光学干渉フィルター
実数の屈折率および/または虚数の屈折率をそれぞれ有する複数の層を有する光学干渉フィルターが提供される。前記実数の屈折率および前記虚数の屈折率の値は、外部電界の強度に依存する。各層の材料の屈折率および厚みならびにそれらの組み合わせは、入射光の少なくとも一つの偏光状態に対するスペクトルの少なくとも一領域において干渉の極値がもたらされるよう、選ばれている。少なくとも一つの層は、電気光学材料からなり、それは、異方性でありかつ少なくとも一つの芳香族有機材料から作られている。前記芳香族有機材料の分子または前記分子のフラグメントは、平板状構造を有する。前記電気光学材料の層の少なくとも一部は、光軸に沿った分子間間隔が3.4±0.3Åである結晶構造を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、ロシア特許出願第2002-108388号(2002年4月4日出願)に基づく優先権を主張するものであり、その開示内容はこの引用により本明細書にそっくり記載されたものとする。
【0002】
本発明は、光学フィルターに関し、特に、制御可能な光学干渉フィルターに関する。
【背景技術】
【0003】
光学フィルター類は多くの用途で重要な役割を果たす。例えば、それらは、紫外光などのある光波をカットするために窓、サングラスおよび他の光学装置類に広く使用される。また、光学フィルターは光ファイバー通信装置に広く使用される。例えば、そのようなフィルターは、ノイズを遮断するための、または、信号をポンピングするための帯域透過性フィルターとして使用される。また、帯域透過性フィルターはマルチプレクサーのチャネル選択に使用される。ある光ファイバー装置は、復調を行うかまたは光シグナルを相当数の個々のシグナルに分割するため、特別な光学フィルターを用いる。さらに光学フィルターは、オプトエレクトロニクスの応用分野で光論理機構に使用される。光学フィルターは、動作帯域の波長において光信号を透過するために使用されるだけでなく、望ましい帯域の波長において光信号を反射するためにも使用される。例えば、光学フィルターは、例えば可視領域の光のような、特定の波長の光を反射するように形成することができる。反射型光学フィルターは、ブロッキングフィルターとして(ノイズを遮断し信号をポンピングするため)、光増幅器または光学レーザーと組み合わせた光ファイバー通信装置において使用される。光学フィルターは鏡を作るために使用することもできる。その他、光学フィルターは表示装置に使用できる。
【0004】
ある既知の光学干渉フィルター(R. Ditchbern, Physical Optics; R. W. Ditchburn, "Light", Blackie, & Son Limited, London, Glasgow)は、以下のように作製される。光学的に透明な基材を、屈折率の値が異なる複数の透明材料からなるいくつかの薄層でコーティングする。これらの層は干渉層として知られるもので、これらの層の厚みまたは屈折率を調節することにより、光信号の透過係数を変えることができ、すなわち、フィルターのフィルタリング特性を変えることができる。例えば、干渉フィルターは窓の構成に使用されることがある。その窓の表面には、屈折率の値が異なる種々の透明材料の層が交互にコーティングされる。前記材料の厚みおよび屈折率の値は、フィルターが不要な波長領域の光、例えば紫外光、を遮断するように、換言すればフィルターが選択波長を反射するように、すなわち鏡として働くように、選ばれる。これらのタイプの光学フィルターは効果的であるが、何らかの欠点を有する。そのようなフィルターの特性は、交互に配置される層の組成と厚みによって決まってくる。また、そのような干渉フィルターのフィルタリング特性は、製造後には変えることができない。さらに、これらの干渉フィルターは、光フィルタリング過程の間制御が必要な場合には用いることができない。
【0005】
ある既知の光学干渉フィルター(M. Born, E. Volf, <<Basics of Optics>>; and Max Born, Emil Wolf, <<Principles of Optics>>, second edition, Pergamon Press, 1964)は、異なる屈折率を有する材料からなる交互に配置された層を二組有する。交互に配置される層の各対は、低屈折率の層と高屈折率の層を有する。そのようなフィルターはファブリ−ペロのスタンダードと呼ばれる。ファブリ−ペロのスタンダードを望ましい範囲の波長に合わせるため、特別なスペーサーで分離された二組の層を用い、そして、各組の層で高屈折率の層を互いの前に配置する。これら二層間の必要な距離は、上述したスペーサー(通常、石英からなる)によって高い精度で維持される。上記スペーサーはスタンダードに相当する。二組の交互に配置される層の間のギャップには、低い屈折率を有する材料が充填される。ファブリ−ペロのスタンダードと調節可能なフィルターを製作するためには、二組の交互に配置される層を互いに対して動かすため運動発生装置を含めることが必要である。ファブリ−ペロのスタンダードにおける上記二組の層の間の距離を増減することにより、濾光されている波長の帯域を調節することができる。そのような調節可能なフィルターは、特に光ファイバーエレクトロニクスにおいて、広く用いられているが、それらのフィルターは明らかな欠点を有する。上述したように、それらのフィルターの少なくともいくつかは、二組の交互に配置される層間のギャップを変えるため、運動発生装置を使用する。運動発生装置および運動機構の運動に対して正確な制御を行うことは、困難な機械的課題である。それに加え、それらの運動発生装置は、通常、大きな時定数を有する。留意すべきことに、運動発生装置は、システムの他の電気部品および/または光学部品に比べても一般的に大きなものである。
【0006】
米国特許第4,358,851号に記載される既知の光ファイバー装置は、ファイバー−干渉フィルターの組み合わせを有する。そのような装置は、光通信システムにおいて、光放射の光源から来る所定の波長の信号を選択するため、または、所定領域の波長を選択するため、使用される。光源が半導体レーザーである場合、前記装置は、選択波長または選択領域の波長において個々の縦モードを制御するため使用することができる。この既知の光ファイバー装置は、光通信システムでの使用を意図するものである。その干渉フィルターは、狭い動作帯域幅を特徴とし、選択波長における信号を透過または反射することができる。この既知の装置は、光ファイバーの一端に作られた多層の光学構造を有する。前記装置に含まれる干渉フィルターは、光源からの選択波長における信号を透過させて光ファイバーに送り、そして、他の波長のすべてを反射して光源に戻すため、使用することができる。前記フィルターは、入射したすべての波長の光信号を反射するように設計することができる。また、前記フィルターは、選択波長の光信号に対し、部分的に反射するフィルター(拒絶フィルター)として作動してもよく、その場合、選択信号は反射されて光源に戻される一方、他のすべての波長の信号は光通信システムに送られる。この既知の光学装置は、GaAs/GaAlAs注入レーザーなどの半導体レーザーの発光を反射または透過するために設計されている。この干渉フィルターの作動帯域幅は、前記フィルターが、レーザー発光の範囲内にある少なくとも一つの選択波長の光信号を透過するように、レーザーの使用波長の範囲内である。この場合、残りの波長の反射された信号は、レーザーに光フィードバックをもたらす。この既知の光学フィルターは、半導体レーザーからの必要な波長の光信号を透過させるとともに、狭い帯域幅のレーザー発光を透過させるため、使用することができる。この既知の光学フィルターは、干渉性または非干渉性の放射の光源を有する光学装置において使用することができ、その出力信号は、いくつかの光ファイバーのシステムに入射する。それらのファイバーのそれぞれの劈開端に光学干渉フィルターがあり、前記フィルターは、所定の波長の光信号を透過させることを目的とする。従って、各ファイバーは、光源からのその固有の波長の信号を導く。そのような装置は、多周波数信号源から種々の色の光信号を取り出すことを可能にする。この光学装置の欠点は、その光学特性を調節することができないことである。
【0007】
米国特許第5,434,943号は、既知の制御可能な光学フィルターを記載する。この調節可能な光学フィルターは、第一のコンタクト層と第二のコンタクト層との間にある基材上に配置される導波層を有する。前記光学フィルターの調節は、それに電流を流すことによって行われ、電流は、結果として、導波層に可動性の電荷キャリアを注入する。注入された電荷キャリアは、導波材料の屈折率を変える。この調節可能な光学フィルターは、調整用の運動発生装置を用いないため、再構成可能なファブリ−ペロのスタンダードに比べて、有利であるが、やはりいくつかの欠点を有する。この調節可能な光学フィルターは、導波領域への電荷キャリアの注入を刺激するため、比較的高い電流密度を必要とする。この高い電流密度の必要性のため、製造できるフィルターのサイズおよび形状は限られてくる。フィルターのサイズが大きくなれば、作動に必要な電流が高くなる。
【0008】
光学的に異方性の層からなる多層構造に基づく光学フィルターが知られている(N.P. Gvozdeva et. al., Physical Optics. M.: Maschinostroenie, 1991参照)。そのようなフィルターは、干渉的‐偏光(IFP)光フィルターであり、その動作は、偏光された光線の干渉に基づいている。そのようなフィルターの際立った特徴は、バックグランドノイズがなく、非常に狭いスペクトル帯域(10-2nmまで)を選択できる能力である。多くの場合、IFP-光フィルターの個々の層を作製するため、種々の結晶(例えば結晶石英または氷州石)の薄い板が用いられる。そのようなフィルターの欠点には、その製造および調整における困難性がある。
【0009】
米国特許第5,037,180号に記載された既知の光学フィルターは、光ファイバーの劈開端に作製されるものである。そのようなフィルターは、多層薄膜構造からなり、その中で、低屈折率と高屈折率の材料の層が交互に並んでいる。そのような光ファイバーフィルターは、長波長用のファブリ−ペロのスタンダード等である。シングルモードファイバーの劈開端に配置されるフィルターは、前記ファイバーの軸に直交であり、入射したパワーの大部分を反射して、光信号源に戻す。反射されたパワーは、レーザーまたは光増幅器の出口に戻って行き、光学装置の自発的励起をもたらす。従って、この光学フィルターのバリエーションの一つは、多層薄膜光学構造であり、それは、ファイバーの傾斜した突合せ端面上に形成される。この場合、反射されたパワーは、発光光源に戻って行かず、光ファイバーから離れるよう誘導される。そのような光学フィルターの欠点は、その特性(例えば波長の帯域)を調節できないことであり、その特性の範囲内で、前記フィルターは、光信号を透過、阻止または反射する。
【0010】
米国特許第3,610,729号に記載される既知の多層偏光子の動作は、前記多層光学構造における光の干渉に基づく。この既知の偏光子は、その出口において透過光が偏光となるクラスの偏光子に属し、また、前記偏光子から反射される光も偏光となる。さらに、透過光の偏光状態と反射光の偏光状態とは互いに直交する。反射型偏光子の大部分は、かなり製造が難しく、それらは、かさばり、高価であり、可視光を偏光する目的でほとんど使用されない。偏光子には、効果的に直線偏光することができかつ入射光の大部分を透過することができる一方、直交する偏光を反射することが強く求められている。そのような特性を達成するため、既知の偏光子は、多層光学構造となっている。複数の層は、複屈折性で等方性の材料から順に作製することができ、前記複屈折性の材料の二つの屈折率の一つは、隣接する層の等方性材料の屈折率にほぼ等しくなっている。この既知の偏光子のもう一つの変形例において、複数の層は、二つの異なる複屈折性材料から順に作製することができる。この場合、複数の材料の一方の二つの屈折率うち低いほうが、他の材料の高いほうの屈折率にほぼ等しくなっている。
【0011】
ある波長帯域内の光がこの偏光子に入射するとき、光は偏光子によって二つの光線に分割される。一つの光線は、偏光子の交互に配置される層を通過して直線偏光となる。他方の光線は、偏光子で反射され、やはり直線偏光となるが、その偏光状態は、第一の(透過)光線の偏光状態に直交する。上述した層は、入射光の1/4波長に等しい厚みを有する。この場合、反射の係数および偏光の透過率は、最大値になると考えられ、入射光の50%に近づく。
【0012】
従って、この既知の装置(多層偏光子)は、光の一つの偏光状態に対して反射フィルターとなり、他の偏光状態に対して透過フィルターとなる。
【0013】
薄層を形成するのに可能な方法の一つは真空蒸着であり、これは、分子レベルに近いレベルで層の厚みについて正確な制御を行うことが可能である。多層偏光子を製造するもう一つの方法は、押出しと延伸の組合せを用いて行われる。これは、複屈折性のポリマーフィルムに配向作用を及ぼす。偏光子の要求される特性を得るために必要な交互配置層の数は、使用される材料の屈折率の値に大きく左右される。偏光子の特性の向上は、偏光子の構造に多数の交互配置層を用いることにより可能となりうる。一般に、交互配置層の数が多いほど良い。しかし、真空蒸着法は、かなり複雑であり時間がかかることから、偏光子に組み込むことが可能な層の数が制限される。多層構造を真空蒸着するプロセスは、個々の層が、通常、蒸着の結果、高度に活性化された状態にあり、そのため、さらに光を散乱させるため、機械的に不安定である。複合押出しのプロセスは、これらの問題を克服する。このプロセスは、多数の非常に薄い交互配置層を有する偏光子の製造を可能にする。さらに、このプロセスは、二つ以上の材料から、単一の連続的プロセスにおいて複数の層を製造することを可能にする一方、構造の不安定性、機械的応力、および光の散乱は、わずかである。種々の材料を、既知の偏光子の複屈折性材料として使用できる。例えば、前記材料は9部のテレフタル酸と1部のイソフタル酸の混合物からなることができる。この材料は1.436と1.706の二つの屈折率を有することが分かっている。さらに、発泡スチロール、プレキシグラス、ポリスルホン、およびポリエチレンテレフタレートのような複屈折性ポリマー材料を用いることができる。また、他の材料を用いて、複屈折性層を形成することもでき、そして、二つの屈折率の可能な差が最大となるよう最適化することができる。実際、屈折率の差が大きい複数の複屈折性材料を用いることにより、偏光子中の層の数を顕著に減らすことができる。等方性層は、材料の屈折率が、等方性層の両側にある層に使用される複屈折性材料の屈折率の一つにほぼ等しくなる条件で、多数の種々の材料から作製できる。この目的のために有用な材料には、フッ素化ポリマー類、フッ化マグネシウム、およびセルロースのアセトブチレートがある。また、等方性層は、その厚みを正確に制御できるよう、真空蒸着を用いて形成することができる。等方性層は、押出しと同時に複屈折性層を形成することにより製造できる。
【0014】
この光学干渉装置の欠点は、透過や反射帯域などの光学特性を調節できないことである。
【0015】
WO00/45202号に記載される既知の調節可能な光学干渉フィルターは、二組の交互に配置される誘電体層を含み、それらの層は、互いの上に形成され、二つの異なる誘電材料からなる。第一および第二の誘電材料は異なる屈折率を有する。また、この既知の光学フィルターは、交互に配置される層の第一の組と第二の組との間に配置された中間層をさらに有する。中間層の材料は、印加電界の値に応じて変わる屈折率を有することが重要である。さらに、第一の組の交互に配置される層は、光学的に透明な材料からなる基材上に配置される。そのような調節可能な光学干渉フィルターは、上に挙げた光学フィルターに固有の上記欠点の多くを有することがない。特に、上述したとおり、この光学フィルターは、印加電界の値に応じて変わる屈折率を有する材料の中間層を含んでいる。電界を変化させることにより、望ましい波長の範囲において入射光の透過または反射をもたらすように、この光学フィルターの動作を制御することができる。中間層の屈折率は電界によって制御できるため、交互に配置される層の厚みを変えることなく、または、フィルターの個々の部分を機械的に動かすことなく、フィルターの光学特性を調節することができる。従って、この光学フィルターの特性はより容易に変化させることができ、そのシステムの時定数は顕著に小さくなる。さらに、中間層に印加される電界の変化に応じて屈折率を変化させることができるため、そのような光学フィルターは、種々の形状で製造することができ、さらに、大小さまざまなサイズで作ることができる。
【0016】
この既知の光学干渉フィルターの欠点の一つは、多数の交互配置層を用いる必要があるということである。従って、大きな値の反射係数を得るため、100〜600にもなる多くの層を配置しなければならず、その配置は、技術的問題を有するとともに、特別な精密装置を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、例えば、調節可能な光学干渉フィルターの製造およびパラメーターの制御が技術的に困難であること、多数の交互に配置される誘電体層を用いる必要があること、調節可能な光学干渉フィルターは温度に対して感受性が高いこと、および光学干渉フィルターを制御するのに必要なエネルギー消費が高いことなどの従来技術の光学フィルターの欠点を克服する調節可能な光学干渉フィルターを提供することである。
【0018】
本発明の調節可能な光学干渉フィルターは、顕著に少ない数の交互に配置される層および顕著に低い作動電圧を使用し、偏光されていない光波と同様に偏光された光波も濾光し、電圧によって制御可能であり、高温において作動でき、そして、製造の費用対効果が大きい。この電気光学異方性結晶薄膜の厚みは、液晶中の固体相の含有量およびその塗布の際の「湿潤層」の厚みを通じて制御することができる。その電気光学効果は、前記電気光学材料の層に電流を通すことなく、得ることができる。前記光学干渉フィルターは、光ファイバー通信システム用の光ファイバーに基づき、密集化することができる。そして、その制御可能な光学干渉フィルターの吸収、反射または透過の帯域は、外部電界を印加することにより制御できる。
【0019】
本発明の光学干渉フィルターは、それぞれが実数および/または虚数の屈折率を有する複数の層を有する。前記実数および虚数の屈折率の値は、外部電界の強さに依存する。材料の屈折率および各層の厚みならびにそれらの組合せは、入射光の少なくとも一つの偏光状態に対し、スペクトルの少なくとも一つの領域において干渉の極値がもたらされるよう、選ばれている。少なくとも一つの層は、電気光学材料からなり、前記電気光学材料は、異方性でありかつ少なくとも一つの芳香族有機材料から作られている。前記芳香族有機材料の分子または前記分子のフラグメントは、平板的構造を有する。前記電気光学材料の層の少なくとも一部は、光軸の一つに沿った分子間間隔が3.4±0.3Åである結晶構造を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に説明する添付の図面とともに読むとき、本発明は、以下の説明からよりはっきり理解されることとなる。
【0021】
本発明により提供される光学干渉フィルターは、電気光学材料の少なくとも一つの層を有し、前記電気光学材料は異方性でありかつ少なくとも一つの芳香族有機材料から作られたものであり、前記芳香族有機材料の分子または前記分子のフラグメントは、平板状構造を有し、前記層の少なくとも一部は、光軸に沿った分子間間隔(ブラッグのピーク)が3.4±0.3Åである結晶構造を有し、かつ、異方性屈折率および/または吸収係数の少なくとも一つが、電界の値に応じて変わるものである。そのような層の材料は、光学異方性結晶薄膜とも呼ばれる。
【0022】
一態様において、光学干渉フィルターは、二価および三価の金属のイオンで処理された異方性の電気光学材料からなる少なくとも一つの層を有する。他の態様において、少なくとも一つの芳香族有機材料の分子は複素環を含む。光学干渉フィルターは、少なくとも一つの二色性染料をベースとするリオトロピック液晶からなる、異方性電気光学材料の少なくとも一つの層を含むことができる。
【0023】
前記電気光学異方性結晶薄膜のユニークな光学特性(薄いこと、低い温度感受性、屈折率の高い異方性、吸収係数の異方性、大きな値の二色比、および製造の簡便さ)は、前記材料の特殊な性質および前記結晶薄膜(特に前記結晶薄膜の分子−結晶構造)の作製に使用される製造方法に起因する。前記結晶薄膜は、リオトロピック液晶相またはサーモトロピック液晶相を形成する少なくとも一つの有機材料の液晶相の結晶化、配向作用を用いた前記液晶の基材上への塗布、およびその後の乾燥によって製造される。前記有機材料の能力において、本開示の電気光学異方性結晶薄膜は、少なくとも一つの有機材料を用い、その化学式は、少なくとも一つのイオノゲン基(これは極性溶媒に対する溶解性を付与する)および/または少なくとも一つの非イオノゲン基(これは非極性溶媒に対する溶解性を付与する)および/または少なくとも一つの対イオン(これは、前記材料を得る工程において、前記分子の構造中に残っていてもよいし残っていなくともよい)を含む。
【0024】
前記電気光学異方性結晶薄膜は、一種または複数種の有機材料の多数の超分子複合体(Jean-Marie Lehn, <<Supramolecular Chemistry Concepts and Perspectives>>, -Weinheim; New York; Basel; Cambridge; Tokyo: VCH Verlagsgesellschaft mbH, 1995)によって作られる。さらに、前記超分子複合体は、その導電性をもたらし、通過する光を偏光にするため、所定の態様で配向される。
【0025】
前記電気光学異方性結晶薄膜を生成させるための材料の最初の選択は、共役芳香環にπ共役結合が存在するかどうか、そして、前記分子の平面内にあって芳香族系の結合の一部となるアミン、フェノール、ケトンなどのような基が前記分子に存在するかどうかによって、決定する。前記分子自体またはそのフラグメントは、平板状構造を有する。例えば、そのような分子は、インダントロン(Vat Blue 4)、ジベンゾイミダゾール1,4,5,8-ペリレンテトラカルボン酸(Vat Red 14)、ジベンゾイミダゾール4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸、キナクリドン(Pigment Violet 19)などや、それらの誘導体またはそれらの混合物で安定なリオトロピック液晶相を形成するものなどの有機材料とすることができる。
【0026】
前記有機分子は、適当な溶媒に溶解されるとき、コロイド系(リオトロピック液晶(LLC))を形成し、そこにおいて、分子は、合わせられ、系の動力学的単位に相当する超分子複合体となる(特許出願RU200010447525.02.00)。この液晶相は、前記系の予め秩序づけられた状態であり、その状態から、超分子の配向およびその後の溶媒の除去の過程において、固体の電気光学異方性結晶薄膜(言い換えると異方性の電気光学結晶性フィルム)が生じる。
【0027】
超分子を含むコロイド系から電気光学異方性結晶薄膜を得る方法は、以下の工程を含む。
基材上(またはある製品もしくは多層構造にある層の一つの上)に上述したコロイド系を塗布する工程;前記コロイド系はチキソトロピックであるべきであり(Robert J. Hunter <<Foundations of Colloid Science v. 1, Clarendon Press. Oxford, 1995, p. 88)、そのため、前記コロイド系は、所定の温度にあるべきであり、また、所定の濃度の分散相を有するべきである;
前記系の粘度を低下させる任意の種類の外部からの作用(これは加熱、剪断変形などとすることができる)を介して、塗布されたまたは塗布しているコロイド系を高流動性の状態にする工程;前記外部作用は、次の配向工程全体の間続いてもよく、または、配向時の間に前記系がより高い粘度の状態に戻らないようにするため必要な時間続いてもよい;
前記系へ外部から配向作用を及ぼす工程;それは、機械的方法あるいは他の任意の方法、例えば、外部からの電界(例えば、通常の温度または高温で同時に照射を行うまたは行わないポーリング)、磁界、または光放射場(例えば、干渉性の光起電力効果によるもの)により、行われる。上記作用の程度は、前記コロイド系の動力学的単位が、必要な配向を獲得しかつ生じる電気光学異方性結晶薄膜の可能な結晶格子の基礎となる構造を形成するように、十分なものとなるべきである;
生じる層の配向された領域を、粘度が低下した状態(前記系への最初の外部作用を通じてもたらされる)から最初の系の状態またはよりいっそう高い粘度の系の状態に変換する工程;これは、生じる電気光学異方性結晶薄膜構造の配向の減少が起こらないよう、また、その表面に欠陥が形成されないよう、行われる;ならびに
溶媒を除去するため乾燥する工程;この工程の間、電気光学異方性結晶薄膜の結晶構造が形成される。
【0028】
得られる電気光学結晶薄膜において、分子の複数の平面は互いに平行であり、そして、分子は、前記結晶薄膜の少なくとも一部において三次元的結晶を形成している。製造工程を最適化することにより、単結晶性の電気光学異方性結晶薄膜を得ることができる。この結晶薄膜における光軸は、分子の平面に直交である。そのような結晶薄膜は、高度の異方性を有し、そして、少なくとも一つの方向について、高い屈折率および/または高い吸収係数を有する。
【0029】
電気光学異方性結晶薄膜の光学的異方性は、複素屈折率の虚数部と実数部の楕円体によって表され、それは、従って、吸収係数と屈折率(異方性の複素屈折率の虚数部と実数部)の角度依存性を特徴とする。本発明による光学異方性結晶薄膜の複素屈折率の虚数部(Ki)と実数部(ni)の成分について、以下の相互関係が同時に成立することが望ましい。
K1≧K2>K3
(n1+n2)/2>n3
ここで、K1、K2、K3およびn1、n2、n3は、前記結晶薄膜材料の異方性複素屈折率の虚数部と実数部の対応する楕円体の軸の主値である。
【0030】
異方性複素屈折率の虚数部と実数部の成分は、楕円体の軸の方向とともに、既存の楕円偏光法または分光光度法により、実験に基づいて決定することができる。
【0031】
主軸の配向と同様に、吸収係数(K1,K2,K3)および屈折率(n1,n2,n3)の必要な異方性をもたらすこと、すなわち、多層構造において電気光学異方性結晶薄膜の光学特性をもたらすことは、基材表面上の偏光フィルムにおいて分子の所定の角度分布を設定することにより、可能である。
【0032】
中間的な光学特性を有する結晶薄膜を得るため、複数のコロイド系を混合することも可能である(その場合、複合超分子が溶液中にできる)。コロイド系の混合物から得られる電気光学異方性結晶薄膜の吸収および屈折は、最初の成分によって決定される範囲内において種々の値をとり得る。複合超分子を得るため種々のコロイド系を混合することが可能なのは、種々の有機化合物の分子の寸法の一つ(分子間間隔)が一致していること(3.4±0.3Å)による。
【0033】
電気光学異方性結晶薄膜の厚みに対する制御は、塗布される溶液中の固体物質の含有量を通じて行われる。これらの電気光学異方性結晶薄膜の製造におけるプロセス変数は、前記溶液の濃度であり、それは、製造の間、適宜に制御される。
【0034】
前記結晶薄膜の結晶化度は、結晶学および/または光学の方法を通じて制御することができる。
【0035】
異方性結晶薄膜のそのような製造方法には、基材として可能な種々の材料、例えば、半導体、誘電体、結晶、多結晶、ガラス、ポリマー、および他の材料を使用できる。さらに、上記方法は、複雑な形状(平坦、円筒形、円錐形、球形など)のものを含む種々の表面に電気光学結晶薄膜を製造することが可能である。このことは、それらの結晶薄膜を、制御可能な光学干渉フィルターの最も困難な構成に用いることを可能にし、特に、光導波路の突合せ端および側面、そのような導波路の平坦な研磨された側面、さらには、光子−結晶性ファイバー導波路の外面および内面(すなわち、コアおよび/または反射クラッドにおける長手方向のエアチャネルの系を含む光ガイド)において前記結晶薄膜を用いることを可能にする。
【0036】
結晶薄膜で被覆される表面には、前記表面に均一な濡れ性を付与して前記表面を親水性にするため、さらなる処理を施すことができる。それは、機械加工、アニーリング、メカノケミカル処理とすることができる。基材の表面に結晶薄膜を付与する前に、基材表面の機械加工によって配向異方性構造を形成することができ、それは、結晶薄膜における分子の高度な秩序性を促進する。
【0037】
顕著により低い作動電圧を用いることは、異方性結晶薄膜が薄い(100〜800nmのオーダー)ということにより可能となり、これは、静電強度は、次の式:E=U/Dに従い、試料に印加される電圧(U)とその厚み(D)によって決定されるからである。
【0038】
偏光された光波および偏光されていない光波を濾光するためのアクティブな装置(そこにおいて偏光された光波は制御される)の作製は、前記材料が高度な複屈折性とともに電気的かつ光学的な異方性を特徴を有することで可能になる。使用される厚みが0.3μmの結晶薄膜は(no-ne)d=0.24の位相差最大値を有し、これは、従来の材料を用いる場合、200μmの厚みによって達成されるものである(Lazarev, P. and Paukshto, M., “Thin Crystal Film Retarders” (2000). Proc. of the 7th International Display Workshops, Materials and Components, Kobe, Japan, November 29-December 1, 1159-1160)。前記結晶薄膜の屈折率は、石英ガラスの屈折率と顕著に異なてもよく、そして、印加される外部電界の強さに依存する。それに加え、検討下の前記材料は、感光性であり、すなわち、その光学特性はレーザー照射の影響下で変化する。この材料は、その屈折率は光放射の強度に依存しており、その非線形的光学特性からも興味深いものである。
【0039】
本開示の制御可能な光学装置の温度変化に対する感受性が低いのは、使用する結晶性フィルムが従来の材料と比べて高い熱安定性を特徴として有しいるからであり、これは、最高180℃までの温度において、空気およびアルゴン中で4時間、処理することができ、その間、その偏光効率の低下は0.8%未満にすぎない。
【0040】
高い生産性が達成されるのは、前記結晶薄膜材料を任意の形状の表面に簡単に付与することができ、それを製造に適合させることが容易であり、そしてそれが経済的であるからである。
【0041】
結晶薄膜のパラメーターの制御が簡単と同様に、結晶薄膜は生産性が高いことから、電気光学異方性結晶薄膜の利用は、光ファイバー通信システム用の制御可能な光学干渉フィルターにおいて有望である。従って、結晶薄膜は、小さなサイズのそのような結晶薄膜を複雑な形状の表面(光ファイバーの側面および/または突合せ端面を含む)に付与することが、明らかに容易であることから、小型の光ファイバーフィルターの形成を可能にする。光ファイバーは非常に小さな寸法を有している。例えば、シングルモードファイバーのコアは5〜10μmの直径を有し、反射クラッドの直径は125μmである。
【0042】
光ファイバーは、それが作られる材料によって異なるものとなり得る。特に、石英ガラス、カルコゲニドおよびフッ化物ガラス類、タリウムハロゲン化物および他の無機もしくは有機の結晶性および非結晶性光学材料をベースとする光ファイバー、ならびに特にポリマーをベースとする光ファイバー、またはそれらの組合せをベースとする光ファイバーがある。
【0043】
三つの基本的な種類の光ファイバーがある。すなわち、ガラスコアとガラスクラッドを有するガラスファイバー、ガラスコアとプラスチッククラッドを有するファイバー、およびプラスチックコアとプラスチッククラッドを有するプラスチックファイバーである。
【0044】
ファイバーの光ガイドにおいて、コアおよび/または一つまたは複数のクラッドは、任意の材料、例えば、石英ガラス、フッ化物ガラス、カルコゲニドガラス、ハロゲン化物をベースとする多結晶性光ガイド、ポリマーをベースとすることができる。
【0045】
列挙したすべての材料は、数十〜数百ミクロンの特有のサイズを有する小サイズの電気光学異方性結晶薄膜で被覆することができる。なお、その表面が結晶薄膜で被覆できる材料のリストは、上述したものに限定されない。
【0046】
制御可能な光学干渉フィルターの製造に関連することとして、電気光学材料を複雑な形状の表面に作る必要があるということがある。
【0047】
結晶薄膜を製造する本開示の方法は、それを平坦な表面に設けることを可能にするだけでなく、二次元およびそれより高次元の複雑な表面(例えば、円筒、球、円錐など)に設けることを可能にする。従って、この方法は、光ファイバーのクラッドの円筒面、その劈開した突合せ端の平坦な表面、D形状のファイバー(が面の一部は前記ファイバーのコアに近接している平坦な研磨された表面を有する曲がった光ガイド、またはコアは前記平坦な表面に近接し、「D」の文字の形状の断面で引き出された前記光ガイド)のクラッドの平坦な研磨された表面の上に、結晶薄膜を形成することを可能にする。
【0048】
この方法によれば、そのコア内に少なくとも一つの長い距離にわたる回折格子が存在する光ファイバーのクラッド表面に結晶薄膜を形成することが可能である。回折格子は、任意の方法(例えば、光ファイバーへの照射またはドーピングによる)により製造することができ、そして、それは、例えばクラッド上に形成される光学干渉フィルターとの光信号のより強い相互作用を促進する。
【0049】
異方性結晶薄膜を制御可能な光学干渉フィルターに適用する根拠となっていることは、この材料の異方性の屈折率および吸収係数が印加電界の強さに依存すること、前記膜の厚みが印加電界に依存すること(電気ひずみ)、およびその屈折率が光放射の電界に依存することである。前記膜は、ファイバー状または平板状の光導波路の外被覆(外部コーティング)となり、それは、導波路のモードの部分と相互作用し、前記モードの部分は光導波路の導波層から電気光学膜のコーティングに入り込んでいく。
【0050】
図1は、青色染料をベースとして調製された結晶薄膜における典型的なX線回折を示す。そのような結晶性フィルムのX線像における最も大きなピークの座標(3.36Å)は、リオトロピック液晶材料についてのものと同じである。棒状の集合体(積層体)が前記染料の平たい環状分子によって形成されているリオトロピック液晶材料の構造を考慮すると、芳香族分子のそのようなπ−π共役は、結晶薄膜の形成中において保持されていると考えられる。前記結晶薄膜は図2に示すような層状の結晶構造を有する多結晶材料であり、層間間隔は分子の「厚み」(3.36Å)にほぼ等しいことが分かった。染料の分子は、いずれの次の層も前の層に対して所定の配向を有するよう、層の内部において分布している。さらに、機械的衝撃によってこの結晶ブロックのミクロ構造が乱されることがわかった。前記結晶薄膜はある一定の支配的な結晶方位を有し、結晶子の最大発散は10°〜25°の範囲内である。組織および光学データの解析によって決定される秩序パラメーターは、約0.9である。
【0051】
一態様において、光学干渉フィルターは、二価および三価の金属のイオンで処理した異方性電気光学材料の少なくとも一つの層を有する。もう一つの態様において、少なくとも一つの芳香族有機材料の分子は複素環を含む。光学干渉フィルターは、少なくとも一つの二色性染料をベースとするリオトロピック液晶からなる異方性電気光学材料の少なくとも一つの層を含むことができる。
【0052】
図3が示す光学干渉フィルターは、基材1を有し、それは、導電性透明材料の層2で被覆され、前記層は、干渉フィルターのさらなる層で被覆される。そして干渉フィルターのさらなる層は多層光学構造に相当し、交互に配置された低屈折率nLの層3と高屈折率nHの層4を有する。前記多層構造の上には、透明導電材料の第二の層2がある。前記交互に配置された層の厚みは、L=m*λ/(4*n)(ここでmは奇数の整数を表し、λは前記フィルターの動作波長を表し、かつnは対応する屈折率(nLまたはnH)を表す)の条件で選ばれている。文献(Max Born, Emil Wolf, <<Principles of Optics>>, sedond edition, Pergamon Press, 1964参照)に示されるとおり、そのような多層構造の反射係数は、低屈折率層と高屈折率層の対の数および比nH/nLが増加するにつれ、増加する。図3に示すフィルターは以下のように作動する。制御電圧Vが導電層2に印加されると、その結果、多層光学構造に電界が設定される。印加電界は、前記構造において交互に配置される層の屈折率を変化させる効果を有する。この変化の結果、前記光学フィルターは最大の反射係数を有することを特徴とすることから、前記フィルターの動作波長が変わる。基材は、光学的に透明な材料からなってもよいし、光学的に不透明な材料からなってもよい。基材は、金属、半導体、誘電体、特に、ガラス、石英、プラスチックとすることができる。透明導電性電極は、二酸化スズ(SnO2)または酸化インジウム(In2O3)により形成できる。300オーム/cm2以下の抵抗を有するSnO2の層は、400〜500℃のマッフル炉においてSnCl4を熱分解するかまたはSnCl2を水和することにより得られる。この方法は、基材上に電極を形成するため用いることができる(異方性結晶薄膜の付着に先立って)。この方法は、最も重要な基準である、光透過度および電気抵抗に応じて種々の厚みの層を得るために用いてもよい。混和剤としてのエタノールに十分に希釈したBF-2またはBF-4のような接着剤を用いて、細い電線をSnO2層に半田付けすることができる。酸化インジウムの層は、10-5Torrの真空中、インジウムの陰極蒸着により得られる。この方法はより生産性が高く、そして、コーティング特性(機械的強度、光透過率、電気抵抗)はSnO2とほぼ同じである。導電性透明コーティングが有機ガラスまたは半導体上に付与される場合、Cu2Sの層を用いてもよい。最終的に、電極を電源につなぐと、定電圧および/または交流電圧のいずれかが供給される。
【0053】
図4が示す光学干渉フィルターは、導電性不透明材料の層5で被覆されている、基材1を有し、前記層の上には、交互に配置された低屈折率nLの層3と高屈折率nHの層4とを有する、多層光学構造に相当する干渉フィルターのさらなる層が設けられている。前記多層構造の上端には、導電性不透明材料の第二の層5がある。交互に配置された層の厚みは、図3に関して上述したと同じ条件で選ばれている。導電性不透明材料の層5は、金属、例えばアルミニウムの真空蒸着により、多層光学構造の表面上に堆積させることができる。他の金属、例えば、金およびチタンなどを、導電性不透明層を形成するのに用いることができる。導電性不透明層は、光信号の前記構造への透過を可能にする開口を特徴として有することが望ましい。そのような開口は、例えば、真空蒸着または他の方法において、マスクを用いることにより形成することができる。前記フィルターの動作原理は、図3に示す場合と同様である。
【0054】
図5に示す光学干渉フィルターは、導電層が多層光学構造の側面に形成されている点で、図3および図4に示すものと異なっている。
【0055】
図6に示す光学干渉フィルターは、交互に配置された低屈折率nLの層3と高屈折率nHの層4からなる第一の多層光学構造によって覆われている、基材1を有する。前記第一の多層光学構造の上には、導電性で光学的に透明な材料の層2があり、その上端には、低屈折率材料の層7がある。後者は、導電性透明材料の第二の層2および交互に配置された低屈折率材料の層と高屈折率材料の層からなる第二の多層光学構造で覆われている。交互に配置された層の厚みは、図3〜5に示す例で満たされたと同様の相関関係を満足している。層7の厚みは、L=m*λ/(2*n)(ここでmは偶数の整数を表し、λは前記フィルターの動作波長を表し、かつnは層7の屈折率を表す)の条件で選ばれている。そのようなフィルターにおける層の厚みは、前記フィルターの動作波長に対して最大の透過係数をもたらすための条件にて選ばれる。従って、そのようなフィルターは、帯域透過フィルターに相当する。印加される制御電圧は、層7に電界をもたらし、それは結果的に層の屈折率を変化させる。屈折率のこの変化の結果、前記フィルターの透過帯域は移動する。層7の厚みに合う半波長の数が大きいほど、交互配置層における比nH/nLが大きいほど、そして多層構造における交互配置層の対の数が大きいほど、帯域透過フィルターのカットオフがよりシャープになる。
【0056】
図7に示す光学干渉フィルターは、導電性材料の一つの層が中間層7の表面ではなく基材の表面に形成されている点で、図6に示すものと異なっている。一般的に、導電性材料の層は任意に配置することができる。本質的に必要なことは、それらの間に生成される電界が、前記フィルターにおいて電気光学材料の層にいきわたり、それらの屈折率を変化させ、そして、前記フィルターの光学特性を制御するということである。
【0057】
図8に示す光学干渉フィルターは、コア8およびクラッド9を有する光ファイバーを有し、そこに、光学干渉フィルターの複数の層が存在し、それらの層は、交互に配置される低屈折率層3と高屈折率層4の多層光学構造となっている。前記多層光学構造の両側には導電性材料の層2がある。制御電圧をこれら二つの導電層に印加する。交互に配置される層の厚みは、次の関係L=m*λ/(4*n)(ここでmは奇数の整数を表し、λは前記フィルターの動作波長を表し、かつnは対応する屈折率(nLまたはnH)を表す)を満たす。そのようなフィルターは、動作波長に対して最大の反射係数を有することを特徴とする。印加電圧は、交互に配置される層内に電界をもたらし、その結果、交互に配置される個々の層の屈折率が変化し、それにより、最大反射係数を特徴とするフィルターの動作波長も変化する。
【0058】
図9に示す光学干渉フィルターは、コア8およびクラッド9を有する光ファイバーを有し、その内部に干渉フィルターの複数の層が存在し、前記複数の層は、交互に配置される低屈折率層3と高屈折率層4の多層光学構造となっている。図8に示すものとは、交互に配置される層が傾斜していることで相違する(すなわち、これらの層に対する法線の方向が、光ファイバーの軸に対して0〜90°の鋭角を形成している)。この場合、反射された波は、光ファイバーの外に誘導される。そのようなフィルターは、レーザーまたは光増幅器の出力窓において使用できる。反射された波が光信号源に戻らないので、そのようなフィルターは、自発的励起に対して光学系の安定性を高める。
【0059】
図10に示す制御可能な光学干渉フィルターは、コア8およびクラッド9を有する光ファイバーを有し、その内部に、交互に配置される低屈折率の層3と高屈折率の層4からなる第一の多層光学構造が存在する。第一の多層構造の後ろに、導電性で光学的に透明な材料の層2があり、その後ろに低屈折率材料の層7がある。さらに、導電性透明材料の第二の層2および交互に配置された低屈折率材料の層と高屈折率材料の層からなる第二の多層光学構造が設けられている。交互に配置される層厚みは、図8〜9に示す例と同様の関係を満足している。層7の厚みは、L=m*λ/(2*n)(ここでmは偶数の整数を表し、λは前記フィルターの動作波長を表し、かつnは層7の屈折率を表す)の条件で選ばれている。そのようなフィルターにおける層の厚みは、前記フィルターの動作波長に対して最大の透過係数をもたらすための条件にて選ばれる。導電層2に印加される制御電圧は、層7の材料の屈折率を変化させ、それは、前記フィルターの透過帯域の変動をもたらす。第二の多層光学構造における層の順序は、第一のものと反対になっている。従って、図10に示すフィルターは、次の層の順序:H-L-H-L-H-E-2L-E-H-L-H-L-H(ここでHは高屈折率の層を表し、Lは低屈折率の層を表し、かつEは導電層を表す)を有する。
【0060】
図11に示す光学干渉フィルターは、導電性材料の層2の位置が図10に示すものと異なっている。一般的に、導電性材料の層は任意に配置することができる。本質的に必要なことは、それらの間に生成される電界が、前記フィルターにおいて電気光学材料の層にいきわたり、それらの屈折率を変化させ、そして、前記フィルターの光学特性を制御するということである。
【0061】
図13、14および15に示す制御可能な光学干渉フィルターは、次の層の順序において、図10、11および12に示すフィルターと異なっている:L-H-L-H-L-E-2H-E-L-H-L-H-L(図13)、E-L-H-L-H-L-2H-E-L-H-L-H-L(図14)およびE-L-H-L-H-L-2H-E-L-H-L-H-L(図15)(ここでHは高屈折率の層を表し、Lは低屈折率の層を表し、Eは導電層を表す)。
【0062】
図16に示す制御可能な光学干渉フィルターは、コア8およびクラッド9を有する光ファイバーを有し、その突合せ端に複数の層が存在し、それらの層は、交互に配置される低屈折率層3と高屈折率層4の多層光学構造となっている。前記多層光学構造の両側には導電性材料の層2がある。制御電圧がこれら二つの導電層に印加される。交互に配置される層の厚みは、次の関係L=m*λ/(4*n)(ここでmは奇数の整数を表し、λは前記フィルターの動作波長を表し、かつnは対応する屈折率(nLまたはnH)を表す)を満たす。そのようなフィルターは、動作波長に対して最大の反射係数を有することを特徴とする。印加電圧は、交互に配置される層に電界をもたらし、それは、これらの層に使用される電気光学材料の屈折率を変化させ、従って、最大反射係数を特徴とするフィルターの動作波長の変化をもたらす。
【0063】
図17に示す制御可能な光学干渉フィルターは、コア8およびクラッド9を有する光ファイバーを有し、その傾斜した突合せ端に干渉フィルターの複数の層が存在する。前記複数の層は、交互に配置される低屈折率層3と高屈折率層4の多層光学構造となっている。この場合、反射された波は、光ファイバーから出される。多層光学構造の両側に導電性材料の層2がある。制御電圧がこれら二つの導電層に印加される。そのようなフィルターは、レーザーまたは光増幅器の出力窓において使用できる。反射された波が光信号源に戻らないので、そのようなフィルターは、自発的励起に対して光学系の安定性を高める。
【0064】
図18は制御可能な光学干渉フィルターの断面図を示す。前記フィルターは、コア8およびクラッド9を有する光ファイバーを有し、そのクラッド上に、導電性透明材料の第一の円筒状層11があり、それは、交互に配置される低屈折率層13と高屈折率層14からなる第一の多層光学構造によって被覆されている。第一の多層構造は、低屈折率材料からなる円筒状中間層12によって被覆されている。交互に配置される低屈折率層と高屈折率層からなる第二の多層光学構造が、中間層12上に形成されている。そして第二の多層構造は第二の導電層11で被覆されている。交互に配置される円筒状層の厚みは、次の関係L=m1*λ/(4*n)(ここでm1は奇数の整数を表し、λは前記フィルターの動作波長を表し、かつnは対応する屈折率(nLまたはnH)を表す)を満たす。層12の厚みは、L=m2*λ/(2*n)(ここでm2は偶数の整数を表し、λは前記フィルターの動作波長を表し、かつnは層12の屈折率を表す)の条件で選ばれている。そのようなフィルターにおける層の厚みは、前記フィルターの動作波長に対して最大の透過係数をもたらすように選ばれる。導電層11に印加される制御電圧は、層12の屈折率を変化させ、それは、前記フィルターの透過帯域の変動をもたらす。第二の多層光学構造における層の順序は、第一のものと反対になっている。従って、図18に示すフィルターは、次の層の順序:E-H-L-H-2L-H-L-H-E(ここでHは高屈折率の層を表し、Lは低屈折率の層を表し、かつEは導電層を表す)を有する。導電層に印加される動作電圧は、前記フィルターの透過波長をシフトさせる。
【0065】
図19に示す制御可能な光学干渉フィルターは、コア8およびクラッド9を有するD形状の光ファイバーを有し、そのクラッドの平坦な研磨された表面上に、導電性透明材料の第一の層2があり、その上端に、交互に配置される低屈折率層3と高屈折率層4からなる第一の多層光学構造がある。第一の多層構造の後に、低屈折率を有する材料の中間層7がある。さらに、交互に配置される低屈折率層と高屈折率層からなる第二の多層光学構造と、導電性透明材料の第二の層2とが存在する。交互に配置される円筒状層の厚みは、次の関係L=m1*λ/(4*n)(ここでm1は奇数の整数を表し、λは前記フィルターの動作波長を表し、かつnは対応する屈折率(nLまたはnH)を表す)を満たす。層7の厚みは、L=m2*λ/(2*n)(ここでm2は偶数の整数を表し、λは前記フィルターの動作波長を表し、かつnは層7の屈折率を表す)の条件で選ばれている。そのようなフィルターにおける層の厚みは、前記フィルターの動作波長に対して最大の透過係数をもたらすような条件で選ばれる。導電層2に印加される制御電圧は、層7の屈折率を変化させ、それは、前記フィルターの透過帯域の変動をもたらす。第二の多層光学構造における層の順序は、第一のものと反対になっている。従って、図19に示すフィルターは、次の層の順序:E-H-L-H-2L-H-L-H-E(ここでHは高屈折率の層を表し、Lは低屈折率の層を表し、かつEは導電層を表す)を有する。導電層に印加される動作電圧は、前記フィルターの透過波長をシフトさせる。導電層に印加される動作電圧は、前記フィルターの透過帯域をシフトさせる。
【0066】
一態様において、本発明の光学干渉フィルターは、少なくとも一つの偏光子層、および/または、少なくとも一つの位相差層、および/または、少なくとも一つの配向層、および/または、少なくとも一つの保護層、および/または、少なくとも一つの鏡面反射層もしくは拡散反射層、および/または、上記層の少なくとも二つの任意の組み合わせの機能を同時に発揮する少なくとも一つの層を有する。もう一つの態様において、光学干渉フィルターは、DCおよび/またはACの電圧がかかる少なくとも一対の電極を含む。光学干渉フィルターの可能な態様において、少なくとも一つの電極の少なくとも一部は、光線の透過を可能にするため、少なくとも一つの透明窓を有する、不透明な光学材料からなる。
【0067】
図20に示す制御可能な光学装置は、コア8、クラッド9および制御可能な干渉フィルターを有する光ファイバーを有する。光ファイバーとフィルターとの間にはマイクロレンズ15がある。マイクロレンズ15は、例えば、放物線状分布の屈折率を有し、干渉フィルターとのより良い相互作用に有効な、光線を平行光線に広げるよう機能する。レンズ15の中心は、ファイバーの光軸と正確に一致するよう配置される。通常、ファイバーに対してレンズを動かすことにより、ファイバーおよびレンズを介する光信号の最大透過率をもたらす位置を決めることができ、次いで、ファイバーに対してそのような位置のレンズを、エポキシ接着剤を用いて取り付けることができる。レンズをファイバーに固定するため、メカニカルクランプを用いることもできる。この光学装置における制御可能な干渉フィルターは、帯域透過性でもよいし、帯域反射性でもよい。そのほか、多層光学構造は、長波長または短波長のみの光信号を透過するよう最適化してもよい。この場合、制御電圧は、前記フィルターの動作波長を制御する。
【0068】
図21に示す光ファイバー装置は、コア8およびクラッド9を有する長さLの光ファイバーの部分と、前記光ファイバー部の対向する突合せ端に形成された二つの制御可能な干渉フィルターとを有する。これらのフィルターは、広い波長範囲の光放射に対して完全に近い反射板として機能するよう設計することができる。そのような光学装置は、シングルモードのファイバーを用いる場合、ファブリ−ペロ干渉計として機能し得る。そのような干渉計のコアの光路長は、種々の方法(光ファイバーを曲げること、前記ファイバーを加熱すること、前記ファイバーに音波を作用させること、あるいは前記ファイバーを磁界または電界中に置くこと)により、変えることができる。従って、前記フィルターを通じて伝播する干渉性の光信号を変調(調節)することができる。そのほか、マルチモードファイバーを用いる場合、二以上の波(波長λ1,λ2,・・・λI)の光信号を、そのようなフィルターにより空間的に分割することができ、それは、上述した光信号の光路の違いにより、ファブリ−ペロ干渉計を用いて行うと同様に行うことができる。類似の構成を、狭い帯域幅の反射フィルターに用いることができる。
【0069】
図22に示すように、光源16は、干渉性または非干渉性な光信号を生成させることができる。この光信号は、複数の光ファイバーの系に入射する。各ファイバーの突合せ端に、制御可能な干渉フィルターが設けられる。各フィルターは、その個々の波長に調整され、それは、前記フィルターに印加される電界により変えることができる。そのような装置は、多波長源から、異なる個々の色の光信号を取り出すことを可能にする。
【0070】
図23は、光ファイバーに基づく制御可能な光学干渉フィルターを示す。そのコア8には、100〜600μmの間隔で回折格子17が設けられている。そのような回折格子は、ファイバーのコアの中心に集中し、それは、ファイバーのコアによって誘導される基本モードまたは他の任意のモードで伝播している光放射の場を、ファイバーのクラッドにおいて伝播するクラッドモードの一つに変換する。また、前記回折格子は、反対に、クラッドモードの放射を、光ガイドのコアにおいて誘導される基本モードまたは他の任意のモードに変換するよう機能してもよい。この回折格子は、位相同期により、コアモードとクラッドモードとの間での効果的なコミュニケーションをもたらす。従って、そのような回折格子は、光ファイバーのクラッドの表面に形成された干渉フィルターとの光の相互作用を増強する。結晶薄膜が高い光学異方性を特徴とするため、この装置は、異なる偏光状態を有する光のモードを選択することができる。そのほか、結晶薄膜は、吸収係数の電界強度に対する依存性を特徴とするため、そのような装置は、吸収を調節することにより、所定の波長を有する光の変調を可能にする。
【0071】
図24に示す光学干渉フィルターには、二つの回折格子17が光ファイバーのコア8内に形成されており、そして、電極2とともに、交互に配置される層3および4のアクティブな多層系が、クラッド9の外側の電極の間に形成されている。ここで、第一の回折格子は、所定の光のモードを取り出し、それをクラッドに移す一方、第二の回折格子は、それを逆にコアに移す。前記フィルターのアクティブな多層系は、前記コアを通じて伝播する光に作用する。前述した例と同様に、この装置は、吸収を調節することにより、選択波長の光を変調することを可能にする。というのも、その結晶薄膜が、吸収係数の電界強度への依存性を特徴とするからであり、または、その透過係数を調節することにより前記フィルターの反射係数を調節して選択波長の光を変調することを可能にする。結晶薄膜が異方性であるため、この場合、その偏光状態に依存する光の変調も可能である。
【0072】
図25は、制御可能な電気光学装置を示し、それは、図23と図24に示す装置の組合せに相当する。
【0073】
次の表1は、1550nmの波長に対して設計された反射型光学干渉フィルターの層の特性をまとめている。法線に沿って(軸0Zに沿って)光のビームが層1に入射するとみなす。異方性電気光学材料の層(異方性結晶薄膜(TCF)に相当する)の主光軸は、0X-軸に沿って配置され(屈折率n=2.0)、また0Y-軸に沿って配置される(屈折率n=1.6)。前記フィルターの光学材料の層は、平坦でありかつ0Z-軸に直交に配置されているとみなす。ITOの層は電極に相当し、前記フィルターの光学特性を制御するため使用される。
【0074】
【表1】
【0075】
図26は、直線偏光の垂直入射における、基材に対する補正のない、多層系の反射係数のスペクトル特性を示す。図26に示す曲線は、x軸に対する偏光ベクトルの種々の角度方向φに対応する:1)φ=0°、2)φ=30°、3)φ=60°、4)φ=90°。
【0076】
図26によれば、y軸に沿って偏光される光(曲線4)は、多層系によって完全に反射される。x軸に沿って偏光される光に対する反射係数(曲線1)は、波長に依存し、波長λ=1533nmでその最小値(3×10-5に相当)に達する。従って、この波長に対する透過係数は1に近い。これらのデータは、前記多層系が偏光子として機能することを明らかにしている。
【0077】
図27に示すように、基材は、反射された光のスペクトルに影響し、その最大の偏光度を減少させる。図27は、4mmの厚みを有する基材の存在下、直線偏光に対する反射係数の波長依存性を示している。図27に示す曲線は、x軸に対する偏光ベクトルの異なる角度方向に対応する:1)φ=0°、2)φ=30°、3)φ=60°、4)φ=90°。計算に用いたスペクトル成分の逆干渉性長は、-Δλ/λ2=0.002μm-1である。
【0078】
図28は、4mmの厚みを有する基材の存在下、偏光されていない光を用いる場合の波長に依存する透過係数および反射係数を示す。明らかに、透過光は、スペクトル領域全体においてx軸に沿って直線偏光され、0.94を超える偏光度を有する。波長λ=1533nmに対して、透過係数は0.45を超えており、これは驚くべきことである。最悪の場合でも(例えば、λ=1580〜1600nmにおいて)、透過係数は0.3を超えており、偏光度は約0.94である。反射光はy軸に沿って直線偏光される(偏光度は、λ=1533nmに対して0.87に達し、λ=1600nmに対して最小値の0.4に減少する)。
【0079】
本発明の技術的範囲をいかなる意味においても限定することなく、現象の物理的メカニズムを説明するため、多層系のある簡素化した構成を示す。次の21層を有する多層系を検討する(1)<PI>(2)<TCF>(3)<PI>(4)<TCF>・・・(19)<PI>(20)<TCF>(21)<PI>。各層の厚みは約0.2μmであり、従って多層系の全厚みは約4.2μmである。<PI>は、1.6の屈折率を有するポリイミドの光学異方性層を意味し、屈折率がより低い値のTCFに該当する。効果を高くするため、TCFの屈折率のより高い値を2.4とする。x軸に沿って0.4μmの間隔で屈折率の空間的変調がある一方、y軸に沿って媒体は均質である。x-偏光に対するこの系の透過信号および反射信号のスペクトルを図29に示す。1400〜1900nmの波長範囲内において100%反射の帯域が存在する。この効果は、コレステリック液晶で見られるものに似ており、それは、その螺旋のピッチによって決まる選択的反射係数の範囲を特徴とする。相違点は、コレステリックの場合、反射光は円偏光であるが、本発明の場合、反射光は直線偏光であるということである。
【0080】
コレステリックを用いる場合と同様に、選択的反射係数の範囲の幅について、以下が成立する。
【数1】
(ここで、Δn=n,TCF-nx,pI=2.4-1.6=0.8、λmは選択的反射係数の範囲の波長を意味する。)
【0081】
y軸に沿って媒体が均質であるため、y-偏光はこの系によって完全に透過される一方、波長が選択的反射係数の範囲内にあるとき、x-偏光は干渉フィルターによって反射される。層の数を増やすことにより、選択的反射係数の範囲内で反射係数のスペクトル依存性はフラットになり、そして、反射係数自体の値は単一値に非常に近くなる。
【0082】
表2も、λ=1550nmに対して設計された帯域透過性の光学フィルターの層の特性を示す。上記の場合と同様に、法線に沿って(軸0Zに沿って)光のビームが層1に入射すると想定される。異方性結晶薄膜の主光軸は、0X-軸(n=2.0)および0Y-軸(n=1.6)の方向であり、残りの層は異方性である。ITOの層は電極に相当し、それを介して、前記フィルターの光学特性を制御する。前記フィルターの光学材料の層は、平坦でありかつ0Z-軸に垂直に配置されているとみなす。1500〜1600nmの波長範囲についておよび入射光の偏光状態の四つの場合について計算した波長に対する、この光学構造の反射係数の依存性を、図30および図31に示す。フィールドベクトルがX0Y面にあるため、図30〜31は、以下の場合の偏光を示している。φ=0°,30°,60°および90°(ここでφは、光波の電場ベクトルと0X軸との間の角度を表す)。
【0083】
【表2】
【0084】
表2に示すフィルターは、図30に示すように、x軸に沿って偏光される光について波長の選択的範囲が特異的であることを特徴とする。図30の曲線(1〜4)は、x軸に対する偏光の異なる角度方向φに対応する:1)φ=0°、2)φ=30°、3)φ=60°、4)φ=90°。曲線5は偏光されていない光に対応する。反射係数の最低値は、波長1550nmに対して約3%に相当する。直交偏光に対して、反射係数は約95%である。従って、前記フィルターは、1550nmに相当する波長に対して良好な偏光子として機能する。波長1555nmに対する偏光度は0.93に相当する。
【0085】
異方性結晶薄膜(TCF)の屈折率は電界の強度に感受性であるため、表2に示すフィルターの動作範囲は制御することができる。図31は、前記異方性結晶薄膜の屈折率のx成分が2(曲線1)から1.95(曲線2)に変化するときのスペクトルの変化を明らかにしている。この光学干渉フィルターのスペクトル特性が電界によって制御されることがわかる。
【実施例】
【0086】
スルホン化インダントロンのリオトロピック液晶(LLC)からの電気光学異方性結晶薄膜の製造
【0087】
光学干渉フィルターの電極および異方性材料の層の製造を、標準的な製造技術を用いて行った。従って、基材、電極および異方性層の製造についての記載は省略する。本発明において主に重要な部分は、異方性結晶薄膜の製造方法であった。
【0088】
異方性結晶薄膜を製造する方法は、室温において六方晶相を形成した、スルホン化インダントロンの9.5%水溶液を用いた。溶液中、この有機染料の分子は集まって異方性の超分子複合体となった。これらの複合体は、フィルムの結晶構造のための基礎として働いた。精製の後の原料インクを、直接的な注ぎこみとスミアリングを用いて、Siガラス基材上に塗布した。次いで、そのコロイド系の粘度を、所定の種類の外部作用により減少させた(これは、後の配向を行うのに必要であった)。このとき、溶液は、ネマチック相またはネマチック相と六方晶相の混合物を形成した。前記系の粘度は、1780mPa/秒から250mPa/秒に減少した。前記系の粘度を減少させる条件下においてのみ、良好な品質の異方性結晶薄膜を得ることができる。
【0089】
次の操作は、LLCのコロイド系の動力学的単位を配向させるプロセスであった。種々の配向用具をこの操作を行うのに用いることができた。この実施例では、9.5mmの直径を有しワイヤが巻かれた配向用の円筒状マイヤーロッド4を用いた。このロッドの直径が湿潤層の厚みを決めた。配向作用を及ぼす間、ロッドは13mm/秒で移動した。ロッドの移動による剪断応力は、前記系の粘度のさらなる減少をもたらした。
【0090】
次の操作は乾燥プロセスであった。このプロセスで必要なことは、これまでにできた配向構造が損傷するのを防ぐため、溶媒の除去速度を遅くすることである。この実施例では、乾燥を室温において60%の湿度で行った。
【0091】
上記製造技術から得られた異方性結晶薄膜は、0.3〜0.4μmの厚みを有し、光学特性および電気特性について高度の異方性を有し、フィルムの領域にわたって、そして、バッチ間で、パラメーターの良好な再現性を特徴とする。得られたフィルムの結晶構造の完全性は、光学的x線回折法により評価した。
【0092】
本発明の特定の態様について以上に示してきたものは、例示と説明を目的とするものであり、本発明を完全に網羅するものでもなく、また、本発明を開示したそのものずばりの形態に限定しようとするものでもない。上述した開示に照らして多くの変更・修飾、具体例および変形例が可能であることは明らかである。本発明の技術的範囲は、添付した請求の範囲およびその均等の範囲によって規定すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】青色染料をベースとして製造された結晶薄膜の典型的なX線回折を示す図である。
【図2】結晶薄膜の層状結晶構造を示す模式図である。
【図3】導電性透明材料の層を有する光学干渉フィルターを示す模式図である。
【図4】導電性不透明材料の二つの層を有する光学干渉フィルターを示す模式図である。
【図5】多層光学構造の側面に形成された導電層を有する光学干渉フィルターを示す模式図である。
【図6】二つの交互に配置される多層光学構造と、中間層の表面に形成された導電材料の層とを有する光学干渉フィルターを示す模式図である。
【図7】二つの交互に配置される多層光学構造と、基材上に形成された導電材料の層とを有する光学干渉フィルターを示す模式図である。
【図8】コアとクラッドとを有し、その内側に、二つの導電層と多層光学構造の交互に配置される層とを有する光学干渉フィルターの層が存在する、光学干渉フィルターを示す模式図である。
【図9】斜めの交互に配置される層を有する光学干渉フィルターを示す模式図である。
【図10】コアとクラッドとを有し、その内側には、高屈折率と低屈折率の交互に配置される層からなる二つの多層光学構造と、二つの導電層とが存在する制御可能な光学干渉フィルターの種々のデザインを示す模式図の一つである。
【図11】コアとクラッドとを有し、その内側には、高屈折率と低屈折率の交互に配置される層からなる二つの多層光学構造と、二つの導電層とが存在する制御可能な光学干渉フィルターの種々のデザインを示す模式図の一つである。
【図12】コアとクラッドとを有し、その内側には、高屈折率と低屈折率の交互に配置される層からなる二つの多層光学構造と、二つの導電層とが存在する制御可能な光学干渉フィルターの種々のデザインを示す模式図の一つである。
【図13】コアとクラッドとを有し、その内側には、高屈折率と低屈折率の交互に配置される層からなる二つの多層光学構造と、二つの導電層とが存在する制御可能な光学干渉フィルターの種々のデザインを示す模式図の一つである。
【図14】コアとクラッドとを有し、その内側には、高屈折率と低屈折率の交互に配置される層からなる二つの多層光学構造と、二つの導電層とが存在する制御可能な光学干渉フィルターの種々のデザインを示す模式図の一つである。
【図15】コアとクラッドとを有し、その内側には、高屈折率と低屈折率の交互に配置される層からなる二つの多層光学構造と、二つの導電層とが存在する制御可能な光学干渉フィルターの種々のデザインを示す模式図の一つである。
【図16】コアとクラッドとを有し、その内側に、二つの導電層と多層光学構造の交互に配置される層とを有する光学干渉フィルターの層が存在する、光学干渉フィルターを示す模式図である。
【図17】光ファイバーの斜めの突合せ端を有する光学干渉フィルターを示す模式図である。
【図18】クラッド上に、多層光学構造の二つ円筒状層と、透明導電材料の二つの円筒状層とが存在し、そこにおいて、低屈折率の中間層が二つの多層構造の間にあり、前記多層構造の低−高屈折率の層は、所定の順序を有する、光学干渉フィルターの断面図である。
【図19】D形状の光ファイバーを有し、そこにおいて、クラッドの平坦面上に、多層光学構造の二つの層と、透明導電材料の二つの円柱状層とが存在し、低屈折率の中間層が二つの多層構造の間にあり、多層構造の低−高屈折率の層は、所定の順序を有する、光学干渉フィルターの断面図である。
【図20】コアおよびクラッドを有する光ファイバーと、制御可能な干渉フィルターとを有し、前記光ファイバーと前記フィルターとの間にマイクロレンズが存在する、光学装置を示す模式図である。
【図21】コアおよびクラッドを有する光ファイバーの部分と、前記光ファイバーの部分の対向する突合せ端上に形成された二つの制御可能な干渉フィルターとを有する、光ファイバー装置を示す模式図である。
【図22】干渉性または非干渉性の光を生成させることができ、かつ、制御可能な干渉フィルターが各ファイバーの突合せ端上に配置されている、多波長の光源から種々の色の信号を取り出すことを可能にする装置を示す模式図である。
【図23】ファイバーのコアに回折格子を有する光学フィルターを示す模式図である。
【図24】光ファイバーのコアにある二つの回折格子と、交互に配置される層のアクティブな多層系と、クラッドの外面上にある電極とを有する光学フィルターを示す模式図である。
【図25】図23および24に示す装置を組み合わせたものに相当する制御可能な電気光学装置を示す模式図である。
【図26】本発明の一態様による多層系の反射係数のスペクトル特性を示す図である。
【図27】本発明の一態様による多層系の反射係数のスペクトル特性を示す図である。
【図28】本発明の態様による多層系の透過係数および反射係数を示す図である。
【図29】本発明の態様による多層系の透過係数および反射係数を示す図である。
【図30】本発明の態様による多層系のスペクトル特性を示す図である。
【図31】本発明の態様による多層系のスペクトル特性を示す図である。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、ロシア特許出願第2002-108388号(2002年4月4日出願)に基づく優先権を主張するものであり、その開示内容はこの引用により本明細書にそっくり記載されたものとする。
【0002】
本発明は、光学フィルターに関し、特に、制御可能な光学干渉フィルターに関する。
【背景技術】
【0003】
光学フィルター類は多くの用途で重要な役割を果たす。例えば、それらは、紫外光などのある光波をカットするために窓、サングラスおよび他の光学装置類に広く使用される。また、光学フィルターは光ファイバー通信装置に広く使用される。例えば、そのようなフィルターは、ノイズを遮断するための、または、信号をポンピングするための帯域透過性フィルターとして使用される。また、帯域透過性フィルターはマルチプレクサーのチャネル選択に使用される。ある光ファイバー装置は、復調を行うかまたは光シグナルを相当数の個々のシグナルに分割するため、特別な光学フィルターを用いる。さらに光学フィルターは、オプトエレクトロニクスの応用分野で光論理機構に使用される。光学フィルターは、動作帯域の波長において光信号を透過するために使用されるだけでなく、望ましい帯域の波長において光信号を反射するためにも使用される。例えば、光学フィルターは、例えば可視領域の光のような、特定の波長の光を反射するように形成することができる。反射型光学フィルターは、ブロッキングフィルターとして(ノイズを遮断し信号をポンピングするため)、光増幅器または光学レーザーと組み合わせた光ファイバー通信装置において使用される。光学フィルターは鏡を作るために使用することもできる。その他、光学フィルターは表示装置に使用できる。
【0004】
ある既知の光学干渉フィルター(R. Ditchbern, Physical Optics; R. W. Ditchburn, "Light", Blackie, & Son Limited, London, Glasgow)は、以下のように作製される。光学的に透明な基材を、屈折率の値が異なる複数の透明材料からなるいくつかの薄層でコーティングする。これらの層は干渉層として知られるもので、これらの層の厚みまたは屈折率を調節することにより、光信号の透過係数を変えることができ、すなわち、フィルターのフィルタリング特性を変えることができる。例えば、干渉フィルターは窓の構成に使用されることがある。その窓の表面には、屈折率の値が異なる種々の透明材料の層が交互にコーティングされる。前記材料の厚みおよび屈折率の値は、フィルターが不要な波長領域の光、例えば紫外光、を遮断するように、換言すればフィルターが選択波長を反射するように、すなわち鏡として働くように、選ばれる。これらのタイプの光学フィルターは効果的であるが、何らかの欠点を有する。そのようなフィルターの特性は、交互に配置される層の組成と厚みによって決まってくる。また、そのような干渉フィルターのフィルタリング特性は、製造後には変えることができない。さらに、これらの干渉フィルターは、光フィルタリング過程の間制御が必要な場合には用いることができない。
【0005】
ある既知の光学干渉フィルター(M. Born, E. Volf, <<Basics of Optics>>; and Max Born, Emil Wolf, <<Principles of Optics>>, second edition, Pergamon Press, 1964)は、異なる屈折率を有する材料からなる交互に配置された層を二組有する。交互に配置される層の各対は、低屈折率の層と高屈折率の層を有する。そのようなフィルターはファブリ−ペロのスタンダードと呼ばれる。ファブリ−ペロのスタンダードを望ましい範囲の波長に合わせるため、特別なスペーサーで分離された二組の層を用い、そして、各組の層で高屈折率の層を互いの前に配置する。これら二層間の必要な距離は、上述したスペーサー(通常、石英からなる)によって高い精度で維持される。上記スペーサーはスタンダードに相当する。二組の交互に配置される層の間のギャップには、低い屈折率を有する材料が充填される。ファブリ−ペロのスタンダードと調節可能なフィルターを製作するためには、二組の交互に配置される層を互いに対して動かすため運動発生装置を含めることが必要である。ファブリ−ペロのスタンダードにおける上記二組の層の間の距離を増減することにより、濾光されている波長の帯域を調節することができる。そのような調節可能なフィルターは、特に光ファイバーエレクトロニクスにおいて、広く用いられているが、それらのフィルターは明らかな欠点を有する。上述したように、それらのフィルターの少なくともいくつかは、二組の交互に配置される層間のギャップを変えるため、運動発生装置を使用する。運動発生装置および運動機構の運動に対して正確な制御を行うことは、困難な機械的課題である。それに加え、それらの運動発生装置は、通常、大きな時定数を有する。留意すべきことに、運動発生装置は、システムの他の電気部品および/または光学部品に比べても一般的に大きなものである。
【0006】
米国特許第4,358,851号に記載される既知の光ファイバー装置は、ファイバー−干渉フィルターの組み合わせを有する。そのような装置は、光通信システムにおいて、光放射の光源から来る所定の波長の信号を選択するため、または、所定領域の波長を選択するため、使用される。光源が半導体レーザーである場合、前記装置は、選択波長または選択領域の波長において個々の縦モードを制御するため使用することができる。この既知の光ファイバー装置は、光通信システムでの使用を意図するものである。その干渉フィルターは、狭い動作帯域幅を特徴とし、選択波長における信号を透過または反射することができる。この既知の装置は、光ファイバーの一端に作られた多層の光学構造を有する。前記装置に含まれる干渉フィルターは、光源からの選択波長における信号を透過させて光ファイバーに送り、そして、他の波長のすべてを反射して光源に戻すため、使用することができる。前記フィルターは、入射したすべての波長の光信号を反射するように設計することができる。また、前記フィルターは、選択波長の光信号に対し、部分的に反射するフィルター(拒絶フィルター)として作動してもよく、その場合、選択信号は反射されて光源に戻される一方、他のすべての波長の信号は光通信システムに送られる。この既知の光学装置は、GaAs/GaAlAs注入レーザーなどの半導体レーザーの発光を反射または透過するために設計されている。この干渉フィルターの作動帯域幅は、前記フィルターが、レーザー発光の範囲内にある少なくとも一つの選択波長の光信号を透過するように、レーザーの使用波長の範囲内である。この場合、残りの波長の反射された信号は、レーザーに光フィードバックをもたらす。この既知の光学フィルターは、半導体レーザーからの必要な波長の光信号を透過させるとともに、狭い帯域幅のレーザー発光を透過させるため、使用することができる。この既知の光学フィルターは、干渉性または非干渉性の放射の光源を有する光学装置において使用することができ、その出力信号は、いくつかの光ファイバーのシステムに入射する。それらのファイバーのそれぞれの劈開端に光学干渉フィルターがあり、前記フィルターは、所定の波長の光信号を透過させることを目的とする。従って、各ファイバーは、光源からのその固有の波長の信号を導く。そのような装置は、多周波数信号源から種々の色の光信号を取り出すことを可能にする。この光学装置の欠点は、その光学特性を調節することができないことである。
【0007】
米国特許第5,434,943号は、既知の制御可能な光学フィルターを記載する。この調節可能な光学フィルターは、第一のコンタクト層と第二のコンタクト層との間にある基材上に配置される導波層を有する。前記光学フィルターの調節は、それに電流を流すことによって行われ、電流は、結果として、導波層に可動性の電荷キャリアを注入する。注入された電荷キャリアは、導波材料の屈折率を変える。この調節可能な光学フィルターは、調整用の運動発生装置を用いないため、再構成可能なファブリ−ペロのスタンダードに比べて、有利であるが、やはりいくつかの欠点を有する。この調節可能な光学フィルターは、導波領域への電荷キャリアの注入を刺激するため、比較的高い電流密度を必要とする。この高い電流密度の必要性のため、製造できるフィルターのサイズおよび形状は限られてくる。フィルターのサイズが大きくなれば、作動に必要な電流が高くなる。
【0008】
光学的に異方性の層からなる多層構造に基づく光学フィルターが知られている(N.P. Gvozdeva et. al., Physical Optics. M.: Maschinostroenie, 1991参照)。そのようなフィルターは、干渉的‐偏光(IFP)光フィルターであり、その動作は、偏光された光線の干渉に基づいている。そのようなフィルターの際立った特徴は、バックグランドノイズがなく、非常に狭いスペクトル帯域(10-2nmまで)を選択できる能力である。多くの場合、IFP-光フィルターの個々の層を作製するため、種々の結晶(例えば結晶石英または氷州石)の薄い板が用いられる。そのようなフィルターの欠点には、その製造および調整における困難性がある。
【0009】
米国特許第5,037,180号に記載された既知の光学フィルターは、光ファイバーの劈開端に作製されるものである。そのようなフィルターは、多層薄膜構造からなり、その中で、低屈折率と高屈折率の材料の層が交互に並んでいる。そのような光ファイバーフィルターは、長波長用のファブリ−ペロのスタンダード等である。シングルモードファイバーの劈開端に配置されるフィルターは、前記ファイバーの軸に直交であり、入射したパワーの大部分を反射して、光信号源に戻す。反射されたパワーは、レーザーまたは光増幅器の出口に戻って行き、光学装置の自発的励起をもたらす。従って、この光学フィルターのバリエーションの一つは、多層薄膜光学構造であり、それは、ファイバーの傾斜した突合せ端面上に形成される。この場合、反射されたパワーは、発光光源に戻って行かず、光ファイバーから離れるよう誘導される。そのような光学フィルターの欠点は、その特性(例えば波長の帯域)を調節できないことであり、その特性の範囲内で、前記フィルターは、光信号を透過、阻止または反射する。
【0010】
米国特許第3,610,729号に記載される既知の多層偏光子の動作は、前記多層光学構造における光の干渉に基づく。この既知の偏光子は、その出口において透過光が偏光となるクラスの偏光子に属し、また、前記偏光子から反射される光も偏光となる。さらに、透過光の偏光状態と反射光の偏光状態とは互いに直交する。反射型偏光子の大部分は、かなり製造が難しく、それらは、かさばり、高価であり、可視光を偏光する目的でほとんど使用されない。偏光子には、効果的に直線偏光することができかつ入射光の大部分を透過することができる一方、直交する偏光を反射することが強く求められている。そのような特性を達成するため、既知の偏光子は、多層光学構造となっている。複数の層は、複屈折性で等方性の材料から順に作製することができ、前記複屈折性の材料の二つの屈折率の一つは、隣接する層の等方性材料の屈折率にほぼ等しくなっている。この既知の偏光子のもう一つの変形例において、複数の層は、二つの異なる複屈折性材料から順に作製することができる。この場合、複数の材料の一方の二つの屈折率うち低いほうが、他の材料の高いほうの屈折率にほぼ等しくなっている。
【0011】
ある波長帯域内の光がこの偏光子に入射するとき、光は偏光子によって二つの光線に分割される。一つの光線は、偏光子の交互に配置される層を通過して直線偏光となる。他方の光線は、偏光子で反射され、やはり直線偏光となるが、その偏光状態は、第一の(透過)光線の偏光状態に直交する。上述した層は、入射光の1/4波長に等しい厚みを有する。この場合、反射の係数および偏光の透過率は、最大値になると考えられ、入射光の50%に近づく。
【0012】
従って、この既知の装置(多層偏光子)は、光の一つの偏光状態に対して反射フィルターとなり、他の偏光状態に対して透過フィルターとなる。
【0013】
薄層を形成するのに可能な方法の一つは真空蒸着であり、これは、分子レベルに近いレベルで層の厚みについて正確な制御を行うことが可能である。多層偏光子を製造するもう一つの方法は、押出しと延伸の組合せを用いて行われる。これは、複屈折性のポリマーフィルムに配向作用を及ぼす。偏光子の要求される特性を得るために必要な交互配置層の数は、使用される材料の屈折率の値に大きく左右される。偏光子の特性の向上は、偏光子の構造に多数の交互配置層を用いることにより可能となりうる。一般に、交互配置層の数が多いほど良い。しかし、真空蒸着法は、かなり複雑であり時間がかかることから、偏光子に組み込むことが可能な層の数が制限される。多層構造を真空蒸着するプロセスは、個々の層が、通常、蒸着の結果、高度に活性化された状態にあり、そのため、さらに光を散乱させるため、機械的に不安定である。複合押出しのプロセスは、これらの問題を克服する。このプロセスは、多数の非常に薄い交互配置層を有する偏光子の製造を可能にする。さらに、このプロセスは、二つ以上の材料から、単一の連続的プロセスにおいて複数の層を製造することを可能にする一方、構造の不安定性、機械的応力、および光の散乱は、わずかである。種々の材料を、既知の偏光子の複屈折性材料として使用できる。例えば、前記材料は9部のテレフタル酸と1部のイソフタル酸の混合物からなることができる。この材料は1.436と1.706の二つの屈折率を有することが分かっている。さらに、発泡スチロール、プレキシグラス、ポリスルホン、およびポリエチレンテレフタレートのような複屈折性ポリマー材料を用いることができる。また、他の材料を用いて、複屈折性層を形成することもでき、そして、二つの屈折率の可能な差が最大となるよう最適化することができる。実際、屈折率の差が大きい複数の複屈折性材料を用いることにより、偏光子中の層の数を顕著に減らすことができる。等方性層は、材料の屈折率が、等方性層の両側にある層に使用される複屈折性材料の屈折率の一つにほぼ等しくなる条件で、多数の種々の材料から作製できる。この目的のために有用な材料には、フッ素化ポリマー類、フッ化マグネシウム、およびセルロースのアセトブチレートがある。また、等方性層は、その厚みを正確に制御できるよう、真空蒸着を用いて形成することができる。等方性層は、押出しと同時に複屈折性層を形成することにより製造できる。
【0014】
この光学干渉装置の欠点は、透過や反射帯域などの光学特性を調節できないことである。
【0015】
WO00/45202号に記載される既知の調節可能な光学干渉フィルターは、二組の交互に配置される誘電体層を含み、それらの層は、互いの上に形成され、二つの異なる誘電材料からなる。第一および第二の誘電材料は異なる屈折率を有する。また、この既知の光学フィルターは、交互に配置される層の第一の組と第二の組との間に配置された中間層をさらに有する。中間層の材料は、印加電界の値に応じて変わる屈折率を有することが重要である。さらに、第一の組の交互に配置される層は、光学的に透明な材料からなる基材上に配置される。そのような調節可能な光学干渉フィルターは、上に挙げた光学フィルターに固有の上記欠点の多くを有することがない。特に、上述したとおり、この光学フィルターは、印加電界の値に応じて変わる屈折率を有する材料の中間層を含んでいる。電界を変化させることにより、望ましい波長の範囲において入射光の透過または反射をもたらすように、この光学フィルターの動作を制御することができる。中間層の屈折率は電界によって制御できるため、交互に配置される層の厚みを変えることなく、または、フィルターの個々の部分を機械的に動かすことなく、フィルターの光学特性を調節することができる。従って、この光学フィルターの特性はより容易に変化させることができ、そのシステムの時定数は顕著に小さくなる。さらに、中間層に印加される電界の変化に応じて屈折率を変化させることができるため、そのような光学フィルターは、種々の形状で製造することができ、さらに、大小さまざまなサイズで作ることができる。
【0016】
この既知の光学干渉フィルターの欠点の一つは、多数の交互配置層を用いる必要があるということである。従って、大きな値の反射係数を得るため、100〜600にもなる多くの層を配置しなければならず、その配置は、技術的問題を有するとともに、特別な精密装置を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、例えば、調節可能な光学干渉フィルターの製造およびパラメーターの制御が技術的に困難であること、多数の交互に配置される誘電体層を用いる必要があること、調節可能な光学干渉フィルターは温度に対して感受性が高いこと、および光学干渉フィルターを制御するのに必要なエネルギー消費が高いことなどの従来技術の光学フィルターの欠点を克服する調節可能な光学干渉フィルターを提供することである。
【0018】
本発明の調節可能な光学干渉フィルターは、顕著に少ない数の交互に配置される層および顕著に低い作動電圧を使用し、偏光されていない光波と同様に偏光された光波も濾光し、電圧によって制御可能であり、高温において作動でき、そして、製造の費用対効果が大きい。この電気光学異方性結晶薄膜の厚みは、液晶中の固体相の含有量およびその塗布の際の「湿潤層」の厚みを通じて制御することができる。その電気光学効果は、前記電気光学材料の層に電流を通すことなく、得ることができる。前記光学干渉フィルターは、光ファイバー通信システム用の光ファイバーに基づき、密集化することができる。そして、その制御可能な光学干渉フィルターの吸収、反射または透過の帯域は、外部電界を印加することにより制御できる。
【0019】
本発明の光学干渉フィルターは、それぞれが実数および/または虚数の屈折率を有する複数の層を有する。前記実数および虚数の屈折率の値は、外部電界の強さに依存する。材料の屈折率および各層の厚みならびにそれらの組合せは、入射光の少なくとも一つの偏光状態に対し、スペクトルの少なくとも一つの領域において干渉の極値がもたらされるよう、選ばれている。少なくとも一つの層は、電気光学材料からなり、前記電気光学材料は、異方性でありかつ少なくとも一つの芳香族有機材料から作られている。前記芳香族有機材料の分子または前記分子のフラグメントは、平板的構造を有する。前記電気光学材料の層の少なくとも一部は、光軸の一つに沿った分子間間隔が3.4±0.3Åである結晶構造を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に説明する添付の図面とともに読むとき、本発明は、以下の説明からよりはっきり理解されることとなる。
【0021】
本発明により提供される光学干渉フィルターは、電気光学材料の少なくとも一つの層を有し、前記電気光学材料は異方性でありかつ少なくとも一つの芳香族有機材料から作られたものであり、前記芳香族有機材料の分子または前記分子のフラグメントは、平板状構造を有し、前記層の少なくとも一部は、光軸に沿った分子間間隔(ブラッグのピーク)が3.4±0.3Åである結晶構造を有し、かつ、異方性屈折率および/または吸収係数の少なくとも一つが、電界の値に応じて変わるものである。そのような層の材料は、光学異方性結晶薄膜とも呼ばれる。
【0022】
一態様において、光学干渉フィルターは、二価および三価の金属のイオンで処理された異方性の電気光学材料からなる少なくとも一つの層を有する。他の態様において、少なくとも一つの芳香族有機材料の分子は複素環を含む。光学干渉フィルターは、少なくとも一つの二色性染料をベースとするリオトロピック液晶からなる、異方性電気光学材料の少なくとも一つの層を含むことができる。
【0023】
前記電気光学異方性結晶薄膜のユニークな光学特性(薄いこと、低い温度感受性、屈折率の高い異方性、吸収係数の異方性、大きな値の二色比、および製造の簡便さ)は、前記材料の特殊な性質および前記結晶薄膜(特に前記結晶薄膜の分子−結晶構造)の作製に使用される製造方法に起因する。前記結晶薄膜は、リオトロピック液晶相またはサーモトロピック液晶相を形成する少なくとも一つの有機材料の液晶相の結晶化、配向作用を用いた前記液晶の基材上への塗布、およびその後の乾燥によって製造される。前記有機材料の能力において、本開示の電気光学異方性結晶薄膜は、少なくとも一つの有機材料を用い、その化学式は、少なくとも一つのイオノゲン基(これは極性溶媒に対する溶解性を付与する)および/または少なくとも一つの非イオノゲン基(これは非極性溶媒に対する溶解性を付与する)および/または少なくとも一つの対イオン(これは、前記材料を得る工程において、前記分子の構造中に残っていてもよいし残っていなくともよい)を含む。
【0024】
前記電気光学異方性結晶薄膜は、一種または複数種の有機材料の多数の超分子複合体(Jean-Marie Lehn, <<Supramolecular Chemistry Concepts and Perspectives>>, -Weinheim; New York; Basel; Cambridge; Tokyo: VCH Verlagsgesellschaft mbH, 1995)によって作られる。さらに、前記超分子複合体は、その導電性をもたらし、通過する光を偏光にするため、所定の態様で配向される。
【0025】
前記電気光学異方性結晶薄膜を生成させるための材料の最初の選択は、共役芳香環にπ共役結合が存在するかどうか、そして、前記分子の平面内にあって芳香族系の結合の一部となるアミン、フェノール、ケトンなどのような基が前記分子に存在するかどうかによって、決定する。前記分子自体またはそのフラグメントは、平板状構造を有する。例えば、そのような分子は、インダントロン(Vat Blue 4)、ジベンゾイミダゾール1,4,5,8-ペリレンテトラカルボン酸(Vat Red 14)、ジベンゾイミダゾール4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸、キナクリドン(Pigment Violet 19)などや、それらの誘導体またはそれらの混合物で安定なリオトロピック液晶相を形成するものなどの有機材料とすることができる。
【0026】
前記有機分子は、適当な溶媒に溶解されるとき、コロイド系(リオトロピック液晶(LLC))を形成し、そこにおいて、分子は、合わせられ、系の動力学的単位に相当する超分子複合体となる(特許出願RU200010447525.02.00)。この液晶相は、前記系の予め秩序づけられた状態であり、その状態から、超分子の配向およびその後の溶媒の除去の過程において、固体の電気光学異方性結晶薄膜(言い換えると異方性の電気光学結晶性フィルム)が生じる。
【0027】
超分子を含むコロイド系から電気光学異方性結晶薄膜を得る方法は、以下の工程を含む。
基材上(またはある製品もしくは多層構造にある層の一つの上)に上述したコロイド系を塗布する工程;前記コロイド系はチキソトロピックであるべきであり(Robert J. Hunter <<Foundations of Colloid Science v. 1, Clarendon Press. Oxford, 1995, p. 88)、そのため、前記コロイド系は、所定の温度にあるべきであり、また、所定の濃度の分散相を有するべきである;
前記系の粘度を低下させる任意の種類の外部からの作用(これは加熱、剪断変形などとすることができる)を介して、塗布されたまたは塗布しているコロイド系を高流動性の状態にする工程;前記外部作用は、次の配向工程全体の間続いてもよく、または、配向時の間に前記系がより高い粘度の状態に戻らないようにするため必要な時間続いてもよい;
前記系へ外部から配向作用を及ぼす工程;それは、機械的方法あるいは他の任意の方法、例えば、外部からの電界(例えば、通常の温度または高温で同時に照射を行うまたは行わないポーリング)、磁界、または光放射場(例えば、干渉性の光起電力効果によるもの)により、行われる。上記作用の程度は、前記コロイド系の動力学的単位が、必要な配向を獲得しかつ生じる電気光学異方性結晶薄膜の可能な結晶格子の基礎となる構造を形成するように、十分なものとなるべきである;
生じる層の配向された領域を、粘度が低下した状態(前記系への最初の外部作用を通じてもたらされる)から最初の系の状態またはよりいっそう高い粘度の系の状態に変換する工程;これは、生じる電気光学異方性結晶薄膜構造の配向の減少が起こらないよう、また、その表面に欠陥が形成されないよう、行われる;ならびに
溶媒を除去するため乾燥する工程;この工程の間、電気光学異方性結晶薄膜の結晶構造が形成される。
【0028】
得られる電気光学結晶薄膜において、分子の複数の平面は互いに平行であり、そして、分子は、前記結晶薄膜の少なくとも一部において三次元的結晶を形成している。製造工程を最適化することにより、単結晶性の電気光学異方性結晶薄膜を得ることができる。この結晶薄膜における光軸は、分子の平面に直交である。そのような結晶薄膜は、高度の異方性を有し、そして、少なくとも一つの方向について、高い屈折率および/または高い吸収係数を有する。
【0029】
電気光学異方性結晶薄膜の光学的異方性は、複素屈折率の虚数部と実数部の楕円体によって表され、それは、従って、吸収係数と屈折率(異方性の複素屈折率の虚数部と実数部)の角度依存性を特徴とする。本発明による光学異方性結晶薄膜の複素屈折率の虚数部(Ki)と実数部(ni)の成分について、以下の相互関係が同時に成立することが望ましい。
K1≧K2>K3
(n1+n2)/2>n3
ここで、K1、K2、K3およびn1、n2、n3は、前記結晶薄膜材料の異方性複素屈折率の虚数部と実数部の対応する楕円体の軸の主値である。
【0030】
異方性複素屈折率の虚数部と実数部の成分は、楕円体の軸の方向とともに、既存の楕円偏光法または分光光度法により、実験に基づいて決定することができる。
【0031】
主軸の配向と同様に、吸収係数(K1,K2,K3)および屈折率(n1,n2,n3)の必要な異方性をもたらすこと、すなわち、多層構造において電気光学異方性結晶薄膜の光学特性をもたらすことは、基材表面上の偏光フィルムにおいて分子の所定の角度分布を設定することにより、可能である。
【0032】
中間的な光学特性を有する結晶薄膜を得るため、複数のコロイド系を混合することも可能である(その場合、複合超分子が溶液中にできる)。コロイド系の混合物から得られる電気光学異方性結晶薄膜の吸収および屈折は、最初の成分によって決定される範囲内において種々の値をとり得る。複合超分子を得るため種々のコロイド系を混合することが可能なのは、種々の有機化合物の分子の寸法の一つ(分子間間隔)が一致していること(3.4±0.3Å)による。
【0033】
電気光学異方性結晶薄膜の厚みに対する制御は、塗布される溶液中の固体物質の含有量を通じて行われる。これらの電気光学異方性結晶薄膜の製造におけるプロセス変数は、前記溶液の濃度であり、それは、製造の間、適宜に制御される。
【0034】
前記結晶薄膜の結晶化度は、結晶学および/または光学の方法を通じて制御することができる。
【0035】
異方性結晶薄膜のそのような製造方法には、基材として可能な種々の材料、例えば、半導体、誘電体、結晶、多結晶、ガラス、ポリマー、および他の材料を使用できる。さらに、上記方法は、複雑な形状(平坦、円筒形、円錐形、球形など)のものを含む種々の表面に電気光学結晶薄膜を製造することが可能である。このことは、それらの結晶薄膜を、制御可能な光学干渉フィルターの最も困難な構成に用いることを可能にし、特に、光導波路の突合せ端および側面、そのような導波路の平坦な研磨された側面、さらには、光子−結晶性ファイバー導波路の外面および内面(すなわち、コアおよび/または反射クラッドにおける長手方向のエアチャネルの系を含む光ガイド)において前記結晶薄膜を用いることを可能にする。
【0036】
結晶薄膜で被覆される表面には、前記表面に均一な濡れ性を付与して前記表面を親水性にするため、さらなる処理を施すことができる。それは、機械加工、アニーリング、メカノケミカル処理とすることができる。基材の表面に結晶薄膜を付与する前に、基材表面の機械加工によって配向異方性構造を形成することができ、それは、結晶薄膜における分子の高度な秩序性を促進する。
【0037】
顕著により低い作動電圧を用いることは、異方性結晶薄膜が薄い(100〜800nmのオーダー)ということにより可能となり、これは、静電強度は、次の式:E=U/Dに従い、試料に印加される電圧(U)とその厚み(D)によって決定されるからである。
【0038】
偏光された光波および偏光されていない光波を濾光するためのアクティブな装置(そこにおいて偏光された光波は制御される)の作製は、前記材料が高度な複屈折性とともに電気的かつ光学的な異方性を特徴を有することで可能になる。使用される厚みが0.3μmの結晶薄膜は(no-ne)d=0.24の位相差最大値を有し、これは、従来の材料を用いる場合、200μmの厚みによって達成されるものである(Lazarev, P. and Paukshto, M., “Thin Crystal Film Retarders” (2000). Proc. of the 7th International Display Workshops, Materials and Components, Kobe, Japan, November 29-December 1, 1159-1160)。前記結晶薄膜の屈折率は、石英ガラスの屈折率と顕著に異なてもよく、そして、印加される外部電界の強さに依存する。それに加え、検討下の前記材料は、感光性であり、すなわち、その光学特性はレーザー照射の影響下で変化する。この材料は、その屈折率は光放射の強度に依存しており、その非線形的光学特性からも興味深いものである。
【0039】
本開示の制御可能な光学装置の温度変化に対する感受性が低いのは、使用する結晶性フィルムが従来の材料と比べて高い熱安定性を特徴として有しいるからであり、これは、最高180℃までの温度において、空気およびアルゴン中で4時間、処理することができ、その間、その偏光効率の低下は0.8%未満にすぎない。
【0040】
高い生産性が達成されるのは、前記結晶薄膜材料を任意の形状の表面に簡単に付与することができ、それを製造に適合させることが容易であり、そしてそれが経済的であるからである。
【0041】
結晶薄膜のパラメーターの制御が簡単と同様に、結晶薄膜は生産性が高いことから、電気光学異方性結晶薄膜の利用は、光ファイバー通信システム用の制御可能な光学干渉フィルターにおいて有望である。従って、結晶薄膜は、小さなサイズのそのような結晶薄膜を複雑な形状の表面(光ファイバーの側面および/または突合せ端面を含む)に付与することが、明らかに容易であることから、小型の光ファイバーフィルターの形成を可能にする。光ファイバーは非常に小さな寸法を有している。例えば、シングルモードファイバーのコアは5〜10μmの直径を有し、反射クラッドの直径は125μmである。
【0042】
光ファイバーは、それが作られる材料によって異なるものとなり得る。特に、石英ガラス、カルコゲニドおよびフッ化物ガラス類、タリウムハロゲン化物および他の無機もしくは有機の結晶性および非結晶性光学材料をベースとする光ファイバー、ならびに特にポリマーをベースとする光ファイバー、またはそれらの組合せをベースとする光ファイバーがある。
【0043】
三つの基本的な種類の光ファイバーがある。すなわち、ガラスコアとガラスクラッドを有するガラスファイバー、ガラスコアとプラスチッククラッドを有するファイバー、およびプラスチックコアとプラスチッククラッドを有するプラスチックファイバーである。
【0044】
ファイバーの光ガイドにおいて、コアおよび/または一つまたは複数のクラッドは、任意の材料、例えば、石英ガラス、フッ化物ガラス、カルコゲニドガラス、ハロゲン化物をベースとする多結晶性光ガイド、ポリマーをベースとすることができる。
【0045】
列挙したすべての材料は、数十〜数百ミクロンの特有のサイズを有する小サイズの電気光学異方性結晶薄膜で被覆することができる。なお、その表面が結晶薄膜で被覆できる材料のリストは、上述したものに限定されない。
【0046】
制御可能な光学干渉フィルターの製造に関連することとして、電気光学材料を複雑な形状の表面に作る必要があるということがある。
【0047】
結晶薄膜を製造する本開示の方法は、それを平坦な表面に設けることを可能にするだけでなく、二次元およびそれより高次元の複雑な表面(例えば、円筒、球、円錐など)に設けることを可能にする。従って、この方法は、光ファイバーのクラッドの円筒面、その劈開した突合せ端の平坦な表面、D形状のファイバー(が面の一部は前記ファイバーのコアに近接している平坦な研磨された表面を有する曲がった光ガイド、またはコアは前記平坦な表面に近接し、「D」の文字の形状の断面で引き出された前記光ガイド)のクラッドの平坦な研磨された表面の上に、結晶薄膜を形成することを可能にする。
【0048】
この方法によれば、そのコア内に少なくとも一つの長い距離にわたる回折格子が存在する光ファイバーのクラッド表面に結晶薄膜を形成することが可能である。回折格子は、任意の方法(例えば、光ファイバーへの照射またはドーピングによる)により製造することができ、そして、それは、例えばクラッド上に形成される光学干渉フィルターとの光信号のより強い相互作用を促進する。
【0049】
異方性結晶薄膜を制御可能な光学干渉フィルターに適用する根拠となっていることは、この材料の異方性の屈折率および吸収係数が印加電界の強さに依存すること、前記膜の厚みが印加電界に依存すること(電気ひずみ)、およびその屈折率が光放射の電界に依存することである。前記膜は、ファイバー状または平板状の光導波路の外被覆(外部コーティング)となり、それは、導波路のモードの部分と相互作用し、前記モードの部分は光導波路の導波層から電気光学膜のコーティングに入り込んでいく。
【0050】
図1は、青色染料をベースとして調製された結晶薄膜における典型的なX線回折を示す。そのような結晶性フィルムのX線像における最も大きなピークの座標(3.36Å)は、リオトロピック液晶材料についてのものと同じである。棒状の集合体(積層体)が前記染料の平たい環状分子によって形成されているリオトロピック液晶材料の構造を考慮すると、芳香族分子のそのようなπ−π共役は、結晶薄膜の形成中において保持されていると考えられる。前記結晶薄膜は図2に示すような層状の結晶構造を有する多結晶材料であり、層間間隔は分子の「厚み」(3.36Å)にほぼ等しいことが分かった。染料の分子は、いずれの次の層も前の層に対して所定の配向を有するよう、層の内部において分布している。さらに、機械的衝撃によってこの結晶ブロックのミクロ構造が乱されることがわかった。前記結晶薄膜はある一定の支配的な結晶方位を有し、結晶子の最大発散は10°〜25°の範囲内である。組織および光学データの解析によって決定される秩序パラメーターは、約0.9である。
【0051】
一態様において、光学干渉フィルターは、二価および三価の金属のイオンで処理した異方性電気光学材料の少なくとも一つの層を有する。もう一つの態様において、少なくとも一つの芳香族有機材料の分子は複素環を含む。光学干渉フィルターは、少なくとも一つの二色性染料をベースとするリオトロピック液晶からなる異方性電気光学材料の少なくとも一つの層を含むことができる。
【0052】
図3が示す光学干渉フィルターは、基材1を有し、それは、導電性透明材料の層2で被覆され、前記層は、干渉フィルターのさらなる層で被覆される。そして干渉フィルターのさらなる層は多層光学構造に相当し、交互に配置された低屈折率nLの層3と高屈折率nHの層4を有する。前記多層構造の上には、透明導電材料の第二の層2がある。前記交互に配置された層の厚みは、L=m*λ/(4*n)(ここでmは奇数の整数を表し、λは前記フィルターの動作波長を表し、かつnは対応する屈折率(nLまたはnH)を表す)の条件で選ばれている。文献(Max Born, Emil Wolf, <<Principles of Optics>>, sedond edition, Pergamon Press, 1964参照)に示されるとおり、そのような多層構造の反射係数は、低屈折率層と高屈折率層の対の数および比nH/nLが増加するにつれ、増加する。図3に示すフィルターは以下のように作動する。制御電圧Vが導電層2に印加されると、その結果、多層光学構造に電界が設定される。印加電界は、前記構造において交互に配置される層の屈折率を変化させる効果を有する。この変化の結果、前記光学フィルターは最大の反射係数を有することを特徴とすることから、前記フィルターの動作波長が変わる。基材は、光学的に透明な材料からなってもよいし、光学的に不透明な材料からなってもよい。基材は、金属、半導体、誘電体、特に、ガラス、石英、プラスチックとすることができる。透明導電性電極は、二酸化スズ(SnO2)または酸化インジウム(In2O3)により形成できる。300オーム/cm2以下の抵抗を有するSnO2の層は、400〜500℃のマッフル炉においてSnCl4を熱分解するかまたはSnCl2を水和することにより得られる。この方法は、基材上に電極を形成するため用いることができる(異方性結晶薄膜の付着に先立って)。この方法は、最も重要な基準である、光透過度および電気抵抗に応じて種々の厚みの層を得るために用いてもよい。混和剤としてのエタノールに十分に希釈したBF-2またはBF-4のような接着剤を用いて、細い電線をSnO2層に半田付けすることができる。酸化インジウムの層は、10-5Torrの真空中、インジウムの陰極蒸着により得られる。この方法はより生産性が高く、そして、コーティング特性(機械的強度、光透過率、電気抵抗)はSnO2とほぼ同じである。導電性透明コーティングが有機ガラスまたは半導体上に付与される場合、Cu2Sの層を用いてもよい。最終的に、電極を電源につなぐと、定電圧および/または交流電圧のいずれかが供給される。
【0053】
図4が示す光学干渉フィルターは、導電性不透明材料の層5で被覆されている、基材1を有し、前記層の上には、交互に配置された低屈折率nLの層3と高屈折率nHの層4とを有する、多層光学構造に相当する干渉フィルターのさらなる層が設けられている。前記多層構造の上端には、導電性不透明材料の第二の層5がある。交互に配置された層の厚みは、図3に関して上述したと同じ条件で選ばれている。導電性不透明材料の層5は、金属、例えばアルミニウムの真空蒸着により、多層光学構造の表面上に堆積させることができる。他の金属、例えば、金およびチタンなどを、導電性不透明層を形成するのに用いることができる。導電性不透明層は、光信号の前記構造への透過を可能にする開口を特徴として有することが望ましい。そのような開口は、例えば、真空蒸着または他の方法において、マスクを用いることにより形成することができる。前記フィルターの動作原理は、図3に示す場合と同様である。
【0054】
図5に示す光学干渉フィルターは、導電層が多層光学構造の側面に形成されている点で、図3および図4に示すものと異なっている。
【0055】
図6に示す光学干渉フィルターは、交互に配置された低屈折率nLの層3と高屈折率nHの層4からなる第一の多層光学構造によって覆われている、基材1を有する。前記第一の多層光学構造の上には、導電性で光学的に透明な材料の層2があり、その上端には、低屈折率材料の層7がある。後者は、導電性透明材料の第二の層2および交互に配置された低屈折率材料の層と高屈折率材料の層からなる第二の多層光学構造で覆われている。交互に配置された層の厚みは、図3〜5に示す例で満たされたと同様の相関関係を満足している。層7の厚みは、L=m*λ/(2*n)(ここでmは偶数の整数を表し、λは前記フィルターの動作波長を表し、かつnは層7の屈折率を表す)の条件で選ばれている。そのようなフィルターにおける層の厚みは、前記フィルターの動作波長に対して最大の透過係数をもたらすための条件にて選ばれる。従って、そのようなフィルターは、帯域透過フィルターに相当する。印加される制御電圧は、層7に電界をもたらし、それは結果的に層の屈折率を変化させる。屈折率のこの変化の結果、前記フィルターの透過帯域は移動する。層7の厚みに合う半波長の数が大きいほど、交互配置層における比nH/nLが大きいほど、そして多層構造における交互配置層の対の数が大きいほど、帯域透過フィルターのカットオフがよりシャープになる。
【0056】
図7に示す光学干渉フィルターは、導電性材料の一つの層が中間層7の表面ではなく基材の表面に形成されている点で、図6に示すものと異なっている。一般的に、導電性材料の層は任意に配置することができる。本質的に必要なことは、それらの間に生成される電界が、前記フィルターにおいて電気光学材料の層にいきわたり、それらの屈折率を変化させ、そして、前記フィルターの光学特性を制御するということである。
【0057】
図8に示す光学干渉フィルターは、コア8およびクラッド9を有する光ファイバーを有し、そこに、光学干渉フィルターの複数の層が存在し、それらの層は、交互に配置される低屈折率層3と高屈折率層4の多層光学構造となっている。前記多層光学構造の両側には導電性材料の層2がある。制御電圧をこれら二つの導電層に印加する。交互に配置される層の厚みは、次の関係L=m*λ/(4*n)(ここでmは奇数の整数を表し、λは前記フィルターの動作波長を表し、かつnは対応する屈折率(nLまたはnH)を表す)を満たす。そのようなフィルターは、動作波長に対して最大の反射係数を有することを特徴とする。印加電圧は、交互に配置される層内に電界をもたらし、その結果、交互に配置される個々の層の屈折率が変化し、それにより、最大反射係数を特徴とするフィルターの動作波長も変化する。
【0058】
図9に示す光学干渉フィルターは、コア8およびクラッド9を有する光ファイバーを有し、その内部に干渉フィルターの複数の層が存在し、前記複数の層は、交互に配置される低屈折率層3と高屈折率層4の多層光学構造となっている。図8に示すものとは、交互に配置される層が傾斜していることで相違する(すなわち、これらの層に対する法線の方向が、光ファイバーの軸に対して0〜90°の鋭角を形成している)。この場合、反射された波は、光ファイバーの外に誘導される。そのようなフィルターは、レーザーまたは光増幅器の出力窓において使用できる。反射された波が光信号源に戻らないので、そのようなフィルターは、自発的励起に対して光学系の安定性を高める。
【0059】
図10に示す制御可能な光学干渉フィルターは、コア8およびクラッド9を有する光ファイバーを有し、その内部に、交互に配置される低屈折率の層3と高屈折率の層4からなる第一の多層光学構造が存在する。第一の多層構造の後ろに、導電性で光学的に透明な材料の層2があり、その後ろに低屈折率材料の層7がある。さらに、導電性透明材料の第二の層2および交互に配置された低屈折率材料の層と高屈折率材料の層からなる第二の多層光学構造が設けられている。交互に配置される層厚みは、図8〜9に示す例と同様の関係を満足している。層7の厚みは、L=m*λ/(2*n)(ここでmは偶数の整数を表し、λは前記フィルターの動作波長を表し、かつnは層7の屈折率を表す)の条件で選ばれている。そのようなフィルターにおける層の厚みは、前記フィルターの動作波長に対して最大の透過係数をもたらすための条件にて選ばれる。導電層2に印加される制御電圧は、層7の材料の屈折率を変化させ、それは、前記フィルターの透過帯域の変動をもたらす。第二の多層光学構造における層の順序は、第一のものと反対になっている。従って、図10に示すフィルターは、次の層の順序:H-L-H-L-H-E-2L-E-H-L-H-L-H(ここでHは高屈折率の層を表し、Lは低屈折率の層を表し、かつEは導電層を表す)を有する。
【0060】
図11に示す光学干渉フィルターは、導電性材料の層2の位置が図10に示すものと異なっている。一般的に、導電性材料の層は任意に配置することができる。本質的に必要なことは、それらの間に生成される電界が、前記フィルターにおいて電気光学材料の層にいきわたり、それらの屈折率を変化させ、そして、前記フィルターの光学特性を制御するということである。
【0061】
図13、14および15に示す制御可能な光学干渉フィルターは、次の層の順序において、図10、11および12に示すフィルターと異なっている:L-H-L-H-L-E-2H-E-L-H-L-H-L(図13)、E-L-H-L-H-L-2H-E-L-H-L-H-L(図14)およびE-L-H-L-H-L-2H-E-L-H-L-H-L(図15)(ここでHは高屈折率の層を表し、Lは低屈折率の層を表し、Eは導電層を表す)。
【0062】
図16に示す制御可能な光学干渉フィルターは、コア8およびクラッド9を有する光ファイバーを有し、その突合せ端に複数の層が存在し、それらの層は、交互に配置される低屈折率層3と高屈折率層4の多層光学構造となっている。前記多層光学構造の両側には導電性材料の層2がある。制御電圧がこれら二つの導電層に印加される。交互に配置される層の厚みは、次の関係L=m*λ/(4*n)(ここでmは奇数の整数を表し、λは前記フィルターの動作波長を表し、かつnは対応する屈折率(nLまたはnH)を表す)を満たす。そのようなフィルターは、動作波長に対して最大の反射係数を有することを特徴とする。印加電圧は、交互に配置される層に電界をもたらし、それは、これらの層に使用される電気光学材料の屈折率を変化させ、従って、最大反射係数を特徴とするフィルターの動作波長の変化をもたらす。
【0063】
図17に示す制御可能な光学干渉フィルターは、コア8およびクラッド9を有する光ファイバーを有し、その傾斜した突合せ端に干渉フィルターの複数の層が存在する。前記複数の層は、交互に配置される低屈折率層3と高屈折率層4の多層光学構造となっている。この場合、反射された波は、光ファイバーから出される。多層光学構造の両側に導電性材料の層2がある。制御電圧がこれら二つの導電層に印加される。そのようなフィルターは、レーザーまたは光増幅器の出力窓において使用できる。反射された波が光信号源に戻らないので、そのようなフィルターは、自発的励起に対して光学系の安定性を高める。
【0064】
図18は制御可能な光学干渉フィルターの断面図を示す。前記フィルターは、コア8およびクラッド9を有する光ファイバーを有し、そのクラッド上に、導電性透明材料の第一の円筒状層11があり、それは、交互に配置される低屈折率層13と高屈折率層14からなる第一の多層光学構造によって被覆されている。第一の多層構造は、低屈折率材料からなる円筒状中間層12によって被覆されている。交互に配置される低屈折率層と高屈折率層からなる第二の多層光学構造が、中間層12上に形成されている。そして第二の多層構造は第二の導電層11で被覆されている。交互に配置される円筒状層の厚みは、次の関係L=m1*λ/(4*n)(ここでm1は奇数の整数を表し、λは前記フィルターの動作波長を表し、かつnは対応する屈折率(nLまたはnH)を表す)を満たす。層12の厚みは、L=m2*λ/(2*n)(ここでm2は偶数の整数を表し、λは前記フィルターの動作波長を表し、かつnは層12の屈折率を表す)の条件で選ばれている。そのようなフィルターにおける層の厚みは、前記フィルターの動作波長に対して最大の透過係数をもたらすように選ばれる。導電層11に印加される制御電圧は、層12の屈折率を変化させ、それは、前記フィルターの透過帯域の変動をもたらす。第二の多層光学構造における層の順序は、第一のものと反対になっている。従って、図18に示すフィルターは、次の層の順序:E-H-L-H-2L-H-L-H-E(ここでHは高屈折率の層を表し、Lは低屈折率の層を表し、かつEは導電層を表す)を有する。導電層に印加される動作電圧は、前記フィルターの透過波長をシフトさせる。
【0065】
図19に示す制御可能な光学干渉フィルターは、コア8およびクラッド9を有するD形状の光ファイバーを有し、そのクラッドの平坦な研磨された表面上に、導電性透明材料の第一の層2があり、その上端に、交互に配置される低屈折率層3と高屈折率層4からなる第一の多層光学構造がある。第一の多層構造の後に、低屈折率を有する材料の中間層7がある。さらに、交互に配置される低屈折率層と高屈折率層からなる第二の多層光学構造と、導電性透明材料の第二の層2とが存在する。交互に配置される円筒状層の厚みは、次の関係L=m1*λ/(4*n)(ここでm1は奇数の整数を表し、λは前記フィルターの動作波長を表し、かつnは対応する屈折率(nLまたはnH)を表す)を満たす。層7の厚みは、L=m2*λ/(2*n)(ここでm2は偶数の整数を表し、λは前記フィルターの動作波長を表し、かつnは層7の屈折率を表す)の条件で選ばれている。そのようなフィルターにおける層の厚みは、前記フィルターの動作波長に対して最大の透過係数をもたらすような条件で選ばれる。導電層2に印加される制御電圧は、層7の屈折率を変化させ、それは、前記フィルターの透過帯域の変動をもたらす。第二の多層光学構造における層の順序は、第一のものと反対になっている。従って、図19に示すフィルターは、次の層の順序:E-H-L-H-2L-H-L-H-E(ここでHは高屈折率の層を表し、Lは低屈折率の層を表し、かつEは導電層を表す)を有する。導電層に印加される動作電圧は、前記フィルターの透過波長をシフトさせる。導電層に印加される動作電圧は、前記フィルターの透過帯域をシフトさせる。
【0066】
一態様において、本発明の光学干渉フィルターは、少なくとも一つの偏光子層、および/または、少なくとも一つの位相差層、および/または、少なくとも一つの配向層、および/または、少なくとも一つの保護層、および/または、少なくとも一つの鏡面反射層もしくは拡散反射層、および/または、上記層の少なくとも二つの任意の組み合わせの機能を同時に発揮する少なくとも一つの層を有する。もう一つの態様において、光学干渉フィルターは、DCおよび/またはACの電圧がかかる少なくとも一対の電極を含む。光学干渉フィルターの可能な態様において、少なくとも一つの電極の少なくとも一部は、光線の透過を可能にするため、少なくとも一つの透明窓を有する、不透明な光学材料からなる。
【0067】
図20に示す制御可能な光学装置は、コア8、クラッド9および制御可能な干渉フィルターを有する光ファイバーを有する。光ファイバーとフィルターとの間にはマイクロレンズ15がある。マイクロレンズ15は、例えば、放物線状分布の屈折率を有し、干渉フィルターとのより良い相互作用に有効な、光線を平行光線に広げるよう機能する。レンズ15の中心は、ファイバーの光軸と正確に一致するよう配置される。通常、ファイバーに対してレンズを動かすことにより、ファイバーおよびレンズを介する光信号の最大透過率をもたらす位置を決めることができ、次いで、ファイバーに対してそのような位置のレンズを、エポキシ接着剤を用いて取り付けることができる。レンズをファイバーに固定するため、メカニカルクランプを用いることもできる。この光学装置における制御可能な干渉フィルターは、帯域透過性でもよいし、帯域反射性でもよい。そのほか、多層光学構造は、長波長または短波長のみの光信号を透過するよう最適化してもよい。この場合、制御電圧は、前記フィルターの動作波長を制御する。
【0068】
図21に示す光ファイバー装置は、コア8およびクラッド9を有する長さLの光ファイバーの部分と、前記光ファイバー部の対向する突合せ端に形成された二つの制御可能な干渉フィルターとを有する。これらのフィルターは、広い波長範囲の光放射に対して完全に近い反射板として機能するよう設計することができる。そのような光学装置は、シングルモードのファイバーを用いる場合、ファブリ−ペロ干渉計として機能し得る。そのような干渉計のコアの光路長は、種々の方法(光ファイバーを曲げること、前記ファイバーを加熱すること、前記ファイバーに音波を作用させること、あるいは前記ファイバーを磁界または電界中に置くこと)により、変えることができる。従って、前記フィルターを通じて伝播する干渉性の光信号を変調(調節)することができる。そのほか、マルチモードファイバーを用いる場合、二以上の波(波長λ1,λ2,・・・λI)の光信号を、そのようなフィルターにより空間的に分割することができ、それは、上述した光信号の光路の違いにより、ファブリ−ペロ干渉計を用いて行うと同様に行うことができる。類似の構成を、狭い帯域幅の反射フィルターに用いることができる。
【0069】
図22に示すように、光源16は、干渉性または非干渉性な光信号を生成させることができる。この光信号は、複数の光ファイバーの系に入射する。各ファイバーの突合せ端に、制御可能な干渉フィルターが設けられる。各フィルターは、その個々の波長に調整され、それは、前記フィルターに印加される電界により変えることができる。そのような装置は、多波長源から、異なる個々の色の光信号を取り出すことを可能にする。
【0070】
図23は、光ファイバーに基づく制御可能な光学干渉フィルターを示す。そのコア8には、100〜600μmの間隔で回折格子17が設けられている。そのような回折格子は、ファイバーのコアの中心に集中し、それは、ファイバーのコアによって誘導される基本モードまたは他の任意のモードで伝播している光放射の場を、ファイバーのクラッドにおいて伝播するクラッドモードの一つに変換する。また、前記回折格子は、反対に、クラッドモードの放射を、光ガイドのコアにおいて誘導される基本モードまたは他の任意のモードに変換するよう機能してもよい。この回折格子は、位相同期により、コアモードとクラッドモードとの間での効果的なコミュニケーションをもたらす。従って、そのような回折格子は、光ファイバーのクラッドの表面に形成された干渉フィルターとの光の相互作用を増強する。結晶薄膜が高い光学異方性を特徴とするため、この装置は、異なる偏光状態を有する光のモードを選択することができる。そのほか、結晶薄膜は、吸収係数の電界強度に対する依存性を特徴とするため、そのような装置は、吸収を調節することにより、所定の波長を有する光の変調を可能にする。
【0071】
図24に示す光学干渉フィルターには、二つの回折格子17が光ファイバーのコア8内に形成されており、そして、電極2とともに、交互に配置される層3および4のアクティブな多層系が、クラッド9の外側の電極の間に形成されている。ここで、第一の回折格子は、所定の光のモードを取り出し、それをクラッドに移す一方、第二の回折格子は、それを逆にコアに移す。前記フィルターのアクティブな多層系は、前記コアを通じて伝播する光に作用する。前述した例と同様に、この装置は、吸収を調節することにより、選択波長の光を変調することを可能にする。というのも、その結晶薄膜が、吸収係数の電界強度への依存性を特徴とするからであり、または、その透過係数を調節することにより前記フィルターの反射係数を調節して選択波長の光を変調することを可能にする。結晶薄膜が異方性であるため、この場合、その偏光状態に依存する光の変調も可能である。
【0072】
図25は、制御可能な電気光学装置を示し、それは、図23と図24に示す装置の組合せに相当する。
【0073】
次の表1は、1550nmの波長に対して設計された反射型光学干渉フィルターの層の特性をまとめている。法線に沿って(軸0Zに沿って)光のビームが層1に入射するとみなす。異方性電気光学材料の層(異方性結晶薄膜(TCF)に相当する)の主光軸は、0X-軸に沿って配置され(屈折率n=2.0)、また0Y-軸に沿って配置される(屈折率n=1.6)。前記フィルターの光学材料の層は、平坦でありかつ0Z-軸に直交に配置されているとみなす。ITOの層は電極に相当し、前記フィルターの光学特性を制御するため使用される。
【0074】
【表1】
【0075】
図26は、直線偏光の垂直入射における、基材に対する補正のない、多層系の反射係数のスペクトル特性を示す。図26に示す曲線は、x軸に対する偏光ベクトルの種々の角度方向φに対応する:1)φ=0°、2)φ=30°、3)φ=60°、4)φ=90°。
【0076】
図26によれば、y軸に沿って偏光される光(曲線4)は、多層系によって完全に反射される。x軸に沿って偏光される光に対する反射係数(曲線1)は、波長に依存し、波長λ=1533nmでその最小値(3×10-5に相当)に達する。従って、この波長に対する透過係数は1に近い。これらのデータは、前記多層系が偏光子として機能することを明らかにしている。
【0077】
図27に示すように、基材は、反射された光のスペクトルに影響し、その最大の偏光度を減少させる。図27は、4mmの厚みを有する基材の存在下、直線偏光に対する反射係数の波長依存性を示している。図27に示す曲線は、x軸に対する偏光ベクトルの異なる角度方向に対応する:1)φ=0°、2)φ=30°、3)φ=60°、4)φ=90°。計算に用いたスペクトル成分の逆干渉性長は、-Δλ/λ2=0.002μm-1である。
【0078】
図28は、4mmの厚みを有する基材の存在下、偏光されていない光を用いる場合の波長に依存する透過係数および反射係数を示す。明らかに、透過光は、スペクトル領域全体においてx軸に沿って直線偏光され、0.94を超える偏光度を有する。波長λ=1533nmに対して、透過係数は0.45を超えており、これは驚くべきことである。最悪の場合でも(例えば、λ=1580〜1600nmにおいて)、透過係数は0.3を超えており、偏光度は約0.94である。反射光はy軸に沿って直線偏光される(偏光度は、λ=1533nmに対して0.87に達し、λ=1600nmに対して最小値の0.4に減少する)。
【0079】
本発明の技術的範囲をいかなる意味においても限定することなく、現象の物理的メカニズムを説明するため、多層系のある簡素化した構成を示す。次の21層を有する多層系を検討する(1)<PI>(2)<TCF>(3)<PI>(4)<TCF>・・・(19)<PI>(20)<TCF>(21)<PI>。各層の厚みは約0.2μmであり、従って多層系の全厚みは約4.2μmである。<PI>は、1.6の屈折率を有するポリイミドの光学異方性層を意味し、屈折率がより低い値のTCFに該当する。効果を高くするため、TCFの屈折率のより高い値を2.4とする。x軸に沿って0.4μmの間隔で屈折率の空間的変調がある一方、y軸に沿って媒体は均質である。x-偏光に対するこの系の透過信号および反射信号のスペクトルを図29に示す。1400〜1900nmの波長範囲内において100%反射の帯域が存在する。この効果は、コレステリック液晶で見られるものに似ており、それは、その螺旋のピッチによって決まる選択的反射係数の範囲を特徴とする。相違点は、コレステリックの場合、反射光は円偏光であるが、本発明の場合、反射光は直線偏光であるということである。
【0080】
コレステリックを用いる場合と同様に、選択的反射係数の範囲の幅について、以下が成立する。
【数1】
(ここで、Δn=n,TCF-nx,pI=2.4-1.6=0.8、λmは選択的反射係数の範囲の波長を意味する。)
【0081】
y軸に沿って媒体が均質であるため、y-偏光はこの系によって完全に透過される一方、波長が選択的反射係数の範囲内にあるとき、x-偏光は干渉フィルターによって反射される。層の数を増やすことにより、選択的反射係数の範囲内で反射係数のスペクトル依存性はフラットになり、そして、反射係数自体の値は単一値に非常に近くなる。
【0082】
表2も、λ=1550nmに対して設計された帯域透過性の光学フィルターの層の特性を示す。上記の場合と同様に、法線に沿って(軸0Zに沿って)光のビームが層1に入射すると想定される。異方性結晶薄膜の主光軸は、0X-軸(n=2.0)および0Y-軸(n=1.6)の方向であり、残りの層は異方性である。ITOの層は電極に相当し、それを介して、前記フィルターの光学特性を制御する。前記フィルターの光学材料の層は、平坦でありかつ0Z-軸に垂直に配置されているとみなす。1500〜1600nmの波長範囲についておよび入射光の偏光状態の四つの場合について計算した波長に対する、この光学構造の反射係数の依存性を、図30および図31に示す。フィールドベクトルがX0Y面にあるため、図30〜31は、以下の場合の偏光を示している。φ=0°,30°,60°および90°(ここでφは、光波の電場ベクトルと0X軸との間の角度を表す)。
【0083】
【表2】
【0084】
表2に示すフィルターは、図30に示すように、x軸に沿って偏光される光について波長の選択的範囲が特異的であることを特徴とする。図30の曲線(1〜4)は、x軸に対する偏光の異なる角度方向φに対応する:1)φ=0°、2)φ=30°、3)φ=60°、4)φ=90°。曲線5は偏光されていない光に対応する。反射係数の最低値は、波長1550nmに対して約3%に相当する。直交偏光に対して、反射係数は約95%である。従って、前記フィルターは、1550nmに相当する波長に対して良好な偏光子として機能する。波長1555nmに対する偏光度は0.93に相当する。
【0085】
異方性結晶薄膜(TCF)の屈折率は電界の強度に感受性であるため、表2に示すフィルターの動作範囲は制御することができる。図31は、前記異方性結晶薄膜の屈折率のx成分が2(曲線1)から1.95(曲線2)に変化するときのスペクトルの変化を明らかにしている。この光学干渉フィルターのスペクトル特性が電界によって制御されることがわかる。
【実施例】
【0086】
スルホン化インダントロンのリオトロピック液晶(LLC)からの電気光学異方性結晶薄膜の製造
【0087】
光学干渉フィルターの電極および異方性材料の層の製造を、標準的な製造技術を用いて行った。従って、基材、電極および異方性層の製造についての記載は省略する。本発明において主に重要な部分は、異方性結晶薄膜の製造方法であった。
【0088】
異方性結晶薄膜を製造する方法は、室温において六方晶相を形成した、スルホン化インダントロンの9.5%水溶液を用いた。溶液中、この有機染料の分子は集まって異方性の超分子複合体となった。これらの複合体は、フィルムの結晶構造のための基礎として働いた。精製の後の原料インクを、直接的な注ぎこみとスミアリングを用いて、Siガラス基材上に塗布した。次いで、そのコロイド系の粘度を、所定の種類の外部作用により減少させた(これは、後の配向を行うのに必要であった)。このとき、溶液は、ネマチック相またはネマチック相と六方晶相の混合物を形成した。前記系の粘度は、1780mPa/秒から250mPa/秒に減少した。前記系の粘度を減少させる条件下においてのみ、良好な品質の異方性結晶薄膜を得ることができる。
【0089】
次の操作は、LLCのコロイド系の動力学的単位を配向させるプロセスであった。種々の配向用具をこの操作を行うのに用いることができた。この実施例では、9.5mmの直径を有しワイヤが巻かれた配向用の円筒状マイヤーロッド4を用いた。このロッドの直径が湿潤層の厚みを決めた。配向作用を及ぼす間、ロッドは13mm/秒で移動した。ロッドの移動による剪断応力は、前記系の粘度のさらなる減少をもたらした。
【0090】
次の操作は乾燥プロセスであった。このプロセスで必要なことは、これまでにできた配向構造が損傷するのを防ぐため、溶媒の除去速度を遅くすることである。この実施例では、乾燥を室温において60%の湿度で行った。
【0091】
上記製造技術から得られた異方性結晶薄膜は、0.3〜0.4μmの厚みを有し、光学特性および電気特性について高度の異方性を有し、フィルムの領域にわたって、そして、バッチ間で、パラメーターの良好な再現性を特徴とする。得られたフィルムの結晶構造の完全性は、光学的x線回折法により評価した。
【0092】
本発明の特定の態様について以上に示してきたものは、例示と説明を目的とするものであり、本発明を完全に網羅するものでもなく、また、本発明を開示したそのものずばりの形態に限定しようとするものでもない。上述した開示に照らして多くの変更・修飾、具体例および変形例が可能であることは明らかである。本発明の技術的範囲は、添付した請求の範囲およびその均等の範囲によって規定すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】青色染料をベースとして製造された結晶薄膜の典型的なX線回折を示す図である。
【図2】結晶薄膜の層状結晶構造を示す模式図である。
【図3】導電性透明材料の層を有する光学干渉フィルターを示す模式図である。
【図4】導電性不透明材料の二つの層を有する光学干渉フィルターを示す模式図である。
【図5】多層光学構造の側面に形成された導電層を有する光学干渉フィルターを示す模式図である。
【図6】二つの交互に配置される多層光学構造と、中間層の表面に形成された導電材料の層とを有する光学干渉フィルターを示す模式図である。
【図7】二つの交互に配置される多層光学構造と、基材上に形成された導電材料の層とを有する光学干渉フィルターを示す模式図である。
【図8】コアとクラッドとを有し、その内側に、二つの導電層と多層光学構造の交互に配置される層とを有する光学干渉フィルターの層が存在する、光学干渉フィルターを示す模式図である。
【図9】斜めの交互に配置される層を有する光学干渉フィルターを示す模式図である。
【図10】コアとクラッドとを有し、その内側には、高屈折率と低屈折率の交互に配置される層からなる二つの多層光学構造と、二つの導電層とが存在する制御可能な光学干渉フィルターの種々のデザインを示す模式図の一つである。
【図11】コアとクラッドとを有し、その内側には、高屈折率と低屈折率の交互に配置される層からなる二つの多層光学構造と、二つの導電層とが存在する制御可能な光学干渉フィルターの種々のデザインを示す模式図の一つである。
【図12】コアとクラッドとを有し、その内側には、高屈折率と低屈折率の交互に配置される層からなる二つの多層光学構造と、二つの導電層とが存在する制御可能な光学干渉フィルターの種々のデザインを示す模式図の一つである。
【図13】コアとクラッドとを有し、その内側には、高屈折率と低屈折率の交互に配置される層からなる二つの多層光学構造と、二つの導電層とが存在する制御可能な光学干渉フィルターの種々のデザインを示す模式図の一つである。
【図14】コアとクラッドとを有し、その内側には、高屈折率と低屈折率の交互に配置される層からなる二つの多層光学構造と、二つの導電層とが存在する制御可能な光学干渉フィルターの種々のデザインを示す模式図の一つである。
【図15】コアとクラッドとを有し、その内側には、高屈折率と低屈折率の交互に配置される層からなる二つの多層光学構造と、二つの導電層とが存在する制御可能な光学干渉フィルターの種々のデザインを示す模式図の一つである。
【図16】コアとクラッドとを有し、その内側に、二つの導電層と多層光学構造の交互に配置される層とを有する光学干渉フィルターの層が存在する、光学干渉フィルターを示す模式図である。
【図17】光ファイバーの斜めの突合せ端を有する光学干渉フィルターを示す模式図である。
【図18】クラッド上に、多層光学構造の二つ円筒状層と、透明導電材料の二つの円筒状層とが存在し、そこにおいて、低屈折率の中間層が二つの多層構造の間にあり、前記多層構造の低−高屈折率の層は、所定の順序を有する、光学干渉フィルターの断面図である。
【図19】D形状の光ファイバーを有し、そこにおいて、クラッドの平坦面上に、多層光学構造の二つの層と、透明導電材料の二つの円柱状層とが存在し、低屈折率の中間層が二つの多層構造の間にあり、多層構造の低−高屈折率の層は、所定の順序を有する、光学干渉フィルターの断面図である。
【図20】コアおよびクラッドを有する光ファイバーと、制御可能な干渉フィルターとを有し、前記光ファイバーと前記フィルターとの間にマイクロレンズが存在する、光学装置を示す模式図である。
【図21】コアおよびクラッドを有する光ファイバーの部分と、前記光ファイバーの部分の対向する突合せ端上に形成された二つの制御可能な干渉フィルターとを有する、光ファイバー装置を示す模式図である。
【図22】干渉性または非干渉性の光を生成させることができ、かつ、制御可能な干渉フィルターが各ファイバーの突合せ端上に配置されている、多波長の光源から種々の色の信号を取り出すことを可能にする装置を示す模式図である。
【図23】ファイバーのコアに回折格子を有する光学フィルターを示す模式図である。
【図24】光ファイバーのコアにある二つの回折格子と、交互に配置される層のアクティブな多層系と、クラッドの外面上にある電極とを有する光学フィルターを示す模式図である。
【図25】図23および24に示す装置を組み合わせたものに相当する制御可能な電気光学装置を示す模式図である。
【図26】本発明の一態様による多層系の反射係数のスペクトル特性を示す図である。
【図27】本発明の一態様による多層系の反射係数のスペクトル特性を示す図である。
【図28】本発明の態様による多層系の透過係数および反射係数を示す図である。
【図29】本発明の態様による多層系の透過係数および反射係数を示す図である。
【図30】本発明の態様による多層系のスペクトル特性を示す図である。
【図31】本発明の態様による多層系のスペクトル特性を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの電界の強さに依存する、実数の屈折率および/または虚数の屈折率をそれぞれ有する複数の層を有する光学干渉フィルターであって、
各層の屈折率および厚みならびにそれらの組合せは、入射光の少なくとも一つの偏光状態に対するスペクトルの少なくとも一つの領域において干渉の極値がもたらされるように選ばれており、かつ
少なくとも一つの層が電気光学材料からなり、当該電気光学材料は異方性でありかつ少なくとも一つの芳香族有機材料か作られたものであり、前記芳香族有機材料の分子またはその分子のフラグメントは平板状構造を有し、かつ、前記少なくとも一つの層の少なくとも一部は、光軸の一つに沿った分子間間隔が3.4±0.2Åである結晶構造を有する、光学干渉フィルター。
【請求項2】
前記異方性電気光学材料の少なくとも一つの層は、二価および三価の金属のイオンで処理されている、請求項1に記載の光学干渉フィルター。
【請求項3】
前記少なくとも一つの芳香族有機材料の分子は複素環を含む、請求項1または2に記載の光学干渉フィルター。
【請求項4】
前記異方性電気光学材料の少なくとも一つの層は、少なくとも一つの二色性染料をベースとするリオトロピック液晶からなる、請求項1〜3のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項5】
前記異方性電気光学材料の少なくとも一つの層は、以下の関係:
K1≧K2>K3および(n1+n2)/2>n3
を満たす複素屈折率の虚数部(K1,K2,K3)および実数部(n1,n2,n3)を特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項6】
前記干渉フィルターの前記層は平坦である、請求項1〜5のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項7】
前記干渉フィルターの前記層は二次形状を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項8】
少なくとも一つの拡散反射基材もしくは鏡面反射基材、または光学的に透明な材料からなる基材をさらに有する、請求項1〜7のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項9】
前記基材が、結晶性またはアモルファスである、ガラスおよび/または石英、および/または高分子半導体からなる、請求項8に記載の光学干渉フィルター。
【請求項10】
少なくとも一つの平面状または円筒状の光導波路の側壁面を前記フィルターのための基材として用いている、請求項1〜5のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項11】
少なくとも一つの光導波路の少なくとも一つの突合せ端面を前記フィルターのための基材として用いている、請求項1〜6のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項12】
少なくとも一つの光導波路がシングルモードである、請求項10または11に記載の光学干渉フィルター。
【請求項13】
少なくとも一つの光導波路がマルチモードである、請求項10または11に記載の光学干渉フィルター。
【請求項14】
少なくとも一つの光導波路が少なくとも一つのコアと、前記少なくとも一つのコアの屈折率よりも小さい屈折率を有する一以上のクラッドとを含む、請求項10〜13のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項15】
少なくとも一つのD形状の光導波路の平坦な側面を前記フィルターのための基材として用いている、請求項1〜6のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項16】
前記フィルターが、少なくとも一つの光導波路の少なくとも一つの突合せ端上に形成されており、前記突合せ端は前記導波路の軸に対して0〜90度の角度で傾斜している、請求項1〜6または12〜15のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項17】
少なくとも一つの偏光層、および/または、少なくとも一つの位相差層、および/または、少なくとも一つの配向層、および/または、少なくとも一つの保護層、および/または、少なくとも一つの鏡面反射層もしくは拡散反射層、および/または、上述した層の少なくとも二つの任意の組み合わせとして同時に機能する少なくとも一つの層をさらに有する、請求項1〜16のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項18】
DC電圧および/またはAC電圧がかかる少なくとも一対の電極をさらに有する、請求項1〜18のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項19】
前記電極の少なくとも一つの少なくとも一部が光学透明材料からなる、請求項18に記載の光学干渉フィルター。
【請求項20】
前記電極の少なくとも一つの少なくとも一部が、光線に対して透過性の少なくとも一つの窓を有する光学不透明材料からなる、請求項18または19に記載の光学干渉フィルター。
【請求項21】
少なくとも一対の電極が、電気光学材料の少なくとも一つの層の対向する表面に配置されている、請求項18〜20のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項22】
少なくとも一対の電極が、電気光学材料の少なくとも一つの層の一表面に配置されている、請求項18〜21のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項23】
少なくとも一対の電極が、電気光学材料の少なくとも一つの層の少なくとも一つの突合せ端に配置されている、請求項18〜22のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項24】
少なくとも一対の電極が、電気光学材料の少なくとも一つの層の異なる突合せ端に配置されている、請求項18〜23のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項25】
電気光学材料の少なくとも一つの層は、少なくとも一対の電極に属する少なくとも一つの電極と電気的接触を有しておらず、かつ、前記対の電極に印加される電圧は、電気光学材料の前記層に電界をもたらす、請求項18〜24のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項26】
前記光導波路の少なくとも一つのコアが、少なくとも一つの回折格子をさらに有する、請求項14〜25のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項27】
前記光導波路のクラッドの少なくとも一部上に形成されており、かつ、少なくとも一つの回折格子を有する前記コアの少なくとも一領域と少なくとも部分的に重なっている、請求項26に記載の光学干渉フィルター。
【請求項1】
外部からの電界の強さに依存する、実数の屈折率および/または虚数の屈折率をそれぞれ有する複数の層を有する光学干渉フィルターであって、
各層の屈折率および厚みならびにそれらの組合せは、入射光の少なくとも一つの偏光状態に対するスペクトルの少なくとも一つの領域において干渉の極値がもたらされるように選ばれており、かつ
少なくとも一つの層が電気光学材料からなり、当該電気光学材料は異方性でありかつ少なくとも一つの芳香族有機材料か作られたものであり、前記芳香族有機材料の分子またはその分子のフラグメントは平板状構造を有し、かつ、前記少なくとも一つの層の少なくとも一部は、光軸の一つに沿った分子間間隔が3.4±0.2Åである結晶構造を有する、光学干渉フィルター。
【請求項2】
前記異方性電気光学材料の少なくとも一つの層は、二価および三価の金属のイオンで処理されている、請求項1に記載の光学干渉フィルター。
【請求項3】
前記少なくとも一つの芳香族有機材料の分子は複素環を含む、請求項1または2に記載の光学干渉フィルター。
【請求項4】
前記異方性電気光学材料の少なくとも一つの層は、少なくとも一つの二色性染料をベースとするリオトロピック液晶からなる、請求項1〜3のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項5】
前記異方性電気光学材料の少なくとも一つの層は、以下の関係:
K1≧K2>K3および(n1+n2)/2>n3
を満たす複素屈折率の虚数部(K1,K2,K3)および実数部(n1,n2,n3)を特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項6】
前記干渉フィルターの前記層は平坦である、請求項1〜5のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項7】
前記干渉フィルターの前記層は二次形状を有する、請求項1〜5のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項8】
少なくとも一つの拡散反射基材もしくは鏡面反射基材、または光学的に透明な材料からなる基材をさらに有する、請求項1〜7のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項9】
前記基材が、結晶性またはアモルファスである、ガラスおよび/または石英、および/または高分子半導体からなる、請求項8に記載の光学干渉フィルター。
【請求項10】
少なくとも一つの平面状または円筒状の光導波路の側壁面を前記フィルターのための基材として用いている、請求項1〜5のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項11】
少なくとも一つの光導波路の少なくとも一つの突合せ端面を前記フィルターのための基材として用いている、請求項1〜6のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項12】
少なくとも一つの光導波路がシングルモードである、請求項10または11に記載の光学干渉フィルター。
【請求項13】
少なくとも一つの光導波路がマルチモードである、請求項10または11に記載の光学干渉フィルター。
【請求項14】
少なくとも一つの光導波路が少なくとも一つのコアと、前記少なくとも一つのコアの屈折率よりも小さい屈折率を有する一以上のクラッドとを含む、請求項10〜13のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項15】
少なくとも一つのD形状の光導波路の平坦な側面を前記フィルターのための基材として用いている、請求項1〜6のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項16】
前記フィルターが、少なくとも一つの光導波路の少なくとも一つの突合せ端上に形成されており、前記突合せ端は前記導波路の軸に対して0〜90度の角度で傾斜している、請求項1〜6または12〜15のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項17】
少なくとも一つの偏光層、および/または、少なくとも一つの位相差層、および/または、少なくとも一つの配向層、および/または、少なくとも一つの保護層、および/または、少なくとも一つの鏡面反射層もしくは拡散反射層、および/または、上述した層の少なくとも二つの任意の組み合わせとして同時に機能する少なくとも一つの層をさらに有する、請求項1〜16のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項18】
DC電圧および/またはAC電圧がかかる少なくとも一対の電極をさらに有する、請求項1〜18のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項19】
前記電極の少なくとも一つの少なくとも一部が光学透明材料からなる、請求項18に記載の光学干渉フィルター。
【請求項20】
前記電極の少なくとも一つの少なくとも一部が、光線に対して透過性の少なくとも一つの窓を有する光学不透明材料からなる、請求項18または19に記載の光学干渉フィルター。
【請求項21】
少なくとも一対の電極が、電気光学材料の少なくとも一つの層の対向する表面に配置されている、請求項18〜20のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項22】
少なくとも一対の電極が、電気光学材料の少なくとも一つの層の一表面に配置されている、請求項18〜21のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項23】
少なくとも一対の電極が、電気光学材料の少なくとも一つの層の少なくとも一つの突合せ端に配置されている、請求項18〜22のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項24】
少なくとも一対の電極が、電気光学材料の少なくとも一つの層の異なる突合せ端に配置されている、請求項18〜23のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項25】
電気光学材料の少なくとも一つの層は、少なくとも一対の電極に属する少なくとも一つの電極と電気的接触を有しておらず、かつ、前記対の電極に印加される電圧は、電気光学材料の前記層に電界をもたらす、請求項18〜24のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項26】
前記光導波路の少なくとも一つのコアが、少なくとも一つの回折格子をさらに有する、請求項14〜25のいずれかに記載の光学干渉フィルター。
【請求項27】
前記光導波路のクラッドの少なくとも一部上に形成されており、かつ、少なくとも一つの回折格子を有する前記コアの少なくとも一領域と少なくとも部分的に重なっている、請求項26に記載の光学干渉フィルター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公表番号】特表2007−534968(P2007−534968A)
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507895(P2005−507895)
【出願日】平成15年8月7日(2003.8.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/024733
【国際公開番号】WO2005/017595
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年8月7日(2003.8.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/024733
【国際公開番号】WO2005/017595
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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