光学フィルム
【課題】入射光の直線透過率が入射角によって異なり、中心軸より入射された円形光が楕円形に投影される性質を有する光学フィルムの提供。
【解決手段】屈折率の高低からなる微細な構造が内部に存在し、散乱中心軸より入射した光の散乱特性は、前記楕円形の長軸方向と平行な方向である光学フィルム平面上のX軸と前記散乱中心軸とが形成する平面内における出射角度の該出射角度における拡散透過率Txの最大値から10分の1の値におけるピーク幅Fmax1/10xと、前記X軸に垂直な光学フィルム平面上のY軸と前記散乱中心軸とが形成する平面における出射角度の該出射角度における拡散透過率Tyの最大値から10分の1の値におけるピーク幅Fmax1/10yとが、1.5<Fmax1/10x/Fmax1/10y<4.5の関係を満たすことを特徴とする光学フィルム。
【解決手段】屈折率の高低からなる微細な構造が内部に存在し、散乱中心軸より入射した光の散乱特性は、前記楕円形の長軸方向と平行な方向である光学フィルム平面上のX軸と前記散乱中心軸とが形成する平面内における出射角度の該出射角度における拡散透過率Txの最大値から10分の1の値におけるピーク幅Fmax1/10xと、前記X軸に垂直な光学フィルム平面上のY軸と前記散乱中心軸とが形成する平面における出射角度の該出射角度における拡散透過率Tyの最大値から10分の1の値におけるピーク幅Fmax1/10yとが、1.5<Fmax1/10x/Fmax1/10y<4.5の関係を満たすことを特徴とする光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射角に応じて透過光の拡散性が変化する異方拡散性光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
光拡散性を有する部材は、古くから照明器具や建材に使われていただけでなく、最近のディスプレイ、特にLCDにおいても広く利用されている。これら光拡散部材の光拡散発現機構としては、表面に形成された凹凸による散乱(表面散乱)、マトリックス樹脂とその中に分散されたフィラー間の屈折率差による散乱(内部散乱)、及び表面散乱と内部散乱の両方によるものが挙げられる。但し、これら光拡散部材は、一般にその拡散性能は等方的であり、入射角度を少々変化させても、その透過光の拡散特性が大きく異なることはなかった。
【0003】
(板状構造を有するタイプA)
一定の角度領域の入射光は強く拡散し、それ以外の角度の入射光は透過するという、光制御板が知られている(住友化学から「ルミスティー」の商品名で販売されている。例えば、特許文献1)。この光制御板は、シート状の感光性組成物層の上空から線状光源を用いて平行な光を照射して硬化せしめたものである。そして、シート状の基体内には、図15に示すように、光学フィルム50の作製時にその上空に配置した線状光源51の長さ方向に一致して、周辺領域と屈折率が異なる板状構造40が互いに平行に形成されていると考えられている(以下、便宜的にタイプAとする)。図16に示すように、図示しない光源と受光器3との間にサンプルを配置し、サンプル表面の直線Lを中心軸として角度を変化させながらサンプルを直進透過して受光器3に入る直線透過率を測定することができる。
【0004】
図17は、図16に示す方法を用いて測定した図15に示すタイプAの光学フィルム50が有する散乱特性の入射角依存性を示す。縦軸は散乱の程度を表す指標である直線透過率(所定の光量の平行光線を入射させたときに、入射方向と同じ方向に出射された平行光線の光量)を示し、横軸は入射角を示す。図17中の実線及び破線はそれぞれ、図15中のA−A軸(板状構造を突き抜ける)及びB−B軸(板状構造に平行)を中心に光学フィルム50を回転させた場合を示す。尚、入射角の正負は、光学フィルム50を回転させる方向が反対であることを示す。図17中の実線は、正面方向でも斜め方向でも直線透過率が小さいままであるが、これは、A−A軸を中心に回転させた場合には、光学フィルム50が入射角に無関係に散乱状態であることを意味する。また、図17中の破線は、0°近傍の方向で直線透過率が小さくなっているが、これはB−B軸を中心に回転させた場合にも、光学フィルムが正面方向の光に対して散乱状態であることを意味する。更に、入射角が大きい方向では直線透過率が増加しているが、これは、B−B軸を中心に回転させた場合には、光学フィルムが斜め方向の光に対して透過状態であることを意味する。この構造のおかげで、例えば、横方向には透過度が入射角によって異なるものの、縦方向には入射角を変えても透過度が変わらない、という特性を与えることができる。ここで、図17のように散乱特性の入射角依存性を示す曲線を以下、「光学プロファイル」と称する。光学プロファイルは、散乱特性を直接的に表現しているものではないが、直線透過率が低下することで逆に拡散透過率が増大していると解釈すれば、概ね拡散特性を示しているといえる。
【0005】
(柱状構造を有するタイプB)
一方、光拡散性に入射角依存性を有するものの、図18に示すように、フィルムの厚さ方向(フィルムの法線方向P)に延在する柱状構造62を有する光学フィルム60(以下、便宜的にタイプBとする)も提案されている(例えば、特許文献2)。この柱状構造は、感光性組成物層に平行なUV光を照射することで、感光性組成物層中にその光の進行方向に平行して形成されるものである。このタイプBの光学フィルムにおいて、入射角を変えた場合の直線透過率の変化を示す光学プロファイルを図19に示す。A−Aを回転中心軸とした場合と、B−Bを回転中心軸とした場合と、入射角を変えてその直線透過率を測定すると、いずれの場合であっても同様の光学プロファイルが得られる。即ち、図18の光学フィルムは、回転中心軸が変わっても、ほぼ同じ直線透過率を示し、法線方向(0°)で入射する場合の透過率と比較して、±5〜10°の入射角で一旦直線透過率が極小値になり、その入射角が大きくなるにつれて直線透過率が大きくなり、±45〜60°の入射角で直線透過率が極大値となる。
【0006】
これらのタイプA及びタイプBについてより詳細に説明すれば、内部に屈折率の高低からなる微細な構造が存在し、透過する入射光の直線透過率が入射角によって異なる光学フィルムの場合、その光学特性は内部構造のタイプとその構造物の傾きによって規定される。例えば、前記タイプAのように内部に屈折率の異なる微細な構造が板状構造に形成されている光学フィルムの場合は、その板状構造のフィルム法線に対する傾きにより光学特性が規定される。一方、前記タイプBのようにフィルムの厚さ(法線)方向に延在する柱状構造を有する光学フィルムの場合は、その柱状構造のフィルム法線に対する傾きにより光学特性が規定される。タイプAの光学フィルムの場合、板状構造にほぼ平行な方向からの入射光が強く拡散され、その板状構造を貫くように入射する光は殆ど拡散されずに透過するため、板状構造は光散乱面といえる。一方、タイプBの光学フィルムの場合、柱状構造は、平行なUV光を感光性組成物層に照射する際に、その光の進行方向に平行して形成されるものであり、感光性組成物層に対してその法線方向から平行UV光を照射すれば、柱状構造は法線方向に延在する。このような場合は、(UV光の照射方向=柱状構造の延在方向=法線方向)となり、図19に示されるように、あらゆる入射面内における光の入射角度と直線透過率との関係が法線を中心として対称形となっているため、この法線を散乱中心軸ということが出来る。以下にこの散乱中心軸について図を使って更に詳細に説明する。
【0007】
図20は、タイプBの光学フィルムの微細構造の断面模式図を表す。微細な柱状構造物がシートの法線方向に延在している。ここで、網点部分の領域と白の領域とが屈折率の高低を示す。この光学フィルムの光拡散性は、図21に示す方法で簡便に調べることができる。即ち、白い紙の上方に平行に一定の間隔を置いて光学フィルムを固定し、光学フィルムの特定の領域を入射点として上方からレーザーポインターのような強い平行光線を入射すると、透過光の拡散状態が白い紙の上に写し出される。ここで、法線方向からの入射光は、白い紙の上に円形の拡散光となって投影され、一方斜めからの入射光は、先程の円形拡散光とは離れた位置に三日月状の投影光となって表れる。入射光の傾きとその方位を変えた場合に白い紙に投影される拡散光の形状を図22に示すが、ここで入射光を法線方向から少しずつ傾けた場合、傾き角を深くするほど三日月形が細くなり、同じ傾き角で入射の方位を変えた場合は、形状は同じでも三日月の向きが連続的に変化することが分かる。白い紙の上で投影光が円形を示した場合のその円の中心と、その際の光学フィルムへの入射点とを結んだ直線が散乱中心軸であり、この場合はこれが法線と一致していることになる。
【0008】
一方、タイプBの柱状構造の延在方向が法線方向から傾いている場合は、散乱中心軸は法線方向とは一致しない。このような傾いた柱状構造は、感光性組成物層に対して斜めからUV光を照射することで形成されるが、UV光の入射方向と、感光性組成物層中を通過するUV光の方向に平行に形成される柱状構造の延在方向とは、スネルの法則により必ずしも一致しない。又、UV光照射時の感光性組成物層の温度条件によっては、柱状構造の延在方向に乱れが発生する場合もあるが、このような場合も、散乱中心軸は上述の図21の方法で求めることができる。例えば、図23のような拡散パターンが得られた場合、ほぼ円形状の投影光の中心とその際の光学フィルムへの入射点とを結んだ直線が散乱中心軸である。又、円形状の光が形成される領域が判別できない場合には、この散乱中心軸から離れた角度で入射した光が三日月状に拡散した場合、図24に示すように三日月形状を二分する直線の延長線上に散乱中心軸があるため、離れた2つの三日月形から散乱中心軸の位置を求めることができる。すなわち図24中の2直線の交点とその際の光学フィルムへの入射点とを結ぶ直線が散乱中心軸となる。
【0009】
尚、タイプAの板状構造の光学フィルムを同様に図21の方法で測定すると、図25や図26のようになる。図25は、板状構造がフィルムの法線を含む方向に形成された場合を示す。ここでは拡散光はX軸方向に長く伸びた楕円形がY軸上に並び、その他の入射角度ではほとんど拡がらずに点状となっている。ここでは、板状構造はX軸に対して垂直に立ち、Y軸方向に伸びている。図26は、板状構造がフィルムの法線方向から傾いて形成された場合を示す。ここでも長く伸びた楕円形の拡がりが見えるが、その楕円形は法線からX軸方向に傾いたY1軸上に沿って表れ、Y1上の角度が変わると楕円の伸びる方向が変化する。この場合、板状構造はY1軸と光学フィルムの入射点とを結ぶ方向に沿って延在している。
【0010】
板状構造を有するタイプAの光学フィルムは、例えば、覗き見防止の建材として実績があり、又、液晶パネルにおいて視野角拡大や視認性向上を目的として使用されることもある。一方、柱状構造を有するタイプBの光学フィルムも同様に液晶パネルの用途で使用することができ、更にプロジェクター用スクリーンへの適用も提案されている。液晶パネルに異方性拡散フィルムを使用する場合、用途により目標の視野角に相応しいタイプを選定することになる。しかし、実際にはタイプAではある方位角方向だけの視野角拡大で、それと直交する方位角方向には殆ど視野角は拡がらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2547417号公報
【特許文献2】特開平2007−114756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
タイプAの場合は、光の入射角度を変えた場合の拡散性の変化が極めて急峻であるため、これがパネルに適用した場合視認性の急激な変化となって現れ、不自然な感じを抱かせることがあった。一方タイプBでは、全方位にほぼ等しく視野角が拡がるものの、ある一部の方向(例えば水平方向)にもっと視野角を拡げたいという要求には応えられないし、拡散角度を拡げようとすると正面輝度が低下することになる。これらの問題を改善するために、他の拡散フィルムと組み合わせて使用することも提案されてはいたが、コストの要求や製造プロセスの簡略化から、一つでこれらの光学フィルムの中間の光学特性を有するものが求められていた。そこで、本発明は、以上の従来技術を踏まえて、前記タイプA及びタイプBの性質を併せ持つ光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明(1)は、屈折率の高低からなる微細な構造が内部に存在し、透過する入射光の直線透過率が入射角によって異なる光学フィルムであって、
散乱中心軸より入射された円形光が、前記光学フィルムと平行な平面に対して楕円形に投影される性質を有し、
散乱中心軸より入射した光の散乱特性は、
前記楕円形の長軸方向と平行な方向である光学フィルム平面上のX軸と前記散乱中心軸とが形成する平面内における出射角度と該出射角度における拡散透過率との関係Tx、及び、
前記X軸に垂直な光学フィルム平面上のY軸と前記散乱中心軸とが形成する平面における出射角度と該出射角度における拡散透過率との関係Tyが、
前記関係Txにおける、拡散透過率のピークの最大値から10分の1の値におけるピーク幅Fmax1/10xと、前記関係Tyにおける、拡散透過率のピークの最大値から10分の1の値におけるピーク幅Fmax1/10yとが、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする光学フィルムである。
1.5 < Fmax1/10x/Fmax1/10y < 4.5 ・・・(1)
【0014】
本発明(2)は、前記X軸と前記散乱中心軸とが形成する平面内における、光の入射角度と直線透過率の関係が、
直線透過率の極大値FA(%)及び当該極大値をとる角度A(°)と、直線透過率の極小値FB(%)及び当該極小値をとる角度B(°)とが、以下の式(2)の関係を満たすことを特徴とする、前記発明(1)の光学フィルムである。
0.70 < (FA−FB)/|A−B| < 2.0 ・・・(2)
【0015】
本発明(3)は、前記光学フィルムのX軸と散乱中心軸とが形成する平面に平行な断面及び前記光学フィルムのY軸と散乱中心軸とが形成する平面に平行な断面に前記微細な構造が現れることを特徴とする、前記発明(1)又は(2)の光学フィルムである。
【0016】
本発明(4)は、前記光学フィルムのX軸−散乱中心軸平面に平行な断面における前記微細な構造の密度が、Y軸−散乱中心軸平面に平行な断面における前記微細な構造の密度よりも高いことを特徴とする、前記発明(3)の光学フィルムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明(1)によって、内部に屈折率の高低からなる微細な構造を有することから、本発明の光学フィルムは透過する入射光の直線透過率が入射角によって異ならしめることができる。更に、散乱中心軸より入射された円形光が、光学フィルムと平行な平面に対して楕円形に投影される。楕円の長軸方向に光を強く拡散し、長軸と直交する短軸方向に光を弱く拡散する効果を与える。更には、前記タイプAの板状構造と前記タイプBの柱状構造の両方の特性を併せ持ち、従来異なる2層以上の異方性換算フィルムを用いなくてはなし得なかった特性を与える。具体的には、必要な方向に優先的な光拡散を行うことで光の利用効率を実質的に上げることが可能となる。
【0018】
本発明(2)によって、光の入射角度を変えた場合の拡散性の変化がこれまで知られているタイプAと比べてなだらかであるため、これをパネルに適用した場合視認性の急激な変化が見られず、より自然な印象を観察者に与えることができる。
【0019】
本発明(3)によって、散乱中心軸より入射された円形光が光学フィルムと平行な平面に対して楕円形であり、且つ、X軸と散乱中心軸が形成する平面及びY軸と散乱中心軸が形成する平面上に微細な構造が形成されているため、X軸方向への散乱と、Y軸方向への散乱とを同時に行なうことができると共にX軸方向への拡散の程度とY軸方向への拡散の程度が異なる性質を持たせることができる。
【0020】
本発明(4)によって、微細構造の密度がX軸方向、Y軸方向によって異なるので、光を当てる方向によって光の拡散を異ならしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の光学フィルムが有する光学プロファイルの概念図を表す。
【図2】本発明の光学フィルムが有する光学プロファイルの概念図を表す。
【図3】本発明の光学フィルムが有する性質の概念図を表す。
【図4】本発明の光学フィルムの散乱中心軸の求め方を表す。
【図5】本発明の光学フィルムの散乱中心軸の求め方を表す。
【図6】ゴニオ・オフセット測定実験の模式図を表す。
【図7】本発明の光学フィルムが有する異方拡散性を表す。
【図8】フィルム面の法線方向にUV光線を照射して製造した本発明の光学フィルムの断面写真を表す。
【図9】フィルム面の法線方向から10°傾けた方向からUV光線を照射して製造した本発明の光学フィルムの断面写真を表す。
【図10】フィルム面の法線方向から45°傾けた方向からUV光線を照射して製造した本発明の光学フィルムの断面写真を表す。
【図11】本発明の光学フィルムの製造の一態様の模式図を表す。
【図12】本発明の光学フィルムの製造の一態様の模式図を表す。
【図13】本発明の実施例及び比較例の光学フィルムに関する光学プロファイル(直線透過率)の測定結果を表す。
【図14】本発明の実施例及び比較例の光学フィルムに関する異方性拡散性(拡散透過率)の測定結果を表す。
【図15】従来技術のタイプAの(板状構造を有する)光学フィルムの模式図を表す。
【図16】光学プロファイルの測定方法を示す。
【図17】従来技術のタイプAの光学フィルムの光学プロファイルを表す。
【図18】従来技術のタイプBの(柱状構造を有する)光学フィルムの模式図を表す。
【図19】従来技術のタイプBの光学フィルムの光学プロファイルを表す。
【図20】従来技術のタイプBの光学フィルムの断面の模式図を表す。
【図21】散乱中心軸を検出するための方法を表す。
【図22】従来技術のタイプBの光学フィルムの拡散の様子を表す(法線方向からUV照射した場合)。
【図23】従来技術のタイプBの光学フィルムの拡散の様子を表す(斜め方向からUV照射した場合)。
【図24】散乱中心軸を検出するための方法を表す。
【図25】従来技術のタイプAの光学フィルムの拡散の様子を表す(法線方向からUV照射した場合)。
【図26】従来技術のタイプAの光学フィルムの拡散の様子を表す(斜め方向からUV照射した場合)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここで、本特許請求の範囲及び本明細書における各用語の定義を説明する。
【0023】
「屈折率の高低からなる微細な構造」とは、光学フィルムを構成する材料の局所的な屈折率の高低差により形成される構造を意味する。例えば、図8は実施例3にかかる光学フィルムである。図8に示すように、当該微細な構造は断面において光学的に観測される模様をなす構造である。これらの構造は、光学フィルムを形成する材料が硬化する際に形成され、例えば、密度の高低の差が出来ることによって形成される構造であると推測される。
【0024】
「散乱中心軸」とは、入射角を変化させた際に散乱特性がその入射角を境に略対象性を有する光の入射角と一致する方向を意味する。ここで、略対象性を有するとするのは、散乱中心軸がフィルム面の法線方向に対して傾きを有する場合には、後述する光学プロパテイ等が厳密には対象性を有しないためである。散乱中心軸は、後述するように光学フィルムを介した円形状の光の投影形状を入射角を変化させて観察することにより見出せる。以下、散乱中心軸について説明する。先に図21から図26を使って散乱中心軸の空間的な位置付けを説明したが、これによって得られた散乱中心軸の傾きの方位角方向が分かれば、それと法線とで形成される平面内で光学プロファイルを測定すれば、散乱中心軸の正確な傾き角を得ることが出来る。この光学プロファイルにおいては、散乱中心軸は、二つの極小値に挟まれた極大値を取る入射角度で表わすことが出来る。図1及び図2は、各種光学プロファイルおよび散乱中心軸を概念的に示した図である。まず図1は、フィルムの法線方向にUV光を照射して作製した光学フィルムであって、全体形状が左右略対称である光学プロファイル(W型)である。0度と一致する太い縦線がこの場合の散乱中心軸と一致する入射角である。図2は、フィルムの法線方向と異なる方向からUV光を照射して作製した光学フィルムであって、全体形状が左右対象でない光学プロファイル(W型)である。ここでも二つの極小値に挟まれた極大値Fcを通る太い縦線がこの場合の散乱中心軸と一致する入射角である。このように、いずれの場合も、散乱中心軸は、まず略対称となる大きな谷領域に着目した上で、当該谷領域の中心を特定することにより決定される。ここで、図1及び図2の場合、当該谷領域は、左右に極小値を含み、それら極小値間に極大値を含む。そして、この極大値の位置が散乱中心軸となる。なお、光学プロファイルが二つの極小値に挟まれた極大値を有するW型でなく、大きな谷領域に極大がほとんど見られないU型を示す場合は、両側の谷の傾斜面からほぼ等距離であって、谷底の平坦部分の中央付近を散乱中心軸と定義することが出来る。また、光学プロファイルがV型を示す場合は、その谷の中央の最も深いところを散乱中心軸と定義することが出来る。
【0025】
直線透過率は、光学フィルムに対して入射した光の直線透過性に関し、ある入射角から入射した際に、直線方向の透過光量と、入射した光の光量との比率であり、下記式で表される。
直線透過率(%)=(直線透過光量/入射光量)×100
【0026】
本発明は、屈折率の高低からなる微細な構造が内部に存在し、透過する入射光の直線透過率が入射角によって異なる光学フィルムである。すなわち、異方拡散性を有する光学フィルムである。本発明の光学フィルムは、前記タイプAの板状構造と前記タイプBの柱状構造が与える性質の中間のような性質を与える。以下、第一形態及び第二形態を用いて、本発明の内容について説明する。
【0027】
(第一形態)
第一形態においては、散乱中心軸が光学フィルムの法線方向と平行な場合を例にとり、本発明の内容を説明する。図3は、本発明に係る光学フィルムの光学特性を説明するための概念図である。図3において、1は本発明の光学フィルムであり、2は光学フィルムに平行な平面である。図3に示すように、本発明に係る光学フィルムは、散乱中心軸よりPの位置に入射された円形光が、前記光学フィルムと平行な平面2に対して楕円形に投影される性質を有する。ここで、円形光とは、垂直断面の形状が円形状となるものをいう。円形光としては、特に限定されないが、例えば、レーザーポインターなどのレーザーが挙げられる。
【0028】
平行平面2に投影された楕円形の光は、長軸A−A’と、短軸B−B’を有する。当該楕円形は、円形光がX軸方向に拡散されて透過することによって長軸A−A’方向に拡がり、円形光がY軸方向に拡散されることによって短軸B−B’方向に拡がり、投影された形である。すなわち、楕円形に投影されるということは、光学フィルムのX軸方向と、Y軸方向への拡散の程度が異なることを意味する。このように方向による拡散性の違いを有するのみならず、本発明においては、短軸B−B’の方向にも一定の光の拡散が観察できる。
【0029】
図4は、本形態の光学フィルムのように、散乱中心軸が法線方向にある場合の散乱特性を表す。すなわち、図4は、図3においてP点を透過する光であって、入射角を変化させた場合に、平面2に投影される光の形を示した図である。本発明の光学フィルムは、上記の板状構造と棒状構造の中間の光学特性を目指すものであるため、棒状構造のところで説明した散乱中心軸を有している。図4に示すように、中央の拡散形状は楕円形をしている。このように中央の拡散形状を形成する入射角が散乱中心軸と一致する。ただし、図25に示す楕円よりも丸みを帯びており、斜め入射光の拡散形状も図22の三日月形と図25の楕円形の中間の形状をしている。以上説明したように、製造上のUV光の照射方向が分からなくとも、レーザーポインターのような簡単な装置を使うだけで、光学フィルムの散乱中心軸を見出すことが出来る。尚、散乱中心軸を見出しにくい場合には、図24に示す方法を適用して、三日月形状を二分する直線の延長線上に散乱中心軸があるため、離れた2つの三日月形から散乱中心軸の位置を求めることができる。
【0030】
本発明においては、散乱中心軸より入射した光の散乱特性に特に顕著な特徴が現れる。
X軸方向の散乱特性を示す関係Txと、Y軸方向の散乱特性を示す関係Tyのピーク幅の関係が所定の関係を満たす。すなわち、前記関係Txにおける、拡散透過率のピークの最大値から10分の1の値におけるピーク幅Fmax1/10xと、前記関係Tyにおける、直線透過率のピークの最大値から10分の1の値におけるピーク幅Fmax1/10yとが、下記式(1)の関係を満たす。
1.5 < Fmax1/10x/Fmax1/10y < 4.5 ・・・(1)
【0031】
ピーク幅Fmax1/10は、光学フィルムの散乱特性を反映する。ピーク幅の比がこのような範囲になることによって、X軸方向と、Y軸方向における散乱特性の相違が適度に調整される。
【0032】
ここで、関係Txとは、光学フィルム平面上のX軸と前記散乱中心軸とが形成する平面内における出射角度と、該出射角度における拡散透過率との関係である。
一方、関係Tyとは、光学フィルム平面上のY軸と前記散乱中心軸とが形成する平面における出射角度と該出射角度における拡散透過率と関係である。
【0033】
特に、本発明においては、下記の特性を満足することがより好適である。
2.0 < Fmax1/10x/Fmax1/10y < 3.0
【0034】
本発明の光学フィルムの散乱特性について、ゴニオフォトメーターを用いて、図6に示す方法で評価する。本発明の光学フィルムに光を照射し、フィルムから出射される光の透過率を測定する。光源を中心にして受光器をX方向(紙面において上下方向)、Y方向(紙面の手前〜奥方向)に回転させて測定をおこなう。
【0035】
図7は、後記する実施例2の光学フィルムの散乱特性を表す。図7において、横軸を光学フィルムに対する検出器の角度とし、縦軸を下記で定義する透過率で表わしている。
拡散透過率=(検出器の検出光量/光学フィルムなしで光源の正面に検出器を配置した場合の検出光量)×100
【0036】
図7において、X軸と散乱中心軸とが形成する平面内における出射角度と当該出射角度における拡散透過率と関係Txを破線で示し(X軸方向)、Y軸と散乱中心軸とが形成する平面内における出射角度と当該出射角度における拡散透過率と関係TYを実線で示した(Y軸方向)。Fmax1/10xは、関係Txの拡散透過率のピークの最大値(X軸max)から10分の1の値(X軸max1/10)におけるピーク幅である。一方、Fmax1/10Yは、関係Tyの拡散透過率のピークの最大値(Y軸max)から10分の1の値(Y軸max1/10)におけるピーク幅である。
【0037】
更に、本発明の光学フィルムは、前記X軸と前記散乱中心軸とが形成する平面内における、光の入射角度と直線透過率(%)の関係が、直線透過率の極大値FA(%)及び当該極大値をとる角度A(°)と、直線透過率の極小値FB(%)及び当該極小値をとる角度B(°)とが、以下の式(2)の関係を満たすことが好適である。
0.70 < (FA−FB)/|A−B| < 2.0 ・・・(2)
【0038】
このような特性を満足することによって、直線透過率の角度依存性が緩やかになる。例えば、ディスプレイに使用された場合には、角度によって急激に画質が変化するといった問題が解決できる。
【0039】
特に、本発明においては、下記の特性を満足することがより好適である。
0.90 <(FA−FB)/|A−B|< 1.7
【0040】
ここで、角度A及びBは、光学フィルムの法線に対する角度を意味する。この関係について、図1に戻り、本発明の光学フィルムにおける、光の入射角度と直線透過率の関係(光学プロファイル)を詳細に説明する。本発明の光学フィルムの光学プロファイルは、散乱中心軸を中心として、左右略対称のカーブを形成する。当該カーブは、3つの極大値と、2つの極小値を有する。すなわち、入射角度を変化させて直線透過光を測定すると、二ヶ所にそれぞれ極小値FB1とFB2がある(尚、極小値FB1となる入射角度をB1、極小値FB2となる入射角度をB2とする。)。当該極小値に挟まれた位置に比較的小さな極大値Fcが存在する。当該極大値における入射角は、散乱中心軸と一致する。当該極大値Fcの両側に極小値FB1とFB2を挟んで極大値FA1と極大値FA2が存在する(尚、極大値FA1となる入射角度をA1、極大値FA2となる入射角度をA2とする。)。
【0041】
式(2)における関係は、それぞれ二種類ある極大値(FA1及びFA2)及び極小値(FB1及びFB2)において、下記(a)(b)のうち、値がより大きなものをFA及びA、FB及びBとする。
(a)(FA1−FB1)/|A1−B1|
(b)(FA2−FB2)/|A2−B2|
即ち、光学プロファイルにおいて極小値から極大値への傾きが大きい側を用いる。この条件下で、本発明の光学フィルムは、前記式(2)の関係を満たす。尚、光学プロファイルの測定方法は、前記背景技術及び図16に記載した通りである。
【0042】
図8は、本発明の光学フィルムの断面写真である。図8(A)は、X軸−散乱中心軸平面に平行な向きの断面写真であり、図8(B)は、Y軸−散乱中心軸平面に平行な向きの断面写真である。図8に示すように、X軸方向断面にはμm単位の屈折率の高低からなる微細な構造が、縦長の縞模様に現れる。一方、それと直交するY軸方向断面には、微細な構造と思われるものが現れるが、当該構造が確認されないこともある。この写真から明らかなように、本発明の光学フィルムのX軸−散乱中心軸平面に平行な断面における微細な構造の密度と、Y軸−散乱中心軸平面に平行な断面における前記微細な構造の密度とを比較すると、前者の方が後者よりも高い。即ち、本発明の光学フィルムは、ある一方向に微細な構造が密に存在することから光を強く拡散する一方で、それと直交する方向には微細な構造が疎に存在し、光を弱く拡散すると考えられる。
【0043】
(第二形態)
本発明に係る第二形態は、散乱中心軸が光学フィルムの法線方向とは一致しない傾きを有する光学フィルムである。散乱中心軸がY軸方向に傾いている場合の散乱特性を図5に示すが、当該図5は、図3においてP点を透過する光であって、入射角を変化させた場合に、平面2に投影される光の形を示した図である。これも図22と図25との中間の性質を示している。いずれも、入射角を変化させて光を入射させた場合の拡散形状は、円形から楕円形で対称性の高い形を示すものであり、当該中心の楕円形を有する散乱光となる入射角が散乱中心軸と一致する。
【0044】
第二形態においても、散乱中心軸が光学フィルムの法線方向とは異なるものの第一形態と同様の散乱特性及び光学プロファイルを示す。
【0045】
図9は、フィルム面の法線方向から10°傾けたUV光線を照射して作製した光学フィルムの断面写真である。この場合も、X軸方向(図9(A))には縞模様の屈折率の高低からなる微細な構造が形成されているが、それと直交するY軸方向(図9(B))にはほとんど微細構造が確認されない。
【0046】
図10は、フィルム面の法線方向から45°傾けたUV光線を照射して作製した光学フィルムの断面写真である。この場合も、X軸方向(図10(B))には色濃く縞模様の屈折率の高低からなる微細な構造が形成されているが、それと直交するY軸方向(図10(A))には微細構造が確認できるもののX軸方向と比較して薄い縞模様となる。
【0047】
光学フィルムの製造方法
本発明の光学フィルムは、特定の光硬化樹脂層に特殊な条件でUV照射を行なうことにより作製することが出来る。以下、まず光学フィルムの原料を説明し、次いで製造プロセスを説明する。
【0048】
光学フィルムの原料(光硬化性化合物)
本発明の光学フィルムを形成する材料である光硬化性化合物は、ラジカル重合性又はカチオン重合性の官能基を有するポリマー、オリゴマー、モノマーから選択される光重合性化合物と光開始剤とから構成され、紫外線及び/又は可視光線を照射することにより重合・固化する材料である。
【0049】
ラジカル重合性化合物は、主に分子中に1個以上の不飽和二重結合を含有するもので、具体的にはエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコーンアクリレート等の名称で呼ばれるアクリルオリゴマーと、2−エチルヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソノルボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシフタル酸、ジシクロペンテニルアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変成トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のアクリレートモノマーが挙げられる。又、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。尚、同様にメタクリレートも使用可能であるが、一般にはメタクリレートよりもアクリレートの方が光重合速度が速いので好ましい。
【0050】
カチオン重合性化合物としては、分子中にエポキシ基やビニルエーテル基、オキセタン基を1個以上有する化合物が使用できる。エポキシ基を有する化合物としては、2−エチルヘキシルジグリコールグリシジルエーテル、ビフェニルのグリシジルエーテル、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類のジグリシジルエーテル類、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ブロム化フェノールノボラック、オルトクレゾールノボラック等のノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのEO付加物、ビスフェノールAのPO付加物等のアルキレングリコール類のジグリシジルエーテル類、ヘキサヒドロフタル酸のグリシジルエステルやダイマー酸のジグリシジルエステル等のグリシジルエステル類が挙げられる。
【0051】
更に、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジ(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、テトラ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ブタンテトラカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)−4,5−エポキシテトラヒドロフタレート等の脂環式エポキシ化合物も挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
ビニルエーテル基を有する化合物としては、例えばジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。尚ビニルエーテル化合物は、一般にはカチオン重合性であるが、アクリレートと組み合わせることによりラジカル重合も可能である。
【0053】
オキセタン基を有する化合物としては、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)−オキセタン等が使用できる。
【0054】
尚、以上のカチオン重合性化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。上記光重合性化合物は、上述に限定されるものではない。又、十分な屈折率差を生じさせるべく、上記光重合性化合物には、低屈折率化を図るために、フッ素原子(F)を導入しても良く、高屈折率化を図るために、硫黄原子(S)、臭素原子(Br)、各種金属原子を導入しても良い。又、特表2005−514487に開示されるように、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化錫(SnOx)等の高屈折率の金属酸化物からなる超微粒子の表面に、アクリル基やメタクリル基、エポキシ基等の光重合性官能基を導入した機能性超微粒子を上述の光重合性化合物に添加することも有効である。
【0055】
光学フィルムの原料(光開始剤)
ラジカル重合性化合物を重合させることのできる光開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)チタニウム、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。又、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0056】
カチオン重合性化合物の光開始剤は、光照射によって酸を発生し、この発生した酸により上述のカチオン重合性化合物を重合させることができる化合物であり、一般的には、オニウム塩、メタロセン錯体が好適に用いられる。オニウム塩としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩等が使用され、これらの対イオンには、BF4−、PF6−、AsF6−、SbF6−等のアニオンが用いられる。具体例としては、4−クロロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルセレニウムヘキサフルオロホスフェート、(η5−イソプロピルベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0057】
光学フィルムの原料(配合量、その他任意成分)
本発明において、上記光開始剤は、光重合性化合物100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜7重量部、より好ましくは0.1〜5重量部程度配合される。これは、0.01重量部未満では光硬化性が低下し、10重量部を超えて配合した場合には、表面だけが硬化して内部の硬化性が低下してしまう弊害、着色、柱状構造の形成の阻害を招くからである。これらの光開始剤は、通常粉体を光重合性化合物中に直接溶解して使用されるが、溶解性が悪い場合は光開始剤を予め極少量の溶剤に高濃度に溶解させたものを使用することもできる。このような溶剤としては光重合性であることが更に好ましく、具体的には炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。又、光重合性を向上させるために公知の各種染料や増感剤を添加することも可能である。更に光重合性化合物を加熱により硬化させることのできる熱硬化開始剤を光開始剤と共に併用することもできる。この場合、光硬化の後に加熱することにより光重合性化合物の重合硬化を更に促進し完全なものにすることが期待できる。
【0058】
本発明では、上記の光硬化性化合物を単独で、又は複数を混合した組成物を硬化させて、異方性拡散層を形成することができる。又、光硬化性化合物と光硬化性を有しない高分子樹脂の混合物を硬化させることによっても本発明の異方性拡散層を形成することができる。ここで使用できる高分子樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩ビ−酢ビ共重合体、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。これらの高分子樹脂と光硬化性化合物は、光硬化前は十分な相溶性を有していることが必要であるが、この相溶性を確保するために各種有機溶剤や可塑剤等を使用することも可能である。尚、光硬化性化合物としてアクリレートを使用する場合は、高分子樹脂としてはアクリル樹脂から選択することが相溶性の点で好ましい。
【0059】
[プロセス]
次に本発明の光学フィルムの製造方法(プロセス)について説明する。上述の光硬化性組成物を透明PETフィルムのような適当な基材上に塗工して塗工膜(光硬化樹脂層)を設ける。必要に応じて乾燥して溶剤を揮発させるが、その乾燥膜厚は10〜200μm、より好ましくは20〜100μm、更に好ましくは25〜50μmである。乾燥膜厚が10μm未満では、後述するUV照射プロセスを経て得られる光拡散性が乏しいため好ましくない。一方乾燥膜厚が200μmを越えるような場合、全体の拡散性が強すぎて本発明の特徴的な異方性が得られ難くなると共に、コストアップ、薄型化用途に不適合といったことからも好ましくない。更に、この塗工膜上には離型フィルムや後述するマスクをラミネートして感光性の積層体を作る。
【0060】
(光硬化性化合物を含む組成物を基体上にシート状に設ける手法)
ここで、光硬化性化合物を含む組成物を基体上にシート状に設ける手法としては、通常の塗工方式や印刷方式が適用される。具体的には、エアドクターコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、ダムコーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティングや、グラビア印刷等の凹版印刷、スクリーン印刷等の孔版印刷等の印刷等が使用できる。組成物が低粘度の場合は、基体の周囲に一定の高さの堰を設けて、この堰で囲まれた中に組成物をキャストすることもできる。
【0061】
(マスクの積層)
本発明の光学フィルムの特徴である微細構造を効率良く形成させるために、光硬化性組成物層の光照射側に密着して光の照射強度を局所的に変化させるマスクを積層することも可能である。マスクの材質としては、カーボン等の光吸収性のフィラーをポリマーマトリックス中に分散したもので、入射光の一部はカーボンに吸収されるが、開口部は光が十分に透過できるような構成のものが好ましい。又、通常の透明フィルムを光硬化性組成物層上に積層するだけでも、酸素障害を防ぎ柱状体の形成を促す上で有効である。
【0062】
(光源)
光硬化性化合物を含む組成物に光照射を行うための光源としては、通常はショートアークの紫外線発生光源が使用され、具体的には高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタハライドランプ、キセノンランプ等が使用可能である。光硬化性化合物を含む組成物に照射する光線は、該光硬化性化合物を硬化可能な波長を含んでいることが必要で、通常は水銀灯の365nmを中心とする波長の光が利用される。
【0063】
上記のショートアークのUV光線からの光から平行光線12を作るためには、例えば光源の背後に反射鏡を配置して、所定の方向に点光源として光が出射するようにし、更にその光をフレネルレンズにより平行光とすることができる。フレネルレンズとは、通常のレンズを同心円状の領域に分割し厚みを減らしたレンズであり、のこぎり状の断面を持つものである。点状光源から出射された光線がフレネルレンズを通ると、方向がばらばらであった光の向きが一方向に統一され、平行光線となるものである。但し、本発明の光学フィルムを作製する上で必要な平行なUV出射光を得るために、必ずしもフレネルレンズを必須とするものではなく、レーザーを含め色々な方法を使用することが出来る。
【0064】
(1)法線に沿ったUV光線の照射
本発明の光学フィルムを作製するためには、上述の感光性積層体に離型フィルム若しくはマスク側から法線方向より、UV光線を照射するのであるが、上述の平行光線だけでなくそれと共に一方向に拡散した拡散光線の両者を同時に照射することが重要である。このような光線を照射するため、例えば、レンチキュラーレンズを用いることができる。UV平行光線がレンチキュラーを介することによって、上記光線(平行光線と一方向に拡散した拡散光線)を形成することができる。この場合のレンチキュラーは、一方向に拡散した拡散光源のみの光線でもよい(平行光線が多少混合していてもよい)。又、レンチキュラーレンズに露光マスクを組み合わせることもできる。レンチキュラーレンズとは、複数の半円筒状又は円弧状の細長い凸部が並列に配置された凸部面を有し、この凸部面の反対側が平坦な面となっているレンズをいう(以下、便宜的に前記「半円筒状又は円弧状の細長い凸部」をカマボコ形状という)。
【0065】
ここで、レンチキュラーレンズを用いた例では、前記「平行光線と一方向に拡散した拡散光線の両者を同時に照射する」の意味するところは、カマボコ形状が並列したレンチキュラーの凸部を要とする扇状に拡がった光線(平面扇形に拡散)が、縦方向に平行に並んでいる状態(拡散平面としては平行)であると理解される。
【0066】
図11は、本発明の光学フィルムの製造方法の一態様を表す。横長の略半円柱の凸部14aが縦に並列したレンチキュラーレンズ14に平行に感光性積層体10(レンズに近い側から離型PET又はマスク18、光硬化樹脂層20及び透明PET22)を置き、レンチキュラーレンズ14に向けてUV平行光線12をレンチキュラー14の法線方向から照射し、光硬化したものである。UV光がレンチキュラーレンズ14を通過すると、レンチキュラーの凸部14aで光16がY方向に拡散し、感光性積層体10に照射される。レンチキュラーレンズを介すると、一方向(図11ではY方向、紙面の奥行き方向)には広い拡がりを持ち、それと直交する方向(図11ではX方向、紙面の縦方向)には狭い拡がりしか持たない異方性の光16が形成される。感光性積層体10は照射を受けると、光硬化され、光硬化樹脂層において内部構造を有する硬化樹脂層となる。
【0067】
(2)法線方向ではないUV光線の照射
別態様として、平行光線を法線方向とは異なる方向から傾けて感光性積層体に照射してもよい。その態様の一例を図12に示す。レンチキュラーレンズ14の法線方向より30°傾けた平行光線12(レンチキュラーレンズからは60°の角度を有する)をレンチキュラーレンズの凸面(カマボコ形状面)14aとは反対の方向から照射する。その場合、レンチキュラーレンズの凸面14aより、拡散光16が斜め方向に照射される。その結果拡散光16は、図に示されるように、感光性積層体の法線よりX軸に30°傾いた方向を中心にして、平面扇形に拡がって感光性積層体10の斜め方向から照射され、光硬化層20において光硬化が行われる。
【0068】
なお、レンチキュラーレンズを使用する上述のUV照射方法は、本発明の光学フィルムを作製するためのひとつの方法であり、本発明はこれに限定されるものではない。要は、光硬化性組成物層中に特定の内部構造を形成するために、平面扇形に拡がるようなUV光を感光性積層体に照射することが重要である。
【0069】
すなわち、光硬化樹脂層に対して平面扇形に広がりを持たせた光を照射する工程により、本発明に係る屈折率の高低からなる微細な構造が形成される。尚、照射する光は、当該感光性組成物を硬化させることのできる波長を有する。また、上記の照射する工程では、平行光線を平面扇形に拡散させた光を使用することが好適である。
【0070】
本発明の光学フィルムを作製する場合、上述のレンチキュラーレンズ等を通過して感光性積層体に照射されるUV光の照度としては、0.01〜100mW/cm2の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜20mW/cm2の範囲である。照度が0.01mW/cm2以下であると硬化に長時間を要するため、生産効率が悪くなり、100mW/cm2以上であると光硬化性化合物の硬化が速すぎて構造形成を生じず、目的の異方性拡散特性を発現できなくなるからである。
【0071】
UVの照射時間は特に限定されないが、10〜180秒間、より好ましくは30〜120秒間である。その後、離型フィルムを剥離することで、本発明の異方性拡散光学フィルムを得ることができる。
【0072】
本発明の光学フィルムは、上述の如く低照度UV光を比較的長時間照射することにより光硬化性組成物層中に特定の内部構造が形成されることで得られるものである。そのため、このようなUV照射だけでは未反応のモノマー成分が残存して、べたつきを生じたりしてハンドリング性や耐久性に問題がある場合がある。そのような場合は、1000mW/cm2以上の高照度のUV光を追加照射して残存モノマーを重合させることが出来る。この時のUV照射はマスク側の逆側から行なうのが好ましい。
【実施例】
【0073】
以下の方法に従って、本発明の光学フィルム及び比較例の光学フィルムを製造した。
実施例1 垂直照射
100μmの透明PETフィルム上に、特表2005−514487の実施例3に示されている処方の光硬化性組成物を塗工し、乾燥膜厚50μmの塗工膜を設け、更にこの塗工膜上に、38μmの離型PETフィルムを離型面が塗工膜に接するようにラミネートした。この積層体の離型PETフィルム側から法線に対して0°の方向から、5mW/cm2の平行UV光線(フレネルレンズを用いて形成)を、半径(r)=0.5mm、ピッチ(p)=0.5mmのレンチキュラーレンズ(積層体と平行になるように設置した)を介して、90秒間照射した。硬化後の積層体から離型PETフィルムを剥離することで、本発明の光学フィルム(透明PET/光硬化樹脂層)を得た(図11参照)。レンチキュラーレンズを介し照射されるUV光線は、X方向(紙面の縦方向)には殆ど散乱せず平行だが、Y方向(紙面の奥行き方向)には散乱した光線となった。
【0074】
実施例2 垂直照射
使用するレンチキュラーレンズを半径(r)=0.5mm、ピッチ(p)=0.7mmとする以外は実施例1と同様にして本発明の光学フィルム(透明PET/光硬化樹脂層)を得た。
【0075】
実施例3 垂直照射
離型PETフィルムの代わりに、PETフィルム上に平均粒径3μmのグラファイト粒子を分散したポリビニルアルコール樹脂水溶液を塗布乾燥して得られる光学濃度(OD)が0.50となる露光マスクを用い、レンチキュラーレンズを半径(r)=0.05mm、ピッチ(p)=0.1mmとする以外は実施例1と同様にして本発明の光学フィルム(透明PET/光硬化樹脂層)を得た。
【0076】
実施例4 斜め照射
照射する方向を積層体の法線方向から、X軸側に30°傾斜させる以外は実施例2と同様にして本発明の光学フィルム(透明PET/光硬化樹脂層)を得た(図12参照)。尚、レンチキュラーレンズと積層体は平行になるように設置し、レンチキュラーレンズを介し照射されるUV光線は、X方向に30°傾斜しながら平行で、Y方向には散乱した光線となった。
【0077】
比較例1
レンチキュラーレンズを使用しないこと以外は実施例1と同様にして比較とする光学フィルム(透明PET/光硬化樹脂層)を得た。レンチキュラーレンズを介さないため、完全な平行光線が照射され、タイプBの柱状の微細な構造を有する光学フィルムを得た。
【0078】
比較例2
市販のルミスティー(登録商標・住友化学)をタイプAの板状の微細な構造を有する光学フィルムとして使用した。
【0079】
評価1 光学プロファイルの比較(直線透過率)
入射角依存性について、図16に示すゴニオフォトメーター(ジェネシア製 GENESIA Gonio/Far Field Profiler)を用いる方法で評価した。図示しない光源と受光器3との間にサンプルを配置し、サンプル表面の直線Lを中心として角度を変化させながらサンプルを直線透過して受光器3に入る直線透過率を測定することにより得られる(尚、測定方法の詳細は、特開2005−265915号公報の段落番号0048に記載されている)。実施例1〜3並びに比較例1及び2についての結果を図13に示す。尚、実施例2の結果は実施例1と同じであったので、併記している。この結果によると、実施例1、2及び3の光学フィルムは、法線方向である0°付近で極大値を有し、極小値FBを±5〜10°の入射角Bでとり、そこから更に入射角を広げて、極大値FAを40〜50°付近の入射角Aでとる。測定により得られた光学プロファイルから、(FA−FB)/|A−B|を算出して、表1に示した。
【0080】
評価2 受光器を回転した場合の拡散透過性
拡散の異方性について、ゴニオフォトメーターを用いて、図6に示す方法で評価した。前記実施例及び比較例で製造した光学フィルムを用いて、光を照射し、フィルムから出射される光の透過率を測定した。測定にあたり、図6において、光学フィルムからの光の出射地点を中心にして受光器をX方向(紙面において上下方向)、Y方向(紙面の手前〜奥方向)に回転させた。結果を図14に示す。Fmax1/10x/Fmax1/10yを算出して、表1に示した。
【0081】
【表1】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射角に応じて透過光の拡散性が変化する異方拡散性光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
光拡散性を有する部材は、古くから照明器具や建材に使われていただけでなく、最近のディスプレイ、特にLCDにおいても広く利用されている。これら光拡散部材の光拡散発現機構としては、表面に形成された凹凸による散乱(表面散乱)、マトリックス樹脂とその中に分散されたフィラー間の屈折率差による散乱(内部散乱)、及び表面散乱と内部散乱の両方によるものが挙げられる。但し、これら光拡散部材は、一般にその拡散性能は等方的であり、入射角度を少々変化させても、その透過光の拡散特性が大きく異なることはなかった。
【0003】
(板状構造を有するタイプA)
一定の角度領域の入射光は強く拡散し、それ以外の角度の入射光は透過するという、光制御板が知られている(住友化学から「ルミスティー」の商品名で販売されている。例えば、特許文献1)。この光制御板は、シート状の感光性組成物層の上空から線状光源を用いて平行な光を照射して硬化せしめたものである。そして、シート状の基体内には、図15に示すように、光学フィルム50の作製時にその上空に配置した線状光源51の長さ方向に一致して、周辺領域と屈折率が異なる板状構造40が互いに平行に形成されていると考えられている(以下、便宜的にタイプAとする)。図16に示すように、図示しない光源と受光器3との間にサンプルを配置し、サンプル表面の直線Lを中心軸として角度を変化させながらサンプルを直進透過して受光器3に入る直線透過率を測定することができる。
【0004】
図17は、図16に示す方法を用いて測定した図15に示すタイプAの光学フィルム50が有する散乱特性の入射角依存性を示す。縦軸は散乱の程度を表す指標である直線透過率(所定の光量の平行光線を入射させたときに、入射方向と同じ方向に出射された平行光線の光量)を示し、横軸は入射角を示す。図17中の実線及び破線はそれぞれ、図15中のA−A軸(板状構造を突き抜ける)及びB−B軸(板状構造に平行)を中心に光学フィルム50を回転させた場合を示す。尚、入射角の正負は、光学フィルム50を回転させる方向が反対であることを示す。図17中の実線は、正面方向でも斜め方向でも直線透過率が小さいままであるが、これは、A−A軸を中心に回転させた場合には、光学フィルム50が入射角に無関係に散乱状態であることを意味する。また、図17中の破線は、0°近傍の方向で直線透過率が小さくなっているが、これはB−B軸を中心に回転させた場合にも、光学フィルムが正面方向の光に対して散乱状態であることを意味する。更に、入射角が大きい方向では直線透過率が増加しているが、これは、B−B軸を中心に回転させた場合には、光学フィルムが斜め方向の光に対して透過状態であることを意味する。この構造のおかげで、例えば、横方向には透過度が入射角によって異なるものの、縦方向には入射角を変えても透過度が変わらない、という特性を与えることができる。ここで、図17のように散乱特性の入射角依存性を示す曲線を以下、「光学プロファイル」と称する。光学プロファイルは、散乱特性を直接的に表現しているものではないが、直線透過率が低下することで逆に拡散透過率が増大していると解釈すれば、概ね拡散特性を示しているといえる。
【0005】
(柱状構造を有するタイプB)
一方、光拡散性に入射角依存性を有するものの、図18に示すように、フィルムの厚さ方向(フィルムの法線方向P)に延在する柱状構造62を有する光学フィルム60(以下、便宜的にタイプBとする)も提案されている(例えば、特許文献2)。この柱状構造は、感光性組成物層に平行なUV光を照射することで、感光性組成物層中にその光の進行方向に平行して形成されるものである。このタイプBの光学フィルムにおいて、入射角を変えた場合の直線透過率の変化を示す光学プロファイルを図19に示す。A−Aを回転中心軸とした場合と、B−Bを回転中心軸とした場合と、入射角を変えてその直線透過率を測定すると、いずれの場合であっても同様の光学プロファイルが得られる。即ち、図18の光学フィルムは、回転中心軸が変わっても、ほぼ同じ直線透過率を示し、法線方向(0°)で入射する場合の透過率と比較して、±5〜10°の入射角で一旦直線透過率が極小値になり、その入射角が大きくなるにつれて直線透過率が大きくなり、±45〜60°の入射角で直線透過率が極大値となる。
【0006】
これらのタイプA及びタイプBについてより詳細に説明すれば、内部に屈折率の高低からなる微細な構造が存在し、透過する入射光の直線透過率が入射角によって異なる光学フィルムの場合、その光学特性は内部構造のタイプとその構造物の傾きによって規定される。例えば、前記タイプAのように内部に屈折率の異なる微細な構造が板状構造に形成されている光学フィルムの場合は、その板状構造のフィルム法線に対する傾きにより光学特性が規定される。一方、前記タイプBのようにフィルムの厚さ(法線)方向に延在する柱状構造を有する光学フィルムの場合は、その柱状構造のフィルム法線に対する傾きにより光学特性が規定される。タイプAの光学フィルムの場合、板状構造にほぼ平行な方向からの入射光が強く拡散され、その板状構造を貫くように入射する光は殆ど拡散されずに透過するため、板状構造は光散乱面といえる。一方、タイプBの光学フィルムの場合、柱状構造は、平行なUV光を感光性組成物層に照射する際に、その光の進行方向に平行して形成されるものであり、感光性組成物層に対してその法線方向から平行UV光を照射すれば、柱状構造は法線方向に延在する。このような場合は、(UV光の照射方向=柱状構造の延在方向=法線方向)となり、図19に示されるように、あらゆる入射面内における光の入射角度と直線透過率との関係が法線を中心として対称形となっているため、この法線を散乱中心軸ということが出来る。以下にこの散乱中心軸について図を使って更に詳細に説明する。
【0007】
図20は、タイプBの光学フィルムの微細構造の断面模式図を表す。微細な柱状構造物がシートの法線方向に延在している。ここで、網点部分の領域と白の領域とが屈折率の高低を示す。この光学フィルムの光拡散性は、図21に示す方法で簡便に調べることができる。即ち、白い紙の上方に平行に一定の間隔を置いて光学フィルムを固定し、光学フィルムの特定の領域を入射点として上方からレーザーポインターのような強い平行光線を入射すると、透過光の拡散状態が白い紙の上に写し出される。ここで、法線方向からの入射光は、白い紙の上に円形の拡散光となって投影され、一方斜めからの入射光は、先程の円形拡散光とは離れた位置に三日月状の投影光となって表れる。入射光の傾きとその方位を変えた場合に白い紙に投影される拡散光の形状を図22に示すが、ここで入射光を法線方向から少しずつ傾けた場合、傾き角を深くするほど三日月形が細くなり、同じ傾き角で入射の方位を変えた場合は、形状は同じでも三日月の向きが連続的に変化することが分かる。白い紙の上で投影光が円形を示した場合のその円の中心と、その際の光学フィルムへの入射点とを結んだ直線が散乱中心軸であり、この場合はこれが法線と一致していることになる。
【0008】
一方、タイプBの柱状構造の延在方向が法線方向から傾いている場合は、散乱中心軸は法線方向とは一致しない。このような傾いた柱状構造は、感光性組成物層に対して斜めからUV光を照射することで形成されるが、UV光の入射方向と、感光性組成物層中を通過するUV光の方向に平行に形成される柱状構造の延在方向とは、スネルの法則により必ずしも一致しない。又、UV光照射時の感光性組成物層の温度条件によっては、柱状構造の延在方向に乱れが発生する場合もあるが、このような場合も、散乱中心軸は上述の図21の方法で求めることができる。例えば、図23のような拡散パターンが得られた場合、ほぼ円形状の投影光の中心とその際の光学フィルムへの入射点とを結んだ直線が散乱中心軸である。又、円形状の光が形成される領域が判別できない場合には、この散乱中心軸から離れた角度で入射した光が三日月状に拡散した場合、図24に示すように三日月形状を二分する直線の延長線上に散乱中心軸があるため、離れた2つの三日月形から散乱中心軸の位置を求めることができる。すなわち図24中の2直線の交点とその際の光学フィルムへの入射点とを結ぶ直線が散乱中心軸となる。
【0009】
尚、タイプAの板状構造の光学フィルムを同様に図21の方法で測定すると、図25や図26のようになる。図25は、板状構造がフィルムの法線を含む方向に形成された場合を示す。ここでは拡散光はX軸方向に長く伸びた楕円形がY軸上に並び、その他の入射角度ではほとんど拡がらずに点状となっている。ここでは、板状構造はX軸に対して垂直に立ち、Y軸方向に伸びている。図26は、板状構造がフィルムの法線方向から傾いて形成された場合を示す。ここでも長く伸びた楕円形の拡がりが見えるが、その楕円形は法線からX軸方向に傾いたY1軸上に沿って表れ、Y1上の角度が変わると楕円の伸びる方向が変化する。この場合、板状構造はY1軸と光学フィルムの入射点とを結ぶ方向に沿って延在している。
【0010】
板状構造を有するタイプAの光学フィルムは、例えば、覗き見防止の建材として実績があり、又、液晶パネルにおいて視野角拡大や視認性向上を目的として使用されることもある。一方、柱状構造を有するタイプBの光学フィルムも同様に液晶パネルの用途で使用することができ、更にプロジェクター用スクリーンへの適用も提案されている。液晶パネルに異方性拡散フィルムを使用する場合、用途により目標の視野角に相応しいタイプを選定することになる。しかし、実際にはタイプAではある方位角方向だけの視野角拡大で、それと直交する方位角方向には殆ど視野角は拡がらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2547417号公報
【特許文献2】特開平2007−114756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
タイプAの場合は、光の入射角度を変えた場合の拡散性の変化が極めて急峻であるため、これがパネルに適用した場合視認性の急激な変化となって現れ、不自然な感じを抱かせることがあった。一方タイプBでは、全方位にほぼ等しく視野角が拡がるものの、ある一部の方向(例えば水平方向)にもっと視野角を拡げたいという要求には応えられないし、拡散角度を拡げようとすると正面輝度が低下することになる。これらの問題を改善するために、他の拡散フィルムと組み合わせて使用することも提案されてはいたが、コストの要求や製造プロセスの簡略化から、一つでこれらの光学フィルムの中間の光学特性を有するものが求められていた。そこで、本発明は、以上の従来技術を踏まえて、前記タイプA及びタイプBの性質を併せ持つ光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明(1)は、屈折率の高低からなる微細な構造が内部に存在し、透過する入射光の直線透過率が入射角によって異なる光学フィルムであって、
散乱中心軸より入射された円形光が、前記光学フィルムと平行な平面に対して楕円形に投影される性質を有し、
散乱中心軸より入射した光の散乱特性は、
前記楕円形の長軸方向と平行な方向である光学フィルム平面上のX軸と前記散乱中心軸とが形成する平面内における出射角度と該出射角度における拡散透過率との関係Tx、及び、
前記X軸に垂直な光学フィルム平面上のY軸と前記散乱中心軸とが形成する平面における出射角度と該出射角度における拡散透過率との関係Tyが、
前記関係Txにおける、拡散透過率のピークの最大値から10分の1の値におけるピーク幅Fmax1/10xと、前記関係Tyにおける、拡散透過率のピークの最大値から10分の1の値におけるピーク幅Fmax1/10yとが、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする光学フィルムである。
1.5 < Fmax1/10x/Fmax1/10y < 4.5 ・・・(1)
【0014】
本発明(2)は、前記X軸と前記散乱中心軸とが形成する平面内における、光の入射角度と直線透過率の関係が、
直線透過率の極大値FA(%)及び当該極大値をとる角度A(°)と、直線透過率の極小値FB(%)及び当該極小値をとる角度B(°)とが、以下の式(2)の関係を満たすことを特徴とする、前記発明(1)の光学フィルムである。
0.70 < (FA−FB)/|A−B| < 2.0 ・・・(2)
【0015】
本発明(3)は、前記光学フィルムのX軸と散乱中心軸とが形成する平面に平行な断面及び前記光学フィルムのY軸と散乱中心軸とが形成する平面に平行な断面に前記微細な構造が現れることを特徴とする、前記発明(1)又は(2)の光学フィルムである。
【0016】
本発明(4)は、前記光学フィルムのX軸−散乱中心軸平面に平行な断面における前記微細な構造の密度が、Y軸−散乱中心軸平面に平行な断面における前記微細な構造の密度よりも高いことを特徴とする、前記発明(3)の光学フィルムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明(1)によって、内部に屈折率の高低からなる微細な構造を有することから、本発明の光学フィルムは透過する入射光の直線透過率が入射角によって異ならしめることができる。更に、散乱中心軸より入射された円形光が、光学フィルムと平行な平面に対して楕円形に投影される。楕円の長軸方向に光を強く拡散し、長軸と直交する短軸方向に光を弱く拡散する効果を与える。更には、前記タイプAの板状構造と前記タイプBの柱状構造の両方の特性を併せ持ち、従来異なる2層以上の異方性換算フィルムを用いなくてはなし得なかった特性を与える。具体的には、必要な方向に優先的な光拡散を行うことで光の利用効率を実質的に上げることが可能となる。
【0018】
本発明(2)によって、光の入射角度を変えた場合の拡散性の変化がこれまで知られているタイプAと比べてなだらかであるため、これをパネルに適用した場合視認性の急激な変化が見られず、より自然な印象を観察者に与えることができる。
【0019】
本発明(3)によって、散乱中心軸より入射された円形光が光学フィルムと平行な平面に対して楕円形であり、且つ、X軸と散乱中心軸が形成する平面及びY軸と散乱中心軸が形成する平面上に微細な構造が形成されているため、X軸方向への散乱と、Y軸方向への散乱とを同時に行なうことができると共にX軸方向への拡散の程度とY軸方向への拡散の程度が異なる性質を持たせることができる。
【0020】
本発明(4)によって、微細構造の密度がX軸方向、Y軸方向によって異なるので、光を当てる方向によって光の拡散を異ならしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の光学フィルムが有する光学プロファイルの概念図を表す。
【図2】本発明の光学フィルムが有する光学プロファイルの概念図を表す。
【図3】本発明の光学フィルムが有する性質の概念図を表す。
【図4】本発明の光学フィルムの散乱中心軸の求め方を表す。
【図5】本発明の光学フィルムの散乱中心軸の求め方を表す。
【図6】ゴニオ・オフセット測定実験の模式図を表す。
【図7】本発明の光学フィルムが有する異方拡散性を表す。
【図8】フィルム面の法線方向にUV光線を照射して製造した本発明の光学フィルムの断面写真を表す。
【図9】フィルム面の法線方向から10°傾けた方向からUV光線を照射して製造した本発明の光学フィルムの断面写真を表す。
【図10】フィルム面の法線方向から45°傾けた方向からUV光線を照射して製造した本発明の光学フィルムの断面写真を表す。
【図11】本発明の光学フィルムの製造の一態様の模式図を表す。
【図12】本発明の光学フィルムの製造の一態様の模式図を表す。
【図13】本発明の実施例及び比較例の光学フィルムに関する光学プロファイル(直線透過率)の測定結果を表す。
【図14】本発明の実施例及び比較例の光学フィルムに関する異方性拡散性(拡散透過率)の測定結果を表す。
【図15】従来技術のタイプAの(板状構造を有する)光学フィルムの模式図を表す。
【図16】光学プロファイルの測定方法を示す。
【図17】従来技術のタイプAの光学フィルムの光学プロファイルを表す。
【図18】従来技術のタイプBの(柱状構造を有する)光学フィルムの模式図を表す。
【図19】従来技術のタイプBの光学フィルムの光学プロファイルを表す。
【図20】従来技術のタイプBの光学フィルムの断面の模式図を表す。
【図21】散乱中心軸を検出するための方法を表す。
【図22】従来技術のタイプBの光学フィルムの拡散の様子を表す(法線方向からUV照射した場合)。
【図23】従来技術のタイプBの光学フィルムの拡散の様子を表す(斜め方向からUV照射した場合)。
【図24】散乱中心軸を検出するための方法を表す。
【図25】従来技術のタイプAの光学フィルムの拡散の様子を表す(法線方向からUV照射した場合)。
【図26】従来技術のタイプAの光学フィルムの拡散の様子を表す(斜め方向からUV照射した場合)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここで、本特許請求の範囲及び本明細書における各用語の定義を説明する。
【0023】
「屈折率の高低からなる微細な構造」とは、光学フィルムを構成する材料の局所的な屈折率の高低差により形成される構造を意味する。例えば、図8は実施例3にかかる光学フィルムである。図8に示すように、当該微細な構造は断面において光学的に観測される模様をなす構造である。これらの構造は、光学フィルムを形成する材料が硬化する際に形成され、例えば、密度の高低の差が出来ることによって形成される構造であると推測される。
【0024】
「散乱中心軸」とは、入射角を変化させた際に散乱特性がその入射角を境に略対象性を有する光の入射角と一致する方向を意味する。ここで、略対象性を有するとするのは、散乱中心軸がフィルム面の法線方向に対して傾きを有する場合には、後述する光学プロパテイ等が厳密には対象性を有しないためである。散乱中心軸は、後述するように光学フィルムを介した円形状の光の投影形状を入射角を変化させて観察することにより見出せる。以下、散乱中心軸について説明する。先に図21から図26を使って散乱中心軸の空間的な位置付けを説明したが、これによって得られた散乱中心軸の傾きの方位角方向が分かれば、それと法線とで形成される平面内で光学プロファイルを測定すれば、散乱中心軸の正確な傾き角を得ることが出来る。この光学プロファイルにおいては、散乱中心軸は、二つの極小値に挟まれた極大値を取る入射角度で表わすことが出来る。図1及び図2は、各種光学プロファイルおよび散乱中心軸を概念的に示した図である。まず図1は、フィルムの法線方向にUV光を照射して作製した光学フィルムであって、全体形状が左右略対称である光学プロファイル(W型)である。0度と一致する太い縦線がこの場合の散乱中心軸と一致する入射角である。図2は、フィルムの法線方向と異なる方向からUV光を照射して作製した光学フィルムであって、全体形状が左右対象でない光学プロファイル(W型)である。ここでも二つの極小値に挟まれた極大値Fcを通る太い縦線がこの場合の散乱中心軸と一致する入射角である。このように、いずれの場合も、散乱中心軸は、まず略対称となる大きな谷領域に着目した上で、当該谷領域の中心を特定することにより決定される。ここで、図1及び図2の場合、当該谷領域は、左右に極小値を含み、それら極小値間に極大値を含む。そして、この極大値の位置が散乱中心軸となる。なお、光学プロファイルが二つの極小値に挟まれた極大値を有するW型でなく、大きな谷領域に極大がほとんど見られないU型を示す場合は、両側の谷の傾斜面からほぼ等距離であって、谷底の平坦部分の中央付近を散乱中心軸と定義することが出来る。また、光学プロファイルがV型を示す場合は、その谷の中央の最も深いところを散乱中心軸と定義することが出来る。
【0025】
直線透過率は、光学フィルムに対して入射した光の直線透過性に関し、ある入射角から入射した際に、直線方向の透過光量と、入射した光の光量との比率であり、下記式で表される。
直線透過率(%)=(直線透過光量/入射光量)×100
【0026】
本発明は、屈折率の高低からなる微細な構造が内部に存在し、透過する入射光の直線透過率が入射角によって異なる光学フィルムである。すなわち、異方拡散性を有する光学フィルムである。本発明の光学フィルムは、前記タイプAの板状構造と前記タイプBの柱状構造が与える性質の中間のような性質を与える。以下、第一形態及び第二形態を用いて、本発明の内容について説明する。
【0027】
(第一形態)
第一形態においては、散乱中心軸が光学フィルムの法線方向と平行な場合を例にとり、本発明の内容を説明する。図3は、本発明に係る光学フィルムの光学特性を説明するための概念図である。図3において、1は本発明の光学フィルムであり、2は光学フィルムに平行な平面である。図3に示すように、本発明に係る光学フィルムは、散乱中心軸よりPの位置に入射された円形光が、前記光学フィルムと平行な平面2に対して楕円形に投影される性質を有する。ここで、円形光とは、垂直断面の形状が円形状となるものをいう。円形光としては、特に限定されないが、例えば、レーザーポインターなどのレーザーが挙げられる。
【0028】
平行平面2に投影された楕円形の光は、長軸A−A’と、短軸B−B’を有する。当該楕円形は、円形光がX軸方向に拡散されて透過することによって長軸A−A’方向に拡がり、円形光がY軸方向に拡散されることによって短軸B−B’方向に拡がり、投影された形である。すなわち、楕円形に投影されるということは、光学フィルムのX軸方向と、Y軸方向への拡散の程度が異なることを意味する。このように方向による拡散性の違いを有するのみならず、本発明においては、短軸B−B’の方向にも一定の光の拡散が観察できる。
【0029】
図4は、本形態の光学フィルムのように、散乱中心軸が法線方向にある場合の散乱特性を表す。すなわち、図4は、図3においてP点を透過する光であって、入射角を変化させた場合に、平面2に投影される光の形を示した図である。本発明の光学フィルムは、上記の板状構造と棒状構造の中間の光学特性を目指すものであるため、棒状構造のところで説明した散乱中心軸を有している。図4に示すように、中央の拡散形状は楕円形をしている。このように中央の拡散形状を形成する入射角が散乱中心軸と一致する。ただし、図25に示す楕円よりも丸みを帯びており、斜め入射光の拡散形状も図22の三日月形と図25の楕円形の中間の形状をしている。以上説明したように、製造上のUV光の照射方向が分からなくとも、レーザーポインターのような簡単な装置を使うだけで、光学フィルムの散乱中心軸を見出すことが出来る。尚、散乱中心軸を見出しにくい場合には、図24に示す方法を適用して、三日月形状を二分する直線の延長線上に散乱中心軸があるため、離れた2つの三日月形から散乱中心軸の位置を求めることができる。
【0030】
本発明においては、散乱中心軸より入射した光の散乱特性に特に顕著な特徴が現れる。
X軸方向の散乱特性を示す関係Txと、Y軸方向の散乱特性を示す関係Tyのピーク幅の関係が所定の関係を満たす。すなわち、前記関係Txにおける、拡散透過率のピークの最大値から10分の1の値におけるピーク幅Fmax1/10xと、前記関係Tyにおける、直線透過率のピークの最大値から10分の1の値におけるピーク幅Fmax1/10yとが、下記式(1)の関係を満たす。
1.5 < Fmax1/10x/Fmax1/10y < 4.5 ・・・(1)
【0031】
ピーク幅Fmax1/10は、光学フィルムの散乱特性を反映する。ピーク幅の比がこのような範囲になることによって、X軸方向と、Y軸方向における散乱特性の相違が適度に調整される。
【0032】
ここで、関係Txとは、光学フィルム平面上のX軸と前記散乱中心軸とが形成する平面内における出射角度と、該出射角度における拡散透過率との関係である。
一方、関係Tyとは、光学フィルム平面上のY軸と前記散乱中心軸とが形成する平面における出射角度と該出射角度における拡散透過率と関係である。
【0033】
特に、本発明においては、下記の特性を満足することがより好適である。
2.0 < Fmax1/10x/Fmax1/10y < 3.0
【0034】
本発明の光学フィルムの散乱特性について、ゴニオフォトメーターを用いて、図6に示す方法で評価する。本発明の光学フィルムに光を照射し、フィルムから出射される光の透過率を測定する。光源を中心にして受光器をX方向(紙面において上下方向)、Y方向(紙面の手前〜奥方向)に回転させて測定をおこなう。
【0035】
図7は、後記する実施例2の光学フィルムの散乱特性を表す。図7において、横軸を光学フィルムに対する検出器の角度とし、縦軸を下記で定義する透過率で表わしている。
拡散透過率=(検出器の検出光量/光学フィルムなしで光源の正面に検出器を配置した場合の検出光量)×100
【0036】
図7において、X軸と散乱中心軸とが形成する平面内における出射角度と当該出射角度における拡散透過率と関係Txを破線で示し(X軸方向)、Y軸と散乱中心軸とが形成する平面内における出射角度と当該出射角度における拡散透過率と関係TYを実線で示した(Y軸方向)。Fmax1/10xは、関係Txの拡散透過率のピークの最大値(X軸max)から10分の1の値(X軸max1/10)におけるピーク幅である。一方、Fmax1/10Yは、関係Tyの拡散透過率のピークの最大値(Y軸max)から10分の1の値(Y軸max1/10)におけるピーク幅である。
【0037】
更に、本発明の光学フィルムは、前記X軸と前記散乱中心軸とが形成する平面内における、光の入射角度と直線透過率(%)の関係が、直線透過率の極大値FA(%)及び当該極大値をとる角度A(°)と、直線透過率の極小値FB(%)及び当該極小値をとる角度B(°)とが、以下の式(2)の関係を満たすことが好適である。
0.70 < (FA−FB)/|A−B| < 2.0 ・・・(2)
【0038】
このような特性を満足することによって、直線透過率の角度依存性が緩やかになる。例えば、ディスプレイに使用された場合には、角度によって急激に画質が変化するといった問題が解決できる。
【0039】
特に、本発明においては、下記の特性を満足することがより好適である。
0.90 <(FA−FB)/|A−B|< 1.7
【0040】
ここで、角度A及びBは、光学フィルムの法線に対する角度を意味する。この関係について、図1に戻り、本発明の光学フィルムにおける、光の入射角度と直線透過率の関係(光学プロファイル)を詳細に説明する。本発明の光学フィルムの光学プロファイルは、散乱中心軸を中心として、左右略対称のカーブを形成する。当該カーブは、3つの極大値と、2つの極小値を有する。すなわち、入射角度を変化させて直線透過光を測定すると、二ヶ所にそれぞれ極小値FB1とFB2がある(尚、極小値FB1となる入射角度をB1、極小値FB2となる入射角度をB2とする。)。当該極小値に挟まれた位置に比較的小さな極大値Fcが存在する。当該極大値における入射角は、散乱中心軸と一致する。当該極大値Fcの両側に極小値FB1とFB2を挟んで極大値FA1と極大値FA2が存在する(尚、極大値FA1となる入射角度をA1、極大値FA2となる入射角度をA2とする。)。
【0041】
式(2)における関係は、それぞれ二種類ある極大値(FA1及びFA2)及び極小値(FB1及びFB2)において、下記(a)(b)のうち、値がより大きなものをFA及びA、FB及びBとする。
(a)(FA1−FB1)/|A1−B1|
(b)(FA2−FB2)/|A2−B2|
即ち、光学プロファイルにおいて極小値から極大値への傾きが大きい側を用いる。この条件下で、本発明の光学フィルムは、前記式(2)の関係を満たす。尚、光学プロファイルの測定方法は、前記背景技術及び図16に記載した通りである。
【0042】
図8は、本発明の光学フィルムの断面写真である。図8(A)は、X軸−散乱中心軸平面に平行な向きの断面写真であり、図8(B)は、Y軸−散乱中心軸平面に平行な向きの断面写真である。図8に示すように、X軸方向断面にはμm単位の屈折率の高低からなる微細な構造が、縦長の縞模様に現れる。一方、それと直交するY軸方向断面には、微細な構造と思われるものが現れるが、当該構造が確認されないこともある。この写真から明らかなように、本発明の光学フィルムのX軸−散乱中心軸平面に平行な断面における微細な構造の密度と、Y軸−散乱中心軸平面に平行な断面における前記微細な構造の密度とを比較すると、前者の方が後者よりも高い。即ち、本発明の光学フィルムは、ある一方向に微細な構造が密に存在することから光を強く拡散する一方で、それと直交する方向には微細な構造が疎に存在し、光を弱く拡散すると考えられる。
【0043】
(第二形態)
本発明に係る第二形態は、散乱中心軸が光学フィルムの法線方向とは一致しない傾きを有する光学フィルムである。散乱中心軸がY軸方向に傾いている場合の散乱特性を図5に示すが、当該図5は、図3においてP点を透過する光であって、入射角を変化させた場合に、平面2に投影される光の形を示した図である。これも図22と図25との中間の性質を示している。いずれも、入射角を変化させて光を入射させた場合の拡散形状は、円形から楕円形で対称性の高い形を示すものであり、当該中心の楕円形を有する散乱光となる入射角が散乱中心軸と一致する。
【0044】
第二形態においても、散乱中心軸が光学フィルムの法線方向とは異なるものの第一形態と同様の散乱特性及び光学プロファイルを示す。
【0045】
図9は、フィルム面の法線方向から10°傾けたUV光線を照射して作製した光学フィルムの断面写真である。この場合も、X軸方向(図9(A))には縞模様の屈折率の高低からなる微細な構造が形成されているが、それと直交するY軸方向(図9(B))にはほとんど微細構造が確認されない。
【0046】
図10は、フィルム面の法線方向から45°傾けたUV光線を照射して作製した光学フィルムの断面写真である。この場合も、X軸方向(図10(B))には色濃く縞模様の屈折率の高低からなる微細な構造が形成されているが、それと直交するY軸方向(図10(A))には微細構造が確認できるもののX軸方向と比較して薄い縞模様となる。
【0047】
光学フィルムの製造方法
本発明の光学フィルムは、特定の光硬化樹脂層に特殊な条件でUV照射を行なうことにより作製することが出来る。以下、まず光学フィルムの原料を説明し、次いで製造プロセスを説明する。
【0048】
光学フィルムの原料(光硬化性化合物)
本発明の光学フィルムを形成する材料である光硬化性化合物は、ラジカル重合性又はカチオン重合性の官能基を有するポリマー、オリゴマー、モノマーから選択される光重合性化合物と光開始剤とから構成され、紫外線及び/又は可視光線を照射することにより重合・固化する材料である。
【0049】
ラジカル重合性化合物は、主に分子中に1個以上の不飽和二重結合を含有するもので、具体的にはエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、シリコーンアクリレート等の名称で呼ばれるアクリルオリゴマーと、2−エチルヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、イソノルボルニルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシフタル酸、ジシクロペンテニルアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変成トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のアクリレートモノマーが挙げられる。又、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。尚、同様にメタクリレートも使用可能であるが、一般にはメタクリレートよりもアクリレートの方が光重合速度が速いので好ましい。
【0050】
カチオン重合性化合物としては、分子中にエポキシ基やビニルエーテル基、オキセタン基を1個以上有する化合物が使用できる。エポキシ基を有する化合物としては、2−エチルヘキシルジグリコールグリシジルエーテル、ビフェニルのグリシジルエーテル、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類のジグリシジルエーテル類、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ブロム化フェノールノボラック、オルトクレゾールノボラック等のノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのEO付加物、ビスフェノールAのPO付加物等のアルキレングリコール類のジグリシジルエーテル類、ヘキサヒドロフタル酸のグリシジルエステルやダイマー酸のジグリシジルエステル等のグリシジルエステル類が挙げられる。
【0051】
更に、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジ(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、テトラ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)ブタンテトラカルボキシレート、ジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)−4,5−エポキシテトラヒドロフタレート等の脂環式エポキシ化合物も挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
ビニルエーテル基を有する化合物としては、例えばジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。尚ビニルエーテル化合物は、一般にはカチオン重合性であるが、アクリレートと組み合わせることによりラジカル重合も可能である。
【0053】
オキセタン基を有する化合物としては、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3−エチル−3−(ヒドロキシメチル)−オキセタン等が使用できる。
【0054】
尚、以上のカチオン重合性化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。上記光重合性化合物は、上述に限定されるものではない。又、十分な屈折率差を生じさせるべく、上記光重合性化合物には、低屈折率化を図るために、フッ素原子(F)を導入しても良く、高屈折率化を図るために、硫黄原子(S)、臭素原子(Br)、各種金属原子を導入しても良い。又、特表2005−514487に開示されるように、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化錫(SnOx)等の高屈折率の金属酸化物からなる超微粒子の表面に、アクリル基やメタクリル基、エポキシ基等の光重合性官能基を導入した機能性超微粒子を上述の光重合性化合物に添加することも有効である。
【0055】
光学フィルムの原料(光開始剤)
ラジカル重合性化合物を重合させることのできる光開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)チタニウム、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。又、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0056】
カチオン重合性化合物の光開始剤は、光照射によって酸を発生し、この発生した酸により上述のカチオン重合性化合物を重合させることができる化合物であり、一般的には、オニウム塩、メタロセン錯体が好適に用いられる。オニウム塩としては、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、セレニウム塩等が使用され、これらの対イオンには、BF4−、PF6−、AsF6−、SbF6−等のアニオンが用いられる。具体例としては、4−クロロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルセレニウムヘキサフルオロホスフェート、(η5−イソプロピルベンゼン)(η5−シクロペンタジエニル)鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。又、これらの化合物は、各単体で用いてもよく、複数混合して用いてもよい。
【0057】
光学フィルムの原料(配合量、その他任意成分)
本発明において、上記光開始剤は、光重合性化合物100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜7重量部、より好ましくは0.1〜5重量部程度配合される。これは、0.01重量部未満では光硬化性が低下し、10重量部を超えて配合した場合には、表面だけが硬化して内部の硬化性が低下してしまう弊害、着色、柱状構造の形成の阻害を招くからである。これらの光開始剤は、通常粉体を光重合性化合物中に直接溶解して使用されるが、溶解性が悪い場合は光開始剤を予め極少量の溶剤に高濃度に溶解させたものを使用することもできる。このような溶剤としては光重合性であることが更に好ましく、具体的には炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。又、光重合性を向上させるために公知の各種染料や増感剤を添加することも可能である。更に光重合性化合物を加熱により硬化させることのできる熱硬化開始剤を光開始剤と共に併用することもできる。この場合、光硬化の後に加熱することにより光重合性化合物の重合硬化を更に促進し完全なものにすることが期待できる。
【0058】
本発明では、上記の光硬化性化合物を単独で、又は複数を混合した組成物を硬化させて、異方性拡散層を形成することができる。又、光硬化性化合物と光硬化性を有しない高分子樹脂の混合物を硬化させることによっても本発明の異方性拡散層を形成することができる。ここで使用できる高分子樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩ビ−酢ビ共重合体、ポリビニルブチラール樹脂等が挙げられる。これらの高分子樹脂と光硬化性化合物は、光硬化前は十分な相溶性を有していることが必要であるが、この相溶性を確保するために各種有機溶剤や可塑剤等を使用することも可能である。尚、光硬化性化合物としてアクリレートを使用する場合は、高分子樹脂としてはアクリル樹脂から選択することが相溶性の点で好ましい。
【0059】
[プロセス]
次に本発明の光学フィルムの製造方法(プロセス)について説明する。上述の光硬化性組成物を透明PETフィルムのような適当な基材上に塗工して塗工膜(光硬化樹脂層)を設ける。必要に応じて乾燥して溶剤を揮発させるが、その乾燥膜厚は10〜200μm、より好ましくは20〜100μm、更に好ましくは25〜50μmである。乾燥膜厚が10μm未満では、後述するUV照射プロセスを経て得られる光拡散性が乏しいため好ましくない。一方乾燥膜厚が200μmを越えるような場合、全体の拡散性が強すぎて本発明の特徴的な異方性が得られ難くなると共に、コストアップ、薄型化用途に不適合といったことからも好ましくない。更に、この塗工膜上には離型フィルムや後述するマスクをラミネートして感光性の積層体を作る。
【0060】
(光硬化性化合物を含む組成物を基体上にシート状に設ける手法)
ここで、光硬化性化合物を含む組成物を基体上にシート状に設ける手法としては、通常の塗工方式や印刷方式が適用される。具体的には、エアドクターコーティング、バーコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、ダムコーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティングや、グラビア印刷等の凹版印刷、スクリーン印刷等の孔版印刷等の印刷等が使用できる。組成物が低粘度の場合は、基体の周囲に一定の高さの堰を設けて、この堰で囲まれた中に組成物をキャストすることもできる。
【0061】
(マスクの積層)
本発明の光学フィルムの特徴である微細構造を効率良く形成させるために、光硬化性組成物層の光照射側に密着して光の照射強度を局所的に変化させるマスクを積層することも可能である。マスクの材質としては、カーボン等の光吸収性のフィラーをポリマーマトリックス中に分散したもので、入射光の一部はカーボンに吸収されるが、開口部は光が十分に透過できるような構成のものが好ましい。又、通常の透明フィルムを光硬化性組成物層上に積層するだけでも、酸素障害を防ぎ柱状体の形成を促す上で有効である。
【0062】
(光源)
光硬化性化合物を含む組成物に光照射を行うための光源としては、通常はショートアークの紫外線発生光源が使用され、具体的には高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタハライドランプ、キセノンランプ等が使用可能である。光硬化性化合物を含む組成物に照射する光線は、該光硬化性化合物を硬化可能な波長を含んでいることが必要で、通常は水銀灯の365nmを中心とする波長の光が利用される。
【0063】
上記のショートアークのUV光線からの光から平行光線12を作るためには、例えば光源の背後に反射鏡を配置して、所定の方向に点光源として光が出射するようにし、更にその光をフレネルレンズにより平行光とすることができる。フレネルレンズとは、通常のレンズを同心円状の領域に分割し厚みを減らしたレンズであり、のこぎり状の断面を持つものである。点状光源から出射された光線がフレネルレンズを通ると、方向がばらばらであった光の向きが一方向に統一され、平行光線となるものである。但し、本発明の光学フィルムを作製する上で必要な平行なUV出射光を得るために、必ずしもフレネルレンズを必須とするものではなく、レーザーを含め色々な方法を使用することが出来る。
【0064】
(1)法線に沿ったUV光線の照射
本発明の光学フィルムを作製するためには、上述の感光性積層体に離型フィルム若しくはマスク側から法線方向より、UV光線を照射するのであるが、上述の平行光線だけでなくそれと共に一方向に拡散した拡散光線の両者を同時に照射することが重要である。このような光線を照射するため、例えば、レンチキュラーレンズを用いることができる。UV平行光線がレンチキュラーを介することによって、上記光線(平行光線と一方向に拡散した拡散光線)を形成することができる。この場合のレンチキュラーは、一方向に拡散した拡散光源のみの光線でもよい(平行光線が多少混合していてもよい)。又、レンチキュラーレンズに露光マスクを組み合わせることもできる。レンチキュラーレンズとは、複数の半円筒状又は円弧状の細長い凸部が並列に配置された凸部面を有し、この凸部面の反対側が平坦な面となっているレンズをいう(以下、便宜的に前記「半円筒状又は円弧状の細長い凸部」をカマボコ形状という)。
【0065】
ここで、レンチキュラーレンズを用いた例では、前記「平行光線と一方向に拡散した拡散光線の両者を同時に照射する」の意味するところは、カマボコ形状が並列したレンチキュラーの凸部を要とする扇状に拡がった光線(平面扇形に拡散)が、縦方向に平行に並んでいる状態(拡散平面としては平行)であると理解される。
【0066】
図11は、本発明の光学フィルムの製造方法の一態様を表す。横長の略半円柱の凸部14aが縦に並列したレンチキュラーレンズ14に平行に感光性積層体10(レンズに近い側から離型PET又はマスク18、光硬化樹脂層20及び透明PET22)を置き、レンチキュラーレンズ14に向けてUV平行光線12をレンチキュラー14の法線方向から照射し、光硬化したものである。UV光がレンチキュラーレンズ14を通過すると、レンチキュラーの凸部14aで光16がY方向に拡散し、感光性積層体10に照射される。レンチキュラーレンズを介すると、一方向(図11ではY方向、紙面の奥行き方向)には広い拡がりを持ち、それと直交する方向(図11ではX方向、紙面の縦方向)には狭い拡がりしか持たない異方性の光16が形成される。感光性積層体10は照射を受けると、光硬化され、光硬化樹脂層において内部構造を有する硬化樹脂層となる。
【0067】
(2)法線方向ではないUV光線の照射
別態様として、平行光線を法線方向とは異なる方向から傾けて感光性積層体に照射してもよい。その態様の一例を図12に示す。レンチキュラーレンズ14の法線方向より30°傾けた平行光線12(レンチキュラーレンズからは60°の角度を有する)をレンチキュラーレンズの凸面(カマボコ形状面)14aとは反対の方向から照射する。その場合、レンチキュラーレンズの凸面14aより、拡散光16が斜め方向に照射される。その結果拡散光16は、図に示されるように、感光性積層体の法線よりX軸に30°傾いた方向を中心にして、平面扇形に拡がって感光性積層体10の斜め方向から照射され、光硬化層20において光硬化が行われる。
【0068】
なお、レンチキュラーレンズを使用する上述のUV照射方法は、本発明の光学フィルムを作製するためのひとつの方法であり、本発明はこれに限定されるものではない。要は、光硬化性組成物層中に特定の内部構造を形成するために、平面扇形に拡がるようなUV光を感光性積層体に照射することが重要である。
【0069】
すなわち、光硬化樹脂層に対して平面扇形に広がりを持たせた光を照射する工程により、本発明に係る屈折率の高低からなる微細な構造が形成される。尚、照射する光は、当該感光性組成物を硬化させることのできる波長を有する。また、上記の照射する工程では、平行光線を平面扇形に拡散させた光を使用することが好適である。
【0070】
本発明の光学フィルムを作製する場合、上述のレンチキュラーレンズ等を通過して感光性積層体に照射されるUV光の照度としては、0.01〜100mW/cm2の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜20mW/cm2の範囲である。照度が0.01mW/cm2以下であると硬化に長時間を要するため、生産効率が悪くなり、100mW/cm2以上であると光硬化性化合物の硬化が速すぎて構造形成を生じず、目的の異方性拡散特性を発現できなくなるからである。
【0071】
UVの照射時間は特に限定されないが、10〜180秒間、より好ましくは30〜120秒間である。その後、離型フィルムを剥離することで、本発明の異方性拡散光学フィルムを得ることができる。
【0072】
本発明の光学フィルムは、上述の如く低照度UV光を比較的長時間照射することにより光硬化性組成物層中に特定の内部構造が形成されることで得られるものである。そのため、このようなUV照射だけでは未反応のモノマー成分が残存して、べたつきを生じたりしてハンドリング性や耐久性に問題がある場合がある。そのような場合は、1000mW/cm2以上の高照度のUV光を追加照射して残存モノマーを重合させることが出来る。この時のUV照射はマスク側の逆側から行なうのが好ましい。
【実施例】
【0073】
以下の方法に従って、本発明の光学フィルム及び比較例の光学フィルムを製造した。
実施例1 垂直照射
100μmの透明PETフィルム上に、特表2005−514487の実施例3に示されている処方の光硬化性組成物を塗工し、乾燥膜厚50μmの塗工膜を設け、更にこの塗工膜上に、38μmの離型PETフィルムを離型面が塗工膜に接するようにラミネートした。この積層体の離型PETフィルム側から法線に対して0°の方向から、5mW/cm2の平行UV光線(フレネルレンズを用いて形成)を、半径(r)=0.5mm、ピッチ(p)=0.5mmのレンチキュラーレンズ(積層体と平行になるように設置した)を介して、90秒間照射した。硬化後の積層体から離型PETフィルムを剥離することで、本発明の光学フィルム(透明PET/光硬化樹脂層)を得た(図11参照)。レンチキュラーレンズを介し照射されるUV光線は、X方向(紙面の縦方向)には殆ど散乱せず平行だが、Y方向(紙面の奥行き方向)には散乱した光線となった。
【0074】
実施例2 垂直照射
使用するレンチキュラーレンズを半径(r)=0.5mm、ピッチ(p)=0.7mmとする以外は実施例1と同様にして本発明の光学フィルム(透明PET/光硬化樹脂層)を得た。
【0075】
実施例3 垂直照射
離型PETフィルムの代わりに、PETフィルム上に平均粒径3μmのグラファイト粒子を分散したポリビニルアルコール樹脂水溶液を塗布乾燥して得られる光学濃度(OD)が0.50となる露光マスクを用い、レンチキュラーレンズを半径(r)=0.05mm、ピッチ(p)=0.1mmとする以外は実施例1と同様にして本発明の光学フィルム(透明PET/光硬化樹脂層)を得た。
【0076】
実施例4 斜め照射
照射する方向を積層体の法線方向から、X軸側に30°傾斜させる以外は実施例2と同様にして本発明の光学フィルム(透明PET/光硬化樹脂層)を得た(図12参照)。尚、レンチキュラーレンズと積層体は平行になるように設置し、レンチキュラーレンズを介し照射されるUV光線は、X方向に30°傾斜しながら平行で、Y方向には散乱した光線となった。
【0077】
比較例1
レンチキュラーレンズを使用しないこと以外は実施例1と同様にして比較とする光学フィルム(透明PET/光硬化樹脂層)を得た。レンチキュラーレンズを介さないため、完全な平行光線が照射され、タイプBの柱状の微細な構造を有する光学フィルムを得た。
【0078】
比較例2
市販のルミスティー(登録商標・住友化学)をタイプAの板状の微細な構造を有する光学フィルムとして使用した。
【0079】
評価1 光学プロファイルの比較(直線透過率)
入射角依存性について、図16に示すゴニオフォトメーター(ジェネシア製 GENESIA Gonio/Far Field Profiler)を用いる方法で評価した。図示しない光源と受光器3との間にサンプルを配置し、サンプル表面の直線Lを中心として角度を変化させながらサンプルを直線透過して受光器3に入る直線透過率を測定することにより得られる(尚、測定方法の詳細は、特開2005−265915号公報の段落番号0048に記載されている)。実施例1〜3並びに比較例1及び2についての結果を図13に示す。尚、実施例2の結果は実施例1と同じであったので、併記している。この結果によると、実施例1、2及び3の光学フィルムは、法線方向である0°付近で極大値を有し、極小値FBを±5〜10°の入射角Bでとり、そこから更に入射角を広げて、極大値FAを40〜50°付近の入射角Aでとる。測定により得られた光学プロファイルから、(FA−FB)/|A−B|を算出して、表1に示した。
【0080】
評価2 受光器を回転した場合の拡散透過性
拡散の異方性について、ゴニオフォトメーターを用いて、図6に示す方法で評価した。前記実施例及び比較例で製造した光学フィルムを用いて、光を照射し、フィルムから出射される光の透過率を測定した。測定にあたり、図6において、光学フィルムからの光の出射地点を中心にして受光器をX方向(紙面において上下方向)、Y方向(紙面の手前〜奥方向)に回転させた。結果を図14に示す。Fmax1/10x/Fmax1/10yを算出して、表1に示した。
【0081】
【表1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率の高低からなる微細な構造が内部に存在し、透過する入射光の直線透過率が入射角によって異なる光学フィルムであって、
散乱中心軸より入射された円形光が、前記光学フィルムと平行な平面に対して楕円形に投影される性質を有し、
散乱中心軸より入射した光の散乱特性は、
前記楕円形の長軸方向と平行な方向である光学フィルム平面上のX軸と前記散乱中心軸とが形成する平面内における出射角度と該出射角度における拡散透過率との関係Tx、及び、
前記X軸に垂直な光学フィルム平面上のY軸と前記散乱中心軸とが形成する平面における出射角度と該出射角度における拡散透過率との関係Tyが、
前記関係Txにおける、拡散透過率のピークの最大値から10分の1の値におけるピーク幅Fmax1/10xと、前記関係Tyにおける、拡散透過率のピークの最大値から10分の1の値におけるピーク幅Fmax1/10yとが、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする光学フィルム。
1.5 < Fmax1/10x/Fmax1/10y < 4.5 ・・・(1)
【請求項2】
前記X軸と前記散乱中心軸とが形成する平面内における、光の入射角度と直線透過率の関係が、
直線透過率の極大値FA(%)及び当該極大値をとる角度A(°)と、直線透過率の極小値FB(%)及び当該極小値をとる角度B(°)とが、以下の式(2)の関係を満たすことを特徴とする、請求項1記載の光学フィルム。
0.70 < (FA−FB)/|A−B| < 2.0 ・・・(2)
【請求項3】
前記光学フィルムのX軸と散乱中心軸とが形成する平面に平行な断面及び前記光学フィルムのY軸と散乱中心軸とが形成する平面に平行な断面に前記微細な構造が現れることを特徴とする、請求項1又は2記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記光学フィルムのX軸−散乱中心軸平面に平行な断面における前記微細な構造の密度が、Y軸−散乱中心軸平面に平行な断面における前記微細な構造の密度よりも高いことを特徴とする、請求項3記載の光学フィルム。
【請求項1】
屈折率の高低からなる微細な構造が内部に存在し、透過する入射光の直線透過率が入射角によって異なる光学フィルムであって、
散乱中心軸より入射された円形光が、前記光学フィルムと平行な平面に対して楕円形に投影される性質を有し、
散乱中心軸より入射した光の散乱特性は、
前記楕円形の長軸方向と平行な方向である光学フィルム平面上のX軸と前記散乱中心軸とが形成する平面内における出射角度と該出射角度における拡散透過率との関係Tx、及び、
前記X軸に垂直な光学フィルム平面上のY軸と前記散乱中心軸とが形成する平面における出射角度と該出射角度における拡散透過率との関係Tyが、
前記関係Txにおける、拡散透過率のピークの最大値から10分の1の値におけるピーク幅Fmax1/10xと、前記関係Tyにおける、拡散透過率のピークの最大値から10分の1の値におけるピーク幅Fmax1/10yとが、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする光学フィルム。
1.5 < Fmax1/10x/Fmax1/10y < 4.5 ・・・(1)
【請求項2】
前記X軸と前記散乱中心軸とが形成する平面内における、光の入射角度と直線透過率の関係が、
直線透過率の極大値FA(%)及び当該極大値をとる角度A(°)と、直線透過率の極小値FB(%)及び当該極小値をとる角度B(°)とが、以下の式(2)の関係を満たすことを特徴とする、請求項1記載の光学フィルム。
0.70 < (FA−FB)/|A−B| < 2.0 ・・・(2)
【請求項3】
前記光学フィルムのX軸と散乱中心軸とが形成する平面に平行な断面及び前記光学フィルムのY軸と散乱中心軸とが形成する平面に平行な断面に前記微細な構造が現れることを特徴とする、請求項1又は2記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記光学フィルムのX軸−散乱中心軸平面に平行な断面における前記微細な構造の密度が、Y軸−散乱中心軸平面に平行な断面における前記微細な構造の密度よりも高いことを特徴とする、請求項3記載の光学フィルム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−181377(P2012−181377A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44536(P2011−44536)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】
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