を偏光顕微鏡により測定してTを得た。一方、光学フィルム中の繊維状または柱状の粒子の長軸が配向した方向に対して偏光板の吸収軸が平行になるように積層配置して偏光板側から光学フィルムに向けて光を入射して、光学フィルムからの出射光強度を偏光顕微鏡により測定してT//を得た。得られたT//とT⊥とから透過光強度比(T)/(T//)を算出した。この時、光波長400〜700nmを測定に用いた。ここでは計算の便宜上、1点測定した場合は代表的な値として光波長550nmにおける値を用いた。
【0061】
透過光強度比の波長依存性を評価する場合には、波長としてそれぞれ450nm、550nmおよび650nmの透過光強度比を550nmの透過光強度比で割った値を用いた。
【0062】
しかし、係る特性は可視光領域である380〜780nmの範囲において何ら異なるものではない。
【0063】
実施例1
繊維状または柱状の粒子として酸化亜鉛粒子(粒子重量あたり10重量%のアシドホスホキシエチルメタクリレートにて処理したもの、短軸径の平均寸法50nm、長軸径の平均寸法3μm、屈折率1.95)10重量%を含有する塩化メチレンスラリー溶液をφ50mmラボ円筒ローター型攪拌混合装置を用いて剪断速度10,000sec−1にて5min.分散・混合させた後、透明性を有する樹脂としてポリカーボネート(帝人化成製、商品名パンライト、ガラス転移温度141℃、平均屈折率1.55)を配合し、溶液中の酸化亜鉛とポリカーボネートとの組成比が30重量%:70重量%となり、かつ溶液中の不揮発性成分の濃度が25重量%となるように調整してφ30mm小型ホモジナイザーを用いて3,000rpmにて60min.溶解・混合した。この溶液を支持基板としてポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム上に製膜して、一昼夜静置した後に、160℃にて乾燥しフィルム状の光学フィルム用樹脂組成物を得た。得られたフィルムのTgは165℃であった。またフィルムヘーズ値は34%であった。
【0064】
次に、透過光強度比を評価するために得られたフィルムを二軸延伸装置(井元製作所製、型式16A1)を用いて自由幅一軸延伸モードにおいて、180℃にて2.0倍に延伸して光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの全光線透過率は90%であった。また、透過光強度比(T)/(T//)は2.5であった。光学フィルムの外観は良好であった。
【0065】
よって、得られた光学フィルム用樹脂組成物よりなる光学フィルムの透過光強度比は、(T)/(T//)>1.0であることから偏光した光の選択透過性に優れたものであった。
【0066】
実施例2
実施例1のフィルムの延伸条件を180℃にて3.0倍とした以外は実施例1と同様の操作を実施して光学フィルムを得た。また、得られた光学フィルムの全光線透過率は87%であり、透過光強度比(T)/(T//)は3.0であった。光学フィルムの外観は良好であった。
【0067】
よって、得られた光学フィルム用樹脂組成物よりなる光学フィルムの透過光強度比は、(T)/(T//)>1.0であることから偏光した光の選択透過性に優れたものであった。
【0068】
実施例3
実施例1の酸化亜鉛粒子(粒子重量あたり10重量%のアシドホスホキシエチルメタクリレートにて処理したもの、短軸径の平均寸法60nm、長軸径の平均寸法700nm)を用いて、溶液中の酸化亜鉛とポリカーボネートとの組成比が1重量%:99重量%とした以外は実施例1と同様の操作を実施してフィルム状の光学フィルム用樹脂組成物及び光学フィルムを得た。得られたフィルムのTgは157℃であった。また、フィルムヘーズは22%であった。
【0069】
光学フィルムの全光線透過率は91%であり、透過光強度比(T)/(T//)は1.15であった。光学フィルムの外観は良好であった。
【0070】
よって、得られた光学フィルム用樹脂組成物よりなる光学フィルムの透過光強度比は、(T)/(T//)>1.0であることから偏光した光の選択透過性に優れたものであった。
【0071】
実施例4
実施例1の溶液中の酸化亜鉛とポリカーボネートとの組成比が10重量%:90重量%とした以外は実施例1と同様の操作を実施してフィルム状の光学フィルム用樹脂組成物及び光学フィルムを得た。得られたフィルムのTgは160℃であった。また、フィルムヘーズ値は24%であった。
【0072】
光学フィルムの全光線透過率は90%であり、透過光強度比(T)/(T//)は2.0であった。光学フィルムの外観は良好であった。
【0073】
よって、得られた光学フィルム用樹脂組成物よりなる光学フィルムの透過光強度比は、(T)/(T//)>1.0であることから偏光した光の選択透過性に優れたものであった。
【0074】
実施例5
実施例1の酸化亜鉛の代わりに酸化チタン粒子(粒子重量あたり10重量%のアシドホスホキシエチルメタクリレートにて処理したもの、短軸径の平均寸法40nm、長軸径の平均寸法2μm、平均屈折率2.6、長軸方向の屈折率2.7)を用いて、溶液中の酸化チタンとポリカーボネートとの組成比が5重量%:95重量%とした以外は実施例1と同様の操作を実施してフィルム状の光学フィルム用樹脂組成物及び光学フィルムを得た。得られたフィルムのTgは165℃であった。また、フィルムヘーズ値は39%であった。
【0075】
光学フィルムの全光線透過率は90%であり、透過光強度比(T)/(T//)は2.2であった。光学フィルムの外観は良好であった。
【0076】
よって、得られた光学フィルム用樹脂組成物よりなる光学フィルムの透過光強度比は、(T)/(T//)>1.0であることから偏光した光の選択透過性に優れたものであった。
【0077】
実施例6
実施例1において得られたフィルム状の光学フィルム用樹脂組成物を粉砕し、幅200mm、スリットギャップ0.25mmを有するTダイを設置したスクリュー径φ20mm、圧縮比3.5の単軸押出し機(東洋精機株式会社製、商品名ラボプラストミル)を用いて押出し機シリンダー温度プロファイルとして原料供給口からダイまでの温度がそれぞれ180℃;200℃;240℃;260℃にて押出し、水冷ロールにて冷却しながらフィルムを得た。
【0078】
得られたフィルムを実施例1と同様の条件で延伸配向して光学フィルムを得た。光学フィルムの全光線透過率は88%であった。透過光強度比(T)/(T//)は2.7であった。光学フィルムの外観は良好であった。
【0079】
よって、得られた光学フィルム用樹脂組成物よりなる光学フィルムの透過光強度比は、(T)/(T//)>1.0であることから偏光した光の選択透過性に優れたものであった。
【0080】
実施例7
実施例1の透明性を有する樹脂としてポリカーボネートの代わりにポリアリレート(ユニチカ製、商品名UポリマーP−3001、ガラス転移温度160℃)を用いて溶液中の酸化亜鉛とポリアリレートとの組成比が10重量%:90重量%とした以外は実施例1と同様の操作を実施してフィルム状の光学フィルム用樹脂組成物を得た。得られたフィルムのTgは177℃であった。また、フィルムヘーズ値は35%であった。
【0081】
得られたフィルムを195℃にて延伸した以外は実施例1と同様にして光学フィルムを得た。光学フィルムの全光線透過率は90%であった。また、透過光強度比(T)/(T//)は2.8であった。光学フィルムの外観は良好であった。
【0082】
よって、得られた光学フィルム用樹脂組成物よりなる光学フィルムの透過光強度比は、(T)/(T//)>1.0であることから偏光した光の選択透過性に優れたものであった。
【0083】
実施例8
実施例1の酸化亜鉛の代わりに炭酸ストロンチウム粒子(粒子重量あたり10重量%のアシドホスホキシエチルメタクリレートにて処理したもの、短軸径の平均寸法60nm、長軸径の平均寸法600nm、平均屈折率1.67、長軸方向の屈折率1.52)を用いて、実施例1の透明性を有する樹脂としてポリカーボネートの代わりにポリスチレン(東ソー製、標準ポリスチレン、ガラス転移温度100℃)を用いて溶液中の炭酸ストロンチウムとポリスチレンとの組成比が20重量%:80重量%とした以外は実施例1と同様の操作を実施してフィルム状の光学フィルム用樹脂組成物を得た。得られたフィルムのTgは118℃であった。また、フィルムヘーズ値は32%であった。
【0084】
該フィルム状の光学フィルム用樹脂組成物を140℃にて延伸した以外は実施例1と同様にして光学フィルムを得た。光学フィルムの全光線透過率は90%であり、透過光強度比(T)/(T//)は2.0であった。光学フィルムの外観は良好であった。
【0085】
よって、得られた光学フィルム用樹脂組成物よりなる光学フィルムの透過光強度比は、(T)/(T//)>1.0であることから偏光した光の選択透過性に優れたものであった。
【0086】
実施例9
実施例1の酸化亜鉛の代わりに炭化ケイ素粒子(粒子重量あたり10重量%のアシドホスホキシエチルメタクリレートにて処理したもの、短軸径の平均寸法50nm、長軸径の平均寸法5μm、平均屈折率2.6)を用いて、溶液中の炭化ケイ素とポリカーボネートとの組成比が10重量%:90重量%とした以外は実施例1と同様の操作を実施してフィルム状の光学フィルム用樹脂組成物及び光学フィルムを得た。得られたフィルムのTgは160℃であった。また、フィルムヘーズ値は40%であった。
【0087】
光学フィルムの全光線透過率は88%であり、透過光強度(T)/(T//)は2.3であった。光学フィルムの外観は良好であった。
【0088】
よって、得られた光学フィルム用樹脂組成物よりなる光学フィルムの透過光強度比は、(T)/(T//)>1.0であることから偏光した光の選択透過性に優れたものであった。
【0089】
実施例10
繊維状または柱状の粒子として、それぞれ粒子重量あたり10重量%のアシドホスホキシエチルメタクリレートにて処理した酸化亜鉛粒子(a)(短軸径の平均寸法50nm、長軸径の平均寸法600nm、屈折率1.95)及び酸化亜鉛粒子(b)(短軸径の平均寸法50nm、長軸径の平均寸法1μm、屈折率1.95)の2種類の酸化亜鉛粒子を用い、溶液中における酸化亜鉛粒子(a)、酸化亜鉛粒子(b)およびポリカーボネートとの組成比が5重量%:5重量%:90重量%となるように調整した以外は実施例1と同様の操作を実施してフィルム状の光学フィルム用樹脂組成物及び光学フィルムを得た。得られたフィルムのTgは160℃であった。また、フィルムヘーズ値は30%であった。
【0090】
光学フィルムの全光線透過率は90%であり、波長550nmにおける透過光強度比(T)/(T//)は2.0であった。波長450nmにおける透過光強度比(T)/(T//)は2.2であり、波長650nmにおける透過光強度比(T)/(T//)は2.0であった。光学フィルムの外観は良好であった。
【0091】
よって、得られた光学フィルム用樹脂組成物よりなる光学フィルムの透過光強度比は、(T)/(T//)>1.0であり、また、波長による透過光強度比は450〜650nmにおいて2.2〜2.0と安定化され、偏光した光の選択透過性は広い光波長範囲において優れたものであった。
【0092】
実施例11
繊維状または柱状の粒子として、酸化亜鉛粒子(a)(粒子重量あたり10重量%のアシドホスホキシエチルメタクリレートにて処理したもの、短軸径の平均寸法50nm、長軸径の平均寸法600nm、屈折率1.95)及び酸化チタン粒子(b)(粒子重量あたり10重量%のアシドホスホキシエチルメタクリレートにて処理したもの、短軸径の平均寸法40nm、長軸径の平均寸法2μm、屈折率2.7)の2種類の酸化亜鉛粒子及び酸化チタン粒子を用い、溶液中における酸化亜鉛粒子(a)、酸化チタン粒子(b)およびポリカーボネートとの組成比が3重量%:7重量%:90重量%となるように調整した以外は実施例1と同様の操作を実施してフィルム状の光学フィルム用樹脂組成物及び光学フィルムを得た。得られたフィルムのTgは160℃であった。また、フィルムヘーズ値は30%であった。
【0093】
光学フィルムの全光線透過率は90%であり、波長550nmにおける透過光強度比(T)/(T//)は2.3であった。波長450nmにおける透過光強度比(T)/(T//)は2.4であり、波長650nmにおける透過光強度比(T)/(T//)は2.3であった。光学フィルムの外観は良好であった。
【0094】
よって、得られた光学フィルム用樹脂組成物よりなる光学フィルムの透過光強度比は、(T)/(T//)>1.0であり、また、波長による透過光強度比は450nm〜650nmにおいて2.4〜2.3と安定化され、偏光した光の選択透過性は広い光波長範囲において優れたものであった。
【0095】
実施例12
偏光子単体として全光線透過率が37%である偏光子と実施例1において得た光学フィルムとを、該光学フィルムの延伸方向として粒子の長軸が配向した方向と偏光子の吸収軸を一致させるようにしてフィルムを積層させた。このフィルム積層体の背面側に、光源用の導光板と更にその背面に光反射板を配置するようにして光源からの光をフィルム積層体中に通過させ、全光線透過率を測定した結果49%であった。また、この時の透過光強度比(T)/(T//)は990であった。
【0096】
よって、得られた光学フィルム用樹脂組成物よりなる光学フィルムの透過光強度比は、(T)/(T//)>1.0であることから偏光した光の選択透過性に優れたものであった。
【0097】
さらに、得られた光学フィルムと偏光子との積層フィルムは、透過光強度比が大きい((T)/(T//)は990)ことから、この積層フィルムは輝度向上フィルムとして好適に用いることができる。
【0098】
比較例1
実施例1において酸化亜鉛を用いずに、延伸温度を160℃とした以外は実施例1と同様の操作を実施してフィルム状の樹脂組成物を得た。得られたフィルムのTgは140℃であった。また、フィルムヘーズ値は0.1%であった。
【0099】
得られたフィルムを実施例1と同様の条件で延伸配向してフィルムを得た。フィルムの全光線透過率は90%であった。フィルムの外観は良好であった。しかし、透過光強度比(T)/(T//)は1.0であった。
【0100】
よって、繊維状または柱状の粒子を用いなかったことから、透過光強度比(T)/(T//)=1.0であることから偏光した光の選択透過性に劣るものであった。
【0101】
比較例2
実施例1において繊維状または柱状の酸化亜鉛粒子(粒子重量あたり10重量%のアシドホスホキシエチルメタクリレートにて処理したもの、短軸径の平均寸法30nm、長軸径の平均寸法120nm、屈折率1.95)10重量%を含有する塩化メチレンスラリー溶液をφ50mmラボ円筒ローター型攪拌混合装置を用いて剪断速度300sec−1にて5min.分散・混合させ、延伸温度を165℃とした以外は実施例1と同様の操作を実施してフィルム状の樹脂組成物を得た。得られたフィルムのTgは149℃であった。フィルム中に分散不良による大きな粒子塊が多数あるために表面に凹凸を生じており外観は不良であった。
【0102】
得られたフィルムを実施例1と同様の条件で延伸配向してフィルムを得た。またフィルムの全光線透過率は86%であった。透過光強度比(T)/(T//)は1.0であった。
【0103】
よって、用いる粒子の長軸径の平均寸法が120nmと小さいことから、表面外観に劣り、また透過光強度比(T)/(T//)=1.0であることから偏光した光の選択透過性に劣るものであった。
【0104】
比較例3
実施例1において溶液中の酸化亜鉛とポリカーボネートとの組成比が40重量%:60重量%とした以外は実施例1と同様の操作を実施してフィルム状の樹脂組成物の作成を試みたが、酸化亜鉛(粒子)の配合量が40重量%と多いことから、非常に脆く、フィルムの延伸途中においてフィルム上に著しい亀裂とシワを生じて破断した。
【0105】
よって、繊維状または柱状の粒子の配合割合が多く、成形加工性に劣るものであった。
【0106】
比較例4
実施例1において酸化亜鉛(粒子重量あたり10重量%のアシドホスホキシエチルメタクリレートにて処理したもの、短軸径の平均寸法200nm、長軸径の平均寸法600nm)を用いた以外は実施例1と同様の操作を実施してフィルム状の樹脂組成物を得た。フィルムのTgは160℃であった。また、フィルムヘーズ値は40%であった。
【0107】
得られたフィルムを実施例1と同様の条件で延伸配向してフィルムを得た。フィルムの外観は良好であった。フィルムの全光線透過率は81%であった。しかし、透過光強度比(T)/(T//)は1.0であった。
【0108】
よって、用いる粒子の短軸径の平均寸法が200nmと大きいことから、透過光強度比(T)/(T//)=1.0と偏光した光の選択透過性に劣るものであった。
【0109】
比較例5
実施例1において酸化亜鉛の代わりに炭酸ストロンチウム(粒子重量あたり10重量%のアシドホスホキシエチルメタクリレートにて処理したもの、短軸径の平均寸法50nm、長軸径の平均寸法250nm、平均屈折率1.6、長軸方向の屈折率1.52)を用いた以外は実施例1と同様の操作を実施してフィルム状の樹脂組成物を得た。フィルムのTgは165℃であった。また、フィルムヘーズ値は14%であった。
【0110】
得られたフィルムを実施例1と同様の条件で延伸配向してフィルムを得た。フィルムの外観は良好であった。フィルムの全光線透過率は90%であった。しかし、透過光強度比(T)/(T//)は1.0であった。
【0111】
よって、用いる粒子の長軸径の平均寸法が250nmと小さいことから、透過光強度比(T)/(T//)=1.0と偏光した光の選択透過性に劣るものであった。
【0112】
比較例6
実施例1において酸化亜鉛の代わりに球状コロイダルシリカ(粒子重量あたり10重量%のアシドホスホキシエチルメタクリレートにて処理したもの、平均粒子径80nm、平均屈折率1.46)を用いた以外は実施例1と同様の操作を実施してフィルム状の樹脂組成物を得た。フィルムのTgは168℃であった。また、フィルムヘーズ値は8%であった。
【0113】
得られたフィルムを実施例1と同様の条件で延伸配向してフィルムを得た。フィルムの外観は良好であった。フィルムの全光線透過率は90%であった。しかし、透過光強度比(T)/(T//)は1.0であった。
【0114】
よって、用いる粒子として、繊維状または柱状の粒子ではなく球状粒子を用いたため、透過光強度比(T)/(T//)=1.0と偏光した光の選択透過性に劣るものであった。
【0115】
比較例7
実施例1において酸化亜鉛の代わりに炭酸ストロンチウム(粒子重量あたり10重量%のアシドホスホキシエチルメタクリレートにて処理したもの、短軸径の平均寸法10nm、長軸径の平均寸法60nm、平均屈折率1.6、長軸方向の屈折率1.52)を用いた以外は実施例1と同様の操作を実施してフィルム状の樹脂組成物を得た。フィルムのTgは169℃であった。また、フィルムヘーズ値は0.6%であった。
【0116】
得られたフィルムを実施例1と同様の条件で延伸配向してフィルムを得た。フィルムの外観は良好であった。フィルムの全光線透過率は90%であった。しかし、透過光強度比(T)/(T//)は1.0であった。
【0117】
よって、用いる粒子の長軸径の平均寸法が60nmと小さいことから、透過光強度比(T)/(T//)=1.0と偏光した光の選択透過性に劣るものであった。
【0118】
比較例8
実施例1において酸化亜鉛の代わりに炭酸ストロンチウム(粒子重量あたり10重量%のアシドホスホキシエチルメタクリレートにて処理したもの、短軸径の平均寸法90nm、長軸径の平均寸法500nm、平均屈折率1.6、長軸方向の屈折率1.52)を用いた以外は実施例1と同様の操作を実施してフィルム状の樹脂組成物を得た。フィルムのTgは160℃であった。また、フィルムヘーズ値は45%であった。
【0119】
得られたフィルムを実施例1と同様の条件で延伸配向してフィルムを得た。フィルムの外観は良好であった。フィルムの全光線透過率は90%であった。しかし、透過光強度比(T)/(T//)は1.0であった。
【0120】
よって、用いる粒子の短軸径の平均寸法が90nmと大きく長軸径の平均寸法が500nmと小さいことから、透過光強度比(T)/(T//)=1.0と偏光した光の選択透過性に劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】二色性偏光子の光透過挙動を示す図である。
【図2】本発明の光学フィルムの光透過と反射・散乱及び光リサイクル挙動を示す図である。
【符号の説明】
【0122】
A;二色性材料を利用した偏光子
B;本発明の光学フィルム用樹脂組成物からなる光学フィルム
a;入射光
b;透過光
c;反射・散乱光
d;リサイクル光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種類以上の繊維状または柱状の粒子であって粒子の短軸径の平均寸法が1〜70nmであり、長軸径の平均寸法が600〜5μmである粒子1〜30重量%と透明性を有する樹脂70〜99重量%からなることを特徴とする光学フィルム用樹脂組成物。
【請求項2】
繊維状または柱状の粒子が、短軸径の平均寸法が1〜70nmであり、長軸径の平均寸法が600nm以上800nm未満の粒子(a)及び短軸径の平均寸法が1〜70nmであり、長軸径の平均寸法が800nm以上5μm以下の粒子(b)からなることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム用樹脂組成物。
【請求項3】
少なくとも1種類以上の繊維状または柱状の粒子が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸コバルト、炭酸マンガン、ケイ酸カルシウム、塩基性硫酸カルシウム、水酸化酸化アルミニウム、イモゴライト、炭化ケイ素からなる無機結晶粒子群から選ばれることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルム用樹脂組成物。
【請求項4】
透明性を有する樹脂が、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、スチレンアクリロニトリル共重合体、ポリフマル酸ジエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン、環状ポリオレフィン、マレイミド系共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートからなる群から選ばれることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学フィルム用樹脂組成物。
【請求項5】
フィルムヘーズ値が、10%以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学フィルム用樹脂組成物。
【請求項6】
透明性を有する樹脂と繊維状または柱状の粒子を、剪断速度500〜50,000sec−1にて分散混合を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルム用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の光学フィルム用樹脂組成物からなることを特徴とする光学フィルム。
【請求項8】
延伸することを特徴とする請求項7に記載の光学フィルム。
【請求項9】
延伸する際に、透明性を有する樹脂のガラス転移温度(Tg)に対してTg+10℃〜Tg+40℃において一軸延伸配向させることを特徴とする請求項8に記載の光学フィルム。
【請求項10】
延伸する際に、透明性を有する樹脂のガラス転移温度に対して、350℃を上限とするTg+10℃〜Tg+130℃において溶融押出し成形することを特徴とする請求項8に記載の光学フィルム。
【請求項11】
請求項7〜10に記載の光学フィルムを偏光子または保護層を有する偏光板と積層してなることを特徴とする光学フィルム。
【請求項12】
請求項11に記載の光学フィルムからなることを特徴とする輝度向上フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−242430(P2008−242430A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−8098(P2008−8098)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】