説明

光学フィルム

【課題】ディスプレイ装置の画面に直接手書きするタイプのデータ入力システムに適用でき、座標検知手段を提供する光学フィルムであって、軽量で、価格が安く、大面積化が容易で、量産可能で、かつ広い読取角度を有する読取性能に優れる光学フィルムを提供する。
【解決手段】本発明の光学フィルム1は、可視光を透過し、赤外線又は紫外線を拡散反射する基材9上に、赤外線又は紫外線を吸収する層3がパターン印刷されてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ装置の画面に直接手書きするタイプのデータ入力システムに適用できる、座標検知手段を提供する部材であって、特に、軽量で、価格が安く、大面積化が容易で、量産可能な光学フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、手書きした文字、絵及び記号などを、情報処理装置が扱うことができる電子データに変換する必要性が高まっており、特に、スキャナーなどの読取装置を経由せず、手書き情報をリアルタイムでコンピューター等へ入力する方式への需要が高まっている。
このような要求を満たす透明フィルムとして、例えば、特許文献1には、ディスプレイ装置の前面若しくは前方に装着される透明シートであって、入力用電子ペン等による入力軌跡の位置を示すための位置情報(座標と同義語)を提供可能なマークを所定波長の光を照射されて当該入力軌跡読取手段に読み取り可能な光を発光するインキを用いて印刷したものが開示されている。しかしながら、特許文献1には、そのような透明シートを具現化するインキの種類などは記載されておらず、透明シートのアイデアもしくは願望が記載されているに過ぎず、具体的な透明シートの例示はない。また、特許文献2には、赤外線領域を反射する特殊インキを印刷した透明部材を用いた座標入力装置が開示されているが、特許文献2にも、そのような装置を具現化するインキの種類などは記載されておらず、アイデアもしくは願望が記載されているに過ぎず、具体的な透明シートの例示はない。
【0003】
また、電子ペン等で読取を行う場合、使用する側は様々なペンの持ち方が想定されるため、広い読取角度が要求される。これまで赤外線吸収パターンと紙基材との組み合わせ、及び赤外線を反射する透明基材との組み合わせによる座標認識システムは提案されている。しかし、赤外線をただ反射するだけでは鏡面反射になってしまい、ペンでの読取角度は0°のみとなってしまう。読取角度は20°以上であることが好ましく、そのような読取角度を得るには、赤外線を再帰反射させるか、拡散させなければならず、それらの手段に関する提案はなされていない。
【特許文献1】特開平2003−256137号公報
【特許文献2】特開平2001−243006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、ディスプレイ装置に直接手書きしてデータ入力することができ、軽量で、価格が安く、大面積化が容易で、量産可能であり、かつ広い読取角度を有する読取性能に優れた光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ディスプレイ装置に装着する光学フィルムに、赤外線又は紫外線を拡散反射する基材を用いることにより、反射光の拡散角が増大し、前記の目的を達成することを見出し本発明を完成したものである。
すなわち、本発明は、可視光を透過し、赤外線又は紫外線を拡散反射する基材上に、赤外線又は紫外線を吸収する層がパターン印刷されてなる光学フィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の光学フィルムは、ディスプレイ装置に直接手書きしてデータ入力することができ、作業スペースが低減出来ることに加えて、軽量で、価格が安く、大面積化が容易で、量産可能であり、かつ広い読取角度を有する読取性能に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の光学フィルム1は、図1に示すように、可視光を透過し、赤外線又は紫外線を拡散反射する基材9上に、赤外線又は紫外線を吸収する層3がパターン印刷されてなるものであり、具体的な形態としては、下記形態(1−A)、(1−B)及び(2)などが挙げられる。
図2に示す、透明基板10上に、赤外線又は紫外線を拡散反射するコレステリック構造を有する液晶材料からなる湾曲した層4が設けられ、その上に赤外線又は紫外線を吸収する層3がパターン印刷されてなる光学フィルム(1−A)。
図3に示す、透明基板10上に、赤外線又は紫外線を吸収する層3がパターン印刷されてなり、その上に赤外線又は紫外線を拡散反射するコレステリック構造を有する液晶材料からなる湾曲した層4が設けられてなる光学フィルム(1−B)。
図4に示す、赤外線及び紫外線並びに可視光を拡散する光拡散フィルム11の一方の面に、赤外線又は紫外線を吸収する層3がパターン印刷されてなる光学フィルム(2)。
【0008】
本発明の光学フィルムの前記形態(1−A)、(1−B)及び(2)において、赤外線又は紫外線を吸収する層に用いられる赤外線吸収材料としては、特に限定されないが、ポリメチン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、イモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、アミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系金属錯体類の有機系近赤外線吸収色素、酸化スズ、酸化インジウム、6塩化タングステン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、セシウム−タングステン系複合酸化物(Cs0.33WO3)等の微粒子からなる無機系近赤外吸収色素を1種又は2種以上を併用することができる。
また、紫外線吸収材料としては、特に限定されないが、無機紫外線吸収剤又は有機紫外線吸収剤が挙げられ、有機紫外線吸収剤が好ましく、中でも好ましく用いられるのは、有機紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤等である。また、無機紫外線吸収剤としては、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛等の微粒子等が挙げられる。
また、赤外線吸収材料及び紫外線反射材料と共に用いられるバインダ樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、又はこれらから選択した2種以上の混合物等が挙げられる。
【0009】
本発明の光学フィルムにおいて、赤外線又は紫外線を吸収する層のパターンの印刷方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、孔版印刷法、インキジェット印刷法等が挙げられる。
なお、前記赤外線又は紫外線吸収材料としては、赤外線又は紫外線領域の少なくとも一部の波長において高吸収率(通常50%程度以上)を有するものであれば、本来、可視光線領域の波長において必ずしも高透過性は要求しない。ただし、前記赤外線又は紫外線吸収材料自体の可視光線透過率は高い方が好ましいことは勿論である。
【0010】
前記形態(1−A)及び(1−B)において、コレステリック構造を有する液晶材料(以下、コレステリック液晶材料と言うことがある)からなる湾曲した層とは、形成された層を透明基板に直交する面で切断した断面が、走査型電子顕微鏡で観察した場合に、一定の繰返し周期からなる多層構造を含むよう形成され、かつ該多層構造の各層面の少なくとも一部が彎曲して非平坦平面をなす様な層構造のことである。また、該多層構造を構成する該液晶材料のらせん軸(下記定義参照。該層面と直交する軸でもある。)と透明基材の表面の法線とがなす傾き角は、少なくとも0〜45°の範囲内で分布を有すると好ましい。
ここで、コレステリック(カイラルネマチック)構造を有する液晶は、その液晶分子が、各液晶分子の軸は多層構造の各層面内に存在すると共に、該層面内に於いて特定の方向に一様に配向する。且つ、該液晶分子軸の配向方向は層厚み方向の函数として順次変化し、該コレステリック構造の厚み方向に向かって進むに從がって順次回転する結果、回転軸が該多層膜の厚み方向を向き、該多層膜の層面内に於いて特定の方向に向かって回転する、一定周期の螺旋(らせん)構造(コレステリック構造)を有する。斯かる回転軸は又、螺旋軸とも呼称される。これに起因する特徴的な光学的性質を発現する。そのコレステリック構造の特徴は、らせんの向きに対応し、かつらせんピッチに対応した波長の円偏光を反射するという波長選択反射性を有することである。選択反射波長λ(ピーク波長λ nm)は、一般に次式で与えられる。
λ=p・n・cosθ
p:コレステリック液晶のらせんピッチ(nm)
n:液晶のらせん軸に直交する面内の平均屈折率
θ:光の入射角(面の法線からの角度)
また、該選択反射波長λ(ピーク波長λ)の帯域幅Δλ(nm)は、一般に次
式で与えられる。
λ=p・Δn・cosθ
p:コレステリック液晶のらせんピッチ(nm)
Δn:液晶のらせん軸に直交する面内の複屈折率
θ:光の入射角(面の法線からの角度)
コレステリック構造を有する液晶は、このような波長選択反射性能を有し、取り扱いが容易であり、そして加工性に優れていることから工業的に広く適用することができるとされている。しかし、選択反射波長λに関する上記の式から、コレステリック構造を有する液晶は入射角が増加すると反射される光の波長が減少するため、反射波長が所定の波長から逸脱する、すなわち読取角度が制限されることがわかる。本発明の光学フィルムにおいては、コレステリック構造を有する液晶のらせん軸と、透明基材の表面の法線とのなす傾き角が少なくとも0〜45°の範囲内で分布を有することで、上記のような読取角度の制限を解消して、より広い読取角度を得るものである。
【0011】
コレステリック構造の1ピッチとは、細長い液晶分子の軸方向が、層厚み方向(螺旋軸のこと、液晶分子軸とは別)に進むに従って、らせんを描いて360°回転するに要する螺旋軸方向の長さであるが、実際に断面を観察すると、液晶分子軸が180°回転するごとに液晶分子軸は該層面内に於ける配向方向が同方向となるため、層厚み方向に繰り返しの層構造が見える(図6参照)。したがって、断面を観察したときに見える見掛けの層間ピッチは、液晶のらせんピッチの1/2であり、例えば、断面観察したときに見える見掛けの層間ピッチが250nmであれば、液晶のピッチは500nmとなる。
なお、円偏光を入射した場合、樹脂、ガラス等の一般に基板として用いられる材料からなる透明基板については、表面で反射する光の円偏光成分の回転方向は反転する。一方、コレステリック液晶の表面においては、表面で反射する光の円偏光成分の回転方向はそのままで不変である。よって、その性質を利用すれば、円偏光フィルター等と組み合わせることにより、反射光とその背景光(湾曲した層以外からの反射光)のSN比を改善することが可能である。
【0012】
上記のように、通常のコレステリック液晶材料の塗膜においては、該コレステリック構造のらせん軸は、実質上、基板の法線方向に一様に向いている(図6参照)。言い換えると、該コレステリック構造がなすBragg反射面は平行平面群をなしている。その場合、特定の一入射角に対しては特定の一反射角のみとなるため、書込み時の入力端末(入力ペン)の傾きに応じて、入力端末に戻る光量は増減し、結局、読取角度(許容できる入力端末の傾斜角)は狭くなる。
一方、本発明の光学フィルムでは、コレステリック構造を構成する各層面の少なくとも一部に湾曲を生じさせることによって、前記液晶材料のらせん軸と透明基板の表面の法線とがなす傾き角が少なくとも0〜45°の範囲内で分布を有していると好ましい。すなわち、本来平行平面群であった該コレステリック構造がなすBragg反射面(群)が、以下に列挙するような形態を呈していることを意味している。
(A)Bragg反射面(群)が、褶曲する、あるいは波打つ。
(B)液晶材料からなる層の表面形状が、半球状又はこれに類似するように湾曲し、各Bragg反射面(群)が、該表面形状に呼応して湾曲し、中心部から輪郭部にかけて連続的に傾斜する。
(C)液晶材料からなる層の少なくとも一部の領域において、波長選択反射性を実用上損なわない範囲内でBragg反射面(群)が、凹凸を形成する。
(D)上記(A)〜(C)の2種以上組合せた特徴を有する。
このように、本発明の光学フィルムは、特定の一入射角の入射光線に対して、複数の反射角の反射光線を生じる特性を有するため、書込み時の入力端末(入力ペン)がある範囲内で傾斜しても、入力端末に何れかの光線が入射すれば、反射光の検知が可能となる。この特性により、本発明の光学フィルムは、入力端末に戻る光量の増減の変動は少なくなり、かつ光量もある角度の範囲内で一定量以上に保つことが可能となり、読取角度(許容できる入力端末の傾斜角)は広くなる。
【0013】
以下、本発明の光学フィルムに用いられるコレステリック構造を発現する液晶材料について説明する。なお、本発明において、赤外線及び紫外線の波長は特に限定されないが、通常好ましく用いられるのは、特に800〜2500nmの近赤外領域又は200〜400nmの紫外線からなる光である。以下、一部、赤外線を中心に説明する。
なお、一般に、「液晶」は、狭義には流動性を有する状態のものを指すが、本願発明の明細書中においては、流動性を有する液晶材料を架橋、冷却等の手段により、液晶の持つ光学特性、屈折率、異方性等の所望の性能を維持する状態で固化させ、非流動状態としたものも「液晶」と呼称することにする。
【0014】
本発明において、層を形成した後は、流動性が発現しないように液晶材料を固定化させる必要がある。そのため、重合性のネマチック液晶に重合性のカイラル剤を混合した重合性のカイラルネマチック液晶材料(重合性モノマー又は重合性オリゴマー)、又は高分子コレステリック液晶材料を好ましく使用することができる。
本発明においては、前記の重合性液晶材料の中でも、架橋可能な重合性モノマー又は重合性オリゴマーを用いることが好ましく、重合性官能基としてアクリレート構造を有しているとさらに好ましい。
なお、通常、このようなコレステリック構造を呈する液晶材料は、例えば、高反射波長域を赤外線領域に持っていくと、可視光線領域においては、数μm程度の厚みで70%程度以上の可視光線透過率を得る。一方、赤外線領域においては5〜50%程度の高反射率を得ることが一般的である。また、前記の重合性液晶材料がコレステリック相を呈する温度範囲については特に制限はなく、コレステリック相の状態で架橋により固定化できれば良いが、コレステリック相を呈する温度が30〜140℃の範囲にある材料は、印刷時の乾燥工程と、液晶の相転移を同時に行えるため好ましい。
【0015】
以上のような材料であれば、液晶分子をコレステリック液晶の状態のままで光学的に固定化することができ、光学フィルムとしての取り扱いが容易な、常温で安定した層を形成することができる。
また、高いガラス転移点を有し、加熱後冷却することにより常温でガラス状態に固化することが可能な液晶ポリマー(高分子コレステリック液晶)を用いることもできる。これらの材料も同様に、液晶分子をコレステリック規則性を有した液晶の状態のままで光学的に固定化することができ、光学フィルムとしての取り扱いが容易な、常温で安定した層を形成することができるからである。
【0016】
前記架橋可能な重合性モノマーとしては、特開平7−258638号公報、特表平11−513019号公報、特表平9−506088号公報及び特表平10−5088822号公報に開示されているような、液晶性モノマー及びカイラル化合物の混合物を用いることができる。例えば、ネマチック液晶相を呈する液晶性モノマーにカイラル剤を添加することによりカイラルネマチック液晶(コレステリック液晶)が得られる。なお、コレステリック液晶の製膜法は、特開2001−5684号公報や特開2001−110045号公報にも記載されている。
【0017】
本発明で用いることができるネマチック液晶分子(液晶性モノマー)としては、例えば下記式(1)〜(11)に示す化合物が挙げられる。ここに例示した化合物はアクリレート構造を有し、紫外線照射等により重合させることが可能である。
【0018】
【化1】

【0019】
【化2】

[化合物(11)において、X1は2〜5(整数)である。]
【0020】
また、前記架橋可能な重合性オリゴマーとしては、特開昭57−165480号公報に開示されているようなコレステリック相を有する環式オルガノポリシロキサン化合物等を用いることができる。
さらに、前記液晶ポリマーとしては、液晶を呈するメソゲン基を主鎖、側鎖、あるいは主鎖および側鎖の両方の位置に導入した高分子、コレステリル基を側鎖に導入した高分子コレステリック液晶、特開平9−133810号公報に開示されているような液晶性高分子、特開平11−293252号公報に開示されているような液晶性高分子等を用いることができる。
【0021】
本発明で用いられる液晶材料に含まれるカイラル剤は、不斉炭素原子を有し、ネマチック液晶と混合することでカイラルネマチック相を形成する材料であって、重合性を有するものであれば特に制限はないが、式(12)に例示するような、アクリレート構造を有する材料は、紫外線照射により重合可能であるため好ましい。
【0022】
【化3】

[Xは2〜5(整数)である。]
【0023】
本発明における光学フィルムの赤外線又は紫外線を反射する性質は、前述の通り、コレステリック構造を持った液晶材料の波長選択反射性(X線回折におけるBragg反射と同様な原理)を利用したものであり、その選択反射ピーク波長(Bragg反射条件を満たす波長)は、形成する層内に含まれるコレステリック構造のピッチ長で決定されるが、液晶材料としてネマチック液晶とカイラル剤を用いる場合には、カイラル剤の添加量を調整することによりピッチ長を制御できる。目標とする赤外線又は紫外線領域の選択反射ピーク波長を得るためのカイラル剤添加量は、使用する液晶の種類やカイラル剤の種類により異なり、例えば式(11)の液晶および式(12)のカイラル剤を用いる場合には、液晶100重量部に対しカイラル剤3重量部程度の添加で赤外領域に反射ピークを持つコレステリック相が形成される。液晶材料に高分子コレステリック液晶を用いる場合は、目的とするピッチ長を有するポリマー材料を選べばよい。
【0024】
本発明におけるネマチック液晶分子とカイラル剤との重合体は、例えば、重合性ネマチック液晶と重合性カイラル剤に公知の光重合開始剤等を添加し、紫外線を照射してラジカル重合させることにより得ることができる。
また、本発明において、液晶材料を印刷する際、重合性モノマー又は重合性オリゴマーやカイラル剤を溶媒に溶解したコーティング液を用いると好ましい。
この溶媒としては、材料に対し十分な溶解性を持つ限り特に限定されず公知のものを用いれば良く、例えば、アノン(シクロヘキサノン)、シクロペンタノン、トルエン、アセトン、MEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMA(N,N−ジメチルアセトアミド)、酢酸メチル、酢酸エチル、n−酢酸ブチル、酢酸3−メトキシブチル等の一般的な溶媒や、それらの混合溶媒が挙げられる。
【0025】
また、本発明で用いられる液晶材料には、広い読取角度及び塗工性を得る目的で、レベリング剤及び微粒子等を配合することができる。レベリング剤及び微粒子としては、液晶の配向を必要以上に(液晶材料のらせん軸に所望の角度(分布)を付与する以上に)乱さないものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、シリコーン系、フッ素系、ポリエーテル系、アクリル酸共重合物系、チタネート系等の種々の化合物を用いることができ、特に、アクリル酸共重合物系レベリング剤(例えば、ビックケミー社製、商標名「BYK361」)が好ましい。レベリング剤及び微粒子等を配合することにより、コレステリック構造を有する液晶材料からなる層が湾曲する。湾曲とは、例えば、図7に示すように、繰り返しの層構造が波形のような状態になることを言う。
【0026】
本発明の光学フィルムの前記形態(1−A)及び(1−B)において用いる透明基板としては、可視光を透過する材料であれば特に限定されないが、光学的不具合の少ない材料で形成されたものが好ましい。所謂フィルム、シート、或いは板の形態の物が適宜用いられる。具体的には、透明基板の材料としては、ガラスやTAC(トリアセチルセルロース)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリオレフィン等が好適に用いられる。また、厚みは20〜5000μm程度の範囲から、材料、要求性能、及び使用形態に応じて適宜選定する。
前記透明基板としてTACフィルム等の高分子フィルム等の溶媒に溶解又は膨潤し易い物を用いる場合には、透明パターン印刷時に使用するコーティング液中の溶媒で基板が侵されないように、基板上にバリア層を設けることが好ましい。この場合、バリア層が配向膜を兼ねるようにしても良く、例えば、PVA(ポリビニルアルコール)やHEC(ヒドロキシエチルセルロース)等の水溶性物質をバリア層として用いれば良い。
【0027】
本発明の光学フィルムにおいて、必ずしも必要ではないが、液晶配向の安定化などのために、配向膜を透明基板上に設けても良い。配向膜の材料は特に限定されず、例えば、PI(ポリイミド)、PVA(ポリビニルアルコール)、HEC(ヒドロキシエチルセルロース)、PC(ポリカーボネート)、PS(ポリスチレン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PE(ポリエステル)、PVCi( ポリビニルシンナメート)、PVK(ポリビニルカルバゾール)、シンナモイルを含むポリシラン、クマリン、カルコン等の公知の配向膜の材料を用いることができる。これらの材料を用いて形成した配向膜は、ラビング処理等を施しても良い。 また、配向膜として延伸した樹脂シートを透明基板に接着しても良い。
【0028】
本発明の光学フィルムの前記形態(2)において、赤外線及び紫外線並びに可視光を拡散する光拡散フィルム11の一方の面に、赤外線又は紫外線を吸収する層3がパターン印刷されてなり、もう一方の面に赤外線又は紫外線を反射する層12が形成されてなると好ましい(図5参照)。
本発明の光学フィルムの前記形態(2)において、赤外線及び紫外線並びに可視光を拡散する光拡散フィルムとしては、入射光を、拡散透過、拡散反射、あるいは拡散反射すると共に拡散透過もする性質を有するフィルムである。例えば、プラスチックフィルムに透明微粒子を分散含有させて光を散乱させるフィルムや、プラスチックフィルムの表面を粗面化して光を散乱させるフィルムが代表的である。プラスチックフィルムとしては、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル等のフィルムが挙げられる。
また、複屈折特性が異なる微小領域を分散分布させてなる複屈折フィルムの重畳体からなり、複屈折性フィルムを微小領域との屈折率差を利用して、光を散乱させる方法(特開平11−174211号公報)、高分子フィルム中に同じ高分子からなる微小結晶領域が分散分布してなり、その微小領域と他部分との屈折率が相違して光散乱性を示すフィルム(特開平11−326610号公報、特開2000−266936号公報、特開2000−275437号公報など)等も用いることができる。
さらに、光拡散フィルムとして、表面の微細な凹凸形状により一度集光した後に拡散するという機能を有する拡散レンズフィルムも有効である。
【0029】
本発明の光学フィルムの前記形態(2)において、前記光拡散フィルムが、再帰反射性能を有する層であっても良い。この場合、透明基板の一方の面に、再帰反射性能を有する層が設けられ、もう一方の面に赤外線又は紫外線を吸収する層がパターン印刷されてなる形態などが好ましい。
なお、再帰反射性能を有する層に用いられる再帰反射材料は、レンズとして作用する直径40〜90μmの微小な高屈折ガラスビーズが一定の効果を満たすように結合樹脂中に多数配置されているものであって、ビーズの一つ一つは真円で一種の凸レンズとして作用するため、入射光はガラスを通り屈折して一点に焦点を結ぶが、球体底部に反射層を設け、再びガラス体を通ってもとの光源方向に帰される材料である。
【0030】
本発明の光学フィルムの前記形態(2)において、赤外線又は紫外線を反射する層としては、例えば、(a)前記形態(1−A)(1−B)で説明したコレステリック液晶材料の塗膜、(b)粒径が、入射光の波長より小さい金属酸化物を含む塗膜、(c) 低屈折率層と該低屈折率層よりも高い屈折率を有する高屈折率層とが交互に積層され、しかも高屈折率層が読取り側の最表面に位置してなる誘電体多層膜、(d)赤外線又は紫外線反射フィルムなどが挙げられる。
【0031】
前記(b)の金属酸化物としては、赤外線反射材料と紫外線反射材料が挙げられる。
赤外線反射材料としては、目的の波長で所望の反射率を示すもので有れば公知の材料を用いることができ、例えば、熱線反射性能を示す、太陽光の反射率の高い白色顔料又は金属粉顔料、具体的には、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化スズやスズドープ酸化インジウム(ITO)、スズドープ酸化アンチモン等複合金属酸化物の無機粉体やアルミニウム、金、銅等の金属粉が好ましく用いられる。また、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ(Al23)、クレー、タルクなども使用できる。
また、赤外線や遠赤外線反射性能、熱線反射性能を有する三酸化アンチモンやジクロム酸アンチモン、SiO2(石英)、Al23(アルミナ)、MgO−Al23−SiO2(コージェライト)、Ca227(アパタイト)、MnO2、Fe23、ZrO2、ZrSiO4(ジルコン)、FeTiO3(イルメナイト)、Cr23、FeCr24(クロマイト)、V25、Bi23、MoO3、SnO2、ZnO、ThO2、La23、CeO2、Pr611、Nd23、Y23等の無機粉体も目的の波長で所望の反射率を示す場合は好ましく用いられる。
この他、特開2004−4840号公報に記載の、天然または合成雲母、別の葉状珪酸塩、ガラス薄片、薄片状二酸化珪素または酸化アルミニウム等の透明支持材料と、金属酸化物の被覆とからなる干渉顔料なども用いることができる。
【0032】
また、上記成分を複数種有する複合金属酸化物として用いられている。そのような無機系赤外線反射材料として市販されている具体例としては、例えば、イエロー10401、イエロー10408、ブラウン10348、グリーン10405、ブルー10336、ブラウン10364、ブラウン10363(いずれも商品名;CERDEC社製)、AB820ブラック、AG235ブラック、AY150イエロー、AY610イエロー、AR100ブラウン、AR300ブラウン、AA200ブルー、AA500ブルー、AM110グリーン(いずれも商品名;川村化学株式会社製)、ピグメントブラック28(CuCr24)、ピグメントブラック27{(Co,Fe)(Fe,Cr)24}、ピグメントグリーン17(Cr23)(いずれも商品名;東罐株式会社製)等のうち目的の波長で所望の反射率を示すものが好ましく用いられる。
これらの中でも、特に、AB820ブラック、AG235ブラック、ピグメントブラック28、ピグメントブラック27が好ましい。
【0033】
また、紫外線反射材料としては、チタン、ジルコニウム、亜鉛、インジウム、スズ等の酸化物または亜鉛の硫化物またはケイ素、ホウ素等の窒化物などが挙げられる。
前記赤外線又は紫外線反射材料を用いて、インキを調製する際に、前記材料の分散性を向上するために分散剤を用いても良く、分散剤の種類としては特に限定されず公知のものを用いれば良く、市販されている具体的な例としては、例えば、ディスパービック183、110、111、116、140、161、163、164、170、171、174、180、182、2000、2001、2020(商品名;ビックケミー株式会社製)等が挙げられる。
なお、分散剤の量は、前記材料100重量部に対して、1〜50重量部であると好ましい。
【0034】
前記(c) 低屈折率層と該低屈折率層よりも高い屈折率を有する高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜における材料としては、無機材料や樹脂系材料が挙げられ、前記パターンの読取りに使用する赤外線又は紫外線の波長において、所望の低屈折、あるいは高屈折率を呈する材料を選択して使用できる。
無機材料としては、低屈折率層A用の材料と高屈折率層B用の材料に大別できる。
この低屈折率層Aを形成する無機材料としては、屈折率が1.6以下の材料を通常用いることができ、好ましくは、屈折率の範囲が1.2〜1.6の材料が選択される。
このような材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、六フッ化アルミニウムナトリウムなどが挙げられる。
また、高屈折率層Bを形成する無機材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、好ましくは、屈折率の範囲が1.7〜2.5の材料が選択される。
このような材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化インジウムを主成分とし、酸化チタン、酸化スズ、酸化セリウムなどを少量含有させたものなどが挙げられる。
なお、低屈折率層及び高屈折率層は、相対的な屈折率より決定されるので、前記無機材料は、低屈折率材料及び高屈折率材料に限定されない。また、特公昭61−51762号公報、特開平3−218822号公報及び特開平3−178430号公報に記載された材料も適宜用いることができる。
【0035】
以上のような無機材料を用いて低屈折率層Aと高屈折率層Bとを積層する方法は、これら材料層を積層した誘電体多層構造が形成される限り特に制限はないが、例えば、CVD法、スパッタリング法、真空蒸着法又は湿式塗工などにより、低屈折率層Aと高屈折率層Bとを交互に積層して多層構造を形成することができる。
【0036】
多層構造を形成する樹脂系材料としては、例えば、屈折率の異なる樹脂を相対的に高屈折率層A及び低屈折率層Bの材料として用いれば特に制限は無く、高屈折率樹脂と低屈折率樹脂に、結晶質、半結晶質、液体結晶質材料、又は非晶質ポリマーを選択することができる。なお、ポリマーは通常完全な結晶質ではないため、ここでいう結晶質又は半結晶質とは、非結晶質ではないポリマーのことであり、結晶質、部分的結晶質、半結晶質などと一般に呼ばれる材料のいずれをも含む。
【0037】
樹脂系材料の具体例としては、ポリエチレンナフタレート(PEN)及びその異性体(例えば2,6−、1,4−、1,5−、2,7−及び2,3−PEN)、ポリアルキレンテレフタレート(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)及びPETGなどのこれらのコポリマー、ポリイミド(例えばポリアクリルイミド)、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート(例えば3:1のモル比における4,4’−チオジフェノール及びビスフェノールAのコポリカーボネート、すなわちTDPなどのコポリマーを含む)、ポリメタクリレート(例えばポリイソブチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート及びポリメチルメタクリレート)、ポリアクリレート(例えばポリブチルアクリレート及びポリメチルアクリレート)、アタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン(sPS)、シンジオタクチックポリアルファメチルスチレン、シンジオタクチックポリジクロロスチレン、これらポリスチレンのいずれかのコポリマー及び配合物、セルロース誘導体(例えばエチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸セルロースブチレート及び硝酸セルロース)、ポリアルキレンポリマー(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン及びポリ(4−メチル)ペンテン)、フッ化ポリマー(例えば、ペルフルオロアルコキシ樹脂、ポリエトラフルオロエチレン、フッ化エチレンプロピレンコポリマー、フッ化ポリビニリデン及びポリクロロトリフルオロエチレン)、塩素化ポリマー(例えばポリ塩化ビニリデン及びポリ塩化ビニル)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアセテート、ポリエーテルアミド、アイオノマー樹脂、エラストマー(例えばポリブタジエン、ポリイソプレン及びネオプレン)及びポリウレタン等が挙げられる。
【0038】
さらにコポリマーの例として、PENコポリマー(例えば2,6−、1,4−、1,5−、2,7−及び2,3−ナフタレンジカルボン酸又はそのエステルとしての、(a)テレフタル酸又はそのエステル、(b)イソフタル酸又はそのエステル、(c)フタル酸又はそのエステル、(d)アルカングリコール、(e)シクロアルカングリコール(例えばシクロヘキサンジメタノールジオール)、(f)アルカンジカルボキシル酸、及び(g)シクロアルカンジカルボキシル酸(例えばシクロヘキサンジカルボキシル酸)から選ばれる組み合わせのコポリマー)、ポリアルキレンテレフタレートのコポリマー(例えばテレフタル酸又はそのエステルとしての、(a)ナフタレンジカルボキシル酸又はそのエステル、(b)イソフタル酸又はそのエステル、(c)フタル酸又はそのエステル、(d)アルカングリコール、(e)シクロアルカングリコール(例えばシクロヘキサンジメタンジオール)、(f)アルカンジカルボキシル酸、及び(g)シクロアルカンジカルボキシル酸(例えばシクロヘキサンジカルボキシル酸)から選ばれる組み合わせのコポリマー)、スチレンコポリマー(例えばスチレンブタジエンコポリマー及びスチレンアクリロニトリルコポリマー)、4 ,4’−ビベンゾイン酸並びにエチレングリコール等が挙げられる。
【0039】
また、それぞれの各層は上述したポリマー又はコポリマーの2種類以上の配合物(例えばシンジオタクチックポリスチレン(sPS)及びアタクチックポリスチレンの配合物)を含んでよい。
また、高屈折率層B及び低屈折率層Aはこれらの2種類以上のポリマーの混合物を用いても良い。
さらに、光や電離放射線、熱等により硬化するモノマーやオリゴマーなどを用いて層を形成した後に硬化させても良い。ポリマーやオリゴマー,モノマーが溶媒に可溶な場合は、溶液で塗布し、乾燥させても良い。
上記樹脂系材料を高屈折率層B及び低屈折率層Aに用いる組み合わせの一例としては、高屈折率層Bにポリエチレン−2,6−ナフタレート、低屈折率層Aにポリエチレンテレフタレートなどを使用することが出来る。
【0040】
以上のような樹脂系材料を用いて低屈折率層Aと高屈折率層Bとを積層する方法は、これら材料を選択して低屈折率層A及び高屈折率層Bとなれば特に制限はないが、共押出(同時押出し)、ホットメルトコーティング、薄層シートの熱圧着、コーティング、湿式塗工などが挙げられる。中でも、2種類の材料が類似のレオロジー特性(例えば溶融粘度)を有して、これらを同時押出しできると好ましい。紫外線や電離放射線で硬化可能な材料を用いる場合は多層コーティングなども好適である。
【0041】
これら多層構造の積層数は多ければ多いほど、反射作用は大きくなるため、繰り返し単位数は10層以上が好ましいが、あまり積層数が多くなると工程が増えるばかりでなく、基板からの凹凸の段差も大きくなるため、非可視光線センサーで検知できる範囲でなるべく少なくした方が好ましい。積層数は、通常10〜80層の範囲で、好ましくは25〜50層の範囲であり、多層構造の厚みは、入射する赤外線又は紫外線を反射するように調節された厚さであれば特に制限されないが、50〜200μmが好ましい。
また、本発明の光学フィルムの前記形態(2)において、赤外線又は紫外線を反射する層の上に、さらに前記形態(1−A)及び(1−B)と同様の透明基板を設けても良い。
(d)赤外線又は紫外線反射フィルムとしては、ポリエステルフィルムに超極薄膜をスパッタリングし、多層膜にしたもの等が挙げられる。
【0042】
本発明の光学フィルム1は、図8に示すように、画像表示可能なディスプレイ装置5に装着される光学フィルムに適していて、赤外線又は紫外線の照射及び検知が可能な入力端末6を用いて、光学フィルム1の反射パターンを読み取ることで、光学フィルム1上における入力端末の位置に関する情報を提供可能である。
本発明の光学フィルムは、前記ディスプレイ装置の表面又は前方に装着されると好ましい。
また、本発明の光学フィルムを用いると、読取角度が20℃以上であり30°以上であると好ましい。
【0043】
また、本発明の光学フィルムにおけるパターン3(図1〜4参照)については特許文献1及び2にも幾つか例示されており、例えばドットの形状を複数設定し、平面内に於いて、所定範囲内に配置されたこれら複数形状のドットの組み合わせをパターン化したようなもの、縦横に配置した罫線の太さを変えて、所定範囲内の前記罫線の重なり部分の大きさの組み合わせをパターン化したようなもの、x、y座標の値を直接ドットの縦横の大きさと結びつけたもの等が挙げられるが、特に簡素で好適なものとしては、縦横に等間隔に並ぶ基準点を設定して、この基準点に対して上下左右に変位したドットを配置し、これらドットの当該基準点からの相対的な位置関係を利用する方法が挙げられる。この方法はドットのサイズを小さく一定にできるため入力装置の高分解能化に有利である。
パターンがドットパターンである場合、ドット形状は隣接するドットと容易に区別できれば特に制限はなく、通常は、平面視形状が、円、楕円、多角形などの形状が用いられる。またドットの立体形状についても特に制限はなく、通常円盤状であるが、半球状や凹面状であっても良い。
【0044】
本発明の光学フィルムにおいて、入力端末に備えられた赤外線センサーにより反射パターンを検知するには、選択反射ピーク波長における赤外線又は紫外線反射率が大きいほうが好ましい。通常は、選択反射ピーク波長において反射率5〜50%程度であり、20%以上であると好ましい。なお、コレステリック構造による反射は、コレステリック螺旋と同じ向きの円偏光のみを反射する性質があるため、最大でも50%程度にしか到達しない。
コレステリック構造による反射の場合、一般に印刷厚みが厚い方が反射強度が大きくなるが、厚すぎると液晶の配向性の乱れや透明性の低下、乾燥負荷増大を招く為、赤外線反射パターンの印刷厚みは通常1〜20μm程度であり、好ましくは3〜10μm程度である。
【0045】
また、本発明の光学フィルムにおいて、ペン型等の入力端末で手書入力する際に、繰り返し入力端末が接触しても耐えられる強度を与えるために、ハードコート層(硬質塗膜から成る表面保護層)を設けても良い。ハードコート層の材質としては、特に限定されず、通常の光学フィルムやレンズの分野において用いられているものが使用できる。例えば、紫外線、電子線、熱等で架橋硬化したアクリル樹脂、珪素系樹脂等が代表的なものである。
さらに、本発明の光学フィルムの背後にあるディスプレイ装置の視認性を確保するために、フィルム表面又は内部に反射防止膜等を設けても良い。反射防止膜の材質としては、特に限定されず、通常のディスプレイ用光学フィルムやレンズの分野において用いられているものが使用できる。例えば、弗化マグネシウム、弗素系樹脂等の低屈折率物質の薄膜と、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム等の高屈折率物質の薄膜とを該低屈折率の薄膜が最表面になる様積層した誘電体多層膜等が代表的なものである。
【0046】
本発明の光学フィルムを装着するディスプレイ装置は、手書き入力データを処理する情報処理装置に接続されたものであってもよく、独立したものであっても良いが、前者は手書き入力時の軌跡を画面上に表示することができ直感的な入力が可能であるため好ましい。
ここで手書き入力情報を扱う情報処理装置としては、携帯電話、PDA等の各種携帯端末や、パーソナルコンピュータ、テレビ電話、相互通信機能を備えたテレビジョン、インターネット端末などが例示できる。
【0047】
本発明で用いることができる入力端末6としては、図8に示すように、赤外線iを発し、前記パターンの反射光rを検知できるものであれば特に限定されず公知のセンサーを用いれば良く、例えば、ペン型の入力端末6が読取データ処理装置7も具備する例として、特開2003−256137号公報に開示されている、インキや黒鉛等を備えないペン先、赤外線照射部を備えたCMOSカメラ、プロセッサ、メモリ、Bluetooth技術等を利用したワイヤレストランシーバ等の通信インタフェース、及びバッテリ等を内蔵しているものなどが挙げられる。
ペン型入力端末6の動作としては、ペン先を平面視が図9の如くのドットパターンが印刷された光学フィルム1の前面に接触させてなぞるように描画すると、ペン型入力端末6がペン先に加わった筆圧を検知し、CMOSカメラが作動して、ペン先近傍の所定範囲を赤外線照射部から発する所定波長の赤外線で照射するとともに、パターンを撮像する(パターンの撮像は、例えば、1秒間に数10から100回程度行われる)。ペン型入力端末6が読取データ処理装置7を具備する場合には、撮像したパターンをプロセッサで解析することにより手書き時のペン先の移動に伴う入力軌跡を数値化・データ化して入力軌跡データを生成し、その入力軌跡データを情報処理装置へ送信する。
なお、プロセッサ、メモリ、Bluetooth技術等を利用したワイヤレストランシーバ等の通信インタフェース、及びバッテリ等の部材は、図8に示すように、読取データ処理装置7として、ペン型入力端末6の外部に有っても良い。この場合には、ペン型入力端末6は読取データ処理装置7にコード8で接続されていても、電波、赤外線等を用い無線で読取データを送信しても良い。
この他、入力端末6は、特開2001−243006号公報に記載された読取器のようなものであっても良い。
【0048】
本発明において適用できる読取データ処理装置7は、入力端末6で読み取った連続的な撮像データから位置情報を算出し、それを時間情報と組み合わせ、情報処理装置で扱える入力軌跡データとして提供する機能を有するものであれば特に限定されず、プロセッサ、メモリ、通信インタフェース及びバッテリ等の部材を具備していれば良い。
また、読取データ処理装置7は、特開2003−256137号公報のように入力端末6に内蔵されていても良く、また、ディスプレイ装置を備える情報処理装置に内蔵されていても良い。また、読取データ処理装置7は、ディスプレイ装置を備える情報処理装置に無線で位置情報を送信しても良く、コード等で接続された有線接続で送信しても良い。
ディスプレイ装置5に接続された情報処理装置は、読取データ処理装置7から送信されてきた軌跡情報に基づき、ディスプレイ装置5に表示する画像を順次更新することによって、入力端末6で手書き入力した軌跡を、紙の上にペンで書いたかのようにディスプレイ装置上に表示することが出来る。
【0049】
このように、本発明の光学フィルムは、既存のディスプレイ装置にそのまま装着することができ、ディスプレイ装置に組み込むタイプの静電式、感圧式等の位置入力装置よりもその製作を簡単にすることができ、コストも低減できる。また、印刷された位置情報を提供可能なパターンが薄くなったり、傷が付いたりするなどして、位置情報提供の機能が低減した場合であっても、光学フィルムのみを交換すれば良いので、使用者にとって扱いやすいものとなる。
本発明の光学フィルムは、液晶ディスプレイに装着すれば、液晶保護シートとしても使用可能なものとなる。
また、光学フィルムは、検査依頼表などの紙の上に乗せて使用する場合など、ディスプレイ装置の前面に配置する以外の利用方法もある(特開2004−341831参照)。
【0050】
本発明の光学フィルムは、ディスプレイ装置の前面に対向して着脱可能に装着するようにすることもできる。このようにすれば、一つのディスプレイ装置のみならず、別のディスプレイ装置にも装着することができるようになる。また、ディスプレイ装置側には装着のための加工を施さないようにして光学フィルムを装着することができるようにするために、光学フィルム自体が、ディスプレイ装置に対する装着手段を備えていると好ましい。なお、この装着手段とは、光学フィルムと一体に設けられたものであっても、別体に設けられたものであっても良い。
なお、前面に対向して装着するとは、ディスプレイ装置の前面に対して、間隙を置かずに密着して装着する形態、間隙を介して隔離状態で装着する形態の何れをも包含する。
このような装着手段として、例えばバックル状のものをディスプレイ装置のコーナ部に引っ掛けるようなものや、ディスプレイ装置の端部を挟み込むようなものなどが挙げられるが、簡単で好適な具体的態様としては、ディスプレイ装置の前面に装着するような場合において、ディスプレイ装置に接触する接触面側に設けられ、ディスプレイ装置に貼り付けるための接着性又は粘着性を有する貼着具が挙げられる。また、貼着具としては、光学フィルムに一体的に取り付けられた接着性又は粘着性を有するものや、接触面に直接塗装された接着剤や粘着剤などをも含むものが挙げられる。
【0051】
本発明の光学フィルムは、その製造の利便性を向上するために、光学フィルムを、切り離し可能なものとすると好ましい。具体的には、鋏などの切断具若しくは専用の切断具などで切り離せるようなものや、ミシン目などを入れることにより手で切り離すことができるようなものなどが挙げられる。このようなものであれば、使用者側で、各使用者所有のディスプレイ装置大きさに対応して切断することができるようになるため、製造者側は、数種の所定のサイズに設定したフィルムを製造すれば良いからである。さらに、汎用のディスプレイ装置の規格サイズにミシン目を入れるようにしても良い。
また、このような使い方が可能であれば、位置情報を提供するパターンが印刷された一のフィルムを分割し、それぞれのフィルムが異なる座標範囲を示すようにすることが可能になる。このようなフィルムを用いる場合、例えば隣接したディスプレイ装置に対して連続した座標を示すフィルムを適用すれば、入力データに連続性を与えることが出来る。また、1つの入力装置に対し異なる座標範囲の光学フィルムを複数切り替えて使用することで、それぞれの光学フィルムに対し異なる意味を付与することが出来る。
【実施例】
【0052】
次に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
実施例1
末端に重合可能なアクリロイル基を持ち、ネマチック−アイソトロピック転移温度が110℃付近であるモノマー(前記化合物(11)で示される分子構造を有するもの)100重量部と、末端に重合可能なアクリロイル基を持つカイラル剤(上記化学式(12)で示される分子構造を有するもの)3.0重量部、光重合開始剤(ビーエーエスエフ社製、ルシリンTPO)を4重量部、レベリング剤(ビックケミー社製、BYK-361)0.3重量部とを、メチルイソブチルケトンに溶解させた赤外線反射インキを調製した。
この液晶溶液を、125μmのPET基板上にグラビア印刷法にて直接塗工し、紫外線照射により硬化し、赤外線拡散反射基材を作製した。
一方、ペンタエリスリトールトリアクリレート100重量部に、フタロシアニン系色素(日本触媒社製、IR-12)2重量部、光重合開始剤(ビーエーエスエフ社製、ルシリンTPO)4重量部をシクロヘキサノンに溶解させた赤外線吸収インキを調製し、グラビア印刷によりドット状にパターン印刷し、光学フィルムを得た。
この光学フィルムに、赤外線を照射して、その反射光を画像として検知したところ、40°まで読み取ることが可能であり、広い読取角度を有していた。
【0053】
実施例2
拡散レンズフィルム(オプティカルソリューションズ社製、LCD80PC10-F10)の一方の面に、赤外線反射フィルム(帝人社製、レフテルWH03)を赤外線反射層として用い、拡散フィルムに接着し、赤外線反射層を形成した。
拡散レンズフィルムのもう一方の面には、実施例1で調製した赤外線吸収インキをドット状にパターン印刷し、光学フィルムを得た。
この光学フィルムに、赤外線を照射して、その反射光を画像として検知したところ、40°まで読み取ることが可能であり、広い読取角度を有していた。
【0054】
実施例3
厚さ125μmの透明PET基板上に再帰反射材料(小松プロセス社製、アートブライトカラー)を固形分30%となるようにシクロヘキサノンで希釈したものを塗工し、赤外線反射層を形成し、PETのもう一方の面に実施例1と同様の赤外線吸収ドットを形成した。
この光学フィルムに、赤外線を照射して、その反射光を画像として検知したところ、40°まで読み取ることが可能であり、広い読取角度を有していた。
【0055】
比較例1
赤外線反射インキ中にレベリング剤を添加しない以外は実施例1と同様にして光学フィルムを作製した。実施例1と同様に読取角度を測定したところ0°であった。
比較例2
拡散レンズフィルムをPETフィルムに変更した以外は、実施例2と同様にして光学フィルムを作製した。実施例1と同様に読取角度を測定したところ0°であった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上詳細に説明したように、本発明の光学フィルムは、ディスプレイ装置の画面に直接手書きするタイプのデータ入力システムに適用できる、座標検知手段を提供する部材であって、作業スペースが低減出来ることに加えて、軽量で、価格が安く、大面積化が容易で、量産可能であり、かつ広い読取角度を有する読取性能に優れる。このため、手軽に使用することができ、実用性能が高く、携帯電話、PDA等の各種携帯端末や、パーソナルコンピュータ、テレビ電話、相互通信機能を備えたテレビジョン、インターネット端末などの種々の情報処理装置に用いることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の光学フィルムの一実施態様を示す断面図である。
【図2】本発明の光学フィルムの別の一実施態様を示す断面図である。
【図3】本発明の光学フィルムの別の一実施態様を示す断面図である。
【図4】本発明の光学フィルムの別の一実施態様を示す断面図である。
【図5】本発明の光学フィルムの別の一実施態様を示す断面図である。
【図6】コレステリック液晶の繰り返しの層構造を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】コレステリック液晶の繰り返しの層構造が湾曲した状態を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】本発明の光学フィルムを用いるシステム全体の概略図である。
【図9】本発明の光学フィルムにおいてドットパターンが不規則に配列した例を示す要部拡大平面図である。
【符号の説明】
【0058】
1、1−A、1−B、2:光学フィルム
3:赤外線又は紫外線を吸収する層
4:湾曲したコレステリック液晶層
5:ディスプレイ装置
6:入力端末(ペン型)
7:読取データ処理装置
8:コード
9:赤外線又は紫外線を拡散反射する基材
10:透明基板
11:光拡散フィルム
12:赤外線又は紫外線を反射する層
i:赤外線又は紫外線
r:反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を透過し、赤外線又は紫外線を拡散反射する基材上に、赤外線又は紫外線を吸収する層がパターン印刷されてなる光学フィルム。
【請求項2】
透明基板上に、赤外線又は紫外線を拡散反射するコレステリック構造を有する液晶材料からなる湾曲した層が設けられ、その上に赤外線又は紫外線を吸収する層がパターン印刷されてなる請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
透明基板上に、赤外線又は紫外線を吸収する層がパターン印刷されてなり、その上に赤外線又は紫外線を拡散反射するコレステリック構造を有する液晶材料からなる湾曲した層が設けられてなる請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項4】
赤外線及び紫外線並びに可視光を拡散する光拡散フィルムの一方の面に、赤外線又は紫外線を吸収する層がパターン印刷されてなる請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項5】
赤外線及び紫外線並びに可視光を拡散する光拡散フィルムの一方の面に、赤外線又は紫外線を吸収する層がパターン印刷されてなり、もう一方の面に赤外線または紫外線を反射する層が形成されてなる請求項4に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記コレステリック構造を有する液晶材料が、ネマチック液晶にカイラル剤を混合したカイラルネマチック液晶材料からなる請求項2又は3に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記赤外線又は紫外線を反射する層が、コレステリック構造を有する液晶材料からなる層である請求項5に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記赤外線又は紫外線を反射する層が、粒径が、入射光の波長より小さい金属酸化物を含む塗膜である請求項5に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記赤外線又は紫外線を反射する層が、低屈折率層と該低屈折率層よりも高い屈折率を有する高屈折率層とが交互に積層されてなる誘電体多層膜である請求項5に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記赤外線又は紫外線を反射する層が、赤外線又は紫外線反射フィルムである請求項5に記載の光学フィルム。
【請求項11】
前記光拡散フィルムが、再帰反射性能を有する層である請求項4又は5に記載の光学フィルム。
【請求項12】
透明基板の一方の面に、再帰反射性能を有する層が設けられ、もう一方の面に赤外線又は紫外線を吸収する層がパターン印刷されてなる請求項11に記載の光学フィルム。
【請求項13】
前記光学フィルムが、画像表示可能なディスプレイ装置に装着される光学フィルムであって、赤外線又は紫外線の照射及び検知が可能な入力端末を用いて、前記光学フィルムの反射パターンを読み取ることで、光学フィルム上における入力端末の位置に関する情報を提供可能である請求項1〜12のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項14】
読取角度が20°以上である請求項13に記載の光学フィルム。
【請求項15】
前記ディスプレイ装置の前方に前面に対向して装着される請求項13に記載の光学フィルム。
【請求項16】
前記ディスプレイ装置に装着するための装着手段を備えている請求項13に記載の光学フィルム。
【請求項17】
前記装着手段が、ディスプレイ装置に接触する接触面側に設けられ、ディスプレイ装置に貼り付けるための接着性又は粘着性を有する貼着具である請求項16記載の光学フィルム。
【請求項18】
切り離し可能なものである請求項1〜17のいずれかに記載の光学フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−209598(P2008−209598A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45348(P2007−45348)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】