説明

光学体およびその製造方法

【課題】可撓性を損なうことがなく、熱、または熱と加圧とによる界面の凹凸形状の変形を抑制することができる光学フィルムを提供する。
【解決手段】本発明に係る光学体は、凹凸形状の界面を内部に有する光学層と、界面に設けられた無機材料を主成分とする中間層とを備える。光学層が、凹凸形状の第1の面を有する第1の光学層と、凹凸形状の第2の面を有する第2の光学層とを備える。界面は、対向配置された第1の面と第2の面とにより形成され、第1の光学層、および第2の光学層の少なくとも一方が、100℃での貯蔵弾性率が3×107Pa以上であり、25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光学体およびその製造方法に関する。詳しくは、凹凸形状の界面を内部に有する光学体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、入射光に対して吸収や反射などの様々な効果を与えることを目的とした光学フィルムは広く知られている。この光学フィルムには、目的とする機能によって様々な構成のものがある。その一つとして、凹凸形状の界面を内部に有し、この界面に薄膜が形成されたものがある。例えば、特許文献1には、上記構成の光学フィルムとして、複数のプリズムが一次元配列された凹凸面を有する第1の基材と、この凹凸面上に形成された積層膜と、この積層膜上に形成された第2の基材とを備える再帰反射偏光子が開示されている。
【0003】
上述の構成を有する光学フィルムは、以下ようにして製造される。まず、凹凸面を有する第1の基材を作製する。次に、金属またはその酸化物などからなる薄膜を、第1の基材の凹凸面上に形成した後、薄膜が形成された凹凸面を樹脂により包埋し、第2の基材を形成する。このような製造工程は、近年では生産性の向上を考慮して、ロール・ツー・ロールにより行われるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−78234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の光学フィルムの製造工程において、熱、または熱と加圧とにより界面の凹凸形状が変形してしまうことがある。この変形は、以下の工程において生じるものと考えられる。すなわち、薄膜が形成された凹凸面を樹脂により包埋し、封止して光学フィルムを作製する過程において、光学フィルムに対して加熱および加圧を行うことがある。この加熱および加圧により、界面の凹凸形状に変形が生じることがある。
【0006】
また、上述したように、近年の光学フィルムの製造工程では、ロール・ツー・ロールの製造工程が用いられるのが一般的である。このため、熱、または熱と加圧とによる界面の凹凸形状の変形を単に抑制するばかりではなく、光学フィルムの可撓性を損なわないようにすることも望まれる。
【0007】
したがって、この発明の目的は、可撓性を損なうことがなく、熱、または熱と加圧とによる界面の凹凸形状の変形を抑制することができる光学体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
凹凸形状の界面を内部に有する光学層と、
上記界面に設けられた無機材料を主成分とする中間層と
を備え、
上記光学層が、
凹凸形状の第1の面を有する第1の光学層と、
凹凸形状の第2の面を有する第2の光学層と
を備え、
上記界面は、対向配置された上記第1の面と上記第2の面とにより形成され、
上記第1の光学層、および上記第2の光学層の少なくとも一方が、
100℃での貯蔵弾性率が3×107Pa以上であり、
25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下である光学体である。
【0009】
第2の発明は、
第1の光学層と、
上記第1の光学層の凹凸面上に形成された無機材料を主成分とする中間層と、
上記中間層が形成された上記凹凸面上に、該凹凸を埋めるように形成された第2の光学層と
を備え、
上記第1の光学層、および上記第2の光学層の少なくとも一方が、
100℃での貯蔵弾性率が3×107Pa以上であり、
25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下である光学体である。
【0010】
第3の発明は、
凹凸形状の界面を内部に有する光学層と、
上記界面に設けられた無機材料を主成分とする中間層と
を備え、
上記光学層が、
凹凸形状の第1の面を有する第1の光学層と、
凹凸形状の第2の面を有する第2の光学層と
を備え、
上記界面は、対向配置された上記第1の面と上記第2の面とにより形成され、
上記第1の光学層が、
上記第2の光学層形成時のプロセス温度をt℃としたときに、(t−20)℃における貯蔵弾性率が3×107Pa以上であり、
25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下である光学体である。
【0011】
第4の発明は、
第1の光学層と、
上記第1の光学層の凹凸面上に形成された無機材料を主成分とする中間層と、
上記中間層が形成された上記凹凸面上に、該凹凸を埋めるように形成された第2の光学層と
を備え、
上記第1の光学層が、
上記第2の光学層形成時のプロセス温度をt℃としたときに、(t−20)℃における貯蔵弾性率が3×107Pa以上であり、
25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下である光学体である。
【0012】
第5の発明は、
第1の光学層の凹凸面上に無機材料を主成分とする中間層を形成する工程と、
上記中間層が形成された上記凹凸面を第2の光学層により包埋する工程と
を備え、
上記第1の光学層、および上記第2の光学層の少なくとも一方が、
100℃での貯蔵弾性率が3×107Pa以上であり、
25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下である光学体の製造方法である。
【0013】
第6の発明は、
第1の光学層の凹凸面上に無機材料を主成分とする中間層を形成する工程と、
上記中間層が形成された上記凹凸面を第2の光学層により包埋する工程と
を備え、
上記第1の光学層が、
上記包埋工程のプロセス温度をt℃としたときに、(t−20)℃における貯蔵弾性率が3×107Pa以上であり、
25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下である光学体の製造方法である。
【0014】
この発明では、光学層内部の界面を形成する第1の光学層および第2の光学層の少なくとも一方が、100℃での貯蔵弾性率が3×107Pa以上であるので、熱、または熱と加圧とにより光学層内部の界面の凹凸形状が変形することを抑制することができる。また、第1の光学層および第2の光学層の少なくとも一方が、25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下であるので、室温において可撓性を光学体に付与することができる。したがって、ロール・ツー・ロールなどの製造工程により光学体を作製することが可能となる。
【0015】
また、この発明では、光学層内部の界面を形成する第1の光学層が、第2の光学層形成時のプロセス温度をt℃としたときに、(t−20)℃における貯蔵弾性率が3×107Pa以上であるので、熱、または熱と加圧とにより光学層内部の界面の凹凸形状が変形することを抑制することができる。また、第1の光学層が、25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下であるので、室温において可撓性を光学体に付与することができる。したがって、ロール・ツー・ロールなどの製造工程により光学体を作製することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、可撓性を損なうことがなく、熱、または熱と加圧とによる光学体内部界面の凹凸形状の変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムの一構成例を示す断面図である。図1Bは、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムを被着体に貼り合わせた例を示す断面図である。
【図2】図2は、光学フィルムに対して入射する入射光と、光学フィルムにより反射された反射光との関係を示す斜視図である。
【図3】図3A〜図3Cは、第1の光学層に形成された構造体の形状例を示す斜視図である。
【図4】図4Aは、第1の光学層に形成された構造体の形状例を示す斜視図である。図4Bは、図4Aに示す構造体が形成された第1の光学層を備える光学フィルムの一構成例を示す断面図である。
【図5】図5A、図5Bは、光学フィルムの機能の一例を説明するための断面図である。
【図6】図6A、図6Bは、光学フィルムの機能の一例を説明するための断面図である。
【図7】図7Aは、光学フィルムの機能の一例を説明するための断面図である。図7Bは、光学フィルムの機能の一例を説明するための平面図である。
【図8】図8は、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムを製造するための製造装置の一構成例を示す概略図である。
【図9】図9A〜図9Cは、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムの製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図10】図10A〜図10Cは、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムの製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図11】図11A〜図11Cは、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムの製造方法の一例を説明するための工程図である。
【図12】図12Aは、本発明の第2の実施形態に係る光学フィルムにおける第1の光学層の第1の構成例を示す平面図である。図12Bは、図12Aに示した第1の光学層のB−B線に沿った断面図である。図12Cは、図12Aに示した第1の光学層のC−C線に沿った断面図である。
【図13】図13Aは、本発明の第2の実施形態に係る光学フィルムにおける第1の光学層の第2の構成例を示す平面図である。図13Bは、図13Aに示した第1の光学層のB−B線に沿った断面図である。図13Cは、図13Aに示した第1の光学層のC−C線に沿った断面図である。
【図14】図14Aは、本発明の第2の実施形態に係る光学フィルムにおける第1の光学層の第3の構成例を示す平面図である。図14Bは、図14Aに示した第1の光学層のB−B線に沿った断面図である。
【図15】図15Aは、本発明の第3の実施形態に係る光学フィルムの一構成例を示す断面図である。図15Bは、本発明の第3の実施形態に係る光学フィルムが備える第1の光学層の一構成例を示す斜視図である。
【図16】図16Aは、本発明の第4の実施形態に係る光学フィルムの第1の構成例を示す断面図である。図16Bは、本発明の第4の実施形態に係る光学フィルムの第2の構成例を示す断面図である。図16Cは、本発明の第4の実施形態に係る光学フィルムの第3の構成例を示す断面図である。
【図17】図17は、比較例1のNi−P製金型が有する成形面の形状を示す断面図である。
【図18】図18は、光学フィルムの再帰反射率を測定するため測定装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面を参照しながら以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態(構造体を1次元配列した例)
2.第2の実施形態(構造体を2次元配列した例)
3.第3の実施形態(ルーバ型の波長選択反射層の例)
4.第4の実施形態(光学フィルムに光散乱体を設けた例)
【0019】
<1.第1の実施形態>
[光学フィルムの構成]
図1Aは、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムの一構成例を示す断面図である。図1Bは、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムを被着体に貼り合わせた例を示す断面図である。光学体としての光学フィルム1は、いわゆる指向反射性能を有する光学フィルムである。図1Aに示すように、この光学フィルム1は、凹凸形状の界面を内部に有する光学層2と、この光学層2の界面に設けられた波長選択反射層(無機材料を主成分とする中間層)3とを備える。光学層2は、凹凸形状の第1の面を有する第1の光学層4と、凹凸形状の第2の面を有する第2の光学層5とを備える。光学層内部の界面は、対向配置された凹凸形状の第1の面と第2の面とにより形成されている。光学フィルム1は、太陽光などの光が入射する入射面S1と、この入射面S1より入射した光のうち、光学フィルム1を透過した光が出射される出射面S2とを有する。
【0020】
光学フィルム1が、必要に応じて、光学層2の出射面S2に第1の基材4aをさらに備えるようにしてもよい。また、光学フィルム1が、必要に応じて、光学層2の入射面S1に第2の基材5aをさらに備えるようにしてもよい。なお、このように第1の基材4a、および/または第2の基材5aを光学フィルム1に備える場合には、第1の基材4a、および/または第2の基材5aを光学フィルム1に備えた状態において、以下に示す透明性、および透過色などの光学特性を満たすことが好ましい。
【0021】
光学フィルム1が、必要に応じて接合層6をさらに備えるようにしてもよい。この接合層6は、光学フィルム1の入射面S1および出射面S2のうち、窓材10に貼り合わされる面に形成される。この接合層6を介して、光学フィルム1は被着体である窓材10の屋内側または屋外側に貼り合わされる。接合層6としては、例えば、接着剤を主成分とする接着層、または粘着剤を主成分とする粘着層を用いることができる。接合層6が粘着層である場合、接合層6上に形成された剥離層7をさらに備えることが好ましい。このような構成にすることで、剥離層7を剥離するだけで、接合層6を介して窓材10などの被着体に対して光学フィルム1を容易に貼り合わせることができるからである。
【0022】
光学フィルム1が、第2の基材5aと、接合層6および/または第2の光学層5の接合性を向上させる観点から、第2の基材5aと、接合層6および/または第2の光学層5との間に、プライマー層(図示せず)をさらに備えるようにしてもよい。また、同様の箇所の接合性を向上させる観点から、該プライマー層に代えて、または該プライマー層と共に、公知の物理的前処理を施すことが好ましい。公知の物理的前処理としては、例えば、プラズマ処理、コロナ処理などが挙げられる。
【0023】
光学フィルム1が、窓材10などの被着体に貼り合わされる入射面S1または出射面S2上、またはその面と波長選択反射層3との間に、バリア層(図示せず)をさらに備えるようにしてもよい。このようにバリア層を備えることで、入射面S1または出射面S2から波長選択反射層3への水分の拡散を低減し、波長選択反射層3に含まれる金属などの劣化を抑制することができる。したがって、光学フィルム1の耐久性を向上させることができる。
【0024】
光学フィルム1は、表面に耐擦傷性などを付与する観点から、ハードコート層8をさらに備えるようにしてもよい。このハードコート層8は、光学フィルム1の入射面S1および出射面S2のうち、窓材10などの被着体に貼り合わされる面とは反対側の面に形成することが好ましい。
【0025】
光学フィルム1は、光学フィルム1を窓材10などの被着体に容易に貼り合わせ可能にする観点からすると、可撓性を有することが好ましい。ここで、フィルムにはシートが含まれるものとする。すなわち、光学フィルム1には光学シートも含まれものとする。
【0026】
光学フィルム1は、透明性を有している。透明性としては、後述する透過像鮮明度の範囲を有するものであることが好ましい。第1の光学層4と第2の光学層5との屈折率差が、好ましくは0.010以下、より好ましくは0.008以下、さらに好ましくは0.005以下である。屈折率差が0.010を超えると、透過像がぼけて見える傾向がある。0.008を超え0.010以下の範囲であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。0.005を超え0.008以下の範囲であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。0.005以下であれば、回折パターンは殆ど気にならない。第1の光学層4および第2の光学層5のうち、窓材10などと貼り合わせる側となる光学層は、粘着剤を主成分としてもよい。このような構成とすることで、粘着材を主成分とする第1の光学層4、または第2の光学層5により光学フィルム1を窓材10などに貼り合わせることができる。なお、このような構成にする場合、粘着剤の屈折率差が上記範囲内であることが好ましい。
【0027】
第1の光学層4と第2の光学層5とは、屈折率などの光学特性が同じであることが好ましい。より具体的には、第1の光学層4と第2の光学層5とが、可視領域において透明性を有する同一材料からなることが好ましい。第1の光学層4と第2の光学層5とを同一材料により構成することで、両者の屈折率が等しくなるので、可視光の透明性を向上させることができる。ただし、同一材料を出発源としても、成膜工程における硬化条件などにより最終的に生成する層の屈折率が異なることがあるので、注意が必要である。これに対して、第1の光学層4と第2の光学層5とを異なる材料により構成すると、両者の屈折率が異なるので、波長選択反射層3を境界として光が屈折し、透過像がぼやける傾向がある。特に、遠くの電灯など点光源に近い物を観察すると回折パターンが顕著に観察される傾向がある。なお、屈折率の値を調整するために、第1の光学層4および/または第2の光学層5に添加剤を混入させてもよい。
【0028】
第1の光学層4と第2の光学層5は、可視領域において透明性を有することが好ましい。ここで、透明性の定義には2種類の意味があり、光の吸収がないことと、光の散乱がないことである。一般的に透明と言った場合に前者だけを指すことがあるが、第1の実施形態に係る光学フィルム1では両者を備えることが好ましい。現在利用されている再帰反射体は、道路標識や夜間作業者の衣服など、その表示反射光を視認することを目的としているため、例えば散乱性を有していても、下地反射体と密着していれば、その反射光を視認することができる。例えば、画像表示装置の前面に、防眩性の付与を目的として散乱性を有するアンチグレア処理をしても、画像は視認できるのと同一の原理である。しかしながら、第1の実施形態に係る光学フィルム1は、指向反射する特定の波長以外の光を透過する点に特徴を有しており、この透過波長を主に透過する透過体に接着し、その透過光を観察するため、光の散乱がないことが好ましい。但し、その用途によっては、第2の光学層5に意図的に散乱性を持たせることも可能である。
【0029】
光学フィルム1は、好ましくは、透過した特定波長以外の光に対して主に透過性を有する剛体、例えば、窓材10に粘着剤などを介して貼り合わせて使用される。窓材10としては、高層ビルや住宅などの建築用窓材、車両用の窓材などが挙げられる。建築用窓材に光学フィルム1を適用する場合、特に東〜南〜西向きの間のいずれかの向き(例えば南東〜南西向き)に配置された窓材10に光学フィルム1を適用することが好ましい。このような位置の窓材10に適用することで、より効果的に熱線を反射することができるからである。光学フィルム1は、単層の窓ガラスのみならず、複層ガラスなどの特殊なガラスにも用いることができる。また、窓材10は、ガラスからなるものに限定されるものではなく、透明性を有する高分子材料からなるものを用いてもよい。光学層2が、可視領域において透明性を有することが好ましい。このように透明性を有することで、光学フィルム1を窓ガラスなどの窓材10に貼り合せた場合、可視光を透過し、太陽光による採光を確保することができるからである。また、貼り合わせる面としてはガラスの内面のみならず、外面にも使用することができる。
【0030】
また、光学フィルム1は他の熱線カットフィルムと併用して用いることができ、例えば空気と光学フィルム1との界面(すなわち、光学フィルム1の最表面)に光吸収塗膜を設けることもできる。また、光学フィルム1は、ハードコート層、紫外線カット層、表面反射防止層などとも併用して用いることができる。これらの機能層を併用する場合、これらの機能層を光学フィルム1と空気との間の界面に設けることが好ましい。ただし、紫外線カット層については、光学フィルム1よりも太陽側に配置する必要があるため、特に室内の窓ガラス面に内貼り用として用いる場合には、該窓ガラス面と光学フィルム1の間に紫外線カット層を設けることが望ましい。この場合、窓ガラス面と光学フィルム1の間の接合層中に、紫外線吸収剤を練りこんでおいてもよい。
【0031】
また、光学フィルム1の用途に応じて、光学フィルム1に対して着色を施し、意匠性を付与するようにしてもよい。このように意匠性を付与する場合、透明性を損なわない範囲で光学層2が特定の波長帯の光のみ吸収する構成とすることが好ましい。
【0032】
図2は、光学フィルム1に対して入射する入射光と、光学フィルム1により反射された反射光との関係を示す斜視図である。光学フィルム1は、光Lが入射する入射面S1を有する。光学フィルム1は、入射角(θ、φ)で入射面S1に入射した光Lのうち、特定波長帯の光L1を選択的に正反射(−θ、φ+180°)以外の方向に指向反射するのに対して、特定波長帯以外の光L2を透過する。また、光学フィルム1は、上記特定波長帯以外の光に対して透明性を有する。透明性としては、後述する透過像鮮明度の範囲を有するものであることが好ましい。但し、θ:入射面S1に対する垂線l1と、入射光Lまたは反射光L1とのなす角である。φ:入射面S1内の特定の直線l2と、入射光Lまたは反射光L1を入射面S1に射影した成分とのなす角である。ここで、入射面内の特定の直線l2とは、入射角(θ、φ)を固定し、光学フィルム1の入射面S1に対する垂線l1を軸として光学フィルム1を回転したときに、φ方向への反射強度が最大になる軸である(図3および図4参照)。但し、反射強度が最大となる軸(方向)が複数ある場合、そのうちの1つを直線l2として選択するものとする。なお、垂線l1を基準にして時計回りに回転した角度θを「+θ」とし、反時計回りに回転した角度θを「−θ」とする。直線l2を基準にして時計回りに回転した角度φを「+φ」とし、反時計回りに回転した角度φを「−φ」とする。
【0033】
選択的に指向反射する特定の波長帯の光、および透過させる特定の光は、光学フィルム1の用途により異なる。例えば、窓材10に対して光学フィルム1を適用する場合、選択的に指向反射する特定の波長帯の光は近赤外光であり、透過させる特定の波長帯の光は可視光であることが好ましい。具体的には、選択的に指向反射する特定の波長帯の光が、主に波長帯域780nm〜2100nmの近赤外線であることが好ましい。近赤外線を反射することで、光学体をガラス窓などの窓材に貼り合わせた場合に、建物内の温度上昇を抑制することができる。したがって、冷房負荷を軽減し、省エネルギー化を図ることができる。ここで、指向反射とは、正反射以外のある特定の方向への反射光強度が、正反射光強度より強く、かつ、指向性を持たない拡散反射強度よりも十分に強いことを意味する。ここで、反射するとは、特定の波長帯域、例えば近赤外域における反射率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは80%以上であることを示す。透過するとは、特定の波長帯域、例えば可視光域における透過率が好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、更に好ましくは70%以上であることを示す。
【0034】
光学フィルム1において、指向反射する方向φoが−90°以上、90°以下であることが好ましい。光学フィルム1を窓材10に貼った場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空方向に戻すことができるからである。周辺に高い建物がない場合にはこの範囲の光学フィルム1が有用である。また、指向反射する方向が(θ、−φ)近傍であることが好ましい。近傍とは、好ましく(θ、−φ)から5度以内、より好ましくは3度以内であり、さらに好ましくは2度以内の範囲内のずれのことをいう。この範囲にすることで、光学フィルム1を窓材10に貼った場合、同程度の高さが立ち並ぶ建物の上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を他の建物の上空に効率良く戻すことができるからである。このような指向反射を実現するためには、例えば球面や双曲面の一部や三角錐、四角錘、円錐などの3次元構造体を用いることが好ましい。(θ、φ)方向(−90°<φ<90°)から入射した光は、その形状に基づいて(θo、φo)方向(0°<θo<90°、−90°<φo<90°)に反射させることができる。または、一方向に伸びた柱状体にすることが好ましい。(θ、φ)方向(−90°<φ<90°)から入射した光は、柱状体の傾斜角に基づいて(θo、−φ)方向(0°<θo<90°)に反射させることができる。
【0035】
光学フィルム1において、特定波長体の光の指向反射が、再帰反射近傍方向、すなわち、入射角(θ、φ)で入射面S1に入射した光に対する、特定波長体の光の反射方向が、(θ、φ)近傍であることが好ましい。光学フィルム1を窓材10に貼った場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空に戻すことができるからである。ここで近傍とは5度以内が好ましく、より好ましくは3度以内であり、さらに好ましくは2度以内である。この範囲にすることで、光学フィルム1を窓材10に貼った場合、上空から入射する光のうち、特定波長帯の光を上空に効率良く戻すことができるからである。また、赤外線センサーや赤外線撮像のように、赤外光照射部と受光部が隣接している場合は、再帰反射方向は入射方向と等しくなければならないが、本発明のように特定の方向からセンシングする必要がない場合は、厳密に同一方向とする必要はない。
【0036】
光学フィルム1において、透過性を持つ波長帯に対する透過像鮮明度に関し、0.5mmの光学くしを用いたときの値が、好ましくは50以上、より好ましくは60以上、さらに好ましくは75以上である。透過像鮮明度の値が50未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。50以上60未満であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。60以上75未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。75以上であれば、回折パターンは殆ど気にならない。更に0.125mm、0.5mm、1.0mm、2.0mmの光学くしを用いて測定した透過像鮮明度の値の合計値が、好ましくは230以上、より好ましくは270以上、さらに好ましくは350以上である。透過像鮮明度の合計値が230未満であると、透過像がぼけて見える傾向がある。230以上270未満であると、外の明るさにも依存するが日常生活には問題がない。270以上350未満であると、光源のように非常に明るい物体のみ回折パターンが気になるが、外の景色を鮮明に見ることができる。350以上であれば、回折パターンは殆ど気にならない。ここで、透過像鮮明度の値は、スガ試験機製ICM−1Tを用いて、JIS K7105に準じて測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合は、透過したい波長のフィルターを用いて校正した後に測定することが好ましい。
【0037】
光学フィルム1において、透過性を持つ波長帯に対するヘイズが、好ましくは6%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは2%以下である。ヘイズが6%を超えると、透過光が散乱され、曇って見えるためである。ここで、ヘイズは、村上色彩製HM−150を用いて、JIS K7136で規定される測定方法により測定したものである。ただし、透過させたい波長がD65光源波長と異なる場合は、透過したい波長のフィルターを用いて校正した後に測定することが好ましい。光学フィルム1の入射面S1、好ましくは入射面S1および出射面S2は、透過像鮮明度を低下させない程度の平滑性を有する。具体的には、入射面S1および出射面S2の算術平均粗さRaは、好ましくは0.08μm以下、より好ましくは0.06μm以下、さらに好ましくは0.04μm以下である。なお、上記算術平均粗さRaは、入射面の表面粗さを測定し、2次元断面曲線から粗さ曲線を取得し、粗さパラメータとして算出したものである。なお、測定条件はJIS B0601:2001に準拠している。以下に測定装置および測定条件を示す。
測定装置:全自動微細形状測定機 サーフコーダーET4000A(株式会社小坂研究所)
λc=0.8mm、評価長さ4mm、カットオフ×5倍
データサンプリング間隔0.5μm
【0038】
光学フィルム1の透過色はなるべくニュートラルに近く、色付きがあるとしても涼しい印象を与える青、青緑、緑色などの薄い色調が好ましい。このような色調を得る観点からすると、入射面S1から入射し、光学層2および波長選択反射層3を透過し、出射面S2から出射される透過光および反射光の色度座標x、yは、例えばD65光源の照射に対しては、好ましくは0.20<x<0.35かつ0.20<y<0.40、より好ましくは、0.25<x<0.32かつ0.25<y<0.37、更に好ましくは0.30<x<0.32かつ0.30<y<0.35の範囲を満たすのが望ましい。更に、色調が赤みを帯びないためには、好ましくはy>x−0.02、より好ましくはy>xの関係を満たすのが望ましい。また、反射色調が入射角度によって変化すると、例えばビルの窓に適用された場合に、場所によって色調が異なったり、歩くと色が変化して見えるため好ましくない。このような色調の変化を抑制する観点からすると、0°以上60°以下の入射角度θで入射面S1または出射面S2から入射し、光学層2および波長選択反射層3により反射された正反射光の色座標xの差の絶対値、および色座標yの差の絶対値が、光学フィルム1の両主面のいずれにおいても、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.03以下、さらに好ましくは0.01以下である。このような反射光に対する色座標x、yに関する数値範囲の限定は、入射面S1、および出射面S2の両方の面において満たされることが望ましい。
【0039】
以下、光学フィルム1を構成する第1の光学層4、第2の光学層5、および波長選択反射層3について順次説明する。
【0040】
(第1の光学層、第2の光学層)
第1の光学層4は、例えば、波長選択反射層3を支持し、かつ保護するためのものである。第1の光学層4は、光学フィルム1に可撓性を付与する観点から、例えば、樹脂を主成分とする層からなる。第1の光学層4の両主面のうち、例えば、一方の面は平滑面であり、他方の面は凹凸面(第1の面)である。波長選択反射層3は該凹凸面上に形成される。
【0041】
第2の光学層5は、波長選択反射層3が形成された第1の光学層4の第1の面(凹凸面)を包埋することにより、波長選択反射層3を保護するためのものである。第2の光学層5は、光学フィルム1に可撓性を付与する観点から、例えば、樹脂を主成分とする層からなる。第2の光学層5の両主面のうち、例えば、一方の面は平滑面であり、他方の面は凹凸面(第2の面)である。第1の光学層4の凹凸面と第2の光学層5の凹凸面とは、互いに凹凸を反転した関係にある。
【0042】
第1の光学層4の凹凸面は、例えば、1次元配列された複数の構造体4cにより形成されている。第2の光学層5の凹凸面は、例えば、1次元配列された複数の構造体5cにより形成されている(図3、図4参照)。第1の光学層4の構造体4cと第2の光学層5の構造体5cとは、凹凸が反転している点のみが異なるので、以下では第1の光学層4の構造体4cについて説明する。
【0043】
光学フィルム1において、構造体4cのピッチPは、例えば、5μm以上5mm以下、好ましくは30μm以上5mm以下、より好ましくは10μm以上250μm未満、さらに好ましくは20μm以上200μm以下である。構造体4cのピッチが5μm未満であると、構造体4cの形状を所望のものとすることが難しい上、波長選択反射層3の波長選択特性は一般的には急峻にすることが困難であるため、透過波長の一部を反射することがある。このような反射が起こると回折が生じて高次の反射まで視認されるため、透明性が悪く感じられる傾向がある。また、構造体4cのピッチが5mmを超えると、指向反射に必要な構造体4cの形状を考慮した場合、必要な膜厚が厚くなりフレキシブル性が失われ、窓材10などの剛体に貼りあわせることが困難になる。
【0044】
また、第1の光学層4の表面に形成される構造体4cの形状は1種類に限定されるものではなく、複数種類の形状の構造体4cを第1の光学層4の表面に形成するようにしてもよい。複数種類の形状の構造体4cを表面に設ける場合、複数種類の形状の構造体4cからなる所定のパターンが周期的に繰り返されるようにしてもよい。また、所望とする特性によっては、複数種類の構造体4cがランダム(非周期的)に形成されるようにしてもよい。
【0045】
図3A〜図3Cは、第1の光学層に形成された構造体の形状例を示す斜視図である。構造体4cは、一方向に延在された柱状の凹部であり、この柱状の構造体4cが一方向に向かって一次元配列されている。波長選択反射層3はこの構造体4c上に成膜させるため、波長選択反射層3の形状は、構造体4cの表面形状と同様の形状を有することになる。
【0046】
構造体4cの形状としては、例えば、図3Aに示すプリズム形状、図3Bに示す、プリズム間の谷部に丸みを付与した形状、図3Cに示すシリンドリカル形状、またはこれらの反転形状を挙げることができる。なお、稜線部分にはRがあっても良く、好ましくは曲率半径Rと構造体4cのピッチPの比R/Pが7%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下が好ましい。また、構造体4cの形状は、図3A〜図3Cに示した形状、またはこれらの反転形状に限定されるものではなく、トロイダル形状、双曲柱状、楕円柱状、多角柱状、自由曲面状としてもよい。構造体4cをプリズム形状とする場合、プリズム形状の構造体4cの傾斜角度θは、例えば45°である。構造体4cは、窓材10に適用した場合に、上空から入射した光を反射して上空に多く戻す観点からは、傾斜角が45°以上傾斜した平面または曲面を有することが好ましい。このような形状にすることで、入射光はほぼ1回の反射で上空へ戻るため、波長選択反射層3の反射率がそれ程高く無くとも効率的に上空方向へ入射光を反射できると共に、波長選択反射層3における光の吸収を低減できるからである。
【0047】
また、図4Aに示すように、構造体4cの形状を、光学フィルム1の入射面S1または出射面S2に垂直な垂線l1に対して非対称な形状としてもよい。この場合、構造体4cの主軸lmが、垂線l1を基準にして構造体4cの配列方向aに傾くことになる。ここで、構造体4cの主軸lmとは、構造体断面の底辺の中点と構造体の頂点とを通る直線を意味する。地面に対して略垂直に配置された窓材10に光学フィルム1を貼る場合には、図4Bに示すように、構造体4cの主軸lmが、垂線l1を基準にして窓材10の下方(地面側)に傾いていることが好ましい。一般に窓を介した熱の流入が多いのは昼過ぎ頃の時間帯であり、太陽の高度が45°より高いことが多いため、上記形状を採用することで、これら高角度から入射する光を効率的に上方に反射できるからである。図4Aおよび図4Bでは、プリズム形状の構造体4cを垂線l1に対して非対称な形状とした例が示されている。なお、プリズム形状以外の構造体4cを垂線l1に対して非対称な形状としてもよい。例えば、コーナーキューブ体を垂線l1に対して非対称な形状としてもよい。
【0048】
第1の光学層4が、100℃での貯蔵弾性率の低下が少なく、25℃と100℃とでの貯蔵弾性率が著しく異ならない樹脂を主成分としていることが好ましい。具体的には、25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下であり、100℃での貯蔵弾性率が3×107Pa以上である樹脂を含んでいることが好ましい。なお、第1の光学層4は、1種類の樹脂で構成されているのが好ましいが、2種類以上の樹脂を含んでいてもよい。また、必要に応じて、添加剤が混入されていてもよい。
【0049】
このように100℃での貯蔵弾性率の低下が少なく、25℃と100℃とでの貯蔵弾性率が著しく異ならない樹脂を主成分としていると、熱、または熱と加圧とを伴うプロセスが第1の光学層4の凹凸面(第1の面)を形成後に存在する場合でも、設計した界面形状をほぼ保つことができる。これに対して、100℃での貯蔵弾性率の低下が大きく、25℃と100℃とでの貯蔵弾性率が著しく異なる樹脂を主成分としていると、設計した界面形状からの変形が大きくなり、光学フィルム1にカールが生じたりする。
【0050】
ここで、熱を伴うプロセスには、アニール処理などのように直接的に光学フィルム1またはその構成部材に対して熱を加えるようなプロセスのみならず、薄膜の成膜時、および樹脂組成物の硬化時などに、成膜面が局所的に温度上昇して間接的にそれらに対して熱を加えるようなプロセスや、エネルギー線照射により金型の温度が上昇し、間接的に光学フィルムに熱を加えるようなプロセスも含まれる。また、上述した貯蔵弾性率の数値範囲を限定することにより得られる効果は、樹脂の種類に特に限定されず、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、およびエネルギー線照射型樹脂のいずれでも得ることができる。
【0051】
第1の光学層4の貯蔵弾性率は、例えば以下のようにして確認することができる。第1の光学層4の表面が露出している場合には、その露出面の貯蔵弾性率を微小硬度計を用いて測定することにより確認することができる。また、第1の光学層4の表面に第1の基材4aなどが形成されている場合には、第1の基材4aなどを剥離して、第1の光学層4の表面を露出させた後、その露出面の貯蔵弾性率を微小硬度計を用いて測定することにより確認することができる。
【0052】
高温下での弾性率の低下を抑制する方法としては、例えば、熱可塑性樹脂にあっては、側鎖の長さおよび種類などを調整する方法が挙げられ、熱硬化型樹脂、およびエネルギー線照射型樹脂にあっては、架橋点の量および架橋材の分子構造などを調整する方法が挙げられる。但し、このような構造変更によって樹脂材料そのものに求められる特性が損なわれないようにすることが好ましい。例えば、架橋剤の種類によっては室温付近での弾性率が高くなり、脆くなってしまったり、収縮が大きくなりフィルムが湾曲したり、カールしたりすることがあるので、架橋剤の種類を所望とする特性に応じて適宜選択することが好ましい。
【0053】
第1の光学層4が、結晶性高分子材料を主成分として含んでいる場合には、ガラス転移点が、製造プロセス中の最高温度より大きく、製造プロセス中の最高温度下での貯蔵弾性率の低下が少ない樹脂を主成分としていることが好ましい。これに対して、ガラス転移点が、室温25℃以上、製造プロセス中の最高温度以下の範囲内にあり、製造プロセス中の最高温度下での貯蔵弾性率の低下が大きい樹脂を用いると、製造プロセス中に、設計した理想的な界面形状を保持することが困難になる。
【0054】
第1の光学層4が、非晶性高分子材料を主成分として含んでいる場合には、融点が、製造プロセス中の最高温度より大きく、製造プロセス中の最高温度下での貯蔵弾性率の低下が少ない樹脂を主成分としていることが好ましい。これに対して、融点が、室温25℃以上、製造プロセス中の最高温度以下の範囲内にあり、製造プロセス中の最高温度下での貯蔵弾性率の低下が大きい樹脂を用いると、製造プロセス中に、設計した理想的な界面形状を保持することが困難になる。
【0055】
ここで、製造プロセス中の最高温度とは、製造プロセス中における第1の光学層4の凹凸面(第1の面)の最高温度を意味している。上述した貯蔵弾性率の数値範囲、およびガラス転移点の温度範囲は、第2の光学層5も満たしていることが好ましい。
【0056】
第1の光学層4、および第2の光学層5の少なくとも一方が、25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下である樹脂を含んでいることが好ましい。室温25℃において光学フィルム1に可撓性を付与することができるので、ロール・ツー・ロールでの光学フィルム1の製造が可能となるからである。
【0057】
第1の基材4a、および第2の基材5aは、例えば、透明性を有している。基材51の形状としては、光学フィルム1に可撓性を付与する観点から、フィルム状を有することが好ましいが、特にこの形状に限定されるものではない。第1の基材4a、および第2の基材5aの材料としては、例えば、公知の高分子材料を用いることができる。公知の高分子材料としては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられるが、特にこれらの材料に限定されるものではない。第1の基材4a、および第2の基材5aの厚さは、生産性の観点から38〜100μmであることが好ましいが、この範囲に特に限定されるものではない。第1の基材4a、および第2の基材5aは、エネルギー線透過性を有することが好ましい。これにより、後述するように、第1の基材4a、または第2の基材5aと波長選択反射層3との間に介在させたエネルギー線硬化型樹脂に対して、第1の基材4a、または第2の基材5a側からエネルギー線を照射し、エネルギー線硬化型樹脂を硬化させることができるからである。
【0058】
第1の光学層4、および第2の光学層5は、例えば、透明性を有する。第1の光学層4、および第2の光学層5は、例えば、樹脂組成物を硬化することにより得られる。樹脂組成物としては、製造の容易性の観点からすると、光または電子線などにより硬化するエネルギー線硬化型樹脂、または熱により硬化する熱硬化型樹脂を用いることが好ましい。エネルギー線硬化型樹脂としては、光により硬化する感光性樹脂組成物が好ましく、紫外線により硬化する紫外線硬化型樹脂組成物が最も好ましい。樹脂組成物は、第1の光学層4、または第2の光学層5と波長選択反射層3との密着性を向上させる観点から、リン酸を含有する化合物、コハク酸を含有する化合物、ブチロラクトンを含有する化合物をさらに含有することが好ましい。リン酸を含有する化合物としては、例えばリン酸を含有する(メタ)アクリレート、好ましくはリン酸を官能基に有する(メタ)アクリルモノマーまたはオリゴマーを用いることができる。コハク酸を含有する化合物としては、例えば、コハク酸を含有する(メタ)アクリレート、好ましくはコハク酸を官能基に有する(メタ)アクリルモノマーまたはオリゴマーを用いることができる。ブチロラクトンを含有する化合物としては、例えば、ブチロラクトンを含有する(メタ)アクリレート、好ましくはブチロラクトンを官能基に有する(メタ)アクリルモノマーまたはオリゴマーを用いることができる。
【0059】
紫外線硬化型樹脂組成物は、例えば、(メタ)アクリレートと、光重合開始剤とを含有している。また、紫外線硬化型樹脂組成物が、必要に応じて、光安定剤、難燃剤、レベリング剤および酸化防止剤などをさらに含有するようにしてもよい。
【0060】
アクリレートとしては、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーを用いることが好ましい。このモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレートなどを用いることができる。ここで、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基およびメタアクリロイル基のいずれかを意味するものである。ここで、オリゴマーとは、分子量500以上60000以下の分子をいう。
【0061】
多官能モノマーとしては、例えば、エタンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,14−テトラデカンジオールジアクリレート、1,15−ペンタデカンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−ブチル−2−エチルプロパンジオールジアクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレンオキシド変性水添ビスフェノールAジアクリレート、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリプロピレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールエステルのカプロラクトン付加物ジアクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ポリオキシエチレンエピクロロヒドリン変性ビスフェノールAジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリエチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ポリプロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレート、エチレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、ポリエチレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、プロピレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、ポリプロピレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0062】
更に具体的な商品名として例を挙げると、大阪有機化学工業(株)社製では、ビスコート215、ビスコート230、ビスコート195、ビスコート300、ビスコート3PA、ビスコート295、ビスコート310など、共栄社化学(株)社製では、TMP−A9EGA、NPA、1.6HX−A、BP−4EA、ライトエステル1、3−BG、ライトエステル2EG、ライトエステルEG、エポキシエステル40EM、ライトエステル1,6HX、4EG−A、エポキシエステル70PA、3EG−A、エポキシエステル80MFA、ライトエステルTMPなど、新中村化学工業(株)社製では、NKエステルNPG、NKエステルA−NPG、NKエステルHD、NKエステルA−HD、NKエステルA−BPE−4、NKエステルBPE−200、NKエステルBPE−500、NKエステルBPE−1300、NKエステルBG、NKエステル2G、NKエステルIG、NKエステル701−A、NKエステル701、NKエステルA−TMM−3、NKエステルA−TMMT、NKエステル、NKエステルA−200、NKエステルA−400、NKエステルA−600、NKエステル4G、NKエステル9G、NKエステル14G、NKエステル23G、NKエステルAPG−400、NKエステル9PG、NKエステル3G、NKエステルA−TMPT、NKエステルTMPT、NKエステルAPG−200、NKエステルA−DCP、NKエステルDCP、NKエステルA−DOG、NKエステルA−9300、NKエステルA−9300−1CL、NKエステルA−DPH、NKエステルA−GLYなど、日本化薬(株)社製では、カヤラッドR−526、カヤラッドR−551、カヤラッドR−712、カヤラッドR−684、カヤラッドDEGDA、カヤラッドDPHA、カヤラッドD−310、カヤラッドD−320、カヤラッドD−330、カヤラッドDPCA−20、カヤラッドDPCA−30、カヤラッドDPCA−60、カヤラッドDPCA−120、カヤラッドHDDA、カヤラッドR−167、カヤラッドNPGDA、カヤラッドMANDA、カヤラッドHX−220、カヤラッドHX−620、カヤラッドPET−30、カヤラッドPET−40、カヤマーPM−2、カヤマーPM−21、カヤラッドPEG400DA、カヤラッドR−604、カヤラッドTMPTA、カヤラッドTPA−330、カヤラッドTPA−310、カヤラッドTPA−320、カヤラッドTPA−330、カヤラッドTPGDAなど、東亞合成(株)社製では、アロニックスM−205、アロニックスM−210、アロニックスM−215、アロニックスM−220、アロニックスM−233、アロニックスM−240、アロニックスM−245、アロニックスM−305、アロニックスM−309、アロニックスM−310、アクロニックスM−313、アロニックスM−315、アロニックスM−320、アロニックスM−325、アクロニックスM−327、アロニックスM−400、アロニックスM−450、TO−458、TO−747、TO−755、THIC、TA2など、サートマー社製では、SR−349、SR−348、SR−213、SR−214、SR−212、SR−297、SR−230、SR−231、SR−399、SR−355、SR−238、SR−239、C−2000、C−2100、SR−444、SR−295、SR−367、SR−259、SR−344、SR−210、SR−252、SR−268、SR−209、SR−640、SR−272、SR−205、SR−351、SR−454、SR−350、SR−306、SR−368、SR−290、SR−416、SR−365など、東京化成工業(株)社製では、T2325などが挙げられるが、これらに限られたものではない。
【0063】
光重合開始剤としては、公知の材料から適宜選択したものを使用できる。公知の材料としては、例えば、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、アントラキノン誘導体などを単独で、または併用して用いることができる。重合開始剤の配合量は、固形分中0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。0.1質量%未満であると、光硬化性が低下し、実質的に工業生産に適さない。一方、10質量%を超えると、照射光量が小さい場合に、塗膜に臭気が残る傾向にある。ここで、固形分とは、硬化後のハードコート層12を構成する全ての成分をいう。具体的には例えば、アクリレート、および光重合開始剤などを固形分という。
【0064】
樹脂はエネルギー線照射や熱などによって構造を転写できるものが好ましく、ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、熱可塑性樹脂など上述の屈折率の要求を満たすものであればどのような種類の樹脂を使用しても良い。
【0065】
硬化収縮を低減するために、オリゴマーを添加してもよい。硬化剤としてポリイソシアネートなどを含んでもよい。また、第1の光学層4、および第2の光学層5との密着性を考慮して水酸基やカルボキシル基、リン酸基を有するような単量体、多価アルコール類、カルボン酸、シラン、アルミ、チタンなどのカップリング剤や各種キレート剤などを添加しても良い。
【0066】
ビニル系樹脂としてはアクリル(メタ)系樹脂が好ましく、好ましいアクリル(メタ)系樹脂としては水酸基含有ビニル系単量体の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレートまたはモノ−2−ヒドロキシエチル−モノブチルフマレートをはじめ、ポリエチレングリコール−ないしはポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートまたは此等とε−カプロラクトンとの付加物、「プラクセル FMないしはFAモノマー」[ダイセル化学(株)製の、カプロラクトン付加モノマーの商品名]などの、各種のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類などが挙げられる。
【0067】
カルボキシル基含有ビニル系単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸もしくはシトラコン酸などの、各種の不飽和モノ−ないしはジカルボン酸類またはフマル酸モノエチル、マレイン酸モノブチルなどのジカルボン酸モノエステル類、または、前掲の水酸基含有(メタ)アクリレート類と、こはく酸、マレイン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ベンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸、「ハイミック酸」[日立化成工業(株)製品;「ハイミック酸」は同社の登録商標である。]、テトラクロロフタル酸などの各種のポリカルボン酸の無水物との付加物などが挙げられる。
【0068】
リン酸基含有ビニル系単量体の具体例としては、ジアルキル〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕ホスフェート類または(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドホスフェート類、ジアルキル〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕ホスファイト類もしくは(メタ)アクリロイルオキシアルキルアシッドホスファイト類が挙げられる。
【0069】
多価アルコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールまたはソルビトールなどの、各種の多価アルコール類の1種または2種以上を使用することができる。またアルコールではないが、「カージュラ E」〔オランダ国シェル社製の、脂肪酸のグリシジルエステルの商品名〕などの、各種の脂肪酸グリシジルエステル類などをアルコールの代わりに使用することができる。
【0070】
カルボン酸としては、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、(無水)フタル酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸、テトラクロロ(無水)フタル酸、ヘキサクロロ(無水)フタル酸、テトラブロモ(無水)フタル酸、トリメリット酸、「ハイミック酸」、(無水)こはく酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、アジピン酸、セバチン酸またはしゅう酸などのような、種々のカルボン酸類を使用することができる。これらの単量体は単独で用いても共重合させても良く、共重合可能な単量体を以下に例示する。
【0071】
スチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、イソプロピルスチレンまたはp−tert−ブチルスチレンなどのスチレン系単量体。
【0072】
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソ(i)−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートもしくはラウリル(メタ)アクリレート、「アクリエステル SL」[三菱レーヨン(株)製の、C12−/C13メタクリレート混合物の商品名]、ステアリル(メタ)アクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートもしくはイソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの側鎖に官能基を含有しない(メタ)アクリレート類;およびエチレン−ジ−(メタ)アクリレートなどの二官能性ビニル系単量体類。
【0073】
メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートもしくはメトキシブチル(メタ)アクリレートなどの、各種のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類。
【0074】
ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジエチルフマレート、ジ(n−ブチル)フマレート、ジ(i−ブチル)フマレートもしくはジブチルイタコネートなどの、マレイン酸、フマル酸もしくはイタコン酸により代表される各種のジカルボン酸類と1価アルコール類とのジエステル類。
【0075】
酢酸ビニル、安息香酸ビニルもしくは「ベオバ」〔オランダ国シェル社製の、分岐状(分枝状)脂肪族モノカルボン酸類のビニルエステルの商品名〕、(メタ)アクリロニトリルなどの、各種のビニルエステル類。
【0076】
N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのような、N,N−アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート類;や(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドのブチルエーテル、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのようなアミド結合含有ビニル系単量体などの窒素含有ビニル系単量体類。
上述したプレポリマーなどの含有量は、波長選択反射層3に含まれる誘電体層、または金属層などの性質に応じて任意に調整することができる。
【0077】
樹脂組成物が、架橋剤をさらに含んでいることが好ましい。この架橋剤としては、環状の架橋剤を用いることが特に好ましい。架橋剤を用いることで、室温での貯蔵弾性率を大きく変化させることなく、樹脂を耐熱化することができるからである。なお、室温での貯蔵弾性率が大きく変化すると、光学フィルム1が脆くなり、ロール・ツー・ロール工程などによる光学フィルム1の作製が困難となる。環状の架橋剤としては、例えば、ジオキサングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジアクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸トリアクリレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどを挙げることができる。
【0078】
第1の基材4a、または第2の基材5aは、第1の光学層4、または第2の光学層5より水蒸気透過率が低いことが好ましい。例えば、第1の光学層4をウレタンアクリレートのようなエネルギー線硬化型樹脂で形成する場合には、第1の基材4aを第1の光学層4より水蒸気透過率が低く、かつ、エネルギー線透過性を有するポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂により形成することが好ましい。これにより、入射面S1または出射面S2から波長選択反射層3への水分の拡散を低減し、波長選択反射層3に含まれる金属などの劣化を抑制することができる。したがって、光学フィルム1の耐久性を向上させることができる。なお、厚み75μmのPETの水蒸気透過率は、10g/m2/day(40℃、90%RH)程度である。
【0079】
第1の光学層4および第2の光学層5の少なくとも一方が、極性の高い官能基を含み、その含有量が第1の光学層4と第2の光学層5とで異なることが好ましい。第1の光学層4と第2の光学層5との両方が、リン酸化合物(例えば、リン酸エステル)を含み、第1の光学層4と第2の光学層5とにおける上記リン酸化合物の含有量が異なることが好ましい。リン酸化合物の含有量は、第1の光学層4と第2の光学層5とにおいて、好ましくは2倍以上、より好ましくは5倍以上、さらに好ましくは10倍以上異なることが好ましい。
【0080】
第1の光学層4、および第2の光学層5の少なくとも一方が、リン酸化合物を含む場合、波長選択反射層3は、リン酸化合物を含む第1の光学層4または第2の光学層5と接する面に、酸化物もしくは窒化物、酸窒化物を含むことが好ましい。波長選択反射層3は、リン酸化合物を含む第1の光学層4または第2の光学層5と接する面に、酸化亜鉛または酸化ニオブを含む層を有することが特に好ましい。波長選択反射層3がAg等の金属を含む場合に、腐食防止効果が高いからである。また、この層は、Al、Gaなどのドーパントを含有していても良い。金属酸化物層をスパッタ法等で形成する場合に、膜質や平滑性が向上するからである。
【0081】
第1の光学層4、および第2の光学層5の少なくとも一方が、光学フィルム1や窓材10などに意匠性を付与する観点からすると、可視領域における特定の波長の光を吸収する特性を有することが好ましい。樹脂中に分散させる顔料は、有機系顔料および無機系顔料のいずれであってもよいが、特に顔料自体の耐候性が高い無機系顔料とすることが好ましい。具体的には、ジルコングレー(Co、NiドープZrSiO4)、プラセオジムイエロー(PrドープZrSiO4)、クロムチタンイエロー(Cr、SbドープTiO2またはCr、WドープTiO2)、クロムグリーン(Cr23など)、ピーコックブルー((CoZn)O(AlCr)23)、ビクトリアグリーン((Al、Cr)23)、紺青(CoO・Al23・SiO2)、バナジウムジルコニウム青(VドープZrSiO4)、クロム錫ピンク(CrドープCaO・SnO2・SiO2)、陶試紅(MnドープAl23)、サーモンピンク(FeドープZrSiO4)などの無機顔料、アゾ系顔料やフタロシアニン系顔料などの有機顔料が挙げられる。
【0082】
(波長選択反射層)
波長選択反射層3は、例えば、積層膜、透明導電層、機能層、または半透過層である。また、積層膜、透明導電層、および機能層、半透過層を2以上組み合わせて波長選択反射層としてもよい。波長選択反射層3の平均膜厚は、好ましくは20μm、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。波長選択反射層3の平均膜厚が20μmを超えると、透過光が屈折する光路が長くなり、透過像が歪んで見える傾向がある。波長選択反射層の形成方法としては、例えば、スパッタ法、蒸着法、ディップコーティング法、ダイコーティング法などを用いることができる。
【0083】
以下、積層膜、透明導電層、機能層、または半透過層について順次説明する。
(積層膜)
積層膜は、例えば、屈折率の異なる低屈折率層および高屈折率層を交互に積層してなる積層膜である。または、積層膜は、例えば、赤外領域において反射率の高い金属層と、可視領域において屈折率が高く反射防止層として機能する光学透明層、または透明導電層とを交互に積層してなる積層膜である。
【0084】
赤外領域において反射率の高い金属層は、例えば、Au、Ag、Cu、Al、Ni、Cr、Ti、Pd、Co、Si、Ta、W、Mo、Geなどの単体、またはこれらの単体を2種以上含む合金を主成分とする。そして、実用性の面を考慮すると、これらのうちのAg系、Cu系、Al系、Si系またはGe系の材料が好ましい。また、金属層の材料として合金を用いる場合には、金属層は、AlCu、AlTi、AlCr、AlCo、AlNdCu、AlMgSi、AgPdCu、AgPdTi、AgCuTi、AgPdCa、AgPdMg、AgPdFe、AgまたはSiBなどを主成分とすることが好ましい。また、金属層の腐食を抑えるために、金属層に対してTi、Ndなどの材料を添加することが好ましい。特に、金属層の材料としてAgを用いる場合には、上記材料を添加することが好ましい。
【0085】
光学透明層は、可視領域において屈折率が高く反射防止層として機能する光学透明層である。光学透明層は、例えば酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化チタンなどの高誘電体を主成分とする。透明導電層は、例えば、酸化亜鉛、酸化インジウム錫(ITO)などの主成分とする。
【0086】
なお、積層膜は、無機材料を主成分とする薄膜に限定されるものではなく、高分子材料からなる薄膜や高分子中に微粒子などを分散した層を積層して構成してもよい。また、これら光学透明層成膜時の下層金属の酸化劣化を防ぐ目的で、成膜する光学透明層の界面に数nm程度のTiなどの薄いバッファー層を設けてもよい。ここで、バッファー層とは、上層成膜時に、自らが酸化することで下層である金属層などの酸化を抑制するための層である。
【0087】
(透明導電層)
透明導電層は、可視領域において透明性を有する導電性材料を主成分とする透明導電層である。透明導電層は、例えば、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、アンチモンドープ酸化錫、カーボンナノチューブ含有体などの透明導電物質を主成分とする。もしくはこれらのナノ粒子や金属などの導電性を持つ材料のナノ粒子、ナノロッド、ナノワイヤーを樹脂中に高濃度に分散させた層を用いても良い。
【0088】
(機能層)
機能層は、外部刺激により反射性能などが可逆的に変化するクロミック材料を主成分とする。クロミック材料は、例えば、熱、光、侵入分子などの外部刺激により構造を可逆的に変化させる材料である。クロミック材料としては、例えば、フォトクロミック材料、サーモクロミック材料、ガスクロミック材料、エレクトロクロミック材料を用いることができる。
【0089】
フォトクロミック材料とは、光の作用により構造を可逆的に変化させる材料である。フォトクロミック材料は、例えば紫外線などの光照射により、反射率や色などの様々な物性を可逆的に変化させることができる。フォトクロミック材料としては、例えばCr、Fe、NiなどをドープしたTiO2、WO3、MoO3、Nb25などの遷移金属酸化物を用いることができる。また、これらの層と屈折率の異なる層を積層することで波長選択性を向上させることもできる。
【0090】
サーモクロミック材料とは、熱の作用により構造を可逆的に変化させる材料である。フォトクロミック材料は、加熱により、反射率や色などの様々な物性を可逆的に変化させることができる。サーモクロミック材料としては、例えばVO2などを用いることができる。また、転移温度や転移カーブを制御する目的で、W、Mo、Fなどの元素を添加することもできる。また、VO2などのサーモクロミック材料を主成分とする薄膜を、TiO2やITOなどの高屈折率体を主成分とする反射防止層で挟んだ積層構造としてもよい。
【0091】
または、コレステリック液晶などのフォトニックラティスを用いることもできる。コレステリック液晶は層間隔に応じた波長の光を選択的に反射することができ、この層間隔は温度によって変化するため、加熱により、反射率や色などの物性を可逆的に変化させることができる。この時、層間隔の異なるいくつかのコレステリック液晶層を用いて反射帯域を広げることも可能である。
【0092】
エレクトロクロミック材料とは、電気により、反射率や色などの様々な物性を可逆的に変化させることができる材料である。エレクトロクロミック材料としては、例えば、電圧の印加により構造を可逆的に変化させる材料を用いることができる。より具体的には、エレクトロクロミック材料としては、例えば、プロトンなどのドープまたは脱ドープにより、反射特性が変わる反射型調光材料を用いることができる。反射型調光材料とは、具体的には、外部刺激により、光学的な性質を透明な状態と、鏡の状態、および/またはその中間状態に制御することができる材料である。このような反射型調光材料としては、例えば、マグネシウムおよびニッケルの合金材料、マグネシウムおよびチタンの合金材料を主成分とする合金材料、WO3やマイクロカプセル中に選択反射性を有する針状結晶を閉じ込めた材料などを用いることができる。
【0093】
具体的な機能層の構成としては、例えば、第2の光学層上に、上記合金層、Pdなどを含む触媒層、薄いAlなどのバッファー層、Ta25などの電解質層、プロトンを含むWO3などのイオン貯蔵層、透明導電層が積層された構成を用いることができる。または、第2の光学層上に透明導電層、電解質層、WO3などのエレクトロクロミック層、透明導電層が積層された構成を用いることができる。これらの構成では、透明導電層と対向電極の間に電圧を印加することにより、電解質層に含まれるプロトンが合金層にドープまたは脱ドープされる。これにより、合金層の透過率が変化する。また、波長選択性を高めるために、エレクトロクロミック材料をTiO2やITOなどの高屈折率体と積層することが望ましい。また、その他の構成として、第2の光学層上に透明導電層、マイクロカプセルを分散した光学透明層、透明電極が積層された構成を用いることができる。この構成では、両透明電極間に電圧を印加することにより、マイクロカプセル中の針状結晶が配向した透過状態にしたり、電圧を除くことで針状結晶が四方八方を向き、波長選択反射状態にすることができる。
【0094】
(半透過層)
半透過層は、例えば、単層または複数層の金属層からなり、半透過性を有するものである。金属層の材料としては、例えば、上述の積層膜の金属層と同様のものを用いることができる。
【0095】
(光学フィルムの機能)
図5A、図5Bは、光学フィルムの機能の一例を説明するための断面図である。ここでは、例として、構造体の形状が傾斜角45°のプリズム形状である場合を例として説明する。図5Aに示すように、この光学フィルム1に入射した太陽光のうち近赤外線L1の一部は、入射した方向と同程度の上空方向に指向反射するのに対して、可視光L2は光学フィルム1を透過する。
【0096】
また、図5Bに示すように、光学フィルム1に入射し、波長選択反射層3の反射層面で反射された光は、入射角度に応じた割合で、上空反射する成分LAと、上空反射しない成分LBとに分離する。そして、上空反射しない成分LBは、第2の光学層4と空気との界面で全反射した後、最終的に入射方向とは異なる方向に反射する。
【0097】
光の入射角度をα、第1の光学層4の屈折率をn、波長選択反射層3の反射率をRとすると、全入射成分に対する上空反射成分LAの割合xは以下の式(1)で表される。
x=(sin(45−α')+cos(45−α’)/tan(45+α'))/(sin(45−α')+cos(45−α'))×R2 ・・・(1)
但し、α'=sin-1(sinα/n)
【0098】
上空反射しない成分LBの割合が多くなると、入射光が上空反射する割合が減少する。上空反射の割合を向上させるためには、波長選択反射層3の形状、すなわち、第1の光学層4の構造体4cの形状を工夫することが有効である。例えば、上空反射の割合を向上させるためには、構造体4cの形状は、図3Cに示すシリンドリカル形状、または図4に示す非対称な形状とすることが好ましい。このような形状にすることで、入射光と全く同じ方向に光を反射することはできなくても、建築用窓材などの上方向から入射した光を上方向に反射させる割合を多くすることが可能である。図3Cおよび図4に示す二つの形状は、図6Aおよび図6Bに示すように、波長選択反射層3による入射光の反射回数が1回で済むため、図5に示すような2回(もしくは3回以上)反射させる形状よりも、最終的な反射成分を多くすることが可能である。例えば、2回反射を利用する場合、波長選択反射層3のある波長に対する反射率を80%とすると、上空反射率は理論的には64%となるが、1回反射で済めば上空反射率は80%となる。
【0099】
図7は、柱状の構造体4cの稜線l3と、入射光Lおよび反射光L1との関係を示す。光学フィルム1は、入射角(θ、φ)で入射面S1に入射した光Lのうち、特定波長帯の光L1を選択的に(θo、−φ)の方向(0°<θo<90°)に指向反射するのに対して、特定波長帯以外の光L2を透過することが好ましい。このような関係を満たすことで、特定波長帯の光を上空方向に反射できるからである。但し、θ:入射面S1に対する垂線l1と、入射光Lまたは反射光L1とのなす角である。φ:入射面S1内において柱状の構造体4cの稜線l3と直交する直線とl2と、入射光Lまたは反射光L1を入射面S1に射影した成分とのなす角である。なお、垂線l1を基準にして時計回りに回転した角度θを「+θ」とし、反時計回りに回転した角度θを「−θ」とする。直線l2を基準にして時計回りに回転した角度φを「+φ」とし、反時計回りに回転した角度φを「−φ」とする。
【0100】
[光学フィルムの製造装置]
図8は、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムを製造するための製造装置の一構成例を示す概略図である。図8に示すように、この製造装置は、ラミネートロール41、42、ガイドロール43、塗布装置45、および照射装置46を備える。
【0101】
ラミネートロール41、42は、反射層付き光学層9と、第2の基材5aとをニップできるように配置されている。ここで、反射層付き光学層9は、第1の光学層4の一主面上に波長選択反射層3を成膜したものである。なお、反射層付き光学層9として、第1の光学層4の波長選択反射層3が成膜された面と反対側の他主面上に第1の基材4aが形成されていてもよい。この例では、第1の光学層4の一主面上に波長選択反射層3が成膜され、他主面上に第1の基材4aが形成された場合が示されている。ガイドロール43は、帯状の光学フィルム1を搬送できるように、この製造装置内の搬送路に配置されている。ラミネートロール41、42およびガイドロール43の材質は特に限定されるものではなく、所望とするロール特性に応じてステンレスなどの金属、ゴム、シリコーンなどを適宜選択して用いることができる。
【0102】
塗布装置45は、例えば、コーターなどの塗布手段を備える装置を用いることができる。コーターとしては、例えば、塗布する樹脂組成物の物性などを考慮して、グラビア、ワイヤバー、およびダイなどのコーターを適宜使用することができる。照射装置46は、例えば、電子線、紫外線、可視光線、またはガンマ線などの電離線を照射する照射装置である。この例では、照射装置46として紫外線を照射するUVランプを用いた場合が図示されている。
【0103】
[光学フィルムの製造方法]
以下、図8〜図11を参照して、本発明の第1の実施形態に係る光学フィルムの製造方法の一例について説明する。なお、以下に示す製造プロセスの一部または全部は、生産性を考慮して、図8に示すようなロール・ツー・ロールにより行われることが好ましい。但し、金型の作製工程は除くものとする。
【0104】
まず、図9Aに示すように、例えばバイト加工またはレーザー加工などにより、構造体4cと同一の凹凸形状の金型、またはその金型の反転形状を有する金型(レプリカ)を形成する。次に、図9Bに示すように、例えば溶融押し出し法または転写法などを用いて、上記金型の凹凸形状をフィルム状の樹脂材料に転写する。転写法としては、型にエネルギー線硬化型樹脂を流し込み、エネルギー線を照射して硬化させる方法、樹脂に熱や圧力を加え、形状を転写する方法、または樹脂フィルムをロールから供給し、熱を加えながら型の形状を転写する方法(ラミネート転写法)などが挙げられる。これにより、図9Cに示すように、一主面に構造体4cを有する第1の光学層4が形成される。
【0105】
また、図9Cに示すように、第1の基材4a上に、第1の光学層4を形成するようにしてもよい。この場合には、例えば、フィルム状の第1の基材4aをロールから供給し、該基材上にエネルギー線硬化型樹脂を塗布した後に型に押し当て、型の形状を転写し、エネルギー線を照射して樹脂を硬化させる方法が用いられる。なお、樹脂は、架橋剤をさらに含んでいることが好ましい。室温での貯蔵弾性率を大きく変化させることなく、樹脂を耐熱化することができるからである。
【0106】
次に、図10Aに示すように、その第1の光学層4の一主面上に波長選択反射層3を成膜する。波長選択反射層3の成膜方法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ディップコーティング法、ダイコーティング法、ウェットコーティング法、スプレーコーティング法などが挙げられ、これらの成膜方法から、構造体4cの形状などに応じて適宜選択することが好ましい。次に、図10Bに示すように、必要に応じて、波長選択反射層3に対してアニール処理31を施す。アニール処理の温度は、例えば100℃以上250℃以下の範囲内である。
【0107】
次に、図10Cに示すように、未硬化状態の樹脂22を波長選択反射層3上に塗布する。樹脂22としては、例えば、エネルギー線硬化型樹脂、または熱硬化型樹脂などを用いることができる。エネルギー線硬化型樹脂としては、紫外線硬化樹脂が好ましい。次に、図11Aのように、樹脂21上に第2の基材5aを被せることにより、積層体を形成する。次に、図11Bに示すように、例えばエネルギー線32または加熱32により樹脂22を硬化させるとともに、積層体に対して圧力33を加える。エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線、可視光線、ガンマ線、電子線などを用いることができ、生産設備の観点から、紫外線が好ましい。積算照射量は、樹脂の硬化特性、樹脂や基材11の黄変抑制などを考慮して適宜選択することが好ましい。積層体に加える圧力は、0.01MPa以上1MPa以下の範囲内であることが好ましい。0.01MPa未満であると、フィルムの走行性に問題が生じる。一方、1MPaを超えると、ニップロールとして金属ロールを用いる必要があり、圧力ムラが生じ易く好ましくない。以上により、図11Cに示すように、波長選択反射層3上に第2の光学層5が形成され、光学フィルム1が得られる。
【0108】
ここで、図8に示す製造装置を用いて、光学フィルム1の形成方法について具体的に説明する。まず、図示しない基材供給ロールから第2の基材5aを送出し、送出された第2の基材5aは、塗布装置45の下を通過する。次に、塗布装置45の下を通過する第2の基材5a状に、塗布装置45により電離線硬化樹脂44を塗布する。次に、電離線硬化樹脂44が塗布された第2の基材5aをラミネートロールに向けて搬送する。一方、図示しない光学層供給ロールから反射層付き光学層9を送出し、ラミネートロール41、42に向けて搬送する。
【0109】
次に、第2の基材5aと反射層付き光学層9との間に気泡が入らないように、搬入された第2の基材5aと反射層付き光学層9とをラミネートロール41、42により挟み合わせ、第2の基材5aに対して反射層付き光学層9をラミネートする。次に、反射層付き光学層9によりラミネートされた第2の基材5aを、ラミネートロール41の外周面に沿わせながら搬送するとともに、照射装置46により第2の基材5a側から電離線硬化樹脂44に電離線を照射し、電離線硬化樹脂44を硬化させる。これにより、第2の基材5aと反射層付き光学層9とが電離線硬化樹脂44を介して貼り合わされ、目的とする長尺の光学フィルム1が作製される。次に、作製された帯状の光学フィルム1を図示しない巻き取りロールにより巻き取る。これにより、帯状の光学フィルム1が巻回された原反が得られる。
【0110】
硬化した第1の光学層4は、上述の第2の光学層形成時のプロセス温度をt℃としたときに、(t−20)℃における貯蔵弾性率が3×107Pa以上であることが好ましい。ここで、プロセス温度tとは、例えば、ラミネートロール41の加熱温度である。第1の光学層4は、例えば、第1の基材4a上に設けられ、第1の基材4aを介してラミネートロール41に沿うように搬送されるため、実際に第1の光学層4にかかる温度は、経験的に(t−20)℃程度であることが分かっている。したがって、第1の光学層4の(t−20)℃における貯蔵弾性率を3×107Pa以上にすることにより、熱、または熱と加圧とにより光学層内部の界面の凹凸形状が変形することを抑制することができる。
【0111】
また、第1の光学層4は、25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下であることが好ましい。これにより、室温において可撓性を光学フィルムに付与することができる。したがって、ロール・ツー・ロールなどの製造工程により光学フィルム1を作製することが可能となる。
【0112】
なお、プロセス温度tは、光学層または基材の使用樹脂の耐熱性を考慮すると、200℃以下であることが好ましい。ただし、耐熱性の高い樹脂を用いることにより、プロセス温度tを200℃以上に設定することも可能である。
【0113】
上述したように、第1の実施形態に係る光学フィルム1によれば、第1の光学層4および第2の光学層5の少なくとも一方が、100℃での貯蔵弾性率が3×107Pa以上である。したがって、熱、または熱と加圧とにより光学層界面の微小な変形などを抑制することができる。
【0114】
また、対向配置された第1の光学層4と第2の光学層5の少なくとも一方が、25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下であるので、光学フィルム1に可撓性を付与することができる。したがって、ロール・ツー・ロール工程により光学フィルム1を作製することができ、光学フィルム1の生産性を向上させることができる。
【0115】
<2.第2の実施形態>
図12〜図14は、本発明の第2の実施形態に係る光学フィルムの構造体の構成例を示す断面図である。第2の実施形態において、第1の実施形態と対応する箇所には同一の符号を付す。第2の実施形態は、第1の光学層4の一主面にて構造体4cが2次元配列されている点において、第1の実施形態とは異なっている。
【0116】
第1の光学層4の一主面には、構造体4cが2次元的に配列されている。この配列は、最稠密充填状態での配列であることが好ましい。例えば、第1の光学層4の一主面には、構造体4cを最稠密充填状態で2次元配列することにより正方稠密アレイ、デルタ稠密アレイ、六方稠密アレイなどの稠密アレイが形成されている。正方稠密アレイは、例えば図12A〜図12Cに示すように、四角形状(例えば正方形状)の底面を有する構造体4cを正方稠密状に配列させたものである。六方稠密アレイは、例えば図13A〜図13Cに示すように、六方形状の底面を有する構造体4cを六方稠密状に配列させたものである。デルタ稠密アレイは、例えば図14A〜図14Bに示すように、三角形状の底面を有する構造体4c(例えば三角錐)を最稠密充填状態で配列させたものである。
【0117】
構造体4cは、例えば、コーナーキューブ状、半球状、半楕円球状、プリズム状、自由曲面状、多角形状、円錐形状、多角錐状、円錐台形状、放物面状などの凸部または凹部である。構造体4cの底面は、例えば、円形状、楕円形状、または三角形状、四角形状、六角形状もしくは八角形状などの多角形状を有している。また、構造体4cのピッチP1、P2は、所望とする光学特性に応じて適宜選択することが好ましい。また、光学フィルム1の入射面に対して垂直な垂線に対して、構造体4cの主軸を傾ける場合、構造体4cの2次元配列のうちの少なくとも一方の配列方向に構造体4cの主軸を傾けるようにすることが好ましい。地面に対して略垂直に配置された窓材に光学フィルム1を貼る場合には、構造体4cの主軸が、垂線を基準にして窓材の下方(地面側)に傾いていることが好ましい。
【0118】
構造体4cがコーナーキューブ形状の場合、稜線Rが大きい場合は、上空に向けて傾けた方が良く、下方反射を抑制するという目的においては、地面側に向けて傾いている方が好ましい。太陽光線は、フィルムに対して斜めから入射するため、構造の奥まで光が入射しにくく、入射側の形状が重要となる。すなわち、稜線部分のRが大きい場合は、再帰反射光が減少してしまうため、上空に向けて傾けることでこの現象を抑制することができる。また、コーナーキューブ体では、反射面で3回反射することで再帰反射を実現するが、一部の光が2回反射により再帰反射以外の方向に漏れる。コーナーキューブを地面側に向けて傾けることで、この漏れ光を上空方向に多く戻すことができる。このように、形状や目的に応じてどちらの方向に傾けても良い。
【0119】
<3.第3の実施形態>
図15Aは、本発明の第3の実施形態に係る光学フィルムの一構成例を示す断面図である。第3の実施形態において、第1の実施形態と同一の箇所には同一の符号を付して説明を省略する。第3の実施形態は、光の入射面に対して傾斜した複数の波長選択反射層3を光学層2内に備え、これらの波長選択反射層3を互いに平行に配列している点において、第1の実施形態とは異なっている。
【0120】
図15Bは、本発明の第3の実施形態に係る光学フィルムの構造体の一構成例を示す斜視図である。構造体4cは、一方向に延在された三角柱状の凸部であり、この柱状の構造体4cが一方向に向かって一次元配列されている。構造体4cの延在方向に垂直な断面は、例えば、直角三角形状を有する。構造体4cの鋭角側の傾斜面上に、例えば、蒸着法、スパッタリング法などの、指向性を有する薄膜形成法により、波長選択反射層3が形成される。
【0121】
第3の実施形態によれば、複数の波長選択反射層3を光学層5内に平行に配列している。これにより、波長選択反射層3による反射回数を、コーナーキューブ形状やプリズム形状の構造体4cを形成した場合に比べて低減することができる。したがって、反射率を高くすることができ、かつ、波長選択反射層3による光の吸収を低減できる。
【0122】
<4.第4の実施形態>
第4の実施形態は、特定波長の光を指向反射するのに対して、特定波長以外の光を散乱させる点において、第1の実施形態とは異なっている。光学フィルム1は、入射光を散乱する光散乱体を備えている。この散乱体は、例えば、光学層2の表面、光学層2の内部、および波長選択反射層3と光学層2との間のうち、少なくとも1箇所に設けられている。光散乱体は、好ましくは、波長選択反射層3と第1の光学層4との間、第1の光学層4の内部、および第1の光学層4の表面のうちの少なくとも一箇所に設けられている。光学フィルム1を窓材などの支持体に貼り合わせる場合、室内側および室外側のどちらにも適用可能である。光学フィルム1を室外側に対して貼り合わせる場合、波長選択反射層3と窓材などの支持体との間にのみ、特定波長以外の光を散乱させる光散乱体を設けることが好ましい。波長選択反射層3と入射面との間に光散乱体が存在すると、指向反射特性が失われてしまうからである。また、室内側に光学フィルム1を貼り合せる場合には、その貼り合わせ面とは反対側の出射面と、波長選択反射層3との間に光散乱体を設けることが好ましい。
【0123】
図16Aは、本発明の第4の実施形態に係る光学フィルム1の第1の構成例を示す断面図である。図16Aに示すように、第1の光学層4は、樹脂と微粒子11とを含んでいる。微粒子11は、第1の光学層4の主構成材料である樹脂とは異なる屈折率を有している。微粒子11としては、例えば有機微粒子および無機微粒子の少なくとも1種を用いることができる。また、微粒子11としては、中空微粒子を用いてもよい。微粒子11としては、例えば、シリカ、アルミナなどの無機微粒子、またはスチレン、アクリルやそれらの共重合体などの有機微粒子が挙げられるが、シリカ微粒子が特に好ましい。
【0124】
図16Bは、本発明の第4の実施形態に係る光学フィルム1の第2の構成例を示す断面図である。図16Bに示すように、光学フィルム1は、第1の光学層4の表面に光拡散層12をさらに備えている。光拡散層12は、例えば、樹脂と微粒子とを含んでいる。微粒子としては、第1の例と同様のものを用いることができる。
【0125】
図16Cは、本発明の第4の実施形態に係る光学フィルム1の第3の構成例を示す断面図である。図16Cに示すように、光学フィルム1は、波長選択反射層3と第1の光学層4との間に光拡散層12をさらに備えている。光拡散層12は、例えば、樹脂と微粒子とを含んでいる。微粒子としては、第1の例と同様のものを用いることができる。
【0126】
第4の実施形態によれば、赤外線などの特定波長帯の光を指向反射し、可視光などの特定波長対以外の光を散乱させることができる。したがって、光学フィルム1を曇らせて、光学フィルム1に対して意匠性を付与することができる。
【実施例】
【0127】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0128】
本発明において、貯蔵弾性率Paは以下のようにして測定したものである。
膜厚が100μmになるように硬化させた樹脂を、幅5mm、長さ約20mmに打ち抜き、温度を−50℃から150℃まで毎分5℃上昇させ、1Hzで動的粘弾性測定を行った。測定には、動的粘弾性測定装置DVA−220(アイティ計測制御株式会社製)を用いた。
【0129】
(実施例1)
まず、図17に示すように、バイトによる切削加工によりプリズム形状をNi―P製金型に付与した。次に、このNi―P製金型に下記配合の樹脂組成物を塗布し、さらにその上に厚み75μmのPETフィルム(東洋紡製、商品名A4300)を載置した。次に、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム側からUV光を樹脂組成物に対して照射し硬化させることにより、第1の光学層とPETフィルムとからなる積層体を得た。
<樹脂配合>
ウレタンアクリレート(東亞合成製、商品名:アロニックス) 70重量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業社製、商品名:A−DPH) 30重量部
開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184) 3重量部
【0130】
次に、この第1の光学層をNi−P製金型から剥がして、プリズム形状の成形面が成形された第1の光学層を得た。次に、金型によりプリズム形状が成形された成形面に対し、五酸化二ニオブ層および銀層の交互多層膜(中間層)を真空スパッタ法により成膜した。次に、交互多層膜上に下記配合の樹脂組成物を塗布し、気泡を押し出した後に、PETフィルムを載置し、ニップロールにより0.5MPaで加圧し、UV光を照射することで樹脂組成物を硬化して、交互多層膜上に第2の光学層を形成した。樹脂組成物を硬化させる過程において、UV光の照射により金型の温度が上昇し、光学フィルムが加熱された。以上により、目的とする光学フィルムが得られた。
<樹脂配合>
ウレタンアクリレート(東亞合成製、商品名:アロニックス) 70重量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業社製、商品名:A−DPH) 30重量部
開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184) 3重量部
リン酸を官能基に有する(メタ)アクリルモノマー(密着剤)(共栄社化学(株)社製、商品名:P−2M) 0.3重量部
【0131】
(実施例2)
第1の光学層、および第2の光学層を形成する樹脂組成物として、下記配合の樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
<樹脂配合>
ウレタンアクリレート(東亞合成製、商品名:アロニックス) 70重量部
トリメチロールプロパントリアクリレート(日本化薬社製、商品名:カヤラッドTMPTA) 30重量部
開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184) 3重量部
但し、第2の光学層を形成するための樹脂組成物には、実施例1と同様の密着剤を0.3重量部添加した。
【0132】
(実施例3)
第1の光学層、および第2の光学層を形成する樹脂組成物として、下記配合の樹脂組成物を用いること、および樹脂組成物を作製する際に加える圧力を0.01MPaとする以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
<樹脂配合>
ウレタンアクリレート(東亞合成製、商品名:アロニックス) 85重量部
エチレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート(東京化成工業社製、商品名:T2325) 15重量部
開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184) 3重量部
但し、第2の光学層を形成するための樹脂組成物には、実施例1と同様の密着剤を0.3重量部添加した。
【0133】
(実施例4)
第1の光学層、および第2の光学層を形成する樹脂組成物として、下記配合の樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
<樹脂配合>
ウレタンアクリレート(東亞合成製、商品名:アロニックス) 85重量部
エチレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート(東京化成工業社製、商品名:T2325) 15重量部
開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184) 3重量部
但し、第2の光学層を形成するための樹脂組成物には、実施例1と同様の密着剤を0.3重量部添加した。
【0134】
(実施例5)
第1の光学層、および第2の光学層を形成する樹脂組成物として、下記配合の樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
<樹脂配合>
ウレタンアクリレート(東亞合成製、商品名:アロニックス) 80重量部
エチレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート(東京化成工業社製、商品名:T2325) 20重量部
開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184) 3重量部
但し、第2の光学層を形成するための樹脂組成物には、実施例1と同様の密着剤を0.3重量部添加した。
【0135】
(実施例6)
第1の光学層、および第2の光学層を形成する樹脂組成物として、下記配合の樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
<樹脂配合>
ウレタンアクリレート(東亞合成製、商品名:アロニックス) 70重量部
エチレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート(東京化成工業社製、商品名:T2325) 30重量部
開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184) 3重量部
但し、第2の光学層を形成するための樹脂組成物には、実施例1と同様の密着剤を0.3重量部添加した。
【0136】
(実施例7)
第1の光学層、および第2の光学層の界面に形成する無機材料を主成分とする中間層として半透過性のAl膜(膜圧11nm)を用いた以外は、実施例4と同様にして光学フィルムを得た。
【0137】
(比較例1)
第1の光学層、および第2の光学層を形成する樹脂組成物として、下記配合の樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
<樹脂配合>
ウレタンアクリレート(共栄社化学社製、商品名:UF8001G) 100重量部
開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184) 3重量部
但し、第2の光学層を形成するための樹脂組成物には、実施例1と同様の密着剤を0.3重量部添加した。
【0138】
(比較例2)
第1の光学層、および第2の光学層を形成する樹脂組成物として、下記配合の樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
<樹脂配合>
ウレタンアクリレート(共栄社化学社製、商品名:UF8001G) 70重量部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学工業社製、商品名:A−DPH) 30重量部
開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184) 3重量部
但し、第2の光学層を形成するための樹脂組成物には、実施例1と同様の密着剤を0.3重量部添加した。
【0139】
(比較例3)
第1の光学層、および第2の光学層を形成する樹脂組成物として、下記配合の樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
<樹脂配合>
ウレタンアクリレート(共栄社化学社製、商品名:UF8001G) 60重量部
トリメチロールプロパントリアクリレート(日本化薬社製、商品名:カヤラッドTMPTA) 40重量部
開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184) 3重量部
但し、第2の光学層を形成するための樹脂組成物には、実施例1と同様の密着剤を0.3重量部添加した。
【0140】
(比較例4)
第1の光学層、および第2の光学層を形成する樹脂組成物として、下記配合の樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
<樹脂配合>
ウレタンアクリレート(共栄社化学社製、商品名:UF8001G) 60重量部
エチレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート(東京化成工業社製、商品名:T2325) 40重量部
開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184) 3重量部
但し、第2の光学層を形成するための樹脂組成物には、実施例1と同様の密着剤を0.3重量部添加した。
【0141】
(比較例5)
第1の光学層、および第2の光学層を形成するアクリレートとして、ウレタンアクリレート(東亞合成製、商品名:アロニックス)を用いること、および樹脂組成物を作製する際に加える圧力を0.01MPaとすること以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
【0142】
(比較例6)
第1の光学層、および第2の光学層を形成するアクリレートとして、ウレタンアクリレート(東亞合成製、商品名:アロニックス)を用いる以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
【0143】
(比較例7)
第1の光学層、および第2の光学層を形成する樹脂組成物として、下記配合の樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
<樹脂配合>
ウレタンアクリレート(東亞合成製、商品名:アロニックス) 95重量部
エチレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート(東京化成工業社製、商品名:T2325) 5重量部
開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184) 3重量部
但し、第2の光学層を形成するための樹脂組成物には、実施例1と同様の密着剤を0.3重量部添加した。
【0144】
(比較例8)
第1の光学層、および第2の光学層を形成する樹脂組成物として、下記配合の樹脂組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして光学フィルムを得た。
<樹脂配合>
ウレタンアクリレート(東亞合成製、商品名:アロニックス) 90重量部
エチレンオキシド変性グリセロールトリアクリレート(東京化成工業社製、商品名:T2325) 10重量部
開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名:イルガキュア184) 3重量部
但し、第2の光学層を形成するための樹脂組成物には、実施例1と同様の密着剤を0.3重量部添加した。
【0145】
(形状評価)
実施例1〜7、比較例1〜8の光学フィルムの成形面の形状を以下のようにして評価した。ミクロトームで光学フィルムを切削し、走査型共焦点レーザ顕微鏡(オリンパス株式会社製、商品名:OLS3000)にて観察し画像を得た。得られた画像と、成形面の理想形状と比較し、以下の基準で評価した。
Y:頂角付近と底面付近の角度が、理想形状の角度から±1度以内である
N:頂角付近と底面付近の角度が、理想形状の角度から±1度を超える
【0146】
(指向反射率の評価)
実施例1〜7、比較例1〜8の光学フィルムの指向反射率を以下のようにして評価した。
図18は、光学フィルムの再帰反射率を測定するため測定装置の構成を示す。まず、ハロゲン灯光源101から出射されレンズによりコリメートされた直線光が、光の進行方向に対し45°の角度に設置されたハーフミラー102に入射する。入射光の半分は、ハーフミラー102により反射されてその進行方向が90°回転するのに対して、入射光の残り半分は、ハーフミラー102を透過する。次に、反射光がサンプル103で再帰反射し、再びハーフミラー102に入射する。この入射光の半分が、ハーフミラー102を透過しディテクター104に入射する。この入射光の強度が、反射強度としてディテクター104により測定される。
【0147】
上述の構成を有する測定装置を用いて、以下の方法により波長900nmおよび1100nmにおける再帰反射率を求めた。まず、本測定装置のサンプルフォルダーに鏡を入射角θ=0°の角度で設置し、それぞれの波長の光強度をディテクター104で測定した。次に、本測定装置のサンプルフォルダーに光学フィルムを設置し、入射角θ=0°、20°において光強度を測定した(本測定ではφ=0°)。その後、鏡の光強度を再帰反射率90%として、光学フィルムの再帰反射率を求めた。次に、求めた再帰反射率を、以下の基準で評価した。
Y:波長900nm、および1100nmで0度の反射率が60%以上、かつ、20度の反射率が20%以下の関係を満たす
N:波長900nm、および1100nmで0度の反射率が60%以上、かつ、20度の反射率が20%以下の関係を満たさない
【0148】
表1は、実施例1〜7、比較例1〜8の光学フィルムの構成を示す。
【表1】

【0149】
表2は、実施例1〜7、比較例1〜8の光学フィルムの評価結果を示す。
【表2】

【0150】
表1、および表2から以下のことがわかる。
実施例1〜7では、100℃での貯蔵弾性率が3×107Pa以上であり、25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下である樹脂を用いて、第1の光学層、および第2の光学層を形成しているので、界面の凹凸形状の歪みを抑制することができる。したがって、優れた再帰性反射性能を得ることができる。
【0151】
以上、この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0152】
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、形状、材料および数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、形状、材料および数値などを用いてもよい。
【0153】
また、上述の実施形態の各構成は、この発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0154】
また、上述の実施形態では、指向反射性能を有する光学フィルムに対して本発明を適用した例について説明したが、本発明はこの例に限定されるものではなく、凹凸形状の界面を有し、熱または加圧を伴うプロセスにより作製される光学フィルムであれば本発明を適用可能である。このような光学フィルムとしては、例えば、ウィンドウフィルム、ディスプレイフィルム、プロジェクタースクリーン、光学フィルタ、太陽電池などが挙げられる。
【0155】
また、上述の実施形態では、指向反射性能を有する光学フィルムを例として、界面の凹凸形状のピッチの数値範囲について説明したが、界面の凹凸形状のピッチの数値範囲はこの例に限定されるものではい。例えば、所謂ナノインプリントにより転写される数十nm〜1μm程度のピッチから、数十μm程度のピッチまでの凹凸形状に対しても、本発明は適用可能である。
【0156】
また、上述の実施形態では、フィルム状の光学体を例として説明したが、これに限られず、例えば板状などの他の形状の光学体に対しても適用可能である。
【0157】
また、上述の実施形態では、本発明に係る光学体(指向反射体)を窓材などに適用する場合を例として説明したが、本発明に係る光学体は、例えば、建築物や車両等の外装部材および内装部材として、あらゆる用途に適用することができる。
【0158】
例えば、ブラインドやロールカーテンなどに適用することができる。光学体が適用されたブラインドまたはロールカーテンとしては、例えば、光学体自体により構成されたブラインドまたはロールカーテン、光学体が貼り合わされた透明基材などにより構成されたブラインドまたはロールカーテンなどが挙げられる。このようなブラインドまたはロールカーテンを室内の窓付近に設置することで、例えば、赤外線だけを屋外に指向反射し、可視光線を室内に取り入れることができる。したがって、ブラインドやロールカーテンを設置した場合にも、室内照明の必要性が低減される。また、ブラインドやロールカーテンによる散乱反射もないため、周囲の温度上昇も抑えることができる。また、冬季など熱線反射の必要性が低いときには、ブラインドやロールカーテンを上げておけばよく、状況に応じて熱線反射機能を容易に使い分けることができる、という利点もある。これに対して、赤外線を遮蔽するための従来のブラインドやロールカーテンなどでは、赤外線反射塗料などが塗られており、白、グレー、またはクリーム色などの外観を呈しているため、赤外線を遮断しようとすると可視光線も同時に遮断され、室内照明が必要となる。
【0159】
また、同様に障子のような形態を採用することも可能である。また、本発明の光学体を壁に貼り付けて使用してもよい。
【0160】
また、図示しないが、対向する2枚のガラスの間に光学体が挟持された合わせガラスとすることもできる。この場合、各ガラスと光学体の間には中間層が設けられており、熱圧着等を施すことにより中間層が接着層として機能し、上記合わせガラスを作製することができる。このような中間層としては、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)を用いることができる。中間層は、合わせガラスが破損した場合に備え、飛散防止機能も有していることが好ましい。この合わせガラスを車載用窓として用いることにより、光学体によって熱線を反射できるため、車内が急激に暑くなることを防止することができる。この合わせガラスは、車両、電車、航空機、船舶等のあらゆる輸送手段、テーマパークでの乗り物等に広く用いることができ、用途に応じて2枚のガラスは湾曲していてもよい。この場合、光学体は、ガラスの湾曲に対し追従性を有し、湾曲しても一定の指向反射性、透過性を有していることが好ましい。合わせガラスは、全体としてある程度の透明性を有する必要があるため、中間層に用いられる材質(例えば樹脂)と、光学体に含まれる樹脂とは、屈折率が同じまたは近似していることが好ましい。一方、中間層を省略して、光学体に含まれる樹脂がガラスとの接着層を兼ねるようにしてもよい。この場合には、接着時の熱圧着工程等において、樹脂の形状ができるだけ崩れないような樹脂を用いるのが好ましい。対向する2つの基材はガラスに限定されず、一方または両方が、樹脂フィルム、シートまたはプレート等であってもよい。例えば、軽量かつ強固でフレキシブル性を有するエンジニアリングプラスチックや強化プラスチック等を採用し得る。なお、合わせガラスの用途は車載用途に限定されない。
【符号の説明】
【0161】
1 光学フィルム
2 光学層
3 波長選択反射層
4 第1の光学層
4a 第1の基材
5 第2の光学層
5a 第2の基材
6 接合層
7 剥離層
8 ハードコート層
9 反射層付き光学層
S1 入射面
S2 出射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸形状の界面を内部に有する光学層と、
上記界面に設けられた無機材料を主成分とする中間層と
を備え、
上記光学層が、
凹凸形状の第1の面を有する第1の光学層と、
凹凸形状の第2の面を有する第2の光学層と
を備え、
上記界面は、対向配置された上記第1の面と上記第2の面とにより形成され、
上記第1の光学層、および上記第2の光学層の少なくとも一方が、
100℃での貯蔵弾性率が3×107Pa以上であり、
25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下である光学体。
【請求項2】
第1の光学層と、
上記第1の光学層の凹凸面上に形成された無機材料を主成分とする中間層と、
上記中間層が形成された上記凹凸面上に、該凹凸を埋めるように形成された第2の光学層と
を備え、
上記第1の光学層、および上記第2の光学層の少なくとも一方が、
100℃での貯蔵弾性率が3×107Pa以上であり、
25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下である光学体。
【請求項3】
凹凸形状の界面を内部に有する光学層と、
上記界面に設けられた無機材料を主成分とする中間層と
を備え、
上記光学層が、
凹凸形状の第1の面を有する第1の光学層と、
凹凸形状の第2の面を有する第2の光学層と
を備え、
上記界面は、対向配置された上記第1の面と上記第2の面とにより形成され、
上記第1の光学層が、
上記第2の光学層形成時のプロセス温度をt℃としたときに、(t−20)℃における貯蔵弾性率が3×107Pa以上であり、
25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下である光学体。
【請求項4】
第1の光学層と、
上記第1の光学層の凹凸面上に形成された無機材料を主成分とする中間層と、
上記中間層が形成された上記凹凸面上に、該凹凸を埋めるように形成された第2の光学層と、
を備え、
上記第1の光学層が、
上記第2の光学層形成時のプロセス温度をt℃としたときに、(t−20)℃における貯蔵弾性率が3×107Pa以上であり、
25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下である光学体。
【請求項5】
上記中間層は、特定波長帯の光を選択的に指向反射するのに対して、上記特定波長帯以外の光を透過する波長選択反射層である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学体。
【請求項6】
上記波長選択反射層が、可視光領域において透明性を有する導電性材料を主成分とする透明導電層、または外部刺激により反射性能が可逆的に変化するクロミック材料を主成分とする機能層である請求項5記載の光学体。
【請求項7】
上記波長選択反射層が、単層または複数層の金属層からなり、半透過性を有する請求項5記載の光学体。
【請求項8】
上記光学層の両主面の少なくとも一方に形成された基材をさらに備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学体。
【請求項9】
上記第1の光学層、および上記第2の光学層の少なくとも一方が、エネルギー線硬化型樹脂、または熱硬化型樹脂と、架橋剤とを含んでいる請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学体。
【請求項10】
上記架橋剤が、環状構造を有する架橋剤である請求項9記載の光学体。
【請求項11】
上記第1の面および上記第2の面の凹凸形状は、1次元配列または2次元配列された複数の構造体により形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学体。
【請求項12】
上記構造体が、プリズム形状、シリンドリカル形状、半球状、またはコーナーキューブ状である請求項11記載の光学体。
【請求項13】
第1の光学層の凹凸面上に無機材料を主成分とする中間層を形成する工程と、
上記中間層が形成された上記凹凸面を第2の光学層により包埋する工程と
を備え、
上記第1の光学層、および上記第2の光学層の少なくとも一方が、
100℃での貯蔵弾性率が3×107Pa以上であり、
25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下である光学体の製造方法。
【請求項14】
第1の光学層の凹凸面上に無機材料を主成分とする中間層を形成する工程と、
上記中間層が形成された上記凹凸面を第2の光学層により包埋する工程と
を備え、
上記第1の光学層が、
上記包埋工程のプロセス温度をt℃としたときに、(t−20)℃における貯蔵弾性率が3×107Pa以上であり、
25℃での貯蔵弾性率が3×109Pa以下である光学体の製造方法。
【請求項15】
上記包埋工程のプロセス温度tの上限が200℃以下である請求項14記載の光学体の製造方法。
【請求項16】
上記第1の光学層、および/または上記第2の光学層に対して熱および圧力を加える工程をさらに備える請求項13または14に記載の光学体の製造方法。
【請求項17】
上記第1の光学層、および上記第2の光学層の少なくとも一方が、エネルギー線硬化型樹脂、または熱硬化型樹脂と、架橋剤とを含んでいる請求項13または14に記載の光学体の製造方法。
【請求項18】
上記架橋剤が、環状構造を有する架橋剤である請求項17記載の光学体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−128512(P2011−128512A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289042(P2009−289042)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】