説明

光学延伸フィルムの製造方法

【課題】光学延伸フィルムの製法において、フィルム巻き取り時のフィルム破断がなく、長時間連続的に巻き取る事が出来るの製法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂フィルムの両横端部を、左右2列のクリップで掴み横延伸させた後、クリップから開放されたフィルムを巻き取る延伸フィルムの製法において、クリップから開放されたフィルムが、最初に接触する第1ロールの幅が該開放時点の左右2列のクリップ間距離よりも短い幅のロールを用いることを特徴とする光学延伸フィルムの製法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学延伸フィルムの製造方法に関する。特に、横延伸時の端部から発生する不具合(巻き取り時のフィルムの破断)がない状態で長時間連続的に巻き取る事が出来る光学延伸フィルムの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
延伸光学フィルムを巻き取る際に発生するフィルム破断を抑制する方法として、特許文献1には、端部を精度良くスリットする技術が記載されている。フィルム端部のスリットに関する技術は、広く検討がなされており、スリットした際に発生する、フィルムの裁断屑を除去する方法も検討されている(例えば、特許文献2等)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−272616号公報
【特許文献2】特開平7−11055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、上記の従来技術では、認識されていなかった、横延伸後、横延伸時の端部をスリットする工程の前にフィルムに接触させるロール幅が、フィルム巻き取り時等のフィルム破断に影響する事を見出し、長時間連続的に巻き取る事が出来る光学延伸フィルムの製造方法に至った。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記事情に鑑み、フィルム製造の初期技術を検討した結果、以下の方法によって、光学フィルムを不具合がない状態で長時間連続製造する製造方法を見出した。
(1)熱可塑性樹脂フィルムの両横端部を、左右2列のクリップで掴み横延伸させた後、クリップから開放されたフィルムを巻き取る延伸フィルムの製法において、クリップから開放されたフィルムが、最初に接触する第1ロールの幅が該開放時点の左右2列のクリップ間距離よりも短い幅のロールを用いることを特徴とする光学延伸フィルムの製造方法である。
(2)フィルムを該第1ロールに接触させた後、
延伸時にクリップで掴んだ部分をスリットする工程を更に含む(1)記載の光学延伸フィルムの製造方法である。
(3)スリットする工程の前に、該第1ロールに加えて、第1ロールとフィルムに対して上下反対側に第2ロールを用いる(2)記載の光学延伸フィルムの製造方法である。
(4)該第1ロールが分割式ロールを用いる(1)又は(2)記載の光学延伸フィルムの製造方法である。
(5)スリットする工程の後フィルムに始めて接触する、スリット後ロールが、スリット工程で得られたフィルム幅より広い幅である(2)又は(3)に記載の光学延伸フィルムの製造方法である。
(6)クリップから開放されたフィルムを巻き取る前に、該フィルムに保護フィルムを貼付した後、巻き取ることを特徴とする(2)〜(4)のいずれかに記載の光学延伸フィルムの製造方法である。
(7)該第1ロールが、ガイドロール、ニップロール、又はピンチロールのいずれかである(1)〜(6)のいずれかに記載の光学延伸フィルムの製造方法である。
(8)該熱可塑性樹脂が、ガラス転移温度110℃以上200℃以下の耐熱アクリル樹脂である(1)〜(7)のいずれかに記載の光学延伸フィルムの製造方法である。
(9)縦延伸後、前記横延伸工程に供される(1)〜(8)のいずれかに記載の光学延伸フィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、延伸光学フィルムを破断することなく、連続的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明を詳述する。本明細書において「主成分」とは、50重量%以上含有していることが意図される。なお、範囲を示す「a〜b」は、a以上b以下であることを示す。
本発明の光学延伸フィルムの製造方法は、横延伸する熱可塑性樹脂全般に効果がある。熱可塑性樹脂しては、シクロオレフィン(共)重合体、アクリル樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂のガラス転移温度が110℃以上200℃以下であるものに効果的であり、更に、アクリル樹脂に好適な発明である。なお、本発明の製法は、膜厚が、100μm〜400μmの光学フィルムに適している。
【0008】
次に、本発明の製法を詳述する。
(1)熱可塑性樹脂フィルムの両横端部を、左右2列のクリップで掴み横延伸させた後、クリップから開放されたフィルムを巻き取る延伸フィルムの製法において、クリップから開放されたフィルムが、最初に接触する第1ロールの幅が該開放時点の左右2列のクリップ間距離よりも短い幅のロールを用いることを特徴とする光学延伸フィルムの製造方法である。
横延伸機は、余熱、延伸、熱処理の各ゾーンからなるオーブンと横延伸用のクリップ走行装置とから構成される。横延伸行程では、走行するフィルムの横端部をクリップで掴み、オーブン内の余熱ゾーンで延伸温度まで加熱してから延伸ゾーンで横方向に引張って延伸し、その後必要により熱処理ゾーンで熱処理を行った後に冷却される。横方向への引張りは、クリップ走行装置のガイドレールを開いて左右2列のクリップ間の距離を広げることによりなされる。余熱および延伸の各ゾーンの温度は、熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移温度をTgとしたとき、Tg−10℃〜Tg+50℃が好ましく、より好ましくはTg5℃〜Tg+30℃である。熱処理ゾーンの温度は、延伸ゾーンの温度より−40℃〜−2℃が好ましく、−35℃〜T1−5℃がより好ましい。冷却は、冷却ゾーンを設け強制的になされる場合もあるが、フィルム走行と共に温度低下させることも出来る。冷却後に、フィルムは、掴んでいたクリップから開放され、下流の引き取りロールで引張られる事になる。
【0009】
クリップから開放されたフィルムが、最初に接触する第1ロールとして、クリップから開放された時点(開放時点)の左右2列のクリップ間距離よりも短い幅のロールを用いることにより、これまで認識していなかった横端部の不具合を発生させる事を抑制できる。クリップ掴み部に発生する屑をロールに巻き込まないことも、フィルムの不具合を抑制できる要因であると考えられる。
【0010】
最初に接触する第1ロールの幅は、前記開放時点の左右2列のクリップ間距離に対して、100〜400mm、好ましくは100〜250mm短いことが好ましい。
【0011】
通常、フィルムの装置は、フィルムを幅全体にわたって安定的に走行させる為、フィルム幅より広いロールを用いるのが常識である。部分的にフィルムを受け搬送すると、走行方向のずれが発生するからである。但し、光学延伸フィルムに限っては、常識とは異なり、横延伸後に最初に接触する第1ロールは、走行するフィルム全幅より短い、詳しくは、フィルムがクリップから開放された時点の左右2列のクリップ間距離よりも短い幅のロールを用いると、その後のフィルム走行、ガイドロールやニップロールとの接触によっても、フィルムの破断が発生しない。
【0012】
このことは、横延伸されたフィルム部分と、クリップの掴み跡部分とでは、強度が異なるため、ロールに接触した時に破断が発生する。延伸された部分は、脆さは無いが引き裂き強度が弱いのに対して、クリップの掴み跡部分は、延伸されていないため非常に脆い。
【0013】
本発明における横延伸とは、単なる横延伸に加え、ガイドレールを開いて横方向に延伸を行うと同時にクリップ間隔を開いて縦方向の延伸を行う同時二軸延伸も含まれる。横延伸の倍率は、1,2〜4.0倍が好ましく、1.5〜3.0倍がより好ましい。
(2)フィルムを該第1ロールに接触させた後、
延伸時にクリップで掴んだ部分をスリットする工程を更に含む(1)記載の光学延伸フィルムの製造方法である。
【0014】
(1)の方法に加え、脆い横端部をスリット(以下トリミングと記載する事がある)する事により、安定したフィルム走行が得られる。スリットする工程は、フィルムがクリップから開放された後、下流の巻取り工程までの間に行うことが出来る。
【0015】
スリットする刃は、剪断でフィルムをカットするシアーカッターが好ましい。
(3)スリットする工程の前に、該第1ロールに加えて、第1ロールとフィルムに対して上下反対側に第2ロールを用いる(2)記載の光学延伸フィルムの製造方法である。スリットする前に、横延伸工程部分の振動を抑える目的で、複数、好ましくは2〜5、より好ましくは、2〜3のロールを用いることが好適である。複数のロールは、ガイドロールであることが通常である。
【0016】
(4)該第1ロールが分割式ロールを用いる(1)又は(2)記載の光学延伸フィルムの製造方法である。横延伸する前のフィルム原反の幅や、横延伸倍率の変更にも対応する為、該第1ロールは、分割式ロールが好ましい。
【0017】
(5)スリットする工程の後フィルムに始めて接触する、スリット後ロールが、スリット工程で得られたフィルム幅より広い幅である(2)又は(3)に記載の光学延伸フィルムの製造方法である。スリット工程を経たフィルムは、クリップ掴み跡が無い為、フィルム幅より広い幅のロールで受け、安定的に次の工程に走行させる事が好ましい。
【0018】
前記スリット後ロールの幅は、スリット工程で得られたフィルム幅より50〜300mm、好ましくは70〜200mm長いことが好ましい。
【0019】
(6)クリップから開放されたフィルムを巻き取る前に、該フィルムに保護フィルムを貼付した後、巻き取ることを特徴とする(2)〜(4)のいずれかに記載の光学延伸フィルムの製造方法である。
【0020】
本発明に用いることが出来る保護フィルムとしては、基材の上に粘着層がコーティング若しくは共押出されたフィルムが挙げられる。前記基材としては、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。前記粘着層は、上記初期粘着力を付与することができるものであれば良く、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、メタロセンL−LDPE(メタロセン触媒を用いて重合した、直鎖状低密度ポリエチレン)等が好ましい。前記保護フィルムの膜厚は、10〜100μmの範囲内であることが好ましく、20〜90μmの範囲内であることがより好ましい。
【0021】
上記保護フィルムにおける粘着層は、本発明の光学延伸フィルムに保護フィルムを安定的に貼り付けることができれば、光学延伸フィルムと接する面全体に設けられていてもよいし、一部のみに設けられていてもよい。又、光学延伸フィルムの片面でも両面でも良い。
保護フィルム貼り付け工程では、横延伸後得られた光学延伸フィルムに、上述した保護フィルムを貼り付ける。上記保護フィルムを貼り付ける方法は、例えば、走行しているフィルムラインの下側若しくは上側に設置された繰り出し機(又は巻き出し機)等のモーターを有する駆動軸に保護フィルムロールをセットし、走行する光学延伸フィルムと保護フィルムとを2つのゴムロールにより押し付けることにより張り合わせる等の方法が挙げられる。
【0022】
(7)該第1ロールが、ガイドロール、ニップロール、又はピンチロールのいずれかである(1)〜(6)のいずれかに記載の光学延伸フィルムの製造方法である。該第1ロールは、通常ガイドロールであるが、ニップロール、又はピンチロールであっても良い。
【0023】
(8)該熱可塑性樹脂が、ガラス転移温度110℃以上200℃以下の耐熱アクリル樹脂である(1)〜(7)のいずれかに記載の光学延伸フィルムの製造方法である。クリップで掴まれていたフィルム横端部は、横延伸されていない為、特にアクリル樹脂、更にガラス転移温度110℃以上200℃以下の耐熱アクリル樹脂の場合は、非常に脆く、本発明に適した樹脂である。
【0024】
(9)縦延伸後、前記横延伸工程に供される(1)〜(8)のいずれかに記載の光学延伸フィルムの製造方法である。本発明は、縦延伸後、横延伸する逐次二軸延伸法に好適である。
【0025】
本発明は、クリップ掴み跡が関連する為、単純なる横のみの延伸より、縦横同時二軸延伸、及び縦延伸後、横延伸する逐次二軸延伸に適している。特に、縦延伸後、横延伸する逐次二軸延伸に好適である。
【0026】
縦延伸は、周速差のあるニップロール間で延伸され、分子配向する事により縦方向の力学的特性が向上する。縦延伸には、多数のロールに連続接触しながら延伸する温度まで余熱し、短区間のニップロール間で延伸する方法と、オーブンの入口と出口にニップロールが配置され、そのオーブン内で余熱から延伸、冷却までを行う方法がある。縦延伸の倍率は、1.2〜4.0倍が好ましく、1.5〜3.0倍がより好ましい。
【0027】
次に上述した本発明に用いる熱可塑性樹脂の具体例を示す。
(1.シクロオレフィン(共)重合体)
シクロオレフィン(共)重合体は、好ましくはノルボルネン構造をベースとするオレフィン、特にノルボルネン、テトラシクロドデセン、必要に応じて、ビニルノルボルネンまたはノルボルナジエンを含む。また、好ましくは、例えば2〜20個の炭素原子を有するα−オレフィン、特に好ましくはエチレンまたはプロピレンのような末端二重結合を有する非環式オレフィンから誘導される重合単位を含むシクロオレフィン(共)重合体である。特に好ましくは、ノルボルネン・エチレンコポリマーおよびテトラシクロドデセン・エチレンコポリマーである。
(2.アクリル樹脂)
アクリル樹脂は、主成分として、アクリル酸、メタクリル酸およびその誘導体を重合して得られる樹脂およびその誘導体である。例えば、一般式(1)
【0028】
【化1】

【0029】

(式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を示す。有機残基とは、具体的には、炭素数1〜20の直鎖状、枝分かれ鎖状、若しくは環状のアルキル基を示す。)で表される構造を有する化合物(単量体)、アクリル酸、メタクリル酸およびその誘導体の好ましい具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシエキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられる。これらのうち1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。中でも、熱安定性に優れる点で(メタ)アクリル酸メチルが最も好ましい。
また、メタクリル系熱可塑性樹脂は、耐熱性の観点より、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドおよびメチルマレイミドなどのN−置換マレイミドが共重合されていてもよいし、分子鎖中(重合体中の主骨格中または主鎖中ともいう)にラクトン環構造、グルタル酸無水物構造およびグルタルイミド構造などが導入されていてもよい。中でも、フィルムの着色(黄変)し難さの点で、窒素原子が含まれない構造が好ましい。また、正の複屈折率(正の位相差)を発現させやすい点で、主鎖にラクトン環構造を有するものが好ましい。主鎖中のラクトン環構造に関しては、4〜8員環でもよいが、構造の安定性から5〜6員環の方がより好ましく、特に6員環が好ましい。このように、主鎖中のラクトン環構造が6員環である場合としては、後述する一般式(2)や、特開2004−168882号公報において表される構造などが挙げられるが、主鎖にラクトン環構造を導入する前の重合体を合成するうえにおいて、重合収率が高い点や、ラクトン環構造の含有割合の高い重合体を高い重合収率で得易い点や、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステルとの共重合性が良い点で、一般式(2)で表される構造であることが好ましい。
また、これらのアクリル樹脂は、耐熱性を損なわない範囲で共重合可能なその他の単量体成分を共重合した単位を有していても良い。共重合可能なその他の単量体成分としては、具体的にはスチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル等のニトリル系単量体、酢酸ビニル等のビニルエステル類等があげられる。以上のアクリル樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1,000以上2,000,000以下の範囲内、より好ましくは5,000以上1,000,000以下の範囲内、さらに好ましくは10,000以上500,000以下の範囲内、特に好ましくは50,000以上500,000以下の範囲内である。
上記アクリル樹脂を製造する方法としては、公知の方法を用いて(メタ)アクリル酸エステルを含有する単量体組成物を重合すればよい。重合温度、重合時間は、使用する単量体(単量体組成物)の種類、使用比率等によって異なるが、好ましくは、重合温度が0℃以上150℃以下の範囲内、重合時間が0.5時間以上20時間以下の範囲内であり、より好ましくは、重合温度が80℃以上140℃以下の範囲内、重合時間が1時間以上10時間以下の範囲内である。溶剤を用いた重合形態の場合、重合溶剤は特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;などが挙げられ、これらの1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。後述するラクトン環含有重合体を製造する場合は、使用する溶剤の沸点が高すぎると、最終的に得られるラクトン環含有重合体の残存揮発分が多くなることから、沸点が50℃以上200℃以下の範囲内のものが好ましい。
重合反応時には、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物;などが挙げられ、これらは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、用いる単量体の組み合わせや反応条件などに応じて適宜設定すればよい。
重合を行う際には、反応液のゲル化を抑止するために、重合反応混合物中の生成した重合体の濃度が50重量%以下となるように制御することが好ましい。具体的には、重合反応混合物中の生成した重合体の濃度が50重量%を超える場合には、重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加して50重量%以下となるように制御することが好ましい。重合反応混合物中の生成した重合体の濃度は、より好ましくは45重量%以下、さらに好ましくは40重量%以下である。なお、重合反応混合物中の重合体の濃度があまりに低すぎると生産性が低下するため、重合反応混合物中の重合体の濃度は、10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましい。
重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加する形態としては、特に限定されず、連続的に重合溶剤を添加してもよいし、間欠的に重合溶剤を添加してもよい。このように重合反応混合物中の生成した重合体の濃度を制御することによって、反応液のゲル化をより十分に抑止することができ、特に、ラクトン環含有割合を増やして耐熱性を向上させるために分子鎖中の水酸基およびエステル基の割合を高めた場合であってもゲル化を十分に抑制できる。
添加する重合溶剤としては、重合反応の初期仕込み時に用いた溶剤と同じ種類の溶剤であってもよいし、異なる種類の溶剤であってもよいが、重合反応の初期仕込み時に用いた溶剤と同じ種類の溶剤を用いることが好ましい。また、添加する重合溶剤は、1種のみの溶剤であってもよいし、2種以上の混合溶剤であってもよい。上記重合反応を終了した時点で得られる重合反応混合物中には、通常、得られた重合体以外に溶剤が含まれている。上記重合体を、以下に詳述するラクトン環含有重合体とする場合では、溶剤を完全に除去して重合体を固体状態で取り出す必要はなく、溶剤を含んだ状態で、その後に続くラクトン環化縮合工程を行うことが好ましい。また、必要な場合は、固体状態で取り出した後に、続くラクトン環化縮合工程に好適な溶剤を再添加してもよい。
重合反応によって得られたアクリル樹脂の色相は特に問わないが、透明であり黄変度が小さい方がアクリル樹脂の本来の特徴を損なわない為、好適である。上記アクリル樹脂は例えば3mm厚の成形体とした場合のヘイズ値が3以下、更に好ましくは2以下、最も好ましくは1以下である。また該成形体のYI(イエローインデックス)値が、10以下、好ましくは5以下である。
(ラクトン環含有重合体)
上記アクリル樹脂としては、透明性、耐熱性、光学等方性がいずれも高く、各種光学用途に応じた特性を十分に発揮できるため、(メタ)アクリル酸エステルの共重合体に、分子内環化反応によりラクトン環構造を導入した、いわゆるラクトン環含有重合体を含むことが好ましく、主成分とすることが特に好ましい。ラクトン環含有重合体としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、下記一般式(2)で表されるラクトン環構造を有する。
【0030】
【化2】

【0031】

(式中、R3、R4、R5は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいても良い。)
ラクトン環含有重合体構造中の、一般式(2)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5重量%以上90重量%以下、より好ましくは10重量%以上70重量%以下、さらに好ましくは10重量%以上60重量%以下、特に好ましくは10重量%以上50重量%以下である。上記含有割合が5重量%よりも少ないと、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が不十分になることがあり、好ましくない。また、上記含有割合が90重量%よりも多いと、成形加工性に乏しくなることがあり、好ましくない。
ラクトン環含有重合体は、一般式(2)で表されるラクトン環構造以外の構造を有していてもよい。一般式(2)で表されるラクトン環構造以外の構造としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、下記一般式(3)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)が好ましい。
【0032】
【化3】

【0033】

(式中、R6は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R7基、または−C−O−R8基を表し、Ac基はアセチル基を表し、R7およびR8は水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。) 特に、ラクトン環含有重合体に本発明を用いると、破断、ひび割れ、表面ムラ、スジなどの不具合が発生せず、均一物性である耐熱アクリル樹脂製の光学フィルムが得られる。
【0034】
ラクトン環含有重合体において、一般式(2)で表されるラクトン環構造以外の構造の含有割合は、(メタ)アクリル酸エステルを重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは10重量%以上95重量%以下の範囲内、より好ましくは10重量%以上90重量%以下の範囲内、さらに好ましくは40重量%以上90重量%以下の範囲内、特に好ましくは50重量%以上90重量%以下の範囲内である。
また、水酸基含有単量体を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、一般式(2)で表されるラクトン環構造以外の構造の含有割合は、好ましくは0重量%以上30重量%以下の範囲内、より好ましくは0重量%以上20重量%以下の範囲内、さらに好ましくは0重量%以上15重量%以下の範囲内、特に好ましくは0重量%以上10重量%以下の範囲内である。また、不飽和カルボン酸を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、一般式(2)で表されるラクトン環構造以外の構造の含有割合は、好ましくは0重量%以上30重量%以下の範囲内、より好ましくは0重量%以上20重量%以下の範囲内、さらに好ましくは0重量%以上15重量%以下の範囲内、特に好ましくは0重量%以上10重量%以下の範囲内である。
また、一般式(3)で表される単量体を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、一般式(2)で表されるラクトン環構造以外の構造の含有割合は、好ましくは0重量%以上30重量%以下の範囲内、より好ましくは0重量%以上20重量%以下の範囲内、さらに好ましくは0重量%以上15重量%以下の範囲内、特に好ましくは0重量%以上10重量%以下の範囲内である。
ラクトン環含有重合体の製造方法は特に限定されるものではないが、好ましくは、重合工程によって分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得た後に、当該重合体を加熱処理することによりラクトン環構造を重合体に導入するラクトン環縮合反応を行うことによって得ることができる。
ラクトン環構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)に形成されることにより、重合体に高い耐熱性が付与される。ラクトン環構造を導く環化縮合反応の反応率が不十分であると、耐熱性が十分に向上しなかったり、成形時の加熱処理によって成形途中に縮合反応が起こり、生じたアルコールが成形品中に泡やシルバーストリークとなって存在する恐れがあるため好ましくない。
上記重合体をラクトン環縮合反応を行うために加熱処理する方法については、例えば、重合工程によって得られた、溶剤を含む重合反応混合物を、そのまま加熱処理してもよい。また、溶剤の存在下で、必要に応じて閉環触媒を用いて加熱処理してもよい。また、揮発成分を除去するための真空装置あるいは脱揮装置を持つ加熱炉や反応装置、脱揮装置のある押出機等を用いて加熱処理を行うこともできる。
環化縮合反応を行う際に、上記重合体に加えて、他のアクリル樹脂を共存させてもよい。また、環化縮合反応を行う際には、必要に応じて、環化縮合反応の触媒として一般に用いられるp−トルエンスルホン酸等のエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いてもよいし、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸等の有機カルボン酸類を触媒として用いてもよい。特開昭61−254608号公報や特開昭61−261303号公報に示されている様に、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩などを用いてもよい。
環化縮合反応を行う際には、有機リン化合物を触媒として用いることが好ましい。触媒として有機リン化合物を用いることにより、環化縮合反応率を向上させることができるとともに、得られるラクトン環含有重合体の着色を大幅に低減することができる。さらに、有機リン化合物を触媒として用いることにより、後述の脱揮工程を併用する場合において起こり得る分子量低下を抑制することができ、優れた機械的強度を付与することができる。
環化縮合反応の際に触媒として用いることができる有機リン化合物としては、例えば、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸等のアルキル(アリール)亜ホスホン酸(但し、これらは、互変異性体であるアルキル(アリール)ホスフィン酸になっていてもよい)およびこれらのジエステルあるいはモノエステル;ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、フェニルエチルホスフィン酸等のジアルキル(アリール)ホスフィン酸およびこれらのエステル;メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、トリフルオルメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸等のアルキル(アリール)ホスホン酸およびこれらのジエステルあるいはモノエステル;メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸等のアルキル(アリール)亜ホスフィン酸およびこれらのエステル;亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸ジエステルあるいはモノエステルあるいはトリエステル;リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸イソデシル、リン酸ラウリル、リン酸ステアリル、リン酸イソステアリル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジ−2−エチルヘキシル、リン酸ジイソデシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジステアリル、リン酸ジイソステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソデシル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリイソステアリル、リン酸トリフェニル等のリン酸ジエステルあるいはモノエステルあるいはトリエステル;メチルホスフィン、エチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のモノ、ジ若しくはトリアルキル(アリール)ホスフィン;メチルジクロロホスフィン、エチルジクロロホスフィン、フェニルジクロロホスフィン、ジメチルクロロホスフィン、ジエチルクロロホスフィン、ジフェニルクロロホスフィン等のアルキル(アリール)ハロゲンホスフィン;酸化メチルホスフィン、酸化エチルホスフィン、酸化フェニルホスフィン、酸化ジメチルホスフィン、酸化ジエチルホスフィン、酸化ジフェニルホスフィン、酸化トリメチルホスフィン、酸化トリエチルホスフィン、酸化トリフェニルホスフィン等の酸化モノ、ジ若しくはトリアルキル(アリール)ホスフィン;塩化テトラメチルホスホニウム、塩化テトラエチルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウム等のハロゲン化テトラアルキル(アリール)ホスホニウム;などが挙げられる。これらの中でも、触媒活性が高くて低着色性のため、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステルあるいはモノエステル、リン酸ジエステルあるいはモノエステル、アルキル(アリール)ホスホン酸が好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸ジエステルあるいはモノエステル、リン酸ジエステルあるいはモノエステルがより好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、リン酸ジエステルあるいはモノエステルが特に好ましい。これら有機リン化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
環化縮合反応の際に用いる触媒の使用量は、特に限定されないが、上記重合体に対して、好ましくは0.001〜5重量%の範囲内、より好ましくは0.01〜2.5重量%の範囲内、さらに好ましくは0.01〜1重量%の範囲内、特に好ましくは0.05〜0.5重量%の範囲内である。触媒の使用量が0.001重量%未満であると、環化縮合反応の反応率の向上が十分に図れないおそれがあり、一方、5重量%を超えると、着色の原因となったり、重合体の架橋により溶融賦形しにくくなることがあるため、好ましくない。触媒の添加時期は特に限定されず、反応初期に添加しても、反応途中に添加しても、それらの両方で添加してもよい。
環化縮合反応を溶剤の存在下で行い、且つ、環化縮合反応の際に、脱揮工程を併用することが好ましい。この場合、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態、および、脱揮工程を環化縮合反応の過程全体にわたっては併用せずに過程の一部においてのみ併用する形態が挙げられる。脱揮工程を併用する方法では、縮合環化反応で副生するアルコールを強制的に脱揮させて除去するので、反応の平衡が生成側に有利となる。
【0035】
<測定方法>
本発明における物性の測定は以下の方法で行う。実施例及び比較例においても、同様の方法で行った。
(ガラス転移温度)
ガラス転移温度には各種の測定方法があるが、本明細書においては示差走査熱量計(DSC)によってASTM−D−3418に従って中点法で求めた温度と定義する。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明を実施例によってさらに詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
[製造例1]
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管を付した1m2の反応釜に、204kgのメタクリル酸メチル(MMA)、51kgの2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)、249kgのトルエンを仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温し、還流したところで、重合開始剤として281gのターシャリーアミルパーオキシイソノナノエート(アトフィナ吉富製、商品名:ルペロックス570)を添加すると同時に、561gの重合開始剤と5.4kgのトルエンからなる溶液を2時間かけて滴下しながら、還流下(約105〜110℃)で溶液重合を行い、さらに4時間かけて熟成を行った。
【0037】
得られた重合体溶液に、255gのリン酸ステアリル/リン酸ジステアリル混合物(堺化学製、商品名:Phoslex A−18)を加え、還流下(約90〜110℃)で5時間、環化縮合反応を行った。
【0038】
次いで、上記環化縮合反応で得られた重合体溶液を、バレル温度250℃、回転数150rpm、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出し機(Φ=42mm、L/D=42)に、樹脂量換算で15kg/時間の処理速度で導入し、該押出し機内で環化縮合反応と脱揮を行い、押出すことにより、透明なペレットを得た。
【0039】
次いでΦ50mm、多条フライト構造のミキシング部を有するフルフライト型スクリューからなるL/D=36の単軸押出し機を用い、耐熱アクリル樹脂ペレット90部、AS樹脂(旭化成ケミカルズ社製スタイラックAS783)10部および酢酸亜鉛0.04部をシリンダ設定温度270℃にて50kg/時間の処理速度で溶融押出しをおこない、樹脂ペレット(1A)を作成した。 質量平均分子量:132000、ラクトン環含有割合:28.5%
[製造例2]
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素ガス導入管を備えた容量1m2の反応容器に、メタクリル酸メチル(MMA)150kg、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)75kg、メタクリル酸n−ブチル(BMA)25kg、トルエン250kgを仕込んだ。この反応容器に窒素ガスを導入しながら、105℃まで昇温し、還流したところで、重合開始剤として、t−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富(株)製、ルペロックス570)0.15kgを添加すると同時に、t−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富(株)製、ルペロックス570)0.30kgとトルエン3.5kgからなる開始剤溶液を6時間かけて滴下しながら、還流下(約105℃〜111℃)で溶液重合を行い、開始剤溶液の滴下後さらに2時間かけて熟成を行った。
【0040】
得られた重合体(2A)の重量平均分子量は195000であり、重合反応率は96.2%であった。また、重合体(2A)中のMHMAの構造単位の含有率は、30.2質量%で、MMA構造単位の含有率は、59.9質量%、BMA構造単位の含有率は9.9質量%であった。
【0041】
得られた重合体溶液に、環化触媒としてリン酸オクチル/リン酸ジオクチル混合物(堺化学社製、Phoslex A−8)0.250kgを加え、還流下、約85〜105℃で2時間、環化縮合反応(重合体を分子内脱アルコール反応させ、重合体分子内にラクトン環構造を形成させる反応)を行った。
【0042】
次いで、得られた重合体溶液を、熱交換器に通して220℃まで昇温し、バレル温度250℃、回転数170rpm、減圧度13.3hPa〜400hPa(10mmHg〜300mmHg)、リアベント数1個、フォアベント数4個のベントタイプスクリュー二軸押出機(φ=42mm、L/D=42)に、樹脂量換算で、15kg/時間の処理速度で導入し、押出機内で環化縮合反応と脱揮処理を行った。その際、第一フォアベントと第二フォアベントとの中間で、オクチル酸亜鉛(日本化学産業社製、ニッカオクチックス亜鉛18%)9.8質量部、チバ・スペシャリティケミカルズ社製Irganox1010、0.8質量部、旭電化工業社製アデカスタブAO−412S0.8質量部、トルエン88.6質量部からなる溶液を0.46kg/時間の速度で液注した。前記脱揮操作により、透明な樹脂ペレット(2B)を得た。得られた樹脂ペレット(2B)の重量平均分子量は128000であり、ガラス転移温度は133℃、メルトフローレートは12.4g/10分であった。
(実施例1)
製造例1で得られた樹脂ペレット(1A)を温度270℃で溶融押出して、厚み180μmの未延伸フィルムを成膜し、次いで、温度130℃まで加熱して縦方向に1.9倍に延伸を行った。次に、フィルムの両端部から20mmの位置を2インチのクリップで掴みテンターへ供給し、温度140℃で横方向に2.2倍延伸し、クリップから開放された時点の左右2列のクリップ間距離が920mmの二軸延伸フィルムを得た。
図1のように、テンターのクリップから開放されたフィルムは、幅800mmのガイドロールを2本とおした後に、シアーカッターで幅700mmにトリミングした。その後、ポリエチレン製の保護フィルムを貼り付け、巻取機で巻取った。途中でフィルムが破断することもなく、連続して500mの二軸延伸フィルムを得た。
(実施例2)
製造例2で得られた樹脂ペレット(2B)を温度275℃で溶融押出して、厚み300μmの未延伸フィルムを成膜し、次いで、温度130℃まで加熱して縦方向に1.5倍に延伸を行った。次に、フィルムの両端部から20mmの位置を2インチのクリップで掴みテンターへ供給し、温度140℃で横方向に2.5倍延伸し、クリップから開放された時点の左右2列のクリップ間距離が1145mmの二軸延伸フィルムを得た。
図2のように、テンターのクリップから開放されたフィルムは、幅800mmのガイドロールを2本とおした後に、シアーカッターで幅700mmにトリミングした。その後、ポリエチレン製の保護フィルムを貼り付け、巻取機で巻取った。途中でフィルムが破断することもなく、連続して400mの二軸延伸フィルムを得た。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の光学延伸フィルムの製法で得られるフィルムは、液晶表示装置などのフラットパネル表示装置に用いられる、保護フィルム、反射防止フィルム、位相差フィルム、偏光フィルム等の各種光学用フィルム用途に好適に用いることができる。特に、偏光子保護フィルムに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例1の実施形態を、横延伸後のフィルム上部からの概略図である。図の下方がフィルムの進行方向である。
【図2】実施例1及び1の押出機から巻取り機までを横から見た概略図である。
【図3】本発明の実施例2の実施形態を、横延伸後のフィルム上部からの概略図である。図の下方がフィルムの進行方向である。
【符号の説明】
【0045】
G:ガイドロール
S:シアーカッター
N:ニップロール
D:端部耳屑
W:横延伸機クリップ
R:巻取り機
P:保護フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルムの両横端部を、左右2列のクリップで掴み横延伸させた後、クリップから開放されたフィルムを巻き取る延伸フィルムの製法において、クリップから開放されたフィルムが、最初に接触する第1ロールの幅が該開放時点の左右2列のクリップ間距離よりも短い幅のロールを用いることを特徴とする光学延伸フィルムの製造方法。
【請求項2】
該第1ロールに接触させた後、延伸時にクリップで掴んだ部分をスリットする工程を更に含む請求項1記載の光学延伸フィルムの製造方法。
【請求項3】
スリットする工程の前に、該第1ロールに加えて、第1ロールとフィルムに対して上下反対側に第2ロールを用いる請求項2記載の光学延伸フィルムの製造方法。
【請求項4】
該第1ロールが分割式ロールを用いる請求項1又は2記載の光学延伸フィルムの製造方法。
【請求項5】
スリットする工程の後フィルムに始めて接触する、スリット後ロールが、スリット工程で得られたフィルム幅より広い幅である請求項2又は3に記載の光学延伸フィルムの製造方法。
【請求項6】
クリップから開放されたフィルムを巻き取る前に、該フィルムに保護フィルムを貼付した後、巻き取ることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の光学延伸フィルムの製造方法。
【請求項7】
該第1ロールが、ガイドロール、ニップロール、又はピンチロールのいずれかである請求項1〜6のいずれかに記載の光学延伸フィルムの製造方法。
【請求項8】
該熱可塑性樹脂が、ガラス転移温度110℃以上200℃以下の耐熱アクリル樹脂である請求項1〜7のいずれかに記載の光学延伸フィルムの製造方法。
【請求項9】
縦延伸後、前記横延伸工程に供される請求項1〜8のいずれかに記載の光学延伸フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−36414(P2010−36414A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−200814(P2008−200814)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】