説明

光学基板上の反射防止被膜処理法と被膜処理された光学基板および被膜処理実施装置

【課題】本発明は、光学基板(17)上の反射防止被膜を処理する方法を提供する。
【解決手段】本発明の方法は、低屈折率の弗素化ポリマー含有層の物理的気相蒸着を実施する工程を含んでおり、また、この工程は、珪素または弗化マグネシウムと弗素化ポリマーを同時に気相蒸着させることにより、珪素または弗化マグネシウムと弗素化ポリマーの混成層(21d)を堆積させることに関与していることを特徴とする。好ましい実施形態では、弗素化ポリマーは重合体またはテトラフルオロエチレン重合体の形態で実施され、個々の構成要素はジュール効果または電子衝撃により蒸発させられる。本発明の方法は、何らかの光学基板または本発明の基板の上に堆積される反射防止被膜を積層した下位隣接層に低屈折率層を粘着させる工程を向上させるために利用されると有利である。この方法によって製造される基板と、この方法を実施するための装置も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学基板上に反射防止被膜を生成する方法に関するものであり、特に、弗素化ポリマーを含有する少なくとも1層の反射防止膜を真空中で物理蒸着(PVD)させることによる眼球用レンズに関連する。
【背景技術】
【0002】
従来の反射防止処理は低反射指数の素材からなる単一層からなり、或いは、高反射指数の誘電体層と低反射指数の誘電体層を交互に配することの方が多かった。
【0003】
この点で、極めて低い反射指数を得ることは眼科用レンズの場合のような大量生産を目的とした場合には特に有益であり、というのも、多層フィルムの層数を制限して処理のサイクル時間を最小限に抑えることで、価格とサービス面で産業上の要求に適うようにするのが好ましいからである。この点に関して、高指数層と低指数層の指数差を大きくするにあたり、高指数のレベルを上昇させるか、低指数のレベルを下降させることで実現することで、適度な層数を維持しながら反射防止処置の効能を向上させることができる。
【0004】
低レベル反射、可視スペクトル全体にわたる完璧な透明度、観測角度の関数としての残留色に対する低感度といったような機能上の光学特性とは別に、眼科用レンズ上に反射防止多層フィルムを生成する際の重要な課題は、日常生活によくある程度の荒っぽい取扱いを受けた場合の処理済み眼科用レンズの耐性である。従って、2年の期間にわたり通常使用している間に、概ね好適な布を使って、水気を取るのであれ、水や洗剤を使うのであれ、レンズはで平均して1000回は拭き掃除されることがある。このように、深刻な害にならない程度の荒っぽい扱いに耐えるために、擦りや侵食に良好な耐性を示すことに加えて、多層フィルムと基板との粘着剤、よって、多様な層と層の粘着剤が優れている必要がある。
【0005】
このような要件は、外部環境に直接触れるという理由から、多層フィルムの最上層すなわち外側層を構成する低指数素材にはそれだけ切に当てはまる。
【0006】
テトラフルオロエチレンの重合体および共重合体のうちでも、特に、弗素化ポリマーが低屈折率であることは周知であり(例えば、概ね1.35 から1.4 の間であり、ポリテトラフルオロエチレンでは630nm波長で1.35)、また、洗浄が簡単であることでも知られており、これにより、弗素化ポリマーは反射防止多層フィルムの外側層の素材として特に興味を引く。
【0007】
アール・チャウ(R. Chow)、ジー・イー・ルーミス(G.E. Loomis)、アール・エル・ウオード(R.L. Ward)著「アモルファスフルオロポリマーに基づく光学多層フィルム(Optical Multilayer Films Based on an Amorphous Fluoropolymer)」(真空科学技術ジャーナルA14(1)の63頁(1996年刊))は、真空中における蒸発により堆積された、すなわち、真空中での物理的気相成長法(PVD)により蒸着されたTeflon(登録商標) AF(アモルファステフロン)の低屈折率(630 nmで1.29)に言及している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このようにして得られた層は、大抵の素材に対して粘着性が乏しいという欠点がある。
【0009】
それにもかかわらず、真空蒸着技術が産業規模で製造向け技術の選択肢であり続けている理由としては、特に、得られた蒸着物の再製可能性と均一性に加えて、実装が簡単だからである。このことは、プラズマ強化型化学気相成長法(PECVD)と比較した場合に特に顕著であり、例えば、国際特許出願WO 98/33077に記載されているが、更に、複雑な分詞構造を有する気体の形態で前駆物質の処置用密閉容器内にうまく導入するには高額な装置の使用が不可欠であり、そうであるにも関わらず、気相の前駆物質自体が一般に高額で有毒である場合が多い。PECVDで広く使用される前駆物質は室温で液相を示し、それゆえに、処置用密閉容器の外で加熱されなければならない。
【0010】
本発明の広義の目的は、弗素化ポリマーを含み、光学基板上に真空蒸着により堆積された低屈折率の粘着剤を確保する、または、かかる基板上に堆積された反射防止多層フィルムの下層を確保する簡単な方法を提供することであり、このような方法はこれ以外にも多数の利点を有している。
【0011】
より厳密には、本発明は、屈折率が低い、弗素化ポリマーを含有する層を真空中で物理的気相成長(PVD)させる工程を含む、光学基板への反射防止処理を適用する方法であって、上記工程は、真空中でシリカまたは弗化マグネシウムと弗素化ポリマーを同時蒸着させることによりシリカ(SiO2)または弗化マグネシウム(MgF2)と弗素化ポリマーの混成層を堆積させることを特徴とする。
【0012】
これにより、低屈折率で、可視スペクトルで透明な、光学基板に蒸着された、または、光学基板上に事前に堆積されていた下層に蒸着された純粋な弗素化ポリマーに比べて粘着性に優れているばかりか、低屈折率のレベルが弗素化ポリマーの非常に低い屈折率とシリカ(550 nm波長で1.48)または弗化マグネシウム(550 nm波長で1.48)の低屈折率の中間である混成層を生じ、よって、反射防止フィルム中に低屈折率の薄い層を生成するのに特に有利である。
【0013】
擦れや侵食に対する耐性も完全に満足のゆくままである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の実施形態では、シリカまたは弗化マグネシウムと弗素化ポリマーを共蒸着することで、個々の構成要素が低指数層の厚さ全体にわたって一定の割合で存在するようにし、層の厚さ全体にわたって均一な構造で屈折率が一定の混成層を生成する。
【0015】
第2の実施形態では、シリカまたは弗化マグネシウムと弗素化ポリマーを共蒸着した場合、個々の構成要素の比率を低指数層の厚さ全体またはその一部にわたって抑制された態様で変動させることができる。
【0016】
粘着性と屈折率と磨耗耐性に関して最善の折り合いを達成しているという理由で、低指数層中の弗素化ポリマーの量は約30重量%よりも低いか、30重量%に等しいレベルに維持されるのが好ましく、残余の重量はシリカと弗化マグネシウムが占める。
【0017】
上記のような個々の化合物を低指数層の厚さ全体にわたり選択された比率で堆積するために、本件の方法は、形成される低指数層の屈折率、および、シリカまたは弗化マグネシウムと弗素化ポリマーのそれぞれの析出率を継続的に測定する工程と、これら測定値に基づいて、析出されたシリカまたは弗化マグネシウムと弗素化ポリマーのそれぞれの量を判定する工程と、シリカまたは弗化マグネシウムおよび/または弗素化ポリマーの個々の析出パラメータを調節する工程とを、連続工程として含んでいるのが有利である。
【0018】
実際に、析出率は石英微量天秤により測定されればよく、また、混成層の各化合物のうちの1つの体積濃度は、線形ブラグマンの法則が2種の化合物の混合に適用されたと仮定した場合の屈折率に基づいて得られる。
【0019】
析出条件を最適化するために、シリカまたは弗化マグネシウムと弗素化ポリマーはジュール効果で蒸着されるか、または、電子銃で蒸着される。実際には、シリカまたは弗化マグネシウムは電子銃により蒸着されるのが好ましく、弗素化ポリマーはジュール効果により蒸着される。
【0020】
弗化ポリマーはテトラフルオロエチレンの重合体または共重合体であるのが好ましく、特に、2,2-ビストリフルオロメチル-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオクソルとテトラフルオロエチレンのアモルファス共重合体であるのが好ましい。
【0021】
デュポン・ド・ネムール(Duont de Nemours)から入手できるTeflon(登録商標) AF 1600 (アモルファステフロン1600)またはTeflon(登録商標) AF 2400 (アモルファステフロン2400)などを利用することができる。
【0022】
本発明の方法はまた、有機素材基板上に低屈折率の層を堆積させることができるので、特に有益であることが分かる。
【0023】
勿論、光学基板上に堆積された反射防止多層フィルムの外側層として低指数層が堆積される状況でも、同様に有益であることが分かる。
【0024】
好ましい実施形態は、ZrO2層、SiO2層、ZrO2層の3層を真空中で物理的気相成長させる工程と、低指数外側層を堆積させる工程とを連続工程として実施することにより反射防止多層フィルムを製造することである。
【0025】
実際、真空中における物理的気相成長の工程はいずれも、約10-2パスカルよりも低い圧力、または、それに等しい圧力で実行される。
【0026】
本発明はまた、上記方法を利用して、光学基板上に堆積された反射防止多層フィルムの下層に低屈折率層を粘着させる工程または光学基板それ自体に低屈折率層を粘着させる工程を改良することに関連している。
【0027】
本発明は更に光学基板に関連しており、特に、シリカまたは弗化マグネシウムと弗素化ポリマーの混成層の弗素化ポリマー含有量が約30重量%よりも低いか、または、それに等しく、その残余の割合をシリカまたは弗化マグネシウムが占める、本発明の方法により得られる眼科用レンズに関するものである。
【0028】
本発明は、最終的には、本発明による方法を実現するための装置を含み、かかる装置は、
- 析出用チャンバーと、
- チャンバーに収納された少なくとも2個の蒸発源とを備えており、蒸発源は 各々が、真空中における物理的気相成長により堆積されるとともに混成層を 堆積することができるようにする物質を蒸発させるように設計されており、 装置は、
- チャンバーに収納される基板担体と、
- チャンバー内に真空を設けるポンプシステムとを更に備えている。
【0029】
上記装置の好ましい特徴によると、
- 制御ループにより蒸発源に接続され、堆積される物質の各々の量を継続的に 判定する手段が設けられており、かつ/または、
- 判定手段は蒸発源の一方とそれぞれに関与する2個の石英微量天秤を備えて おり、かつ/または、
- 蒸発源は少なくとも1つのジュール効果蒸発源と電子銃を備えており、かつ /または、
- 低温捕獲容器が設けられて、水のくみ上げ速度を増大させる。
【0030】
本発明の特徴および利点は、具体例として提示された後段の説明から、また、添付の図面を参照しながら明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図示された実施形態では、本発明の反射防止処理法を実現する装置10はレイボールド・ヘラウス 700 QE(Leybold Heraeus 700 QE)蒸発装置の形態を取っており、この装置は析出チャンバー12の外郭を画定するフレーム11を構成要素に含む。
【0032】
析出チャンバー12の内側を真空にするために、ポンプシステム(簡略化のために図1には例示せず)が設けられている。低温捕獲容器(マイスナートラップ)も簡略化のために図1に例示されていないが、装置10の内部に配置されて、水の汲み上げ速度を増大させている。よって、数分のうちに大気圧から処理圧(実際には、10-2パスカル程度である)まで圧力を低減することができる。
【0033】
装置10にはまた、4つの空洞を設けた回転式るつぼを有するレイボールド ESV 6(Leybold ESV 6)電子銃13が装備されており、これと一緒にジュール効果蒸発源14も装備されている。
【0034】
マスク16により互いから分離される2つの石英微量天秤15は析出率を測定し、制御する。このために、微量天秤は制御ループにより蒸発源に接続されている。
【0035】
堆積層の組成の制御は、第1の近似値に対する2組の析出率の比に基づいて実施される。
【0036】
従来型の回転台も簡略化のために図示されていないが、チャンバー12の内部で基板担体として作動する。
【0037】
図示の実施形態では、基板17は1枚しか描かれていない。
【0038】
イオン銃18は、例えば、コモンウエルス・マークII(Commonwealth Mark II)イオン銃などであるが、これも析出チャンバー12の内部に配置されて、第1の薄い反射防止層の堆積前に基板17の初期洗浄を実施する。
【0039】
この図に例示されている実施形態では、有機基板17は、市場で入手できる耐磨耗ワニス(オルマ・スプラ(登録商標):ORMA SUPRA)で被膜されたCR39であるが、反射防止多層フィルム21で被膜されており、この多層膜の構成は、高屈折率層と低屈折率層21aから21dを交互に配した構成である。
【0040】
図2に例示されている好ましい実施形態では、第1層21aの素材は高屈折率である(すなわち、屈折率は1.6よりも高い)。本例では、この素材は酸化ジルコニウム(ZrO2)であり、10 nmから40 nmの物理的厚さまで堆積されるのが通例である。
【0041】
第1層21a上に堆積された第2層21bは、本例では、低屈折率であるシリカ(SiO2)を構成要素に含み、通例は、10 nmから55 nmの厚さを有している。
【0042】
堆積された第3層21cは本件では第1層21a(ZrO2層)と同じであるが、例外として、厚さだけが異なっており、30 nm から200 nmの範囲であり、120 nmから150 nmであるのが好ましい。
【0043】
上記3層は、図1に例示されている装置10を利用して、真空中における蒸着により連続して堆積される。
【0044】
他の実施形態では、3つの反射防止層21a、21b、21cを構成している素材と基板17または耐磨耗ワニス20を構成している素材とは、当業者には周知の上記以外の同じような素材と取り替えられてもよい。
【0045】
本発明によれば、反射防止多層フィルム21は、厚さが70 nmから110 nmで、低屈折率の混成外側層21dを更に含んでいる。
【0046】
好ましい実施形態では、この混成層は、Teflon(登録商標) AF 1600 (アモルファステフロン1600)またはTeflon(登録商標) AF 2400 (アモルファステフロン2400)として市場で入手できる、シリカ(SiO2)と、2,2-ビストリフルオロメチル-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオクソルとテトラフルオロエチレンのアモルファス共重合体から形成される。このようなアモルファス弗素化共重合体は過弗素化溶剤中に溶解可能であり、それぞれの構造式は以下のとおりである(b:aの割合、すなわち、ジオクソルとテトラフルオロエチレンの割合はAF1600については2であり、AF2400については4.56である)。
【化1】

【0047】
上記化合物は、図1に例示されている装置10を利用して、真空中における共蒸着(真空中における物理的気相成長)により析出されて、低指数層21dの厚さ全体にわたって一定の比率で存在するようになる。
【0048】
実際には、シリカは電子銃13により蒸発させられ、アモルファス共重合体はジュール効果蒸発源14によるジュール効果で蒸発させられる。
【0049】
従来は、汚損防止層が上記のような多層フィルムの上に更に堆積されていた。
【0050】
本発明の例では、この種の層の堆積は、混成外側層が既にこの汚損防止機能を果たしているという点で、本質的に必要ではなくなる。
【0051】
更に、混成層21dにおけるアモルファス弗素化共重合体の体積濃度は、この好ましい実施形態では、約30%程度に維持されている。
【0052】
この点で、Teflon(登録商標) AF 2400は、ジュール効果蒸発源14によって蒸発させられるより前に、このジュール効果蒸発源によって液化されることを指摘しておくべきである。
【0053】
更に、既に上段で述べたように、他の実施形態では、シリカを弗化マグネシウム(MgF2)と置き換えることもできるし、また、先に言及したアモルファス弗素化共重合体は、特に、ポリテトラフルオロエチレンと置き換えられてもよい。好ましい実施形態では、このようなアモルファス弗素化共重合体は、平均寸法が0.2 mmである微粒子の形態であるTeflon(登録商標) MP 1600と置き換えられてもよい。
【0054】
第1の具体例では、混成層はシリカおよびポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標) MP 1600)を30%に等しい一定の割合のTeflon(登録商標)と共蒸発させることにより得られた。
【0055】
上述の態様で得られた基板17は、国際特許出願 WO 99/39097に記載されているN×10ブロー検査を受けた。この検査は有機基板上に堆積された薄い層の粘着剤に負荷をかける。多層フィルム21は良好な粘着特性を示し、特に、混成層21dは完全に満足のゆく態様で下に位置するZrO2層に粘着することが分かった。
【0056】
基板17は「スチールウール」検査も受けて、これにより、極細スチールウールを用いた5回の二方向行程が被膜基板上で実施され、基板の擦れ耐性を査定した。この検査により、反射防止多層フィルム21が完全に満足のゆく擦れ耐性を有していることも分かった。更に、混成層の屈折率を測定することで、630 nmの波長で1.42という大いに有効な値が明らかになった。本発明の方法によって得られた混成層21は、その厚さ全体にわたって一定の屈折率を有する均質構造であり、可視スペクトルで完全に透明であるということも認められるだろう。
【0057】
第2の具体例では、堆積速度を制御することにより、Teflon(登録商標)の体積の割合が0%から80%に変動するのに対応して、基板から表面に向けて屈折率が線形的に1.46から1.33に変動する混成層が得られた。
【0058】
より一般的なことであるが、本発明の方法は、粘着性、擦れ耐性、侵食耐性、洗浄の容易さという観点でも大いに満足のゆく特性を備えている薄い複数層からなる反射防止フィルムを生成することが証明された。
【0059】
勿論、本発明は、詳細な説明と図面に例示された実施形態に限定されるものではなく、どのような多様な変形実施例をも包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の方法を実現するための装置の構成を例示した図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態を利用して得られる反射防止多層膜を表した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率が低い、弗素化ポリマーを含有する層を真空中で物理的気相成長(PVD)させる工程を含む、光学基板に反射防止処理を適用する方法であって、該工程は、真空中でシリカまたは弗化マグネシウムと弗素化ポリマーを同時蒸着させることによりシリカ(SiO2)または弗化マグネシウム(MgF2)と弗素化ポリマーの混成層を堆積させることを特徴とする、方法。
【請求項2】
シリカまたは弗化マグネシウムと弗素化ポリマーを共蒸着することで、個々の構成要素が低指数層の厚さ全体にわたって一定の割合で存在するようにすることを特長とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
低指数層中の弗素化ポリマーの量は約30重量%よりも低いか、30重量%に等しいレベルに維持され、残余の重量はシリカと弗化マグネシウムが占めることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
シリカまたは弗化マグネシウムと弗素化ポリマーを共蒸着する際に、低指数層の厚さの全体またはその一部にわたって制御された態様で個々の構成要素の比率を変動させることができるようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
低指数層中の弗素化ポリマーの量は、基板から混成層の表面に向かう方向に0重量%から約80重量%までの範囲に入り、残余の重量はシリカと弗化マグネシウムが占めることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、形成される低指数層の屈折率、もしくは、シリカまたは弗化マグネシウムと弗素化ポリマーのそれぞれの析出率を継続的に測定する工程と、これら測定値に基づいて、析出されたシリカまたは弗化マグネシウムと弗素化ポリマーのそれぞれの量を判定する工程と、シリカまたは弗化マグネシウムおよび/または弗素化ポリマーの個々の析出パラメータを調節して、低指数層の厚さ全体にわたって選択された比率で個々の構成要素を堆積させる工程とを、連続工程として含んでいることを特徴とする、請求項2から請求項5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
シリカまたは弗化マグネシウムと弗素化ポリマーはジュール効果で蒸着されるか、または、電子銃で蒸着されることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
シリカまたは弗化マグネシウムは電子銃により蒸着され、弗素化ポリマーはジュール効果により蒸着されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
弗素化ポリマーはテトラフルオロエチレンの重合体または共重合体であることを特徴とする、請求項1から請求項8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記テトラフルオロエチレンの共重合体は、2,2-ビストリフルオロメチル-4,5-ジフルオロ-1,3-ジオクソルとテトラフルオロエチレンのアモルファス共重合体であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基板は有機素材基板であることを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記低指数層は前記光学基板上に堆積された反射防止多層フィルムの外側層であることを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ZrO2層、SiO2層、ZrO2層の3種の層を真空中で物理的気相成長させる工程と、低指数外側層を堆積させる工程とを連続工程として実施することにより反射防止多層フィルムを製造することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
真空中における物理的気相成長の工程はいずれも、約10-2パスカルよりも低い圧力、または、それに等しい圧力で実行されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれか1つに従って前記方法を利用して、光学基板上に堆積された反射防止多層フィルムの下層に低屈折率層を粘着させる工程または光学基板それ自体に低屈折率層を粘着させる工程を改良する、前記方法の用途。
【請求項16】
請求項1から請求項12のいずれか1つに従って前記方法によって得られ、かつ、約30重量%よりも少ない量、または、30重量%に等しい量で弗素化ポリマーを含み、残余の重量をシリカまたは弗化マグネシウムが占める、シリカまたは弗化マグネシウムと弗素化ポリマーの低屈折率の混成層(21d)が設けられていることを特徴とする、光学基板(17)、特に、眼科用レンズ。
【請求項17】
シリカまたは弗化マグネシウムと弗素化ポリマーのそれぞれの割合が、低指数層の厚さ全体にわたって一定であることを特徴とする、請求項16に記載の光学基板。
【請求項18】
弗素化ポリマーはテトラフルオロエチレンの重合体または共重合体であることを特徴とする、請求項16または請求項17に記載の光学基板。
【請求項19】
前記光学基板は有機素材から構成されていることを特徴とする、請求項16から請求項18のいずれかに記載の光学基板。
【請求項20】
前記低指数層は、ZrO2反射防止層(21a)、SiO2反射防止層(21b)、ZrO2反射防止層(21c)の3種の反射防止層からなる多層フィルム上の混成外側層であることを特徴とする、請求項16から請求項19のいずれかに記載の光学基板。
【請求項21】
請求項1から請求項14のいずれかに記載の方法を実現するための装置であって、該装置は、
- 析出用チャンバー(12)と、
- チャンバー(12)に収納された少なくとも2個の蒸発源(13、14)とを備えており、蒸発源は各々が、真空中における物理的気相成長により堆積されるとともに混成層を堆積することができるようにする物質を蒸発させるように設計されており、該装置は、
- チャンバー(12)に収納される基板担体と、
- チャンバー(12)内を真空を設けるポンプシステムとを更に備えていることを特徴とする、装置。
【請求項22】
前記装置は、制御ループにより前記蒸発源(13、14)に接続され、堆積される物質の各々の量を継続的に判定する手段が設けられていることを特徴とする、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記判定手段は、前記蒸発源の一方とそれぞれに関与する2個の石英微量天秤を備えていることを特徴とする、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記蒸発源は、少なくとも1つのジュール効果蒸発源(14)と1個の電子銃(13)を備えていることを特徴とする、請求項21から請求項23のいずれかに記載の装置。
【請求項25】
前記装置は、低温捕獲容器が設けられて、水のくみ上げ速度を増大させるようになっていることを特徴とする、請求項21から請求項24のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−504500(P2007−504500A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525162(P2006−525162)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002222
【国際公開番号】WO2005/024087
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(591019759)エシロール アンテルナショナル コムパニー ジェネラル ドプテイク (27)
【Fターム(参考)】