説明

光学ユニット

【課題】簡素な構成でありながら収差の発生を極力抑え、光線の入射角を高精度に検出することが可能な光学ユニットを提供する。
【解決手段】試料配置部で全反射する夫々の入射角に対応した反射光の強度を検出する光学ユニットにおいて、平行光を出射させる光源ユニット1と、受光素子列3と、光源ユニットからの出射光を試料配置部に入射させると共に試料配置部からの全反射光を受光素子列に導くプリズム2とを有する。プリズムは、光源ユニットからの平行光をプリズム内部に入射させる入射面2aと、プリズム内部に入射した光をその焦点位置Pに向けて反射させる湾曲形状の反射面2bと、湾曲形状の反射面の焦点位置を含む位置に設けられた平面形状の試料配置部2cと、湾曲形状の反射面の焦点位置で全反射した光をプリズムの外部に出射させる出射面2dを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、屈折率や免疫測定値など、試料又は試料中の物質を定量分析する試料分析に用いられる光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料分析装置として、試料配置部に対し、全反射する角度を含む所定範囲の入射角を有する光(以下、所定の収束光とする)を入射させ、該試料配置部からの夫々の入射角に対応した反射光の強度を夫々検出し、検出した強度が急激に変化したときの入射角を検出する装置がある。
【0003】
このような試料分析装置として、例えば、物質同士の屈折率差を利用して分析を行なう装置がある。この試料分析装置では、屈折率が既知の物質からなる試料配置部に、被検査試料を配置する。そして、この試料配置部の表面に、所定の収束光を入射させる。すると、臨界角より小さい角度で入射した光は、試料配置部の表面で全反射しなくなる。このときの入射角度を検出することにより、被検査試料の屈折率が求まり、被検出試料の物性が解析できる。
【0004】
また、例えば、表面プラズモンの発生を利用した試料分析装置では、上記試料配置部の表面に金属膜を備えている。そして、試料配置部の金属膜に被検査試料を配置し、この金属膜の表面に、所定の収束光を入射させる。ここで、臨界角以上の角度の光が入射すると、金属膜と被検査試料との界面において電界分布を有するエバネッセント波が生じる。そして、このエバネッセント波によって、金属膜に表面プラズモンが励起される。そして更に、臨界角以上の角度で入射した光のうち、特定の入射角度で入射した光に関して、エバネッセント波と表面プラズモンとが波数整合を生じて共鳴状態となる。この共鳴状態のときには、光のエネルギーが表面プラズモンに移行する。そのため、特定の入射角度で入射した光では、反射した光の強度が急激に低下する。そこで、この反射した光の強度が急激に低下するときの入射角度を検出することにより、表面プラズモンの波数が求まり、被検出試料の物性が解析できる。
【0005】
表面プラズモンの発生を利用した試料分析装置として、次の特許文献1に記載のものが開示されている。
特許文献1の試料分析装置は、図7に示すように、光源部、レンズ55、透明基板56及び光検出器58で構成されている。光源部は、レーザ光照射装置51、光ファイバー52、コリメーションレンズ53、ミラー54に備わる短冊形状の開口部(図示省略)を有している。特許文献1では、光源部からの平行光P1を、レンズ55を介して収束光に変換する。試料(図示省略)が配置される透明基板56の反対側の面には、金属膜57が成膜されている。そして、この金属膜57の表面に収束光が照射される。そして、全反射した光を、レンズ55を介して収集する。収集された光は、光源部からの平行光と逆向きの平行光P2に変換され光検出器58で検出される。
従来、試料分析装置は、この特許文献1に記載の試料分析装置のように、光を検査位置に照射させる際に、光源部からの平行光を、レンズを介して収束光に変換させていた。
【特許文献1】特開2005−337940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の試料分析装置では、レンズを介して平行光を収束光に変換させて、所定の収束光を発生させている。この場合、レンズに収差があると、各光線と光軸とが交わる位置および角度が、レンズへの入射位置に応じて理想状態からずれてしまう。
【0007】
例えば、レンズに収差がない場合は、レンズに入射する光線の光線高が高くなるにつれて、金属膜57の表面に入射する光線の角度も大きくなる。したがって。入射角が臨界角よりも大きい角度範囲の光線では、必ず全反射が生じる。ところが、レンズに収差がある場合は、レンズに入射する光線の光線高が高くなるにつれて、金属膜57の表面に入射する光線の角度が理想状態の角度よりも大きくなったり、小さくなったりする。そのため、入射角が臨界角よりも大きい角度範囲の光線であっても、全反射が生じたり生じなかったりする。
【0008】
このため、全反射した光を光検出器で検出しても、入射角を高精度に特定できない。レンズの収差を抑えるためには、収差補正用のレンズを複数枚用いたり、あるいはレンズ面を非球面形状にする必要があるが、それでは、部材点数が増加してスペースが多くとられたり、コスト高になってしまう。
【0009】
また、検出できる入射角の幅を拡げるには、所定の収束光における入射角の範囲を大きくする必要がある。そのためには、レンズのNAを大きくする必要があるが、レンズのNAを大きくすると収差がさらに大きくなってしまう。その収差を抑えるために、収差補正用のレンズを複数枚用いるか、あるいはレンズ面を非球面形状にするのでは、部材点数がさらに増加して複雑な構成になる。さらにスペースが多くとられるので、コスト高になってしまう。
【0010】
本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、簡素な構成でありながら収差の発生を極力抑え、光線の入射角を高精度に検出することが可能な光学ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明による光学ユニットは、平行光を出射させる光源ユニットと、受光素子列と、前記光源ユニットからの出射光を前記試料配置部に入射させると共に該試料配置部からの全反射光を前記受光素子列に導くプリズムとを有し、前記プリズムは、前記光源ユニットから出射した平行光を該プリズムの内部に入射させる入射面と、該入射面を通過して該プリズムの内部に入射した光をその焦点位置に向けて反射させる湾曲形状の反射面と、該湾曲形状の反射面の焦点位置を含む位置に設けられた平面形状の前記試料配置部と、該試料配置部における該湾曲形状の反射面の焦点位置で全反射した光を該プリズムの外部に出射させる出射面を有することを特徴としている。
【0012】
また、本発明の光学ユニットにおいては、前記プリズムは、前記湾曲形状の反射面が放物形状で、且つ、全体が略カマボコ形状に形成された透明部材で構成され、前記入射面、前記試料配置部及び前記出射面は、前記放物形状の反射面の焦点位置を通り対称軸に対して垂直な同一平面上に設けられ、且つ、該試料配置部を挟む位置に該入射面及び該出射面が配置され、前記光源ユニットは、出射した平行光を前記入射面に垂直に入射させるように配置され、前記受光素子列の各受光素子は、前記出射面から垂直に出射した光を受光面で垂直に受光するように1次元方向に配置され、前記放物形状の反射面は、前記入射面を介して該プリズムの内部に入射した平行光を反射して、全反射する角度を含む所定範囲の連続した入射角の入射光に変換し、前記放物形状の焦点位置に入射させる第一の反射領域と、前記試料配置部における該放物形状の焦点位置で全反射した所定範囲の連続した入射角の光を反射して平行光に変換し、前記出射面から該プリズムの外部に垂直に出射させる第二の反射領域を有するのが好ましい。
【0013】
また、本発明の光学ユニットにおいては、前記プリズムは、前記湾曲形状の反射面が放物形状で、且つ、全体が前記放物形状の反射面の対称軸を中心とした回転対称な形状に形成された透明部材で構成され、前記入射面、前記試料配置部及び前記出射面は、前記放物形状の反射面の焦点位置を通り対称軸に対して垂直な同一平面上に設けられ、且つ、該試料配置部を挟む位置に該入射面及び該出射面が配置され、前記光源ユニットは、出射した平行光を前記入射面に垂直に入射させるように配置され、前記受光素子列の各受光素子は、前記出射面から垂直に出射した光を受光面で垂直に受光するように2次元方向に配置され、前記放物形状の反射面は、前記入射面を介して該プリズムの内部に入射した平行光を反射して、全反射する角度を含む所定範囲の連続した入射角の入射光に変換し、前記放物形状の焦点位置に入射させる第一の反射領域と、前記試料配置部における該放物形状の焦点位置で全反射した所定範囲の連続した入射角の光を反射して平行光に変換し、前記出射面から該プリズムの外部に垂直に出射させる第二の反射領域を有するのが好ましい。
【0014】
また、本発明の光学ユニットにおいては、前記プリズムは、第一の扇形板状プリズム部と、第二の扇形板状プリズム部と、第三の扇形板状プリズム部とを有し、前記第一の扇形板状プリズム部は、前記入射面と、該入射面を介して該プリズムの内部に入射した平行光を扇形状の発散光に変換する発散光変換手段と、該発散光変換手段を介して変換された発散光を偏向する第一の円弧形状の反射面を有し、前記第一の円弧形状の反射面が前記入射面に対して135度傾斜し、前記発散光変換手段は、前記第一の扇形板状プリズム部の頂角部において前記入射面に対して垂直で、且つ、頂点が前記入射面側を向いた円錐形状の孔に反射膜を備えてなる反射面からなり、前記第二の扇形板状プリズム部は、前記試料配置部の一部と、前記湾曲形状の反射面を構成し前記第一の扇形板状プリズム部における前記発散光変換手段を介して発散光に変換され前記第一の円弧形状の反射面で偏向された光を扇形状の収束光に変換して前記第二の円弧形状の焦点位置に入射させる第二の円弧形状の反射面を有し、最大径及び頂角部が前記第一の扇形板状プリズム部と同じであり、且つ、前記第二の円弧形状の反射面が該第二の扇形板状プリズム部において最大径を有する扇面に対して45度傾斜し、前記第三の扇形板状プリズム部は、前記試料配置部の他部と、前記出射面を構成し前記試料配置部における前記第二の円弧形状の焦点位置で全反射することによって変換された扇形状の発散光を外部に垂直に出射させる第三の円弧形状の光学面を有し、最大径及び頂角が前記第二の扇形板状プリズム部と同じであり、且つ、前記第三の円弧形状の光学面と該第三の扇形板状プリズム部において最大径を有する扇面とのなす角度が90度であり、前記第一の扇形板状プリズム部と、前記第二の扇形板状プリズム部と、前記第三の扇形板状プリズム部は、同一の媒質で構成され、前記第一の扇形板状プリズム部と前記第二の扇形板状プリズム部は、互いに最大径を持つ扇面同士が接合され、前記第二の扇形板状プリズム部と前記第三の扇形板状プリズム部は、互いの前記試料配置部及び扇面が夫々略面一となるように接合され、前記光源ユニットは、出射した平行光を前記第一の扇形板状プリズム部における前記円錐形状の反射面に入射させる位置に、該第一の扇形板状プリズム部の前記入射面に対して垂直に配置され、前記受光素子列の各受光素子は、夫々前記第三の扇形板状プリズム部における前記第三の円弧形状の光学面から出射した光を略垂直に受光するように配置されているのが好ましい。
【0015】
また、本発明の光学ユニットにおいては、前記試料配置部に金属膜が蒸着されているのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡素な構成でありながら収差の発生を極力抑えられ、光線の入射角を高精度に検出することが可能な光学ユニットが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
実施形態の説明に先立ち、光学ユニットの基本構成及び作用について、概略的に説明する。
図1は光学ユニットの基本構成を概念的に示すブロック図である。
光学ユニットは、光源ユニット1と、プリズム2と、受光素子列3とを有して構成されている。
光源ユニット1は、プリズム2の入射面2aと向き合う位置に配置されている。なお、プリズム2の具体的な構成については後述する。この光源ユニット1は、平行光を出射させるように構成されている。平行光を出射させることができる構成であれば、例えば、光源にコリメートレンズを組合せた構成、あるいは、さらにそれにファイバーを組合せた構成など、どのような構成でもよい。
【0018】
受光素子列3は、プリズム2の出射面2dと向き合う位置に配置されている。また、受光素子列3の各素子は、1つの方向に沿って配置されている。ここで、試料配置部2cには、所定の収束光が入射する。この所定の収束光の各光線は、その入射角が徐々に変化する。受光素子列3の各素子は、この入射角の変化に対応する方向に配置されている。なお、入射光が集光する位置は、湾曲形状の反射面2bの焦点位置でもある。また、試料配置部2c及び湾曲形状の反射面2bは、プリズム2の一部である。なお、受光素子列3における各素子の配列方向は、上記の平行光の光束中心と湾曲形状の反射面2bの焦点位置を結ぶ仮想面に沿う方向でもある。また、光学ユニットでは、受光した反射光の強度の変化に基づいて、入射角が検出される。反射光の強度の変化が生じる位置は、受光素子の位置から検出することができる。よって、光源ユニット1と受光素子列3は、このような検出ができるように調整されている。
【0019】
プリズム2は、光源ユニット1から出射した平行光を試料配置部2cに入射させると共に、試料配置部2cからの全反射光を受光素子列3に導くように構成されている。詳しくは、プリズム2は、入射面2aと、湾曲形状の反射面2bと、平面形状の試料配置部2cと、出射面2dを有している。
入射面2aは、光源ユニット1から出射した平行光をプリズム2の内部に入射させるように構成されている。このとき、入射面2aを平面とし、平行光が入射面2aに対して垂直に入射するのが好ましい。
湾曲形状の反射面2bは、入射面2aを透過してプリズム2の内部に入射した平行光を、その焦点位置(不図示)に向けて反射させるように構成されている。
平面形状の試料配置部2cは、湾曲形状の反射面2bと対向する位置であって、湾曲形状の反射面2bの焦点位置を含む位置に設けられている。
出射面2dは、試料配置部2cで全反射した光を、プリズム2の外部に出射させるように構成されている。このとき、全反射した光は発散光になっている。そこで、出射面2dは、面の法線が各光線に対して垂直となるような面とするのが好ましい。なお、全反射が生じる位置は、より詳しくは、湾曲形状の反射面2bの焦点位置である。
【0020】
全反射した光の進行方向に反射面が存在しない場合、発散光が出射面2dに到達する。そのため、出射面2dの面形状は、面の法線が各光線に対して垂直となるような湾曲形状になっている。また、出射面2dは、湾曲形状の反射面2b側、すなわち、入射面2a及び試料配置部2cと対向するように位置することになる。
【0021】
一方、全反射した光の進行方向に、湾曲形状の反射面を設けても良い。この湾曲形状の反射面は、湾曲形状の反射面2bと別体であっても、湾曲形状の反射面2bと繋がった面(湾曲形状の反射面2bを延長した面)であっても良い。この場合、全反射した光は、湾曲形状の反射面で反射されることになる。湾曲形状の反射面で反射された光は、入射光と同じ平行光となる。出射面2dの面形状は、面の法線が各光線に対して垂直となるような平面形状になっている。また、入射面2a及び試料配置部2c側、すなわち、湾曲形状の反射面2bと対向するように位置することになる。
【0022】
このように構成された光学ユニットでは、光源ユニット1から出射した平行光は、プリズム2の入射面2aに入射する。入射面2aを透過してプリズム2の内部に入射した光は、湾曲形状の反射面2bで反射され集光される。これにより、平行光は所定の収束光となって、湾曲形状の反射面2bの焦点位置に入射する。湾曲形状の反射面2bの焦点位置には、試料配置部2cが位置している。よって、試料に、所定の収束光が照射されることになる。そして、所定の収束光のうち、臨界角以上の入射角で入射した光線は、全反射して出射面2dからプリズム2の外部へ垂直に出射する。出射面2dからプリズム2の外部に出射した光は、受光素子列3の各受光素子で受光される。
【0023】
このように、上記の光学ユニットでは、プリズム2の入射面2aは、光源ユニット1から出射した平行光を、プリズム2の内部に垂直に入射させる。よって、平行光を構成する各光線は、いずれも平行のままの状態が保持される。また、反射面2bは湾曲形状に構成されている。これにより、反射面2bに入射した平行光は、その全ての光線が焦点位置に向けて反射される。プリズム2の内部に入射した光は、所定の収束光に変換されて湾曲形状の反射面2の焦点位置に入射する。さらに、出射面2dは、試料配置部2c(湾曲形状の反射面2bの焦点位置)で全反射した光を垂直に出射させる。このとき、全反射した光を構成する各光線は、いずれも全反射したときの角度を射出位置の情報として保持している。
【0024】
即ち、この光学ユニットによれば、プリズム2への入射光及びプリズム2からの出射光が、いずれも屈折させられることがない。しかも、所定の収束光への変換が、湾曲形状の反射面2bで行われる。このため、この光学ユニットによれば、プリズム2で発生する収差を小さく抑えることができる。特に、反射面2bの湾曲形状が放物形状であれば、収差が生じない。
【0025】
このように、光源ユニット1から出射した平行光を構成する各光線は、いずれも、所定の収束光を構成する光線に変換される。さらに、プリズム2では収差が良好に補正されている(あるいは無収差)ので、所定の収束光は、位置ずれ及び角度ずれを生じることなく試料配置部2c(湾曲形状の反射面2bの焦点位置)へ入射する。また、試料配置部2c(湾曲形状の反射面2bの焦点位置)で全反射した発散光は、位置ずれ及び角度ずれを生じることなく受光素子列3において夫々対応する受光素子で受光される。
【0026】
このような光学ユニットは、例えば、試料分析用装置に利用することができる。試料分析用装置では、この光学ユニットの試料配置部2cに試料を配置する。そして、湾曲形状の反射面2bの焦点位置に所定の収束光を照射し、全反射して得られる反射光を受光素子列3で受光する。受光素子列3では、入射角度に対応する位置の受光素子によって光強度の分布が得られる。この光強度分布を解析することにより、臨界角となる入射角を高精度に求めることができる。そして、その入射角から試料の諸物性を特定することができる。
また、この光学ユニットにおいて試料配置部2cに、例えば、金属薄膜や金属微粒子をコーティングする等、金属膜を蒸着する。このようにすれば、表面プラズモン共鳴により反射光の強度が急激に変化するときの入射角を高精度に求めることができる。そして、その入射角から試料の諸物性を特定することができる。
【0027】
このように、上記の光学ユニットによれば、被検査対象の同一点を、入射角に幅をもたせた光で収差を生じることなく照射できる。このため、光線の入射角を高精度に検出するために、収差補正用レンズや非球面レンズを用いずに済む。また、配置スペースを減らして小型化、さらにはコストを低減できる。
【0028】
第一実施形態
図2は本発明の第一実施形態にかかる光学ユニットを示す図であって、(a)は光学ユニットを光軸方向から見たときの図、(b)は光学ユニットの全体の構成を概略的に示す光軸方向に沿う断面図である。図3は図2に示す光学ユニットに用いるプリズムの外観を示す斜視図である。なお、図2中、Sは試料である。
【0029】
本実施形態の光学ユニットでは、プリズム2は、湾曲形状の反射面2bが放物形状で、且つ、全体が略カマボコ形状(略半円筒形状)に形成された透明部材で構成されている。
このプリズム2は、入射面2a、放物形状の反射面2b及び出射面2dを有している。放物形状の反射面2bは、放物面の一部である。また、対称軸Lは、放物面の回転対称軸(中心軸)である。入射面2a、試料配置部2c及び出射面2dは、同一平面上に設けられている。この平面は、放物形状の反射面2bの焦点位置Pを含み対称軸Lに対して垂直な平面である。また、入射面2a及び出射面2dは、試料配置部2cを挟む位置に配置されている。
光源ユニット1は、出射した平行光を入射面2aに垂直に入射させるように配置されている。
受光素子列3の各受光素子31、32、・・・、3nは、出射面2dから垂直に出射した光(平行光を構成する各光線)を受光面で垂直に受光するように1次元方向に配置されている。
【0030】
放物形状の反射面2bは、第一の反射領域2b1と、第二の反射領域2b2を有している。
第一の反射領域2b1は、入射面2aを介してプリズム2の内部に入射した平行光を反射して、所定の収束光に変換し、放物形状の焦点位置Pに入射させる。
第二の反射領域2b2は、試料配置部2cにおける放物形状の焦点位置Pで全反射した所定の収束光を反射して平行光に変換し、出射面2dからプリズム2の外部に垂直に出射させる。
その他の構成は、図1に示した構成と同じである。
【0031】
このように構成された第一実施形態の光学ユニットでは、光源ユニット1から出射した平行光は、プリズム2の入射面2aに垂直に入射する。ここで、平行光の全体形状は、例えば、図2(a)の破線で示すように、略長方形の形状となっている。入射面2aを透過してプリズム2の内部に入射した平行光は、放物形状の反射面2bにおける第一の反射領域2b1で反射される。これにより、平行光は所定の収束光に変換されて、試料配置部2c、より詳しくは、放物形状の反射面2bの焦点位置Pに入射する。
【0032】
上述のように、放物形状の反射面2bは放物面の一部となっている。ただし、放物形状になっているのは、長手方向のみである。この長手方向は、入射面2a、試料配置部2c及び出射面2dが並ぶ方向である。また、略長方形の平行光でいえば、長手方向は長方形の長軸方向でもある。一方、放物形状の反射面2dは、短手方向(長手方向と直交する方向)には、光学的パワーを持っていない。よって、放物形状の反射面2bで反射された平行光は、短手方向でその幅が一定に保たれた収斂光になる。従って、試料配置部2cに集光した光は、厳密には焦点Pを含む線上に集光する。
【0033】
試料配置部2c(放物形状の反射面2bの焦点位置P)に入射した光のうち、臨界角以上の入射角で入射した光は、全反射する。全反射した反射光は、放物形状の反射面2bにおける第二の反射領域2b2に向かう。そして、この反射光は、第二の反射領域2b2で反射されて、平行光に変換される。平行光に変換された反射光は、平面形状の出射面2dからプリズム2の外部へ垂直に出射する。出射面2dからプリズム2の外部に出射した光は、受光素子列3の各受光素子で受光される。このように、図2(b)において紙面の垂直方向に有限の幅を有する平行光束(略長方形の平行光束)を考えると、紙面と平行な面内では図2に示すような平行光束−集光束−発散光束−平行光束という変換が行なわれる。
【0034】
このように、第一実施形態の光学ユニットでは、プリズム2の入射面2aは、光源ユニット1から出射した平行光を、プリズム2の内部に垂直に入射させる。よって、平行光を構成する各光線は、いずれも平行のままの状態が保持される。また、反射面2bにおける第一の反射領域2b1は、全ての光線(入射した平行光の各光線)を反射面2bの焦点位置Pに向けて反射するという作用を有する。このため、プリズム2の内部に入射した平行光は、所定の収束光に変換されて反射面2bの焦点位置Pに入射する。このとき、プリズム2の内部に入射した平行光は、プリズム2以外の媒質を通ることがない。
また、反射面2bにおける第二の反射領域2b2は、反射面2bの焦点位置Pから入射した全ての光線を反射して平行光に変換するという作用を有する。このため、反射面2bの焦点位置Pで全反射した光は、平行光に変換されて、プリズム2の出射面2dに垂直に入射する。なお、全反射した光は、プリズム2以外の媒質を通ることがない。プリズム2の出射面2dは、入射した平行光をプリズム2の外部に垂直に出射させる。よって、平行光を構成する各光線は、いずれも平行のままの状態が保持される。このとき、出射面2dから出射した平行光の各光線は、いずれも全反射したときの角度を射出位置の情報として保持している。
【0035】
即ち、第一実施形態の光学ユニットによれば、プリズム2への入射光及びプリズム2からの出射光が、いずれも屈折させられることがない。しかも、所定の収束光への変換及び焦点位置Pで全反射した光の平行光への変換が、同一の媒質であるプリズム2の内部における放物形状の反射面2bで行われる。このため、本実施形態の光学ユニットによれば、プリズム2で収差が生じない。
【0036】
このように、光源ユニット1から出射した平行光を構成する各光線は、いずれも、所定の収束を構成する光線へ変換される。さらに、プリズム2では収差が発生しないので、所定の収束光は、位置ずれ及び角度ずれを生じることなく試料配置部2c(放物形状の反射面2bの焦点位置P)へ入射する。また、放物形状の反射面2bの焦点位置Pで全反射した発散光は、位置ずれ及び角度ずれを生じることなく平行光に変換される。そして、この平行光は、受光素子列3において夫々対応する受光素子で受光される。
【0037】
このような本実施形態の光学ユニットは、例えば、試料分析用装置に利用することができる。試料分析用装置では、第一実施形態の光学ユニットの試料配置部2cに試料をおく。そして、放物形状の反射面2bの焦点位置Pに所定の収束光を照射し、全反射して得られる反射光を受光素子列3で受光する。受光素子列3では、入射角度に対応する位置の受光素子によって光強度の分布が得られる。この光強度分布を解析することにより、臨界角となる入射角を高精度に求めることができる。そして、その入射角から試料の諸物性を特定することができる。
また、第一実施形態の光学ユニットにおいて試料配置部2cに、例えば、金属薄膜や金属微粒子をコーティングする等、金属膜を蒸着する。このようにすれば、表面プラズモン共鳴により反射光の強度が急激に変化するときの入射角を高精度に求めることができる。そして、その入射角から試料の諸物性を特定することができる。
【0038】
このように、第一実施形態の光学ユニットによれば、被検査対象の同一点を、入射角に幅をもたせた光で収差を生じることなく照射できる。このため、光線の入射角を高精度に検出するために、収差補正用レンズや非球面レンズを用いずに済む。また、配置スペースを減らして小型化、さらにはコストを低減できる。
【0039】
また、変形例の光学ユニットを図4に示す。図4(a)は光学ユニットを光軸方向から見たときの図、(b)は光学ユニットの全体の構成を概略的に示す光軸方向に沿う断面図である。図2及び図3の例では、プリズム2を、湾曲形状の反射面2bが放物形状で、且つ、全体が略カマボコ形状に形成された透明部材で構成した。これに対し、図4(a),(b)に示すように、湾曲形状の反射面2bが放物形状で、且つ、全体が放物形状の反射面2bの対称軸Lを中心とした回転対称な形状に形成された透明部材で構成してもよい。この場合には、平行光束は焦点Pに集光する。
図2及び図3のプリズムの場合、試料配置部2c上では、入射光は線状に集光する。そのため、このような構成では、試料上の線状の領域で計測を行っていることになる。これに対し、図4に示すような回転対称型の放物面では、試料配置部2cには光は1点に集光されることになる。従って、試料上の微小な領域1点のみの計測が可能となる。
【0040】
第二実施形態
図5は本発明の第二実施形態にかかる光学ユニットの全体の構成を概略的に示す説明図であって、(a)は斜視図、(b)は光軸方向に沿う断面図、(c)は試料配置部の反対側から見た側面図である。図6は図5の光学ユニットにおけるプリズムの各構成要素を概略的に示す側面図であって、(a)は第一の扇形板状プリズム部、(b)は第2の扇形板状プリズム部、(c)は第三の扇形板状プリズム部を示している。なお、図5中、Sは試料である。
【0041】
第二実施形態の光学ユニットでは、プリズム2は、図5に示すように、第一の扇形板状プリズム部21と、第二の扇形板状プリズム部22と、第三の扇形板状プリズム部23とを有している。
【0042】
第一の扇形板状プリズム部21は、入射面2aをなす扇面211と、発散光変換手段212と、第一の円弧形状の反射面213と、扇面214を有している。
発散光変換手段212は、円錐形状の孔と、円錐面に反射膜が形成された反射面で構成されている。この円錐形状の孔は、その中心軸が第一の扇形板状プリズム部21の頂角部(即ち、後述する第一の円弧形状の反射面213の焦点位置P)を通過するように形成されている。また、円錐形状の孔は、その中心軸が入射面2a(扇面211)に対して垂直で、且つ、その頂点が入射面2a(扇面211)側を向いて形成されている。よって、発散光変換手段212における反射面は、第一の円弧形状の反射面213と向かい合うことになる。
【0043】
第一の円弧形状の反射面213は、円錐面の一部を帯状に切り取った形状をしている。長手方向は円弧なので、この方向には光学的パワーを持っている。一方、長手方向と直交する方向(円錐の母線方向)には光学的パワーを持っていない。また、反射面213は、入射面2a(扇面211)とのなす角度α1が135度となるように設けられている(形成されている)。
【0044】
第一の扇形板状プリズム部21では、光源ユニット1からの平行光は、入射面2a(扇面211)を介してプリズム2の内部に入射する。入射した平行光は、発散光変換手段212によって、第一の円弧形状の反射面213の焦点位置Pを中心とした扇形状の発散光に変換される。第一の円弧形状の反射面213は、扇形状の発散光を第二の扇形プリズム22側に偏向される。
【0045】
第二の扇形板状プリズム部22は、扇面221と、第二の円弧形状の反射面222と、試料配置部2cの一部を有する平面223と、扇面224を有している。
第二の円弧形状の反射面222は湾曲形状の反射面であって、具体的には、第一の円弧形状の反射面213と同じ形状である。第二の円弧形状の反射面222は、扇面221とのなす角度α2が45°となるように設けられている。また、図からわかるように、第二の円弧形状の反射面222は、第一の円弧形状の反射面213と向かい合うように設けられている。
【0046】
平面223は、第二の円弧形状の反射面222と向かい合うように設けられている。この平面223は、第二の円弧形状の反射面222の焦点位置Pを含む面となっている。また、平面223は試料配置部2cの一部を含んでいる。この試料配置部2cは、第二の円弧形状の反射面222の焦点位置Pを含むように、その位置が設定されている。
【0047】
また、第二の扇形板状プリズム部22における最大径及び頂角部は、第一の扇形板状プリズム部21と同じである。また、扇面221は、第二の扇形板状プリズム部22において最大径を有している。
【0048】
第二の扇形板状プリズム部22では、第一の円弧形状の反射面213で偏向された光は、第二の円弧形状の反射面222に入射する。この光は、第二の円弧形状の反射面222で扇形状の収束光に変換されて、焦点位置Pに到達する。上述のように、焦点位置Pには試料配置部2cが位置している。よって、収束光が試料配置部2cに入射する。
【0049】
第三の扇形板状プリズム部23は、試料配置部2cの他部を有する平面231と、扇面232と、扇面233と、第三の円弧形状の光学面234を有している。
第三の円弧形状の光学面234は出射面2dであって、具体的には、円筒面の一部を帯状に切り取った形状をしている。長手方向は円弧なので、この方向には光学的パワーを持っている。一方、長手方向と直交する方向(円筒の母線方向)には光学的パワーを持っていない。また、第三の円弧形状の光学面234は、扇面232,233とのなす角度α3,α4が90度となるように設けられている。
【0050】
平面231は、第三の円弧形状の光学面234と向かい合うように設けられている。この平面231は、第二の円弧形状の反射面222の焦点位置Pを含む面となっている。また、平面231は試料配置部2cの一部を含んでいる。本実施形態では、平面223と平面231は連続した平面であって、両者は、第二の円弧形状の反射面222の焦点位置Pで接している。
【0051】
また、第三の扇形板状プリズム部23における最大径及び頂角は、第二の扇形板状プリズム部22と同じである。また、扇面232,233は、第三の扇形板状プリズム部において最大径を有している。
【0052】
第三の扇形板状プリズム部23では、試料配置部2cに入射した収束光のうち一部の光が、扇形状の発散光となって第三の円弧形状の光学面234に入射する。第三の円弧形状の光学面234に入射した光は、扇形状の発散光を構成する各光線をプリズムの外部に垂直に出射させる。
【0053】
また、第一の扇形板状プリズム部21と、第二の扇形板状プリズム部22と、第三の扇形板状プリズム部23は、同一の媒質で構成されている。
また、第一の扇形板状プリズム部21と第二の扇形板状プリズム部22は、互いに最大径を持つ扇面214,221同士が接合されている。また、第二の扇形板状プリズム部22と第三の扇形板状プリズム部23は、互いの試料配置部2cを有する平面223,231並びに扇面224,232及び扇面221,233が、夫々略面一となるように接合されている。
【0054】
光源ユニット1は、出射した平行光を第一の扇形板状プリズム部21における円錐形状の反射面212に入射させる位置に、第一の扇形板状プリズム部21の入射面211に対して垂直に配置されている。
受光素子列3の各受光素子は、夫々第三の扇形板状プリズム部23における第三の円弧形状の光学面234から出射した光を略垂直に受光するように配置されている。
その他の構成は、図1に示した構成と同じである。
【0055】
このように構成された第二実施形態の光学ユニットでは、光源ユニット1から出射した平行光は、第一の扇形板状プリズム部21の入射面2a(扇面211)に垂直に入射する。入射面2a(扇面211)を透過してプリズム部21の内部に入射した平行光は、発散光変換手段212である円錐形状の反射面に入射する。円錐形状の反射面212に入射した平行光は、円錐形状の反射面212で反射される。これにより、平行光は扇形状の発散光に変換されて、第一の円弧形状の反射面213に入射する。第一の円弧形状の反射面213に入射した扇形状の発散光は、第一の円弧形状の反射面213で反射される。これにより、扇形状の発散光は第二の扇形板状プリズム部22側に偏向され、扇面214及び扇面221を垂直に透過して、第二の円弧形状の反射面222に入射する。第二の円弧形状の反射面222に入射した光は、第二の円弧形状の反射面222で反射される。これによって、扇形状の発散光は、扇形状の収束光に変換されて、試料配置部2c(第二の円弧形状の反射面222の焦点位置P)に入射する。なお、本実施形態では、この扇形状の収束光が所定の収束光になる。
【0056】
試料配置部2c(第二の円弧形状の反射面222の焦点位置P)に入射した光のうち、臨界角以上の入射角で入射した光は、全反射する。全反射した反射光は、扇形状の発散光に変換されて、第三の扇形板状プリズム部23の内部に入射する。第三の扇形板状プリズム部23に入射した扇形状の発散光は、出射面2d(第三の円弧形状の光学面234)から第三の扇形板状プリズム部23の外部に垂直に出射する。第三の扇形板状プリズム部23の出射面2d(第三の円弧形状の光学面234)から第三の扇形板状プリズム部23の外部に出射した光は、受光素子列3の各受光素子で受光される。
【0057】
このように、第二実施形態の光学ユニットでは、第一の扇形板状プリズム部21の入射面2aは、光源ユニット1から出射した平行光を、第一の扇形板状プリズム部21の内部に垂直に入射させる。よって、平行光を構成する各光線は、いずれも平行のままの状態が保持される。また、発散光変換手段212を、第一の扇形板状プリズム部21の頂角部(第一の円弧形状の反射面213の焦点位置P)に設けている。これにより、第一の扇形板状プリズム部21の内部に入射した平行光を、扇形状の発散光に変換している。この扇形状の発散光は、第一の円弧形状の反射面213の焦点位置Pを中心とした発散光である。よって、発散光変換手段212によって、扇形状の発散光を第一の円弧形状の反射面213に対してそれぞれ等しい入射角で入射させることができる。また、第一の円弧形状の反射面213は、入射面2a(扇面211)に対する傾斜角α1が135度となっているので、扇形状の発散光を垂直方向に偏向できる。ここで、偏向された光は、扇面214を垂直に透過し、扇面221を垂直に透過する。よって、偏向された光の各光線は、いずれも垂直の向きのままの状態が保持されて、第二の円弧形状の反射面222に入射する。
【0058】
第二の円弧形状の反射面222は、入射した光線を第二の円弧形状の焦点位置Pに向けて反射するという作用を有する。よって、第二の円弧形状の反射面222に入射した発散光は、その全ての光線が焦点位置Pに向けて反射される。また、第二の円弧形状の反射面222は、扇面221に対する傾斜角α2が45°となっている。よって、扇面221から第二の扇形板状プリズム部22の内部に垂直に入射した光は、焦点位置Pに向けて水平方向に反射される。さらに、第一の扇形板状プリズム部21と第二の扇形板状部リズム部22は同じ媒質からなっている。そして、最大径を持つ扇面214,221同士が張り合わされている。このため、第一の扇形板状プリズム部21の内部に入射した平行光は、プリズム2以外の媒質を通ることなく、第二の扇形板状プリズム部22に入射する。そして、入射した平行光は、第二の扇形板状プリズム部22の第二の円弧形状の反射面222を介して、所定の収束光に変換される。この所定の収束光は、第二の円弧形状の反射面222の焦点位置Pに入射する。
【0059】
また、第三の扇形板状プリズム部23は、第二の扇形板状プリズム部22と同じ媒質からなっている。そして、試料配置部223,231が夫々略面一となるように接合されている。同様に、扇面224と232及び扇面221と233が夫々略面一となるように接合されている。さらに、第三の扇形板状プリズム部23は、第三の円弧形状の光学面234を出射面2dとして有している。上記のように、第二の円弧形状の焦点位置Pに入射した所定の収束光は、ここで全反射することによって扇形状の発散光に変換される。この扇形状の発散光は外部に向かって出射する。第三の円弧形状の光学面234は、この発散光が垂直に出射できるように円弧形状となっている。このため、発散光(第二の円弧形状の反射面222の焦点位置Pで全反射した光)は、第三の扇形板状プリズム部23の出射面2dからプリズム2の外部に垂直に出射する。このとき、発散光はプリズム2以外の媒質を通ることがない。よって、発散光を構成する各光線は、いずれも進行方向のままの状態が保持される。このとき、出射面2dから出射した発散光の各光線は、いずれも全反射したときの角度を射出位置の情報として保持している。
【0060】
即ち、第二実施形態の光学ユニットによれば、第一の扇形板状プリズム部21への入射光及び第三の扇形板状プリズム部23からの出射光が、いずれも屈折させられることがない。しかも、所定の収束光の変換が、第二の扇形板状プリズム部22の内部における第二の円弧形状の反射面222で行われる。ここで、第二の扇形板状プリズム部22も、第一の扇形板状プリズム部21及び第三の扇形板状プリズム部23と同一の媒質になっている。このため、第二実施形態の光学ユニットによれば、プリズム2で収差が生じない。
【0061】
このように、光源ユニット1から出射した平行光を構成する各光線は、いずれも、所定の収束光を構成する光線へ変換される。さらに、プリズム2では収差が発生しないので、所定の収束光は、位置ずれ及び角度ずれを生じることなく試料配置部2c(第二の円弧形状の反射面222の焦点位置P)へ入射する。また、第二の円弧形状の反射面222の焦点位置Pで全反射した発散光は、位置ずれ及び角度ずれを生じることなく受光素子列3において夫々対応する受光素子で受光される。
【0062】
このような本実施形態の光学ユニットは、例えば、試料分析用装置に利用することができる。試料分析用装置では、第二実施形態の光学ユニットの試料配置部2cに試料をおく。そして、第二の円弧形状の反射面222の焦点位置Pに所定の収束光を照射し、全反射して得られる反射光を受光素子列3で受光する。受光素子列3では、入射角度に対応する位置によって光強度の分布が得られる。この光強度分布を解析することにより、臨界角となる入射角を高精度に求めることができる。そして、その入射角から試料の諸物性を特定することができる。
また、第二実施形態の光学ユニットにおいて試料配置部2cに、例えば、金属薄膜や金属微粒子をコーティングする等、金属膜を蒸着する。このようにすれば、表面プラズモン共鳴により反射光の強度が急激に変化するときの入射角を高精度に求めることができる。そして、その入射角から試料の諸物性を特定することができる。
【0063】
このように、第二実施形態の光学ユニットによれば、被検査対象の同一点を、入射角に幅をもたせた光で収差を生じることなく照射できる。このため、光線の入射角を高精度に検出するために、収差補正用レンズや非球面レンズを用いずに済む。また、配置スペースを減らして小型化、さらにはコストを低減できる。
さらに、第二実施形態の光学ユニットによれば、発散光変換手段212を介して、光源ユニット1から出射し、入射面2a(扇面211)を介して第一の扇形板状プリズム部21の内部に入射した平行光を扇状の発散光に変換するようにしたので、光源ユニット1の出射部を大きくすることなく、被検査対象の同一点を入射角に幅をもたせて照射でき、光源ユニットを小型化できる。
【0064】
なお、第二実施形態の光学ユニットにおいて、第一の扇形板状プリズム部21と第二の扇形板状プリズム部22の接合面(即ち、扇面214と扇面221との接合面)に、第一の円弧形状の反射面213で偏向された光が第二の円弧形状の反射面222に向かう光路部分にスリットを設けた遮光部材を設けるのが好ましい。
このようにすれば、第一の扇形板状プリズム部21において、発散光変換手段212、第一の円弧形状の反射面213の経路を辿らない迷光が第二の扇形板状プリズム部22に入射するのを阻止することができる。その結果、受光素子列3での受光精度がより高くなる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の光学ユニットは、全反射を利用して試料の物性を分析する医療、医学、生物学の分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の光学ユニットの基本構成を概念的に示すブロック図である。
【図2】本発明の第一実施形態にかかる光学ユニットを示す図であって、(a)は光学ユニットを光軸方向から見たときの図、(b)は光学ユニットの全体の構成を概略的に示す光軸方向に沿う断面図である。
【図3】図2に示す試料分析用光学ユニットに用いるプリズムの外観を示す斜視図である。
【図4】本発明の第一実施形態にかかる光学ユニットの変形例を示す説明図で、(a)は光学ユニットを光軸方向から見たときの図、(b)は光学ユニットの全体の構成を概略的に示す光軸に沿う断面図である。
【図5】本発明の第二実施形態にかかる光学ユニットの全体の構成を概略的に示す説明図であって、(a)は斜視図、(b)は光軸方向に沿う断面図、(c)は試料配置部とは反対側から見た側面図である。
【図6】図5の光学ユニットにおけるプリズムの各構成要素を概略的に示す側面図であって、(a)は第一の扇形板状プリズム部、(b)は第2の扇形板状プリズム部、(c)は第三の扇形板状プリズム部を示している。
【図7】従来の試料分析装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0067】
1 光源ユニット
2 プリズム
2a 入射面
2b 湾曲形状の反射面(放物形状の反射面)
2b1 第一の反射領域
2b2 第二の反射領域
2c 試料配置部
2d 出射面
3 受光素子列
1、32、・・・、3n 受光素子列の各受光素子
21 第一の扇形板状プリズム部
211 入射面2aをなす扇面
212 発散光変換手段
213 第一の円弧形状の反射面
214 最大径を有する扇面
22 第二の扇形板状プリズム部
221 最大径を有する扇面
222 第二の円弧形状の反射面
223 試料配置部2cの一部を有する平面
224 扇面
23 第三の扇形板状プリズム部
231 試料配置部2cの他部を有する平面
232,233 扇面
234 第三の円弧形状の光学面
51 レーザ光照射装置
52 光ファイバー
53 コリメーションレンズ
54 ミラー
55 レンズ
56 透明基板
57 金属膜
58 光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行光を出射させる光源ユニットと、
受光素子列と、
前記光源ユニットからの出射光を前記試料配置部に入射させると共に該試料配置部からの全反射光を前記受光素子列に導くプリズムとを有し、
前記プリズムは、前記光源ユニットから出射した平行光を該プリズムの内部に入射させる入射面と、該入射面を通過して該プリズムの内部に入射した光をその焦点位置に向けて反射させる湾曲形状の反射面と、該湾曲形状の反射面の焦点位置を含む位置に設けられた平面形状の前記試料配置部と、該試料配置部における該湾曲形状の反射面の焦点位置で全反射した光を該プリズムの外部に出射させる出射面を有することを特徴とする光学ユニット。
【請求項2】
前記プリズムは、前記湾曲形状の反射面が放物形状で、且つ、全体が略カマボコ形状に形成された透明部材で構成され、
前記入射面、前記試料配置部及び前記出射面は、前記放物形状の反射面の焦点位置を通り対称軸に対して垂直な同一平面上に設けられ、且つ、該試料配置部を挟む位置に該入射面及び該出射面が配置され、
前記光源ユニットは、出射した平行光を前記入射面に垂直に入射させるように配置され、
前記受光素子列の各受光素子は、前記出射面から垂直に出射した光を受光面で垂直に受光するように1次元方向に配置され、
前記放物形状の反射面は、前記入射面を介して該プリズムの内部に入射した平行光を反射して、全反射する角度を含む所定範囲の連続した入射角の入射光に変換し、前記放物形状の焦点位置に入射させる第一の反射領域と、前記試料配置部における該放物形状の焦点位置で全反射した所定範囲の連続した入射角の光を反射して平行光に変換し、前記出射面から該プリズムの外部に垂直に出射させる第二の反射領域を有することを特徴とする請求項1に記載の光学ユニット。
【請求項3】
前記プリズムは、前記湾曲形状の反射面が放物形状で、且つ、全体が前記放物形状の反射面の対称軸を中心とした回転対称な形状に形成された透明部材で構成され、
前記入射面、前記試料配置部及び前記出射面は、前記放物形状の反射面の焦点位置を通り対称軸に対して垂直な同一平面上に設けられ、且つ、該試料配置部を挟む位置に該入射面及び該出射面が配置され、
前記光源ユニットは、出射した平行光を前記入射面に垂直に入射させるように配置され、
前記受光素子列の各受光素子は、前記出射面から垂直に出射した光を受光面で垂直に受光するように2次元方向に配置され、
前記放物形状の反射面は、前記入射面を介して該プリズムの内部に入射した平行光を反射して、全反射する角度を含む所定範囲の連続した入射角の入射光に変換し、前記放物形状の焦点位置に入射させる第一の反射領域と、前記試料配置部における該放物形状の焦点位置で全反射した所定範囲の連続した入射角の光を反射して平行光に変換し、前記出射面から該プリズムの外部に垂直に出射させる第二の反射領域を有することを特徴とする請求項1に記載の光学ユニット。
【請求項4】
前記プリズムは、第一の扇形板状プリズム部と、第二の扇形板状プリズム部と、第三の扇形板状プリズム部とを有し、
前記第一の扇形板状プリズム部は、前記入射面と、該入射面を介して該プリズムの内部に入射した平行光を扇形状の発散光に変換する発散光変換手段と、該発散光変換手段を介して変換された発散光を偏向する第一の円弧形状の反射面を有し、前記第一の円弧形状の反射面が前記入射面に対して135度傾斜し、
前記発散光変換手段は、前記第一の扇形板状プリズム部の頂角部において前記入射面に対して垂直で、且つ、頂点が前記入射面側を向いた円錐形状の孔に反射膜を備えてなる反射面からなり、
前記第二の扇形板状プリズム部は、前記試料配置部の一部と、前記湾曲形状の反射面を構成し前記第一の扇形板状プリズム部における前記発散光変換手段を介して発散光に変換され前記第一の円弧形状の反射面で偏向された光を扇形状の収束光に変換して前記第二の円弧形状の焦点位置に入射させる第二の円弧形状の反射面を有し、最大径及び頂角部が前記第一の扇形板状プリズム部と同じであり、且つ、前記第二の円弧形状の反射面が該第二の扇形板状プリズム部において最大径を有する扇面に対して45度傾斜し、
前記第三の扇形板状プリズム部は、前記試料配置部の他部と、前記出射面を構成し前記試料配置部における前記第二の円弧形状の焦点位置で全反射することによって変換された扇形状の発散光を外部に垂直に出射させる第三の円弧形状の光学面を有し、最大径及び頂角が前記第二の扇形板状プリズム部と同じであり、且つ、前記第三の円弧形状の光学面と該第三の扇形板状プリズム部において最大径を有する扇面とのなす角度が90度であり、
前記第一の扇形板状プリズム部と、前記第二の扇形板状プリズム部と、前記第三の扇形板状プリズム部は、同一の媒質で構成され、
前記第一の扇形板状プリズム部と前記第二の扇形板状プリズム部は、互いに最大径を持つ扇面同士が接合され、
前記第二の扇形板状プリズム部と前記第三の扇形板状プリズム部は、互いの前記試料配置部及び扇面が夫々略面一となるように接合され、
前記光源ユニットは、出射した平行光を前記第一の扇形板状プリズム部における前記円錐形状の反射面に入射させる位置に、該第一の扇形板状プリズム部の前記入射面に対して垂直に配置され、
前記受光素子列の各受光素子は、夫々前記第三の扇形板状プリズム部における前記第三の円弧形状の光学面から出射した光を略垂直に受光するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の光学ユニット。
【請求項5】
前記試料配置部に金属膜が蒸着されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の光学ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−128073(P2009−128073A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300829(P2007−300829)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】