説明

光学分割剤及びそれを用いる光学活性アルコールの製造方法

【課題】目視観察によってカラムクロマトグラフィーでの分離が容易な光学活性アズレン誘導体からなる新規な光学分割剤、並びに当該光学分割剤を用いる光学活性アルコールの新規な製造方法を提供する。
【解決手段】下式[1]で示される光学分割剤、並びに当該光学分割剤を用いて、アルコールの光学異性体混合物を光学分割することを特徴とする、光学活性アルコールの製造方法。


(式中、Rはハロゲン原子、ヒドロキシル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、Rは炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基等を表し、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは水素原子等を表し、Rは炭素数1〜6のアルキル基等を表し、nは0〜5の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学分割剤及びそれを用いる光学活性アルコールの製造方法に関し、更に詳しくは、アズレン誘導体からなる光学分割剤、並びにそれを用いてアルコールの光学異性体混合物を光学分割することを特徴とする、光学活性アルコールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば医薬品、農薬、香料等の複雑な構造の化合物は、その多くが不斉炭素を有する場合が多い。このような不斉炭素を有する化合物は、機能性生体分子が光学異性体を識別することが原因となって、光学異性体間で、生理活性の強度が異なる、全く別の性質の生理活性を発現するなどの、生理活性に何らかの違いが生じる場合が多い。そのため、光学異性体の一方のみを合成する、あるいは光学異性体混合物を分離することが望まれている。
【0003】
上記した合成方法、あるいは分離方法としては、例えば天然から得られる光学活性物質を利用したり、不斉合成を利用するなどの光学異性体の一方のみを合成する方法、光学異性体混合物をジアステレオマーとして分離したり、酵素等を用いて速度論的に分割するなどの光学異性体混合物を分離する方法等が知られている。それらの方法のうち、光学異性体混合物を分離する方法は、ラセミ体を均等に分割でき、両対称体が一挙に得られる利点を有することから、不斉合成法が発展した現在でも重要な方法である。更にそのなかでも、酵素等を用いる速度論的光学分割法は、酵素等と光学異性体混合物の基質特異性が求められるため汎用性に欠ける場合が多いが、光学異性体混合物をジアステレオマーとして分離する方法は、通常の化学反応に依存するため汎用性があり、現在においても広く用いられている方法である。
【0004】
上記したような光学異性体混合物をジアステレオマーとして分離する方法としては、例えばビシクロ[3.3.0]-1-オキサオクタン化合物又はビシクロ[3.3.0]-1-オキサ-6-オクテン化合物を光学分割剤として用いて、アルコールの光学異性体混合物を分離する方法(例えば特許文献1等)、例えばo-アルキルチオリン酸を光学分割剤として用いて、アミンの光学異性体混合物を分離する方法(例えば特許文献2等)等が知られており、これらの方法を採用することにより、光学活性アルコールや光学活性アミンを得ることができる。
【0005】
一方、アズレンは10個の炭素原子と8個の水素原子からなる芳香族系炭化水素で、アズレンの構造異性体であるナフタレンが無色透明であるのとは異なり、濃青色を示す化合物である。このようなアズレンを基本骨格とするアズレン誘導体は、アズレン由来の濃青色を基本としつつも、アズレン骨格に置換する置換基の種類やその位置に依存した独特の色を有する化合物群である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2002/072505号公報
【特許文献2】特開2005-075760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、アズレン誘導体が目視で識別できる程度の色を有する化合物であることに着目し、この特徴を活かした新規な光学分割剤の開発について鋭意検討を行った。すなわち、まず、本発明者らは、アルコールの光学異性体混合物を分離する方法において、該光学異性体混合物と、分子内に1つの不斉炭素を有する基とアルコールのヒドロキシル基と反応し得る基とを導入したアズレン誘導体との反応によって得られるアルコール由来のジアステレオマー混合物が、当該アズレン誘導体に起因する色を有することを見出した。この知見に基づき、該ジアステレオマー混合物をカラムクロマトグラフィーでそれぞれのジアステレオマーに分離する際に、該カラムクロマトでの分離画分を、上記した色を観察することによって目視で容易に識別し得るのではないかと考え、本発明の開発に着手した。本発明は、上記した如き開発検討の結果から得られたものであり、目視観察によってカラムクロマトグラフィーでの分離を容易にする、アルコール由来のジアステレオマー混合物の原料となる、分子内に1つの不斉炭素を有する基と、例えばカルボキシル基のようなアルコールのヒドロキシル基と反応し得る基とを有する光学活性アズレン誘導体からなる新規な光学分割剤、並びに当該光学分割剤を用いる光学活性アルコールの新規な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一般式[1]

(式中、Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、nは、0〜5の整数を表す。ただし、R、R及びRは、いずれも同一の基ではない。)で示される光学分割剤の発明である。
【0009】
また、本発明は、上記の光学分割剤を用いて、アルコールの光学異性体混合物を光学分割することを特徴とする、光学活性アルコールの製造方法の発明である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光学分割剤は、該光学分割剤との反応によって得られるジアステレオマーが、該光学分割剤に由来する色を有することを利用して、カラムクロマトグラフィーでの該ジアステレオマーの分離を容易するという効果を有するものである。このようなことから、本発明の光学分割剤は、目視による分離を志向したカラムクロマト分離用の光学分割剤として期待できるものである。
【0011】
また、本発明の製造方法は、本発明の光学分割剤とアルコールの光学異性体混合物との反応によって得られるジアステレオマー混合物を、カラムクロマトグラフィーを用いて分離するにあたり、分離用カラムに、目視でも認識できる程度のジアステレオマーに由来する有色バンド(帯)が現れることで、必要とされる分離画分を目視によりある程度予想できることから、従来のカラムクロマトグラフィーでの分離方法と比較して、ジアステレオマー混合物の分離を容易かつ迅速に行えるという特徴を備えた製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一般式[1]におけるRで示されるハロゲン原子としては、具体的には、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、なかでも、塩素原子がより好ましい。
【0013】
一般式[1]におけるR及びRで示される炭素数1〜6のアルコキシ基としては、直鎖状、分枝状及び環状のうちのいずれのアルコキシ基でもよく、具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、2-メチルブトキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、1-エチルプロポキシ基、シクロペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基、ネオヘキシルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、1-エチルブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられ、なかでも、メトキシ基が好ましい。
【0014】
一般式[1]におけるRで示される炭素数1〜10のアルキル基としては、直鎖状、分枝状及び環状のうちのいずれのアルキル基でもよく、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、ネオヘプチル基、シクロヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ネオオクチル基、2-エチルヘキシル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、ネオノニル基、シクロノニル基、n-デシル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、ネオデシル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、ボルニル基(ボルナン-χ-イル基)、アダマンチル基、メンチル基(メンタ-χ-イル基)、デカヒドロナフチル基等が挙げられ、なかでも、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基が好ましい。
【0015】
一般式[1]におけるRで示される炭素数2〜10のアルケニル基としては、直鎖状、分枝状及び環状のうちのいずれのアルケニル基でもよく、具体的には、例えばビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-メチルビニル基(イソプロペニル基)、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-メチル-1-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基(1-メチルアリル基)、2-メチル-2-プロペニル基(2-メチルアリル基)、1-エチルビニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、1-メチル-3-ブテニル基、2-メチル-3-ブテニル基、3-メチル-3-ブテニル基、1-エチル-1-プロペニル基、2-エチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-プロペニル基(1-エチルアリル基)、2-エチル-2-プロペニル基(2-エチルアリル基)、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1,1-ジメチル-2-プロペニル基(1,1-ジメチルアリル基)、1,2-ジメチル-2-プロペニル基(1,2-ジメチルアリル基)、1-プロピルビニル基、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1,3-ペンタジエニル基、2,4-ペンタジエニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-メチル-1-ペンテニル基、2-メチル-1-ペンテニル基、3-メチル-1-ペンテニル基、4-メチル-1-ペンテニル基、1-メチル-2-ペンテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、3-メチル-2-ペンテニル基、4-メチル-2-ペンテニル基、1-メチル-3-ペンテニル基、2-メチル-3-ペンテニル基、3-メチル-3-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、1-メチル-4-ペンテニル基、2-メチル-4-ペンテニル基、3-メチル-4-ペンテニル基、4-メチル-4-ペンテニル基、1-エチル-1-ブテニル基、2-エチル-1-ブテニル基、3-エチル-1-ブテニル基、1-エチル-2-ブテニル基、2-エチル-2-ブテニル基、3-エチル-2-ブテニル基、1-エチル-3-ブテニル基、2-エチル-3-ブテニル基、3-エチル-3-ブテニル基、1,2-ジメチル-1-ブテニル基、1,3-ジメチル-1-ブテニル基、2,3-ジメチル-1-ブテニル基、3,3-ジメチル-1-ブテニル基、1-プロピル-1-プロペニル基、2-プロピル-1-プロペニル基、1-プロピル-2-プロペニル基(1-プロピルアリル基)、2-プロピル-2-プロペニル基(2-プロピルアリル基)、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル基、2-エチル-1-メチル-1-プロペニル基、1-エチル-1-メチル-2-プロペニル基(1-エチル-1-メチルアリル基)、1-エチル-2-メチル-2-プロペニル基(1-エチル-2-メチルアリル基)、2-エチル-1-メチル-2-プロペニル基(2-エチル-1-メチルアリル基)、1-ブチルビニル基、1-シクロヘキセニル基、2-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基、1,3-ヘキサジエニル基、2,4-ヘキサジエニル基、1,3,5-ヘキサトリエニル基、1,3-シクロヘキサジエニル基、2,4-シクロヘキサジエニル基、1-ヘプテニル基、2-ヘプテニル基、3-ヘプテニル基、4-ヘプテニル基、5-ヘプテニル基、6-ヘプテニル基、1-メチル-1-ヘキセニル基、2-メチル-1-ヘキセニル基、3-メチル-1-ヘキセニル基、4-メチル-1-ヘキセニル基、5-メチル-1-ヘキセニル基、1-メチル-2-ヘキセニル基、2-メチル-2-ヘキセニル基、3-メチル-2-ヘキセニル基、4-メチル-2-ヘキセニル基、5-メチル-2-ヘキセニル基、1-メチル-3-ヘキセニル基、2-メチル-3-ヘキセニル基、3-メチル-3-ヘキセニル基、4-メチル-3-ヘキセニル基、5-メチル-3-ヘキセニル基、1-メチル-4-ヘキセニル基、2-メチル-4-ヘキセニル基、3-メチル-4-ヘキセニル基、4-メチル-4-ヘキセニル基、5-メチル-4-ヘキセニル基、1-メチル-5-ヘキセニル基、2-メチル-5-ヘキセニル基、3-メチル-5-ヘキセニル基、4-メチル-5-ヘキセニル基、5-メチル-5-ヘキセニル基、1-シクロヘプテニル基、2-シクロヘプテニル基、3-シクロヘプテニル基、4-シクロヘプテニル基、1-オクテニル基、2-オクテニル基、3-オクテニル基、4-オクテニル基、5-オクテニル基、6-オクテニル基、7-オクテニル基、1-メチル-1-ヘプテニル基、2-メチル-1-ヘプテニル基、3-メチル-1-ヘプテニル基、4-メチル-1-ヘプテニル基、5-メチル-1-ヘプテニル基、6-メチル-1-ヘプテニル基、1-メチル-2-ヘプテニル基、2-メチル-2-ヘプテニル基、3-メチル-2-ヘプテニル基、4-メチル-2-ヘプテニル基、5-メチル-2-ヘプテニル基、6-メチル-2-ヘプテニル基、1-メチル-3-ヘプテニル基、2-メチル-3-ヘプテニル基、3-メチル-3-ヘプテニル基、4-メチル-3-ヘプテニル基、5-メチル-3-ヘプテニル基、6-メチル-3-ヘプテニル基、1-メチル-4-ヘプテニル基、2-メチル-4-ヘプテニル基、3-メチル-4-ヘプテニル基、4-メチル-4-ヘプテニル基、5-メチル-4-ヘプテニル基、6-メチル-4-ヘプテニル基、1-メチル-5-ヘプテニル基、2-メチル-5-ヘプテニル基、3-メチル-5-ヘプテニル基、4-メチル-5-ヘプテニル基、5-メチル-5-ヘプテニル基、6-メチル-5-ヘプテニル基、1-メチル-6-ヘプテニル基、2-メチル-6-ヘプテニル基、3-メチル-6-ヘプテニル基、4-メチル-6-ヘプテニル基、5-メチル-6-ヘプテニル基、6-メチル-6-ヘプテニル基、1-シクロオクテニル基、2-シクロオクテニル基、3-シクロオクテニル基、4-シクロオクテニル基、1-ノネニル基、2-ノネニル基、3-ノネニル基、4-ノネニル基、5-ノネニル基、6-ノネニル基、7-ノネニル基、8-ノネニル基、1-メチル-1-オクテニル基、2-メチル-1-オクテニル基、3-メチル-1-オクテニル基、4-メチル-1-オクテニル基、5-メチル-1-オクテニル基、6-メチル-1-オクテニル基、7-メチル-1-オクテニル基、1-メチル-2-オクテニル基、2-メチル-2-オクテニル基、3-メチル-2-オクテニル基、4-メチル-2-オクテニル基、5-メチル-2-オクテニル基、6-メチル-2-オクテニル基、7-メチル-2-オクテニル基、1-メチル-3-オクテニル基、2-メチル-3-オクテニル基、3-メチル-3-オクテニル基、4-メチル-3-オクテニル基、5-メチル-3-オクテニル基、6-メチル-3-オクテニル基、7-メチル-3-オクテニル基、1-メチル-4-オクテニル基、2-メチル-4-オクテニル基、3-メチル-4-オクテニル基、4-メチル-4-オクテニル基、5-メチル-4-オクテニル基、6-メチル-4-オクテニル基、7-メチル-4-オクテニル基、1-メチル-5-オクテニル基、2-メチル-5-オクテニル基、3-メチル-5-オクテニル基、4-メチル-5-オクテニル基、5-メチル-5-オクテニル基、6-メチル-5-オクテニル基、7-メチル-5-オクテニル基、1-メチル-6-オクテニル基、2-メチル-6-オクテニル基、3-メチル-6-オクテニル基、4-メチル-6-オクテニル基、5-メチル-6-オクテニル基、6-メチル-6-オクテニル基、7-メチル-6-オクテニル基、1-メチル-7-オクテニル基、2-メチル-7-オクテニル基、3-メチル-7-オクテニル基、4-メチル-7-オクテニル基、5-メチル-7-オクテニル基、6-メチル-7-オクテニル基、7-メチル-7-オクテニル基、1-シクロノネニル基、2-シクロノネニル基、3-シクロノネニル基、4-シクロノネニル基、5-シクロノネニル基、1-デセニル基、2-デセニル基、3-デセニル基、4-デセニル基、5-デセニル基、6-デセニル基、7-デセニル基、8-デセニル基、9-デセニル基、1-メチル-1-ノネニル基、2-メチル-1-ノネニル基、3-メチル-1-ノネニル基、4-メチル-1-ノネニル基、5-メチル-1-ノネニル基、6-メチル-1-ノネニル基、7-メチル-1-ノネニル基、8-メチル-1-ノネニル基、1-メチル-2-ノネニル基、2-メチル-2-ノネニル基、3-メチル-2-ノネニル基、4-メチル-2-ノネニル基、5-メチル-2-ノネニル基、6-メチル-2-ノネニル基、7-メチル-2-ノネニル基、8-メチル-2-ノネニル基、1-メチル-3-ノネニル基、2-メチル-3-ノネニル基、3-メチル-3-ノネニル基、4-メチル-3-ノネニル基、5-メチル-3-ノネニル基、6-メチル-3-ノネニル基、7-メチル-3-ノネニル基、8-メチル-3-ノネニル基、1-メチル-4-ノネニル基、2-メチル-4-ノネニル基、3-メチル-4-ノネニル基、4-メチル-4-ノネニル基、5-メチル-4-ノネニル基、6-メチル-4-ノネニル基、7-メチル-4-ノネニル基、8-メチル-4-ノネニル基、1-メチル-5-ノネニル基、2-メチル-5-ノネニル基、3-メチル-5-ノネニル基、4-メチル-5-ノネニル基、5-メチル-5-ノネニル基、6-メチル-5-ノネニル基、7-メチル-5-ノネニル基、8-メチル-5-ノネニル基、1-メチル-6-ノネニル基、2-メチル-6-ノネニル基、3-メチル-6-ノネニル基、4-メチル-6-ノネニル基、5-メチル-6-ノネニル基、6-メチル-6-ノネニル基、7-メチル-6-ノネニル基、8-メチル-6-ノネニル基、1-メチル-7-ノネニル基、2-メチル-7-ノネニル基、3-メチル-7-ノネニル基、4-メチル-7-ノネニル基、5-メチル-7-ノネニル基、6-メチル-7-ノネニル基、7-メチル-7-ノネニル基、8-メチル-7-ノネニル基、1-メチル-8-ノネニル基、2-メチル-8-ノネニル基、3-メチル-8-ノネニル基、4-メチル-8-ノネニル基、5-メチル-8-ノネニル基、6-メチル-8-ノネニル基、7-メチル-8-ノネニル基、8-メチル-8-ノネニル基、1-シクロデセニル基、2-シクロデセニル基、3-シクロデセニル基、4-シクロデセニル基、5-シクロデセニル基、カルボメンテニル基、テルピネニル基、フェランドレニル基、リモネニル基等が挙げられ、なかでも、1-メチルビニル基(イソプロペニル基)、2-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-2-ペンテニル基、4-メチル-3-ペンテニル基、2-メチル-2-ヘキセニル基、2-メチル-2-ヘプテニル基、2-メチル-2-オクテニル基、2-メチル-2-ノネニル基が好ましい。
【0016】
一般式[1]におけるRで示される炭素数2〜10のアルキニル基としては、直鎖状、分枝状及び環状のうちのいずれのアルキニル基でもよく、具体的には、例えばエチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基(プロパルギル基)、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、3-メチル-1-ブチニル基、1-メチル-2-ブチニル基、1-メチル-3-ブチニル基、2-メチル-3-ブチニル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、3-メチル-1-ペンチニル基、4-メチル-1-ペンチニル基、1-メチル-2-ペンチニル基、4-メチル-2-ペンチニル基、1-メチル-3-ペンチニル基、2-メチル-3-ペンチニル基、1-メチル-4-ペンチニル基、2-メチル-4-ペンチニル基、3-メチル-4-ペンチニル基、3-エチル-1-ブチニル基、3,3-ジメチル-1-ブチニル基、1-エチル-2-ブチニル基、1,1-ジメチル-2-ブチニル基、1-エチル-3-ブチニル基、1,1-ジメチル-3-ブチニル基、2,2-ジメチル-3-ブチニル基、1,2-ジメチル-3-ブチニル基、1-へプチニル基、2-へプチニル基、3-へプチニル基、4-へプチニル基、5-へプチニル基、6-へプチニル基、3-メチル-1-ヘキシニル基、4-メチル-1-ヘキシニル基、5-メチル-1-ヘキシニル基、1-メチル-2-ヘキシニル基、4-メチル-2-ヘキシニル基、5-メチル-2-ヘキシニル基、1-メチル-3-ヘキシニル基、2-メチル-3-ヘキシニル基、5-メチル-3-ヘキシニル基、1-メチル-4-ヘキシニル基、2-メチル-4-ヘキシニル基、3-メチル-4-ヘキシニル基、1-メチル-5-ヘキシニル基、2-メチル-5-ヘキシニル基、3-メチル-5-ヘキシニル基、4-メチル-5-ヘキシニル基、1-オクチニル基、2-オクチニル基、3-オクチニル基、4-オクチニル基、5-オクチニル基、6-オクチニル基、7-オクチニル基、3-メチル-1-へプチニル基、4-メチル-1-へプチニル基、5-メチル-1-へプチニル基、6-メチル-1-へプチニル基、1-メチル-2-へプチニル基、4-メチル-2-へプチニル基、5-メチル-2-へプチニル基、6-メチル-2-へプチニル基、1-メチル-3-へプチニル基、2-メチル-3-へプチニル基、5-メチル-3-へプチニル基、6-メチル-3-へプチニル基、1-メチル-4-へプチニル基、2-メチル-4-へプチニル基、3-メチル-4-へプチニル基、6-メチル-4-へプチニル基、1-メチル-5-へプチニル基、2-メチル-5-へプチニル基、3-メチル-5-へプチニル基、4-メチル-5-へプチニル基、1-メチル-6-へプチニル基、2-メチル-6-へプチニル基、3-メチル-6-へプチニル基、4-メチル-6-へプチニル基、5-メチル-6-へプチニル基、1-シクロオクチニル基、2-シクロオクチニル基、3-シクロオクチニル基、4-シクロオクチニル基、1-ノニニル基、2-ノニニル基、3-ノニニル基、4-ノニニル基、5-ノニニル基、6-ノニニル基、7-ノニニル基、8-ノニニル基、3-メチル-1-オクチニル基、4-メチル-1-オクチニル基、5-メチル-1-オクチニル基、6-メチル-1-オクチニル基、7-メチル-1-オクチニル基、1-メチル-2-オクチニル基、4-メチル-2-オクチニル基、5-メチル-2-オクチニル基、6-メチル-2-オクチニル基、7-メチル-2-オクチニル基、1-メチル-3-オクチニル基、2-メチル-3-オクチニル基、5-メチル-3-オクチニル基、6-メチル-3-オクチニル基、7-メチル-3-オクチニル基、1-メチル-4-オクチニル基、2-メチル-4-オクチニル基、3-メチル-4-オクチニル基、6-メチル-4-オクチニル基、7-メチル-4-オクチニル基、1-メチル-5-オクチニル基、2-メチル-5-オクチニル基、3-メチル-5-オクチニル基、4-メチル-5-オクチニル基、7-メチル-5-オクチニル基、1-メチル-6-オクチニル基、2-メチル-6-オクチニル基、3-メチル-6-オクチニル基、4-メチル-6-オクチニル基、5-メチル-6-オクチニル基、1-メチル-7-オクチニル基、2-メチル-7-オクチニル基、3-メチル-7-オクチニル基、4-メチル-7-オクチニル基、5-メチル-7-オクチニル基、6-メチル-7-オクチニル基、1-シクロノニニル基、2-シクロノニニル基、3-シクロノニニル基、4-シクロノニニル基、5-シクロノニニル基、1-デシニル基、2-デシニル基、3-デシニル基、4-デシニル基、5-デシニル基、6-デシニル基、7-デシニル基、8-デシニル基、9-デシニル基、3-メチル-1-ノニニル基、4-メチル-1-ノニニル基、5-メチル-1-ノニニル基、6-メチル-1-ノニニル基、7-メチル-1-ノニニル基、8-メチル-1-ノニニル基、1-メチル-2-ノニニル基、4-メチル-2-ノニニル基、5-メチル-2-ノニニル基、6-メチル-2-ノニニル基、7-メチル-2-ノニニル基、8-メチル-2-ノニニル基、1-メチル-3-ノニニル基、2-メチル-3-ノニニル基、5-メチル-3-ノニニル基、6-メチル-3-ノニニル基、7-メチル-3-ノニニル基、8-メチル-3-ノニニル基、1-メチル-4-ノニニル基、2-メチル-4-ノニニル基、3-メチル-4-ノニニル基、6-メチル-4-ノニニル基、7-メチル-4-ノニニル基、8-メチル-4-ノニニル基、1-メチル-5-ノニニル基、2-メチル-5-ノニニル基、3-メチル-5-ノニニル基、4-メチル-5-ノニニル基、7-メチル-5-ノニニル基、8-メチル-5-ノニニル基、1-メチル-6-ノニニル基、2-メチル-6-ノニニル基、3-メチル-6-ノニニル基、4-メチル-6-ノニニル基、5-メチル-6-ノニニル基、8-メチル-6-ノニニル基、1-メチル-7-ノニニル基、2-メチル-7-ノニニル基、3-メチル-7-ノニニル基、4-メチル-7-ノニニル基、5-メチル-7-ノニニル基、6-メチル-7-ノニニル基、1-メチル-8-ノニニル基、2-メチル-8-ノニニル基、3-メチル-8-ノニニル基、4-メチル-8-ノニニル基、5-メチル-8-ノニニル基、6-メチル-8-ノニニル基、7-メチル-8-ノニニル基、1-シクロデシニル基、2-シクロデシニル基、3-シクロデシニル基、4-シクロデシニル基、5-シクロデシニル基等が挙げられる。
【0017】
一般式[1]におけるRで示される置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基における炭素数6〜10のアリール基としては、具体的には、例えばフェニル基等の炭素数6のアリール基、例えばナフチル基、アズレニル基等の炭素数10のアリール基等が挙げられ、なかでも、炭素数6のアリール基であるフェニル基が好ましい。
【0018】
一般式[1]におけるRで示される置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基における置換基とは、具体的には、例えばニトロ基、シアノ基、例えばフッ素原子、塩素元素、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜3のアルコキシ基等を挙げることができる。
【0019】
一般式[1]におけるRとしては、炭素数2〜10のアルケニル基及び置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基がより好ましい。
【0020】
一般式[1]におけるR、R及びRで示される炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状、分枝状及び環状のうちのいずれのアルキル基でもよく、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、なかでも、R及びRにおいては、メチル基が好ましく、Rにおいてはイソプロピル基が好ましい。
【0021】
一般式[1]におけるRとしては、水素原子がより好ましい。
【0022】
一般式[1]におけるRとしては、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0023】
一般式[1]におけるnとしては、0〜3の整数がより好ましく、なかでも、0〜1の整数がさらに好ましい。
【0024】
本発明の上記一般式[1]で示される光学分割剤のうち、より具体的な光学分割剤としては、一般式[1]におけるRが塩素原子、ヒドロキシル基又はメトキシ基であり、Rが4-メチル-3-ペンテニル基又はフェニル基であり、Rがメチル基であり、Rが水素原子であり、Rがイソプロピル基であり、nが0又は1であって、かつnが1の場合におけるRで示されるイソプロピル基の置換位置がアズレン環の6位である、一般式[2]

(式中、R1aは、塩素原子、ヒドロキシル基又はメトキシ基を表し、R2aは、4-メチル-3-ペンテニル基又はフェニル基を表し、Rは、水素原子又はイソプロピル基を表す。)で示されるものが挙げられる。
【0025】
上記一般式[2]で示される光学分割剤のなかでも、後述するアルコールの光学異性体混合物との反応が速やかに進行し易くなるという効果が期待できるという点で、一般式[2]におけるR1aが塩素原子である、一般式[3]

(式中、R2a及びRは上記に同じ。)で示される光学分割剤が好ましい場合もある。
【0026】
次に、本発明の光学分割剤の合成方法について説明する。本発明の一般式[1]で示される光学分割剤は、例えば有機化学合成協会誌(第39巻、1172〜1182頁、1981年)等に記載の方法に準じて合成することができるほか、特に限定されるものではないが、例えば以下の方法によって合成することもできる。
【0027】
すなわち、例えば一般式[4]

(式中、R1bは、炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、R及びnは上記に同じ。)で示されるオキサアズレノン誘導体と一般式[5]

(式中、R、R及びRは上記に同じ。)で示される光学活性アルデヒドを反応させて、一般式[6]

(式中、R1b、R、R、R、R及びnは上記に同じ。)で示される光学活性アズレン誘導体(光学分割剤)とすることにより合成することができる。なお、必要に応じて上記一般式[6]で示される光学活性アズレン誘導体(光学分割剤)のエステル部分の加水分解を行ってカルボン酸とするか、あるいは該カルボン酸に更にハロゲン化剤を反応させて酸ハロゲン化物とすることにより、上記一般式[1]で示される他の光学分割剤を合成することができる。
【0028】
また、例えば上記一般式[4]で示されるオキサアズレノン誘導体と一般式[7]

(式中、R、R及びRは上記に同じ。)で示されるラセミ体のアルデヒドを反応させて、一般式[8]

(式中、R1b、R、R、R、R及びnは上記に同じ。)示されるラセミ体のアズレン誘導体を得、このラセミ体のアズレン誘導体を光学異性体分離用カラムを用いて分離することによっても、上記一般式[6]で示される光学活性アズレン誘導体(光学分割剤)を合成することができる。なお、必要に応じて上記一般式[6]で示される光学活性アズレン誘導体(光学分割剤)のエステル部分の加水分解を行ってカルボン酸とするか、あるいは該カルボン酸に更にハロゲン化剤を反応させて酸ハロゲン化物とすることによっても、上記一般式[1]で示される他の光学分割剤を合成することができる。
【0029】
更にまた、例えば上記一般式[4]で示されるオキサアズレノン誘導体と上記一般式[7]で示されるラセミ体のアルデヒドを反応させて、上記一般式[8]で示されるラセミ体のアズレン誘導体を得る。次いで、このラセミ体のアズレン誘導体のエステル部分を加水分解してカルボン酸とし、当該カルボン酸と例えば光学活性1-フェニルエチルアミン等の光学活性アルコール又はアミンを反応させて、ジアステレオマーの塩を得、このジアステレオマー塩を再結晶法により分離後、塩交換を行ってカルボン酸とすることによっても合成することができる。なお、必要に応じて該カルボン酸に更にハロゲン化剤を反応させて酸ハロゲン化物とするか、あるいは該カルボン酸にエステル化剤を反応させてカルボン酸エステルとすることなどによっても、上記一般式[1]で示される他の光学分割剤を合成することができる。
【0030】
一般式[4]、[6]及び[8]におけるR1bで示される炭素数1〜6のアルコキシ基としては、直鎖状、分枝状及び環状のうちのいずれのアルコキシ基でもよく、具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、シクロブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec-ペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、2-メチルブトキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、1-エチルプロポキシ基、シクロペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec-ヘキシルオキシ基、tert-ヘキシルオキシ基、ネオヘキシルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、1-エチルブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられ、なかでも、メトキシ基が好ましい。
【0031】
一般式[4]で示されるオキサアズレノン誘導体の具体例としては、例えば3-メトキシカルボニルオキサアズレノン、3-エトキシカルボニルオキサアズレノン、3-n-プロポキシカルボニルオキサアズレノン、3-イソプロポキシカルボニルオキサアズレノン、3-n-ブトキシカルボニルオキサアズレノン、3-イソブトキシカルボニルオキサアズレノン、3-sec-ブトキシカルボニルオキサアズレノン、3-tert-ブトキシカルボニルオキサアズレノン、6-メチル-3-メトキシカルボニルオキサアズレノン、6-エチル-3-メトキシカルボニルオキサアズレノン、6-n-プロピル-3-メトキシカルボニルオキサアズレノン、6-イソプロピル-3-メトキシカルボニルオキサアズレノン、7-メチル-3-メトキシカルボニルオキサアズレノン、7-エチル-3-メトキシカルボニルオキサアズレノン、7-n-プロピル-3-メトキシカルボニルオキサアズレノン、7-イソプロピル-3-メトキシカルボニルオキサアズレノン等が挙げられ、目的とする一般式[1]で示される光学分割剤の構造により、上記のオキサアズレノン誘導体を適宜選択して用いればよいが、なかでも、3-メトキシカルボニルオキサアズレノン、6-イソプロピル-3-メトキシカルボニルオキサアズレノンが好ましい。なお、これらの一般式[4]で示されるオキサアズレノン誘導体は、市販のものを用いるか常法により合成したものを適宜用いればよい。
【0032】
一般式[5]で示されるアルデヒドの具体例としては、例えば3-エチルブタナール、3-n-プロピルブタナール、3-イソプロピルブタナール、3-イソブチルブタナール、3-イソペンチルブタナール、3-アリルブタナール、3-イソプロペニルブタナール、シトロネラ−ル、3-プロパルギルブタナール、3-フェニルブタナール、3-(4-ニトロフェニル)ブタナール、3-ナフチルブタナール等のアルデヒドの光学活性体が挙げられ、目的とする一般式[1]で示される光学分割剤の構造により、上記の光学活性アルデヒドを適宜選択して用いればよいが、なかでも、光学活性シトロネラ−ル、光学活性3-フェニルブタナールが好ましい。また、当然のことながら、上記の光学活性アルデヒドは、R配置、S配置のいずれのアルデヒドも含まれる。なお、これらの一般式[5]で示される光学活性アルデヒドは、市販のものを用いるか常法により合成したものを適宜用いればよい。
【0033】
一般式[7]で示されるアルデヒドの具体例としては、上記一般式[5]で示されるアルデヒドの具体例のラセミ体が好ましく挙げられ、なかでも、ラセミ体のシトロネラ−ル、ラセミ体の3-フェニルブタナールが好ましい。なお、これらの一般式[7]で示されるラセミ体のアルデヒドは、市販のものを用いるか常法により合成したものを適宜用いればよい。
【0034】
一般式[4]で示されるオキサアズレノン誘導体と一般式[5]で示される光学活性アルデヒド又は一般式[7]で示されるラセミ体のアルデヒドを反応させる条件としては、特に限定されるものではないが、例えば一般式[4]で示されるオキサアズレノン誘導体と、当該オキサアズレノン誘導体に対して、通常1〜10当量、好ましくは1〜5当量の一般式[5]で示される光学活性アルデヒド又は一般式[7]で示されるラセミ体のアルデヒドを、塩基の存在下、要すれば有機溶媒中で反応させればよい。
【0035】
上記の反応において、要すれば使用される有機溶媒の具体例としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、例えばジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、例えばジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン等のハロゲン系溶媒、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられ、上記の反応に必要とされる反応温度に適した有機溶媒を適宜選択して用いればよい。また、これらの有機溶媒は、1種類のものを単独で用いてもよいし、複数種のものを適宜組み合わせて用いてもよい。なお、これらの有機溶媒の使用量としては特に限定されないが、具体的には、例えば一般式[4]で示されるオキサアズレノン誘導体1mmolに対して、通常0.01mL〜1000mL、好ましくは0.1mL〜100mLである。
【0036】
上記の反応において使用される塩基は、通常この分野で用いられている塩基であれば差し支えないが、好ましくはアルカリ金属水酸化物又は1〜3級アミンが用いられる。当該アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。更に、当該アミンの具体例としては、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、フェニルアミン(アニリン)、ベンジルアミン、フェネチルアミン等の鎖状の1級アミン、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、エチルメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、ジフェネチルアミン等の鎖状の2級アミン、例えばピロリジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン等の環状の2級アミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジエチルメチルアミン、N,N-ジプロピルメチルアミン、N,N-ジプロピルエチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、トリフェニルアミン、N,N-ジメチルフェニルアミン、トリベンジルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、トリフェネチルアミン等の鎖状の3級アミン、例えばオキサゾール、チアゾール、ピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、ピラジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)等の環状の3級アミン等が挙げられる。また、これらの塩基は、1種類のものを単独で用いてもよいし、複数種のものを適宜組み合わせて用いてもよい。なお、これらの塩基の使用量としては、例えば一般式[4]で示されるオキサアズレノン誘導体に対して、通常1〜10当量、好ましくは1〜5当量である。
【0037】
上記の反応における反応温度は、一般式[4]で示されるオキサアズレノン誘導体と一般式[5]で示される光学活性アルデヒド又は一般式[7]で示されるラセミ体のアルデヒドとが効率的に反応し、一般式[6]で示される光学活性アズレン誘導体(光学分割剤)又は一般式[8]で示されるラセミ体のアズレン誘導体が収率良く合成できるような温度に設定すればよく、具体的には、例えば通常0℃〜200℃、好ましくは20℃〜150℃である。
【0038】
上記の反応における反応時間は、一般式[4]で示されるオキサアズレノン誘導体に対する一般式[5]で示される光学活性アルデヒド又は一般式[7]で示されるラセミ体のアルデヒドの使用量、有機溶媒の有無、その種類及び使用量、塩基の種類及びその使用量、反応温度等により変動する場合があるので一概には言えないが、通常0.5時間〜300時間、好ましくは1時間〜150時間の範囲に設定される。
【0039】
この反応によって得られる、一般式[6]で示される光学活性アズレン誘導体(光学分割剤)又は一般式[8]で示されるラセミ体のアズレン誘導体の単離、精製方法としては、一般的な後処理、精製操作でよく、その代表例としては、例えば反応終了後の溶液を水等で洗浄し、洗浄後の溶液を濃縮後、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の適当な精製操作を行って単離、精製する方法等が挙げられる。なお、反応時に用いられる有機溶媒が水等と任意の割合で混和する溶媒の場合には、当該溶媒を留去して水等と任意の割合で混和しない溶媒に置き換えた後に、水等の洗浄操作を行えばよい。
【0040】
一般式[8]で示されるラセミ体のアズレン誘導体から、一般式[6]で示される光学活性アズレン誘導体(光学分割剤)を合成する際に行われる、光学異性体分離用カラムによる分離、エステル部分の加水分解、光学活性アルコール又はアミンとの反応、再結晶法による分離等は、通常この分野で行われている常法にしたがって適宜行えばよい。また、ここで用いられる、分離用カラム、溶離液(展開溶媒)、加水分解試薬、光学活性アルコール又はアミン、再結晶溶媒等は、常法で用いられる範囲のものを適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば分離用カラムとしては、例えばCHIRALCEL OD-H、AD-H、AS-H、OJ-H、AD-RH、OD-RH、OD-R(ダイセル化学工業株式会社製)、例えばCHIRALPAK IA、IB、IC、AD-H(ダイセル化学工業株式会社製)等が挙げられ、溶離液(展開溶媒)としては、例えばヘキサン/イソプロパノール混合溶媒、ヘキサン/イソプロパノール/酢酸混合溶媒、ヘキサン/イソプロパノール/過塩素酸混合溶媒等が好ましく挙げられる。また、加水分解試薬としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物等が挙げられ、光学活性アルコール又はアミンとしては、例えばキニーネ、キニジン等の光学活性アルコール、例えば1-フェニルエチルアミン、1-(4-メチルフェニル)エチルアミン、1-(3-メトキシフェニル)エチルアミン、1-(4-メトキシフェニル)エチルアミン、2-メチル-3-ペンチルアミン、2-ヘキシルアミン、2-ヘプチルアミン、2-オクチルアミン、2-ノニルアミン、1-アミノインダン等の光学活性アミンが挙げられ、更に、再結晶溶媒としては、例えばヘキサン/ベンゼン混合溶媒、クロロホルム/ベンゼン混合溶媒、ジクロロメタン/ベンゼン混合溶媒等が好ましく挙げられる。
【0041】
また、一般式[1]で示される光学分割剤を合成する際に、必要応じて行われる加水分解反応や酸ハロゲン化反応は、通常この分野の常法にしたがって適宜行えばよい。
【0042】
なお、本発明の光学分割剤は、不斉炭素を1つ有しているが、当然のことながら、本発明ではR配置、S配置の両方が含まれる。
【0043】
このようにして得られる本発明の光学分割剤は、アルコールの光学異性体混合物から光学活性アルコールを製造する際の光学分割剤として用いることができる。すなわち、本発明の一般式[1]で示される光学分割剤を、アルコールの光学異性体混合物と反応させて、2種類のジアステレオマーを生成させた後、これを分離し、次いで、それぞれ分離したジアステレオマーのエステル結合を加水分解等によって切断することにより、光学活性アルコールを製造することができる。
【0044】
次に、本発明の光学活性アルコールの製造方法について詳細に説明する。まず、第1の工程として、本発明の一般式[1]で示される光学分割剤の1種と分子内に不斉炭素を有するアルコールの光学異性体混合物を反応させて、ジアステレオマー混合物を生成させる。
【0045】
上記第1の工程で用いられる分子内に不斉炭素を有するアルコールの光学異性体混合物としては、分子内に1つ以上の不斉炭素を有し、かつ上記第1の工程において悪影響を及ぼす官能基を持たないアルコールの光学異性体混合物であれば、特定のアルコールに限定されるものではない。具体的には、例えば(±)-2-n-ペンタノール、(±)-トランス-2-メチルシクロヘキサノール、(±)-メントール等の炭素数1〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルコールを一例として挙げることができるが、上述したように、これらの例に何ら限定されるものではなく、悪影響を及ぼさない官能基として、例えばニトロ基、アルコキシ基、シアノ基、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子等を有しているアルコールであってもよい。
【0046】
上記第1の工程の反応条件としては、例えば一般式[1]で示される光学分割剤と、当該光学分割剤に対して、通常0.1〜10当量、好ましくは0.2〜5当量の上記不斉炭素を有するアルコールの光学異性体混合物を、要すれば有機溶媒中、必要に応じて酸、塩基もしくは縮合剤等を添加して反応させればよい。
【0047】
上記第1の工程において、要すれば使用される有機溶媒の具体例としては、例えばジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、例えばジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン等のハロゲン系溶媒、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられ、上記第1の工程の反応に必要とされる反応温度に適した有機溶媒を適宜選択して用いればよいが、該工程はエステル化反応であることから、水等を極力含んでない脱水有機溶媒を用いることが好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類のものを単独で用いてもよいし、複数種のものを適宜組み合わせて用いてもよい。なお、これらの有機溶媒の使用量としては特に限定されないが、具体的には、例えば一般式[1]で示される光学分割剤1mmolに対して、通常0.01mL〜500mL、好ましくは0.1mL〜50mLである。
【0048】
上記第1の工程において、一般式[1]で示される光学分割剤が酸ハロゲン化物である場合、すなわち一般式[1]で示される光学分割剤のうち、一般式[1]におけるRがハロゲン原子である光学分割剤の場合には、副生するハロゲン化水素をトラップする目的で、塩基が好ましく添加される。
【0049】
上記塩基は、通常この分野で用いられる塩基であれば差し支えないが、好ましくは3級アミンが用いられる。当該3級アミンの具体例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジエチルメチルアミン、N,N-ジプロピルメチルアミン、N,N-ジプロピルエチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、トリフェニルアミン、N,N-ジメチルフェニルアミン、トリベンジルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、トリフェネチルアミン等の鎖状の3級アミン、例えばオキサゾール、チアゾール、ピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン、ピラジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN)等の環状の3級アミン等が挙げられる。また、これらの塩基は、1種類のものを単独で用いてもよいし、複数種のものを適宜組み合わせて用いてもよい。なお、これらの塩基の使用量としては、この反応で生ずるハロゲン化水素が十分にトラップできるように、一般式[1]で示される光学分割剤の使用量を超える量の塩基を使用することが望ましく、具体的には、例えば一般式[1]で示される光学分割剤に対して、通常1〜10当量、好ましくは1〜5当量である。
【0050】
上記第1の工程において、一般式[1]で示される光学分割剤がカルボン酸である場合、すなわち一般式[1]で示される光学分割剤のうち、一般式[1]におけるRがヒドロキシル基である光学分割剤の場合には、該カルボン酸のエステル化反応を進行し易くする目的で、酸、塩基あるいは縮合剤が好ましく添加される。
【0051】
上記酸としては、エステル化反応の際に用いられる酸であれば特に限定されず、具体的には、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、例えばパラトルエンスルホン酸(TSA)、ピリジニウムパラトルエンスルホン酸(PPTS)等の有機酸等が挙げられる。また、これらの酸は、1種類のものを単独で用いてもよいし、複数種のものを適宜組み合わせて用いてもよい。なお、これらの酸の使用量としては、触媒量以上であればよく、具体的には、例えば一般式[1]で示される光学分割剤に対して、通常0.001〜10当量、好ましくは0.01〜5当量である。
【0052】
上記塩基としては、エステル化反応の際に用いられる塩基であれば特に限定されず、具体的には、上述した3級アミンのほかに、例えば水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸のアルカリ金属塩、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、例えばブチルリチウム、ヘキシルリチウム等のアルキルリチウム、例えばリチウムジイソプロピルアミド(LDA)、リチウムヘキサメチルジシラザン(LHMDS)、ナトリウムヘキサメチルジシラザン(NaHMDS)、カリウムヘキサメチルジシラザン(KHMDS)等の金属アミド等を挙げることができる。また、これらの塩基は、1種類のものを単独で用いてもよいし、複数種のものを適宜組み合わせて用いてもよい。なお、これらの塩基の使用量としては、触媒量以上であればよく、具体的には、例えば不斉炭素を有するアルコールの光学異性体混合物に対して、通常0.001〜10当量、好ましくは0.01〜5当量である。
【0053】
上記縮合剤としては、エステル化反応の際に用いられる縮合剤であれば特に限定されず、具体的には、例えばN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDAC)等のカルボジイミド、例えば(シアノメチレン)トリメチルホスホラン、(シアノメチレン)トリブチルホスホラン等の(シアノメチレン)ホスホラン等が挙げられる。また、これらの縮合剤は、1種類のものを単独で用いてもよいし、複数種のものを適宜組み合わせて用いてもよい。なお、これらの縮合剤の使用量としては、例えば縮合剤がカルボジイミドの場合には、一般式[1]で示される光学分割剤に対して、通常1〜10当量、好ましくは1〜5当量であり、縮合剤が(シアノメチレン)ホスホランの場合には、不斉炭素を有するアルコールの光学異性体混合物に対して、通常1〜10当量、好ましくは1〜5当量である。
【0054】
上記第1の工程において、一般式[1]で示される光学分割剤がカルボン酸エステルである場合、すなわち一般式[1]で示される光学分割剤のうち、一般式[1]におけるRが炭素数1〜6のアルコキシ基である光学分割剤の場合には、該カルボン酸エステルのエステル交換反応を進行し易くする目的で、酸あるいは塩基が好ましく添加される。
【0055】
エステル交換反応の際に用いられる上記酸及び塩基の具体例としては、一般式[1]で示される光学分割剤がカルボン酸である場合に用いられる酸及び塩基と同じものを挙げることができ、その使用量も、一般式[1]で示される光学分割剤がカルボン酸である場合に用いられる酸及び塩基の使用量に準じればよい。
【0056】
上記第1の工程における反応温度は、一般式[1]で示される光学分割剤と不斉炭素を有するアルコールの光学異性体混合物とが効率的に反応できるような温度に設定すればよく、具体的には、例えば通常−20℃〜200℃、好ましくは0℃〜150℃である。
【0057】
上記第1の工程における反応時間は、一般式[1]で示される光学分割剤に対する不斉炭素を有するアルコールの光学異性体混合物の使用量、有機溶媒の有無、その種類及び使用量、酸、塩基もしくは縮合剤の有無、その種類及び使用量、反応温度等により変動する場合があるので一概には言えないが、通常0.1時間〜100時間、好ましくは0.2時間〜50時間の範囲に設定される。
【0058】
上記第1の工程における後処理方法としては、一般的な後処理操作を行えばよく、その代表例としては、例えば反応終了後の溶液に必要に応じて有機溶媒を添加し、該溶液を例えば水、弱酸あるいは弱塩基等で洗浄し、洗浄後の溶液を乾燥後、濃縮することにより達成される。当該第1の工程により、不斉炭素を有するアルコールの光学異性体混合物に由来するジアステレオマー混合物が得られる。
【0059】
次に、第2の工程として、上記第1の工程によって得られたジアステレオマー混合物をそれぞれのジアステレオマーに分離する。ここで用いられるそれぞれのジアステレオマーに分離するための分離方法としては、本発明の光学分割剤が、目視観察を利用することによって、ジアステレオマー混合物をより容易に分離できることを目的として開発されたものであるから、必要とされる分離画分の識別を目視によって補助することで、従来法と比較して、ジアステレオマー混合物の分離を容易かつ迅速に行える、カラムクロマトグラフィーによる方法が好ましく選択される。
【0060】
上記クロマトグラフィーによる分離に用いられるカラムの充填剤としては、具体的には、例えば全多孔性球状酸性シリカゲル(100〜210μm)、フラッシュ用全多孔性球状酸性シリカゲル(40〜100μm)、全多孔性球状中性シリカゲル(100〜210μm)、フラッシュ用全多孔性球状中性シリカゲル(40〜100μm)、全多孔性球状塩基性シリカゲル(100〜210μm)、逆相全多孔性球状C18(オクタデシル)シリカゲル、アミノプロピルシリル化シリカゲル(75〜150μm)等のシリカゲル、例えば活性アルミナ(70〜180μm)、酸性活性アルミナ(70〜210μm)、塩基性アルミナ(70〜210μm)等のアルミナ、例えばフロリジル等が挙げられる。
【0061】
上記クロマトグラフィーによる分離に用いられるカラムとしては、あらかじめ充填剤が詰められた市販の分取用カラム管を用いてもよく、その1例として、例えばCHIRALCEL OD-H、AD-H、AS-H、OJ-H、AD-RH、OD-RH、OD-R(ダイセル化学工業株式会社製)、例えばCHIRALPAK IA、IB、IC、AD-H(ダイセル化学工業株式会社製)等の分取用カラム管を例示することができる。
【0062】
上記クロマトグラフィーによる分離に用いられる溶離液(展開溶媒)は、分離に用いられる充填剤の種類、該充填剤と分離対象であるジアステレオマー混合物との親和性、カラムにおける充填剤が詰められた部分の長さ等を考慮して、ジアステレオマー混合物を十分に分離できるRf値差(△Rf値)を与える溶離液(展開溶媒)を適宜選択すればよい。
【0063】
このように、クロマトグラフィーによる分離方法を用いれば、ジアステレオマー混合物が有する色をそれぞれのジアステレオマーに分離する際の指標として用いることができるので、従来法と比較して、より簡便かつ迅速に分離が行えるようになる。すなわち、本発明の製造方法は、該第2の工程に特徴を有するものである。
【0064】
なお、本発明の製造方法に係る第2の工程は、カラムクロマトによる方法によらず、再結晶法等の別の分離方法を用いてジアステレオマー混合物を分離しても、何ら差し支えない。
【0065】
このようにして得られた各々のジアステレオマーを第3の工程に付すことで、光学活性アルコールを製造することができる。すなわち、第3の工程として、上記第2の工程で分離した各々のジアステレオマーに対して加水分解反応等を行い、該ジアステレオマーのエステル結合を切断することによって光学活性アルコールを製造する。
【0066】
上記第3の工程の反応条件としては、分離したジアステレオマーを酸又は塩基の存在下、水又はアルコール系有機溶媒中で加水分解反応あるいはエステル交換反応を行って、該ジアステレオマーのエステル結合を切断すればよい。
【0067】
上記第3の工程において使用される酸としては、加水分解反応あるいはエステル交換反応の際に用いられる酸であれば特に限定されず、具体的には、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、例えばパラトルエンスルホン酸(TSA)、ピリジニウムパラトルエンスルホン酸(PPTS)等の有機酸等が挙げられる。また、これらの酸は、1種類のものを単独で用いてもよいし、複数種のものを適宜組み合わせて用いてもよい。なお、これらの酸の使用量としては、触媒量以上であればよく、具体的には、例えばジアステレオマーに対して、通常0.001〜10当量、好ましくは0.01〜5当量である。
【0068】
上記第3の工程において使用される塩基としては、加水分解反応あるいはエステル交換反応の際に用いられる塩基であれば特に限定されず、具体的には、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の炭酸のアルカリ金属塩、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物等が好ましく挙げられる。また、これらの塩基は、1種類のものを単独で用いてもよいし、複数種のものを適宜組み合わせて用いてもよい。なお、これらの塩基の使用量としては、触媒量以上であればよく、具体的には、例えばジアステレオマーに対して、通常0.001〜10当量、好ましくは0.01〜5当量である。
【0069】
上記第3の工程において使用される水としては、加水分解反応の際に用いられる水であれば特に限定されず、具体的には、例えば常水、例えば蒸留水、脱イオン水等の精製水、超純水等が挙げられる。なお、当該水の使用量としては特に限定されないが、具体的には、例えばジアステレオマー1mmolに対して、通常0.01mL〜1000mL、好ましくは0.1mL〜100mLである。
【0070】
上記第3の工程において使用されるアルコール系有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が好ましく挙げられる。また、これらのアルコール系有機溶媒は、1種類のものを単独で用いてもよいし、複数種のものを適宜組み合わせて用いてもよい。なお、これらのアルコール系有機溶媒の使用量としては特に限定されないが、具体的には、例えばジアステレオマー1mmolに対して、通常0.01mL〜1000mL、好ましくは0.1mL〜100mLである。
【0071】
上記第3の工程における反応温度は、ジアステレオマーの加水分解反応あるいはエステル交換反応が効率的に進行し、目的とする光学活性アルコールが収率良く得られるような温度に設定すればよく、具体的には、例えば通常−20℃〜100℃、好ましくは0℃〜80℃である。
【0072】
上記第3の工程における反応時間は、酸又は塩基の種類及びその使用量、アルコール系溶媒の種類、ジアステレオマーに対する水又はアルコール系溶媒の使用量、反応温度等により変動する場合があるので一概には言えないが、通常0.1時間〜48時間、好ましくは0.2時間〜24時間の範囲に設定される。
【0073】
このようにして得られる光学活性アルコールは、一般的な後処理操作を行った後、例えば蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の適当な精製操作を採用して、単離、精製すればよい。
【0074】
また、上記第3の工程は副反応を起こすことがないので、上記第3の工程で再生される本発明の光学分割剤を収率良く回収することができる。回収された本発明の光学分割剤は、必要に応じて精製操作を行って再利用に供することができる。
【0075】
以上のように、本発明の光学分割剤を用いて、アルコールの光学異性体混合物について上記した如き第1〜第3の工程を行うことにより、アルコールの光学異性体混合物から光学活性アルコールを製造することができる。すなわち、本発明の製造方法は、本発明の光学分割剤の1種と分子内に不斉炭素を有するアルコールの光学異性体混合物を反応させる第1の工程と、第1の工程により得られたジアステレオマー混合物をそれぞれのジアステレオマーに分離する第2の工程と、分離したジアステレオマーのエステル結合を切断して光学活性アルコールを得る第3の工程とを含むものである。
【0076】
また、本発明の光学分割剤を使用することにより、アルコールだけでなく、分子内に不斉炭素を有し、カルボン酸と反応することのできる官能基を有する化合物(例えばチオール、アミン等)の光学異性体混合物も光学分割することが可能である。
【実施例】
【0077】
以下に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0078】
合成例1 3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステルのラセミ体の合成
3-メトキシカルボニルオキサアズレノン10.06g(4.9×10−2mol)のエタノール(200mL)溶液に、3-フェニルブタナール22.01g(1.5×10−1mol)及びモルホリン13.45g(1.5×10−1mol)を加え、加熱還流下で30時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧留去して溶媒を取り除いた後、濃縮残渣にベンゼンを加えた。次いで、該ベンゼン溶液を水で5回洗浄し、洗浄後の有機相に無水硫酸マグネシウムを加えて1時間放置した後、硫酸マグネシウムを濾別することによって得られた濾液を減圧留去した後の濃縮残渣を、シリカゲルカラム(溶離液:ベンゼン)、アルミナカラム(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=10/1)、アルミナカラム(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=20/1)で順に精製することにより、3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステルのラセミ体12.15g(収率:84.2%)を得た。以下にH-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):1.79(3H,d,J=7.2Hz,1’-CH),3.95(3H,s,-COOCH),4.70(1H,q,J=7.14Hz,2’-CH),7.10-7.26(5H,m,-Ph),7.29(1H,dd,J=9.6Hz,9.6Hz,H-5),7.45(1H,dd,J=9.6Hz,9.6Hz,H-7),7.69(1H,dd,J=9.6Hz,9.6Hz,H-6),8.33(1H,d,J=9.2Hz,H-4),8.38(1H,s,H-2),9.61(1H,d,J=9.2Hz,H-8)
【0079】
合成例2 6-イソプロピル-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステルのラセミ体の合成
6-イソプロピル-3-メトキシカルボニルオキサアズレノン5.00g(2.0×10−2mol)のエタノール(100mL)溶液に、3-フェニルブタナール9.09g(6.1×10−2mol)及びモルホリン5.30g(6.1×10−2mol)を加え、加熱還流下で50時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧留去して溶媒を取り除いた後、濃縮残渣にベンゼンを加えた。次いで、該ベンゼン溶液を水で5回洗浄し、洗浄後の有機相に無水硫酸マグネシウムを加えて1時間放置した後、硫酸マグネシウムを濾別することによって得られた濾液を減圧留去した後の濃縮残渣を、シリカゲルカラム(溶離液:ベンゼン)、アルミナカラム(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=10/1)、アルミナカラム(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=20/1)、逆相分取カラム(溶離液:アセトニトリル/水=7/3)で順に精製することにより、6-イソプロピル-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステルのラセミ体4.51g(収率:66.8%)を得た。以下にH-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):1.30(6H,d,J=6.8Hz,-CH(CH),1.78(3H,d,J=7.2Hz,1’-CH),3.04(1H,sept,J=6.8Hz,-CH(CH),3.93(3H,s,-COOCH),4.67(1H,q,J=7.2Hz,2’-CH),7.10-7.25(5H,m,-Ph),7.22(1H,d,J=10.0Hz,H-5),7.39(1H,d,J=10.4Hz,H-7),8.25(1H,d,J=10.0Hz,H-4),8.28(1H,s,H-2),9.53(1H,d,J=10.4Hz,H-8)
【0080】
合成例3 7-イソプロピル-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステルのラセミ体の合成
5-イソプロピル-3-メトキシカルボニルオキサアズレノン5.01g(2.0×10−2mol)のエタノール(100mL)溶液に、3-フェニルブタナール9.05g(6.1×10−2mol)及びモルホリン5.35g(6.1×10−2mol)を加え、加熱還流下で50時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧留去して溶媒を取り除いた後、濃縮残渣にベンゼンを加えた。次いで、該ベンゼン溶液を水で5回洗浄し、洗浄後の有機相に無水硫酸マグネシウムを加えて1時間放置した後、硫酸マグネシウムを濾別することによって得られた濾液を減圧留去した後の濃縮残渣を、シリカゲルカラム(溶離液:ベンゼン)、アルミナカラム(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=10/1)、アルミナカラム(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=20/1)、逆相分取カラム(溶離液:アセトニトリル/水=7/3)で順に精製することにより、7-イソプロピル-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステルのラセミ体6.08g(収率:90.0%)を得た。以下にH-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):1.38(6H,d,J=6.8Hz,-CH(CH),1.78(3H,d,J=7.2Hz,1’-CH),3.17(1H,sept,J=6.8Hz,-CH(CH),3.95(3H,s,-COOCH),4.67(1H,q,J=7.2Hz,2’-CH),7.10-7.24(5H,m,-Ph),7.26(1H,dd,J=10.4Hz,10.4Hz,H-5),7.66(1H,d,J=10.8Hz,H-6),8.21(1H,d,J=10.4Hz,H-4),8.34(1H,s,H-2),9.93(1H,d,J=10.4Hz,H-8)
【0081】
合成例4 3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸のラセミ体の合成
合成例1で得られた3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステルのラセミ体12.15gのうちの5.00g(1.7×10−2mol)のエタノール(160mL)溶液に、水酸化カリウム水溶液(KOH:4.25g,HO:40mL)を加え、加熱還流下で3時間反応させた。反応終了後、反応液を純水(830mL)中に投入し、その溶液に6N塩酸を溶液のpHが3になるまで加え、当該溶液を1晩放置した。1晩放置した溶液から析出した藤色結晶を濾取し、得られた結晶を乾燥することにより、3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸のラセミ体4.65g(収率:97.7%)を得た。
【0082】
合成例5 (R)-(+)-フェニルエチルアミンを用いた3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸のラセミ体の光学分割
合成例4で得られた3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸(Acid)のラセミ体4.65gのうちの2.00g(7.2×10−3mol)のアセトン溶液に、光学活性な(R)-(+)-フェニルエチルアミン(Base)2.78g(2.2×10−2mol)を加え、加熱還流下で1.5時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧留去して、(+)-Acid-(+)-Base及び(−)-Acid-(+)-Baseの塩を得た。これをヘキサン/ベンゼン=5/3の混合溶媒で再結晶し、2種類の結晶を得た。更に、ヘキサン/ベンゼン=1/1の混合溶媒を用いて一方の結晶形のみの再結晶を繰り返すことにより、融点が144〜145℃の(−)-Acid-(+)-Base0.80g(収率:27.6%)を得た。なお、ここで得られた光学活性な3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸の絶対構造は、得られた(−)-Acid-(+)-Baseを100%リン酸で処理して文献公知の脱エステル体[1-(1-フェニルエチル)アズレン]に変換し(収率:81.1%)、該脱エステル体の比旋光度を測定することにより、R体であることを確認した。
【0083】
合成例6 (S)-(−)-フェニルエチルアミンを用いた3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸のラセミ体の光学分割
合成例4で得られた3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸(Acid)のラセミ体4.65gのうちの2.00g(7.2×10−3mol)のアセトン溶液に、光学活性な(S)-(−)-フェニルエチルアミン(Base)2.78g(2.2×10−2mol)を加え、加熱還流下で1.5時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧留去して、(+)-Acid-(−)-Base及び(−)-Acid-(−)-Baseの塩を得た。これをヘキサン/ベンゼン=5/3の混合溶媒で再結晶し、2種類の結晶を得た。更に、ヘキサン/ベンゼン=1/1の混合溶媒を用いて一方の結晶形のみの再結晶を繰り返すことにより、融点が144〜145℃の(+)-Acid-(−)-Base1.42g(収率:48.6%)を得た。なお、ここで得られた光学活性な3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸の絶対構造は、得られた(+)-Acid-(−)-Baseを100%リン酸で処理して文献公知の脱エステル体[1-(1-フェニルエチル)アズレン]に変換し(収率:82.3%)、該脱エステル体の比旋光度を測定することにより、S体であることを確認した。
【0084】
実施例1 分取用光学分割カラムを用いた3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステルのラセミ体の光学分割
合成例1の手法と同様にして得られた3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステルのラセミ体を、分取用光学分割カラム(光学異性体分離用カラム)(CHIRALCEL OD(2cmΦ×25cm),ヘキサン/イソプロパノール=50/1,0.5mL/min)を用いて50回以上分取を繰り返し、光学活性なアズレンカルボン酸((R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステル2.81g及び(S)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステル2.85g)を得た。
【0085】
実施例2 (R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸の合成
実施例1で得られた(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステル2.81g(9.6×10−3mol)のエタノール(160mL)溶液に、水酸化カリウム水溶液(KOH:2.69g,HO:40mL)を加え、加熱還流下で3時間反応させた。反応終了後、反応液を純水(830mL)中に投入し、その溶液に6N塩酸を溶液のpHが3になるまで加え、当該溶液を1晩放置した。1晩放置した溶液から析出した藤色結晶を濾取し、得られた結晶を乾燥することにより、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸2.54g(収率:95.0%)を得た。なお、得られたカルボン酸が光学活性なR体であることは、該カルボン酸をトリクロロ酢酸で処理して文献公知の脱エステル体[1-(1-フェニルエチル)アズレン]に変換し(収率:94.8%)、該脱エステル体の比旋光度を測定すると共に([α]435=−1011°)、光学活性HPLCを用いて分析することで確認した。
【0086】
実施例3 (S)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸の合成
実施例1で得られた(S)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステル2.85g(9.8×10−3mol)のエタノール(160mL)溶液に、水酸化カリウム水溶液(KOH:2.75g,HO:40mL)を加え、加熱還流下で3時間反応させた。反応終了後、反応液を純水(830mL)中に投入し、その溶液に6N塩酸を溶液のpHが3になるまで加え、当該溶液を1晩放置した。1晩放置した溶液から析出した藤色結晶を濾取し、得られた結晶を乾燥することにより、(S)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸2.54g(収率:93.6%)を得た。なお、得られたカルボン酸が純粋なS体であることは、該カルボン酸をトリクロロ酢酸で処理して文献公知の脱エステル体[1-(1-フェニルエチル)アズレン]に変換し(収率:93.4%)、該脱エステル体の比旋光度を測定すると共に([α]435=+1011°)、光学活性HPLCを用いて分析することで確認した。
【0087】
実施例4 (R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステルの合成
3-メトキシカルボニルオキサアズレノン5.19g(2.4×10−2mol)のエタノール(100mL)溶液に、(R)-(+)-シトロネラ−ル11.33g(7.3×10−2mol)及びモルホリン6.40g(7.3×10−2mol)を加え、加熱還流下で90時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧留去して溶媒を取り除いた後の濃縮残渣を、シリカゲルカラム(溶離液:ベンゼン)、アルミナカラム(溶離液:ベンゼン)で順に精製した。その結果、(R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステルと(R)-(+)-シトロネラ−ルの混合物として7.74gを得た。
【0088】
実施例5 (R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸の合成
実施例4で得られた(R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステルと(R)-(+)-シトロネラ−ルの混合物7.74gのエタノール(160mL)溶液に、水酸化カリウム水溶液(KOH:14.85g,HO:40mL)を加え、加熱還流下で2時間反応させた。反応終了後、反応液を純水(830mL)中に投入した。次いで、当該溶液をベンゼンで洗浄し、(R)-(+)-シトロネラ−ルを取り除いた。洗浄後の水相に6N塩酸を溶液のpHが3になるまで加え、当該溶液を1晩放置した。1晩放置した溶液から遊離したオイルをジエチルエーテルにて抽出後、抽出後の有機相に無水硫酸マグネシウムを加えて1時間放置した後、硫酸マグネシウムを濾別することによって得られた濾液を減圧留去し、得られた残渣を乾燥することにより、(R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸5.81g(3-メトキシカルボニルオキサアズレノンからの収率:78.8%)を得た。なお、得られたカルボン酸が光学活性なR体であることは、該カルボン酸をジアゾメタンと反応させてメチル体[(R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステル]とし(収率:88.4%)、該メチル体の比旋光度を測定すると共に([α]435=+160°)、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=200/1,0.3mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0089】
実施例6 (S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステルの合成
3-メトキシカルボニルオキサアズレノン5.25g(2.4×10−2mol)のエタノール(100mL)溶液に、(S)-(−)-シトロネラ−ル11.56g(7.3×10−2mol)及びモルホリン6.45g(7.3×10−2mol)を加え、加熱還流下で90時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧留去して溶媒を取り除いた後の濃縮残渣を、シリカゲルカラム(溶離液:ベンゼン)、アルミナカラム(溶離液:ベンゼン)で順に精製した。その結果、(S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステルと(S)-(−)-シトロネラ−ルの混合物として7.66gを得た。
【0090】
実施例7 (S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸の合成
実施例6で得られた(S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステルと(S)-(−)-シトロネラ−ルの混合物7.66gのエタノール(160mL)溶液に、水酸化カリウム水溶液(KOH:14.50g,HO:40mL)を加え、加熱還流下で3時間反応させた。反応終了後、反応液を純水(830mL)中に投入した。次いで、当該溶液をベンゼンで洗浄し、(S)-(−)-シトロネラ−ルを取り除いた。洗浄後の水相に6N塩酸を溶液のpHが3になるまで加え、当該溶液を1晩放置した。1晩放置した溶液から遊離したオイルをジエチルエーテルにて抽出後、抽出後の有機相に無水硫酸マグネシウムを加えて1時間放置した後、硫酸マグネシウムを濾別することによって得られた濾液を減圧留去し、得られた残渣を乾燥することにより、(S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸6.35g(3-メトキシカルボニルオキサアズレノンからの収率:87.7%)を得た。なお、得られたカルボン酸が光学活性なS体であることは、該カルボン酸をジアゾメタンと反応させてメチル体[(S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステル]とし(収率:96.8%)、該メチル体の比旋光度を測定すると共に([α]435=−180°)、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=200/1,0.3mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0091】
参考例1 光学分割剤として(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールとしてシクロヘキサノールを用いた予備検討(本発明の製造方法に係る第1の工程の予備検討)
実施例2で得られた(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸2.54gのうちの276.1mg(1.0mmol)の無水ベンゼン(20mL)溶液に、塩化オキサリル703.9mg(5.0mmol)及びピリジン395.5mg(5.0mmol)を加え、加熱還流下で1時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧留去して溶媒を取り除き、酸塩化物((R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸塩化物)を得た。
次いで、当該酸塩化物((R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸塩化物)を無水ベンゼン(20mL)に溶解させた後、該無水ベンゼン溶液に、シクロヘキサノール300.5mg(3.0mmol)及びピリジン79.1mg(1.0mmol)を加え、加熱還流下で5時間反応させた。反応終了後、反応液にベンゼンを加え、該ベンゼン溶液を1N塩酸で5回洗浄した。洗浄後の有機相に無水硫酸マグネシウムを加えて30分放置した後、硫酸マグネシウムを濾別することによって得られた濾液を減圧留去した後の濃縮残渣を、シリカゲルカラム(溶離液:ベンゼン)、シリカゲルカラム(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=5/1)、アルミナカラム(溶離液:ベンゼン)で順に精製することにより、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸シクロヘキシルエステル262.9mg(収率:73.4%)を得た。以下にH-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ(ppm):1.37〜2.60(13H,m,1’-CH,b-CH,c-CH,d-CH,e-CH,f-CH),4.71(1H,q,J=7.1Hz,2’-CH),5.10(1H,sept,J=5.2Hz,a-CH),7.12-7.32(5H,m,-Ph),7.27(1H,dd,J=9.6Hz,10.4Hz,H-5),7.44(1H,dd,J=9.6Hz,10.0Hz,H-7),7.69(1H,dd,J=9.6Hz,10.0Hz,H-6),8.31(1H,d,J=9.2Hz,H-4),8.40(1H,s,H-2),9.61(1H,d,J=9.2Hz,H-8)
【0092】
参考例1は、本発明の光学分割剤の反応性を確認するための予備検討である。すなわち、本発明の光学分割剤がアルコールと効率的に反応して、対応するジアステレオマー混合物が収率良く得られるかどうかについての予備検討を、アルコールとして不斉炭素を有さないシクロヘキサノールを用いて行った。その結果、当該シクロヘキサノールに対応するカルボン酸エステルが収率良く得られることが確認できた。このため、以下の実施例では、アルコールの光学異性体混合物(ラセミ体のアルコール)を用いて検討を行った。
【0093】
実施例8 光学分割剤として(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールの光学異性体混合物として(±)-メントールを用いたジアステレオマー混合物の合成検討(本発明の製造方法に係る第1の工程)
実施例2で得られた(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸2.54gのうちの281.8mg(1.0mmol)の無水ベンゼン(20mL)溶液に、塩化オキサリル700.1mg(5.0mmol)及びピリジン401.9mg(5.0mmol)を加え、加熱還流下で2時間反応させた。反応終了後、反応液を減圧留去して溶媒を取り除き、酸塩化物((R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸塩化物)を得た。
次いで、当該酸塩化物((R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸塩化物)を無水ベンゼン(20mL)に溶解させた後、該無水ベンゼン溶液に、(±)-メントール468.8mg(3.0mmol)及びピリジン101.3mg(1.0mmol)を加え、加熱還流下で20時間反応させた。反応終了後、反応液にベンゼンを加え、該ベンゼン溶液を1N塩酸で5回洗浄した。洗浄後の有機相に無水硫酸マグネシウムを加えて30分放置した後、硫酸マグネシウムを濾別することによって得られた濾液を減圧留去した後の濃縮残渣を、シリカゲルカラム(溶離液:ベンゼン)、アルミナカラム(溶離液:ベンゼン)で順に精製することにより、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸メンチルエステルのジアステレオマー混合物324.4mg(収率:76.7%)を得た。なお、得られた(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸メンチルエステルがジアステレオマー混合物であることは、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=50/1,0.5mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0094】
実施例9 光学分割剤として(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールの光学異性体混合物として(±)-2-ペンタノールを用いたジアステレオマー混合物の合成検討(本発明の製造方法に係る第1の工程)
実施例9では、(±)-メントールを(±)-2-ペンタノール265.6mg(3.0mmol)に代えた以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸-2-ペンチルエステルのジアステレオマー混合物287.3mg(収率:83.2%)を得た。なお、得られた(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸-2-ペンチルエステルがジアステレオマー混合物であることは、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=50/1,0.5mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0095】
実施例10 光学分割剤として(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールの光学異性体混合物として(±)-トランス-2-メチルシクロヘキサノールを用いたジアステレオマー混合物の合成検討(本発明の製造方法に係る第1の工程)
実施例10では、(±)-メントールを(±)-トランス-2-メチルシクロヘキサノール356.5mg(3.0mmol)に代えた以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸-トランス-2-メチルシクロヘキシルエステルのジアステレオマー混合物317.5mg(収率:85.2%)を得た。なお、得られた(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸-トランス-2-メチルシクロヘキシルエステルがジアステレオマー混合物であることは、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=50/1,0.3mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0096】
参考例2 光学分割剤として(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールとしてl-メントールを用いた単一のジアステレオマーの合成検討(本発明の製造方法に係る第1の工程の参考検討)
参考例2では、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸の使用量を106.2mg(3.6×10−4mol)に変更し、(±)-メントールをl-メントール171.9mg(1.1×10−3mol)に代えた以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸-l-メンチルエステル149.6mg(収率:93.9%)を得た。なお、得られた(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸-l-メンチルエステルが単一のジアステレオマーである(ジアステレオマー混合物ではない)ことは、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=50/1,0.5mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0097】
実施例11 光学分割剤として(S)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールの光学異性体混合物として(±)-メントールを用いたジアステレオマー混合物の合成検討(本発明の製造方法に係る第1の工程)
実施例11では、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を(S)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸に代えた以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、(S)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸メンチルエステルのジアステレオマー混合物395.7mg(収率:92.5%)を得た。なお、得られた(S)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸メンチルエステルがジアステレオマー混合物であることは、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=50/1,0.5mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0098】
実施例12 光学分割剤として(S)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールの光学異性体混合物として(±)-2-ペンタノールを用いたジアステレオマー混合物の合成検討(本発明の製造方法に係る第1の工程)
実施例12では、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を(S)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸に代え、(±)-メントールを(±)-2-ペンタノール264.4mg(3.0mmol)に代えた以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、(S)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸-2-ペンチルエステルのジアステレオマー混合物288.2mg(収率:82.4%)を得た。なお、得られた(S)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸-2-ペンチルエステルがジアステレオマー混合物であることは、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=50/1,0.5mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0099】
実施例13 光学分割剤として(S)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールの光学異性体混合物として(±)-トランス-2-メチルシクロヘキサノールを用いたジアステレオマー混合物の合成検討(本発明の製造方法に係る第1の工程)
実施例13では、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を(S)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸に代え、(±)-メントールを(±)-トランス-2-メチルシクロヘキサノール353.5mg(3.0mmol)に代えた以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、(S)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸-トランス-2-メチルシクロヘキシルエステルのジアステレオマー混合物340.2mg(収率:91.0%)を得た。なお、得られた(S)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸-トランス-2-メチルシクロヘキシルエステルがジアステレオマー混合物であることは、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=50/1,0.5mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0100】
参考例3 光学分割剤として(S)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールとしてl-メントールを用いた単一のジアステレオマーの合成検討(本発明の製造方法に係る第1の工程の参考検討)
参考例3では、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を(S)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸102.0mg(3.6×10−4mol)に代え、(±)-メントールをl-メントール182.2mg(1.17×10−3mol)に代えた以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、(S)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸-l-メンチルエステル140.5mg(収率:91.8%)を得た。なお、得られた(S)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸-l-メンチルエステルが単一のジアステレオマーである(ジアステレオマー混合物ではない)ことは、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=50/1,0.5mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0101】
実施例14 光学分割剤として(R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールの光学異性体混合物として(±)-メントールを用いたジアステレオマー混合物の合成検討(本発明の製造方法に係る第1の工程)
実施例14では、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を(R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸288.8mg(1.0mmol)に代えた以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、(R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸メンチルエステルのジアステレオマー混合物259.2mg(収率:60.2%)を得た。なお、得られた(R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸メンチルエステルがジアステレオマー混合物であることは、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=200/1,0.5mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0102】
実施例15 光学分割剤として(R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールの光学異性体混合物として(±)-2-ペンタノールを用いたジアステレオマー混合物の合成検討(本発明の製造方法に係る第1の工程)
実施例15では、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を(R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸276.5mg(1.0mmol)に代え、(±)-メントールを(±)-2-ペンタノール277.3mg(3.0mmol)に代えた以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、(R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸-2-ペンチルエステルのジアステレオマー混合物303.7mg(収率:86.3%)を得た。なお、得られた(R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸-2-ペンチルエステルがジアステレオマー混合物であることは、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=200/1,0.5mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0103】
実施例16 光学分割剤として(R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールの光学異性体混合物として(±)-トランス-2-メチルシクロヘキサノールを用いたジアステレオマー混合物の合成検討(本発明の製造方法に係る第1の工程)
実施例16では、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を(R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸286.9mg(1.0mmol)に代え、(±)-メントールを(±)-トランス-2-メチルシクロヘキサノール342.3mg(3.0mmol)に代えた以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、(R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸-トランス-2-メチルシクロヘキシルエステルのジアステレオマー混合物346.7mg(収率:86.5%)を得た。なお、得られた(R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸-トランス-2-メチルシクロヘキシルエステルがジアステレオマー混合物であることは、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=200/1,0.5mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0104】
実施例17 光学分割剤として(S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールの光学異性体混合物として(±)-メントールを用いたジアステレオマー混合物の合成検討(本発明の製造方法に係る第1の工程)
実施例17では、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を(S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸296.0mg(1.0mmol)に代えた以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、(S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸メンチルエステルのジアステレオマー混合物284.4mg(収率:64.5%)を得た。なお、得られた(S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸メンチルエステルがジアステレオマー混合物であることは、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=200/1,0.5mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0105】
実施例18 光学分割剤として(S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールの光学異性体混合物として(±)-2-ペンタノールを用いたジアステレオマー混合物の合成検討(本発明の製造方法に係る第1の工程)
実施例18では、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を(S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸296.7mg(1.0mmol)に代え、(±)-メントールを(±)-2-ペンタノール275.5mg(3.0mmol)に代えた以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、(S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸-2-ペンチルエステルのジアステレオマー混合物320.3mg(収率:86.5%)を得た。なお、得られた(S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸-2-ペンチルエステルがジアステレオマー混合物であることは、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=200/1,0.5mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0106】
実施例19 光学分割剤として(S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールの光学異性体混合物として(±)-トランス-2-メチルシクロヘキサノールを用いたジアステレオマー混合物の合成検討(本発明の製造方法に係る第1の工程)
実施例19では、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を(S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸293.3mg(1.0mmol)に代え、(±)-メントールを(±)-トランス-2-メチルシクロヘキサノール426.8mg(3.74mmol)に代えた以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、(S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸-トランス-2-メチルシクロヘキシルエステルのジアステレオマー混合物354.9mg(収率:86.6%)を得た。なお、得られた(R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸-トランス-2-メチルシクロヘキシルエステルがジアステレオマー混合物であることは、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=200/1,0.3mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0107】
実施例20 (R)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸の合成
6-イソプロピル-3-メトキシカルボニルオキサアズレノンを原料として、実施例4と同様の手法により得られた(R)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステル921.9mg(3.3×10−3mol)のエタノール(80mL)溶液に、水酸化カリウム水溶液(KOH:1.85g,HO:20mL)を加え、加熱還流下で6時間反応させた。反応終了後、反応液を純水(600mL)中に投入し、その溶液に6N塩酸を溶液のpHが3になるまで加え、当該溶液を1晩放置した。1晩放置した溶液から遊離したオイルをジエチルエーテルにて抽出後、抽出後の有機相に無水硫酸マグネシウムを加えて1時間放置した後、硫酸マグネシウムを濾別することによって得られた濾液を減圧留去し、得られた残渣を乾燥することにより、(R)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸859.6mg(収率:97.2%)を得た。
【0108】
実施例21 (S)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸の合成
6-イソプロピル-3-メトキシカルボニルオキサアズレノンを原料として、実施例6と同様の手法により得られた(S)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸メチルエステル1.02g(3.0×10−3mol)を用いた以外は、実施例20と同様の操作を行うことにより、(S)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸896.8mg(収率:91.6%)を得た。
【0109】
実施例22 光学分割剤として(R)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールの光学異性体混合物として(±)-メントールを用いたジアステレオマー混合物の合成検討(本発明の製造方法に係る第1の工程)
実施例22では、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を(R)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸103.6mg(0.3mmol)に代えた以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、(R)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸メンチルエステルのジアステレオマー混合物129.7mg(収率:87.8%)を得た。なお、得られた(R)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸メンチルエステルがジアステレオマー混合物であることは、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=200/1,0.5mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0110】
実施例23 光学分割剤として(R)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールの光学異性体混合物として(±)-2-ペンタノールを用いたジアステレオマー混合物の合成検討(本発明の製造方法に係る第1の工程)
実施例23では、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を(R)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸107.8mg(0.3mmol)に代え、(±)-メントールを(±)-2-ペンタノール81.3mg(0.9mmol)に代えた以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、(R)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸-2-ペンチルエステルのジアステレオマー混合物115.0mg(収率:87.7%)を得た。なお、得られた(R)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸-2-ペンチルエステルがジアステレオマー混合物であることは、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=200/1,0.5mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0111】
実施例24 光学分割剤として(R)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールの光学異性体混合物として(±)-トランス-2-メチルシクロヘキサノールを用いたジアステレオマー混合物の合成検討(本発明の製造方法に係る第1の工程)
実施例24では、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を(R)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸105.4mg(0.3mmol)に代え、(±)-メントールを(±)-トランス-2-メチルシクロヘキサノール119.2mg(0.9mmol)に代えた以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、(R)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸-トランス-2-メチルシクロヘキシルエステルのジアステレオマー混合物127.7mg(収率:93.5%)を得た。なお、得られた(R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸-トランス-2-メチルシクロヘキシルエステルがジアステレオマー混合物であることは、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=300/1,0.5mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0112】
実施例25 光学分割剤として(S)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールの光学異性体混合物として(±)-メントールを用いたジアステレオマー混合物の合成検討(本発明の製造方法に係る第1の工程)
実施例25では、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を(S)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸103.0mg(0.3mmol)に代えた以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、(S)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸メンチルエステルのジアステレオマー混合物125.1mg(収率:85.1%)を得た。なお、得られた(S)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸メンチルエステルがジアステレオマー混合物であることは、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=200/1,0.5mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0113】
実施例26 光学分割剤として(S)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールの光学異性体混合物として(±)-2-ペンタノールを用いたジアステレオマー混合物の合成検討(本発明の製造方法に係る第1の工程)
実施例26では、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を(S)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸103.6mg(0.3mmol)に代え、(±)-メントールを(±)-2-ペンタノール79.5mg(0.9mmol)に代えた以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、(S)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸-2-ペンチルエステルのジアステレオマー混合物107.9mg(収率:85.6%)を得た。なお、得られた(S)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸-2-ペンチルエステルがジアステレオマー混合物であることは、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=300/1,0.5mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0114】
実施例27 光学分割剤として(S)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸を用い、アルコールの光学異性体混合物として(±)-トランス-2-メチルシクロヘキサノールを用いたジアステレオマー混合物の合成検討(本発明の製造方法に係る第1の工程)
実施例27では、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸を(S)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸102.3mg(0.3mmol)に代え、(±)-メントールを(±)-トランス-2-メチルシクロヘキサノール126.5mg(0.9mmol)に代えた以外は、実施例8と同様の操作を行うことにより、(S)-6-イソプロピル-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸-トランス-2-メチルシクロヘキシルエステルのジアステレオマー混合物108.2mg(収率:81.7%)を得た。なお、得られた(R)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸-トランス-2-メチルシクロヘキシルエステルがジアステレオマー混合物であることは、光学活性HPLC(CHIRALCEL OD-H(0.46cmΦ×15cm),ヘキサン/イソプロパノール=300/1,0.5mL/min,27℃)を用いて分析することで確認した。
【0115】
実施例28 (S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸-2-ペンチルエステルのジアステレオマー混合物の分離検討(本発明の製造方法に係る第2の工程)
実施例18で得られた(S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸-2-ペンチルエステルのジアステレオマー混合物を順相高速液体クロマトグラフィー(順相HPLC)を用いて分離検討を行ったところ、ヘキサン/イソプロパノール=98/1の混合溶媒においてジアステレオマー混合物を分離できた。その際、分離されたもの(それぞれのジアステレオマー)の検出は、190〜900nmの紫外・可視分光光度計(UV/VIS検出器,島津SPD-M10AVP;株式会社島津製作所製)を用いて行った。
【0116】
実施例29 (S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸-2-ペンチルエステルのジアステレオマー混合物の分離検討(本発明の製造方法に係る第2の工程)
実施例18で得られた(S)-3-(1,5-ジメチル-4-ヘキセニル)アズレン-1-カルボン酸-2-ペンチルエステルのジアステレオマー混合物を薄層クロマトグラフィー(担体:アミノプロピルシリル化シリカゲル,NH2シリカゲル60F254プレートワコー(層厚0.25mm);和光純薬工業株式会社製)を用いて分離検討を行ったところ、ヘキサン/酢酸エチル=200/1の混合溶媒においてジアステレオマー混合物が分離されることを、目視で赤紫色のスポットを観察することにより確認できた(Rf値=0.48,0.44)。
【0117】
実施例30 (R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸メンチルエステルのジアステレオマー混合物の加水分解の検討(本発明の製造方法に係る第3の工程)
実施例8で得られた(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸メンチルエステルのジアステレオマー混合物を分取用光学分割カラム(光学異性体分離用カラム)(CHIRALCEL OD(2cmΦ×25cm),ヘキサン/イソプロパノール=50/1,0.5mL/min)で分離し、ジアステレオマーの一方133.4mg(3.2×10−4mol,収率:41.1%)を得た。
次いで、当該ジアステレオマー133.4mg(3.2×10−4mol)のエタノール(16mL)溶液に、水酸化カリウム水溶液(KOH:175.92mg,HO:4mL)を加え、加熱還流下で20時間反応させた。反応終了後、反応液を純水(300mL)中に投入した。次いで、当該溶液をベンゼンで洗浄し、洗浄後の水相に6N塩酸を溶液のpHが3になるまで加え、当該溶液を1晩放置した。1晩放置した溶液から析出した藤色結晶を濾取し、得られた結晶を乾燥することにより、(R)-3-(1-フェニルエチル)アズレン-1-カルボン酸75.9mg(85.4%)を回収した。
【0118】
合成例1〜6及び実施例1〜7の結果から、本発明の光学分割剤は、簡便な方法で効率良く製造できることが判る。また、実施例8〜27の結果から、本発明の光学分割剤は、アルコールの光学異性体混合物と容易に反応し、ジアステレオマー混合物が高収率で得られることが判った。更に実施例28及び29の結果から、ジアステレオマー混合物がカラムクロマトグラフィーによっても分離できることが判った。更にまた、実施例30の結果から、本発明の光学分割剤は、容易に回収でき、再利用も期待できることから、環境面、経済面でも優れるものであることが判った。
【0119】
以上のことから、本発明の光学分割剤は、アルコールの光学異性体混合物を分離するための光学分割剤として有用なものであることが判った。また、本発明の製造方法は、種々のアルコールの光学異性体混合物から光学活性アルコールを製造するための方法として有用なものであることも判った。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の光学分割剤は、アズレン誘導体に起因する色を有することを特徴とし、かつ分子内に1つの不斉炭素原子を有する基と、例えばカルボキシル基等のアルコールのヒドロキシル基と反応し得る基とを有する光学活性な化合物であるので、アルコールの光学異性体混合物を分離するための光学分割剤として有用なものである。
【0121】
また、本発明の製造方法は、例えば医薬品、農薬、香料等の合成中間体等として有用な光学活性アルコールを、アルコールの光学異性体混合物からジアステレオマーとして分離する手法で製造するにあたり、本発明の光学分割剤に由来する色を利用することによって、従来のカラムクロマトグラフィーでの分離方法と比較して、ジアステレオマー混合物の分離を容易かつ迅速に行えるという特徴を有するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[1]

(式中、Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、Rは、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基又は置換基を有していてもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、nは、0〜5の整数を表す。ただし、R、R及びRは、いずれも同一の基ではない。)で示される光学分割剤。
【請求項2】
前記一般式[1]におけるRが4-メチル-3-ペンテニル基又はフェニル基である、請求項1に記載の光学分割剤。
【請求項3】
前記一般式[1]におけるRがメチル基であり、Rが水素原子である、請求項1に記載の光学分割剤。
【請求項4】
前記一般式[1]におけるnが0である、請求項1に記載の光学分割剤。
【請求項5】
前記一般式[1]におけるnが1であり、Rがイソプロピル基である、請求項1に記載の光学分割剤。
【請求項6】
前記一般式[1]で示される光学分割剤が、一般式[2]

(式中、R1aは、塩素原子、ヒドロキシル基又はメトキシ基を表し、R2aは、4-メチル-3-ペンテニル基又はフェニル基を表し、Rは、水素原子又はイソプロピル基を表す。)で示されるものである、請求項1に記載の光学分割剤。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光学分割剤を用いて、アルコールの光学異性体混合物を光学分割することを特徴とする、光学活性アルコールの製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光学分割剤の1種と分子内に不斉炭素を有するアルコールの光学異性体混合物を反応させる第1の工程と、
第1の工程により得られたジアステレオマー混合物を、それぞれのジアステレオマーに分離する第2の工程と、
分離したジアステレオマーのエステル結合を切断して、光学活性アルコールを得る第3の工程と、
を含むものである、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第2の工程をカラムクロマトグラフィーを用いて行う、請求項8に記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−51820(P2012−51820A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193889(P2010−193889)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000252300)和光純薬工業株式会社 (105)
【Fターム(参考)】