説明

光学プローブ及びそれを用いた分光測定装置

【課題】浸漬式の光学プローブの破損を迅速に検出する。
【解決手段】光学プローブ1は、液体試料に照射する光を伝播するための投光用光ファイバー3と、投光用光ファイバー3a端面に対向し、かつ、投光用光ファイバー端面3aとは間隔をもって配置されたレンズ5と、レンズ5とは間隔をもって配置され、かつ、投光用光ファイバー端面3aから照射されてレンズ5及び液体試料25を透過した光をレンズ5に反射させるための光反射材7と、レンズ5に対して投光用光ファイバー3と同じ側でレンズ5とは間隔をもって配置され、かつ、光反射材7で反射され、液体試料25及びレンズ5を透過した光を受光するための受光用光ファイバー9と、光ファイバー端面3a,9aとレンズ5との間の空間23を液体試料25とは隔離するための筒状部材13及びシーリング部材15と、空間23内への液体試料25の浸入を検知するための液漏検知センサー11と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学プローブ及びそれを用いた分光測定装置に関し、特に、浸漬式の光学プローブ及びそれを用いた分光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体試料の成分濃度を測定する方法として吸光度測定法がある。吸光度測定法は、液体試料に光を照射し、その光が液体試料を通過する際の測定対象物質による吸光度を測定することにより、その測定対象物質の濃度を定量的に分析できる。
液体試料の成分濃度を連続して監視する際に、光ファイバーを用いた浸漬式の光学プローブが用いられることがある(例えば特許文献1,2を参照)。
【0003】
図10は、従来の光学プローブを説明するための断面図である。
光学プローブ101は、照射用の光ファイバー103、受光用の光ファイバー105、キャピラリ107、ミラー109、レンズ111、補強材113、試料挿入セル115を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−23200号公報
【特許文献2】特開2009−250825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
浸漬式の光学プローブは一般に細い棒状であるから、光学プローブの先端部分が他の部材に接触すると、プローブの構造体が破損することがある。例えば図10に示した光学プローブ101で、キャピラリ107及び補強材113が破損して折れて、レンズ111、光ファイバー103,105が破損すれば、測定のための光が通過できず、故障状態になる。
【0006】
また、半導体の洗浄液槽に光学プローブを浸して洗浄液物性測定する例では、洗浄液は金属の汚染を非常に嫌い、ppb(parts per billion)レベル、ppt(parts per trillion)レベルで金属汚染のないように制御しなければならないため、光学プローブは石英で作製される。しかし、トラブル等で石英の破損が発生した場合に、洗浄液は光学プローブ内に入り込み、光学プローブ内の部品の構成部材の金属が、洗浄液内に漏れ出し、甚大なる被害が発生することがある。例えば図10に示した光学プローブ101で、キャピラリ107及び補強材113が破損すると、レンズ111、光ファイバー103,105に液体試料が接触して、レンズ111、光ファイバー103,105に含まれる金属が液体試料に溶け出す。
【0007】
本発明は、光学プローブの破損を迅速に検出することができる光学プローブ及びそれを用いた分光測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる光学プローブは、液体試料に照射される光を伝播するための投光用光ファイバーと、上記液体試料を通過した光を伝播するための受光用光ファイバーと、上記光ファイバーの一部分が配置される空間であって上記液体試料とは隔離される空間を形成するための構造体と、上記空間内への液体の浸入を検知するためのセンサーと、を備えている。
本発明の光学プローブにおいて、測定対象である液体試料が光学プローブ内に浸入できない空間が形成されている。その空間内に、投光用光ファイバーの一部分、受光用光ファイバーの一部分、及び液体を検知するセンサーが設置されている。光学プローブの破損により、上記空間に液体試料が入り込んだとき、上記センサーによって上記空間に入り込んだ液体試料を検知することにより、光学プローブの破損を検知する。
【0009】
本発明にかかる光学プローブ例は、液体試料に照射される光を伝搬するための投光用光ファイバーと、上記投光用光ファイバー端面から照射された光を集光又は平行光にする照射レンズと、上記照射レンズから上記液体試料に照射されて上記液体試料を通過した光を集光又は平行光にする受光レンズと、上記受光レンズから受光用光ファイバー端面に照射された光を伝搬するための受光用光ファイバーとを、上記液体試料とは隔離するための構造体、例えば筒状の構造体を備えている。その構造体内に空間が形成されており、その空間は光学プローブの破損のない状態では液体試料が浸入できない構造になっている。上記空間内に、投光用光ファイバーの一部分、受光用光ファイバーの一部分、及び上記空間内への上記液体試料の浸入を検知するためのセンサーが上記空間内に配置されている。そして、光学プローブが破損して上記空間内に液体試料が浸入すると、上記センサーは上記空間内に浸入した液体を検知する。光学プローブの使用者は、上記センサーによる液体の検知に基づいて、光学プローブ破損による、関係する分光測定装置の測定異常や、光学プローブが浸漬されていた液体の金属汚染や、光学プローブ構成部材による汚染が発生したことを検知する。例えば、その汚染された液体が半導体の洗浄液である場合に、光学プローブの使用者は、汚染された液体による半導体製造プロセス異常の被害を最小限に止めるようにすることができる。
【0010】
本発明の光学プローブにおいて、上記投光用光ファイバーと上記受光用光ファイバーは1本の光ファイバーによって構成されているようにしてもよい。ただし、上記投光用光ファイバーと上記受光用光ファイバーは別々の光ファイバーによって構成されていてもよい。
【0011】
また、上記空間内に上記光ファイバーの一端面が配置されており、上記構造体は上記液体試料と接触する部分に上記光が透過するレンズを備えているようにしてもよい。例えば上記構造体は、先端内部に上記レンズが配置される筒状部材と、上記筒状部材と上記レンズとの隙間を埋めるためのシーリング部材と、上記光ファイバーの一部分を上記筒状部材内に配置するための光ファイバー支持部材と、を備えている。上記筒状部材内に上記空間が形成される。上記空間内に光ファイバーの一端面が配置される。
【0012】
また、上記空間内に上記光ファイバーの一端面が配置されており、上記構造体は上記液体試料と接触する部分に上記光が透過する窓板を備え、上記空間内で上記光ファイバーの一端面と上記窓板との間に上記光が透過するレンズを備えているようにしてもよい。例えば上記構造体は、先端内部に上記窓板が配置される筒状部材と、上記筒状部材と上記窓板との隙間を埋めるためのシーリング部材と、上記光ファイバーの一部分を上記筒状部材内に配置するための光ファイバー支持部材と、上記レンズと、を備えている。上記筒状部材内に上記空間が形成される。上記空間内に光ファイバーの一端面が配置される。
ただし、構造体の構成は、これらに限定されるものではなく、光ファイバーの一部分が配置される空間を液体試料とは隔離できる構成であればどのような構成であってもよい。
【0013】
また、上記センサーは、上記空間内への液体の浸入を検知できるものであればどのようなものであってもよい。例えば、上記センサーは、一般に液漏検知センサーや液面計と呼ばれるものである。
【0014】
本発明の光学プローブにおいて、上記センサーとして、液漏検知センサーや液面計のように独立したセンサーが設置されてもよいが、上記空間内に上記光ファイバーの一端面が配置されている構成においては、上記センサーは、上記空間内での光路に液体が浸入したことに起因する、上記受光用光ファイバーの一端面とは反対側の端面から照射される光の強度変化に基づいて、上記空間内への液体の浸入を検知するものであってもよい。光学プローブの破損によって投光用光ファイバー端面や受光用光ファイバー端面、レンズ、窓板などに液体が接触することにより、受光用光ファイバーの一端面(上記空間内に配置された端面)とは反対側の端面から照射される光の強度は、光学プローブの破損がない状態と比較して大きく変化する。その光強度変化を検知することにより、上記空間内への液体の浸入を検知できる。すなわち、光学プローブ内に配置された投光用光ファイバーの一端面もしくは受光用光ファイバーの一端面又はその両方を上記センサーとして使用することも可能である。また、光学プローブの破損時には、液体試料は光ファイバー端面だけではなく、レンズや窓板の上記空間側の面にも付着するため、それらの面を通過する光の強度変化を検知することにより、上記空間内への液体の浸入を検知できる。
【0015】
本発明にかかる分光測定装置は、本発明の光学プローブと、上記投光用光ファイバーの一端面とは反対側の投光用光ファイバー第2端面に光を照射するための光源と、上記受光用光ファイバーの一端面とは反対側の受光用光ファイバー第2反面から照射される光を受光するための光検出部と、上記光検出部からの光強度信号に応じた液体試料成分濃度を算出するためのデータ処理部と、上記液漏検知センサーからの液漏検知信号に基づいて液漏警告を表示する表示部と、を備えている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光学プローブは、投光用光ファイバーの一端面と受光用光ファイバーの一端面が配置される空間であって液体試料とは隔離される空間内への液体の浸入を検知するためのセンサーを備えているようにした。
本発明の分光測定装置は、本発明の光学プローブと、液漏検知センサーからの液漏検知信号に基づいて液漏警告を表示する表示部を備えているようにした。
本発明の光学プローブ及び分光測定装置は、光学プローブの破損に起因する、上記空間への液体の侵入をセンサーによって検出することができるので、光学プローブの破損を迅速に検出することができる。
これにより、光学プローブの使用者への注意喚起を促し、光ファイバー端面とレンズとの間の空間への液体の浸入による誤測定や、液体試料への光学プローブ構成部品の混入や金属成分漏出などを最小限に留めて、甚大なる被害拡大を防ぐことができる。
また、光学プローブ内の投光用光ファイバーの一端面又は受光用光ファイバーの一端面をセンサーとして使用する場合は、光学プローブの構造が簡単になり、装置の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】光学プローブの実施例1のレンズ周辺を拡大して示す断面図である。
【図2】実施例1の全体の構成を示す断面図である。
【図3】分光測定装置の一実施例を概略的に示す図である。
【図4】光学プローブの実施例2のレンズ周辺を拡大して示す断面図である。
【図5】光学プローブが破損して光学プローブ内に液が浸入したときの受光素子の信号変化を示す図である。
【図6】タングステンランプが切れたときの受光素子の信号変化を示す図である。
【図7】光学プローブが液体試料から空気中に取り出されたときの信号変化を示す図である。
【図8】光学プローブの実施例3のレンズ周辺を拡大して示す断面図である。
【図9】分光測定装置の他の実施例を概略的に示す図である。
【図10】従来の光学プローブを説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(実施例1)
図1は、光学プローブの一実施例のレンズ周辺を拡大して示す断面図である。図2は、その一実施例の全体の構造を示す断面図である。
【0019】
光学プローブ1は、投光用光ファイバー3、レンズ5、測定光反射ミラー(光反射材)7、受光用光ファイバー9、液面計(センサー)11、筒状部材13、シーリング部材15、レンズ位置決め部材17、光ファイバー及び液面計支持部材19、ならびに、ミラー支持部材21によって構成されている。
【0020】
レンズ5は、例えば石英製の筒状部材13の先端内部に配置されている。レンズ5と筒状部材13との隙間は環状のシーリング部材15によって埋められている。シーリング部材15の材料は例えばフッ素樹脂ゴムである。レンズ5及びシーリング部材15は筒状部材13内に配置された環状のレンズ位置決め部材17によって位置決めされている。レンズ位置決め部材17の材料は例えばPTFE(Polytetrafluoroethylene)である。
筒状部材13内の空間23は、レンズ5及びシーリング部材15によって、筒状部材13周囲の雰囲気とは隔離されている。
【0021】
投光用光ファイバー3の一端、受光用光ファイバー9の一端及び液面計11の先端は、筒状部材13内の空間23に配置されており、筒状部材13内に配置されたPTFE製の、光ファイバー及び液面計支持部材19によって支持されている。
投光用光ファイバー端面3a及び受光用光ファイバー端面9aは、筒状部材13内でレンズ5に対向し、かつ、レンズ5とは間隔をもつ位置に配置されている。
液面計11の先端は、光ファイバー端面3a,9aとレンズ5との間の光路と交わらない位置に配置されている。液面計11の先端は、光ファイバー端面3a,9aよりも例えば3mm(ミリメートル)だけレンズ5側に配置されている。
【0022】
測定光反射ミラー7は、筒状部材13に取り付けられたミラー支持部材21によって支持されている。ミラー支持部材21の材料は例えば石英である。測定光反射ミラー7は、レンズ5に対向し、かつ、レンズ5とは間隔をもつ位置に配置されている。
【0023】
光学プローブ1の使用時には、光学プローブ1の先端部分が液体試料25に浸漬される。光学プローブ1の先端部分は、少なくともレンズ5が液体試料25に接触する深さまで液体試料25に浸漬される。
投光用光ファイバー端面3aから測定光が放射される。その測定光はレンズ5で平行光又は集光光にされ、液体試料25を介して測定光反射ミラー7に照射される。測定光反射ミラー7で反射された光は液体試料25を介してレンズ5に到達し、再度レンズ5にて集光され、受光用光ファイバー端面9aに集光される。
【0024】
光学プローブ1が破損して液体試料25が空間23内に浸入すると、浸入した液体試料は空間23内に配置された液面計11の先端に接触する。液面計11が空間23内への液体試料の浸入を検知することにより、光学プローブ1の破損を検知できる。
【0025】
ここでは、液面計11として、光で液の存在を検知する光電センサーHPF−D033(株式会社山武商会の製品)を使用した。ただし、液面計11は電気の導通状態を検知するセンサーでもよい。その場合は、2本の白金線を互いに間隔をもって設置し、その白金線間に電圧をかけておき、その白金線間に液に浸ると電流が流れ、それを検知することにより液の存在を検知できる。その他、超音波による液面の高さを検知する液面計でもよい。
【0026】
また、光ファイバー及び液面計支持部材19は、空間23と、光ファイバー及び液面計支持部材19に対して空間23とは反対側の筒状部材13内部空間とを連通するための貫通孔を備えているようにしてもよい。光学プローブ1が破損して当該反対側の筒状部材13内部空間へ液体試料25が侵入した場合、その浸入した液体試料は光ファイバー及び液面計支持部材19に設けられた貫通孔を介して空間23内へ浸入するので、空間23を形成している構成部分以外の光学プローブ1構成部分が破損した場合であっても、光学プローブ1の破損を検知できる。
【0027】
図3は、分光測定装置の一実施例を概略的に示す図である。
この分光測定装置は、実質的に光学プローブ1と、分光部27と、データ処理部29と、表示部31とで構成されている。
まず、分光部27の具体的な構成を説明する。
【0028】
分光部27には、光源であるタングステンランプ33と、凸レンズ35と、8個の干渉フィルタ37を備えた回転円板39と、凸レンズ41と、凸レンズ43と、受光素子(光検出部)45と、回転円板39を回転させるための駆動モータ47とが設けられている。タングステンランプ33から放射された光は、凸レンズ35によって集光され、干渉フィルタ37を通過する。干渉フィルタは所定の波長の光だけを通過させるバンドパスフィルタで、回転円板39に保持された干渉フィルタ37は、光を190〜2600nmの範囲内の所定の波長の光に分光する。
【0029】
干渉フィルタ37によって分光された光は、凸レンズ41によって集光され、投光用光ファイバー3の入射端面(投光用光ファイバー第2端面)3bに照射される。投光用光ファイバー3は光学プローブ1につながっている。光学プローブ1の構造及び光路は図1及び図2を参照して説明したとおりである。
【0030】
光学プローブ1の受光用光ファイバー9の出射端面(受光用光ファイバー第2端面)9bは分光部27内に配置されている。光学プローブ1で受光用光ファイバー端面9aに入射した光は、受光用光ファイバー端面9bから凸レンズ43に入射して、集光して、受光素子45に入射される。受光素子45は、入射された光を、その強度に対応する電流に変換する。
【0031】
回転円板39は、8枚の干渉フィルタ37を、円周方向に等角度間隔で保持し、駆動モータ47により所定の回転数、例えば1200rpm(Revolutions Per Minute)で回転駆動される。各干渉フィルタ37は、190〜2600nmの範囲内で、測定対象に応じた、互いに異なる所定の透過波長を有している。ここで、回転円板39が回転すると、各干渉フィルタ37が、凸レンズ35,41の光軸に順次挿入される。そして、タングステンランプ33から放射された光は、干渉フィルタ37によって分光された後、投光用光ファイバー3、光学プローブ1のレンズ5を介して、液体試料25に照射される。液体試料25を通過した光は、測定光反射ミラー7で反射され、再度液体試料25及びレンズ5を通過して集光され、受光用光ファイバー9に入り、凸レンズ43を通過して集光され、受光素子45に入射される。これにより、受光素子45から、各波長の光の吸光度に応じた電気信号が出力される。
【0032】
データ処理部29は、受光素子45からの光強度信号に応じた液体試料成分濃度を算出する。
また、光学プローブ1の液面計11は、データ処理部29に電気的に接続されている。データ処理部29は、液面計11からの液漏検知信号に基づいて表示部31に液漏警告を表示させる。表示部31は、例えばモニタ画面や警告表示ランプなどである。ここではデータ処理部29によって液漏警告を表示部31に表示させているが、液面計11からの液漏検知信号に基づいて表示部31に液漏警告を表示させる機構を別途設けてもよい。
【0033】
(実施例2)
図4は、光学プローブの実施例2のレンズ周辺を拡大して示す断面図である。図1及び図2と同じ機能を果たす部分には同じ符号を付す。
【0034】
光学プローブ49は、投光用光ファイバー3、投光用レンズ5a、測定光反射ミラー7、受光用レンズ5b、受光用光ファイバー9、筒状部材13、ミラー支持部材21、窓板51、シーリング部材53、レンズ位置決め部材55、光ファイバー支持部材57、窓板押さえ部材59を備えている。
【0035】
窓板51は、例えば石英製の筒状部材13の先端内部に配置されている。窓板51と筒状部材13との隙間は、例えばフッ素樹脂製Oリングからなるシーリング部材53で埋められている。窓板押さえ部材59は、窓板51を位置決めするとともに、窓板51をシーリング部材53側へ押さえている。
【0036】
投光用レンズ5aは投光用光ファイバー端面3aに対向する位置に配置されている。受光用レンズ5bは受光用光ファイバー端面9aに対向する位置に配置されている。レンズ5a,5bは、例えばPTFE製のレンズ位置決め部材55によって位置決めされている。光ファイバー端面3a,9aは、レンズ5a,5b、筒状部材13、レンズ位置決め部材55、及び光ファイバー支持部材57によって囲まれた空間23a内に配置されている。
【0037】
レンズ5a,5b、筒状部材13、窓板51、及びレンズ位置決め部材55によって囲まれた空間23bが形成されている。レンズ位置決め部材55には、空間23aと23bを連通するための貫通孔55aを備えている。
【0038】
光ファイバー3,9は、例えばPTFE製の光ファイバー支持部材57によって位置決めされている。光ファイバー支持部材57は、空間23aと、光ファイバー支持部材57に対して空間23aとは反対側の空間23cとを連通するための貫通孔57aを備えている。
測定光反射ミラー7は、筒状部材13に取り付けられたミラー支持部材21によって支持されている。ミラー支持部材21の材料は例えば石英である。
【0039】
光学プローブ49の使用時には、光学プローブ49の光ファイバー3,9は、図1及び図2を参照して説明した光学プローブ1の光ファイバー3,9と同様にして、図3を参照して説明した分光測定装置に接続される。光学プローブ49の先端部分は液体試料25に浸漬される。光学プローブ49の先端部分は、少なくとも窓板51が液体試料25に接触する深さまで液体試料25に浸漬される。
【0040】
投光用光ファイバー端面3aから測定光が放射される。その測定光は投光用レンズ5aで平行光又は集光光にされ、窓板51を通過して、液体試料25を介して測定光反射ミラー7に照射される。測定光反射ミラー7で反射された光は液体試料25を介して窓板51を通過した後、受光用レンズ5bに到達し、受光用レンズ5bによって受光用光ファイバー端面9aに集光される。
【0041】
光学プローブ49が破損して液体試料25が空間23a内や空間23b内、空間23c内に浸入すると、浸入した液体試料は、投光用光ファイバー端面3aや、受光用光ファイバー端面9a、投光用レンズ5a、受光用レンズ5b、窓板51の空間23b側の面などに接触する。光ファイバー支持部材57には貫通孔57aが設けられているので、空間23cに浸入した液体は、空間23aにも到達する。レンズ位置決め部材55には貫通孔55aが設けられているので、空間23b内に浸入した液体は空間23aにも浸入し、さらに空間23cにも浸入する。また、空間23aに浸入した液体は、貫通孔55aを介して空間23bに侵入する。
【0042】
投光用光ファイバー端面3aや、受光用光ファイバー端面9a、投光用レンズ5a、受光用レンズ5b、窓板51の空間23b側の面などに接触した液は、投光用光ファイバー端面3aから照射されて、受光用光ファイバー端面9aに入射されるまでの光路を遮る。すなわち、空間23a,23b内での光路に液体が浸入した状態になる。
【0043】
空間23a,23b内での光路に液体が浸入した状態は、図3を参照して説明した分光測定装置の受光素子45の出力変化、すなわち受光用光ファイバー端面9bから照射される光の強度変化を分析することによって検知できる。
【0044】
例えば、予め光学プローブ49の破損を模擬試験して、受光素子45の出力変化パターンをデータ処理部29内に設けられた記憶部に記憶させておく。分光測定装置による液体試料25の濃度測定と同時に、光学プローブ49の破損に伴う出力変化パターンを照らし合わせることを行ない、常に光学プローブ49の破損を監視する。
【0045】
図5は、光学プローブ49が破損して光学プローブ49内に液が浸入したときの受光素子45の信号変化を示す図である。図6は、タングステンランプ33が切れたときの受光素子45の信号変化を示す図である。図7は、光学プローブ49が液体試料25から空気中に取り出されたときの信号変化を示す図である。図5から図7は、互いに波長が異なる8波長について示している。図5から図7で、縦軸は光強度(任意単位)、横軸は時間を示す。
【0046】
光学プローブ49が破損して光学プローブ49内に液体が浸入したとき、図5に示すように、8つの各波長の強度は減少するが0にはならない。また、液体試料25の濃度変化に起因する光強度変化よりも10倍以上の突然の光強度変化が発生する。
【0047】
これに対し、タングステンランプ33が切れたとき、図6に示すように、8つの波長の強度は、それぞれほぼ0になる。
また、光学プローブ49が液体試料25から空気中に取り出されたとき、図7に示すように、液体試料25による光吸収がなくなるので、8つの波長の強度はそれぞれ増加する。
【0048】
したがって、受光用光ファイバー端面9bから照射される光の強度変化を監視して、図5に示したような特異的な変化を捉える、例えば液体試料25の濃度変化に起因する光強度変化よりも10倍以上の突然の光強度変化を検出することにより、光学プローブ49の破損を検知できる。
【0049】
次に、その出力変化パターン例を列記する。ここでは受光用光ファイバー端面9bから照射される光のうち8つの波長の光強度を用いて説明する。なお、少なくとも2つの波長を用いれば、光強度の変化パターンに基づいて光学プローブの破損を検知できる。
【0050】
(1)8つの各波長の光強度が、全て低下し、かつ全て0ではなく、その低下が液体試料の濃度変化より発生する光強度変化よりも大きい場合は、光学プローブ49の破損と判断する。なお、液体試料の濃度変化により発生する光強度変化は、データ処理部29に設けられた記憶部に記憶されている。
【0051】
(2)8つの各波長の光強度変化値を波長に従って並べた場合に、波長の短い光の方が、波長の長い光よりも光強度低下率が高いときは、光学プローブ49の破損と判断する。光ファイバー端面3a,9aや、レンズ5a,5b、窓板51で光が通過する箇所に、光学プローブ49の破損によって液体が細かな水滴として付着したとき、その水滴は散乱体になる。散乱はレイリー散乱に従い、波長の短い光の方が波長の長い光に比べて散乱率が高くなる。そのため、波長の短い光の方が、波長の長い光に比べて、光強度の低下率が高くなる。
【0052】
(3)8つの各波長のうち、いずれか複数の波長で光強度が低下していても、その他の波長の強度が変化していない場合は、光学プローブ49の破損とは判断しない。特定の波長のみの光強度の低下の原因は、電気系又は干渉フィルタ関連の光学系の損傷と想定される。
【0053】
(4)8つの各波長の光強度がほぼ0になった場合に、例えば1秒未満の時間で急に光強度が0になるのではなく、1秒以上の時間をかけて光強度が徐々に低下したときは、タングステンランプ33が切れたのではなく、光学プローブ49の破損と判断する。このような光強度変化パターンは、光学プローブ49の破損の度合いが激しく、光学プローブ49内で光路に大量の液体が入り込み、受光用光ファイバー端面9bにまったく光が届かなくなった場合に現れる。
【0054】
これらの光強度変化パターンをデータ処理部29に設けられた記憶部に記憶させておき、データ処理部29によって、これらの光強度変化パターンと、受光用光ファイバー端面9bから照射される光の強度変化パターンとを照らし合わせることにより、光学プローブ49の破損を検知できる。
【0055】
(実施例3)
図8は、光学プローブの実施例3のレンズ周辺を拡大して示す断面図である。図4と同じ機能を果たす部分には同じ符号を付す。
【0056】
光学プローブ61は、投光用光ファイバー及び受光用光ファイバーとして1本の光ファイバー63を備えている。投光用レンズ兼受光用レンズとして機能するレンズ5cが光ファイバー端面63aに対向してレンズ位置決め部材55によって位置決めされている。
【0057】
図9は、分光測定装置の他の実施例を概略的に示す図である。図3に示した分光測定装置と同じ部分には同じ符号を付す。
この実施例の分光測定装置は、図3に示した分光装置と比較して、ハーフミラー65、凸レンズ67,69及びミラー69を分光部27にさらに備えている。
【0058】
ハーフミラー65と凸レンズ67は、凸レンズ41と光ファイバー端面(光ファイバー第2端面)63bとの間の光路にその順に配置されている。凸レンズ67とミラー69は、ハーフミラー65と凸レンズ43との間の光路にその順に配置されている。ここで、凸レンズ67とミラー69が設けられずに、ハーフミラー65で反射された光が凸レンズ43によって受光素子45に集光される構成であってもよい。
【0059】
タングステンランプ33から放射された光は、凸レンズ35、干渉フィルタ37、凸レンズ41、ハーフミラー65、凸レンズ67を通過し、光ファイバー63の端面63bに入射され、光ファイバー端面63a、光学プローブ63のレンズ5c及び窓板51を介して、液体試料25に照射される(図8も参照)。液体試料25を通過した光は、測定光反射ミラー7で反射され、再度液体試料25及びレンズ5cを通過して集光され、光ファイバー63に入り、凸レンズ67を通過して集光され、ハーフミラー65で反射され、凸レンズ69で集光され、ミラー71で反射され、凸レンズ43で集光されて受光素子45に入射される。これにより、受光素子45から、各波長の光の吸光度に応じた電気信号が出力される。
【0060】
受光素子45の信号強度、すなわち光学プローブ61の光ファイバー端面63bから照射される光の強度変化を監視して、光学プローブ61の空間23a,23b,23cへの液体の浸入に起因する光強度変化を検出することにより、光学プローブ61の破損を検知できる。
【0061】
以上、本発明の実施例を説明したが、材料、形状、配置、寸法等は一例であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、上記実施例で、光ファイバーの一部分が配置される空間23,23a,23b,23cを形成するための構造体は、上記実施例の構成に限定されるものではなく、光ファイバーの一部分が配置される空間を液体試料とは隔離できる構成であればどのような構成であってもよい。
【0062】
また、図4に示した光学プローブ49及び図8に示した光学プローブ61は、液漏検知センサーや液面計、白金電極等の物理的なセンサーを備えていないが、空間23a,23b,23c内への液体の侵入を検知するための物理的なセンサーを備えているようにしてもよい。この場合、空間23a,23b,23cのうちの少なくとも1つの空間内に物理的なセンサーを配置する。
【0063】
また、図1及び図2に示した光学プローブ1を用いて、空間23内での光路に液体が浸入したことに起因する、受光用光ファイバー端面9bから照射される光の強度変化に基づいて、空間23内への液体の浸入を検知して、光学プローブ1の破損を検知するようにしてもよい。この場合、光学プローブ1の液面計11は不要である。
【0064】
また、図4に示した光学プローブ49及び図8に示した光学プローブ61において、レンズ5a,5bに替えて、図1及び図2の光学プローブ1と同様に、投光用と受光用で共通の1つのレンズを備えているようにしてもよい。
また、図1及び図2に示した光学プローブ1において、レンズ5に替えて、図4の光学プローブ49と同様に、投光用レンズと受光用レンズを備えているようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1,49,61 光学プローブ
3 投光用光ファイバー
3a 投光用光ファイバー端面
3b 投光用光ファイバー第2端面
5,5a,5b,5c レンズ
9 受光用光ファイバー
9a 受光用光ファイバー端面
9b 受光用光ファイバー第2端面
11 液面計(センサー)
23,23a,23b,23c 空間
25 液体試料
29 データ処理部
31 表示部
33 光源
45 受光素子(光検出部)
51 窓板
63 投光用兼受光用の光ファイバー
63a 光ファイバー端面
63b 光ファイバー第2端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料に照射される光を伝播するための投光用光ファイバーと、
前記液体試料を通過した光を伝播するための受光用光ファイバーと、
前記光ファイバーの一部分が配置される空間であって前記液体試料とは隔離される空間を形成するための構造体と、
前記空間内への液体の浸入を検知するためのセンサーと、を備えた光学プローブ。
【請求項2】
前記投光用光ファイバーと前記受光用光ファイバーは1本の光ファイバーによって構成されている請求項1記載の光学プローブ。
【請求項3】
前記空間内に前記光ファイバーの一端面が配置されており、
前記構造体は、前記液体試料と接触する部分に前記光が透過するレンズを備えている請求項1又は2に記載の光学プローブ。
【請求項4】
前記空間内に前記光ファイバーの一端面が配置されており、
前記構造体は、前記液体試料と接触する部分に前記光が透過する窓板を備え、
前記空間内で前記光ファイバーの前記端面と前記窓板との間に前記光が透過するレンズを備えている請求項1から3のいずれか一項に記載の光学プローブ。
【請求項5】
前記センサーは前記空間内に配置された液漏検知センサーである請求項1から4のいずれか一項に記載の光学プローブ。
【請求項6】
前記センサーは前記空間内に配置された液面計である請求項1から4のいずれか一項に記載の光学プローブ。
【請求項7】
前記センサーは、前記空間内での光路に液体が浸入したことに起因する、前記受光用光ファイバー端面とは反対側の受光用光ファイバー端面から照射される光の強度変化に基づいて、前記空間内への液体の浸入を検知する請求項3又は4に記載の光学プローブ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の光学プローブと、
前記投光用光ファイバー端面とは反対側の投光用光ファイバー第2端面に光を照射するための光源と、
前記受光用光ファイバー端面とは反対側の受光用光ファイバー第2反面から照射される光を受光するための光検出部と、
前記光検出部からの光強度信号に応じた液体試料成分濃度を算出するためのデータ処理部と、
前記センサーからの液漏検知信号に基づいて液漏警告を表示する表示部と、を備えた分光測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−247627(P2011−247627A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118297(P2010−118297)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【Fターム(参考)】