説明

光学フィルム

【課題】透明性、色相および耐熱性が良好で、液晶表示に優れたポリカーボネート樹脂およびポリエステルカーボネート樹脂より形成される未延伸光学フィルムを提供する。
【解決手段】全ジヒドロキシ成分の5〜100モル%が、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン類からなるポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂より形成される未延伸光学フィルム。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶基板用フィルム、光メモリーカード等に好適に使用される未延伸光学フィルムに関する。さらに詳しくは透明性、色相および耐熱性が良好で、液晶表示に優れた未延伸光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の軽薄短少化が益々進行し、モバイル端末などの表示部分には液晶ディスプレーが用いられ、この液晶ディスプレーに用いられる液晶基板用フィルムに、割れない、軽い特徴を持ったポリカーボネート樹脂等のプラスチックフィルムが使用されるようになってきた。
【0003】
一方、本発明の光学フィルムに使用されるポリカーボネート樹脂およびポリエステルカーボネート樹脂は、それぞれ特開平10−101786号公報および特開平10−87800号公報に記載されている。かかる公報には、これらの樹脂が耐熱性に優れ、殊に射出成形して光ディスクに用いられることが示されているに過ぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−101786号公報
【特許文献2】特開平10−087800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、未延伸光学フィルムとして使用する際に、透明性、色相および耐熱性が良好で、液晶表示に優れたポリカーボネート樹脂およびポリエステルカーボネート樹脂より形成される未延伸光学フィルムを提供することにある。
【0006】
本発明者はこの目的を達成せんとして鋭意研究を重ねた結果、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン類を使用することにより得られた特定構造のポリカーボネート樹脂およびポリエステルカーボネート樹脂より形成されたフィルムが、驚くべきことに色相、透明性、フィルム強度および耐熱性に優れ、未延伸フィルム特性が良好で液晶表示に優れることを見出し、本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明によれば、全ジヒドロキシ成分の5〜100モル%が、下記一般式(1)
【化1】

(式中R1〜R4はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシル基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルコキシル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基を表し、X、Yはそれぞれ炭素原子数2〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜20のアリーレン基、炭素原子数7〜20のアラルキレン基を表す。)で表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種のジヒドロキシ成分からなるポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂より形成される未延伸光学フィルムが提供される。
【0008】
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂およびポリエステルカーボネート樹脂は、それを構成するジヒドロキシ成分として、前記式(1)で表される化合物を全ジヒドロキシ成分の5〜100モル%、好ましくは10〜95モル%、さらに好ましくは30〜85モル%含有する。5モル%未満の場合、本発明の目的である未延伸光学フィルム用材料として液晶表示に使用した際にリターデーションが大きくなりコントラストに劣るなどの不満足な性質となり好ましくない。
【0009】
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物とカーボネート前駆体とを反応させて得る事ができる。
また、本発明で使用されるポリエステルカーボネート樹脂は、ジヒドロキシ化合物、ジカルボン酸化合物およびカーボネート前駆体とを反応させて得る事ができる。
【0010】
本発明で使用される前記式(1)で示されるジヒドロキシ成分としては、例えば9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−メチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−tert−ブチル−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシイソプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−メチル−4−(2−ヒドロキシイソプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−ヒドロキシネオペンチルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[3−メチル−4−(3−ヒドロキシネオペンチルオキシ)フェニル]フルオレン等が挙げられ、なかでも9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンが好ましく使用される。
【0011】
また、前記式(1)で示されるジヒドロキシ成分以外のジヒドロキシ成分としては、通常ポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂のジヒドロキシ成分として使用されているものであればよく、例えばハイドロキノン、レゾルシノール、4,4′−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールE)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4′−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(ビスフェノールM)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(ビスクレゾールフルオレン)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(ビスフェノールフルオレン)などが挙げられ、なかでもビスフェノールA、ビスフェノールZ、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールM、ビスクレゾールフルオレンが好ましく、特にビスフェノールAが好ましい。
【0012】
前記ジカルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が好ましく、これらのジカルボン酸は酸クロライドまたはエステル化合物として反応させることが好ましく採用される。また、ポリエステルカーボネート樹脂を製造する際に、ジカルボン酸は、前記ジヒドロキシ成分とジカルボン酸成分との合計を100モル%とした時に、0.5〜45モル%の範囲で使用することが好ましく、1〜40モル%の範囲で使用することがより好ましい。
【0013】
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂およびポリエステルカーボネート樹脂は、通常のポリカーボネート樹脂およびポリエステルカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えばジヒドロキシ成分、二官能性カルボン酸にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
【0014】
カーボネート前駆物質として、例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物が用いられる。溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。
【0015】
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0016】
本発明で使用されるポリカーボネート樹脂およびポリエステルカーボネート樹脂は、その重合反応において、末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られた樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。
【0017】
かかる単官能フェノール類としては、下記一般式(2)で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0018】
【化2】

[式中、Aは水素原子、炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはアリールアルキル基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。]前記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
【0019】
前記ポリカーボネート樹脂およびポリエステルカーボネート樹脂は、そのポリマーを塩化メチレンに溶解した溶液を20℃で測定した極限粘度が0.3〜1.5の範囲が好ましく、0.35〜1.3の範囲のものがより好ましく、0.4〜1.2の範囲のものが特に好ましい。極限粘度が上記範囲内であるとフィルム強度が強く、溶融粘度および溶液粘度が適当で、取り扱いが容易であり好ましい。
【0020】
発明の未延伸光学フィルムを構成するポリカーボネート樹脂およびポリエステルカーボネート樹脂は、その100μmのフィルムの光線透過率が89%以上であることが好ましい。
【0021】
また、本発明の未延伸光学フィルムは、未延伸の場合無荷重下で測定したリターデーションが20nm以下であることが望ましい。また、このフィルムを延伸した位相差フィルムの無荷重下で測定したリターデーションが100〜1200nmであることが望ましい。未延伸フィルムを液晶基板用フィルムとして用いる場合リターデーションが大きいとコントラストに劣り好ましくない。また、延伸した位相差フィルムで着色を解消するためにはリターデーションは100〜1200の範囲が好ましい。
【0022】
本発明の未延伸光学フィルムに使用されるポリカーボネート樹脂およびポリエステルカーボネート樹脂は、耐熱性が高いことが加工耐久性を高めるために重要であり、ガラス転移温度(Tg)で120℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましい。主鎖に芳香族基を有するポリカーボネート樹脂やポリエステルカーボネート樹脂は透明性、耐熱性に優れ、フィルムに適した材料として好ましく用いられる。また、これらを2種以上ブレンドしても用いることができる。
【0023】
本発明において、前記ポリカーボネート樹脂およびポリエステルカーボネート樹脂に必要に応じて、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸およびこれらのエステルよりなる群から選択された少なくとも1種のリン化合物を配合することができる。かかるリン化合物の配合量は、前記樹脂に対して0.0001〜0.05重量%が好ましく、0.0005〜0.02重量%がより好ましく、0.001〜0.01重量%が特に好ましい。このリン化合物を配合することにより、かかる樹脂の熱安定性が向上し、成形時における分子量の低下や色相の悪化が防止される。
【0024】
かかるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸およびこれらのエステルよりなる群から選択される少なくとも1種のリン化合物であり、好ましくは下記一般式
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

式中、R5〜R16は、それぞれ独立して、水素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどの炭素数1〜20のアルキル基、フェニル、トリル、ナフチルなどの炭素数6〜15のアリール基またはベンジル、フェネチルなどの炭素数7〜18のアラルキル基を表し、また1つの化合物中に2つのアルキル基が存在する場合は、その2つのアルキル基は互いに結合して環を形成していてもよい。]よりなる群から選択された少なくとも1種のリン化合物である。
【0025】
上記(3)式で示されるリン化合物としては、例えばトリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0026】
上記(4)式で示されるリン化合物としては、例えばトリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどが挙げられ、上記(5)式で示されるリン化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスホナイトなどが挙げられ、また上記(6)式で示される化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピルなどが挙げられる。
【0027】
これらのリン化合物のなかで、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスホナイトが好ましく使用される。
【0028】
前記ポリカーボネート樹脂およびポリエステルカーボネート樹脂には、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を添加することができる。その例としてはフェノール系酸化防止剤を示すことができ、具体的には例えばトリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等が挙げられる。これら酸化防止剤の好ましい添加量の範囲は前記樹脂に対して0.0001〜0.05重量%である。
【0029】
さらに前記ポリカーボネート樹脂およびポリエステルカーボネート樹脂には、必要に応じて一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステルを加えることもできる。
かかる高級脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1〜20の一価または多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルであるのが好ましい。また、かかる一価または多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、2−エチルヘキシルステアレートなどが挙げられ、なかでもステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましく用いられる。
【0030】
かかるアルコールと高級脂肪酸とのエステルの配合量は、前記樹脂に対して0.01〜2重量%が好ましく、0.015〜0.5重量%がより好ましく、0.02〜0.2重量%がさらに好ましい。配合量がこの範囲内であれば離型性に優れ、また離型剤がマイグレートし金属表面に付着することもなく好ましい。
前記ポリカーボネート樹脂およびポリエステルカーボネート樹脂には、さらに光安定剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、充填剤などの添加剤、他のポリカーボネート樹脂や他の熱可塑性樹脂を本発明の目的を損なわない範囲で添加することもできる。
【0031】
前記ポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂からフィルムを製造する方法としては、厚みの均一性に優れ、ゲル、ブツ、フィッシュアイ、スクラッチ等の光学欠点の生じない方法が好ましく、例えば溶剤キャスト法、溶融押出し法、カレンダー法等が挙げられる。なかでも、本発明の樹脂フィルムが好適に使用される光学用途は高度な均一性を要求されるために、溶液からのキャスティング法が好ましく採用される。キャスティング法は、一般にはダイから溶液を押出すキャスティング法、ドクターナイフ法等が好ましく用いられる。溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルム、ジオキソラン、トルエン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の有機溶媒が好ましい。これらは一種でもよいし、二種以上の混合溶媒でもよい。液晶ディスプレー用フィルムは厚膜であり、溶液濃度は15重量%以上、好適には20重量%以上の高濃度溶液が好ましく用いられる。
【0032】
前記ポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂フィルムの膜厚は用途に応じて選択すればよいが、50〜500μmの範囲が好ましく、80〜300μmの範囲がより好ましく用いられる。この範囲内では、位相差フィルムにおいて屈折率異方性に基づく充分なリターデーションが得られ、また液晶基板用フィルム(プラセル基板)では充分に腰のある(剛直な)フィルムが得られ、また、製膜が容易であり好ましい。さらに、位相差フィルムにおいて延伸により精度良く目的のリターデーションが得られやすく好ましい。
【0033】
本発明のポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート樹脂より形成されるフィルムは、光学フィルムとして使用する際に、透明性、色相および耐熱性が極めて良好で、液晶表示に優れる。該フィルムは例えば、得られたフィルムの両面にガスバリヤー膜、耐溶剤膜を付けたり、透明導電膜や偏光板と共に液晶基板用フィルム等の光学フィルムとして好適に用いられ、具体的には、ポケベル、携帯電話、ハンディーターミナル、種々の表示素子等に有利に使用することができる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに説明する。なお、実施例中の部は重量部であり、%は重量%である。評価は下記の方法によった。
(1)極限粘度:ポリマーを塩化メチレンに溶解し20℃の温度で測定した。
(2)ガラス転移点(Tg):デュポン社製910型DSCにより測定した。
(3)引張り破断強度、引っ張り破断伸度:実施例で得られた厚み0.1mmのフィルムの引張り破断強度、引っ張り破断伸度をオリエンテック製テンシロン万能試験機を用いて測定した。
(4)フィルムのb値:実施例で得られた厚み0.1mmのフィルムを、C光源により日立U−3000分光光度計を用いて測定した。
(5)全光線透過率:ASTM D−1003に準拠して日本電色(株)シグマ80により測定した。
【0035】
[実施例1]
温度計、撹拌機、滴下漏斗付き反応器にピリジン38部および塩化メチレン360部を仕込み、これに9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(以下“BHEPF”と略称することがある)48.4部を溶解し、撹拌下15〜25℃でホスゲン9.6部を25分を要して吹き込んだ。ホスゲン吹込みと同時にテレフタル酸クロライド10.4部(ジヒドロキシ成分とジカルボン酸成分の合計モル数に対して30モル%)、およびp−tert−ブチルフェノール0.54部を塩化メチレン100部に溶解して滴下した。ホスゲン吹き込み終了後、さらに28〜33℃で1時間攪拌して反応を終了した。反応終了後、生成物を塩化メチレンで希釈して水洗したのち塩酸酸性にして水洗し、水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになったところで、塩化メチレン相を濃縮、脱水してポリエステルカーボネート樹脂濃度が20%の溶液を得た(ポリマー収率95%)。このポリマーのエステル基の割合は59モル%(エステル基とカーボネート基との合計100モル%)、極限粘度は0.474、Tgは162℃であった。
【0036】
このポリカーボネート溶液を20℃でTダイより移動しているステンレス板上に流延し、徐々に温度を上げながら塩化メチレンを蒸発し、ステンレス板より剥離して更に加熱して塩化メチレンを除去して100μmの厚みのフィルムを得た。キャスティング製膜性は良好で、このフィルムのb値は0.5、全光線透過率は90%、破断強度は78.4MPa、引っ張り破断伸度は20%であった。次いで、このフィルムをテンター法により160℃で100%一軸延伸した。この一軸延伸したフィルムにバリヤー層および液晶用透明電極をスパッタリングした後、粘着剤を用いて偏向板の片面に光学軸が45度になるように接着して複合偏向板を得た。次いでこのものをSTN液晶表示装置の液晶セルと上部偏向板の間に貼り合わせて用いたところ、視野角が広く、背景色が白、表示色が黒のコントラストのよい白黒表示が得られた。またこの上部にカラーフィルターを被せ、RGBのセルを白黒のグレー濃度で発色表示させることにより、鮮明なフルカラー表示が得られた。
【0037】
[実施例2]
攪拌機付きステンレス製反応釜にBHEPF24.2部(ジヒドロキシ成分の合計モル数に対して50モル%)、ビスフェノールA13.6部(ジヒドロキシ成分の合計モル数に対して50モル%)、ジメチルテレフタレート8.2部(ジヒドロキシ成分とジカルボン酸成分の合計モル数に対して25モル%)、ジメチルイソフタレート1.7部(ジヒドロキシ成分とジカルボン酸成分の合計モル数に対して5モル%)およびジフェニルカーボネート20.8部を仕込み、これに触媒としてテトラブトキシチタン6×10-5部を加え、200〜220℃で脱メタノールおよび脱フェノールを行った。殆ど留出が終了した後リン酸トリメチル1μlおよび0.5%酸化ゲルマニウム水溶液0.1mlを加え、260〜280℃まで徐々に昇温すると同時に徐々に減圧度を上げて13.3Paにした。溶融粘度が十分になった後反応を停止し、ポリエステルカーボネート樹脂46.4部(収率97%)を得た。このポリマーのエステル基の割合は58モル%(エステル基とカーボネート基との合計100モル%)、極限粘度は0.457、Tgは155℃であった。このポリカーボネート溶液を実施例1と同様の方法により100μmの厚みのフィルムを得た。キャスティング製膜性は良好で、全光線透過率は90%であった。次いで、このフィルムをテンター法により155℃で100%一軸延伸し、実施例1と同様の方法で液晶表示させたところ、視野角の広い鮮明なフルカラー表示が得られた。
【0038】
[実施例3]
実施例2の装置を用いて、BHEPFを439部、ジフェニルカーボネート214部およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド9.1×10-3部を仕込み、窒素置換後140℃で溶融した。30分攪拌後、内温を180℃に昇温しながら徐々に減圧し1.33×104Paで30分間反応させ生成するフェノールを留去した。ついで200℃に昇温しつつ徐々に減圧し、6.67×103Paで30分間フェノールを留出せしめ反応させた。さらに220〜260℃、1.33×102Paまで徐々に昇温減圧し、最終的に1.33×102Pa以下で1時間反応後、末端停止剤としてビス(2−メトキシカルボニルフェニル)カーボネート10.3部を添加して260℃、1.33×102Paで30分間攪拌後ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩1.2×10-2部を添加し攪拌し反応を終了した(ポリマー収率99%)。このポリマーの極限粘度は1.15、Tgは145℃であった。このポリマーの塩化メチレン溶液から実施例1と同様の方法により100μmの厚みのフィルムを得た。キャスティング製膜性は良好で、このフィルムの全光線透過率は90%であった。次いで、このフィルムをテンター法により145℃で100%一軸延伸し、実施例1と同様の方法で液晶表示させたところ、視野角の広い鮮明なフルカラー表示が得られた。
【0039】
[実施例4]
実施例2の装置を用いて、BHEPF219部(ジヒドロキシ成分の合計量の50モル%)、ビスフェノールA114部(ジヒドロキシ成分の合計量の50モル%)、ジフェニルカーボネート218部およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド9.1×10−3部、カセイソーダ4.0×10−4部を仕込み、実施例3と同様にして反応し、ポリマーを得た(収率99%)。このポリマーの極限粘度は1.09、Tgは147℃であった。このポリマーの塩化メチレン溶液から実施例1と同様の方法により100μmの厚みのフィルムを得た。次いで、このフィルムをテンター法により147℃で100%一軸延伸し、実施例1と同様の方法で液晶表示させたところ、視野角の広い鮮明なフルカラー表示が得られた。
【0040】
[比較例1]
実施例1の装置を用いて、25%カセイソーダ水溶液89部、イオン交換水464部、ハイドロサルファイト0.14部、ビスフェノールA71部を溶解し、塩化メチレン173.4部を加えて激しく攪拌しながら20〜25℃でホスゲン34.4部を約100分かけて吹き込み反応した。ホスゲン吹き込み終了後、48.5%カセイソーダ水溶液5.3部、p−tert−ブチルフェノール0.75部を加えて乳化させ4時間攪拌を続けて反応を終了した。反応終了後塩化メチレン400部を加えて希釈し、イオン交換水を用いて水洗を繰り返して精製後、塩化メチレン層を分離し、塩化メチレンを蒸発濃縮して濃度20%のポリカーボネート溶液を得た(収率98%)。このポリマーの極限粘度は0.812、Tgは154℃であった。このポリマーの塩化メチレン溶液から実施例1と同様の方法により100μmの厚みのフィルムを得た。次いで、このフィルムをテンター法により154℃で100%一軸延伸した。この一軸延伸したフィルムを実施例1と同様の方法で液晶表示させたところ、液晶表示は視野角が狭く、黒表示における着色があり、それによりコントラストが劣り、視認性を損なっていた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のポリカーボネート樹脂及びポリエステルカーボネート樹脂よりなる未延伸光学フィルムは、透明性、色相および耐熱性が良好となるため、液晶表示等の液晶ディスプレイ用フィルム材料として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全ジヒドロキシ成分の5〜100モル%が、下記一般式(1)
【化1】

(式中R1〜R4はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のアルコキシル基、炭素原子数6〜20のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のシクロアルコキシル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基を表し、X、Yはそれぞれ炭素原子数2〜10のアルキレン基、炭素原子数6〜20のアリーレン基、炭素原子数7〜20のアラルキレン基を表す。)で表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種のジヒドロキシ成分からなるポリカーボネート樹脂より形成される未延伸光学フィルム。
【請求項2】
全ジヒドロキシ成分の5〜100モル%が、前記一般式(1)で表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種のジヒドロキシ成分からなるポリエステルカーボネート樹脂より形成される未延伸光学フィルム。
【請求項3】
未延伸光学フィルムが液晶ディスプレー用フィルムである請求項1または2記載の未延伸光学フィルム。
【請求項4】
ジヒドロキシ成分が9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンである請求項1または2記載の未延伸光学フィルム。

【公開番号】特開2011−42807(P2011−42807A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257931(P2010−257931)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【分割の表示】特願2001−119408(P2001−119408)の分割
【原出願日】平成13年4月18日(2001.4.18)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】